3: 2013/06/10(月) 21:17:05 ID:???
ハンナ「……28、29、30!」
ハンナ(胸骨圧迫30回、人工呼吸2回、胸骨圧迫は毎分100回以上。
大丈夫。座学で習ったことたまから。きちんと覚えてる。
息を吹き込む。フランツの胸があがる。大丈夫、まだフランツは生き返る)
ハンナ「ねえ!フランツ!目を覚まして!」
ハンナ(視界がぼやける。涙がフランツの身体に落ちる。フランツ、ねえ、返事をしてよ……)


4: 2013/06/10(月) 21:22:03 ID:Ef7v7/X.
アルミン「……ハンナ?」
ハンナ「アルミン!助けて!フランツが息をしていないの!」
ハンナ(座学1位のアルミンなら、大丈夫。フランツは生き返る)
ハンナ「さっきから、何度も……何度も何度も!蘇生術を繰り返してるのに!」
アルミン「ハンナ、危ないから屋根の上に……」
ハンナ「フランツを置いて行けないでしょ!」
アルミン「違うんだハンナ……フランツはもう……」

5: 2013/06/10(月) 21:29:19 ID:Ef7v7/X.
ハンナ(アルミンは何故か、悲しそうな目をして去っていった。どうしたんだろう。アルミンは誰か、親しい人を亡くしたのかもしれない。私にはフランツがいるけど、アルミンにはもういないのかもしれない)
アニ「……あんた、何してるの」
ハンナ「何ってアニ!フランツを蘇生させてるの!早くしないとフランツが氏んじゃう!ライナーもベルトルトも手伝って!」
ライナー「……とりあえず、ここは危険だ。一旦屋根の上に昇るぞ。フランツは俺が背負うから」バシュッ
ハンナ(ライナーはフランツを背負って、立体機動装置のアンカーを発射した。次にベルトルト、アニ、そして私が続く)

6: 2013/06/10(月) 21:37:50 ID:Ef7v7/X.
ハンナ(屋根の上は瓦ばかりで、ゴツゴツしていて、フランツを横たわらせるのには向かなそうだ。せめてもの気休めに、私のジャケットを下に敷いて、その上にフランツを横たわらせる。そのとき持ったフランツの身体は、異様に軽かった。まるで、身体中の血液を全て失ったように。下半身を巨人に食いちぎられたように)
ハンナ「ライナー!早くフランツに胸骨圧迫して!私は人工呼吸をするから!」
ライナー「あ、ああ……」
ハンナ(ライナーは何故か一瞬躊躇ったけど、それでも胸骨圧迫をしてくれた。肋骨が折れる音がしたけど、肋骨だけの損失でフランツが生き返るのなら安いものだ)

7: 2013/06/10(月) 21:42:57 ID:Ef7v7/X.
ハンナ(大丈夫……このまま続けていれば、フランツは生き返る……。フランツは生き返って、またあの笑顔を見せてくれる……)
ベルトルト「……ねえ、ライナー。もう、やめなよ」
アニ「ベルトルトの言う通りだ。何の意味のないことをやってどうするんだよ」

9: 2013/06/10(月) 21:47:44 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「な、何の意味もないってどういうこと?!フランツは!もう少しすれば生き返る!だから私はこうして蘇生術を……!」
アニ「あんた、わかってるんだろ?見えてるんだろ?だったら目を逸らすなよ」
ベルトルト「ねえ……フランツはもう……」

10: 2013/06/10(月) 21:50:11 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「……え?」
ハンナ(フランツの下半身に目をやると

そこにはもう

あるべきものが

根こそぎ

奪われていた)

12: 2013/06/10(月) 21:54:16 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「なんで!」
ハンナ「何でなのよ!」
ハンナ「どうしてフランツなの?!」
ハンナ「何で、巨人に、フランツは食べられてるの?!」
ハンナ「巨人さえ、いなければ!!フランツは!!!」
ハンナ(私の大声に驚いたのか、ベルトルトがビクッと怯えた。
でも、そんなことは気にならない。
私の愛するフランツを奪った巨人が、ただひたすらに憎かった)

13: 2013/06/10(月) 21:59:05 ID:Ef7v7/X.
ライナー「……なあ、ハンナ。一回落ち着け」
ハンナ「これのどこが落ち着けるの?!あなたたちはこんな経験、ないでしょう?!」
ライナー「……俺達だって、今、沢山の仲間の氏を見てきた。それに昔、大切な親友を失ったことがある。錯乱する気持ちはわかるが、落ち着け。ここは戦場だ。お前は兵士だろう?ここで取り乱すと、大変なことになるのはわかるな?」

15: 2013/06/10(月) 22:05:23 ID:Ef7v7/X.
ハンナ(…頭では理解できているつもりなのに、どうしても行動が抑えられない。私の口から出た返事は、言葉ではなく、嗚咽だった)
ハンナ「……う、うう………ひっく………ぐすっ」
ハンナ(きっと私は、最初からわかっていた。フランツが二度と目を覚まさないことに。でも、目を逸らしてた。それどころか、いつか氏ぬかもわからない地上にとどまっていた)

17: 2013/06/10(月) 22:11:28 ID:Ef7v7/X.
アニ「……きっとあんたは、フランツと一緒に氏ぬつもりだったんだろうね」

ベルトルト「……でも、フランツはきっと、ハンナに氏んでほしくないと思う」

─────
───────

フランツ「僕が、君を守るから、ハンナ……」

───────
──────

はわ

19: 2013/06/10(月) 22:16:43 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「ごめんなさい、フランツ……」

ハンナ「私が氏ねば、あなたのことを思い出すこともなくなってしまう……あなたとの思い出もなくなってしまう………」

ハンナ「あなたへ抱いた気持ちも、あなたから貰った感情も、全部……」

20: 2013/06/10(月) 22:24:41 ID:Ef7v7/X.
ハンナ(私はその場に泣き崩れた。アニが私の頭を撫でてくれる)

ハンナ(あなたの分まで私は生きる。生きてみせる)

ハンナ「……ねえ、ライナー。フランツを背負ってもらうわけにはいかない?」

ライナー「俺も背負いたいのは山々だが……すまない、もう、ガスの残量が少なくてな。
人一人かかえての立体機動は、難しそうだ」

ハンナ(ライナーは、フランツのことをきちんと一人とカウントしてくれた。
それだけでも嬉しかった。
大丈夫、私は、わがままは言わない。
フランツ以外には)

21: 2013/06/10(月) 22:30:26 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「そうね……うん、大丈夫」

ハンナ(でも、フランツの形見を、何か持って帰りたい。
とりあえずは、私とお揃いで買った指輪と……)

アニ「他に持って帰れそうな物か……」

ライナー「こいつの場合、遺髪とかは無理だよな……」

22: 2013/06/10(月) 22:35:57 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「……フランツの訓練兵のジャケットを脱がせられるかな。氏後硬直とか、してないと良いけど……」

ライナー「ん?……よいしょっと」

ハンナ(ライナーは少し苦労しながらも、フランツのジャケットを脱がせてくれた。私は、私よりもだいぶ大きいフランツのジャケットに腕を通す)

あな

24: 2013/06/10(月) 22:59:20 ID:Ef7v7/X.
アニ「……それ、立体機動に邪魔にならないかい?」

ハンナ「これが邪魔になるんだったら、フランツが邪魔になるってことだから。
フランツが邪魔になることはないから、大丈夫」

ライナー「お熱いことだな」

ハンナ「いやそんなライナー。お似合い夫婦だんて早いわよ///」

ハンナ(フランツは私のジャケットを敷いている。フランツには小さいから、仕方ないわよね)

ハンナ(フランツのことは置いて行くしかない。私だってガスが十分にあるわけじゃない)

ハンナ(でも、私は、フランツのことを愛している)

25: 2013/06/10(月) 23:03:26 ID:Ef7v7/X.
ライナー「向こうにジャン達が集まっているな。行ってみるか。このガスの残量では壁を登れないし、集まった方が良いだろう」

ハンナ「……うん!」

ハンナ(最後にフランツの顔を見る。

とても気持ちよさそうな寝顔だった)

26: 2013/06/10(月) 23:07:47 ID:Ef7v7/X.
ハンナ(──トロスト区を奪還したあと、私はフランツがいるはずのところへ向かった)

ハンナ(もう、彼はいなかった)

ハンナ(もう火葬場へ運ばれたのか、それとも巨人に食べられてしまったのかはわからない)

ハンナ(最後には逢えなかったけど、それでも)

ハンナ「それでも良いんだ」

27: 2013/06/10(月) 23:12:18 ID:Ef7v7/X.
──────
フランツへ

お元気ですか……って訊くのも変ね。

私は、元気にしています。

無事に、調査兵団に入ることができました。

……ごめんね、フランツ。二人で駐屯兵団に入るって約束だったのに。

でも、あなたが氏んで、それで私、考えが変わったの。

『私みたいに悲しむ人を増やしたくない』
そう、思ったの。

28: 2013/06/10(月) 23:15:50 ID:Ef7v7/X.
調査兵団に入ったのは、合計21人でした。

うちの成績上位者がほとんど入ってるから、私としては少し、肩身が狭いかな?

……私の討伐数は、まだ0だけど、でも、応援しててね!

29: 2013/06/10(月) 23:18:32 ID:Ef7v7/X.
そっちには、ミーナやトーマス、他にも皆が行ったと訊いています。

……ミーナが可愛いからって、浮気したら許さないんだからね?

30: 2013/06/10(月) 23:22:02 ID:Ef7v7/X.
調査兵団にいるのは、正直大変。

あなたがいたら良いのに、っていっつも思ってる。

でも、寂しいからって、すぐそっちには行かないわよ?

先にそっちに行っちゃった罰として、たっぷり待っててもらうんだから!

私は、80歳まで生きてやるわよ!

32: 2013/06/10(月) 23:24:35 ID:Ef7v7/X.
でも、私がおばあさんになったら、あなたは気づかないかしら?

そんなこと、ないよね。私がおばあさんになっても、あなたは私を愛してるって、信じてる。

私も、あなたが大好きよ。


愛してる。

──────

33: 2013/06/10(月) 23:30:02 ID:Ef7v7/X.
調査兵団兵A「あれ?あんなところに訓練兵の女の子がいるじゃん」

調査兵団兵B「本当だ。なんかジャケット、やけにでかくない?」

調査兵団兵A「訓練兵のお嬢さん、どうしたの?調査兵団本部に何の用?」

ハンナ「あら、坊や達。訓練兵をナンパなんて、お暇なのね」

調査兵団兵B「(な、何でこんなババアが訓練兵なんだよ!!)」

34: 2013/06/10(月) 23:33:15 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「でも残念。私には、愛してる人がいるから、ナンパはお断りしてるの」

エレン「おいハンナ!会議始まるぞ、早くこいって!」

ハンナ「あ、ごめんごめんエレン!今行くわ!」

35: 2013/06/10(月) 23:38:21 ID:Ef7v7/X.
ハンナ「それじゃあバイバイ、坊や達!」

調査兵団兵A「…………今のって、エレン兵士長だよな」

調査兵団兵B「……何で訓練兵のババアがエレン兵士長と知り合いなんだよ………」


かなり大きい訓練兵のジャケットを靡かせ、左手の薬指には二つの指輪をして、彼女は今日も剣を振るう

Fin

37: 2013/06/10(月) 23:40:48 ID:Ef7v7/X.
お付きあいくださった方、ありがとうございました。

これでこの物語は終わりになります。

読んでくださった方に沢山の感謝を

引用: ハンナ「私がおばあさんになったら」