1: 2017/11/04(土) 02:24:22.72 ID:w8FvIxooO
千歌「ほへぇ……すごいなあ、曜ちゃん。明日、東京で……か」
ミト「バカ千歌! 仕事遅れてるよ!」
千歌「は、は~い……」
千歌(曜ちゃんに比べて……私はいつまでも普通のまま)
千歌(奇跡なんて……起きなかった)
ミト「バカ千歌! 仕事遅れてるよ!」
千歌「は、は~い……」
千歌(曜ちゃんに比べて……私はいつまでも普通のまま)
千歌(奇跡なんて……起きなかった)
2: 2017/11/04(土) 02:24:58.74 ID:w8FvIxooO
~~~
2年前
千歌「へ? 曜ちゃん、大学行くの?」
曜「うん! 私、スポーツ推薦で東京の大学に行くんだ!」
千歌「ああ、なるほど。曜ちゃんに勉強なんてできるわけないもんね」ニヤニヤ
曜「も、もう! ヒドイよ千歌ちゃん!」
千歌「そっかぁ……それじゃあ、もう会えなくなっちゃうんだね……」
曜「へ? ……千歌ちゃん、大学行かないの?」
千歌「私はほら、実家が旅館だから。卒業したら旅館を継ぐことになってるんだ」
曜「そんな……私、千歌ちゃんと一緒の大学に行けたらって……ずっと思ってたのに」
千歌「えぇ!? だ、だって私、勉強とかできないし……」
曜「私が行く大学、そこまで入試難しいわけじゃないし! 大丈夫、千歌ちゃんなら絶対行けるって!」
千歌「で……でも、ミト姉とかに申し訳ないし……」
曜「……千歌ちゃんは、私と一緒の大学に行きたくないの?」
千歌「え……ううん、違うよ! 行きたいに決まってるよ……」
曜「じゃあなんなの!? もう……千歌ちゃんは昔っから、いっつも自分じゃ決めらんないよね!」
千歌「そ、そんな言い方……」
2年前
千歌「へ? 曜ちゃん、大学行くの?」
曜「うん! 私、スポーツ推薦で東京の大学に行くんだ!」
千歌「ああ、なるほど。曜ちゃんに勉強なんてできるわけないもんね」ニヤニヤ
曜「も、もう! ヒドイよ千歌ちゃん!」
千歌「そっかぁ……それじゃあ、もう会えなくなっちゃうんだね……」
曜「へ? ……千歌ちゃん、大学行かないの?」
千歌「私はほら、実家が旅館だから。卒業したら旅館を継ぐことになってるんだ」
曜「そんな……私、千歌ちゃんと一緒の大学に行けたらって……ずっと思ってたのに」
千歌「えぇ!? だ、だって私、勉強とかできないし……」
曜「私が行く大学、そこまで入試難しいわけじゃないし! 大丈夫、千歌ちゃんなら絶対行けるって!」
千歌「で……でも、ミト姉とかに申し訳ないし……」
曜「……千歌ちゃんは、私と一緒の大学に行きたくないの?」
千歌「え……ううん、違うよ! 行きたいに決まってるよ……」
曜「じゃあなんなの!? もう……千歌ちゃんは昔っから、いっつも自分じゃ決めらんないよね!」
千歌「そ、そんな言い方……」
3: 2017/11/04(土) 02:25:37.26 ID:w8FvIxooO
曜「だからさ! 今の時代、旅館を継ぐにしたって大卒の方が潰しが効くんだから、千歌ちゃんみたいな普通の人は――あっ……」
千歌「普通の……人?」
曜「ごめん……私、そういうつもりで言ったんじゃ……」
千歌「曜ちゃんは……私のこと、そういうふうに思ってたんだね」
曜「ちっ……ちがっ……」
千歌「何が違うの? 分かってるよ……チカだって、ずっと自分のこと普通だって思ってた……だから、いつか何かを変えたいって」
曜「千歌ちゃん……」
千歌「でも無理なものは無理なんだよ。普通の人は、どうやったって普通にしかなれない……曜ちゃんはいいよね。生まれつき才能があって、誰の力を借りなくたって、どこまでも行けるんだからさ」
曜「……才能? 誰の力も……借りない?」
千歌「だってそうじゃん! 曜ちゃんはいつも――」
パシンッ
千歌「――っ!」
曜「ハァッ……ハァッ……」
千歌「いった……なにすんの……」ジンジン
曜「――千歌ちゃんのバカッッッ!!」パタパタ
千歌「曜……ちゃん……」
千歌「人の話……最後まで聞いてよ……」
千歌(曜ちゃんはいつも、一人でなんでもこなしちゃう)
千歌(それなのに、私はなんにもできなくて……曜ちゃんの背中ばかり見て、曜ちゃんの応援することしかできなかった)
千歌(だからきっと……曜ちゃんには、私なんて必要ない。私がいれば、曜ちゃんの足手まといにしかならない)
千歌(だから……これでいいんだ)
千歌(でも……でもさ)
千歌(どうせなら……笑って送り出してあげたかったなあ)
千歌「普通の……人?」
曜「ごめん……私、そういうつもりで言ったんじゃ……」
千歌「曜ちゃんは……私のこと、そういうふうに思ってたんだね」
曜「ちっ……ちがっ……」
千歌「何が違うの? 分かってるよ……チカだって、ずっと自分のこと普通だって思ってた……だから、いつか何かを変えたいって」
曜「千歌ちゃん……」
千歌「でも無理なものは無理なんだよ。普通の人は、どうやったって普通にしかなれない……曜ちゃんはいいよね。生まれつき才能があって、誰の力を借りなくたって、どこまでも行けるんだからさ」
曜「……才能? 誰の力も……借りない?」
千歌「だってそうじゃん! 曜ちゃんはいつも――」
パシンッ
千歌「――っ!」
曜「ハァッ……ハァッ……」
千歌「いった……なにすんの……」ジンジン
曜「――千歌ちゃんのバカッッッ!!」パタパタ
千歌「曜……ちゃん……」
千歌「人の話……最後まで聞いてよ……」
千歌(曜ちゃんはいつも、一人でなんでもこなしちゃう)
千歌(それなのに、私はなんにもできなくて……曜ちゃんの背中ばかり見て、曜ちゃんの応援することしかできなかった)
千歌(だからきっと……曜ちゃんには、私なんて必要ない。私がいれば、曜ちゃんの足手まといにしかならない)
千歌(だから……これでいいんだ)
千歌(でも……でもさ)
千歌(どうせなら……笑って送り出してあげたかったなあ)
4: 2017/11/04(土) 02:26:22.85 ID:w8FvIxooO
~~~
現在
千歌「はぁ……やっと仕事終わったよぉ……」
千歌「……曜ちゃん、今頃何してるかな」
ミト姉「千歌ー! 果南ちゃんが来てるわよ!」
千歌「あ、はーい」
果南「よっ、千歌。元気?」
千歌「果南ちゃん、久しぶり~。私は元気だよー」ニッコリ
果南「久しぶりって言っても、つい一週間前に会ったばかりでしょ?」
千歌「そうだけどさ~、やっぱり仕事って長い時間に感じるんだよね~。果南ちゃんは、ダイビングのお仕事は順調?」
果南「順調順調。近くに千歌とダイヤもいるし、鞠莉も帰ってきたしね」
千歌「ああ、生徒会長と理事長……」
果南「千歌はあんまり知らないか。顔合わせることも少ないだろうからね~」
千歌「そうだね~、卒業してからは一度も顔合わせてないし」
果南「私は定期的に会ってるよ? 千歌たちと同じ、幼馴染だからね」
千歌「そっか、いいなぁ……私、近くに住んでる幼馴染って、果南ちゃんしかいないし……でも、こうして会えてうれしいよ!」
現在
千歌「はぁ……やっと仕事終わったよぉ……」
千歌「……曜ちゃん、今頃何してるかな」
ミト姉「千歌ー! 果南ちゃんが来てるわよ!」
千歌「あ、はーい」
果南「よっ、千歌。元気?」
千歌「果南ちゃん、久しぶり~。私は元気だよー」ニッコリ
果南「久しぶりって言っても、つい一週間前に会ったばかりでしょ?」
千歌「そうだけどさ~、やっぱり仕事って長い時間に感じるんだよね~。果南ちゃんは、ダイビングのお仕事は順調?」
果南「順調順調。近くに千歌とダイヤもいるし、鞠莉も帰ってきたしね」
千歌「ああ、生徒会長と理事長……」
果南「千歌はあんまり知らないか。顔合わせることも少ないだろうからね~」
千歌「そうだね~、卒業してからは一度も顔合わせてないし」
果南「私は定期的に会ってるよ? 千歌たちと同じ、幼馴染だからね」
千歌「そっか、いいなぁ……私、近くに住んでる幼馴染って、果南ちゃんしかいないし……でも、こうして会えてうれしいよ!」
5: 2017/11/04(土) 02:27:12.49 ID:w8FvIxooO
果南「……会えて本当に嬉しかったのは、曜なんじゃないの?」
千歌「――えっ?」
果南「曜、明日オリンピックに出るでしょ? ここ最近は割とテレビにも出てたから、久しぶりに見たんじゃないかなってさ」
千歌「……うん、そうだよ。曜ちゃん、すっごく大人っぽくなってた」
果南「会いたい?」
千歌「私なんて……会う資格ないよ。喧嘩してから、一度も話さずに別れちゃったし……曜ちゃんだって、私の顔……見たくないと思ってる」
果南「……」
ポカッ
千歌「いたっ! もう、なにするのさ!?」
果南「曜がそんなふうに思ってるわけないでしょ?」
千歌「それは……」
果南「会ってきなよ」
千歌「え?」
果南「これ、あげる」
千歌「……東京オリンピック? って、もしかしてこれ……」
果南「見た通り、チケット」
千歌「も、もらえないよ! これ、高いんでしょ? 手に入れるの、すっごく大変だっただろうし……」
果南「どうせ千歌は買わないと思ってたから。私はいいの、仕事入っちゃったし」
千歌「でっ、でも……」
果南「じゃあこれ、捨てちゃおっか。どうせ私は行けないしさ」
千歌「うぅ……果南ちゃん、ずるいよ……」
果南「千歌の方が、よっぽどずるい」
千歌「……」
果南「ほら、行ってきなよ……曜のところに」
千歌「……うん」
果南「よし。……じゃあ、私は帰るから」
千歌「あ……まって!」
果南「ん?」
千歌「……果南ちゃん、ありがとう」
果南「――フフッ、どういたしまして」
千歌「――えっ?」
果南「曜、明日オリンピックに出るでしょ? ここ最近は割とテレビにも出てたから、久しぶりに見たんじゃないかなってさ」
千歌「……うん、そうだよ。曜ちゃん、すっごく大人っぽくなってた」
果南「会いたい?」
千歌「私なんて……会う資格ないよ。喧嘩してから、一度も話さずに別れちゃったし……曜ちゃんだって、私の顔……見たくないと思ってる」
果南「……」
ポカッ
千歌「いたっ! もう、なにするのさ!?」
果南「曜がそんなふうに思ってるわけないでしょ?」
千歌「それは……」
果南「会ってきなよ」
千歌「え?」
果南「これ、あげる」
千歌「……東京オリンピック? って、もしかしてこれ……」
果南「見た通り、チケット」
千歌「も、もらえないよ! これ、高いんでしょ? 手に入れるの、すっごく大変だっただろうし……」
果南「どうせ千歌は買わないと思ってたから。私はいいの、仕事入っちゃったし」
千歌「でっ、でも……」
果南「じゃあこれ、捨てちゃおっか。どうせ私は行けないしさ」
千歌「うぅ……果南ちゃん、ずるいよ……」
果南「千歌の方が、よっぽどずるい」
千歌「……」
果南「ほら、行ってきなよ……曜のところに」
千歌「……うん」
果南「よし。……じゃあ、私は帰るから」
千歌「あ……まって!」
果南「ん?」
千歌「……果南ちゃん、ありがとう」
果南「――フフッ、どういたしまして」
6: 2017/11/04(土) 02:28:01.92 ID:w8FvIxooO
~~~
翌日
千歌(はぁ……人多すぎだよ)
千歌(飛び込み台も大分席から遠いし、こんなんじゃ小さすぎて見えないって……)
『――渡辺、曜』
千歌(あっ……曜ちゃんの番だ)
千歌「――っ」
千歌(大人びてて、分からなかったらって思ってたけど……そんなことなかった)
千歌(曜ちゃんは……いつまでも曜ちゃんのままだ)
千歌(あれ……曜ちゃん、緊張してる?)
千歌(うん……間違いない。ずっと見てきたんだもん)
千歌(でも、あんなに緊張してる曜ちゃん……初めて見た)
千歌(練習、きついのかな)
千歌(オリンピックだから、それだけプレッシャーがあるのかな)
千歌(曜ちゃん……私が力になってあげたい……けど、私には何もできないんだ)
翌日
千歌(はぁ……人多すぎだよ)
千歌(飛び込み台も大分席から遠いし、こんなんじゃ小さすぎて見えないって……)
『――渡辺、曜』
千歌(あっ……曜ちゃんの番だ)
千歌「――っ」
千歌(大人びてて、分からなかったらって思ってたけど……そんなことなかった)
千歌(曜ちゃんは……いつまでも曜ちゃんのままだ)
千歌(あれ……曜ちゃん、緊張してる?)
千歌(うん……間違いない。ずっと見てきたんだもん)
千歌(でも、あんなに緊張してる曜ちゃん……初めて見た)
千歌(練習、きついのかな)
千歌(オリンピックだから、それだけプレッシャーがあるのかな)
千歌(曜ちゃん……私が力になってあげたい……けど、私には何もできないんだ)
7: 2017/11/04(土) 02:28:58.52 ID:w8FvIxooO
~~~
数十分前
コーチ「いつも通りやれば大丈夫」
曜「はい」
コーチ「どうにも渡辺は本番に弱いみたいだから……でも、緊張したら、今まで練習した日々を思い出せ」
曜「はい」
コーチ「絶対できる……アレだけ練習したんだ」
曜「はい……頑張ります」
曜(……無理だよ)
曜(高校までは、オリンピック選手に匹敵するんじゃないかって騒がれてたけどさ)
曜(いざ選手として選ばれてみれば、成績は寧ろ悪くなっちゃったし)
曜(結局私は、井の中の蛙でしかなかった)
曜(いや……それとも)
曜(いつも私に勇気をくれていた人が、いなくなっちゃったからなのかな)
数十分前
コーチ「いつも通りやれば大丈夫」
曜「はい」
コーチ「どうにも渡辺は本番に弱いみたいだから……でも、緊張したら、今まで練習した日々を思い出せ」
曜「はい」
コーチ「絶対できる……アレだけ練習したんだ」
曜「はい……頑張ります」
曜(……無理だよ)
曜(高校までは、オリンピック選手に匹敵するんじゃないかって騒がれてたけどさ)
曜(いざ選手として選ばれてみれば、成績は寧ろ悪くなっちゃったし)
曜(結局私は、井の中の蛙でしかなかった)
曜(いや……それとも)
曜(いつも私に勇気をくれていた人が、いなくなっちゃったからなのかな)
8: 2017/11/04(土) 02:29:35.76 ID:w8FvIxooO
~~~
『――渡辺、曜』
曜(……やっぱり駄目だ)
曜(怖い……どうしようもなく、怖いよ)
曜(ああ……こんな時に思い浮かぶのは、やっぱり彼女の顔なんだ)
曜(太陽のように眩しくて、明るい笑顔で、私を応援してくれる)
曜(あの幼馴染の笑顔が……千歌ちゃんが)
曜「……グスッ」
曜(全身が震えてる……背筋が凍り付く)
曜(仕方ないよね……結果は結果だもん)
曜(これでコーチは思い知る、私はこの程度の実力なんだって)
曜(降板になったら、大学を辞めて……内浦に帰ろう)
曜(――そう思ったら、少し軽くなった気がする)
曜(今なら……きっと飛べる)
『――渡辺、曜』
曜(……やっぱり駄目だ)
曜(怖い……どうしようもなく、怖いよ)
曜(ああ……こんな時に思い浮かぶのは、やっぱり彼女の顔なんだ)
曜(太陽のように眩しくて、明るい笑顔で、私を応援してくれる)
曜(あの幼馴染の笑顔が……千歌ちゃんが)
曜「……グスッ」
曜(全身が震えてる……背筋が凍り付く)
曜(仕方ないよね……結果は結果だもん)
曜(これでコーチは思い知る、私はこの程度の実力なんだって)
曜(降板になったら、大学を辞めて……内浦に帰ろう)
曜(――そう思ったら、少し軽くなった気がする)
曜(今なら……きっと飛べる)
9: 2017/11/04(土) 02:30:53.99 ID:w8FvIxooO
「――曜ちゃん!」
曜「――っ」
曜(この声……この温かい声は……)
曜「千歌……ちゃん?」
曜「どこ……?」
曜(――ああ、いた)
曜(すごく遠い……それでも、あんなに特徴的な蜜柑色の髪は、彼女以外にいない)
曜(来て……くれたんだ)
曜「……ふぅ」
曜(震えは止まった……背中が熱い)
曜(大丈夫、いつも通りやれる……必ず)
曜(だって……千歌ちゃんが見てるから!)
曜「――っ」
曜(この声……この温かい声は……)
曜「千歌……ちゃん?」
曜「どこ……?」
曜(――ああ、いた)
曜(すごく遠い……それでも、あんなに特徴的な蜜柑色の髪は、彼女以外にいない)
曜(来て……くれたんだ)
曜「……ふぅ」
曜(震えは止まった……背中が熱い)
曜(大丈夫、いつも通りやれる……必ず)
曜(だって……千歌ちゃんが見てるから!)
10: 2017/11/04(土) 02:46:56.88 ID:w8FvIxooO
~~~
『えー、では、見事金メダルを獲得した渡辺曜さんにインタビューです』
曜「……正直、優勝できるなんて思っていませんでした」
曜「この結果を出すことができたのは、これまで指導してくださったコーチや、支えてくださった皆さんのおかげです」
『渡辺選手は、大学入学後の成績が芳しくなかったとのことでしたが……何か、心境の変化はあったのでしょうか』
曜「……いえ。今日まで、何一つ変わった事はありませんでした」
曜「勿論、練習メニューが多少変わったことはありましたけど……それで私の中で何かが変わったとは……とても言えないです」
『今日、ここに来るまでに何かが?』
曜「来てから、ですね。あそこに立つ瞬間まで、私は緊張しっぱなしでした」
曜「でも……聞こえたんです」
『聞こえた?』
曜「はい。彼女の声援のおかげで、私は実力を発揮することができました」
曜「私が優勝できたのは、彼女のおかげです」
『彼女……?』
曜「私の、幼馴染です」
曜「大切な……かけがえのない友人です」
『えー、では、見事金メダルを獲得した渡辺曜さんにインタビューです』
曜「……正直、優勝できるなんて思っていませんでした」
曜「この結果を出すことができたのは、これまで指導してくださったコーチや、支えてくださった皆さんのおかげです」
『渡辺選手は、大学入学後の成績が芳しくなかったとのことでしたが……何か、心境の変化はあったのでしょうか』
曜「……いえ。今日まで、何一つ変わった事はありませんでした」
曜「勿論、練習メニューが多少変わったことはありましたけど……それで私の中で何かが変わったとは……とても言えないです」
『今日、ここに来るまでに何かが?』
曜「来てから、ですね。あそこに立つ瞬間まで、私は緊張しっぱなしでした」
曜「でも……聞こえたんです」
『聞こえた?』
曜「はい。彼女の声援のおかげで、私は実力を発揮することができました」
曜「私が優勝できたのは、彼女のおかげです」
『彼女……?』
曜「私の、幼馴染です」
曜「大切な……かけがえのない友人です」
11: 2017/11/04(土) 02:47:28.72 ID:w8FvIxooO
~~~
千歌「ようやく帰ってきた……」
千歌(曜ちゃん……優勝なんて、本当にすごいなぁ)
千歌(最後に、曜ちゃんの姿が見れて……よかった)
千歌「……さて。私も、明日から頑張るぞ~!」
ミト「――千歌っ!」
千歌「わぁっ! もう、ミト姉……驚かさないでよ」
ミト「千歌……あれ、曜ちゃんでしょ?」
千歌「え?」
千歌「ようやく帰ってきた……」
千歌(曜ちゃん……優勝なんて、本当にすごいなぁ)
千歌(最後に、曜ちゃんの姿が見れて……よかった)
千歌「……さて。私も、明日から頑張るぞ~!」
ミト「――千歌っ!」
千歌「わぁっ! もう、ミト姉……驚かさないでよ」
ミト「千歌……あれ、曜ちゃんでしょ?」
千歌「え?」
12: 2017/11/04(土) 02:48:04.67 ID:w8FvIxooO
曜『――はい。彼女の声援のおかげで、私は実力を発揮することができました』
曜『私が優勝できたのは、彼女のおかげです』
『彼女……?』
曜『私の、幼馴染です』
曜『大切な……かけがえのない友人です』
曜『離ればなれになってしまったけれど、忘れることなんて……できるわけがない』
曜『そんな彼女が、この会場に来てくれた』
曜『私を応援してくれた』
曜『それだけで、私は頑張れるんです』
曜『私は――その幼馴染のことが、大好きです』
『その幼馴染の方に、何かメッセージを』
曜『……はい』
曜『応援してくれてありがとう……本当にうれしかった!』
曜『……大好きだよ。今も、ずっと』
曜『私が優勝できたのは、彼女のおかげです』
『彼女……?』
曜『私の、幼馴染です』
曜『大切な……かけがえのない友人です』
曜『離ればなれになってしまったけれど、忘れることなんて……できるわけがない』
曜『そんな彼女が、この会場に来てくれた』
曜『私を応援してくれた』
曜『それだけで、私は頑張れるんです』
曜『私は――その幼馴染のことが、大好きです』
『その幼馴染の方に、何かメッセージを』
曜『……はい』
曜『応援してくれてありがとう……本当にうれしかった!』
曜『……大好きだよ。今も、ずっと』
13: 2017/11/04(土) 03:02:07.76 ID:w8FvIxooO
千歌「曜……ちゃん」
千歌「私、バカだ……バカ千歌だ」
千歌「――っ」
ミト「あっ、千歌! どこいくの――」
千歌「ハァ……ハァ……」
千歌「曜ちゃん……曜ちゃん!」
千歌「私、バカだ……バカ千歌だ」
千歌「――っ」
ミト「あっ、千歌! どこいくの――」
千歌「ハァ……ハァ……」
千歌「曜ちゃん……曜ちゃん!」
14: 2017/11/04(土) 03:03:04.65 ID:w8FvIxooO
曜「――千歌ちゃん」
千歌「曜……ちゃん……なの?」
曜「もう、当たり前じゃん! それ以外の誰に見えるの?」
千歌「曜ちゃん……どうしてここに?」
曜「大会が終わった後、すぐに内浦に帰る電車に乗ったんだ。インタビューとか、そういうの全部振り切ってきた」
千歌「どう……して」
曜「だって……千歌ちゃんに、会いたかったから」
千歌「そんな……バカだよ、そんなの」
曜「アハハ……確かに、自分でもバカやったなあって反省してる」
曜「でも、それだけ……千歌ちゃんに会いたかったんだよ」
千歌「なんで……わかんないよ。だってチカは普通で、役立たずで……曜ちゃんに、何もしてあげることなんてできない」
曜「違うよ……千歌ちゃんの言ってること、全然違うよ!」ガシッ
千歌「――曜ちゃん!?」
曜「私……千歌ちゃんのおかげで頑張れてたんだよ」
曜「千歌ちゃんが笑顔で応援してくれるから、私は千歌ちゃんのために頑張ろうって……」
曜「それなのに……千歌ちゃんがいなくなったら、私……頑張れないよ」
千歌「曜ちゃん……」
千歌「曜……ちゃん……なの?」
曜「もう、当たり前じゃん! それ以外の誰に見えるの?」
千歌「曜ちゃん……どうしてここに?」
曜「大会が終わった後、すぐに内浦に帰る電車に乗ったんだ。インタビューとか、そういうの全部振り切ってきた」
千歌「どう……して」
曜「だって……千歌ちゃんに、会いたかったから」
千歌「そんな……バカだよ、そんなの」
曜「アハハ……確かに、自分でもバカやったなあって反省してる」
曜「でも、それだけ……千歌ちゃんに会いたかったんだよ」
千歌「なんで……わかんないよ。だってチカは普通で、役立たずで……曜ちゃんに、何もしてあげることなんてできない」
曜「違うよ……千歌ちゃんの言ってること、全然違うよ!」ガシッ
千歌「――曜ちゃん!?」
曜「私……千歌ちゃんのおかげで頑張れてたんだよ」
曜「千歌ちゃんが笑顔で応援してくれるから、私は千歌ちゃんのために頑張ろうって……」
曜「それなのに……千歌ちゃんがいなくなったら、私……頑張れないよ」
千歌「曜ちゃん……」
15: 2017/11/04(土) 03:03:40.63 ID:w8FvIxooO
曜「ずっと傍にいてください」
曜「そうすれば私は、何だって頑張れるから」
千歌「……いいの?」
千歌「私……なんにもできないよ?」
曜「いいよ」
千歌「私……家事だってそんなにうまくないし……お料理も、最近始めたばっかで……ご飯とか、おいしくないかも……」
曜「千歌ちゃんの作ったご飯なら、なんだって嬉しい」
千歌「曜ちゃんに……ワガママばっかり言うかも」
曜「ううん……言って欲しいんだよ。千歌ちゃんのお願いなら、どんなことだって叶えてあげる」
曜「そうすれば私は、何だって頑張れるから」
千歌「……いいの?」
千歌「私……なんにもできないよ?」
曜「いいよ」
千歌「私……家事だってそんなにうまくないし……お料理も、最近始めたばっかで……ご飯とか、おいしくないかも……」
曜「千歌ちゃんの作ったご飯なら、なんだって嬉しい」
千歌「曜ちゃんに……ワガママばっかり言うかも」
曜「ううん……言って欲しいんだよ。千歌ちゃんのお願いなら、どんなことだって叶えてあげる」
16: 2017/11/04(土) 03:04:07.59 ID:w8FvIxooO
千歌「……う……うぅ……」
千歌「グスッ……うぇぇ……」
千歌「今まで……本当にごめんね……」
曜「うん……許してあげる。だから――」
曜「一生、私の隣にいてください」
千歌「……はい」
千歌「グスッ……うぇぇ……」
千歌「今まで……本当にごめんね……」
曜「うん……許してあげる。だから――」
曜「一生、私の隣にいてください」
千歌「……はい」
17: 2017/11/04(土) 03:05:07.84 ID:w8FvIxooO
END
19: 2017/11/04(土) 07:36:32.30 ID:A8MYXSVSO
かわいい
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