1: 2016/09/21(水) 22:01:58.93 ID:x3iipz1Y.net
※某怪獣映画パロです。ネタバレ成分やや含むかもしれません。
※百合注意。


静岡県沼津市私立浦の星女学院

同、スクールアイドル部部室。


-桜内梨子 スクールアイドル部作曲担当大臣-

梨子「それでは、今回この浦の星女学院に出現した正体不明の巨大普通怪獣について、対策会議を開催します」

梨子「情報が不足しております。些細な事でも構いません。積極的な発言をよろしくお願いします」

2: 2016/09/21(水) 22:02:39.11 ID:x3iipz1Y.net
梨子「それではまず、解説の方を渡辺担当大臣、よろしくお願いします」

-渡辺曜 スクールアイドル部衣装担当大臣-

曜「承知しました。それでは、お手元の資料をご覧ください。それが、現在明らかになっているこの巨大普通怪獣のスペックです」

花丸「すみません」

曜「えー、国木田大臣、どうぞ」

-国木田花丸 浦の星女学院図書委員-

花丸「このスペック表を見る限り、身長157cmと、我々人間と大差ないように思われます」

花丸「だというのに"巨大"普通怪獣と呼称するのは違和感があるといいますか……」

3: 2016/09/21(水) 22:03:08.70 ID:x3iipz1Y.net
曜「お答えしましょう。こちらのスライドをご覧ください」

普通怪獣のちちっちのアップ

花丸「ちちっちですね……」

曜「はい。82cmあります」

花丸「82cm」

曜「はい。82cmです」

4: 2016/09/21(水) 22:04:23.91 ID:x3iipz1Y.net
花丸「分かりました。ちなみにスペック表には、その……他の情報は記されていないようですが」

曜「多分柔らかいと思います」

花丸「柔らかい」

曜「はい。内浦の自然の恵みの賜物かと」

花丸「ご返答ありがとうございました」

5: 2016/09/21(水) 22:05:37.53 ID:x3iipz1Y.net
梨子「さて。審議を再開させていただきます」

梨子「現在、内浦のこの浦の星女学院に出現した巨大普通怪獣ですが、現在1年生の教室を進行中です」

梨子「この巨大普通怪獣の通過後には、未知の元素が検出されており、これを暫定的に「チカチニウム」と命名し、目下大至急で調査が行われております」

梨子「巨大普通怪獣の齎した被害は甚大であり、同校の女生徒が数名、ノンケからレOに目覚めさせられています」

ザワザワザワ・・・

梨子「このまま進行されますと、我が校の女生徒の大部分がレO化。合計特殊出生率の低下、少子高齢化の進行と、日本国の重大な危機であると考えられます」

6: 2016/09/21(水) 22:06:05.81 ID:x3iipz1Y.net
善子「大臣」

梨子「津島教授、どうぞ」

-津島善子 浦の星女学院厨二病生態学研究室教授-

善子「対象は希少なサンプルです。なるべくであれば、捕獲を優先とした対策を考慮すべきです」

花丸「しかし教授……既に被害者が出ているのです。悠長なことは言っておられません」

花丸「捕獲どころか、鎮圧の目処すら立っていないのですから……」

曜「では、共存、捕獲、鎮圧、退学の、種々のレベルに区分けして各々の作戦プランを策定することにします」

善子「了解しました」

8: 2016/09/21(水) 22:08:35.51 ID:x3iipz1Y.net
花丸「で、現時点での普通怪獣の状況は?」

梨子「はい。1年生の教室でみかんを食べて活動を休止しております」

善子「エネルギーを蓄えてるってこと……不気味だわ」

曜「では、第一回目の会議を終了いたします」

ザワザワザワ・・・

曜「引き続き、生徒会長に報告を」

9: 2016/09/21(水) 22:09:23.65 ID:x3iipz1Y.net
浦の星女学院生徒会役員室

-黒澤ダイヤ 浦の星女学院生徒会長-

ダイヤ「憂慮すべき事態ですわね……」

梨子「生徒会長。ここは、理事会の招集を行うべきかと」

ダイヤ「かしこまりましたわ」

ダイヤ「理事長に通達を。1時間後、緊急理事会を開催いたします」

16: 2016/09/21(水) 22:27:58.59 ID:x3iipz1Y.net
浦の星女学院理事長室

-小原鞠莉 学校法人浦の星女学院高校理事長-

鞠莉「とんだCriticalなAccidentね……」

ダイヤ「緊急に理事会を開くべきですわ」

鞠莉「そうね。対策本部を設立しましょう」

17: 2016/09/21(水) 22:35:19.06 ID:x3iipz1Y.net
内浦に出現した正体不明の巨大普通怪獣対策会議(第一回)

ダイヤ「識者にも連絡を入れて、情報を提供してもらうようにしていますわ」

ダイヤ「ですが、最前線にいる我々がなんとかしなくては……」

梨子「現在は休止状態にあるようですが、いつ何時活動を再開するかわかりません」

鞠莉「それは、いつくらいになるの?」

梨子「不明です。ですが、対策は早急に立てる必要があるでしょう」

18: 2016/09/21(水) 22:40:35.73 ID:x3iipz1Y.net
鞠莉「何か、案はあるの?」

梨子「それについては、担当者から」

-松浦果南 内浦海洋探査技術団主任-

果南「対象は、内浦の海で育ちました」

果南「母なる海の情景を思い起こさせることで、沈静化させることが可能かと思われます」

果南「そのための作戦を策定しました」

梨子「作戦については既にレジメンを作成しております。理事長の指示の下、即座に実行可能です」

19: 2016/09/21(水) 22:41:01.96 ID:x3iipz1Y.net
鞠莉「しかし……実際に、こういうcaseを想定した校則とかはないわけであって」

梨子「有事の際ですから、四の五の言っていられません」

ダイヤ「理事長。緊急事態宣言を」

鞠莉「Why!? 緊急事態宣言なんて、今まで出したことない……」

ダイヤ「しかし、この緊急状況ではそうせざるを得ないでしょう」

ダイヤ「承認の、ご決断を」

20: 2016/09/21(水) 22:45:49.59 ID:x3iipz1Y.net
鞠莉「……うん、わかった」

鞠莉「緊急事態宣言を、発令します」

ダイヤ「了解しました。そして、緊急事態宣言の下、ここにに専門家委員会を設立します」

ダイヤ「Administrator of Quell Object Unknown Record of School-Idol」

ダイヤ「"スクールアイドル史において前例のない特質的対象を鎮圧するための管理機関"」

ダイヤ「略称"Aqours"」

曜「Aqours……」

ダイヤ「それでは、第一回の会議を終了しますわ」

25: 2016/09/21(水) 22:55:31.02 ID:x3iipz1Y.net
曜「ひぇ~……会議に次ぐ会議、こうしてる間にも時間は過ぎ去ってるっていうのに……」

梨子「組織っていうのはね、そういうものなのよ」

善子「全く……はみ出し者ばかりが集められた集団ね、Aqoursってのは」

花丸「あははは……」

梨子「……曜ちゃん」

曜「何?」

梨子「この手の会議ってのは、国民を納得……ううん。悪く言えば騙すために複雑化させてるようなもの」

梨子「それに臆することなく、この制約の中で最大の貢献をするのが、スクールアイドルの仕事なの」

曜「梨子ちゃ……」

梨子「……行くわよ。渡辺さん」

曜「り……はい、桜内さん」

26: 2016/09/21(水) 23:03:16.06 ID:x3iipz1Y.net
浦の星女学院スクールアイドル部部室

内浦に出現した正体不明の巨大普通怪獣を捕縛するための作戦を立案する会議(第一回)

果南「松浦果南です。今回の巨大普通怪獣捕縛についてのプランについて説明します。お手元の資料をご覧ください」

曜「……対象の母性回帰本能を誘発することに依る精神的鎮静からの捕縛作戦」

曜「長いですね。"カナハグ作戦"としましょう」

果南「かしこまりました。それでは、カナハグ作戦について説明します」

27: 2016/09/21(水) 23:06:30.59 ID:x3iipz1Y.net
果南「プランとしましては、まず最終防衛ラインとして二年生の教室を設定しています」

果南「そこに進行してきた普通怪獣と私が接敵。超絶至近距離からの抱擁、これをハグとしますが、これを行います」

曜「超絶至近距離というのは、いわゆるゼロ距離のことでしょうか?」

果南「はい」

花丸「そこまでの至近距離にまで接近して問題は? チカチニウムの影響が強いのでは?」

果南「対ガチレO装甲を施したウェットスーツを装備することで、対処できるものと考えています」

果南「また、予め海水に濡れておくことによって放射熱をある程度防御できるものと試算しています」

善子「それでも、長期の接触はチカチニウム汚染の危険性が極めて高い。行ったらそれっきりの可能性だってある」

曜「……命の保証はない作戦です」

果南「覚悟の上です。それで、この浦の星女学院が守れるならば」

曜「わかりました。貴女の覚悟を信じましょう」

30: 2016/09/21(水) 23:15:07.43 ID:x3iipz1Y.net
梨子「この打開策を打ち出せぬ状態に、学校内で不安の声が上がっています」

ダイヤ「理事長。記者会見を、開きましょう」

鞠莉「わ、わかったわ」

ダイヤ「急いで放送室へ移動を!!」

梨子「記者会見を行う、関係者へ通達してちょうだい。ええ、ええ」

浦の星女学院校内放送

「……で、あるからして。この巨大普通怪獣に対抗する術は……」

ザワザワザワ・・・

曜「このプランで、対抗できるのかな」

果南「やるしかないよ」

31: 2016/09/21(水) 23:27:36.43 ID:x3iipz1Y.net
浦の星女学院校舎二年生教室前廊下

"カナハグ作戦"実行本隊連絡基地

果南「こちら果南。目標地点に到達しました」

ダイヤ「理事長。果南が目標地点に到達しました」

ダイヤ「これより、理事長の指示が下されれば作戦は決行されます」

ダイヤ「作戦開始の、指示を」

鞠莉「わかったわ……」

32: 2016/09/21(水) 23:30:09.23 ID:x3iipz1Y.net
鞠莉「……作戦の開始を、承認します!」

ダイヤ「承認が降りました。作戦開始ですわ!」

曜「"カナハグ"作戦、開始!」

梨子「了解。"カナハグ"作戦、開始」

果南「こちら廊下。作戦開始、ラジャ」

果南「対象、捕捉。距離300」

果南「距離200」

果南「距離100、攻撃許可を」

ダイヤ「理事長、攻撃の命令を」

鞠莉「ええ。これより、無制限の手段を以って対応を許可します!」

果南「ラジャー。これよりハグを開始する!」

33: 2016/09/21(水) 23:30:35.30 ID:x3iipz1Y.net
果南「ちーかちゃん♪」

千歌「ぎゃお?」

果南「はぐ、しよ?」

千歌「ぎゃおー♪」ハグッ

果南「おー、よしよし、お利口さんお利口さん」

34: 2016/09/21(水) 23:31:02.22 ID:x3iipz1Y.net
ダイヤ「効いています! 効いていますわ!」

鞠莉「イェス! さすが果南よ!!」

花丸「このまま母性の力で沈静化させることができれば……」

曜「……様子がおかしい」

善子「何ですって?」

梨子「あれは、何……」

千歌(スウウウウッ)

曜「深呼吸……一体、何をする気だ!?」

35: 2016/09/21(水) 23:31:37.23 ID:x3iipz1Y.net
梨子「まさか……! 検出班!!」

「高濃度のチカチニウムの集積を確認!! 中心部はものすごい濃度です!!」

曜「いけない! 果南ちゃん!! 今すぐそこから撤退して!!!!」

梨子「だめ!! 間に合わない!!」

千歌「フウウウウウッ♪」

果南「ひゃあああああっ!?」

梨子「耳元にブレスを吐いた……!」

花丸「松浦主任のノンケゲージ全壊!! 周辺のチカチニウム濃度急激に上昇!!」

36: 2016/09/21(水) 23:32:31.71 ID:x3iipz1Y.net
ダイヤ「そんな!!」

曜「ウェットスーツで防御されていない箇所……」

善子「耳元から脳に向かって急速にチカチニウムを注入したんだ……」

花丸「内部からメルトダウン進行!! 体温急激に上昇!! 海水も無効!!」

花丸「駄目です! レO堕ち止められません!!」

曜「松浦主任が危ない!! 急ぎ救援を!!」

ダイヤ「なりません!! これ以上、戦力を割くことは……!」

曜「しかし!!」

38: 2016/09/21(水) 23:33:35.21 ID:x3iipz1Y.net
鞠莉「……撤退命令を」

果南「ふぁああ……///」

鞠莉「……撤退よ。我々は、当該地点を……放棄する……!!」

曜「………」

梨子「間違いないわ……あの普通怪獣は"進化"している……!!」

44: 2016/09/21(水) 23:59:00.53 ID:x3iipz1Y.net
浦の星女学院校舎一年生教室 普通怪獣進行跡地

曜「これが、被災地の状況……」

「ああぁ……// ○○ちゃん……//」
「うふふ……うふふふ……///」
「お姉さまぁ……幸せですわぁ……///」

曜「なんということ……」

梨子「チカチニウム汚染の影響ね。ここは比較的軽度の汚染地域だけど」

45: 2016/09/22(木) 00:00:02.62 ID:ZFa3eHfl.net
曜「……果南ちゃんは」

梨子「……残念だけど」

梨子「……被災地の復興は必ずやり遂げてみせる。でも今は、目の前の普通怪獣が先よ」

曜「………はい」

46: 2016/09/22(木) 00:00:30.21 ID:ZFa3eHfl.net
浦の星女学院理事長室

鞠莉「なんですって!?」

ダイヤ「認められませんわぁ!!」

梨子「この校舎はもはや全域が危険地帯です。お二人はヘリで脱出を」

ダイヤ「ですが、私はここの生徒会長です!」

鞠莉「全校生徒を置いて、トップが逃げ出すわけには……」

梨子「トップだからこそです。貴女達には生きて、生き抜く義務があるのです」

鞠莉「………」

ダイヤ「理事長。ここは従いましょう……」

鞠莉「……アンダースタン、分かったわ」

47: 2016/09/22(木) 00:01:42.38 ID:ZFa3eHfl.net
ダイヤ「……貴女方も、あとで追いついてきてくださいね」

梨子「了解しました」

鞠莉「必ずよ。かならず、私達の手で復興をやり遂げるんだから……!」

ダイヤ「貴女達には、最後まで負担をおかけしますわ……」

梨子「……次は、別の会議場でお会いしましょう」

48: 2016/09/22(木) 00:02:05.96 ID:ZFa3eHfl.net
梨子「二人には先にヘリで脱出してもらうことになったわ」

曜「梨子ちゃん!! 大変だよ!!」

梨子「……」

曜「あ……桜内大臣大変です!! 普通怪獣の反応が……!」

花丸「さっきまでは教室に居たはずなのに……!!」

善子「わ、私は悪くないわよ! きゅ、急に消えたんだもの!!」

49: 2016/09/22(木) 00:02:33.55 ID:ZFa3eHfl.net
梨子(教室に居たはずの反応が急に……消えた?)

梨子「校舎の見取り図を」

曜「はい」

梨子(ここに普通怪獣は居た……それが急に消え……まさか!)

梨子「理事長と生徒会長が危ない!」

曜「え?」

梨子「普通怪獣は、別ルートで屋上に向かおうとしている!!」

50: 2016/09/22(木) 00:20:46.03 ID:ZFa3eHfl.net
浦の星女学院校舎屋上連絡通路

鞠莉「さあ、屋上に向かいましょう」

ダイヤ「了解しましたわ」

「……ぎゃおー」

鞠莉「え……今、何か聞こえた?」

ダイヤ「わ、わかりませんわ……」

「ぎゃおー」

鞠莉「ま、まさか……!!」

ダイヤ「そんな……な、なぜ普通怪獣がここに……!!」

「ぎゃおー!」

「「きゃあああああああああああああ!!!」」

51: 2016/09/22(木) 00:22:49.78 ID:ZFa3eHfl.net
曜「……なんてこと」

梨子「ど、どうしたの……」

曜「現地から連絡が入りました……」

曜「鞠莉さんとダイヤさ……いえ」

曜「理事長と生徒会長が、普通怪獣の襲撃に遭って、おレOなりになりました……」

梨子「くっ……!」

曜「緊急に代理の理事長が必要だね……」

56: 2016/09/22(木) 00:28:05.05 ID:ZFa3eHfl.net
-黒澤ルビィ 浦の星女学院理事長兼生徒会長代理-

ルビィ「ピギィ……」

曜「大丈夫ですかね?」

梨子「しょうがないわ。前生徒会長の実妹、いずれこうなることになっていたわ」

梨子「上が変わっても私達がやることは変わらない」

梨子「そして今この瞬間から、貴女がAqoursの主任よ。順調な出世コースね」

曜「………」

57: 2016/09/22(木) 00:29:07.00 ID:ZFa3eHfl.net
梨子「普通怪獣に対処するにあたって、外部からの応援が来たわ」

善子「応援というよりは、なんとかここで鎮圧しないと他に波及するからってことでしょうね」

花丸「他の学院は気楽なものずら……」

曜「あなた達は……」

-園田海未 音ノ木坂学院元生徒会長補佐-
-南ことり 音ノ木坂学院元生徒会長補佐-

海未「我々からも情報を提供します」

ことり「力を合わせて事に当たりましょう」

曜「Aqours主任の渡辺です。皆さん……よろしくお願いします!」

58: 2016/09/22(木) 00:29:52.18 ID:ZFa3eHfl.net
-西木野真姫 西木野総合病院次期院長-

真姫「前任者の残した研究には、意味不明な箇所が多々ありましたが、幾つかの共通項を見出しています」

曜「それに、普通怪獣攻略のヒントが隠されていると?」

真姫「おそらくは」

海未「東條さんに連絡をしてあります。スピリチュアルな内容について太いパイプを持っている人です。有益な情報が得られるかもしれません」

梨子「よろしくお願いします。引き続き、普通怪獣への対策について検討を進めていってください」

59: 2016/09/22(木) 00:30:18.44 ID:ZFa3eHfl.net
曜「……あ゛~」

善子「な゛ぁによ……なっさけない声あげちゃって……」

花丸「もう……限界、ずらぁ……」

曜「進展はない……普通怪獣は休止状態……被災地の復興は手付かず……」

善子「……曜、あのさ」

曜「?」

善子「……最後にシャワー浴びたの、いつ?」

曜「!?」ババッ

花丸「シャワーくらい浴びてくればいいずら」

曜「い、いってくりゅぅっ!!」

60: 2016/09/22(木) 00:36:59.49 ID:ZFa3eHfl.net
浦の星女学院校舎理事長室

梨子「……つまり、タイムリミットだと」

ルビィ「そんな……」

海未「これは音ノ木坂の意志です」

ことり「これ以上の猶予はありません。ここで、徹底的にたたきます」

ルビィ「ま、待ってください! そんなことをしたら浦の星女学院は……」

海未「世界のために必要な犠牲なのです。学院の長として、懸命なご判断を」

梨子「………」

61: 2016/09/22(木) 00:38:19.43 ID:ZFa3eHfl.net
善子「そうか……そういうこと……そういうことなのね……」

曜「何か、分かったの?」

善子「堕天界からの天啓です……いいですか、この古文書を解読すると、あの普通怪獣を鎮静するには、キラキラが必要なのです」

曜「キラキラ?」

善子「普通怪獣が、普通でなくなるためのモノ。普通怪獣を、普通怪獣でなくすためのモノ」

曜「そ、それは具体的には……?」

62: 2016/09/22(木) 00:38:34.33 ID:ZFa3eHfl.net
花丸「それについては、マルが答えるず……お答えします」

花丸「これが、その概略図です」

曜「これは……衣装?」

花丸「普通怪獣を、キラキラ輝かせるために必要なもの。その一つです」

曜「な、ならばこれを作れば……!!」

曜「普通怪獣を、攻略できる!!!」

ガチャ

梨子「………話があるわ」

64: 2016/09/22(木) 00:39:27.16 ID:ZFa3eHfl.net
梨子「……音ノ木坂は、最終手段に出ることにしたようよ」

曜「最終手段……まさか、核攻撃!?」

梨子「ええ。それに匹敵する兵器、ほの爆弾の投下を決定したわ。今から24時間後に決行よ」

曜「ほの爆弾って……あの音ノ木坂を僅か2クールで硝子の花園に変貌せしめた、あの最終兵器を!?」

梨子「核爆弾が核分裂反応による人工太陽だとしたら、ほの爆弾は百合融合反応による天然太陽」

梨子「いずれにせよ、浦の星女学院はかつてノンケが在校していたという事実を一欠片たりとも残さぬ焦土になるわ」

梨子「私にも、音ノ木坂への帰還命令が出た……」

曜「梨子ちゃん……」

梨子「でも、私は帰らない。ここを、第二の音ノ木坂にしてはならないから……」

69: 2016/09/22(木) 00:50:35.42 ID:ZFa3eHfl.net
曜「なんとしてでも衣装を完成させるんだ!!」

花丸「すいません!! 布の材料の手配を……はい! 大至急で!」

善子「アクセサリー類に関しては全力で発注中よ!!」

曜「こうなったら、やれるところまでやってやるんだ!! 全速前進!!!」

梨子「でも時間は限られている。延長工作も、そこまでは続かない」

梨子「音ノ木坂としては、一刻も早くほの爆弾を落としたい腹づもりよ」

曜「なんとか、なんとか……一時間だけでもいい! 時間が欲しい!!」

梨子「西木野病院はあのチカチニウムに興味がある様子だった。交渉材料にしましょう」

曜「分かった。手配をよろしく」

72: 2016/09/22(木) 00:54:33.22 ID:ZFa3eHfl.net
善子「ちょっとぉ! どう考えても間に合わないわよ!!」

花丸「このままだと、衣装を完成させてもそれを着せる時間がないずらー!!」

曜「なんとか交渉してみる……とりあえず、理事長に連絡を……」

prrrrrrrrrrrr

曜「理事長!!」

ルビィ「よ、曜さぁん……」

曜「お願いです!! なんとかして!! なんとかしてほの爆弾の投下を延期させてください!!」

ルビィ「でも……でも、それ以外に方法はないって……!」

73: 2016/09/22(木) 00:55:11.69 ID:ZFa3eHfl.net
曜「ほの爆弾を使ってしまえば、それこそ取り返しのつかないことになってしまいます!!」

曜「私たちは、また立ち上がることができる! どんな被害の中でも、立ち上がるスピリッツを持っている!!」

曜「ですが!! ほの爆弾を使ってしまえば、その復興すら不可能になってしまうんです!! 理事長!!」

ルビィ「でも……ほの爆弾を使った場合、統廃合については音ノ木坂が色々支援してくれるって……」

ルビィ「こっちの不確実な作戦で、もし、もしも失敗しちゃったら……!」

曜「信じてください!! 私を!! 私達の力を!! 日本国民の力を!!!」

ルビィ「うゅ……が、がんばルビィ……!」

ガチャ

曜「頼みましたよ……」

77: 2016/09/22(木) 01:03:02.43 ID:ZFa3eHfl.net
善子「衣装が完成したわ!!」

花丸「やったずらぁー!!」

曜「よし!! そして、これが計画案だ!!」

梨子「"内浦の巨大普通怪獣鎮圧用特殊縫製装具を装着するための衣装脱着作戦要項"」

善子「長いわ」

花丸「長いず……です」

曜「……"キラキラ作戦"で行きましょう」

梨子「了解。関係者各位に通達して」

78: 2016/09/22(木) 01:10:54.89 ID:ZFa3eHfl.net
曜「……以上が、キラキラ作戦の概要になります」

花丸「でも、この計画の中心は、誰が普通怪獣の服を脱がせて、この衣装を着せるかということ」

善子「そこだけは完全に人力になる。チカチニウムの放出源にノンケが接近して無事でいられるはずがないわ。メルトダウンした溶鉱炉に人間が飛び込むようなものよ」

梨子「それについては、特殊な抗体を産生することで対応可能よ。先程理研から連絡が入ったわ」

曜「とはいっても、活動限界は短い……」

花丸「志願者を募ったところで……」

善子「自殺希望者を、募るようなものよ……」

曜「………」

79: 2016/09/22(木) 01:11:21.83 ID:ZFa3eHfl.net
梨子「私が行くわ」

曜「梨子ちゃ……桜内さん!?」

梨子「渡辺さん、貴女はAqoursのトップよ。全体を掌握し、管理する義務がある」

梨子「私が前線に出て、普通怪獣を脱衣させ、この衣装を着衣させるわ」

曜「そんな!!」

梨子「誰かがやらなきゃならないの。だとしたら、それが私の為すべきことよ」

梨子「時間がないわ! 衣装と、熱いお茶を準備して!!」

83: 2016/09/22(木) 01:17:40.94 ID:ZFa3eHfl.net
浦の星女学院校舎三年生教室前廊下

キラキラ作戦実行本隊臨時仮設基地

曜「本当に、よろしいですか」

梨子「ええ」

曜「……必ず。必ず、生きて帰ってきてください」

梨子「……」

84: 2016/09/22(木) 01:18:10.44 ID:ZFa3eHfl.net
曜「理事長。こちら前線部隊、準備できました」

ルビィ「う……うゅ……」

曜「作戦開始の、指示を」

ルビィ「……み、皆さん。がんばってください!!」

ルビィ「作戦を、開始してください!!」

曜「理事長の許可が降りた!!」

曜「"キラキラ作戦"、開始!!」

87: 2016/09/22(木) 01:24:23.47 ID:ZFa3eHfl.net
千歌「ぎゃおー!!」

花丸「普通怪獣、行動を開始しました!!」

善子「まずは第1段階……!」

千歌「ぎゃおー?」

花丸「対象、箱詰めになっているみかんに注目! 皮を剥き始めました!!」

曜「まずは足止めに成功!!」

88: 2016/09/22(木) 01:25:19.05 ID:ZFa3eHfl.net
花丸「続いて第二段階!!」

花丸「箱詰めみかんの中に偽装させ紛れ込ませた、高圧の遠隔操作水鉄砲!!」

花丸「対象! 普通怪獣の目元!! みかん汁、発射します!!」

ピュピュッ!

千歌「!! ぎゃおー!! ぎゃおー!!!」

ジタバタ

花丸「命中!! 普通怪獣、悶絶しています!!」

90: 2016/09/22(木) 01:26:53.89 ID:ZFa3eHfl.net
曜「よし、第三段階!! 桜内さん!! 突撃してください!!」

梨子「こちら桜内、了解。これより対象のもとへ向かう!」

曜「計画の第三段階……まずは着ている服を脱がす!!」

千歌「ぎゃおー! ぎゃおー!」

梨子「あ、暴れないで千歌ちゃん!!」

梨子(くっ……この至近距離、さっき飲んだ熱いお茶が効いてなかったら今頃……!)

善子「桜内隊長のノンケゲージ既に危険域です!! チカチニウム汚染、重大!!」

曜「お願い……梨子ちゃん……!」

91: 2016/09/22(木) 01:28:28.80 ID:ZFa3eHfl.net
千歌「ぎゃ、ぎゃおー!」

梨子「はぁ……はぁ……!」

善子「やりました!! 巨大普通怪獣、全裸になりました!!」

花丸「あとはあの衣装を着衣させるだけ……」

千歌「ぎゃおー///」

梨子「あっ―――」

ダキッ

善子「あ……」

花丸「そんな……」

曜「う……そ……」

92: 2016/09/22(木) 01:29:00.90 ID:ZFa3eHfl.net
千歌「ぎゃおーぎゃおー!」

梨子「ぁあああああ/////」

善子「……桜内主任のノンケゲージ、全壊。レOになりました」

花丸「あんな至近距離で、全裸の千歌ちゃんにハグされるだなんて……」

曜「うらやま……じゃなくて、なんてむごい……!」

善子「でもこれで人類に為す術はなくなった……」

花丸「ほの爆弾の投下を待つだけ……」

94: 2016/09/22(木) 01:33:36.38 ID:ZFa3eHfl.net
曜「……まだだ」

曜「まだだよ!!」

善子「曜!?」

花丸「何するつもりずら!?」

曜「まだチャンスは有る!! 今のうちに、普通怪獣にあの衣装を着せるんだ!!」

曜「熱いお茶まだある!?」

花丸「はい!!」

曜「ごくっごくっ……って、熱っっ!!」

善子「一気に飲むからよ……」

曜「これでよし……それじゃ、渡辺曜!! 全速前進、出撃します!!!」

97: 2016/09/22(木) 01:35:36.24 ID:ZFa3eHfl.net
千歌「ぎゃおー!」

曜(これが、巨大普通怪獣……!!)

ちかっちのちちっち ポヨンッ

曜(間近で見るとなんて迫力だっっ……! 思わず興奮してしまう!!)

梨子 グッタリ

曜「桜内さん……!」

曜「貴女の犠牲を無駄にはしない……! 必ず、やり遂げてみせる!!」

98: 2016/09/22(木) 01:36:03.18 ID:ZFa3eHfl.net
千歌「ぎゃおー!!」

曜(くっ!! なんて魅惑的な匂い!! みかんのような甘酸っぱさと同時に脳がとろけるようなコクとまろやかさ!!)

曜(これがチカチニウム汚染の影響……!! ガスマスクを用意するべきだった!!)

曜(だが、今更後には引けない……この衣装を、普通怪獣に……!!)

千歌 ポヨンッポヨンッ

曜(だ、だだだダメだ!? わ、私には直視できない!!)

曜(あわ、あわわわわわわ……!! も、もうダメだ!! 脳みそがヨーソローしちゃう!!!)

99: 2016/09/22(木) 01:36:46.80 ID:ZFa3eHfl.net
「諦めないで!!」


曜(この声は……)

善子「諦めないで!!」

花丸「諦めちゃだめずら!!」

曜(そうだ……)

曜(私は、Aqoursの主任、渡辺曜!!)

曜(この世界を守る、義務があるんだ!!)

101: 2016/09/22(木) 01:39:55.41 ID:ZFa3eHfl.net
千歌「ぎゃおー!!!」

曜(うっ……ぐっ……なんて、肌がスベスベ……!!)

曜(あぅ……でもここはしっかり柔らかくて……うう……!!)

曜(でも、もう少し!! あと少しなんだ!!!)

花丸「着衣面積、70%超えました!!」

善子「いっけー! もうあと一息よ!!」

曜(腕を通して……顔を、通して……)

曜(リボンを整えて……これで……!!)

花丸「衣装着衣率100%!!」

善子「お願い……これで、止まって!!」

103: 2016/09/22(木) 01:40:44.33 ID:ZFa3eHfl.net
曜(うう……!!)

千歌「ぎゃお……ぎゃお……ぉ……」

善子「……とまった、の?」

花丸「……見て!! チカチニウムの放出が……!!」

善子「とまった……とまった、止まったわ!!!」

善子「曜!!! やったわ!!! やり遂げたのよ!!!」

曜「えへへ……!」

千歌「zzz………」

105: 2016/09/22(木) 01:41:45.61 ID:ZFa3eHfl.net
よしまる「「おかえりなさい」」

善子「もう。あんたが途中でヘタレたもんだから、時間ギリギリだったのよ?」

曜「ふぇっ!?」

花丸「裏で生徒会長補佐……じゃなくて、生徒会長が西木野病院に、ほの爆弾の投下の延長を最後の最後まで進言してた甲斐があったずら」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ルビィ「うゅ………!」

真姫「ふふっ……いい子ね。それじゃ、あのホテルで終わらないお誕生日パーティー初めましょう?」

ルビィ「ピギャアアアアア……///」

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107: 2016/09/22(木) 01:43:54.33 ID:ZFa3eHfl.net
曜「そっか……生徒会長が……」

善子「元生徒会長の妹で、いっつも泣いてるだけだと思ってたけど」

花丸「あの子はやるときはやるんですよ」

善子「なによぉ! 一件落着したんだから、そのぎこちない標準弁はやめなさいよ!」

花丸「……ずらー!! あー!! やっとずらっていえるずらー!!」

善子「今までも散々言ってたじゃないのよ!!」

花丸「ずららー!?」

108: 2016/09/22(木) 01:49:46.54 ID:ZFa3eHfl.net
海未「まったく……無茶する方々です」

ことり「でも、見直したよ」

海未「ええ。内浦にも、骨のあるスクールアイドルがいたのですね」

ことり「現役の時に、出会いたかったなぁ」

海未「末恐ろしさすらありますけどね。ふふっ」

109: 2016/09/22(木) 01:50:31.05 ID:ZFa3eHfl.net
一週間後

曜(ほの爆弾の投下は、キャンセルではなく、一時的に凍結されただけだった)

曜(カウントダウンが止まっただけ。巨大普通怪獣が再び目覚めたとき、カウントダウンは再び刻まれる)

曜(そして今度カウントが動き始めたら……そのときは、ほの爆弾は確実に投下されるだろう)

曜(私たちは、再びあの普通怪獣を目覚めさせてはならない。そう、強く思う)

曜(……そもそも、普通怪獣とはなんだったのだろう)

曜(思うに、それはキラキラを探し求めて、迷っている心なんだと思う)

曜(人は誰だって、普通なところと、普通じゃないところを持っている)

曜(普通よりも優れた部分と、そうじゃない部分)

曜(あの普通怪獣は、自分のことを普通だと強く思い込んでしまっていたのだろう)

曜(誰だって、普通じゃない、何かの輝きを持っているんだ、ってことに気づければよかったんだ)

110: 2016/09/22(木) 01:55:22.77 ID:ZFa3eHfl.net
梨子「千歌ちゃん……///」

千歌「も~! 梨子ちゃんったら隙あらば抱きついてくるんだから~!」

梨子「だ、だってぇ~!!」

千歌「だってじゃないよぉ! あっついんだから、ちょっとはーなーれーてー!」

梨子「いーやー!!!」

ダイヤ「あれは一体なんですの……」

111: 2016/09/22(木) 01:55:51.41 ID:ZFa3eHfl.net
鞠莉「チカチニウム被爆の後遺症……らしいわよ?」

花丸「半減期はとっくに過ぎてるはずなんだけど……不可逆にやられちゃったのかな」

善子「まったく……まあ、最前線で戦ってたから、被曝量も多かったのでしょ」

果南「そ、そうだよね! きっとチカチニウムの後遺症だよね!!」

花丸「? 三人共どうして仲良く手を繋いでるずら?」

果南「べ、別になんでもないよ!? わ、私たちはノンケ!! ノンケだから!!」

ダイヤ「そ、そうですわ!! この国を背負って行く者として、そんな///」

鞠莉「///」

112: 2016/09/22(木) 01:57:22.32 ID:ZFa3eHfl.net
曜(巨大普通怪獣の残した傷跡は大きく、深い)

曜(だけど、この国は瓦礫の中から這い上がってきた国だ)

曜(今度も、またきっと元通りになれる)

曜(ううん! それどころか、元よりももっともっとよくなれる!)

曜(そう、信じてる――――)

113: 2016/09/22(木) 02:03:07.70 ID:ZFa3eHfl.net

114: 2016/09/22(木) 02:05:12.09 ID:z6i/cFPT.net
乙乙
作者さんの作品はいつも楽しませてもらっています

128: 2016/09/22(木) 12:24:36.49 ID:ZFa3eHfl.net
1ですが、感想コメに救われてます。皆さん本当に有難うございます。

引用: SS 曜「内浦に出現した正体不明の巨大普通怪獣対策本部」