23: ◆NvjLpFJjHI 2012/04/08(日) 15:00:48 ID:/zQGguLg0
投下はじめます

純「祝われたい」

24: 2012/04/08(日) 15:01:36 ID:/zQGguLg0
私の誕生日が食われそうである……。

圧倒的危機。私、鈴木純の誕生日である今日は月曜日、新入生との対面式。ダブルブッキング(?)である。
何よりも恐れるのは、新学期のドタバタによる誕生日のうやむやだ。祝われたい。ちやほやされたい。なんとしても。

春休み、新学期から軽音部に入部する私は、梓、憂とともに新入部員の獲得をしなければとミーティング(という名目のだべり)をしていた。
新入部員を獲得するには対面式の部活動紹介からビシッと好印象を与えなければ、という結論になったが結局憂の手作りのお菓子に手が止まらず口は咀嚼のために動くのみであった。
肝心の部活動紹介の内容については全く決まらずそのまま当日を迎えてしまったのである。

そして現在、部室にて緊急会議中。

25: 2012/04/08(日) 15:02:01 ID:/zQGguLg0

梓「やっぱり軽音部なんだから、かっこいい演奏して新入生を魅了しなくちゃ」

憂「でも、私なんかまだ楽器も決まって無いし」

純「演奏は新歓のときでいいんじゃない? 部活動紹介なんて持ち時間かなり短くてまともに演奏なんて出来ないでしょ」

梓「う……確かに毎年各部活一言ずつだったような……去年の律先輩なんて――、」

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律「放課後にティータイムができます! 音楽室で毎日活動してまーす、以上!!」

梓澪「(おぉ―――――いッ!!!!)」

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純「あれはあれで魅力的な部活動紹介だったと思うけどね」

梓「純には魅力的かも知れないけど……」

純「どういうこと」

憂「まぁまぁ」

26: 2012/04/08(日) 15:02:33 ID:/zQGguLg0

ご覧の通り私の誕生日はアウトオブ眼中で「今日私誕生日なんだけどー?」とか言い出せない空気である。
いや、言っても、

o ポワポワポワ

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あずさ「あ、そうなんだ、おめでとう純」

うい「おめでとー純ちゃん」

わたし「ありがとう二人とも」

あずさ「さて部活動紹介の話だけど」

うい「うん、どうしよっか」

わたし「……」

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……と、話を一瞬で流され余計に激しい寂しさに襲われること間違いない。
『新生活に順応する』『誕生日を祝われる』。“両方”やらなくっちゃあならないってのが“4月生まれ”の辛いところである。

27: 2012/04/08(日) 15:03:06 ID:/zQGguLg0

梓「はぁ……どうしたらいいんだろ」

純「梓、こういうの苦手そうだしね」

梓「うん……大勢の新入生の前で喋るのは緊張するかな……」

純「みんな私たちより2つも年下なんだから、どーんと構えればいいんじゃない」

憂「ふふ、純ちゃん人前で喋るの得意そう」

純「えっ?」

梓「確かに純って緊張しなさそうだよね」

憂「純ちゃん、昔からいざというとき頼りになるもんね」

純「!! そうかな……へへへ……」

憂……、梓……!やっぱり、18歳になっちゃった私のオトナっぽさに無意識的に気づいちゃったかー!
17歳と18歳じゃ全然違うからね、まだまだ憂も梓も子供っぽいとこあるし、軽音部のためにオトナの私が一肌脱いじゃってもいいかな、なんて。

28: 2012/04/08(日) 15:03:38 ID:/zQGguLg0

純「じゃあ3人一緒に壇上に立って、しゃべるのは私がやろうか!」

憂「純ちゃんかっこいー!」

梓「うん……ほんとは部長の私がやるべきなんだろうけど……お願い純」

純「任せてよ!!」

これよ! この二人の尊敬のまなざし!! 私も3年生、18歳……そうだ、今の私はあの澪先輩とも同い年じゃん!!
部活動紹介はもらった!! 壇上で新入生たちの憧れの的になっている数時間後の私が目に浮かぶ……!
そして対面式後……部室に再び集まって、

o ポワポワポワ

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うい「純ちゃん、いい部活動紹介だったよ」

あずさ「純のおかげで明日から忙しくなりそう! 新入部員を迎える準備をしなくちゃ!」

わたし「あはは、まぁ私、ちょっとお姉さんだし……?」

うい「あ! そういえば純ちゃん今日誕生日だったね」

あずさ「そうだった! 忘れててごめん純!」

わたし「あはは、いいよいいよ。今日はなによりも、軽音部の、二人の役に立てて良かった」キラリーン☆

うい「じゅんちゃん、おとなっぽい……♥」キュンッ

あずさ「たよりになる……♥」キュンッ

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29: 2012/04/08(日) 15:04:08 ID:/zQGguLg0

純「なんて!!!なんて!!!!!」

梓「!?」ビクッ

憂「純ちゃんどうしたの?」

純「い、いやなんでも」

梓「……? 純、やっぱり私がしゃべろうか?」

純「だいじょうぶ、任せてよ!」

思わず声に出てしまったけど、これは絶好の活躍のチャンス!
誕生日が食われる……なんて心配してたけど、これは良い演出になりそうである。
一味違う18歳の私のデビュー戦となりそうだ。

放送「ピンポンパンポーン……対面式が始まります。2、3年生は椅子をもって講堂へ向かってください。部活動紹介関係者は、生徒会の指示に従って待機してください」

タイミング良く放送がかかって、ついに講堂への集合がアナウンスされた。
どんなことを話そうか考えながら講堂へ向かう。澪先輩が壇上で話すとしたらどんな風に話すだろうか?
ビシッとしたかっこいい内容……、奇をてらわない中にある誠実さ……これだ!

30: 2012/04/08(日) 15:04:41 ID:/zQGguLg0
……さて少し飛んで新入生点呼などが終わりついに部活動紹介が始まった。
ソフトボール部、バレー部、オカ研など、次々と手短な紹介を済ましていった。
柔道部などは壇上にマットを敷いてド派手に一本背負いを決めたり、バトン部などは見事な手捌きでグルグル目にも留まらぬスピードでバトンをまわしていた。
インパクト……確かに大事かもしれない。
しかし、ここはちょっぴりオトナな私の落ち着いた紹介で、「軽音部」という部活の一見チャラついたイメージを吹き飛ばすことが何より大事!

そしてついに私たちの出番がやってこようとしていた。
さすがに少し緊張するけど、右に憂、左に梓を従えて、お姉さんとして失敗するわけにはいかない!

31: 2012/04/08(日) 15:05:22 ID:/zQGguLg0

生徒会「それでは軽音部、お願いします」

純梓憂「「「はい!」」」

純「軽音部ですっ、」

キイィィィーーーーーーーーン……

梓「(は、ハウリング……)」

憂「(落ちついて純ちゃん……)」

純「……おほん、……軽音部です! 私たちは、毎日音楽しtぅっ、」

梓「(噛んだ!?)」

憂「(純ちゃんがんばって!)」

純「……音楽室で活動してます!今度の新歓ではライブをする予定なので――、」

憂「(持ち直した……純ちゃんさすが!)」

梓「(……ふう、出だしはどうなるかと思ったけどなんとかなりそう……)」

純「――ぜひ見学に来てくだsshっ!」

梓「(スリーアウトォォッ!!)」

憂「(ああー……フォローしなくちゃ、梓ちゃん!)」

梓「ぐ、ぐだぐだやないかーい!」ズビシッ

憂「も、もうえーわ! どうもっ」

梓憂「ありがとうございましたー!」ペコリッ

純「あっ、ありがとうございっまss」ゴツンッ「ったあー!?マイクに鼻ぶつけたぁー!!」

32: 2012/04/08(日) 15:05:48 ID:/zQGguLg0



「ああっ純ちゃんだいじょうぶ!?」
「あああえっとそのっ、軽音部、楽しく活動してます!! 気軽に見学に来てくださーい!!」
「ううう……うい……あずさ……」

新入生たち「ざわざわ……くすくす……」

直「(なんだか愉快な人たち……この部活なら、私にも出来るかも……)」

菫「(軽音部か……お姉ちゃん、……お嬢様の食器棚を回収しに行かなくちゃいけないところだったよね……楽しそうな人たちだなぁ……)」

直「(新歓のあと、見学してみよう)」メガネクイッ

菫「(怖そうな人たちじゃないし、平和的に食器棚を回収できそう!!)」ヨッシャ!!

33: 2012/04/08(日) 15:06:14 ID:/zQGguLg0

……こうして私の18歳デビュー戦は幕を閉じた。
かっこよくビシッと決めようとしたのがなぜか漫才になり、浴びるはずだった尊敬のまなざしはややウケ。
マイクにぶつけた鼻を保健室で診てもらって、それから二人の待つ部室へトボトボと向かう。

純「はあ、やっぱり澪先輩みたくかっこよくはいかないかぁ……」

しかし、対面式のあと、憂と梓にちやほやされる計画が……人の夢と書いて、儚い。諸行無常の響きありって感じ。
憂に泣きついて慰めてもらって、梓と一緒に反省会かぁ……。
まぁでも、ある意味印象に残る部活動紹介だったかな、と思う。好印象か悪印象かはわからないけど。

部室の扉の前まで来て、ドアノブに手を掛ける。
扉の向こうは静まり返っている。もしや梓あたりがお通夜モードに入っているのでは……と心配になる。
失敗したからこそ私が気持ちを切り替えていかないと。ノブを回して、扉を押し開ける。

純「いやーおまたせっ!」

34: 2012/04/08(日) 15:06:41 ID:/zQGguLg0

梓「純、誕生日おめでとうっ!!」
憂「純ちゃん誕生日おめでとーっ!!」

パパンッ!

純「おわあああっ!?」

小さな破裂音がふたつ、カラフルな紙の束が私に襲い掛かる――、
両腕で身を守ったが二人が発射した紙の束が身体にまとわりついてからまる。なんかきらきらした紙吹雪もめっちゃふりかかってくる。

純「……えー。。。?」

梓「あはは、純紙だらけ」

憂「純ちゃん、誕生日おめでとー!はいこれプレゼント」

純「あ、そっか、覚えててくれたの!? 私の誕生日!!」

憂に差し出された花束を両手で受け取る。白と淡いピンクの可愛らしい花。

35: 2012/04/08(日) 15:07:24 ID:/zQGguLg0

憂「レンゲソウだよ、純ちゃんの誕生花なんだって。花言葉は「あなたの幸福」と――、」

梓「「あなたの苦痛を和らげる」。可憐なレンゲソウを見て、今日の失敗を忘れてね。明日から3人で勧誘頑張らなくちゃいけないんだから!」

純「ありがとう二人とも~~~!!!」

レンゲソウを胸に抱いて、二人に礼を言う。超うれしい、よく見ると奥のテーブルにケーキまである。サプライズ!?

純「わー、ケーキじゃん! みんなで食べよう食べよう!」

梓「憂の手作りだよ、さぁ純座って座って」

純「ほんと!? もーほんと憂愛してる!」

憂「ふふふ、花束は梓ちゃんだけどね。今お茶淹れるから待っててね」

純「あーずさ~~~~!!!」

梓「あぁもう憂言わないでって言ったのに……」

もうもうもう演出だなんだと考えてたのがバカらしい。
誕生日は祝われるもの、あぁなんと素晴らしい友人を持ったことだろうか。梓も憂も最高だ!
二人のお姉さんとして、もっとしっかりしようと、レンゲソウに誓う。「あなたの苦痛を和らげる」、そんな人になろう。

憂の手によってバースデーケーキが切り分けられる。白いクリームと真っ赤なイチゴが綺麗にデコレーションされている。
さすが憂のケーキ、美味しそう。お茶も用意されている。完璧だ。

……あれ?

純「……梓のケーキ、私のよりちょっと大きくない?」

梓憂「(………………………子供だ………)」


おわり!

36: 2012/04/08(日) 15:08:19 ID:/zQGguLg0
終わりです。
純ちゃん誕生日(仮)おめでとう!

37: 2012/04/08(日) 15:15:00 ID:NGjwzwMA0
乙です!

引用: 純「レンゲソウの花言葉は私の幸福!」