1: 2013/11/06(水) 11:39:44.74 ID:Of/1CzrAO


勇・魔「「ん?」」

マスター「おやおやお二人さん、ただ事じゃなさそうですね」

勇者「何かあったんですか?」

魔王「ええまあ……そちらも?」

勇者「はい」

マスター「そんなにやつれてしまうほどとは、一体どうしたんですか?私でよければ話を聞きますよ?」

勇者「いやまあ……」

魔王「さすがに言い辛くて」

マスター「ここは酒場、それも裏通りにある訳あり酒場です、ここに来るのは決まって人に言えない悩みがある人です。
酒の席で悩みを見ず知らずの人に話して、酒場を出たらそれを忘れて日常に、ここはそんな場所ですよ」ニコッ

勇・魔「「……」」

マスター「さぁ……よかったら話してください、私は誰にも言いませんから」

勇・魔「「……じゃあ少しだけ」」

魔王と勇者の戦いの裏で 2 (ガルドコミックス)


2: 2013/11/06(水) 11:48:17.38 ID:Of/1CzrAO


勇者「実は俺……旅をしてるんですが」

マスター「ほぉ」

勇者「その……仲間とちょっと」

魔王「そりが合わないとか?」

勇者「いえ、そりは合うんですよ色々と、その……仲間がみんな女性で、まあ何というか」

魔王「あなたを取り合う?」

勇者「その方がよかったかもしれません」

魔王「?」

勇者「実は……全員で来るんです、その……まああの」

魔王「ああ……確かにそれは言いにくいですね、分かりますよ」

勇者「それでその……こんなに」

魔王「……ふぅ、まさかあなたもとは」

3: 2013/11/06(水) 11:56:40.32 ID:Of/1CzrAO


勇者「も?」

マスター「ほぅ?」

魔王「その……私も似たようなモノで、旅はしていませんが、身近な女性が……まああれで」

勇者「なる程……」

魔王「悪い気はしないんですが、その……身がもたないと言いますか」

勇者「分かります、すごくよく分かります、俺の方も……前は宿屋だけでしたが、最近は……」

魔王「まさか野宿で?」

勇者「2つあったはずのテントが、いつの間にか片方が灰になってて」

魔王「それは……、私もちょっと遠くまで出向く事がありますが、その馬車や船の中で……」

勇者「……お互い大変ですね」

魔王「まあ贅沢な悩み……という奴なのは分かってますがね」

勇者「さすがに命の危機を感じてしまっては……」

マスター「嬉しい悲鳴をいささか通り過ぎてますね」

4: 2013/11/06(水) 12:01:51.79 ID:Of/1CzrAO


勇者「いやぁ今日はこの店に来てよかった、少しだけ気分が軽くなりましたよ」

魔王「私もです、自分だけではないと分かって、安心しました」

マスター「よかったですね、さぁこれは私のおごりです」コトトッ

勇者「ありがとうございます」

魔王「いただきます」

マスター「いえ……また何かあったら来て下さい、お待ちしてます」

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5: 2013/11/06(水) 12:46:33.56 ID:Of/1CzrAO


マスター「……さて、今日も店じまいですね、……勇者と魔王……相容れないはずの2人が、まさか同じ悩みをもっているとは」カチャカチャ

マスター「世界はやはり面白い」フフッ

マスター「さて……明日はどんな客が来るかな?」キュッキュッ

マスター「……おっと看板を下げないと」カタン

マスター「さて……」

13: 2013/11/06(水) 20:26:13.80 ID:Of/1CzrAO


カランカラン

マスター「いらっしゃい、おや?この間の」

勇者「どうも……また来ちゃいました」

マスター「また何か?」

勇者「はい……」

カランカラン

マスター「いらっしゃい、おやおやこれはまた」

魔王「あれ?この間の」

勇者「ああどうも、奇遇ですね」

魔王「よく来るんですか?」

勇者「いえこの間振りで」

魔王「それはまた奇遇ですね、私もですよ」

勇者「珍しい事もありますね」

マスター「確かに珍しいかもしれませんが、長く店をやっていると、こういう事も意外とありますよ、ウチは特に……」

勇者「へぇ」

マスター「まあこれも何かの縁です、また話してはどうですか?悩み……あるんでしょう?」

勇・魔「「……はい」」

14: 2013/11/06(水) 20:35:35.34 ID:Of/1CzrAO


勇者「実はあの後、増えたんです」

魔王「増えた?……まさか」

勇者「元々は武闘家、賢者、商人の3人と旅をしていたんですが、他にも仲間はいまして」

魔王「ああ……あれですね、根城に待機して」

勇者「はい……俺の国にある酒場にいたんですが、何を聞いたのかみんなでやって来てしまって」

魔王「その……何人程?」

勇者「……5人程」

魔王「つまり……相手は8人?」

勇者「はい……、さっきの3人に加え戦士、魔法使い、僧侶、遊び人、盗賊が……、それで毎晩毎晩……もう体が」ガタガタ

魔王「それは……また……」

勇者「はは……は……はぁ」

15: 2013/11/06(水) 20:49:26.40 ID:Of/1CzrAO


魔王「私もですね」

勇者「まさか……」

魔王「私の側近と部下が3人の計4人だったんですが、この間部隊の編成とかが変わりまして」

勇者「……何人に?」

魔王「6人増えて10人」

勇者「……大台ですね、体の方は?」

魔王「それが……新しく来た部下の中に精力増強の魔法が使える者がいまして、ただ最中はいいんですが、朝起きた時は……もう」

勇者「……それは逆に辛いですね」

魔王「……昔はハーレムの話を聞いたら、少なからず羨ましくもありましたが」

勇者「俺もですよ、自分には一生縁がないと思ってましたが、いざ当事者になると」

魔王「ただただ身の危険を感じますね」

勇者「まったくですよ」

16: 2013/11/06(水) 20:58:30.43 ID:Of/1CzrAO


マスター「苦労というものは、当事者にならないと分からないものですからね」トポトポ

マスター「これもおごりです、どうぞ」コトトッ

勇者「マスター……ありがとう」

魔王「美味しいです」

マスター「いえいえ……これが私の仕事ですから、皆さんにお酒と気兼ねなく話せる場所の提供、それが私が酒場を始めた理由なんですよ」

勇者「そうなんですか」

魔王「沢山の人の悩みを聞いてきたんですね」

マスター「ええそれはもう、数え切れないほどに」

勇者「……マスターもあなたもありがとうございました、少しだけ気が楽になりました」

魔王「私の方こそ、2人に聞いていただけただけで、また頑張ろうと思えましたよ」

マスター「それはよかった、またきが向いたら来て下さい、私はいつでもここにいますから」

勇・魔「「はい」」

17: 2013/11/06(水) 21:03:37.60 ID:Of/1CzrAO


マスター「ふふっ……勇者も魔王も、モテる男は大変ですねぇ」キュッキュッ

マスター「今まで何万人も話を聞いてきましたが、あんなのは初めてでしたね」カチャカチャ

マスター「さて……今日も店じまい、看板を下げて……と」カタン

マスター「明日も楽しみですね」

24: 2013/11/07(木) 12:29:26.70 ID:eBh3azjAO


カランカラン

マスター「いらっしゃい、また来てくださったんですね」

魔王「いやぁ……何か気が付くとここに来たくなってて」

マスター「それはありがたいですね」

カランカラン

マスター「おやいらっしゃい」

勇者「あっどうも、またお会いしましたね」

魔王「いやぁ奇遇ですね」

マスター「お二人共、また何かありましたか?」

勇者「あ……はい」

魔王「ちょっと」

マスター「どうぞお話し下さい、いくらでも聞きますから」

勇者「実は……」

25: 2013/11/07(木) 12:41:59.63 ID:eBh3azjAO


勇者「この間旅の途中で、滅んだ町を見たんです」

魔王「滅んだ町ですか?」

勇者「昔に魔王に滅ぼされた、そう聞いてます」

魔王「……」

勇者「俺はそれを見て憤りとかを感じました」

魔王「魔王が許せないと?」

勇者「そうです、そして仲間達もそうだと思いました」

魔王「……でしょうね」

勇者「でも違いました」

魔王「え?」

勇者「仲間達はその町を見て、こう言ったんです、じゃあ私達の子供で、この町を復興しよう……と」

魔王「あー……じゃあ」

勇者「その後はもう、半日以上の……終わった時には、枯れ木も真っ青なレベルでしたよ」

魔王「……生きててよかったですね」

勇者「はい……本当に」

26: 2013/11/07(木) 13:02:02.49 ID:eBh3azjAO


魔王「私も似たような事がありました」

勇者「どんな事が?」

魔王「私の部下が率いてる部隊何ですが……先日敵にやられてしまって、壊滅したんです」

勇者「壊滅……」

魔王「私は彼等の為にも、頑張らないといけない!そう思ったんです、部下もそうだと思ってました」

勇者「……」

魔王「そしてそう言ったら、彼女たちは……減った人数を新たに作ろうと言い出して」

勇者「……どのくらいでした?」

魔王「精力増強の魔法を3回重ね掛けで、丸1日……終わった時には、氏んだ父と母が川の向こうで叫んでて」

勇者「……生きててよかったですね」

魔王「ええ本当に……生きててよかった……」グス

27: 2013/11/07(木) 13:14:57.53 ID:eBh3azjAO


マスター「命あってこそですからね、あなた達が来なくなったら私も悲しいですよ」

勇者「そういえば、他の客を見たことがないんですが」

魔王「確かに、いつも私達だけですね」

マスター「最初に言いましたが、この店は訳ありな酒場です、悩みを抱えた人だけがこの店にやってくる、今のあなた達のようにね」

勇者「そんな事あるんですか?」

魔王「まるで魔法じゃないですか」

マスター「そうだと言ったらどうします?」

勇・魔「「え?」」

マスター「冗談ですよ、少々立地が悪くて客がなかなか増えないんですよ」

勇者「ま、マスターも人が悪いですね」

魔王「驚かさないで下さいよ」

マスター「すみません、これはお詫びも兼ねてのおごりです」コトトッ

勇者「いえ構いませんよ」

魔王「偶にならいいものですから」

マスター「ありがとうございます、ではまた来て下さいね、私はいつでもここにいますから」

勇・魔「「はい」」

28: 2013/11/07(木) 13:19:59.75 ID:eBh3azjAO


マスター「……滅んだ町ですか、懐かしいですね……あれから何年経ったかな?」カチャカチャ

マスター「あの頃はもっと……おっと、もう年ですかね?」キュッキュッ

マスター「……昔を懐かしむのはまだ早いと思ってましたが」フキフキ

マスター「さて店じまい、明日も楽しみですね」カタン

33: 2013/11/10(日) 12:33:11.15 ID:QyD+QbFAO


カランカラン

マスター「いらっしゃい、お久しぶりですね」

勇者「どうも……」

マスター「また何かお悩みで?」

勇者「ええ……とりあえずお酒を、ちょっと強めのを」

マスター「分かりました」

カランカラン

マスター「おやこちらさんもいらっしゃい」

魔王「あ……お久しぶりですね」

勇者「ええ……」

マスター「何になさいます?」

魔王「お酒ください、少し強いやつで」

マスター「分かりました、それで……やはり悩みがおありで?」

魔王「はい……」

マスター「お二人共どうぞ、では今日もお聞きしますよ」コトトッ

勇・魔「「はい」」

34: 2013/11/10(日) 12:42:52.00 ID:QyD+QbFAO


勇者「実は……先日仲間が」

魔王「例の8人ですか?」

勇者「はい……そのいつもの流れだったんですが」

魔王「何かありましたか?」

勇者「その……武闘家が抜けまして」

魔王「良かったじゃないですか、相手が減ったんでしょう?」

勇者「いえむしろ大変に」

魔王「何故ですか?」

勇者「その……武闘家が抜けたのは、旅が出来ないからで」

魔王「旅が?でも怪我とかなら……ん?まさか……」

勇者「はい……そのまさかで、さすがに子供が出来たのに連れて行く訳には……」

魔王「確かに……、でも人数は減ったんですから、少しは楽に」

勇者「いえ……むしろ増えたと言うか、武闘家が抜けた分を他の仲間が、しかも先を越されたと言って、今まで以上に……」

魔王「……きついですね」

勇者「もう出ないのに無理やり」ブルブル

魔王「……私も」

35: 2013/11/10(日) 12:52:11.32 ID:QyD+QbFAO


魔王「私の方もです」

勇者「え?」

魔王「先日話した部下達ですが」

勇者「10人でしたよね?」

魔王「はい……その1人の、側近が……デキまして」

勇者「やはり休暇を?」

魔王「いえ……デスクワークなどを中心にして、動ける間は仕事をすると言って聞かなくて」

勇者「少し心配ですね」

魔王「まあ無理をする奴じゃないので、大丈夫だとは想うんですが、こちらも他の部下達が」

勇者「盛り上がってますか?」

魔王「はい……、我先にとせがんできて、もう出ちゃいけないものまで出したのに」ブルブル

勇者「気をしっかりもってください」

36: 2013/11/10(日) 13:04:44.59 ID:QyD+QbFAO


マスター「大変なようですが、とりあえず言わせていただきます、おめでとうございます」

勇者「あっはいどうも」

魔王「まあ確かに、子供が産まれる事自体は嬉しいです」

勇者「ただ体がキツいだけで」

魔王「まさにそこですよね」

マスター「とは言え子供は可愛いものですよ、自分の子供は特に……ね」

勇者「マスター……」

魔王「マスターもお子さんが?」

マスター「ええまあ……とっくにひとりだちしましたが、それでも思い出すのは可愛い頃ばかりですよ」

勇者「お子さんはいくつくらいで?」

魔王「そもそもマスターの年はいくつですか?」

マスター「いくつに見えますか?」

勇者「30後半ですか?」

魔王「子供がひとりだちしたなら、40はいってるんじゃ?」

マスター「ふふふ……残念ですね、こう見えて結構年をくってるんですよ」

勇者「そうなんですか?」

魔王「じゃあ実際はいくつで?」

マスター「そうですね……まあ内緒という事で、こちらは私のおごりですよ、大分若く見ていただけましたからね」コトトッ

勇者「ありがとうございます」

魔王「いただきます」

マスター「まあまた挑戦してください、待ってますから」

勇・魔「「はい」」

37: 2013/11/10(日) 13:09:26.75 ID:QyD+QbFAO


マスター「……子供か……」カチャカチャ

マスター「……あいつ、あっちでも元気にやってるかな?」フキフキ

マスター「……ちょっぴり人見知りだったからなぁ」キュッキュッ

マスター「……あれから何年だったかな?……やっぱりもう年かな?うまく思い出せないな」カタン

マスター「さて……また明日か、楽しみですね」

38: 2013/11/10(日) 13:10:24.13 ID:QyD+QbFAO
おしまい

39: 2013/11/10(日) 13:16:33.46 ID:WeeSwvFf0
乙です、のんびりとでも続きお待ちしております

43: 2013/12/10(火) 22:41:28.14 ID:gNv2iH9k0
深夜食堂的な

引用: 勇者・魔王「「死ぬ……ホント死ぬ」」ゲッソリ