83: ◆AZRIyTG9aM 2014/05/15(木) 00:09:41.21 ID:Jq8DlX090


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 菜々さんの誕生日だ!投下!
なんかシリアスすぎてお祝いじゃなくなってしまったことを最初から謝罪させていただきます

84: 2014/05/15(木) 00:10:29.23 ID:Jq8DlX090
―――あとどれくらい 切なくなれば…

―――あなたの声が 聞こえるかしら…

暗いドームの中に、一筋の光が降りてきた。

光の中、半透明な空中階段を下ってくる人影。

『碧いうさぎ』を歌いながら、彼女は自らの能力によって作った階段を下る。

それは切ない愛の歌。思いを込めて、彼女は歌う。

一人では氏んでしまうくらい寂しいから、愛しのあなたに抱きしめて欲しいと歌う。

階段を下り続け、足元に蒼いサイリウムの海が近づいてくる。

歌い終えると同時にステージに足が触れる。

観客の拍手と歓声に包まれ、幸せそうに菜々は微笑んだ。
----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



85: 2014/05/15(木) 00:11:41.98 ID:Jq8DlX090
菜々「皆さん、今日のライブに来てくれて、ありがとうございます!」

菜々「ナナの誕生日記念ライブ!…あっ、でも18歳じゃないですよ!ナナは永遠の17歳ですから!」

「にじゅ…「「「「菜々さんマジ永遠の17歳!!」」」」

観客が菜々のお決まりネタにそれぞれ反応を見せる。

菜々「…この一年も皆さんの応援のおかげで、アイドルとしても、ヒーローとしても活躍できました」

菜々「そんなアイドルヒーロー、ラビッツムーンとして活動できることがナナの喜びです!では次の曲はナナのデビュー曲!メルヘンデビュー!」

「「「「ウオオオオオオオオオオ!!」」」」

観客席に花が咲き誇る。舞台の影で夕美が手をヒラヒラ振っているのを一瞬だけ菜々はチラリとみると、マイクを強く握った。

菜々「ウサミンパワーでメルヘンチェーンジ!夢と希望を両耳に引っ提げ、ナナ、がんばっちゃいまーす!ぶいっ♪」

明るく電波なミュージックが会場を桃色に染め上げる。

「「「「「「「ミミミン!ミミミン!ウーサミン!」」」」」」」

これが菜々のステージ。多くのファンに愛されながら、コールに包まれる。

あの日からコールの中の故郷の名前に胸を痛めるけれど…彼女は笑顔で歌い続ける。

『ウサミン星人』という名前にのしかかる重圧は、自分の行いで起きた故郷の崩壊を考えてしまう菜々の心にのしかかる。

でも今は忘れないといけない。アイドルは笑顔が一番ステキな職業なのだ。

菜々(今のナナは地球人の菜々…何も知らない普通の菜々…!笑うのが一番幸せなアイドルの菜々!!)

演技ではない。心の底からの笑顔。菜々はしっかりと心の底から笑えていた。

86: 2014/05/15(木) 00:12:51.76 ID:Jq8DlX090
菜々「ウサウサウーサ、ウーサミーン!!」

コールと共に菜々の歌が響く。

コミカルで電波なミュージックが空気を振動させる。

不意に、間奏の中で菜々はすぅ、と息を吸って言葉を放った。

菜々「…ファンの皆は、ナナの事を…ずっと好きでいてくれますか?」

「「「「「「「…ウォォォォォォォォォ!!」」」」」」

これにはファンも一瞬は戸惑ったが、すぐに歓声が返事として帰ってくる。

誕生日ライブ限定の演出だろう。そのくらいの認識だ。

袖の方でプロデューサーが慌てていた気がするが…今は気にしない事にした。

今はこのステージで、この光景の中心に居たいから。

まだライブが終わるまで、ナナは菜々でいたかった。

87: 2014/05/15(木) 00:15:44.38 ID:Jq8DlX090
――

菜々「プロデューサーさん!ライブ、大成功でしたね!」

873P「いやーあのセリフはびっくりしたけど…まぁいいか、ファンにもウケたし」

夕美「うん、ナナちゃん輝いてたよっ!」

菜々「えへへ、ありがとうございます…」

夕美「…ナナちゃん、ちょっといつもより元気ない?」

菜々「そ、そうですかねぇ~…?」

ちょっとだけいつもよりもフラフラとしている。

873P「どうした?疲れているなら休め。…アレだ、体力もつのは一時間なんだろ?」

菜々「い、今はもっと持ちますよ!?…でもお言葉に甘えちゃいます…休みますね…」

873P「…はぁ」

プロデューサーはため息を吐いたが、夕美がそれを菜々の視界に入らないように割り込んだ。

夕美「本当に…大丈夫?」

菜々「…大丈夫ですよ、夕美ちゃん。でも…ちょっと一人にしてもらえますか…?」

夕美「そ、そう…わかった。…無理しないでね」

その背中を名残惜しげに夕美が見送る。この後夕美には撮影の予定があった。

88: 2014/05/15(木) 00:17:17.79 ID:Jq8DlX090
扉が閉じ、廊下を歩く音が聞こえなくなったところで夕美はプロデューサーを叱る。

夕美「…プロデューサーさん!女の子の前で溜息なんて、デリカシーが無いよっ!」

873P「あぁ、すまん…菜々さ…菜々は今日以降暫く実家に帰るみたいでな、同盟に何か言われないか不安で仕方ないんだ」

夕美「!?」

873P「…ん?知らなかったのか?」

夕美「…@■○★×▽▲☆☆▼◎●…!?」

873P「どうした夕美、言語が変だぞ!?」

夕美「あ…ごめんなさい、びっくりしちゃって…!」

873P「何語だったんだ、今の…」

夕美は完全に動揺する。実家とは恐らくウサミン星の事。ショックだった。それと同時に背中に汗が流れ始める。

873P「まぁ菜々さ…菜々は最近どうも調子悪いみたいだし、少しの休みくらいではそう文句は言われないとおもうがなぁ…さて、テレビ局に行くぞ」

夕美「は、はーい!ぱぱっと終わらせます!絶対に!」

873P「お、やる気あるみたいだな!」

夕美「ガンバリマス!」

89: 2014/05/15(木) 00:18:43.15 ID:Jq8DlX090


菜々「…」

夕焼けに染まる道を歩き、考えるのは故郷の事。

アイドル仲間もファンも捨て、故郷に帰っても…故郷を崩壊させた自分に何ができるだろうか。

だがこのまま故郷に帰らず、彼の思いを踏みにじり…故郷への罪を背負って生き続けるのは辛い。

行くも地獄。行かずも地獄。思いは眠るたびに頭の中でグルグル回る。

知らなければ幸せだったと、自分の中の無責任な自分がぼやく。

一晩でグルグル、二晩でグルグルグル、三晩でグルグルグルグル…

時間と共に重圧は増えていく。でも彼女は動けない。人気アイドルヒーローとして、滅多に休日は無い事も関係する。

アイドルヒーローは挫けない。弱音を吐かない。そしていつもみんなを安心させるために笑う。

いつでも絶望しないその強さに人々は安心し、憧れ、夢を見る事が出来る。アイドルもヒーローも夢を見せることが出来る。

90: 2014/05/15(木) 00:20:24.46 ID:Jq8DlX090
だから彼女が悩むのは眠る時と、一人の時。安部菜々でもラビッツムーンでもなく、一人のウサミン星人、ナナとして考える。

…決められないのだ。どちらも菜々のアイデンティティ。どちらも菜々の大切な場所。生まれ育った故郷と、長く住み続けた第二の故郷。

夢だったのだ、みんなを笑顔にするアイドルになる事が。自分の夢に忠実に生きたのは、何年振りの事だっただろう。

諦めていたのだ、アイドルになることを。ナナはアイドルになるにはウサミン星人基準でも歳を重ねすぎたと思っていたから。

バイトの合間に見かけた地方アイドルのステージ。ただのバックダンサーの一人でしかない夕美に、何故か惹かれた。

バックダンサーではあったが、踊る夕美の笑顔は心に響くものがあった。…彼女のように笑って踊りたかった。

その後、偶然が重なり夕美と共闘し、お互いの事を知り…その後スカウトされた。

彼女が居なければ、自分も彼女もアイドルヒーローになることも無く生活していただろう。スカウト云々ではなく、アイドルになろうという意思の時点で。

ずっと菜々は孤独だった。ウサミン星人は不老長寿であるために、何度も各地を転々とし、別れを繰り返した。

うさぎは寂しいと氏んでしまうなんて、実は嘘らしいけれど。でも菜々は寂しかったから。

誰かを笑顔にする仕事をしたかった。皆に愛され皆を愛し、笑顔を振りまき笑顔が返ってくる。そんな仕事が。

だから今、大人気アイドルヒーロー・ラビッツムーンとして、大変ではあるが幸せな生活を送っていた。…筈だった。

91: 2014/05/15(木) 00:22:55.43 ID:Jq8DlX090
記憶の中、白黒のテレビに映るアイドル達は…菜々の憧れであり夢であり希望だった。

だからある日思いついたように本星にこの星の娯楽の情報を持ち帰った。

何故今まで思いつかなかったのだろう、とその時は喜びながら思っていた。

今までで一番量の多いデータ。音楽、絵、小説、映画、アニメや漫画…持ち帰れる限り持ち込んだ。

娯楽に秘められていたのは…個性、自由、文化。ウサミン星に今まで無かったもの。

その行動がまさか革命に繋がるなんて思っても居なかったのだ。

菜々(ウサミンPさん…ナナは分からないんです、自分のした事が許されるのか…)

菜々(ファンのみんなが菜々の歌で笑顔になる。街の皆が菜々の活躍で笑顔になる。それが幸せでした。でもナナは、故郷の平和を…)

平和が壊れ、争いを起こすようになった故郷の民。地球に来て犯罪に手を出す者も少なくない。

ナナが奪ったのは故郷の平和だけではない。地球に限らず他の星の人々の未来や希望さえ奪ったはずだ。

管理社会であったが平和だった昔のウサミン星と、自由ではあるが争いが絶えないウサミン星、どちらがよかったのだろう。

結論が出せない。…でも、今日までに結論を出すと決めていた。

あまりにも彼を待たせ続けた。だから、今年に入ってから菜々が初めて地球に来た日付までには決めると決めていた。

菜々「ナナはウサミン星に帰って…許されないなら、罰を…。許されたなら、償いを…」

どちらにしろ…ナナはやはり帰らなくてはならない。地球に帰れなくても。

…いや、帰れる可能性なんて無いに等しいかもしれない。

どちらも取れない二択。でも心はもう限界だった。

何もかも諦めたように夕日を見つめながら、電話…いや、同盟の管理下ではない通信機を手に取った。

菜々「…もしもし、ナナです。突然の連絡ですみません…今から行ってもいいでしょうか」

92: 2014/05/15(木) 00:25:09.04 ID:Jq8DlX090
――

連絡通りの路地裏に来るとテレポーターが起動し、ナナは地上からウサミンPの宇宙船へ再び乗り込んだ。

ウサミンP「…ナナ様、お久しぶりです」

菜々「…お久しぶりです。まずは結論を出すまでにこれほどの時間がかかったことを謝罪させてください」

ナナは深々と頭を下げる。その姿にウサミンPは心を痛めた。

これほど時間がかかる選択肢を提示したのは己なのだから。

ウサミンP「…ナナ様、どうか頭を上げてください。貴方が謝る事は無いのです」

菜々「いえ、ナナのせいでこんなに時間がかかってしまったんです。謝るのは当然です」

菜々の結論に時間がかかったのには彼女の職の都合もあると、ウサミンPは知っている。

だが頭を上げても俯き気味のナナと視線は交わることは無かった。

その後は沈黙。コツコツと、廊下に足音が響く。

ウサミンP「こちらへ…」

一室に案内され、椅子に座る。テーブルを挟んで向かい合った。

…身長146cmと2mの二人のウサミン星人。ナナは擬態を解き、つやつやとして真っ白なその姿を晒した。

93: 2014/05/15(木) 00:27:46.79 ID:Jq8DlX090
菜々「…結論を出しました。ナナは…ウサミン星へ帰ります」

ウサミンP「…ではナナ様は、ウサミン星のグレートマザーに…」

菜々「いえ…ナナは、本当に自分がグレートマザーなんて言われる程の器なのか、わからないんです」

ナナは彼と比較すれば本当に小さなウサミン星人だ。長い耳が少し垂れてる。

自分はただ調査結果を持ち帰っただけであり、称えられる程の事をした実感もない。だから、ナナは怯えている。

だがすぐに耳を立て、その白目が無い瞳を彼に真っ直ぐ向けた。

菜々「だから、ナナがウサミン星に行ってどうするかは…向こうで決めさせてください…それと」

持っていたバッグから、スケジュール帳を取り出した。

菜々「アイドルヒーロー…今日を境にしばらく休養をとることにしました。…あの歌姫の子の予定もあるでしょうし、すぐに行けるとは思っていませんけど…しばらくはこちらで生活させてください」

一か月の休養でもかなり渋られた。帰って来なかったら事務所にきっと迷惑をかけるだろう…考えると胸がズキズキと痛んだ。

ウサミンP「ええ、ナナ様が過ごす生活スペースは用意してあります。…ただ」

菜々「…ただ?」

94: 2014/05/15(木) 00:29:27.15 ID:Jq8DlX090
ウィーン

菜々「あれ、ドアが…?」

『テーンテーン!』

ほうじょーさん「ふふっ♪」ウィィィィィン

自動ドアが開き、ハンテンバに乗ったほうじょーさんが足元を通り過ぎていった。

こにか「おねー!おねー!」シュタタタタタタタ

こにかが全力でほうじょーさんを追いかけ、足元を駆け抜けていく。

かみゃ「んなー!」ダダダダダダ

かみゃがこにかを止めようと追いかけ、また足元を駆け抜ける。

きらきら「にょわー☆」ドドドドドドドド

そしてそれを楽しい鬼ごっこか何かと勘違いしたきらきらが追いかける。

ぐんそー「まいしすたー!」ヒュイーン

そのきらきらをラジコン飛行機のコントローラーを操作しながら乗っているぐんそーが追跡する。

まきのん「…きょーみぶかいな」ジー…

そしてまきのんは初めて見るメスのウサミン星人…ナナを扉の外からじーっと見ていた。

思わず地球人の擬態を再び行うと、驚いた後に眼鏡をクイッとさせて再び「きょーみぶかいな」と呟いた。

菜々「あ、あの…この子達は?」

ウサミンP「…ここに住み着いてる謎の生物です。外に捨てる事も出来ず、ずっとここに…」

シリアスムードを一気に壊したぷちどる。恐らくウサミン星に行く時も連れていくしかないだろう。

菜々「も、もしかしてウサミン星に一緒に行くんですか!?こんな子達が!?」

ウサミンP「そうなってしまいますが…恐らく大丈夫でしょう、結構丈夫なのはいろいろ見て知りましたし…」

菜々「そ、そうですか…」

後ろを見れば何やらお互いにおもちゃを使ったり倒れた子に水をかけたり噛みついたりして遊んで(?)いる。

菜々(…大丈夫なのかな)

菜々は若干ウサミン星に行った後の事が不安になった。

95: 2014/05/15(木) 00:31:17.89 ID:Jq8DlX090
――夜

ウサミンPの宇宙船に、緑色の光が意思を持つように侵入した。

夕美「…」

??「みみみん…!?」

人の姿をとると、腕に抱えていた小さな生物も目を白黒させた状態で出現した。

夕美「あっ…肉体の再構成を利用して移動するのはちょっと怖かったかな?ごめんね?」

??「みーん…」

夕美は仕事を終わらせると、女子寮に植物と自分のエネルギーで影武者を作り菜々を探していた。

ステルスで隠されているこの宇宙船を探すのに何時間もかかってしまったが、ついにたどり着いた。

夕美(ナナちゃんの気配を追ってみたけど…やっぱりここなんだね)

??「うっさみーん!」

夕美「よしよし…ナナミンちゃん、良い子だからちょっとだけ静かにしていてね?」

ナナミン「ぶいっ☆」(小声)

菜々がこの船内に居ることを、瞳を閉じて気配として確認する。

夕美(本当に…帰っちゃうんだ、ウサミン星に)

夕美はここまで来たのにはちゃんと理由がある。一緒に行って、ウサミン星と菜々がどう生きていくのか見届けたいのだ。

夕美(あのウサミン星人も言ってたもんね、だから…最後まで見届けるよっ!)

…恐らく、そこまでしろという意味は全く含まれていない筈だ。

96: 2014/05/15(木) 00:32:56.63 ID:Jq8DlX090
さっそく具体的な位置を割り出そうともう一度瞳を閉じる。

菜々「あれぇ…夕美ちゃん?…夜更かしはだめだよぉ…」スタスタ

夕美「!」ビクッ

ナナミン「みみんっ!?」

だがパジャマを着た菜々が丁度真横から出て来て通り過ぎていった。

菜々「…ん?……あれぇ!?ここ女子寮じゃなかった筈ですよねっ!?」

夕美「ナナちゃん寝ぼけてたの!?」

97: 2014/05/15(木) 00:34:18.73 ID:Jq8DlX090
菜々の住むことになった部屋に入り、二人はソファに腰を掛ける。

菜々「…そうでしたか、ナナの事を気にして…ここまで来ちゃったんですね」

薄れていた記憶の中、真実を告げられたあの時の記憶の断片…意識を失う寸前の記憶に夕美が居たことをはっきり思いだした。

…彼女はいつだって菜々の事を心配しているのだ。依存的ともいえる程に。

夕美「…ナナちゃんを止めようとは思ってないの。ただ…あれが最後の別れだなんて嫌だよっ!私以外の皆にも本当の事を言わなかったでしょ!」

菜々「…すみません。でも引退を宣言するより、行方不明のほうがまだ…同盟からの減点も少ないと思って…」

涙目で抱き着く夕美に、申し訳なさそうに菜々は俯く。

夕美「…ナナちゃん、暗い顔しないでよ…どんな理由でも故郷に戻るんでしょ?それにウサミン星の皆も、絶対ナナちゃんの笑顔を好きになってくれるよ?」

98: 2014/05/15(木) 00:37:26.38 ID:Jq8DlX090
菜々「アイドルと、これからは違うんですよ…ナナは償いをしなきゃいけないんです。そんなナナが笑顔なんて…」

夕美「…ナナちゃんのバカっ!思い詰めすぎちゃダメだよ…!」

菜々「え?」

夕美「ナナちゃんが今までやろうとしたことは…やりたかった事は!みんなを笑顔にする事でしょ!?」

菜々「でも…っ!ナナは…!!」

夕美「私は、ナナちゃんのした事が正しいのかなんて、分からないけど…!ナナちゃんが笑顔になれない世界で、みんなが笑顔になれるわけないよ!」

菜々「…それは、そうかもしれませんけど」

夕美「そんなの嫌だよ…離れ離れになるのが嫌だとか、ナナちゃんが居ない地球なんて滅べばいいとか、ワガママ言わないから…!せめてナナちゃんに幸せになってほしいのっ…!」

菜々「…だって!だって!ナナは、ナナは…っ…!ウサミン星を滅茶苦茶にした犯人で…!ナナのせいでたくさんの人がぁ…!」

菜々も夕美もぼろぼろ涙を流しながら抱きしめ合った。

菜々「ナナが幸せになっていいんですか…!?こんな女が、幸せになっていいんですか…!?」

99: 2014/05/15(木) 00:39:00.31 ID:Jq8DlX090
夕美「違うよ…ナナちゃんが幸せになれないウサミン星なんて…そんなの駄目だよ…」

夕美の声のトーンがだんだん落ちていく。

菜々「はっ!?ス…ストーップ!夕美ちゃんそれ以上は駄目です!!」

ナナミン「ミミーン!ミンミン!」

夕美「…あっ…うん、ごめんね…」

菜々(夕美ちゃんの入っちゃいけないスイッチが入る所でした、危ない危ない…)

菜々「…落ち着きましたか?…なんて、そんな事言ってるナナも泣いちゃいましたけどね」

夕美「うん、私も思い詰めちゃった。おそろいだねっ」

菜々(それはおそろいって喜んでいいんでしょうか)

ナナミン「ぶいっ☆」

100: 2014/05/15(木) 00:40:39.98 ID:Jq8DlX090
菜々「…ところで、さっきから気になってはいたんですけど…この子はなんですか?」

夕美「ナナミンちゃんは、私からの誕生日プレゼントだよ?」

ナナミン「うーさみーん!」

菜々「えっ」

夕美「この子…というかこの種族(?)はね、外見が似てる人と魂の気配がそっくりなんだよ」

菜々「そうなんですか…よくナナには分かりませんけど…」

夕美は優しくナナミンを菜々に抱かせる。

ナナミン「みみみん!」

夕美「だからね、一度見かけた時からずっと探していたんだよ…ナナちゃんそっくりなこの子、ナナちゃんも大事にしてくれると思って」

ナナミン「ななー!」

さっき見かけた小さな子達と同じ種族であろうナナミンという名前の小人は、笑顔でぴょこぴょこと跳ねた。

菜々「そっか…ふふ、ナナミンちゃん…」

夕美「ふふっ、ナナちゃんやっと笑ってくれたねっ!ナナミンちゃんに癒し効果でもあったのかな…?」

菜々の微笑みに夕美も笑顔になる。先程まで泣いていたとは思えない程の、いつもの花のような笑顔だ。

101: 2014/05/15(木) 00:43:16.40 ID:Jq8DlX090
菜々「…ふぅ」

夕美「ナナちゃん?」

菜々「ナナ、ちょっとだけ悲観的になりすぎていたのかもしれません…」

ナナミンの頭を撫でながら、菜々は窓の外を見た。夜の街はまるで地上が星の海のように煌めいている。

菜々「…これから見るウサミン星は、ナナの知っているウサミン星と全く違うウサミン星の筈です。ナナのやった事で、たくさんの人が犠牲になって生まれ変わったウサミン星です」

菜々「きっとウサミン星のみんながナナの事を許しても、ナナは絶対に自分を許せない。…それでも、ナナはこれからを生きる人々を笑顔にしたい」

この景色は、菜々がみんなと共に守ってきたもの。菜々が愛した地球の光景。

菜々「ナナは神様じゃないから、全部を救う事なんて難しいかもしれません。でも…資格が、才能が、ナナにあるかなんて分かりませんけど…ナナはやっぱり笑顔が好きだから…!故郷のみんなにも笑顔になってほしいから…!」

地球の娯楽を持ち帰ったのも、みんなの笑顔が見たかったから。その気持ちはずっと変わっていない。

菜々「…そうですよね、みんなのリーダーになる人が笑えないなんて…寂しすぎますよね。なら、ナナはまたみんなと笑いたい…!」

夕美「うん!それでこそナナちゃんだよ♪」

ナナミン「みみみん♪」

102: 2014/05/15(木) 00:46:14.68 ID:Jq8DlX090
でも菜々はまだ不安だった。一瞬だけ夕美から視線を逸らし、再び真っ直ぐ見つめる。

菜々「あの…夕美ちゃん、ナナのお願いを一個だけ聞いてくれますか?」

夕美「お願い?」

夕美の手を菜々は握る。夕美の好意を知っていて、この言葉を言うのだ。きっと前世は悪女だったのだろうと、心の中で皮肉った。

それは彼女の好意を利用したとも言える、意地悪なお願いなのだから…誰かが知ったら卑怯者と後ろ指をさされるに違いない。

菜々「もしナナがウサミン星から帰って来れなくなっても…ナナの大好きなこの星を…地球のみんなを守ってくれますか…?」

夕美「…ナナちゃん」

夕美の使命や立場を考えれば、この約束はしてはいけないものだ。

いつかこの星が植物を滅ぼしそうになれば、夕美はこの星の文明をリセットさせるという使命があるのだから。

菜々と約束してしまえば、きっと夕美はもう二度とこの星を滅ぼせない。もしかしたら菜々が氏んでもこの約束に縛られ続けるかもしれない。

菜々(でも夕美ちゃんは、きっと約束してしまう。…ほら夕美ちゃん、ナナはこ~んなに悪い女なんですよ…?)

夕美「…うん、約束するよ。ナナちゃんが居なくなっても、ナナちゃんの大切なこの星を…絶対に守るよ」

夕美の愛を菜々は知っている。菜々の思いを夕美は愛している。こんな自分の卑怯さを恥じる菜々も、夕美は愛していた。

彼女が愛するこの星を、たくさんの友達がいるこの星を、約束が無くても夕美はもうきっと滅ぼすことは難しいというのに。

菜々「…ありがとう、夕美ちゃん」

夕美「だから私とも約束して?…夢と希望を両耳から無くしちゃダメだよ?」

ナナミン「ミン!」

菜々「…ふふっ、わかってますよ」

菜々(…まだ、都合のいい未来を夢見てもいいですよね?ウサミン星も夕美ちゃんも、ナナも幸せになれる未来を…)

どうかその夢が現実になりますようにと、幼い少女のような心で菜々は祈った。

103: 2014/05/15(木) 00:47:24.60 ID:Jq8DlX090
オマケ・影武者ユミミン

・ヮ・「いべんと、ちゃんとせいこうさせなきゃー」

拓海「お、今日のイベントで一緒の仕事なのか。よろしく頼むぜ」

・ヮ・「たくみちゃん、よろしくねー」

拓海「…ん?」

・ヮ・「どーしたです?」

拓海「い、いや何でもない、気のせいだな!」

・ヮ・「なーんだ、びっくりしちゃったー!」

スタッフ「夕美さんスタンバイお願いしまーす!」

・ヮ・「はーい、いまいきまーす」

拓海(…あそこまで口を開けっ放しにする奴だったか…?)

※イベントは無事に成功したようです

104: 2014/05/15(木) 00:48:53.36 ID:Jq8DlX090
ナナミン
安部菜々によく似たぷちどる。鳴き声は「みみみん!」「ぶいっ」「うっさみーん」「ぴりぴり~ん」等。割と豊富。
みんなを笑顔にすることが大好き。耳が良く、さらに頭のリボンから情報を載せた電波や、電気を発することが出来る。
ちなみに白い体のウサミン星人モードにもなれるらしい。

影武者ユミミン
夕美が毎日世話をしている植物と夕美のエネルギーで作り上げた影武者。致命的な欠陥として基本的に表情が・ヮ・だがそれ以外は大体同じ。
今回のウサミン星突撃の間に身代わりになってもらう事になった。
歌って踊れて変身できて植物も操作できるが飛ぶことだけが出来なくなっている。

105: 2014/05/15(木) 00:51:35.31 ID:Jq8DlX090
以上です。ぷちどるの癒しを間に入れないと心が折れる。
イベントの時系列は方舟より前か後かとかウサミンPの宇宙船の他の搭乗者の数とかは一応ぼかしておきました。
菜々さんマジでごめんなさい!こんなの誕生日祝いじゃないわ!ただの誕生日記念よ!
…そして今まで書いてきた話の中で一番濃厚でドロドロな百合を書いた気がする。どうしてこうなっちゃったんだろうねー(棒)

情報
・ウサミン星イベントはシェアワ時系列で5月15日以降一か月以内の話になる模様
・菜々が決断しました。一か月ほどアイドルヒーロー業を休養し、ウサミン星へ帰還します。夕美も同行します。
・夕美は影武者を用意したので恐らくそれなりにはばれない…はず。

106: 2014/05/15(木) 00:58:16.72 ID:PogtX7nj0
乙ー

ウサミン星突撃か
果たしてどうなるやら

そして、ウサミンPが胃痛引き起こさないか心配に

ナナミンかわいいな。他のプチ達との絡みもどうなるやら

そして、たくみん気づいてーw

107: 2014/05/15(木) 01:23:31.31 ID:C53O8Kgu0
乙。
遂にか……色々複雑なもんだから、先が凄い気になるぜ



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10