2: 2011/04/01(金) 03:25:01.80 ID:TmqT2d0po
では次回までのつなぎとして軽い小ネタだけ落としときます。
本編では書かなかった3日目の小話でも。
【禁書目録】キャーリサ「家出してきたし」上条「帰って下さい」【前編】
【禁書目録】キャーリサ「家出してきたし」上条「帰って下さい」【中編】

3: 2011/04/01(金) 03:27:13.28
番外編

【本】

3日目

―――学園都市 上条の部屋

ガチャッ…!

上条「ふぅ……ただいまーっと」

キャーリサ「ただいまー」

上条「悪いな、今日も買い物付き合わせて」

キャーリサ「何、私も本屋に行きたかったから丁度良かったの。
       それよりほら、買ったものはさっさと冷蔵庫に入れよ」

上条「おう。そういや本屋で何か買ってたな。何だ?」 ゴソゴソ

キャーリサ「趣味の本だ。あとは時代小説もいくつか」

上条「渋いな……」 ゴソゴソ

キャーリサ「日本の時代劇結構好きなの。特に主君への忠義に厚い侍が出てくるやつな」

上条「キャーリサに武士娘属性があったとはな」 カチャッカチャッ

キャーリサ「うむ。真剣と書いてマジと読んでしまうぞ」
とある魔術の禁書目録 5巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

4: 2011/04/01(金) 03:29:23.19
上条「それはともかく、やっぱ俺が学校行ってる間暇か?」

キャーリサ「うん、実はそーなの。お前がいないとどーもつまらなくてな。
       明日からは本でも読んでいよーかと思ったんだ」

上条「ゲームとかは?」 ゴトッゴトッ

キャーリサ「あれは肩が凝る」

上条「そっか。まあ上条さん連日補習の常連さんですからね、結構長時間一人にさせちまうもんな」

キャーリサ「居候してる身だから別に文句は無いの。しっかり学んでこい」

上条「俺もそうしたいんだけど何故か学校休むハメになるんだよな……よし、終わり。
    すぐ飯作るよ」 バタンッ

キャーリサ「おー、それは後でもいいからお前も少し休め。
       茶でも淹れてやろーか?」

上条「い、いや結構です……って、何ですかコレは」

キャーリサ「おい、昨日の朝食を根に持ってるの?
       いくら私もお湯沸かすくらいできるぞ……ん? どーしたの?」

上条「い、いや……上条さんのベッドの上に散乱してるそれは一体……」

キャーリサ「んー? あっ、すまん片付けるのを忘れてた。 
       昼間あまりに暇でな。何か本でも無いかと探してて偶然見つけてしまったの」

上条「その、なんだ。違うんだキャーリサ」

キャーリサ「何だ突然」

5: 2011/04/01(金) 03:30:33.77
上条「この大量の工口本は別に上条さんのコレクションとかではなくてですね。
    土御門や青髪に無理矢理押し付けられただけなのですよ」

キャーリサ「おー、それで?」

上条「うんまあ、何と言うかその……」

キャーリサ「うむ」

上条「申し訳ありませんでした」 ドゲザッ

キャーリサ「別に謝らなくてもいーぞ」

上条「いやまあ何と言いますかお見苦しいものをお見せして……」

キャーリサ「お前も年相応にこーいうの見るんだなって、ちょっと微笑ましくなったし。
       発見した時はあまりの冊数にドン引きしたがな」

上条「うぐっ!」 グサッ!

キャーリサ「まーせっかくだ。お前に一つ確認しておきたいことがあるの」

上条「な、なんでせうか……」 ビクッ

キャーリサ「どれが好みなんだ?」

上条「……はい?」

キャーリサ「だ・か・ら! どの本が好みなんだと聞いているの
       速やかに答えよ」

上条「は、はいっすみませんっ!」

6: 2011/04/01(金) 03:33:24.26
上条(ど……どういうことだ……? なんか怒ってるっぽいぞ……? 素直に答えてしまっていいのか?
    土御門チョイスの口リものなんて選んだら問答無用で真っ二つにされそうだな……)

上条「えーっと……」

キャーリサ「う、うむ」

上条(土御門の本は妹ものと口リしか無い……となれば多種多彩な青髪チョイスの中でも選んで引かれないものを……)

キャーリサ「言っておくが無難に答えておこーなどと考えたらお前の男性機能を破壊してこんな本を見ても二度と興奮できん体にするぞ」

上条「上条さんハードSMは好きではありませんのことよ!!」

上条(あぶねぇ……じゃあどれが正解なんだ……。犯罪臭がしなくて上条さん好みのもの……出来るだけ健全なやつ……わ、分からん。
    いっそ賭けに出て男の娘ものに……いや駄目だ。そんな倒錯した大冒険は……く、くそうっ!
    ええいままよ! こうなったら右手の向くままに任せる!
    俺の下半身をお世話してくれてる右手だからな! お前なら信じられるぜっ!)

上条「上条さんのイチオシはこれだっ! 頼む! 俺の幻想頃しっっ!!」 ビシッ!

キャーリサ「!」

上条「…………」 グッ

キャーリサ「…………」

上条「……あ、あれ……?」 チラッ

キャーリサ「ん……んんっ! ごほんごほんっ! そ、そーかそーか。お前コレがいーのか……」 カァァ…

上条(……ど、どれを選んじまったんだろう……) オソルオソル…

上条「『金髪年上お姉さんマン開! 欧州の巨O天使達』……だと」

キャーリサ「ん……ま、まーいいんじゃないか? 
       お前の趣味は悪く無いと思うぞ……?」 チラッチラッ

上条(……まさかの洋モノ……。正直AVだと激しすぎていまいち興奮しないんですが……)

キャーリサ「そ、そーかそーか。これがいーのか……ふふっ」

上条(よく分からないけど……まあ機嫌良さそうだから良しとしよう)

キャーリサ「ふふふっ!」

58: 2011/04/05(火) 22:41:19.26
こんばんは。遅れて申し訳ないです。
今から投下します

61: 2011/04/05(火) 22:46:27.20
10日目 後編


―――英国 バッキンガム宮殿  回廊 13:10


上条当麻はキャーリサの手をとったまま彼女の部屋を出たところだった。
そこで廊下を警戒しつつ待っていたアックアと土御門。
二人と合流し、次に向かうポイントはバッキンガム宮殿の西側に存在する庭園だった。


上条「よし、行くぞ土御門」


もはやキャーリサから離れまいと固く決意を込めた上条が力強くそう言う。


土御門「お二人さん、もう準備はいいのかにゃー」


その様子を見て土御門が口元に愉快そうな笑みを浮かべて問いかけてきた。
キャーリサが首肯する。


キャーリサ「手間をかけてすまないの。まさかお前達まで一緒にいるとはな」

土御門「カミやんがどうしてもキャーリサを助けに行くって言って聞かないからにゃー。
     一人よりは成功率が上がるだろ?」


土御門のその言葉を聞いてキャーリサの頬にほんのり赤みが差した。


キャーリサ「ん……そ、そーか。とーまがそんなことをな……」


コホンと咳払いをし、キャーリサは上条にチラリと視線を送った。


上条「?」


その視線の意味が分からず首を傾げる上条。
そんな二人の様子を見て土御門がくつくつと笑った。


アックア「話は走りながらでも出来るであろう。行くぞ」


62: 2011/04/05(火) 22:49:06.81

周囲を警戒する素振りを見せながらアックアがそう言う。
頷く上条。
キャーリサと合流は出来たが、まだ何も終わってはいない。
むしろここからが本番と言えるだろう。
これからキャーリサの手を引き、騎士達を退けながら安全な場所まで退避しなくてはならないのだから。


キャーリサ「お前もよく来てくれたな、ウィリアム。感謝するし」


それをキャーリサも理解していたから、短い言葉でアックアに礼を言う。
しかしアックアは何でも無いことであるかのように踵を返し、先頭に立って脚を踏み出した。


アックア「私は私自身に従ったまでだ。その必要は無いのである……行くぞ」

キャーリサ「うむ。それで、外の連中はどうなってる?」


キャーリサはそれ以上話を引っ張ることはしなかった。駆け出したアックアの背を追いながら、現状を確認すべく話を切り出す。


土御門「今のところどこも健在。まだ戦えるぜい」


軽口で土御門は言うが、いつまでも優勢のままでいられるという保証は無い。
窓の外や廊下を響いて聞こえる戦いの音は、徐々に上条達の傍まで近寄ってきているためだった。
それは敵の包囲網は確実に縮まっていることを如実に示している。
だが、それを承知の上でキャーリサは力強く笑みを浮かべた。


キャーリサ「上手くいっているよーで何よりだし」


気の抜けない状況であることは事実だが、事態を憂うよりも一刻も早い戦場からの離脱こそ先決だと彼女は当然のように理解していた。
それこそがこの戦いを勝利で終わらせるための絶対条件。
最後尾で背後を警戒しながら走る土御門が、呼応するように獰猛に笑う。


土御門「よく言うぜい」

上条「後は例の脱出ポイントに向かうぞ」

63: 2011/04/05(火) 22:51:40.35

上条はキャーリサの手を握ったまま短く告げて、階段を駆け下りていく。
もう彼女から離れることなどしない。
身体が朽ち果てようと、意識が刈り取られようと、右腕の肉片一つとなるまで彼女を守り通す。
それが上条が与えられた役目であり、協力してくれている皆の気持ちに応えるということだと考えた。
知ってか知らずが、キャーリサもまた上条の手を強く握り返す。


キャーリサ「裏の庭園だったな、急ぐの!」


恐れなど微塵も見せぬ勇敢な王女の言葉は、意図せずとも三人に力を与えた。
囚われの王女を守りながらの脱出。
今後英国王室前代未聞の事件として密やかに語られるであろうこの状況下において、三人の行動は追ってくる本物の騎士達のそれよりも余程本職のようであった。


アックア「むっ……!」


階段を駆け下りた先、一階の回廊にてアックアが急に足を止める。


上条「どうしたアックア!」

アックア「行き止まりである……」


アックアが顎で指し示した進行方向には確かに堅牢な石の壁が立ち塞がっている。
宮殿内の見取り図はあらかた頭に叩きこんでいた上条だが、戻り道を間違えただけではないということはすぐに理解出来た。
そうでなくては、アックアがわざわざ立ち止まってまで行き止まりを宣告するはずもない。


キャーリサ「馬鹿な。ここは私の家だぞ、こんなところに行き止まりなど無いし。
       構わん、壁ごとブチ抜け」


今自分たちがどんな状況に置かれているかを考えるより早く、キャーリサは壁の破壊をアックアに命じる。
この不測の事態に見舞われた際の即座の判断能力もまた『軍事』のキャーリサの本領であった。


アックア「了解である」


アックアが目視出来ない速度でアスカロンを振りかぶったその時。
彼の視線は天井を捉えていた。

64: 2011/04/05(火) 22:54:31.29

上条「なっ!?」

キャーリサ「天井が!」


プレス機のように容赦の無い速度で落ちてくる天井。
一体いつから女王の公邸は忍者屋敷になったのかと、上条がキャーリサを庇うように抱き締めて地に伏せようと跳びかかる。
アックアも眼前の壁破壊から天井の破壊に行動を変えようと試みるが、それよりも早く土御門が叫び声をあげた。


土御門「カミやん!右手を上に突き出せ!」

上条「えっ!?」


既にキャーリサを抱きかかえる寸前だったために体勢をうまく切り替えられそうも無い。
しかし、土御門の言葉を聞いたアックアが上条の右手を掴んで引きずり起こし、そのまま落下してくる重厚な天井に突き付けた。


上条「えええぇぇえぇぇえええええええええええええ!!!!!!!!!!!!???????????」


パキンッ!というガラスの割れるような音が当たりに響き渡る。


アックア「ふンっ……!!」


アックアはその勢いのまま上条の手を行き止まりの壁へと叩きつけた。
肩が抜けそうな程の衝撃が全身を走り抜けるが、次の瞬間やはりガラスの割れる音が聞こえた。


土御門「やっぱり魔術だったみたいだな」


ようやく解放された上条は生きた心地がしないまま肩を押さえつつ天井と壁を見やる。
そこには、先ほどのような行き止まりは無く、眼前には庭園への回廊が伸びている。
そして天井も落ちてきている様子など無い。


キャーリサ「幻覚か?」

土御門「いいや、実際落ちてきてたんだと思うぜい。建造物を作り変える魔術の類だろうな。
     実際アックアがカミやん振り回さなかったらちょっとヤバかったかもしれねぇ」

上条「アックアの剣とお友達になれそうですよ。氏ぬかと思った……」

土御門「上条ソードだったにゃー」

65: 2011/04/05(火) 22:58:33.25

冷や汗が止まらない上条がガックリと肩を落としながら呟いた。


アックア「迷わず壁をたたき割っておくべきだったか……」

土御門「そのようだにゃー……」


それを無視して周囲に視線を走らせるアックアと土御門。


上条「!」

キャーリサ「ちっ!」


頬についた砂埃を拭うことも忘れて舌を打ち鳴らすキャーリサ。
どうやら先程の壁への対応に時間をとられ過ぎたようだ。


??「―――手間をかけさせる」


行く手に立ちはだかるのは、冷徹に眉間を潜めた身なりのいい男。
英国最大の武力にして、女王の懐刀。
騎士団長が数十名の魔術師と騎士を引きつれ四人を待ち受けていた。


騎士団長「お前達が泥人形だと知ったときは冷やりとしたぞ」

キャーリサ「騎士団長、命令だ。そこを退け」

騎士団長「その命令は聞けません。キャーリサ様、間もなく貴女の挨拶のお時間です。
       お客様達がお待ちですので、広間にお越しください」

キャーリサ「断るの」


淡々と交わされた、決別の会話。
たったその一往復で、彼女達は己の敵を認識する。
言葉は愚か、目配せすら不要だった。
キャーリサは先陣を切って回廊を駆ける。
その手に握られるのは、王の剣。
カーテナの欠片から光の刃を顕現させて、勇敢なる武の王女が、騎士派の長に切りかかるべく疾走した。

66: 2011/04/05(火) 23:00:51.52

上条「キャーリサ待て! 一人で行くな!」


その後を慌てて追う上条。


騎士団長「いかにカーテナであろうと、破片では私には勝てません。
       お忘れですか、ここは英国国内です。私も全力を振るえる」

キャーリサ「お前こそもー忘れたの?
       私の目的はお前に勝つことなどではなく、ここから出ることだし。
       カーテナによる供給も、フルンティングも無き今、お得意の『パターン』すら満足に扱えん時点でお前と私は互角よ!」


口元にサディスティックな笑みを浮かべてキャーリサは速度を緩めることなく騎士団長へと突撃する。


騎士団長「逃がしなどしません」


騎士団長が剣を構えキャーリサを迎え撃つ。
しかし


アックア「ぉぉぉおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおッッッ―――――!!!!!!!!!」

騎士団長「何っ!? ぐッ!!」


渾身の力でアスカロンを振りかぶったアックアが、騎士団長を横合いから思い切り吹き飛ばす。
メキメキという人体の軋む音を響かせながら、騎士団長は回廊の壁を突き破って上階まで叩き上げられていった。


キャーリサ「愚か者め! 標的たる私を見つけて視野狭窄に陥ったか!
       誰がお前となど戦うものかめんどーだし!」


高々と笑い声をあげてキャーリサはアックアと共にそのまま騎士や魔術師の集団の中へと突っ込んでいく。


土御門「ったく! 勇猛なお姫様だぜい!」

上条「着いてくのがやっとだぞ!」


必氏でその後を追う上条と土御門。

67: 2011/04/05(火) 23:03:30.82
騎士A「来るぞっ!!!」

騎士B「怯むな! 足止めをすればすぐにこちらへ戻られる!」

魔術師A「問題ない。足止めだけならばどうにかなる!」

魔術師B「標的を狙うな! 騎士団長が戦線に復帰する十数秒を稼げばそれでいい!」


そう言って魔術師たちは人の耳では解読不能な言語で詠唱による術式の構成を始める。
地の底を震わせるような地鳴りの音が響いてきた。
宮殿の壁や天井が形を変え、上条達の行く手を阻むようにうねり蠢く。
脚をとられ思うように走れない中、土御門が叫んだ。


土御門「さっきと同じだ! カミやん右手を上手く使え」

アックア「いや、あの男が戻ってくるのである。前方以外は無視して構わず走り抜けろ!」


突き破った天井の上から肌をビリビリと震わせる気迫が漂ってくる。
アックアに吹き飛ばされた騎士団長がこちらへ向かっているのだ。
速度の落ちたキャーリサに上条が追い付くと、その手を取って右手を前方に突き出す。


上条「キャーリサ、転ぶなよ!」

キャーリサ「とーま……王女は転んだりなどせんっ! うわっ!」


そう言ってプールで転んでいたことを思い出す上条。
そんな矢先にキャーリサは隆起した石畳に足を取られバランスを崩した。


魔術師C「いまだ!」

騎士C「キャーリサ王女! 大人しくしていただきます!」


その隙を見計らって騎士の手がキャーリサへと伸びる。


土御門「ちっ! 仕方ねぇ!」


土御門はキャーリサに近づいた騎士に跳びかかるようにして腕に抱き着いた。
同時に上条がキャーリサの腕を引っ張って引きずり起こす。

68: 2011/04/05(火) 23:07:38.94

キャーリサ「す……すまないの」

上条「土御門!」


騎士と共に倒れ込んだ土御門に声をかけるが、土御門は割れたサングラスの奥に精悍な笑みを滲ませてヒラヒラと手を振った。


土御門「ガラじゃないんだけどにゃー……ここは任せろカミやん!」


キャーリサを追おうとする騎士を殴りつけ、銃弾を撃ち込みながら土御門が叫ぶ。


上条「頼んだっ!」


上条はキャーリサの手を握りしめたまま振り返らず庭園に向けて走り抜けた。


土御門「ちょっとは躊躇えよ! ……って、そういう作戦か」

アックア「急げ上条当麻! 奴が来たのである!」


吹き飛ばされた穴から騎士団長が姿を見せた。
少し距離があるが、この分では一瞬にして詰められる。
その前にどうにか裏庭まで出なくてはならないのだ。


騎士D「おい逃がすな! 魔術師! 足止めしろ」

魔術師D「分かってる!」


再び詠唱を始め、術式を構築する魔術師達。
その時。


    C   S    R   S   M   R   
??「変動を停止。復元する石壁を再編成せよ」



少女の声が回廊に響き渡る。
そして蠢動する大地はその動きを止め、不自然な動きで上条達と騎士達を分け隔てるように石壁が積み上がっていった。


上条「来たか、インデックス!」


石壁の向こう側にインデックスの姿が見えた。
彼女の『強制詠唱(スペルインターセプト)』により、回廊は防がれ、庭園への道を妨げる者はもはや誰もいない。

69: 2011/04/05(火) 23:12:21.89

アックア「ノタリコンを用いての術式の阻害であるか」

キャーリサ「際どいタイミングだったが、助かったし」

禁書「遅れてごめん! こっちも危ないところだったんだよ!」


彼女がここにたどり着くまでに一悶着あったようで、輝く様な銀色の髪には泥が付着していた。
そんな妨害をくぐり抜けて援軍に駆けつけて来てくれた。
このように敵魔術師の無力化こそが彼女の役割。
インデックスの護衛を担当してくれている清教派の一部のシスター達も一緒だった。


上条「悪いインデックス! 土御門、インデックスを頼んだぞ!」


本来守るべき対象であるインデックスをその場に残していくことの憤りを奥歯を噛み鳴らしてこらえる上条。
清教派唯一無二の禁書目録にそう易々と危害が加わるとは思わないが、それでも自分の目の届かないところで戦いを任せなければならないことが申し訳なく思えた。
彼女と土御門の力を信頼するしかない、キャーリサの手を握る力が強くなったその時


土御門「心配いらないぜい。もっとおっかねー護衛が来たからにゃー」


土御門の一人事は上条には届かなかったが、その意味はすぐに理解に達することになる。
何故ならば


??「―――まったく……彼女を残して逃亡とは、上条当麻。万氏に値するな」


赤い髪が積み上がった瓦礫のような石壁の向こうに揺らめく。
その揺らぎはやがて陽炎と化し、周囲を鮮烈なる赤い炎となって包み込んでいった。
熱風が上条達の背中を通り過ぎていき、上条は走りながら背後を振り返った。


上条「ステイル……何で!」

ステイル「うるさいぞ、さっさと行け。……土御門が僕に『インデックスから決して目を離すな』と言うから何事かと思えば……。
      君は彼女に何をさせているんだ。そんなに氏に急ぎたいのか」


ステイル=マグヌス。
上条自身からは協力を申し出てはおらず、土御門にそれを一任した彼が、インデックスを守るためという
最も単純でステイルを突き動かすにはこれ以上ない目的のために騎士達の前に立ちはだかる

70: 2011/04/05(火) 23:15:15.25

禁書「これはこういう作戦なんだからいいんだよ。それより、一緒に協力してくれるって考えてもいいのかな?」

ステイル「……ここまで来て放っておくわけにもいかないだろう」


煙草を口に咥え、紫煙をくゆらせながらステイルが忌々しげにため息をつく。
懐からラミネート加工され、ルーンの刻まれたカードを取り出し、それを乱雑に放り投げたその瞬間。
石畳で覆われた回廊を焼き焦がすかの如き火柱があがり、その中で赤黒い炎の巨人が産声をあげた。
『魔女狩りの王(イノケンティウス)』。
必殺の意を持ち、3000℃の炎が形を成した教皇級の魔術が発動する。


魔術師E「ス……ステイル=マグヌス!? 貴様は清教派の最大主教の護衛のはずでは!?」


雇われた魔術結社の魔術師が爆炎を背負い悠然と立つステイルに驚愕を露わにする。


ステイル「うるさいよ。そんなことを気にしている暇があったら、僕がこの敷地に何枚のルーンを仕掛けたかを心配しておくんだね」


ゴクリと唾を飲み込む魔術師達。
その意味を深く理解出来ていない騎士達は、突如現れた二人の乱入者を制圧しようと剣を構え攻撃を開始する。


魔術師F「ま、待て!」

騎士F「清教派の女狐には悪いが、痛い目にあってもらうっ!!」



ステイル「――――8万6千枚だ」



魔術師G「ッッッッッッ!!!!!!!!」


ルーンを極めた天才魔術師の一言に、同業である魔術師の顔面は蒼白となった。。
拠点防衛にこそ真価を発揮するステイルは、昨日この式典にインデックスが参加し、なおかつ何事かのトラブルが起こると土御門に聞かされてから、式典開始の直前まで不眠不休でカードを設置した。
客人を招く式であるから、景観を損なわないようにという騎士派からの注意も聞き流し、目立たぬ場所や時には地中にも埋めたその甲斐もあり。
『魔女狩りの王』は、過去に例を見ないほどの爆発力を見せる。
もはやその場に何人がいようと意味を為さない。


土御門「はりきり過ぎですたい、ステイル……」

禁書「っていうか私達いらなかったよね……」


引き気味の二人の声も他所に、うねり蠢く火柱が、ただ有象無象を飲み込むだけだった。


71: 2011/04/05(火) 23:17:01.89

―――英国 バッキンガム宮殿  東側城門前広場 13:10


御坂「あーもうっ! 何なのこいつらはぁっ!!」


御坂美琴は城門前広場にて魔術結社を相手に奮闘中だった。
得意の超電磁砲ではあまりにも威力が強すぎるため、肉体の強化されている騎士以外の人間相手には打てない。
基本的には電撃で意識を奪って行く方法を取っていたのだが、現在相手をしている魔術師達は倒しても倒してもゾンビのように起き上がってはこちらへ向かってくるのだ。


神裂「大丈夫ですか御坂! 数が多い。距離を取って一人一人確実に制圧してください!」

御坂「やってるけど起き上がってくるんですけど!?」


起き上がってくる魔術師や騎士たちをすれ違いざまに斬り捨てながら神裂が御坂の傍へと近寄ってくる。


神裂「恐らくは『ラザロの蘇生』を下地として失われた意識を覚醒させる術式です。
    あなたが彼らを頃すつもりが無いことを気取られているようですね」

御坂「さっぱり分かんないわよ! どうすりゃいいの!?」


昨晩インデックスに魔術について長々と説明されたものの、理屈で理解出来るものでは無いためいまいち飲み込み切れていない御坂。
それを神裂も分かっているためか、即応して答えを返す。
    

神裂「物理的に意識を吹き飛ばすか、身体を動かなくする他ありませんね。
    要は身体機能を破壊するしかありません」


武器を手に白目を剥いて襲いかかってくる敵の姿はどう見ても怪物のそれで、とても宮殿を守る衛兵達だとは思えない。


御坂「なるほどね。んじゃこれで……」


神裂の言葉に、御坂は片足を軽く地面からあげて離し、周囲を取り囲む兵士達を見据える。


神裂「!?」


その行動の意味するところを察した神裂が聖人の脚力にて咄嗟に飛び上がる。

72: 2011/04/05(火) 23:19:21.83

御坂「終わりよッ!!」


神裂が飛び上がった瞬間、御坂は靴底を地面に叩きつける。
石畳ギリギリのラインに沿うように、周囲に向けて低空を疾走する稲妻。
その電撃を足に浴び、蠢く屍人になっていた兵士たちが一人また一人と倒れていく。


神裂「これは一体……?」


意識はあるのに立ち上がれず、モゾモゾと地を這うばかりの兵士や魔術師。
身体の機能が働いていない様子で、それ以上動いても無意味だと悟ったか、或いは術式の効果が切れたのか、彼らはそれっきり動かなくなった。


御坂「筋肉を麻痺させてやったのよ。しばらくは起き上がれないし、起き上がったところで同じことしてやればいいだけだし」

神裂「なるほど。相手の動きが遅いので助かりましたね」


辺りに倒れ伏した数十名の兵士の姿を見て神裂が主張する胸を撫で下ろす。
息を吐いて盛り上がった大きな胸をチラリと見て御坂は忌々しげに眉をひそめた。


御坂「あ、そういやあんたのお仲間はどこ行ったの? いつの間にか姿が見えないんだけど」


新手が来る前に一休みしようと、リラックスし始めた御坂が思い出したように尋ねる。
戦いの途中から、50名程いた天草式の姿が見えなくなっていた。
彼らはあくまでこの城門に宮内から兵士をおびき寄せるための目立つ餌を引き受けていただけだったので、戦力的には問題無かったのであるが。


神裂「彼らは遊撃です。宮殿の別の場所で陽動を担当して兵力を分散させています。
    もっとも、時間ではそろそろ……ッッ!?」


それに答えた神裂が、突如宮殿の方を振り返る。
当然そこには何も無いが、宮殿内からは時折騒音や叫び声が聞こえてきていた。
中ではまだ戦いが行われている様子。


御坂「どうしたの?」

神裂「……御坂、すみませんがここをお願い出来ますか……。
    天草式から通信が入りました、宮殿の裏で少々想定外の事態が起こりそうです」


73: 2011/04/05(火) 23:21:11.25

通信とは言うが、特に先ほどと周囲が変わった様子は無いので恐らくは彼らにしか分からない魔術的な手段による緊急の連絡なのだろう。
時折姿を現す眼球のゴーレムを利用した通信手段とは違うため、かなりの即応性を要求される事態の様だった。


御坂「そ、想定外って何よ。あいつは大丈夫なの?」

神裂「分かりません。が、対応を求められるということはまだ健在ではあるのでしょう。
    ここをお任せしても?」


神裂の申し出に御坂は手をヒラヒラと振って頷く。


御坂「私とあんたじゃここは役不足。一人で十分だわ。それに私はここを動けないから、あんたが行くしかないもんね」

神裂「感謝します」

御坂「いいわよ。……頼むわよ」

神裂「お任せを」


短い言葉を交わして神裂は七天七刀を握る手に力を込めた。
一足飛びに宮内へと侵入していく神裂。こちらへ向かっていたらしい兵士を斬り捨てながら駆け行く背中を見送りながら御坂は、常人とはあまりにもかけ離れたその身体能力に苦笑いをこぼした。
しかし同時に不安が胸を過る。
聖人と呼ばれる、特別な力を持つ彼女が緊急で呼び出されねばならないほど、事態は切迫しているということなのだ。


御坂「……ま、しっかりやんなさいよ」


腰に手を当て、御坂は空に浮かぶヘリを眺めながら上条の顔を思い出す。
これだけの人間に協力を頼んでまで助け出したいと思われているキャーリサがうらやましい。
その事実を受け入れるのに、御坂はもう少しだけ時間がかかりそうだなと思うのだった。

74: 2011/04/05(火) 23:22:57.11

―――英国 バッキンガム宮殿  庭園 13:20


審判の日の如く火の手が上がっている元来た道を振り返り、キャーリサの口元が引きつる。


キャーリサ「おい。私いずれ戻ってくるつもりなんだぞ、復旧にどれだけ金かかると思ってるの」

上条「それはイギリス清教に言ってください」

アックア「……間もなく庭園である、行くぞ」


そしてようやく回廊を抜ける3人。
ポカポカとした陽射しに似つかわしくない戦場の先、芝生で覆われた広大な庭園がある。
周囲は木々で囲まれ、そこを通る並木道を抜ければ再び市街に出ることも可能だった。
陽射しを浴びるのが久しぶりのような気がする中、そこにたどり着いたその瞬間。
上条は思わず声をあげてしまう。


上条「な……!」

キャーリサ「……」

アックア「……」


アックアとキャーリサは無言でそこに広がる光景を睨みつける。


騎士団長「……もういいだろう。お前達は十分にやった。
       とでも言っておこうか」


高そうなスーツに煤や泥を着けて、騎士団長がコツコツと足音を鳴らしながら背後から追ってきた。
だが上条達は動くに動けない。
何故ならば。


キャーリサ「ざっと300人か……」


恐らく立食パーティの会場だったのだろう。
テーブルや料理の並ぶその裏庭には、数えるのも億劫になるほどの騎士や軍人たちが犇めいていたのだ。
彼らもやられっぱなしで終わるわけにはいかないと、先ほどよりも眼差しには確固たる敵意や殺意のようなものが見受けられた。


75: 2011/04/05(火) 23:25:26.69

アックア「……」

騎士団長「さすがに無駄だと悟ったか?
      言っておくがウィリアム、無駄な真似はよせ。
      お前の相手は私だ」


ロングソードを携えたまま、騎士団長が一歩一歩踏みしめるように後ろから近づいてくる。
確かにアックアならばこの状況を覆せる。
しかし、それは騎士団長がこの場にいなければの話だ。
彼がここにいる限り、誰か一人は彼の相手を務めなければならない。
不意をついた先ほどと違い、今度の彼はアックアの足止め程度のことはやってのけるだろう。


上条「くっ……」


疲労とここまでの逃亡劇で疲労が蓄積している上条が俯き声を漏らす。


騎士団長「驚きのあまり言葉も無いか?」


淡々とした表情で騎士団長が一歩前へと歩みを進める。
彼の一挙手一投足に数百人の衛兵、軍人、魔術師、騎士が注目し、指示を待ち受ける。


上条「ああ、驚いたよ……まさか」


キャーリサの手を強く握りしめ、憮然とした表情で言葉を紡ぐ上条。
周囲の視線と銃口が全て向けられていて、なお上条は怯まずに告げた。




上条「―――まさかこんなに上手くいくなんてな!」





76: 2011/04/05(火) 23:27:45.47

そして上条の口元に笑みが滲む。
その時だった。
轟々と地鳴りをあげる宮殿庭園。
騎士団長は目線を周囲に数度動かし状況の確認を開始する。
次の瞬間彼は目を疑った。
上条とキャーリサの立つ大地がせりあがり、二人をその掌に乗せて立ち上がったのは、
先程まで広間にいたシェリー=クロムウェルによるゴーレム・エリス。
彼女が先ほど告げた「裏庭でのひと暴れ」。
それは滞りなく作戦が進んでいるということの証であり、騎士団長の動きの全てが上条達の掌から出てはいないということの表れだった。


騎士団長「それでどうするつもりだ。逃げ場などないぞ」


二人を追おうとする騎士団長。
だが


アックア「どこへ行こうと言うのであるか」


アックアがアスカロンを振りかぶり、騎士団長の全身を打ち砕くべく轟音を鳴らして叩きつけた。


キャーリサ「馬鹿者め。お前がウィリアムの相手をするのではないし」


頭上高くより配下を見下ろす悪の女王のような顔つきで、キャーリサはサディステックに笑みを浮かべる。
そして周囲の兵士たちになど目もくれず、アックアは真正面に騎士団長を捉えて言い放つ。


アックア「私が貴様の相手をしてやるのである」


無口な傭兵の、珍しく饒舌な布告であった。


騎士団長「……奴らを追え」


アックアとの戦いを避けることが出来ないと踏んだ騎士団長の一言で、兵士たちは咆哮をあげながらエリスに向かって突撃をする。
樹齢千年を超える大木の丸太の如き腕で襲い来る兵士たちを薙ぎ払うも、キリなく攻撃を繰り返してくる。
頑強で再生可能なエリスと言えど転ばされれば上条とキャーリサは振り落とされ囚われる。


キャーリサ「ではそろそろ次へ移るとしよーか、とーま」

上条「ああ……建宮ッッッ!! アニェーゼッッッ!!!!!!!」

77: 2011/04/05(火) 23:31:10.55

上条が宮殿の庭園両翼へ向けて叫ぶ。
すると両脇の木々の合間から土煙があがり、そこから武器を携えた252名のシスター達と天草式十字凄教率いる女子寮のシスター達約100名が、兵士たちを取り囲むようにして突撃してきた。


衛兵1「ば、馬鹿な! 周辺の警備もあったはずだぞ!」

建宮「『隠れる』ことは我ら天草式のお家芸なのよ! 目視しようなんて考えてる時点でお前さんたちの敗けだ!」

騎士1「とにかく包囲を突破して体勢を立て直せ!」

軍人1「無理だ! 指揮系統がバラバラで連携がとれない!」


軍人や騎士、あげく警察まで、さまざまな所から警備が出てきているので、当然こんな戦争のような事態になったところで即座に対応は出来ない。
先日クーデターで戦ったばかりの騎士や、訓練を積んでいる軍人はまだしも、魔術結社の魔術師達など目も当てられない状況に陥っている。


アニェーゼ「待ちくたびれちまいましたよっ! 私達ローマ正教としちゃぁ、英国の兵士を蹂躙するなんざ願ってもねぇ作戦です!」


蓮の杖を嬉々として振り回しながら、目を輝かせてアニェーゼが先陣を切って特攻する。


ルチア「シスター・アニェーゼ! 張り切るのはいいですが先行しすぎないようにして下さい!
     個別の戦力では決して劣る相手ではありません!」

アンジェレネ「み、皆さん置いてかないでくださいー!」


周囲のシスターと連携し、数名で一人の敵を無力化していくルチアと、脚が遅いので列からはぐれそうになり、ルチアのスカートに必氏でくらいつくアンジェレネ。
これこそが、天草式と必要悪の教会女子寮混合部隊&アニェーゼ部隊総計約350名に与えられた役目。
遊撃として周囲の警備の戦力を削ぎつつ宮殿庭園周辺に控え、敵兵が戦力を集中させた頃合いを見計らって挟撃すること。
そしてそれは、アックアによる騎士団長の足止めもまた作戦内容に含まれていた。


建宮「お姫様! 屋根の上に『例のもの』が置いてある。オルソラ嬢とシェリー=クロムウェルが守ってるからそこ行くのよ!」

キャーリサ「了解した! 感謝するぞ天草式、ローマ正教!」

上条「建宮、そこは頼むぞ!」

78: 2011/04/05(火) 23:34:17.57

上条の言葉に手を軽くあげて返す建宮。
そしてエリスは手を天高く伸ばし、二人を宮殿の屋根の上へと移送する。
それを見て、さらに一瞬にして戦場となった裏庭の様子に舌打ちをした騎士団長。


騎士団長「……バッキンガム宮殿の庭園と言えば、それは美しい光景だったのだがな。
      ひどい有様だ」


よもや街のど真ん中で挟撃されることなど想定していたはずもない兵士たちは、ただでさえ拮抗してしまった物量もあり、どこから対応していいのか分からず混乱し、為す術も無く蹂躙されていく。


アックア「ここが氏体で埋まらぬだけマシであろう」

騎士団長「違い無い……」


ロングソードを握り、ため息をつく騎士団長。
しかし、彼はこの状況下にあってなお王女を諦めるなどという選択肢をとりはしない。
この程度は彼にとってもまた想定の範囲内だったのだ。
故に


??「まったく……宮内が騒がしいと思えば……これはどういうことなんだ騎士団長」


騎士団長もまた布石を打っておいた。
女が一人、庭園に姿を現す。
ゴーグルで押し上げた金髪をなびかせ、機能的な分厚い記事の衣装にエプロンを纏う、メイドのような女だった。


キャーリサ「奴かっ! 厄介なのが出て来たし!」


宮殿の屋根の上からキャーリサが忌々しげに吐き捨てる。
上条は見覚えのない人物だった。
だがアックアもキャーリサも、そして騎士団長も、3人の表情は先ほどよりも明らかに緊張を孕んでいることから、彼女がただのメイドなどではないことは容易にうかがい知ることが出来た。


アックア「……」

騎士団長「出来れば貴女にはただの客人として座っていてもらいたかったものだがな」


深く息を吐いて騎士団長は踵を返し、屋根の上のキャーリサを見据える。


上条「キャーリサ、あれは誰なんだ!?」

79: 2011/04/05(火) 23:39:25.67

上条は彼女の手を引き、シェリーとオルソラが待つという場所へ向けて屋根上を駆けだした。


キャーリサ「奴の名はシルビア」


メイドの女は戦場と化した庭園の様子に目もくれず、倒すべき相手が分かっているとでも言いたげに真っ直ぐにアックアの方へと歩み寄り、言った。




シルビア「挙式は女の生涯一度の晴れ舞台。ボンヌドダームとして神聖なる式を邪魔はさせん」




キャーリサ「ただの下女(ボンヌドダーム)だし。ついでに聖人だがな」




シルビアは拳を握り、一足でアックアの懐へと入り込む。
その程度ではアックアにとって脅威とはならない。
アスカロンにてその拳を迎え撃つのみ。
しかし


アックア「っ……!」


アックアの腕が持ちあがることはなかった。
彼の腕は、シルビアの左手に握られた象牙色の麻縄によってきつく縛られている。


シルビア「……神の子の遺体を包んだとされる聖骸布の伝承を元に構成した麻縄だ。
      『歩く教会』は知ってるだろ? それを逆の方向に応用したものだよ。
      何にせよ、これで貴様の右腕は『氏んだ』」


右肩から先が動かないことを確かめるより早く、全力の拳がアックアの顔面に叩き込まれた。
さらにアックアの左足に巻きつく麻縄の霊装。
常人ならば頭部が弾けて吹き飛ぶ威力だが、聖人であるアックアは数十メートル大地を抉る程度で済まされた。
むき出しの土の中でムクリと起き上がる。
アックアは動かなくなった右腕を無視して、手近の落ちていたアスカロンを左手にて握りしめるが、今度は左足も動かなくなっていることに気づく。

80: 2011/04/05(火) 23:41:37.52

騎士団長「神の子似た身体的特徴を持つ聖人の『氏を確定させる』聖骸布の霊装か……。
       ここは任せても構わないか?」

シルビア「さっさと行け。私はお前みたいな澄ました男は大嫌いなんだよ」



アックア「―――待つのである。誰が行っていいと言った?」



アスカロンを杖替わりに、右足のみの力で立ち上がるアックア。
鼻と口から血を流し、ブラブラと揺れる右腕と左足のことなど微塵も気にする様子を見せず、傭兵はただ眼前に立つ二人の怪物を相手に悠然と言い放った。

騎士団長「その体で何が出来る。お前の足はもはや動かん。私と聖人の二人を相手では、さすがのお前にも勝ち目は無いぞ」

なおも表情を変えない騎士団長。
それは慢心でも油断でもなく、ただ事実のみを告げていた。
それでも揺らがないアックア。
微かに口元を動かし、己の勝利を疑わぬ眼差しで二人を見据え、告げた。

アックア「知らぬとは言わせないのである」

彼はその霊装を、知っている。
『聖人崩し』と同様に、神の子の『氏』を意味する魔術は彼にとって天敵とも呼べる。
だからこそ熟知している。
神の子の氏が意味するものを。
そして傭兵はこう言った。




アックア「神の子は蘇り、そして神となったのだ。
      ならば神の子にとって『氏』は、過程でしかないことを教えてやるのである」



81: 2011/04/05(火) 23:43:38.82

―――英国 バッキンガム宮殿  回廊 13:25


ステイル=マグヌスは煤まみれになった宮内の壁をつまらなそうに眺めて咥え煙草に火を着けた。
8万6000枚のルーンによって構成された『魔女狩りの王』を御しきるのはステイルにとってもそれなりの重労働であったため、現在は迫ってくる騎士や魔術師達を薙ぎ払う役を土御門に任せ、魔術師を妨害しているインデックスの護衛を引き受けているところだった。


土御門「おいおい。宮内は禁煙だぜい」


土御門が魔術の腹を全力で蹴り上げて意識を奪い取りつつ茶化すように言った。


禁書「そういう問題じゃないんだよ! 宮殿の中が大火災なんだよ……」

ステイル「その辺の火は全部僕がどうにでもできるから火事にはならないよ。
      それよりキリが無いな。もういいんじゃないか? 離脱するべきだな」

土御門「いやいや、ここは外から来る奴らを階上に上げないためにも重要な拠点なんだぜい。
     俺と、『インデックスは』ここから動くわけにはいかないにゃー」


軍人を殴り飛ばしながら軽い調子で言ってのけた土御門の言葉にステイルが舌打ちを返す。


禁書「さっき外でゴーレムが動いているのを見たんだよ。
    もうすぐ作戦は終了だと思うから、もう少しがんばるべきかも!」

ステイル「……あと少しだな」


インデックスの声にステイルは渋々炎剣で騎士を薙ぎ払う。
ステイルはインデックスを守るために、彼女の傍を離れない。
全て土御門の計算によるものだった、
そんなことを知る由も無いインデックスは、諦めずに抵抗を続ける魔術師を無力化していく。
戦力はやや上条勢力が優勢なものの、ほぼ拮抗状態。
依然油断ならない状況ではあったが、土御門ですら作戦の成功が頭をチラついた。
そんな折



??「何をしたりているのステイル」



82: 2011/04/05(火) 23:45:47.14

囀る小鳥のような、若い女の声だった。
ゾッと背筋に冷たい衝撃が走りぬけていくステイルと土御門。
二人はある種もっとも危惧していた。
この女が戦いの中に介入してくることを。
こちらの意図の全てを看破し、その上で何をしでかしてくるかを読ませない底知れなさを感じる老獪さを持つ女。
硬く封鎖された大広間の方向から、ペタペタと足音を静かに鳴らして歩いてくるのは


ステイル「最大……主教……」


身長の二倍以上もある金色の髪を揺らす18歳の少女のような外見に微笑を浮かべた彼女はイギリス清教が最大主教。
清教派の長にして魔術師。
ローラ=スチュアートだった。


禁書「……」

ローラ「あら。かような困りたる顔を見せられど、私にはどうしたることも出来なしよ」


馬鹿みたいな日本語を用いる彼女は、土御門を見て微妙な顔をする。
自分のこの日本語がおかしいことを指摘されて久しいが、その元凶は土御門がわざと教え込んだことに起因している。
苦笑する土御門からプィッと視線を逸らし、インデックスに意味深な微笑で一瞥くれた後ステイルを見据える。


ローラ「ステイル……訊きたしことがありけるのだけれど、構わぬかしら?」


周囲に視線を送る様子も無く、ローラは無邪気な微笑を浮かべたまま問いを投げかける。
ステイルは務めて平静を装うが、事と次第によっては彼女を相手にしなくてはならないのかとも考えていた。
ローラはインデックスの遠隔制御霊装を持っている。
魔術師への対応で10万3000冊の魔導書を用い、不可のかかっているところにそんなものを使われればどうなるか。
少なくとも事態が好転することはないだろう。
土御門も口元には余裕の笑みを張りつかせているが、視線は鋭く二人の様子を捉えて離さない。


ステイル「何か? ……最大主教」


たっぷりと間を開けてステイルは厳しい口調で問いを返す。
そしてローラはそれに応えた。

83: 2011/04/05(火) 23:49:39.97

―――英国 バッキンガム宮殿  回廊 13:25


神裂火織は庭園にて起こっている不足の事態に対応するべく場内を速足で駆けていた。
エリスを動かしている所為かシェリーかの通信も途絶えている。
この点から、庭園にて戦いが行われているのは確実だったが、その詳しい現状までは神裂は把握しきれていなかった。
宮内に入り、一直線に回廊を駆けて行く。
そして宮殿内部、周囲を廊下にグルリと取り囲むように石畳で覆われた中庭のような屋外スペースが存在する。
ここを真っ直ぐに駆け抜けた方が速いため、神裂は扉を開け放ち再び外に出る。


??「ちょっと待った。ここから先へは行かせられないな」

神裂「!? あなたは……」


神裂の前に一人の青年が立った。
自然と腕には力が籠る。
彼もまた『不測の事態』の一つ。
広間にて感じた不安の一人。


??「シルビアの奴がなかなか戻ってこないから様子を見に来てみれば、何が起こってるんだ?
    とりあえず警備の連中が君達を捕えたがっているのは分かるが」


優しげな面立ちも今は消えている。
慎重に事態を把握しようとしているのか、難しい顔をしているが、神裂を通すつもりも彼には無いらしかった。


神裂「オッレルス……でしたか?」

オッレルス「さすがに魔術サイドでは顔はバレているかな。
       ……君程の人物があの偉大な女王の国に弓引くとも思えないが、かと言って黙って君を通すのも問題がありそうだな」

神裂「そこをどいていただけますか……?」


神裂とて退くつもりなど毛頭ない。
たとえ相手が強大な力をその身に宿す、『魔神になるはずだった男』であったとしても。


オッレルス「そうはいかない。君を通すと俺がシルビアに酷い目にあわされそうな気がするからね。
       そんな訳だ、足止めをさせてもらおう」

神裂「では押し通ります!」


神裂は七天七刀を構え、一歩を踏み出す。
その速度は、音速を優に超えるものであった。
パンッ! という空気の壁をブチ破る音とともに、頑強な宮殿の壁が軋む。
踏み込んだ大地に穴を穿ち、オッレルスを吹き飛ばそうと剣を抜こうとする神裂。

84: 2011/04/05(火) 23:52:07.42

神裂「唯――――」


それは人知を超える必滅の斬撃。
聖人の持つ力の全てを引き出し、立ち塞がる者を一刀のもとに斬り捨てる、完成された魔術による抜刀術、『唯閃』。
彼を相手に、決して躊躇うことは出来なかった。
それでも


オッレルス「『説明できる力』では、俺を倒すことは出来ない」

神裂「――――!!!???」


『説明の出来ない現象』が神裂の身に起こった。
何か『得体の知れない衝撃』が、ジワジワと体内を走り抜けていったところまでは覚えている。
そして気付いた時、神裂は宮殿の壁に強く叩きつけられていた。
全身の骨がミシミシと軋む音をあげ、口からド口リと血を零す神裂。
理解が出来ない。
自分が吹き飛ばされた理由も、彼の力の本質も、何一つ。


オッレルス「今ので動けるのか……驚いたな」


髪の毛一本動かさず、オッレルスは無表情のまま告げた。
神裂の意識を奪うつもりで放たれた一撃であったようだが、その目的は達せられなかった。
神裂はオッレルスを視界にとらえたまま立ち上がり、もう一度七天七刀を構えなおす。


神裂「驚異的な力です……何一つ見えないとは……」

オッレルス「俺と君の力はほぼ互角だ。
       君が『北欧王座(フリズスキャルヴ)』を理解出来ない分、少しだけ俺が有利というだけのことに過ぎない」

神裂「よく舌が回ります。焦りからくるものですか?」


神裂は少しでも体に蓄積したダメージを回復させようと会話に応じる。
だが、それはほんの一瞬の出来事でしかなかった。


オッレルス「かもしれないな。じゃあ続けようか、正直君の力も厄介ではある」

神裂「異なことを。ですが……それでも私は行きますッッ!!」


再び踏み込む神裂。
彼を斬り捨てるまで、何度でも唯閃を撃ち込むまでのこと。
肉体に過負荷のかかる術式であったとしても、自分だけが敗北を喫するわけにはいかない。
上条がキャーリサを連れて脱出を果たすまで、自分がこの男を足止めする。
ただそれだけを胸に秘めて、神裂は剣を構えた。
そして、『説明不能』の二撃目が神裂を襲う。


85: 2011/04/05(火) 23:54:21.27

―――英国 バッキンガム宮殿  屋根 13:30


オルソラ「上条さん、こちらでございますよ」


エリスによって届けられた屋根の上。
階下からは絶妙に見えない氏角の位置にオルソラとシェリーはいた。


上条「おう、待たせて悪いなオルソラ……ってなんだこりゃ!」


キャーリサの手を引いたまま上条がそちらに駆け寄ると、そこには思いがけない光景があった。


キャーリサ「何だ、知ってたのではないの?」


キャーリサは意外そうに言う。
建宮が告げた『例のもの』。
それは『軍馬』であった。
クーデターの際にキャーリサが跨っていた黒い屈強な馬。


上条「いや、これは予定になかったし」

キャーリサ「まーこれはさっき私が用意させたものだしな。こっちの方が速いの」

オルソラ「上条さん、お話は後程でございますよ」

シェリー「さっさと行け、後方のアックアが押されてるわよ」


ブルル…と小さく鳴き声をあげた軍馬の首元を優しく撫でているオルソラと、庭園で縦横無尽に暴れまわっているエリスを眺めているシェリー。
それを聴きながらキャーリサが軽々と馬に跨り、上条に向けて馬上から手を差し伸べた。


キャーリサ「さー行くぞとーま。仕上げにかかるの。
       皆の奮闘に応えねばな」


間もなくアックアはシルビアとの戦いで手一杯になり、騎士団長がこちらへと迫ってくるだろう。
だが、それでもキャーリサは悠然とした笑みを崩すことは無かった。
もはや彼女は勝利を確信している。
否、確信出来ていなくとも、上条と共に実現させるのだと固く決意していたのだ。
これだけの者に力を借り、なお届かなかったのなら、自分はそれまでの人間なのだという想いを抱いて。
そしてそれは上条も同じだった。
あらゆる手を尽くし、やれることは全てやった。
後は結果を残すのみ。
上条はキャーリサの手を取り、彼女に引き上げられるようにして馬に乗る。

86: 2011/04/05(火) 23:57:23.26

オルソラ「うふふ、まるであなた様の方がお姫様の様でございますね」

上条「上条さん馬の乗り方なんて知りませんのことよ。
    じゃあな、オルソラ、シェリー、また会おうぜ!」

シェリー「テメェに会うとロクなことが起こらねぇからもういい。
      まあでも今回は感謝してあげるわ。あのクソ忌々しい騎士派の連中が馬鹿みたいに踊ってるから」

オルソラ「御無事を願っているのでございます」

キャーリサ「感謝する。お前達も無事に戦いを終えよ」

シェリー「戦闘職に『無事』なんて言葉は必要無いのよ。行け」


こちらを見ず、手に持ったオイルパステルを弄びながらシェリーがぶっきらぼうに言い放つ。
それを微笑ましげに見守るオルソラの笑みを見ながら、上条はキャーリサの後ろからその細いウエストにしっかりと抱き着いた。
分厚いコートの下に、確かな体温を感じて。
上条はようやくキャーリサがそこにいるのだと自覚することが出来た。


キャーリサ「はっ!」


手綱を振るい、屋根の上を駆けて行く黒い馬の王女。
階下で戦う皆の姿が見える。


キャーリサ「案ずるなとーま。今や危険なのはお前と私だけだし。
       ここまで来た以上、己が身の心配をすべきは奴らではないの」

上条「分かってるけど、みんな良い奴だなって思ってさ」


上条はその光景から決して目を離さなかった。
皆で勝ち得る勝利。
そのための最後の一歩。
それこそが、この天上に向けて駆け昇る疾走だった。
王女がいるために銃口をこちらに向けられない軍用ヘリのプロペラ音がうるさく響いている。


キャーリサ「ふふっ、それは違いない。お人好し共め。全員に勲章でもくれてやりたい気分だし」

87: 2011/04/05(火) 23:59:41.03

快晴の空に向けて、キャーリサが輝くように微笑む。
プラチナのように煌めく髪から薫る華の如き香りも相まって、まるで春の草原を走っているような気分になれた。


上条「みんなお前を助けるために来てくれたんだ」

キャーリサ「それは違うぞとーま」


屋根から屋根を跳び。徐々に上へと登って行く。
蹄鉄が屋根を叩き、風が頬を通り過ぎていった。


上条「え?」


手慣れた様子で馬を操るキャーリサに感心しながら、上条は首を傾げた。


キャーリサ「皆お前を助けに来てくれたの。奴らが集まったのは他でも無いお前のためであり、
       お前がいたから私はここまで来れた」


キャーリサの言葉に上条は照れたように遠くの街並みを見下ろす。
彼女が自分のことであるかのように誇らしげだったのが印象的だった。


キャーリサ「ありがとー、とーま。私はお前に選ばれて幸せ者だし」


上条の位置からでは表情は見えなかったが、キャーリサは本当に満面の笑顔だった。
戦いのさ中に在るとは思えない声色と表情。
上条は顔が熱くなってくるのを感じる。
よくよく考えてみれば、現在もキャーリサに抱き着くような恰好になっている。
それも相まって、急に緊張と恥ずかしさでいっぱいになってきた。
作戦の終了まであと少し。
これが終わったなら、彼女を飽くまで抱き締めようと決める上条だった。


88: 2011/04/06(水) 00:02:15.26

―――英国 バッキンガム宮殿  回廊 13:30


ステイル「最大主教、今……何と?」


ステイルは吸っていた煙草を思わず口から零して落としてしまった。


ローラ「聞こえなしにつきなの? 乙女が恥を忍んで聞きているのよ」


ローラはその吸殻を拾い上げ、火を床で消してステイルに預けると頬を膨らませた。
彼女の発言の内容に、土御門やインデックスは愚か、周囲の騎士や魔術師達も皆絶句している。


ローラ「だーかーらー!
     


     化粧室はどこかと訊きているのよ!」



ステイル「……」

土御門「……」

禁書「えっと……あ、あっちなんだよ」


インデックスが近くにあるトイレの方向を指差すと、彼女は踵を返してそちらに向けて速足で歩いて行く。


ステイル「ちょ、ちょっと待って下さい最大主教!!」

ローラ「な、何なのステイル。まだ用がありけるの?
     私は割と緊急事態につきなのだけれど」


お願いだから早くトイレに行かせてくれと言いたげにローラが眉をひそめて振り返る。
だがステイルは納得できなかった。
このただごとでは無い状況下で、まるで何事も起こっていないかのようにスルーしていくだなんて。


ローラ「……私は今化粧室へ行きたることしか考えられなしなのよ」

89: 2011/04/06(水) 00:04:02.29

ローラは表情こそ笑顔だったが、それは背筋が凍る程寒々しい物言いだった。
そしてステイルはすべてに合点がいく。


ステイル(最大主教はこの婚姻に反対ということか)


ステイルはチラリと土御門に目配せをすると、彼も小さく頷いた。
ローラはキャーリサと某国皇太子の結婚を快く思ってはいなかったのだ。
英国に他国の力が介入する余地を残せば、国内で清教派として力を振るうことが出来るローラには面倒事が一つ増えるということになる。
王室派の問題というこで口が出しにくい状況下であったが、上条当麻を初めとするその周囲の人間たちがこれをブチ壊してくれるならば彼女にとっては都合が良いことであるのだろう。
つまり、彼女は今日、この場で見た事聞いた事に関して見て見ぬフリを決め込むことにしたらしかった。


ローラ「ステイル……おイタも過ぎたるのはいけなしよ?」


金髪の揺れる背中を向けたまま、軽く釘を指すようにそう言い残し、ローラは回廊の向こうへと去っていく。


土御門「じゃ、オレ達はトイレまでの道を片付けるとしようか」

ステイル「そうだね。最大主教が戻って来るまでには、綺麗にしておくとしよう」

禁書「大丈夫。そろそろとうま達も最後の仕上げにとりかかってるはずなんだよ」


その背中を見送りながら、何の憂いも無くなったステイル達は残り少ない敵を見据えて残酷な笑顔を浮かべた。


90: 2011/04/06(水) 00:06:44.52

―――英国 バッキンガム宮殿  屋根 13:45


キャーリサ「よし。ここでいーな」


やがてキャーリサは馬を止め、広い屋根の上に降り立った。
馬の顔を撫でて感謝の言葉を告げる彼女を横目に、上条は辺りの様子を見回す。
宮殿で最も高い位置にある屋根の上だった。
やや足元のバランスに不安はあるが、立っている分にはさほど問題がある位置ではない。
下方で戦う皆の姿が小さく見えた。


上条「よし、行くぞ。キャーリサ」


上条は力強くキャーリサに告げる。
キャーリサもまた微笑、深く頷いた。


騎士団長「そこまでだ」


そして追いかけてきたのは、やはり騎士団長。
口元から血を流し、スーツもボロボロであったことが、アックアとの戦いの壮絶さを物語っている。
上条もキャーリサも、彼がここまで登ってきたことに不思議と焦りは感じていなかった。


キャーリサ「もー一度命ずるぞ。私を見逃せ」

騎士団長「お断りします」

上条「どいてろキャーリサ。俺がやる」


上条は拳を握り。キャーリサをかばうようにして前に立った。
日本での雪辱を晴らさなくてはならない。
しかし、キャーリサは上条の隣に並び立つ。


キャーリサ「仲間外れにするな。私もやるし。
       共に征こー、とーま……お前と一緒にいたいんだ」


青く澄んだ瞳が上条を見つめていた。
頷き、応える上条。
先日の敗北によって失われたものなど、上条の安いプライドでしかない。
ならば一騎打ちになどこだわる必要はない。
二人で騎士団長を下し、共に脱出を図ればいい。


騎士団長「全く手を焼かされた……これはキャーリサ様の策ですか?」

91: 2011/04/06(水) 00:11:28.24

ゆっくりと間合いを測りながら騎士団長が問いかける。


キャーリサ「そーだ」

キャーリサはカーテナの破片から光の剣を構成し、騎士団長に切りかかる。

上条「キャーリサが本に作戦を残しといてくれたんだよ。
    テメェらはまんまとこいつの手の中で踊ってた訳だ」


上条が騎士団長に拳を振りかぶると、彼はそれをかわして足元を引っかけて上条を蹴り飛ばす。


上条「ぐっ!」

キャーリサ「大丈夫かとーま!」

上条「問題ねぇ! もうお前の前で倒れたりしない!!」


すぐさま立ち上がり騎士団長に飛びつくと、わずらわしそうにそれを振り払う。
だが、連携して切りかかったキャーリサの剣先が騎士団長の髪の毛先を額の薄皮ごと切り裂いた。


騎士団長「ッ!」

キャーリサ「ついでに言えばな、騎士団長。お前が式典の会場をこのバッキンガム宮殿に変更することも、私は読んでいたぞ!
        そもそも、敵がいつ来るか分からない状況下でお前が聖ジョージ大聖堂などという清教派の本拠地を会場に選ぶものか」


口元に余裕の笑みを浮かべたキャーリサが背後に飛んで距離をとった騎士団長を見下すように告げる。


上条「キャーリサの作戦は初めからこのバッキンガム宮殿での戦いを想定したものだった。
    まあここまで人数が増えるのは予想外だったみたいだけど。
    ……それを土御門とアックアが調整して今日を迎えたってわけだ」

騎士団長「なるほどな。道理で悉く対応されると思っていた。
       ……だが、私がここまで追ってくるというのは想定外だったのではないか?」


騎士団長の表情にも焦りは無い。
この屋根の上に邪魔者はいないのだ。
あとは自分がキャーリサを回収するのみだと思っているのだろう。
確かに彼の言う通りではあった。
本来ならば庭園にてアックアに騎士団長を任せ、そこから離れたこの場所で悠々と逃げ切ることが出来る予定だった。
しかし現れた不測の襲撃者、シルビアとオッレルス。
彼らの存在によって、キャーリサも上条もこんな最終段階まで騎士団長と相対するハメになり、彼を退ける必要を迫られている。

92: 2011/04/06(水) 00:13:15.64

キャーリサ「そーだな。シルビアは全くの想定外だったの。
       散々帰国命令を出しても戻ってこなかった奴が、このタイミングで来るとは思わなかったし」

騎士団長「ここからどうするおつもりで?
       恐らくは警備の薄い個所を見極めて突破する気だったのでしょうが……
       馬の脚ならば私でも追い付ける」

キャーリサ「そーだな……」

騎士団長「それにキャーリサ様。 
       この段階において勝利を確信されているようだが、それは無駄なことです」

キャーリサ「……ほー、それは何故だ」


キャーリサがピクリと眉を動かし、騎士団長に問いかける。
そして次の瞬間


騎士団長「こうするだけのことだ」


上条は身体に走る衝撃と共に宙を舞っていた。
聖人級の動きで上条に肉薄した騎士団長が、その腹部を思い切り蹴飛ばして吹っ飛ばしたのだ。
ここは地上高い屋根の上。
一度空中に投げ出されれば、後は落下を待つのみ。


キャーリサ「とーま!」


屋根のへりから落ちて姿を消す上条。
キャーリサの頭にカッと血が上る。
そして彼女は剣を握りしめ、騎士団長へ向けて突撃の構えをとった。


騎士団長「キャーリサ様、少々手荒な真似をさせて頂きます。お覚悟を」


騎士団長はロングソードを腰の高さに構えてキャーリサに向き直る。
力づくでキャーリサをねじ伏せる。
騎士団長が、英国紳士としての矜持を捨て、それでもなお目的を果たそうと決意した瞬間だった。
しかし、完全にキャーリサを視界にとらえた彼は一つのことを失念している。


「――――待てよ」


93: 2011/04/06(水) 00:17:08.26

屋根のへりに手がかかり、そこから伸びた右手が、騎士団長の足首を強く掴んだ。


騎士団長「っ!?」


騎士団長はまだ理解出来ていなかった。
クーデターの際、直接対峙した訳では無い彼には無理も無い話だったのかもしれない。
だが、もう遅い。
上条当麻は。
確固たる信念を以て、全てを賭して英国を来た上条当麻は、あの程度の一撃ではもはや屈しない。
キャーリサの前では倒れない。
そう決めた上条当麻は、もう絶対にキャーリサの前で膝をつくことは無いのだから。

上条「まだ終わってねぇぞ……」

屋根にぶらさがり、這い上がって騎士団長の足元にしがみつく。


上条「おい……まだ聞いてなかったな。テメェはキャーリサが結婚することを何とも思わねぇのかよ……」

騎士団長「……何」


本来の騎士団長の力ならば、上条の手を振りほどくことも出来るはずだった。
だが、それは今や不可能。
理由は二つあった。
騎士派の長として受ける肉体の強化に関する術式が、足首を握る上条の右手によって全て無効化されていることが一つ。
そして二つ目に、そんな状態で、目前で剣を構えるキャーリサから視線を離すことは氏に等しい愚行なのだから。


上条「答えろよ……テメェは、キャーリサの幸せなんてどうでもいいと思ってんのかよ!」

騎士団長「……少年、君には分からぬ話だ。私は英国騎士団長、私の意志の差し挟む余地など無い」

上条「そんなこと聞いてるんじゃねぇ……! お前はずっと王室で、キャーリサの傍で騎士なんてもんをやってきたんだろ!
    だったら、テメェ自身の思うところだってあるはずだ! じゃなきゃ、テメェは王室にただ従うだけの人形と変わらねぇじゃねぇか!」


上条は今度は右手で騎士団長に手を掴み、立ち上がる。
なおも騎士団長は動かない。
今の彼は鍛え上げられた常人と同じ程度の身体能力。
キャーリサの手に握られたカーテナで斬られれば、次に目を開けた時見るのは病室の天井だ。
だから、悠長に上条の言葉を聞くことしか出来なかった。


騎士団長「……望んでいるわけがないだろう……」

上条「!」

キャーリサ「騎士団長……!」

騎士団長「エリザード様は元より、リメエア様も、キャーリサ様も、ヴィリアン様も、私が一介の騎士であったころからお仕えしてきた方々だ……。
       そのような方が、英国の政情で他国へ追い出されることなど、どうして受け入れられる!!」


94: 2011/04/06(水) 00:20:29.53

騎士団長は怒りに声を震わせて叫んだ。
キャーリサの表情にも驚きが見られる。

騎士団長「エリザード様にとっても苦肉の策だったのだ。
       だから私もまたそれに従うことを決めた。これこそが最良の策だと信じてな……」

当然と言えば当然のこと。
騎士団長はこんな状態での婚姻など認められる程出来た人間ではないということも自覚していた。
それでも、己は騎士派を総べる長であり、女王が娘のためを思って決めたことならばと口を噤み、職務を優先した。
だが、本音はそうではない。
立場は違えど、時には妹のように傍らにいた彼女が政治の都合で望まぬ結婚を強いられることなど、認められるはずがない。


上条「そうか、分かった……」


それを訊いて、上条は騎士団長の手から手を離した。


騎士団長「ッ!」


騎士団長はこれを好機と見る。
急速に体勢を変え、上条を再度吹き飛ばすべく足に力を込めてロングソードを振るう。


騎士団長「それでも私は騎士団長だ―――!! 務めは果たす!」


上条は騎士団長の攻撃をかわすそぶりなど微塵も見せない。
一歩前へと足を踏み出し、それを迎え撃つ。


上条「確かに……俺は政治のことなんて何も分からねぇし、とんでもねぇことをやらかしてるんだろうさ……
    でもな、キャーリサが幸せならそれでいいって思うんだよ!」


そして上条は体をねじり、右拳を大きく振りかぶる。
上条の目には、騎士団長。そしてその向こう側にて輝く刃を振りかざした、愛しいお姫様の姿。


騎士団長「だが、我々に他にどんな方法があったというんだ! 答えろ上条当麻ッッ!!!」

上条「ならそれをこれから教えてやるよ、騎士団長。
    テメェがまだキャーリサを幸せにする手段がこれしかねぇって思ってるんなら―――いいぜ」

キャーリサ「――――っ」


騎士団長の刃の切っ先が、上条の首筋にかかるその刹那の瞬間。






上条「まずは―――そのふざけた幻想をブチ頃すッッッ!!!!!!」






95: 2011/04/06(水) 00:23:26.75

上条の拳が騎士団長の顔面に突き刺さった。
一切合切の魔術的手段による防御をブチ抜き、騎士団長の身体がグラリと揺らめく。


騎士団長「それしきのことで……私はっ……!!」


彼は百戦錬磨の騎士。
戦い慣れているとは言え素人の少年の拳一つで意識を刈り取られることなどありえない。
だが


キャーリサ「私を除け者にするなよ。寂しーぞ」


勇敢なる王女の声が響いた。


キャーリサ「お前の言葉、しかと胸に刻んだぞ、とーま」


よろめく騎士団長の身体に、何一つの慈悲も無く、キャーリサは王の剣で裁きを下す。
主君に刃を向けた騎士を、王女の剣は許しはしない。


騎士団長「キャーリサ王女……」


先程の上条のように、空中へと投げ出される騎士団長の身体。


キャーリサ「そして騎士団長。お前は我が王室が誇るべき忠臣だし。
        私はもうお前を責めはせん……だが」


例え彼が聖人級の身体能力を持っていたとしても、空中を疾走することなど不可能。
屋根の上に立つ二人を見上げて、ただ階下へ落ち行くのみ。
そしてキャーリサは、悠然たる笑みを浮かべて告げた。


キャーリサ「今日からはただのキャーリサだし―――間抜け。
        私はとーまと共に征く。母上によろしく言っておけ」


それでも騎士団長は諦めなかった。
大地に落とされれば、また昇ればいい。
上条と違い自分ならば一足で二人の元まで戻れる。
それなのに、彼の胸から敗色の香が消えることはなかった。


騎士団長(何だ……何だアレは……)


彼を見下ろす上条とキャーリサの背後。
快晴の天空に、ヘリの機影が一つ重なった。
あそこに搭載されているのは英国軍の軍人と騎士派の騎士。
常に空中から相手の動きを見張っていた彼らのヘリが一機、明らかにキャーリサ達の真上へと移動してきている。
そして、ヘリの扉を開け、そのヘリに一人の人物が立ったのと、騎士団長が大地に叩きつけられたのはほぼ同時だった。
衝撃に一瞬顔をしかめるも、騎士団長はすぐさま大地に立ち空を見上げる。
その時。



ヘリから、機体内部とワイヤーで繋がった女が、何の躊躇いもなく飛び降りてきた。





??「はっあぁあい!! お姉さんとお空飛んじゃうー?」




96: 2011/04/06(水) 00:25:46.85

騎士団長「……まさか……」


キャーリサとよく似た金色の髪を丁寧に巻いた派手な女。
目を背けたくなるような露出度で、妖艶な笑みを零しながら、二人の傍まで下りてくるその女。


騎士団長「…………まさかっ!!!」


彼女の二つ名は『追跡封じ(ルートディスターブ)』。
イギリス清教と契約関係のある運び屋にして、その名の通り追跡を振り切ることにかけて右に出る者はいない、逃走のスペシャリスト。
彼女はオリアナ=トムソン。
そして、上条が自ら指名した最後の協力者である。


上条「オリアナ、来てくれたのか」

オリアナ「お久ぶりね坊や。あなたのご指名だもの。どこへでも行っちゃうわ。
      それじゃ、お姉さんと世界の果てまでランデブーといきましょう」


ワイヤーに吊るされたオリアナが、見る者を虜にするような微笑を浮かべながら、上条とキャーリサの身体をしっかりと抱きしめる。


キャーリサ「おい、あんまりとーまにくっつくのわぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!!」


次の瞬間。凄まじい勢いでヘリの方へと引き上げられていく二人。


騎士団長「逃がすものか!!」

オリアナ「あぁん、駄目よ。お姉さん、恋はいつだって追われるよりも追いかけていたいタイプなの」


オリアナは追跡を試みる騎士団長を挑発するように笑みを滲ませると、単語帳のような形をした魔導書『速記原点(ショートハンド)』のページを口で一枚引きちぎった
同時に彼の視界を阻むようにして煙幕が広がった。
それでもなお空中高く飛び上がる騎士団長。


騎士団長「……!!」


そして煙幕を抜けた先、そこに広がる光景に驚愕する。


騎士団長「これが狙いかっ!」


100: 2011/04/06(水) 00:31:53.31

彼の目に飛び込んできたのは、撃墜された一機のヘリだった。
下方に視線をやると、城門前にいる一人の少女が空へと視線を向けている。
さらに轟音が近くで鳴り響いた。
少女の放った音速を超える弾丸が、ヘリのプロペラを打ち抜いたのだ。
内部にてパニックになっているパイロット達。
乗員の命を奪わないのは何も人道的な理由からではない。
それはつまり


騎士団長「ちっ!」


騎士団長はヘリの機体を受け止めて大地へと舞い戻った。
つまり、騎士団長は兵士の命だけでなく、宮殿内にいる人々の命を守るために、そのヘリの撃墜を食い止めなければならないのだ。
それもこれも、全てはキャーリサの策のうち。
最初から最後まで、彼女の掌から出ることは出来なかったと騎士団長は自嘲気味に笑う。


騎士団長「『軍事』のキャーリサ……こと用兵において、姉のリメエア様に引けを取らんな」


落ちていくヘリへの対応に回らざるを得ない状況を作り上げられ、騎士団長はそこでようやく完敗を受け入れることにしたのだった。


そしてヘリの内部に到着し、それを見下ろす上条とキャーリサ。


オリアナ「ふう。ワイヤーの締め付けがきつくてお姉さん興奮しちゃった」

五和「上条さん、大丈夫ですか?」

オリアナ「あ、ダメダメ」


ヘリを操縦していた五和が声をかけてくるも、オリアナが手をあげてそれを制する。
眼下に見下ろす光景。
戦場と化したバッキンガム宮殿から、戦いの音が消えていく。


キャーリサ「私達の勝ちか? とーま」

上条「そうみたいだな」


ポツリと呟いたキャーリサに、気が抜けたように応える上条。
やがて上条の手を握り、キャーリサは少女のような笑顔を浮かべて言った。




キャーリサ「―――家出してきたし」




上条「――――もう帰さねぇよ」




楽しげに言葉を交わした二人を見て、呆れたようにオリアナと五和は肩をすくめた。


217: 2011/04/16(土) 03:09:13.82

―――英国 バッキンガム宮殿  庭園 14:00


ドォォオオオオオオオオオンッッッ……!!!


シルビア「ヘリが落ちていくな……」

アックア「……我々の……いや、王女の勝ちのようであるな……」

シルビア「ああ……認めるよ」

アックア「では私も離脱させてもらうのである」

シルビア「……片手片足でここまで粘られては何も言えないよ。……時間が経てば回復することを分かっていたのか?」

アックア「言ったはずである。神の子は一度氏に、蘇ったのだと。
      故に聖骸布に包まれようとそれは一時的な仮氏状態に過ぎない。
      ならば、一定時間経過後に聖骸布の効果は無くなると読むのは造作も無いことである」

シルビア「ふん、好きにしろ。私はあの落下物を何とかする役目まで押し付けられたらしいからね」

アックア「貴様達がそれを放棄すれば、或いは王女を連れ戻せるかも知れないのである」

シルビア「冗談でしょ? 私はボンヌドダーム。仕えるべき主君より優先する事など無いんだよ」

アックア「そうか……ではな」

シルビア「ちっ……あれだけやってもピンピンしてるとはね……。
      にしても、あのヘリ全部受け止めるのは騎士団長と二人でもちょいと手が足りないな。
       ……あの馬鹿野郎にも付き合わせるか」


219: 2011/04/16(土) 03:11:57.41

―――英国 バッキンガム宮殿  中庭 14:00


ドォォオオオオオオオオオンッッッ……!!!


神裂「……ヘリが……?」 フラフラ…

オッレルス「うーん……これは一体どういう状況なんだ……?」

神裂「はぁ……はぁ……どうやら上手くいったようですね」

オッレルス「俺には他人をいたぶる趣味は無いんだけどな……頑丈に体が出来ているというのも困ったもんだ」

神裂「まったくです……ですがおかげで……あなたをここで食い止めることが出来ました」

オッレルス「……そのようだな。満身創痍の状態でも、目的を果たした君の勝ちだ」

神裂「そうですね。……では、後は任せます」

オッレルス「……え?」

神裂「このまま王女たちを追われても困りますから。
   では私はこれにて……御免!」 ダッ!

オッレルス「ちょっ! ……まだ随分と余裕だったな、所詮俺の『北欧王座』もこんなものか……」

オッレルス「さてと。それはそれとして……アレを俺にどうしろと言うんだ」

シルビア「おーい! 何ぼんやり突っ立ってんのオッレルスー!」

オッレルス「あ、シルビア。無事だったか」

シルビア「アンタこそくたばって地べた這いずりまわってると思ってたよ」


220: 2011/04/16(土) 03:15:25.38

オッレルス「で、どうしたんだ?」

シルビア「おう。アンタちょっとあのヘリ何とかしろよ」

オッレルス「ははは、冗談きついなシルビア。俺がやるよりシルビアがやった方が確実だし、第一俺は聖人じゃないぞ。
       そんなの物理的に無理に決まって」

シルビア「このシルビア様の新作股割き三角木馬に乗るのとどっちがいい?」

オッレルス「理不尽過ぎるだろ冷血女ぁっ!! 俺だって調整しながらの『北欧王座』はきついんだぞ!」

シルビア「アンタがここでもたもたしてるからあいつら取り逃がしたんだろ!
      英国王女が駆け落ちなんて前代未聞だぞこの馬鹿!」

オッレルス「知るか馬鹿! それに王女本人が幸せならそれでいいんじゃないですかね!!」

シルビア「む……」

オッレルス「…………あ、あれ?」

シルビア「……たまにはまともなこと言うな」

オッレルス「ならたまにはまともに褒めてくれてもいいじゃないか……」

シルビア「ふん、まあ仕方ない。騎士団長ばかりに働かせるのも哀れだしな。一気に老け込んでハゲるよアレは」

オッレルス「……誰が何をやらかしたのかは知らないが、彼らの健闘を讃えて後始末くらいは引き受けてやるとしようか」

シルビア「はぁ……やっぱり来るんじゃなかったな」


221: 2011/04/16(土) 03:18:28.38

―――英国 バッキンガム宮殿  テラス 14:00


エリザード「ははははははははっっ!! あの馬鹿娘め! 本当に男作って国を出ていくとはな!
       おまけにヘリまで落とさせて私達を人質にとりやがった。
       まったく、親をなんだと思ってるんだかな、ふふっ」

リメエア「全然笑いごとではなくてよ、お母様。
      大変なのはこれからだと言うのに」

エリザード「その割には楽しそうだぞ」

リメエア「ええ。キャーリサが前例を作ってくれたおかげで、私も外出がしやすくなるというものだから」

ヴィリアン「姉君……まさか本当に駆け落ちされるだなんて……」

リメエア「うふふ、ヴィリアンは少し羨ましそうね」

ヴィリアン「い、いえ……そんなことは……。でもウィリアム……一声くらいかけていってくれてもいいじゃありませんか……」 ハァ…

リメエア「うふふふ、こちらはまだまだ時間がかかりそうね」

エリザード「まったく我が娘達ながら……いい年をして揃いも揃って破天荒が過ぎるぞ」

ローラ「甘く酸っぱし青けり春の如しね、ふふーん、実に腹立たしきことね。
     やはり見逃したるのは間違いであったかしら」

エリザード「僻むな。お前が行き遅れているのなんてとうの昔から分かってたことじゃないか」

ローラ「んなっ! い、今の発言は許せなしよ! 戦争よ! 決闘を申し込みたるわ!」

エリザード「よかろう! 古き作法に乗っ取って頃し合い……というわけにもいかんから、ここは一つ別の方法で……
       そうだな、音楽での演奏を競うというのはどうだろうか」

222: 2011/04/16(土) 03:21:45.74
ローラ「音楽……? まあ良いわっ! 望みたるところよ! して、パートは何なるの!?
    この最大主教を舐めりてもらいては困りけるわよ! オルガンの演奏くらいこなせなしでは清教派の主は務まらざりけるのだから!」


エリザード「あずにゃんだ」


ローラ「……ふぇ?」

エリザード「どちらがあずにゃんに相応しいかで競い合おう」

ローラ「な、何なの、アズニャンとは……」

エリザード「はぁ……これだからエセ日本語使いは……」

ローラ「ぐっ! だ、黙りて! そのアズニャンとかいうのと日本と音楽に、一体どのような関係がありけるといふの!?」

エリザード「あずにゃんとは現在王室で流行中の日本のテレビアニメであり、娘が家出する原因の一因ともなった壮大な伏線回収がうんぬんかんぬん」

騎士団長「女王テメェ人が落下するヘリを食い止めてる時にアニメの話なんてしてんじゃねぇぞボケ馬鹿コラ!!」 ゲシッ!

エリザード「ぬぐぉ! 貴様いつ戻ったんだ!」

騎士団長「たった今です。まったく……自分の娘が異国の少年と国外逃亡を企てて、
       あまつさえそれが成功してしまったという時に」

エリザード「いいじゃないか。それもまたあの娘の人生だ、好きに生きたらいい。
       一国の王女を力づくで連れ出せる程の男と一緒ならば、どこへ行っても大丈夫だろう」

ヴィリアン「でも……姉君の本来の結婚相手である皇太子殿下は……」

エリザード「話せば分かる方だし、乗り気でないのは向こうも同様だったろう。その程度の尻拭いは母親として引き受けてやるか」

騎士団長「……それはそうかもしれませんが……」

エリザード「お前のそれはアレだろう? 『大事にお世話してきた王女をあんな男に悔しいでもビクンビクン!』ってやつだ」

騎士団長「リメエア様、ヴィリアン様、先に謝罪しておきます。女王陛下を斬り捨ててしまい大変申し訳ありません」

223: 2011/04/16(土) 03:25:44.08

エリザード「分かった分かった! 今のは無しだ! 剣を抜くな! ……ゴホンッ、それで、被害状況は?」

ローラ「国が傾きたることは避けたしね」

エリザード「そこまででは無いと思うが」

騎士団長「負傷者は多数ですが、民間人や来賓のけが人はおりません。全て警備の兵士です。
       氏者0。墜落したヘリの乗組員も全員脱出を確認。強奪されたヘリの乗員も倉庫で発見されました」

エリザード「あれだけ大暴れして氏者0か。さすが我が娘」

騎士団長「ただバッキンガム宮殿は半壊。庭園は踏み荒らされ、正門も見るも無残な状態です」

エリザード「う」

騎士団長「ですが……これは後程ゆっくりと補修していけば良いでしょう……」

エリザード「? 騎士団長……お前……」

騎士団長「……我々より余程あの少年の方がキャーリサ様のことを理解していた。
       それ故の結果です。残念ですが、我々の完敗のようですね……」

エリザード「……ふっ、そのようだな」

リメエア「補修というレベルはとうに超えているけれど」

騎士団長「キャーリサ様がいなくなられた今、我々の為すべきことも他にありましょう」

エリザード「……そうだな。では、次は我々の番だ、騎士団長」

騎士団長「はっ。キャーリサ様があの少年といつ戻られても良いように、まずは政敵の力を削ぐところから」

エリザード「クーデター以来身動きがとりにくかったが、ようやく私達の戦いに移れそうだな」

ローラ「清教派としてこの一件は借りにしたりておくわ。三大派閥の意志が統一されておれば、容易い戦いになりけるのだろう?」

エリザード「ああ。私も娘達に負けてはおれんからな。
       キャーリサのように力づくというのもたまにはよかろう。
       ……ここが女王の国だということを分からせねばならん連中に、ようやく仕置きが出来そうだ」」

224: 2011/04/16(土) 03:27:57.92

―――英国 バッキンガム宮殿 屋根上 14:00


オルソラ「行ってしまわれましたね」

シェリー「そうね、清々するわ」

オルソラ「うふふ、シェリーさん。何だか嬉しそうなのでございますよ」

シェリー「嬉しいに決まってんだろ。ようやく騎士派のクソ共に意趣返しが出来たんだ。
      今夜は祝杯をあげるしかないわね」

オルソラ「ではお付き合いしたいのでございますよ」

シェリー「何でよ」

オルソラ「女として、あのような情熱的でドラマチックな恋模様を見せつけられたら、いてもたってもいられないのでございます。
      この興奮を誰かと共有したいのでございますよ」

シェリー「いや別に私はそういうのは興味ねぇし」

オルソラ「祝杯とおっしゃられるということは、お酒でございますね。
      私、知人に美味しいワインをいただいたのでお持ちするのでございますよ」

シェリー「話聞きやがれ!!」

オルソラ「うふふふ、今夜はあのお二人の愛の逃避行を肴に朝まで女子寮で宴会でございますね」

シェリー「……あー、もういいわよそれで……」


225: 2011/04/16(土) 03:30:54.70

―――英国 バッキンガム宮殿 庭園 14:00


アニェーゼ「いやー! 手に汗握っちまいましたね! バッキンガム宮殿庭園で英国の騎士共をちぎっては投げちぎっては投げる! 
       まだ興奮が冷めやらないです!」

アンジェレネ「あ……あううう……めちゃくちゃ怖かったです……」

ルチア「得難い経験でしたね……ここまでの乱戦はなかなか……生きているのが奇跡です。
     正直私も少しだけ怖……ゴホンッ、まあ……シスター・アニェーゼが楽しそうなので良しとしましょうか」

アニェーゼ「何辛気臭ぇ顔してんですか二人ともっ! ほら、あっちでオルソラ=アクィナスが今晩は祝勝会だっつってますよ!」 バンバンッ

アンジェレネ「な、なんでそんなに楽しそうなんでしょう……」

ルチア「部隊を率いてみて初めて分かる感覚なのかもしれません……」

アニェーゼ「祝勝会の料理にはウメーボシ入りのクリームパスタお願いしますよー!」

アンジェレネ「それは駄目ぇぇえぇええええ!!!!!」


建宮「あいつら何やってんのよ……撤退しねぇで」

浦上「ふふ、女の子としては映画にも負けない展開ですから、アニェーゼ部隊の皆さんも盛り上がってるんですよきっと」

建宮「いやそんな感じじゃないのよ……」

香焼「建宮さん、五和大丈夫っすかね?」

建宮「あん? 何がよ」

対馬「五和の操縦してるヘリには例の彼と王女様が乗ってるのよ。
   五和の精神が耐えられるかどうか……」

諫早「ヘリの操縦を謝らんかが心配だな」

牛深「っつーか五和ってヘリまで動かせたんですね……」

建宮「そのうちガンダムとかも操縦出来そうなのよ。
    ……ま、大丈夫だろ」

香焼「マジっすか? 病んで後ろから刺したり……」

野母崎「ははは、無い無い……」

浦上「そうだよ、五和に限ってそんなの。あははは……」

建宮「はははは……はは……」

対馬「アンタ達顔ひきつってるわよ」

建宮「大丈夫……よな? 五和と女教皇様……」


226: 2011/04/16(土) 03:32:50.24

―――英国 バッキンガム宮殿 回廊 14:00


カツカツ… カツカツ…


土御門「お、ねーちんお疲れさん」

ステイル「……ああ、神裂か。随分ひどいやられようだな」

神裂「……放っておいてください。自分の無力さにうちひしがれているところですから」

ステイル「まあ僕もそうだけどね。最大主教が出てきた時は背筋が凍ったものだ。
      まだまだあの子を守るには力が足りない」

土御門「ありゃ仕方ないって。俺だって焦りまくったし」

神裂「インデックスは……?」

土御門「さっきアックアが連れて行ったぜい。御坂と一緒に学園都市まで帰還組だ」

神裂「え……しかし、上条当麻にはもう……」

ステイル「それはどうかな。あのドが着くお人好しの偽善者が、簡単にインデックスを放り出すとはさすがに信じがたいね。
      もっとも、そんなことをすれば僕が上条当麻を焼き頃しに行くだけだけど」

神裂「あの子の気分も複雑ではないでしょうか」

土御門「まぁ情操教育にも良くなさそうだにゃー」

神裂「それはどういう意味ですか?」

土御門「だからーカミやんとキャーリサは恋人同士なんだから毎晩ゴニョゴニョ」

神裂「ッッッッ!!! そ、それはいけません! あの子にはまだ早い!」

土御門「ねーちんだって未経験のくせにー」

神裂「るっせぇんだよド素人がっ!!!」 

土御門「ゲフッ!」

ステイル「とにかく! それを決めるのは僕らじゃないだろう……それに」

神裂「……失礼しました。……それに?」

227: 2011/04/16(土) 03:35:12.66
ステイル「引き止めたけど断られたよ。皆で来たから、皆で帰るそうだ」

神裂「……そうですか」

ステイル「やれやれ。だがここからが大変だな」

土御門「だにゃー。面倒事が多く参るぜい。オレも当分学園都市にゃ帰れねえですたい」

神裂「ええ。私達も、彼らも。騎士派との遺恨は少なからず残るでしょうし、学園都市との関係がこじれなければいいのですが」

土御門「その辺は王室派、騎士派、清教派で意見が纏まっているようだし問題無さそうだぜい。
     ましばらくはカミやんイギリスに入国できねぇだろうけどにゃー」

ステイル「いや……僕が言いたいことはそうじゃないんだ」

神裂「はい?」

土御門「どうしたステイル」

ステイル「……今から8万6000枚のルーンを回収しなくちゃならない」

神裂「……それは……」

土御門「……マジか」

ステイル「……不眠不休だよ」

神裂「はりきり過ぎましたね……」

ステイル「君達こそいいのか? 一緒に日本へ着いていかなくて」

土御門「そうだぜ神裂ねーちん! カミやんを奪い取るチャンスはもう今しか無いぜい!
     今こそ『堕天使工口メイド』がここイギリスの地に舞い降りる時!
     さあ勇気を出してレッツトライだにゃー!」

神裂「そんなもの手元にあるわけないでしょう……」

土御門「どころがどっこい! オレはいつだってねーちんの味方だからちゃーんと持っtグボァッ!!」

神裂「ド、ド素人が! ななな何で持ってるんですか!」

土御門「それはもちろん……ねーちんの……ため……ガクッ」

ステイル「……同情するよ」

神裂「結構です……」

228: 2011/04/16(土) 03:37:54.89

―――英国上空 ヘリ機内 14:30


バラララララララララララララ… 


オリアナ「あらそう。じゃああなたもあの坊やのことが好きだったのね」

五和「ええ……でもそれも終わっちゃいましたけどね」

オリアナ「大丈夫よ。ほら、まだ寝とったり寝取られたりっていうドロッとした展開が待っているかもしれないものね」

五和「ねとっ! そ、そそそそこまではさすがににに!!!」 グラグラ

オリアナ「ごめんなさい、お姉さんが悪かったから操縦桿はきっちり握っていてね」

五和「す、すみません……」


バンッ! ゴォォォォォオオオオオオオオオオオ……!


オリアナ「あら?」

五和「ここ空の上ですよ!? 誰が扉を開けてるんですか!?」

オリアナ「そりゃ一人しかいないでしょう」

御坂「やだぁあああああ! 落ちる落ちるー!!!」 ジタバタ

禁書「さ……寒いんだよ……温かいスープが、ううんお湯でもいいから飲みたいんだよ……」 ガタガタ

アックア「…………」 ガシッ

オリアナ「おかえりなさい。と言ってもあまり無防備にドアを開けないでね。
      飛行機だったらとんでもないことになっているわよ」

五和「そ、それより抱えられているお二人が何やら危険な様子ですが……どうやってここまで来たんですか?」

アックア「無論跳んできたのである」

御坂「バカぁああああああ!!! 今日一番の命の危機だったわよ!!」

229: 2011/04/16(土) 03:40:17.98
禁書「とうま……お風呂に入らせてくれると嬉しいかも……」 ガタガタ

アックア「……高度は大したこと無いはずであるが」

五和「大したことないのはあなただけですよ」

アックア「それはすまなかったのである」

オリアナ「可哀想に。お姉さんが胸の中で温めてあげる」 ギュッ

禁書「ぎゅむっ! ……はふー……ああ、何だか肉まんに見えてきたんだよ、あむっ」

オリアナ「あんっ! お姉さん、女の子に甘噛みされて新しい性癖に目覚めてしまいそう」

御坂「目覚めんな! ったく……あれ、あいつらは?」

五和「え? ……あの……その……」 モジモジ

オリアナ「そこの後ろよ」

御坂「んー?」 チラッ


キャーリサ「とーま……とーま」

上条「な、何だよキャーリサ」

キャーリサ「いや何。お前の名前を久しく呼んでいなかったし、とーまの名前を魂に刻んでいるの」

上条「何言ってんだかな。ほら見てみろよキャーリサ。景色が綺麗だぞ」

キャーリサ「そんなものより、今はお前を見ていたいぞ」

上条「い、いやー……そりゃ照れるって」

キャーリサ「いーじゃないか……ふふっ……ほら、もっとこっち来い」 グッ

上条「わっ! キャ、キャーリサさん……くっつきすぎじゃないでせうか……」 ドキドキ

231: 2011/04/16(土) 03:45:31.90
キャーリサ「私を拉致したんだ。責任持って私の傍にいることを命ずるし」

上条「そ、そりゃまあ……もちろん」

キャーリサ「そーか……ふふふっ、嬉しーぞ。……んー」 スッ

上条「え」

キャーリサ「私に口付けることを許す。……優しく、愛おしむようにせよ」

上条「よ……よし……んー」

御坂「ちょっと待ったぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

禁書「いくら何でもそれはここではストップなんだよ!!!!!!!!!!」

五和「ああっ! 私もそっちに行きたいのに!」

オリアナ「……正直お姉さんでもちょっとムラッと、間違えちゃった。イラッときちゃったわ」

五和「……いちいち卑猥に言わなきゃ気が済まないんですか……?」

上条「あ、ああ……インデックスに御坂か、お疲れさん」

禁書「まったくとうまは! ちょっと目を離すとすぐこれなんだよ!
    もう私達のことなんて忘れてキャーリサとイチャイチャしてるんだね!
    ねぎらいの言葉くらいかけてくれても罰はあたらないと思うんだよ!」

上条「悪かった悪かった。ありがとな、インデックス、御坂」

キャーリサ「私からも礼を言わせてもらうの。ありがとー」

禁書「ん……ま、まあ上手くいって良かったんだよ」

御坂「別に大したことしてないわよ。門の前で突っ立ってただけだし」

上条「もちろん五和も、オリアナも、アックアも。
    他のみんなにもまた改めてお礼しないとな」

五和「い、いえいえ! 私は上条さんのためならこのくらいのこと全然っ!」 ガタガタッ!

オリアナ「お嬢ちゃん、もう操縦変わりましょうか……? お姉さん隣に座っててムラムr」

五和「ハラハラですね。分かってますから」

オリアナ「ああん、お姉さんのキャラクターなんだから、役はこなさないとね」

アックア「……上条当麻、一連の作戦はこれで終了であるな」


232: 2011/04/16(土) 03:47:35.82

上条「ああ。アックアには特に助けられたよ。何から何まで、どう礼をすりゃいいのか……」

アックア「必要無い。言ったはずである。私は私の名に従ったのに過ぎないと」

上条「……そっか。分かった」

アックア「…………ではな」

オリアナ「ええ!? ここから飛び降りる気!?」

五和「ムラムラはしませんからね」

オリアナ「まだ何も言ってないわよ」

禁書「うう……また寒気がしてきたんだよ……」

御坂「人体ってもんを疑いたくなるわよね……」

アックア「私は傭兵崩れのゴロツキである。
      そこに戦場が無くなれば次の場所へと赴くまでのこと」


ガチャッ バンッ! ゴォォォォォオオオオオオオオオオオオ…!!!!


上条「今度は学園都市に遊びに来てくれよ。アックアなら大歓迎だ」

五和「!!?」 ガタッ!

オリアナ「あら。お姉さんそういうの大好物よ」

アックア「…………気が向いたらな」

上条「ああ、待ってるよ」

キャーリサ「ウィリアム待て……」

アックア「…………」

キャーリサ「ヴィリアンを嫁n」

アックア「……」 ダッ!

キャーリサ「おいっ! ……ちっ、姉として手助けくらいしておこうと思ったのに」

上条「まだまだ先は長そうだな」


233: 2011/04/16(土) 03:49:33.44
キャーリサ「ふん、まーいいの。なー、とーま」

上条「ん?」


チュッ


オリアナ「あらあら」

上条「」

キャーリサ「ふふ……おとぎ話のエンディングはお姫様のキスで幕を閉じるの」

上条「あ……あはは……嬉しいよ、キャーリサ」

キャーリサ「そ、そーか。嬉しいか……! ふふっ!」

禁書「と・う・まぁぁああああ?????」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

御坂「アンタねえ……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

五和「…………」 ブツブツブツブツブツ…

上条「あ、あれ? さ、三人ともどうされたんですかー?
    気の所為か上条さん……三人の背中にまっ黒いオーラが見えているのですが……」

禁書「イチャイチャしすぎなんだよっ!!!!!!!」 ガブッ!!

御坂「いい加減にしろー!!!!」 ビリビリビリビリッ!

五和「……」 ブツブツブツブツ

上条「わぁああああああ!!!! まさかの波状攻撃!!!
    助けてオリアナ、キャーリサ!!」

オリアナ「お姉さんヘリが落ちないか気になって仕方ないからそれは出来ないわ」

キャーリサ「私は寛大だから子供のじゃれ合いくらいは微笑ましく見守っていてやるの」

上条「え……ってことは……」

禁書「とうまには今日と言う今日こそお説教させてもらうんだよ」 ギラッ

御坂「まだまだ目的地にはたっぷり時間があるもんねえ」 ビリッ…

上条「ははは……は……こ、このパターンはアレですね」




禁書・御坂「「お約束ってやつよ(なんだよ)!!!」」



上条「やっぱりぃぃ!!? ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!
    不幸だぁぁぁああああああ!!!!!!!!!!」



234: 2011/04/16(土) 03:52:02.93
11日目


――――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 玄関前


上条「うう……全身が痛い……」

キャーリサ「おー、見事に歯型だらけだな」

上条「ついでに電撃での痺れも追加されてます」

御坂「いつまでグチグチ言ってんのよ」

上条「アホか! 飛行機に乗ってる間中ずっと悪夢にうなされた上条さんの身にもなってみろよ!」

禁書「帰りの機内食はおいしかったんだよ。まさかあんなにいい席で帰れるなんて思ってもみなかったかも」

上条「こっちはこっちですっかり忘れて良い思い出に浸ってるし……」

五和「でも確かにビジネスクラスで帰れるなんて思ってなかったです……よかったんですか?」

オリアナ「あら、問題無いわよ。諸々の経費は全て坊や持ちだから」

上条「…………はい?」

オリアナ「坊や、お姉さんのお仕事はボランティアじゃないのよ。
      報酬はきっちり請求させていただくからね。
      うふふ、成功報酬なだけ良心的でしょう?」

上条「ちょ、ちょっと待て……報酬か……そりゃそうだよな。
    運び屋だもんな……。で、い、いくらくらいかかるの?」

オリアナ「そうねぇ……誰か電卓持ってない?」

五和「携帯電話のならありますけど……」

オリアナ「ありがと。んー、まず仕事の契約料に、軍用ヘリをジャックするために用いた機材、
      お姉さんの英国までの旅費と、帰りのビジネスクラスのチケット6人分に、ここまでの電車タクシー代……それから、ここでの滞在費に危険手当でしょ。
      それからそれから……うん、ざっとこんなものかしら」 カタカタカタカタ ターンッ!

上条「どれどr」

御坂「あ、固まった。見せてみなさいよ。持ち合わせが無いなら貸してあげても……え?」

235: 2011/04/16(土) 03:54:53.02

キャーリサ「おい、私にも見せよ」

オリアナ「ふふふ、お姉さんこれでも業界では引っ張りだこの人気者なのよ」

御坂「おー……これは結構……」

キャーリサ「むー……命がかかっていると思えば妥当か……?」

五和「か、上条さん……足りなければ少しお貸ししますよ……?
    それでも全く足りないと思いますけど……」

上条「オリアナ様。どうかまけていただけないでしょうか」 ドゲザッ

禁書「とうま……情けないんだよ……」

上条「うるせえ! お前らも頭下げろ! こんな額払い終わる頃にはおじいちゃんですよ!」

オリアナ「あは、だーめ。言っておくけどお姉さんの取り立ては結構きついわよ?」

上条「く……上条さんの借金ライフの幕開けか……。そんな笑えない不幸はいらないですのことよ。
    次回からは闇金カミジョウくんが始まります」

キャーリサ「よし、ここは私が払っておこー」

上条「いや俺が勝手にやったことだしそれはいいよ」

オリアナ「ま、あなたにこれを払ってもらうことなんて初めから期待していないからいいわよ。
      上から全部見てたけど、なかなかかっこよかったわ。
      だから……」


チュッ


上条「」

キャーリサ「!」

オリアナ「うふっ……。お姫様専用の大事な唇をおすそ分けしてもらったってことにしておくわ。
      後はいつかお姉さんが困った時に助けてくれればそれでチャラにしてあげる」

上条「な……ななななっ……」

五和「あ……あんなにあっさりと……」

御坂「大人……大人だからなの!?」 ドキドキ…

236: 2011/04/16(土) 03:56:20.19

禁書「あわわわわ……エ、エOチなのはいけないと思うんだよ!」

オリアナ「またお仕事があれば紹介してね。
      報酬は……」 ボソッ

上条「ん?」

オリアナ「身体でも受け付けているわよ?」 クスッ

上条「」 ボンッ

キャーリサ「こらーっ!! とーまから離れよ! それは私のものだし!!」

オリアナ「うふふ、ごめんなさい。それじゃね」

上条「あ、オ、オリアナ!!」

オリアナ「ん?」

上条「ありがとう!! またな!!」

オリアナ「……クスッ」 ヒラヒラ

キャーリサ「ぬー……なんだか釈然としないぞ。負けた気分だし」

五和「私にもあれくらいの積極性があれば……」

御坂「年上ってのはそれだけで有利なのかしら……」

禁書「とうまがデレデレしっぱなしでちっとも面白くないんだよ……」 

キャーリサ「それにしても……何だここは? 日本の、どこだったか」

御坂「神奈川よ。海水浴って季節でもないから寂れてるわねー」

禁書「とうま、ここって」

上条「ああ。『御使堕し(エンゼルフォール)』の時に来たとこだな。
    学園都市の避難場所みたいなもんなのか……?」

御坂「しばらくここに身を隠してろってことかしら」

土御門「ああ。そうだぜい」 ヒョコッ

上条「おぅわ!! い、いたのか土御門!!」

237: 2011/04/16(土) 03:57:24.67
キャーリサ「おー。お前か」

土御門「あんまりにも英国内がバタバタしててめんどくせえからねーちんに後任せて逃げてきたんだにゃー」

上条「後で酷い目にあうぞ……」

土御門「英国の土を二度と踏まない覚悟で出てきたんだぜい……」

キャーリサ「それで土御門、私達はどーすればいい?」

土御門「まあ何日かすりゃ学園都市に戻れるから、ここで爛れた生活でも送っててくれりゃいい。
     戦後処理ってやつが残ってるからにゃー」

御坂「わ、私も?」

土御門「当然。ついでに言えばオレもだ」

上条「ま、戻れるならいいか」

五和「わ、私は女教皇様に全てお任せするわけにはいかないので明日にはイギリスに戻りますね」

御坂「あ、そうなの? せっかくだからもっとゆっくりしていけばいいのに」

五和「皆あちらに残っていますから」

土御門「ま、とりあえず部屋に行こうぜい。
     部屋割りは男女別……っと、いやー。気が利かなくてすまないにゃー。
     オレは個室、女子三人は同室。そいでカミやんとキャーリサが同室でいいな」

キャーリサ「うむ。とーぜんだし」

上条「えええぇぇぇええええええ!!!!!??」

土御門「何だよカミやーん。今まで一緒の部屋で寝てたんだろ?」

御坂「ちょっと! いいわけないでしょ!!」

禁書「そうだよ! そんなの認めるわけにはいかないかも!」

五和「お、おかしな声が聞こえてきたりしてきたら私達どうすればいいんですか!」

238: 2011/04/16(土) 03:59:13.83

御坂「えっ」

禁書「?」

五和「あ……」

土御門「五和はむっつりだにゃー。こんな声が女性陣からあがってるが、キャーリサどうする?」

キャーリサ「全て、却下だし」

五和「むっつり…………」 

土御門「よーし、行こうぜ行こうぜい」

上条「……」 ドキドキドキ…

キャーリサ「とーま、何を想像している?」

上条「ハッ……な、なんでもありませんのことよ!!」

キャーリサ「ふふっ……もはや何の憂いも躊躇いも無い関係だし。  
       お前の望むことをしてもいーんだぞ?」

御坂「はいはいそこまでにしときなさいよー」

五和「そうです! 私達の目の届くところでは好きにさせませんっ!」

禁書「貞淑は美徳なんだよ!」

キャーリサ「ふーむ……さすがに3対1はウザいな。おい禁書目録、ちょっとこっち来い」

禁書「? な、何かな。言っておくけど、私を懐柔しようったってそうは……」

キャーリサ「ゴニョゴニョゴニョ」

禁書「えっ! 御馳走!!?? お肉!??」

239: 2011/04/16(土) 04:04:08.91
御坂「!」

五和「!」

上条「……まさか」

禁書「……おほんっ。二人とも! 叶わない恋なんて諦めて二人を応援するべきかも!!
    私は女の子として素直に二人の恋路を応援するつもりなんだよ!!」 ビシッ

五和「簡単に懐柔されましたね……」

御坂「変わり身がひどいわ……ってかべ、別に恋なんかじゃないわよっ!!」

上条「?」

キャーリサ「禁書目録。いや、これからは愛を込めてインデックスと呼ぶの。お前も私を姉と慕うがいーし」

禁書「お姉さまなんだよ! ご飯を食べさせてくれる女の人とは姉妹の契りを結ぶことにしてるんだよ!」

キャーリサ「そーか。しばらくとーまの家に厄介になるが構わないか。肉はもちろん食わせるが」

禁書「いいに決まってるんだよ!! そうでしょとうま!」

上条「お前はいいのかそれで……」

キャーリサ「何、心配しなくとも家と収入の宛てが見つかればどこかに部屋を借りるつもりだし、それまで置いてくれれば構わないの。
        元々お前達の居た場所だ、私が割り込むのも忍びない」

禁書「キャーリサ……」

キャーリサ「それまでは我慢してくれるか、インデックス。……この前は辛い想いをさせて悪かったの」

禁書「……ま、まあ別に辛くはなかったんけど……そこまで言うならいいんだよ」

キャーリサ「感謝するの」

上条「仲良くなった……のか?」

土御門「契約とも呼ぶにゃー……ま、これはこれでいいんじゃねえか?」

上条「だ、だな……」

キャーリサ「よし。これで戦況は膠着状態だし。
       行くぞとーま」

上条「お、おう……すごいなキャーリサ」

240: 2011/04/16(土) 04:06:41.58
―――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 客室


土御門「んじゃお二人さん。ごゆっくりー、晩飯は7時半からだからにゃー。
     やるならそれまでに済ませとくんだぜい」

上条「何がだよ……」

土御門「またまたー、分かってるくせにー」

上条「もうお前帰れよ!」

土御門「ま、オレは一人のんびりさせてもらうぜい」


ピシャッ


上条「くそう……好き放題言いやがって……」

キャーリサ「ふふふ」

上条「あん? 何か機嫌良さそうだな」

キャーリサ「とーぜんよ! そらとーま! よーやく二人きりだなっ」 ギュッ

上条「おわっと!」

キャーリサ「なかなか良い部屋じゃないか。純和風というのか」

上条「どこがだよ。ボロッボロの畳に古めかしい蛍光灯、年期入った押入れとセキュリティ対策皆無な木製扉ですのことよ」

キャーリサ「んー? それを『わびさび』とか言うんじゃないの?」

上条「いや、これはただボロいだけ」

キャーリサ「ふーむ……そーか。こういう退廃的な雰囲気は嫌いでは無いのだがな」

上条「まあある意味退廃的か……。キャーリサボロっちいの大丈夫なんだな」

キャーリサ「言っておくが、年季ならうちの宮殿もそーとーなもんだし」

上条「あ、それもそうだな。でもああいうのって古い方が味があるっていうか、迫力があっていいよな。
    ハクがつくっていうかさ」

キャーリサ「私から言わせればこの古ぼけた部屋の感じも似たよーなものだし。
       まー、住みたいかと言われると話は別だが」

上条「ほらやっぱり」

キャーリサ「うるさいなー。楽しんでるんだ、水を差すな」

上条「悪い悪い、そんなつもりじゃないよ。それより、晩御飯まで何しようか」

キャーリサ「泳げるような状況じゃないしなー……これは、うん、アレだ」

上条「アレ?」

キャーリサ「ふふふ……アレと言ったら、アレしかないだろー?」

上条「キャ、キャーリサ……?」

キャーリサ「とーま……」

上条「あ……」


241: 2011/04/16(土) 04:07:38.22

―――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 客室(女子部屋)


キャッキャッ ウフフ…


御坂「隣の部屋から楽しそうな声が聞こえてくるわね」

禁書「せめて部屋くらい離して欲しいんだよ……」

五和「テ、テレビでもつけましょうか」

御坂「そうね……なんか虚しくなってきたし……」

禁書「あれ? なんだか隣が静かになったんだよ?」

五和「!」

御坂「?」

五和「ま、まずいですよ……御坂さん」

御坂「まずいって、何が?」

五和「……始まっちゃったのかもしれません」

御坂「だから何がよ」

五和「そ、その……ゴニョゴニョゴニョが」

御坂「え? 何?」

五和「だ、ですから!! ●●●がです!!!!」

御坂「ええぇぇぇええぇぇええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!?????????????」

242: 2011/04/16(土) 04:09:28.40

禁書「な、何を言い出すのかないつわは!!! とうまだっていくら何でも隣に私達がいるのを知っててそんなことするはずがないんだよ!」

五和「果たしてそうでしょうか……上条さんも誠実な方とは言え男性ですし、お二人は大きな障害を乗り越えて結ばれたばかりの恋人同士ですよ……?
    二人きりになったらどうなるか……少なくとも私なら押し倒します」

御坂「そ、そうなの……って言うかあんた何気にとんでもないこと言ってるわよ」

禁書「むむむー……キャーリサには邪魔するなって言われてるけど、これは捨て置くわけにもいかないかも」

五和「ど、どうしましょう……」

御坂「うーん……」

禁書「様子を見に行くべきかも!」

五和「で、でもお二人はコトの真っ最中ですし……」

御坂「ま、真っ最中って……そんなこと……」 カァァ…

禁書「まだそうと決まったわけじゃないんだよ!
    とにかく行ってみよう!」

五和「そ、そうですね……」

御坂「ほ、ほんとに行くの?」

禁書「短髪、女は度胸なんだよ! このままじゃとうまが遠い所に行ってしまうんだよ!」

御坂「あんたにそんなことで説教されたくはないけど……でもそうね!
    黙って待ってる訳にはいかないわ! 行きましょ」

243: 2011/04/16(土) 04:11:08.69

スタスタスタスタ…
    

御坂「部屋の前まで来たのはいいけど……やっぱり声は聞こえてこないわね」

五和「シッ! キャーリサ様が声を押し頃しておられる可能性があります。
    意外と恥じらいのある方なのかも……」

御坂「あんた結構ノリノリね」

五和「そ、そういうわけでは……」

禁書「ラチが開かないんだよ! 強行突破するべきかも!」


ガチャッ!


御坂「あっ! ちょっ! 心の準備がまだっ!!!」

禁書「とうまー! 何してるのかな!!!」 シャー

五和「上条さんっっ!! 私も混ぜてください!!」 バッ

御坂「おい」


シーン……


禁書「……?」

五和「こんなときの為に私いつでも準備を……あれ?」

御坂「いない……わね」

五和「そのようですね……。まだ夕食まで時間もありますし、お散歩にでも行かれたんでしょうか」

御坂「な、なーんだ。どうせそんなこったろーと思ったわよ……! 考えすぎだったみたいね……」 ホッ…

五和「何か引っかかりますけど……まあ杞憂で良かったです」

禁書「ふう……さすがのとうまもお日様が出ているうちからいかがわしいことなんてしないよね」

御坂「さ、私達もじっとしてても仕方ないし、何かしよっか」

五和「あ、じゃあせっかくなので―――」


244: 2011/04/16(土) 04:12:08.07

―――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 大浴場


チャプッ…


キャーリサ「ふう……なかなかいい湯加減だし。
       昼間っからのんびり風呂はいーな。この前のデートではいまいちゆっくり出来なかったが、今日はそーではないし」

キャーリサ「これと言って広くも無いが、まー充分だろ」

キャーリサ「な、とーま?」

上条「ブクブクブクブク……」

キャーリサ「おーい。何をそんな端っこでもじもじしてるの。
       もっとこっち来い」

上条「そ、そんなことしたら見えちまうだろ!」

キャーリサ「いーではないの。この前も一緒に入ったし、第一もう既に一回見てるだろー?」

上条「この前は水着着てたし、その前日キャーリサの裸見たのなんて一瞬でほとんど覚えてねぇよ!」

キャーリサ「まったく可愛いなー。ならとーま……」 チャプチャプ

上条「な、なんでせうか……」

キャーリサ「これでどーだ」 ギュッ

上条「!!!!!!!!!!」

キャーリサ「こーして後ろから抱き着いたら見たくても見えないだろー?」 ムニムニ

上条(か、代わりにもっと大変なことが起こっていますのことよ!)

上条「キャーリサは恥ずかしくないのか……?」

キャーリサ「そりゃ恥ずかしいが……お前のそーいう反応も好きだしな。
       それ以上に、お前を誘惑したい」

245: 2011/04/16(土) 04:13:41.24
上条「言っちまったら悩ましさの欠片も無いぞ」

キャーリサ「それは凹むし。私にも恥じらいくらいあるぞ。知ってるだろ」

上条「堂々としすぎだっての」

キャーリサ「こらえてるの。意識してしまったら……恥ずかしくて耐えられないし……」 キュッ

上条「う……」 ドキッ

キャーリサ「ふっ、ドキッとしたか?」

上条「し……した……」

キャーリサ「そーか……」

上条「……キャ、キャーリサ!」 

キャーリサ「! な、何?  急にこっちを見るな……びっくりするし……」

上条「キャーリサ……」 スッ

キャーリサ「ぁっ……と、とーま……」

上条「誘ったのはお前だぞ……」

キャーリサ「分かってるし……優しくs」


ガララッ… ワイワイガヤガヤ…


上条「っ!」

キャーリサ「! 誰か入って来た! か、隠れろとーま!」 バシャッ!

上条「もごっ!!」 バシャバシャッ

御坂「ふーん、思ったよりは綺麗なお風呂じゃない」

五和「そうですね。潮風も心地良いですし、明るいうちから入るのも贅沢です。
    男女別れてないのが少し心配ですけど……」

禁書「おっふろーおっふろーおっふーろー♪
    泳げるくらいの大きさのお風呂なんて滅多に入れないから嬉しいんだよ!」

246: 2011/04/16(土) 04:14:52.94
御坂「ほら、ちゃんとかけ湯しなさいよね。走ったらツルッと転ぶ……ってあんたここにいたのね」

キャーリサ「! ん、うむ……」

キャーリサ「(なんだこいつらだったのか……。隠れなくてよかったな)」 ヒソヒソ

上条「(むしろあいつらだからこそだろ……。バレたら上条さんどんな目に合うか……)」 ヒソヒソ

キャーリサ「(確かに。……おい、あいつらの身体見るんじゃないぞ)」

上条「(そんな余裕無いって……)」

禁書「どうしたのキャーリサ?」 チャプッ

上条「!!」

上条(ち、近い! インデックスさん、全部丸見えですのことよ!!)

キャーリサ「んー? いや何でもないし」

五和「上条さんお部屋にいらっしゃいませんでしたけど……お出かけですか?」 プルンッ

上条「!!!!!!」

上条(でかぁああああああああああああああい! 説明不要!!)

キャーリサ「いやその……土御門の奴と一緒だし」

御坂「あ、そっちだったか。どーりで静かなはずだわ」 ジャブジャブッ

上条(……これはこれでなかなか……) ゴクリッ

御坂(おかしいな……もう一人誰かいるような気がするんだけど、気の所為かしら) キョロキョロ

キャーリサ「! お、おい御坂美琴! お前何キョロキョロしてるの?」

五和「何か探し物ですか?」

御坂「あ、ううん。 違う違う。私って電磁波で人が周りにいたりすると大体分かるんだけど、
    それが今ここにいる人数より多く感じるのよねー」

キャーリサ「!」 ビクッ! バシャッ!

御坂「……?」

247: 2011/04/16(土) 04:17:27.45
禁書「キャーリサ?」

キャーリサ「そ、それは便利な力だし。でも見ての通りここには4人しかいないの」

五和「もしかして幽霊とかでも分かったりするんですか?」

御坂「ゆ、幽霊!? はは……そんなのい、いるわけないじゃない」

禁書「じゃあどうして短髪は他にも誰かいるように感じたのかな」

御坂「……ま、まさか覗き、とか……?」

キャーリサ「とーまはそんなことしないの!」

五和「そうです! 上条さんだったら私覗かれてもいいですし!」

御坂「あーもう分かった分かった! 多分私の気の所為よ」

禁書「ちょっと待って欲しいんだよ。どうしてキャーリサはとうまの名前を出したのかな?
    私達誰もそんなこと言ってないんだよ」

上条「!」

キャーリサ「そ、それは……」

五和「そう言えば確かにおかしいです。キャーリサ様、先ほどからずっとそこを動きませんけど何か隠しているんじゃないですか……?」

御坂「ま、まさかあいつと一緒にお風呂に……!」

五和「そしてお風呂でいかがわしいことを……」

キャーリサ「ん、実は……」

上条「(言っちゃらめぇえええ……!!!)」

キャーリサ「(……わ、わかったの)……そ、そんな訳ないだろー! 
        夜明けの雪原のよーに無垢で清楚な淑女たる私が真昼間からそのよーな真似するか」

五和「……そ、そうですよね」

禁書「…………」 ジー

キャーリサ「ほ、ほらもーいーだろ。それより今日からしばらく何をして過ごすか話合おーじゃない」

248: 2011/04/16(土) 04:19:15.93

禁書「……分かったんだよ」

御坂「ちょっと遠いけど横浜中華街でも行く?」

禁書「中華街!? 中華料理だね! 行きたいんだよ!!」

五和「あまりここを離れるのは良くないんじゃないでしょうか……」

御坂「えー、でもここじゃほんと何も無いわよ?」

キャーリサ「んー……しかしなー……むっ」

五和「え……な、なんですか?」

キャーリサ「お前……脱ぐとすごいな」

上条「ブッ!!!」

五和「も、もう! キャーリサ様何言い出すんですか!
    それにキャーリサ様だって……なんというかこう……」

御坂「日本人とはモノが違うって感じよね……すごいわ」

キャーリサ「わ、私のことはいーし!  五和、ちょっと触らせろ!」 バシャッ

五和「きゃっ! あっ!! だ、駄目ですよキャーリサ様!」

キャーリサ「よいではないかよいではないか! こーやるんだろー? 時代劇ではお代官がこーやってるのよく見たぞー」 ムギュムギュ

五和「ど、どんな時代劇見てるんですか! ぁっ! だ、だめ……!」

禁書「むー……なんか面白くないんだよ」

御坂「確かに私達じゃあんなこと出来ないわね……」

禁書「まあでも私は短髪よりは胸あるんだよ!」

御坂「っ! なっ、そ、それはとないわよ! 見なさい! 言っておくけど、これでもBはあるんだからね!」

禁書「ムキになるところが哀れなんだよ。私だってこうして寄せれば……ほら! 谷間のできあがりなんだよ!」 ズィッ!

249: 2011/04/16(土) 04:22:24.04

御坂「わ、私だってそれくらい! ほらっ!!」 ムギュッ

キャーリサ「見よ五和、あれが底辺の争いというものだし。悪あがきが見てて微笑ましーな」

五和「だ、大丈夫ですよお二人とも! その年齢ならまだ成長しますから! きっとたぶんもしかしたら!」

御坂「上から目線禁止!」

禁書「大事なのは総合力なんだよ! 大きいだけじゃ下品かも!」

キャーリサ「ほほー。ではその総合力とやらを確認させてもらうとしよー。そらっ!」 バシャッ

御坂「わぷっ!!」

禁書「な、何する気!? そ、そこは触っちゃ、あっ!」

キャーリサ「ふふっ……子供のくせにいっちょまえに膨らんでいるじゃない。
        成長が楽しみだなインデックス」

禁書「そ、そんなことしちゃ……ぁっ!」

キャーリサ「よーし御坂、お前も触ってやるし!」

御坂「い、いいわよ! ちょっ! あ、駄目っ!」


アーデモナイコーデモナイ!

バシャバシャ!

キャッキャッ!


上条(ありがとうございます!!! いいもん見せて頂きました!)

上条(それにしても……いつになったら出られるんだ……頭がクラクラしてきたぞ)


禁書「うう……もうお嫁に行けないんだよ……」

御坂「黒子にしか触られたことないのに……」

五和「お、お二人とも、大丈夫ですか……?」

キャーリサ「ふむ、やはり若さだな。ハリはある……羨ましいし」

御坂「見てなさいよ! いつか目に物見せてやるから!」

250: 2011/04/16(土) 04:23:00.91

キャーリサ「ふふふっ、楽しみにしているし……っと」 フラッ…

キャーリサ(いかん……のぼせそーだし……)

五和「あ、もうこんな時間ですね」

御坂「げっ! 二時間近く経ってるじゃない。キャーリサあんた大丈夫? 顔真っ赤よ。
    私達来るより前から入ってたんでしょ?」

キャーリサ「ん……うむ……」 フラフラ

禁書「上がった方が良さそうなんだよ」

五和「私達も上がりましょうか」

御坂「そうね。言ってる間に夕食だし」

禁書「熱いんだよ……」

キャーリサ「……そーだな、出るの……」 フラフラ…

御坂「しっかりしなさいよ」

五和「あとでお水もらってきますね」


フラフラフラ… ペタペタペタ…

ガラララ… ピシャッ!


上条「…………」

上条「……なかなか素敵な光景でした……」

上条「……そして上条さんももう……駄目…………」 バシャッ!


251: 2011/04/16(土) 04:25:08.73

―――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 客室


上条当麻は朦朧とする意識を覚醒させる何者かの気配を感じ、瞳を開いた。


上条「……ハッ!」


目線の先には薄汚れた客室の天井。
純和風の趣と言えば聞こえはいいが、結局のところはただの小汚い海の家の六畳一間の中だった。
本日自分たちが宿泊するその部屋の布団の中に上条は寝かされている。
むくりと体を起こすと、意識がまだ少しハッキリとせず、首元がフラつくのを感じた。


キャーリサ「とーま……大丈夫か?」


傍らから心配そうにキャーリサが顔を覗き込んでくる。


上条「うーん……まだ頭がボーっとするな……」


頷き頭を抑える仕草をして、ようやく上条は自分が風呂場で倒れて自室へ運びこまれたのだと言う事に気がついた。
誰かが着せてくれたのか、今は薄水色のパジャマを着用している。
全裸で客室まで担ぎ込まれたわけではないと知ってようやくほっと胸を撫で下ろした。


キャーリサ「なかなかあいつらが出て行かなかったしな……次からは混浴はもー少し気を付けないと」


苦笑いしながらもどこか楽しそうなキャーリサ。
彼女も自分と同じく長時間入浴していたが、特になんとも無さそうな雰囲気だった。
強いて言うならば、頬や耳にまだほんのりと赤味が差しているということくらいだろうか。


上条「懲りないところがすげえよ……で、今何時?」

キャーリサ「夕方の六時半だし。まだ夕食までは時間があるな」


252: 2011/04/16(土) 04:27:07.74

キャーリサは左手に着けた腕時計を見ながら言う。
風呂に入り始めたのが4時前だったから、倒れてからまださほど時間は経っていないらしい。


上条「そっか。他の連中はどうしてる?」


姦しい声やにゃーにゃーうるさい声が聞こえないので尋ねてみる。
するとキャーリサはどこか困ったような顔で笑った。


キャーリサ「部屋に帰した。お前が風呂で倒れてることに土御門が気付いた後大慌てだったの。
       ま、お前の体調に障ってもいかんしな。
       土御門もお前にとりあえず寝間着のパジャマを着せて出て行ってもらった」

上条「わかった、ありがとな。あいつらにも心配かけたし謝ってこないと……っと」


倒れている自分の周りで大騒ぎをしている一同の顔が目に浮かび、上条も苦笑い。
しかし一応何ともなかったと報告しておこうと思い、立ち上がろうとすると、キャーリサが上条のパジャマの裾をつまんで立ち上がるのを阻んだ。


キャーリサ「……」


無言でそっぽを向くキャーリサ。
先程よりも頬が赤いのは気の所為ではないだろう。


上条「な、なんでしょーか……?」

キャーリサ「……せっかく二人きりなんだ。もー少しいーだろ」


言って、上条との距離を詰めてくるキャーリサ。
風呂上がりの清潔な香りが鼻を掠めて、いらぬ妄想が頭を駆け巡っていく。


上条「と言いつつ何故に上条さんのシャツのボタンを外すんですかねぇ……」


ふと見ると、キャーリサが両手で上条のパジャマの前ボタンを一つ一つプチプチと外しているところだった。
ぎょっとする上条に、キャーリサは妖艶に微笑んで着ている赤いカットソーの襟元を掴み、そこから覗く仄かに上気した胸の谷間を見せつけてきた。


キャーリサ「私のも外せ、とーま」


淫靡に歪む薄桃色の唇に理性を持って行かれそうになるのを必氏で拒みながら、視線を逸らしつつ上条は答えた。


253: 2011/04/16(土) 04:29:23.42
上条「外すも何も、ボタンなんか無いぞ」

キャーリサ「だから……この中に、下着のホックがあるし……」


今度はやや強引に、体重を預けるようにして前のめりになったキャーリサがカットソーの胸元を人差し指で引っ張った。
そこにチラリと見えたのは、キャーリサのイメージとはかけ離れていながらも、清純な魅力を醸し出す白いレース。


上条「ブフォッ!! ななななっ! まだご飯も食べてないうちからそんなことを!?」


また眩暈を起こしそうな程の色気に、上条はしどろもどろになって何とか取り繕う。


キャーリサ「いーじゃない。……体も清め、食前の腹ごなしにちょっとイチャイチャしよーじゃないか」


イチャイチャとは言うが、こんな柔らかそうな白い双丘を見せつけられて、冷静でいられる自信が無い上条。
このままなし崩し的にコトに及んでしまいそうな気がして、それを意識し始めると今度はその胸元から目を離せなくなってしまった。


上条「お、おお……」 

キャーリサ「体もいい具合に火照ってるし……ふふっ、夜に備えて準備運動と行くか?」


挑発するキャーリサの表情には大人の余裕がある。
この前まで「自分を抱きたいか?」などと訊いていた人物とは思えない誘惑に、上条は生唾を飲み込みながらキャーリサを見つめ返した。


上条「キャ、キャーリサ……い、いいのか?」

キャーリサ「さーとーま……まずはどこから触って欲しーの?」 


キャーリサの繊細な指先が、はだけられた上条の胸元をスッと撫でる。
絹糸のようななめらかな感触に、上条は布団で隠れたままの自らの下半身がよろしくない状態へ変化していくのを感じていた。


上条「あ……」


254: 2011/04/16(土) 04:31:03.30
キャーリサ「私は年上のお姉さんだし……お姉さんの言う事には従え」


上条の耳元で囁きながらキャーリサは胸板を弄ぶ指先をしなやかに動かす。
やがて抱き着くような恰好となり、カットソー越しに押し付けられるキャーリサの豊かな肉が形を変える感触に上条の思考能力はどんどん奪われていった。


上条「……お、王女じゃないんですか」


苦し紛れにでも何かを口にする。
そうでなくては、上条の理性は音を立てて崩れていきそうだったから。


キャーリサ「あー……」


考え込む仕草をするキャーリサ。


上条「……?」


意外な反応に、上条は首を傾げる。
だが



キャーリサ「いや、今はただの恋人だし」



悪戯っぽく微笑んだ小悪魔のような表情に、上条はこれ以上自らを押さえつける自信を無くした。


上条「!」 


早鐘を告げる心臓の鼓動は押し付けられたふっくらとした感触の中に溶けて行きそうになり、
彼女と同じ時間と空間の中で同じ鼓動を刻みたいと言う欲求が首をもたげる。
少し体を離したキャーリサは、上条の頬を撫でながら小首を傾げて微笑を滲ませた。


キャーリサ「まったくお前は……結局風呂であいつらの裸見てたろー?
       よかったなー、若い肌はツヤがあって思わず目を奪われたか?」

上条「い、いえそんなことは……あ、ありませんですよー……?」


まともな答えなど返せない。
大浴場で見た御坂や五和達の身体は確かに青少年たる上条にとって刺激的なものではあったが、それでもこのスカイブルーの透き通った瞳には叶わない。
金糸の髪も、白磁の肌も、全てが上条を魅了するのは、他ならぬキャーリサが恋人であるから。
理性なんてさっさと失ってしまえと言わんばかりに艶めかしく誇示される肌の色と香りの中で、上条は傍らに寄り添う愛しい彼女の姿以外が視界から消えていくのを感じた。


255: 2011/04/16(土) 04:32:36.05

キャーリサ「ふふっ……だがすぐに忘れさせてやるし。
       とーま」 


キャーリサは上条の後頭部にそっと右手を添え、鼻先を近づける。
2センチにも満たない、甘い吐息のかかるその距離で、スカイブルーの瞳に上条自身が映っているのが見えた。


上条「は、はいっ!」


声をあげるだけの機械と成り果てる他無い上条を嘲笑うかのように、キャーリサは桜色の唇を艶めかしく動かして、やがて告げる。


キャーリサ「お前は私だけを見ていろ。生涯ずっとだ。
       他の女になど見惚れるな。……悲しくなるの」


勇敢で苛烈な眼差し。けれどそれは繊細で可憐な少女の口調で愛を乞う。
上条は今断言できる。
自分が見惚れるものなど今、この世に一つしかない。
そしてそれは、目の前にあると。


上条「す、すみませんでした……」

キャーリサ「いー子だ……可愛いな、お前」


心を奪われたように小さく首肯した上条に、キャーリサは世界を魅了する凄絶で艶麗な微笑を浮かべて言葉を紡ぐ。
それはまるで、奉ずるように


キャーリサ「御褒美をあげるの」 

上条「キャーリ」


上条の言葉は終ぞ世界に向けて放たれることは無く。
ただ唇に柔らかな感触と、自らの身体が背中から布団に沈み行くのを感じたところで、上条の意識はいずこかへと吹き飛んでいった。


261: 2011/04/16(土) 04:59:49.52

―――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 女子部屋


御坂「ふぁ~あ……なんかやることないと暇ねー……」

禁書「とうまは大丈夫なのか心配なんだよ」

五和「私達が上がってから入られたのならそう長い時間じゃないですし、大丈夫ですよ」

五和(本当に上がってからなら、ですけど……そんな短時間でのぼせませんよね……?
    あのときもしかして上条さん、お風呂場にいたんじゃ……)

御坂「色々あったし疲れてたんでしょ」

五和(それもあるとは思いますけど……まあ確認することも出来ないですし、上条さんならいいんですけどね……)

禁書「お腹減ってきたかも……」

御坂「あんたさっきお風呂上りにアイス買ってあげたでしょうが。晩御飯食べられなくなるから我慢しなさい」

禁書「私がアイスの一つ二つで晩御飯が食べられないなんてありえないんだよ!」

御坂「そんなことで怒られても……知らないわよ」

五和「ガムならあったと思いますよ、食べますか?」

禁書「わーい! もちろん食べるんだよ!」

五和「ふふ、ちょっと待って下さいね。えーと……カバンの中にたしか……」 ゴソゴソ…

禁書「ガムーガムー」

御坂「ったく子供なんだから」

禁書「むっ、それはご挨拶かも! むしろガムで妥協してあげようという私の心遣いを褒めるべきなんだよ!」

262: 2011/04/16(土) 05:00:51.16

御坂「あーはいはい。そういうことにしといてあげるわよ……って、五和、どうしたの?」

五和「……み、御坂さん……何か聞こえませんか……?」

禁書「?」

御坂「何かって、何よ?」

五和「こ、声みたいなものが……」

御坂「声? ……」


アッ… ンッ… 


御坂「ちょ、ちょっと……や、やめてよね。まさかほんとに幽霊とか言うんじゃないでしょうね……」

五和「そ、そうじゃありません……この声は……」


トーマァ…ァンッ


御坂「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

五和「御坂さん」 スッ

御坂「ちょ、ちょっと……何する気……」

禁書「? 二人ともどうしたの? 五和、ガムはまだなのかな?」

五和「これ、全部食べていいですよ。だからここで大人しくしててくださいね」 ドサッ

禁書「え! ほんとに! わかったんだよ!」 ガサガサ… ガムガムガムガムガムガムガム

御坂「ちょ、ちょっと五和ってば……ほんとに行くの……?」

五和「い、いえ……これはきっと、お約束でよくあるマッサージの類だと思います」

御坂「へ?」

五和「ほら、いかがわしい声が聞こえてきたと思ったら実はマッサージしてるだけだったってパターンよくあるじゃないですか。
    あれですよきっと」

御坂「な、なるほどね……確かにあいつならおおいに有り得るわ」

263: 2011/04/16(土) 05:03:13.91

五和「さっきもお風呂でみんなで触り合いなんていうベタをやらかしたところですし……一応セオリーには従おうかと……だからお二人はここで待っ」

御坂「おっけー。心配かけたあいつにお説教してやんないとね! 行きましょ!」

五和「あ、あの……御坂さんはやめておいたほうがいいと思いますけど……」 ボソッ

御坂「え、何? ほらさっさと行くわよ」

五和「あ……」

五和(……私は4人同時プレイでも一向に構いませんからね、上条さん……!) グッ

御坂「ちょっと出てくるからあんたはここで待ってなさいよ」

禁書「ふぁーい、いっへらっはいなんらよ」 ガムガムガムガムガムガムガム


ガチャッ バタンッ

スタスタスタスタ…


御坂「ったく、あいつもどういう星の下に生まれてきてんだかねー。
    ラブコメかっつーの」

五和「典型的なツンデレの御坂さんには言われたくないでしょうね」

御坂「あ、あんた何か機嫌悪い……?」

五和「い、いえ別に……」

五和(正直気が気じゃないです……出来れば嘘であってほしいです)

御坂「よーし、んじゃ開けるわよー!」 ガチャッ!

五和「あっ!!」

御坂「こらー!! あんた達何やってんのよ!!!」 バーンッ!


キャーリサ「とーまぁ……もっと下も触って欲しーnえ?」 モゾモゾ

上条「こ、こうk……え?」 モゾモゾ

御坂「」

五和(お二人とも裸でお布団に……や、やっぱりそっちでしたか……。
    正直きついです……で、でも本番は阻止できましたよねっ)

265: 2011/04/16(土) 05:05:21.55

御坂「え? 何? え?」

キャーリサ「お、おいっ! 取り込み中だしっ! 閉めろ!!」 ババッ

御坂「え、やだ嘘……え? 何これ? え?」

上条「ど、どどどどどうしたんですか二人ともっ! 部屋に入るときはノックをあばばばばばばばっ!!」

御坂「な……な……何してんのよ……あんた達」

キャーリサ「何って……それ言わせるの……? 
        私達は恋人同士だし……いーだろ……したって……」 カァァ

御坂「」 ピシッ!

五和「か、上条さん!」

上条「は、はい何でしょうごめんなさい!」

五和「わ、私も混ぜてください!! 私もがんばりますからっ!!!!」

上条「」

キャーリサ「アホかぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!
       駄目に決まってるだろーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」

五和「いいんです! この際もう恋人になるのは諦めます! だから代わりに上条さんの子供を産んで育てますから!」

キャーリサ「さらっと恐ろしいことを言うな!! とーまの子は男女の姉妹で男はアーサー、女はアルトリアと名前も決めているし!
        ちなみに愛犬の名前はウィリアムにする!」

上条「」

御坂「」

五和「ちょっとくらいいいじゃないですか! キャーリサ様ばっかりずるい!!」

キャーリサ「ずるくないし! 私ととーまはもう将来を誓い合った仲なの!
       とーまはいずれはグラストンベリに居を構えて私と共に覇道を行くのだから邪魔をするな!」

五和「そんな獣道を上条さんに歩かせないでください!」

267: 2011/04/16(土) 05:08:28.23

キャーリサ「ええいうるさい! とーまの子種は私のものだし! 誰にも一滴たりとも渡さん!」

五和「おすそ分けしてください! か、上条さん! 失礼しますね!」 ゴソゴソ

キャーリサ「こら! とーまのパンツを下ろそうとするな! 私だってまだ何もしてないのに!」

御坂「」


ギャーギャー! アーデモナイコーデモナイ!


上条「ハッ……あ、あまりの事態に意識が飛んでたぞ。って二人とも! 上条さんのパンツのゴムなんか引っ張って何をして……」

キャーリサ「とーまは黙ってろ! お前は天井のシミでも数えていればいーし!」

五和「上条さん! 私本読んで色々勉強しましたから任せてくださいね! 色々と挟めますから!」

上条「一体そりゃ何の話……」


ガチャッ


禁書「もー、隣の部屋まで聞こえてるんだよ。何してるのか……」

土御門「カミやんまた痴話喧嘩かにゃー。いい加減にしないとオレも引き金引く指が軽くなっちまう……」

キャーリサ「どけ五和! とーまの童Oは私が年上らしく優しく狩り取るの!」

五和「じゃあ私も混ぜてくれるて約束をしてくださいね!」

禁書「な……」

土御門「にゃー……」

上条「あ……」

キャーリサ「ん?」

五和「え?」

御坂「」

土御門「……」

禁書「……」

上条「ふ、二人とも……ど、どうしたんですかー……顔が怖いですよー……?」

土御門「カーミやーん」

禁書「と・う・まぁぁぁぁぁ……」

上条「は、はひ……あのやっぱりこのパターンって……」



禁書「今回もやっぱりお約束なんだよっ!!」

土御門「ああ、ブチ頃しだにゃー」 


268: 2011/04/16(土) 05:13:05.79

??「おーい当麻ー。またこの辺来てるって言うから来たぞー、元気でやってるかー?」

??「あらあら刀夜さん。何か当麻さんは取り込み中みたいですよ。あちらの部屋から大きな声が」

刀夜「はは、友達とはしゃいでるみたいだな。楽しそうでいいことじゃないか、なあ母さん」

詩菜「そうね刀夜さん」

刀夜「当麻ー、何やって……」

詩菜「あらあら……?」


禁書「大体とうまはいっつもそうなんだよ!! 少しは私のことも思い出してくれてもいいとは思わないわけ!? 
   もっと近くにいるインデックスのありがたみを分かるべきなんだよ!!」 ガジガジガジ!

上条「いでぇぇえええええ! やめろインデックス! そして土御門も銃向けるのやめろぉぉぉおおおおおお!!!!!!!!!!」

土御門「カミやーん。射撃訓練だにゃー。連射だってしちまうぜい」 パンパンパンッ!

上条「やめれー!」


刀夜「ははは、見てみろ母さん。当麻のやつ友達と仲良くやってるみたいだな」

詩菜「うふふ。そうね刀夜さん。ところで、あの女の子達は……」


キャーリサ「五和! いい加減にしないとお前次元ごと斬るぞ!」

五和「嫌です! やっぱり上条さんを諦められません!」

キャーリサ「ええい悪あがきを!」 グィイッ!

五和「何と言われても好きなものは好きなんですっ!」 ガシィッ!

上条「キャー! エOチー! 上条さんのパンツのゴムがだるだるですのことよー!!」

御坂「セ……セック……何それおいしいのかしら……あはは……サ、サックスのことよね。
    木管楽器の……うふふふ……吹奏楽部に入っちゃおうかなー……」

269: 2011/04/16(土) 05:14:56.38

詩菜「当麻さんの主に下腹部辺りに纏わりついてるみたい。
    あらあら、当麻さんたら随分と女の子に人気があるのね。
    うふふ、まるで誰かさんそっくりじゃありません?」 ゴゴゴ…

刀夜「!! か、母さん一瞬怖かったぞ。……コホンッ、おい当麻。
    せっかく来たんだから無視せずお友達を紹介してくれ。
    まあ見た事ある子が多いけど、改めて……」 スタスタスタ

キャーリサ「外野は黙っていろっ!!!」 ゲシッ!

五和「今大事な話をしていますっ!!!」 ゲシッ!

刀夜「ごはぁっ!!」  

キャーリサ「あ」

五和「あ」

御坂「あははは…………ハッ! あ、あれ……?」

詩菜「あらあら、刀夜さんたら。ベタベタね」

キャーリサ「す、すまないの、ええと……おいとーま、お前の知り合いか?」

五和「ごごごごめんなさい! つい勢い余って! あれ……上条さんに似てる……?」

上条「いてて……へ? あ」

刀夜「ははは、元気そうだな当麻……」 ヨロヨロ…

禁書「とうまぁぁああ、まだ話は終わって……あ、とうまのお父さんなんだよ」

キャーリサ「っ!」

五和「っ!?」

御坂「ああ、大覇星祭の時にちらっとお会いした……」

上条「インデックスと土御門と御坂は知ってたよな。
    キャーリサ、五和、俺の父さんと母さんで」

270: 2011/04/16(土) 05:17:15.04

五和「はじめましてお義父様、お義母様。
    上条さんにはいつも  と  っ  て  も  仲良くして頂いている五和と申します。
    末永くよろしくお願いします!」 

刀夜「あ、これはご丁寧に……お、おい当麻、こちらのお嬢さんは?」

当麻「ああ、友達の五和だよ」

五和「と、友達……です」

詩菜「あらあら、うちの当麻さんがいつもお世話になってます。
    これからも仲良くしてあげてくださいね」 

五和「は、はいっ!」

土御門「ちょいと待ってくれにゃー。カミやん、せっかく両親が来てくれたんだ、立ち話も何だし座って話したらどうだ?」

上条「そ、そうだな。じゃあ、こっちに」

五和「い、今お茶をお煎れしますね!」

詩菜「あらあら、おかまいなく」

刀夜「びっくりしたぞ、急に学園都市の外にいるなんて連絡をもらったから」

上条「誰に連絡受けたんだ?」

刀夜「ああ、今朝電話で彼に……えっと確か」

土御門「土御門元春ですたい」

刀夜「そう、土御門君に」

上条「(どういうことだよ……?)」 ヒソヒソ

土御門「(おいおい感謝しろよカミやん。このどさくさに紛れてキャーリサを両親に紹介したらどうだっていう粋な計らいだぜい)」

上条「……」

土御門「(その顔は信じてないにゃー。ま、本当は念には念を入れての避難だよ。
     何かの拍子に学園都市とか英国の連中と話がこじれて人質にとられたりしても面倒だろ?)」

271: 2011/04/16(土) 05:19:48.82

上条「(なるほどな。そこまでは気が回らなかったよ。ありがとな)」

土御門「(ま、多分大丈夫だけどにゃー。それよりしっかりやるんだぜい)」

上条「(お、おう。いやいやそんな緊張するようなことでもねぇだろ)」

土御門「お姫様はそうでもなさそうだけどにゃー……」

上条「え?」

キャーリサ「……」 ガチガチ

上条「めちゃめちゃ固くなってる……」

土御門「しっかりフォローしてやれよ。あ、あとこれ餞別だぜい」 スッ

上条「……? なっ! こ、これはコンド」

禁書「とうまー、そんなところで何してるの?」

御坂「そうよ、ご両親待たせてんじゃないわよ」

上条「お、おう!」

土御門「避妊はしっかりにゃー。……よーし、インデックスと超電磁砲、二人は隣でオレとトランプでもしようぜーい。
     さっきまで部屋で一人だったから寂しくて泣きそうだったにゃー」 

御坂「え、な、なんで!? っていうか自分で一人部屋選んだんじゃない!」

禁書「そうだよ! せっかくだからみんなでお話するといいんだよ!」

刀夜「そうだぞ土御門君、私達に気を遣わなくてもいいぞ」

土御門「いやー、カミやんがどうしても御両親に話したいことがあるって言うんで、親子水入らずでどうぞですにゃー。
     そら撤収撤収!」 グイグイ

御坂「ちょちょっ! 分かったから引っ張らないでよ!」

禁書「むー……お茶菓子が今から来るのにー!」

土御門「五和もこっちだから問題ないぜい」

禁書「あ、じゃあいいんだよ」

御坂「あんたってほんと扱いやすいわよね……」

禁書「そ、そんなことないんだよ! でもご飯まだまだ1時間くらいあってお腹空いてるんだよ!」


ズルズルズル… スタスタスタ… パタンッ

272: 2011/04/16(土) 05:23:31.29

上条「…………」

キャーリサ「…………」

上条(さてと……どう切り出すかだな) チラッ

キャーリサ(まずいし……正直第一印象は最悪だろーな……。何せ父君に蹴りを入れてしまってるの。
       とーまとシてたから髪もボサボサだし……。
       何とか挽回をしなくては……ど、どーしよー)

刀夜「は、はは……急に静かになったな。テレビでも点けようか」 ポチッ


ヴンッ!


『こんばんは、七時のニュースです。まず最初に――――』


刀夜「もう七時か。夕食まであと少しだな」

上条「そうだな」

詩菜「当麻さん、そちらの方は?」

刀夜「も、もしかして当麻の学校の先生とかか!?
    これはひょっとして三者面談なのか!? 先生、ウチの当麻の成績が危険だということですか!
    ああやっぱり! ご迷惑をおかけして申し訳ない!」

キャーリサ「え? い、いやそうではないの……あ、ないです」

上条(キャーリサが敬語って……こりゃそうとう気ぃ遣ってるな。
    こういうときフォローしてやれってことだよな、土御門)

上条「違うって。キャーリサは俺の彼女なんだ」

キャーリサ「!」

刀夜「ははは、そうか彼j……え」

詩菜「あらあら、うふふ。やっぱりそうだったのね」

上条「キャーリサはイギリス人なんだけど、訳あって学園都市に来てたんだ。
    それでまあ色々あって付き合うことになったから紹介しておこうと思ってさ」

キャーリサ「あ……よ、よろしくお願いします……」 ペコッ

273: 2011/04/16(土) 05:25:14.38

刀夜「か、彼女って当麻、お前……」

キャーリサ「!」 ビクッ

キャーリサ(やはり反対されるの……? むー……いざその場に遭遇すると萎縮してしまうな……。
       出来れば認めてもらいたかったが……とーまの教師に間違えられるほどの年の差だし仕方ない。
       下手をすれば母君と同い年ということも……というかこの母は一体いくつなの……?
       若過ぎやしないか……?) ドキドキドキ…

刀夜「申し訳ない!!!!!」

キャーリサ「!?」

キャーリサ(な、何故頭を下げられるの……? 頼むから別れてくれと言う事?
        い、嫌だ……それだけは出来ないが……父君の気持ちも分からなくは)

刀夜「当麻とお付き合いして下さっている女性に向かって大変失礼なことを言ってしまった!
    この通り! 許してください!」

詩菜「そうね、刀夜さん。全面的に刀夜さんが悪いですよ。
    ごめんなさいキャーリサさん、悪気は無かったんです」

キャーリサ「い、いえその! 気にしてないので頭を上げてください!」

刀夜「そ、そうかい? いやー……失礼した……。当麻がまさかこんなに可憐で美しい女性とお付き合いしてるとはなー。
    父さんも鼻が高いぞ」

詩菜「刀夜さん、鼻の下が伸びているわよ」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

刀夜「ひっ! ん、ゴホンッ! と、とにかくうちの当麻がいつもお世話になっているようでありがとうございます。
    父の上条刀夜です。で、こちらが妻の詩菜。
    今後も当麻をよろしくお願いします、キャーリサさん」

詩菜「当麻さんが彼女を紹介してくれるなんて初めてね、しかもこんな綺麗な方だなんて、私達も嬉しいわ」

キャーリサ「あ……」

274: 2011/04/16(土) 05:28:56.72

上条「そんな改まらなくていいだろ。そういうわけだから、今後会うこともあるかもしれないからよろしく頼むよ」

刀夜「ははは、もちろんだ。キャーリサさん、日本での生活で何か不便なことや困ったことがあればいつでも連絡を下さい。
    家族だと思って遠慮せずに」

キャーリサ「は、はい! ありがとーございます」 ペコッ

詩菜「うふふ、あらあら。刀夜さんが何だか嬉しそうね。
    何年か後には私もお婆ちゃんかしら」

上条「ブッ!! なんでそうなるんだよ!! 話が飛躍しすぎだろ!」

刀夜「当麻、子供は計画的にな。キャーリサさんを不幸にさせることだけは絶対に許さんぞ」

上条「い、いやだから何でもう結婚とかそういう話になってるんですかねぇっつってんだよバカ親父!」

キャーリサ「おい、私はそのつもりだぞ」

上条「!!!!!!!!」

キャーリサ「……嫌……なの?」

刀夜「こら当麻、キャーリサさん悲しそうだぞ」

詩菜「あらあら、当麻さんもそのつもりがあるから紹介してくれたんじゃないのかしら?」

キャーリサ「……」 ジー

上条「うっ……ま、まあそうなんだけど……何と言うか、実感は無いよな。
    まだ何もしてないわけだし」

詩菜「うふふ、何もしてないですってよ刀夜さん。私達が学生の頃を思い出すわね」

刀夜「ははは、そうだな母さん。いやーあれは付き合い立ての頃夏に江ノ島にいった時だったなー、母さんが夜に」

上条「でもまあ……そうだな。俺もそのつもりだよ、キャーリサ」

刀夜「おっと、スルーか当麻」

キャーリサ「とーま……」

詩菜「あらあら、こんなに綺麗なお嫁さんに来ていただけるなんて、早く孫の顔が見たいわね刀夜さん」

275: 2011/04/16(土) 05:33:14.68

刀夜「ははは、そうだな母さん。まあでも私はもう一人ぐらい子供がいてもいいと思うんだが……」 チラチラッ

詩菜「あらあら、刀夜さんたら」

上条「おいこら。子供の前でやめろ」

刀夜「何だ当麻、お前だってキャーリサさんと良い雰囲気作ったじゃないか。
    父さんたちだってイチャイチャしたいぞ」

上条「親のそんなとこ見たくねえだろ普通!」

刀夜「当麻、妹と弟どっちが欲しいんだ?」

上条「だからやめろっての恥ずかしいわ!」

キャーリサ「ぷっ……ふふ……」

刀夜「ん?」

上条「あ?」

キャーリサ「ふふ……ははは……あははははははははははははは!!!!!!!!」

詩菜「あらあら」

上条「お、おいキャーリサ? 緊張に耐えきれなくて壊れちまったのか?」

キャーリサ「ふふっ……すまんすまん。あー、面白いな。
       ……父君、母君」 スッ

刀夜「は、はい」

詩菜「あらあら母君だなんて、詩菜って呼んでくださいね」

キャーリサ「至らぬ点も多く、ご迷惑をおかけすることもあると思います……。
        このよーなふつつか者ですが、今後ともよろしくお願いします」 ペコッ

刀夜「えっ、は、はいこちらこそどうも御叮嚀に!」 アセッ

詩菜「当麻さん、キャーリサさんのこと大切にするのよ」

上条「……言われなくても分かってるって」

276: 2011/04/16(土) 05:34:21.42
刀夜「はは、しかしまさかこんなところで当麻の彼女と会うなんてな。
    驚いたが喜ばしいな母さん」

詩菜「そうですね刀夜さん」

刀夜「ところで当麻、キャーリサさんとはどういう経緯でお知り合いになったんだ?
   というか、どこかで見かけたことがあるような……」

詩菜「あらあら、そう言えばそうね。えーっと……どこだったかしら」

上条「げっ! あ、い、いやそれはだな……」

キャーリサ「う、うむ。き、きっと気の所為で」


『――それでは次のニュースです。イギリスの第二王女、キャーリサ王女が本日より長期の海外留学に行かれたと英国王室庁から今朝発表がありました』


上条「」

キャーリサ「」

刀夜「ん?」

詩菜「あらあら」

277: 2011/04/16(土) 05:36:33.99

―――神奈川県 某海岸 砂浜


大人数での騒がしい夕食の後。
上条とキャーリサは夜の砂浜に並び腰かけて遠くの海を見つめていた。


上条「ふう……全部バレちまったな」


結局、あの後刀夜と詩菜にキャーリサの素性を全て説明するハメになり、食事中も驚きっぱなしの二人から質問攻めだったのを思い出しため息をつく。


キャーリサ「しーなが卒倒してたぞ……」


そう言って苦笑する。
ニュースでキャーリサの写真が出てきた瞬間目を回して倒れた詩菜と、てんやわんやとしていた刀夜の賑やかな様子に頬が緩むキャーリサ。


上条「そりゃびっくりするだろ。初めて見る息子の彼女が英国王女だぞ」

キャーリサ「そりゃそーか。……だが、お前のご両親は優しーな。とーやもしーなも最後は笑い飛ばしてくれたし」


もっとも、きちんと説明をすれば二人ともすぐに納得してくれた。
その辺りは幼い頃からトラブルを抱え込んでくる体質を持ち、学園都市においてもしょっちゅう病院に担ぎ込まれている上条を子に持つ親の慣れによるところが大きいだろう。


上条「あの二人俺の身の回りで起こることにそろそろ慣れ始めてんだよ」


それを口に出すと、キャーリサは肩を竦めてクスクスと笑った。


キャーリサ「理解のあるご両親だ」

上条「これで晴れて家族公認ってやつか」


小さく笑い声をあげて、上条が清々しい心持で呟く。
ようやく肩の荷が下りた気がして心が軽くなっていった。


キャーリサ「正直ほっとしたの。お前の親には嫌われたくなかったしね」

278: 2011/04/16(土) 05:46:10.71

そう告げて上条の肩に頭を預けてくるキャーリサ。
そんな仕草を愛おしく思いながら、上条はまたも苦笑いを顔に浮かべた。


上条「むしろ頼むから嫁に来てやってくれって感じだろうな……」

キャーリサ「……いいの? 別に今すぐ答えを出す必要など無いし。
       そんなに重く考えることも無いの。
       駄目なら駄目でその時だ。気張らず楽しくいこーじゃない」


恋なんて言うのはそんなものだ。
いつどうなるかなんて、先の事は誰にも分からない。
キャーリサにも、これが上条にとって将来の選択に影響を及ぼす重大な出来事であることは重々承知していた。
だからこそ、上条に今回のことに囚われて欲しく無いと考えている。
上条の人生は上条のものであり、キャーリサのそれもまた同様なのだと。
それでも、上条は肩に乗せられたキャーリサの頭を撫でながらポツリと呟く。


上条「そうだな。……でも、俺は何となく大丈夫な気がしてるんだ」


その言葉に、キャーリサは一瞬だけ言葉を失ったが、やがて薄く微笑みを返して頷いた。


キャーリサ「……私もだし」


キャーリサを英国から連れ出してまで共にいたいと考えた。
その時既に、上条にとっての覚悟は終了している。
これまで命を賭して、氏ねば終わりの戦場に身を投じてきた上条にとって、人生の岐路に立つことなど普段通りのことでしかない。
だから、キャーリサを選んだことに微塵の後悔などあるはずもなく、今後に待つあらゆる現実や事態において、迷いを差し挟む余地も無い。
遠くを見つめる二人の眼差しに、欠片の躊躇すらも存在しなかった。


上条「学園都市に戻ったらまずは何からすりゃいいんだろう。
   ……とりあえず小萌先生に無断欠席を土下座だな」

キャーリサ「やれやれ。後先考えずに出てきたよーだし。呆れるの」

279: 2011/04/16(土) 05:49:07.10

それを見てキャーリサは首を横に振った。


上条「仕方ないだろ。本当に夢中だったんだから」

キャーリサ「ふふっ、嬉しーぞとーま。私もそれに応えねばな。
       まだ英国より連れ出してもらった礼をしていなかったし」


肩から頭をあげ、キャーリサは上条の手を握って瞳を見つめる。
欠けた月の明かりに照らされた彼女の横顔は、その端整な面立ちも相まって途方もなく神秘的で、上条の視界からキャーリサ以外の全てが消えていく。


上条「え? いいよそんなの。俺が勝手にやったことだし、散々言ってもらったろ」

キャーリサ「駄目だし。私がしたいの」


繋がれた右手から、キャーリサの温もりが伝わってくる。
余裕の笑みを浮かべた麗しの第二王女の緊張が、手汗と高い体温から伝わってくる。

上条「……そっか、じゃあ……してもらおうかな」


上条にすら伝わったそれはとても分かりやすいもので、わざとらしい建前を述べた自分に、キャーリサは無垢な少女のように微笑んだ。
スカイブルーの瞳に想いを込めて。
キャーリサは単純にして明快な告白を口にした。



キャーリサ「とーま……ありがとう。とーま……――――
      
       ――――お前を愛している」



愛している。
そんなストレートな言葉の受け止め方はまだ上条には分からない。
でも確かに理解できることは、自分はキャーリサのことが好きで、キャーリサも自分のことをそう思ってくれているということ。
だから上条は、真っ直ぐな視線で伝えられたこの上なく明快な言葉に応えるかの如く、彼女を抱き寄せて口づけた。
寄せては返す波の音だけが夜の砂浜に響く。
それはさながら海の中へと溶けていくかのようで。
『軍事』を冠された愛しい恋人の温もりによって、上条当麻の世界は支配されていく。


280: 2011/04/16(土) 05:51:24.02

上条「……これからもよろしくな、キャーリサ


唇を離した彼女の頬が月明かりによって照らされている。
色は彼女に相応しい赤色。
そしてキャーリサは、恥じらうようにその色を隠すべく、もう一度上条に口づけたのだった。


御坂「おーい」


海の家から御坂がこちらを呼ぶ声が聞こえた。


禁書「とうまー、みんなで一緒にトランプでもして遊ぶんだよー!」

土御門「五和も明日で帰っちまうしにゃー、どうせ学園都市にゃしばらく戻れねえんだし、のんびり遊んでようぜい」

五和「御両親がお土産を下さったので皆さんで頂きませんかー?」


傍らにはインデックス、土御門、五和の姿もあった。
その声を聴いて、上条とキャーリサは互いに見つめ合い、笑い合う。
こんな平和で和かな時間が、これからも続けばいいと思う上条。
それはきっと、キャーリサも同じだった。


上条「行くか、キャーリサ」


立ち上がった上条はキャーリサに手を差し伸べる。


キャーリサ「そーだな、とーま」


その手を取り、ゆっくりと並び歩いていく二人。
絵本の中のおとぎ話のように、お姫様を救ったのは王子様ではなかったけれど。
結末は同じように幸福なものであると上条は確信できた。
隣で微笑むスカイブルーの瞳を持つ異国の姫君の表情に影一つ無く。
その慈愛に満ちた横顔を見つめながら、上条は彼女と過ごすこれからの日々に想いを馳せた。



―――――


――――


―――


――

281: 2011/04/16(土) 05:54:27.54

キャーリサ「おいとーま。まだか。皆を待たせているし」


小さな花束を携えて、キャーリサはやれやれと首を振りながら上条に声をかけた。


上条「あー、ごめんごめんん。ちょっとトイレ行ってたんだよ」


トレードマークとも言えるツンツンの黒髪をかきながら、上条はキャーリサに歩み寄る。


キャーリサ「まったく、そんなものあとでいいだろー。こんな大事な時に」


口ではそう言いながらもキャーリサの口元には笑みが滲んでいた。
自然な仕草で上条の腕を取り手を絡めて傍らに寄り添う。


上条「漏らしたら困るだろ……じゃ行くか」


そして、二人は並んで大きな扉の前に立つ。


禁書「もう! 遅いんだよとうま! 早く早く!」


扉の向こうから、頬を膨らませたインデックスが顔を覗かせていた。


上条「おう! 今行く!」


そう返して、上条は今一度キャーリサを視界にとらえる。


キャーリサ「何見てるの? ……ふふっ、とーま。行くぞ」


クスリと微笑んだキャーリサが、真紅のドレスの裾を揺らして、悠然と言い放ち、一歩を踏み出す。


上条「ああ、行こう」


白いタキシードに身を包んだ上条もまたそれに続き、開け放たれていく扉の向こうへと歩みを進めて行った。
その向こうから聞こえてくる、たくさんの仲間達の声。


282: 2011/04/16(土) 05:56:14.03
キャーリサ「よーやく家出が終わったな」


ポツリと呟いたキャーリサの言葉は、皆の声の中に消えていく。


上条「そうだな」


だがそれは、確かに上条の耳へと届いていた。


キャーリサ「とーま―――」


そしてキャーリサは凛然と前を見つめたまま言葉を紡ぐ。


キャーリサ「――――今日からお前と私、二人の家だものな」


空からは祝福の陽射し。
目の前に広がるのは多くの仲間達の姿。
赤いウェディングドレスを纏うキャーリサが、誓うように天高くブーケを放り投げる。
それは、少年と王女が初めて出会ってから、7年後のことだった。




―おしまい―

284: 2011/04/16(土) 05:57:19.40
おまけ


―――神奈川県 某海岸 海の家『わだつみ』 客室


キャーリサ「……布団よし。ティッシュよし。うむ……完璧だし」

キャーリサ「ふ、ふふっ……いよいよ……いよいよなのだなっ」

キャーリサ(思えば今日一日邪魔が入ってばかりで結局ロクにとーまと恋人らしいことを出来なかったの) グヌヌ…

キャーリサ「しかしっ!」 グッ!

キャーリサ(ここからは大人の時間だ。
       むふふふふ……この世に生を受けて28年……私もよーやく女になるの) ドキドキ…

キャーリサ(や、やっぱり痛いんだろーか。しかしなー……学生時代の友人たちは皆とっくに済ませていたし……
       子供でも平気なんだから大丈夫だろー、うん。そーに違いないっ…………そーだよな?)

キャーリサ(そ、それよりもどーやってとーまを迎えようか。
       やはり日本式に則って三つ指ついて待っているべきか。
       いやいや……私のキャラじゃないだろ……や、やっぱりこー……しなを作って……足を開いて……)

キャーリサ「とーま、この偉大なる第二王女に子種を寄越」


ガララ…


上条「ふぅ……やっとバカ親父と土御門から解放された……あ?」

キャーリサ「せっ……」

上条「」

キャーリサ「なぁぁっ!!!!?????」 バッ!

上条「な、何やってるんでせうか……」

キャーリサ「ち、違う! これは違うの! 私はそー簡単に股を開くよーな女ではないぞ!」

上条「? いやそりゃ分かってるけど……」

285: 2011/04/16(土) 05:59:28.38

キャーリサ「んっ! んんっげふんごふんっ! そ、それよりとーま。もー寝るか?」

上条「んー? そだなー。何だかんだで疲れたし、今日はもう寝ようかな」

キャーリサ「ん。よしよし。布団は敷いておいたからな」

上条「……随分距離近いっすね……」

キャーリサ「……そこに気付くとは、期待してたなこの工口スめ!
       よーし、こっち来いとーま。可愛がってやるの」

上条「うわー……女の人の台詞じゃないですよ……」

キャーリサ「う、うるさいっ! いいからそこに寝ろ!」

上条「よ、よーし……上条さんももう我慢の限界ですのことよー!」 ガバッ!

キャーリサ「きゃっ! お、おい……私が上だしっ!」

上条「えっ、何で」

キャーリサ「お、お前は私の下でよがってろ。
       それにこの……カエルのよーな体勢は王女としての威厳を損なうの……」

上条「いいじゃん。今はただの恋人なんだろ?」

キャーリサ「そ、そーだが……あーもうっ! いーからお前下! 私は上! これはこの世の摂理だし!
       分かったらそこを退け!」

上条「わ、分かりましたよ……上条さん初体験なんですよー……最初は普通の体位がいいのですが」

キャーリサ「わ、私だってそーだし」

上条「じゃあやっぱりここはセオリーに倣ってだな」

キャーリサ「そこは譲らんっ!」

上条「……仕方ないな。……でもとりあえず前戯からだろ」

キャーリサ「む……そ、そーだな。よし、愛撫せよ」

上条「せよ、って……身も蓋もないな……よーし上条さんやっちゃいますよー!」 バッ!

286: 2011/04/16(土) 06:01:31.07

キャーリサ「んっ! こ、こら……急に触るな……」

上条「おおお……ハプニング以外でこれに触る日がこようとは……柔らかいな」 ムニムニ

キャーリサ「どーいう感動の仕方なの……んっ…ぁっ……」

上条「ぐへへ、やらしい声が出てるぜ王女様よぉ」

キャーリサ「くっ! だ、誰だお前は……」

上条「いや何となく……ん、キャーリサ……」 チュッ

キャーリサ「んっ! ……むぅ……チュプッ……ピチャッ……ふぁ……」

上条「好きだぞ……キャーリサ……」

キャーリサ「ん……はむっ……チュゥッ……わ、私も……」


アンッ…! 


上条「……ん?」

キャーリサ「……はぁ……んっ……ど、どーしたの、とーま……続きしよー」

上条「い、いや……」


アンッ! アァッ! ラメェエエエエ…!


キャーリサ「……な、何の声だ……」 アセッ

上条「…………」


アンッ! アンッ! イクッ! イッチャウゥゥウウウ…!!


キャーリサ「こ、これ……私達と同じように……」

上条「…………」 ダラダラダラダラ…

キャーリサ「お、おいとーま……?」


アハァッ! ラメェッ! トウヤサンスゴィィイッ!


287: 2011/04/16(土) 06:03:09.72

キャーリサ「ま、まさか……」


コワレチャウゥゥゥウウウウウウ…! カアサンッ、ダスゾッ!

クダサィィッ! アツクテブットイ〇〇〇〇゚〇〇〇 ×××に ★★★シテェェェ! 

フタリメデキチャウゥゥゥウッッッ!


上条「うちの……親です」

キャーリサ「うわっ」

上条「……なんだろう……何か興奮が一気に冷めてしまった……」

キャーリサ(そりゃそーだろー……)

上条「ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!
    あいつら隣にテメェの子供とその彼女がいるって分かってて何やってんだぁぁあああああああ!!!!!!!」

キャーリサ「うーむ……こ、これは……無理そーだな……ここが可愛くなってるぞ……」

上条「っ! ……申し訳ない。多分あの二人毎日のようにやるぞ……」

キャーリサ「い、いや……気持ちは分かる……うん。また後日でいーじゃない……私は逃げないから、な?」

上条「はい……あー……不幸だ……」



―おしまい―


290: 2011/04/16(土) 06:10:31.29
というわけでここで本編は終了となります。
ここらで占めておかないと際限も無さそうなので。
ネタをくれた人どうもありがとうございます。

これにて終わりですが、まだ若干書きたいものがあるので、もうしばらくこのスレ置いておきます。
学園都市に戻った後のキャーリサ様とかキャーリサ様とかキャーリサ様とか。
現在時間があまり取れないので、一〇日ほど経って全く書き溜めが増えていないようなら大人しくhtm依頼出してきますね。

何はともあれどうにか終わりました。
見切り発車の手さぐりでしたが、キャーリサ様が好きなように書けたのでそれで満足です。

ここまで付き合ってくれた方、ありがとうございました。
また近々お会いしましょう。それでは

291: 2011/04/16(土) 06:13:24.92

学園都市に戻ったキャーリサ様楽しみに待ってます

292: 2011/04/16(土) 06:14:19.13
激しく乙!!
学園都市に戻ったキャーリサ様期待してる

【禁書目録】キャーリサ「家出してきたし」上条「帰って下さい」【後日談】

引用: キャーリサ「家出してきたし」上条「帰って下さい」 2