249: ◆6osdZ663So 2014/06/09(月) 23:32:10.24 ID:Pbo6hGJyo
250: 2014/06/09(月) 23:32:40.22 ID:Pbo6hGJyo
――
――
251: 2014/06/09(月) 23:33:14.43 ID:Pbo6hGJyo
「君は欲が深い」
テーブルを挟んで対面に座るその男が、彼女に言った。
----------------------------------------
それは、なんでもないようなとある日のこと。
それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。
~中略~
「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
252: 2014/06/09(月) 23:33:44.07 ID:Pbo6hGJyo
「今持ってる物では満足できず、常に今以上のものを求めているのだろう?」
「世界に新しい刺激を求め続ける。そのスタンスに僕は共感したのさ」
男の持つ深緑の瞳が、彼女を真っ直ぐと見つめる。
まるで彼女の心のうちを見透かすように、その男は語る。
「あなたなんかと、一緒にしないで欲しかったわ。」
男の言葉に、彼女は即座に言い返す。
初対面から図々しい要求をしてきた男に、自身の心の内を見抜いたような言葉を吐かれて不快であったからだ。
「……けれど、まあ。このまま元の生活に戻るのも確かにつまらないことだわ。」
不快ではあったが、
しかしそれ故に……彼女は男がもたらすかもしれない新たな刺激に興味を持った。
「だから、”条件”付で、あなたに協力してあげてもいいわよ。」
興味本位。この男の企みに付き合うのも、退屈な今よりは少しはマシかもしれない。
「そうか、では、”条件”を聞こうか。」
253: 2014/06/09(月) 23:34:35.94 ID:Pbo6hGJyo
「私を退屈させないで」
それだけ。
それだけが、彼女が”今”ここに居る理由。
254: 2014/06/09(月) 23:35:08.88 ID:Pbo6hGJyo
――
さくら「ぱんぱかぱーんっ!」
芽衣子「っと言う訳でっ!!」
さくら・芽衣子「お誕生日おめでとうっ!!チナミさんっ(ちゃんっ)!」
チナミ「……」
さくら・芽衣子「……」
チナミ「……」
さくら・芽衣子「……」
チナミ「……えっ?」
さくら・芽衣子「えっ?」
さくら(め、芽衣子さん!チナミさん何故か困惑してますよぉっ!) ヒソヒソ
芽衣子(ど、どうしようっ!この反応は流石に予想外っ!!) ヒソヒソ
さくら(はっ!!もしかして誕生日間違えてましたかっ!?!」
芽衣子「えっ、それは不味いよさくらちゃん!」
チナミ「思いっきり聞こえてるわよ……て言うか最後まで声潜めなさいよ」
255: 2014/06/09(月) 23:35:40.70 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「そんな事より、どうしてあなた達が私の誕生日を知ってるのかしら?」
芽衣子「どうしてって」
さくら「サクライさんから教えてもらえましたよぉ?」
チナミ(くっ……あの男、どうやって調べたのよっ)
――
サクライP「どうやって調べたって……普通に回収した履歴書(チナミがルナールに提出した物)に書いてあったよ」
桃華「Pちゃま、誰に向けて喋ってますの」
――
芽衣子「だから、お誕生日祝い!」
さくら「プレゼントもありますよぉっ!」
チナミ「……」
チナミ「誕生日祝いねぇ……」
256: 2014/06/09(月) 23:36:34.10 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「……ま、そうね。せっかくだし…頂くわ」
さくら・芽衣子「!」
さくら「普通に貰っちゃうんですかぁっ?!」
芽衣子「ちょっと意外だったかも…!」
チナミ「……あなた達、さっきから私にどんな反応を期待してるのよ」
芽衣子「いえ、チナミちゃんの事だからもしかしたら『いらない』って無下にされるかもと」
さくら「私も思ってました」
チナミ「あなた達ねえっ……!」
チナミ「はあ……別に、貰えるものならありがたくいただくわよ」
チナミ「それに一応は同僚なんだから、円滑な関係を築くためにも好意は断らないわ」
チナミ「もっとも、だからって私からの見返りは期待しない事ね」
さくら「芽衣子さん、アレがツンデレですね」
芽衣子「うんうん、ツンデレだね」
チナミ「だからせめて声を潜めなさいよっ!!」
さくら「まあまあまあまあ」
芽衣子「受け取ってもらえるなら何でもいいのでどうぞどうぞー」
チナミ「ああー……もう……調子狂うわー」
257: 2014/06/09(月) 23:37:47.55 ID:Pbo6hGJyo
さくら「チナミさんも芽衣子さんと同じで1箇所に留まらないと思うのでぇ」
さくら「同じく持ち運びやすいものを選びましたよぉ!」(えっへん)
芽衣子「たまたまだけど今日は拠点に居てくれて良かったよ」
チナミ「そうね、こんな事があるって分かってたら居なかったかもしれないし」
芽衣子「ツンデレ」
さくら「ツンデレ」
チナミ「違うっ!」
チナミ「……と言うかめげないわね……あなた達。よくそんな都合よく解釈できるものだわ…」
芽衣子「まあまあまあまあ」
さくら「はいっ!プレゼントですっ!」
チナミ「ったく…………あら、アクセサリーなのね」
芽衣子「結局、エージェント全員誕生日プレゼントがアクセサリーになっちゃってる気がするね」
さくら「そう言えばそうですねぇ、他には思いつかなかったんでしょうか…?」
チナミ「ねえ、それちょっとメタい話になっていないかしら?」
258: 2014/06/09(月) 23:38:53.23 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「……黒い宝石のブローチ……へえ、これは……パールかしら?」
チナミ「なかなかいいじゃない」
芽衣子「気に入ってもらえたようで何よりっ」
さくら「ちなみにそれは、バロックパールって言うそうですよぉ!」(カンペ)
チナミ「バロックパール?」
芽衣子「できる過程で、真円にはならなかった歪んだ真珠の事だよ」
芽衣子「昔は粗悪品って言われてた時代もあったそうだけど」
芽衣子「今は養殖技術で簡単に真円が出来ちゃうから、歪なものも却って評価されてるみたい」
芽衣子「自然の中で偶然出来る、この世に2つとない形ってね!」
芽衣子「だからなのかな、宝石言葉は『芸術性』なんだって」
チナミ「へえ」
さくら「ちなみに、人間界では6月9日の誕生石がバロックパールなんですよぉ」
259: 2014/06/09(月) 23:39:40.22 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「なるほど、だからこれをね……」
さくら「ちなみに、それはお守りとしても効果を発揮しますよぉ」
さくら「私が魔力を込めておきましたからっ!」(えっへん)
チナミ「ふーん……ところでさっきからあなた、わざと「ちなみに」って使ってるわよね?」
チナミ「怒るわよ」
さくら「えっ……えっへっへー!」
チナミ「私は笑って誤魔化されないわよ」
さくら「ごめんなさい」
チナミ「まあ……邪魔にはならないものみたいだし、ありがたく受け取っておくわ」
芽衣子「……やっぱり」
さくら「……ツンデ」
チナミ「違うって言ってるでしょうっ!もうっ!」
チナミ「くだらない事言ってると受け取らないわよっ!!」
さくら「えぇっ!あ、謝りますから、そう言わずにぃ!」
芽衣子「あはは、ごめんね」
チナミ「まったくもう……」
芽衣子(と言いつつちゃんと懐に仕舞ってくれるチナミちゃんかわいい)
260: 2014/06/09(月) 23:40:19.46 ID:Pbo6hGJyo
芽衣子「それじゃあプレゼントも渡したところで」
さくら「いつものですねぇ」
チナミ「……?いつもの?」
芽衣子「うずうず」
さくら「うずうず」
チナミ「……???」
芽衣子「……そわそわ」
さくら「……そわそわ」
チナミ「一体何を待ってるのよ……」
芽衣子「何かって、それはもちろん」
さくら「回想ですよっ!回想っ!」
チナミ「はっ?」
芽衣子「私の時もさくらちゃんの時もこのタイミングで回想が入ったから…」
さくら「チナミさんももちろん回想しますよねぇ?」
チナミ「だからっ!!話がメタいのよっ!!!!」
261: 2014/06/09(月) 23:41:22.28 ID:Pbo6hGJyo
芽衣子「あれれ?じゃあ、もしかして回想しないつもりなのかな?」
さくら「ええーっ!私聞きたいですよぉ!チナミさんのカコバナ!」
チナミ「カコバナってなによそれは……」
チナミ「……」
チナミ「……回想って言ってもね」
――――
帝王「ははははは!」
御大将「わはははは!」
サクライP「あはははは!」
――――
チナミ「はあ……やめやめ、なしなし」
チナミ「昔の事なんて思い出しても、不快な顔しか浮かばないわ」
芽衣子「たぶんだけど、すごくあっさりと上司を馬鹿にしたでしょ?」
262: 2014/06/09(月) 23:42:34.02 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「昔の事を振り返る必要なんてないのよ」
チナミ「だって昔は昔。今は今でしょ」
チナミ「過去に置き去りにして後悔したものなんてないし」
チナミ「必要なものは未来にしかないんだから」
チナミ「後ろ向きに歩く意味なんてないじゃない」
チナミ「私はいつだって前しか見てないわ」
芽衣子「……」
さくら「……」
チナミ「何よ、その狐につままれたような顔は」
芽衣子「いえ、ただただ感心しちゃって」
さくら「チナミさんちょーカッコイイですよぉっ!!」
チナミ「……当たり前の事を言ったつもりだけど……調子狂うわね」
チナミ「……」
チナミ「…………」
そう、過去に置き去りにして後悔したものなんてない。
選択を誤ったつもりもないし、間違った道を歩んでいるつもりもない。
だから、前を向いて、未来に向かって突き進むのみ。
目標に向かって邁進するのみだ。
263: 2014/06/09(月) 23:43:21.69 ID:Pbo6hGJyo
――
――
『目標?あなたの目標って何なのかしら?』
チナミ「……っ」
何処からか声が聞こえた。
彼女の周りに広がる深い霧の中から?
その声の発生源は特定できそうにもない。
声。誰かの声。
聞いたことある声。
それは誰の声だったか。
『あなたの目標って何?』
『あなたは何に向かって邁進していると言うの?』
チナミ「……」
264: 2014/06/09(月) 23:44:00.12 ID:Pbo6hGJyo
『 Q.あなたの目標はなんですか? 』
芽衣子『……え?私?』
芽衣子『目標かぁ。そうだなぁ……』
芽衣子『昔は世界中、色んな場所を旅行する事!』
芽衣子『だったんだけど、能力を手に入れてからは現在進行形で叶っちゃってるから』
芽衣子『今は能力で行けない場所に行くことかな?』
芽衣子『宇宙旅行もいいよね、地球の蒼さを実際にこの目で見てみたいし』
芽衣子『獣人さん達みたいに、私たちとは違う住民が暮らしてる異世界にも行ってみたいかな』
芽衣子『後はなんと言ってもタイムトラベルっ!こんな時代だし、不可能じゃないと思うんだよね』
芽衣子『とにかくっ、これまで見たこともない景色を見る為にっ!並木芽衣子は日々前進中だよ!』
チナミ「……」
265: 2014/06/09(月) 23:44:41.64 ID:Pbo6hGJyo
『 Q.あなたの目標はなんですか? 』
さくら『目標ですかぁ…?』
さくら『可愛くてかっこいいヒロインみたいな魔法使いになることでぇすっ!えっへっへー!』
さくら『魔法使いはですねぇ!ちょーすごいんですよぉ!素敵な事がたくさんできちゃうんだからっ!』
さくら『でもどうしてか、魔法使いを認めてくれない人たちが居るみたいで……』
さくら『それって悲しいことですよねぇ、私は嫌ですよぉ』
さくら『でもでもいつか、みんなに魔法が認められたらいいなぁって思いまぁす!』
さくら『なので私は、みんなに認められる魔法使いになりたいなあって思っててぇ』
さくら『サクライさんも、お師匠さんも、聖來さんも、芽衣子さんも、たぶんチナミさんも……みんな私の実力認めてくれてますし』
さくら『この調子でみんなに認められるちょーすごい魔法使いになっちゃいますよぉ!えへへー!』
チナミ「……」
266: 2014/06/09(月) 23:45:17.50 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「あなた達は2人とも、その意思を貫き通すに足りる目標を持ってるのよね」
チナミ「……私は」
私は、無駄で無意味な事が嫌いだ。
”目的”を果たすためには、常に最良の選択をする事を心がけて生きてきた。
チナミ「私の目的、それは」
チナミ「サクライを……そして一派を出し抜いて、最後に全てを手に入れること」
『それは一体何の為に?』
チナミ「……」
そもそも私は、何かに従わされることが嫌いだ。
『利用派』吸血鬼と呼ばれる一派に所属し、櫻井財閥の『エージェント』に所属しているが。
その実、どちらの組織にも心から従うつもりはまるっきりない。
だから”何のため”の行動なのか、”誰のため”の意思表示なのか。
問われれば『自分自身のため』だと答えるしかない。
チナミ「もちろん私自身のため……だけれど」
『チナミと言う存在のために、全てを手に入れる?』
チナミ「……」
仮に全てを手に入れたとして、それが私の何になるのだろう。
267: 2014/06/09(月) 23:46:42.50 ID:Pbo6hGJyo
全てが欲しいのか。と問われたならば、どうだろう。
例えば、今、自分の目の前に神様が居たとして、
「こう見えて私は神でしてー、そなたに世界の全てを差し上げましょうー」
などと言ったとしよう。
私は……何と答えるだろうか?
チナミ「……」
チナミ「愚問よね。そんなのいらないわ……」
世界の全てなど、本当は求めていない。
そんな重荷を背負わされるのは、まっぴらだ。
全てを手に入れる事を目的と言ったが、
そんな”価値の無い物”を得ようなどとは、微塵もこれっぽちも思ってはいなかった。
チナミ「……」
では、何の為に私は行動しているのだろう。
私は別に、”この世に全て”に価値など見出してはいない。
にも関わらず、『他人を出し抜いて、全てを手にしようとする』
その行いに意味はあるのだろうか。
268: 2014/06/09(月) 23:47:25.78 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「……」
爛『はっ!出ないんだろ、その答えがよ!』
爛『それがテメェと俺らの違いだ』
チナミ「……そんな事言われなくてもわかってるわよ」
それが違い。
”彼ら”とチナミの違い。
目的の為に、他者を利用することを、何の迷いもなくできたとして、
他人を蹴落とすことを、躊躇無くできたとして、
その先が決定的に違う。
行き着く先がまるで違う。
チナミ「あなた達が求めてる物は、きっと確かにあるんでしょ」
チナミ「あなた達にはちゃんと見えてるのでしょうから」
チナミ「進むべき道の先に……価値のある何かが見えているのでしょうから」
目の前に広がるのは深い霧。
そこに私の進むべき道は……見えていなかった。
269: 2014/06/09(月) 23:48:01.24 ID:Pbo6hGJyo
クールP『なら、チナミさんは何処へ向かってるのかな?』
クールP『目的や目標は道しるべになる。導も無く宛も無くただ邁進するだけじゃあ……どこに行っても迷うだけだよ』
チナミ「……」
チナミ「わかってるわよ、そんな事」
チナミ「でも仕方ないじゃないの」
チナミ「一派に従って、魔界から地上に出てきて」
チナミ「サクライに従って、『エージェント』として活動して」
チナミ「そうして最後に私が何かを手にしようとしている理由なんて……」
チナミ「退屈しのぎ以外に思いつかないんだから」
270: 2014/06/09(月) 23:48:38.19 ID:Pbo6hGJyo
退屈しのぎ。
凌ぐ。すなわち誤魔化すこと。
持て余した時間を紛らわして、すり潰して浪費すること。
チナミは無駄を嫌う。無意味を嫌う。
浪費するしかない時間は無駄であり、つまらない時間は無意味である。
しかし、世界はどうしてもつまらない。
どうしてだろう、ただ見ている限り……あまりに退屈なのだ。
だから誤魔化す。
退屈である事を誤魔化す。
「一派に従い、地上支配の為に地上に出て櫻井財閥について調べあげる」
「財閥を調べる為に、サクライに従い、彼が手にしようとする物を見つけだす」
「しかし、最後には彼らから全てを横から掠め取る」
退屈をしのぐため、それらしい目的を作り上げた。
らしいと言うだけで、本当は伽藍堂。
それに追い求める価値を見出してなどいないのに。
チナミ(それはなんて、つまらないことなのかしら)
『 Q.あなたの目標はなんですか? 』
チナミ「……」
271: 2014/06/09(月) 23:49:22.51 ID:Pbo6hGJyo
――
――
芽衣子「チナミさん?」
チナミ「……」
さくら「どうしましたぁ?ちょっと顔色悪いみたいですけど……」
チナミ「……いえ、ちょっと考え事をね」
芽衣子「あ、回想してたのかな?」
さくら「やっぱりチナミさんもするんじゃないですかぁ」
チナミ「だからメタいのよっ!」
チナミ「……別に過去を思い返していたわけじゃないわよ」
チナミ「ただ……そうね、感傷に浸っていただけよ」
そう、これはただの感傷なのだろう。
気紛れにも似た、一時の気分の迷い。
そう決め付けて、霧の中へと誤魔化す。
272: 2014/06/09(月) 23:49:58.48 ID:Pbo6hGJyo
さくら「うーん、そうですねぇ」
さくら「気分が悪いときはやっぱりてらぴーですよぉ!てらぴー!」
芽衣子「アロマテラピーとか?」
さくら「それですっ!」
チナミ「別にそう言うのは求めてないのだけれどね」
芽衣子「まあまあ、丁度財閥から送られきた花束もあるし」
芽衣子「眺めてると、案外癒されるかもしれないよ?」
芽衣子「はい、どうぞ」
チナミ「……」
チナミ「……ふーん」
チナミ「まあ……花も意外と悪くないかもしれないわね」
さくら「ちなみに、それはサクライさんからのメッセージ付きの贈り物です!」
チナミ「……どうして気分が悪くなる情報を付け加えるのかしら」
チナミ「悪くないと思った気持ちを返しなさいよ」
273: 2014/06/09(月) 23:50:36.15 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「メッセージカードねえ」
チナミ「切り刻んで燃やしちゃってもいいのかしら」
芽衣子「あはは……一応、本人は誕生日祝いのつもりのはずだから見てあげてよ。たぶん悪意はないはずだし」
チナミ「あの男もその辺りよく分からないわよね」
チナミ「妙なところでまめって言うか」
チナミ「……ま、どんな事書いてるのか気にならなくもないし」
チナミ「ちょっとでもイラッとしたら破り捨てるつもりで読んであげるとしましょうか」
さくら「……ツンデ」
チナミ「それだけは絶対に違うわよ、アイツにはデレるくらいなら私は氏を選ぶわ」
芽衣子(真顔で言った……サクライさん、嫌われてるなぁ)
チナミ「えーっと……」
チナミ「『まずは破り捨てなかったことを感謝するよ、チナミくん』」
チナミ「……早速イラッとしたのだけれど」
芽衣子「まあまあまあまあ」
さくら「どうどうどうどう」
274: 2014/06/09(月) 23:51:21.49 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「……」
チナミ「『誕生日おめでとう、君がここまで付いて来てくれた事に僕は礼を言いたい』」
チナミ(……まあ、あなたに追従していた覚えはないけどね)
チナミ「『君との……」
チナミ「……っ」
さくら「?」
芽衣子「チナミちゃん?」
チナミ「……ふふっ」
びりっ
さくら、芽衣子「あっ」
チナミ「やっぱり読まないほうが良かったわね、まったく」
さくら(……結局破っちゃいましたね……)
芽衣子(どんな空気読めないこと書いちゃってたのかな……)
チナミ「……」
275: 2014/06/09(月) 23:51:56.87 ID:Pbo6hGJyo
――
――
『君との約束の事を、僕は忘れたつもりはない』
チナミ「……」
サクライP『あの時君が出した条件……君を退屈させない事が、僕が君の助力を得る条件だった』
サクライP『だから、申し訳なく思うよ』
サクライP『君がどうやら……まだ退屈を持て余していることにね』
チナミ「どうだかね」
チナミ「あなたが申し訳ないだなんて心にも思っていないのはもちろんだけど、」
チナミ「そもそもあんな口約束、とっくに忘れてるものだと思ってたわ」
チナミ「……まあお互い様じゃないかしら、私もあなたを助けていたつもりは少しも無いもの」
サクライP『……』
サクライP『君の退屈を満たすために、僕はこれまで多くの物を提供してきたつもりだが……』
サクライP『しかし……やはりと言うか、その中にも君を満足させる物はなかったようだね』
サクライP『それだけ君は、欲が深いようだ』
チナミ「……」
チナミ「……どこがよ」
チナミ「浅いでしょ、ただ退屈を凌ぎたいなんて望みは」
私は、退屈を凌いでいたい。
なんて浅くて、つまらない望みなのだろう。
276: 2014/06/09(月) 23:52:55.66 ID:Pbo6hGJyo
サクライP『……そうだね。ただ退屈を誤魔化すためだけに、新しい刺激を求めていると言うのならそうだろう』
チナミ「……」
サクライP『退屈から目を背けられるなら物ならなんだっていい、と言うのなら確かにそれは浅い』
サクライP『けどね、君は違うはずだ』
チナミ「違う……ですって?」
サクライP『君は退屈を凌ごうとしている』
サクライP『凌ぐとは耐えることだ。つまり耐えた先に何かがあると信じて、それを求めている』
サクライP『そして君が求めているのは、』
サクライP『”全てを投げ打ってでも手に入れたい価値のあるもの”なのだろう?』
チナミ「……」
サクライP『ならば、君の求める物は、何でも良いはずがない』
サクライP『例えそれが霧中にあり、今はまだ見えなかったのだとしても……手にする事を諦めるつもりはないんじゃないかい?』
サクライP『見つかるまで捜し求め続けることができるのなら、それは決して浅くはない』
サクライP『君の望みはどこまでも深いところにあるのだろうさ』
サクライP『深いからこそ手に入れ難く、手に入れ難いからこそ確かに価値がある』
チナミ「……」
277: 2014/06/09(月) 23:53:43.61 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「……あなた、本当にムカつくわ」
チナミ「文面からでも伝わるのよ、何でもお見通しって顔がね」
サクライP『何でもは見通せない、ただ君とは少しだけ気が合うと言うだけさ』
チナミ「……ふんっ、私はそうは思わないけど」
サクライP『ははっ、そうかもしれないね……現に、君の求める理想を僕が見通すことはできない』
サクライP『それを見つけることができるのは、やはり君自身だけなのだろうからね』
チナミ「……」
サクライP『だから、せめて僕は祈っているよ』
サクライP『君が邁進し彷徨う霧の先に、君を満たすことの出来る答えがあることをね』
チナミ「……」
チナミ「……ふっ、ふふっ」
チナミ「あははははっ!」
チナミ「祈るだなんて、おかしい事言うわね!」
チナミ「何に祈るって言うのよ。第一、そんな殊勝なキャラじゃないでしょ、あなたは」
サクライP『ふっ、違いない』
サクライP『確かに僕は祈ったことなんてなかった』
サクライP『決して希うことは無く、いつだって自身の手を延ばした先に望む物を掴み取ってきたまで』
サクライP『そして』
サクライP『君だってそうなんだろう?チナミくん』
278: 2014/06/09(月) 23:55:16.40 ID:Pbo6hGJyo
――
――
チナミ「はあ……まったく……あんな奴に良い様に言われてるようじゃあ、私もまだまだかしらね」
さくら「?」
芽衣子「?」
さくら「……どうしたんですかぁ?チナミさん?」
芽衣子「んー……心なしかすっきりした顔してる?」
チナミ「別に」
チナミ「やっぱり私は前を向くしかないって再確認しただけよ」
チナミ「過去に置き去りにしたものは、やっぱりないし」
チナミ「必要なものは未来に…きっと必ずあるんでしょうから」
さくら「えっとぉ、よく分かりませんけど前向きなのは良い事ですよねぇ!」
芽衣子「うんうん、何にしても気分が良くなったみたいで良かったよ」
279: 2014/06/09(月) 23:56:15.76 ID:Pbo6hGJyo
チナミ「そうねえ……2人とも」
チナミ「気分転換にどこか遊びに行かない?」
さくら、芽衣子「……えっ」
チナミ「せっかく誕生日なんだし利用させてもらうわ、ちょっと接待しなさいよ」
芽衣子「いえいえ、それは全然構わないんだけど」
さくら「チナミさんからお誘いなんて珍しいなぁって」
チナミ「そう?……まあそうだったかもね」
芽衣子「ふふっ、それじゃあどこ行こっか?」
さくら「はいはーい!ケーキ行きましょうよぉ!ケーキ!」
チナミ「それもいいけど、久しぶりにダーツとかしたいわね」
芽衣子「へえ、チナミちゃんダーツ好きなんだ?」
チナミ「ええ、好きよ。狙った的に向かって真っ直ぐ飛ぶところとか」
さくら「それじゃあダーツバーとかですかねえ?」
芽衣子「うん、さくらちゃんそこ入れないからね」
チナミ「あら残念……今度、瞳子達でも誘って行こうかしら」
280: 2014/06/09(月) 23:57:09.19 ID:Pbo6hGJyo
――
――
認めましょう。
これからも後ろ向きなんかにならず、邁進し続けるために。
退屈を凌いで、価値のある未来を勝ち取るためにも。
”目標”なんて今はない事を認めるわ。
だからって歩みを止めたりなんかはしないわよ。
無意味な事は嫌いだもの。
例え、この霧の中道が見えていなかったのだとしても、
それでも私は私の道を言い張ることにするわ。
『 Q.あなたの目標はなんですか? 』
チナミ「私が目指すに足りる確かな目標を手にする事よ」
おしまい
281: 2014/06/09(月) 23:57:50.68 ID:Pbo6hGJyo
『パーシービューティー』
チナミにプレゼントされたバロックパールのペンダント。
歪な形の真珠。歪んだ真円、けれど歪であるからこその価値がある。
それはこの世に同じ形は2つとないまさに自然の芸術。
このお守りは『守護』『肯定』『唯一の価値』などの属性を持つ。
『精神世界』
精神世界には誰もが切欠次第で入り込んでしまうことがある。
基本的には本人の精神模様でその形は多用に変化する。
チナミの精神世界の景色は深い霧の中。
なお、内面世界でありながらチナミの知らない情報が紛れ込むのはご愛嬌。
ここで行うのは自己問答。問うのは自身。答えるのも自身。
自分自身を見つめることは精神の特訓となるとか。
282: 2014/06/09(月) 23:58:58.64 ID:Pbo6hGJyo
と言う訳でチナミさん誕生日のお話でしたー
爛ちゃんとクールPお借りしましたー。なおチナミさんの心の中での登場のため本人の言では無い模様。
予定ではもっと茶化すはずだったのに思いのほか真面目に……
チナミさんは、このスレではその立場とかもあってグレ気味だった模様。ツングレ。
サクライ相手にデレることはないよ間違いなく。
一方、モバマス内では千奈美さん割と素直にデレデレでした。かわいい。
千奈美さん誕生日おめでとー
283: 2014/06/10(火) 00:08:38.99 ID:0EMRytVr0
乙なのでしてー
メタな発言に溢れる中でのツンデレなチナミさんの目標の話、いいなぁ
霧の中の自問自答というのが神秘的である(小並感)
精神世界、いろんなキャラで個性がありそうで楽しそうだな…(何か思いついた音)
メタな発言に溢れる中でのツンデレなチナミさんの目標の話、いいなぁ
霧の中の自問自答というのが神秘的である(小並感)
精神世界、いろんなキャラで個性がありそうで楽しそうだな…(何か思いついた音)
【次回に続く・・・】
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