女「…」ﾋﾟｯ

「さあ今週も始まりましたヒムラ動物園！」

女「…」

「今週の赤ちゃん動物は～」

女「…」ｽﾀｽﾀ

「こちらの犬の赤ちゃんです－！かわいいですねー！」

女「…」ﾌﾟｼｯ

女「…」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ

「きゃー！かわいいー！」

「私もだっこしたいー！」

女「…」ﾌｩ

女「…」

「本当にふわふわしてて可愛い～癒やされますね」

女「…」

女「癒やし…」

女「…」

女「…」ｼﾞｰ

女「…」ｶﾀｶﾀ

「犬　女性　飼う　独身」

女「…」ｶﾁ

女「独身でマンションと犬を飼う女は結婚できない…」

女「…」

女「ふっ」

女「どーせ期待してないもん」ｺﾞﾛﾝ

女「…」ﾑｸ

女「…」ｶﾀｶﾀ

「犬　値段」

「犬　飼う　設備」

「子犬　飼いやすい」

女「…」ｶﾀｶﾀ

女「あ」

女「…もうこんな時間」

女「…ま、いっか。明日休みだし。寝よ」ｺﾞﾛﾝ

女「…」

女「犬か…」

女「…」

店員「いらっしゃいませー」

女「あ、…」

店員「？見ていかれますか？」

女「あ、いえ、あの…」

店員「…」ﾆｺﾆｺ

女「…犬、見せて貰ってもいいですか…」

店員「犬ですね！こちらのブースですよ」

女「…」ﾄﾞｷﾄﾞｷ


女「…」

店員「どうですかー？」

女（…いっぱいいる）

女（可愛いなあ、どの子も）

店員「だっこもできますよ」

女「あ、…はい…」

女「…」ｼﾞｯ

女（ん？）

犬「…」ｼﾞﾛﾘ

女「…」ｼﾞｰ

犬「…」ｼﾞﾛｰ

女（ハスキー犬の赤ちゃんかあ、愛想ないなあ）

女「…」ｺﾝｺﾝ

犬「…」ﾌｲ

女「わんわーん」ｺﾝｺﾝ

犬「んだよ…」

女「あ、こっち向いた」

犬「なんだよオバさん」

女「…」ｼﾞｰ

犬「ﾁｯ…」ﾓｿﾞﾓｿﾞ

女「すいません、この子、だっこ」

店員「え？はい」

犬「えっ」

店員「珍しいですね、この子人気ないんですよ」

犬「はなせ、はなせ」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

女「でしょうね」

犬「なんだと」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

女「…」ﾓﾌ

犬「はなせよ」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

女「暴れないの」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「きしょくわりーんだよ」ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

女「あはは、かわいい」

犬「あんだとー」ｺﾛｺﾛ

女「…」

犬「…」

犬「おまえ変なにおいするな」ｸﾝｸﾝ

女「お」

犬「あまいにおい」ｸﾝｸﾝ

女「ふふ、くすぐったいよ」

犬「ふんふん」ｸﾞｲｸﾞｲ

女「もー」

犬「ふんふんふん」ﾓｿﾞﾓｿﾞ

女「…」

女「あの」

店員「はい」

女「飼います」

店員「ええ！」

犬「ん？」ﾌｶﾞﾌｶﾞ

ダックス「え、おまえどこ行くのー」

犬「あの女んとこ」

チワワ「へえー、じゃあ飼われたんだ」

犬「んー」

ダックス「きをつけろよ、人間って怖いのが居るんだってさ」

犬「え」

チワワ「ぎゃくたいする人じゃないといいね」

犬「だだだだいじょうぶだし。俺のほうがつよいし」

女「やあ」

犬「キャン！」

女「ん、ごめん」

犬「…」ｶﾞﾀｶﾞﾀ

女「じゃあ、ありがとうございましたー」

犬「ああ…」

ダックス「たっしゃでな」

チワワ「ばいびー」

犬「…」ﾁﾝﾏﾘ

女「ほら、おうちだよー」

犬「…」ﾁﾝﾏｰﾘ

女「ショップではあんなに暴れてたのに。ほら、出ておいで」

犬「ぎゃくたいするのか？」

女「ほら、おいで」ｸﾞｲ

犬「あびゃびゃびゃ」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

女「ああ、ごめんごめん」

犬「ｸｰﾝｸｰﾝ」

女「怖いのかなあ…」

犬「ｸｰﾝ…」

女「…」ｶﾞｻｶﾞｻ

女「ほら、おもちゃあげるよ」

犬「！」

犬「よこせ」ｸﾞｲｰ

女「おお」

犬「あぐあぐ」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

女「おおー…」

犬「わはは、俺は強いぞ」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

女「楽しそうだな」

犬「わはは」

女「ふふ」

犬「ん？なにみてる」

女「可愛いなー」ﾅﾃﾞ

犬「！俺にきやすく触るんじゃない」ﾊﾞｯ

女「あれ」

犬「お前はまだしんようできん」ｽﾀﾀ

女「あらー…」

犬「ふんふん」ｱｸﾞｱｸﾞ

女「ちぇー」

女「…」ｶﾁｬｶﾁｬ

犬「…」ﾁﾗ

女「…」ｶﾁｬｶﾁｬ

犬「おい」

女「んー？」

犬「おなかすいた」

女「なにー？」

犬「めしよこせ」

女「…？」

犬「あーもう」ｲﾗｲﾗ

女「あ、ごはんの時間かな？」

犬「めし！めし！」

女「ちょっと待ってね」ｶﾗﾝ

女「はいどうぞ」ｻﾞﾗｻﾞﾗ

犬「！めし！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

女「はい」

犬「わふわふ」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

女「おー」

犬「うめっうめっ」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

女「どっこいせ」ﾄﾞｶ

女「…」ﾌﾟｼｰ

犬「…」ﾁﾝﾏﾘ

女「すみっこにいないで、こっち来ればいいのに」

犬「…」ｼﾞﾛﾘ

女「うーん」ﾎﾟﾁ

「世界の果てまでいってｷﾞｭｰ！」

犬「！」ﾋﾞｸｯ

女「あはは」

「ガーガーチキン！ガーガーチキン！」

犬「なんだこの箱…」

女「あははは…」

犬「…」ｼﾞｯ

女「あーおもろー」

犬「…ぶきみだぞ…」ｸﾞﾙﾙ…

女「さって寝るかー」

犬「…」

女「ほら、あんたのベッドはここ」

犬「やめろはなせ」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

女「はいおやすみ」ｶﾞｼｬﾝ

犬「なんだここ、だせ」ｸﾙｸﾙ

女「また明日ね」

犬「だしやがれー」

女「…」ｶﾁ

犬「くらい！」

女「…」ｽｰｽｰ

犬「…」

犬「ねたのか？」

犬「ねたのか？」ｶﾘｶﾘ

犬「…」

犬「…」ｷｭｰﾝ

女「はー仕事いきたくない」

犬「…」ｽﾋﾟｰ

女「えと、エサはタイマー付きのえさ箱に入れて」

女「お水も満タン」

女「おもちゃも置いて、と」

女「よしゃ、行ってくるね」

犬「ん」ｶﾞﾊﾞｯ

犬「どこいくどこいく」ｶﾘｶﾘ

女「お留守番しててね」

犬「おいっ、おいっ」ｶﾘｶﾘ

バタン

犬「おいーーーーーー！！」ｷｭﾝｷｭﾝ

犬「…」ｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙ

犬「くそ、くそ」ｷｭﾝｷｭﾝ

犬「…」ｸｽﾝ

ガチャ

犬「…」ﾊﾞｯ

女「ただいまー」

犬「おい！どこいってやがった！」ｷｬﾝｷｬﾝ

女「ただいまあ、良い子してた？」ﾜｼｬﾜｼｬ

犬「ふざくんな！俺をひとりにしやがって」ｷｬﾝｷｬﾝ

女「よし、だっこしてあげよう」

犬「さわるな、俺はおこってるんだぞ」ｻｯ

女「ありゃ」

犬「ふん」

女「まだ慣れないか－」

犬「…」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

女「がーん」

犬「…」ｼﾞﾄｰ

女「あ、そういえば名前決めたよ」

犬「なに？」

女「あんたはねー、りんご」

犬「りんご！？」

女「私の好物しにちゃった。もうめんどくさくて」

犬「ふざくんな！俺はおとこのこだぞ！」ｸﾞﾙﾙ

女「気に入った？りんご」

犬「もっとかっこいい名前にしやがれ」

女「りんご－」

犬「いやだ！」ﾄﾃﾃ

女「あれー」

犬「ふんだ」ﾌﾟｲ

犬「…」

女「…はぁー」

女「明日も仕事かあ…」ｺﾞﾛｺﾞﾛ

犬「…」ﾌﾜｰ

犬「…」ｶｼｶｼ

女「りんごも眠い？もう寝ようか」

犬「んー」ｸｧ

女「ほら、ベッドまで連れてってあげる」

犬「…」

女「おやすみ」ｶﾁ

犬「…」

犬「きゅーん…」

女「…」

犬「きゅーん、きゅーん…」

女「どした？」

犬「さみしい」

女「んー？」

犬「だっこして…」ｷｭｰﾝｷｭｰﾝ

女「なんだろ、…」

犬「こっちきて」

女「…？」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「きゅーん」ｽﾘｽﾘ

女「一緒に寝るか」

犬「うん」

女「潰さないかなー」ｺﾞﾛﾝ

犬「…」ﾓｿﾞﾓｿﾞ

女「おやすみ、りんご」

犬「…」ｸﾝｸﾝ

女「…」

犬「…」ｼﾞｰ

女「…」ｽﾔｰ

犬「…おやすみ」

……
…

女「こら！りんご！ここでオシッコしちゃだめって言ってるでしょ！」

犬「しょうがないじゃん出ちゃうんだもん」


女「こら！！なんで私のご飯食べた！」

犬「カリカリ飽きた！お前のもくれ！」


犬「マーキングゾーン発見」ｽﾞｵｵｵｵ

女「だめ」ｸﾞｲ

犬「んげふ」


女「…誰ですかー、おやつを勝手に食べたのは」

犬「…」

女「りんごくんかなー？」

犬「ちがう」

女「かなー？」

犬「…」ｼｭﾝ…

女「めっ！！！」

犬「ｷｬﾝ」

女「もう今日のご飯はなし」

犬「ごめんなさい、ごめんなさい」ｷｭﾝｷｭﾝ

女「いくよーりんご」ﾎﾟｰｲ

犬「はっはっはっはｗｗｗｗｗ」ｼｭﾀﾀﾀﾀ

女「もどっておいでー」

犬「はっはっはっはｗｗｗｗｗ」

女「よしよしよし」ﾜｼｬﾜｼｬ

犬「俺じょうず！ボールとるの上手！」

女「ほらもう一回！」ﾎﾟｰﾝ

犬「ああたまらんｗｗｗｗｗｗｗ」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ


女「お手」

犬「なに？」

女「おーて」

犬「なんじゃおまえ」

女「お手ってば」

犬「テレビみえないぞ、どけ」

女「もー！」

犬「なんじゃ」

女「りんごー！」ﾊﾞｧﾝ

犬「おかえりおかえりおかえり」ｸﾙｸﾙｸﾙ

女「えっへへへぇ、りんごぉ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「めし！」

女「あのねえ、私の出した企画が通ったんだよお」

犬「めし！」

女「うれしー！！！」ﾑｷﾞｭ

犬「めし！！！」


女「はっぴばーすでーりんごー」

犬「？」

女「おめでとー！」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

犬「なんだこれ」

女「犬用ケーキだよ。おたべ」

犬「！」ﾌﾝｶﾌﾝｶ

犬「うめえうめえ」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

女「大きくなったなあ、りんご」

犬「お前は小さいままだな、かいぬし」ﾍﾟﾛ

女「もう２年かー…はやいなあ」

犬「早いなあ」ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

女「…」

犬「さんぽいく？」

女「…」ﾆﾍﾗ

犬「さーんーぽー」

女「えへへ…」ﾌﾆｬｱ

犬「何だお前。きもちわるいぞ」

女「んふふー…」

犬「ちぇ」

犬「最近小さい四角とばっかり遊んでる」ﾌﾝﾌﾝ

女「…」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

犬「つまんないぞ」ｸﾞﾙﾙ


女「…」ﾋﾗﾋﾗ

犬「ひらひら！ひらひら！」ﾊﾞｯ

女「だめ！もう、スカート汚れちゃうじゃん!」

犬「うひ」

女「髪の毛これで大丈夫かなあ…」

犬「どこいくんだ？かいしゃか？」

女「…」ｼｭｯ

犬「うが、香水やめろ。飼い主のにおいが消えちゃった」

女「じゃ、行ってくるねー」ﾋﾗﾋﾗ

犬「えー」ｷｭｰﾝ

犬「…」ﾌﾝｶﾌﾝｶ

犬「なんだ？変なにおいがするぞ？」ﾌﾝﾌﾝ

犬「誰の匂いだ？」

ガチャ

男「わ、綺麗な家だねー」

女「そ、そうかなー？」

犬「だれだこいつ」

男「うん、女さんらしくて良いんじゃないかな…あれ？」

犬「なをなのれ」ｸﾝｸﾝ

男「うわ！でっか！！」

女「あ、これが私の飼い犬のりんご」

男「え、ペットって…こ、小型犬かと…」

犬「なんか変なにおい」ﾌﾝｶﾌﾝｶ

男「ひ、…」

女「可愛いでしょ？」

男「噛まないの？こいつ」

女「噛まないよ！」

犬「…」

男「…あ、…うん、…いいこだね…」

犬「なんだお前は。へんなやつ」

女「それでね…」

男「はは…」

犬「…」ﾑｰ

犬「つまんね」

犬「それに何だいあの男、飼い主の隣でデレデレして」

犬「俺がいつもあのソファにすわってるのに」ｸﾞﾙﾙ

女「…」

男「女さん…」

女「え、…なに？」

犬「ん？」

男「…」ｶﾞﾊﾞｯ

女「え、きゃっ！！」

犬「！！！！！」

犬「飼い主に何すんだ！！！！ぶち頃すぞｺﾞﾙｧｱｱ！！！！！！」ｷﾞｬﾝｷﾞｬﾝｷﾞｬﾝｷﾞｬﾝ!!!!

男「！？うわっ！！」

犬「飼い主から離れろ！！！触るな触るな触るなーーーーー！！！」ｶﾞﾌﾞｶﾞﾌﾞ

男「いってええええ！！！」

女「り、りんご！やめなさい！」

女「…」

犬「飼い主ー」ｽﾘｽﾘ

女「はあ…」

犬「おい、あそぼうぜー」

女「もーう、あんたのせいで振られちゃったじゃん…」

犬「なんだよぅ」

女「はあ…」

女「ま、でも急に押し倒してくるのはちょっとねえ」

犬「あいつ飼い主食おうとしてたんだぞ。俺が守ったんだぞ」ﾌﾘﾌﾘ

女「…」

女「あんたが人間の男だったらなー」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「ん？」

女「…」ｷﾞｭ

犬「俺はお前が人間でも犬でもだいすきだぞ」ﾌﾝﾌﾝ

女「…」

犬「さんぽいこ」

女「散歩いくか」

犬「うん！」

女「ジュースとお水買ってくるから待ってて」

犬「はやくしろーのどかわいたぞー」

犬「ふう。あっちいな」ｳﾀﾞｳﾀﾞ

ヌッ

犬「うん？」

男性「…」ｼﾞｰ

犬「なんどす？」

男性「…」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「おお」

男性「おとなしいな」

犬「でっしゃろ」

男性「可愛い」

犬「かっこいいの間違いだろ？」

女「りんごー」ﾀﾀﾀ

女「あ」

男性「あ！ごめんなさい勝手に触っちゃって」

女「いえ、いいですよ！犬好きなんですか？」

男性「はい、すごく…ハスキー可愛いですね」

犬「むむ」

女「はい、りんごって言うんです！」

男性「へー！可愛い名前ですねえ」

犬「むむむ…？」

男性「りんごー」ﾎﾟｰﾝ

犬「えっへへえ」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

男性「おー早い」

犬「お前けっこう肩つよいな」ｽﾞﾀﾞﾀﾞ

男性「よし、もっかい！」

犬「えへへえへへ」ｽﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

女「…」ﾆｺﾆｺ

犬「飼い主ーこいつおもしろいなー」

男性「…はあ、つかれた」

犬「なんだ情けない」

女「こっちで休みましょう」

男性「あ、はい」

女「りんごがこんなに懐くなんて思ってませんでした」

男性「いやー僕も意外です」

女「あはは…」

男性「…」

女「遊んでくれる友達がいていいねー、りんご」

犬「うむ」

男性「あ、…」

女「ん？」

男性「あのっ…」

男性「女さんに、お話が…」

犬「む？」

父「…」

母「…」

男性「…お願いします！どうかこの通りです！！！」

女「私からもお願いします」

父「…ふむ…」

母「あらお父さん、何か言ったらどうです」

父「…」

犬「おいハゲーおやつくれおやつ」ｽﾀﾀﾀ

父「女は私の一人娘だ…」

男性「重々承知しています！その上で、必ず女さんを幸せにします！」

犬「おやつおやつー。ほねっこくれー」

父「…まだ早いと思うんだが…」

犬「はやくないよくれよ」

父「ちょ、今大事なとこだから。りんご。やめて」

女「はあー…」

犬「そんなに指みて何がたのしいんだ」

女「んふふ…」

犬「なあ」

女「ねえ、明日結婚式だよ？結婚式」

犬「けっこんしき？」

女「なんかねー、犬も来て良いんだって。りんごもおしゃれして行こうね」

犬「めし食えるのか」

女「…」

女「…」

犬「なに泣いてる」

女「りんご、私良い奥さんになれるのかなあ」

女「自信ないよ…」

犬「…」

犬「…」ｽﾘｽﾘ

女「…」ｸﾞｽｯ

犬「お前はいいお嫁さんになるぞ」ﾍﾟﾛﾍﾟﾛ

女「…ありがと、りんご…」

犬「おう」

「花嫁さんはこちらへー」

女「はい」

バタン

夫「…」

犬「なんだ、あっちはメスばっかだぞ」

夫「はあ…」

犬「ん」

夫「りんご、俺良い夫になれるかな…」

犬「おまえもか」

夫「女さんは綺麗だし、性格もいいし、…俺みたいな平凡なやつが…」

犬「…」

夫「大丈夫かな…」

犬「馬鹿野郎」ｶﾞﾌﾞｰ

夫「ひぎっ！？」

犬「いいか、大丈夫か大丈夫じゃないかじゃない」

犬「やるんだ。飼い主を幸せにするんだ」

犬「俺の飼い主を取っておいて、幸せにしなかったら噛みちぎるからな」ｷﾞﾛﾘ

夫「…」

犬「わかったな、オス同士の約束だ」

夫「…りんご、…」

夫「うん、僕がんばるよ」

犬「ついでに俺も幸せにしてくれ」ﾌﾘﾌﾘ

夫「ただいまー」

女「おかえり、夫さん！」

夫「ただいま、女」ｷﾞｭ

犬「おいおいみてらんねーぜ」

女「あのね、すっごく良い知らせがあるよ」

夫「え？なにかな」

女「…」ｽｯ

犬「なになに」

夫「…あ」

女「えへへ」

犬「俺にもみせろ」

夫「あ、…あ…」

女「やりました」

夫「やったーーーーーーーーーーー！！！女！ありがとう女ーーーー！！！」

犬「え、うるせえ」

女「えへへ…」

犬「よくわかんないけど俺も喜んどくか」ｷｬﾝｷｬﾝ

女「ふうふう」

犬「お前最近ふとってきてない？」

女「うう、…リモコンとれない」

犬「だらしねーな。ほい」

女「ありがといりんご」

犬「うむ」

女「はあ…」

犬「…」ｼﾞｰ

犬「なあなあ」ｸｲｸｲ

女「んー？」

犬「俺にもお腹の中の音、きかせて」

女「お腹さわりたいの？いいよ」

犬「…」ﾋﾟﾄｯ

「…」

犬「わかんない」

女「えへへ、わかんないよね」

犬「…」ｼﾞｰ

女「まだ性別もわかんないんだー」

犬「うむ。…男だったら俺の弟で、女だったら俺の妹だな」

女「りんごはお兄ちゃんだねえ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「立派な兄になるぜ」

女「ふんふーん」ｶﾁｬｶﾁｬ

「そんでね、僕…」

犬「全く最近のまっちゃんはキレがないな」

ガシャン！！！

犬「！」ﾊﾞｯ

女「あ、う…ぁううう…」

犬「どうした！どうした！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

女「い、だ…い。うぁ…」

犬「痛いのか！きゅうきゅうしゃ呼ばなきゃ！！！」

女「ひ、…う、…」

犬「待ってろ！！！！俺が呼ぶ！！！」ﾀﾞｯ

犬「おとなり！！！！おとなり！！！！」ｷﾞｬﾝｷﾞｬﾝ


ｷﾞｬﾝｷﾞｬﾝ！！！！

おばさん「なにかしら、りんごが吠えてる…」

おばさん「…何かあったのかしら」

ピンポーン

女「あ、う…」

「山下さーん？何かあったのー？」

女「せ、瀬戸さん…。あ、…っ。救急車。…よんで…。破水、してます…」

犬「おばちゃん！はやくしてー！！！！」ｷｬﾝｷｬﾝ

犬「飼い主帰ってこないなー」

犬「まったく、どこ行ってんだか」

ガチャ

女「りんご、ただいま」

犬「！かいぬし！！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

犬「ん？嗅いだことない匂い」ﾌﾝﾌﾝ

女「りんご、ほら」

赤ちゃん「…」ｽﾔｽﾔ

犬「…」

女「りんごの妹だよ」

犬「…」ﾁﾗ

赤ちゃん「…」

犬「…」ﾁﾗ

女「かわいいでしょ」

犬「…」ﾁﾗ

赤ちゃん「…」ﾓｿﾞ

犬「かぁいい…」ﾆﾍｰ

夫「ただいま、あんずー」

犬「！ばうばう！」

夫「うわなんだ」

女「手を洗ってきなさいってことよ」

夫「な、なるほど…」

犬「種馬のくせにしっかりしろよ」


赤ちゃん「うー…あう…」

犬「いいか、まず重心を低くして勢いをつけるんだ」

赤ちゃん「あー…」

犬「いいぞあんず。一気にごろんだ」

赤ちゃん「うー…」

犬「ちょっとだけ俺が手伝ってやるよ」ﾁｮﾝ

赤ちゃん「！」ｺﾞﾛﾝ

犬「おお！できたじゃないか！偉いぞあんず！！」

犬「かいぬしー！あんずがゴロンできたぞー！！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ

子「…」ﾋﾟｺﾋﾟｺ

犬「そっち行ったら危ないぞ、あんず」

子「りんご！」

犬「だーめ」

子「ううー」

犬「だめなもんはだめ」

女「りんご、一気にお兄ちゃんらしくなったね」

犬「へへん」

女「頼もしいな」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

犬「任せろ」


子「…」ｽｩｽｩ

犬「…」ｽﾋﾟｮｰ

女「あなた、見て」

夫「ん？…あはは」

女「同じ格好で寝てる…」

夫「可愛い…」

女「写メっとこ」ﾊﾟｼｬ

夫「俺にも転送して」

子「…」

女「大丈夫よ、小学校は楽しいところだから」

子「うん…」

女「ママやパパがいなくても、お友達いっぱいいるから」

子「…りんごは？」

犬「俺はもうこどもじゃないぞ」

子「りんごもいくの！」

犬「いかねっつの」

女「…」

犬「おい、いくぞ」ｸﾞｲ

女「…りんご、…まって」

犬「甘やかしちゃだめだ。あいつはお前の助けを借りないで学校に行かなきゃ」

女「…りんご。わかった、帰る」

子「ママ、りんご…」

女「じゃあね。またむかえにくるから」

犬「しっかりやれよ、あんず」

女「…」

ヒラヒラ

犬「くしゅん」

犬「おお、桜だ」

女「ねえ、りんご」

犬「んー？」

女「あなたを初めて見たのも、１０年前の春だったね」

犬「そうだったけ」

女「もうあなた、１０歳なんだ。私よりずっと年上だ」

犬「まあな」

女「…」

犬「色々あったな、おれたち」

女「色々あったね、私たち」

犬「楽しかったな、毎日」

女「楽しかったね、毎日」

犬「これからもきっと楽しいぞ」

女「これからもきっと楽しいよね」

犬「そうだ」

女「そうよね」

女「…」

犬「女」ｸｲｸｲ

女「ん？」

犬「俺のことばは、きっと人間には分からないだろう」

女「りんご？」

犬「俺はいつもいつもお前にたくさんお話してきた」

犬「けれど、きっとお前にその半分も伝わってない」

犬「それでもいいんだ、俺は。言葉が分からなくったって、お前は俺のこと分かってくれるから」

女「…」

犬「女」

犬「お前は、あのへにゃへにゃした男とケッコンして、あんずまで産んじゃったけど」

犬「それでも俺は、まだお前のことが大好きなんだぜ」

女「…」

犬「ずっとずうっと、大好きなんだぜ」

犬「それにお前のダンナも、あんずも、オトンとオカンも大好きなんだぜ」

女「…」

犬「なあ、女」

犬「俺たち、ずうっと一緒にいような」

女「…りんご」

犬「ん？」


女「うん！」


おしまい

明日わんこの散歩にいこう…

乙