1: 2016/08/24(水) 15:51:04.91 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
(生徒会長たる者、常に生徒の悩みに耳を傾け、適切な助言ができるように努めるべきです)

ダイヤ
(そう、たとえその生徒が)

鞠莉
「ダイヤ、いるー? いるよね、おじゃましまーす」

ダイヤ
(理事長であったとしても)

鞠莉
「シャイニー☆」

ダイヤ
「シャイニー☆」

2: 2016/08/24(水) 15:52:01.15 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「うえーん、ダイヤー」

ダイヤ
「どうしたのですか、鞠莉さん」

鞠莉
「ちょっと私のプライベートなナヤミゴトを聞いてくれる?」

ダイヤ
「ふふふ、何でも聞きますよ。私でよければ」

鞠莉
「きゃー、ダイヤ大好きよ! ぎゅー!」

ダイヤ
「ちょっと鞠莉さん、生徒会室でいきなり抱きつかないでください! 人が来たら大変なことになっちゃいますよ!」

3: 2016/08/24(水) 15:52:28.11 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「人が来なければいいの?」

ダイヤ
「そういう問題ではありません」

鞠莉
「じゃあもっとハグする」

ダイヤ
「ハグもいいですけど、今問題になってるのはあなたの悩みでしょ」

鞠莉
「そうそう、まさに私が悩んでるのは、なかなか思いどおりにハグできないということなんだけど……」

ダイヤ
「どの口が言っているのですか」

4: 2016/08/24(水) 15:54:22.15 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「でもねダイヤ、あのガンコオヤジは、私のハグしたいという気持ちに応えてくれないのよ」

ダイヤ
「……果南のことですか」

鞠莉
「そうなの。この前なんてね、私がせっかく腕を広げて待ってるのに、その脇を素通りして行ったのよ」

ダイヤ
「そんなことがあったのですか」

鞠莉
「素通りすること、流しソーメンの如しよ」

ダイヤ
「それは残念だと思いますけど……でも仕方のないことかもしれませんよ。果南には果南の思いがあるのです」

鞠莉
「でも私にも私の思いがあるのです」

ダイヤ
「ままならないものですね、人間関係というのは」

鞠莉
「もー、私が聞きたいのは、そーゆー達観した言葉じゃないの。もっと具体的なアドバイスをちょうだい!」

5: 2016/08/24(水) 15:56:20.16 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「そうですね……思うに、鞠莉さんのほうがハグのポーズをしていると、ちょっとそこに飛び込むのが躊躇われるのかもしれません」

鞠莉
「どーゆーこと?」

ダイヤ
「例えば、夏になるとラーメン屋さんは『冷やし中華はじめました』という張り紙を出しますよね」

鞠莉
「オーイエー! 日本の夏の風物詩だよね!」

ダイヤ
「美味しいですよね、冷やし中華」

鞠莉
「うんうん、分かるよー。あの具材とスープが織りなすカオスが逆にハーモニーで、ついつい食べたくなるよね」

ダイヤ
「でも仮に、張り紙に『冷やし中華はじめたぜ!ぜったい食べてくれよな!』と書いてあったら、どうですか」

鞠莉
「うーん、ちょっと押しつけられてる気がして、ついほかのメニューを選んじゃうかも」

ダイヤ
「それと同じことです。『いつでもハグしていいよ、ヘイカモーン』という態度をとっていると、ついほかの選択肢を選んでしまうヒネクレ者もいるのです」

鞠莉
「ふーむ、人の心というのは、むずかしいものなんだね」

6: 2016/08/24(水) 15:56:59.23 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「今の果南は、なかなか自分の気持ちに素直になれずにいます」

鞠莉
「そうなんだよ、ほんとは、果南だってもう一度スコーアイドルにチャレンジしてみたいはずだよ」

ダイヤ
「いわば、ほんとは冷やし中華が食べたいのに、素直にそれが言えずに迷っている状況にあるわけです」

鞠莉
「アーハーン」

ダイヤ
「そんなときに、店主の鞠莉さんがやって来て『ヘイラッシャイ、冷やし中華はじめたぜ!ぜったい食べてくれよな!』と言ったら、どうなりますか」

鞠莉
「ほんとは食べたいのに、何だか私の強引なセールスに屈したみたいになって、ついついワカメラーメンを選んでしまうかも」

ダイヤ
「ほんとは冷やし中華が食べたくて食べたくて仕方がないのに」

鞠莉
「誰にも負けないくらい、冷やし中華が好きなのに」

ダイヤ
「それなのに、ワケワカメな使命感に支えられて、ひたすらワカメラーメンを注文しつづける果南」

鞠莉
「かわいそうな果南、マジでワケワカメだよ……」

7: 2016/08/24(水) 15:57:50.21 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「というわけで、今の果南には、そういうヘイラッシャイ的な態度は逆効果だと思うのです」

鞠莉
「もっとさりげなく振る舞うべきだということね」

ダイヤ
「そうです。強引に引き入れてはいけないのです」

鞠莉
「でも、求められればいつでも受け入れる準備をしておく、というわけね」

ダイヤ
「できそうですか? 大変だとは思いますが……」

鞠莉
「オーイエー、やってみるよ!」

10: 2016/08/24(水) 15:58:45.48 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「わたくしも陰ながら応援していますよ」

鞠莉
「ありがとうダイヤ! 嬉しいからもっとハグしちゃう! ぎゅー!」

ダイヤ
(どうか果南も、早くこのヘヴンに来られますように……)

鞠莉
「それじゃあ私、さっそく果南のところに行ってくるね! もう夕方だからダイビングショップも閉まるころだろうし」

ダイヤ
(ヘヴン)

11: 2016/08/24(水) 16:00:16.43 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「ちょっとダイヤ、大丈夫?」

ダイヤ
「……ハッ、すみません、つい極楽の境地にイッておりました」

鞠莉
「それでは、行ってきまーす」

ダイヤ
「シャイニー☆」

鞠莉
「シャイニー☆」

ダイヤ
(鞠莉さん、ほんとうに果南のことを大事に想っているのですね)

12: 2016/08/24(水) 16:02:21.57 ID:806dNAPT.net
――――――

数分後

電話
『かしこいかわいいエリーチカ! かしこいかわいいエリーチカ! かしこいかわいい……』

ダイヤ
「あら、電話の着信音が鳴ってる……果南からですわ」

果南
『シャイニー☆』

ダイヤ
「シャイニー☆」

16: 2016/08/24(水) 16:04:27.76 ID:806dNAPT.net
果南
『……ダイヤ、今ちょっといいかな?』

ダイヤ
「ええ、もちろんですわ。どうしたのですか?」

果南
『このまえ、鞠莉にひどいことをしちゃったんだ』

ダイヤ
「ひどいこと?」

果南
『鞠莉が私のことを抱き止めようとしてくれたのに、私は鞠莉の脇を素通りしてしまったんだ』

ダイヤ
(鞠莉さんの言っていたとおりですわ……果南も気にしているのね)

果南
『素通りすること、流しソーメンの如しだったんだ』

ダイヤ
「……大丈夫ですよ、鞠莉さんはそんなことくらいであなたのことを嫌いになったりしませんから」

17: 2016/08/24(水) 16:08:22.94 ID:806dNAPT.net
果南
『でも私、きっと鞠莉のことを傷つけちゃったと思うんだ』

ダイヤ
「それなら、今度は自分から鞠莉さんの胸に飛び込んでいったらどうですか?」

果南
『鞠莉は私のことを受け入れてくれるかな?』

ダイヤ
「ふふふ、喜んで受け入れてくれるに決まってるじゃないですか。

果南
『どうしてダイヤは、そう思うの?』

ダイヤ
「鞠莉さんがあなたのことを、とっても大事に想ってるからですよ」

果南
『……』

ダイヤ
「果南だって、もう気づいているのでしょう?」

18: 2016/08/24(水) 16:09:34.15 ID:806dNAPT.net
果南
『でも、私は鞠莉の重荷にはなりたくない。鞠莉は普段はチャラチャラしたふりをしてるけど、ほんとはものすごく責任感が強いから……』

ダイヤ
「それなら、果南は、どうするつもりなのですか」

果南
『鞠莉に私を背負わせるのではなく、私に鞠莉を背負わせてほしい』

ダイヤ
「果南……」

果南
『鞠莉に私をハグさせるのではなく、私が鞠莉をハグしたい。そう、あのころのように……』

19: 2016/08/24(水) 16:10:34.40 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「ではあなたが鞠莉に向かって腕を広げるのですね」

果南
『いや、それはちょっと押し付けがましいと思うんだ。たとえて言うなら、ちょうど冷やし中華を……』

ダイヤ
「あ、冷やし中華の話はよく分かりますから、省略してもらっても大丈夫ですよ」

果南
「ん、そうなの? まあそれなら話は早いね」

ダイヤ
「どうするつもりなのですか?」

果南
「鞠莉を強引に引き入れることはしないけど、求められればいつでも受け入れる準備をしておく」

ダイヤ
(どこかで聞いたことがある態度ですわね)

20: 2016/08/24(水) 16:11:13.36 ID:806dNAPT.net
果南
『『ハグしたいの? いいよ、おいで』という気持ちは、言葉で伝えたらうまくいかないこともあるんだ』

ダイヤ
「まあ、それはそうかもしれませんけど」

果南
『そういうわけだから、ダイヤからも鞠莉にさりげなく……おっと、誰か来たみたいだ。それではまたね』

ダイヤ
「あ、たぶん来たのは鞠莉さんだと思いますから、ちょっと待って……ああ、電話、切れちゃいました」

21: 2016/08/24(水) 16:12:03.81 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
(さて、困りました。いったん状況を整理してみましょう)

ダイヤ
(1:鞠莉さんは果南が好き)

ダイヤ
(2:果南も鞠莉さんが好き)

ダイヤ
(3:鞠莉さんは果南をハグしたい)

ダイヤ
(4:果南も鞠莉さんをハグしたい)

ダイヤ
(5:でも鞠莉さんは果南に自分から『ハグしたいの? いいよ、おいで』とは言えない)

ダイヤ
(6:でも果南も鞠莉さんに自分から『ハグしたいの? いいよ、おいで』とは言えない)

ダイヤ
(1~6より導かれる結論は……)

ダイヤ
(ヘヴン)

ダイヤ
(胸がキュンキュンしますわ)

22: 2016/08/24(水) 16:14:14.21 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
(しかし、海のように深い包容力をもった二人が対面して、それにもかかわらず抱擁されるものがないとすれば、何か大変なことが起こるかもしれません)

ダイヤ
(無限の引力をもった者どうしが接近するわけですから、あたらしい宇宙の一つや二つが出来てもおかしくはありません)

ダイヤ
(女性同士の恋愛によって発生する麗しき引力……これはニュートンもびっくりの大発見ですわ)

ダイヤ
(この無限の引力を「レO引力」と名付け、レO引力をもった二物体間に生み出される宇宙を「レO宇宙」と名付けましょう)

ダイヤ
(レO宇宙……よくわかりませんが、きっとものすごいヘヴンに違いありません)

23: 2016/08/24(水) 16:15:02.12 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
(とはいえ、私たち、輝きたいですけど、さすがに新しいユニバースを創造したいとまでは思いません)

ダイヤ
(レO宇宙などというものが創造されたら、たいへんなことが起こるに違いありません)

ダイヤ
(かつて隕石の衝突によって恐竜が絶滅したように、世の男性の方々が絶滅してもおかしくはありません)

ダイヤ
(大変ですわ! カタストロフを避けるために、すぐに私も二人のもとへ行かなければ)

ダイヤ
(それにつけても……)

ダイヤ
(胸がキュンキュンしますわ)

30: 2016/08/24(水) 19:37:42.32 ID:806dNAPT.net
――――――

そのころ、ダイビングショップ


果南
「お客さんかな? すみません、今日はもう閉店で……」

鞠莉
「シャイニー☆」

果南
「シャイニー☆」

鞠莉
「果南……また、会いに来たよ」

果南
「鞠莉……このまえ私にあんなことされたのに、どうしてまだ会いに来てくれるの?」

鞠莉
「それはもちろん、私が果南のストーカーだからだよ」

果南
「……」

鞠莉
「果南だって分かっているでしょう? 私の気持ち」

果南
「……ちょっと潮風に当たりに行こっか」

31: 2016/08/24(水) 19:38:16.61 ID:806dNAPT.net
――――――

その後、桟橋にて

鞠莉
「……」

果南
「……」

鞠莉
(この沈黙……ちょっと気まずいよ。ここは私のシャイニーなアメリカンジョークを)

果南
(この沈黙……ちょっと気まずいな。ここは私のとっておきのダイビングジョークを)

鞠莉
「あのね、果南」

果南
「あのね、鞠莉」

鞠莉
「あ……果南、先に言っていいよ」

果南
「あ……いや、鞠莉に先に言ってほしいな」

32: 2016/08/24(水) 19:40:14.55 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「あ、う……これは私がアメリカで聞いたホントのようなウソの話なんだけどね」

果南
「ウソなのかよ!」

鞠莉
「あちらのひとって、ワカメラーメンをあんまり食べないのよね」

果南
「へー、そうなんだ、たしかにあっちの人って、ワカメが苦手なんだよね」

鞠莉
「どうして食べないか分かる?」

果南
「いや、分からないな。ワカメ、あんなにおいしいのに」

鞠莉
「『ふえるワカメ』に恐怖を感じているのよ」

果南
「まあ、たしかに初めて見た人はビックリするかもね。『え? これだけの量でドンブリ一杯になるの?』って」

鞠莉
「だからアメリカの物理学者が、こう言ったの。『これは質量保存の法則を無視している!』」

果南
「ふむ」

鞠莉
「『ワケワカメだ!』って」

果南
「えーと……これがオチでいいの?」

鞠莉
「HAHAHA!」

33: 2016/08/24(水) 19:40:53.22 ID:806dNAPT.net
果南
「ちなみに、その物理学者はどうなったの?」

鞠莉
「自らの身体の質量を保存するために、以来、ワカメラーメンを食べるのをやめたそうよ」

果南
「そのこころは?」

鞠莉
「無理してワカメラーメンを食べる必要はもうないんだよ、ということだね」

果南
「でも私は好きだよ、ワカメラーメン」

鞠莉
「もっと好きなものはないの? 何でも好きなメニューを注文していいんだよ?」

34: 2016/08/24(水) 19:41:52.31 ID:806dNAPT.net
果南
「そこまで言うなら教えてよ、店主さんのおすすめメニューを」

鞠莉
「果南が自分で選ぶのを待ってるんだよ」

果南
「……」

鞠莉
「もう気づいてるんでしょ? 注文してよ」

果南
「……」

鞠莉
「果南の頼みなら何でも聞くよ? だから、いっしょに作ろうよ……あのころみたいに、みんなで」

果南
「ワカメ」

鞠莉
「え?」

果南
「ワカメラーメンください。ワカメめっちゃ好きなんです」

鞠莉
「もー、果南の分からず屋!」
(「ふえるワカメ」の袋を投げつける)

35: 2016/08/24(水) 19:43:57.13 ID:806dNAPT.net
果南
「そういえば、私もダイビングショップで働いているときに、ホントのようなウソの体験をしたんだ」

鞠莉
「ウソなのかよ!」

果南
「カクレクマノミっていう魚、いるでしょ」

鞠莉
「うん、知ってるよ! イソギンチャクに隠れてる、オレンジと白の縞模様のキュートな魚だよね!」

果南
「そうだね。あのカクレクマノミ、どうやって求愛行動をするか分かる?」

鞠莉
「うーん……想像つかないな。ふえるワカメを投げつけたりするのかな?」

果南
「震えるんだよ。ときどき、ぶるっと体を震わせるんだ」

鞠莉
「へー、面白いね!」

36: 2016/08/24(水) 19:44:56.02 ID:806dNAPT.net
果南
「そうやって、パートナーが来てくれるのを待ってるんだよ。『ハグしたいの? いいよ、おいで』って、全身で伝えてるんだ」

鞠莉
「言葉にしなくてもジェスチャーで伝わるなんて、とっともワンダホーだね」

果南
「そんな話を二人連れのお客さんにしてたらね、お客さんのうちの一方が、急に体をぶるぶるさせはじめたんだよ」

鞠莉
「えーと……今のがオチでいいの?」

果南
「HAHAHA!」

鞠莉
「あのね果南、そういう作り話は大概に……ちょっと果南、どうして急に震えだしたの!?」

果南
「さあ、潮風に当たったせいかな」ブルブル

37: 2016/08/24(水) 19:45:26.31 ID:806dNAPT.net
――――――

そのころ、桟橋付近

ダイヤ
(いた! 桟橋の上で鞠莉さんと果南が話をしています!)

ダイヤ
(ああ……ここからも感じます、強力なレO引力を)

ダイヤ
(しかし、両者のレO引力は拮抗している)

ダイヤ
(このまま膠着状態が続いたまま、両者のレO引力が無限に増大したら大変なことになります)

ダイヤ
(時間はあまり残されていません……どうか間に合いますように)

38: 2016/08/24(水) 19:46:30.48 ID:806dNAPT.net
――――――

そのころ、桟橋

鞠莉
「ご注文は」

果南
「ワカメラーメン」

鞠莉
「ご注文は!」
(『ふえるワカメ』の袋を果南に投げつける)

果南
「ワカメラーメン!」
(ブルブルと震える)

鞠莉
「ご注文は!」

果南
「ワカメラーメン!」ブルブル

ダイヤ
「鞠莉さん、果南、落ち着いて話を……ていうか、何してるんですか!」

39: 2016/08/24(水) 19:47:06.46 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「ご注文は!」

果南
「ワカメラーメン!」ブルブル

ダイヤ
(何がどうしてこうなったのか見当もつきませんが、ひとつだけ分かることがあります)

鞠莉
「ご注文は!」

果南
「ワカメラーメン!」ブルブル

ダイヤ
(これが世に言うところの、修羅場ですのね) 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)

40: 2016/08/24(水) 19:47:57.19 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「……」

ダイヤ
(あ、鞠莉さんの手が止まった……おそらく用意していた「ふえるワカメ」が尽きたのですね)

果南
「……」ブルブル

ダイヤ
(果南さんは相変わらず震えていますわ。これは恐怖か、はたまた、内に秘めた想いを伝えるためなのか……)

鞠莉
「……」ブルブル

ダイヤ
(あ、鞠莉さんも震えはじめましたわ! これは怒りか、はたまた、内に秘めた想いを伝えるためなのか……)

41: 2016/08/24(水) 19:48:25.59 ID:806dNAPT.net
果南
「……」ブルブル

鞠莉
「……」ブルブル

ダイヤ
(震えていますわ、二人とも。決して腕を伸ばして『ハグしたいの? いいよ、おいで』と言葉で伝えることなく)

42: 2016/08/24(水) 19:49:03.37 ID:806dNAPT.net
果南
「……」ブルブル

鞠莉
「……」ブルブル

ダイヤ
(これは一体……)

梨子
「ついに始まったのですね、レO共鳴が」

ダイヤ
「梨子さん! どうしてここに?」

43: 2016/08/24(水) 19:51:10.77 ID:806dNAPT.net
梨子
「強力なレO波動を感じたので、部活を中断して見学に来たのです。ちなみに千歌ちゃんと曜ちゃんを引率して来ました」

千歌
「こんにちは、ダイヤさん」


「こんにちは、ダイヤさん」

ダイヤ
「はい、こんにちは。……あら、今日は一年生は一緒じゃないのですか?」

梨子
「はい。三人にはまだちょっと早いオトナの世界ですので」

ダイヤ
「確かにそうですね……ところで梨子さん、さっき仰っていたレO波動というのは何ですか?」

梨子
「無限大のレO引力をもったお嬢さん同士の接近によって周囲に発せられる波動です」

ダイヤ
「何と! レO引力にはそんな効果があったのですか」

梨子
「ダイヤさん、レO引力の存在をご自分で突き止めたのですね。流石の知力とレO力です」

千歌
(何言ってんだこいつら)

44: 2016/08/24(水) 19:54:21.80 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「それにしても梨子さん、あなたはずいぶんレO物理学に詳しいのですね」

梨子
「何を隠そう、私は音ノ木坂学院でレO物理学を修めてきたのです」

ダイヤ
「そうだったのですか。ところで先生、レO共鳴というのは何ですか?」

梨子
「レO波動を発するお嬢さんどうしの心がぴったり重なっているときに生じる現象です。ここテストに出ますよ」

ダイヤ
「勉強になりますわ」メモメモ

梨子
「しかしこれほど完全なレO共鳴を実際に見るのは、私も初めてです」

ダイヤ
「完全なレO共鳴が続くと、どうなるのですか?」

梨子
「レO引力の増加率がますます上昇し、おそらく数分後には時空の歪みが生じて新たなレO宇宙が誕生するでしょう」

ダイヤ
「そんな……」

梨子
「私たち理論レO物理学者は、これをレO・ビッグバンと名付けて仮定してきました。まさかそれを観察する日が来るとは思いませんでしたけど」


(何言ってんだこいつら)

45: 2016/08/24(水) 19:56:21.93 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「先生、レO・ビッグバンを防ぐにはどうすればよいのですか!?」

梨子
「レO引力の発生源である二人のお嬢さん……目下の場合はもちろん鞠莉さんと果南さんが、ハグをすればいいのです」

ダイヤ
「なぜそれによってレO・ビッグバンを回避できるのですか?」

梨子
「二人は幸せなハグをして終了。これがハッピーエンドの鉄則です」

ダイヤ
「なるほど。先生のお話は、いつも説得力がありますわ」

梨子
「しかし、現状は危険かもしれません」

ダイヤ
「なぜですか?」

梨子
「これほどまでに包容力がある二人がずっとハグしないままにエネルギーを貯め込んでいるからです」

ダイヤ
「つまり、このままの状態で二人が直接触れ合うと、レO爆発が起こる可能性があるということですね」

梨子
「そのとおりです」

千歌
(何言ってんだこいつら)

46: 2016/08/24(水) 19:58:06.75 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「先生、もし二人のあいだに緩衝材が挟まれば、レO爆発は防げるでしょうか」

梨子
「ええ、おそらくは……まさかダイヤさん、あなたが緩衝材に!?」

ダイヤ
「二人を見守ってきた私には、二人が幸せなハグをしてハッピーエンドを迎えるまで見届ける義務があるのです」

梨子
「しかし、これほどまでに強力なレO引力に近づくのは、常人には危険……あ、でもダイヤさんならいけるかも」

ダイヤ
「梨子さん……あとのこと、よろしくお願いします」

梨子
「ダイヤさあああん!」


(何やってんだこいつら)

47: 2016/08/24(水) 19:58:57.43 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
(鞠莉さん、果南……ごめんなさい。わたくしは、二人の葛藤を見守ることしかできませんでした)

ダイヤ
(生徒会長として、二人の帰る場所を……浦の星女学院を守り続けることが、わたくしにできる精一杯のことでした)

ダイヤ
(そんなわたくしなりに、二人の話を訊いていて、ひとつ分かったことがあります)

ダイヤ
(ねえ鞠莉さん、果南さん、あなたたちは結局、優しすぎたのです)

ダイヤ
(傷つけるのが怖くて、相手に自分の要求を押し付けることができなくて、ただ相手を受け入れるために待つことしかできなかったのですね)

48: 2016/08/24(水) 19:59:41.26 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
(あの日から二年近く……長い待ちぼうけでしたね)

果南
「……」ブルブル

鞠莉
「……」ブルブル

ダイヤ
(待ってるあいだに、ずいぶん引力も強くなりましたね)

49: 2016/08/24(水) 20:00:11.98 ID:806dNAPT.net
果南
「……」ブルブル

鞠莉
「……」ブルブル

ダイヤ
(貯め込んだ力を解放すべき場所、私は知っていますよ)

50: 2016/08/24(水) 20:01:16.91 ID:806dNAPT.net
果南
「……」ブルブル

鞠莉
「……」ブルブル

ダイヤ
「ねえ果南、鞠莉さんが折角ふえるワカメをくれたんだから、おいしくいただきましょうよ」

果南
「ダイヤ! でも、ふえるワカメを戻すには……」

ダイヤ
「何が要るのですか?」

果南
「水が要るよ」

ダイヤ
「鞠莉さん、今の果南の注文、聞きましたか?」

鞠莉
「ふふふ」

果南
「どうしたの、鞠莉?」

鞠莉
「英語で言ってもらわないと、ヨクワカリマセーン」

51: 2016/08/24(水) 20:04:00.73 ID:806dNAPT.net
果南
「……アクア」

鞠莉
「やっと教えてくれたね、果南の願い」

果南
「鞠莉……」

鞠莉
「ほら果南、ワカメもってきて。千歌ちゃん達に頼んで一緒に入れてもらおうよ、アクアに」

ダイヤ
「わたくしも仲間に入れてくださいますか?」

鞠莉
「当たりまえでしょ……今までごめんね、ダイヤ」

果南
「ダイヤ、待たせてごめんね。一人で頑張ってきて……大変だったでしょ?」

ダイヤ
「謝ることなんかないですよ。わたくし、ずっと、二人とこうしたかったんですから」

52: 2016/08/24(水) 20:04:33.38 ID:806dNAPT.net
鞠莉
「ぎゅー!」

果南
「ぎゅー!」

ダイヤ
(ヘヴン)

53: 2016/08/24(水) 20:07:11.30 ID:806dNAPT.net
こうして三人は、ふえるワカメを手土産にして、千歌ちゃん達にお願いしてアクアに入れてもらった。
嬉しさのあまり、ハグしたまま千歌ちゃん達のところに行ったのは、恥ずかしいから一年生には内緒だ!

鞠莉
「千歌ちゃーん、私たち三人を、まとめてAqoursに入れてくれますか?」

千歌
「もちろんですよ! ありがとうございます、鞠莉さん!」

果南
「それからこのふえるワカメは、aquaに入れて下さい!」

千歌
「うん、ありがとう果南ちゃん! 冷やし中華に入れて、みんなで食べようね!」

ダイヤ
(ヘヴン)

千歌
「ところで二人のハグに挟まれて、ダイヤさんがレO宇宙にイッてしまっているみたいですけど」

梨子
「ダイヤさん……あなたの素晴らしい活躍は、論文(同人誌)にして理論レO物理学会(即売会)にて発表します」


「ダイヤさん、ヨーソロー戻ってきてください」

54: 2016/08/24(水) 20:08:43.31 ID:806dNAPT.net
こうしてダイヤさんの活躍により、レO・ビッグバンは事前に防止された!
内浦の、そして宇宙の平和は守られた!
ありがとうダイヤさん! 
それゆけ、Aqoursのみんな!

55: 2016/08/24(水) 20:09:40.66 ID:806dNAPT.net
ダイヤ
「はっ、わたくし、いったい……」

鞠莉
「シャイニー☆」

果南
「シャイニー☆」

ダイヤ
「シャイニー☆」


「わー、すごいよ、三年生のみんな、とっても輝いてる!」

梨子
「この光の発生源は、何て名付けたらいいのかな」

千歌
「ふふふ、私、知ってるよ。友情って言うんだよ」

56: 2016/08/24(水) 20:10:15.07 ID:806dNAPT.net

57: 2016/08/24(水) 20:18:36.87 ID:nACAF/3S.net
_人人人人人_
>映画化決定<
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y ̄

58: 2016/08/24(水) 20:19:49.83 ID:0Kqjbwup.net

感動した

引用: ダイヤさんと一緒に引力について学ぶSS