1:◆eltIyP8eDQ 2017/12/29(金) 22:28:49.39 ID:3UUVGVQ/0



濁流が、少女を乗っている戦車ごと押し流そうとしてくる


冷たい水が、命を奪っていくのを少女は肌で感じる




「やめてっ!!離してっ!!」

「やめません、離しません」



ガールズ&パンツァー フェイズ エリカ 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

2: 2017/12/29(金) 22:30:01.00 ID:3UUVGVQ/0




流されていた戦車は浅瀬にか、あるいは突き出た岩にでも引っかかったのか、車体全部を水に沈めながらもキューポラから上体を出すことで少女は辛うじて息ができていた。

だが、それも長くは持たないだろう。戦車の川への抵抗は少しずつ弱くなっていく







「っ…あなたまで流されるわよっ!?」

「大丈夫です、エリカさん。あなたは絶対に助けますから」








3: 2017/12/29(金) 22:31:48.80 ID:3UUVGVQ/0


エリカと呼ばれた少女―――その眼前にいる栗毛の少女は、片手で必氏に車体を掴みながらも、もう片方の手で水に沈むエリカの手を握りしめていた

荒れ狂う濁流は少女たちを、繋いだ腕ごと引き裂こうと言わんばかりに容赦なく襲い掛かってくる

このままじゃ共倒れだと、私を見捨てて。と、エリカが何度叫ぼうとも栗毛の少女はその手を緩めず、必氏にエリカを引き上げようとしていた









「このままじゃっ、あなたまでっ!!」









4: 2017/12/29(金) 22:33:06.11 ID:3UUVGVQ/0




エリカの体が、戦車の抵抗が無くなっていくのを感じ取る






「――――逃げて!!お願い私のことなんかっ!!」

「エリカさん。大丈夫だから」

「なんで!?―――も氏んじゃうっ!?」







5: 2017/12/29(金) 22:33:45.36 ID:3UUVGVQ/0







大丈夫。その言葉にどれほどの説得力があるのか、それはきっと栗毛の少女自身が感じているだろう。

そして、とうとう車体の抵抗がなくなる。

重い車体がゆっくりと押し流されていく









6: 2017/12/29(金) 22:34:45.41 ID:3UUVGVQ/0


「っ!!」


それを感じ取った栗毛の少女は、一層強くエリカの手を握りしめる



「どうして……どうして離してくれないの……?お願いっお願いだから……」



エリカは必氏で懇願する。もはや自身の命よりも、目の前の少女の命が自身のせいで散ることを恐れていた



「お願い……あなたまで巻き込みたくないのよ」




7: 2017/12/29(金) 22:35:43.91 ID:3UUVGVQ/0





「エリカさん」




体力を冷水に奪われ、もはやつぶやくような声しか出なくなったエリカに

栗毛の少女はそっと顔を近づけ―――――








「絶対にあなたを氏なせたりしない。だって――――」








8: 2017/12/29(金) 22:36:13.22 ID:3UUVGVQ/0









「私は、あなたに救われたから」












9: 2017/12/29(金) 22:36:47.42 ID:3UUVGVQ/0







微笑んだ







10: 2017/12/29(金) 22:43:38.04 ID:3UUVGVQ/0




キーンコーンカーンコーン


エリカ「……」

沙織「ヘイ彼女!一緒にお昼どう?」

エリカ「……?」

華「突然すみません。よろしければ一緒にお食事できたら、と」

エリカ「……遠慮しとくわ。食事は一人で摂る主義なの」ガタッ

華「あっ……」

沙織「フラれちゃったぁ~」

華「やはり、いきなり声をかけたのがまずかったのでは……」

11: 2017/12/29(金) 22:48:28.05 ID:3UUVGVQ/0





ガヤガヤワイワイ




エリカ「……」モグモグ

沙織「華―!ここ空いてるよー!」

華「沙織さん、待ってくださ……あら?」

エリカ「あなた達……」

沙織「アレー?逸見さんじゃん。奇遇ダネー」

華「沙織さんったら……」

沙織「ねぇ、ここ座っても良い?」

エリカ「別に、私の場所じゃないから……勝手にすれば?」

沙織「やったぁ♪」

華「それでしたら、失礼します」

沙織「あっ逸見さんそれハンバーグ定食?お目が高いね!それ、ここの人気メニューなんだよ?」

華「私もよく頂いています」

エリカ「……ええ、たしかに美味しいわね」

沙織「……あのさっ!私達前から逸見さんのこと気になってたのっ!」

エリカ「……は?」

沙織「逸見さん綺麗で、佇まいもなんか凛としててクールな感じでさ。ついつい目が向いちゃってたんだ」

エリカ「……そう」

12: 2017/12/29(金) 22:50:13.41 ID:3UUVGVQ/0
沙織「それにこの髪!!雪みたいに綺麗で……おとぎ話の住民みたい!!」

エリカ「……ま、まぁ、それなりにケアには気を使ってるわね。……私の、自慢だから」

沙織「あっ!やっと笑ってくれた―!」

華「可愛い笑顔ですね」

エリカ「か、からかわないで!」

沙織「ふふっ、最初断られたときは駄目かなーって思ったけど頑張ってよかった」

華「はい。逸見さん、よろしければ私達と友達になってもらえませんか?」

エリカ「……武部さんに五十鈴さんだったっけ?私と友だちになっても良いこと無いわよ?」

沙織「友達ってそういうものじゃないでしょ?……ってあれ?私達の名前知ってるの?」

エリカ「一応、クラスメイトのフルネームぐらいは把握してるわよ……昔の癖でね」

13: 2017/12/29(金) 22:58:23.12 ID:3UUVGVQ/0
沙織「へぇー、逸見さん自分以外の人間に、っていうか人類に興味ないって感じだったのに」

エリカ「ケンカなら買うわよ?」

華「沙織さん、いきなりケンカを吹っかけるだなんてやりますね」

沙織「ちょっ!?違うから!?な、なんていうか、どこか浮世離れしてる感があったっていうかー」

華「たしかに、どこか近寄りがたい雰囲気はありましたね」

エリカ「……はぁ。良いわよ」

沙織「え?」

14: 2017/12/29(金) 23:04:08.75 ID:3UUVGVQ/0
エリカ「友達。なってあげるわよ……一人なのもいい加減退屈だし」

沙織「やっったぁー!!よろしくね、エリカ!!」

エリカ「い、いきなりね……」

沙織「改めて、私は武部沙織!」

華「五十鈴華と申します。エリカさんも、私達のことは名前で呼んでください」

エリカ「……沙織、華、よろしくね。……これでいい?」

沙織「うんうん!!よろしくね♪」

華「よろしくお願いします」

15: 2017/12/29(金) 23:09:42.23 ID:3UUVGVQ/0





沙織「今日帰りにお茶してかない?」

エリカ「遠慮しておくわ」

沙織「えー?そっけなーい……」

華「沙織さん。エリカさんにも予定があるのですから」

沙織「でもさーせっかく仲良くなったんだから一緒に甘いものでも食べながらおしゃべりしたいよー」

エリカ「……別に予定があるわけじゃないわ。ただ、その……あなた達が喜ぶような話の持ち合わせは無いわよ?」

沙織「いいよいいよ!だったら私達がいっぱい話すから!!エリカまだ転校してきたばっかでしょ?ここの事一杯教えてあげるから!」

エリカ「……わかったわ」

沙織「決まり!それじゃあ放課後ね!」

エリカ「あなた、意外と強引ね?」

沙織「男をオトすなら守るより攻めろっ!だからね♪」

華「オトせた人数は0ですが」

エリカ「説得力無い話ねぇ……」

16: 2017/12/29(金) 23:12:46.59 ID:3UUVGVQ/0
ガラララッ

桃「失礼する」

杏「……」

柚子「……」










沙織「あれって……」

華「確か、生徒会の……」

17: 2017/12/29(金) 23:15:15.90 ID:3UUVGVQ/0
桃「会長。彼女が」

杏「おーい。あー……逸見ちゃんだっけ?ちょっといいかな?」

桃「少々話がある」

エリカ「……何か用ですか?」

杏「必修選択科目なんだけどさぁ、戦車道とってね。よろしく」

エリカ「この学校に戦車道は無かったはずじゃ……」

桃「今年度から復活することになった」

エリカ「……何故私に?」

杏「わかってんでしょー?とにかくよろしく!」

エリカ「……話を聞かせてもらえます?履修するかどうかはそれからで」

杏「……おっけー、なら放課後生徒会室に来て?まぁ、絶対に戦車道履修してもらうけどさ」

エリカ「沙織、華。悪いけどお茶の予定はキャンセルで」

沙織「エリカ……」

華「エリカさん……」

18: 2017/12/29(金) 23:18:23.65 ID:3UUVGVQ/0





エリカ「……で、なんでついて来てるわけ?」

沙織「だってエリカ生徒会室の場所知らないって言うから案内してあげたんじゃん」

エリカ「なら、もう着いたんだから大丈夫よ」

沙織「せっかくここまで来たんだから最後までついて行かせてよ。乗りかかった船ってやつ!」

華「学園艦にはすでに乗っていますけどね」

エリカ「……はぁ。邪魔はしないでよ」

沙織「わかってるってー」

華「承知しています」

エリカ「……」コンコン

杏『どうぞー』

19: 2017/12/29(金) 23:20:45.92 ID:3UUVGVQ/0
エリカ「失礼します」

沙織「失礼します!」

華「失礼します」

杏「やーやーよく来てくれたね。ありゃ?その二人は?」

沙織「エリカの付き添いです!」

華「付き添いの付き添いです」

エリカ「だそうです」

杏「あっそ、まぁいいや。早速だけど逸見ちゃん、戦車道履修してよ」

沙織「戦車道って……」コソコソ

華「華道・茶道と並び立つと称される伝統的な武芸ですね。乙女の嗜みと言われています」コソッ

沙織「へぇー。で、なんで生徒会はエリカに戦車道を履修させたいの?」コソッ

桃「それは逸見が戦車道の経験者だからだ」

沙織「わっ聞こえてた……って、え?そうだったの?」

20: 2017/12/29(金) 23:22:48.61 ID:3UUVGVQ/0
桃「逸見エリカ。かつて大会9連覇の偉業を達成した強豪、黒森峰女学院戦車道チーム。お前はそこの元レギュラーメンバーでその実力は副隊長に次ぐと内外に評価されていた。……合っているか?」

エリカ「まぁ、大体合ってますね」

桃「ふふん。我々生徒会の諜報力を甘く見るなよ?」

柚子「調べたのは会長でしょ?」

エリカ「でも一つだけ間違ってるわ――――逸見エリカの実力は副隊長を超えていた。そう訂正しておきなさい」

杏「ああ、そりゃすまないね」

沙織「エリカそんなすごい人だったのっ!?」

華「戦車道で、黒森峰……戦車道に明るくない私でも名前程度ですが聞いたことがあります」

エリカ「それで?」

桃「は?」

21: 2017/12/29(金) 23:26:20.56 ID:3UUVGVQ/0
エリカ「それだけですか?」

桃「それだけって、何を言って……」

杏「とにかくさー逸見ちゃん経験者なんでしょ?ウチも昔は戦車道をやっていたとはいえ、もう20年以上も前の話でね。経験者がいてくれると色々と捗るんだよ」

柚子「そういうわけなの。やってくれない?」

エリカ「……なるほど。話はわかりました」

杏「おっ、話が早いねー。それじゃあよろしくっ!」

エリカ「その前に一つだけ聞かせてください」

杏「何ー?」

エリカ「あなた達、何か隠していますよね?」

杏「何のことかな?」

22: 2017/12/29(金) 23:32:49.90 ID:3UUVGVQ/0
桃「そ、そうだぞっ!?我々に隠し事なんてあるわけないだろ!?」

柚子「桃ちゃんっ!」

沙織「エリカ、どうしてそう思うの?」

エリカ「生徒会の皆さん、あなた達の行動にはどこか必氏さがある」

杏「そんなこと無いと思うけどなぁ」

エリカ「そもそも経験者を欲しいだけならわざわざ生徒会直々に勧誘しにこなくてもいいんじゃない?」

杏「だからー初心者しかいないより経験者がいたほうがいいじゃん?」

エリカ「そのためにわざわざ私の評判まで調べたっていうんですか?経歴だけなら転校する時に書類に書いたはずですけど」

杏「……あー、明日のオリエンテーションで話す予定だったんだけどさ、数年後に戦車道の世界大会が日本で行われることになってんのよ」

エリカ「聞いたことがありますね」

23: 2017/12/29(金) 23:35:48.32 ID:3UUVGVQ/0
杏「それでさ、文科省から全国の高校に戦車道に力を入れるようにってお達しがあったわけ。うちが戦車道を復活させたのもそういう理由があるのよ」

エリカ「それでも、そんなの所詮文科省から言われただけですよね?生徒会とはいえただの生徒であるあなた達がそこまで必氏になる理由が私にはわかりません」

杏「だからさー」

エリカ「そう……あなた達の言動、行動、隠しきれてない焦り……経験者がいると便利だから?……違う、それだけじゃ……」ブツブツ

沙織「エリカ何ブツブツ言ってるの?」

華「沙織さんちょっと静かに」

エリカ「……何か、あなた達にとって不都合な事態が起きている?」

杏「別にぃ?」

エリカ「いえ、あなた達が。生徒会が隠したいことということは大洗女子学園自体に何か……例えば……学園艦?そういえばそんな話聞いた気が……」ブツブツ

桃「おい逸見!ブツブツ言ってないでさっさと戦車道を履修すると決めろっ!」

エリカ「――――たぶん、これね」

沙織「だから何が?」

24: 2017/12/29(金) 23:38:44.56 ID:3UUVGVQ/0
エリカ「……猶予はどのくらいなんですか?」

桃「っ!?」

柚子「!?」

杏「……逸見ちゃん、思ってたよりずっと頭がいいんだね」

エリカ「いいから答えてください」

杏「今年度中。……実質今大会が最後だね」

エリカ「……そんなに切羽詰ってたんですね」

杏「こっちもいきなりだったからねぇ。とはいえ、理由はわかってもらったんでしょ?やってよ、戦車道」

エリカ「いいえ」

杏「まだ何かあるの?逸見ちゃんも戦車道の無いうちに転校してきて燻ってたんでしょ?戦車道やりたいんでしょ?なら、こっちの提案を断る理由はないと思うけどなぁ」

エリカ「戦車道のない高校に転校してきたのよ?普通、嫌になって辞めたって思いませんか?」

杏「聞いたでしょ?逸見ちゃんのことを調べたって」

エリカ「……ええ。確かに、戦車道の無い大洗に転校してきたのははっきり言って不本意よ」

沙織「そうなのっ!?」

華「沙織さん」

25: 2017/12/29(金) 23:44:42.14 ID:3UUVGVQ/0
エリカ「―――それでも、隠し事をするような人たちの頼みを安々と聞くほど、馬鹿でもお人好しでもないわ。――――会長、あなたの口から本当のことを言ってください」

杏「もうわかってるんでしょ。それでいいじゃん」

エリカ「私にじゃないわ。戦車道を履修する子全員によ」

杏「……それはできない」

エリカ「私の想像が合ってるならこの問題は生徒会だけで抱えて良いものじゃないわ。―――少なくともあなた達はそのために戦車道を利用しようとしている。説明責任があります」

杏「知らないほうが良いこともあると思うな―」

エリカ「確かに情報統制も時には必要です。だけど……あなた達だけの問題じゃないんですよ。知らないうちに爆弾を抱えさせられてるだなんて、あんまりだわ」

杏「気づかなければ何もないと一緒だよ」

エリカ「それを予期せぬ時に気づかれたら立て直すのは困難です。一度も負けられない上に、チームプレイが必要な戦車道においてそれは致命的よ」

26: 2017/12/29(金) 23:48:17.20 ID:3UUVGVQ/0
杏「悪いけど、それについては譲るつもりはないんだ。それに――――隠し事ってのはお互い様じゃない?」ボソッ

エリカ「っ……」

桃「会長今なんと?」

杏「かーしま。悪いけどちょっと静かにしててくれ」

桃「はっはい!」

杏「いくら不本意で転校してきたとはいえ、またすぐに転校ってのは避けたいでしょ?」

エリカ「あなたは、どこまで知って……」

杏「ごめんね。本当はこんな脅すような真似したくなかったんだけどさ。逸見ちゃんの言う通りこっちにも事情があるの。

  だから、おとなしく戦車道履修してくれない?」

27: 2017/12/29(金) 23:52:33.33 ID:3UUVGVQ/0
エリカ「…………わかりました」

沙織「エリカっ!?」

エリカ「納得してないし、あなた達への不信感はあるけれど、それ以上に私は戦車に乗りたいの。――――多少の不満には目をつぶるわ」

杏「ありがと♪」

エリカ「ただし、経験者として私を入れるのなら私が隊長よ。練習・試合その他もろもろ私の指示の下にやってもらいますから」

杏「ああ、もとよりそのつもりだよ。よろしくね、逸見ちゃん」

33: 2017/12/30(土) 19:25:51.21 ID:l0RAjsPZ0






沙織「エリカ、ほんとに良かったの?生徒会の人たち何か隠してるんでしょ?」

エリカ「……確かにそれはまだ不安材料だわ。それでも、この学校で戦車道ができることは正直、願ってもないことよ。……私には戦車道しかないのだから」

沙織「それなら、そもそもなんで戦車道のない大洗に転校してきたの?」

エリカ「……色々あるのよ」

沙織「うーん、ミステリアスな女の子ってのもモテ要素なのかな?私も何か秘密もとうかなー」

華「現在の体重なんてどうでしょう?」

沙織「それは乙女の秘密だけどミステリアスとは違うー!!」

エリカ「そういえば、あなた達は必修選択科目何にするの?」

沙織「あっそうだ私達も考えないと……エリカの事で頭がいっぱいだった……」

華「まるで恋する乙女ですね」

沙織「やだもー!確かにエリカは綺麗だけど、私そういう趣味はないからー!ていうか、華はどうするつもり?

華「私は、戦車道を履修しようかと」

エリカ「え?」

沙織「華の家って華道の家元でしょ?てっきり華道選択するかと思ってたんだけど」

エリカ「華道の家元って……その佇まいはハリボテじゃ無かったってわけね」

華「ふふっ、褒めていただけて幸いです」

34: 2017/12/30(土) 19:36:19.15 ID:l0RAjsPZ0
エリカ「華道と戦車道。確かにどちらも乙女の嗜みと言われているけれど、芸術と武道でその方向性は大きく違うわ」

華「ええ、だからこそです。私前々からアクティブな事に憧れていまして……いい機会ですから是非、と」

エリカ「そう。まぁ、授業の一環なのだから好きにすると良いわ」

華「……私が戦車道を選ぼうと決めたのはエリカさんがいるからですよ?」

エリカ「はぁ?なんでよ」

華「先程の生徒会の方への啖呵を切る姿。とても凛々しく、美しかったです」

沙織「あっ、それ私も思った!エリカ生徒会にあんな堂々と立ち向かうだなんて凄いね!」

エリカ「納得出来ないのが嫌なだけよ」

35: 2017/12/30(土) 19:48:23.11 ID:l0RAjsPZ0
華「あなたのその在り方は、道となってあなたの歩みを助けてくれます。私も、その先が見たいのです」

エリカ「……そう。まぁ、好きにすれば?」

華「はい。そうさせてもらいます」

沙織「私はどうしようかな~」

華「沙織さんも一緒に戦車道をしませんか?」

沙織「え~?戦車道って鉄臭くて油まみれになりそうでなんかなー」

エリカ「間違ってはないわね」

華「それでもせっかくですから……」

沙織「うーん……」

エリカ「別に今すぐ決めなくても明日オリエンテーションがあるんだから、それからでもいいでしょ」

沙織「そうだね、でも戦車道なぁ……」

エリカ「ま、ゆっくり考えなさい」

36: 2017/12/30(土) 19:56:36.93 ID:l0RAjsPZ0






ザワザワ……


エリカ「……オリエンテーションってこんないきなり呼び出されるものだったかしら」

華「うちの生徒会がすることですから」

桃「それではこれから必修選択科目のオリエンテーションを行う」








デーンデーンデーンデーン♪




エリカ「え、何このBGM?」






37: 2017/12/30(土) 20:00:37.61 ID:l0RAjsPZ0









女と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る「モテモテの淑女」。

戦車道とは、「モテモテの淑女」を育成する武芸のことであるッ!









テッテッテッテッテーレテレレ♪


アイbelieveツキノヒカリ トケルカリソメノメロディー♪





エリカ「」

華「まぁ……神イントロですね」

沙織「わぁ……」

38: 2017/12/30(土) 20:10:56.27 ID:l0RAjsPZ0







沙織「エリカ、私戦車道やるっ!!」

エリカ「あ、あの紹介でよくやる気になるわね……プロパガンダもいいところだったでしょ……」

沙織「だってモテモテの淑女だよっ!?女の子なら一度は憧れる!!」

エリカ「いや、うん……あなたの理想をどうこう言うつもりは無いけど……」

華「いいじゃないですか。せっかくやる気になってくれたのですから」

エリカ「……はぁ、まぁいいわ。ただし二人共」

沙織「ん?」

華「はい」

エリカ「戦車道はね、確かに安全に配慮して行われているわ。だけど、それでも事故ってのは起きるの。怪我はもちろん時には氏者が出たことだってあるのよ」

沙織「……お、脅かさないでよ……」

39: 2017/12/30(土) 20:13:47.89 ID:l0RAjsPZ0
エリカ「脅しじゃないわ。あなた達がどんな理由で戦車道をやろうと構わない。ただ、戦車道をやるということはそういうアクシデントに見舞われることがあるってことを忘れないで」

沙織「……」ゴクリ

華「……」

エリカ「……ごめんなさい。怖がらせるつもりは無かったの。ただ、そういう事がかつてあったってことよ。

    戦車はもちろん砲弾も安全性に配慮したものだから、ちゃんと私の指示に従っていればそんな事には絶対にさせないわ」

沙織「や、やだもー……エリカ急に怖い顔になるからさぁー」

エリカ「だいたい、どんなスポーツでも怪我や事故は起きるけど、重大なモノって大抵ふざけたり、危険を認識できないやつが起こすものなのよ」

沙織「う、うん」

エリカ「だから、ふざけて好き勝手やったりは止めなさいよ?ってこと」

沙織「はいっ!気をつけます!」

華「肝に銘じておきます」

エリカ「なら良いわ」

40: 2017/12/30(土) 20:17:40.50 ID:l0RAjsPZ0





ザワザワ・・・・


沙織「ここにいるのが戦車道の履修者?」

華「全員で18人ですか」

エリカ「少ないわね……やっぱりあのオリエンテーションで戦車道やりたいってなる奴は学園の少数派……変わり者ばかりなんでしょうね」

沙織「エリカが言うと説得力あるね」

エリカ「ケンカなら買うわよ?」

華「さすが沙織さん。景気づけに一戦交えようってことですね?」

沙織「違うからっ!?」

優花里「……」ジーッ

エリカ「……ん?」

優花里「!?」サッ

沙織「どうしたの?」

エリカ「いや、なんか視線を感じて……」

桃「静かに。これより、戦車道の授業を開始する」

優花里「あの……戦車は、ティーガー?それとも……」

杏「さぁー、なんだっけな?」

エリカ「とりあえず見せてください」

41: 2017/12/30(土) 20:22:01.90 ID:l0RAjsPZ0




エリカ「これは……」



ウヘー

ナニコレー

ボロボロー

アリエナーイ




華「侘び寂びでよろしいんじゃ……」

沙織「これはただの鉄さび」

エリカ「……Ⅳ号戦車ね」ソッ

42: 2017/12/30(土) 20:24:40.42 ID:l0RAjsPZ0
エリカ「……ティーガーと比べると装甲も主砲も貧弱。……でも、あるだけましか」

沙織「エリカ?」

エリカ「この子はまだ生きてる。ボロボロなのは見た目だけよ」

沙織「ほんとっ!?」

華「それでしたら……」

エリカ「それで?他の戦車は?」

杏「無いよ?」

エリカ「は?」

杏「何せ20年以上前だからねー当時使ってた戦車は大体売っちゃったんだよ」

エリカ「そ、それでどうするんですかっ!?この人数なら5両は必要なのに!?」

杏「探すっきゃないねー」

43: 2017/12/30(土) 20:28:38.70 ID:l0RAjsPZ0
エリカ「あ、あなたねぇっ!そんな適当な状態で戦車道やるだなんて言ったんですか!?」

杏「まあまあ、落ち着いてってば。売っちゃったとは言え全部じゃないからさ、探せばどっかにあると思うんだよ」

沙織「何か手がかりないの!?」

杏「無いっ」

桃「加えて、明後日戦車道の教官がお見えになる。それまでに残り4両を見つけ出すこと」

沙織「嘘ぉ!?」

エリカ「……」

桃「……ん?逸見どうした?」

エリカ「……減に」

沙織「エリカ?」

華「エリカさん?」

44: 2017/12/30(土) 20:31:24.53 ID:l0RAjsPZ0











エリカ「いい加減にしてくださいっ!!!!!!!!!」













桃「ひっ!?」

杏「うおっ」

柚子「わっ!?」

45: 2017/12/30(土) 20:38:01.33 ID:l0RAjsPZ0
エリカ「さっきから聞いてれば戦車がない?ヒント無いけど二日後までに探せ?ふざけないでくださいっ!!」

桃「い、逸見?」

エリカ「そんな状態でよく戦車道をやろうって言えましたねっ!?大体Ⅳ号はもう事前に見つかってたのになんで修理してないんですかっ!?
 
    それなのに明後日ってっ!?戦車道を遊びでやろうともモテるためにやろうとも!どんな理由でも構いませんっ!でも、でもっ!

    やるからには本気でやってくださいっ!!ほんとに、ほんとに……っ!もおおおおおおおおおーっ!!!!!!!!!!」

杏「ご、ごめんね逸見ちゃん?こっちも急なことだったからさ……そんな怒んないでって」

柚子「そ、そうなの。逸見さんには悪いって思ってるけど、なんとかお願いできない?」

エリカ「っ~~~~!!わかりましたっ!!――――あなた達っ!!」

全員『は、はいっ!?』

エリカ「ここにいる生徒会連中がろくに準備もしてこなかったせいで現状戦車は1両しかないわ。あなた達がどんな理由で戦車道を選んだのか知らないけど、

    このままじゃ大会出場どころか開講すら危ぶまれる状況よ。だから……残りの戦車氏ぬ気で探しなさいっ!!」

全員『は、はい!!』

エリカ「わかったらさっさと行きなさいっ!!」


ダダダダダッ!!

梓「……」チラッ タッタッタ

46: 2017/12/30(土) 20:44:52.93 ID:l0RAjsPZ0
エリカ「……あなた達」

桃「な、なんだ?」

エリカ「あなた達生徒会チームは最低でも1両は見つけなさい。見つけられなければ――――そこのⅣ号の的にでもなってもらうわ」

桃「わ、わかったっ!わかったからっ!?」

杏「頑張るよー」

エリカ「っ!沙織!華!私達も行くわよっ!!」タッタッタッ

沙織「え、エリカ待ってってばー!」

華「エリカさん!」

桃「…………こ、怖かったよ柚子ちゃ~んっ!!」

柚子「わ、私も……」

杏「いやー……逸見ちゃん案外激情家だったんだねぇ」

柚子「……会長。戦車探しに行きましょう?」

杏「……だね。逸見ちゃん本気で私達を的にしそうだし」

51: 2018/01/02(火) 18:02:39.16 ID:N7RSQKjm0




エリカ「まったく、あいつら何考えてるんだかっ!!」プンプン!

沙織「エリカ落ち着いてってば。怒ってばっかじゃ戦車探しても見落としちゃうよ?」

華「激情も時には原動力となりますが、今は心を静めて捜索に集中しましょう」

エリカ「……ふぅー。……ええ、もう大丈夫よ」

沙織「よしっ!それにしてもエリカがあんなに怒鳴るだなんて……」

エリカ「キャラじゃなかったかしら」

沙織「いや、キャラ通りっていうか、声かける前はすぐ怒りそうな子だなーって思ってた」

エリカ「なんでそんなのに声かけようと思ったのよ……」

華「ですが……ふふっ、ちょっとだけ良いものを見られたと思います」

エリカ「何がよ?」

52: 2018/01/02(火) 18:06:31.16 ID:N7RSQKjm0
華「エリカさんは誰に対しても一線を引いているような気がして……ですがあのように苛立ち、それを表に出せる方なのですね」

エリカ「……別に線引いてるつもりはないわ。ただ、どう近づけば良いのかよくわからないだけよ」

沙織「エリカ……」

華「なら、エリカさんはそのままでいいですよ」

エリカ「は?」

華「私達が近づいていきますから」

沙織「そう、そうだねっ!えりりん一緒に頑張ろう!!」

エリカ「え、えりりん?」

沙織「エリカだから、えりりん。とりあえず今までよりちょっと近づいたでしょ?」

エリカ「私的には3メートル位近づかれた感じなんだけど……」

沙織「慣れて慣れて!」

エリカ「……努力するわ」

53: 2018/01/02(火) 18:13:02.82 ID:N7RSQKjm0
沙織「うんっ……でもさ『もおおおおおおおおおーっ!!!!!!!!!!』って。えりりんあんな可愛い怒り方するんだね」

エリカ「っ!?」

華「確かに。普段見せない姿ですから一層、可愛らしく見えました」

エリカ「う、うるさいわねっ!良いから早く戦車探しに行くわよ!!」

沙織「はーい」

華「はい」






優花里「……」ジーッ







55: 2018/01/02(火) 18:20:26.91 ID:N7RSQKjm0
エリカ「……それで、あなたはいつまでそこで隠れてるつもりなの?」

優花里「ひゃっ!?あ、あの、わ、私……えっと……」

沙織「あっ!えりりんが女の子いじめてる!!」

華「本当ですか?」

エリカ「ちょっ、人聞き悪いこと言わないでよ!?」

優花里「あのっ!私、普通二科2年C組の秋山優花里といいます。よろしければ戦車の捜索にご一緒させていただけないでしょうか!?」

沙織「ほんとっ!?一緒に探してくれるなら助かるよー。私、武部沙織!」

華「五十鈴華です」

エリカ「私は―――」

優花里「逸見、エリカ殿ですよね……?」

エリカ「え?よく知ってるわね」

優花里「いや、その……戦車道の履修者の名前は全員覚えてるんです」

沙織「えりりんみたいな人他にもいるんだね……」

華「そうですね」

エリカ「聞こえてるわよ。優花里……って呼んでいいかしら?」

優花里「はいっ!」

56: 2018/01/02(火) 18:26:53.43 ID:N7RSQKjm0
エリカ「そう、なら私のことはエリカでいいわ」

優花里「本当ですかっ!?」

エリカ「良いも何も、そこの二人にはそう呼ばれてるしね。……内一人には変な呼ばれ方してるけど」

沙織「もー変ってひどいー!」

華「それでしたら私達も優花里さんと呼ばせて頂きます」

優花里「はいっ!」

エリカ「挨拶も済んだし、戦車探しに行きましょうか。裏の山林あたりに行ってみましょう」

優花里「了解であります!」

沙織「えー!?山ー!?駐車場あたりとか探さない?」

華「駐車場に戦車は止まってないかと」

沙織「だって一応は車じゃない……」

エリカ「時間無いんだからさっさと行くわよ」

沙織「はーい……」 


57: 2018/01/02(火) 18:31:01.13 ID:N7RSQKjm0




エリカ「……38t、八九式、Ⅲ突、M3。ダメ元だったけどなんとか集まったみたいね」

杏「逸見ちゃーん?」

エリカ「……何かしら?」

杏「もう1両忘れてない?」

エリカ「……はぁ、それに三式中戦車も」

優花里「よく見つけましたね!どこにあったんですか?」

杏「ん?職員駐車場に停めてあったのを見つけた」

沙織「ええ―っ!?えりりんやっぱり駐車場にあったじゃん!!」

エリカ「まさか本当にあるとは……」

杏「灯台下暗しってやつだね」

エリカ「……ちっ」

桃「逸見貴様っ!今舌打ちしただろ!?」

エリカ「とにかく、これで履修者分の戦車は見つかったわね」

桃「無視するなーっ!!」

58: 2018/01/02(火) 18:39:11.56 ID:N7RSQKjm0
沙織「でも一台余っちゃうよ?」

エリカ「とりあえず一番修理に時間がかかるものを後回しにして、明後日はそれ以外の5両を使いましょう。振り分けは……」

梓「あ、あの……!」

エリカ「あなたは?」

梓「私、一年の澤梓です!い、逸見先輩、ですよね?」

エリカ「ええ、そうよ」

梓「あの、戦車なんですけど……私達、自分で見つけたのに乗りたいです!」

エリカ「あなた達が見つけたのって確かこのM3だったかしら?」

梓「は、はい!」

エリカ「どのみち八九式を外して三式を使うつもりだったからこれに乗りたいっていうなら構わないわ。

    ……でも、言っちゃ悪いけど、このM3は『7人兄弟用の棺桶』なんて悪名がある戦車でね。

    見つけてくれたのは嬉しいけど、そんなに良いものじゃないわよ?」

梓「それでもっ!自分たちが見つけたものに乗りたいって皆と話し合ったんですっ!」

エリカ「……そう。なら良いわ、これに乗りなさい」

梓「あ、ありがとうございますっ!!」

エリカ「あなた達が見つけたんでしょ?なら、そっちのほうが愛着持つかもね。……一緒に頑張りましょう」

梓「は、はいっ!!」

59: 2018/01/02(火) 18:42:16.32 ID:N7RSQKjm0
沙織「えりりん優しいじゃん!『もっと合理的に考えなさいっ!』とか言うと思ってた!」

エリカ「そりゃあそうも思うけど、経験者として戦車に愛着持ってもらえるのは嬉しいしね」

優花里「ですねっ」

華「ですが、修理と時間を考えると……」

???「あーごめん。ちょっとどいてもらえる?」

沙織「あっ、すみません」

???「いいっていいって。あーこれかぁ」

エリカ「えっとあなた達は?」

ナカジマ「ん?ああ、私たちはここの自動車部だよ」

杏「おーはやいねー」

ナカジマ「6台も見つかったって言うからとりあえず修理箇所の確認だけでもしておこうかなってね」

杏「あんがとー。それじゃあよろしくっ!」

ナカジマ「オッケー。皆!」

自動車部『はーい!』

沙織「わ~凄い……テキパキと動いてる」

華「さすが本職と言ったところですかね?」

60: 2018/01/02(火) 18:44:58.97 ID:N7RSQKjm0

エリカ「あの自動車部、あなたが呼んだの?」

杏「そうだよ。戦車の修理、整備全般引き受けてくれるって」

エリカ「……あなた、もしかして意外と人望あるの?」

杏「一応生徒会長だからねぇ。それなりには」

エリカ「……あなた達のやり方、言動行動はっきり言って気に食わないわ」

杏「はっきり言ってくれるね」

エリカ「それでも、やろうとしていることは理解しているつもり」

杏「……私は」

桃「おい逸見っ!会長と一体何を話している!!」

エリカ「うるさいわね。なんでもないわよ」

桃「お、お前!敬語はどうした敬語はっ!?先輩だぞっ!!」

エリカ「うるさいって言ってるの。あなた達敬語使ってもらえるような事した?的にされなかっただけありがたいと思いなさい」

柚子「桃ちゃんここは、ね?」

桃「桃ちゃん言うなっ!逸見!お前には上下関係をしっかりとだなっ!」

エリカ「えー?桃ちゃん何か言ったー?」

桃「桃ちゃん言うなー!!?」








ギャーギャー



杏「……逸見ちゃん、ごめんね」








61: 2018/01/02(火) 18:46:18.41 ID:N7RSQKjm0












杏「私は、逸見ちゃんを理解できないよ」












62: 2018/01/02(火) 18:47:05.51 ID:N7RSQKjm0
あけましておめでとうございます。

今日はここまでです。

63: 2018/01/02(火) 19:34:15.03 ID:5D4RrUaKo
乙です

66: 2018/01/03(水) 18:32:49.92 ID:KDJDXAxD0




ナカジマ「とりあえず全部の戦車を見させてもらったけど」

エリカ「……」

ナカジマ「修理。なんとか間に合うと思うよ」

エリカ「本当ですかっ!?」

ナカジマ「うんうん。見た目ほどボロボロじゃないし、カーボンさまさまってところかな? 

     生徒会長たちが見つけた戦車も一度エンジンばらしていじくる必要はあるけど状態は良いからなんとかなるね」

エリカ「良かった……」

ナカジマ「とはいえ流石に6台も修理するとなると終わるのは明後日の朝になると思うよ」

エリカ「充分です。……よろしくお願いします」ペコリ

ナカジマ「おっけー。まかせてよ」

杏「戦車が間に合うなら振り分けは一年生チームと同じで見つけたのに乗ればいっか」

エリカ「……そうね。どうやら他の子達も自分で見つけたのに愛着持ってるらしいし」

67: 2018/01/03(水) 18:43:47.47 ID:KDJDXAxD0
杏「それなら私らは三式に――――」

エリカ「いいえ、あなた達は私達の見つけた38tに乗ってもらうわ」

桃「何故だ?」

エリカ「私はまだあなた達を信頼していない。――――だから、いつでも私が見張ってるって思ってもらわないと」ギロッ

桃「ひっ!?」

杏「おー情熱的だねぇ」

柚子「会長、余裕ですね……」

エリカ「それじゃあ私たちはⅣ号に乗らせてもらうわ」

桃「おい、それじゃあ一番損傷のない三式が余るではないか」

エリカ「どうせ明後日には全部直るんでしょ?なら、好きなの選ばせてもらうわ。私、ドイツ戦車好きなのよ」

桃「適当な……それじゃあ三式の乗員も探さないと……」

エリカ「それは私も探しておくわ。とはいえ、私にここの人脈なんて無いに等しいからあなた達に任せっきりになると思うけど」

杏「まぁ、そこは任せてよ」

エリカ「……頼んだわ」

68: 2018/01/03(水) 18:54:10.44 ID:KDJDXAxD0





~せんしゃ倶楽部~

エリカ「帰りに寄り道したいっていうからどこかと思えば……こんな店があったのね」

優花里「はいっ!私のいきつけです!」

華「すごいですね……」

沙織「でも戦車ってみんな同じに見えるー」

優花里「ち、違います!全然違うんです!どの子も皆個性というか特徴があって、動かす人によっても変わりますし!」

華「華道と同じですね」

沙織「うんうん。みんなちがって、みんないい。ってやつだね」

エリカ「ざっくりまとめるわね……ん?」





アナウンサー『次は戦車道の話題です。高校生大会で昨年MVPに選ばれて国際強化選手となった、黒森峰女学院、西住まほ選手にインタビューしてみました』





エリカ「……」

沙織「えりりん?」

69: 2018/01/03(水) 19:02:03.71 ID:KDJDXAxD0
『戦車道の勝利の秘訣とはなんですか?』

まほ『諦めないこと。そして、どんな状況でも逃げ出さないことですね』






エリカ「っ……」

沙織「……そうだっ、この後えりりんの部屋遊びに行って良い?」

エリカ「え?」

華「私もお邪魔したいです」

エリカ「……面白いものなんて無いわよ?」

沙織「いいのいいの♪」

エリカ「そう、なら良いわよ。優花里はどうするの?」

優花里「え!?あ、あの……私もご一緒させていただいてもいい、ですか?」

エリカ「1人増えたって変わらないわよ。遠慮しなくていいわ」

優花里「はいっ!ありがとうございます」

沙織「むぅー……えりりん、なんかゆかりんにだけ優しくない?」

優花里「ゆ、ゆかりん……」

エリカ「無遠慮な子にはそれなりの態度をとってるだけよ」

沙織「えりりんひどいっ!?」

70: 2018/01/03(水) 19:10:09.08 ID:KDJDXAxD0





エリカ「綺麗にしてるんだから、散らかさないでよ」

沙織「うわー……彩りゼロ。ホントにえりりんここに住んでるの?」

エリカ「失礼ね……最低限の物は揃ってるでしょ?」

華「ある意味エリカさんのイメージ通りな部屋ですね」

エリカ「それ褒めてるの?」

優花里「機能性を追求してて素晴らしいと思いますっ!」

エリカ「そう?ありがと」

沙織「やっぱりゆかりんには優しくない?」

エリカ「そんなことないわよ。ほら、ご飯さっさと作っちゃいましょ」

『はーい』

71: 2018/01/03(水) 19:17:39.83 ID:KDJDXAxD0





沙織「それじゃあ」

『いただきます』

エリカ「……おいしい」

沙織「おっ?えりりんの口に合ったみたいでよかったー。やっぱ男を落とすにはまず胃袋からだね!」

エリカ「……あなた、口だけじゃなかったのね」

沙織「でしょー?」

華「残念ながら成功に結びついてはいませんが」

沙織「うるさいなぁ!」

優花里「でも、この肉じゃが美味しいです!そう、おふくろの味ってやつですねっ!!」

沙織「彼氏じゃなくて子供ができちゃったっ!?」

エリカ「言ってることはわかるわね」

華「はい」

沙織「もー!」ゴロン

エリカ「ちょっと、食事中に寝転がるんじゃないの」

72: 2018/01/03(水) 19:24:13.62 ID:KDJDXAxD0
沙織「……あれ?」

華「どうかしました?」

沙織「ベッドの下に何か……ぬいぐるみ?」

華「まぁ……随分と怪我をされてるようで……」

優花里「全身包帯に眼帯……ちょこんと乗ってる略帽がアンバランスです……」

沙織「えりりんの心の闇が垣間見えるね……」

エリカ「失礼なこと言わないで。それに、それは私のものじゃないわよ」

沙織「そうなの?」

エリカ「前の学校の子から預かってたんだけど、引っ越しの時に忘れてこっちに持ってきちゃったのよ」

沙織「え?それじゃあ返さないと」

エリカ「……そうね」

沙織「それにしてもこの子ボロボロで可哀想だね」

73: 2018/01/03(水) 19:31:42.18 ID:KDJDXAxD0
エリカ「『それがボコだから』だそうよ。気に入ってるんだからそう言わないであげて」

沙織「あっ、でもこの子の着けてる帽子は可愛いね。……あれ?このマークって……」

優花里「黒森峰女学院のマークですね。こんなぬいぐるみも作ってたんですか」

エリカ「いえ、その略帽は手作りよ」

沙織「へぇー!この子の持ち主女子力高いんだねっ!!」

エリカ「……ほら、ご飯食べてるんだからいつまでもぬいぐるみいじってないの」

沙織「はーい」

華「なんだか、お母さんみたいですね」

エリカ「それ、褒めてるの?」

華「ええ」

沙織「えりりんも私と同じお母さん扱いだね!」

エリカ「沙織と、同格……」ズーン……

沙織「なんで落ち込むのっ!?」

74: 2018/01/03(水) 19:36:16.57 ID:KDJDXAxD0





沙織「それじゃあえりりん、また明日」

エリカ「ええ、また明日」






バタン

エリカ「……」

75: 2018/01/03(水) 19:41:14.21 ID:KDJDXAxD0









『ボコはどんな相手にでも立ち向かうけど弱いからボコボコにされちゃうのっ!』

『……それのどこがいいの?かっこ悪いだけじゃない』

『いいのっ!それがボコだから!』

『……なら、ファンのあなたもその子を見習って、もうちょっと強気になりなさい』

『う……そ、それはいいかな……』

『なんでよ?』

『だって……私には、エリカさんがいるから』

『……しょうがない子ね』










76: 2018/01/03(水) 19:47:14.12 ID:KDJDXAxD0



エリカ「……ほんとうにしょうがない子」




77: 2018/01/03(水) 19:48:02.93 ID:KDJDXAxD0











エリカ「消えてくれて清々したわ」










82: 2018/01/05(金) 19:21:46.33 ID:Bko7Ey+e0




チュンチュン

エリカ「……ん?」

麻子「……」フラッ フラッ

エリカ「ちょっと、あなた大丈夫?」

麻子「辛い……生きているのが辛い……だが、行かねば……」フラッ

エリカ「……」ガシッ

麻子「……?」

エリカ「ほら、肩貸してあげるからちゃんと歩きなさい」

麻子「……」

エリカ「それと、私の前で生きているのが辛いだなんて二度と言わないで」

83: 2018/01/05(金) 19:24:17.70 ID:Bko7Ey+e0





そど子「冷泉さん、これで連続245日の遅刻よ」

エリカ「どんだけ遅刻してるのよ……」

麻子「朝は何故来るのだろう……」

そど子「朝は必ずくるものなの。成績が良いからってこんなに遅刻して。留年しても知らないよ」

麻子「うぁ……」

エリカ「ほら、しっかりしなさい」

そど子「えっと……逸見さん?もし途中で冷泉さんを見かけても、今度から先に登校するように」

エリカ「それは、私が決めることよ」

そど子「……はぁ、ほら行っていいわ」









麻子「……悪かった」

エリカ「勝手にやったことよ。……でも、感謝してるなら『悪かった』じゃなくて『ありがとう』って言ってほしいわ。……誰かを思い出してイラつくから」

麻子「……ありがとう」

エリカ「どういたしまして」

麻子「いつか借りは返す」

エリカ「別に良いわよ」

麻子「……それでもだ」

エリカ「そう。なら好きにしなさい」

84: 2018/01/05(金) 19:28:58.56 ID:Bko7Ey+e0





桃「本日我々を指導してくださる戦車教導隊所属の蝶野亜美1尉だ」

蝶野「あなた達の指導を任された蝶野亜美よ!よろしくねっ!」

エリカ「直前に学園長の車スクラップにしといてなんでこんな爽やかな挨拶ができるのよ……」

華「随分とおおらかな方ですね」

蝶野「戦車道は初めての人が多いと聞いていますが、一緒に頑張りましょ!」

沙織「あ、あのっ!戦車道ってモテるって本当ですかっ!?」

蝶野「え?うーん、モテるというより狙った獲物は外さないわ。撃破率120%よ!」バキューン☆

沙織「わぁ……」

エリカ「120%ってなんなのよ……」

華「一度落とした人をまた落としてるんじゃ?」

エリカ「数字の水増しが疑われるわね……」

蝶野「それじゃあ早速、本格戦闘の練習試合をやってみましょう」

エリカ「えっ?あの、初心者が多いのにいきなりですか?」

蝶野「大丈夫よ!何事も実践実戦♪戦車なんてバーっ動かしてダーッと操作してバーンと撃てばいいんだから♪」

エリカ「……本当に教導隊の方なの?」

優花里「腕は確かなはずですよ。体で覚えるのはある種体育会系の基本ですし」

エリカ「……はぁ。やるしかないわね」

85: 2018/01/05(金) 19:37:02.37 ID:Bko7Ey+e0





エリカ「ホントに二日で6両修理できたのね……とんでもない集団だわ」

優花里「エリカ殿、役割分担はどうしますか?」

エリカ「そうね……このⅣ号なら車長、砲手、操縦手、通信手、装填手が必要ね。車長は私がやるとして……なにかやりたいのある?」

優花里「わ、私は戦車に乗れればなんでも……」

沙織「私もなんでも良いよ?」

華「私は……どうしましょう?」

エリカ「意志薄弱。今時の子ね」

沙織「えりりんはどこ目線なのさ……もう良いからくじ引きで決めよ?」









エリカ「……で」

沙織「私装填手ー!」

優花里「私が砲手ですっ」

華「私が操縦手ですか」

エリカ「……まぁ、なんとかなりそうね。あと、通信手がいないから沙織兼任ね」

沙織「えー!?私やること多くない!?」

エリカ「しっかりやれとは言わないから。人数が揃うまでの数合わせよ。……それにしても」

86: 2018/01/05(金) 19:39:23.85 ID:Bko7Ey+e0
典子「バレー部復活のためっ!一致団結して頑張るぞ!!ファイトーッ!!」

  『オーッ!!』





左衛門佐「初陣で初首を取って名を上げるぞー!!」

エルヴィン「戦功名欲しさに散る新兵は多いぞ……」

おりょう「やるからには勝つぜよ」

カエサル「とりあえず早く乗れ」





紗希「……」ボー……

桂利奈「戦車かぁ!怪獣倒せるかなっ!」

梓「二人共早く乗ってってばっ!!」












エリカ「……その、個性的な子が多いわね」

沙織「えりりんが言葉をえらんだっ!?」

91: 2018/01/07(日) 17:02:40.16 ID:tONnNcnB0





蝶野『みんな、スタート地点に着いたようね。それじゃあ、試合開始!!』






沙織「えりりんどうするの!?」

エリカ「まずこちら側にいる2両を倒すわ。先に片方を潰して森を目眩ましにもう片方を撃破。

    その後橋を渡って川向うのチームを撃破で行くわよ!まずはBチームを――――」



ダァン!



エリカ「なっ!?」

沙織「なになに!?」

優花里「砲撃ですっ!!」







典子「まずはⅣ号Aチームを叩くっ!!」









92: 2018/01/07(日) 17:09:51.53 ID:tONnNcnB0
エリカ「っ……八九式ねっ。仕方がない先にあっちを――――いや、この様子だと……華っ!前進してっ!!」

華「わかりました!」

優花里「エリカ殿いったい……」

エリカ「初心者だと思って油断したわ!BとCは私達を挟み撃ちにするつもりよっ!!」

沙織「ええーっ!?」

エリカ「とにかく前進して!動いてる的に当てるのはまだ難しいはずよ!!」

華「はいっ!」

優花里「ですが、エリカ殿の言うとおりなら……」

エリカ「ええ、すぐにⅢ突が来るはずよ。華、正面から来たⅢ突に回り込むように側面に入れる!?」

華「すみませんっ!この速度だとまっすぐ走るだけで精一杯で……」

エリカ「なら次の分岐路を右に行ってっ!」

華「はいっ!!」

  







エルヴィン「っ!?逃げられた!追うぞ!!」








93: 2018/01/07(日) 17:16:22.04 ID:tONnNcnB0
エリカ「よし、このまま森を抜けて、橋の前まで行って脇に隠れて停止、追ってきた奴らを……っ!?停まって!!」

華「んっーーー!!!」

ズザザザザッ!

優花里「どうしました!?」

エリカ「ちょっと待ってて!!」ダッ

沙織「えりりん危ないよ!?」

麻子「……」グー

エリカ「あなたこんなところで何してるの!?」

麻子「……んあ?」

エリカ「っ!生徒会の奴ら戦闘区域の周知すらろくにできないの!?」

沙織「えりりん早く!!後ろきちゃう!!」

エリカ「仕方ない、こっち来て!!」

麻子「んー……」

沙織「えりりん何やって……って麻子!?何やってるの!?」

麻子「沙織か……私は、シエスタを……」

沙織「授業中でしょっ!!」

エリカ「華、出して!!」

華「はいっ!!」

94: 2018/01/07(日) 17:21:30.59 ID:tONnNcnB0
エルヴィン「見えたぞっ!撃てー!!」


典子「どんどんスパイク打っていくよー!!」








沙織「えりりん追いつかれちゃったよ!?」

エリカ「この距離じゃ待ち伏せはできない……なら、橋を渡る?いえ、華が運転に慣れてない現状では危険だわ……」

優花里「エリカ殿!」

エリカ「華っ!超信地旋廻よっ!こうなったら真っ向―――」


ズドォン!!


エリカ「くっ!?」

沙織「きゃああ!?」

優花里「うわああっ!?」

95: 2018/01/07(日) 17:30:13.03 ID:tONnNcnB0
左衛門佐「討ち取ったりー!!」

エルヴィン「いや、まだだ!!」





エリカ「なんとか持ちこたえたみたいね……華?華っ!?」

華「……」

沙織「えりりん!華気絶してるっ!!」

エリカ「っ怪我はない!?」

沙織「大丈夫みたい!!多分音と衝撃で……」

エリカ「それなら良いわ!仕方ない、私が……」

麻子「なら私が変わろう」

エリカ「あなた何言って……」

麻子「今朝の借りを返させてもらう。マニュアルは読んだ」

エリカ「そんなの……」


ダァン!


エリカ「っ……!」

麻子「時間が無いのだろう?」

エリカ「……できるの?」

麻子「任せておけ」

96: 2018/01/07(日) 17:35:10.58 ID:tONnNcnB0
ギュイイイン!!


エルヴィン「なっ!?こっちに向き直ったぞ!!」

典子「撃たれる前にこちらのスパイクを決めるぞ!!」






麻子「どうすればいい?」

エリカ「右のⅢ突の横に回り込んで盾にしつつ撃破、

    そうなったらこっちが見えないから八九式は下がって狙おうとするはず!そこを先に撃つわよ!」

麻子「わかった」





エルヴィン「こっちに来たぞ!撃て撃てっ!!」

左衛門佐「っダメだ!この戦車じゃ横の動きに対応しきれない!!」

エルヴィン「なら下がって!!」

おりょう「もうやってるぜよ!!」

97: 2018/01/07(日) 17:37:37.01 ID:tONnNcnB0
エリカ「遅いわ!!」


ダンッ!

シュポッ


優花里「やりました!!まずは1両撃破です!!」

エリカ「ならこのまま相手が下がってくるのを待って!沙織、装填急いで!」

麻子「わかった」

沙織「了解!!」

エリカ「優花里!外さないでね!!」

優花里「はいっ!!」

華「……ん」

沙織「あ、華起きた?」

華「あ、私……すみません」

エリカ「華起きたの?なら、無理せずそのまま休んでなさいっ!」




典子「うーん、Ⅲ突が邪魔で狙えない……仕方ない下がって!!」

忍「はいっ!!」

98: 2018/01/07(日) 17:41:24.66 ID:tONnNcnB0
エリカ「来るわよ!!……今っ!!」

優花里「っ!!」



ダンッ!!  

シュポッ


優花里「やりましたぁ!!2両撃破です!!」

エリカ「よくやったわ!!」

華「今のジンジンする衝撃……なんだか、気持ちいい……」

沙織「華?」

99: 2018/01/07(日) 17:44:20.76 ID:tONnNcnB0
桃「よしっ!森を抜けたぞってああっ!!?もう2両やられてるー!!?」

杏「逸見ちゃんやるねー」


梓「あの戦車って……逸見先輩の!」






優花里「橋の向こう、38tとM3です!!あちらも協力してこっちを狙ってるみたいです!!」

エリカ「ちっ!とんだ人気者ねっ!!」

麻子「どうする?」

エリカ「……冷泉さん。あの橋渡れそう?」

麻子「任せておけ」

エリカ「……わかったわ。なら、橋を渡って!!」

沙織「危ないんじゃっ!?」

エリカ「冷泉さんの運転技術を信じるわっ!みんな、衝撃に気をつけて!!」

沙織「それ落ちるかもってこと!?」

エリカ「特殊なカーボンを信じなさいっ!!」

沙織「いやー!?」

麻子「……うるさい」

100: 2018/01/07(日) 17:46:45.43 ID:tONnNcnB0
エリカ「優花里、橋に入る直前で先頭の38tに向けて撃って!」

優花里「ええっ!?動きながら当てるのは難しいです!!」

エリカ「当てなくてもいい!とにかくひるませるのよ!!」

優花里「わ、わかりました!」

麻子「行くぞ」







桃「っ!!Ⅳ号橋を渡ってくる!?撃て撃てー!!」

柚子「いや、撃つの桃ちゃんでしょ?」





梓「……撃って!!」

あゆみ「わかった!」

あや「おっけー!」

101: 2018/01/07(日) 17:52:28.32 ID:tONnNcnB0
ダンダンダンッ!!


沙織「向こうも撃ってきたー!?」

エリカ「優花里っ!!」

優花里「はいっ!!」


ダンッ!


桃「うわあっ!?撃ってきたぞ!?」

柚子「そりゃそうだよー」

桃「さ、下がって!!」

柚子「はいはい」

102: 2018/01/07(日) 17:57:44.81 ID:tONnNcnB0
エリカ「よし、38tが怯んだ!今のうちに渡って!」

麻子「了解」


ガタガタガタ


沙織「麻子凄い!?なんでこんなに早く進めるの!?」

麻子「なんでって……やればできるだろ」

エリカ「……掘り出し物ってところかしら?」


ガタガタガタ


杏「かーしま。逸見ちゃんたちこっち来るぞ」

桃「くっ!当たれええええ!!」


ダンッ スカッ


柚子「この距離で外すのー……?」

103: 2018/01/07(日) 18:00:09.52 ID:tONnNcnB0
エリカ「どうやら38tの砲手は精度が悪いようねっ!沙織、眼鏡と頭の交換をしなさいって相手砲手に伝えなさいっ!!」

沙織「えりりん生徒会には当たり強いね……」

華「恨みつらみを吸い取って彼岸花のように咲き誇っていますね」

エリカ「優花里!冷泉さん!3秒後に一旦停止して砲撃。その後即前進で!」

麻子「ん」

エリカ「2、1……撃てっ!!」


キッ ダァン!!


シュポッ


柚子「やられちゃったね桃ちゃん」

桃「桃ちゃん言うなっ!」

杏「……さすが逸見ちゃん」







沙織「やったっ!!」

エリカ「このまま橋を渡ったら次はM3よ!これだけプレッシャーかけたのだから下がるはずっ!そこを狙うわっ!」

優花里「はいっ!!」






あや「こっちくる!?逃げよ逃げよっ!?」

梓「……駄目っ!!」

あや「ええっ!?」

梓「真正面から迎え撃ちたい!!桂利奈、前進っ!!」

桂利奈「う、うん!!」

104: 2018/01/07(日) 18:03:36.92 ID:tONnNcnB0
優花里「ッ!M3前進してきます!!」

エリカ「……へぇ?」ニヤッ

優花里「どうします!?」

エリカ「そのケンカ買ったわっ!!こちらも前進して、真っ正面貫いてやりなさい!!」

優花里「っはい!!」


ダァン!ダァン!!


あや「うぇええ撃っても撃っても止まらないよー!?」

あゆみ「っ!?」

梓「くっ!!」

ダァンダァン!!



エリカ「…………撃てっ!!」

優花里「っ!」



ダァン!


シュポッ








蝶野『DチームM3、Eチーム38t、CチームⅢ号突撃砲、Bチーム八九式。いずれも行動不能。よって、AチームⅣ号の勝利!!』








109: 2018/01/08(月) 18:14:31.88 ID:bimZF+EN0
エリカ「……はぁ」

沙織「やったねえりりん!私達勝ったよ!!」

エリカ「ええ、なんとかなったわ」

華「お見事でした」

優花里「さすがですっ!」

エリカ「……あなた達もね。特に冷泉さん、ありがとう。おかげで助かったわ」

麻子「借りを返しただけだ」

エリカ「……そう。っと、ちょっと私出るわね」

沙織「え?えりりんどこ行くの?」

エリカ「すぐ戻るわよ!」

110: 2018/01/08(月) 18:23:16.55 ID:bimZF+EN0
あや「やっぱり負けちゃったじゃーん!」

あゆみ「とはいえ、逃げても勝てたかどうか……」

桂利奈「でも、楽しかったね!」

紗希「……」ボー

梓「やっぱり、逸見先輩は凄い……」

エリカ「Dチームの車長は誰?」

あや「逸見先輩っ!?」

梓「しゃ、車長は私です!」

エリカ「あら、澤さんだったのね」

梓「覚えててくれたんですか!?」

エリカ「え、ええ。名乗ってくれたし。それにしても、最後なんで前進してきたの?あの状況なら下がると思ったんだけど」

梓「あっ、そ、それは……」

エリカ「どうして?」

梓「そ、その……わ、私、逸見先輩と戦いたかったんですっ!」

エリカ「わ、私と?」

梓「は、はい。私……ていうか私戦車道を取ったのは単位とか色々特典があったからで……」

エリカ「そうなの?まぁ、モテるから取った。なんて子もいるしね」

梓「だ、だけど、エリカさんが生徒会の方たちに怒ってるのを見て、ああこの人は本気なんだって。中途半端は失礼だって思って……」

エリカ「……恥ずかしいところを見せたわね」

梓「そんなことありませんっ!!それで、私達がM3を使いたいって言った時、愛着を持ってくれるならいいって」

111: 2018/01/08(月) 18:29:30.37 ID:bimZF+EN0
エリカ「そうね、何事もまず愛着を持つところから。自分たちが見つけたっていうのがきっかけになるなら、それに越したことはないわ」

梓「だから、私この戦車で逸見先輩と戦いたかったんです!!」

エリカ「……」

梓「結局負けちゃいましたけど……」

エリカ「……あなた達は怖くなかったの?」

あや「そりゃあ怖かったですし、逃げようって言いましたよ」

桂利奈「でも、梓ちゃんが前にって言うならって……」

優希「まぁ、付き合ってあげよっかなーって」

あゆみ「ねっ」

紗希「……」コクリ

エリカ「……そう。良いわ、あなた達」

梓「え?」

エリカ「敵を前にして前進する勇気。怖くても車長を信頼してそれを実行する乗員。あなた達、良いチームね」

梓「わぁ……」

桂利奈「褒められちゃったっ!」

あや「うんっ!」

エリカ「とはいえ、実際の試合ではちゃんと指示通りにしてよ?突撃だけが作戦じゃないんだから。時には退くことも覚えなさい」

『はいっ!!』

エリカ「ん。それじゃあ戻りましょうか―――――期待しているわよ、新兵さん♪」

112: 2018/01/08(月) 18:35:44.99 ID:bimZF+EN0





蝶野「みんなグッジョブ!初めてとは思えなかったわっ!特にAチーム、よくやったわね!」

優花里「わぁ……」

沙織「やったっ」

華「ええっ」

エリカ「まぁ、このぐらいはね」

蝶野「これからも訓練励むように!わからないことがあったらメールしてね」

桃「一同、礼!」





『ありがとうございましたー!!』










113: 2018/01/08(月) 18:45:09.07 ID:bimZF+EN0
沙織「さーってお風呂行こー♪」

華「そうですね」

優花里「流石に疲れましたぁー」

麻子「疲れた……眠い……」









エリカ「……」

蝶野「逸見さん、ちょっといいかしら?」

エリカ「なんでしょうか?」

蝶野「いえ、ちょっと気になってね」

エリカ「……ナンパならお断りですよ?」

蝶野「それは残念ね。……その、あなたがまた戦車道をしているとは思わなかったわ」

エリカ「……ええ、私もこのチャンスを活かしたいと思っています。転校こそ不本意でしたが、どうやら私と戦車道は切っても切れないようですね」

蝶野「……そう。私はあなたの事情を理解しきれていないけど、それでも去年の事は……」

沙織「えりりん何してるのー?お風呂行こーよー!」

エリカ「……すみません、そういうことなのでもういいでしょうか?」

蝶野「……ええ。ごめんなさいね呼び止めちゃって」

114: 2018/01/08(月) 18:49:11.05 ID:bimZF+EN0











蝶野「……こればっかりは即撃破って訳にはいかないわね……」










115: 2018/01/08(月) 18:52:47.57 ID:bimZF+EN0




カポーン


沙織「なんか告白されるよりドキドキしちゃったー♪」

エリカ「された事あるの?」

華「沙織さんの脳内での話です」

エリカ「そう……」

沙織「冗談だからっ!?そんな哀れみの目でみないで!?」

華「しかし、今日は後半役に立てなくて申し訳ありません……」

エリカ「しょうがないわよ。むしろ初めてにしてはよくやったほうよ」

優花里「そうですっ!最初の挟撃から逃げられたのも華殿のおかげですからっ!」

華「ありがとうございます……あと、その……私に砲手をやらせていただけないでしょうか!?」

エリカ「え?」

華「あの、撃った瞬間のジンジンとした快感が忘れられなくて……」

エリカ「そ、そう?まぁ、いいんじゃない?華集中力ありそうだし」

優花里「それでしたら私が装填手をやらせていただきますっ!」

沙織「じゃあ私は通信手かなー」

エリカ「それじゃあ操縦手は……」

116: 2018/01/08(月) 18:55:39.20 ID:bimZF+EN0
麻子「……」ザバァ

エリカ「……冷泉さん。操縦手やってくれない?」

沙織「あっ!それいい!麻子、運転すごく上手かったし!」

麻子「断る。それに、もう書道を選択している」

エリカ「……お願い。あなたの力が必要よ」

麻子「借りはもう返した」

エリカ「なら、私への貸しでっ!!」

麻子「人に貸しを作るつもりはない」

エリカ「っ……」

華「なんとか、お願いできないでしょうか!」

優花里「冷泉殿の運転なら安心して任せられます!!」

麻子「悪いが他をあたってくれ」

沙織「っ!単位3倍だよ!!遅刻200日分免除だよ!?どうするのっ!このままじゃ留年して、私達を先輩って呼ぶ羽目になるんだよっ!?
  
   私、実は上下関係には厳しいタイプだから後輩になった瞬間徹底的にこき使うからねっ!それに、おばあちゃんになんて説明するのっ!?」

麻子「っ…………………わかった、やろう」

優花里「やったっ!よろしくお願いします!」

華「よろしくお願いします」

エリカ「よろしく」

麻子「……ん」

117: 2018/01/08(月) 19:01:34.01 ID:bimZF+EN0





沙織「それじゃあえりりんまた明日ー!」

華「エリカさんまた明日」

エリカ「ええ、明日もよろしくね」

優花里「……」











エリカ「……」スタスタ

優花里「あ、あのっエリカ殿!!」

エリカ「優花里?どうしたのよ」

優花里「その、聞きたいことがありまして……」

エリカ「聞きたいこと?さっき聞けばよかったのに」

優花里「その、二人っきりじゃないと聞けなくて……」

エリカ「そう。で、何?」

優花里「その、私ずっと前から戦車道に興味があって……でも、大洗女子学園は戦車道は廃止されてて……

   だから、雑誌や試合を見に行って楽しんでたんです」

エリカ「そういう楽しみ方もあるわね。それで?」

優花里「それで……その……」

エリカ「聞きたいことがあるならはっきり言いなさい」

優花里「その、私去年の全国大会の決勝見てたんです。……現地で」

エリカ「……それが?」

優花里「だから、その、あの事故が気になって調べたんです。それで……っ!エリカ殿っ!あなたはっ!!」

118: 2018/01/08(月) 19:05:35.22 ID:bimZF+EN0


ガッ




優花里「ぐっ!?」


ギリッギリ


優花里「え、エリカ殿、く、苦しい………っ」

エリカ「――――あなた、そこまで知っているのね。よく調べたわ」

優花里「エリカ、殿……」

エリカ「でも私言ったわよね?無遠慮な子にはそれなりの態度を取るって」グッ

優花里「ぐぅっ!?」

エリカ「だから、それはあなたの胸に秘めておきなさい。うちのチームにはあなたが必要だから」バッ

優花里「っ!げほっ、えほっ!?」

エリカ「……あなたが何も言わない限り、私は何もしないわ。……せっかく戦車に乗れたんだもの。まだ楽しみたいわよね?」ジッ……

優花里「ひっ……」

エリカ「わかった?」

優花里「は、はいっ!!」

エリカ「それでいいわ。……それじゃあね、また明日」スタスタ

119: 2018/01/08(月) 19:09:14.98 ID:bimZF+EN0










優花里「エリカ殿、あなたは……あなたは何故……」









127: 2018/01/13(土) 17:15:01.47 ID:Tgqt0tZH0




エリカ「……」テクテク

優花里「あっ……」

エリカ「優花里、おはよう」

優花里「お、おはようございますエリカ殿……」

エリカ「……そんなに怖がらないでよ。昨日はちょっとやりすぎたって思ってるんだから」

優花里「い、いえ……こちらこそ配慮が足りず申し訳ありませんでした……」

エリカ「……」

優花里「……」

エリカ「……今日の戦車道の授業は私が指揮を取るわ」

優花里「え?」

エリカ「まずは戦車を思い通りに動かせるようにしてもらわないと。その後は射撃訓練ね。

    練習だから装填速度は求めないけど、一発一発を効率よく装填できるように考えながらやりなさい」

優花里「……はい」

エリカ「頑張りましょう」

優花里「はい…………エリカ殿」

128: 2018/01/13(土) 17:19:40.53 ID:Tgqt0tZH0






エリカ「………何、これ」







八九式『バレー部復活!』

典子「うんうん!意気込み充分っ!」






おりょう「Ⅲ突、かっこよくなったぜよ」

カエサル「支配者の風格だな」






杏「おほー、ド派手だねぇ」

桃「会長の威光を世に知らしめましょうっ!」

柚子「ちょっと目に痛いかな……」





あや「やっぱ私達もピンクとかに塗り替えようよー」

梓「だめっ!このままで行くのっ!!」

129: 2018/01/13(土) 17:23:18.16 ID:Tgqt0tZH0
エリカ「……ねぇ優花里。私が知らないだけで実は凄いタクティカルアドバンテージがあるのかしら?」

優花里「ああぁぁぁ……なんてことを………」

エリカ「……無いわよね」

沙織「私達も塗り替えれば良かったっ!!」

エリカ「……そうねぇ」

優花里「エリカ殿っ!?」

沙織「えりりんもそう思う!?」

エリカ「私だったら……そうね、月光をそのまま閉じ込めたような美しい銀色にするからしら」

沙織「えー?えりりん生徒会とセンス変わんないね」

エリカ「……まぁ、色はそのうち戻るでしょう」

沙織「そうなの?」

エリカ「とにかく、今日は基礎訓練よ。基礎を固めないことには上昇は見込めないわ」

131: 2018/01/13(土) 17:27:15.24 ID:Tgqt0tZH0





桃「今日の訓練ご苦労だった。基礎固めは戦力の向上において絶対に避けられないことだ。各自自主練に励むように!」

『はーいっ!』

桃「それと突然だが今度の日曜日練習試合を行うことになった」

エリカ「え?」

沙織「練習試合?」

優花里「どことやるんですか?」

エリカ「いや、そのうちどこかとやらせようとは思ってたけど……私何も聞いてないわよ?」

桃「相手は聖グ口リアーナ女学院」

エリカ「聖グロっ!?全国大会で準優勝したこともある強豪じゃないっ!?こんな無名校との試合、どうやって取り付けたのよっ!?」

杏「え?なんか、練習試合したいからよろしくーって頼んだらOKもらった」

エリカ「そんな適当な……」

桃「とにかくっ!これは全国のレベルを知る絶好の機会だ。全員気を引き締めて望むようにっ!解散っ!」

132: 2018/01/13(土) 17:33:05.36 ID:Tgqt0tZH0





エリカ「さて、リーダーは全員揃った?」

杏「いるよー」

典子「はいっ!」

カエサル「うむっ」

梓「はいっ!!」

エリカ「ん、それでは作戦会議を始めるわ。聖グ口リアーナの特徴は一言で言うと、強固な装甲と連携ってとこね」

典子「それだけですか?」

エリカ「それだけって……正直、戦車道においてこれ以上の強力な特徴は無いわ。こちらのスパイクはいくら打ってもブロックされるのに、

    相手のスパイクはバンバン入る……こう言うとわかってもらえるかしら?」

典子「は、はいっ!それは強力ですっ!」

エリカ「それに対して私達の戦車は装甲は貧弱。砲撃も100メートル以内じゃ無いと通用しない。おまけに連携もろくに取れないでしょうね」

桃「そっ、それでは勝てないではないか!?」

エリカ「落ち着きなさい桃ちゃん」

桃「桃ちゃん言うなっ!」

133: 2018/01/13(土) 17:41:21.14 ID:Tgqt0tZH0
エリカ「確かに勝ち目は薄いわ。でも、だからこそ作戦が重要になってくるの」

カエサル「何か策があるのか?」

エリカ「私たちと相手で私たちが勝ってる部分それは、試合会場がホームということよ」

典子「勝手知ったる土地。落ち着いて戦えますっ!!」

エリカ「その通り。地の利というのはそれだけで戦況をひっくり返せるアドバンテージになるわ」

梓「でも、今の私たちじゃ落ち着いて戦えても……」

エリカ「もちろんそれだけじゃないわ」

桃「ほかに何かあるのか?」

エリカ「ええ、試合会場のこの地点。この高台に敵をおびき寄せて上から全車両で攻撃。戦車は上の装甲が弱いからこれなら私達の車両でもチャーチルを撃破できるわ」

梓「どうやっておびき寄せるんですか?」

エリカ「私達のⅣ号が囮になるわ」

梓「だ、大丈夫なんですか!?」

エリカ「現状、一番戦車を動かせるのは私達だからね」

カエサル「なら、任せよう!」

典子「スパイクはきっちり決めるから!」

エリカ「……でも、こんな安直な作戦聖グロに通用するとは……」ボソッ

杏「逸見ちゃんどうしたの?」

エリカ「……いえ、なんでもないわ。リーダーは今言ったことをちゃんと乗員に伝えてね。それじゃあ、解散」



『はいっ!』




エリカ「……素人集団にあれ以上を求めても難しいだろうし……決着はすぐに付きそうね」

杏「あ、逸見ちゃん。負けたらあんこう踊りだから」

エリカ「は?」

134: 2018/01/13(土) 17:48:21.06 ID:Tgqt0tZH0




沙織・華。優花里『あ、あんこう踊りーーーーーーーーー!!?』

エリカ「あなた達も他の子とおんなじリアクションするのね……」

沙織「あんなの見られたらお嫁に行けなくなっちゃうよっ!?」

優花里「一生ネットの晒し者……」

華「かくなる上は聖グロの隊長に薬でも盛って……」

エリカ「一名物騒なこと考えてるわね……」

沙織「こうなったら勝つしか無いよ!!」

優花里「はいっ!」

華「命、咲かせてみせましょう」

エリカ「……まぁ、士気が上がったならいいか」

135: 2018/01/13(土) 17:56:43.40 ID:Tgqt0tZH0





キュラキュラ

エリカ「……まさか戦車で送迎する日が来るとは思わなかったわ」

麻子「うぁ……」

沙織「ほら麻子、顔洗って歯磨きして、ご飯食べて着替えちゃって」

麻子「無理だ……人は、寝なくてはいけない……」

エリカ「この駆動音の中でよく寝ぼけてられるわね……。まぁ、現地に着くまでは寝かせておいてあげなさい」

麻子「か、感謝する……ぐぅ」

沙織「ああ麻子!?もう、せめて着替えてってば!!」

136: 2018/01/13(土) 17:58:00.24 ID:Tgqt0tZH0





桃「本日は急な申込みにも関わらず、試合を受けて頂き感謝する」

ダージリン「構いませんことよ。それにしても、随分個性的な戦車ですこと」

エリカ「この日本でそんな佇まいのあなた達も体外だと思いますよ?まぁ、戦車については同感ですけど」

ダージリン「あら?あなたは確か……逸見、エリカさんでよかったかしら?」

エリカ「……聖グロの隊長に名を知られてるなんて有名になったものですね」

ダージリン「ええ、それなりには。……黒森峰から転校したとは聞いていましたが、まさかこんなところで戦車道を再開しているとは思わなかったわ」

エリカ「……私もそう思っています」

ダージリン「それは喜ばしいことだけれど勝負は勝負。私たちは例え戦車道が復活したばかりの学校相手でも手加減はしないわ」

エリカ「望むところです」

ダージリン「サンダースやプラウダの様な下品な戦い方はいたしませんわ。優雅に余裕を持って美しく。……楽しい試合にしましょう?」

エリカ「……ええ、胸を借りる気持ちでやらせていただきます」

137: 2018/01/13(土) 18:00:18.01 ID:Tgqt0tZH0





エリカ「みんな、聞こえてる?」

優希『Dチーム、聞こえていまーす』

妙子『Bチーム、オッケーですっ!!』

エルヴィン『Cチーム、聞こえているぞ』

杏『Eチーム、オッケーだよ』

エリカ「よし、それじゃあ確認しておくけど、今回の試合は5対5の殲滅戦。どちらかが全滅したら負けになるわ。作戦は事前に説明した通り私達のⅣ号が前に出て相手をおびき寄せて、

    その間にあなた達は高台に移動。私達が敵を引き連れてくるのを待ってて。敵がキルゾーンまで来たら一斉砲撃。……なにか質問はある?」

梓『あの……』

エリカ「澤さん?どうしたの?」

梓『もし高台で敵を仕留められなかったら……』

桃『貴様っ!そんな弱腰でどうするっ!絶対に仕留めるんだっ!!』

エリカ「桃ちゃん黙ってて」

桃『だから桃ちゃんと言いうなー!!』

エリカ「そうね、確かにその可能性は充分にあるわ。……だけど、今のあなた達に必要なのは勝つことじゃなくて自分たちの現状を知ること。

    今言った作戦に集中しなさい。……一応、策は考えてあるから必要になったら指示するわ」

梓『わかりましたっ!』

エリカ「それじゃあ試合開始と共に作戦開始よ」








『試合開始っ!!』













エリカ「作戦開始っ!!Ⅳ号が先行して偵察、その後囮になるわ。冷泉さんお願い」

麻子「わかった」

沙織「絶対に勝つよっ!!」

華「ええ」

優花里「あんこう踊りは絶対に避けましょうっ!!」

エリカ(……そんなに嫌がられるってどんな踊りなのよ……)

144: 2018/01/16(火) 18:23:36.38 ID:6cwHzaKC0




エリカ「マチルダⅡ4輌、チャーチル1輌前進中」

優花里「さすが、綺麗な隊列ですね!」

エリカ「ええ。正直この時点で相手との実力差を思い知らされるわ。その上戦車の性能も相手が上。勝ち目は薄いわね」

優花里「そんなこと言わないでくださぃぃ……」

エリカ「わかってるわよ。負けることも勉強だけど、勝ちを目指さない敗北は無意味よ」

優花里「その通りですっ!」

エリカ「勝負は戦術と腕……それと運で決まるわ。今回は運がこちらに傾くことを祈りましょう」

優花里「運頼みですかぁ……」

エリカ「運が転がってきた時に取りこぼさないのも実力よ。ほら、そろそろ行くわよ」

優花里「はいっ」






ダァン!

オレンジペコ「仕掛けてきましたね」

ダージリン「こちらもお相手しますか」


ダァンダァン!!


エリカ「よしっ、釣られてくれたわっ!!冷泉さん移動してっ!!」

麻子「了解だ」

エリカ「こちらの装甲は薄いから射線を取られないように注意してねっ!」

145: 2018/01/16(火) 18:30:47.59 ID:6cwHzaKC0





桃「っ……逸見はまだ来ないのかっ!?」イライラ

杏「落ち着けって。待つのも仕事の内でしょ」

柚子「だからってバレー部はバレーの練習始めてるし、一年生チームは大富豪してるし……緊張感無いなぁ」

あや「梓は混ざんないのー?」

梓「逸見先輩たちがいつ来ても良いようにしておかないと……」

優希「梓真面目ー」

梓「みんなもそろそろ準備してよー!」

エリカ『こちらⅣ号、敵の引きつけに成功。あと3分でそっちに到着するわ。準備お願い』

桃「っ!Ⅳ号が戻ってきたぞっ!全員戦車に乗れーっ!!」

146: 2018/01/16(火) 18:35:11.80 ID:6cwHzaKC0

エリカ「……もうすぐね。冷泉さん、スピード上げて!ここで引き離すわよっ!!」

麻子「わかった」

沙織「えりりん、そんなところから体出してたら危ないよっ!?」

エリカ「え?……ああ、大丈夫よ。戦車は特殊なカーボンで守られてるんだから」

沙織「えりりんはカーボン製じゃないでしょっ!?せめてもうちょっと頭下げてってばっ!!」

エリカ「こっちのほうが見やすくて良いんだけどね。まぁ、そう言うなら……はい、これでいいでしょ?」

沙織「もー……見てて危なっかしいんだからぁ……怪我はさせないって言ってるえりりんが怪我したらどうするのっ!」

エリカ「そう当たるものじゃ無いわよ……っと、そうこう言ってるうちに着いたわよ。冷泉さん、そのまま高台に――――――」




ダァンダァン!!



エリカ「なっ!?」





桃「撃て撃て撃て―!!撃って撃って撃ちまくれーっ!!」

梓「河嶋先輩っ!!あれは逸見先輩たちの戦車ですってっ!?」









ダァンダァンダァン!!



沙織「味方を撃ってどうするのよーっ!?」

エリカ「……戦場での氏亡理由って結構な数が味方からの誤射なんだっけ?」

優花里「今その話必要ですか―!?」

エリカ「……沙織、38tに繋いで」

147: 2018/01/16(火) 18:38:04.81 ID:6cwHzaKC0
桃「撃て撃て撃て―!!」

エリカ『すぅーっ……河嶋桃ぉぉぉぉー!!!!!!!!!!!』

桃「ひぃっ!?」ビクゥッ

エリカ『あなた、味方を撃ってどうするのっ!?』

桃「い、いや私だけじゃ……」

エリカ『あなたの乗ってるピッカピカの下っ品な金色38tから撃ちだしたの見えてたわよっ!!』

桃「そ、その……」

エリカ『……良いから落ち着きなさい。破れかぶれに撃っても弾は当たってくれないわ、冷静に、心を落ち着けて。

    今回は見逃してあげるから。いい?狙うのは敵戦車よ。わかった桃ちゃん?』

桃「も、桃ちゃん言う……」

エリカ『返事はっ!!?』

桃「は、はいっ!!」

エリカ『ならよしっ!!』

桃「……うぅ」

杏「怒られちゃったね」

柚子「あれは桃ちゃんが悪いよぉ」

桃「桃ちゃん言うなぁ……」

148: 2018/01/16(火) 18:43:00.96 ID:6cwHzaKC0
ダージリン「あちらの練度は低いようね。それに加えて、こんな安直な囮作戦が通用すると思っているの?」

桃「き、来たっ!?今度こそ撃て撃てー!!」



ダァンダァンダァン!!



エリカ「バラバラに撃ってもダメッ!!上部装甲なら私達の戦車でも倒せるわっ!!」


ダァンダァンダァン!!


ダージリン「このまま挟み撃ちにしてやりましょう」


ダァンダァンッ!!


沙織「全然当たってないよぉー!?」

エリカ「っ……やっぱりまだ練習試合には早かったかしら……」

優花里「挟み撃ちされますっ!?」

エリカ「っ!八九式とⅢ突は左側、38tとM3は右側の先頭車両の履帯を狙ってっ!1輌でも動きを止めなさい!!」

149: 2018/01/16(火) 18:45:57.63 ID:6cwHzaKC0
ダージリン「……攻撃」

ドォンドォン!!

典子「凄いアタックッ!!」

あや「ありえなーいっ!!」

エリカ「落ち着いてっ!攻撃を止めないで!!」




あゆみ「無理ですぅーっ!!」

優希「もう嫌ぁああっ!!」

梓「っ……落ち着いてっ!!!!砲弾の中、外に出たらもっと危ないよ!?戦車はちゃんとカーボンで守られてるから安全だって!!」

優希「梓ちゃん……」

梓「わ、私だって怖いよ……でも、私達が決めたんだよ。M3<この子>に乗るって。だからっ!!」

あや「梓、なんだかバレー部の人達みたい……」

桂利奈「私はまだやれるよっ!」

紗希「……」コクリ

あや「紗希もぉ?なら、やるしか無いじゃん!」

あゆみ「……うんっ!」





ズドォン!ズドォン!!

柚子「あれ?あれれっ?」

杏「あー履帯が外れちゃったね。38tは外れやすいからなぁ」

150: 2018/01/16(火) 18:50:04.11 ID:6cwHzaKC0
ズドォン!ズドォン!!


エリカ「っ……なんとか全員生きてるけど、このままじゃ……」









栗毛の少女『……』









エリカ「っ!?あなた、なんで……」

沙織「え?えりりんどうしたの?」

エリカ「っ!?なんでもないわ!!」

151: 2018/01/16(火) 18:52:51.12 ID:6cwHzaKC0


栗毛の少女『……』スッ






エリカ「町……?私だって考えたわ。でも、相手の方が練度も性能も上なのにゲリラ戦を仕掛けたところで各個撃破されるのがオチよっ……」


ドォンドォンッ!


沙織「えりりんっ早く指示をっ!!このままじゃ皆やられちゃうっ!!」

エリカ「ッ……私は、あなたの作戦なんかっ……」

梓『逸見先輩っ!!』

エリカ「澤さん……?」

梓『私達逃げませんっ!!練習だからって、このまま終わるなんて嫌ですっ!!」

エリカ「……」

梓『だからっ!指示お願いしますっ!!私たちは―――――まだ戦えますっ!!』

152: 2018/01/16(火) 18:56:50.81 ID:6cwHzaKC0

エリカ「……わかったわ。動ける車両は私達の後に付いてきてっ!」

桃『何っ!?逃げるのか!?許さんぞ!!』

梓『っはい!!』

典子『わかりましたっ!!』

エルヴィン『心得たっ!!』




エリカ「……」





栗毛の少女『……』スゥ―






エリカ「……あなたの策に乗るわけじゃないわよ。ただ、あの女王様のドヤ顔がイラつくだけ……だからっ!」





153: 2018/01/16(火) 18:57:39.31 ID:6cwHzaKC0








エリカ「みんなっ!ここからが第二ラウンドよっ!!気合い入れていきなさいっ!!」








『はいっ!!』




158: 2018/01/20(土) 18:15:50.62 ID:ALG66guy0
ダージリン「逃げ出したの?追撃するわよっ!」

オレンジペコ「履帯の外れた38tはどうします?」

ダージリン「放っておきなさい。そちらにかまって時間稼ぎをされると厄介だわ。

      ……それに、これはあくまで練習試合。勝利だけを求めて、動けなくなった相手を撃つのは騎士道精神に反するわ」

アッサム「ダージリンらしいですね」

159: 2018/01/20(土) 18:21:55.81 ID:ALG66guy0






エリカ「これから市街地に入るわっ!あなた達、土地勘はある!?」

エルヴィン『古書類は陸じゃないと見つからないからな。寄港の度にカエサル達と手分けして探してるぞ』

妙子『バレー用品店によく……』

優希『彼氏とのデートでよく来てまーす♪』

エリカ「どいつもこいつも色気のない話ね……約一名はただの惚気だったけど。

    まぁいいわ。これより各チームは各々の意志で行動してっ!」



エルヴィン「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変にというわけか」

おりょう「要するに、行き当たりばったりということぜよ……」

エリカ『違うわよっ!』



エリカ「Ⅲ突の狭い射角も待ち伏せがしやすい町中ならデメリットが小さくなるわっ!
   
    八九式は例えゼロ距離で撃っても相手の装甲を貫くのは難しいわよ。油断しないでっ!!

    M3も同じ!この際、建物の事は気にせず逃げるため隠れるためどんどんぶっ壊しなさいっ!どうせ補償は国が払ってくれるわっ!!」

麻子「外部に流れたら叩かれそうな発言だな」

エリカ「はっきり言ってこの作戦、最後にものを言うのは各員の腕よっ!あなた達の実力、見せてみなさいっ!!」




『了解っ!!』




160: 2018/01/20(土) 18:29:06.00 ID:ALG66guy0
ダージリン「ん?消えた……」

オレンジペコ「土地勘を活かしてゲリラ戦術ってことですかね」

ダージリン「ふっ舐められたものね。『獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす』
 
      相手が兎さんでも私達のすることは変わらないわ。紅茶の一滴も零さず狩り尽くすまでよ」

オレンジペコ「はい。ダージリン様」

ダージリン「各車散開。誘いに乗ってあげましょう」

161: 2018/01/20(土) 18:36:46.42 ID:ALG66guy0




エルヴィン「……マチルダⅡこちらに接近中」

左衛門佐「今度こそ初首を……」

カエサル「焦るな。この距離なら一撃で仕留められる」



エルヴィン「…………今っ!!」

左衛門佐「っ!!」


ドォン!! 


シュポッ



エルヴィン「よっしっ!!」

左衛門佐「初首だーっ!!」

カエサル「次行くぞっ!!」

おりょう「おうっ!」


ドォンドォン!!


エルヴィン「くっ、見つかったか。路地裏に逃げ込めいっ!!」

おりょう「おうっ」

エルヴィン「入り組んだ道に入ってしまえば良い。Ⅲ突は車高が低いからな」

左衛門佐「このまま闇討ちで大将首だーっ!!」

カエサル「……あっ、旗」

エルヴィン・左衛門佐・おりょう『あっ』


ドォンッ!!


シュポッ






162: 2018/01/20(土) 18:48:56.00 ID:ALG66guy0




―立体駐車場内―


妙子「キャプテン、これ本当に大丈夫ですか……?」

忍「気づかれたら逃げようが無いですよ?」

典子「八九式の主砲じゃこの距離じゃないと仕留められない。じっと待つんだっ!」

あけび「……来ましたっ!」

典子「よしっ!………………今だっ!!」

あけび「っ!!」

ダァンッ!

バァンッ!!

妙子「やったぁ!」

典子「油断するなっ!……っ!?燃えてるのは表面だけだっ!!まだ相手は生きてるっ!!撃ち続けろっ!!」

あけび「っ!!」

ダァンッ!カンッ!

あけび「弾かれるっ!?」

典子「怯むなっ!!どんどん撃てーっ!!根性見せるんだっ!!」

忍「砲塔がこっちを向きますっ!!」

ダァンッ!カンッ!

典子「この距離でもっ……くっそおおおおおっ!!」

あけび「っ!!!!」


ダァン!

ドォンッ!!



シュポッ




典子「……隊長、すみません。セット、取れませんでしたっ…!!」





163: 2018/01/20(土) 18:57:02.64 ID:ALG66guy0





ドォンッ!!

あや「うわあああ見つかったあああっ!?」

梓「とにかく逃げてっ!路地裏に逃げて後ろを取れればっ!!」

桂利奈「あいっ!!」

梓「っ!まだ追ってくるっ!!」

桂利奈「怪獣映画みたいー!!」

あゆみ「言ってる場合っ!?」

梓「っ!?まずいっこの道はっ!?」

あゆみ「真っ直ぐじゃんっ!?どーするの!?逃げ場無いよ!っ!?」

あや「追いつかれるよっ!?」

梓「……こうなったらっ!家主さんごめんなさいっ!!桂利奈ちゃんっ!右の家に突っ込んで!!ショートカットだよっ!!」

桂利奈「あいっ!!!」

優希「ええ!?乱暴ー!?」

梓「行っけー!!」


ドォォォン! 



梓「そのまま突っ切ってっ!」



ドォォン!

164: 2018/01/20(土) 19:03:18.97 ID:ALG66guy0
あゆみ「道に出たっ!」

あや「相手の後ろ取れたよっ!!」

梓「撃ってっ!!」


ダァンダァン!

あや「駄目っ!固くて通らないっ!!」

梓「もっと近づいてっ!薄いところなら通るはずっ!!砲塔旋回される前にっ!!あゆみしっかり狙ってっ!!」


ダァンダァン!!


シュポッ


梓「……やった」

あゆみ「うん……」

あや「私達……」

優希「勝ったのね……」

桂利奈「やったあああああああああ!!」

紗希「……」ボー……

165: 2018/01/20(土) 19:08:46.68 ID:ALG66guy0




『攻撃を受け走行不能っ!!』

『こちらもですっ!!』


ダージリン「なっ!?」ポロッ


パリンッ!!


ダージリン「お、おやりになるのねっ……!」

アッサム「2輌も撃破されるとは……」

ダージリン「でも、ここまでよっ、残った2輌は集合して。Ⅳ号を討つわよ」










エリカ「マチルダ2輌撃破……まさかホントにできるとはね。これならっ……澤さん」

梓『はいっ!』

エリカ「あなた達に頼みがあるわ。……難しいけれど、私はあなた達に頼みたい―――――やってくれる?」

梓『任せてくださいっ!!』

166: 2018/01/20(土) 19:14:40.75 ID:ALG66guy0






沙織「うわああ!?えりりん来てる来てるー!?」

優花里「マチルダ2輌にチャーチル1輌、残存戦力で私達を叩きにきましたっ!!」

エリカ「聖グロの女王様に追いかけられるだなんて光栄な話ね」

麻子「どうする?」

エリカ「囲まれたらまずいわ。とにかく振り切って」

麻子「わかった」

エリカ「華、当たらなくていいから追手を撃って。一瞬でも足止めできれば充分よ」

華「はいっ」


ドォン!ドォン!!



麻子「……しまった」

167: 2018/01/20(土) 19:18:30.07 ID:ALG66guy0






『全面通行止』






エリカ「これを知ってて……ッ!下がって横の道に……っ!!」

沙織「来たっ!?」

優花里「追い詰められましたっ!?」

ダージリン「……こんな格言を知ってる?『イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない』」

エリカ「っ……こうなったら刺し違えてでもあと1輌――――」


ギュイイイン!

杏「さんじょー!!」




エリカ「生徒会チームっ!?」

優花里「履帯直ったんですねっ!」






杏「かーしまっ!!」

桃「は、はいっ!!」

168: 2018/01/20(土) 19:22:48.12 ID:ALG66guy0








『……良いから落ち着きなさい。破れかぶれに撃っても弾は当たってくれないわ、冷静に、心を落ち着けて』







桃「っ!!」

ダァンッ!!


シュポッ

柚子「桃ちゃん当たったよっ!!」

桃「や、やったっ……」

杏「でも、残りの砲塔こっちむいてるね」


ドォンドォンッ!


シュポッ

169: 2018/01/20(土) 19:32:10.25 ID:ALG66guy0
エリカ「っ!!今のうちに左に入ってっ!!」

麻子「わかった」

エリカ「華っ!!」

華「はいっ!!」

ドォンッ!


シュポッ





エリカ「……桃ちゃん」

桃『も、桃ちゃん言―――』

エリカ「よくやったわ。……ありがとう」

桃『え?』





アッサム「残ったのは私たちだけです」

ダージリン「……まさか私たちがここまで追いつめられるとはね」

オレンジペコ「油断しすぎです」

アッサム「ですね」

ダージリン「……そうね、勉強になったわ」

170: 2018/01/20(土) 19:38:07.89 ID:ALG66guy0





優花里「チャーチル追いかけてきてますっ!!」

エリカ「そりゃそうよねっ!冷泉さん、こちらのほうが足は速いけど引き離しすぎず、ぎりぎり追いつかれそうな距離を保ってっ!」

麻子「わかった」

華「でも、一年生チームのことは……」

エリカ「気づいているでしょうねっ!!でも、私達を逃したらそれこそ挟み撃ちにされるから見逃すことはできないわっ!!」

沙織「これ、ほんとに勝てるかもっ!!」

優花里「エリカ殿、そろそろ!!」

エリカ「ええっ!冷泉さんっ!そのまま反転!側面に突っ込んでっ!!」

麻子「ん」

エリカ「華はさっき話した通りにお願いっ!!」

華「わかりました」

エリカ「行くわよっ!!」

171: 2018/01/20(土) 19:43:04.37 ID:ALG66guy0
アッサム「突っ込んできます」

ダージリン「側面を取るつもりね。アッサム、速度は相手のほうが上よ、落ち着いて狙って」

アッサム「はい」



エリカ「っ撃てっ!!」

ダージリン「撃て」


ダァン! ダァン!


シュポッ



エリカ「っ……華ッ!?」

華「こちらはやられたようです。……ですが、目的は果たせました」

エリカ「よしっ!」

172: 2018/01/20(土) 19:47:54.85 ID:ALG66guy0
ダージリン「履帯をやられた?」

オレンジペコ「狙いが外れたんでしょうか?」

ダージリン「いえ、違うわ……彼女たちの目的は―――――」




ドォォォン!!







アッサム「M3!?住宅の中に隠れてたのっ!?」

ダージリン「最初からこのつもりだったのねっ!!」

オレンジペコ「囮作戦っ……」





エリカ「女王様、確かにあなた達は強いわ。だからこそ胸を貸してもらおうと思ったんだもの」

   ――――でも、ちょっと余裕かましすぎたわね?同じ作戦に2度も引っかかるなんて」

173: 2018/01/20(土) 19:50:01.06 ID:ALG66guy0
オレンジペコ「履帯がっ……旋回できないっ!後ろを取られましたっ!!」









エリカ「だから潔く買ってやりなさい―――――あの子達のケンカを!!」







梓「行くよみんなっ!!」

『おーっ!!』

174: 2018/01/20(土) 19:54:40.66 ID:ALG66guy0
オレンジペコ「ダージリン様っ!アッサム様!どうしましょうっ!?」

アッサム「落ち着きなさいペコ」

ダージリン「そうよペコ。履帯をやられても、もう片方あれば角度をつけることはできるわ。――――アッサム、撃ち抜いてやりなさい」






梓「相手は動けないわっ!!砲塔がこちらに向く前にとにかく撃ってっ!!」

あゆみ・あや「「オッケー!!」」

ダァンダァン!!

カンッ!ダンッ!

あゆみ「弾かれたっ!?」

紗季「……来る」

桂利奈「ん゛っ!!」

キュラキュラ

ドォンッ!!

ガンッ!!






アッサム「避けられたっ!?」

ダージリン「でも、掠ってバランスを崩したわ。ペコ装填急いで」

オレンジペコ「はいっ!」

175: 2018/01/20(土) 19:58:48.48 ID:ALG66guy0
梓「早く向き直ってっ!次が来るっ!!」

桂利奈「ん゛ん゛っーーーー!!」









梓「撃てっ!!」







ダージリン「撃て」







ダァンダァン!!

ガンッガンッ!!


ドォンッ!!



シュポッ!





176: 2018/01/20(土) 19:59:29.77 ID:ALG66guy0








『大洗女子学園、全車両走行不能!よって、聖グ口リアーナ女学院の勝利!』









183: 2018/01/21(日) 21:57:20.02 ID:gLlWNoZC0





エリカ「……負けた、か」

梓「あの……」

エリカ「澤さん?」

梓「逸見先輩すみませんでしたっ!!せっかくのチャンスを活かせなくて……」

エリカ「良いのよ、むしろ聖グロ相手にあそこまで肉薄できたのだもの。上出来よ」

梓「でも……」

エリカ「……確かにM3の主砲でもあの距離ならなんとかなったかもしれないわ。

    でも、それは結果論よ。それに納得出来ないならもっと上を目指しなさい」

梓「は、はいっ!!」

エリカ「今回の敢闘賞は間違いなくあなた達よ。期待してるわ。梓……って呼んでいいかしら?」

梓「は、はいっ!はいっ!!わ、私もエリカ先輩って!!」

エリカ「ええ、これからもよろしくね……そこのみんなもね」

184: 2018/01/21(日) 22:01:24.07 ID:gLlWNoZC0
梓「えっ?」

優季「ばれちゃったぁー」

あゆみ「やっぱり一箇所に隠れるのは無理だったね」

あや「まぁいいじゃん」

桂利奈「私もよろしくお願いしますっ!!」

紗希「……」

梓「みんないたのっ!?」

優季「梓だけが怒られたら可哀想だなって思ったからね」

あや「その時は一緒に怒られようって」

梓「みんな……」

エリカ「ほら、言ったでしょ?」

梓「え?」

エリカ「あなた達、いいチームねって」

梓「……はいっ!」

185: 2018/01/21(日) 22:07:18.23 ID:gLlWNoZC0





エリカ「……」

ダージリン「随分と後輩に慕われているようね」

エリカ「ダージリンさん?」

ダージリン「私も、情報収集の一環で調べた程度だけれど……黒森峰の時とは随分変わったみたいね」

エリカ「……人のプライベートに口を出すのはあまりいい趣味とは言えませんね」

ダージリン「それは失礼。なら話を変えるわね。……まさかここまで追い詰められるとは思わなかったわ」

エリカ「……私もそう思います。正直、あの子たちが……大洗がここまでやれるとは思いませんでした」

ダージリン「なら、それを引き出したのはあなたよ」

エリカ「聖グロの隊長にそう言ってもらえるだなんて光栄です」

ダージリン「あのM3の子たちはあなたを信頼していたからこそあれほどの力を見せたのだから。

      部下の失敗は上司の責任だというけれど、部下の成功にも自身がそれの一助になった程度の功績は誇ってもいいと思うわよ?」

エリカ「ふふっ、ありがとうございます」

ダージリン「……ねぇ、こんな格言を知ってる?『何があっても人生には続きがある』」

エリカ「え?」

ダージリン「ロバート・フロストという詩人の言葉よ。あなたがどれだけの困難に直面したか、私には想像もつかないわ。……それでも、自分の人生を諦めないで」

エリカ「……聖グ口リアーナでは生徒にカウンセラーの真似事もさせるんですか?」

ダージリン「……ごめんなさい。出過ぎたことを言ってしまったわ」

186: 2018/01/21(日) 22:13:33.45 ID:gLlWNoZC0
オレンジペコ「ダージリン様こんなとこにいたんですか」

ダージリン「あらペコ。遅かったじゃない」

アッサム「居場所も言わずにいなくなったのはあなたですよ」

ダージリン「そうだったかしら?」

沙織「えりりん見つけたっ!」

エリカ「あなた達……」

華「私たちも探してたんですよ?」

優花里「エリカ殿、そろそろ戻りましょう?」

エリカ「……そうね。聖グロのみなさん、そういうわけだからそろそろ戻らせてもらうわ。今日は、ありがとうございました」

ダージリン「ええ、こちらこそ。とても楽しかったわ――――白雪姫さん」

エリカ「は?なんですかそれ」

187: 2018/01/21(日) 22:17:13.97 ID:gLlWNoZC0
ダージリン「だって、雪のような髪を持ったあなたにぴったりじゃない?とっても素敵な髪だと思うのだけれど」

エリカ「白雪姫は肌が雪のように白いのであって、髪は黒だったと思いますが……」

ダージリン「あら、そうだったかしら?」

オレンジペコ「ダージリン様。よその学校の生徒に変な名前付けるのは止めましょうよ」

沙織「ええー!良いじゃん白雪姫っ!!私もえりりんにぴったりだと思うよっ!」

ダージリン「ほらぁ」

アッサム「またそんな得意げな……」

華「私も、良いと思います」

優花里「わ、私もですっ!」

ダージリン「ほらぁ!」ドヤァ

アッサム「……大洗の皆さん。あまりダージリンを甘やかさないでください」

エリカ「私もいい迷惑なんだけど……」

188: 2018/01/21(日) 22:21:37.74 ID:gLlWNoZC0
ダージリン「今日の試合、とても楽しかったわ。友好の印に後で紅茶を送らせるわね」

エリカ「あまり紅茶を嗜む習慣はありませんけど」

ダージリン「なら、これを機に。ね?」

エリカ「……考えておきます」

優花里「エリカ殿、聖グロから紅茶を送られるのはとても名誉なことなんですよっ!」

エリカ「そうなの?」

優花里「知らなかったんですかっ!?」

ダージリン「……エリカさん」

エリカ「まだ何か?」

ダージリン「戦車道、楽しんでね」

エリカ「……行くわよみんな」

沙織「あ、えりりん待ってってばっ!」

華「失礼します」ペコリ

優花里「今日はありがとうございましたっ!」ペコッ

189: 2018/01/21(日) 22:27:43.83 ID:gLlWNoZC0
アッサム「なんだか慌ただしい人たちでしたね」

ダージリン「良いことよ。泣いてばかりよりずっと」

オレンジペコ「え?」

ダージリン「エリカさん、あなたを白雪姫と呼んだ理由はもう一つあるのよ?」










ダージリン「眠り続けるあなたがいつか目覚めるようにって。だって、あなたはまだ生きているんだもの」









190: 2018/01/21(日) 22:31:21.53 ID:gLlWNoZC0






麻子「お前たち遅いぞ」ツルッ ペタッ

エリカ「え……冷泉さん何その格好……」

麻子「何って、負けたんだからこれからあんこう踊りだぞ」

エリカ「……え?あんこう踊りってそんなの着るの?……え?」

麻子「……」コクッ

エリカ「……私、ちょっと用事を思い出したから」

ガシッ

沙織「どこ行くの?白雪姫様」

華「一緒に咲いて散りましょう」

優花里「自分だけ逃げるだなんて許さないですよ!」

エリカ「……ダメ?」







『ダメ♪』







191: 2018/01/21(日) 22:32:25.71 ID:gLlWNoZC0
アアアン アアアン アン アン アン♪

あの子 会いたや あの海越えて~♪






沙織「お嫁に行けないよーっ!!」クネクネ

華「エリカさん、もっと伸びやかに、恥を捨ててくださいっ!!」クネクネ

優花里「恥ずかしがってる方がもっと恥ずかしいですよっ!」クネクネ

エリカ「っ~~~~~!なんなのよこの踊りっ!!?」クネクネ

麻子「受けたのは逸見さんだろ」クネクネ

195: 2018/01/22(月) 18:10:30.68 ID:ct1FtJg/0




エリカ「本当になんだったのよあの踊り……もう二度と御免よ……」

麻子「逸見さんにトラウマが刻まれたようだな」

華「仕方がありません……」

優花里「おいたわしやエリカ殿……」

沙織「あれ?あなた達……」

妙子「あの、すみませんっキャプテンを見ませんでした?」

エリカ「キャプテンって磯辺さんのこと?」

さけび「はい。学園艦に戻ってから見てなくて……」

忍「今日の試合が終わった後、元気が無かったみたいで……」

華「あの元気の塊のような磯部さんが……」

沙織「それで探してるの?」

妙子「はい、体育館や寮は探したんですけど……」

エリカ「元気がなくなったのは試合の後なのよね?」

妙子「はい」

エリカ「……なら、あそこにいるかも」

妙子「知っているんですか!?」

エリカ「ええ。たぶんだけどね」

あけび「どこですか!?」

エリカ「……まず私に行かせて」

196: 2018/01/22(月) 18:16:40.79 ID:ct1FtJg/0




―車庫―


典子「……」

エリカ「やっぱりここにいたのね」

典子「隊長……」

エリカ「そんなところにいたって八九式は直らないわよ」

典子「……隊長、教えてほしいことがあります」

エリカ「何?」

典子「この子は……八九式は、弱いんですか……?」

エリカ「……あなたがそれを聞くってことは、それなりの理由があるのね」

典子「今日の試合、この子の砲撃は相手の戦車に傷一つ付けることができませんでした」

エリカ「……そう」

典子「何度も至近距離でのアタックをしても、ダメでした」

エリカ「……やっぱり、そうなったのね」

典子「っ!」

197: 2018/01/22(月) 18:20:06.73 ID:ct1FtJg/0
エリカ「磯部さん、この八九式はねそもそも戦車を相手にすることを考慮されていないの。

    砲撃も、装甲も、機動力も劣っている。――――はっきり言ってこの戦車での戦車戦は無理よ」

典子「そんな……」

エリカ「もし、車長であるあなたが望むなら、余っている三式中戦車にバレー部のみんなと乗ってもらってかまわないわ。

    いえ、今後大会に出ることを考えたらそっちのほうが遥かにいい。私としてもそっちをおすすめするわ」

典子「でも……」

エリカ「確かあなた達はバレー部復活のために戦車道を履修したのよね?なら、この子は捨ててもっとちゃんとした戦車に乗ったほうが

    目的を果たす近道になると思うわよ?」

典子「わ、私は……」

エリカ「……弱いものを切り捨てるのも勝利のための努力の一つよ。それが人であろうと戦車であろうと」

典子「……逸見隊長、私は―――――」

198: 2018/01/22(月) 18:21:35.47 ID:ct1FtJg/0







妙子「違いますっ!!」








199: 2018/01/22(月) 18:23:43.66 ID:ct1FtJg/0
典子「近藤?それに佐々木に河西……」

あけび「弱さを捨てることを努力だなんて言いませんっ!!」

エリカ「……聞いてたんでしょ?なら、あなた達も理解しているはずよ。八九式ではダメだって」

忍「ダメなんかじゃないっ!!」

妙子「私たちはいつだって自分の弱点を克服しようと頑張ってます。でも、弱いところダメなところはどんなに治してもでてきます

  ――――だから、私たちは努力するんです。弱くても、ダメでも強くなれるようにっ!!」

忍「キャプテンっ!あなたが私たちに教えてくれたんじゃないですかっ!!どうしようもない弱さでも、それにしっかりと向き合えば

  きっと、きっとっ報われるって!!弱さを、歯を食いしばって受け止めるのが根性だってっ!!」

典子「みんな……」

あけび「逸見隊長、私たちは八九式で戦いたいんです。私達が見つけて、私達が選んだこの子と一緒に、戦いたいんですっ!!」

200: 2018/01/22(月) 18:30:09.25 ID:ct1FtJg/0
エリカ「……そう、あなた達の言い分はわかったわ。どこまでいっても合理性のかけらもない感情論ね。

    その根性とやらで八九式は強くなるのかしら?――――ねぇ、磯辺さん。あなたはもう理解しているのよね?

    だったら、この子達に言ってあげなさい。八九式ではダメだ。別の戦車にしようって」

典子「……」

妙子・あけび・忍「「「キャプテンっ!!」」」

典子「……きっと、逸見隊長の言うことは間違ってないんだと思う」

妙子「っ!?キャプテンっ!!」

典子「でも、私達が決めたんだ。自分たちの道を。八九式<この子>に書いた『バレー部復活!!』の文字は、

   私達が胸に刻んだ覚悟なんだっ!!正しいとか、合理的とか、そんなちっぽけなもののために私たちはバレーを、戦車道をやるつもりはないっ!!」

エリカ「……なら、どうするの?戦えない戦車に用はないわ」

典子「考えますっ!!できることを、みんなとこの子でできることをっ!!」

エリカ「やられてばかりになるでしょうね。あなた達が敗因になるかもしれない」

典子「それでもっ!!決してあきらめませんっ、それが根性ですっ!!」

201: 2018/01/22(月) 18:32:46.96 ID:ct1FtJg/0
エリカ「……そう、なら好きにするといいわ」スタスタ

典子「逸見隊長……ありがとうございますっ!!」

妙子「キャプテンっ!!」

あけび「バレーも戦車道もがんばりましょうっ!!」

忍「この子でもやれるって、見返してやりましょうっ!!」

典子「みんな……ああっ!根性だっ!!」






『はいっ!!』







202: 2018/01/22(月) 18:35:31.58 ID:ct1FtJg/0
エリカ「まったく、暑苦しい連中ね」

沙織「えりりんも大概だとおもうけどなー」

エリカ「あら?あなた達もいたのね」

優花里「そもそも、エリカ殿がバレー部の皆さんをここに連れてきたんじゃないですか」

華「磯辺さんを煽ったのも、皆さんを鼓舞するためだったのでしょう?」

エリカ「さぁね?言ったことは本心よ。それを彼女たちがどう思うかなんて知らないけど」

沙織「えりりん素直じゃないなぁ」

華「いいじゃないですか。それもエリカさんの良いところですよ」

優花里「同感ですっ!」

エリカ「そんなことより、公式戦のことでも考えてなさい」

沙織「公式戦?」

優花里「戦車道の全国大会ですっ!!」

203: 2018/01/22(月) 18:41:18.13 ID:ct1FtJg/0



―抽選会場―



『大洗女子学園、8番!!』




エリカ「……え?8番って」






優花里「一回戦の相手は、サンダース大付属……」

沙織「強いの?」

優花里「優勝候補の一つです」

沙織「えーっ!?大丈夫なのっ!?」








まほ「……」









エリカ「サンダース大附属……これは、まずいわね……」

204: 2018/01/22(月) 18:43:54.09 ID:ct1FtJg/0
雪で出かけられないので投稿。





早速ですが訂正です。

>>195、>>197

磯部さん→磯辺さん


以上のように訂正いたします。


206: 2018/01/23(火) 18:55:19.18 ID:vJHx37Gv0




―戦車喫茶 ルクレール―



エリカ「まずいわね……まずいわ……」

沙織「えりりん抽選会からそれしか言ってないよ?」

華「飲食店でまずいを連呼するのは営業妨害と取られかねませんよ?」

麻子「追い出されるのはゴメンだぞ」

優花里「と、とりあえず何か注文しましょうかっ!」


カチッ ズドォーン!!

沙織「わ、びっくりした」

店員「ご注文はお決まりですか?」

優花里「あ、エリカ殿は何にしますか?」

エリカ「ショートケーキ。……まずいわね……」

沙織「だから、その繋げ方はまずいって……」

華「沙織さんもですよ」

207: 2018/01/23(火) 18:59:35.29 ID:vJHx37Gv0





沙織「美味しいー!」

華「ええ、とても良いお味です」

優花里「見た目が戦車なのも可愛いですねっ!」

エリカ「……」モグモグ

沙織「えりりん落ち着いた?」

エリカ「……ええ。決まってしまったのはしょうがないしね」

優花里「そうですよっ!大事なのはこれからですっ」

エリカ「考え方を変えればむしろ一回戦で強豪校に当たって良かったとも言えるしね」

沙織「どうして?」

エリカ「公式戦は一回戦から準々決勝までの参加車両数が10輌って定められてるのよ。

    現状5輌しか使えない私達にとって、後に当たるほど相手との戦力差は大きくなるわ」

優花里「それでも、2倍差になってしまいますが……」

エリカ「そもそも戦車を揃えられないような学校が参加するのがおかしいのよ。……戦車道の全国大会にはね無名校は参加しないっていう暗黙の了解があるの」

沙織「そうなの?」

エリカ「ルールに明文化されているわけでもないから守らなくても罰則はないけど、私は大事なものだと思ってるわ」

華「どういうことですか?」

208: 2018/01/23(火) 19:05:37.68 ID:vJHx37Gv0
エリカ「そもそもなんでこんな暗黙の了解があると思う?」

麻子「不確定要素を弾くことで強豪校が有利になるようにか?」

エリカ「……それは結果の一面でしかないわ。どのスポーツもそうだけど、戦車道っていうのは数の差がそのまま有利不利につながるのよ

    11人でやるサッカーで相手が5人しかいない状態で始まる試合を見たことがある?戦車道の試合はそれが許されるのよ」

優花里「現に私たちがそうですし……」

沙織「バレー部のみんなは人数が足りないから廃部になったのに戦車道だと少なくてもいいんだもんね……」

エリカ「……数の差は個の能力で覆すのは難しいわ。そもそも数すら揃えられない学校が個で相手を上回るなんてのはまず無理なのだから」

優花里「戦車がそろっていればそれだけ練習の効率もあがりますね」

エリカ「結果として試合で繰り広げられるのはただの弱い者いじめ。それはやる方もやられる方も――――見ている方も辛いものよ」

麻子「……なるほどな」

209: 2018/01/23(火) 19:11:11.76 ID:vJHx37Gv0
エリカ「そんな試合が何回も繰り返されたら戦車道の人気そのものに影響が出てくる。戦車道をやるのもタダじゃない。

    頑張ってひねり出した予算で出た試合が散々な結果だったら誰も得しないわ。それは無名校も強豪校も関係ない。だからこそ暗黙の了解は維持されてきたのよ」

沙織「……それでも、私たちは試合に出るんでしょ?」

エリカ「ええ。だから、戦車道の今後のために中途半端な試合はできない。数が足りなくても、個で負けていても。それでも勝利を目指すしかないのよ」

優花里「ならなおさら作戦が重要になってきますね」

エリカ「そう。でも、現状数が足りないのが致命的すぎるわ……やっぱりあの三式の乗員を探さないと」

沙織「生徒会も探してるんだっけ?」

エリカ「ええ、でもあいつらだけに任せておくのは癪だわ。この際なんでも良いから見つけないと……」

沙織「もーまた難しい顔してるっ!せっかく美味しいケーキがあるんだから、こっちに集中しよっ!」

エリカ「……それもそうね」モグモグ

210: 2018/01/23(火) 19:14:18.91 ID:vJHx37Gv0







まほ「まさか、お前がまた戦車道を始めてるとはな」








211: 2018/01/23(火) 19:15:54.05 ID:vJHx37Gv0
エリカ「隊長……!?」ガタッ

沙織「え?隊長?」

華「どちら様でしょうか?」

優花里「黒森峰の戦車道の隊長、西住まほ殿ですよっ!?」

まほ「……何故また戦車道を始めた。お前は戦車道をやるに値しない。そう言ったはずだが」

エリカ「……隊長、私は……私には戦車道しか―――――」

グイッ!

エリカ「っ!?」

まほ「……けるな、ふざけるなっ!!」

優花里「ちょっ!?」

エリカ「ぐっ!?た、隊長……っ」

212: 2018/01/23(火) 19:23:10.67 ID:vJHx37Gv0
まほ「お前がどれだけの人を傷つけてると思ってるっ!?お前のしていることがどれだけあの子を侮辱していると思ってるっ!?」

優花里「ぼ、暴力はいけませんっ!!」

沙織「ほら、やめてってば!!」

エリカ「う、ぐ……す、すみません隊長……」

まほ「お前がっ!お前みたいな奴がっ!!?私のことを隊長だなんて呼ぶなっ!!」

麻子「落ち着け。いくらなんでも騒ぎすぎだ」

華「そうです、他の方のご迷惑になっていますよ?」

まほ「っ!」バッ

エリカ「えほっ!げほっ!?」

まほ「……無名校が思い出づくりのつもりで参加するのならやめておけ。時間の無駄だ」

沙織「なっ!?そんな言い方ないでしょ!?」

優花里「私たちは真剣に優勝を目指して……」

213: 2018/01/23(火) 19:28:47.15 ID:vJHx37Gv0
まほ「そうか、だったら真っ先にこいつを外すんだな」

沙織「えりりんは私達の隊長です!」

まほ「隊長……?お前は、どこまで……ッ!」

エリカ「西住たい……西住さん、私は決して黒森峰に刃向かいたくて戦車道を再開したんじゃ……」

まほ「……もういい。お前がこれ以上無様を晒す前に一刻も早く棄権することを祈っているよ」スタスタ

沙織「ちょっ……行っちゃった」

優花里「エリカ殿、大丈夫ですか……?」

エリカ「……ええ、大丈夫よ。騒がしくしてごめんなさい」

沙織「えりりんが謝ることじゃないよっ!?ひどいのはあの人だよ!!」

麻子「強豪校の隊長とはいえ、流石にあの態度はどうかと思うな」

エリカ「いいの……悪いのは私だから」

華「一体、あの人と何があったんですか?」

エリカ「……ごめんなさい。それは、言えないわ」

沙織「……なら、いいよ。えりりんが言いたくなったら教えてくれれば良いから」

華「はい」

エリカ「……ありがとう」

麻子「ケーキおかわりしていいか?」

優花里「冷泉殿空気読んで……」

226: 2018/01/26(金) 17:46:27.90 ID:MgbXd2K60




エリカ「優花里、今日の練習来なかったわね。風邪でもひいたのかしら?」

沙織「ゆかりんが戦車道の授業休むって相当だからね。たぶんそうかも」

華「なら、お見舞いにいきましょうか」

エリカ「そうね」

227: 2018/01/26(金) 17:47:39.04 ID:MgbXd2K60




―秋山理髪店―



淳五郎「まさか優花里に友達ができるだなんてっ!!」

好子「ええ、本当に嬉しいわ。あの子、戦車戦車ってうるさいかもだけど、よろしくね」

エリカ「はい、こちらこそ」

沙織「優花里さんにはいつもお世話になってますから」

好子「ふふっ、でもごめんなさい。優花里まだ学校から帰っていないんですよ」

エリカ「え?」

沙織「学校って……」

麻子「サボりか」ボソッ

好子「だからちょっと待っててもらえます?お茶とお菓子くらいは出しますから」

228: 2018/01/26(金) 17:48:51.95 ID:MgbXd2K60






麻子「……」モグモグ

華「麻子さん、ちょっとは遠慮したほうが……」モグモグ

沙織「華、説得力0」

好子「ふふっ良いんですよ。喜んでもらえて嬉しいわ。それじゃあごゆっくり」


バタン


エリカ「……いいご両親ね」

麻子「……」

華「はい、優花里さんのことをとても大事におもっているんでしょうね」

沙織「でも、ゆかりん学校に行ったって……えりりん、何か心当たりない?」

エリカ「……そういえば昨日、『せめてサンダースの編成かフラッグ車だけでもわかれば……』って優花里に愚痴ったわね」

華「それって……」

229: 2018/01/26(金) 17:51:26.18 ID:MgbXd2K60
ガララッ


優花里「よいしょっと」

沙織「ゆかりんっ!?」

優花里「あれ?みなさんどうしたんですか?」

エリカ「それはこっちのセリフよっ!優花里、あなた戦車道どころか学校までサボって何やってたのっ!?」

優花里「サボって……いや、確かにそう思われても仕方ありませんが、私も大切な任務をしてきたんですっ!!」

沙織「任務って?」

優花里「ちょうどいいですっ、皆さんに見て頂きたい物があって……」

華「見てほしいもの?」

麻子「なんだ」

230: 2018/01/26(金) 17:53:04.50 ID:MgbXd2K60




エリカ「―――――なるほどね、サンダースに偵察に行ってたってわけ」

優花里「はいっ!!」

エリカ「偵察はルール上認められているし、それについてはよくやったわ。

    ……でも、最後のサンダースの機甲師団との壮絶な撃ち合いの末、隠し持っていた大日本帝国時代の巨大化薬で

    巨人と化した優花里をサンダースの隊長が戦車での壮絶な特攻で打ち倒し、残った隊員は隊長の意志を胸に刻み

    大洗との一回戦に挑むって下り、明らかにサンダースの手が入ってたわよね?」

優花里「……さぁ?」

沙織「誤魔化し方雑っ!?」

華「ラストの『サンダース!!サンダースッ!!』の大号令はお国柄を感じましたね」

麻子「B級映画甚だしかったがな」

沙織「ていうか、協賛にがっつりとサンダースって入ってるじゃんっ!?」

華「技術協力にサンダース映画研究部も入っていますね」

優花里「いやー向こうの映像技術は凄く勉強になりましたー!!」

エリカ「何を学んできてるのよ……こっちの情報漏らしてないでしょうね?」

優花里「それはもちろんっ!!捕まったときはどうなるかと思いましたが、向こうの隊長のはからいで、無傷で帰してもらえましたっ!

エリカ「……それが余裕なのか、コチラなんて相手にもしていないのか、はたまた隊長個人の性格なのかはわからないけどね」

優花里「あ、でもアリサっていう人にはデータを消すようにせまられました」

エリカ「それが普通よ」

沙織「なら、さすがに編成は変えてくるんじゃ……」

エリカ「それは多分無いわね」

沙織「どうして?」

231: 2018/01/26(金) 17:55:28.39 ID:MgbXd2K60
エリカ「サンダースの基本戦術は数を活かした正面からのぶつかり合い。輌数制限がある一回戦であってもその戦法は今まで変えてないわ

    単純。故にどんな状況でも効果的。むしろ、下手に編成を変えたら私たちに怯えていると取られかねないわ」

優花里「ですね」

沙織「なるほどー。だったら私達でも勝てるかもっ!!」

エリカ「話聞いてた?向こうは編成がバレたって良いのよ。元より正面からこちらをすり潰すつもりなんだから」

沙織「……それじゃあどうするの?」

エリカ「……M4自体はそこまで堅い戦車じゃないわ。Ⅳ号やⅢ突で充分貫ける程度よ。でも、同じ戦車を使い続けてる私たちと違って
    
    サンダースは車両保有数1位の高校。どんな時でもベストな状態の戦車で戦うことができるわ」

優花里「いいなぁ……」

エリカ「数で負けてる私たちに正面からの突破は無理。なら、やることは一つよ。戦力分断からのフラッグ車撃破。

    でもそのためにはもっと戦車が必要ね……」

優花里「三式の乗り手が見つかれば良いんですが……」

エリカ「うーん……」

232: 2018/01/26(金) 17:57:11.47 ID:MgbXd2K60




エリカ「うーん……」

沙織「えりりん昨日からずっとそれだね」

エリカ「しょうがないでしょ……生徒会の連中もまだ乗員を確保できてないのだから」

華「一応、交渉中ではあるそうですが……」

エリカ「そんなちんたらしてる余裕は無いのよ。こうなったら弱みでも握って……

    ってそれじゃあ生徒会の奴らと一緒じゃないっ!?やっぱり私が探すしか……」

沙織「一応私も何人かに声かけてるけど中々ね……」

優花里「私はそもそも友人が少ないので……」

沙織「……世知辛いね」

優花里「……はい」

エリカ「うーーーーーん……」

233: 2018/01/26(金) 17:57:46.29 ID:MgbXd2K60













『やっぱり、戦車はかっこいいな……』











234: 2018/01/26(金) 17:58:49.38 ID:MgbXd2K60
エリカ「―――――今誰か戦車って言ったっ!?」

沙織「え?言ってないよ」

優花里「私も……」

華「私もですが」

エリカ「いえ、確かに聞こえたわっ!戦車かっこいいって!!」

沙織「えりりん、戦車のことを考えすぎてついに頭が……」

華「そんな……」

優花里「おいたわしや……」

エリカ「違うわよっ!!確かに戦車って……こっちからっ!!」ダッ

沙織「ちょっ!?えりりんどこ行くのっ!?」

235: 2018/01/26(金) 18:01:01.14 ID:MgbXd2K60




ダダダキキーッ!!


エリカ「っ!!ここねっ!!」



ガララッ!




ねこにゃー「やっぱり戦車はレオパルト2が一番だにゃー」カチカチ

ももがー「いやいやメルカバMk.4だって負けてないナリ」カチカチ

ぴよたん「それを言ったらチャレンジャー2だって良いってばよ」カチカチ

236: 2018/01/26(金) 18:02:44.65 ID:MgbXd2K60
エリカ「……え?」

ねこにゃー「あれ?逸見さん……?」

ももがー「ねこにゃー殿のご友人ですか?」

ねこにゃー「えっと、クラスメイトの人……逸見さん、どうしたの?」

エリカ「あの、今戦車の話してなかった?」

ねこにゃー「ああ、それならこれだよ……」

エリカ「これって、ゲーム?」

ねこにゃー「ボクたちがやってるネトゲの携帯版なんだ。この人達もネトゲの友達。携帯版が発売したから、いい機会だってこないだ初顔合わせしたの」

ももがー「ももがーももよ!」

ぴよたん「ぴよたんぴよ!」

ねこにゃー「それで……逸見さんもこのゲームに興味があるの?」

エリカ「……ごめんなさい、私の聞き間違いだったわ。私は戦車道の履修者を探していたのよ」

ねこにゃー「戦車道……」

エリカ「邪魔して悪かったわね。とはいえ空き教室でゲームやるならもうちょい声は抑えなさい。……それじゃあね」

ねこにゃー「ま、待ってっ!!」

エリカ「何かしら?」

237: 2018/01/26(金) 18:05:23.10 ID:MgbXd2K60
ねこにゃー「せ、戦車道の履修者求めてるって……」

エリカ「ええ、今度公式戦に出るのだけど人数が足りなくてね。戦車はあるのだけれど……」

ねこにゃー「それ、ボクに乗らせてくれないっ!?ねぇ、ももがー、ぴよたんさん一緒にやらない?」

ももがー「戦車乗れるのっ!?」

ぴよたん「願ってもない話しだっちゃっ!!」

ねこにゃー「あの、逸見さん。そういうことだから私達……」

エリカ「……………遊び気分でもいないよりマシか」ボソッ

ねこにゃー「え?」

エリカ「良いわ。あなた達を戦車道の履修者として受け入れます」

ねこにゃー「わぁ……」

エリカ「ただし、やるからには本気でやってもらうわよ。戦車道は授業の一環なんだから、単位とかの特典分は頑張ってもらうわ」

ねこにゃー「も、もちろん」

ももがー「がんばるですっ!!」

ぴよたん「本物の戦車に乗れるんだなー!」

エリカ「それなら早速今日から練習に参加してもらうわ。必修選択の時間に車庫前に集合よ」

ねこにゃー「はいっ!!」

ももがー「了解ももっ!」

ぴよたん「任せてぴよっ!!」

エリカ「それじゃあ……まずは、あなた達の本気を見せてもらおうかしら?」

『え?』

238: 2018/01/26(金) 18:07:54.79 ID:MgbXd2K60





キュラキュラキュラ

ももがー「ぐぬぬぬぬぅーーー!!」グググ

エリカ「三式遅れてるわよっ!!隊列を崩さないでっ!!」






ダァンダァン!!


ぴよたん「はぁっ、はぁ……」

ねこにゃー「うぅ……」

エリカ「三式、狙いが甘いし装填も遅いっ!!気合い入れなさいっ!!」

239: 2018/01/26(金) 18:10:51.71 ID:MgbXd2K60





チーン



ねこにゃー「せ、戦車って動かすの大変なんだね……」

ももがー「そ、そうだねー……」

ぴよたん「ぴよぴよ……」

エリカ「お疲れ様」

ねこにゃー「あ、逸見さん……」

エリカ「どう?初めて戦車動かした感想は?」

ねこにゃー「大変だね……」

ももがー「シフトレバーが重いってばよ……」

ぴよたん「砲弾も重くて腕がぷるぷるするだっちゃ……」

エリカ「……なら、辞め―――」

ねこにゃー「でも、楽しかった」

ももがー「うんっ!!」

ぴよたん「ずっと、憧れてたからね」

エリカ「……戦車、好き?」

『うんっ!!』


エリカ「……」

240: 2018/01/26(金) 18:14:10.36 ID:MgbXd2K60










『あなた、戦車嫌いなの?』

『……違うよ、戦車は好き。……だけど、戦車道は楽しいって思えないな』

『なら、戦車道を好きになる素質はあるわよ』

『……そうかな』

『私は好きよ、戦車も戦車道も。戦車に乗れることが楽しいし、その上で負ければ悔しいし、勝てば嬉しいわ』

『……』

『でも、一番好きなのは……競い合ってる時。相手が本気で向かってきて、こちらが本気で迎え撃つ時

 戦車と乗員と一体になったような瞬間、私は最高に楽しいわ』

『……エリカさんは凄いね。ちゃんと、みんなと一体にになれるんだから。……私は、そんな風にできないよ』

『なら、今度一緒の戦車に乗りましょう?』

『え?』

『たしかうちってII号戦車があったわよね。あなたが車長兼砲手で、私が操縦でいいかしら?』

『で、でも……』

『あくまで練習の一環よ。あなたの手腕、間近で見せてもらうわ』

『……うん』

『どう?少しは戦車道楽しめそう?』

『……うんっ!』










241: 2018/01/26(金) 18:16:34.09 ID:MgbXd2K60

エリカ「……そう、ならとりあえず合格ね」

ねこにゃー「ご、合格って?」

エリカ「中途半端な覚悟で戦車道やられるといるだけで邪魔だからね。でも、少なくとも戦車が好きならいいわ。……一緒に頑張りましょう」

ねこにゃー「は、はいっ!!」

ももがー「がんばるももっ!」

ぴよたん「やぁーってやるぜっ!!」

エリカ「……とはいえあなた達には体力が足りないわ」

ねこにゃー「そ、それは……ボク達インドア派だから……」

エリカ「体づくりはゆっくりやっていきましょう……って言ってあげたい所だけど、時間がないのよ。だから」パチッ

典子「隊長っ!!お呼びでしょうかっ!!」ズザーッ

ねこにゃー「え?」

242: 2018/01/26(金) 18:18:04.78 ID:MgbXd2K60
エリカ「磯辺さん、彼女たちを一ヶ月間バレー部に体験入部させてもらえない?」

ももがー「え?」

典子「ほ、本当ですかっ!?三人もっ!!?」

エリカ「ええ、運動なんてろくにしてこなかったらしいから、基礎からみっちりやってあげて欲しいの」

典子「任せてくださいっ!!」

ぴよたん「ちょ、ちょっと待ってほしいぴよ!?」

エリカ「幸い、戦車道は授業でバレー部は部活だから時間が被ることはない。昼間は皆と一緒に戦車に乗って基礎を体に染み込ませて、

    休日と放課後はバレー部の特訓に参加してもらうわ」

ねこにゃー「い、いきなりハードな運動は体に良くないって思うなー……」

エリカ「若いんだから大丈夫よ。その辺りのケアも大丈夫でしょ?」

典子「はいっ!!倒れる寸前までやっても、次の日には全快させてみせますっ!!」

エリカ「ほら、大丈夫だって?」

ねこにゃー「で、でもっ!?」

エリカ「戦車、好きなんでしょ?なら、彼女の特訓を乗り越えればもっと好きになれるわ――――頑張りましょう?」ニコッ

ねこにゃー・ももがー・ぴよたん「」

典子「さぁっ!早速練習だっ!!気合い入れていこーっ!!」



ズルズルズル





エリカ「……頑張ってね」





249: 2018/01/28(日) 17:57:36.24 ID:U50sD0t50





エリカ「チーム名?」

梓「はい。この間の聖グロ戦で負けたのが堪えたみたいで戦車の色はみんな戻したんですけど、

  それならせめてチーム名とエンブレムで区別できるようにしたいって……」

エリカ「今までどおりABCDEでも区別つくでしょ?」

梓「さ、流石にそれは味気ないかなーって……三式も合流したのでいい機会ですから」

エリカ「……そうね。チーム名やエンブレムで士気高揚を図るのはよくある話だからね。何かいい案はある?」

梓「え!?う、うーん……私達のチームはそうだなぁ……あ!ウサギさんチーム!!」

エリカ「ウサギさんって……どうして?」

梓「M3ってウサギ小屋で見つけたんです!だから、ウサギさんチーム!!可愛くていいかなって」

エリカ「……なるほどね。そういえば大洗の名物はあんこうだっけ?なら、私たちはあんこうチームでどうかしら?」

梓「それ良いですねっ!!」

エリカ「なら、そんな感じで決めておくわ」

梓「よろしくお願いしますっ。ところで……」

250: 2018/01/28(日) 18:00:26.39 ID:U50sD0t50
ねこにゃー「はぁ、はぁ……も、もう無理ぃ……」

ももがー「もう10周も走ってるぜよ……」

ぴよたん「ぜぇ……ぜぇ……」

典子「ペース落ちてるよー?あと20周頑張ろう!!」

ねこにゃー「む、無理ですにゃぁ……」

典子「うんうん、根性だっ!!」












梓「あの人達は何か悪いことをしたんですか?」

エリカ「……まぁ、今までの怠惰な生活のツケが来てるってところかしら?」

251: 2018/01/28(日) 18:04:07.84 ID:U50sD0t50





―試合会場―



エリカ「いよいよ当日ね……」

優花里「緊張します……」

エリカ「できる努力はしてきたつもりよ。……って、あら?アリクイさんチームは?」

優花里「アリクイさん……?ああっ、ねこにゃー殿達ですか。そういえばまだ来ていませんね」

エリカ「何やってるのよ……遅刻とかシャレにならないわよ。……って、バレー部もいないじゃないっ!?」

優花里「これは……何かあったのでしょうか?」

エリカ「試合前だって言うのにどこに行ったのよもうっ!!」

252: 2018/01/28(日) 18:08:41.49 ID:U50sD0t50









『ここにいるさっ!!』









253: 2018/01/28(日) 18:09:33.43 ID:U50sD0t50
エリカ「っ!?」

優花里「ね、ねこにゃー殿達……それに、バレー部の皆さん……」

エリカ「……遅れた言い訳、聞かせてもらえるのよね?」

典子「……隊長、命令通り仕上げてきましたよ」

エリカ「は?」

典子「……」スッ

エリカ「それって、砲弾?75mmの」

典子「安心してください。これはレプリカです。……重量以外は」

エリカ「えっと……それで?」

典子「遅れたのは最後の仕上げをしていたからですよ、見ててください。……ふんっ!!」ブンッ

エリカ「ちょっ!?何投げてんのよっ!?」

典子「お前達の成長、見せてやれっ!!」

254: 2018/01/28(日) 18:11:15.39 ID:U50sD0t50
ねこにゃー「……まかせるにゃ」キラッ

ぴよたん「ふんっ!!」バンッ

優花里「ほ、砲弾をレシーブしたっ!?」

ももがー「うりゃぁっ!!」ドンッ

エリカ「それをトスっ!?」

ねこにゃー「……ダッ!!」ダンッ

エリカ・優花里「「飛んだぁ~~~っ!?」」

典子「……決めろっ!!」

ねこにゃー「ッ!!ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」バッシィ!!




ドゴォン!!



ねこにゃー「……」スタッ

255: 2018/01/28(日) 18:14:51.18 ID:U50sD0t50
エリカ「れ、レプリカだって言ってたわよね?」

優花里「で、ですが爆発音が……着弾点にクレーターが……」

典子「……隊長、言われた通りあいつらにみっちり基礎を叩き込んでやりましたよ」






ねこにゃー「逸見さん、ボクたち逸見さんの期待通りになれたかな」ムキッ

ももがー「辛いこともあったけど、戦車のためにがんばったももっ!!」メキメキッ

ぴよたん「……最高だぴよ」ボッ

256: 2018/01/28(日) 18:18:07.34 ID:U50sD0t50
エリカ「」

典子「褒めてやってください。あいつら、根性ありますよ」

優花里「え、エリカ殿……」

エリカ「……ふっ、あなた達見違えたじゃない。……あなた達のポテンシャルは私の想像以上だったようね」


『ありがとうございますっ!!』


優花里(いや、想像以上っていうか異常って顔してますけど……絶対あそこまでのポテンシャルは求めてなかったでしょ……)

エリカ「とはいえ、まだ試合はこれからよっ!その鍛え上げた体がハリボテじゃないとこを見せてもらうわっ!!」

『はいっ!!』

エリカ「それじゃあ各員準備に入りなさいっ!!」

『了解ですっ!!』 ダッ!!

257: 2018/01/28(日) 18:21:28.52 ID:U50sD0t50
エリカ「……ねぇ優花里」

優花里「何でしょうか?」

エリカ「最近のインドア派って、凄いのね」

優花里「……ですね」

アリサ「アンタ達っ!!試合前になにやってんのよっ!?」

エリカ「あなたは達は……」

優花里「アリサ殿にナオミ殿っ!!この間はお世話になりました」

ナオミ「礼は良いさ。うちの隊長がお前のことを気に入ったみたいだしな」

アリサ「それよりっ!今の音、砲弾が暴発したのっ!?」

エリカ「……いや、ちょっと砲弾が落ちてきてね」

アリサ「砲撃を受けたっ!?」

エリカ「いや、ち、違うのよ?ただ、想定以上の結果を受け止めきれてないのは私達も一緒で……」

アリサ「何言ってるかわかんないけど、試合前に怪我人出して試合に影響が出るとかやめなさいよ。

    ……もっとも、弱小チーム相手に試合をするのも時間の無駄だから棄権するなら構わないわよ?」

258: 2018/01/28(日) 18:27:30.91 ID:U50sD0t50
エリカ「……へぇ?随分と弱気ね。勝ち目が薄いと知って盤外戦術?勝利にこだわるその姿勢は好きだけど、優勝候補にしてはちょっと情けないんじゃない?」

アリサ「なんですって?」

沙織「ちょっと、何騒いでるの」

エリカ「……別に騒いでなんかいないわよ」

ナオミ「すまないな。ところで、大洗の皆さん、もしよかったらうちにこない?交流も兼ねてお食事でも」

沙織「わっナンパだ」

エリカ「いや、なんでわざわざ敵陣になんか……」

杏「いいじゃんいいじゃん。行こ行こ」

優花里「会長殿?」

杏「向こうの誘いをわざわざ無碍にするのもねー」

エリカ「……まぁ、いいか。行ってあげるわよ案内しなさい」

アリサ「なんでそんなに偉そうなのよ……」

沙織「ごめんなさい、えりりんこういう子だから……」

264: 2018/02/01(木) 17:02:36.22 ID:JnDuCeuZ0



優花里「わぁーっ!!救護車にシャワー車、ヘアサロン車まで……」

麻子「いや、ヘアサロン車はいらないだろ」

エリカ「うちはこんだけお金持ってますよって自慢なんでしょ」

沙織「またえりりんはそんなこと言って……」

華「さすがサンダースですね、食事のサイズもアメリカンですっ」モグモグ

沙織「もう食べてるっ!?」

麻子「しかもタダだ」ペロペロ

沙織「麻子までっ!?」   

優花里「右手にハンバーガー左手にホットドッグ……。5段のアイスクリーム……」

エリカ「馴染みすぎでしょ……」

ケイ「ハーイ!大洗のみんなー!!」

杏「やぁ、お誘いありがとう」

ケイ「良いっのよアンジー!」

優花里「ケイ殿っ!」

ケイ「オッドボール監督っ!来てくれてありがとうっ!!」

優花里「そ、その呼び方はちょっと……」

ケイ「あなたの撮影した映画、サンダースの学園艦で人気なのよ?」

優花里「そうなんですかっ!?」

ケイ「ええ、次回作はもっと凄いのを期待するわっ!もちろん、資金提供は任せてっ!」

優花里「はいっ!」

265: 2018/02/01(木) 17:12:45.96 ID:JnDuCeuZ0
エリカ「あの潜入動画人気なのね……サンダースの人たちの感性はわからないわ……」

麻子「食べ物も映画も大雑把で脂っこいのが好きなんだろ」

ケイ「ハーイ、エリー!あなたも来てくれたのねっ!」

エリカ「ご招待を無碍にするほど礼儀知らずじゃないですよ。ていうかエリーって……」

ケイ「エリカだからエリー。いいでしょ?それとも白雪姫様がいい?」

エリカ「……は?」

ケイ「ダージリンが言ってたのよ、大洗の逸見エリカのソウルネームは白雪姫だって。よく似合ってるじゃないっ!」

優花里「ダージリン殿広めてるんですね……」

沙織「えりりんいいなぁ……」

エリカ「あ、あのドヤ顔紅茶女王なんてことをっ……!?」

ケイ「それで、エリーと白雪姫どっちがいい?」

エリカ「エリーでお願いします」

沙織「ええー?もったいない……」

エリカ「沙織は黙っててっ!!」

ケイ「あははっ、仲いいわねっ!!」

266: 2018/02/01(木) 17:18:15.97 ID:JnDuCeuZ0
エリカ「そういえば、優花里が世話になったみたいですね、ありがとうございます」

ケイ「良いのよ別にっ!諜報はルール上認められてるんだからっ」

エリカ「……それをわざわざ見逃すのもルールにありましたっけ?」

ケイ「ノンノン!違うわよ、どんなに手の内を暴かれても私たちはいつも通り正々堂々と戦わせてもらうってことよ!」

エリカ「そのフェアプレイ精神、黒森峰でも有名でしたよ」

ケイ「そうなの?それは光栄ねっ」

エリカ「……でも、その余裕が仇にならないといいですけどね」

ケイ「エリーそれは違うわ、フェアプレイは余裕じゃない。正々堂々は私たちの全力勝負なのよ」

エリカ「……甘い事を」ボソッ

ケイ「……エリーの戦車道ってなに?」

エリカ「え?」

ケイ「私にとって戦車道は、勝敗関係なくお互いを高めるためにあるものよ。勝っても負けても試合後はノーサイドっ!

   だって戦車道は戦争じゃないんだからっ!!楽しまなきゃ損。でしょ?」

エリカ「……私は、私の戦車道は―――――」

267: 2018/02/01(木) 17:22:15.05 ID:JnDuCeuZ0








『間もなくサンダース大付属高校と大洗女子学園の試合を開始いたします。選手はすみやかに集合してください』













エリカ「……時間みたいですね」

ケイ「そうね、さっきの答えは試合後に聞かせてっ!―――――いい試合にしましょう」

エリカ「……ええ」

268: 2018/02/01(木) 17:29:51.80 ID:JnDuCeuZ0





エリカ「……カメさんチーム、カバさんチーム、アヒルさんチーム、ウサギさんチーム、アリクイさんチーム全員準備はできてる?」

『はいっ』

桃『気の抜けるチーム名だな……』

エリカ「聞こえてるわよ。……それじゃあ作戦の確認ね。説明した通り彼我の戦力差は大きいわ。とはいえ試合はフラッグ戦、相手のフラッグ車さえ倒せばこっちの勝ちよ」

麻子「それができれば苦労しないんだがな」

沙織「麻子っ!」

エリカ「スタート後森に入り相手を誘い出し、敵戦力を分断。その後フラッグ車を誘い出し、隠れたⅢ突で撃ち抜く」

桃『そんなに簡単に行くのか?』

エリカ「……たぶん、簡単にはいかないでしょうね」

桃『それじゃあまずいじゃないかっ!!?』

エリカ「落ち着きなさい桃ちゃん。……今回の鍵はアリクイさんチームよ」

ねこにゃー『えっ?ボク達……?』

桃『桃ちゃん言うなっ!』

269: 2018/02/01(木) 17:37:26.58 ID:JnDuCeuZ0
エリカ「あなた達の乗ってる三式はM4に対抗するために作られた戦車。おまけにギリギリでの出場登録――――嫌でも相手はあなた達に注目するわ。あれは大洗の秘密兵器では?って」

ねこにゃー『っ……』

エリカ「初試合のあなた達には酷かもしれないけど、今回のあなた達の仕事は生き残ることよ」

ねこにゃー『生き残ること……』

エリカ「そう。相手のM4を正面から倒せる三式は相手にとって脅威よ。だからこそ、あなた達は存在するだけでプレッシャーになるわ」

ねこにゃー『……』

エリカ「一瞬でも相手の意識を反らせればいい。後は他の子達が狩るから。だから、無理に攻撃しないで。あなた達がやられるとしたら最後よ――――フラッグ車である私達は、絶対に生き残るから」

ねこにゃー『はいっ!!』

エルヴィン『頼もしい将だな』

エリカ「以上よ。―――全員、健闘を祈るっ!!」

『了解っ!!』

270: 2018/02/01(木) 17:39:01.88 ID:JnDuCeuZ0




『試合開始っ!!』










エリカ「パンツァー・フォー!!」










277: 2018/02/04(日) 18:13:46.38 ID:4B7i6UF50




エリカ「……全員いるわね。まずは相手戦力を分散させるわ。ウサギさんチームはD55地点に、

    アヒルさんチームはG44地点に偵察に向かって。敵車両を発見次第陽動して分断を図って。撃破は考えなくていいわ」

『了解』

エリカ「残りはこのまま前進。……戦車の数も性能も、練度も相手の方が上。……私たちが勝つのに必要なのは作戦と」

優花里「運。ですか?」

エリカ「……勝利の女神様が微笑んでくれるのを期待するわ」

沙織「なら、えりりんに期待だね」

エリカ「なんでよ?」

沙織「だって、私達の勝利の女神はえりりんだもん」

エリカ「……あなたねぇ、よくそんな恥ずかしいこと言えるわね」

優花里「私は沙織殿の意見に賛成です」

華「私も」

麻子「私は知らん」

エリカ「……ま、良いわよ。女神だなんて言われて悪い気はしないからね」

278: 2018/02/04(日) 18:19:18.88 ID:4B7i6UF50





梓『こちらウサギさんチーム。敵のシャーマン3輌発見』

エリカ「よし、そのまま陽動に入って」

梓『わかりま―――っ!?さ、下がってっ!!』

エリカ「どうしたの!?」

梓『敵シャーマンに発見されたようですっ!!まだ距離はあるはずなのにっ……嘘っ!?もう3輌っ!?』

エリカ「っ!?とにかくそこから離れてっ!!救援を出すわっ!!」

梓『はいっ!』

エリカ「カメさんとカバさんはウサギさんの救援に向かってっ!!ここで一輌失うのは痛いわっ!!」

エルヴィン『了解』

杏『任されたー』

ねこにゃー『あの、ボクたちは……』

エリカ「アリクイさんはこのまま私たちについてきて!下手に敵の前に晒すよりここぞって時に陽動になってもらうからっ!」

ねこにゃー『わ、わかった』

279: 2018/02/04(日) 18:25:53.34 ID:4B7i6UF50





エリカ「まさかこんなに早く見つかるだなんて運が悪いわ……」

優花里「相手は強豪校……偵察の技術も上ということでしょうか」

エリカ「そういうことなんでしょうね」

杏『あー逸見ちゃん逸見ちゃん』

エリカ「どうしたの?」

杏『ごめん、挟み撃ちされてる。ウサギさんチームとは合流できたんだけど、私達の後ろからシャーマン3輌来てね。内1輌はファイアフライ』

エリカ「はああああああああっ!?」

エルヴィン『どうやらこちらの動きは完全に読まれていたようだな』

優花里「ファイアフライを含むシャーマン9輌を森に投入だなんて随分思い切った作戦ですね……」

沙織「えりりんどうするっ!?」

エリカ「っ……挟み撃ちの状況で下手に立ち向かってもやられるだけだわ。木を障害物にしてなんとかバラバラに逃げてっ!!」

『了解っ!』

典子『隊長っ!我々も救援に向かったほうがいいですか!?』

ねこにゃー『い、逸見さんボク達も……』

エリカ「……っ!!」バッ

沙織「えりりん急にどうしたの?」

優花里「外に敵車両がいるんですか!?」

280: 2018/02/04(日) 18:30:27.06 ID:4B7i6UF50
エリカ「……やっぱり。―――アヒルさんチームはその場で待機しててっ!」

典子『しかしっ!』

エリカ「いいからっ!!M4の集団に八九式が突っ込んだところでやられるのがオチよっ!だったらさっき指定した高台でフラッグ車を探してっ!!」

典子『っ……了解』

沙織「えりりん一体……」

エリカ「無線が傍受されてるわ」

沙織「えっ!?ほんと!?」

エリカ「ええ、傍受機が上げられてる」

沙織「ズルじゃん!?」

優花里「いえ、確か無線傍受についてはルールの記載がなかったかと……グレーゾーンってとこでしょうか?」

沙織「でもでもっ!!」

281: 2018/02/04(日) 18:37:59.12 ID:4B7i6UF50
エリカ「……優花里、サンダースの隊長は無線傍受をするような人だと思う?」

優花里「……私の感想としてはそんなことをする人とは思えません」

エリカ「私もケイさんがそんなことをするとは思えないわ」

沙織「それなら誰が無線傍受だなんて……」

エリカ「無線傍受してそれを元に指示を出しているなら、やっているのはサンダースのTOP3のどれか……

    ケイさんは違う。いくらルールに規定が無いからと言ってグレーゾーンな無線傍受なんてするとは思えない」ブツブツ

沙織「えりりん?」

エリカ「なら、あのナオミって人?……いや、そもそも前線に出ている人が傍受なんてする?たとえ主犯だったとしても戦いながら指示をする余裕があるとは思えない。

    だとしたら―――フラッグ車のあいつか」

優花里「エリカ殿、現状ばらばらに行動していますから無線での意思疎通ができないとなると各個撃破の危険が……」

エリカ「……よし」













ぴよたん「ど、どうなっちゃうんだっちゃ……」

ももがー「いきなり大ピンチだぞな……」

ねこにゃー「……あれ?逸見さんが何か……止まれ?」

282: 2018/02/04(日) 18:40:04.77 ID:4B7i6UF50
エリカ「猫田さん聞こえるっ!?」

ねこにゃー「聞こえるよ……」

エリカ「悪いけど時間がないから手短に話すわねっ!!私達の無線は傍受されてるわっ!!」

ねこにゃー「えっ!?」

エリカ「だから現状無線は使えないわっ!」

ねこにゃー「そ、それじゃあどうするの……?無線が使えなきゃ連携なんて……」

エリカ「そうよ。だから、私達でフラッグ車を仕留めるのよっ!!」

ねこにゃー「……え?」

283: 2018/02/04(日) 18:44:01.67 ID:4B7i6UF50






ケイ『アリサ、ごめんなさい。取り逃がしちゃったわ』

アリサ「大丈夫です隊長。大洗の戦車は6輌。内3輌をそちら側に投入したということはフラッグ車を守っているのは三式と八九式。

    八九式なんていないようなものですから実質護衛は1輌ということになります。そのまま逃した車両を追いつつ森を捜索してください」

ケイ『オッケー!』





エリカ『こちらあんこうチーム。各車状況を伝えて』

杏『カメさんチームは生きてるよー』

梓『こちらウサギさんチーム。なんとか生きていますが、カメさん、カバさんチームとは離れてしまいました……』

エルヴィン『上に同じだ』

エリカ『っ……仕方ないわ、こうなったら戦力を集結させて、一点突破。敵フラッグ車を直接叩きにいきます!

    敵が戦力の殆どを遊撃に費やしているなら勝機はあるわっ!!アヒルさんチームはそのまま偵察を続けてっ!

    残りの車両は私達のいるB23地点に集まってっ!!』

『了解!』

284: 2018/02/04(日) 18:47:24.56 ID:4B7i6UF50

アリサ「勝機ですって?……残念だけどそんなものは無いわよ。――――敵フラッグ車はB23付近にいる。

    おそらく戦力を集結させてこちらのフラッグ車に仕掛けてくるわ。先回りしてフラッグ車を仕留めてっ!!」

ケイ『オーケー!でも、相手が仕掛けてくるつもりならこちらも何輌かフラッグ車の護衛に回しましょうか?』

アリサ「いえ、そのままで大丈夫です。相手との距離を考えるとそのままフラッグ車を叩きに行ったほうが早いですから」

ケイ『わかったわ!』

285: 2018/02/04(日) 18:48:52.41 ID:4B7i6UF50






典子「……偵察っていっても敵全然いないなぁ……」

妙子「やっぱり私達も皆のところに行ったほうが……」

典子「いや、隊長はここを指定したんだ。なら、何か意味があるはず……」

ギャギャギャッ

典子「っ敵!?」

キュラキュラ


エリカ「……っと。あ、いたわね」

典子「隊長!?どうして!?」

エリカ「悪いけど説明は後よ。ついてきて」

典子「っはい!!」

エリカ「物分りが良くて助かるわ――――さぁ、反撃開始よ」

288: 2018/02/06(火) 19:11:18.85 ID:TRvl/PIH0





エリカ『こちらフラッグ車、敵のシャーマンを視認。B23からC25まで後退するわ!みんな、早く来てっ!!』

杏『あいよー』

エルヴィン『今行くぞっ!!』

梓『待っててくださいっ!!』




アリサ「ふっ、逃げても無駄よ。―――敵のフラッグ車はC25地点まで後退したわ!」

ケイ『Really!?なんでそんなことまでわかるのっ!?』

アリサ「サンダースで培ってきた経験と、女の勘ですっ!」

ケイ『ふふっ何それ?まぁいいわ。乗らせてもらうわよっ!!』

アリサ「……無名校が全国大会にでるのがどういうことか、しっかりと味わってもらいましょう」

289: 2018/02/06(火) 19:16:03.43 ID:TRvl/PIH0
ダァンッ!


アリサ「きゃぁっ!?砲撃っ!?」






あけび「命中ですっ!!」

典子「よしっ逃げろーっ!!」






アリサ「八九式!?なんでこんなところにっ!?」

操縦手「どうしますっ!?」

アリサ「追いなさいっ!あんなポンコツ私たちだけで充分よっ!!」





妙子「追ってきてますっ!!」

忍「どこまで逃げ切れるかっ……」

典子「隊長が信じてくれてるんだっ根性見せるぞっ!!」

290: 2018/02/06(火) 19:20:46.46 ID:TRvl/PIH0
――――
―――
――




エリカ「いい?戦力の殆どを遊撃に費やしてるということはフラッグ車は無防備な状態ということよ。

    本隊から離れた場所にいるでしょうけど離れすぎると今度は自身が攻撃された時に助けを呼べなくなる。

    それを踏まえた上でフラッグ車の位置を予測すると……おそらくここね」


沙織「森の端っこのほうだね……」

エリカ「ここにいられると木々が邪魔で砲撃が通りにくいわ。敵主力が来るまでに終わらせないといけないからここから動いてもらう必要がある」

沙織「それじゃあどうするの?」

エリカ「八九式に引っ張ってきてもらうのよ」

沙織「……つまり、また囮作戦?」

エリカ「……少数で強敵を撃破するには一番効果的なのよ」

優花里「そうですよっ!」

エリカ「アヒルさんチームっ!」

典子「はいっ!」

エリカ「今から言うポイントに敵のフラッグ車がいるわっ!!あなた達にはそいつを平原まで引きずり出してほしいっ!」

典子「なるほどっ!!」

291: 2018/02/06(火) 19:24:58.48 ID:TRvl/PIH0
エリカ「相手はM4、そちらは八九式。相手の撃破はまず無理だけどとにかく逃げて、生きて、おびき寄せてっ!!」

典子「任せてくださいっ!!」

エリカ「頼んだわっ!!……典子」

典子「……了解っ!!」


エリカ「それじゃあ各自移動を……」

ねこにゃー「逸見さん、作戦名は?」

エリカ「は?」

ねこにゃー「い、いや、なにか作戦名があるといいなーって」

エリカ「あのね……時間がないって言ってるでしょ」

沙織「いいじゃん、なにか決めてよ」

優花里「少数で大軍をかき回すのですから何かしらの暗号名があったほうが燃えますっ!」

エリカ「……作戦名ねぇ」

292: 2018/02/06(火) 19:30:25.14 ID:TRvl/PIH0











『……※※、さっきの作戦はなんなの?』

『え、何かまずい手を打ってた?』

『違うわよ名前よ名前、何よボコボコ作戦って。気が抜けるわ』

『相手を挟み撃ちにして手も足も出させないうちに撃破する作戦だったから……』

『あなた、意外とエグイ事考えるわね……』

『え?可愛くないですか?ボコみたいでっ!!』

『……まぁいいけど』

『なら、エリカさんも作戦名に使っていいよっ!ボコボコ作戦ツヴァイとかっ!』

『遠慮しておくわ』

『そんなぁー!?』








293: 2018/02/06(火) 19:34:30.62 ID:TRvl/PIH0

エリカ「……それじゃあ、コッソリ作戦で」

沙織「コッソリ作戦?」

エリカ「この作戦の事を知ってるのは今ここにいる3チームだけよ。敵も味方も欺いてコッソリ勝利を勝ち取りに行くわっ!!」

ねこにゃー「チーム名もそうだけど、逸見さん意外とかわいいネーミングセンス……」

エリカ「あなたが作戦名が欲しいって言ったんでしょっ!?もう、いいから行くわよっ!!」

294: 2018/02/06(火) 19:40:52.49 ID:TRvl/PIH0
――
―――
――――



典子「避けろ避けろーっ!!」

忍「っ!!」

あけび「効かなくても挑発くらいにはっ!!」


ダァンッ  ガンッ!


アリサ「はっはーっ!!豆鉄砲が痒いわねっ!!」

砲手「連絡はいいんですか?」

アリサ「あの程度の相手に隊長たちの手を煩わせる必要はないわっ!」


295: 2018/02/06(火) 19:45:38.81 ID:TRvl/PIH0







ケイ「アリサの言う通りならそろそろなんだけど……」


ダァンッ!!

ケイ「っ!?みんな、気を付けてっ!!敵は近くにいるわっ!!」





ねこにゃー「んー……やっぱり当たらないか」

ぴよたん「目的は撃破じゃないって言ってたぴよ」

ももが「とにかく、相手を引き付けるももっ!!」

ねこにゃー「そうだね……どんどん撃とう!」


ダァンッ!   ダァンッ!




296: 2018/02/06(火) 19:48:46.63 ID:TRvl/PIH0





ケイ『三式のものだと思われる砲撃を確認っ!!』

アリサ「っ!?三式はフラッグ車の護衛。なら、近くにフラッグ車もいるはずです!数で押し切ってくださいっ!!」

ケイ『オッケー!!』




典子「逃げろ逃げろー!!」






アリサ「ちょこまかとっ!!……撃てっ!!」


ドォン! ガァンッ!

シュポッ





典子「痛つつ……」

妙子「やられちゃいましたぁ……」

297: 2018/02/06(火) 19:52:40.87 ID:TRvl/PIH0
アリサ「全く、手間取らせてくれたわね。本隊から離れすぎたわ。急いで戻りま――――っ下がって!!」


ダァンッ!!


ドォンッ!




華「っ……」

沙織「外れたっ!?」

エリカ「いえ、避けられたのよっ!!装填急いでっ!!」

優花里「待ち伏せがバレたなら下がったほうがいいのではっ!?」

エリカ「逆よっ!あっちはもう主力を呼び戻しているわ、一対一の今を逃したらもう勝ち目はないっ!!追ってっ!!」

麻子「おう」

エリカ「っ……サンダースの副隊長の肩書は伊達じゃないってことね」

梓『こちらウサギさんチーム、カメさん、カバさんと合流してポイントまで到達しましたっ!!あんこうチーム達はどこですかっ!?』

298: 2018/02/06(火) 19:58:42.62 ID:TRvl/PIH0
アリサ「Ⅳ号っ!?なんであんなところにっ!?」

ケイ『アリサっ!38tとM3、Ⅲ突が来たわっ!!だけど、相手のフラッグ車が全然見つかんないんだけどっ!?』

アリサ「すみませんっ!!それは囮だったみたいですっ!!フラッグ車は、Ⅳ号は今目の前にいますっ!!」

ケイ『っ!?すぐ救援に行くわっ!!』











ダァンッ! ダァンッ!!


ナオミ「……チッ、さっきからあの三式傾斜に隠れてなかなか顔を出さないな……」

ケイ『ナオミっ!!それは囮よっ!フラッグ車は今アリサのとこにいるってっ!!三式たちはほかの子に任せて、私たちは戻るわよっ!!』

ナオミ「何っ!?」

299: 2018/02/06(火) 20:04:56.79 ID:TRvl/PIH0




ダァン!  ダァンッ!

アリサ「さっさと逃げなさいっ!!合流地点まで行けばあんな奴らボッコボコにできるんだからっ!!」

操縦手「だから連絡しなくていいんですかって聞いたのに……」

アリサ「うるっさいわねっ!!?ほら、こっちもどんどん撃ち返しなさいっ!!」

装填手「傍受機のせいで弾が遠くて……」

アリサ「っ~~~~~!?なんで、なんでなのよっ!!あんな奴らさっさと倒して今頃タカシと電話してるはずだったのにっ!!」

装填手「番号交換してたんですか?」

アリサ「初電話よっ!!やっと番号手に入れたんだからっ!!」

装填手「ほかの人から聞いたんですね……」

砲手「もしくは不正アクセス?」

アリサ「黙って働きなさいっ!!」

300: 2018/02/06(火) 20:10:08.22 ID:TRvl/PIH0

ダァンッ!!

エリカ「麻子っ!!絶対に逃がさないでっ!!」

麻子「わかっている」

ダァンッ!!

華「っ……動いている的に当てるのは、今の私にはっ……」

エリカ「華落ち着いてっ!この距離ならどこかに当たれば倒せるわっ!!」

優花里「どういうわけか相手は砲撃に時間がかかっています!!今ならっ!!」





ダァンッダァンッ!!



ケイ『アリサ!ごめんっ、全速力で戻ってるけどもうちょっとかかりそうっ!!』

アリサ「っ……深追いさせすぎた……」

装填手「相手の砲撃、どんどん精度があがってますっ!?」

アリサ「なんなのよあいつらはぁッ!?」

砲手「どうしますっ!?」

アリサ「っ……そうだ、こうなったらっ!!」

301: 2018/02/06(火) 20:14:54.49 ID:TRvl/PIH0
梓『先輩っ!?エリカ先輩っ!?今どこにいるんですかっ!?』

沙織「えりりん、返さなくていいの?」

エリカ「今はそれどころじゃないわっ切っといて!!」

優花里「……相手の砲撃が止みましたね」

エリカ「え?」

華「弾切れですか?」

優花里「チャンスですっ!!一気に仕留めましょう」

華「はいっ!!」

エリカ「……っ!?まずい、砲撃待っ―――――」

華「っ!!」



ダァンッ!!



アリサ「今よっ!!」

キキーッ!!


302: 2018/02/06(火) 20:18:49.42 ID:TRvl/PIH0
エリカ「急停止っ……冷泉さんっ!!曲がってっ!!」

麻子「っ!!」

ギィイイイイイ!





アリサ「停止射撃ならっ……撃てっ!!」


ダァンッ!!    ダァンッ!!


シュポッ! シュポッ!!

303: 2018/02/06(火) 20:19:36.42 ID:TRvl/PIH0







『大洗、サンダース両校のフラッグ車の走行不能を確認、これより判定に入ります』








304: 2018/02/06(火) 20:20:05.80 ID:TRvl/PIH0
ここまで

305: 2018/02/06(火) 23:39:54.18 ID:7q1y1TlDo

引用: 【ガルパン】エリカ「私は、あなたを救えなかったから」