1: ◆iMkK2JmDbs 2011/05/23(月) 00:34:52.58 ID:HVSm3A3jo
前スレ
男「手に口ができた」

~まとめ~

男、所有パーツ:口、眼、胃、髪、右腕、脂肪、虫唾、骨、顔

マント、所有パーツ:皮膚、鼻、脚、左腕、肺、汗腺、他8パーツ

72: 2011/05/23(月) 18:23:29.90 ID:RgocK3Cqo
竹林の奥深く

開けた場所に二人の姿があった

マント「決戦、勝つか負けるか大勝負」

一方はマントを羽織った大男

手「今度は負けないぜ」

一方は喋る手を持つ奇怪な青年

男「なんでこんなことになったんだっけ…」

青年は一瞬だけ思いを巡らせ

戦いに身を投じた。

寄生獣(1) (アフタヌーンコミックス)

77: 2011/05/23(月) 18:31:33.12 ID:RgocK3Cqo


男「今日も一日平和に過ごすか」

手「フラグフラグ」

チャイムの音

男「…誰だ?」

手「おいおい、まさかまた妹が蘇ったとかじゃないだろうなぁ」

男「骨は俺が所有してるしアイツも反省してたろ?今更会いにくるわけないって」

手「それもそうだな。それにアイツ以上の最悪なんてあるわけないか」

男「そうそう、気楽に行こうぜ」

扉を開く

マント「挨拶、こんにちは」

男「前言撤回!奥義、酸化射!」

出会い頭の特攻は

マント「無駄、だと言っている」

服を少々溶かしただけで終わった

78: 2011/05/23(月) 18:34:39.35 ID:RgocK3Cqo
手「何の用だ?」

警戒しつつ距離をとる

男「また俺のパーツを奪いに着たのか?だったら…」

グゥウウウウウウウウウウ

場違いな音が流れる

マント「空腹、まずは食事だ、話はその後」

マントはずかずか男の自宅へ入り込む

男「お、おいちょっと待て!」

男は必氏にその後を追う

手「なんなんだアイツ…」

81: 2011/05/23(月) 18:42:49.78 ID:RgocK3Cqo
マントは勝手に座り、男達の食事を食べ始める

マント「過多、1人暮らしにしては量が多すぎるな、三人前はある」

言いながら次々と料理を口へ運んでいく

マント「明解、そうか貴様は胃が2つあったな、それとその手で三人前か」

男「…はぁ」

飽きれて立ち尽くす男

マント「要望、私は朝コーヒーを飲むのだ」

男「俺はコーヒー飲まない」

マント「失望、ガキかお前は」

男は既に怒りのボルテージを振り切っていたが、
仮にこんなのでも自分が唯一負けた相手、心を落ち着かせ再び訊く

男「で、何しに来たんだ?」

マント「阿呆、貴様は私が料理を食べ終えているように見えるか?最初に言ったであろう、まずは食事と。二度言うのは無駄だから嫌いなんだ、無駄無駄無駄…」

キレた

その日、ひとつの家のリビングは壊滅した

82: 2011/05/23(月) 18:52:43.80 ID:RgocK3Cqo
数十分後

マント「注意、落ち着け」

傷一つないマントと

男「はぁ…はぁ…」

疲労困憊の男が荒地のようになったリビングで対峙していた

マント「了解、話してやるから座れ」

手「…で、男になんか用か?」

ようやく本題へ入る

マント「願望、私は再戦を申し込みにきた」

男「再戦?…またパーツを賭けて戦えってことか?」

マント「十分、もうパーツはいらない。互いに十分に揃っているだろうから、私は来たんだ」

手(…十分に?どういうことだ)

マント「単純、ただ私は力試しがしたいのだ、それには君が適任だと思ってな」

男「お断りだ、誰がそんな得のないこと…」

マント「戯言、貴様が私に勝つことのできる最後のチャンスかもしれないのだぞ?」

男「どういうことだ」

86: 2011/05/23(月) 19:03:00.26 ID:RgocK3Cqo
マント「今回、私はこの勝負にルールをつける」

男「ルール?」

マント「十分、君に利のあるルールだ」

男「ほう、聞いてやろうじゃねえか」

マント「殺不、私は今回、君を殺さない」

手「なんだと」

マント「二回、言うのは好きじゃない。言葉の通りだ、私は君を殺そうとしない、なんなら私のパーツを使ってお前を氏なない身体にしてもよい」

男「ってことは…この前は頃す気だったのか?」

マント「当然、私の目的の邪魔になりそうだったらな」

しばし、沈黙が流れる

男「勝負の決着方法は?」

マント「敗北、それを認めた方の負け、認めなかった方の勝ち…でどうだ?それでも気が乗らないなら勝ち負けに関わらずパーツを一つ譲渡しよう」

手「いいだろう!受けてやる!」

男「お、おいちょっと待てよ」

手「なーにビビッてんだ!やるしかねえだろう、こんなオイシイ話!」

マント「了解、では明日、早朝から」

マント「場所、住宅地の外れにある竹林で」

こうして、男は再び彼と戦うことになった

91: 2011/05/23(月) 19:15:32.26 ID:RgocK3Cqo
そして時間は場面は戻る

即ち、

マント「蹴撃!」

男「奥義、災鬼感髪!」

決戦の場へ

マントの出したキックを男の髪が捕らえ、骨ごと折る

手「よし!これでどうだ!」



マント「無論、これぐらいでギブアップする魂ではない」

瞬時に再生、無かったことのようにされた

男「相変わらずなんだあの再生力!デタラメだ!」

マント「嘲笑、これぐらい、突破してもらわねば困る!」

三本の脚は同時に男を襲う!

男「…ッが!」

男は宙を舞う

マント「便利、よく使わしてもらっているぞ、コレ」

神の脚を叩きながら言う

男「…そりゃ俺には有り難い話だ」

92: 2011/05/23(月) 19:23:39.19 ID:RgocK3Cqo
男「だが近づいたのは…不正解だぜ!」

瞬時に神の右腕を展開

胸のダメージを溜め込み

マントへ押し付けようとする

マント「爆壁!」

しかし、突如地面が爆発

手「うおっ!?」

男「あぶねっ!」

髪シェルターを展開、それを防ぐ

マント「防御、私と対峙する時、最もしてはいけない行為だ」

そして、マントはそっと目を閉じる

マント「蹴撃!」

目を瞑りながら放たれたキックは

男「ッ!?」

髪シェルターで守られているハズの男に

クリーンヒットした

94: 2011/05/23(月) 19:32:36.51 ID:RgocK3Cqo
マント「当然、当たったか」

さして驚く表情もないまま、目を瞑ったまま

マント「再度」

攻撃に移る

男「がぁッ!」

今回は頭にヒット

たまらず男はシェルターを解除し、後ろへ飛ぶ

マント「後方、退いたか」

瞼を開き、男の姿を確認する

手「…どんなマジック使いやがった」

マント「疑問、答える必要はあるのか?」

整った二重から覗く瞳は

畏怖を持っていた

男「キャラ、ぶれてるんじゃねーの?」

マント「相当、よくあることではないか」

男は気づく

コイツは何時だって、遊んでいたことを

95: 2011/05/23(月) 19:37:28.26 ID:RgocK3Cqo
マント「一割」

男「は?」

マント「最初、貴様へ出していた力だ」

男「…今は?」

マント「三割、程度だ」

男の視界から一瞬で消えたマントは

手「後ろか!?」

マント「残念」

マントは

マント「真上、だ」

男の頭上へ踵落としを決めた

地面が凹む

マント「」

97: 2011/05/23(月) 19:45:56.17 ID:RgocK3Cqo
最後の行ミス


男「クソッ!」

男は瞬時にそのダメージを髪の右腕にチャージし

身体を反転、マントへ向かい叩きつける

マント「激痛!」

一瞬怯んだその隙を

男「奥義、脂肪動機!」

男は見逃さない

マントの頭へエネルギーを大量消費した連続コンボを叩き込む

マント「気絶、それは…マズイ」

意識が飛びかけたマントが取った行動は

マント「自己、粉砕」

頭を自ら磨り潰した

手「な!?」

男「なにやってるんだ!?」

99: 2011/05/23(月) 19:53:46.32 ID:RgocK3Cqo
頭を無くしたマントは

立ち上がる

男「!?」

そして

マント「再生、再開だ」

生えた

なんの予備動作もフラグもなく

なんてことはなく再生したのだ

手「おいおいどういうことだよ…」

男「あんな再生力…脳が潰れても再生するなんて」

そう

いくら能力だとしても、異常だった

だが、それ以上に異常なのは

マント「驚愕、か?」

その異常があるからといって

簡単に氏を取ることができるその精神だった

100: 2011/05/23(月) 20:06:33.00 ID:RgocK3Cqo
マント「失望、この程度の黒さにすら耐えられないなど」

消える

男「なっ!?どこに」

後ろ、真上を向くが姿は見えず

マント「前方、少し気配を消しただけだ」

マントの掌底が男の肺へダメージを与える

男「ッ!!」

呼吸が困難になり思考が曇る、しかし

マント「絶望、ここまで弱いか…ならいっそ」

マント「殺害、しようか」

その言葉だけははっきりと

男の脳へと突き刺さった

102: 2011/05/23(月) 20:11:04.25 ID:RgocK3Cqo
手「男ぉおおおおおお!」

男「!!」

右手から放たれる声で意識が戻る

そして間一髪

マント「失敗、か」

マントの放った汗を避ける

もちろん避けたといっても直撃を避けただけであり

マント「爆発」

は避けられるはずもなく

男がいた場所は火に包まれた

103: 2011/05/23(月) 20:22:29.57 ID:RgocK3Cqo
粉塵が止み

視界が良好になっていく

そこにあったのは

マント「氏体?」

骨だった

男「頭上注意!」

手「ってな!」

男「奥義、災鬼髪発!」

髪でマントの頭を捕らえ

マント「不覚!」

落下の勢いを利用し、叩きつける

男「どうだ!」

マント「再生、しかし疑問だ」

マント「爆発、時間はなかったハズ」

男「ヒントはあるだろ、自分で考えろよ!」

勢いをつけ、殴りかかる

マント「思考、同時に後退」

しかしそれらの攻撃はことごとく避けられる

105: 2011/05/23(月) 20:34:23.18 ID:RgocK3Cqo
マント「解決、貴様、骨の中へ入り込み、適当な氏者をリプレイしたな?」

男「正解!おかげで人間の中にはいるなんていう稀有なこと体験しちまったがな!」

足払いを仕掛けるが

マント「嘲笑、粉砕!」

逆に踏みつけられ折られる

男「…っがぁ!チャージ!」

髪の右腕を取りだし回復そのままダメージを与えるが

マント「激痛、しかし再生!」

無敵すぎた

手「クソッ!負けを認めるも何も!」

男「ここまで異常な再生!俺達の負けが決まったようなものだ!」

そう、男達は再生になにかの制限があるかと考えたのだ

しかし現実は

マント「嘲笑、そんな希望が叶うのは漫画の世界だけだ」

そんなもの一つも無かった

108: 2011/05/23(月) 20:47:02.56 ID:RgocK3Cqo
男「こういう勝負は!」

手「退くに限る!」

男は髪を使い、手近な砂をマントへかける

マント「視界、不明瞭」

次に瞼を開いた時

マント「逃亡、恐れをなしたか」

男達はいなかった

マント「学習、していないのか」

左手には鼻

パーツ:鼻

その能力は

マント「視界、良好」

匂いを視覚情報へと変化する

濃い匂いならより明確に、その匂いの持ち主の姿が映る

マント「追跡、開始だ」

十四のパーツを持ち、マントを羽織る大男

職業は人類最強

それは決して過言でも戯言でもなかった

112: 2011/05/23(月) 20:54:22.31 ID:RgocK3Cqo
…竹林の奥

一方コチラは逃亡を謀る主人公らしくない主人公達

男「しかし、本当に厳しい勝負だな…」

手「ああ、必氏こいて手に入れた秘密兵器も無駄になりそうだ」

男「代替あんなめちゃくちゃな再生力、それだけで強力な武器だ」

男「防御が必要ないってことはその分攻撃…に」

手「どうした?」

男「待てよ、そうかそういうことか!だったら対抗策は…考えろ、考えろ…」

この主人公は決して主人公らしくない

いつだって逃げることを考えているし

手にする武器はいつも癖のあるものばかり

必殺技は考えること

決め台詞は決まらない

けど

男「…考え付いたぜ、対抗策」

この上なくヒーローである

その点だけは主人公らしかった

115: 2011/05/23(月) 20:58:06.22 ID:RgocK3Cqo
一旦中断、落ちます。

208: 2011/05/24(火) 21:37:26.76 ID:6k3EIXuzo

マント「追跡、完了だが」

マントが到着した、匂いの前には

髪シェルター

マント「臭気、多少不明瞭なのはこのためか」

マントの瞳に映るビジョンは

たしかに陰り、正確にその姿を判断することはできなかった

だが

マント「確定、これは同じ種類の匂いだ」

たしかに匂いのもつ色は男と似ていた

マント「学習、無しか」

マントは瞼を閉じる。

先ほどからマントが使う「防御無視」その正体がこの瞼である。

神の瞼、能力は「その瞼が瞳を隠す間、防御を無視できる」

その力の前では、最強の盾でも、核爆を防ぐシェルターでも

ありとあらゆる防御が紙と化す神のパーツ

文字通りの二重瞼は、百重に守られた王ですら容易く貫く

マント「殺害!」

整った顔立ちは、壊すためにできていた。

214: 2011/05/24(火) 21:50:28.75 ID:6k3EIXuzo
マントが放ったキック

いや、最早人類の限界を超越した一撃は

神の髪でできた守を紙として上へと吹き飛ばした

その中身は

マント「女子!?」

男「ご名答!俺様の妹だ!」

背後から飛び出た男

男「奥義、災鬼感髪!奥義、酸化射!」

髪を尖らせ、酸を絡ませたその一撃は

男「合体奥義、酸髪星龍斬!」

マントの背中を抉り

マント「激痛、迂闊!!」

心臓を抜き取った

男「奇襲成功!」

手「器集成功!」

その心臓を髪に絡めたまま、距離をとる

マント「理解、不能!」

一方マントはその光景を信じられない様子で見ていた

いや、それよりも信じられない現象がマントに現れていた

男「やっぱり推理は正解か」

マントは

傷が再生していなかった

217: 2011/05/24(火) 22:06:18.79 ID:6k3EIXuzo
手「しかしそれでも氏なないのか」

男「タフって言うより不氏身だな」

今も鼓動する心臓を手に男は言う

マント「不明、なぜ気づいた」

マント「理由、私の不氏」

そうマントの異常な再生力、その理由は

神のパーツ心臓の能力であった

男「では随分待たせたが、伏線回収謎解き編」

手「スタートだ」

一陣の風が吹く

男「お前の再生力は正直、無敵だ」

男「無敵で完璧で怪奇、人類なんか置き去りにした化け物だ」

男「防御の必要がない攻撃100%の狂気の凶器…と思っていた」

手「だが実際は」

男「そう、あった1回だけ、防御が」

219: 2011/05/24(火) 22:13:37.41 ID:6k3EIXuzo


男「だが近づいたのは…不正解だぜ!」

瞬時に神の右腕を展開

胸のダメージを溜め込み

マントへ押し付けようとする

マント「爆壁!」

しかし、突如地面が爆発

手「うおっ!?」

男「あぶねっ!」



男「骨を折られようとも攻撃を仕掛けてきたお前が」

男「この時だけは距離を取らせようとした」

男「そう、俺を狙うんじゃなく、わざと距離を取らせるような攻撃を」

マント「迂闊」

男「そうだったな、そしてそこに正解が見えていた」

男「お前は胸に、どんなことをしても守らなければいけないものがある」

男「万に一でも、そこを攻撃されて、機能が停止してはいけないなにかがある」

男「答えはこの神の心臓」

手に持つ心臓へ視線を向ける

男「こいつの能力は、コイツが体内で鼓動を続ける限り肉体を再生する…だろ?」

マント「…正解」

220: 2011/05/24(火) 22:34:56.98 ID:6k3EIXuzo
男「じゃなきゃ、その再生力で防御をする意味がない」

男「でもその再生力は今や俺の手」

手「さあ降参しな!」

男「おい、最後のいいとこ…」

マント「降参、せず。再生などなくても、心臓などなくても、化け物でなくなったからこそ」

マント「職業、人類最強だ」

男「負けを認めないならいいさそれでも、だが、お前は俺達に」

手「歯が立たないんだろうがな!」

男「…普通だな」

手「…普通だな」

マント「奥義、月光町十三夜通り!」

マントから神のパーツが次々飛び出す

223: 2011/05/24(火) 22:50:43.12 ID:6k3EIXuzo

マント「番地、一!満月!」

男が飛ばされる

マント「番地、二!既望!」

男が絞められる

マント「番地、三!立待月!」

男が落下する

マント「番地、四!居待月!」

男が叩きつけられる

マント「番地、五!臥待月!」

男が抱き締められる

マント「番地、六!更待月!」

男が咬まれる

マント「番地、七!下弦!」

男が後方へ投げられる

マント「番地、八!晦!」

男が地面へ埋められる

マント「番地、九!朔!」

男が捻られる

マント「番地、十!既朔!」

男が斬りつけられる

マント「番地、十一!三日月!」

男が潰される

マント「番地、十二!上弦!」

男は再び宙を舞う

マント「番地、十三!…十三夜」

最後の一撃

マントが使うパーツは脚

到達予定速度は真の光速

対象は

男「頃す気、満々だな…」

無論、男

マント「終劇」

マントが行動へ移ろうとする

225: 2011/05/24(火) 22:57:35.43 ID:6k3EIXuzo
男「ああ!終りだよ!」

男は隠す

男「お前の負けで!」

マントは目の前に迫る

マント「脚…」

マントは次の台詞を言えなかった

男「奥義、業火化脚千!」

蹴りの嵐がマントを文字通り粉砕したからだ

首だけになったマントは最後に言う

マント「貴様、誰だ?」

着地した男は

男「ヒーローだ」

褐色の肌を持つ、車椅子にでも乗っていそうな顔で

そう言った

226: 2011/05/24(火) 23:14:20.42 ID:6k3EIXuzo

マント「敗北、我の負けだ」

心臓を返し、再生したマントは開口一番そう言った

男&手「はぁ、疲れた」

今回の感想である

マント「奇策、最後のアレもパーツか」

男「ああ、顔貸して貰った」

前日、マントが襲撃し去った後

男が向かったのは

男「頼む!この通り!」

手「俺もこの通り!」

車椅子「や、やめてください!」

褐色「私達が変態に見られるだろうが!」

この1人いや2人の所だった

車椅子「わかりました、そういうことなら貸します…ただし」

褐色「生きて帰ってこいよ」

男「もちろん!」

褐色「あ、今のは顔返ってこないのが嫌だからちゃんと生きて返せって意味な、激励とかじゃなく」

男「…あ、はい」

229: 2011/05/24(火) 23:23:51.38 ID:6k3EIXuzo
マント「譲渡、約束どおりパーツは渡す」

男「脚ゲットー!って返してもらっただけじゃん」

手「言うなよ…」

そしていきなり

マント「願望、男、お前に頼みたいことがある」

人類最強の土下座

男「は!?なんだいきなり」

マント「可能、お前の今の強さなら、計画が」

手「そういえば、お前は何か企んでる節があったな」

マント「真実、話そう、私はヒーローを探していた」

男「それが俺?」

マント「正解、強く、正しい、ヒーロー。お前がいれば」

マント「打倒、できる」

マント「史上、最強最悪を」

男「史上?」

手「最強最悪?」


地図に無い孤島

看守「おい!起きろ38号!38号!」

38号「…やめてくださいよ」

38号「瞼が『開』いちゃったじゃないですか」

第三部・始動

278: 2011/05/25(水) 20:35:58.75 ID:U0mTMZHuo

波に揺られる船内

手錠という名前を否定するかのように、足にも首にもなにもかも

これ以上かけるとこも無いくらい、欠けることなく拘束されきっていた

顔もわからないその人物は、光が一筋もささない一室で

「どうしてこうなった」

罪など一かけらも意識せず立っていた

確かに、彼が表向きに犯した罪というものは

ここまでの待遇を受けるものではなかった

寧ろ比較的よくある罪

加害者に優しい日本の法律からすればこの措置は異様であった

まあ、表向きだけを見れば、だ

しかし裏向きの事件は、本当の罪は暴くことはあっても暴かれることはない

これ以上ないくらいの完全犯罪、いや立証不可能犯罪であるハズだったのだ

「それとも…また神か」

そんなことを思考していると

「揺れが止んだ、到着か」

ここは地図に載らない孤島

ここで、今回の物語は語られる

282: 2011/05/25(水) 20:54:07.63 ID:U0mTMZHuo
看守A「…罪状は以上」

罪状は異常だった

今述べられた罪は決して暴かれることも、暴くこともないはずの罪

神のパーツを使った犯罪、3万721件

看守A「これより貴様の名前は148番。以降、この監獄Xにおいて、この番号が貴様を表す」

148「…了解」

148(監獄X…聞いたことのない名前だ)

看守A「いまから貴様を部屋へ案内する!相部屋となるが一つ忠告しておく!」

148「なんだい?」

看守A「氏ぬな」

148「…それは忠告じゃなくて」

フラグって言うんだよ

そんなことを思いながら148号は

深く冷たい

監獄Xの体内へと吸い込まれていった

286: 2011/05/25(水) 21:06:48.16 ID:U0mTMZHuo
148「ここが部屋か」

かつて自分が勤めていた病院、

そこにあった小児科入院用の個室程度しかない広さ

そこにある二段ベッドの上に人影が見える

148「今日からここに住むことになった…148だ、よろしく頼む」

当たり障りのない、普通の挨拶

しかし

38「やめろよそんな当たり障りのない挨拶」

人影は二段ベッドから飛び降り

指を突きつけながら

38「もっと心を『開』こうぜ」

黒髪の青年はそう言った

148「…見透かしたようなことを言うな、頃したくなる」

38「そうそう、君はすぐにそういう風に言う、そういうヤツだ」

148「心底ムカつくガキだな本当に、まあいい」

二段ベッドの下へ座り込み

148「教えろ、ここはなんだ?」

とりあえず、状況説明を命じた

288: 2011/05/25(水) 21:20:42.13 ID:U0mTMZHuo
38「そんな目を見『開』いて言うなよ、年上のプレッシャーにはビビッちまうんだから」

おびえた風もなく、おどけた風で言う

148「いいから言え、頃すぞ」

38「怖いなぁ、表情まで強いよ…じゃあ『開』こう、この監獄Xとはなんなのか、その講習会を」

148「ああ」

38「監獄X、ここは特定の重犯罪者を永遠に収容する場所さ」

148「特定の人物?」

問いかけに対し

38「またまた、わかってるくせに」

また、わかった風に返す

実際、148号はある程度の予想ができていた

しかし、それは

148「神のパーツを使い事件を起こした者、か」

38「正解」

この国が、あの異常を認知しているという

にわかに信じがたい話だった

290: 2011/05/25(水) 21:38:16.57 ID:U0mTMZHuo
38「ここには現在、148号、君をラストに111人が収容されている」

148「111人?ナンバーは?まさか適当か?」

38「質問が多いなぁ、まあ全部一言で答えてあげるよ」

38「僕より先のナンバーは全員氏んじゃったんだ」

それは

148「…面白い冗談だな、頃すぞ」

フラグの回収だった

38「あ、やっぱりうけなかったか」

38号は終始笑顔

38「ごめんごめん、さっきのは嘘さ。『開』口すると嘘をつくのが僕の悪い癖なんだ」

先ほど、表情が強いと言われた148号だが、同音異義でこう返したい気分だった

38「氏んだってのは嘘、頃したんだよ僕が」

お前の表情は、笑顔は、怖いと

148「それが本当だってんなら奇妙な話だな」

148「ここにいるヤツは捕まったんだろ?それなら」

自分のように

148「牙は爪は、無い筈だろ?」

パーツは無い筈だ

38「あー、うん普通の人はね」

彼は自分以外の110人の異常な重罪人を指してあろうことか

普通と言ったのだ

148「じゃあお前は普通じゃないのか?」

38「そうさ、だって僕は」

38「この監獄に唯一、自分の意思で入った、パーツ所持者だからね」

291: 2011/05/25(水) 21:51:44.96 ID:U0mTMZHuo
148「…」

38「『開』いた口が塞がらない?」

148「そんなことはない、頃すぞ」

38「はは、君は案外ビビリなんだね」

148「…」

また見透かしたように言う

38「そんな怖がらないでくれよ、同じ犯罪者じゃないか」

それでは安心をアピールできない

148「まあいい、だがなぜだ?」

38「ん?」

148「なんで自らこの監獄に入った」

コイツは

自分の罪を認めるタイプじゃない

そんな風に148号は思った

38「だって安心じゃんここは、日本は加害者に優しいってのは本当だよね」

148「安心?」

38「ちょっと職業、人類最強に追われているのさ」

148「意味不明なことを言うな、頃すぞ」

38「外は怖いものだらけってことさ、ここなら」

38「僕より下しかいないからね」

笑みは、少し歪んでいた

292: 2011/05/25(水) 21:57:50.81 ID:U0mTMZHuo
148「…なら、その能力はどうした?どうやってこの監獄に」

38「ん?頼んだらOKだったよ」

148「頃すぞ」

38「ついに頃す理由まで言わなくなっちゃったか、でも事実だよ」

38「僕は頼んだだけさ」

148「理解できねーなぁ」

38「まあいいじゃんそんなこと」

「そんな」程度のことではないと思うが

38「それより148号」

148「なんだ?」

38「夕食が『開』催される時間だぜ?」

148「…案内しろ」

38「看守の説明くらい聞いておけば?まあ僕は心が広いからね、案内するさ」

148号が今日、改めて発見したことは多々ある

しかし、特筆すべきは

入院食よりマズいメシがあるということだった

293: 2011/05/25(水) 22:03:02.74 ID:U0mTMZHuo
と、言うわけで監獄X編の一日目が終了しました

今回のはプロローグというかこれからの展開に必要な説明みたいな回です

少々主人公不在が続くかもしれませんが寛大な心でお許しください。


それでは今回も質問があれば受け付けます。

321: 2011/05/26(木) 16:49:52.68 ID:rxGvPX2mo
地図に載らない島

148「なあ」

38「なにさ」

あれから一週間

ここの…監獄Xのルールにも慣れてきたが

148「どうしてここのメシはこんなにマズい?殺されたいのか?」

38「文句言うなよ殺人者」

料理の味には決して慣れなかった

もう、なんとうか酷い味だ

料理を冒涜している、これは栄養価すら無視した食べ物ではないゲテモノだ

38「生き物を生ものにした君には決して言われたくないだろうけどね」

148「…この魚食うか?」

38「嫌だよ、それ汚水の味するし」

コイツの言動にも慣れない

まるで心の内を覗くように…いや、それ以上だ

まるで心の内に入り住むように、領域を汚してくる

148「しかしお前も嫌われてるな」

食事会場に集まった38号と148号以外の109人は誰も同じテーブルに座ろうとしていなかった

立ち食いしているヤツまでいる

38「まったくだよ、同じ犯罪者のクセにみんなビビッて、滑稽な光景だよね」

323: 2011/05/26(木) 17:02:08.27 ID:rxGvPX2mo
しかし、唯一近くで食事をする148号も不思議に感じている

148(なぜ、俺はコイツの近くで平気な顔してメシを食えているんだ?)

異常が通常な、アブノーマルオブノーマルなこの空間でさえ

38号、コイツは他と違う

148(色がないって言うのか?純粋というか無垢というか)

掴めない

148「頃してぇ」

つい、そんな言葉が出る

38「物騒だなぁ」

笑う

楽しいからとか、悲しいからとか、怒っているとか、そういうことじゃなく

ただ笑っている

反応じゃない、まるで最初から人間の顔とはこうであるというような笑み

38「さて、そろそろ食事もお『開』き、ようやく自由時間だよ」

148「…やることも、できることもないがな」

魚の最後の一片を飲み込んで

38号の後を追う

後を追えば

あの笑顔を見ないで済むから

324: 2011/05/26(木) 17:23:08.98 ID:rxGvPX2mo
狭い部屋

二段ベッドの上下で互いに寝ながら

148「9四歩」

38「9五桂」

目隠し将棋に熱を出していた

148「なあ、お前は脱獄とか考えたことないのか?2二竜」

それは最初から思っていた疑問

能力が、神のパーツが本当にあるなら脱獄も容易だろうに

38「だから最初の言ったろ、僕は身の安全を確保するためにここにいるんだ」

38「外に出るとしたら、僕がこの刑務所で新たなパゥウァーを手に入れてからだよ、9六玉」

148「精神と時の部屋みたいだな、8五歩」

38「精神と時を刻まれる部屋だね、それより」

38「君はどうなんだい?」

ベッドから顔を覗かせこちらを見てくる

148「…俺は」

かつては金があった、名誉があった、女があった

しかし

今はもうなにもない

それならば

148「ここで氏んで骨埋めるのもいいんじゃないか」

38「ふぅん」

顔が上へと隠れる

38「…7八竜成王手」

148「あっ…頃す!」

んでもって負けた

327: 2011/05/26(木) 17:34:09.40 ID:rxGvPX2mo
三日目

朝起きるとともに嫌な音が響いていた

148「なんだ、この音は」

しとしとしとしとしとしとしとしとしとしと

全身に絡み付いて離れない音

しとしとしとしとしとしとしとしとしとしと

重さは増して、最後に飲み込まれそうになる

38「雨みたいだね」

148「頃したい」

雨は嫌だ

憂鬱も陰鬱も、背負い込まされそうになるから

気に入らない

38「いい日だね」

でもコイツは

また笑顔でそう言った

38「148号」

148「なんだ38号」

38「ちょっくら外行こうぜ」

148「…は?」

328: 2011/05/26(木) 17:44:25.59 ID:rxGvPX2mo


38「久々の雨はどうだった?僕なんか十年ぶりだったよ」

148「頃す」

あの後、何を思ったか38号は俺を殴打

俺も負けじと暴行を加えるが、すぐに看守が来て

看守「貴様らは懲罰房行きだ!」

雨の振る中、手錠で手足を拘束されながら歩かされて

ついたのがココ、より悪環境な懲罰房

38「まあいいじゃないか、個室になったんだし。プライベートは大事だよ」

たったそれだけの理由でこんな場所に連れてこられた俺の身にもなれ

38「いやーしかし意外なことにこの懲罰房はあんまり使われてないんだよ」

148「まあその理由は」

なんとなく想像がつく

148「パーツもないしな」

そう、元々ここにいる重犯罪者はパーツを使ったことでここへ来た

しかしパーツを持たない状態じゃあ

148「角の無いカブトムシみてぇなものだ」

すでに殺されている

38「でもクワガタのメスはオスを食い尽くすパゥウァーがあるんだよ?」

148「カブトムシだっつってんだろ頃すぞ」

38「どうせ瞼『開』いて言ってんだろうなぁ、怖い怖い」

148「…疲れた」

38「じゃあ今日はもう寝なよ、色々あったし」

148「全部お前のせいだがな」

ベッドはベンチみたいに硬かった

329: 2011/05/26(木) 17:54:51.15 ID:rxGvPX2mo
四日目

目を覚ますとそこは地獄だった

148「暗ぇ…」

懲罰房には電力供給が少なく、明かりは微々たるものだった

38「おはよう、148号」

148「なんだ起きてやがったのか」

38「向かいの部屋に拘束されてる55号ちゃんと話してきたんだよ、どうにも彼女がこの刑務所にきた理由は…」

どうでもいい話だから聞かないでおいた

148「メシはまだか」

それだけが気になっていた

その一時間後に届いたわけだが、やはり不味かった

むしろ懲罰房へ持ってくる時間がかかっているだけ冷えてより凶悪になっている

38「いやー懲罰房きてよかったよ、あっちの人たちは僕と話すらしてくれないし」

そんな環境を与えてなおもそんな風に言うコイツを頃してやりたくなった

148「本当にガキだ」

純粋で、無垢で、他人に迷惑をかけて自分を生かす存在

仕事していた時も大嫌いだった

38「目隠し将棋やろうぜ」

もちろん負けた

だからガキは嫌いなんだ

330: 2011/05/26(木) 18:01:40.50 ID:rxGvPX2mo
五日目

38「なあ!聞いてくれよ!148号の隣が僕の次にはいった39号だったんだぜ!これってすごい偶然じじゃない!?」

38「39号はなんと…」

聞かなかった

メシは不味かった

目隠し将棋は負けた


六日目

38「おいおい聞いてくれよ、昨日55号ちゃんから五つ隣にいる71号に話しかけたんだけどさ」

聞きたくなかった

メシは虫の棲家みたいな味がした

目隠し将棋は負けた、絶対に頃す


七日目

38「106号っていうのが…」

鼓膜やぶった

メシは壁に叩きつけた

趣向を変え目隠しチェスをした、負けた、頃す

331: 2011/05/26(木) 18:09:56.05 ID:rxGvPX2mo
八日目

朝から音がしない、静かだ

叩きつけたメシが人の顔のようになっている

怖かったから別のメシを叩きつけ消した

アイツが壁を叩く振動を利用してのモールス目隠しゲームは面倒くさいという

心優しい俺は鼓膜を治し、飛車と角と香車と桂馬と銀と金を抜いて、目隠し将棋をしてやった

抜いたのはモチロンアイツだ





頃す


九日目

38「耳治ったんだから久々に話を聞いてよ」

うわの空で聞いてやった

最近壁から声が聞こえる

今日こそアイツに勝つ

と意気込みながら目隠し将棋をしようと誘う

38「つまらないから嫌だ、それに忙しいし」

頃す

眠る時に目から汗が止まらなかった、なぜだろう

332: 2011/05/26(木) 18:22:15.49 ID:rxGvPX2mo
十日目

この日も朝から雨だった

148「嫌な日だ」

38「ああ、最高の日だね」

148「この前の雨の日がどんな時だか覚えているか?」

38「ここに着た日でしょ?」

148「…はぁ、もうわかった」

そうだコイツは純粋で無垢なガキ

もうとやかく言うのはやめよう

38「なあ148号」

148「なんだ?38号」

38「外へ出ようか」

今度は「ちょっくら」なんて台詞はいってなかった

148「は?」

間抜けな返しをしつつ

そういえばどうやってコイツは他のやつらと話していたんだ?

俺達は隣同士だからできるが

向かいの部屋は随分遠くにあるし第一

目の前は、格子じゃなくて鉄製の扉だぞ?

と、今更ながらどうでもいいことが気になった

365: 2011/05/27(金) 17:59:56.82 ID:VFvho+tSo
懲罰房

その通路に7人の男女が集っていた

38「じゃあ点呼とるよ、55号ちゃん」

メガネをかけた三つ編みの女性が手を上げそれに答える

55「はい」

38「39号」

見た目は少年そのもの、短い灰色の髪が特徴的なそいつは礼をし、答える

39「はい」

38「71号」

長髪で長身、中性的な顔をした細身の男は無言でそれに答える

71「…」

38「106号」

両手は手錠で封じられ、両足には足枷と鉄球をつけた大柄な男は欠伸で答える

106「あぁー…」

38「88号ちゃん」

逆立ちをする少女はそれにこう答える

88「!いーは」

38「148号」

最後に呼ばれた男は

148「なんの真似だこれは」

質問を投げかけて答えた

38「決まっているだろう、脱獄さ」

55「脱獄でしょう?」

39「脱獄」

71「…脱獄」

106「脱獄だろぉ?」

88「!くごつだ」

六者一様の反応

367: 2011/05/27(金) 18:13:35.47 ID:VFvho+tSo
148「脱獄をしてなんになる?わけわからねぇこと言うなよ頃すぞ」

38「そっちこそ何わけわからないこと言ってるのさ」

38「獄中にいるなら脱獄するものだろう?」

148「そういうことじゃない!脱獄をしたって俺には!」

かつては金があった、名誉があった、女があった

しかし

今はもうなにもない

だから

148「…ここで、氏ぬしかないんだ」

お前と目隠し将棋したり

クソマズイメシ食ったり

4コマにお似合いのグダグダした展開で

けど、アイツは

38「何もない?嘘つくなよ」

否定する

38「お前にはあるじゃねーか、その手が」

染み込んだ技術が

38「獄中で破れた鼓膜を治すなんて、流石の僕でもできないことをさ」

148「だが、それは手段だけだ」

俺にとって、人を治すことはもう目的にできない

生きる目的が

技術という手段があっても、目的がなければ

38「僕がなってやる」

148「!」

369: 2011/05/27(金) 18:26:54.25 ID:VFvho+tSo
心に染み込んでいく

38「僕はやりたいことがある、だから僕の駒になれ」

笑顔

148「だが…」

38「まったく、君はパーツといっしょに自信まで持ってかれたのかい?」

あきれた様に38号はため息をつく

38「君の人生は、パーツが無ければ無かったことにできる程度のものなのか?」

壊していく

38「君の努力は、パーツが無ければ無かったことにされる程度のものなのか?」

塗りつぶしていく

38「君は…神に負けるような人間か?」

敗北も、なにもかも

心のマイナスを

38号の言葉は

消し去る

370: 2011/05/27(金) 18:27:46.17 ID:VFvho+tSo
38「もう一度言うぜ、148号」

38「人間の努力は、人生は、神に負ける程度のものじゃないんだよ」

38「ここにいる、君を含める全員がそうだ」

周りの5人はそれに頷く

38「パーツなんか無くたって、お前はすごい人間なんだよ」

38「目的がないなら、僕のために動けばいい」

38「生きるつもりが無いんなら、勿体無いから僕に捧げろ」

38「148号、最後だ」

38「脱獄するぞ」

俺は間違っていた

コイツは

純真であっても

無垢であっても

ノンカラー、白じゃなかった

真逆、全てを塗りつぶす

黒だ

38「心を『開』けよ」

俺を塗りつぶして

俺を、全てを失った俺に

色をくれた

148「…だからガキは嫌いなんだよ」

38号が差し出した手を

俺はしっかりと握った

373: 2011/05/27(金) 18:34:29.25 ID:VFvho+tSo
55「一番説得に時間かかってるじゃないですか」

38「仕方ないだろう?148号は俺の言葉をまったく聞いてくれないんだし」

71「…無能だな」

39「苦笑」

106「つうか148号がひねくれ過ぎてるだけだろ」

88「!しくろよ」

そうか、コイツが夜な夜なやっていたのは

脱獄のためのメンバー集めか

38「さあ、これで力は全部集った」

38「脱獄するよ、みんな」

歓喜の声が上がる

148「おい、だがよ」

問題がある

148「あの扉はどうするつもりだ?」

指差す先には

この懲罰房を抜け出すにはどうしても通らないといけない扉

それはたとえバズーカを持っていたとしても開かないような強固なものだった

148「開けるにはキーが必要だぞ?」

375: 2011/05/27(金) 18:40:23.31 ID:VFvho+tSo
38「まったく148号は、本当に話を聞かないね」

148「うるせぇ頃すぞ」

38「さっき僕が…いや、この何日かどうやってみんなの扉を開けたと思っているの?」

38号は扉の前に進んで

手で触れた

途端

扉が開く

まるで、最初からカギなど無かったかのように

自動ドアだったのかと勘違いしそうな程

全長10mはありそうな扉があっさり開いた

38「よし、行こうか」

38「あ」

38号は思い出したかのようにいう

38「『鍵を無かったことにした』とかじゃないから安心してね?」

そこまでいったら

38「オマージュじゃなくてパクリだしね」

そんなことを言いながら

雨の降る外へ出て行った

376: 2011/05/27(金) 18:50:06.10 ID:VFvho+tSo


地図に載らない島は、かつてない事態に陥っていた

看守A「看守全員に告ぐ!今すぐ完全武装でブロックFへ向かえ!」

看守A「懲罰房から脱獄者発生!人数は148号、106号、88号、71号、55号、39号そして…」

看守A「…38号!合計七名!決して逃がすな!」

警報は、鳴り止まない



38「しかし、ここまでとは予想外」

7名に敵対する人数は

88「!んかっあ」

数百名

それが

この7名の危険度を表していた

148「なぁ」

38「なにさ?148号」

148「頃したって、かまわねぇんだろ?」

笑顔

38「当たり前じゃないか」

148「そうか、よく聞けお前ら」

看守達に、148号は言う

148「殺される前に氏ぬか、氏ぬ前に殺されるか」

148「選べ」

言いながら、どこからか隠し持っていたメスを取り出す

それが、頃し合い開始の合図だった

377: 2011/05/27(金) 18:57:50.07 ID:VFvho+tSo


看守B「うぉおおおお!」

自身が持つ、最大の自信である銃を乱射

か弱い少女へとそれは向かう

55「ッ邪魔です」

少女がそう言うと

弾丸は彼女を逸れていった

看守B「!?」

理解できない、そんな表情が浮かぶ

55「ああ、もちろんあなたのことも邪魔ですよ?」

その言葉を聞くはずの相手は

複数になってしまった

平たく言えば

55「バラバラ氏体ってすごいインパクトある字面ですよね」

看守C「うっ…うわぁああああああ!」

看守D「怯むな!続け!続け!」

看守E「運よく逸れただけだ!よく狙え!」

しかし看守達は止まらない

55「はぁ…」

彼女のため息が終わる頃には

先ほど喋っていたものも、喋れなくなった

378: 2011/05/27(金) 19:17:22.33 ID:VFvho+tSo


55号が作り出した氏体を漁る者がいた

71「…おお、有った」

取り出したのはナイフ

71「近頃の警護団体っていうものは帯刀していない場合も多くて駄目だな」

71「銃なんていうものに頼るのは愚の骨頂だ、あんな隙だらけの武器では人を守れぬ」

71「いや、今から人を殺そうとしている俺が言うのもおかしいな、笑える」

71「なあ?そう思うだろう?」

周りには

看守F「…大人しく手を上げろ、武器を離せ」

銃で彼を狙う看守達

71「ああ?この俺のキャラがおかしいんじゃないかって?」

見当違いのことを喋りだす

71「無口キャラだと思っていたのなら謝るさ、それがお前らの誤りでも」

立ち上がる

71「俺、勝ちを確信すると饒舌になっちまうのさ!」

看守F「発射!」

銃声が響く



71「…終了、か」

後に残ったのは痕も無く殺された看守だけだった

379: 2011/05/27(金) 19:30:37.42 ID:VFvho+tSo
106「あぁー…面倒くせぇ」

大男へ対峙する看守達は安心していた

いくら大男と言えども

手足を拘束されている

しかも足の方には大きな鉄球

無理も無い

これまでに無いくらいのイージゲーム

引き金引いたらそれで終わる

看守G「なら、早く屈しろ、それで終わる」

106「お前、余裕だな?」

看守G「まあ、そんな格好じゃあな」

106「ん?ああそうか、お前マンガ見たことないんだな?」

看守G「あ?」

106「これはこうやって使うんだよぉ!!」

106号は急に逆立ちをし、両手を軸に回転し出した

当然両足の鉄球は

看守G「!!!?」

頭蓋骨を砕く武器へとその表情を変えた

106「よくあるだろ?こういうのは」

肉塊を磨り潰しブレーキ代わりにしながら停止する

383: 2011/05/27(金) 19:41:23.42 ID:VFvho+tSo


88「!あなるてしきいきいかだんななんみ」

少女は逆立ちしながら言う

88「!くっょし?~ねよるてっぶかとしたわはんゃちうご601、どけ」

足場…いや手場が少々悪いのかふらついているが

88「!よいなただめがらゃきのしたわあゃじれこ」

本気で悲しいのか涙を流す

88「!いかんばでんーしるとばらたっなうこしよ」

意気込むがすぐに思い直す

88「!ろぺへて!たてっゃちしろこうもばえいうそ、てっ」

彼女が踊る場所は人の血肉で出来ていた

385: 2011/05/27(金) 20:00:02.31 ID:VFvho+tSo


看守H「く、来るなぁ!」

狂ったように、銃を乱射する

しかしその弾丸は一つたりとも

39「…」

畏怖の対象を傷つけることは叶わない

看守H「うぅううう!」

彼以外の仲間は全て

殺されてしまった

壊されてしまった

解されてしまった

39「最後」

あんな風に氏ぬのはゴメンだ

ならいっそ

看守H「自分で氏んでやるぅううううううううう!」

自分のこめかみに銃を当て、自頃しようとする

カチン

看守H「!?」

39「打ちすぎ」

弾丸は残っていなかった

看守H「あ…あ」

39「さよなら」

敵わない敵と対峙して

願いが叶うわけなかった

389: 2011/05/27(金) 20:12:06.71 ID:VFvho+tSo

148号を狙う銃口達

看守I「一斉発射!」

その全てが命を奪うための準備に取り掛かろうとする

148「遅い」

148号が投げたメスは寸分違わず全ての銃へとヒットする

すると銃は

看守I「!?」

一瞬で分解した

看守I「どうなってる!?パーツか!?」

看守Iは目の前の様子が信じられずそんなことを言う

390: 2011/05/27(金) 20:13:06.37 ID:VFvho+tSo
148「俺は医者だぞ?」

148号は冷静に答える

148「人間の体内をなんだと思っている?心をなんだと思っている?」

148「俺はあんなに複雑な人間を分解したり構築したんだぞ?」

148「銃如き、それにくらべれば容易いことだ…最も」

看守I「クッ!」

隠し持っていたもう一丁の銃で148号を撃つ

そしてその傷から血が

148「よっと」

流れるよりも速く

メスで摘出、どこからか出した糸を使い一瞬で縫合、治療は完了していた

148「俺にとっちゃ人間を弄くるのも超容易いことだがな」

看守達は愕然としている

148「さあ、頃すから氏ね」

生き物は生ものになったとさ

394: 2011/05/27(金) 20:21:31.66 ID:VFvho+tSo
>>375にミスが
38「さっき僕が…いや、この何日かどうやってみんなの扉を『開』けたと思っているの?」



38「終わったか」

氏屍累々の四肢累々

七人以外は誰一人として立っていなかった

39「ニート」

106「お前誰一人として頃してねーじゃねーか」

55「少しは負担を減らしてください」

71「…疲れた」

88「!よるこお」

148「頃すぞ」

38「僕の力は戦闘向きじゃないんだよ、それにみんなみたいな」

看守J「ま、まて…」

生き残っていた一人が、38の腕を掴む

38「…技術もないしね」

そういった瞬間

最後の生き残りは全身から血を噴出し息絶えた

38「さあ、脱獄再『開』だよ」

395: 2011/05/27(金) 20:29:01.37 ID:VFvho+tSo
監獄Xはいつの間にか静寂に包まれていた

七人の足音と

空の雨音以外は聞こえず

そして

最後に監獄Xに響いた声は

38「脱獄、完了」

監獄Xから七人は無事抜け出せたことを証明するものだった

148「っておい」

38「なにさ?」

148「脱獄、完了とかキメてるとこ悪いが船はどこだ?」

自分がここに連れてこられたときの船はすぐに引き返していった

脱獄の可能性も考えるとこの島に船は無いということだろう

148「俺はお前が用意してるかと思ったが」

38「…船なんて無いよ?」

148「頃す」

106「頃す」

71「頃す」

55「頃す」

39「頃す」

88「!ろこっぶ」

六者一様

というか当たり前の反応だ

これでは本当に脱獄しただけで終りじゃないか

398: 2011/05/27(金) 21:12:28.79 ID:VFvho+tSo
38「まあまあ、そう焦るなよ」

38「僕はなにも船で行こうとなんてしてないさ」

148「なら…空か?」

頭上を見る

雨が冷たい

38「違うよ」

38「なんのために君達には足が付いているんだい?」

38号はそう言うと

海面に手を置き

38「よーく目を『開』いて見ておきなよ?」

海が

148「な!?」

割れた

いや

海が開いたと言った方が正しいだろうか

38「モーゼみたいでしょ?」

海底が見える

38「さあ、行こうぜ」

海の側面を伝い、上手く着地する

148号はあらためて

彼に恐怖を感じた

399: 2011/05/27(金) 21:28:08.58 ID:VFvho+tSo
歩く七人

38「そうだ、僕らの名前を決めたよ」

148「名前?」

38「そう、組織名って言うのかな」

55「そうですね、確かにチーム名をいうものは必要です」

そうだろうか

106「106号と奴隷達」

71「…剣団」

39「38号様王国」

88「!いかさまさかさまさかい」

148「却下」

38「そうそう、もう決まっているんだから」

38「悪党七味」

148「悪党七味?」

38「そう、よく悪の集団を~一味っていうでしょ?」

38「けど僕達は普通の一味よりも一味も二味も…六味は違う」

38「だから悪党七味、ピリリとイカス、スパイシーな集団さ」

148「ま、いいんじゃねぇか、頃したくなるセンスだが」

38「やっぱり?とにかく僕ら七人、悪党七味これからも」

38「悪ったらしく行こう」

監獄Xの壊滅と悪党七味の結成

マントが汗腺を手にする一週間前の出来事である

400: 2011/05/27(金) 21:30:53.10 ID:VFvho+tSo
と、いうわけで監獄X編終了

敵集団、悪党七味に男達ははたして無事でいられるのか。

続きはまた明日にでも

406: 2011/05/27(金) 22:27:43.20 ID:VFvho+tSo
まとめ

38号、所有パーツ:?

148号、所有技術:万能医

106号、所有技術:?

88号、所有技術:逆さ喋り

71号、所有技術:?

55号、所有技術:?

39号、所有技術:?

427: 2011/05/28(土) 13:17:37.44 ID:cxXs4VHoo


男「史上、最強最悪ねぇ…」

マント「目的、悪。手段、悪。災厄のような最悪の悪さ」

男「で、お前の願いは」

男「俺とソイツを倒して欲しいってわけか」



148「俺達と職業、人類最強を頃して欲しい?」

38「うん、倒すなんて生ぬるいどころか絶対零度の寒いことやられてもこまるしね」

55「しかし、職業、人類最強ですか」

106「厄介な相手だなぁオイ」

71「…面倒」

148「なんだ?俺は聞いたこと無いがそんなスゴイヤツなのか?」

38「うん、アホみたいな強さだよ。たとえば…」

ガラスの割れる音

マント「先手、必勝!」

男「いくら了承したからって三分で用意しろはないんじゃねぇえかぁああああああ!?」

38「こんな風にすぐ、僕達の場所がわかっちゃうぐらいだもん」

148「!?」

429: 2011/05/28(土) 13:27:43.83 ID:cxXs4VHoo
マント「奥義、月光町…」

マントが38号めがけ、全力の攻撃を放とうとする、しかし

マント「激痛!?」

その身体はバラバラになり届くことはなかった

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

男「大丈夫か!?」

手「男!後…」

106「他人の心配してる場合かぁ!?」

鉄球が男を叩きつけるため牙を向ける

男「壁髪!」

髪の毛で衝撃を頃すが、相頃しきれず壁に叩きつけられる

男「ッ!?」

106「『苦縛ノックバック(リストレント・リストランテ)』」

430: 2011/05/28(土) 13:37:25.98 ID:cxXs4VHoo
マント「再生!」

71「奇妙だなお前、吐き気がするぐらい不氏身で気持ち悪い」

手にする日本刀を数回振る

だが

マント「無傷、貴様いったい何をした?」

そう、傷一つない

だが動こうとした瞬間

マントの身体は固まった

文字通り、指先一つ動かない

71「『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』」

動かないマントの頭上へ少女が跳ぶ

88「!るやもしたわ」

手のひらを置いた瞬間、マントの身体はバラバラに砕ける

88「『まさか逆様(エスリバース)』」

マント「二度、再生!」

88「!だのもけば」

432: 2011/05/28(土) 13:52:48.11 ID:cxXs4VHoo
一方男は

男「お前…何した?」

39「あなたは頃す対象ではない、だから…眠れ」

男「クソッ…意、識が」

昏睡

39「『師、曰く、氏、曰く(ノウアンサー)』」



148「なんであのガキまでいるんだ?頃したくなる」

38「まあでも圧倒的だね、僕達の力は…けどまだ戦う時じゃない」

148「はぁ?このままでも勝てそうだぞ?」

38「甘いよ、職業、人類最強は、頃しただけじゃ勝てない」

38「もっと策を練る必要があるね、一旦退くよみんな」

その言葉を聞いた瞬間、55号はマントをバラバラに

再生を終えるまでに全員逃走を開始した

マント「失敗、奇襲は駄目か」

男「Zzz…」

後には裸の大男と寝ている青年が残るだけだった

433: 2011/05/28(土) 14:12:10.40 ID:cxXs4VHoo
男宅

男「なんだあの集団!?」

目覚めてから開口一番の台詞がそれである

マント「仲間、だろうな」

手「そういうことを言ってるんじゃねーんだよ!アイツ等の能力だ!」

男「そうそう、七人全員パーツ持ちか?知ってる顔もいたし」

マント「1人、だ。パーツ持ちは確かに1人」

左手の鼻を見せ付けながらマントは言う

マント「史上、最強最悪、アイツ以外はパーツを持っていない」

手「なら、おかしいだろ…」

男「俺達パーツ持ちが、なにもできず完敗するなんて」

そう、マントはともかく男に対しては圧倒的な強さだった

見逃してもらわなければ、簡単に氏んでしまう程に

マント「冷静、頭を冷やせ、自信が砕かれたのは分かる…だが」

マント「思考、俺がなぜお前を選んだのかをよく考え直せ」

男「…」

マント「事実、俺はパーツを持っているからお前を選んだわけではない」

マントは立ち上がる

手「どこ行くんだ?」

マント「情報、収集だ」

消えた

男「…選んだ理由か」

呟く

435: 2011/05/28(土) 14:31:02.16 ID:cxXs4VHoo
どこかの廃墟

38「これからは個人戦で行こうじゃないか」

148「個人戦?」

38「そう、個々が好き勝手悪をやって個々が好き勝手な悪になる」

38「ぶっちゃけ君達キャラ強すぎて、多人数でやるより、1人でやる方が気楽でしょ?」

38「強いでしょ?」

全員同意する

確かに今日の戦いでも、全員の動きを全員で阻害し合う形になり

半分の実力も出せなかった

38「だからみんなで好き勝手やって、職業、人類最強が現れたら」

38「対峙したその時、その場所の誰かが対処する方がいいんじゃないかなぁと思ってさ」

38「結局僕達は悪党七味なんだよね、一味が七つ集まってる」

38「1人1人が1つの悪を掲げているから、僕としても纏め上げるのは一苦労だよ」

笑顔

436: 2011/05/28(土) 14:43:57.75 ID:cxXs4VHoo
38「そうだ、ついでにチーム組んでるあの男も」

38「頃しちゃっていいからね?」

148「…フン」

55「じゃあ私から行こうかせていただきます」

三つ編みを揺らしながら言う

38「だから自由でいいんだって」

55「でも、こういうのは順番に行くのがセオリーでしょ?それに…」

71「…Zzz」

106「ふぁあ…」

88「…よたっゃちれかつ」

55「みなさんお疲れみたいですし」

148(たしかに脱獄後、徒歩で海を横断したからな…疲労はとんでもないことになっているだろう)

148(あんなに日数がかかるとは思わなかったが)

38「たしかにここにきてからも寝床探しやなんやらで連戦だったしねぇ」

隅の方には先住人だったものが転がっていた

55「さからショッピングついでに、ちょっと行ってきますよ」

38「ショッピング?何を買う気だい?」

55「決まってるでしょう?オシャレな服ですよ」

真っ黒に染まった監獄服を見せ付けながら彼女は言った

438: 2011/05/28(土) 14:47:13.86 ID:cxXs4VHoo
まとめ

38号、所有パーツ:?

148号、所有技術:万能医

106号、『苦縛ノックバック(リストレント・リストランテ)』、所有技術:?

88号、『まさか逆様(エスリバース)』、所有技術:逆さ喋り

71号、『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』、所有技術:?

55号、『考察する絞殺(マインド・マーダー)』、所有技術:?

39号、『師、曰く、氏、曰く(ノウアンサー)』、所有技術:?

445: 2011/05/28(土) 19:11:38.51 ID:cxXs4VHoo
商店街

男「選んだ理由ねぇ」

気分転換に外へ出てみる

日曜だというのに外は静かなものだ

手「理由ねぇ…お前いいケツしてるな」

男「本気でやめろ」

強さとかじゃない

もっと

別のことだ

男「なんでアイツ、俺を選んだんだ?」

55「案外、隠れ蓑ってだけでなんでもよかったのかもしれませんよ?」

男「ッ!?」

瞬時に距離を取る

55「あらら、結構傷つきますよ、その反応」

447: 2011/05/28(土) 19:24:34.99 ID:cxXs4VHoo
赤いシャツに薄茶のカーディガン

スカートは花柄

全身バラバラのコーディネート

トータルなんてあったものじゃなかった

男「なんだその格好、ウケ狙い?」

55「ああ、やっぱりダサいですかコレ」

自分の姿を見ながら言う

55「綺麗な人から適当に奪ったんですけど、やっぱりブランクは駄目ですね、刑務所じゃオシャレなんかありませんし」

そういいながら肩を竦ませる

途端、空から落ちてくる

首、首、首

男「!?」

最初から静かだと思った

いや、静か過ぎた

まるで

まるで全員殺されているみたいに

55「さて、あなたでラストです」

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』、55号、行きます」

頃し合い、開始

448: 2011/05/28(土) 19:36:25.71 ID:cxXs4VHoo
男「早速だが全力で行くぜ!」

取り出したのは神の脚

それをつけ全力疾走

手「この速度なら反応できねぇだろ!」

そして背後に回り込み、蹴りを一閃

それが彼女の背中へと

55「ああ、後ろですか」

触れなかった

男「!?」

神の脚はまるでそこに壁があるかのごとく停止

そして

55「寝なさい」

地面に叩きつけられる

男「ッ!」

コンクリートを砕くほどの衝撃

手「男!」

449: 2011/05/28(土) 19:44:50.23 ID:cxXs4VHoo
55「随分弱い全力ですね」

振り返りながら、蔑みながら言う

男「テメェ…何しやがった…」

55「何を…って手品のタネを明かすマジシャンはそうそういませんよ?」

男「そうか、少なくともお前が超能力者じゃないってことはわかったよ」

55「…ええ、私あなたみたいにパーツなんて持っていませんから」

そう言いながら彼女は右手を振る

途端、男の身体は30m程空へ跳ね上がる

男「うぉおおおおおおおおお!?」

55「すいません、高所恐怖症でしたか?」

そう言う敵はぼんやりとしか見えない程小さくなっている

450: 2011/05/28(土) 19:54:20.26 ID:cxXs4VHoo
手「男!髪だ!」

男「そうか!髪止め!」

咄嗟の判断で髪を伸ばし、下方のビル達に巻きつけることで落下の威力を弱める

さらに衝撃にそなえ骨を用意

男「リプレイ!」

クッションの完成

男「間に合えぇええええええええええええ!!」

エネルギーを脂肪に変換し肉の壁を構築

次の瞬間、隕石でも落ちたかのような音が辺りに響いた

粉塵が消えた後、そこには

男「あっぶねぇ…」

手「ギリギリセーフだな」

無傷の男がいた

55「…あなた、往生際が悪いって言われません?」

男「最後まで諦めないだけだ」

また、対峙

451: 2011/05/28(土) 20:02:33.56 ID:cxXs4VHoo
男「しかしスゴイ技術だね、惚れ惚れすれるぜ」

55「どうも、こんなこともできますよ」

両手を挙げた瞬間

背中に激痛

男「!?、がぁッ、ああっぁあああああああ!!」

手「な、何しやがった!」

見ると、背中に四本ものナイフが刺さっていた

男「ど、どこから…」

55「まったく、無様ですね」

55号が近づく

男「…あ?」

55「仲間であるハズの職業、人類最強は助けに来ない」

背中を踏む

男「!?」

それだけで氏ぬような激痛が身体を襲う

452: 2011/05/28(土) 20:11:19.52 ID:cxXs4VHoo
55「女の子に踏まれて悶えるなんてとんだ変態ですね」

冷たい視線が突き刺さる

55「しかも惨めに惨たらしくここで氏亡ですよ?本当にクズですね」

手「おい男!早く髪を使え!今なら簡単に敵を…」

動き出さない男に手が渇をいれる

男「さっきからやっている!」

そう

男は先ほどから髪の毛を動かそうとしているがまったく微動だにせず

脂肪を使い身体を動かそうにも縫い付けられたように

地面から身体が離れないのだ

55「もう無駄ですよ?チェックメイトです」

踏む

男「!!」

55「分かるものでしょう?マンガとかでも、喋りだすのは」

55「勝ちを確信した時だけです」

その笑みに

温度は無かった

453: 2011/05/28(土) 20:24:24.54 ID:cxXs4VHoo
男「そうだな、けどよ気づいてねーのか?」

55「え?」

男「饒舌なのは、俺も同じだぜ!」

背中から、髪の腕が生え、55号の腕を掴む

男「食らいやがれ!」

チャージされていた、手の粉砕骨折が、55号に転写される

55「ッいやぁあああああああああああ!!」

55号はあまりの痛さに後ろへ下がり

鮮血があたりを彩る

男「まったく、危ねぇ…」

そのまま腕を使い、背中を治療

手「うまく引っかかってくれて助かったな」

自分を縛るもの、それらは酸を使い溶かす

そして自由になる

55「な、んで…」

顔を涙と汗で濡らしながら問う

454: 2011/05/28(土) 20:33:45.30 ID:cxXs4VHoo
男「割と最初から気づいてたよ、あの首みた時からぐらいで」

答え合わせのスタート

手「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』なんて迂闊な名前つけたよな」

男「お前の能力…いや、技術は」

男が空に向かい酸を飛ばす

しかし非常に弱い酸は、なにも溶かすことなく

それにたどり着いた

男「この糸だ」

商店街

ビルとビルの間で煌くいくつもの線、線、線

縦横無尽なんて言葉が生ぬるいくらいに

無限に近い量の糸が

一つの世界を構築していた

男「そして俺は一つ、お前を騙させてもらった」

55号はふらつく目線を向ける

男「さっきの落下だ」

455: 2011/05/28(土) 20:38:30.73 ID:cxXs4VHoo


次の瞬間、隕石でも落ちたかのような音が辺りに響いた

粉塵が消えた後、そこには

男「あっぶねぇ…」

手「ギリギリセーフだな」

無傷の男がいた



手「おかしいと思うだろ?いくらクッションを作ったって」

男「いくら脂肪で身を固めたって、いくら勢いを頃したって」

男「無傷なんてのはありえねーんだよ」

手「ま、たとえば」

男「両腕を犠牲にしたら、それ以外は無傷でいられるが」



手「痛ぇええええええええ!」

男「黙れ!今治すから…」



手「粉塵がいい目隠しになったぜ」

456: 2011/05/28(土) 20:44:26.64 ID:cxXs4VHoo
55「…っ」

55号は身体の震えが止まらなくなってきた

男「おかしいと思うだろ?すぐに治せばいいんだ、こんな背中の傷」

手「できなかった、最終兵器を隠しもっていたから」

男「糸なんざ酸で溶かしちまえばよかったんだ」

手「できなかった、お前が警戒するから」

男「お前の逃げ道ができるから」

そう、周りの糸で逃げ道は塞がっている

それは55号の作戦だったのだろう

しかし

男「完全に裏目ったなぁ?」

男「致命的だ、マジシャンが指をケガすることは」

男「ましてやそれが、糸を使うなら」

55「ッッッ…」

振るえはより一層大きくなる

男&手「犯罪者、お前はすでに敗北者だぜ」

457: 2011/05/28(土) 20:51:58.75 ID:cxXs4VHoo
55「アーッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

55号は

堪えきれなくなって

笑った

男「!?」

55「なんでって、そういう意味じゃないですよ!」

震えも

55「本当にキモイですねあなた」

定まらない視線も

55「間違った推理ご苦労様」

汗や涙も

55「不正解ですよ」

全部笑いを堪えていたから

55「残念でしたね」

男の右腕が飛ぶ

男「ッ!!」

458: 2011/05/28(土) 20:57:54.14 ID:cxXs4VHoo
55「私が、なんでって言った意味は」

55号は

55「なんで手を狙う必要があるの?という意味です」

足を上げながら

55「足にだって指はあるのに」

そう言った

男「な、…足!?」

切り傷から出血が止まらない

55「そうです、足…あ、パンツを見られてしまいました」

恥ずかしそうに頬を染め足を下ろす

男「手…振ってたじゃねぇか」

55「ええ、手に注目させておいて、足を動かしてましたよ」

男「そうか…じゃああの名前も…」

55「ええ、『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

55「絞殺って、手でやるイメージがあるでしょ」

男(やられた)

男(最初から騙されていた!)

459: 2011/05/28(土) 21:03:06.71 ID:cxXs4VHoo
男「おかしいと思ったんだよ、そのファッション」

そうだ

何を見ていたんだ

最初の彼女

つまり囚人服がクツを履かないのは当たり前だとして

なんで

クツを奪って履いてねーんだよ

55「本当はオシャレしたいんですけどね、騙すために必要なんですよ」

55「裸足が霞むくらいのダサさが」

男「…サンダルでいいんじゃねーか?」

55「…それもそうですね、今後、参考にさせていただきます」

55号が近づく

男「…時間稼ぎも、無理か」

逃げようにも、糸を溶かさなかったのは自分だ

血が出すぎて、これでは酸が作れない

460: 2011/05/28(土) 21:05:41.71 ID:cxXs4VHoo
55「では」

55「氏になさい」

足を振り上げ

パンツ見せつけ

男に糸が襲い掛かる

男(終わった)

氏は無限、無数、無形で

いつだって

誰にだって降りかかる

最後にそんなことを男は考えた

497: 2011/05/30(月) 19:53:04.18 ID:ERmu2xuho
55「では」

55「氏になさい」

足を振り上げ

パンツ見せつけ

男に糸が襲い掛かる

走馬灯が見えるとき

自分が氏ぬとき

この話が終わるとき

普通は終り、それが人生

終局は見えないけど

いつだってそこにいる

一寸先は闇であり無

それを照らし出すことはできない

普通は

そう

職業が人類最強でもなければ

499: 2011/05/30(月) 20:09:04.75 ID:ERmu2xuho
マント「遅刻、不覚、深く反省」

55「!?」

宙にマントが現れると、瞬時に55号と男を取り囲むビルが爆破する

粉塵、瓦礫、氏体が舞い飛び

同時に、それら軸にすることで張られていた糸も

弛み、緩み、千切れる

煌く糸は崩壊を彩り、その仕事を終える

中心に立つのは

マント「奇抜、なファッションだな」

と、男へ言う

男「いや、片腕無いのはファッションじゃねーよ」

ツッコミ

55「その台詞を言うなら私でしょう?」

距離を取りつつ、そのようなことを言う

マント「戦闘、そのためにカスタマイズされた服装をファッションとは言わない」

構える

55「…そうですか」

502: 2011/05/30(月) 20:17:45.87 ID:ERmu2xuho
男「気をつけろ、アイツは…」

マント「技術、曲弦師、そうだろ?最も曲弦師というよりは極限氏の方が似合っているが」

元からの知識なのか、この場を見て一瞬で気づいたのかはわからない

しかし

職業、人類最強の名は

伊達ではない

それだけは確かに伝わった

55「まったく、面倒なことになりましたね」

両腕を封じられても尚

無限の糸が多数の糸になっても尚

二対一になっても尚

職業、人類最強と対峙しても尚

55「もう汚れたくないんですけど」

その瞳に宿る強さは衰えてはいなかった

マント「職業、人類最強」

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

第二ラウンド、開戦

503: 2011/05/30(月) 20:26:15.90 ID:ERmu2xuho
マント「瞬殺」

マントが手を振りかざす

指先から飛んだ汗は凶器として

兵器として55号へと向かう

55「なるほど、液状の爆弾生成ですか」

男「はぁ!?」

それがたどり着く前に、見抜く

そしてその汗は空中で爆発した

後には糸だったものが残るだけだった

男「なんで見抜けてるんだよ!?」

マント「愚問、彼女は無限の糸を操る」

マント「当然、それには常人離れした視力も前提となる、糸の位置を把握するためのな」

55「余所見してると頃しますよ?」

マントを無数の氏が襲う

504: 2011/05/30(月) 20:32:42.38 ID:ERmu2xuho
マントの頭が飛び

腕が飛ぶ

足は細切れに

数回ほどの氏を経ても

マント「再生」

決して負けてはいなかった

55「まったく化け物相手は初めてですよ」

マント「憤慨、職業、人類最強」

マント「自分、人間だ」

爆発

防御

惨殺

再生

連撃

後退

瞬殺

復活

奥義

見切

必殺

不氏

505: 2011/05/30(月) 20:37:55.05 ID:ERmu2xuho
いくつもの一歩的な殺人を経ても

どちらも倒れず

どちらも疲れず

決して勝負は付かない

泥試合というワードがこれほど似合う戦いもなかった

マントが46回の氏を経て

55号が46回の殺人を経て

マント「提案」

55「あら、奇遇ですね、こちらもですよ」

互いにたどり着く

ひとつの答え

マント「一時、休戦」

55「一時休戦」

荒地となった商店街は

ついに無人となることとなった

506: 2011/05/30(月) 20:49:40.34 ID:ERmu2xuho


マント「右腕、再生したか?」

男「おお、どうにかな」

手「あー今回喋れないんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ」

一時休戦となったあの戦い

55号はどこかへと消え

男は右腕を治療

いまは

マント「作戦、会議だ」

男「ああ」

マント「少女、55号の使う技術、『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

マント「無数、無限、無敵の糸は無限回人を殺せる」

手「つまり、お前が持つ無限の再生力も」

マント「正解、あの技術の前では、ただ、それだけでしかない」

男「無限の再生力の強みがないってことか」

508: 2011/05/30(月) 21:05:16.97 ID:ERmu2xuho
再生することの強さは、相手の殺人ストックを恐れず減らせること

しかしそのストックが無限ならば

ゴールの無いマリオのステージと同じ

いくら生き返ろうと、それだけでしかない

終りはないのだから

いくら頑張っても、クリアはできない

手「つか、マントの再生には心臓の破壊という終了があるしな」

男「不氏頃しってカンジだな」

まるで用意されたかのような試練

マント「不氏、頃し、的を得ているな」

男「糸を全部破壊することは無理か?」

不氏頃しを行うために必要なものを壊せれば

マント「不可、だろうな、酸への対策等などはしてあるだろうし」

マント「一本、一本破壊してたらキリがない」

マント「戦闘、行う場所は必ずアイツに術中にあるだろうしな」

そう、コチラは追う側

アチラはいつでもどこでも

好きな場所で待てばいいのだから

511: 2011/05/30(月) 21:20:24.69 ID:ERmu2xuho
男「ハンターはこっちのハズなんだけどな」

手「なのになんで追い詰められてるんだよ」

マント「蜘蛛、アイツはまさにそれだ」

巣を張り

後は待つだけ

馬鹿な獲物が

ただ待つだけで捕まってくれる

手「どうしようもねぇな」

沈黙が世界を支配する

攻略不可能

それが理論上の話であっても

気力を削ぐには十分だった

513: 2011/05/30(月) 21:30:36.99 ID:ERmu2xuho
マント「否定、どうしようもない事などではない」

沈黙を破る

マント「結果、それが間違いだったとしても、お前はたどり着いたんだ」

答えに

攻略法に

故に

マント「一人、それで失敗したなら二人だ、もう一度、お前の策を、考えを見せてみろ」

男「!」

マント「安心、しろ、お前の仲間を誰だと思っている」

マント「職業、人類最強だぞ」

それが戯言でも

背中は押された

男「ああ、そうだな」

後は

男「踏み出すだけだ!」

手「っておい!俺も仲間だぞ!三人だろうが!」

マント「生憎、喋る手のカウント方法は知らない」

手「人権侵害!」

男「いや、実際お前はかなりグレーだろ」

514: 2011/05/30(月) 21:45:04.23 ID:ERmu2xuho
どこかの廃墟

148「修繕完了だ」

55「すごいですね、傷跡一つ残さず完治させるとは」

その台詞通り

粉砕骨折した両腕は治っていた

38「どうだった?職業、人類最強と一対一の初戦は?」

55「正確には一対二ですけどね」

答える

55「所詮、職業、人類最強ですね」

55「決して、史上でもなければただの職業で、人類を超越したわけでもない」

55「常識を超越したこの技術」

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』には決して勝てない」

一瞬で身体のありとあらゆる場所から糸を展開

55「次は至極簡単に、氏は、酷く、感嘆する程に」

55「アイツらを襲いますよ」

糸は、笑っているように、震えていた

518: 2011/05/30(月) 21:55:37.64 ID:ERmu2xuho
まとめ

38号、所有パーツ:?

148号、所有技術:万能医

106号、『苦縛ノックバック(リストレント・リストランテ)』、所有技術:?

88号、『まさか逆様(エスリバース)』、所有技術:逆さ喋り

71号、『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』、所有技術:?

55号、『考察する絞殺(マインド・マーダー)』、所有技術:糸遊び

39号、『師、曰く、氏、曰く(ノウアンサー)』、所有技術:?

543: 2011/05/31(火) 15:54:15.15 ID:Gd7l6oWco
商店街

55「あら、奇遇ですね」

マント「奇遇、だな」

男「たしかに、これ以上ないくらいに奇遇だ」

三人を取り囲むのは

今度は隠そうともしない意図

糸、糸、糸、糸、糸だらけ

55「さて、それでは殺させていただきますか」

男「ちょっとその前に質問」

55「…なんでしょう」

男「今日はダサイ服着ないんだな」

55号の外見は昨日とは違い清楚たる白いワンピース

55「もう、騙す必要もないですしね…ああ、安心してください」

55「あなた達の血が乾いて真っ黒に染まれば、喪服にはちょうどいいと思いますよ」

男「…そうか、でも」

マント「嘲笑、喪服に花柄とはこれまた合わないな」

手「ああ、やっぱりセンスねーぞ」

花柄のサンダルを指差して言う

55「…ブッ頃します」

氏合い開始

545: 2011/05/31(火) 16:25:28.14 ID:Gd7l6oWco
男「奥義、酸化射!」

55号へと酸が向かう

55「無駄です」

しかし、55号が手を合わせた瞬間

それらの酸は地面から湧き上がった無数の糸に阻まれたどり着くことは無かった

マント「対策、やはりあったか」

そう、酸に触れても溶けていない糸が使われていた

55「結構コレ高いんですよ?まあ頃して取りましたけど」

男「だったらこうだ!奥義、脂肪動機!」

台詞を言い終える前に、55号の前に詰め寄り

脚から繰り出される蹴りは

55号の肉体を粉砕、文字通りの木端微塵にしてしまう

546: 2011/05/31(火) 16:39:47.47 ID:Gd7l6oWco

55「とでも思いましたか?」

放とうとした蹴りは無数の糸に絡み取られ

そのエネルギーを分散されてしまう

手「嘘だあろ!?あんなやわっこい糸で」

55「束ねたり、形状を変えたり、それらを組み合わせることで不可能を可能にする」

右腕を後ろへ回す

55「それが私の技術、糸遊び」

すると男の脚を束縛していた糸達が急回転

男の肉を削ぎ、骨まで削ろうとする

男「だぁああああああッ!!だが、迂闊だな!」

55「?どういうこと…」

男へ意識が向いている間

マント「背後、貰った!」

55「!?」

切り札は背後に忍び寄っていた

547: 2011/05/31(火) 16:50:56.82 ID:Gd7l6oWco

55「糸を集め、防御を展か…」

瞬時に無数の糸を集め、束ね、強固な盾を作り出す

しかし

マント「防御、私と対峙する時、最もしてはいけない行為だ」

目を閉じたマントの一撃は

55号の背中へ届き、そのか弱い肌をドス黒く染めようとし

大きな音を響かせた

周りの糸が、震える

548: 2011/05/31(火) 17:07:53.05 ID:Gd7l6oWco
55「…なるほど、相手の防御、といいますか、纏っているもの一つ分無視した攻撃ですか」

平気な顔でそう考察する

手「な、なんでだ!?決まったはずだろ!?」

糸はまだ震え続けている

55「ええ、決まりましたよ、だからそのダメージを…」

糸はまだ

55「逃がしたんですよ、身に纏う糸を振動させて」

破れたワンピースからは、その柔肌に食い込むいくつもの糸が見えた

マント「衝撃、では私の一撃は!」

55「職業、人類最強…あなたの一撃は素晴らしいですよ、だって」

そして糸の振動は収まり

衝撃は

男「あァあああアああァ!!」

男の脚、むき出しの骨へと届いた

55「あんなに苦しめるんですから」

549: 2011/05/31(火) 17:20:12.64 ID:Gd7l6oWco
転げまわる男

手「男、腕使え!」

男「今…使った…」

いつのまにか男の脚は元通りに復元した

55「また、あのトンデモ腕ですか」

そう言いながら、自分の背後にいるマントを空へと弾き飛ばす

マント「着地」

しかし流石といった所か

張られた糸をうまく使い

綺麗に地面へと着地する

55「その腕で、今度は脚を抉る気ですか?」

男「…」

55「別に脚が使えなくとも、手には指があるし、大体」

55「手も脚もなくとも動かせるところはどこでもありますよ」

550: 2011/05/31(火) 17:33:00.65 ID:Gd7l6oWco

そちらの作戦はわかっている

また隙を見て、糸を使えなくするよう、私を壊す気でしょう?

でも、そんなことをしても無駄ですよ?

まるでそう言いたいかのような口ぶり

男「…へぇ、例えばどこ使うの?」

55「…それは言えません」

少々頬を赤らめ言う

55「しかし」

その可愛らしい表情も一瞬で冷たいものへと変貌

55「どっちも終りのないゲームなんてつまんないですね、詰まることがないから当たり前ですけど」

55「まあ、五体バラバラにして海にでも流せば、少しは殺せるかもしれませんが」

彼女は冷静に考察する

それを見た男達は

551: 2011/05/31(火) 17:44:45.55 ID:Gd7l6oWco

男「もう1分も経っちまった」

手「なら作戦」

マント「作戦、2だ」

手「俺の台詞とるなー!」

そう言うと二人は距離を取り、周りの糸を強力し、破壊していった

55「…はぁ」

彼女の目は

可哀想なものを見るような

55「馬鹿、ですね」

哀れみを含んでいた

55「この場にある糸は無限にして無数にして無情」

55「貴方達がいくら頑張って数百本、数千本を破壊しても」

こんなふうに

そう言いながら左手を上から下へとゆっくり降ろす

すると

552: 2011/05/31(火) 17:52:02.03 ID:Gd7l6oWco
男「だッ!!」

男は無数の糸で脚を絡み取られ、そのまま地面へ叩きつけられる

激痛が走り顔を抑える

しかし痛みが引かないまま、次の糸達が男の顔を削る

男「痛ぇええええええええ!!」

パーツがなければ氏んでいたであろう

マントは一瞬で頭を跳ね飛ばされ、倒れる

が、もちろん頭を右手で拾ったかと思うと

次の瞬間には再生していたが

55「こんな風に、簡単に、糸は氏を贈ります」

手「…やばいな」

マント「失敗、逃走でもするか?」

男「いや、逃がしてくれねーだろ」

55「その通り、正直、ストーカーみたいでキモイんですよあなた達」

男「そっちが誘ってるからだろう」

55「妄想も大概にしてください」

553: 2011/05/31(火) 17:56:17.79 ID:Gd7l6oWco
55「さぁ、貴方達は何千回氏んで、何千回殺せば、負けますかね?」

巣は声を上げ

55号の、母の命令を待ちながら

男達を取り囲んでいる

男「二分、経過…どうする?」

男達は詰んでいた

作戦失敗

氏亡確定

だから

職業、人類最強は

こんなことをいった

マント「時間、私が相手をして稼ぐ、だから男」

マント「逃走、しろ」

男「!」

すべての希望を託した

588: 2011/06/01(水) 15:55:01.02 ID:rl0TzEaIo
男「本当にやる気か…」

マント「嗚呼、チャンスはここしかない」

男「…氏ぬなよ?」

マント「職業、人類最強だぞ?氏ぬわけなかろう」

55「ごちゃごちゃと五月蝿いですね、大人しく、大人らしく氏になさい!」

数多の糸がマントと男を襲う

マント「停止!」

マントはそう叫びながらそれらの糸を男へ近づけさせないように足止めする

55「邪魔ですね」

55号とマントが敵対しあう間

男は糸で出来た空間を駆けずり回り

必氏になにかを探す

55「逃げ道などありませんよ」

左足を少々ずらしただけで
男の目の前に壁が建設される

男「クッ」

手「男、別のルートだ!」

589: 2011/06/01(水) 16:01:35.78 ID:rl0TzEaIo
マント「挑発、私を無視するな!」

距離を詰め、55号へのラッシュを仕掛ける

55「だから無駄ですよ!」

ボディへの衝撃は全て糸で分散され

ダメージを与えることはできない

マント「装着、糸の鎧か…ならば!」

糸が巻き付いていない、部位

すなはち

マント「顔面!」

マントの右ストレートが食い込まんとする

55「無駄です」

風を切る音とともに、空の糸がマントの右腕を切り落とそうとする

マント「退避!」

それをギリギリで見切ったマントは光速とも言えるような速さで後退

どうにか腕が千切れることを阻止する

590: 2011/06/01(水) 16:10:59.46 ID:rl0TzEaIo
55「私の技術は攻撃力無限であり、防御力無敵です」

巣の中心で女王は高らかに叫ぶ

55「縦横無尽に張り巡らされたこの技術」

55「破る方法は皆無!」

マント「無常、だな…」

55「私は無情ですから」

マント「皆無、破る方法は無い、か…だがな」

55号達の後方で音がする

糸を切り裂いた時の、あっけない音が

男「逃げ道!発見!」

手「いや、発掘だろ」

マント「希望、あいつ等なら見つけてくれるはずだ」

55「な!?あなたは囮?」

マント「何時、わからないが、彼ならこの技術、乗り越えて見せるさ」

55「しまった…」

男の目の前に、糸の無い、世界が広がる

591: 2011/06/01(水) 16:11:56.50 ID:rl0TzEaIo










55「とでも言うと思ったんですか?」

593: 2011/06/01(水) 16:19:09.06 ID:rl0TzEaIo
そう言って、55号が両手を挙げた瞬間

男の両足に巻き付いていた糸が起動

その役目を果たし

男を宙吊りにする

男「うおっ!?」

手「いつの間に…」

55「最初から、ですよ。最初、ここへ入ったとき」

55「その時から既に退路は断たれているんです」

55「ま、そっちの方は」

マントは落胆し、肩を震わせる

55「希望まで絶たれてしまったようですが」

男「マント!おい、なにやってんだ!」

55「呆れました、最後は仲間にすがるんですか」

冷たい視線を男へ向ける

55「あなたも再生するようですからねぇ」

55「とりあえず」

55「四肢断裂からやってみましょうか」

両手を振り降ろす

595: 2011/06/01(水) 16:27:42.82 ID:rl0TzEaIo
次の瞬間

55号は宙へと投げ飛ばされた

55「!?」

誰からの攻撃だろうか

いや、誰からの攻撃でもない

今、動いたのは彼女だけだった

男「簡単な話さ」

宙で吊られながら男が答える

男「お前しか動いてないなら、お前がやったんだよ」

ふざけるな、私の技術は完璧です

私がミスを犯すなんて

…ッ!

そして彼女は気づく

糸に隠された意図を

そう

男「お前の破る方法が皆無なら、増やせばいいんだ」

男「破る方法を付け足せばいいんだ」

男「俺の髪を糸みたいに使ってな」

 神の髪を

597: 2011/06/01(水) 16:39:26.11 ID:rl0TzEaIo
投げ飛ばされた55号は計算されたように、男の元へ近づく

55「けど!宙吊りされたお前には何もできないはずです!」

男「ああ、俺には何もできねぇ」

男「考えることが必殺技の主人公らしくない主人公さ」

男「だからさ、バトルとかそういう面倒なのは適任なのに任せておけばいいんだよ」

男「こんな風に」

そう言った瞬間

マント「正解、例えば俺のような、職業、人類最強にな」

男の腹を突き破つて

現れたマントは

55「!?」

マント「奥義、終断汗腺!」

55号へと最大級の爆発を飛ばし

戦いを終わらせた

598: 2011/06/01(水) 16:44:20.31 ID:rl0TzEaIo


巣の中にいるのは四人

55「うぅ…」

全身に火傷を負い、戦闘不能になった55号

男「さて、どーするか」

手「ああ…」

なぜか困惑している男と

マント『単純、どちらか殺せばいいだけだ』

二人のマントだった

手「しかし、お前も無茶な作戦思いつくよなぁ」

男「でもこうするしか無いだろ、マントが束縛されていたかもしれないし、相手を油断させるには」

男「体内に、マントを隠すしかよぉ」

599: 2011/06/01(水) 16:55:42.14 ID:rl0TzEaIo
55「ど、どういうことですか…」

いつの間にか意識を取り戻した55号が

納得のできない目の前の光景に問いを投げる

男「じゃあ、役者もそろったし今回の謎解きタイムだ」

男「今回の作戦はお前の思い込みと技術を利用させてもらった」

55「…思い込み?」

男「マントは不氏で、俺は腕を持っているという思い込み」

55号はマントは不氏で、男は傷を移せるという前提で攻撃を仕掛けていた

男「お前は殺せる俺を確実に殺そうと、攻撃のウェイトを裂いた」

男「だが残念、お前は間違えていた」

男「今回、右腕を所持していたのはマントで、心臓を所持していたのは俺だ」

55「!?そんな…私はマントを見ていましたが、決して右腕がもう一本生えたことなど」

男「だからそれが間違いなんだよ、右腕はあった、それがマントが二人いる理由」

55「…ッまさか!」

男「そういうこと、今…一方のマントから生えている右腕は」

男「神のパーツだ」

600: 2011/06/01(水) 17:07:59.85 ID:rl0TzEaIo
55「では、その分の右腕を!」

男「正確には、右腕、左足、両脚だけどな、それらが全部俺の体内そして」

トドメを刺そうとしたあの時

男は体内に仕込んだそれらがパーツに

神の心臓を触れさせた

男「人間の部位っていうのは切っても暫く生体反応があるんだよ、で、俺は思った」

男「これを再生したらどうなるのか、実験した結果は」

マント『頭脳、精神まで再生、同じ人間が二人になった』

男「まったく、体内保管するのスゲー痛いんだぞ、まあ神の心臓の再生力でなきゃ氏んでるが」

55号「そうか、通りで時間を気にしているわけですね…」

男「生態反応終わったら再生できなかったからな、生肉としてカウントされた」

55「あの時も」



転げまわる男

手「男、腕使え!」

男「今…使った…」

いつのまにか男の脚は元通りに復元した



55「腕を使った描写はありませんでした…」

603: 2011/06/01(水) 17:16:17.19 ID:rl0TzEaIo
男「それは俺が心臓を持っていて、使う必要がなかったから」

マント「右腕、所持している私は今回、避ける必要があったがな」

55「あの時ですか」



マントの右ストレートが食い込まんとする

55「無駄です」

風を切る音とともに、空の糸がマントの右腕を切り落とそうとする

マント「退避!」

それをギリギリで見切ったマントは光速とも言えるような速さで後退

どうにか腕が千切れることを阻止する



男「本来、マントは避ける必要なんてないからな、けど」

男「今回は、腕を切り落としてたら再生できねーからな」

マント『職業、人類最強でもなければできないことだ』

マントは格好をつけながら答える、二人だとウザイ

手「いいからそれどうにかしろっつーの」

手がそういうと、

マント「残念」

一方のマントから心臓を抜き取り、頃して、一人になった

手「いや、なにもそこまでしろとは」

マント「面倒、それにいいだろ私のことなんだから」

男「それはそうと、お前笑いすぎ、あの時ばれるかと思ったぞ」

手「『なにやってんだ!』とか思わず叫んでたしな」

605: 2011/06/01(水) 17:27:12.24 ID:rl0TzEaIo
55「最後に、疑問が一つ」

男「ん?」

55「いくら考えたからといって私の技術は常識を超越しています、それをあんな風に書き換えるなんて」

55「戦えながら書き換えるなんて」

55「いったい、どうやったんですか」

男「まあ、最初から髪の毛使ってお前の行動に隙を作らせるっていうのはあったからな」

男「戦闘開始前から時間延ばしたりして全体見てたし」

男「後はわからない糸は千切って動き見たり」

男「それと逃げる振りしてそっちから糸を潰してもらうことでどうにか」

男「お前を空中に飛ばす程度は組み立てられたよ」

詰まるとこ、今回の男の行動全てが

技術を理解するために動いたことだった

戦ってなんて最初からいなかったのだ

55「…異常ですよあなた」

607: 2011/06/01(水) 17:31:38.49 ID:rl0TzEaIo
そう

いくら考えたからといって

いくら戦っていなかったからといって

いくら一部分だけだといって

いくら主人公だからとって

55「あなたは異常すぎます」

職業、人類最強なんて目じゃない

真に危険なのは

男「?」

この男

今後、この男が必ず邪魔になる

きっとこの男が私と同じように

148号も

106号も

88号も

71号も

39号も

38号も

倒されてしまう

608: 2011/06/01(水) 17:39:34.86 ID:rl0TzEaIo
だから

ここで

55「あなたを頃します」

そう言うと55号は立ち上がり

最後の力を使って新たな糸のドームを構築する

マント「驚愕、まだこんな量の糸が!」

そして、構築が完了した後、その中には

男「二人っきりか…」

55「嬉しいシチュエーションでしょう?」

男「だが、どうする気だ?お前は全身火傷している、そんな身体じゃもう…」

55「そうです!もう私は自ら戦えません!だから!」

55「戦わさせるんです」

一糸纏わぬ55号の身体へ次々と糸が絡まっていく

手「なんだ、あれ?」

55「よく見なさい、これが真の」

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

610: 2011/06/01(水) 17:49:19.93 ID:rl0TzEaIo
完成したのは

55「はぁ…はぁ…」

火傷した身体を糸で雁字搦めに拘束された痛ましい姿だった

男「おいおい大丈夫か?」

男が不用意に一歩近づく

その時、足が一本の糸に触れた

途端

55「ッぎっぁあああああああああああああ!」

獣のような声を上げ

尋常ならぬ速度で55号は向かってくる

手「なっ!?」

そして繰り出される蹴り、殴りのラッシュ

611: 2011/06/01(水) 17:51:57.91 ID:rl0TzEaIo

男「クッ!壁髪!」

男が防御をしようと目の前にに壁を作り出す

すると今度はその髪が糸に触れる

すると

55「!!っぁがげいいいい!!」

ラッシュする脚や腕の動きを無理やり変え、男の後ろに回りこむ

その動きは人間がやれば骨が折れてしまうかのような

というか

折れていた

55号の脚からは鮮血が飛び散っている

だが、折れても尚ラッシュは止まない

手「どうなってるんだ!?」

男「おい、まさか…」

そう、55号は糸に操られている

操られて、無茶な動きを身体に要求されている

55「これが…真の…」

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

612: 2011/06/01(水) 18:08:51.80 ID:rl0TzEaIo
55「糸を展開したドームで自らとドーム内の糸を連動」

55「あなたが防御して糸に触れればそれを崩すように私は動きます」

55「あなたが逃げて糸に触れればそれを追うように私は動きます」

55「私の意志とは関係なく、私が傷ついても、私が氏んでも」

55「糸は考察します私の代わりに、あなたを絞頃することを」

55「これが私の本当の技術」

55「ジグザグだとかシグナルイ工口ーだとかそんなもんじゃない」

55「あれは悪魔でおまけ、これが私」

55「『考察する絞殺(マインド・マーダー)』」

55「奥義…いや必殺、自分殺糸です」

そういう彼女の身体は傷だらけでボロボロ

しかし身に纏う糸は無限、無数で無敵

男「手を使わせると見せかけて足を使う曲弦師かと思えば実はそれも嘘」

男「本当は、ワイヤーアクションスターかよ、騙されたぜまったく」

55「わたしの技術は糸遊び、糸で遊ぶなら

55「マリオネットでしょ?」

そういって笑った

613: 2011/06/01(水) 18:12:09.01 ID:rl0TzEaIo
55「わたしの技術は糸遊び、糸で遊ぶなら→55「わたしの技術は糸遊び、糸で遊ぶなら」

614: 2011/06/01(水) 18:20:22.68 ID:rl0TzEaIo
55「ぎぃいいいいいいいいいいいい!!」

激痛から悲鳴を上げ、男へ向かってくる

男「髪はまた別のスイッチ入っちまうかもしれない!」

手「酸はどうだ!?」

男「駄目だ!そんなことしたらアイツ氏ぬかもしれない!」

手「あーまったくお前は甘すぎるんだよ!」

男「甘くて結構!それが俺の正義だ!」

男「頃すのはもうこりごりだ!頃してたまるか氏なせてたまるか!」

男「泣いてる女の子1人救えないヒーローがいてたまるか!」

55号の目には涙が浮かんでいた

それが激痛からなのか、それとも男へ対する嫌悪からくるものなのかはわからない

だけど

男「放っておけるか!」

この主人公は

涙を流す理由を聴くより

涙を止める方を先にする

そんな男だった

615: 2011/06/01(水) 18:33:32.46 ID:rl0TzEaIo
手「だけど!右腕も両脚もマントの所だぞ?」

そう、隔たった壁の向こうにいるマント

そいつに渡したまま返してもらっていない

男「足りないならいつも通り!」

迫る55号の攻撃をなるべく無茶な動きをしなくて済むような位置へ避ける

男「その分、考えるだけだ!」

手「…ったく!わかった絶対助け出すぞ!」

男「おう!」

パーツの有無など関係ない

この主人公はヒーローだから強いのだ

男「考えろ…必ず攻略法はある…」

55「あッ、るワケないでし…ああぁアあァあああああ!!」

痛みを隠し切れず、叫ぶ

55「必殺、自分殺糸は誰にも破られたことが無いんです!」

616: 2011/06/01(水) 18:46:00.02 ID:rl0TzEaIo
男「…破られたことがない…なんだ、そういうことか」

男「悪いな、俺の勝ちだ」

見つける、正解を

55「いぎゃぁああああいあああ!!」

目の前の少女を救う方法を

男「いぎゃぁああああいあああ!!ならいいさそれでも、だが、お前は俺達に」

手「ショックあたりを起こすぜ!」

男「…そろそろネタも切れたな」

手「…そうだな」

そして、少女を救うため男が取った行動は

男「…」

喋らないことだった

しかし

55「!!」

それだけで55号の表情を凍りつく

617: 2011/06/01(水) 18:51:26.84 ID:rl0TzEaIo
55「あぁああああああああああああ!!!」

55号は…いや、糸は必氏に男へ掴みかかろうとするが

男「…」

男はただそれを無言で避けていく

ただ終りのない鬼ごっこに見えたその行為も

突然終焉を見せる

ドームは崩れ

55号を拘束していた糸が解かれた

そして、空が見える

マント「無事、だったか」

男「…ふぅ、それよりも救急車」

男はようやくそこで一息ついたのだ

618: 2011/06/01(水) 19:09:36.63 ID:rl0TzEaIo


手「酸素濃度ねぇ」

男「ああ、『考察する絞殺(マインド・マーダー)』の必殺、自分殺糸」

男「あれは対象が氏ぬまで氏んでも頃すことをやめない技だ」

手「強制ってことだな」

男「そう、だからこそおかしい」

手「どうやって、解除するかってことだな」

男「口ぶりから何度も使ったことがあったみたいだし、なら解除できる技じゃないとおかしいからな」

男「自分で止めることができるなら強制じゃない、なら何がキッカケであれが解除されるのか」

手「それが酸素濃度」

男「そう、あの技はどうやってかわからんが、ドーム内の酸素濃度によって解除されるみたいだ」

手「相手が生きている、つまり酸素濃度が薄いと解除できない」

男「相手が氏に、自分も息を止めることで酸素濃度が濃くなるとやがて解除される」

手「だから息を止めた」

男「そう、まあ55号ちゃんの体力はギリギリだったからね」

男「虫の息と息を止めたことで、酸素濃度はギリギリ解除ラインまで到達したってこと」

619: 2011/06/01(水) 19:22:42.65 ID:rl0TzEaIo
マント「一命、とりとめたみたいだぞ」

男「そっか、よかった」

ここは病院、今55号の治療をしてもらっていた所だ

手「しかし生きてるとなると、また襲われることになるぞ?」

マント「不可、それはできない」

男「どうして?」

マント「火傷、それに加え全身を糸で傷つけたのだ、
     後遺症でまったく動かないなんてことはないが、
それでも糸を操れるほど器用に動くことはできない」

男「…そうか」

マント「彼女、どうなると思う」

男「殺人…つっても立証は不可能だろ」

あんな非常識なこと

信じてもらえそうもないし、できるものもいない

手「かといって、野放しもだめだろ」

マント「一旦、この病院で、ほぼ監禁状態にしておくが、いずれ決めないとな」

償うべき罪を

620: 2011/06/01(水) 19:30:45.77 ID:rl0TzEaIo
男「生かさず殺さず、生頃し」

どこまでも中途半端

治らない傷も残してしまった

手「それでも、お前が決めた結果だ、受け止めろよ」

そう、彼女を救おうとした結果

受け止めるべき結果

マント「伝言、『なぜ、私を殺さなかったのですか?』」

男「なぜ殺さなかったか?…か、答えてやるよ」

男「ついでに、お前が俺を選んだ理由も一緒に」

マント「回答、見つけたか」

男「ああ、それは俺が」

男「ヒーローだからさ」


55号、戦闘不能

622: 2011/06/01(水) 19:36:17.93 ID:rl0TzEaIo
まとめ

男、所有パーツ:口、眼、胃、髪、脚、右腕、脂肪、虫唾、骨、顔

マント、所有パーツ:心臓、鼻、左腕、肺、汗腺、瞼、他7パーツ


悪党七味

38号、所有パーツ:?

148号、所有技術:万能医

106号、『苦縛ノックバック(リストレント・リストランテ)』、所有技術:?

88号、『まさか逆様(エスリバース)』、所有技術:逆さ喋り

71号、『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』、所有技術:?

55号、『考察する絞殺(マインド・マーダー)』、所有技術:糸遊び=戦闘不能

39号、『師、曰く、氏、曰く(ノウアンサー)』、所有技術:?

670: 2011/06/04(土) 21:48:00.88 ID:DGFyo7sMo
どこかの廃墟

38「55号ちゃんは音信不通」

闇に潜む人数は6

38「職業、人類最強はやっぱすごいね」

1人の男が言葉を吐く

38「こっちの予想してた展『開』とまったく違う」

38「まあ完璧、あの男のせいだよね」

148「……」

38号のその言葉に、1人の男が反応する

71「…志望」

日本刀を腰に携えたその男はそう言った瞬間、その場から消えていた

38「…ま、自由行動って言ったからいいけどさ」

38「君はいいの?殺されちゃうよ?」

148「…71号がどんなヤツかよく知らないが」

148「あの男がその程度で負けるなら、私はここにいないさ」

その言葉に

38「……」

38号は

38「え、なにその信頼、もしかしてゲイ?ひくわー」

148「頃すぞ」

673: 2011/06/04(土) 21:57:36.73 ID:DGFyo7sMo


男「いやー久々の平穏だ、心地いいね」

手「ここんところ、マントとの修行の日々だったからなぁ」

男「アイツは強すぎるんだよ」

男「頂上すぎて、同じ高み上ろうとするとその高低差に耐えられない」

手「斜面じゃなくて面を上れる人間なんているんだな」

男「滅茶苦茶なんだよアイツ」

手「まあ、今日ぐらいはそんなこと忘れてさ、楽しいことやろうぜ!」

男「…そうだな、車椅子ちゃん達にでも会いに行くか」

平穏

ほのぼのとした一日

しかしそんなものが

71「…発見」

ヒーローに許されるわけがなかった

680: 2011/06/04(土) 22:36:47.47 ID:DGFyo7sMo
メシ喰ってましたすいません



男「…いやー平穏って壊れるためにあるんだな」

手「案外、ただのコスプレ野郎かもよ」

行く手には

71「…対峙」

日本刀を腰に下げた長髪の男

その細身の身体には

数々のベルトが巻きつき服…いや装備を成していた

男「あっちの人たちは全員、趣味が悪いのかね」

手「センスというか常識が欠けてるんだろ」

戦闘態勢と距離をとる

71「…先に謝っておく」

頭を下げ

71「楽には殺せないぞ」

682: 2011/06/04(土) 22:51:57.17 ID:DGFyo7sMo
そう言いながら腰の刀に手を置く

71「…」

そしてそのまま、姿勢を低く保ち、停止する

男「…居合いか」

手「このまま逃げるってのもありかもよ?」

男「そんなこと、出来るかよ、悪を目の前にして逃げ出すヤツはもてないぜ?」

手「あれ?お前俺の記憶が正しければ毎回逃げ…」

男「さあ!敵が目の前にいるんだ!気を抜くな!」

手「…」

71「…まだギャグパートなのか?」

少々イラついた風に71号は言う

683: 2011/06/04(土) 23:00:55.63 ID:DGFyo7sMo

男「まあ落ち着けって、その前に自己紹介だ」

男「俺は、男。で、こっちは…」

手「男の手だ、よろしくな」

71「…」

溜息、その後

71「…名は71号、技術は」

その言葉が終わる前に

男「奥義、業火化脚千!」

71号の背後に回りこんだ男の一撃…いや千撃が炸裂

71号は前方へとすっ飛んで行った

男「とっくのとんまにバトルパートだっつぅの」

手「不意打ちやる男がもてるはず無いぞ」

男「えー、普通は出来ないことを平然とやってのければシビレたり、憧れたりするだろ」

手「それやって成功するのは悪のカリスマだけだぞ…」

684: 2011/06/04(土) 23:14:58.23 ID:DGFyo7sMo
71「…」

71号が立ち上がる

男「流石にあの程度じゃ、無理か」

手「そうだな」

71「自己紹介がまだだったなぁ」

71「71号、技術は…」

71「『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』」

そう言った瞬間

男「ッッッッッ!!!」

男に走る激痛

手「お、おい!?男?」

71「悪いなぁ、楽に殺せなくて」

71「安心しろ」

71「氏ねば楽になる」

いつの間にか抜いた刀を鞘に納めつつ

そう言った

693: 2011/06/05(日) 18:54:04.13 ID:OzPUgBA7o
男の中身はある情報で満たされた

男「がッ、なんっだよコレ……」

激痛

痛い、苦しい、理解できない

原因不明のダメージは、男の心を蝕んでいた。

まるで身体を切り裂かれた

いや、真っ二つに切断されたような

いや、殺されたような、苦痛。

脳は赤をフラッシュし、男へ告げる

危険信号を、氏亡予告を。

手「男!切られたのか?それなら右腕を……」

相棒の意見は途中で途切れる。

そう、もし切られたのなら治さなくてはいけない、しかし

694: 2011/06/05(日) 19:04:48.72 ID:OzPUgBA7o
手「切れてない?」

そう、男の身体には

もっと言えばその衣服にすら、

傷などひとつも無かった。

71「痛いだろうな、苦しいだろうな……だが、我慢しろ」

71「これも楽になるためだ」

いつの間にか目の前を歩んでいた全身ベルトだらけの奇妙な男。

その右手に持つのはもっと異質でずっと恐怖、

鞘から解き放たれたその鈍い光の名は

71「こんな名刀で殺されるんだ、ありがたいと思え」

日本刀。

我が国が産み出した、最軽量の兵器。

下ろすだけで頃し、

払うだけで壊し、

伸ばすだけで奪う。

そんな風に、人の命を簡単に操る恐ろしき存在。

695: 2011/06/05(日) 19:15:10.45 ID:OzPUgBA7o




しかし、それも本来の……常識での話。

この男が扱うそれは、まったく別の表情を見せる。

71「斬!」

振り下ろされた刀は

痛みで動けない男の頭上を捕らえ

男「!?」

叩き斬った。

頭蓋骨ごと脳は右と左に仲良く半分こ

中心線をなぞるようにそのまま進み食道へ

進んだ先にある胃を両断、朝食ったものが飛び出してしまいそうになる

大腸小腸、その他もろもろ

五臓六腑の半数以上を活動停止させ

肉も切って骨も断たれた

696: 2011/06/05(日) 19:17:02.96 ID:OzPUgBA7o





























そんな風な痛みだけが男を襲う

697: 2011/06/05(日) 19:27:16.77 ID:OzPUgBA7o
男「がぁああああああああああああ!!!!!!」

71「まだ氏ねないのか、不幸だなお前も」

手「お前!男に何をした!」

この異常な事態に説明を求める

71「……まぁ、話してやってもいいか」

71「感謝しろ?俺は勝ちを確信すると饒舌になるんだ」

日本刀を鞘に収め動いたことで少々ずれた自分の服装を正す

71「一言で表すなら」

71「俺は過ぎた人間なのさ」

手「過ぎた人間?」

71「そう、職業、人類最強と同じようなものさ」

やれやれ、と身振り手振りで自らの気持ちを表現する

71「俺の技術は…まあ言うなれば人頃しだ」

699: 2011/06/05(日) 19:37:30.27 ID:OzPUgBA7o
71「小さい頃から、刀、剣、刃ってモンが好きでよ。男なら誰だってあるだろ?そーいうこと」

男「……悪いが俺は肉体派だね、仮面ライダーが好きなんだ」

手「男!」

何時の間に意識を取り戻したのだろうか

71号の質問に食いつく

71「……仮面ライダーだって武器使うだろ、リボルケインとか知らねーの?」

71「ま、いいさ、兎にも角にも、俺は必然的に剣の道にのめり込んだ」

71「剣道、鍛治、板前、暗殺、なんでもやったさ」

そこに剣が、刀が、刃があるなら。と付け足す

71「その内、俺はありとあらゆる事を極めてしまった」

顔を押さえ、蹲る

71「俺の剣技は全てを超越してしまったんだよ!そう」

一瞬で刀を抜き放ち

今度は、男を上半身と下半身に分けるような

700: 2011/06/05(日) 19:49:03.28 ID:OzPUgBA7o
痛みだけが襲った

男「がぁあアあああァあぁアアアァあああ!!」

叫ぶ男を哀れむ瞳で見つめながら

中断されていた会話を再開する

71「そう、俺の斬るものは、あまりにも切断面が綺麗すぎて」

71「血も涙も流さず、直ぐに元通りになってしまう」

71「肉は斬られたことに気づかず、骨は斬られたことを覚えておらず、ただ痛みだけがお前を襲う」

71「肉も切れず、骨も断たせない、魂を削るだけになっちまったんだ」

刀を納める

71「それが俺」

71「それが技術」

71「刀も、剣も、刃も…俺の技術では全てが同一の結果だけしか生み出さない」

71「全てが一緒、故に名は」

71「『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』」

その笑みは、鈍く光った日本刀のような重みと鋭さがあった

703: 2011/06/05(日) 20:12:52.13 ID:OzPUgBA7o
手「男!逃げねぇとダメだ!」

男「わかっている!だけど…」

71「身体が動かない、だろ?」

そう、身体が動かない

まるで『考察する絞殺(マインド・マーダー)』に縛られたように

71「一応、肉体を切っているわけだからな、完全に戻るまでは言うこと聞かないぞ」

71「無論、その間に地面に思いっきり叩きつけたりすればバラバラにもなるが…」

71「どうする?自ら氏ぬか?」

男「…お断りだ」

71「そうだろうなぁ、自分で氏ぬなんてしたくないよなぁ」

71「安心しな」

71「俺が頃してやる」

日本刀が煌き

幾つもの閃を産み出す

男「ッが!アァあ!うぎぃいいいいい!」

704: 2011/06/05(日) 20:32:42.95 ID:OzPUgBA7o
動けない者への暴力

いや、この場合は

71「まだ氏なないか」

男「…ふぅ……ふぅ……」

一方的な殺人

71「まだショック氏しないのか」

71「精神力が強いのはいいことだぞ、こういう時以外は」

あれだけのダメージを男に与えたというのに

手に持つ刀には血の一滴も付いていない

男「…ッ奥義、災鬼感髪!」

髪を伸ばし、71号の刀を絡め取る

しかし

71「忘れたのか?俺の技術は、全てを通過する」

その髪をすり抜け、次の殺人剣を男に浴びせる

男「がぁあああああああああ!!!」

71「なんでも斬って、なんでも通過する、俺の技術に防御なんていう逃げ道はない」

705: 2011/06/05(日) 20:52:04.20 ID:OzPUgBA7o
男「クッ!一時離脱!」

近くの電柱に髪を巻きつけ動かない身体の代わりに髪を使い

強制的に逃走を開始する

手「逃げるのはモテないんじゃねーのか?」

男「氏んだら元も子もねーよ!」

あっという間に見えなくなる

71「…逃走」

71「助けを求めに行くのか、職業、人類最強に」

71「まあ」

……

88「!ねどけだんなりむのなんそ」

マント「突然、休日を破壊した罪は重いぞ?」

88「!んめごんめご」

88「!ようなぐつてっもをし」

88「?ね、でしのみきんろちも」

724: 2011/06/07(火) 21:46:26.34 ID:Bs5hEPtWo
マントを羽織った大男は空き地である少女と対峙していた

マント「殺害?この俺をなぁ、面白い冗談だ」

緑地に白のラインが入ったジャージを着るその少女に言葉を投げかける。

その少女は黒髪のショートを七三に分け、数個のヘアピンで髪を留めており

そこから覗く弾けるような笑顔は誰が見ても癒されるであろう

可愛らしい女の子。

問題は

88「!ないしれうらかいなとこたけうしたわ?うそ」

逆立ち、逆さ喋りの稀有なスタイルを持っていることだった

88「?だんたっゃちしくどいかりべゃしさかさうも、てっ」

88「…もかくっょしとっょち」

マント「仕方、無いことだなんたって」

マント「職業、人類最強だぞ?」

726: 2011/06/07(火) 21:57:00.02 ID:Bs5hEPtWo
88「?いだうょち、うごうょしのそあゃじ」

88「!よるげあをよいめのうょじいさういとたれさろこにしたわにりわか」

マント「試合、いや頃し合い」

88「!しいか」

声が空に響き、一瞬で二人の姿が消えた

88「!くっきくつき」

逆立ちの体勢からマントの顔に向かってスパイク付きの靴底が放たれる

マント「激痛!」

モロに食らい、顔面を削られる

88「!るげあてしにしぶおつか」

しかし

マント「一撃、それで貴様を捕らえられるなら十分だ」

その足首を掴み

88「?!ぁたいう」

片手で軽々と88号を持ち上げる

727: 2011/06/07(火) 22:08:32.47 ID:Bs5hEPtWo
そのまま

マント「墜落!」

大地へと叩きつける

もちろん顔から

88「!んふゃぎ」

首があり得ない角度に曲がりつつも、そこからマントの腕へ脚を使い絞め技をかける

マント「無駄!」

マントは身体ごと回転、

88「!!いだいぢだいぢあぢいあいぢあぢあぢいだいあぢいだいあい」

地面へ何度も叩きつけ削り、拘束を解く

勢いそのまま投げ飛ばされた88号は数度叩きつけられ、数十メートル先で停止する

マント「激痛、いや狂痛だろうな」

閉じていた瞼を開けながら言う

マント「全身、言うならば服も皮膚も防御だ、あれだけ密着していればこその裏技だが」

88号に動きは無い

マント「奥義、地獄の渦瞼」

728: 2011/06/07(火) 22:18:14.12 ID:Bs5hEPtWo
88「!!!!!ははははははははははゃき…」

突然起き上がり、と言うか起き逆さがり

88「!だゃちぐゃちぐおかのしたわ」

その顔は抉れ、捲れ、ズタズタ

笑顔は歪み

明るい印象など微塵も感じられない

なにより

88「!いだいぢだいぢぢあぢいあぢぢあ!いっだいだいっだいいたいたいたいたいたい」

彼女は今

狂気に満ちていた

マント「理解、不能イッたか?」

729: 2011/06/07(火) 22:28:21.87 ID:Bs5hEPtWo
88「!のくイらかまイ、ようがち」

笑顔

88「!てれくてきできすろこうとがりあ」

感謝

88「!てれくてせらこおをしたわうとがりあ」

憤怒

88「!てれくてれまらうにしたわうとがりあ」

憎悪

88「うとがりあ」

無表情

88「てれくてけかをかふへのうのしたわ」

恍惚

マント「悪寒、なんだ貴様」

逆立ちの身体がビクンと震える

88「イくイくイくイくイくイくイくイくイ!イかんげ」

88「!!!!!!うううううううううううぅぅぅぅぅぅぅくッイ」

一際大きく身体がしなり

88号はその場にへたりこむ

730: 2011/06/07(火) 22:30:32.28 ID:Bs5hEPtWo
マント「変態、か」

マントがそう呟いた瞬間

88号の身体が動き

起き上がる

88「………」

その姿を見て

マント「疑問、なぜだ」

幼児用の間違い探しのような、一目でわかる歪さ

マント「貴様、なぜ」

そう88号は

マント「背筋、正しく普通に立っている?」

逆立ちをしていなかった

88「『まさか逆様(エスリバース)』」

88「改めて御機嫌よう、そしてありがとう」

88「貴方のおかげで私は今、完成しました」

抉れた笑顔は

なぜか明るさを感じた

769: 2011/06/10(金) 20:40:08.53 ID:anOIFf9ro
マント「完成?どういうこと…」

「だ」

と、最後の台詞を言うことはできなかった

88「まあ、こういうことです」

一瞬で距離を詰める、

88号の右手がマントの腹を貫き、そのまま横に薙ぐ

皮膚と肉、骨を突き破り臓物を引きずり出す

マント「グロッ…」

88「驚きすぎて口調忘れてますよ」

マント「貴様、だって随分様変わりしているぞ」

そのような戯言を交わしている間に、マントの再生が始まる

88「させませんよ」

そう言うと再生の始まった箇所へ左手へと握り込んでいた石をその肉林の中へ背槌する

マント「不覚!」

88号の思惑を察知し、手から「爆弾」を飛ばす

771: 2011/06/10(金) 20:47:00.02 ID:anOIFf9ro
88「食らいませんよ、それは」

大きく後ろにジャンプして、これを避ける

次の瞬間、起きるのは大爆発

地面が抉れ、粉塵が舞う

88「クツキック」

そしてその粉塵を掻き消しつつ、キックがマントにヒットする

ヒットした場所は、先ほど石を埋め込んだ箇所

あまりの衝撃に、体内で石が暴れ周り、傷つけていく

マント「苦痛…」

マントはその痛みに耐えつつ、88号の足首を掴む

88「あらら」

マント「二度、になるが。一撃、それで貴様を捕らえられるなら十分だ」

マント「墜落!」

地面へと88号が近づく

772: 2011/06/10(金) 20:52:19.69 ID:anOIFf9ro
しかし

88「今度は簡単にいきませんよ」

腕から地面につき、自らの足に力を込める、すると

マント「驚愕!」

投げていたハズのマントが、今度は投げられ

勢いを落とすことなく、88号によって地面に叩きつけられる

88「食らいなさい」

そして石を埋め込んだ箇所…今度は背中からだが

幾度となくそこを踏み、体内からマントを頃す

マント「憤怒、しつこい!」

背筋を使い、自分の背に潜む88号を掴もうとする

それをまるで知っていたかのように、そこから跳び、距離をとる。

ようやく障害が去った所で、己の再生を阻害する異物を取り除く

マント「阿々ッ!」

血まみれの石が地面を転がる

マント「不氏、頃しの方法か」

773: 2011/06/10(金) 21:00:17.05 ID:anOIFf9ro
88「ええ、異物があれば再生はできないと踏みましたが正解のようですね」

再生すべき箇所に既にモノが埋まっていれば

そこに肉は生まれない

88「それに、石を振動させれば相当なダメージが生まれる」

マント「水泡、へと帰すぞ。こうして俺が取り除くだけでな」

88「なら、取り除く隙を与えないだけです」

そして、正面からぶつかり合う

88号の拳とマントの脚がぶつかり合う

88号の脚とマントの額がぶつかり合う

88号の額とマントの拳がぶつかり合う

そして全ての結果は同一

マント「粉砕」

88「ええ、貴方の方がですけど」

マントの身体は地面を赤く染めながら宙を舞い

やがて、止まる

マント「不明、なんだお前は……私は職業、人類最強だぞ……」

最強は寝転びながら、逆さまの88号を見上げる

88「?らかだ」

775: 2011/06/10(金) 21:29:31.04 ID:anOIFf9ro
ここで、マントの強さについて語る必要があるだろう。

職業、人類最強の強さ

それは所有しているパーツの多さ、強さというのもあるが

それ以上にその身体能力の高さがある。

人類で頂点

比喩でもなんでもなく、

100mのタイムは三歩

握力は計測器を壊し

反復横とびでは三人に分身した

それが彼。

もちろん、その力には秘密がある。

普段、人間は脳の数パーセントの力しか発揮できていない。

しかし、例外がある

ひとつは病気、障害でさらにその数割しか力を発揮できないもの

そしてもうひとつ、その逆

数パーセントなんていうケチなものではない

100パーセント、あまり無く

人間のできうること全てを行えるもの。

そしてマントはその後者

人間の全てを行える存在。

故に職業、人類最強。

恵まれに恵まれた存在、それが彼なのである。

782: 2011/06/11(土) 22:23:21.08 ID:+fp6SZsxo
だから

人間にできることは全てできるからこそ

今の状況はありえない。

道具等に頼れば、人間以外の力を使えば、それこそ簡単に彼を超えることは出来るだろう

彼の拳は決して戦車を越えるような一撃を生み出すことはできないし

いくら早くても音速の壁を破ることはできない

無論、神のパーツの前では、彼はただの人間にすぎない

そう、彼と互角以上の戦いをできるということは

対峙しているものが人間ではないということ

たとえば神のパーツを所持するもの

たとえばヒーロー

たとえば糸

彼が苦戦するのはいつだってそういう相手

784: 2011/06/11(土) 22:33:26.27 ID:+fp6SZsxo
そういう前提があるからこそ

武器を持たぬ少女が彼を超えることはおかしいのだ

それこそ

少女が

88号が

88「ほら、寝転んでないで絶ってください……もちろん命を」

人間を超えた存在でない限り

マント「否定、絶ちはしないが立ってやる」

職業、人類最強を超えることはできない。

88「『まさか逆様(エスリバース)』」

88「そうですよね、まさかの、さかさまの現状ですよね」

88「本来、あなたに勝てる人間はいないんですから」

88「私が勝っているのは、本来ありえない、さかさまなんですから」

785: 2011/06/11(土) 22:55:32.46 ID:+fp6SZsxo
マント「技術、か」

88「まあ、そうですね」

マント「不明、まさか結果を逆転させる技術ではあるまいな、逆さまだけに」

88「運命に干渉する技術?マンガの読みすぎじゃありませんか」

88「そんな超能力の領域に達していたら、神にでもなってますよ」

88「私の技術は逆さ喋り…それだけです」

マント「納得…はできないな」

そう、唯一マントを超えることができる手段があるとするなら

それは技術のみだ。

だが、彼女は言った

正すために言い切った

突き放すように言い放った

言い忘れたことなどひとつもない

彼女の技術は最初からひとつだけ

786: 2011/06/11(土) 22:57:37.77 ID:+fp6SZsxo
「逆さ喋り」

それは技術ともいえない、一発芸に近い存在

事実、彼女は悪党七味で最弱の技術だ

立ち位置はマスコットキャラが一番似合う

そんな存在

けど

88「納得しなくていいですよ、力で無理やりさせますから」

今、彼女は悪らしく歪んだ笑みで

悪らしく決着がついている相手を嬲り

悪らしく弱者を踏みにじる

88「!!はははははははははゃき」

逆さまの立ち位置だった

787: 2011/06/11(土) 23:00:24.98 ID:+fp6SZsxo
数十分後…

マント「納得、できないな」

嬲られボロボロ体内の半分を異物だらけにされても

職業、人類最強は考えを曲げなかった

88「本当に面倒臭いですね…」

不氏頃しの方法はダメージを与えても頃すまでには至らなかった

このまま海にでも放り投げようかと考え始めた時

マント「提案、だ」

不意に投げかけられた交渉

88「なんでしょう」

マント「職業、人類最強…それが俺だ
     だから、お前は人間と俺が信じている限り
     俺は氏のうにも氏ねない」

88「つまり」

マント「理由、人間を超越した理由、それさえ教えてくれれば」

喜んで氏んでやる

788: 2011/06/11(土) 23:02:26.25 ID:+fp6SZsxo
88「…ふうん」

ここで教えて素直に従う可能性は低いだろう

答える意味はないように思える

だが

見てみたい

心のどこかで、自分は負けないとまだ信じているコイツが

一気に突き落とされる様を

最強が

最弱に

逆さまになる瞬間を

88「いいでしょう、教えてあげますよ」

88「『まさか逆様(エスリバース)』」

88「逆転証明開始です」

789: 2011/06/11(土) 23:03:33.00 ID:+fp6SZsxo

…小さい頃から蔑まれてきた

生まれながらの下の下の下

最下位で始まった人生

88「私はあなたと逆なんですよ」

マントは首をかしげる

88「あなたが最初から最強、脳の100パーセントを使えたのなら私はまったく逆」

88「生まれながらに数パーセント……いや、それ以下、マイナスの領域」

88「私は生まれた時、人間ではなく動物でした」

790: 2011/06/11(土) 23:05:32.69 ID:+fp6SZsxo
なぜだかわからない

だってそんなことを考える脳すらなかった

自分が不幸だということすらわからなかった

脳を弄繰り回して、ようやく小学生以下の脳みそ

漢字なんてひとつも分からなかった

88「馬鹿なりに考えたんでしょう、みんなと友達になりたい一身で見つけて身に着けた技術」

88「それが逆さ喋りと逆立ち」

88「逆さまになれば自分が天才になれるとでも思ったんでしょうね」

みんなに避けられる存在からみんなに愛される存在に

88「結局それでも、私は『動物』から『見世物』になっただけでしたけど」

笑いながら言う

791: 2011/06/11(土) 23:07:15.02 ID:+fp6SZsxo
88「そんな、ある日」

88「私は滑って、鼻を打ったんです」

元々許容量の少ないできそこないの脳みそ

それを弄繰り回してようやく手にした小学生程度の思考

それを限界まで使い手に入れた技術

もはや88号の脳みそに、他の情報が入る余地などなかった

そこに入った新たなデータ

「痛み」

88「限界を超えた私の脳は」

88「強制終了したんです、それこそPCのように」

88「脳を使い切って氏ぬ…バカにはお似合いの氏因ですよ」

792: 2011/06/11(土) 23:08:10.48 ID:+fp6SZsxo
でも氏ななかった

代わりに

88「私が起動した」

普段は決して動かない脳

それが「氏」に直面し

動いた

強制的に

使われていなかった部分をすべて

マイナスから100に

逆さになった

793: 2011/06/11(土) 23:11:22.69 ID:+fp6SZsxo
88「私にとってもまさかの出来事でしたよ」

88「文字通り、無の意識であった私が出てきたんですから」

88「マイナスから100に!脳の使用率は実質120パーセント!」

88「私は!動物から化物になったんです!」

それが職業、人類最強を超えた理由

88「…そして、私は見つけた」

「逆さ喋り」

「逆立ち」

「痛み」

88「この3つのキーワードによって私が呼び出されることを!」

88「バカが天才に逆転することを!」

88「『まさか逆様(エスリバース)』!」

88「それは技術でもなんでもない、動物が自分が不幸だと知ることのできた」

88「ただの…奇跡です」

表情は歪んでいた

794: 2011/06/11(土) 23:13:19.51 ID:+fp6SZsxo
今回の投下終了。

次はいよいよ攻略

と思いきや88号のサクセスストーリーになるかもね。

831: 2011/06/17(金) 23:23:05.23 ID:+w5tqTF6o
職業、人類最強が『まさか逆様(エスリバース)』と対峙している一方でコチラは

男「はぁ……はぁ……なんかもう二週間ずっと動いてたみたいに疲れた」

手「おいメタ発言」

71号から逃れた男は人の少ない、未開発の地へと移動していた

男「マントとの連絡は……まだ取れないか」

手「あっちも交戦中かもな」

男「だとしたら相当マズイな」

71「そうか、マズイのか」

男「!?」

いつの間にか、まるで影のように71号は背後に忍び寄っていた

脂肪をエネルギーに変換し、一気に71号と距離をとる

71「お久しぶり、二週間ぶりに会ったみたいだな」

男「……メタ発言はそこそこにしないと嫌われるぞ?」

71「殺人者が今更好かれた、嫌われたも無いだろ」

そう言いながら、71号は右手に握る刀の切先を男に向ける

71「殺人再開だ」

鈍く怪しく輝くのは

刀か71号の瞳か

男「ならこっちは」

男「抵抗開始だ」

837: 2011/06/19(日) 00:04:31.39 ID:3E0GSZQXo
71号と男は距離を保ったまま、睨み合う

男(アイツの唯一の弱点は射程距離だ)

先ほど、何十回も切り刻まれたのは

男があの日本刀の領域に侵入したからだ

男(大きさは目測だが約90cm)

男(距離を詰められないようにしながら、遠距離攻撃中心に攻めるか)

男「奥義、酸化射!」

空へ向けて大量の酸を放つ

当たれば行動不能とまではいかなくとも、刀を振ることはできなくなる量

しかし71号は

71「風!」

刀を薙いだ風圧で、これらを全て男の方向へ圧し戻した

男「うおっ!?【喰え】!」

手「久々登場!」

手のひらへそれらは吸い込まれていく

838: 2011/06/19(日) 00:14:45.24 ID:3E0GSZQXo
一瞬

たった一瞬だった

だがそれは

71「余所見は危険だぞ」

彼にとって十二分の時だった

男「しまっ!?」

一瞬の隙を突かれた

いや

男「ッ!」

斬られた

71「言っただろう?俺は極めすぎた男だ、この程度できないでどうする」

男「ッオラァ!」

神の脚を使い地面を滑るように移動し

71号の背後へ回る

男「奥義、業火化脚千!」

840: 2011/06/19(日) 00:39:17.15 ID:3E0GSZQXo
背中へと蹴りがヒットし

71号が空へ投げ出される

手「やったか!?」

男「おいフラグ……まあ、無理だな」

71「ああ、ご覧の通り生存してる」

男「全身のベルトがクッションになってやがる、物理攻撃は無理だな」

71「伊達や酔狂でこんな格好してないさ」

ベルトだらけの奇抜なファッションは

肉体を守る強固なアーマーだった

71「遠距離も近距離も俺には無意味だ」

71「だからおとなしく」

71「氏んでくれ」

851: 2011/06/19(日) 21:55:13.52 ID:3E0GSZQXo
71号は姿勢を低くする

71「暗!」

叫びながら、71号は地面に刀身を突き刺す

71「突!」

刀を地面に潜らせたまま、男に突進してくる

男「はぁ!?地面まで切れるのかよ!?」

刀の領域が男と触れた瞬間、地面に隠されていた牙が姿を見せる

71「斬!」

下から上へと殺される衝撃

男「ッ!」

追撃を防ぐために後ろへ跳ぶ

71「複合殺人剣、土竜昇り」

手「移動するのにも障害物がない刀……無茶苦茶じゃねーか」

852: 2011/06/19(日) 21:58:06.83 ID:3E0GSZQXo
そう、刀を持つ者の敵とは障害物

敵を叩き伏せるためには素早く領域内へ入れることが重要であるが、

移動や攻撃の際、刀を邪魔するものが世界にはある

たとえば決闘にうってつけな竹林

たとえば観戦する人

たとえばその身に背負う重力

現代は更にもので溢れている

そうして90cmもの大きさを持つ兵器は

その強さの要である大きさがデメリットとなった

ただのガラクタに成り果てているのである

行動も、移動も、邪魔でしかたがない

だからこそ、領域へ相手が入るのを待つ型

「居合い」等が表に出てきたのだがそれはまた別の話

853: 2011/06/19(日) 22:01:01.19 ID:3E0GSZQXo
71「だが、俺の刀を邪魔するものは存在しない」

71「あるなら通過するだけ、重ければ地を斬り収めるだけ」

71「人は刀の邪魔をしてはいけないし、刀は人の邪魔をしてはいけない」

71「刀と一体になるとはそういうことだ」

71「それを実現できる俺は最強の剣士さ」

男「梁山泊でも行っておけよ」

71「俺が人に教えられるのは」

71「恐怖だけさ!」

刀を思い切り薙ぐ

71「風!」

突風に煽られ男は姿勢を崩す

854: 2011/06/19(日) 22:04:00.47 ID:3E0GSZQXo


71「風!」

71「風!」

71「風!」

男「うおっ!?」

手「目が開けてられねぇ!」

男「無いだろ!」

次々繰り出される風の威力は高まり嵐を巻き起こす

71「複合殺人剣、雀落とし」

その風に乗り驚異的な跳躍をし

移動もままならない男へと

刀が振り下ろされる

855: 2011/06/19(日) 22:07:31.10 ID:3E0GSZQXo
勢いそのまま、地面を斬り一回転

71「転!」

斬りつけた箇所をなぞるように斬る

71「発展殺人剣、鯵開き」

男「クッ!」

開いた口へと

71「突!」

刀が突き刺さる

男「!?」

71「巻!」

持ち手を捻り、喉を掻き回す

71「風!」

飽きたおもちゃの様に男を飛ばす

男「クソッ……傷が残らないから手で回復することもできねぇ」

手「ふざけた強さだ」

71「真剣さ」

71「二つの意味で」

877: 2011/06/25(土) 20:23:13.23 ID:g/WNKfLVo
そう、彼はいたって真剣

しかし至った強さは神剣としか言えない領域だった。

もっとも神の力を否定することで生まれた技術だ、

神剣などとを言えば71号はすぐに否定するだろう。

既に神など超えている、と。

超人ではなく超神

人を超しただけでなく、神をも超した。

そんな切れ味鋭いジョークみたいな常套句を

勝利に確信した彼は喜々として振るうのだろう。

71「さて、第五十七回目の殺人だ」

目の前の男を氏体に仕立て上げた後に。

879: 2011/06/25(土) 20:31:39.59 ID:g/WNKfLVo
71「斬!」

叫ぶ、凪ぐ

一閃が一千煌き

男の視界を潰すと共に全身をかき回す。

71号の振るう刃の前では服も皮も骨も肉も意味を為さず

痛みだけをそこに置いていく。

男「がッ!」

生涯で1度として味わうことの無い氏を無理やり与えられ

男「何度も、何度も頃しやがって、痛みで狂うかと思ったぞ」

その上、一撃氏ではないという性質が悪い太刀である。

名刀であろうと銘刀であろうと

快刀であろうと怪刀であろうと

魔刀であろうと纏う刃は同一になるだけの技術。

ただちょっと

71「俺が極めすぎたからな、仕方ないことなんだよ」

男「ムカつく野郎だ」

技術を打ち破る術は果たしてあるのか

880: 2011/06/25(土) 20:50:04.35 ID:g/WNKfLVo
男「上等だ……いや、上刀か?」

男は微笑み

熱く素晴しく輝く瞳を

71号にぶつけた

71「なんだお前は?マゾなのか?」

屑を見るような瞳でそれを返す71号

手「流石の俺もそれはひくわー」

手のひらを返す右手

男「違ぇよ!」

シリアスな場面でもツッコミは忘れない

男「ただ、当たり前のことだろ」



男「ピンチになればなるほど、逆転劇は盛り上がるのが相場だろ」



キメ顔なのかドヤ顔なのかはともかく

ヒーローの心は折れていなかった。

たったそれだけなのに

71号は

71「……」

無口になった

881: 2011/06/25(土) 21:03:36.21 ID:g/WNKfLVo
幾度も頃した

何度も頃した

多々頃した

ただ頃した

なのに目の前にいる、自分よりも若いであろうこの男は氏んでいない

肉体的ではなく

精神的に

今、こうして考えているこの瞬間ですら逆転の策をこの男は考えているのだ

圧倒されても起き上がり

その手を振るう

その足で払う

その知識を振舞う

まるで

まるで自分が倒されるためにいるような

まるでこのヒーローのために世界が、シナリオが組み込まれているような

絶対に勝てない

そんな言葉が過ぎる

883: 2011/06/25(土) 21:14:44.77 ID:g/WNKfLVo
男「どうした、無口になっちゃって」

立ち上がる

男「今更だが、俺は何度斬られても立ち上がるぞ」

殺されようとも

男「氏なない限りは立ち上がる」

そうじゃなければ

男「ヒーローなんて名乗ってられねぇんだ」

男が一歩前へ

それだけの動作で71号は刀に手をかけ、抜刀の構えをとる

男「お前の刀でも斬れないものが目の前にあるんだ」

もう一歩

男「覚悟しろ、俺は」

さらに一歩

男「違うな、俺達は」

耐え切れず

71「斬!」

71号の技術が男を断つ

しかし

男「ッ……テメェを倒すヒーローだ」

男は、立つ

倒れることなく、その足を地に縛り付けるように力を溜め込む

そして

71「!!」

驚愕する71号の顔に、右手を沈ませる

手「とりあえず一発、ようやくダメージだな」

跳んでいく71号を見ながら、手は呟いた

884: 2011/06/25(土) 21:58:13.46 ID:g/WNKfLVo
71「……」

全身に纏うベルトのお陰で地に叩きつけられた衝撃は逃せたものの

むき出しの顔へ直接与えられたダメージはどうしようもない

無論、ダメージの程度はそれほどでもないが

通ったという事実

その事実が71号の心を沸々と湧き立たせていた

71「糞、糞、糞!!!!」

怒りはお世辞にも綺麗とは言えない言葉へ変換され口から吐き出される

吐き出された言葉は

先ほどの自分自身への言葉でもあった

なにがヒーローだ

なにがテメェを倒すだ

なんでそれ如きでビビッてるんだ

俺は

71「……極めたんだ、俺は」

言い聞かせ、心を落ち着かせる

71「始めるぞ、71回目の殺人だ」

887: 2011/06/25(土) 22:34:05.87 ID:g/WNKfLVo
71号が立ち上がる姿が見える

手「で、どうするんだよ?アイツの日本刀を奪おうにも触れられないぞ」

男「ああ、刀は触れれば切れるけど刀を奪わない限り攻略は無理だろうな」

手「積んでるじゃん」

男「いや、攻略法はある」

問題は

71「斬、斬、斬、斬、翔、巻、巻、突、暗、斬、風、風、風、風、翔、斬、突、斬、突、払、風、暗、巻、巻、巻、斬、翔、巻、暗、斬、斬、斬、斬、巻、斬、翔、巻、暗、斬、暗、斬、風、斬、突、斬、突、払、風、暗、巻、翔、翔、翔、翔、斬、斬、斬、斬、暗、暗、暗、暗、突、突、突、突、風、風、風、風、翔、斬、突、斬、突、払、風、暗、巻、斬、巻、斬、巻、斬、翔、巻、斬、斬、斬、払、風、暗、斬、翔、巻、暗、斬、斬、斬、翔、翔、巻、暗、巻、暗、斬、斬、風、翔、斬、斬、翔、巻、暗、斬、斬、斬、翔、翔、斬、斬、風、翔、斬、突、斬、翔、翔、風、翔、斬、突、斬、突、払、風、暗、風、翔、斬、突、斬、突、払、風、暗、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬、斬!」

71「超絶完全殺人剣、人頃し」

男は吹き飛ばされながら言った

男「アイツはやっぱり強すぎる」

890: 2011/06/25(土) 22:59:18.59 ID:g/WNKfLVo
71「飛!」

地面に埋めた刀を足場にし、飛ばされた男の前へジャンプする

男「奥義、災鬼感……」

71「風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風、風!」

71「災害再現殺人剣、蟻飛ばし!」

71号を捕縛しようとした髪の毛は逆に風に操られ男の視界を塞ぐ

男「なっ!?」

71「突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬、突、斬!」

71「多量虐殺殺人剣、家畜潰し!」

最早常人の目では捕らえられない速度での殺人が行われていく

しかし血は一滴も飛び散らず、肉は一片たりとも地を汚すことは無い

極めてクリーンな戦場がそこにあった

だが現在進行形で殺されている男の精神は

男「ッッッッッッッッッッ!!!!!!!」

完膚なきまで微塵も残さず殺されていた

71「一回ぐらいは氏んでみろ」

言いながら、71号はもう一度男を斬りつけた

892: 2011/06/25(土) 23:07:12.24 ID:g/WNKfLVo
男「……」

男は動かず喋らない

71「かつて、弁慶は立ちながら氏んだと言うが」

目の前の肉を見つめる

71「呆気ない、結局この程度か」

後ろを向き

刀を納め

そのまま立ち去ろうとする

しかし

前に進めない

いや

後ろへ引っ張られる感覚

男「……勝手に頃すんじゃねーよ」

71「!?」

驚愕が71号の顔を支配する

893: 2011/06/25(土) 23:45:18.61 ID:g/WNKfLVo
男「どうにか巻きつけれたみたいだ」

目を凝らしてよく見ると

男から伸びた数本の髪が71号の持つ鍔に巻き付いていた

71「クソッ!」

男の意図に気付き、髪を素手で千切ろうとする

男「無駄だぞ、硬度最上級で設定だからな」

キリキリと締め付ける音が強くなる

男「砕け散れ!」

男がそう叫ぶと

71号の持つ日本刀、その一部分である鍔と柄は砕け散った

71「!!」

くるりくるりと宙を舞う日本刀はやがて地面に突き刺さった

71「……」

男「どうした?手に取れよ」

地面に突き刺さった日本刀……いや、刃を凝視したまま71号は動かない

男「思った通りだな、『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』」

男「お前は本当に極めすぎたんだ、極めすぎた……馬鹿さ」

894: 2011/06/26(日) 02:10:54.63 ID:ImGkqDq9o
71「何を言っている……」

男「お前の技術は強制発動、手に持つ刃は全てを切り裂く……そうだろ?」

71「……」

男「だってON、OFFできたら俺を殺せているはずなんだよ既に」

そう、でも生きている

男「するとおかしなことが生じる」

手「手に持つ刃が全てを切れるというのなら」

男「なんで切れない、鍔と柄」

71「!!」

男「お前の技術には切れないものがあるんだ、それが鍔と柄」

男「じゃなきゃ、全ての刃を均一に全てを切る刃に変える技術は……容易にお前の手を切り刻むハズなんだよ」

振るった瞬間、柄と鍔を切り刻んで

男「騙されちまったぜ、『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』」

男「刀ってのは、刃と鍔と柄が寄せ集まった存在だ」

男「剣だって柄と刃が合わさった姿だ」

男「そもそも刀も剣も、分ければ同じ刃になるんだよ」

男「技術なんてなくとも、元から全ては同一なのさ」

男「だからこそ、お前の言うことが真実ならば、その刃は付属品である柄や鍔を切り刻むべきなんだよ」

895: 2011/06/26(日) 02:15:09.68 ID:ImGkqDq9o


71「……」

男「おそらくお前の技術は、そうやって刃と共にあって完成する存在は切り刻めないんだろ」

男「だから、お前は日本刀を使ったんだ、刃じゃなくて日本刀を」

男「持ち手がない刃は、振るった瞬間、お前の手を傷つけるからな」

地面に刺さった刃に目をやる

男「もうあれに、お前は二度と触れることは出来ない」

男「結局、極めすぎたがために刃を扱えない、とんだ馬鹿なんだお前は」

言葉を投げかけられた71号は俯く

71「そうかそうか、これでお前の勝ちで、俺の敗北か」

地面にささった刃に向かい歩を進める

71「悔しい悔しい、剣士が刃に負けるとはとんだ笑い話だ」

いや、よくある話か、と自分の発言を否定する

71「でもなぁ」

71号は呟きながら、実に饒舌に

71「それはお前の理論が正しければだろ?」

地面に刺さった刃を男に投擲しつつ、そう反論した

896: 2011/06/26(日) 02:18:47.47 ID:ImGkqDq9o
今日の…というか二日跨ぎましたが投下はここまで

>>950付近で次スレ立てると思います

899: 2011/06/26(日) 09:15:40.97 ID:ImGkqDq9o
男「!?」

放たれた刃は技術を伴い

男を通過し、また地面に突き刺さる

男「なんッ、で……」

71「知ったかぶって、知識さらして、御託並べて追い込んで」

71号は刃を取るため、歩む

71「それで解決するんだったら、名探偵なんてこの世にいらねぇよ」

そして、刃を手に持つ

71「お前がガキだから仕方ないことだ……というより人間だからな、間違いや勘違いなんて誰にでもあることさ」

綺麗な、傷一つないその手で

71「けど、仕方ないことだからって許されることじゃない」

71「それは人間全員が平等に背負うリスクさ、リスクがあるからこそ人間は失敗を恐れるし、成功を愛おしいと感じる」

71「だから、お前が」

71「刃全てが刃と思いこんで、ここで氏ぬのはどうしようもなくお前のせいでもあり、避けられなかった大ポカなんだろうさ」

手に持つ刃

900: 2011/06/26(日) 09:25:46.29 ID:ImGkqDq9o
本来、鍔や柄がある部分は最早刃とは言えない、鉄そのままといった無骨な姿だ

男「!?」

71「俺だって、一部分が刃だからと言って、その他全て」

71「この刃とは形容し難い、程遠い、相容れない、この部分まで同一にはできないさ」

71「俺が同一にできるのは、刃が刃たる部分だけさ」

刃は高く掲げられ、陽光を反射し

地に伏せる男へ届ける

それはまるで貧者を救う天使の光のようであり

愚者を裁く神の雷のようでもあった

71「お前は先ほど、刀を柄と鍔と刃の集合体といったがな」

71「刃だって刃である部分と刃でない部分が必ずあるんだ」

71「それこそ刀を作るために必要な、強度を持たせるために、柄と鍔を合わせる為に」

71「刃を人が扱うために、絶対必要なものなんだよ」

71「そしてそんなことも知らず、俺を追い詰めたと考えたお前を俺は軽蔑したりしない」

71「寧ろ感謝しているのさ、というか当たり前だよな」

71「お前は結局、最終的に、ピリオドを付けるならば」

71「雑魚だったんだよ」

901: 2011/06/26(日) 10:28:02.89 ID:ImGkqDq9o
男「……おいおい、間違ってるなら正してくれよ、それが年長者の役目だろ」

攻略法が潰れた弱みを表情に出さず、嘯く

71「氏ななきゃ治らない馬鹿だっているだろう?」

男「……」

手「たしかにな」

全く持ってその通り

恐らく

男「俺は氏なないと治らない馬鹿だろうな」

なんせ

まだ諦めていないのだから

71「……潔く勝つのがヒーローさ」

潔くも無く、勝てもしない

71「泥臭く負け続けているお前はヒーローじゃない」

投げかけられた言葉は

男「最後まで諦めず逆転の途中なんだよ」

簡単に返せる

902: 2011/06/26(日) 10:28:42.03 ID:ImGkqDq9o
71「言葉じゃ敵わないな……いや、俺とお前は適ってないのか」

なら、と一言置いて

71「この状況は返せるかな」

どうしようもなくらいのピンチな、この窮地を

男「考える、それだけさ」

答えの無い問いはないのだ

71「それは人間の作りだしたくだらない世界の中でならな」

71「この世界は、お前の持つ神様の生み出した世界だからな」

71「案外、答えなんてないのかもしれない」

903: 2011/06/26(日) 10:29:45.45 ID:ImGkqDq9o
男「だったら作り出すだけさ」

最上級に難しい問題を、作るのと答えるのではどちらが難しいか。

そんな問いがあったとしよう

力を入れず、脳のスイッチを少々切ってもらって

なにげない便所の落書き程度の認識で見てもらえば構わない。

そんな問いがあったとすれば

俺はやっぱり作るのが難しいのだと思う

1から100を求めるのは割と簡単だ

けど0から1を求めることは困難だ

既に容易された答えを求めることと、零から有を産み出すのは

差がある

それこそ月とスッポン、天と地、愛しさと切なさと心強さ、部屋とワイシャツと私ぐらいの違いがあるだろう

904: 2011/06/26(日) 10:30:19.88 ID:ImGkqDq9o
けど

その程度の違いだ

求めることと、産み出すことの違いは

月とスッポンくらいの違いだし

天と地程度の違いだ

愛しさと切なさと心強さなんて脳の錯覚だ

部屋とワイシャツと私は全部同じ日本語だ

滅茶苦茶だと笑えばいい

意味不明だと蔑むがいい

支離滅裂だと投げ捨てるがいい

でも俺はこう考えるんだ

導くよりも、産み出すほうが難しい

けど、その難しさは人間がクリアできる程度の差でしかない

導き出した逆転劇が間違いならば

産み出された逆転劇で正すのみ

男「諦めるにはまだ早い、抗うぞ、俺は」

905: 2011/06/26(日) 10:30:50.83 ID:ImGkqDq9o
いや、と一言置く

男「諦めるには遅すぎた、生き抜くぞ、俺は」

右手に出会ったあの時、この相棒を受け入れた時点で

成り行きで始めたヒーローを終わらせるわけにはいかないんだ

再び

71「……」

71号は圧倒される

目の前の馬鹿に

71「名付けるならば『喰い革めるもの(レボリューター)』と言ったところか」

男「やめろよ厨二臭い」

手「何度も言ったろ?コイツに、いや俺達に必要な名前は一つでいい」

男&手「俺達は『ヒーロー』さ」

71「革命家ではなく、英雄か……そこに違いはあるのか?」

男「ヒーローの方が」

手「カッコイイ」

71「……斬!」

今までより一層鋭くなった風を切り裂く音を合図に

71号と男のファイナルラウンドが始まった

911: 2011/06/26(日) 21:37:02.18 ID:ImGkqDq9o
男「やっぱり痛ェ!」

開始直後の一撃をバックステップしつつ避けようとした男だったが

71「リーチは少々短くなったが、それでも十分か」

やはり71号の持つ速度とその射程距離の広さには文字通り一歩及ばない

男「かっこつけたはいいが、やっぱり無理じゃねーかこんなのの攻略!」

相手の防御は紙に、しかし自身の攻撃は神に

どうしようもないくらい一方通行のハンティング

狩られる側と狩る側の立場がはっきりしている

男「いや、そもそもそれがハンティングか」

弱き者を砕き

強き者を奢らせる

この状況はまさにそれ

913: 2011/06/26(日) 22:00:10.87 ID:ImGkqDq9o
男「神が人に潰される?笑えないジョークだな」

71「よくある話じゃないか」

言いながら日本刀……いや、刃を振るいながら答える

男「全然違えよ、人間が神を倒す話の前提条件は」

男「その人間が英雄の場合さ」

一瞬だけ手を止め

71「面白いジョークだ、お前は随分ウィットに富んでるな」

男「残念ながら大真面目だ、俺は下ネタ愛好家なんだよ本当は……っていうか初期設定じゃ」

71「……下らないな」

男「そりゃ下ネタだもの」

再開

914: 2011/06/26(日) 22:23:46.24 ID:ImGkqDq9o
71「斬!」

皮を切る、皮を切る

71「斬!」

血を切る、血を斬る

71「斬!」

肉を切る、肉を斬る

71「斬!」

骨を切る、骨を斬る

71「斬!」

お前を切る、お前を斬る、お前をKILL

男「があぁあああっ!!」

既に肉体は刃に犯され

直に精神も刃に殺される

71「どうしたヒーロー!産み出すんじゃないのか答えを!」

男「せっかちだな!制限時間はまだあるぜ!」

915: 2011/06/26(日) 22:30:42.60 ID:ImGkqDq9o
71「いや、タイムオーバーだ」

71号は大きく息を吸い、吐き

見据える

眼前の敵を

英雄を

71「楽しかったぜクソ野郎」

71「―――斬。」

そして71号は光った

比喩でもなんでもなくただ単純に光った

いや、光ったなんて生易しいものじゃない輝いたのだ

一呼吸の内に産み出された

一不可説不可説転程の斬撃が描く奇跡

それらに光が反射し、そこに星をつくった

そしてその輝きが男の瞳に届く前に

71「究極最終完了絶対到達形殺人剣、神崩し」

殺人は終わった

71「タイムオーバーってのは即ちゲームオーバーさ」

916: 2011/06/26(日) 22:44:56.96 ID:ImGkqDq9o
この技を食らい、生き延びた者はいない

持ちうる技の中、2つだけの必殺技

極めすぎたために、殺せなくなった自分の技術で

必ず頃すことができる技。

その内の正しき殺人剣

究極最終完了絶対到達形殺人剣、神崩し

もちうる技術を全てつぎ込み

無茶苦茶に、意味不明に、支離滅裂にただ斬りつける

それはたとえ億回輪廻したとしても足元にすら及ばない数の氏

人間の限界を超えた数の氏

そう

もはや神ですら殺せそうな数の氏

それを一身に受けて生きている人間は

男「危ねぇ危ねぇ……氏んだ妹まで見えたぞ」

手「左手になるかと思ったぞ」

一体全体なんなんだ

929: 2011/06/27(月) 19:55:25.05 ID:vkSZQChho
まるで根底が違うような

構造から、何から何まで自分とは違うような

ドメインから、界から、門から、鋼から、目から、科から、属から、種から

今まで頃してきたヤツと、コイツは違う。

いや、そもそも最初から気付くべきだった。

いや、気付いていたのだろう

しかし見ないフリをしていたんだ

職業、人類最強と肩を並べて戦うコイツが

普通に考えて常識的であるワケがない。

狂ってるに決まってる

狂ってるうえに極まってる

931: 2011/06/27(月) 20:20:36.24 ID:vkSZQChho
大方あの職業、人類最強は

「理由、それは貴様が英雄だからだ」

とかそんなことを言ったに違いない

しかしそれは絶対に違う

当たり前だ

ヒーローとか、正義の味方とか

あんなエゴイスティックなドリーマー連中が、仲間に相応しいわけがない。

見抜いたんだ

ヒーロー語るこの男の内に眠る

とんでもねぇバケモノを

悪役なんかじゃ足りないくらい、ブラックの中のブラック

シュガーなんかじゃ中和しきれないくらいのブラック

苦味を超え、苦しみを感じる黒さを。

932: 2011/06/27(月) 20:32:02.39 ID:vkSZQChho


職業、人類最強

アイツだって不氏身だった、肉体的には

だからこそ精神を頃す俺は有効なカードだった

ジョーカーに対するスペード3
ペーパー     シザース
切り札を頃す、日本刀

このジャンケンに、常人が入ってくる余地はない

最初はグーの時点で勝負は決する

大抵が一撃目で氏ぬし、長く生き残っても三撃目には心停止

だがコイツはジャンケンに、勝負にまで持ち込んだ

あいこを続け、生き延びた

一不可説不可説転とちょっとの斬撃を生き延びた

これが異常でなくてなんと言う

このバケモノをなんと呼ぶ

こいつをまだ

男「どうした、終りか?」

ヒーローなんて、呼べるのか?

933: 2011/06/27(月) 20:41:22.46 ID:vkSZQChho
男「どうやら、斬りつけすぎたみたいだな」

見ると71号の腕は震えていた

それは恐怖ではなく、疲労で

手「考えても見れば、あんだけ重い物をあんだけ振り回したんだ」

数百や

数千

数万

その程度ならば彼だって剣士である、疲れるはずがない

しかし

究極最終完了絶対到達形殺人剣、神崩し

必殺技は、必ず頃すことが必須条件

故に

頃した後の疲労の多さなど、本来は弱点になどならない

たとえ刃が握れなくなる程の疲労でも

その刃を振るう相手は既にいないはずなのだから

934: 2011/06/27(月) 21:10:41.70 ID:vkSZQChho
規格外で

想定外で

常識外れ

男「ま、これで少なくとも殺される心配はなくなったわけだ」

それならば

手「安心するのはいいが、手は抜くなよ」

コチラも

71「罪人らしく、悪しくいこう」

規格外で

想定外で

常識外れに

外道でいこう

935: 2011/06/27(月) 21:35:22.98 ID:vkSZQChho
そう言うと

71号はその刃を左手で天高く掲げる

71「男……と言ったか」

男「なんだ?」

71「先に謝っておく、すまんな」

男「……二回目だぜ?」

71「ああ、一回目は楽に殺せないこと」

71「そしてこれ、二回目は」

71「コレが反則だからだ」

手「反則?」

71「ああ」

紛れも無く

と、少々微笑んだ

71「必殺、身剣尚武」

微笑みながら

その刃をずぶり、と

自身に刺した

936: 2011/06/27(月) 21:53:06.74 ID:vkSZQChho
男「!?」

手「!?」

驚きが轟き

その場を支配する

71「おいおい……そんなに驚くことは無いだろ」

長い刃のほとんどをその身に収めながら

平気な顔して話しかける

71「お前だってこれを何千何万何億何兆エトセトラと、受け止めてきたじゃねぇか」

男「そうだったな、お前が振るえば……いや、触れた刃は全て」

肉ではなく、心を切る

肉ではなく、心を斬る

肉ではなく、心をKILL

71「そう、今俺は自身を斬る……とは違うな」

収めた?

納めた?

治めた?

いや違うな、と

71「俺は刀を修めたんだ」

鋭く喋った

942: 2011/06/27(月) 22:04:38.19 ID:vkSZQChho
男「修めた?」

71「こういうことさッ!」

71号が動く




と、ともにその身につけた全ての衣類がパージする

手「あぁ!?」

男「なんのギャグ……」

「だ」と言えなかった

なぜなら

71号が男を貫いたからだ

貫いた、と言うより

斬り抜いた

71号の体躯、その全てがまるで男など居ないかのように、その背後へと通り抜けた

男「がぁぁあああああ!!」

信じられない、いや

規格外で

想定外で

常識外れに

外道で桁外れの痛みが男を襲う

71「『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』」

71「俺は今、刀であり、剣であり、刃だ」

943: 2011/06/27(月) 22:21:08.51 ID:vkSZQChho
男「な、なんだソレは」

手「男をすり抜けた?」

71「違うな、すり抜けんじゃない、斬りぬけた」

71「俺は極めすぎたからな、振るう刀は全てそうなっちまう」

71「俺の意思とは関係なくな」

左手で男を貫く、ではなく斬る

男「ッ!!」

71「必殺、身剣尚武」

71「俺の身体に刃を収めることで発動する」

71「言葉通り、刃と心身一体になる技だ」

男「刃と一体……?」

手「そんなことできるワケ」

71「ある、と言ってもなかなか特殊でな」

71「俺が刃の如く心身を鍛え上げることで、俺自身の技術に誤解させるのさ」

71「もっとも鍛えただけじゃ、技術は勘違いしてくれない」

71「そこで俺と俺の技術、その間に本物の刃を挟む」

71「本物があることで、それによく似た偽者も本物と勘違いさせる」

945: 2011/06/27(月) 22:27:19.82 ID:vkSZQChho
そして刃となる

規格外で

想定外で

常識外れに

外道で桁外れの人外となる

71「刃となった俺は全てをすり抜ける、こんな風に」

突然姿が消える

男「ッまさか!」

そう

潜ったのだ、地面に

切り裂いたのだ、地面を

71「そして同じように貴様を斬りつける」

地面から飛び出て、背中を斬る

男「がッ!」

946: 2011/06/27(月) 22:36:39.13 ID:vkSZQChho
71「汚いだろう?だから謝ったんだ」

全てをすり抜けるということは

攻撃すらもすり抜けるということ

なにもかもすり抜け効かないということ

ジャンケンの上でグーでもなければチョキでもない、それでいてパーでもない

絶対無敵

形無しの伝家の宝刀

グチョパ
         レッドカード
切り札ではなく反則札

ワイルドカードなんざ生ぬるい、最強過ぎて勝負が無しになる反則技

だからこそ汚く

だからこそ使う

これは勝負でもなんでもない

71「頃し合いだからな」

大人しく氏ねば、絶望は無かっただろう

けど生憎

71「生き延びた、お前のせいだ」

バケモノにかける義理は無い

947: 2011/06/27(月) 22:44:01.52 ID:vkSZQChho
男「ははっ」

笑う、絶望塗れのこの状況で

チェスならチェックメイトであろうこの状況で

71「気が触れたか?」

いや、と71号はある程度それは違うと自身でわかっていた

男「違ぇよ」

男「生き延びた、俺のせいか……たしかにそうだろうな」

けどよ、と71号の瞳を見つめる

男「生き延びなければ、逆転の芽は出なかった」

71「!!」

驚く、哀れむのではなく素直に。

コイツなら

本当に思いついただろうから、

逆転の術を

この技術を打ち破る術を

954: 2011/06/27(月) 22:59:33.44 ID:vkSZQChho
ならば

71「逆転前に頃すだけさ」

男「頃すなら、いいさそれでも、だが、お前は俺達に」

手「直に負けるぜ!」

男「…ああ、『食』と『直』ね」

手「…あ、わかりにくかった?」

一瞬の間そして

71「必殺、身剣尚武!」

71「究極最終完了絶対到達形殺人剣、神崩し!」

71「表裏合体必殺人剣、身滅ぼし!」

全身輝く71号の姿

それは天使か神様か

いいや、殺人鬼か

男「受けて立つ……いや、受けて、断つ」

957: 2011/06/27(月) 23:11:43.71 ID:vkSZQChho
輝く男と

黒い影を背負う男が交差し

そして突き抜け

いや、切り抜け

背を向け合う

71「セオリー通りなら、先に倒れた方の負けだな」

男は、崩れ落ち

膝をつく

男「馬鹿だな最近のセオリーなら、膝ついた程度で済んだ方が勝つんだよ」

71「そうか、そうだなあ」

倒れる71号

71「斬るのは慣れてるが、斬られるのはこんなにも痛いのか」

そうして気を失う

その姿を見届けて

男は日本刀を支えにし、立ち上がった

959: 2011/06/27(月) 23:29:16.40 ID:vkSZQChho
あの一瞬で何があったか

ぶつかり合う直前

男は神の骨を使用し

佐々木小次郎を呼び出した

そしてその身に着けている太刀を手に取り

71号を斬りつけた

1メートルという、71号よりリーチの長い太刀で。

当然、

71号に触れる刃は全てが例外なく心を斬る刃となる。

そう、71号が

『斬舞三昧(カタナツルギヤイバー)』が持つ刀は全てを斬る

だから71号という刃は全てを斬る?違う

刃であろうと、彼は71号だ

刃になろうと、進行形で刃をその身に宿している限り

それは技術を執行できているということだ。

960: 2011/06/27(月) 23:30:08.78 ID:vkSZQChho
一本だけなら、どうにかなる

その身に宿す刀だけなら耐えれるだろう

動くたびに痛もうとも

それ一本だけなら耐えれるだろう

しかし二本目

覚悟して斬る一本目ではない

予想せずに斬られる二本目だ

痛みはそれこそ

規格外で

想定外で

常識外れだっただろう

刀も

剣も

刃も

彼が使えば同一になる

それ故

彼が受ければ同一になった

刃も

剣も

刀も

961: 2011/06/27(月) 23:38:05.62 ID:vkSZQChho
男「結局、今回の逆転は産み出したんじゃなく」

手「芽吹いたわけか」

刃を持ったまま、リーチの長さを保ったままに戦ってればそれは無理だろう

あの技を見せ、たとえ自身の体内に侵入したままあろうと技術が執行できることを知らなければ無理だったろう。

71号が疲れ

71号が刃となる技を使ってくれたから

リーチが短くなったから

素人技でも斬りつけることができた。

けどそれは間違っている

71号を追い込み

疲れる技を使わざるを終えなくなり

そして男がバケモノだったから

71号は恐れ

リーチが短くなるような技を使わざるを終えなかった。

紛れも無く、今回の逆転は産み出したものだった。

962: 2011/06/27(月) 23:51:32.27 ID:vkSZQChho
男「けどよ、やっぱりあの技術は失敗作だよ」

手「……どこがだ?防御も許さず、振り回しても邪魔されない」

男「全然違う、そもそも日本刀は防御を許さない」

その超重量で全てを叩き潰すから兵器だ

男「そもそも日本刀は振り回す必要がない」

最小限の動きで済むから兵器だ

男「そもそも日本刀は、何度も斬らない」

一撃で頃すから兵器だ

男「たかだか心を斬る程度、痛みだけが伝わる程度」

傷が残るから、氏亡率が高いから兵器だ

傷が残らなければ、割と平気だ

男「多分、極めたんじゃないよアイツは」

極められなかったのさ。

縛った71号を見つめる

刀も、剣も、刃も大好きな男が

刀も、剣も、刃も同列に使えなくない自分をどう思うか

それは心が斬りつけられるような思いだろう

斬舞三昧

それは味わいたかった夢だったのかもしれない

そう、かつて神に願いたかったことなのかもしれない

963: 2011/06/28(火) 00:00:42.19 ID:piQmsUYxo
投下終了

次スレに移ります

こちらは>>1000になるまで小ネタでも投下します。

966: 2011/06/28(火) 00:18:59.94 ID:piQmsUYxo
我々はおまけに出し惜しみをしない。-グリコ開発部


女「えーと、これはおまけであり、ショートストーリーでもなければサイドストーリーでもない」

女「スピンオフなんてもっての他だし、本編には一切合財これっぽっち、微塵も関係無い」

女「メタとパロディと薄ら寒いジョークに塗れたどうしようもない落書きだ」

女「そんなどうでもいい存在だと私は考える」

女「だから力をいれず、二段飛ばしの斜め読みで黙読して欲しい」

女「さあ、脳のスイッチをOFFにする時間だ」

女「……以上、◆iMkK2JmDbsからでした」

男「なんでお前が読むんだ?」

女「いや、私なかなか登場しないし……」

手「そんな理由かい」

968: 2011/06/28(火) 00:32:40.99 ID:piQmsUYxo
「お前等ってカブトボーグに出てきそうなヒロインだよな(笑)」


女「私が最初に、男君へパーツを渡したのに……」

後輩「きゃは!私なんて告白までしましたよ」

車椅子「みなさん落ち着いてくださいよ」

褐色「そうそう、早々に諦めすぎなんだよ」

女「あなたは良いわよねーなんかあればすぐ車椅子ちゃん、褐色ちゃんって」

後輩「なんか大きな力で貴方達の出番だけ操作されてるような気がしますね、頃しますよ」

美女「私はとくにフラグも何もなかったなぁ、こんなキャラだしぃ」

女「あ、絶壁痴女」

美女「おい」

後輩「『絶壁痴女(タイルスタイル)』さんチィーッスwwwww」

美女「頃すわよん?」

少女「みなさんけわしいですねぇ」老婆「そうだねぇ」

妹「まあ、私は氏んでますし」

友「はぁ……男さんに会いたい」

女「今なんか声がしたような?」

お面「Q、再登場の予定は?」

後輩「タイトルで察して」

お面「A、絶望」

                   マント
お嬢「あれ?話し合ってるのはあの人の事ではないんですの?」

969: 2011/06/28(火) 00:49:02.46 ID:piQmsUYxo
「本名を考……いや、語るのは好きじゃないんだよ」


男「本名?」

女「うん、本名忘れちゃった」

男「え?あれ?俺達に本名って……いや、まあいいか」

男「なんかホスト臭い本名でさ、あんま好きじゃないんだよ」

男「苗字は形で覚えても、そのまま覚えても楽だよ」

男「ひらがな合計五文字、あーあだ名は『±0(ホワイトボックス)』だったなぁ、たしかにそうだ」

女「私は古臭い名前にあまり聞かない苗字、ひらがな合計六文字」

女「けど読み方を変えるとスイーツ()って言われてあまりいい思い出ないなぁ」

女「あだ名は『黒核(イン・ザ・ブラック)』まあ、たしかにそうなんだけどね」

手「俺は?」

男「てーくん」

女「くーくん」

手「不条理だ」

970: 2011/06/28(火) 01:17:23.32 ID:piQmsUYxo
「日常編とか、ぬるぬるやってれば良いと思うよ」


男「ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXY……」

委員長「そこまで言ったらZと言わんかー!」スパコーン

男「フゴッ!……あれ?新キャラ?」

委員長「何を言ってる?なるほど、寝起きで寝ぼけてるのだな」

男「えーとここは学校、俺は寝てた……その頭を叩くのは」

委員長「……」

男「ああ、シャーちゃんか!」

委員長「当たってるけど違う!」スパコーン

男「理不尽!」

委員長「『研ぎ澄まされたやさしさ(シャープシンプル)』はアダ名!私を呼ぶときは役名である「委員長」か本名である……」

男「はいはい、委員長ちゃん」

委員長「……まあ、いい。もう放課後だ、はやく帰らないと完全下校時刻になるぞ?」

男「うわっ!もう夕方じゃん、なんで起こしてくれなかったの母さん!」

委員長「それはお前の顔を見……って違う!誰が母さんだー!」スパコーン

男「それはゴメン!」

委員長「まったく君は……まあ、こんな時間だ」

委員長「最近集団殺人事件なんていう物騒なことが起こったしな、もしあれならそうだ、その……一緒に帰ってやらんこともな」

ガラッ

後輩「委員長先輩!男先輩見ませんでしたか!?」

委員長「わっひょう!?お、おおおお男ならここ……あれ?」コツゼン

後輩「チッ、やはりもう帰りましたね!『荒廃した後輩(デストロイ・グリーン)』は貴方を逃しませんよー!」タ

後に残されたのはただ一人

委員長「……ぐすん」

……

下校中の男

男「しかしあれだな」

手「ん?」

男「殴るものが京極夏彦の本だと生氏に関係すると思うんだ」

手「お前にはそれくらいでちょうどいい」

979: 2011/06/29(水) 02:36:26.19 ID:TqQRkTuRo
「面目無い話」


これは既に終わっている話である。

オチは読めているし

誰しも興味は無いでしょう。

けど、私は語るべきだと考える

青二才が、彼の背中について行けなかった、どうしようもなく惨めな負け犬の話。

笑って欲しい、だってこれは喜劇なのだから

何も出来なかった無能が、ドンキホーテよろしく立ち回った

これ以上無いくらいの喜劇だ。

さあ、そろそろ前座はおしまい

幕は上がる、

哀れな青二才の喜劇は

数ヶ月前に遡る。

980: 2011/06/29(水) 02:37:21.87 ID:TqQRkTuRo
まだ暑い時期、夏休み直前。

後輩「暑い……今日は告白日和ね」

教室の一角で

『荒廃した荒廃(デストロイ・グリーン)』は溶けていた

もう思考から格好から暑さでぐちゃぐちゃどろどろ。

その暑い理由の一端は彼女が今伸ばしている髪も関係しているだが

後輩「少し前なら……自由に楽々伸ばせたのに」

少し前

彼女はコレクター

神の髪の所持者だった

後輩「男先輩返してくれないし……いや、元々私のじゃないけど」

当時なら髪を伸ばしたり、短くすることなど息をするようにできたことだ

後輩「まだまだかかりそうだなぁ」

前髪を弄くりながら呟く

後輩「……えへへ」

恋する乙女

事情を知らないものが見ればそう思うだろう可憐な横顔

981: 2011/06/29(水) 02:49:11.99 ID:TqQRkTuRo
確かに彼女はある男性に好意を抱いている

そんな本来ならば周りから怨みの対象ともなるであろう男性は

逆に同情されていた。

と、いうのも

『荒廃した荒廃(デストロイ・グリーン)』は

あまりにも有名だからだ

愛が重すぎる女として

愛が熱すぎる女として

愛が怖すぎる女として

恋は盲目で、愛は色目だ

悪いことも、良いことも

愛を行使する彼女の前では等しくやっていいことにしか映らない

日常的な殺人未遂

日常的な拉致監禁

日常的なストーカー被害

可憐と言うには、あまりにトゲが多すぎる

そんな薔薇

それが彼女

993: 2011/07/15(金) 02:20:10.03 ID:eozNwLA3o
後輩「そんな私になんのようですかー?」

彼女のためだけに用意された教室、一年零組。

本来、ここには『荒廃した荒廃(デストロイ・グリーン)』ただ一人しかいないはずなのである。

だからこそおかしい。

彼女の背後に佇む影があるというのは、本来あってはならないことだ。

?「……」

影は少し沈黙した後、口を開いた。

?「Q、なぜ気付いた?」

後輩「だって私の教室に、私以外のメスのニオイがするワケないじゃないですかー」

イスの脚を上手く使い反転、影と対する。

お面を付けた――ヒーローのようなコスプレをした姿がそこにあった。

お面「A、君が一番楽に攻略できるかと思ったが……間違いのようだな」

後輩「私を攻略?」

きゃは、と笑う。

後輩「無理ですよ、私のルートは男さん限定なんですから」

994: 2011/07/15(金) 02:43:48.94 ID:eozNwLA3o
お面「A、そのふざけた面ごと削り取ってやる」

後輩「やってみなよクソビXチ」

お面の拳と後輩の脚が衝突する。

それがゴングとなった。

お面「A、クッ!」

後輩「ぎっ……」

衝撃でどちらも吹っ飛ぶ。

お面「A、面通し!」

すぐさま体制を建て直し、鋭い突きの連打が後輩を襲う。

後輩「勝手に触らないで」

そう後輩が呟いた瞬間、お面の手が鮮血で染まる。

お面「Q、何をした」

後輩「これ改造制服なんですよぉ」

破れたセーラーの中から出てくるのは無数のカッターの刃だった。

お面「A、全身凶器というわけか」

後輩「いえいえ、全身狂気ですよ」

そう言いながら取り出したのはコンパス。

後輩「穴という穴増やして潰して陵辱してあげます」

お面「A、やってみな」

後輩は躊躇なくその面の下にあるであろう目を狙う。

間一髪それを避ける。

しかしその顔を隠していた面はあえなくコンパスの餌食となってしまったが。

995: 2011/07/15(金) 02:44:26.37 ID:eozNwLA3o

後輩「あらあら残念」

お面「……」

後輩「どうしたんですか?うずくまって」

後輩「ムカつくその顔晒しなさい!」

後輩の蹴りがお面のアゴを捉える。

そしてその顔が露になる。

後輩「あれ?」

その顔は。

後輩「あなた……メスのはずじゃあ」

お面の顔は

メガネをかけた、中年の男のような顔をしていた。

お面「そうですねぇ、そうなんです……ムカつくことに私はメスなんですよ」

開いた口から言葉とともに。

お面「奥義、酸化射!」

燦々と輝く酸が放たれた。

996: 2011/07/15(金) 03:03:43.94 ID:eozNwLA3o
後輩「がぁああああああ!」

後輩へ酸が襲いかかる。

それと同時にある疑問が湧いてきた。

後輩(この技は……男先輩の!)

自分を倒した男先輩の持つパーツの技。

それを使うということは。

ぷつん。

後輩「あなた!男先輩に何をしたぁああああああああああああ!」

出し惜しみなどしない。

定規、シャーペン、分度器、パンチ、絵の具、ホチキス、チョーク、カッター、ハサミ、筆、イス、机、黒板。

あるもの全てを武器にお面へと襲い掛かる。

お面「落ち着いた方がいいですねぇ、落ち着いた方がいいんです」

それらの武器を酸で溶かし、後輩の腹へ蹴りをブチ込む。

後輩「ッァハ……」

呼吸できない。

くるしい。

けど殺さなきゃ、氏んでも、頃す、男先輩何した、私の、男先輩、無事、頃す、氏、好き、助け、氏ぬ、頃す、男先輩。

様々な思考が入り混じる後輩へ言葉を投げかける。

お面「A、これからだからな、その男先輩を倒すのは」

後輩「……どう、いう」

お面「A、僕のパーツは、神の顔」

能力は対象の顔を剥ぎ、その顔を借りることにより、最初に所持したパーツを奪う。

さっきの酸も、男先輩以前に持っていた人から奪ったってことね。

お面「A、僕は男の顔が欲しい。そのためにまず、貴様達の顔を奪い男を無力化するのだ」

お面「Q、聞くところによるとお前も男を頃したいらしいじゃないか?」

お面「A、なら僕が実行してあげよう、君の顔で」

貼り付けたような笑みで、倒れる後輩へと視線を向ける。

後輩「……な」

お面「Q、は?」

後輩「ふざけるな!」

その言葉とともに、あたり一面が火に包まれる。

997: 2011/07/15(金) 03:28:26.71 ID:eozNwLA3o
>>993『荒廃した後輩(デストロイ・グリーン)』ですね、ミス。


お面「Q、なんだ!?」

注意力が削がれたお面へ。

後輩「やあッ!」

お返しと言わんばかりに腹へ一撃叩き込む。

お面「A、ッ!?」

たまらず距離を取る。

火の海で、二人の少女が対峙する。

後輩「『荒廃した後輩(デストロイ・グリーン)』……壊れた緑」

火がゆらめく。

後輩「それは私自身の愛を示すとともに、このチカラを示す名でもあるんです」

お面「A、……超能力でも持っているのか?」

いえいえ、と否定。

後輩「私昔っからの才能が一つありまして……燃やし方がわかるんですよ」

目に映る緑を荒廃させる方程式がわかる。

後輩「どの材質をどんな角度でどんな速度どうすれば世界が燃えるか一瞬でね」

それは彫刻家が石を削るように、目には見えない軌跡が見える。

後輩「……目に映るものがくだらなかった」

親も友達も水も油も、全部燃やして消せるものだとわかってしまうから。

どんなにすばらしいものも、一瞬で消せるものとしか映らなかった。

後輩「そんな私が、初めて燃やしかたがわからないものを見たんです」

なんだと思います?

お面「A、……わからないな」

後輩「男先輩です」

998: 2011/07/15(金) 03:31:00.77 ID:eozNwLA3o
……

後輩「あれ?小銭が足りない…」

列後ろ「イライラ」

後輩「あ、あれ?あと1円…」

スッ

男「nanakoで」キリッ

……

先輩は、横から私を助けてくれたんです。

後輩「どうしようもないくらい完璧に一目惚れでした、笑い話ですよ私が恋に燃やされるなんて」

『荒廃した後輩(デストロイ・グリーン)』は初めて人生に潤いを感じた。

後輩「それと同時に思ったんですよ、頃すしかないって」

私が頃す。

だから私が頃すまで、誰にだって殺させない。

殺人鬼にだって、事故にだって、病気にだって。

……時にさえも殺させない。

後輩「絶対誰にも殺させません」

その願いを叶えたかった。

男先輩を守るため、男先輩を傷つけた。

後輩「結局その時は負けちゃいましたけど。それでも私の思いは変わりません」

あなたが男先輩を頃すというのなら。

後輩「その役割を奪います」

頃すのはいつか遠いずっとさき、百年かけてじっくり毎日頃し続けて、私が見取ってやるんだから。

だから。

後輩「私に、燃え氏になさい。」

お面への汗したたる首へと、後輩の手が伸びる。

お面「A、残念だ」






お面「A、超能力じゃなかったなんて」

爆発が起こる。

煙が晴れ、立っていたのは。

お面「それなら私を殺せたのかもしれませんのに」

お嬢様のような顔をしたお面だった。

999: 2011/07/15(金) 03:45:06.32 ID:eozNwLA3o
爆発によって吹き飛ばされ、後輩は火の海で苦しみもがいていた。

なんで、熱い、痛い、どうして、爆発、私は。

お面「Q、ああ、この顔かい?」

燃やすだけなのに。

お面「A、これは僕の知り合いの顔でね、頼んだら1回だけって条件で貸してくれたんだよ」

お面「A、神の汗腺っていう、人を爆発させる物騒な能力の持ち主でね。しかもワガママなんだ」

そんな、そんな、さいごの、さいごに、男先輩。

お面「A、おおそうだ無駄話してる程暇じゃない」

すぐ救急車やら消防車が着ちゃうからその前に。

お面「Q、その顔、いただくよ?」

ぶつり、ぎちり。

私の顔が剥がされて行く。

ごめんなさい男先輩、私はやっぱり青二才。

大好きな人すら守れやしない、哀れな後輩です。



その後、搬送された病院でどうにか一命をとりとめた後輩はしばらくの間自暴自棄に陥る。

そんな彼女に笑顔が戻るのは。


男「解決お面丸?」

女「そう!ヒーローショー見に行こうよ」


愛する男性が、文字通り彼女の顔を取り戻すある戦いから帰ってきた後。

以上が顔向けできないような、青二才の失敗談。

「面目ない話」でした。

1000: 2011/07/15(金) 03:52:43.64 ID:eozNwLA3o
というわけでVSお面のスピンオフといいますか、前日談でした。

次スレの本編もよろしくお願いします。


引用: 男「手に口が出来た」