306:◆eltIyP8eDQ 2018/02/08(木) 17:26:46.48 ID:UmuUGmen0

【ガルパン】エリカ「私は、あなたを救えなかったから」【前編】
【ガルパン】エリカ「私は、あなたを救えなかったから」【中編】







『大洗、サンダース両校のフラッグ車の走行不能を確認、これより判定に入ります』








梓「……え?どういうこと?」


桃「あいつら、どこで何してるんだ?」


左衛門佐「人知れず果し合いでもしてたのか?」

ガールズ&パンツァー フェイズ エリカ 3 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
307: 2018/02/08(木) 17:29:52.81 ID:UmuUGmen0
優花里「……相打ちですか?」

華「……こちらは撃っていません」

沙織「え?ならなんで」






『判定の結果、サンダース大学付属高校フラッグ車が先に走行不能と確認。よって、大洗女子学園の勝利っ!!』






308: 2018/02/08(木) 17:34:44.08 ID:UmuUGmen0
沙織「え?………………やった、やったやった勝ったよっ!?勝ったよえりりんっ!!?」

優花里「あのサンダース相手に勝てたんですね私たちっ!!」

華「ですが、誰が相手のフラッグ車を……」

麻子「……あれだろうな」チラッ

沙織「あれって……ん?アリクイさんチーム?なんであんなところにっ!?」

エリカ「直接聞いたほうが早いわね」

沙織「あ、そっか。試合終わったから無線使えるね」

エリカ「猫田さん?」

ねこにゃー『逸見さん?ボクたち、勝てたんだね……』

エリカ「ええ、あなたたちの砲撃のおかげでね。そんなところからよく当てられたわね?」

ぴよたん『足止めしようって適当に撃ったら当たったぴよっ!!』

309: 2018/02/08(木) 17:41:37.11 ID:UmuUGmen0
エリカ「……ていうか、あなたたちなんでそんなとこいるの?敵の主力をおびき寄せるために森の奥にいなさいって言ったわよね?」

ねこにゃー『ほ、ほかのチームが見えた段階で囮は任せてこっちにきたの……コッソリ作戦の事、知ってるのボクたちだけだったから……』

エリカ「……つまり命令無視の独断専行ってことね」

ねこにゃー『ご、ごめんなさいっ!?』

エリカ「黒森峰だったら謹慎10日は食らうわよ?……でも、今回は助けられたわ。よくやった、とは口が裂けても言えないけどね」

ねこにゃー『……うん!』

エリカ「次からはちゃんと命令は遵守しなさいよ。それじゃあ、後でね」

優花里「ねこにゃー殿たちお手柄ですねっ!」

エリカ「……っ!!」ガンッ!!

沙織「わっ!?えりりんどうしたのっ!?」

優花里「エリカ殿、手がっ!?」

エリカ「……負けたわ。完璧に」ギリッ

優花里「そ、そんなこと」

エリカ「猫田さんたちが偶然当ててなかったら負けてたっ!!わかるでしょっ!?」

優花里「それは……」

エリカ「偉そうに指揮して、大口叩いて、その結果がこれ?私は……私にはやっぱり……」

沙織「……えりりんっ!!」

エリカ「……沙織?」

310: 2018/02/08(木) 17:47:38.39 ID:UmuUGmen0
沙織「ほら、手だして。……ちょっと切れてるじゃん!?消毒して、絆創膏貼るから!!もう、女の子なんだからもっと体は大事にしてってばっ!!」

エリカ「……」

沙織「えりりん、さっき言ったこと覚えてる?」

エリカ「……?」

沙織「私たちの勝利の女神はえりりんだって」

エリカ「……ええ」

沙織「えりりんは偶然勝ったことに納得してないのかもしれないけど、えりりん言ってたじゃん相手のほうがずっと強いって」

エリカ「……練度も車両性能も、数も相手が上。普通にやって勝てるわけがなかったわ……」

沙織「でも、私たち勝ったんだよ。偶然でも、たまたまでも、勝ち目がない試合で勝ちを引っ張ってこれたのはえりりんが指揮したからだよっ!!」

エリカ「私が……」

沙織「猫田さんたちだってそう、この試合に猫田さんたちが参加できたのはえりりんが見つけたからなんだよ?」

エリカ「……」

沙織「その猫田さんたちがちゃんとえりりんの指示を聞いて、その上で自分たちで何とかしようって動いた結果なんだよ」

エリカ「それは……」

沙織「えりりん。納得できない気持ちはわかるけど、それでも勝ちは勝ち。喜んだってバチはあたらないって思うな」

エリカ「……そう、ね」

沙織「そうそう♪」

華「ですね」

優花里「はいっ!!」

麻子「結果オーライだ」

311: 2018/02/08(木) 17:53:47.50 ID:UmuUGmen0
沙織「はい、絆創膏貼ったからもういいよ」

エリカ「沙織……ありがとう」

沙織「ん。そうだほかのチームのみんなに連絡しないとっ!?」

エリカ「そういえばそうね」

優花里「アヒルさん、アリクイさんチーム以外は何が起きたかわかってないでしょうしね」

沙織「えっと……あーっ!?」

エリカ「どうしたの?」

沙織「携帯っ!!これ使えば良かったじゃんっ!?」

優花里「あー……確かにチーム内ならメールでの連絡もとくに規定はなかったはず……」

沙織「これでみんな集めればあんなギリギリの試合しなくても良かったのにぃー」

エリカ「……ま、いいじゃない勝ったんだから」

沙織「えりりんがそれを言う!?」

エリカ「っと、ごめんなさい私ちょっと出るわね。ほかの子たちへの連絡は沙織がやっといて」

沙織「えりりん?」

312: 2018/02/08(木) 17:58:07.71 ID:UmuUGmen0




栗毛の少女『……』




エリカ「……言ったでしょ?あなたの策には乗らないって。私は、あなたなんかに頼らない。――――さっさと消えなさい」




栗毛の少女『……』スゥー





322: 2018/02/10(土) 17:32:08.03 ID:du4JwCds0




アリサ「そんな……私たちが一回戦で……」

エリカ「だいぶ堪えてるみたいね」

アリサ「あなた……」

エリカ「……無線傍受するなら次はもっとうまくやりなさい」

アリサ「っ!?気づいてたのっ!?」

エリカ「あからさまにやりすぎよ」

アリサ「……笑いなさいよ。無名校相手に手段を選ばなかったのにまんまとやられたんだから……」

エリカ「……アリサさん、私は――――」

ケイ「アリサっ!!」

ナオミ「アリサっ!!」

アリサ「た、隊長……ナオミ……」

エリカ「―――――あら?遅かったじゃない」

アリサ「隊長……すみません、私……」

エリカ「この子のお陰で勝たせてもらったわ。ありがとう」

ケイ「……どういうこと?」

アリサ「隊長、私、私……」

323: 2018/02/10(土) 17:37:20.44 ID:du4JwCds0
エリカ「どうもこうもないわ。この子が指示を出しているってのは早い段階でわかってたもの。

    あとはこちらのフラッグ車をチラ見せしつつ、あなた達主力引きつけて、孤立したフラッグ車をドンッ!……まぁ、ギリギリだったけどね」

アリサ「……え?」

ケイ「……そっか。さすがねっ!!完敗よ!」

エリカ「あなたこそ、なんでこんなのをフラッグ車においたの?」

ケイ「アリサがやる気だったからね。それに、私も前線で暴れたかったからよ」

エリカ「そう。なら残念だけどこの子に指揮官の才能は無いわ。卒業までに別の候補を見つけるのをおすすめするわよ」

アリサ「っ……」

ケイ「あははっ、悪いけどアリサはもう私の後に隊長を継ぐって決まってるの」

エリカ「そうなの?なら、来年もサンダースは一回戦敗退ね」

ケイ「……そんなことないわっ!来年のサンダースはもっと強くなる。頼れる後輩が私にはいるんだもの!来年も正々堂々と戦わせてもらうわっ!」

エリカ「お得意のフェアプレイ精神?残念だけど、こいつにそんな才能はないわよ。ご自慢のシャーマン部隊も、ファイアフライも何一つ活かせなかったんだから」

324: 2018/02/10(土) 17:42:09.15 ID:du4JwCds0

ガシッ



ナオミ「……そこまでにしてもらおうか」

ケイ「ナオミ、ダメよ」

ナオミ「その口をそれ以上開いたら……」

エリカ「……仲良しこよし。ずいぶん楽しそうね?来年は小学生の部で出場すれば?」

ナオミ「お前ッ!!」

アリサ「やめてっ!!!」

ナオミ「っアリサ……」

アリサ「わた、私が悪いのっ!私が、あんな……」

エリカ「……ふん、わかったならいいのよ。悪いけど私たちには次の試合があるの。あなた達と違ってね?さっさと帰らせてもらうわ」

ナオミ「待てっ!!」

ケイ「ナオミ」

ナオミ「っ……」

ケイ「……エリー」

エリカ「……何?」

ケイ「あなた、変わったわね」

325: 2018/02/10(土) 17:50:40.31 ID:du4JwCds0
エリカ「……ケイさん、試合前に私にこう問いましたよね?あなたにとっての戦車道は何?って」

ケイ「ええ」

エリカ「私にとっての戦車道は―――――勝つことです」

ケイ「……」

エリカ「どんなに戦車が弱くても、どんなに練度が低くても、持てる力をつぎ込んで勝つことです。そうでなきゃ―――――私には何もないから」

ケイ「っ……」

エリカ「……さよなら」スタスタ

ケイ「……さぁ、私たちも戻りましょう!まだ試合後の挨拶があるんだから」

326: 2018/02/10(土) 17:58:33.90 ID:du4JwCds0





エリカ「あら?いたの」

優花里「は、はい……」

沙織「……」

エリカ「梓達には連絡してくれたのよね?私はちょっと気分が良くないわ。悪いけど、試合後の挨拶は桃ちゃんたちに頼んでおいて」

優花里「あ、はい……」

沙織「……えりりん」

エリカ「何?」

沙織「もう、ああいうのはやめて」

エリカ「……何のことかしら?」

沙織「アリサさんを庇ったんでしょ?無線傍受の事、バレたら大変だって思って……」

エリカ「……さぁね。私はただ、言いたいことを言っただけよ」

沙織「……次は黙ってないから」

優花里「私も……沙織殿と同じ気持ちです。エリカ殿、あまり偽悪的に振る舞うのはやめてください」

華「あのような振る舞いはあなただけではなく、私たちも同じように辛いものです」

麻子「……あまりいいことではないと思うぞ」

エリカ「……考えておくわ」

327: 2018/02/10(土) 18:05:21.67 ID:du4JwCds0
タッタッタッ



アリサ「待ってっ!!」

沙織「アリサさん?」

エリカ「……何か用?」

アリサ「どうして無線のこと言わなかったのよ」

エリカ「別に、ルール違反ってわけじゃないでしょ?」

アリサ「だったら、なんであんな……あなたが悪者になるようなことっ!!」

エリカ「……試合前に私言ったでしょ?勝利にこだわるその姿勢は好きだって。それに……隊長のためだったんでしょ?」

アリサ「っ……なんで」

エリカ「なんとなくね。黒森峰にいた時にあなた達のデータも入ってたから、あなたの人となりもある程度は。

    尊敬する隊長は最後の大会で、なんとしてでも優勝旗を捧げたかったのよね」

アリサ「……」

エリカ「はっきり言って、今回私たちが勝てたのはたまたまよ。私たちの初撃が避けられた時点で勝ち目はほぼなかった。

    それに最後の砲撃、完全にしてやられたわ……勝てたのは本当に偶然。何百回かに一回の幸運が転がり込んできたから勝てたのよ」

アリサ「無線傍受までしてあそこまで追いつめられてる時点でね……」

エリカ「……アリサさん、あなたの間違いはただ一つ。―――秘密を抱えたまま試合に挑んだことよ」

アリサ「……」

328: 2018/02/10(土) 18:15:41.18 ID:du4JwCds0

エリカ「隊長を、サンダースを本気で勝たせたいならあなたはしっかりと無線傍受について事前に話しておくべきだった」

アリサ「知ってるでしょ?隊長はそういうことを嫌う人だから」

エリカ「それでもよ。そこで意見をぶつけることを避けたから。この人はこうだからって諦めたから。だから、1輌で……いえ、1人で戦うことになるのよ」

アリサ「……」

エリカ「サンダースの練度と車両で真っ向勝負されたら勝ち目なんて無かった。

    無線を封じられて、連携が取れなくなった状態であなた達の意思疎通が完璧だったら手も足も出なかったわ。

    だけど、偶然に助けられたとはいえ結果は私たちの勝ちだった……紙一重どころかほぼ負けだったけどね」

アリサ「……」

エリカ「ケイさんのフェアプレイ精神は素晴らしいものよ、勝利だけが全てじゃない。真正面から本心でそう言える人はきっと少ないでしょうね」

アリサ「だから、私は隊長についてきたのよ」

エリカ「だから、あなたは1人で動く羽目になった……ケイさんは戦車道に勝敗は関係ないって言ったわ。でもね、勝利は一番わかりやすい慰めになるのよ。大切なものを失っても勝利が残れば……何もかも失うよりましよ」

アリサ「……私は」

エリカ「言っておくけど、無線傍受のこと言うんじゃないわよ。あなたの車両のメンバーもしっかり口封じしときなさい。

    でないと、私のしたことが無駄になるから」

アリサ「……あなた、酷い人ね」

エリカ「よくわかってるじゃない。来年はあなたが隊長なんでしょ?なら、影の一つくらい平然と抱えていられるようにしなさい」

329: 2018/02/10(土) 18:20:59.87 ID:du4JwCds0
アリサ「エリカっ!あなたは、辛くないの……?」

エリカ「……何のことかしら?」

アリサ「……ごめんなさい。なんでもないわ」

エリカ「そう、それならさっさと戻ったほうがいいわよ」

アリサ「うん……エリカ」

エリカ「何よ」

アリサ「次の試合、頑張ってね」タッタッタ

エリカ「……勝者を応援できる。それも、立派なフェアプレイ精神よ」

沙織「でも、えりりんはアリサさんに重い荷物を背負わせちゃったね」

エリカ「……」

沙織「きっと、あの場で言ったほうが良かったよ。ケイさんだって謝ればすぐ許してくれただろうし」

エリカ「余計なことだったってこと?」

沙織「……わからないよ。えりりんの言う通りルール違反じゃないんだもん。だけど、アリサさんがどう思うかはまた別の話だよ」

エリカ「……そうね」

沙織「……帰ろっか」

エリカ「……うん」

330: 2018/02/10(土) 18:22:44.25 ID:du4JwCds0


prrr



沙織「電話?」

麻子「私のだ」


pi


麻子「もしもし……え?」

沙織「麻子?」

麻子「はい、はい……わかりまし、た」


331: 2018/02/10(土) 18:23:53.12 ID:du4JwCds0
沙織「麻子どうしたの?

麻子「……おばぁが、倒れて病院に……」

沙織「えっ!?それじゃあすぐに行かないとっ!?」

華「ですが、ここから大洗まで距離が……」

優花里「学園艦に寄港してもらうにもすぐには……」

麻子「……泳いでいく」

沙織「馬鹿言ってないで!!ちょっとえりりんも何とか言ってってばっ!!」

エリカ「何とかって…………ん?」

沙織「えりりん?」

エリカ「あのヘリは……ならっ、冷泉さん来てっ!!」ガシッ

麻子「なっ、なんだっ?」

エリカ「いいから走ってっ!!」

沙織「ちょ、えりりんどこいくのっ!?……行っちゃった」

339: 2018/02/12(月) 17:48:24.13 ID:ioFUdVPh0






まほ「……」

エリカ「西住隊長っ!!」

麻子「逸見さん、こいつは……」

まほ「……お前か。何の用だ」

エリカ「あのっ、私にヘリを貸していただけないでしょうかっ!?」

まほ「いきなり来たと思えば……そんな頼みを聞けるわけがないだろう」

エリカ「隊長!!お願いしますっ!!どうしても今ヘリが必要なんですっ!!」バッ

麻子「逸見さんっ!?」

まほ「いくら頭を下げようと……私が、今のお前の頼みを聞く思っているのか?」

エリカ「……この子の祖母が病院に運ばれたらしくて、一刻も早く連れて行かないとっ……」

まほ「……」

エリカ「お願いしますっ!!隊長が……西住さんが私を恨んでいるのはわかっています!だけど、だけど今回だけは!!力を貸してくださいっ!!」

麻子「やめてくれ……私のためにそこまでしなくてもっ……」

エリカ「黙っててっ!!……西住さん、私にできることなら、何でもします。だから、どうか……」

まほ「……ふっ、くくっ……ははははっ、あははははははっ!!」

エリカ「西住さん……?」

麻子「何がおかしい」

まほ「……ああ、すまない。だがそこのがあんまりにもおかしい事を言うものだから。

   ―――お前が差し出せるものなんて何もないだろ。中身のない偽物が」

エリカ「っ……」

麻子「……いい加減に」

340: 2018/02/12(月) 17:58:22.19 ID:ioFUdVPh0
まほ「―――――ねぇ、あなたの名前は?」

麻子「…………冷泉麻子」

まほ「そこのとどんな関係なの?」

麻子「逸見さんとは……友達だ」

まほ「そう。……私は忙しいんだ。これ以上お前たちの話に付き合っている暇はない」

エリカ「そんなっ……お願いですっ!お願いですから……」

まほ「さっきも急に事務局の人に呼ばれたんだ。せっかく帰れると思ったのにまだしばらく残る羽目になるだろう」

エリカ「……え?」

まほ「ヘリも一人で乗ってきたからな。こんな野ざらしでは誰に盗まれるかわかったものじゃない。

   こんなことなら、副隊長も連れてくれば良かった。だが……これも強豪校ゆえの悩みなのかもな」

エリカ「それって……」

まほ「どけ。私はもう行かなければならないんだ」

エリカ「ありがとうございます!!」

麻子「あ、ありがとう」

まほ「何を言っているかわからないな。さっさと散ってくれ」スタスタスタ

341: 2018/02/12(月) 18:05:20.51 ID:ioFUdVPh0




バババババ

麻子「逸見さん、ヘリの操縦もできるんだな」

エリカ「黒森峰の時にね。ほかにも船とか飛行船も動かせるわよ?」

麻子「凄いな……」

エリカ「初見で戦車をあれだけ動かせるあなたも大概よ……」

麻子「……なぁ、逸見さん」

エリカ「何?」

麻子「なんで私にここまでしてくれるんだ?さっきの、黒森峰の隊長との関係はお世辞にも良いとは思えなかったが」

エリカ「……そうね、たしかに隊長は私を嫌ってる……いえ、憎んでいるのかもね」

麻子「理由は……言えないのだったな」

エリカ「……ええ。だけど、私にとって隊長は隊長なの。黒森峰から出てった今でも、逸見エリカにとって一番尊敬に値する人よ」

麻子「……」

エリカ「それに、私にはあんなんだけど隊長は優しい人よ?なんだかんだ言ってヘリ貸してくれたじゃない」

麻子「だが、それは逸見さんが頼んでくれたからだ」

エリカ「ほかにヘリ持ってそうな知り合いはいないしね。隊長がたまたま来ていてくれて良かったわ……っと、ほら見えてきたわ降りる準備しときなさい」

麻子「ああ」

342: 2018/02/12(月) 18:10:19.85 ID:ioFUdVPh0







バババババ



エリカ「ついたわよ。早くおばあさんのところに行ってあげなさい」

麻子「逸見さん」

エリカ「何?早く行きなさいって」

麻子「――――ありがとう。本当に、感謝してる」

エリカ「……いいわよ別に。だって、私たち友達なんでしょ?」

麻子「……ああっ」

エリカ「なら、気にしないで。また明日ね……麻子」

麻子「……ああ。また明日」

343: 2018/02/12(月) 18:16:01.18 ID:ioFUdVPh0





エリカ「……久しぶりに操縦すると結構疲れるわね……」

まほ「……」

エリカ「隊っ……西住さん」

まほ「……今日の試合、たまたま見る機会があった」

エリカ「そ、そうだったんですか」

まほ「……無様な試合だ。無線傍受程度であんなにも追いつめられて」

エリカ「っ……」

まほ「特に、最後のはなんだ?偶然三式の砲撃が当たったから良かったもののあんなのは負けと一緒だ」

エリカ「……私も、そう思っています」

まほ「ああ、指揮も統率もろくにとれないようなお前が戦車道の隊長をしようだなんて、私たちを……西住流を馬鹿にするのも大概にしてほしいな」

エリカ「……返す言葉もありません」

まほ「……なぁ、お前はいつまでそうしているつもりだ?」

エリカ「…………私は、私にはこれしかできません」

まほ「さっきの子、友達だって。まさかお前のような奴に友達がいるだなんて思ってなかった」

エリカ「……あの子だけじゃない。西住さん私、大洗に来て友達がたくさんできたんですっ!もうできないと思っていた戦車道をもう一度始められて、仲間ができたんですっ!」

まほ「だったらなおさらだ。友達を、仲間を騙して、お前は何も思わないのか」

エリカ「っ……だって、だって……私にはもう、この生き方しかできないの……」

まほ「……ああそうか、そうか。……わかったよ。やっぱり私は――――――お前を許せない」

344: 2018/02/12(月) 18:21:17.68 ID:ioFUdVPh0




エリカ「……」トボトボ

沙織「あっ!えりりん帰ってきたっ!!」

優花里「どこに行ってたんですか?冷泉殿は?」

エリカ「……たまたまヘリを持ってた知り合いがいたから、乗せてもらったのよ」

沙織「そんな知り合いいるのっ!?」

華「まぁ……」

エリカ「……帰りましょう」

沙織「え?」

エリカ「……疲れたわ」

沙織「う、うん……」

345: 2018/02/12(月) 18:29:35.12 ID:ioFUdVPh0




ガチャ

エリカ「……ただいま。って誰もいないか」

スタスタ バフッ

エリカ「……寝るならお風呂入って、着替えないと……でも、疲れたな……」






栗毛の少女『……』






346: 2018/02/12(月) 18:36:38.92 ID:ioFUdVPh0

エリカ「っ!?」バッ

栗毛の少女『……』

エリカ「あなた、まだっ……」

栗毛の少女『……』

エリカ「……消えなさい。わかったでしょ?あなたなんかに頼らなくたって私は勝てるのよっ!!」

栗毛の少女『……あ、』

エリカ「っ!?」

栗毛の少女『あなたは……弱い人』

エリカ「っ……ふざけんじゃないわよッ!!?あなたに、あなたみたいな奴がッ!!」

栗毛の少女『私が消えたところで、あなたは何一つ変わらない。変わらなかった』

エリカ「……うるさい、うるさいうるさいっ!!消えろっ消えろおおおおっ!!」

栗毛の少女『……』

エリカ「なんで、なんで消えないのよ……あなたはもう、氏んでるのっ!!私が、私が頃したんだからッ!!」

栗毛の少女『……』

エリカ「氏んだ奴が、いつまでも縋ってんじゃないわよっ!!!」

347: 2018/02/12(月) 18:45:04.73 ID:ioFUdVPh0





栗毛の少女『……』スゥー








エリカ「……」ハァハァ




348: 2018/02/12(月) 18:46:42.84 ID:ioFUdVPh0










『だって、私達の勝利の女神はえりりんだもん』








349: 2018/02/12(月) 18:50:21.76 ID:ioFUdVPh0








『どんなに戦車が弱くても、どんなに練度が低くても、持てる力をつぎ込んで勝つことです。そうでなきゃ―――――私には何もないから』









350: 2018/02/12(月) 18:50:50.21 ID:ioFUdVPh0






エリカ「っ……何が、何が勝利の女神よっ!?何が戦車道よっ!?私はッ!!こんなにも弱くてっ……無様で……空っぽなのに……」








358: 2018/02/15(木) 17:31:48.13 ID:CjchT7qq0





沙織「んー……えりりん遅いなぁ」

優花里「まだ時間前ですから」

沙織「でも、えりりん時間に厳しいイメージがあるでしょ?」

華「昨日あれだけ頑張ったのですから疲れているのでしょう」

沙織「まだ寝てるのかな?それじゃあ戦車で迎えにいく?」

エリカ「勘弁してよね……」

沙織「あ、えりりん来たね。……ってどうしたの?目、赤いけど……」

エリカ「昨日は色々あったからね。ちょっと寝不足」

沙織「……大丈夫?」

エリカ「私が送っていったんだから最後まで付き合うわよ」

優花里「それじゃあ、お見舞いに行きましょうっ!」

359: 2018/02/15(木) 17:37:58.60 ID:CjchT7qq0




久子「まったくいつまでも人を病人扱いするんじゃないよっ!!」

麻子「実際倒れたんだから文句言えないだろ」

久子「口答えするんじゃないよっ!!だいたいあんたはいつまでそんなだらしない生活を続けるんだいっ!?」

麻子「……最近はちゃんとしてる。学校だってこのペースなら卒業できる」

久子「そういうことを言ってるんじゃないんだよっ!!」









エリカ「……元気なおばあちゃんね」

華「一応入院中のはずなんですけど……」

沙織「おばぁはだいたいあんな感じだよ?」

優花里「私もいつまでもあのように元気でいたいですっ」

360: 2018/02/15(木) 17:42:50.66 ID:CjchT7qq0
久子「だいたいあんたはねっ!!」

麻子「おばぁ、みんなの前であんまり怒鳴らないでくれ」

久子「まったく、口ばっかり達者になって……それで?あんたたちは麻子のなんなんだい?」

麻子「戦車道を一緒に履修している……友達だ」

久子「戦車道?」

華「五十鈴華です」

優花里「秋山優花里です」

エリカ「逸見エリカです」

久子「まぁっ!?あんたなんだいその髪はっ!?」

エリカ「……え?」

361: 2018/02/15(木) 17:46:18.34 ID:CjchT7qq0
久子「そんな若いのにずいぶん苦労してきたんだねぇ……うちの麻子が世話かけてないかい?」

エリカ「いえ、この髪は……」

麻子「おばぁ、逸見さんの髪は元から真っ白なんだよ」

エリカ「そういうことです」

久子「なんだそうなのかい」

麻子「すまないな逸見さん」

エリカ「いいのよ。……大事でないようでよかったです」

久子「ああ、ありがとう。確かあんたが麻子を送ってくれたんだろ?ほら、あんたも礼をいいなさい」

麻子「もう言った」

362: 2018/02/15(木) 17:51:50.32 ID:CjchT7qq0
久子「送ってもらったことだけじゃないよっ!!この子たちはねあんたのことが心配だからわざわざ来てくれたんだよっ!!」

麻子「……うん、わざわざ、ありがとう」

久子「もっと愛想よく言えないのかいっ!」

麻子「……ありがとう」

久子「変わってないよっ!!……まったく、戦車道なんて大変なことにこの子が役に立ってるんかい?」

華「ええ、冷泉さんの運転技術はとても素晴らしいです」

沙織「麻子、初めて乗った戦車をバンバン動かせたんだよ?」

優花里「冷静な判断力、とても素晴らしいですっ!!」

エリカ「むしろ、麻子さんがいなかったら私たちは一回戦を突破できませんでした」

久子「……そうかい。なら、まぁいいさ」

363: 2018/02/15(木) 17:55:55.74 ID:CjchT7qq0





麻子「……じゃぁおばぁ、また来るよ」スタスタ

エリカ「失礼します」

久子「……あんた、ちゃんとご飯食べてるのかい?」

エリカ「え?」

久子「髪だけじゃないよ。年の功ってやつで、目を見ればどんな人生送ってるのかなんとなくわかるのさ

  ――――そんな優しい目をしてるのに、まるで自分が無い。……ずいぶん辛いことがあったんだろ」

エリカ「……そう、ですね。辛いだなんて言葉じゃ足りないくらい……生きているのが不思議なくらい……」

久子「それでも、生きているんだろ?なら、前を向きな」

エリカ「……」

364: 2018/02/15(木) 17:59:11.35 ID:CjchT7qq0
久子「麻子は小学生の時に両親を事故で亡くしててね、そのせいかあんまり人づきあいが得意な方じゃない」

エリカ「そんなことが……」

久子「そんなあの子が沙織以外の友達を作れるだなんて思ってなかったよ」

エリカ「……麻子さんはとても頑張っていますよ。最初は嫌々始めた戦車道でしたが、今はもう私たちに欠かせない、大切な仲間です」

久子「そうかい……あの子は大切な人を失うのを怖がってる。それは、人として当たり前の感情さね」

エリカ「……はい」

久子「それでも前を向いているんだよ。……怠けてばっかでだらしない子だけどね」

エリカ「……麻子さんの事、大切に思っているのですね」

久子「当たり前だよ」

エリカ「……羨ましいです」

久子「……あんたも、いつまでも悲しみに縋ってないでもっと周りをみてみな。あんたが失ったものと同じものはないけれど、きっと悪くないものが見えるだろうさ」

エリカ「……はい」

久子「……年を取ると説経臭くなってしょうがない。引き留めて悪かったね、今日はありがとう……あの子の事、頼んだよ」

エリカ「はいっ」

365: 2018/02/15(木) 18:04:16.82 ID:CjchT7qq0





エリカ「おまたせ」

沙織「あ、えりりんやっと来た。何してたの?」

エリカ「……なんでもないわ」

麻子「トイレか」

華「冷泉さん、もうちょっとデリカシーを……」

エリカ「ほら、さっさと帰るわよ」

優花里「はい」

沙織「せっかく陸に上がったんだしなんかご飯食べてこっ!」

華「ええ、是非ともっ」

優花里「何にしましょうか?」

麻子「甘いものも食べたい」

366: 2018/02/15(木) 18:08:07.52 ID:CjchT7qq0
ワイワイ

ガヤガヤ



エリカ「……」




『いつまでも悲しみに縋ってないでもっと周りをみてみな。あんたが失ったものと同じものはないけれど、きっと悪くないものが見えるだろうさ』








エリカ「そんなもの必要ない。……だって」



367: 2018/02/15(木) 18:09:04.15 ID:CjchT7qq0







エリカ「貴女が、私の全てだったんだから」








376: 2018/02/17(土) 17:30:54.50 ID:wqBfGWYY0




桃「貴様ら、この間の一回戦は良くやったと誉めてやろう。だが、まだ試合は続く、気を抜くなよ腰抜けどもっ!!」

柚子「私たち何もできなかったけどね……」

桃「そ、それも作戦の内だったんだ!」

梓「気が付いたら試合が終わってて活躍も何もって感じです……」

カエサル「同感だ」

桃「うぅ……」  

エリカ「そんなことないわよ。あなた達が敵を引き付けてくれたおかげで、相手のフラッグ車を孤立させられたんだから」

梓「先輩……」

エリカ「だから、いつまでも落ち込んでないで桃ちゃんを見習ってシャキッとしなさい」

梓「か、河嶋先輩を見習って……?」

カエサル「……うーむ」

桃「なんでそんな不満げなんだっ!?」

エリカ「……まぁ、気持ちはわからなくわないわ。だけど、これから先誰か一人でも欠けたら私たちの勝利は無いわ。

    あなた達全員が勝利の鍵だって事をもっと自覚しなさい」

梓「……はいっ!」

カエサル「そこまで言ってくれるのなら」

377: 2018/02/17(土) 17:37:06.11 ID:wqBfGWYY0

エリカ「……なんだか暑苦しくなっちゃったわね。桃ちゃん、続けていいわよ」

桃「偉そうに……いいかお前たち、次の相手のアンツィオ高校はノリと勢いだけだなんて言われている。だが、言い換えれば調子に乗られると危険だということだっ!!」

沙織「アンツィオってどんな高校なの?」

エリカ「イタリア系の私立ね。確か、戦車道チームの立て直しのために安斎千代美って人を招聘してたわ」

沙織「スカウトされたってこと?それじゃあ強いの?」

エリカ「実力としてはまだまだ優勝レースに入れるほどではないわね。でも、安斎さん自身は優秀な人だと聞いているわ。

    アンツィオの戦車道チームも安斎さんが入ったここ3年でだいぶ実力をつけてきているらしいし」

優花里「一人で立て直しを図るだなんて凄いですね……」

エリカ「ええ、油断ならない相手よ」

桃「逸見の言う通りだ。そして、今日皆に集まってもらったのはそれが関係している」

梓「なんですか?」

378: 2018/02/17(土) 17:42:51.98 ID:wqBfGWYY0
桃「お前らっ!!戦車を探すぞっ!!」

柚子「……桃ちゃんいきなりそれじゃ意味わかんないよ?」

桃「桃ちゃん言うなっ!!準決勝からは参加可能車両数が15輌になるっ!今後のことも考えると戦力の増強は急務だっ!!」

エリカ「なるほど、だから戦車探しってわけね。それで?今回はちゃんとヒントはあるの?」

柚子「この間学校の戦車道関連の資料を調べてたら、今ある戦車以外にも形跡があったの。

   詳しい場所までは分からないけれど、いくつか場所を絞れたよ」

エリカ「なんだ。それなら何とかなりそうね」

桃「だ、だから怒るなよ……?」

エリカ「……あの時はあなた達がろくに仕事もせずに人にぶん投げようとしたから怒っただけ。

    ちゃんとしてるなら何も言わないわよ」

沙織「えりりんいつも怒ってると思われてるんだね……」

桃「とにかくっ!!各員、気を引き締めて捜索にあたるようにっ!!」

エリカ「それじゃあ早速班分けをして探しに行きましょう。桃ちゃんは私と一緒の班ね」

桃「だから桃ちゃん言うなっ!!……って、私もかっ!?」

エリカ「捜索に人手はいくらあっても足りないでしょう?」

桃「い、いや、私は戦車道の資料を調べなくては……何かヒントがあるかもしれないし……」

379: 2018/02/17(土) 17:48:58.60 ID:wqBfGWYY0
柚子「それは私と五十鈴さんに任せて、桃ちゃんは戦車探しに行って」

桃「な、なんで五十鈴なんだっ!?私だって書類を調べるくらいは……」

柚子「えー?桃ちゃん見落とし多そうだからいいよー。五十鈴さん、お願いね?」

華「河嶋先輩、ここは私に任せてください」

桃「そんなっ!?」

エリカ「はいはい、ぐちぐち言ってないでさっさと探しに行くわよ桃ちゃん。まずはどこから探す?」グイッ

桃「ひ、引っ張るなっ!?た、助けて柚子ちゃあああああんっ!!?」ズルズルズル

エリカ「班分けは頼んだわよー!」








優花里「行っちゃいましたね……」

沙織「えりりん普段は桃ちゃん先輩への当たり強いわりに、気に入ってるっぽいんだよね」

優花里「聖グロとの練習試合での活躍を評価しているんでしょうか」

華「もしくは河嶋先輩の打てば響く性格がエリカさんの琴線に触れたのかも」

沙織「好きな女子をいじめる小学生男子じゃないんだから……」

380: 2018/02/17(土) 17:56:36.12 ID:wqBfGWYY0




桃「何故私まで駆り出されるんだ……」

エリカ「いい加減諦めて探しなさい。なんなら会長も連れてくるわよ?」

桃「会長の手を煩わせるわけにはいかない!さっさと探すぞ逸見っ!」

エリカ「……ねぇ、桃ちゃん」

桃「なんだ?」

エリカ「なんであなたは会長の事を尊敬してるの?」

桃「愚問だな。お前は来たばかりだから知らないのだろうが会長は偉大な方だ。学園のため、ひいては学園艦のために日夜尽力している」

エリカ「そうは見えないけどね」

桃「見せていないだけだ。生徒には余計な苦労は見せずに学生生活を楽しんでもらいたい。それが会長のお考えなのだから」

エリカ「その割には、私に無理やり戦車道をさせようとしてたわね?」

桃「うっ……それは、仕方がない理由があって……」

エリカ「もしも私が戦車道が嫌でしょうがなくて、なのに自分の意志を出せないような子だったらどうなってたでしょうね?」

桃「……すまない。それでも、私たちにはお前が必要だったんだ。たとえお前の意志を無視してでも」

エリカ「……情熱的ね。いいわ、許してあげる。あなた達の事情は知ってるもの」

桃「……すまない」

381: 2018/02/17(土) 18:02:59.59 ID:wqBfGWYY0
エリカ「いいわよ。こっちこそ意地悪言って悪かったわね」

桃「……なぁ逸見」

エリカ「何?」

桃「お前はなんで大洗に来たんだ?」

エリカ「ずいぶんな言い方ね」

桃「茶化すな。以前お前が言ってたことだ、大洗に来たのは不本意だと」

エリカ「……よく覚えてるわね」

桃「会長はその事について何も教えてくれなかった。それはつまり、何かあるということだ」

エリカ「……ええ、その通りよ。桃ちゃん私はね、黒森峰を追い出されたの」

桃「それは……何故だ」

エリカ「……誰かを助ける力も、差し伸べられた手を掴む勇気も無かったからよ」

桃「……具体的じゃないな」

382: 2018/02/17(土) 18:09:43.79 ID:wqBfGWYY0
エリカ「……桃ちゃん、あなたは自分を嫌いになった事がある?」

桃「急になんだ」

エリカ「いいから、答えて」

桃「……あるさ。力不足なこの身を悔やんだことなんて数知れない」

エリカ「そう。……私もよ。私がもっと強ければ。私がもっと賢かったら。違う選択肢を選べて違う未来があったのかもしれない」

桃「……大洗に来たのは今でも不本意なのか?」

エリカ「……わからない。というより、それを決める事ができないの」

桃「なんなんだそれは。お前の事だろうに」

エリカ「……ええ。そうね……大会が終わったらゆっくり考えるわ」

桃「そうしろ。こっちも今は大会に集中してほしいからな」

エリカ「桃ちゃん」

桃「なんだ」

エリカ「……なんでもない」

桃「……?」

エリカ「さ、捜索再開よ」

桃「あ、待て置いてくなっ!?」

383: 2018/02/17(土) 18:15:58.30 ID:wqBfGWYY0





エリカ「……で、結局見つけたのが」

優花里「Ⅳ号に使える長砲身とルノーB1bis、それに……ポルシェティーガーですね」

エリカ「ポルシェティーガーねぇ……」

桃「なんでそんなに残念そうなんだ」

エリカ「いや、長砲身とB1bisは良いのよ。特にB1bisは装甲に不安のある私たちにとって貴重な重戦車よ。

    でも、ポルシェティーガーかぁ……」

桃「何が不満なんだ?」

優花里「何と言いますか……ポルシェティーガーは乗る者に技量を求められるというか、その……」

エリカ「はっきり言ってやりなさい、まともに走らせるのも難しい失敗兵器だって」

桃「そうなのかっ!?」

優花里「いえっ、決して弱いわけではなく、堅くて強いっ!っていう戦車の王道な性能に対して、エンジン回りが劣悪を通り越していまして……」

桃「……使えるのか?」

優花里「……マニア垂涎の一品ではありますが、正直乗りこなせる乗員がいるとは……最悪スタート前に行動不能もあり得るかと」

エリカ「適当にレストアしてもらった後に売って別の戦車買いましょう。数の少ないレア物ではあるから、どこかしら買ってくれるでしょ」

優花里「えー?もったいないですぅ……」

384: 2018/02/17(土) 18:19:20.40 ID:wqBfGWYY0

エリカ「そんなこと言ってられないでしょ。とりあえず買い手を探さないとね」

桃「確かこれはドイツの戦車だったな。なら黒森峰が学術的資料として買い取ってくれないだろうか?」

エリカ「……その交渉、やるとしたら黒森峰に顔知られてる私も行くでしょ?追い出された奴が今度は失敗兵器を買い取ってってやってきたら、私だったらぶっ飛ばすわよ?」

優花里「むぅ……どうしましょうか」

エリカ「とりあえずネットで買い手を募集しましょうか」

???「その必要はないよ」

エリカ「誰っ!?」

385: 2018/02/17(土) 18:23:24.18 ID:wqBfGWYY0
ナカジマ「私、私。自動車部の中嶋だよ」

エリカ「中嶋さん?」

ナカジマ「艦内で見つかったあの戦車だけどさ、私たちに乗らせてよ」

エリカ「自動車部がってことですか?」

ナカジマ「そうそう、普段から戦車を整備している私たちならあの子も乗りこなせると思うよ?」

エリカ「……あれはそんじょそこらの戦車とは違いますよ?」

ナカジマ「そうみたいだね。だからこそ、レストアのし甲斐があるよ。どう?」

エリカ「……あなた達が本当にあれを動かせるなら、堅牢な装甲と、88㎜<アハト・アハト>を持つポルシェティーガーは、間違いなく私たちにとって重要な戦力になります」

ナカジマ「なら、いい?」

エリカ「はい。……お願いします」ペコッ

ナカジマ「ん、任せてよ。回収から修理まで丁重にやらせてもらうよ」

389: 2018/02/22(木) 17:17:24.82 ID:kCwitfTj0




―生徒会室―


桃「アンツィオはイタリア系の学校だ。先の一回戦においても使用した車両はCV33とセモベンテだった」

麻子「急に呼び出したかと思ったら作戦会議か」

華「CV33、可愛くて私好きですっ」

エリカ「機銃しか付いてないから戦車を倒すのはまず無理だけどね」

沙織「そんな戦車入れてるのに一回戦勝ったんだ」

エリカ「……まぁ、それについては数の少ない私たちも大概だしね。とはいえ、相手の指揮官が優秀なのは間違いないわ」

桃「話を聞けっ!……アンツィオが新型戦車を導入したという話もある」

沙織「新型?どんなのですか?」

桃「それは……不明だ」

エリカ「一回戦に出してないってことは秘密兵器って事でしょう」

杏「だろうね。でも、多分もうすぐわかるよ?」

エリカ「は?」

バンッ

優花里「秋山優花里、ただいま戻りましたっ!!」

沙織「ゆかりんっ!?」

エリカ「その恰好……通りでいないと思ったわ……」

杏「おかえりー」

優花里「みなさんおそろいのようで、それじゃあ早速試写会ですっ!!」

390: 2018/02/22(木) 17:22:31.23 ID:kCwitfTj0







~~~~~~~~~~~~~~~~

  『サンダーフォース』

~コロッセオに封じられし秘宝~


~~~~~~~~~~~~~~~~








ケイ『はーい♪私の名前はケイ!特殊部隊サンダーフォースのリーダーよ♪』

ナオミ『……』

ケイ『この子はナオミ、寡黙で冷静な狙撃の名手よ!2キロ先の硬貨を撃ち抜けるぐらいの腕の持ち主なのっ!!』

アリサ『リーダー、遊んでないで準備してください』

ケイ『この子はアリサ。電子兵装のプロフェッショナル。どんな強固なプロテクトも彼女の前では何の意味もないわ。

   ちょっとずる賢いのと好きな男の子を前にするとアガっちゃうのが玉に瑕ね』

アリサ『関係ないでしょっ!?』

ケイ『そんな私たちが今回潜入するのは武装組織アンツィオ。巨大艦丸々一つを占領している危険な組織よ。

   私たちに下った指令はそこのコロセウムに隠されてる新型兵器の情報の入手、可能であれば破壊よ』

アリサ『……そんなに簡単に行くのでしょうか?』

391: 2018/02/22(木) 17:26:51.52 ID:kCwitfTj0


ケイ『問題ナッシング!そのための助っ人なんじゃない!そうでしょ、Ms.オッドボール?』

オッドボール『ふっ、その通り』

ケイ『サングラスで正体を隠しているこの子はMs.オッドボール。今回の作戦のために上が寄越した助っ人よ

   怪しい風貌、あからさまな偽名。だけど腕は確からしいわ。アンツィオへの潜入のカギはこの子が握っているとも』

アリサ『こんなやつ、本当に信頼できるんですか?』

オッドボール『もらった金の分は働かせてもらうさ』

ケイ『期待しているわっ』

ナオミ『ケイ、そろそろアンツィオの上空だ』

ケイ『オッケー!みんな、行くわよっ!!』


アリサ『パラシュート降下の訓練はしてきたけど……』

オッドボール『怖いならこのまま帰ってもいいぞ?』

アリサ『っ!?うるさいわねっ!!』

ナオミ『オッドボール、あまりアリサをいじめないでやってくれ』

アリサ『いじめられてなんかないっ!!』

ケイ『みんなっ!準備は良い?それじゃあ、行っくわよー!!』


バッ



ケイ『イヤッホオオオオオオオオオオオオオオゥ!!』




392: 2018/02/22(木) 17:30:26.68 ID:kCwitfTj0












『こうして私たちはアンツィオの野望を食い止めることができた。しかし、そのために払った犠牲は……決して小さくない』







ケイ『……』

アリサ『オッドボール……いえ、ユカリの氏を無駄にしないためにも、私たちは生きないとね』

ナオミ『ああ。……っと、ケイ!!』

ケイ『……何?』

ナオミ『大統領の奴から直々の指名だ。私たちの力が必要だってさ』

ケイ『……そう、なら行きますかっ!』



『どうやら私たちに安息の時は来ないらしい。でも、それでいいのかもしれないだって私たちは――――』




ケイ『サンダーフォース、出動よっ!!』






~FIN~



393: 2018/02/22(木) 17:34:50.75 ID:kCwitfTj0
エリカ「……」

pi!

エリカ「……ねぇ、私は何を見せられ―――」

沙織「面白かったっ!」

華「オッドボールさん……運命に翻弄される中でそれでも友との友情に殉じたのですね……」

優花里「オッドボール゛う゛ぅぅぅぅぅっ……!!」ウルウル グスグス

杏「いやーなかなか面白かったね」

桃「っ……」ウルウル

柚子「ほら桃ちゃん、涙拭いて」

エリカ「……え?」

麻子「……相変わらずの脂っこい内容だったな。見ていて胃もたれするかと思った」

エリカ「麻子っ!」パァァッ

394: 2018/02/22(木) 17:36:51.69 ID:kCwitfTj0
麻子「だが……ふっ、たまにはこんな映画もいいかもな」

エリカ「え?」

パゾ美「私はもっとしっとりとした恋愛物が好みですね」

エリカ「誰?」

パゾ美「パゾ美です」

エリカ「……誰っ!?」

杏「おーパゾ美じゃん、そど子は?」

パゾ美「そど子は月末の書類整理で忙しいとのことで私が来ました」

杏「そっかぁ。……まだダメそう?」

パゾ美「……もうちょっとってとこですかね?」

杏「……おっけぇ。今度は私がそっち行くよ」

パゾ美「お待ちしてます」



バタン


エリカ「……結局誰なのよ」

優花里「エリカ殿おおっ!!オッドボール殿は素晴らしい方です゛よ゛ね゛え゛え゛え゛え゛!!」

エリカ「あー鬱陶しいっ!!」

395: 2018/02/22(木) 17:39:39.52 ID:kCwitfTj0





エリカ「……で?さっきのB級映画はなんなのよ。見たところまたサンダースに協力してもらったみたいだけど」

優花里「はいっ!!アンツィオに潜入するって話をケイ殿にしたら是非私の2作目を撮って欲しいと」

エリカ「あの人たちも暇ね……」

優花里「いやー監督兼役者は初めてでしたが上手くできました!!サンダースは映像技術だけじゃなくて演技指導も素晴らしいものでしたっ!!」

エリカ「相変わらずあなたは変な方向での才能を開花させてるわね……」

優花里「いやぁ……」テレッ

エリカ「褒めてない……わよね?」

華「映画の中でアンツィオの学園艦が爆破されてましたが大丈夫なのですか?」

優花里「あはは、あれはもちろんCGですよっ!」

華「ならよかったです」

エリカ「アンツィオ高校を完全に悪役にしてたけど大丈夫なの?」

優花里「ちゃーんと許可はとってますよノリと勢いが強みなだけあって話の分かる方々でしたっ!」
    
     ―――で、潜入結果ですが、見てもらった通りアンツィオの秘密兵器はP40でした」

エリカ「それを口頭で伝えてくれれば私の120分の浪費は5秒になったでしょうね……」

396: 2018/02/22(木) 17:44:14.23 ID:kCwitfTj0
沙織「P40ってどんな戦車なの?」

エリカ「え?……うーん、普通の戦車ってとこかしら」

沙織「普通の戦車?」

エリカ「それなりの装甲にそこそこの火力。そして微妙なエンジン。総合評価で平均点ぴったりって感じ」

沙織「……強いの?」

エリカ「装甲はともかく火力については75㎜長砲身だからそれなりのものよ。エンジンもレストアしているでしょうからそこまで悪くはないでしょうし、

    豆戦車のCV33と突撃砲のセモベンテが主力のアンツィオにとっては唯一の『戦車』ってことね」

沙織「そうなんだぁ。……勝てるかな?」

エリカ「……正直、わからないわね。確かに相手の構成車両の大半は豆戦車だけど、数は揃ってる。

    対して私たちは6輌しかないわ。数と質の差はほぼ同等。そこにP40が加わったとなると……」

桃「おい、今から弱気じゃ困るぞっ!」

エリカ「……何にしても相手の事を調べるのが先ね。特にP40は私も実物を見たことがないから一度詳しいスペックを知っておきたいわ」

杏「なら歴女チームのとこにいってみなよ。詳しい資料持ってるかもよ?」

エリカ「歴女チームが?」

397: 2018/02/22(木) 17:48:02.29 ID:kCwitfTj0






エリカ「たぶんこのあたりのはずだけれど……」




カラ゙ンッ!  カラ゙ンッ!



エリカ「この音……」








398: 2018/02/22(木) 17:52:12.35 ID:kCwitfTj0





カエサル「ッ!!」グイッ


ガランッ!!


カエサル「っ……はぁ、はぁ……」

エリカ「精が出るわね」

カエサル「隊長?」

エリカ「ごめんなさいね、呼んだのだけど誰も出ないから」

カエサル「ああ、気にするな」

エリカ「そう?それにしても炎天下の中ずいぶん頑張るわね。この練習装置わざわざ作ったの?」

カエサル「ああ。……先のサンダース戦で我々は何の役にも立てなかったからな」

エリカ「そんなことないわよ。あなた達やウサギさん、カメさんチームが敵の主力を引き付けていたから勝てたのよ」

カエサル「何が起きたのかわからないまま終わり、勝利を喜べと言われても納得できないさ。一年生チームも同じ気持ちだろう」

エリカ「……」

カエサル「次のアンツィオ戦、今度こそ私たちは役に立って見せる。そのための練習ならば、苦にはならないよ」

エリカ「……」

399: 2018/02/22(木) 17:55:42.84 ID:kCwitfTj0









『エリカさん、そろそろ帰ろうよー』

『帰るならあなただけ帰りなさい。私はまだ練習したりないんだからっ!!』

『そうはいってももう暗いよー?昼間だって練習があったんだから』

『……私は、あなたと違って自分に甘くないのよ。どんなにきつい練習だって、勝利のためなら苦じゃないわっ』

『でも、あんまり遅くなるとお姉ちゃ、隊長が怒られちゃうんだよ?』

『うっ……』

『それに、努力と無茶は違うっていつも隊長言ってるでしょ?エリカさん、隊長の事尊敬してるのに隊長の言うこと聞けないの?』

『ぐぅっ……』

『だから、ほら。着替えてもう帰ろう?練習は明日だってできるよ』

『……わかったわよ』

『うんっ!あ、エリカさん、帰りにコンビニ寄ろう?新発売のスイーツみたいのっ!』

『嫌よ。あなたコンビニ行くと普通に30分くらい居座るんだもの』

『えーっ!?お願いっ!20分ぐらいにするからっ!!』

『あんまり変わってないじゃない……10分にしなさい』








400: 2018/02/22(木) 17:57:22.83 ID:kCwitfTj0
エリカ「……なら、次の試合期待させてもらうわ」

カエサル「ああ、見ていてくれ」

エリカ「……筋力を付けたいならバレー部に体験入部してみたらどう?きっと喜ぶわよ」

カエサル「い、いや、さすがにあそこまでは……ていうかあれは筋肉とかじゃなくて別のエネルギーだろ……」

エリカ「同感よ……バレーボールって何なのかしら?」

カエサル「……わからん」

エリカ「……深く考えるとバレー部の闇に触れそうだから止めておきましょう」

カエサル「ああ……会長から話は聞いてる。せっかくだ、ゆっくりしていくといい」

エリカ「そうさせてもらうわ」

406: 2018/02/24(土) 17:55:12.01 ID:7TVOT19K0




沙織「いよいよ2回戦だねっ」

エリカ「不安は残ってるけど、とれる対策はすべて取ったと思うわ。勝敗を決めるのは……」

優花里「戦術と腕。あと運ですか?」

エリカ「……今回は運が入る要素はほぼないわ。将棋のようにお互いが考える最善手を打ち続けて先に相手を上回れば勝ちよ」

優花里「なら、私たちは駒ですか?」

エリカ「その言い方はちょっとあれね……まぁ、命令をしっかり聞いてくれる優秀な兵士はありがたいけど」

沙織「私たちは兵士じゃないもん」

エリカ「言葉の綾よ。それに、戦車道は戦争じゃ―――」

407: 2018/02/24(土) 17:57:24.91 ID:7TVOT19K0






『だって戦車道は戦争じゃないんだからっ!!楽しまなきゃ損。でしょ?』






408: 2018/02/24(土) 17:58:11.41 ID:7TVOT19K0
エリカ「……」

沙織「……えりりん、やっぱりケイさん達ともう一度――――」


ブロロロロロッ


アンチョビ「たーのもーー!!」

カルパッチョ「たかちゃーん!!」

409: 2018/02/24(土) 18:03:36.42 ID:7TVOT19K0
カエサル「ひなちゃんっ!!

杏「おーチョビ子ー。何の用?」

アンチョビ「チョビ子じゃないっアンチョビだっ!!試合前の挨拶に来たっ!」

エリカ「挨拶?わざわざご苦労なことですね」ヒョコッ

アンチョビ「おー、お前があの『大洗の白雪姫』逸見エリカかっ!」

エリカ「……それ、誰が広めてるんですか?」

アンチョビ「ん?お前たちとの試合が決まった後に聖グロのダージリンがうちに来てな。お前のことをえらく買ってたぞ」

エリカ「あんの似非英国人……一度あいつらの学園艦に強襲をかけようかしら。紅茶を全部海に投げ捨てれば堪えるでしょ」

優花里「それ、なぜかサンダースと聖グロの戦争になりそうなんでやめてください……」

アンチョビ「そうだぞ。食べ物は大切にするんだっ!」

410: 2018/02/24(土) 18:11:05.66 ID:7TVOT19K0
エリカ「まぁいいわ。申し遅れました、大洗の隊長を務めている逸見エリカです。安斎さんの評判は私も耳にしていますよ」

アンチョビ「そんなかしこまらなくていいぞ」

エリカ「いえ、その……先日はうちの秋山が失礼したようで……」

アンチョビ「ん?あーあれかっ!!いやむしろお礼を言いたいくらいなんだよ」

優花里「どういうことですか?」

アンチョビ「あの映画がサンダースで上映された後うちの学園艦がいわゆる聖地になったらしくてな、サンダースの生徒が観光客として来てくれるようになったんだっ!」

エリカ「そ、そんなに人気なんですか?」

アンチョビ「ああっ!音響にこだわった爆音上映や4DXも始まってるらしい。おかげさまで観光地として名が上がって、うちの財政はかなり助かってるんだ」

エリカ「あなたいつのまにか学園艦一つ救ってたのね……」

優花里「そういえばアンツィオから感謝状が届いてましたね」

アンチョビ「今度は客として来てくれっ!全力でもてなすからなっ!」

優花里「はいっ!!」

411: 2018/02/24(土) 18:16:41.95 ID:7TVOT19K0
アンチョビ「それにお前もだ逸見っ!」

エリカ「私ですか?」

アンチョビ「サンダースとの試合、私も見たが凄かったなっ!」

エリカ「……ギリギリの勝負どころか運が味方しての辛勝。褒められるようなことは何も……」

アンチョビ「何言ってんだっ!戦車道を復活させたばかりで、車両もそろってないような高校が、強豪校相手に勝ったんだぞっ!?

      それも相手のフラッグ車だけを仕留めるだなんて、最小の労力で最大の成果!これを凄いと言わずになんというっ!?」

エリカ「そ、そうですか?」

アンチョビ「ああっ!!運がなんだっ、それを引っ張ってきたのはお前たちなのだから。お前も胸を張れ、そしてチームの子を褒めてやれ!!」

エリカ「……はいっ、ありがとうございます」

アンチョビ「今日は正々堂々と勝負だ。試合、楽しもうなっ!」

エリカ「はい、よろしくお願いします」

アンチョビ「覚悟しとけよ?アンツィオは弱くないっじゃなかった強いんだからなっ!!」

エリカ「ええ、こっちだって」

アンチョビ「それじゃあなっアリヴェデールチ!!」

カルパッチョ「たかちゃん、それじゃあまたねっ!」フリフリ

カエサル「うん、またねっ!!」フリフリ



ブロロロロロッ……



412: 2018/02/24(土) 18:19:44.93 ID:7TVOT19K0
エリカ「正々堂々楽しもう……か。ケイさんみたいなこと言うのね」

沙織「そうだね」

エリカ「同じように戦車を揃えるのに苦労してて、同じように努力して勝利を目指しているのに、

    安斎さんと私で、ああも違うものなのね……」

沙織「……えりりん」

エリカ「さ、もうすぐ試合開始よ。戦車に乗りましょう」

沙織「……うん」

413: 2018/02/24(土) 18:30:43.98 ID:7TVOT19K0





エリカ「みんな、準備はいい?」

梓『はいっ!』

エルヴィン『ああ』

杏『おっけーだよー』

ねこにゃー『準備完了、だよ』

典子『できてますっ!』

エリカ「よし。試合開始したらアヒルさんとウサギさんに十字路の偵察に行ってもらうわ。

    アンツィオの基本戦術は機動戦。動きやすい環境を作られないように注意しなさい」

『はいっ!』

エリカ「ほかのチームはいざ敵と対面しても落ち着いて動きなさい。相手主力のCV33は機動力こそあれど武装は機銃のみ。

    深追いしてセモベンテやP40の前に引きずり出されないようにね」

『了解』

414: 2018/02/24(土) 18:45:47.99 ID:7TVOT19K0
エリカ「……鈴木さん」

カエサル『なんだ?』

エリカ「………………あなた達には期待してるわ」

カエサル『……隊長はプレッシャーをかけるのが上手いな』

エリカ「ち、違っ、そんなつもりじゃ……」

カエサル『ははっ、わかってるさ。……期待に応えるのが将の仕事だ。見ていてくれ』

エルヴィン『この75㎜長砲身が飾りでないということを見せてやろう』

左衛門座『殿は任せろっ!』

お良『それ逃げてるぜよ……』

エリカ「ふふっ……ええ、頑張って。私たちも頑張るから」

カエサル『それとだ』

エリカ「何?」

415: 2018/02/24(土) 18:51:14.03 ID:7TVOT19K0
カエサル『私の事はカエサルと呼んでくれ。元々ソウルネームは伊達や酔狂でつけたものだが、今は私たちの覚悟の証なんだ。偉人の名を語る以上、我々は負けるつもりはないというな」

エリカ「……そう。そっか……名前に、覚悟を込める。なるほどね」

エルヴィン『お、隊長も意外といける口か?』

おりょう『ならこの試合が終わったら私たちからソウルネームをプレゼントしてやるぜよ』

左衛門座『何か希望はあるか?』

エリカ「遠慮しておくわ」

カエサル『そうだぞ。隊長にはすでに大洗の白雪姫というソウルネームがあるからな』

エリカ「勘弁してよ……私は逸見エリカって名前がいいのっ!」

エルヴィン『残念だな』

エリカ「ほら、そろそろ始まるから。――――頑張りましょう。カエサル、エルヴィン、おりょう、左衛門座。……これでいい?」

『ああっ!!白雪姫殿っ!!』

エリカ「だからやめてってばっ!?」

416: 2018/02/24(土) 18:52:36.11 ID:7TVOT19K0







『試合開始っ!!』







エリカ「パンツァー・フォー!!」




アンチョビ「アーヴァンティッ!!」



423: 2018/02/27(火) 18:05:01.52 ID:LIybNccU0





アンチョビ「……逸見エリカ。聞いていた話よりずいぶん元気だったな。いい事だ……本当に」

ペパロニ『マカロニ展開完了しましたっ!』

アンチョビ「よし、それじゃあ作戦開……ペパロニ、ちょっといいか?」

ペパロニ『何ですか姐さん』

アンチョビ「マカロニ、何枚設置した?」

ペパロニ『何言ってんすか、全部ですよっ!』

アンチョビ「……はぁ。二枚回収しろ」

ペパロニ『えー?せっかく設置したのに何でっすかー』

アンチョビ「あのなぁっ!全部設置すると11枚だろっ!?10輌しか参加できないのにそれじゃあすぐにバレるだろっ!!」

ペパロニ『なるほど~!さすが姐さん頭良いっ!!』

アンチョビ「何度も言ったのに何で覚えてないんだお前はー!?」

424: 2018/02/27(火) 18:10:32.47 ID:LIybNccU0





典子『こちらアヒルさんチーム、カルロヴェローチェ3輌、セモベンテ2輌発見。隊長の予想通りです』

梓『こちらウサギさんチーム、カルロヴェローチェ3輌、セモベンテ1輌が陣取ってます』

エリカ「もう十字路を押さえられてる。さすがね……」

優花里「目的は手薄な中央を突破させて包囲することですかね?」

エリカ「それでしょうね。でも……アンツィオにしてはずいぶん堅実な作戦ね」

優花里「ノリと勢いだけじゃないってことを見せたいんでしょうか」

エリカ「かもしれないわ。相手のほとんどが十字路の制圧に出向いているのならこちらも持久戦で行きましょう。アヒルさんチームをP40の捜索に当てるわ」

桃『そんなのんびりして大丈夫なのか?』

エリカ「待つのも戦いよ桃ちゃん」

桃『桃ちゃん言うな』

425: 2018/02/27(火) 18:16:25.95 ID:LIybNccU0





エリカ「……動かないわね」

沙織「だね……」

エリカ「アヒルさんチーム、そっちはどう?」

典子『もうすぐフラッグ車の予想地点に到達します』

エリカ「わかったわ。引き続き捜索をお願い」

典子『了解っ!』

エリカ「……相手が動き出すか、こちらがフラッグ車を見つけられるか。どっちが先かしら」

桃『逸見いつまでここでじっとしてるんだっ!?』

エリカ「……はぁ。桃ちゃんうるさいわよ。相手はこちらを待ち構えているの。わざわざ出て行ってあげる必要はないわ」

桃『だからと言ってあいつらに時間を与えるのは危険だっ!!あいつらは馬鹿かもしれんがアホじゃないっ!』

沙織「桃ちゃん先輩が言うと説得力あるんだかないんだか……」

エリカ「……でも、一理あるわ。正直、CV33を迎撃に回したところで大した意味はない。まともにやったところで八九式を倒すのが関の山よ」

優花里「言ってあげないでください……」

エリカ「そう考えるとむしろ違和感ね。……もしかして」

優花里「どうしました?」

エリカ「ウサギさんチーム、敵車両を撃ってもらえる?」

沙織「どうしたの?」

エリカ「念のため退路は確保しておいてね」

梓『了解ですっ!』

426: 2018/02/27(火) 18:22:40.14 ID:LIybNccU0


ダァンダァン!!   バスッバスッ!




梓『っ!?エリカ先輩っ!!十字路を陣取ってるのはただの看板ですっ!!本物は一輌もいませんっ!?』

エリカ「やっぱりっ……」

優花里「欺瞞作戦っ……」

エリカ「だとしたら、あの人の狙いは……」

ダララララッ


カンカンカンッ!

エリカ「っ!?」

沙織「何なにっ!?」

優花里「機銃ですっ!?」

麻子「囲まれたな」

ねこにゃー『逸見さんどうするっ!?』

桃『早く指示を出せ隊長ー!!?』

エリカ「落ち着きなさいっ!!機銃じゃ撃破判定は出ないわっ!!」

優花里「でもっ、このまま囲まれたらっ!?」

エリカ「ええっ!相手の狙いは包囲した上で追い立てて私たちを前進させること。ならここは左右に分かれるわっ!

    カメさん、カバさんチームはあんこうについてきてっ!アリクイさんチームはウサギさんチームと合流してっ!!」

『了解っ!』

典子『隊長っ!私たちはっ!?』

エリカ『あなたたち一刻も早くフラッグ車を見つけてっ!』

典子『わかりましたっ!』

エリカ「そうと決まればさっさと動きなさいっ!!」

427: 2018/02/27(火) 18:24:48.34 ID:LIybNccU0





アンチョビ「さーてどう動くか大洗……」

ペパロニ『姐さんっ!!』

アンチョビ「動いたかっ!?」

ペパロニ『はいっ!あいつら姐さんの言った通り二手に分かれましたっ!!』

アンチョビ「よしっ!大洗、悪いがこの試合勝たせてもらうぞっ!!」

429: 2018/02/27(火) 18:32:44.13 ID:LIybNccU0





ダラララララッ!!

カンカンカンカン

優花里「こちらにはCV33が3輌追ってきてますっ!」

エリカ「振り切るのは難しそうねっ……」

華「……っ!!」

ダァンッ!

華「また外しました……」

エリカ「行進間射撃なんてそうそう当たらないわよ、ましてや的が小さいんだから。華はそのまま威嚇を続けてっ!!」

華「……はい」

エリカ「カバさん、カメさんしっかりついてきなさいっ!」

エルヴィン『ああっ』

桃『しかし、逃げたままじゃどうしようもないぞっ!?』

エリカ「ええっ!だから今アヒルさんチームにフラッグ車を探してもらってるのっ!!」

沙織「えりりんっ!?」

エリカ「あれはっ!?」

優花里「前方、セモベンテ2輌ですっ!待ち伏せされましたっ!?」

エリカ「最初からこっちが本命だったのねっ……」

優花里「エリカ殿っ!フラッグ車狙われてますっ!」

エリカ「っ……全車森に入ってっ!突撃砲に真正面から突っ込むのはまずいわっ!!」

430: 2018/02/27(火) 18:37:26.88 ID:LIybNccU0





梓「こちらウサギさんチームっ!アリクイさんチームと合流っ!東方面へ逃げてますっ!!」

ねこにゃー『澤さんっ!今のところ相手は豆戦車2輌、ここは迎撃して逸見さんたちのところへ行ったほうがいいんじゃ……』

梓「……確かに、ならっ……」

優季「梓っ!?前前っ!!」

梓「え……っ!?セモベンテっ!?左に入ってっ!!」

桂利奈「あいっ!!」

431: 2018/02/27(火) 18:41:08.29 ID:LIybNccU0

ねこにゃー「え?澤さんたちどこに……」

ももがー「ねこにゃー、前方にセモベンテ2輌だももっ!!」

ねこにゃー「えっ!?避けて避けてっ!!」

ももがー「もう遅いもも……」


ギュイイイン ドーンッ!

     
ねこにゃー「っ……って、あれ?」

ぴよたん「何ともない?」

ももがー「……張りぼてっ!?」

432: 2018/02/27(火) 18:47:07.20 ID:LIybNccU0





アンチョビ「東に逃げた奴らも、マカロニで多少は足止めできるといいんだが……」

『ドゥーチェ!!M3とTipo 3を追ってましたが、M3はマカロニにビビッて森の中へ逃げましたっ!Tipo 3はマカロニを突き破ってそのまま直進っ!!』

アンチョビ「そうか、ならお前たちはそのままTipo 3を追え。こちらのフラッグ車の位置はまだ割れてない。Tipo 3の砲は脅威だ。少しでも時間を稼げっ!!」

『Si!』
 
アンチョビ「……ペパロニっ!そっちの状況はどうだっ!!」

ペパロニ『作戦通り相手を森に追い込みましたっ!!』

アンチョビ「よくやったっ!お前たちはセモベンテと合流して追いかけ続けろっ!挟み撃ちにするぞっ!!」

ペパロニ『任せてくださいっ!!』

433: 2018/02/27(火) 18:51:37.78 ID:LIybNccU0





沙織「えりりんっ!森に逃げたはいいけど、このあとどうするのっ!?」

エリカ「……おそらく、相手のフラッグ車はこの先で待ち受けているわ」

沙織「えっと、この先で待ち伏せするとしたら……高台があるっ!?」

エリカ「後ろからはセモベンテとCV33。まずいわね……」

優花里「二手に別れたのがまずかったのでしょうかっ!?」

エリカ「いえ、仮に別れなかったとしても、機動性の高いCV33で分断された可能性は高いわ」

優花里「な、なら今すぐウサギさんチームたちを呼び戻してっ……」

エリカ「すでにやってるわ。合流できるのは私達が相手のキルゾーンに到達した後になりそうね」

華「そんな……」

エリカ「桃ちゃんの言うとおりアンツィオに時間を与えるべきじゃ無かったわね。お詫びに後でいなり寿司買ってあげようかしら?」

優花里「のんきなこと言ってないでくださいーっ!?」

434: 2018/02/27(火) 18:56:32.03 ID:LIybNccU0
沙織「……えりりん」

エリカ「何よ?」

沙織「楽しい?」

エリカ「は?何言って……」

沙織「だってえりりん、さっきからずっと笑ってるよ?」

エリカ「……え?」

沙織「えりりん、ケイさんに自分の戦車道は勝つことだって言ってたけど、ほんとはえりりん自身がそう思ってないんじゃないの?」

エリカ「……」

沙織「……ごめんね、試合中に。聞かなかったことに―――」

エリカ「サンダースの時は必氏だった。数でも質でも負けてて、その上隊長としての器まで相手のほうが大きくて。

    せめて勝つことで自分のほうが上だって思いたかったのかも」

沙織「えりりん?」

435: 2018/02/27(火) 19:02:33.66 ID:LIybNccU0
エリカ「アンツィオは私たちとよく似てるわ。資金難で碌に戦車も揃えられなくて、だけど安斎さんが全力で強くあろうとしている」

優花里「あれはまさしく『総統』<ドゥーチェ>の姿なんでしょうね」

エリカ「ええ。思えば私たちは聖グロ、サンダースって格上としか戦ったことがなかったわ……初めてなのよ。同格の相手と戦うのは」

沙織「……」

エリカ「沙織、私今楽しいわ。追い詰められてるのに、楽しくてしょうがない。相手が持てる全てを駆使しているって伝わってくる。この、ヒリヒリするような感覚。

    ……だからこそ、勝ちたいっ!!私たちの全力で、持てるすべてを使ってっ!!アンツィオに勝ちたいっ!!」

沙織「……うんっ!」

優花里「はいっ!」

華「私たちだって、負けるより勝ちたいですし」

麻子「そうだな」

エリカ「……安斎さん、あなたの言う通りよ。アンツィオは弱くない―――いえ、強いわっ!!」

436: 2018/02/27(火) 19:03:11.24 ID:LIybNccU0









エリカ「でも、私達だって強いんだからっ!!勝負はここからよっ!!」








442: 2018/03/03(土) 18:03:26.91 ID:Gk158+YA0




アンチョビ「あと少しでこっちに来るぞ。みんな、狙うのは先頭のフラッグ車だけだ!砲撃を集中しろっ!!」

カルパッチョ『はいっ!』





エリカ「もうすぐ相手のキルゾーンよっ!!」

沙織「このままじゃ狙い撃ちだよ!?」

エリカ「良いから、速度を落とさないでっ!!」







アンチョビ「よし……今だ撃――――」


443: 2018/03/03(土) 18:09:25.99 ID:Gk158+YA0
ダァンッ!!  ガァンッ!


アンチョビ「うああっ!?」

ダァンッ!

ガンッ  シュポッ!


アンチョビ「CV33がっ!?誰が――――あれはっ!?」

カルパッチョ『Tipo 89っ!?』






典子「隊長。命令通り相手フラッグ車を見つけましたよ」







444: 2018/03/03(土) 18:15:24.84 ID:Gk158+YA0
エリカ「信じてたわ典子っ!!このまま前進っ!!キルゾーンを抜けるわよっ!!」

『了解っ!』

華「せめて、追手のCV33だけでも……っ!!」

ダァンッ

ガンッ!!  

シュポッ!

華「当たった……」

沙織「これで振り出しに戻れたっ!?」

エリカ「いえっ!!依然こちらが追われてることにかわりはないわっ!!でも、勝ちの目が見えたっ!!」

445: 2018/03/03(土) 18:17:22.69 ID:Gk158+YA0




アンチョビ「逃げられたっ……89式はっ!?」

カルパッチョ『そちらも逃げられました……』

アンチョビ「してやられたっ……ええいっ!!回り込むぞっ!!!」

446: 2018/03/03(土) 18:19:39.28 ID:Gk158+YA0




エリカ「沙織っ!追手はっ!?」

沙織「先頭にCV33が2輌っ!遅れてセモベンテが2輌だよっ!!」

エリカ「よし、各車射線を取られないようにっ!!」

杏『あいよー』

エルヴィン『走り回るのもいい加減飽きてきたな』

エリカ「安心しなさい。そろそろ追いかけっこは終わりにしましょう。梓、準備は良いっ!?」

梓『はいっ!』





ペパロニ「くっそーあいつら中々射線取らせないな……」


ギュィィンンッ!!

ペパロニ「M3っ!?森に隠れてたのか!?」

ダァンッ!  


シュポッ!!



ペパロニ「セモベンテがっ!?」

『姐さんすみませんやられましたっ!!』

ダァンッ!  ダァンッ!

ガァンッ!

シュポッ!

ペパロニ「前からもっ!?まずい、今度はこっちが挟み撃ちだっ!?残った車両は私についてこいっ!一旦逃げるぞっ!!」

447: 2018/03/03(土) 18:26:13.01 ID:Gk158+YA0




エリカ「……よし」

優花里「なんとかしのげましたね」

沙織「今度こそ振り出しだね」

エリカ「梓、助かったわ。特に相手のセモベンテを落とせたのは大きいわよ」

梓『はいっ!先輩たちこそ無事で何よりですっ!!』

エリカ「おかげさまでね。――――アリクイさんチーム!今どこにいるっ!?」

ねこにゃー『CV33が逃げたから今そっちに向かってるとこだよ』

エリカ「なら、これから言う地点にそのまま向かって」

ねこにゃー『わかった』

エリカ「相手はおそらく戦力を集結させてフラッグ車を強襲してくるわ。

    依然、機動戦は相手に分がある。ならやることは一つ。相手の戦力が整う前にこちらから攻める」

沙織「でも、フラッグ車の場所がわからないよ?」

エリカ「……典子」

典子『はい』

エリカ「相手のフラッグ車の場所、わかる?」

典子『ええ。すでに捉えています』

エリカ「さすがね」

沙織「アヒルさんチーム凄っ!?」

エリカ「これがあの子たちの戦い方よ。――――さぁみんなっ!!今度はこちらから仕掛けるわよっ!!」

『了解っ!!』

448: 2018/03/03(土) 18:30:57.07 ID:Gk158+YA0




ペパロニ『姐さんすみませんっ!!挟み撃ちを食らってCV33とセモベンテ1輌撃破されましたっ!』

アンチョビ「いや、最初の挟撃を失敗した時点で一度退くべきだった。深追いさせた私が悪い」

ペパロニ『姐さんどうしますかっ!?』

アンチョビ「このままじゃジリ貧だ。戦力を集結させて立て直しを図るぞっ!!全員戻ってこいっ!!」

『Si!』

アンチョビ「私たちも移動するぞ。カルパッチョ付いてこい」

カルパッチョ『はいっ!』




典子「フラッグ車が移動する。このまま追跡するぞっ」

忍「はい」




アンチョビ「…………撃てっ!!」


ダァンッ!

典子「なっ!?」

ガンッ


シュポッ!!


アンチョビ「やっと顔をだしたな。追跡に気がせったか」

カルパッチョ『これでこちらの居場所はもう伝えられませんね』

アンチョビ「いや、現在位置からの予測は立てられるだろう。一刻も早く移動するぞっ!!」

449: 2018/03/03(土) 18:35:37.58 ID:Gk158+YA0





典子『隊長っすみませんやられましたっ!!』

エリカ「そう。大丈夫よ、敵の現在位置から予測は立てられる。あなた達は良くやってくれたわ」

典子『……っはい!』

エリカ「私たちはこのまま移動するわよっ!!」

450: 2018/03/03(土) 18:38:14.95 ID:Gk158+YA0





ペパロニ『アンチョビ姐さんっ!!』

アンチョビ「ペパロニよく来たっ!!このまま残りのCVと合流して―――――っ!?」


ダァンッ!!




エリカ「見つけたわよ安斎さんっ!!」

優花里「まだ残りのCVとは合流していないみたいですっ!!」

エリカ「なら、その前にっ!!」




アンチョビ「っ……仕方ない、賭けに出るぞっ!セモベンテはⅢ突とM3の足止めを頼むっ!!」

カルパッチョ『はいっ!』

451: 2018/03/03(土) 18:41:42.08 ID:Gk158+YA0
優花里「セモベンテ2輌、こっちに向かってきますっ!!」

エリカ「ウサギさんっ!!カバさんっ!!頼んだわっ!!」

カエサル『任されたっ!!』

梓『はいっ!!』




カルパッチョ「あのマーク……たかちゃんッ!!」

カエサル「悪いが先を急がせてもらうぞひなちゃんッ!!」




エリカ「カメさんチームはこのままついてきてっ!一気に仕留めるわよっ!」

杏『あいよー』

桃『絶対に逃がさんぞっ!!』

エリカ「ええっその通りよ桃ちゃんっ!!」

452: 2018/03/03(土) 18:44:14.98 ID:Gk158+YA0








エリカ「この先は……なるほどね。いいわ、そのケンカ買ったわよっ!!」








458: 2018/03/06(火) 18:03:33.50 ID:XlGgpb2d0






アンチョビ「開けた場所に出た……ここで決めるぞっ!!」



エリカ「決着を着けるわよっ!!」





ダァン ダァン

桃「ええいっ!何故あたらんっ!?」

柚子「こっちが聞きたいよー……」

杏「ごめーん逸見ちゃん、まだ河嶋にこの距離は難しいみたい」

エリカ『いいわ、そのまま撃ち続けて相手の注意をそらしてっ!!』

杏「はいよーって、ん?」

459: 2018/03/06(火) 18:08:40.34 ID:XlGgpb2d0
『姐さんっ!!』

アンチョビ「お前らっ!!」




優花里「敵CV2輌合流っ!!」

エリカ「っ……」

杏『逸見ちゃんあいつら何か仕掛けてくるっぽいよ』

460: 2018/03/06(火) 18:13:26.87 ID:XlGgpb2d0
アンチョビ「CVが揃ったなら……ペパロニっ!!」

ペパロニ『Si!!お前ら、やるぞっ!!」


ギュィィンンッ!

ガン ガン ガン


エリカ「なっ!?」

優花里「CVで3方を塞がれたっ!?」

沙織「動けないっ!?」







アンチョビ「足止めは一瞬で充分だ―――撃てっ!!」








461: 2018/03/06(火) 18:19:04.30 ID:XlGgpb2d0
ギュィィンンッ!




桃「逸見いいいいいいいいっ!!」




ダァンッ!


シュポッ!!


優花里「カメさんチームが盾に……」

エリカ「麻子っ!!」

麻子「ああっ」

462: 2018/03/06(火) 18:22:51.39 ID:XlGgpb2d0
ペパロニ「っ……下がられたっ!!お前ら、もう一度行く―――」

ダァンッ!!

シュポッ!

ペパロニ「なにっ!?」




ねこにゃー「アリクイさん、参上……」


ダァンッ!!  ダァンッ!!

シュポッ!   シュポッ!

ペパロニ「うわぁっ!?」

アンチョビ「Tipo 3、Ⅲ突にM3っ……」

463: 2018/03/06(火) 18:28:31.29 ID:XlGgpb2d0
カエサル『今度は蚊帳の外にならずにすんだな』

梓『エリカ先輩っ!!護衛は全て排除しましたっ!!』
 
エリカ「ええっ!!―――――華っ!!」

華「はいっ!!」




アンチョビ「っ……撃てっ!!」

エリカ「撃てっ!!」



ダァン! ダァンッ!



シュポッ!




464: 2018/03/06(火) 18:29:36.55 ID:XlGgpb2d0





『アンツィオ高校フラッグ車走行不能っ!よって、大洗女子学園の勝利っ!!』





474: 2018/03/10(土) 18:10:23.03 ID:mjo7sVJM0





エリカ「……ふぅ」

沙織「勝ったーっ!!」

優花里「これでベスト4ですよっ!!」

エリカ「ええ、なんとかなったわね」

杏「逸見ちゃんやったねー」

エリカ「会長。最後は助かったわよ」

杏「お礼なら河嶋に言ってよ」

エリカ「桃ちゃんに?」

柚子「桃ちゃんが『逸見を守るぞっ!!』って」

エリカ「そうだったの……」

桃「フラッグ車がやられたら私たちの負けなんだから当然の事をしたまでだっ!!」

エリカ「……桃ちゃん」

桃「な、なんだ?」

エリカ「ありがとう。あなた、意外と頼りになるのね?」

桃「っ……あ、当たり前だっ!!私は誉ある生徒会の広報なんだぞっ!!あと桃ちゃん言うなっ!!」

エリカ「……ふふっ」

475: 2018/03/10(土) 18:15:51.53 ID:mjo7sVJM0
アンチョビ「おーい!」

エリカ「安斎さん?」

アンチョビ「いやー負けたよ」

エリカ「いえ、こちらもギリギリでした。特に最初の欺瞞作戦はさすがです。そこからの読みも完璧でした」

アンチョビ「それで勝ったお前たちはもっと凄いさ。……試合前に言ったこと覚えてるか?」

エリカ「え?」

アンチョビ「試合、楽しもうって。逸見、楽しかったぞ」

エリカ「……はい。あなたたちの全力を私たちの全力で迎え撃ちました。本当に……楽しい試合でした」

アンチョビ「……そうか。なら良かった」ギュッ

エリカ「あ、安斎さん?」

476: 2018/03/10(土) 18:20:35.16 ID:mjo7sVJM0
アンチョビ「決勝まで行けよ?応援するからな」

エリカ「……はい」

アンチョビ「ん。それじゃあ―――お前たちっ!!」

『はーいっ!!』

沙織「なになに?」

優花里「何が始まるんですか?」

アンチョビ「大洗諸君には我々の戦車道を最後まで知ってもらわないとな」

エリカ「……?試合はもう終わって……」

アンチョビ「チッチッチ、試合だけが戦車道じゃない。勝負を終えたら試合に関わった選手スタッフを労う。―――これが、アンツィオの流儀だっ!!」

477: 2018/03/10(土) 18:26:07.70 ID:mjo7sVJM0





アンチョビ「せーのっ!!」




『いただきまーすっ!!!』





ザワザワ ガヤガヤ



沙織「うわぁ、美味しいっ!!」

華「おかわりいいですか?」

ペパロニ「どんどん食べろっ!!」

麻子「……うまい」モグモグ

優花里「フィールドキッチンをここまで活用する学校はそうそうないですよっ!!」

478: 2018/03/10(土) 18:32:43.36 ID:mjo7sVJM0
ねこにゃー「良質なたんぱく質……」

ももがー「美味しいももっ!!」

ぴよたん「でも、ちょっとカ口リーが……」

典子「大丈夫っ!!」

ぴよたん「キャプテン?」

典子「どんなに食べても、バレーをすれば全消費。つまり、カ口リー0だっ!!」

ぴよたん「キャプテンっ!!」

典子「食べろっ!!それがお前たちの明日の肉体を作るんだっ!!」

『はいっ!!』



忍「……いや、カ口リー0にはならないでしょ」

妙子「もっとバランスよく食べないと……」

あけび「まぁ、今日ぐらいは……」

479: 2018/03/10(土) 18:36:47.93 ID:mjo7sVJM0
ワイワイガヤガヤ


カルパッチョ「今日は負けたわ。たかちゃん達、凄く強かった」

カエサル「ううん、こっちもギリギリだったよ」

カルパッチョ「でも、たかちゃんも装填手だったなんて、なんだか運命ね?」

カエサル「な、何がさ」

カルパッチョ「んー?……ふふっ」

カエサル「ひなちゃん?」

カルパッチョ「……いいえ、私はカルパッチョ。偉大なるドゥーチェアンチョビの副官。……強い人、あなたの名は?」

カエサル「……私はっ!栄光ある大洗女子学園の将が一人、カエサルっ!!」

カルパッチョ「……来年は負けないわ」

カエサル「こっちだって」

カルパッチョ「ふふふっ」

カエサル「あはははっ」

480: 2018/03/10(土) 18:43:16.46 ID:mjo7sVJM0

カルパッチョ!

カエサルサマッ!




左衛門座「……二人の世界」

おりょう「あれは、割り込めないぜよ……」

エルヴィン「いや、二人とも連れてけばいいだろ。ごはん冷めるからさっさと行くぞ」

481: 2018/03/10(土) 18:49:15.40 ID:mjo7sVJM0

エリカ「……」モグモグ

アンチョビ「どうだ、我が校の戦車道は」

エリカ「……とても素敵です。こんな戦車道、私には思いつきもしなかった」

アンチョビ「我が校は食事のためならどんな労もいとわないからなっ!!……このやる気をもうちょっと試合に活かせるといいんだけど」

エリカ「いえ、きっとこれが、これこそが。あなたたちの強さの秘訣なのかもしれません」

アンチョビ「そう言ってくれるとありがたいよ」

エリカ「……安斎さん」

アンチョビ「なんだ?」

エリカ「戦車道にとって、勝利って何なのでしょうか」

アンチョビ「みんなで騒ぐための口実の一つだ」

エリカ「……は?」

アンチョビ「……冗談だ。まぁ、嘘でもないけどな。……そんな顔して聞くことだ、何かあったんだろ?」

エリカ「……私、サンダースの隊長に言ったんです。私の戦車道は、勝つことだって」

アンチョビ「……」

482: 2018/03/10(土) 18:53:49.02 ID:mjo7sVJM0
エリカ「勝たなきゃ自分の、みんなの努力が無駄になるから。勝利こそが全てだって……思ってたはずでした」

アンチョビ「今は違うのか?」

エリカ「……あなた達との試合、本当に楽しかった。試合中、勝ち負けとかじゃなくて、ただただ全力でぶつかることが。

    ―――――だからこそ、私の戦車道は間違ってるんじゃないかって。沙織……チームの子にも同じことを言われて」

アンチョビ「……負けた私たちが言うのも何だけど、勝つことが全てだってのも間違いじゃないと思うぞ?」

エリカ「え?」

アンチョビ「お前が言ったじゃないか、みんなの努力を無駄にしたくないって。考えた作戦は、積み重ねてきた努力は、勝利のためにあるものだ」

エリカ「……はい」

アンチョビ「私たちだって勝つために練習して、無い予算を絞って新しい戦車を買ったりしてるんだ。

      試合後に宴会をするのだって、負けを引きずらずさっぱりした気持ちで次の試合に臨むため。

      なら、これもまた勝利のための行動だ」

エリカ「……」

483: 2018/03/10(土) 19:04:27.38 ID:mjo7sVJM0
アンチョビ「まぁ、だからって負けたらそれらが全部無駄になるかっていうとそんなことは無いと思うが……んー、あー……

      逸見。なんていうか、お前はもうちょっと適当でいいと思う」

エリカ「適当?」

アンチョビ「お前の戦車道はお前の自由にしていいんだ。悩んでもいいが、凝り固まるな」

エリカ「……だけど」

アンチョビ「戦車道を楽しむ事と勝利を目指すことは矛盾しない。それは、今日の試合でお前たちが証明したことだ」

エリカ「……」

アンチョビ「いいじゃないか、戦車道なんて人それぞれなんだから。『楽しければいい』でも『勝利が全て』でも、あるいは『楽しんで勝つっ!』って戦車道だって良いさ」

エリカ「……私はそんな器用になれるでしょうか」

アンチョビ「器用になろうなんてするな。不器用でも、取りこぼしても、やりたいことをやれ。……ゆっくり見極めればいい、お前の戦車道を」

エリカ「……はいっ!」

484: 2018/03/10(土) 19:05:40.46 ID:mjo7sVJM0
アンチョビ「元気出たな?ならっ、よーしっ!!お前たち今日はこのまま夜通しの宴会だっ!!」

エリカ「えっ?」

アンチョビ「安心しろ!食事はまだまだあるっ!!飲んで食べて騒ごうじゃないかっ!!」

エリカ「え、あの」

アンチョビ「よーしどんどん食べろっ!!」

エリカ「い、いや、私食事はもう……」

アンチョビ「ダメだぞ逸見ーお前はちょっと細すぎる。もっと食べて健康的になれっ!!」

エリカ「いや、一応健康管理には気を使ってて……」

アンチョビ「そんなん今気にすることじゃないっ!!明日のお前が何とかしてくれるさっ!!」

エリカ「それは後先考えてないだけじゃ……」

アンチョビ「ほらパスタにピザに肉に魚っ!!野菜も食べろっ!!」

エリカ「あ、あのっ!?ん~~~~っ!?」モゴモゴ

493: 2018/03/13(火) 17:02:09.11 ID:46PVShV/0







エリカ「……」

沙織「えりりんっ!」

エリカ「沙織?」

沙織「こんなところで何してるの?」

エリカ「別に。……月がきれいだなって」

沙織「……ホントだ。高地だからいつもより大きく見えるね」

エリカ「……ええ。照らすものすべてが煌めいて見える銀色の光」

沙織「えりりん?」

494: 2018/03/13(火) 17:07:13.80 ID:46PVShV/0







『私、昔は月って好きじゃなかったわ。太陽の、誰かの力を借りないと輝くこともできない弱い存在に思えて』

『今は違うの?』

『……私たちは太陽があるから生きていられる。熱を、光をもらって。だけど、それは時に命を奪うこともあるわ。

 誰も太陽に近づけないし、直接見ることはできない』

『そうだね』

『でもね、月は違う。太陽の見えない夜でも、太陽の光を私たちに届けてくれる。その光は、私たちに熱をくれないけれど、この世のどんな宝石よりも美しい光だと思うわ』

『……』

『それに気づいたから、私は月が好きになった。誰かの力を借りたものだとしても、自分だけの輝きを持ってる。とても、素敵だと思わない?』

『……うん』

『※※。あなたは誰かに阿って自分を変えられるほど器用じゃないわ』

『え?』






495: 2018/03/13(火) 17:11:36.72 ID:46PVShV/0







『あなた、自分が思っている以上に頑固で不器用なんだから。自信をもってあなたのやりたいようにやりなさい。副隊長さん?』

『……だけど、みんながそれを許してくれるかな』

『なら、やりたいことがあったら私に言いなさい。あなた、説明するのあんまり得意じゃないんだからそういうのは私がやるわよ』

『エリカさんに迷惑だよ……』

『言ったでしょ?私は月が好きって。私ひとりじゃダメでも、誰かと一緒なら私も輝けるのよ』

『なら、エリカさんの太陽って……』

『……内緒よ』

『そんなぁ!?はっきり言ってください!!』

『ダメよ。聞きたかったらあなたが隊長になってみなさい』

『お姉ちゃんがいるからまだまだ先だよ……』

『……どうかしら。案外早くその時はくるかもよ?』






496: 2018/03/13(火) 17:15:49.83 ID:46PVShV/0
エリカ「……」

沙織「……えりりんって意外とかわいい系の顔してるんだね?」

エリカ「いきなり何?」

沙織「えりりんいつも難しい顔してるからさ、そういう風にしてれば私たちが声かけなくてもきっと誰かが友達になってくれたと思うよ」

エリカ「……あなた達みたいなお節介じゃないと無理でしょうね」

沙織「そう?」

エリカ「……ほら、そろそろ戻るわよ。風邪ひくわ」

沙織「そうだっ、だから呼びに来たんだった」

エリカ「安斎さんたち毛布とか貸してくれるかしら?」

沙織「ゆかりんが寝袋人数分持ってきてたから大丈夫だよ」

エリカ「……いや、あの子なんでそんなの持ってきてるのよ」

497: 2018/03/13(火) 17:18:32.95 ID:46PVShV/0





チュンチュン

沙織「えりりん、みんなの撤収終わったよ。あとは私とえりりんだけ」

エリカ「そう、わかったわ。アンツィオの皆さん、いろいろお世話になりました」

アンチョビ「気にするな。私たちも楽しかった!大会が終わったらまた交流試合でもしようじゃないか」

エリカ「ええ、是非とも」

ペパロニ「次は負けないからなっ!」

エリカ「ふふっ、こっちもよ」

アンチョビ「……逸見」

エリカ「はい」

アンチョビ「次の試合頑張れよ」

エリカ「……言われなくても」

アンチョビ「……そうか。なら安心だっ!」

498: 2018/03/13(火) 17:20:17.73 ID:46PVShV/0
エリカ「……それじゃあそろそろ」

アンチョビ「ああ」

ペパロニ「……」ジーッ

エリカ「……?まだ何かあるの」

ペパロニ「……なー大洗の隊長さん。西住みほの事、あんまり悔やむなよ?」

沙織「え?」

ペパロニ「私も詳しい事情は知らないけどさ、事故だったんだろ?なら――――」

アンチョビ「馬鹿っ!?」

ペパロニ「もがっ!?ふぇ、ふぇーふぁん?」

アンチョビ「黙ってろっ!すまない逸見、こいつは本当に何も知らないんだ……」

エリカ「……沙織、帰るわよ」

沙織「え……えりりん?」

499: 2018/03/13(火) 17:21:21.87 ID:46PVShV/0
アンチョビ「っ……逸見!!」

エリカ「……」

アンチョビ「うちの学校の近くに来ることがあったら寄ってくれ!!予算は無いが美味しい食事ならいくらでもあるんだ!!」

エリカ「……ええ、近くに寄ったら」

アンチョビ「あ、ああっ!!まってるからなっ!!絶対にだぞ!!」

エリカ「……さ、戻りましょう」スタスタ

沙織「……」

500: 2018/03/13(火) 17:21:50.74 ID:46PVShV/0








沙織「西住、みほ……」







507: 2018/03/15(木) 17:46:49.88 ID:D5UGscx/0




エリカ「……」ピッ







―AKIYAMA FILM―






508: 2018/03/15(木) 17:48:33.81 ID:D5UGscx/0
~♪





伝統と格式が彩る学びの園 聖グ口リアーナ女学院

学業はもちろんのことスポーツ、芸術、ボランティアなど課外活動にも力を入れており世界に羽ばたく淑女の育成に力を入れています

一歩踏み入れればあなたも淑女の仲間入り





『私もこの学校に入ったおかげですっげぇ礼儀正しく優雅になりましたわよっ!』(1年 Rさん)






509: 2018/03/15(木) 17:51:20.21 ID:D5UGscx/0



そんな聖グ口リアーナがもっとも力を入れているのが戦車道です

高い実力を誇る戦車道チーム

どんな時でも優雅に美しく戦うその姿は学園中の憧れです

今回は戦車道チームの隊長、3年ダージリンさん(通称)にお話を伺いました



510: 2018/03/15(木) 17:53:57.30 ID:D5UGscx/0
― 戦車道は荒々しいイメージもありますが、優雅にというのはどういうことでしょうか?




ダージリン『戦う事と優雅である事は決して矛盾しません。大事なのは美しくあろうとする気概。心の持ちようですわ』





511: 2018/03/15(木) 17:57:10.73 ID:D5UGscx/0



― 聖グロの戦車道チームでは戦車の中でも紅茶を嗜むそうですが、何故そのような風習を?





ダージリン『単純に好き。というのもありますが、何よりも戦いの最中であっても冷静に、優雅にという気持ちを持ち続けるためです』






512: 2018/03/15(木) 18:03:16.73 ID:D5UGscx/0


― 同じ3年生であるアッサムさん(通称)にも話を聞いてみましょう




アッサム『え?私は……正直やめてほしいなって思ってます。たまにこぼして火傷しそうになるので』

ダージリン『あら?昔ならいざ知らず、最近はそんな事ないわよ』

アッサム『あのですね……大洗との練習試合の時に盛大にこぼしたの忘れたんですか?あなたがどっか行ってたせいで私が掃除したのですけど』

オレンジペコ『ローズヒップさんも盛大にこぼしていますね。整備の生徒から結構苦情が来てますよ』

ダージリン『……ここ、カットでお願いするわ』


513: 2018/03/15(木) 18:05:22.03 ID:D5UGscx/0



1年生にして未来の隊長候補と目されるオレンジペコさん(通称)にも話を聞いてみました
 


― 1年生にして隊長の副官ポジションにまでなっているオレンジペコさんですが、やはり聖グロはキャリアに関係なく能力のあるものを取り立てるという事でしょうか?



オレンジペコ『はい、伝統と格式を重んじる我が校ですが、決してそれに凝り固まってるという訳ではありませんから』

ダージリン『これで、OG会をもうちょっと静かにできたらいいんだけどね』

アッサム『ダージリン、声入ってますよ』



514: 2018/03/15(木) 18:08:33.06 ID:D5UGscx/0



― 最後に、聖グ口リアーナ女学院について一言ずつお願いします




オレンジペコ『努力と才能を認めてもらえる。これ以上は無いです』

アッサム『データじゃ学べない経験を教えてくれます』

ダージリン『こんな格言を知ってる?『成功するために大切なのは、どこから始めるのかではなく、どれだけ高く目標を定めるかである。』』

オレンジペコ『ネルソン・マンデラですね』

ダージリン『我が校は優秀な淑女を求めるのではないわ。高い理想に、高い目標に、真摯になれる人を求めているのよ。――――貴女たちと共に学べる日を待っているわ』



― ありがとうございました。



515: 2018/03/15(木) 18:10:02.59 ID:D5UGscx/0



オレンジペコ『よくよく考えたら、ダージリン様は3年生だから来年入学の子と一緒に学ぶには留年する必要がありますね』

ダージリン『……あ』












~優雅で高貴な淑女の学園~ 聖グ口リアーナ女学院








(制作:秋山フィルム    ナレーション:秋山優花里)





516: 2018/03/15(木) 18:11:41.28 ID:D5UGscx/0



エリカ「……」ピッ!



エリカ「……ねぇ、優花里あなた何しに行ったんだっけ?」

優花里「はっ!プラウダ高校の偵察でありますっ!!」

エリカ「それで、何で聖グロのPV撮ってきてるの?」

優花里「……プラウダは今までの高校と違って警備が厳重でして……途方に暮れてるところを聖グロの皆さんに声をかけられてPVを撮ってきました」

エリカ「……うん。わからないわ」

沙織「はぁ……いいなぁ、聖グロ……」

華「花の香に満ちてそうな素敵な学園ですね……」

麻子「ゆったりできそうだな」

桃「お前ら何言ってるんだっ!我が校だって良いとこ一杯あるだろっ!?」

柚子「お金は無いけどね……」

杏「まーまーよそはよそ、うちはうちって事でさ」

517: 2018/03/15(木) 18:14:39.31 ID:D5UGscx/0
エリカ「まったく……」

パゾ美「古き良き映画の1シーンのような雰囲気、憧れますね」

エリカ「……誰?」

パゾ美「パゾ美です」

エリカ「……何しに?」

杏「パゾ美じゃーん」

パゾ美「会長、園、後藤、金春いつでも大丈夫です」

杏「おっけー、それじゃあ後で迎えに行くね」

パゾ美「……失礼します」バタンッ

エリカ「やっぱり誰なのよ……」

優花里「あ、お礼にティーセット貰ったんで、この間の紅茶でも飲みましょうか」

518: 2018/03/15(木) 18:18:02.96 ID:D5UGscx/0





華「さすがダージリンさんが選んだだけあっていい香りですね」

麻子「よくわからん」

沙織「カップもなんだか芸術品みたいだね」

杏「ねーねー逸見ちゃん、秋山ちゃん。これ来客用に生徒会室に置いてもいい?」

エリカ「私は構わないけど……」

優花里「私もいいですよ。役立ててもらえるならそっちのほうがいいですから」

柚子「ありがとー!来客用の茶器ぐらい良いのを揃えようって前々から言ってたの」

エリカ「……それで、本題だけど。次のプラウダ戦どうするかって事よ」

桃「次の試合からは参加車輛が15輌になるな……」

柚子「また戦力差が広がるね……」

エリカ「B1は次から参加できると良いんだけど、それでも7輌……一回戦の参加上限にすら達してないわ」

杏「それでも、やるっきゃないんだよねー」

エリカ「……ええ、そうよ。あとは……相手がどう出るかね」

優花里「すみません私が調べられれば……」

エリカ「気にするような事じゃないわよ。相手の使う戦車に関しては今までのデータを参考に対策を立てましょう」

519: 2018/03/15(木) 18:20:13.98 ID:D5UGscx/0
コンコン

杏「どうぞー」

ナカジマ「失礼します。……あ、いたいた逸見さん」

エリカ「ナカジマさん?」

ナカジマ「依頼通りⅣ号の長砲身への換装、B1の修理完了したよ」

エリカ「本当ですか?まさかこんなに早くできるだなんて……ありがとうございます」

ナカジマ「いいよいいよ、やりがいがあったし。それと、ちょっと外出てもらえる?」

エリカ「え?」

520: 2018/03/15(木) 18:25:30.54 ID:D5UGscx/0





ナカジマ「それじゃあみんな、行くよっ!」


ドドドドド キュラキュラキュラ


エリカ「……ポルシェティーガー。レストア完了してたんだ……」

優花里「本物が動いているのを見る日が来るなんてっ!!生きててよかったっ……」

沙織「そんなに?」

優花里「そんなにですっ!この戦車はまともに動かすのも難しいんですよっ!?」

沙織「……それ使えるの?」

優花里「火力と装甲は凄いんですってっ!!」

沙織「でも動かすのが難しいんだよね?」

優花里「いやいやですが――――」


キュラキュラ ボンッ!!

沙織「火事っー!?」

優花里「……ちょっとエンジンが燃えやすくて壊れやすいだけですよ」

エリカ「改めて言われるとほんっとにひどい戦車ね……」

ナカジマ「あちゃー、ホシノー消化器消化器ー!!」

521: 2018/03/15(木) 18:30:30.82 ID:D5UGscx/0
沙織「……ホントに使えるの?」

エリカ「……私も不安になってきたわ」

ナカジマ「いやー、今日は行けると思ったんだけどねー」

エリカ「あの、あれに本気で乗るつもりですか?」

ナカジマ「うん。いやーあれ良い戦車だねっ!いじり甲斐があって楽しいよっ!」

エリカ「そ、そうですか」

優花里「戦車乗りではなく、技術者ならではの視点ですね」

ナカジマ「というわけで、今日から練習にも参加させてもらうね」

エリカ「ありがとうございます。……自動車部の皆さんにはホントに感謝してます。

    あなた達がいなかったら、準決勝どころか試合をするのすら無理だったと思います」

ナカジマ「いやいや、こっちも大変だったけどやりがいあったからね。それに、逸見さんが頑張ってるの見てたらね」

エリカ「私ですか?」

522: 2018/03/15(木) 18:34:11.06 ID:D5UGscx/0
ナカジマ「……戦車を整備してるとね、なんとなくわかるんだ。これに乗ってた人がどんな人なのか。

     Ⅳ号はいつだって必氏で戦ってる。撃破されたり撃破寸前だったり、切れる寸前な履帯だったり。それを見て思うのは逸見さんは本気なんだなって事だったよ」

エリカ「皆の助けを借りてようやく勝っているんです。必氏なだけじゃなんの意味もないですよ」

ナカジマ「でも、隊長が一番頑張ってる姿を見て奮起しないような皆じゃなかったでしょ?」

エリカ「……ええ」

ナカジマ「だから私たちもそれにあてられたんだよ。……さすがに徹夜が続いたのはキツかったけどね」

エリカ「中嶋さん。本当に、ありがとうございます」

ナカジマ「いいよ。これで私たちも大洗戦車道チームの仲間入りだね」

エリカ「……いえ、あなた達はこの学園の戦車道が始まった時からずっと――――私達の仲間ですよ」

ナカジマ「……そっか。ならますます頑張らないと」

523: 2018/03/15(木) 18:41:30.69 ID:D5UGscx/0




―格納庫―

優花里「Ⅳ号F2型いいですねっ!」

エリカ「ほんと、自動車部には頭が上がらないわ」

華「砲身が長くなったからか、なんだかシュっとして見えますね」

沙織「私もⅣ号みたいに足を長いのにできたらなぁ……」

エリカ「Ⅳ号の強化とB1、ポルシェティーガーの参加。これで少しはマシになるといいんだけど……」

沙織「でも、まだ相手との差は大きいね」

エリカ「……だからこそ、連携が大事になるわ。仲間の戦車の場所を全員が常に理解して常に最善の行動をとり続けないと」

優花里「元々エリカ殿はチームの連携を重視していますしね」

エリカ「……戦車道に一発逆転なんてない。一糸乱れぬ鋼の連帯こそが、勝利への近道よ」

優花里「身に沁みますっ!!」

エリカ「……まぁ、一回戦も二回戦もしっかり連携ができたかっていうと……」

優花里「一回戦は言わずもがな、二回戦も敵の策に嵌っててんやわんやでしたね……」

麻子「常に最善手が打てたことなんてないな」

エリカ「……だからこそっ!次の試合こそ私が学んだ西住流を見せる時っ!」

優花里「頑張りましょうっ!」

沙織「……西住流って?」

524: 2018/03/15(木) 18:44:31.40 ID:D5UGscx/0
エリカ「そういえば話したこと無かったわね。私は黒森峰にいた時、西住流って戦車道の流派を学んでたのよ」

華「どんな流派だったのですか?」

エリカ「撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心――――それが西住流よ」

沙織「……もっとわかりやすく」

エリカ「……一糸乱れぬ陣形と、圧倒的な火力で敵を打ち砕く。勝利が至上の流派よ」

沙織「んー……横綱相撲?」

エリカ「まぁ、それでいいわよ……」

優花里「西住流と島田流。この二つが日本の戦車道流派の双璧と言われています。ですが、西住流は最古にして最大の流派。

    つまり、日本で一番勢力の強い流派ってことです。そして黒森峰の戦車道チームはその歴史上、西住流の影響を強く受けています

    西住流の師範であり、高校戦車道連盟の理事長でもある西住しほ殿も黒森峰の出身です」

沙織「へぇー、そんなに強いんだ」

エリカ「まぁ、この私がいた学校だもの当然よ」

525: 2018/03/15(木) 18:49:12.96 ID:D5UGscx/0
沙織「でもえりりんって確か黒森峰追い出されたって言ってたよね?」

エリカ「……そういえばB1bisの搭乗員ってどうなったのかしら?」

沙織「逃げた……」

華「西住流は舌戦には苦手のようですね」

杏「お、いたいた。逸見ちゃーん」

エリカ「会長、なんの用よ」

杏「紹介したい人がいてね。ほら」

そど子「今日から戦車道の授業に参加することになりました。園みどり子です」

ゴモヨ「後藤モヨ子です」

パゾ美「金春希美です」

そど子「よろしくお願いします」

エリカ「あなた達って、確か風紀委員の……ていうか、金春さんって……」

パゾ美「どうも」

麻子「そど子もやるのか」

そど子「そど子って呼ばないでっ!……私たちだってやるつもりは無かったわよ。でも、会長に直接頭下げられたらね……」

杏「いやー交渉に苦労してね」

エリカ「……そう、会長も一応頑張ってるのね」

杏「まぁ、できる限りはね?」

526: 2018/03/15(木) 18:52:12.40 ID:D5UGscx/0

エリカ「それじゃあ園さんたちはルノーB1bisに乗ってもらうわね」

杏「チーム名はどうしよっか?」

エリカ「……B1ってカモっぽい見た目してるわね」

杏「じゃあカモで」

そど子「カモですかっ!?」

エリカ「それじゃあ動かし方は麻子が教えてあげて」

麻子「私がか」

エリカ「あなたが一番操縦上手いんだもの」

麻子「……仕方がない」

そど子「冷泉さん、頼むわね」

麻子「しっかり学べよそど子」

そど子「だから略さないでってっ!!」

527: 2018/03/15(木) 18:54:13.92 ID:D5UGscx/0





麻子「やっと帰れる……」

沙織「まさか麻子が放課後の自主練までするとは思わなかった」

麻子「……授業ではそど子達に教えて私はあまり動かさなかったからな」

優花里「冷泉殿がやる気に……っ」

華「いよいよ準決勝ですから、自然と気合が入ってしまいますね」

エリカ「ほら、あまり遅くなっても良くないわ。早く帰りましょう」

優花里「はいっ!」

華「ええ」

麻子「さっさと帰るか」

沙織「……ねぇ、えりりん」

エリカ「何?」

沙織「聞きたいことがあるの――――西住みほさんについて」

エリカ「……」

528: 2018/03/15(木) 18:58:44.97 ID:D5UGscx/0
華「西住みほ?」

麻子「誰だそれは」

優花里「さ、沙織殿、それは後にしませんかっ!?」

エリカ「優花里、いいわ。……どうしてそんなことが聞きたいの?」

沙織「アンツィオの人が西住みほって名前を出したとき、明らかにえりりんの反応がおかしかったから」

エリカ「……」

沙織「だから、西住みほって子について私なりに調べたの。えりりんがさっき話してた日本の戦車道二大流派の一つ、西住流。

   西住みほさんはその師範の娘で、私たちも知ってる西住まほさんの妹なんだよね?」

華「まほ……あの喫茶店での」

麻子「あいつか……」

エリカ「……いいわ、続けて」

沙織「みほさんは中学時代に戦車道で優秀な成績を収めてる。

   だけど、その子の名前が出てくるのは去年の大会で黒森峰の副隊長をしていたってところまでで……

   当時1年生だったんだから今年もいるはずなのに、2回戦までの黒森峰の出場選手には一回も載ってなかった……」

エリカ「……」

沙織「怪我とか病気での長期離脱っていうのも考えたんだけど、調べてもそういった情報はでてこなくて……」

エリカ「去年の大会以降の情報がない……当然ね。だって―――――」

529: 2018/03/15(木) 18:59:25.70 ID:D5UGscx/0









エリカ「西住みほは、もう氏んでいるのだから」








540: 2018/03/17(土) 18:06:49.21 ID:MJksQBve0
華「それは……」

麻子「……」

優花里「っ……」

沙織「……やっぱり。えりりんが前に話してた戦車道での氏者って……」

エリカ「西住みほの事よ」

沙織「……一体、何があったの?」

エリカ「……そうね、いい機会だから話しておこうかしら」

優花里「エリカ殿……」

エリカ「去年の決勝戦、黒森峰とプラウダとの試合で事故があった」

沙織「……」

541: 2018/03/17(土) 18:15:53.58 ID:MJksQBve0
エリカ「私はその時西住みほの傍にいたわ」

沙織「えっ……」

エリカ「……西住みほの乗るフラッグ車と指揮する部隊は敵の裏を取るために川沿いの崖を進んでいた。だけど、その作戦は読まれていたのよ。

    待ち伏せしていた敵からの砲撃を受けた際、突然の豪雨で滑りやすくなっていたせいでフラッグ車を護衛していた先頭車両が川に落ちたの」

沙織「そんな……」

エリカ「西住みほはそれを見て、単身救助に向かった。……自身のフラッグ車を放り出してね」

沙織「……」

エリカ「流されてた戦車には5人の乗員が乗ってた。操縦手、通信手、砲手、装填手、それと――――車長の逸見エリカがね」

沙織「っ!?」

華「エリカさんは、事故に遭われた本人だったのですか……」

エリカ「……そして、5人の命が助かったわ」

沙織「みほさんは、それで……」

優花里「……」

542: 2018/03/17(土) 18:23:28.51 ID:MJksQBve0
エリカ「身を挺した救出劇。はたから見れば美談になるのかもしれない。だけど、そうはならなかった」

沙織「どういうこと?」

エリカ「戦車道の世界大会、そしてプ口リーグの設立が控えている大事な時期に強豪校、それも西住流の師範の娘が事故で亡くなっただなんて世間に知られたら

    大く影響が出る。戦車道という競技そのものの存続が危ぶまれるかもしれない。だから、事故の詳細と、亡くなった生徒の名前が公表されることはなかった。不幸な事故で亡くなったのは名もない1生徒だってね」

沙織「そんな……」

エリカ「……事故が判明した段階でもう動き始めていたんでしょうね。生徒のプライベートが、家族の気持ちを考えて。

    そんな理由で名前は出されず不幸な事故とされ、偉い人が再発防止を誓って終わりよ」

優花里「当時の戦車道関連の雑誌や、ネットニュースは『どういうわけか』ほとんどこの事を報じず、

    一般の人はもちろん、戦車道をしている人でもこの事件について詳しい人はあまりいません」

沙織「ひどい……」

エリカ「仕方ない事よ。日本の戦車道は今、一番大事な時期なのだから」

沙織「でも……」

543: 2018/03/17(土) 18:28:56.48 ID:MJksQBve0
エリカ「もちろん協会もただ形だけの謝罪をしたわけじゃないわ。戦車そのものの安全性や競技中の事故に関するマニュアルの強化などできる限りの事はしたわ」

沙織「……えりりんはそれで良いの?みほさんが亡くなった事を、それで納得できたの……?」

エリカ「……私がどうこう言うことじゃないわって言いたいところだけど、それじゃ納得しないわよね」

沙織「……うん」

エリカ「私は……これでよかったと思ってる。不幸な事故のせいで、

    戦車道そのものが無くなる可能性があったことを考えれば、連盟の行動は最適解だったと思うわ」

沙織「……」

エリカ「私は、戦車道が好きよ。私の存在意義と言って過言じゃないわ。だから連盟の、大人たちの思惑を経て私たちの今があるならば……これでよかったのよ」

沙織「……そっか」

エリカ「これが私の知ってる全てよ。もういい?」

沙織「……うん。ごめんね、辛い事を思い出させちゃって」

エリカ「気にしないで。さ、もう帰りましょう」

沙織「うんっ」

優花里「……良かった」ボソッ

544: 2018/03/17(土) 18:35:41.80 ID:MJksQBve0
麻子「話は終わったか」

華「私、お腹が空いちゃいました」

エリカ「なら、どこか寄ってから帰りましょう」

華「すみません……」

エリカ「今さら何言ってるの。友達なんでしょ?」

華「はいっ」

沙織「あ、えりりん。最後にもう一つだけいい?」

エリカ「何よ」

545: 2018/03/17(土) 18:40:47.61 ID:MJksQBve0
沙織「みほさんってどんな人だったの?」

エリカ「臆病者」

沙織「……え?」

エリカ「家柄と経験だけで何の資質も持ってない子だったわ」

華「……エリカさん?」

エリカ「臆病で、いつも誰かの顔色を伺ってばかり」

麻子「……」

エリカ「そのくせ性根ではいつだって自分が正しいと驕っていた」

優花里「エリカ殿っ!!?」

エリカ「挙句の果てに自分勝手な正義感でフラッグ車を投げ出して黒森峰の偉大な記録を、名声を、地に落とした」

沙織「ちょ、ちょっとまってよ!?えりりんって、去年の決勝で川に落ちた戦車に乗ってたって……!」

エリカ「ええ、そうよ。あれは私にとっても苦い経験ね……」

沙織「そ、それを助けたのがみほさんで、みほさんは……」

エリカ「氏んだわよ。ほんと、滑稽ね」

沙織「ッ!?なん、で」

エリカ「何でですって?そんなの決まってるじゃない」

546: 2018/03/17(土) 18:46:01.19 ID:MJksQBve0
エリカ「何もできないくせに何でもできると驕って」

沙織「……えりりん、やめて」

エリカ「自分を氏なせて」

沙織「ねぇ、お願いだから……」

エリカ「優勝旗も守れなかった」

沙織「えりりんッ!!」

547: 2018/03/17(土) 18:48:49.19 ID:MJksQBve0










エリカ「馬鹿な副隊長よ―――あぁ、『元』だったわね」





548: 2018/03/17(土) 18:50:48.58 ID:MJksQBve0


バシィッ!!






エリカ「……っ」

沙織「……なんで、なんで自分のために命を落とした人をそんな風に言えるの……?」

エリカ「……事実だからよ」

沙織「えりりんが……あなたがそんな人だと思わなかったッ!!」

エリカ「……だったら何?」

沙織「私……もうあなたの戦車には乗らないッ、あなたのような人と一緒に戦えないッ!!」ダッ

優花里「あっ!?沙織殿!!?」

エリカ「……4人いればなんとかなるわよ」

華「―――――なら、これで3人ですね」

優花里「華殿……?」

華「エリカさん、私があなたと共に戦おうと思ったのはあなたの中に道を見たからです」

エリカ「……」

549: 2018/03/17(土) 18:52:36.45 ID:MJksQBve0
華「ですが、それはどうやら私の見誤りだったようですね。……氏者を、それも命の恩人を愚弄するような輩と共に歩く道は、私にはありません」

エリカ「……そう」

華「今までお世話になりました」

優花里「ああそんなっ……華殿まで、ま、待ってください!?」

エリカ「止めなくて良いわよ。やる気のないやつはいるだけで邪魔だから」

優花里「エリカ殿っ!?」

エリカ「……麻子、あなたはどうするの」

麻子「……私は逸見さんに個人的な恩がある。おばぁの一件、今でも感謝している。だから、私は最後まで残る」

エリカ「……そう。あなたは?」

優花里「えっ!?わ、私も最後まで残るつもり、です」

エリカ「それなら、せめてもう一人乗員をみつけないとね……とりあえず、優花里。あなたにはしばらく砲手も兼任してもらうわ。負担が増えるけど代わりが見つかるまでなんとか頑張って」

優花里「そ、それは構いませんが……」

エリカ「なら、今日はここまでね。私は帰らせてもらうわ」

麻子「……ああ、ゆっくり休んだほうが良い」

優花里「ちょっ、エリカ殿!!」

550: 2018/03/17(土) 18:53:40.99 ID:MJksQBve0





優花里「待ってくださいっ!エリカ殿!!」

エリカ「……何?」

優花里「あのっ、沙織殿達ともう一度話してもらえませんかっ!?」

エリカ「言ったでしょ?やる気の無いやつにいられても迷惑だって」

優花里「違いますっ!!お二人は決して戦車道が嫌になったとかじゃっ」

エリカ「……わかってるわよ。でも、私の指示に従えないなら同じことよ」

優花里「お二人は、え、エリカ殿の事を誤解してるんです!!あの、本当の事を話せばきっとっ!」

エリカ「っ……黙れっ!!」

優花里「っ!?」ビクッ

551: 2018/03/17(土) 18:54:46.90 ID:MJksQBve0
エリカ「あなたに……あなたに何が分かるのよっ!?知識だけで、何も知らないあなたにっ!?」

優花里「っ……」

エリカ「あ……ごめんなさい、私……帰るから」スタスタ

優花里「……なんで、なんでですかっ!!?こないだは、アンツィオ戦後はあんなに笑ってたじゃないですかっ!!?

    敵も味方も関係なしに笑って、はしゃいで……エリカ殿だってっ!!なのにっなんでこんな事になっちゃうんですかエリカ殿っ!!?」

エリカ「……それが、偽物だったってだけでしょ」

優花里「っ!?何、言って……」

エリカ「じゃあね、優花里。……また明日」

優花里「……エリカ殿の、エリカ殿の……っ馬鹿あああああああああああああああああっ!!」

552: 2018/03/17(土) 18:55:23.90 ID:MJksQBve0







エリカ「……ええ。ほんと、救えないわね」






553: 2018/03/17(土) 18:56:28.54 ID:MJksQBve0






初めてあなたと一緒の戦車に乗った日

私は長い間、本当に長い間忘れていた気持ちを思い出した

小さなII号戦車に私が車長と砲手であなたが操縦手

私が指示をし時にはあなたが指示をして……あの瞬間、私は一人じゃなかった

ひたすら夢中で戦車を動かして、試合が終わった後になってようやく気付いた

ああ、そうだ。戦車道ってこんなに楽しかったんだって

それを思い出した瞬間涙が流れて、止まらなくて

そんな私を見てあなたはあたふたしながらもそっと、頭をなでてくれた

貴女がいたから、私は私を思い出せた






私は、貴女に――――エリカさんに救われたんだよ







566: 2018/03/21(水) 18:08:15.55 ID:6ScmyZv60






エーリっカさん♪



――やめて








567: 2018/03/21(水) 18:10:02.71 ID:6ScmyZv60





エリカさんっ!



――黙れ





568: 2018/03/21(水) 18:11:29.39 ID:6ScmyZv60





エリカさん



――私は、




569: 2018/03/21(水) 18:12:51.35 ID:6ScmyZv60







エリカさん。貴女に会えて、良かった







弱いあなたが憎くてたまらない






570: 2018/03/21(水) 18:16:13.05 ID:6ScmyZv60




エリカ「っ!?」バッ


チュンチュンチュン


エリカ「……っ、最悪の目覚めね」





『私……もうあなたの戦車には乗らないッ、あなたのような人と一緒に戦えないッ!!』

『氏者を、それも命の恩人を愚弄するような輩と共に歩く道は、私にはありません』






エリカ「……全部夢だったらいいのに」



571: 2018/03/21(水) 18:21:46.61 ID:6ScmyZv60






エリカ「……」モグモグ

麻子「逸見さん?」

エリカ「麻子?どうしたのよこんなところで」

麻子「ここは私の昼寝スポットの一つだ。校舎の影で人通りも少なくて涼しいからな」

エリカ「そう」

麻子「逸見さんこそ、こんなところで昼食か」

エリカ「たまには一人でパン食べるのもいいかなって思っただけよ」

麻子「……そうか」

エリカ「……っと、私は食べ終わったから戻るわね。あなたも昼寝は良いけれど授業はちゃんと出なさいよ」

麻子「沙織みたいなことを言うんだな」

エリカ「……じゃあまたね」

麻子「……ああ」

572: 2018/03/21(水) 18:26:57.78 ID:6ScmyZv60





桃「いよいよ次は準決勝だっ!!相手は前回の優勝校であるプラウダ高校っ!!全員、気を引き締めろっ!!」

杏「……あれ?武部ちゃんと五十鈴ちゃんは?」

優花里「そ、それは……」

エリカ「二人とも今日はお休みよ。体調が悪いんじゃない?」

杏「……そっか」

桃「二人ともたるんでるなっ!」

杏「まーまー、いいじゃないの。そんな時もあるよ」

桃「ですが会長……」

エリカ「とりあえず今日の練習はいつも通りの基礎訓練よ。参加車輛が増えたとはいえ、相手の15輌に比べれば依然心もとない数。

    だからこそ各車、各チームの技量を高める必要があるわ。数の少ない有象無象を少数精鋭にまで押し上げる。そのための基礎よ」

梓「はいっ!」

あゆみ「また基礎かぁ……」

あや「たまにはドンパチした練習がやりたいなぁー」

梓「あゆみ、あやっ!!」

エリカ「気持ちはわかるけれどこれも必要な事よ。それじゃあ早速始めましょう」

573: 2018/03/21(水) 18:30:32.14 ID:6ScmyZv60





優花里「今日は3人で動かすことになるんですね……」

エリカ「仕方がないでしょ。ほら、さっさと乗って」

麻子「ん」

優花里「はい……」

エリカ「……っと」

麻子「それじゃあ出すぞ」

エリカ「……」

優花里「エリカ殿?」

エリカ「……やっぱり今日はⅣ号は出さないでおきましょう」

優花里「え?」

エリカ「皆、悪いけど練習内容を変更するわ。Ⅳ号を抜いた7輌で4対3の紅白戦をしましょう」

梓『え?』

エルヴィン『こちらは構わないがどういう風の吹き回しだ?』

574: 2018/03/21(水) 18:32:36.15 ID:6ScmyZv60
エリカ「……基礎はもちろん大事。でも、チームの実力を把握しておくのも連携には必要なことよ。

    その点紅白戦はそれにうってつけって事。初心者のカモさんチームとレオポンさんチームは一緒でお願い」

桃『キリが悪いな……お前たちは参加しないのか?』

エリカ「あら?今さら私たちの実力を図る必要がある?」

ねこにゃー『逸見さん超強気……』

エリカ「……冗談よ。麻子と優花里にはカモさんとレオポンさんチームのサポートをお願いしたいからね」

そど子『私たちはまだ初心者なんだからそのあたり頼むわよっ!!』

ナカジマ『こっちも動かす以外は素人だからお願いねー』

エリカ「って事だから麻子、優花里お願いね」

優花里「は、はい」

麻子「……わかった」

575: 2018/03/21(水) 18:35:42.45 ID:6ScmyZv60
桃『お前はどうするんだ?』

エリカ「私は監視台から皆の試合を見させてもらうわ。桃ちゃん、最近は0距離なら当てられるようになったけど、もうちょっとなんとかなるようにしなさい」

梓『0距離なら当たるようになったんだ……』

優花里「エリカ殿の必氏の指導でなんとかそこまで持ってけるようになりました……」

エルヴィン『ある意味才能だな……』

桃『うるさいうるさいっ!あと桃ちゃん言うなっ!!』

エリカ「桃ちゃんだけじゃないわ、ウサギさんチームは指示を守るために他がおろそかになる時がある。指示を守るのと自分の頭で考えないのは別よ。

    隊長からの指示をただ受けるだけなら車長なんていらないわ。その事をよく考えなさい」

梓『っ……はいっ!!』

576: 2018/03/21(水) 18:36:52.39 ID:6ScmyZv60
エリカ「カバさんチームはなまじⅢ突に火力があるせいか攻め急ぐ癖があるわ。突撃砲の運用は待ち伏せが基本よ。

    聖グロの時のように瞬時に地形を把握して自身に有利な状況を見つけられるようにしなさい」

エルヴィン『耳が痛いな』

エリカ「アヒルさんチーム、火力も装甲もない八九式で偵察をこなせるようにしたのは良いけれど、それはほかの戦車でもできることよ。

    あなた達がその子を選んだのだから、誰にも負けないっていう自信を持って、もっと技術を高めなさい」

典子『はいっ!!』

エリカ「アリクイさんチームはラッキーパンチを狙いすぎ。桃ちゃんほどじゃないけれど闇雲に撃つ癖があるわ。

    三式は砲撃に車長と砲手の息を合わせる必要がある。もっとタイミングを見極めて確実な瞬間をとらえなさい」

ねこにゃー『りょ、了解』

577: 2018/03/21(水) 18:39:30.01 ID:6ScmyZv60
エリカ『カモさんチームはまだ戦闘は難しいでしょうけど、B1は装甲が厚いわ

    焦らず、麻子たちの指示を聞いて出来る事からやって』

そど子『はい』

エリカ「レオポンさんチームは操縦に関しては心配してないわ。でも、癖が強い戦車には変わりがない。

    実戦形式で動かす中で、そのあたりを掴んで本番でもしっかり動かせるようにして」

ナカジマ『オッケー』

エリカ「それじゃあ始めましょう」

578: 2018/03/21(水) 18:43:11.47 ID:6ScmyZv60





桃『アヒルさんチームだ撃て撃てーっ!!』

エルヴィン『うぉおおおおおっ!?なんでっ!?なんでこっち飛んでくるっ!?』

桃『また外れか……』

ねこにゃー『いやあれはもはや空間が曲がってないとおかしい弾道だったような……』

典子『何か知らないけど今のうちに逃げよう』

579: 2018/03/21(水) 18:45:12.89 ID:6ScmyZv60






ゴモ代『う、うわわっ、冷泉先輩どうすればっ!?』

麻子『こう、レバーをグイっとしてなんかこう、シュッってやった後ウィィィンってやればいい』

ゴモ代『わかりませーんっ!』

そど子『ちょっと冷泉さんっ!ちゃんと教えなさいよっ!!』

麻子『……めんどくさいな』

580: 2018/03/21(水) 18:47:41.73 ID:6ScmyZv60





ホシノ『ナカジマーエンジンがお熱っぽいぞ』

ナカジマ『仕方ない、ちょっとあやすね』

梓『嘘っ!?走りながらっ!?』

優花里『設備の無いところであのレベルの修理をできるだなんて!信じられないです!!』

581: 2018/03/21(水) 18:48:48.38 ID:6ScmyZv60





左衛門座『ウサギ狩りだーっ!!』

梓『あんなところにっ!?』

エルヴィン『背の高いお前らはよく見えていたぞ』

582: 2018/03/21(水) 18:49:41.57 ID:6ScmyZv60




シュポッ シュポッ

エルヴィン『……相打ちか。まさか車高の高さを利用してあんな攻撃をしてくるとはな』

梓『まさか車高の低さをあんな形で利用してくるだなんて……』

エルヴィン・梓『『……ま、実戦じゃ絶対できない動きだけど』』





エリカ「終わったわねー?それじゃあチームを変えてもう一回よ」

『はーい!』

エリカ「……」






エリカ「沙織、華……」ボソッ






583: 2018/03/21(水) 18:52:26.38 ID:6ScmyZv60






エリカ「……」モグモグ

麻子「……逸見さん」

エリカ「麻子?なんでこんなところに……」

麻子「私の昼寝スポットは学園艦の各地にある。ここもその一つだ」

エリカ「そ、そう」

麻子「逸見さんはまたぼっち飯か」

エリカ「言ってくれるわね……」

麻子「秋山さんはどうした」

エリカ「……正直、今はあの子と話しても傷つけるだけよ」

麻子「……隣、いいか?」

エリカ「いいけど……昼寝はどうしたのよ」

麻子「少し、話をしよう」

エリカ「……」

584: 2018/03/21(水) 18:57:00.35 ID:6ScmyZv60
麻子「逸見さん。沙織が何であんなに怒ったかわかるか?」

エリカ「……説教ならやめてほしいわ」

麻子「そうじゃない。ただ、沙織が誤解されているのはあまり嬉しくないから」

エリカ「誤解?」

麻子「沙織は、逸見さんが西住さんとやらの氏を侮辱したから怒ったんじゃないんだ」

エリカ「……なら、何よ?」

麻子「沙織は逸見さんの『酷い言葉』に怒ったんじゃない。酷い言葉を『逸見さん』が言ったから怒ったんだ」

エリカ「……」

585: 2018/03/21(水) 18:59:15.76 ID:6ScmyZv60
麻子「私は沙織が誰かをぶつのも、あからさまに人を避けるのも初めて見た。……沙織は誰とでも仲良くできる。

   もちろん中には反りが合わなかったりする奴がいたかもしれん。それでも沙織は表面上を取り繕って波風をたてないようにする。お互いのためにな」

エリカ「よくやるわね」

麻子「ああ、私もそう思う。だけど逸見さんにはああいう態度をとった。その意味を、その理由を……理解してほしい」

エリカ「……」

麻子「言いたいことはそれだけだ。こないだ言った通り、二人が仲直りしようがしまいが私は最後まで逸見さんについていく。……後は好きにするといい」スクッ 

エリカ「麻子」

麻子「……」

エリカ「私は、沙織を誤解したことなんて一度もないわ」

麻子「……なら、それをちゃんと言ってやれ。話せばわかるのに勝手に決めつけて、それが最後になるだなんてのを私は……もう見たくないんだ」スタスタ

エリカ「……はぁ、私って本当に馬鹿ね」

592: 2018/03/24(土) 19:10:14.83 ID:bE28mdZg0




キーンコーンカーンコーン


ザワザワ

カエリドッカヨローヨー

ジャア、ワタシ アマイモノタベターイ




エリカ「……」

沙織「……華、帰ろう」

華「……はい」

593: 2018/03/24(土) 19:13:51.12 ID:bE28mdZg0
エリカ「……っ沙織、華っ!!」ガタッ

沙織「……」

エリカ「あなた達と話がしたいっ!!」

沙織「……私は、逸見さんと話したくない」

エリカ「っ……」

沙織「……華、行こ」スタスタ

華「……沙織さん」


ガシッ

エリカ「お願い、話を聞いてっ……」

沙織「っ……うるさいっ!!」ダッ

エリカ「沙織……」

594: 2018/03/24(土) 19:16:00.97 ID:bE28mdZg0






優花里「追ってくださいっ!!」






エリカ「優花里……?」

優花里「いいからっ!!早く行ってっ!!ここで諦めたら――――きっと後悔しますよっ!?」

エリカ「――――うんっ!!」ダッ

595: 2018/03/24(土) 19:21:41.53 ID:bE28mdZg0
優花里「……エリカ殿、頑張ってください」

麻子「まったく、騒がしいやつらだな」

優花里「麻子殿……」

麻子「……秋山さん」

優花里「?」

麻子「……大丈夫だ」

優花里「……はいっ」





華「……私、置いてけぼりですね」

優花里「あ……」

596: 2018/03/24(土) 19:25:19.89 ID:bE28mdZg0





ダダダダダッ!!

エリカ「沙織っ!!」

沙織「ついてこないでっ!!」

エリカ「嫌よっ!絶対に逃がさないわっ!!」



カエサル「何やってんだあいつら……」

エルヴィン「ラップランドか?」

カエサル「ゲルマン民族大移動だ」

左衛門座「いや、島津の退き口だな」

おりょう「いやいや逃げの小五郎ぜよ」

「「「それだっ!」」」



典子「隊長、ランニングですかっ!?お付き合いしますっ!!」

ねこにゃー「キャプテン、それは違うと思うな……」

597: 2018/03/24(土) 19:28:53.75 ID:bE28mdZg0




ダダダダダッ!!


沙織「逸見さんとはもうなんでもないんだからっ!!」

エリカ「今さら他人行儀な呼び方しないでっ!!」






梓「エリカ先輩に武部先輩……?」

あや「どうしたんだろ?」

優季「痴話喧嘩かもよぉ?」

あや「男の取り合い……」

梓「変なこと言わないでっ!!」

紗希「……」ボーッ

598: 2018/03/24(土) 19:32:07.85 ID:bE28mdZg0





ダダダダダッ!!


エリカ「お願いっ話を聞いてっ!!」

沙織「うるさいうるさいっ!!」





杏「逸見ちゃんたち何してんだろ」

柚子「廊下は走っちゃだめだよー……」

桃「武部の奴、体調不良だと言ってたのに元気じゃないかっ!?」



ナカジマ「廊下でレースかな?」

ホシノ「学校での交通ルールは守らないと」



ダダダダッ!

そど子「あなた達廊下を走るとか何考えてるのー!!」

ナカジマ「……参加者が増えたね」

599: 2018/03/24(土) 19:38:46.59 ID:bE28mdZg0





―屋上―



沙織「はぁっ……はぁっ……」

エリカ「ぜぇ……ぜぇ……もう、逃げ場はないわよ……」

沙織「……もう、なんなのっ!?あなたと私はもう何の関係もないんだからっ!!」

エリカ「……沙織。私は……ここで終わりだなんて嫌」

沙織「っ……」

エリカ「沙織、私が嫌いなら、信頼できないならそれでも良いわ。だけど、私は――――」

沙織「こないでっ!!」

エリカ「……」

沙織「ねぇ、あなたは誰なの……?」

エリカ「っ!?何、言って」

沙織「私、あなたの事何も知らない……みほさんの事も、黒森峰での事も……」

エリカ「……沙織」

600: 2018/03/24(土) 19:42:10.96 ID:bE28mdZg0
沙織「えり、逸見さんがみほさんをどう思ってるかっていうの、あれ本当なんだよね……?」

エリカ「……ええ。あの言葉は間違いなく――――私の本心よ」

沙織「それがわかったから私は……でも、私はあなたの優しいところもたくさん見てきたっ……」

エリカ「……」

沙織「あなたが戦車道に強い思い入れがあるって知ってる。だけど、あなたはそれを押し付けたりしなかった。

   厳しい時もあったけど、それがあったから皆戦車道を楽しんでる。一年生チームだって、あなたの厳しさがあったから本気になれたって

   アリクイさんチームも、あなたが見つけてきたんだよ……?」

エリカ「勝つために必要だと思ったから。……かもしれないわよ」

沙織「バレー部やアリサさんのために自分を傷つけて」

エリカ「……それが最適解だと思ったから」

沙織「自動車部の皆にだって、ずっと仲間だと思ってたって……」

エリカ「……それも、」

沙織「あなたはそんなに器用な人じゃないよ」

エリカ「……何も知らないだなんてよく言うわね。私の事、よく見てるじゃない」

601: 2018/03/24(土) 19:47:36.16 ID:bE28mdZg0
沙織「ねぇエリカ。私達、あなたと出会ってまだ半年も経ってないんだよ?なのにエリカと出会ってから今日まで、本当に長かった。あなたとの思い出が沢山できたっ……」

エリカ「……私もよ」

沙織「でもね、だからかな。……あの時のあなたがどうしても許せなかった」

エリカ「それは、あなたが優しいからよ」

沙織「違う、違うのエリカ……私は、私はただ嫌だったのっ!あんな事を言うエリカがっ!」

エリカ「……」

沙織「誰だって嫌いな人や苦手な人はいるよ。私はそれを否定できるような聖人じゃない。なのに……あなたがみほさんの事を悪く言っているのが、どうしても耐えられなかった……

   あなたがあんなにも誰かを蔑んで、憎む顔を、見たくなかったっ……」

沙織「あなたの言葉は間違ってる。だけど、そんなの些細な事なのっ、私は……私はただ……あなたと一緒に笑顔でいたかっただけッ!!」

エリカ「……」

沙織「……エリカ、もう一度言うね。誰かを悪く言うあなたが嫌い」

エリカ「……」

沙織「だけど――――それ以上に、あなたを嫌いになる私が嫌い」

沙織「あなたは厳しくて、だけど優しい人だから。誰かを嫌ったり、憎んだりしないだなんて決めつけて、

   それが違ったから裏切られただなんて思って、こんなエゴにまみれた私に、あなたの友達でいる資格なんて――――」

602: 2018/03/24(土) 19:53:16.10 ID:bE28mdZg0

   

ギュッ





沙織「エリカ……?」

エリカ「……沙織、あなたには感謝してる」

沙織「……え?」

エリカ「初めて話しかけてくれたこと、今でも感謝してるわ」

エリカ「一緒に戦車道をやると言ってくれたこと、本当はとっても心強かった」

エリカ「今日の訓練、私は見学してたわ。だって3人じゃ戦車動かせないもの……そんな誤魔化しでみんなを、自分を納得させた」

エリカ「3人だって動かすぐらいできるわ、戦闘は無理でもやろうと思えば練習できた。……でも、したくなかった」

沙織「……」

エリカ「初めてよ。あんなに戦車に乗りたくないと思ったのは。あなた達がいない戦車は……あんまりにも寒かったから」

沙織「えり、」

エリカ「私も同じよ沙織。あなた達と出会ってから本当に長かった。たくさんの思い出ができたの」

沙織「……うん」

エリカ「……沙織、あなたは何も間違ってない。間違ってるのは私なの。優しいあなたを無遠慮な言葉で傷つけたのは、私なの」

沙織「……」

603: 2018/03/24(土) 19:57:52.58 ID:bE28mdZg0
エリカ「だけど、それでも私は―――――――あなた達の乗る戦車に乗りたい。あなたを傷つける事になっても、それでも私には……あなたが必要よ」

沙織「……えりりん」

エリカ「……何?」

沙織「私は、みほさんとえりりんがどんな関係だったのか何も知らないよ」

エリカ「……話すつもりはないしね」

沙織「えりりんが私たちに何か隠してるのも知ってる」

エリカ「……そう」

沙織「だから、きっとえりりんにも何か事情があるのかもしれない、理由があるのかもしれない。

   それでも、私はえりりんにあんな言葉を言ってほしくなかった」

エリカ「……ええ。でも、撤回するつもりはないわ」

604: 2018/03/24(土) 20:04:26.65 ID:bE28mdZg0
沙織「私は、初めてえりりんの嫌いなところができたよ」

エリカ「……」

沙織「だからもっとえりりんの良いところを私に見せて」

エリカ「私には、戦車道しかできないわ」

沙織「それでいいから、それが見たいから――――いっぱい笑って、いっぱい楽しんで、みんなとの思い出をたくさん作ろうよ。ね?えりりん」

エリカ「……沙織」

沙織「なあに?」

エリカ「……ありがとう」

沙織「ううん、私こそありがとう。それと、ごめんね。ぶったりして……」

エリカ「ええ、痛かったわよ。誰かにぶたれたのなんて久しぶりだったから結構効いたわ」

沙織「ふふっ、私も鍛えられてるのかな?」

エリカ「かもね」

沙織「……えりりん」

エリカ「なあに?」

沙織「あなたと友達になれて良かった」

エリカ「……ええ、私も」












優花里「ううぅ……エリカ殿、沙織殿ぉ……」グスッ

麻子「ほら、あんまり大声出すと見つかるぞ」

優花里「す、すみません……」ズビッ

麻子「……良かったな逸見さん、沙織」

605: 2018/03/24(土) 20:05:31.19 ID:bE28mdZg0
はいここまで。次は火曜で。

607: 2018/03/24(土) 20:17:36.76 ID:j9hXV4F00

引用: 【ガルパン】エリカ「私は、あなたを救えなかったから」