55: ◆OJ5hxfM1Hu2U 2014/05/11(日) 22:46:28.87 ID:13mgev/DO


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 憤怒の街最終決戦の時間軸で投下します
今から悪い憤怒Pに罰を与えっからなあ!

56: 2014/05/11(日) 22:48:30.25 ID:13mgev/DO

‐1‐

 コツ……コツ……コツ……その闇の中に、一定の間隔で響く足音を除いて生命の気配はない。
 壊れた非常灯が時折思い出したように点滅し、黒い人影を血まみれのコンクリート壁に映し出す。
 足元にも乾いた血溜まり。この非常階段にまで入り込んだカースによる殺戮の痕跡だ。

「上と下を挟まれたなら、どこへ逃げれば生き残れたんだろうな」

 通気性の悪いこの空間には、未だ氏の匂いが留まる。どれだけの人間が絶望の中に氏んだのか。彼は誰に言うでもなく呟いた。
 返答はない。当然だ。あるいは“彼女”がここにいれば何か気休めでも返してくれただろうか。

「…クソ野郎め、まさか逃げちゃいないだろうが」

 あの不愉快な男は、随分と岡崎泰葉に入れ込んでいるようだった。勝つにしろ負けるにしろ、最後まで見届けるつもりだろう。
 この地獄にあってようやく研ぎ澄まされつつある彼のヒーロー第六感もまた、オロシガネ吊り天井めいた邪悪な存在感を上階に察知している。
 これまでのヒーロー人生の中でも恐らく最強の敵との戦いを前に、不思議と黒衣Pの心は落ち着いていた。

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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



57: 2014/05/11(日) 22:52:08.76 ID:13mgev/DO
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 “憤怒の王”の誕生は最悪の事態であったが、街に残されていた人々にとっては同時に生存のチャンスでもあった。
 市街封鎖カース達が王の下に参じたことでハイ・テック機器が完全復旧し、さらには各勢力の突入も容易となったのだ。
 アイドルヒーロー同盟を始めとする突入勢力はテント村を設営、負傷者の治療や安全地域へのハイペース移送を本格化していた。
 ビルの谷間に見える巨大なドラゴンの姿が、脅威は去っていないと告げる。それでも、人々は希望を取り戻しつつあった。

「なんとか、生きて帰れそうですねっ」

 ストレッチャーに横たわり、洋子が言う。健康的な体も、今はあちこちに包帯が巻かれ痛々しい。

「…いろいろ台無しだけどな」

 傍らのパイプ椅子に座る黒衣Pの声は暗い。洋子が重傷を負う結果となってしまった事実が重苦しくのしかかる。
 アイドルヒーロー同盟のロゴが印刷されたテントの中に彼らは2人きりだ。
 洋子が著しく消耗している今、能力の制御に支障が出るやも知れぬ。周囲に何らかの危害を及ぼす可能性を考慮しての対応だ。

「…プロデューサーは、行かなくて大丈夫なんですか?」

「まだいいだろ。人員は足りてるし、俺はついでだ」

 黒衣Pには他の男性アイドルヒーローと協働でのテント村護衛命令が下っていたが、彼は何とも釈然としないものを感じていた。
 任務が更新された今、命令に従い人命を守るのがヒーローとしては正解なのだろう。だが、それで本当に良いのか?

58: 2014/05/11(日) 22:56:12.51 ID:13mgev/DO

 黒衣Pの脳裏に、あの男の邪悪な笑いが反響する。少女の憤怒を煽り殺戮に突き動かした危険存在。決して見逃すわけには……。

「…ふふっ。プロデューサー、怖い顔になってる」

「元からだ。…もう寝ろ、そうしたら俺も仕事に」

「本当は行きたいんですよね? “アイツ”を倒しに」

 不意打ち気味の一言に、黒衣Pの心は揺れた。彼女の能力故か、それとも分かりやすく顔に出ていたか。
 洋子の視線が遠赤外線めいて彼を炙る。やっぱりだ。見透かされている。抵抗は無意味と悟り、黒衣Pは口を開いた。

「……俺はあのクソ野郎をブッ潰したい。アイツをここで見逃せば、またどこかでこの街みたいな地獄を作るだろう」

 重傷の担当アイドルヒーローを置き去りにし、人道ミッション指令に背き、得体の知れぬ邪悪存在に挑む。言うまでもなく愚行だ。
 だが、悪と戦い倒すことは人命救助と並ぶヒーローの存在意義であり、黒衣Pに迷いはない。
 洋子もまた、止めるつもりはなかった。ヒーローの信じるべき正義は、ヒーロー自身の内にしかないのだから。

「止めませんよ、プロデューサー。……でも、生きて帰ってきて」

「当たり前だ、こんなところで氏ねるかよ。ヒーローとしてやるべきことは、まだ山ほどあるんだからな」

 洋子は満足げに微笑み、目を閉じた。程無くして、静かな寝息が聞こえてきた。

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59: 2014/05/11(日) 23:00:27.96 ID:13mgev/DO
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「オイオイオイ…どうなって…オイ! どういうことだこれはァ!?」

 想定外の事態だ。“憤怒の王”が敗れ、消失した。憤怒Pは転落防止手すりを怒りに任せて殴り、蹴り、引きちぎる。
 “憤怒の王”は彼の最高傑作だった。この街に溢れる憤怒のみならず、彼自身も持てる力を惜しみなく捧げた。
 そして“憤怒の王”はヒーローだの能力者だの、有象無象どもを相手に実際優勢だったのだ。

「……ハァーッ。…アイツだな…“怠惰”のガキ…クソッ、追いかけて確実に頃しとくべきだった」

 爆発的な怒りを短時間に吐き出し、憤怒Pは冷静さを取り戻した。失敗の原因も何となく想像がついた。
 思考を切り替えろ。今重要なのは、これからどうするかだ。
 泰葉は逃亡し、彼の下にはもう戻るまい。“憤怒の王”に捧げた力も戻らなかった。憤怒Pは今や龍の残滓に過ぎない。

(ヒーロー連中がどれだけ入り込んでるか知らねぇが、二軍相手でも囲まれたら現状ヤバイか。まずはどうにかトンズラ)

 BLAM! 重い銃声が響き、大質量の12.7mm重金属弾が憤怒Pの首から上を吹き飛ばした。
 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM! さらに銃声! 紅白二丁拳銃のフルオート射撃が憤怒Pの体を細切れにする。
 憤怒Pの破片はコンクリート屋上に散らばり、血の代わりに黒い流動体が広がった。

「立て、クソ野郎。楽に氏ねると思うなよ」

 ヒーローマスクの内側でくぐもったその声に油断はない。眼前の邪悪存在をこの程度では倒せないと分かっている。

60: 2014/05/11(日) 23:04:11.84 ID:13mgev/DO

 ……おお、見よ。黒い流動体が幾分か蒸発しながらも憤怒Pの残骸を中心としてズルズルと集まってゆくではないか。
 黒い流動体は徐々に盛り上がり、龍の頭と尾を備えた、ギーガー・エイリアンめいて異常痩身のシルエットを成した。

「ケケケ、もちろん氏ねるなんて思ってねぇさ。ただの人間じゃ、このティアマットは殺せん」

 邪龍ティアマットは嘲笑い、挑発的にシャドーボクシングして見せた。手足が長い。機敏な動きはまさに強者の風格。

「コレは別に最強形態だの最終形態だのってワケじゃねぇんだ。ただ、身の程知らずのテメェを叩きのめすのにちょうどイ」

 BLAMBLAMBLAM! ティアマットの言葉を遮り再度の銃声! だが、ティアマットは銃弾を全て指で摘み取っている!

「…オイオイ、話は最後まで聞くモンだぜ。スゴイ攻略ヒントとか喋るかも知れねぇだろ? ま、喋らないんだけどさ! ヒヒヒャヒャヒャヒャヒャ!」

「知ったことか。1発でも多くブチ込んで、1発でも多く殴るだけだ。…来いよ、トカゲ狂人!」

 エボニーコロモは二丁拳銃の弾倉を交換する。常人では目にも止まらぬ無駄のない動きだ。
 しかし、その僅かな隙さえティアマットには充分! エボニーコロモが銃を構えた時、既にティアマットはその懐に飛び込

「トゥオーッ!」

 鋭いシャウトと同時に繰り出された膝蹴りがティアマットの顎を痛烈に突き上げ、黒い流動体が飛散、不快な臭いと共に蒸発した!

61: 2014/05/11(日) 23:08:12.26 ID:13mgev/DO

‐2‐

『ッああああ!!?』

『はぁ……はぁ…あなたは…?』

『………来たんですか、愛梨さん』

『……愛、梨? …あれ…どこかで……?』

(……愛梨。十時愛梨。元トップアイドル。能力者。風。邪悪でない。強力な。管理下にない。要観察)

(…違う。これは重点警戒能力者リストに書いてあった、ただの表面的な事実)

『ハスター』

(…ハスター。知ってる。…ううん、私は知らない。知ってるのは、私の中の…)

『ヨーコっ! スゴイツイてるっ!』

『――触発されて! イア! ハスター! イア! クト――』

『――私たちの神様! ――火力――森とか焼――』

『私が引き出す! ヨーコが使う! …もうちょっとだけ、ガンバロ!』

『――るはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん』

『――いあ! くとぅぐあ!』

『――ッ、危ない!』

 洋子は咄嗟に手を突き出し――同時に、赤と黒の炎が激突した。

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62: 2014/05/11(日) 23:12:26.74 ID:13mgev/DO
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 洋子は目を開いた。背中に感じる振動。何らかの車両内だろうか。慌ただしく聞こえる声は3人分。いずれも女性のものだ。
 ゆっくりと頭を動かし、周囲を確認する。壁が近い。無機的だが清潔感がある。
 体に何か重いものが乗っている。あまり肌触りは良くない。防火用の不燃性繊維シートだ。

「姐さん、発火現象、鎮静化しました。心拍数、意識レベル正常です」

「シートそのまま。まだ完治してない以上、再度発火可能性重点」

 洋子は医療スタッフのやり取りを聞き流しながら、思い出したように腹部を手で撫でた。
 包帯はない。眠っている間に焼失したのだろう。そして、黒い炎を纏った拳を受けたそこは、未だ焼け爛れていた。
 普段ならば、この程度のダメージは一眠りもすれば完治しているはずだ。

(ちょっと張り切りすぎちゃったかな…もっと、鍛えないと…)

 あの戦いにおいて、洋子は完膚なきまでに打ちのめされ、ヒノタマの力さえも失われようとしていた。
 だが、ヒノタマとの対話を経て彼女は戦い続ける力を得たのだ。悍ましき黒い炎をも相殺できるほどの力を。鮮血のごとく艶やかな、赤い炎を。
 そのきっかけとなったのが、彼女を救った十時愛梨だった。

(もう一度愛梨ちゃんに会えれば、あの時私の体に何が起こったのか分かるかも。それに、あの赤い炎を自由に操れるようになれば…!)

 新たな決意。しかし、今はその時ではない。洋子は再び目を閉じ、温泉めいた穏やかな眠りに沈んでいった。

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63: 2014/05/11(日) 23:16:06.04 ID:13mgev/DO
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「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! やったな! やりやがったな人間! ヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 狂笑するティアマット。その体は無惨に損なわれ、頭から胸部、そして右腕が残るのみだ。
 “憤怒の王”に力を捧げて弱体化していなければ、こうなるよりももっと早く、愚かなヒーローをクズ肉に変えていただろう。
 ティアマットは決断的殺意と共に右腕のみで這い進む。曲がりなりにも龍たる彼を追い詰めた存在、今ここで殺さねば。

「…クソッ…アバッ…まだだ畜生」

 血を吐き、呻くエボニーコロモ。ヒーロースーツは著しく破損し、両脚は曲がるはずのない方向へ曲がっている。
 人狼カース戦のダメージがなければ、反撃を受ける前にエボニー・カミナリ・キックがティアマットを破壊し尽くしていただろう。
 エボニーコロモは左腕の力だけで後ずさりながら、右手の銃を発砲する。敵の再生も限界のはずだ。……だが、当たらない。

「おとなしくしてりゃ、カースドヒューマンにしてコキ使ってやってもイイと思ってたが、もうダメだ。やり過ぎたんだ、テメェは」

「生憎、人生夢と希望で満ち溢れててな、そんなのはこっちから願い下げだ。…ヒーロー舐めてんじゃねえぞ」

 発砲。大きく逸れる。狙いが定まらない。ティアマットは前進する。

64: 2014/05/11(日) 23:20:11.83 ID:13mgev/DO

 エボニーコロモの背中が何かに当たった。先ほど彼がエントリーした非常口のドアだ。これ以上は下がれぬ。
 発砲……できない。残弾なし。邪龍は勝利を確信し、表情を醜悪に歪めて笑った。

「…ケケケ。夢だの希望だのが潰える瞬間ってのはイイ気分だなぁ?」

 ティアマットは腕を伸ばし、エボニーコロモの喉元を掴む。残る力でへし折ってやれば、終わりだ。
 エボニーコロモは銃を捨て、ティアマットの腕にチョップを打ち込む。キレがない。もはや無駄な抵抗なのか? ……否!

「アッ」

 その悲鳴ですらない声が最後だった。ティアマットの腕が崩れ、次いで胸部、そして頭が形を失った。
 再び黒い流動体と化したティアマットは、シュウシュウと不快な臭いの煙を上げて蒸発してゆく。
 黒衣Pは半壊した黒子ヒーローマスクを脱ぎ捨て、空を見上げた。彼に最後の力を与え、ティアマットを蝕んで劣化させていた雨は、既に止んでいる。

「終わったか……どれだけ氏んで、どれだけ助けられたか…数えるのはヒーローの仕事じゃない。それよりも、な」

 夕日を眺めながら勝利を噛み締めるのは正義のヒーローの特権であり、意識を失うまでの数秒間、彼はその特権を誰にも気兼ねなく行使した。

65: 2014/05/11(日) 23:23:32.38 ID:13mgev/DO

 ――未だ煙を上げ続ける黒い流動体から、6本足の黒いトカゲめいた小さな物体が這い出した。
 ――それは夕日に焼かれながらも屋上をひた走り、排水パイプに飛び込み、誰に気付かれることもなく姿を消した。

【終わり】

66: 2014/05/11(日) 23:25:19.52 ID:13mgev/DO
斉藤洋子(ヒーロー名:バーニングダンサー)

職業
 一般人 → アイドルヒーロー

属性
 等身大変身ヒーロー

能力
 『ヒノタマ』による身体強化および各種ワザの行使

詳細
 朱色の炎が形を成した、踊り子ヒーロー装束を纏うヒーロー。肌色の部分が多く、おまけに変身すると衣服が焼失してしまう。
 パワーは比較的抑えめだが、スピードと精度、そして聖炎の力で戦う短期決戦型特殊アタッカー。
 主なワザは以下の通り。

◆カエン・イリュージョン
 自らの精神を炎の幻覚として対象の精神に直接ぶつけ、焼く。アイドルヒーローとして鍛練を重ねて以降、火力の調整も利く。
 精神を直接ぶつけるためカウンターを受ける危険性もあるが、非常に使い勝手が良い。
 かつて洋子が暗黒ピ工口となった時に発現し、その後ヒノタマの覚醒で変質したもの。

◆カエン索敵
 精神攻撃の前段階から派生したカエン・イリュージョンの亜種。精神空間内で対象を感知する。
 遮蔽物を無視でき、カースなど特定の感情が強い対象はより正確に形状を把握できる。
 人口密集地では精度が落ちるのでフィルタリング重点。

◆バーニングダンス
 聖炎を纏った手足から繰り出す、舞踊めいた格闘術。聖炎を扇や剣の形に変化させることもできる。
 下級カースならば多数相手でも問題にならないが、憤怒の街では怒りに身を任せた泰葉のゴリ押しに破られた。

※UNKNOWN※
 憤怒の街にて、十時愛梨との接触を引き金にヒノタマに何らかの変化があった模様。
 聖炎の色が朱色から赤に変わっているが、真価を発揮するには至っておらず詳細不明。

67: 2014/05/11(日) 23:29:50.60 ID:13mgev/DO
以上です
もっと指と頭が早ければいいタイミングで投下できただろうに
そして>>66、@設定付け忘れてる

・愛梨ちゃんと泰葉ちゃん、名前だけ借りました
・一部part7からそのまま流用してます、ごめんなさい
・憤怒P討伐! …ま、そんなワケないよね
・せっかく愛梨ちゃんとの接触があったのでパワーアップフラグ

68: 2014/05/11(日) 23:36:00.27 ID:/zQ6vMPT0
乙。
相変わらずニンジャスレイヤー的アトモスフィアを感じる文章
しかし憤怒P、やはり簡単にはくたばらないか。
次は何をやらかしてくれるんでしょうね(ゲス顔)



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10