1: 2016/09/17(土) 17:09:31.739 ID:A2d2Rcn80.net
~地獄~
地獄で鍛錬に励む、一人の若者――
カンダタ「セイッ! セイッ! セイッ! セイイィィッ!」ビュバババッ
鬼「ほう……」
その強靭な肉体と闘気に、地獄の番人たる鬼が興味を示すのは当然の成り行きといえた。
地獄で鍛錬に励む、一人の若者――
カンダタ「セイッ! セイッ! セイッ! セイイィィッ!」ビュバババッ
鬼「ほう……」
その強靭な肉体と闘気に、地獄の番人たる鬼が興味を示すのは当然の成り行きといえた。
2: 2016/09/17(土) 17:12:08.420 ID:A2d2Rcn80.net
鬼「罪人よ、名はなんという?」
カンダタ「……カンダタと申す」
鬼「いい名だ……」ニヤ…
鬼「たしか貴様は現世で殺法を極めたゆえ、地獄に落とされたと聞いておる」
カンダタ「極めたとはとてもいえんが、一応罪状はそうなっているはずだ」
鬼「どうだ……このワシと一勝負せんか?」
カンダタ「望むところ!」
人間と鬼の真剣勝負――地獄一騎打ち(ヘル・デスマッチ)の幕開けである!
カンダタ「……カンダタと申す」
鬼「いい名だ……」ニヤ…
鬼「たしか貴様は現世で殺法を極めたゆえ、地獄に落とされたと聞いておる」
カンダタ「極めたとはとてもいえんが、一応罪状はそうなっているはずだ」
鬼「どうだ……このワシと一勝負せんか?」
カンダタ「望むところ!」
人間と鬼の真剣勝負――地獄一騎打ち(ヘル・デスマッチ)の幕開けである!
4: 2016/09/17(土) 17:15:42.100 ID:A2d2Rcn80.net
鬼「ゆくぞぉっ!!!」ブオンッ
重さ10トンはある金棒を軽々と振り回し、鬼が殴りかかる。
カンダタは反応しない。もう金棒は間近まで迫っているというのに。
危うし、頭蓋骨!
スパァッ!
カンダタの手刀によって、金棒は切断されていた。
鬼「なんだと……ッ!?」
重さ10トンはある金棒を軽々と振り回し、鬼が殴りかかる。
カンダタは反応しない。もう金棒は間近まで迫っているというのに。
危うし、頭蓋骨!
スパァッ!
カンダタの手刀によって、金棒は切断されていた。
鬼「なんだと……ッ!?」
5: 2016/09/17(土) 17:18:44.410 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「驚いたふりはよせ」
鬼「!」
カンダタ「分かっているぞ……お前は“素手の方が強い”と」
鬼「フ……バレておったか」
鬼「ゆくぞ……!」メリメリ…
鬼の赤い肉体が黒く染まり、焼き加減ミディアムのステーキにも似た色と化す。
ガゴォッ!!!
鬼のアッパーカット。
これが並の相手なら、首から上がスペースシャトルの如く吹っ飛んでいただろう。
が、カンダタの顎は打ち抜けなかった。
カンダタ「いい……アッパーだ」
鬼(効いていない……!? バカな……ッ!)ググッ…
鬼「!」
カンダタ「分かっているぞ……お前は“素手の方が強い”と」
鬼「フ……バレておったか」
鬼「ゆくぞ……!」メリメリ…
鬼の赤い肉体が黒く染まり、焼き加減ミディアムのステーキにも似た色と化す。
ガゴォッ!!!
鬼のアッパーカット。
これが並の相手なら、首から上がスペースシャトルの如く吹っ飛んでいただろう。
が、カンダタの顎は打ち抜けなかった。
カンダタ「いい……アッパーだ」
鬼(効いていない……!? バカな……ッ!)ググッ…
6: 2016/09/17(土) 17:21:13.708 ID:A2d2Rcn80.net
鬼「ぬあああああッ!」ブオッ
カンダタ「セイッ!」ボッ
ドズゥッ……!
カンダタのボディブローが、鬼の腹部をえぐる。
鬼「ぐええっ……!」ゲボッ…
カンダタ「さあ、続けるか?」
鬼「痛い……痛いよォ……」グスッ
カンダタ(泣いている……どうやらここまでのようだな)
鬼「…………」ニヤ…
カンダタ(――いや、これは違うッ!)
カンダタ「セイッ!」ボッ
ドズゥッ……!
カンダタのボディブローが、鬼の腹部をえぐる。
鬼「ぐええっ……!」ゲボッ…
カンダタ「さあ、続けるか?」
鬼「痛い……痛いよォ……」グスッ
カンダタ(泣いている……どうやらここまでのようだな)
鬼「…………」ニヤ…
カンダタ(――いや、これは違うッ!)
8: 2016/09/17(土) 17:24:53.438 ID:A2d2Rcn80.net
鬼「“鬼の目にも涙”!!!」ドバァァァァァ
カンダタ「ぬがァッ!?」
鬼の眼球から放出される大量の涙は渦潮を作り、カンダタを呑み込んだ。
涙は女の武器というが、鬼にとっても武器なのだ!
鬼「ワシの涙に含まれる塩分量は、人間の五千倍!」
鬼「さあ……ワシの涙で溺れて、塩分過剰摂取してしまうがよいッ!」
カンダタ「いや……それはどうかな?」ザバッ
カンダタ「ぬがァッ!?」
鬼の眼球から放出される大量の涙は渦潮を作り、カンダタを呑み込んだ。
涙は女の武器というが、鬼にとっても武器なのだ!
鬼「ワシの涙に含まれる塩分量は、人間の五千倍!」
鬼「さあ……ワシの涙で溺れて、塩分過剰摂取してしまうがよいッ!」
カンダタ「いや……それはどうかな?」ザバッ
9: 2016/09/17(土) 17:28:24.932 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「ハァァッ!」ザバァッ ザバァッ
鬼「バタフライ!?」
カンダタは涙の中をバタフライしていた。
鬼「なんという迫力! なんという躍動感! これが……バタフライか……ッ!」
カンダタ「ハァッ!」ザバッ
水面から飛び上がる。
カンダタ「地獄殺法“針山突き”ィ!」
ズドォッ!!!
針のように鋭い突きが、鬼の顔面に炸裂した。
鬼「が、はぁっ……!」ドサァッ…
鬼「バタフライ!?」
カンダタは涙の中をバタフライしていた。
鬼「なんという迫力! なんという躍動感! これが……バタフライか……ッ!」
カンダタ「ハァッ!」ザバッ
水面から飛び上がる。
カンダタ「地獄殺法“針山突き”ィ!」
ズドォッ!!!
針のように鋭い突きが、鬼の顔面に炸裂した。
鬼「が、はぁっ……!」ドサァッ…
10: 2016/09/17(土) 17:32:19.294 ID:A2d2Rcn80.net
鬼「殺法を地獄で更に進化させたのか……見事だ……」
カンダタ「こっちこそ……久しぶりに血の池以外で泳げたよ」
戦いを通じて、両者の間に熱い友情が生まれる。
亡者A「すげえ……! あの鬼に勝っちまうなんて!」
亡者B「さっすがカンダタさんっす!」
鬼との地獄一騎打ち(ヘル・デスマッチ)を制した戦士・カンダタ――
しかし、これは新たなる戦いへの序曲に過ぎなかった!
カンダタ「こっちこそ……久しぶりに血の池以外で泳げたよ」
戦いを通じて、両者の間に熱い友情が生まれる。
亡者A「すげえ……! あの鬼に勝っちまうなんて!」
亡者B「さっすがカンダタさんっす!」
鬼との地獄一騎打ち(ヘル・デスマッチ)を制した戦士・カンダタ――
しかし、これは新たなる戦いへの序曲に過ぎなかった!
11: 2016/09/17(土) 17:36:59.420 ID:A2d2Rcn80.net
~極楽~
蜘蛛「…………」カサカサ
釈迦「蜘蛛よ、どうしたのだ? ずいぶんと顔が曇っておるが……」
蜘蛛「今の地獄でのデスマッチ……ご覧になられましたか」
釈迦「もちろんだ。いい試合だった」
蜘蛛「実はワタシは、あのカンダタという男に借りがあるのです」
釈迦「ほう?」
蜘蛛「私はここへ来る前は、森で暮らしておりました……」
蜘蛛「…………」カサカサ
釈迦「蜘蛛よ、どうしたのだ? ずいぶんと顔が曇っておるが……」
蜘蛛「今の地獄でのデスマッチ……ご覧になられましたか」
釈迦「もちろんだ。いい試合だった」
蜘蛛「実はワタシは、あのカンダタという男に借りがあるのです」
釈迦「ほう?」
蜘蛛「私はここへ来る前は、森で暮らしておりました……」
12: 2016/09/17(土) 17:40:35.984 ID:A2d2Rcn80.net
~回想~
カンダタ「お前がこの森の支配者か」
蜘蛛「そうさ、オレこそがこの森の王! キング・オブ・スパイダーだ!」
カンダタ「お前はこれまでに、森に入った人間を99人殺害しているらしいな?」
蜘蛛「その通りィ! つまりオマエが100人目ってわけだ!」
蜘蛛「ヒャオッ!」カサカサッ
ザシュッ!
カンダタ「…………!」
蜘蛛の牙が、カンダタの肩を切り裂いた。
カンダタ「お前がこの森の支配者か」
蜘蛛「そうさ、オレこそがこの森の王! キング・オブ・スパイダーだ!」
カンダタ「お前はこれまでに、森に入った人間を99人殺害しているらしいな?」
蜘蛛「その通りィ! つまりオマエが100人目ってわけだ!」
蜘蛛「ヒャオッ!」カサカサッ
ザシュッ!
カンダタ「…………!」
蜘蛛の牙が、カンダタの肩を切り裂いた。
13: 2016/09/17(土) 17:43:58.977 ID:A2d2Rcn80.net
蜘蛛「オレの毒はなんと青酸カリの数百倍! つまりオマエは氏ぬ! 光の速さで即氏だァ!」
カンダタ「いや……俺は氏なない」
蜘蛛「何故!?」
カンダタ「毒で氏ぬような、やわな生き方はしていない……」
カンダタ「俺は生後まもなく、母親にジャーマンスープレックスをされたからな……」
蜘蛛「なんて過酷な……!」
カンダタ「さて、井の中の毒蜘蛛よ……俺の殺法を味わうがいい!」
カンダタ「いや……俺は氏なない」
蜘蛛「何故!?」
カンダタ「毒で氏ぬような、やわな生き方はしていない……」
カンダタ「俺は生後まもなく、母親にジャーマンスープレックスをされたからな……」
蜘蛛「なんて過酷な……!」
カンダタ「さて、井の中の毒蜘蛛よ……俺の殺法を味わうがいい!」
14: 2016/09/17(土) 17:48:27.958 ID:A2d2Rcn80.net
バキィッ! ドカッ! ドゴォッ!
蜘蛛「ぐがっ……! このオレが……人間如きに……!」
カンダタ「トドメだ……」
カンダタ「この拳が命中した時、お前の人生は……終わる!」グッ
蜘蛛「オレは……蜘蛛だ!」
カンダタ「お前の蜘蛛生は……終わる!」
――ズガァッ!!!
蜘蛛「ぐがっ……! このオレが……人間如きに……!」
カンダタ「トドメだ……」
カンダタ「この拳が命中した時、お前の人生は……終わる!」グッ
蜘蛛「オレは……蜘蛛だ!」
カンダタ「お前の蜘蛛生は……終わる!」
――ズガァッ!!!
16: 2016/09/17(土) 17:51:51.522 ID:A2d2Rcn80.net
しかし、拳は外れていた。否、外されていた。
蜘蛛「なぜ……殺さなかった!?」
カンダタ「もう決着はついている」
カンダタ「すでに心が折れている者にトドメを刺す趣味はないのでな……」ザッザッ…
運動後のストレッチをしながら、森を去っていくカンダタ。
屈辱にまみれた蜘蛛は、ただ絶叫するしかなかった。
蜘蛛「ちくしょう……ちくしょおおおおお……!!!」
蜘蛛「なぜ……殺さなかった!?」
カンダタ「もう決着はついている」
カンダタ「すでに心が折れている者にトドメを刺す趣味はないのでな……」ザッザッ…
運動後のストレッチをしながら、森を去っていくカンダタ。
屈辱にまみれた蜘蛛は、ただ絶叫するしかなかった。
蜘蛛「ちくしょう……ちくしょおおおおお……!!!」
17: 2016/09/17(土) 17:54:49.482 ID:A2d2Rcn80.net
~極楽~
蜘蛛「――というわけなのです」
蜘蛛「ワタシはあのカンダタにリベンジをしたいッ!」
蜘蛛「どうか……どうかワタシに機会(チャンス)をッ!」
釈迦「よかろう」
蜘蛛「ありがたき幸せッ!」
蜘蛛「――というわけなのです」
蜘蛛「ワタシはあのカンダタにリベンジをしたいッ!」
蜘蛛「どうか……どうかワタシに機会(チャンス)をッ!」
釈迦「よかろう」
蜘蛛「ありがたき幸せッ!」
19: 2016/09/17(土) 17:59:51.705 ID:A2d2Rcn80.net
~地獄~
亡者A「いやぁ~、さっきの試合はすごかったな」
亡者B「オイラ、マジで感動したっす!」
カンダタ「いや……だいぶ涙を飲んでしまったし、まだまだ未熟だ」
カンダタ「――ん?」
タラー…
地獄で談笑するカンダタたちのもとに、一本の蜘蛛の糸が垂れてきた。
亡者A「いやぁ~、さっきの試合はすごかったな」
亡者B「オイラ、マジで感動したっす!」
カンダタ「いや……だいぶ涙を飲んでしまったし、まだまだ未熟だ」
カンダタ「――ん?」
タラー…
地獄で談笑するカンダタたちのもとに、一本の蜘蛛の糸が垂れてきた。
21: 2016/09/17(土) 18:02:58.053 ID:A2d2Rcn80.net
亡者A「なんだこりゃ!?」
亡者B「いきなり蜘蛛の糸が垂れてきやがったっす!」
カンダタ「…………」ガシッ
亡者A「よせよ! 絶対罠だって! 怪しすぎる!」
カンダタ「たしかに罠かもしれん……だが――」
カンダタ「蜘蛛の糸ッ! 登らずにはいられないッ!」
バカと煙は高いところが好き――
カンダタほどの超戦士とて例外ではなかった!
亡者B「いきなり蜘蛛の糸が垂れてきやがったっす!」
カンダタ「…………」ガシッ
亡者A「よせよ! 絶対罠だって! 怪しすぎる!」
カンダタ「たしかに罠かもしれん……だが――」
カンダタ「蜘蛛の糸ッ! 登らずにはいられないッ!」
バカと煙は高いところが好き――
カンダタほどの超戦士とて例外ではなかった!
23: 2016/09/17(土) 18:07:14.782 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「行くぞッ!」
亡者A「おうよっ!」
亡者B「へいっ!」
数万人の亡者を従え、糸を登っていくカンダタ。
蜘蛛の糸の上でいったいどんな困難が待ち受けているのか、
それを想像するだけでカンダタの口の中は唾液に満ちあふれた。
亡者A「おうよっ!」
亡者B「へいっ!」
数万人の亡者を従え、糸を登っていくカンダタ。
蜘蛛の糸の上でいったいどんな困難が待ち受けているのか、
それを想像するだけでカンダタの口の中は唾液に満ちあふれた。
24: 2016/09/17(土) 18:10:13.316 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「ふん、ふん、ふん!」グイッグイッグイッ
亡者A「俺らは手足使ってるのに、腕力だけでよじ登ってやがる……さすがだぜ……」
亡者B「かっけえ……」
カンダタ「一人の脱落者も出さんッ! いいな!?」
亡者たち「押忍!!!」
亡者A「俺らは手足使ってるのに、腕力だけでよじ登ってやがる……さすがだぜ……」
亡者B「かっけえ……」
カンダタ「一人の脱落者も出さんッ! いいな!?」
亡者たち「押忍!!!」
25: 2016/09/17(土) 18:16:15.275 ID:A2d2Rcn80.net
~極楽~
数万人の地獄の亡者を率い、カンダタはついに極楽へとたどり着いた。
蜘蛛「待っていたぜ……」カサカサ
カンダタ「この蜘蛛の糸はお前のものだったのか……」
蜘蛛「あの時、命を見逃された屈辱……今日こそ晴らす!」
カンダタ「嬉しいねえ……」
蜘蛛「あん?」
カンダタ「かつて勝利した相手が、力を蓄えて再び挑んでくる……」
カンダタ「これぞ戦士の醍醐味というやつよ」
カンダタと蜘蛛――二人の間に濃厚な殺気が漂う。
カンダタ「釈迦よ、さっそく試合をセッティングしてくれ」
釈迦「了解した!」
数万人の地獄の亡者を率い、カンダタはついに極楽へとたどり着いた。
蜘蛛「待っていたぜ……」カサカサ
カンダタ「この蜘蛛の糸はお前のものだったのか……」
蜘蛛「あの時、命を見逃された屈辱……今日こそ晴らす!」
カンダタ「嬉しいねえ……」
蜘蛛「あん?」
カンダタ「かつて勝利した相手が、力を蓄えて再び挑んでくる……」
カンダタ「これぞ戦士の醍醐味というやつよ」
カンダタと蜘蛛――二人の間に濃厚な殺気が漂う。
カンダタ「釈迦よ、さっそく試合をセッティングしてくれ」
釈迦「了解した!」
26: 2016/09/17(土) 18:20:47.011 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦「レディィィィスエェーンドジェントゥルメェェェン!」
釈迦「只今より、極楽一騎打ち(ヘヴン・デスマッチ)を開催する!」
ワアァァァァァッ!
地獄陣営――
亡者A「カンダタ、頑張れよっ!」
亡者B「蜘蛛なんかに負けるなっす!」
極楽陣営――
極楽住民A「ヒャッハーッ! これだから極楽暮らしはやめらんねぇ!」
極楽住民B「血の雨を! 肉の嵐を! 臓物の台風を見せてくれェッ!」
釈迦「只今より、極楽一騎打ち(ヘヴン・デスマッチ)を開催する!」
ワアァァァァァッ!
地獄陣営――
亡者A「カンダタ、頑張れよっ!」
亡者B「蜘蛛なんかに負けるなっす!」
極楽陣営――
極楽住民A「ヒャッハーッ! これだから極楽暮らしはやめらんねぇ!」
極楽住民B「血の雨を! 肉の嵐を! 臓物の台風を見せてくれェッ!」
28: 2016/09/17(土) 18:24:36.074 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦「地獄コーナーより、カンダタの入場です!」
ワアァァァァァ……!
カンダタ「…………」ザッザッ
釈迦「対しまして極楽コーナーより、蜘蛛の入場です!」
ワアァァァァァ……!
蜘蛛「…………」カサカサ
ワアァァァァァ……!
カンダタ「…………」ザッザッ
釈迦「対しまして極楽コーナーより、蜘蛛の入場です!」
ワアァァァァァ……!
蜘蛛「…………」カサカサ
29: 2016/09/17(土) 18:27:54.425 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦「両者、構えて!」
カンダタ「…………」サッ
蜘蛛「…………」カサッ
好戦的な表情を隠そうともせず、構える両雄。
思考回路はショート寸前、今すぐ闘(や)りたいよ!
釈迦「ファイッ!!!」
カンダタ「…………」サッ
蜘蛛「…………」カサッ
好戦的な表情を隠そうともせず、構える両雄。
思考回路はショート寸前、今すぐ闘(や)りたいよ!
釈迦「ファイッ!!!」
30: 2016/09/17(土) 18:31:00.900 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「…………」ジリ…
蜘蛛「…………」カサ…
意外にも速攻を仕掛けず、慎重に間合いを操作する二人。
当然である。猪突猛進なだけでは優秀な戦士にはなりえない。
蜘蛛「…………」フリ…フリ…
突如、尻を振り、踊り出す蜘蛛。
なんという露骨な挑発行為!
蜘蛛「…………」カサ…
意外にも速攻を仕掛けず、慎重に間合いを操作する二人。
当然である。猪突猛進なだけでは優秀な戦士にはなりえない。
蜘蛛「…………」フリ…フリ…
突如、尻を振り、踊り出す蜘蛛。
なんという露骨な挑発行為!
31: 2016/09/17(土) 18:34:20.852 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「俺は“乗る”のが好きだ」
カンダタ「馬に乗って野山を駆け回るのも好きだし、女性の上に乗るのも好きだ」
カンダタ「まして、挑発に乗るのは大好きだッ!」
ダッ!
猛然と駆け出すカンダタ。
ところが――
カンダタ「ぐっ!?」ギシッ…
カンダタ「馬に乗って野山を駆け回るのも好きだし、女性の上に乗るのも好きだ」
カンダタ「まして、挑発に乗るのは大好きだッ!」
ダッ!
猛然と駆け出すカンダタ。
ところが――
カンダタ「ぐっ!?」ギシッ…
32: 2016/09/17(土) 18:37:47.380 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「これは……! 目に見えないほど細長い糸が俺の体に……ッ!」
蜘蛛「かかったな、オレの蜘蛛の巣に!」
カンダタの全身は蜘蛛の糸に捕われていた。
カンダタ「さっきのダンスは……この糸を出していたのか……!」ギシギシ…
蜘蛛「その通り……オレはオマエに敗れてから、徹底的に糸の強度を高めた」
蜘蛛「今やオレの糸は数万人の亡者をも支えられるほど頑丈だ!」
蜘蛛「しかも、もがけばもがくほど糸は絡みつく! もはや脱出不能よッ!」
蜘蛛「かかったな、オレの蜘蛛の巣に!」
カンダタの全身は蜘蛛の糸に捕われていた。
カンダタ「さっきのダンスは……この糸を出していたのか……!」ギシギシ…
蜘蛛「その通り……オレはオマエに敗れてから、徹底的に糸の強度を高めた」
蜘蛛「今やオレの糸は数万人の亡者をも支えられるほど頑丈だ!」
蜘蛛「しかも、もがけばもがくほど糸は絡みつく! もはや脱出不能よッ!」
33: 2016/09/17(土) 18:40:39.474 ID:A2d2Rcn80.net
蜘蛛「さて……トドメだ」
蜘蛛「同じく切れ味を増したこの牙で、オマエの頸動脈をかっ切ってやるッ!」ギラッ
カンダタ「なんのぉっ!」ゴォォッ
蜘蛛「な、なんだッ!? ヤツの体温が上がっていく!?」
カンダタ「地獄殺法“灼熱地獄”!」ゴォアァァァァァッ
蜘蛛「うおおっ!? ヤツの体が燃えて……糸が焼き尽くされていく……!」
蜘蛛「同じく切れ味を増したこの牙で、オマエの頸動脈をかっ切ってやるッ!」ギラッ
カンダタ「なんのぉっ!」ゴォォッ
蜘蛛「な、なんだッ!? ヤツの体温が上がっていく!?」
カンダタ「地獄殺法“灼熱地獄”!」ゴォアァァァァァッ
蜘蛛「うおおっ!? ヤツの体が燃えて……糸が焼き尽くされていく……!」
34: 2016/09/17(土) 18:44:18.192 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「地獄殺法“血の池チョップ”!」ヒュオッ
ザシュゥッ!
カンダタの手刀が蜘蛛の体を切り裂き、傷口から大量に血が噴き出した。
まさに“血の池”である。
蜘蛛「へへ……完敗だぁ……」ブシュゥゥゥゥゥ…
ザシュゥッ!
カンダタの手刀が蜘蛛の体を切り裂き、傷口から大量に血が噴き出した。
まさに“血の池”である。
蜘蛛「へへ……完敗だぁ……」ブシュゥゥゥゥゥ…
35: 2016/09/17(土) 18:47:57.875 ID:A2d2Rcn80.net
蜘蛛「オレも極楽で修行しまくったが、まだまだ差はでかかったか……」
カンダタ「いや……蜘蛛の巣に捕われた瞬間は、俺も敗北を覚悟したよ」
蜘蛛「ふん……次は負けねえぞ!」
カンダタ「こっちこそ!」
戦いを通じて、両者の間に熱い友情が生まれる。
釈迦「よくやった、カンダタよ」
カンダタ「お釈迦様……お会いできて光栄です」
釈迦「蜘蛛に勝利した褒美として、どんな願いでも叶えてやろう。さあ、なにを望む」
カンダタ「それはもちろん、あなたとの対決だ」
釈迦「……いいねェ」
カンダタ「いや……蜘蛛の巣に捕われた瞬間は、俺も敗北を覚悟したよ」
蜘蛛「ふん……次は負けねえぞ!」
カンダタ「こっちこそ!」
戦いを通じて、両者の間に熱い友情が生まれる。
釈迦「よくやった、カンダタよ」
カンダタ「お釈迦様……お会いできて光栄です」
釈迦「蜘蛛に勝利した褒美として、どんな願いでも叶えてやろう。さあ、なにを望む」
カンダタ「それはもちろん、あなたとの対決だ」
釈迦「……いいねェ」
36: 2016/09/17(土) 18:54:04.829 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦「私に挑戦者が現れるなど、本当に久しぶりのことだ」コキッコキッ
釈迦「手厚く歓迎してやろうぞ」ザッ
カンダタ(釈迦が構えたッ! ――なんて殺気だッ!)
ワアァァァァァッ!
地獄陣営――
亡者A「お釈迦様に挑むなんて、マジかよ……!」
亡者B「いや……カンダタさんならあるいは……!」
極楽陣営――
極楽住民A「ヒャッハーッ! こりゃあ面白い展開になってきやがった!」
極楽住民B「罪人と釈迦の一騎打ちッ! 女房を質に入れても見なきゃなァ!」
釈迦「手厚く歓迎してやろうぞ」ザッ
カンダタ(釈迦が構えたッ! ――なんて殺気だッ!)
ワアァァァァァッ!
地獄陣営――
亡者A「お釈迦様に挑むなんて、マジかよ……!」
亡者B「いや……カンダタさんならあるいは……!」
極楽陣営――
極楽住民A「ヒャッハーッ! こりゃあ面白い展開になってきやがった!」
極楽住民B「罪人と釈迦の一騎打ちッ! 女房を質に入れても見なきゃなァ!」
37: 2016/09/17(土) 18:57:09.467 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「いざッ!」
カンダタが仕掛ける。
カンダタ「“針山突き”!」ヒュオッ
カンダタ「“血の池チョップ”!」シュバッ
カンダタ「“灼熱地獄ファイヤー”!」ゴォアァァァッ
しかし、どの殺法も釈迦によって受け流されてしまう。
釈迦「無駄だ……」
カンダタ「俺の殺法が……通じない!?」
カンダタが仕掛ける。
カンダタ「“針山突き”!」ヒュオッ
カンダタ「“血の池チョップ”!」シュバッ
カンダタ「“灼熱地獄ファイヤー”!」ゴォアァァァッ
しかし、どの殺法も釈迦によって受け流されてしまう。
釈迦「無駄だ……」
カンダタ「俺の殺法が……通じない!?」
38: 2016/09/17(土) 19:00:11.490 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦「なぜ、お前の殺法が私に効かぬか、教えてやろうか?」
カンダタ「教えてくれ……」
釈迦「釈迦に殺法!!!」
ド ン ! ! !
カンダタ「教えてくれ……」
釈迦「釈迦に殺法!!!」
ド ン ! ! !
40: 2016/09/17(土) 19:06:00.053 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦がカンダタの頭を掴む。
釈迦「脳をシェイクしてやる!」シャカシャカシャカ
カンダタ「ぐわああああっ……!」
カンダタ「頭が……」ドサッ…
釈迦「トドメだッ!」
ドゴォッ!!!
脳をシェイクされダウンしたカンダタの頭部に、強烈なキックを浴びせる。
亡者A「総合格闘技でいう、サッカーボールキックだ!」
亡者B「ひええっ……!」
蜘蛛「いや……釈迦がやっているのだ。つまり、あれはシャッカーボールキック!」
亡者AB「!」
蜘蛛「つまり威力は……数千倍……ッ!」
釈迦「脳をシェイクしてやる!」シャカシャカシャカ
カンダタ「ぐわああああっ……!」
カンダタ「頭が……」ドサッ…
釈迦「トドメだッ!」
ドゴォッ!!!
脳をシェイクされダウンしたカンダタの頭部に、強烈なキックを浴びせる。
亡者A「総合格闘技でいう、サッカーボールキックだ!」
亡者B「ひええっ……!」
蜘蛛「いや……釈迦がやっているのだ。つまり、あれはシャッカーボールキック!」
亡者AB「!」
蜘蛛「つまり威力は……数千倍……ッ!」
41: 2016/09/17(土) 19:09:17.524 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ(強い……これが釈迦……ッ! 立てない……ッ!)グググッ…
すると――
亡者A「立ってくれっ!」
亡者B「アンタの強さはこんなもんじゃないっす!」
蜘蛛「釈迦なんかに負けるんじゃねえ!」
カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ!
割れんばかりのカンダタコールに、カンダタは立ち上がる。
カンダタ「――いくぞ、釈迦ッ!」
すると――
亡者A「立ってくれっ!」
亡者B「アンタの強さはこんなもんじゃないっす!」
蜘蛛「釈迦なんかに負けるんじゃねえ!」
カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ! カンダタ!
割れんばかりのカンダタコールに、カンダタは立ち上がる。
カンダタ「――いくぞ、釈迦ッ!」
42: 2016/09/17(土) 19:14:48.670 ID:A2d2Rcn80.net
しかし、釈迦の構えは完璧で隙がなく、手の出しようがない。
カンダタ「くっ……!」
釈迦「ハッハッハ、立ち上がったはいいが策はない、といった表情だな」
カンダタ(このまま突っ込んでも、さっきと同じ目にあうだけ……隙を作らないと!)
釈迦「私は隙など見せんよ。シャカリキなだけでは私には勝てん!」
亡者A「シャカリキって久々に聞いたな」
亡者B「氏語っすよね」
釈迦「え、ウソ!?」
カンダタ「――今だッ!!!」
カンダタ「くっ……!」
釈迦「ハッハッハ、立ち上がったはいいが策はない、といった表情だな」
カンダタ(このまま突っ込んでも、さっきと同じ目にあうだけ……隙を作らないと!)
釈迦「私は隙など見せんよ。シャカリキなだけでは私には勝てん!」
亡者A「シャカリキって久々に聞いたな」
亡者B「氏語っすよね」
釈迦「え、ウソ!?」
カンダタ「――今だッ!!!」
43: 2016/09/17(土) 19:18:32.511 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「“針山突き”!!!」
ズドォッ!!!
釈迦「ぐほぉぉぉぉ……っ!」
文字通り一瞬の隙を突いた、渾身の“針山突き”が釈迦のミゾオチに命中した。
これにはさすがの釈迦もノックダウンするしかなかった。
ズドォッ!!!
釈迦「ぐほぉぉぉぉ……っ!」
文字通り一瞬の隙を突いた、渾身の“針山突き”が釈迦のミゾオチに命中した。
これにはさすがの釈迦もノックダウンするしかなかった。
44: 2016/09/17(土) 19:21:45.517 ID:A2d2Rcn80.net
釈迦「ふっ、釈迦ともあろう者が……人間に倒されてしまうとはな」
カンダタ「いや……今のは俺の勝利じゃない……。仲間の手助けがあったから勝てただけだ」
カンダタ「もっと修行して、次はあなたに……仲間の手助け無しで勝ってみせる!」
釈迦「フッ、期待しておるぞ」
戦いを通じて、両者の間に熱い友情が生まれる。
カンダタ「よぉーし、みんな地獄へ帰るぞ!!!」
亡者たち「はいっ!!!」
蜘蛛「はいっ!!!」
カンダタ「いや……今のは俺の勝利じゃない……。仲間の手助けがあったから勝てただけだ」
カンダタ「もっと修行して、次はあなたに……仲間の手助け無しで勝ってみせる!」
釈迦「フッ、期待しておるぞ」
戦いを通じて、両者の間に熱い友情が生まれる。
カンダタ「よぉーし、みんな地獄へ帰るぞ!!!」
亡者たち「はいっ!!!」
蜘蛛「はいっ!!!」
45: 2016/09/17(土) 19:27:24.665 ID:A2d2Rcn80.net
カンダタ「俺に続けーッ!!!」バッ
極楽から飛び降り、地獄に堕ちていく亡者たち――
地獄へ堕ちていくというのに、彼らはみな笑顔であった。
カンダタたちの戦いはまだ始まったばかりである……!
~おわり~
極楽から飛び降り、地獄に堕ちていく亡者たち――
地獄へ堕ちていくというのに、彼らはみな笑顔であった。
カンダタたちの戦いはまだ始まったばかりである……!
~おわり~
46: 2016/09/17(土) 19:30:41.484 ID:+liBsxa4r.net
こいつら地獄を満喫してんな
おつ
おつ
47: 2016/09/17(土) 19:39:20.467 ID:DOSpQ8yJ0.net
乙
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