1: 2016/01/15(金) 17:32:33.78 ID:Kb0NMXCc0
貴音「………………」
P「………………」
貴音「……あなた様」
P「………………」
貴音「………あなた様?」
P「ん?あ、あぁ、すまん、なんだ?」
貴音「確か、ここに屋台があった筈……ですが」
P「……だけど、跡形もなく、無くなってるな」
P「どうやら、閉店……店をたたんだ様だな」
貴音「……そう、ですか……真、残念でなりません」
貴音「あなた様と交流を深めた、思い出深い場所だったのですが……」
SSWiki : ht

2: 2016/01/15(金) 17:39:02.23 ID:Kb0NMXCc0
P「………確かに、寂しい気持ちもあるが」
P「思い出で一番大切なのは、形よりも、思い出をどう想うか、だよ」
貴音「…………………」
貴音「えぇ……真、おっしゃる通り、ですね」
P「あぁ……本当、その通りなんだよ……」
P「……………………」
貴音「……ここのらぁめんで、食欲を満たそうとも思っていたのですが……無理な様ですね」
貴音「久々に、じゃんぼ味噌らぁめんを注文してみたかったです」
P「あれ頼むと、絶対おかわりするもんな……4杯も」
P「まぁ、仕方ないさ……ご飯食べたいなら、他のどこかに寄るか?」
貴音「……いえ」
貴音「折角なのです……私達が好きな場所へ行きたいです」
P「そっか……そうだな」
3: 2016/01/15(金) 17:47:27.51 ID:Kb0NMXCc0
貴音「………………」
P「………………」
P「……あのさ、貴音」
貴音「はい?」
P「その……手、繋いで歩いてくれないか?」
貴音「……………」
貴音「………ふふっ」くすっ
P「な、なんだよ……恥を忍んで頼んだのに……」
貴音「申し訳ありません、ふふふ……」
貴音「では……」ぎゅっ
P「……ありがとな」ギュッ
貴音「いえ……私も望んでいた所存、嬉しい限りです」
4: 2016/01/15(金) 17:55:44.07 ID:Kb0NMXCc0
P「……街は、誰も居ないな」
貴音「真……本当に人が居たかどうか疑わしい程に」
P「真夜中だからな……空も真っ黒だ」
貴音「……雲一点なく、多数の星と、満月が伺えますね」
P「…………………」
貴音「……あなた様」
貴音「……今後、月が満ちる時、その時は今日みたく……2人きりで……」
P「…………………」
P「……貴音」
P「その話の返事は、伝えたい場所で、伝えさせて欲しい」
P「……だから、今はその事を忘れて、一緒に居よう」
貴音「………………」
貴音「……承知致しました」
5: 2016/01/15(金) 18:01:53.81 ID:Kb0NMXCc0
P「……………………」
貴音「……………………」
P「………おっ、この河川敷は」
貴音「……あなた様との馴れ初めの場……ですね」
P「そうそう、まだ貴音が961プロの時代で……確か貴音が泣いてて……」
貴音「ふふふ、私がまだ未熟者だった故……」
P「でも、ウチの事務所に来てからも、偶に影でこっそり泣いてたな」
貴音「!!」
貴音「……見て、おられたのですか?」
P「ははは、感情豊かな時は仕方ないさ」
P「でも、いつも飄々としていた分、泣き顔が愛くるしくて可愛かったぞ、ははは」
貴音「むぅ……いけずです、あなた様」
6: 2016/01/15(金) 18:07:00.96 ID:Kb0NMXCc0
P「……………………」
貴音「……………………」
P「………あ、いつの間にか家に着いた」
貴音「……最後に見た時以来、特に何も変わっていませんね」
P「まぁな……ここで俺は、寂しく一人暮らしをやってるさ」
貴音「………家族には、会いに行かれないのですか?」
P「たまに会うけど、半年に1、2回くらいだよ」
P「まぁ、明日、会う予定なんだけどな」
貴音「そう……ですか」
P「………寄ってくか?」
貴音「……いえ、大丈夫です」
貴音「今はあなた様と、夜道を散歩したい気分なのです」
P「そうか……分かった」
7: 2016/01/15(金) 18:12:19.53 ID:Kb0NMXCc0
P「……………………」
貴音「……………………」
P「……あ、居酒屋の前に人の集まりが」
貴音「……何かの打ち上げの様ですね」
P「大学生の集まりかな……仲のいいことやら」
貴音「………えぇ」
貴音「まるで、私がアイドルだった頃の、事務所の仲間達の様です……」
P「…………」
貴音「元気でしょうか?彼女達は?」
P「元気な奴は元気さ」
P「………そっちの皆はどうだ?」
貴音「………元気……というのは、些か違和感を覚えますね」
貴音「とにかく、平穏に過ごしております」
P「………そうか」
8: 2016/01/15(金) 18:19:29.91 ID:Kb0NMXCc0
P「…………………」
貴音「…………………」
P「……さ、メインイベントだ」
貴音「ここは……765プロ」
貴音「明かりが付いておらず、真っ暗ですね」
P「外から夜中の765プロを見るのは、久々だ……」
貴音「いつもは、残業で中の方に居ましたからね」
貴音「夜遅くまで仕事をしていると、次の日体に堪えたのでは……?」
P「ちょっとな……でも、それよりも」
P「お前達、アイドル達の芸能活動をプロデュースして、成功させたいって気持ちの方が勝ってな」
P「つい、過度に仕事をしてしまって……」
9: 2016/01/15(金) 18:24:50.64 ID:Kb0NMXCc0
貴音「……仕事熱心な姿には、感銘を受けました」
貴音「しかし、アイドルや職場仲間の皆が、あなた様の健康を心配していたのですよ?」
P「いやぁ、悪い悪い」
貴音「……中にも」
貴音「私は、特に気を掛けて心配しておりました」
貴音「ずっと……あなた様が仕事を続けているまで……ずっと」
P「………貴音」
P「本当に悪かった、辛い思いをさせたな」
貴音「………いえ」
貴音「それが、あなた様なのですから……理解しております故」
P「……本当にありがとう、貴音」
10: 2016/01/15(金) 18:30:12.87 ID:Kb0NMXCc0
P「…………………」
貴音「…………………」
P「……おっ、これは」
P「765プロ、オールスターライブの宣伝……でかいな」
貴音「それ程、765プロは大きな存在になったという事ですね」
P「あぁ、事務所アイドルの数も増えてきたし」
P「子会社も出そうって話もあるらしい……それに、世界進出の話もチラついてるって」
貴音「なんと」
11: 2016/01/15(金) 18:32:39.83 ID:Kb0NMXCc0
P「765プロは、これからも大きくなり続けるさ……」
P「何より、色々な所との交友関係も広くなって来た」
P「沢山の仲間と支え合っていけば、どんな困難も乗り越えていけるさ」
P「心配しなくても、逞しくやっていけるよ」
貴音「………えぇ」
12: 2016/01/15(金) 18:38:40.87 ID:Kb0NMXCc0
P「……………………」
貴音「……………………」
P「………あぁ、ここは」
貴音「……………………」
貴音「………あなた様」ぎゅっ
貴音「この病院に近付くのは、少し抵抗が……」
P「……………………」
P「確かに、辛い思い出が詰まった場所だな」
P「貴音にとって……もちろん、俺にもだ」
貴音「………………」
P「………明日、ここへ行く予定なんだ」
貴音「!!」
貴音「どこか、具合でも悪いのですか!?もしや、持病でも……」
13: 2016/01/15(金) 18:43:31.61 ID:Kb0NMXCc0
P「いや、ただの健康診断さ……家族と一緒にな」
貴音「………そう、ですか」
貴音「……やはり、ここは良い気分になれません……」
P「まぁな……でも、俺にとっては良い所かもしれない」
貴音「……何故ですか?」
P「……お前に会えるまでの、通過予定の場所だからだ」
P「ここに入院するって事は、お前に近くって事だからな」
貴音「………………」
P「………さて、場所を移そう」
P「もうすぐ、俺が一番行きたかった場所だ」
貴音「………………」
14: 2016/01/15(金) 18:51:14.39 ID:Kb0NMXCc0
P「…………………」
貴音「……………………」
P「さぁ、着いたぞ」
貴音「………この場所は……この公園は」
P「………俺が貴音に告白した場所だ」
P「……ちょっと歩き疲れた、ベンチにかけよう」
貴音「えぇ……」
P「………………」
貴音「………………」
P「………貴音」
貴音「……はい」
P「昔ここで、俺がお前に気持ちを告白した様に」
P「さっきの質問の答え……もとい、俺が今思ってる気持ちを伝えるよ」
貴音「………………」
P「………貴音」
P「次から満月の時、俺に会いに来なくていい」
15: 2016/01/15(金) 18:57:12.70 ID:Kb0NMXCc0
貴音「……………」
貴音「………迷惑、でしたか」
P「………そうじゃないさ」
P「今日、お前が会いに来てくれて、俺は本当に幸せだった」
P「お前と別れてから、数年ぶりに若い姿のお前と再会したんだ……心の底から歓喜したさ」
P「今でも、離れたくない、ずっと一緒に居たいと思ってる」
貴音「…………………」
P「………でも、それはもうちょっと先延ばしにしたいと思うんだ」
P「今は家族や、こっちにいるお前と俺の最高の友達、他にも色んな友人」
P「その人達との時間を優先して、もう少しこの世界で大切に過ごしたいと思う」
貴音「………………」
貴音「………私も」
貴音「私も……あなた様と、早く同じ時を共に過ごしたい……です」
P「……あぁ、俺もだ」
P「一番一緒に過ごしたいのは、誰よりもお前だよ」
P「だけど、それはあと少ししたら、叶う事なんだ」
P「貴音がわざわざ出向いて来てくれなくて、大丈夫だよ」
P「今は、ただ向こうで待ってて欲しい……」
16: 2016/01/15(金) 19:02:41.46 ID:Kb0NMXCc0
貴音「………………」
貴音「……寂しいです……あなた様のいない世界は……」
P「…………………」
貴音「……ですが」
貴音「あなた様は、まだこの世界でやるべき事、したい事がある様ですね」
貴音「……わかりました、私はいつまでも待ち続けます」
P「貴音……ありがとう」
P「本当に……本当に、今日は来てくれて嬉しかった」
P「ありがとう貴音……心から愛してる、大好きだ」
貴音「………私も、同じ気持ちです」
貴音「心から……想っております、あなた様」
P「貴音……絶対に、絶対に向こうに行ったら一番に会いに行く」
P「約束だ……そしたら、ずっと一緒にいような……貴音」
貴音「……はい……お待ちしております」
貴音「…………あなた様」
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ーーー
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
17: 2016/01/15(金) 19:07:18.21 ID:Kb0NMXCc0
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ーーーーーー
ーーー
ー
孫「じいちゃん、どうだった?健康診断の結果」
P「……まだまだ健康、入院しなくても大丈夫らしい」
孫「へー、相変わらず元気だね」
P「ははは、まぁな……だけど、歩くのがキツかったり、耳が遠いのは辛いけどな」
孫「今度、一緒に補聴器買いに行こっか」
P「プロデューサーの仕事が忙しんじゃないか?」
孫「仕事し過ぎて、今週は強制的に休む様注意されてさ……」
P「ははっ……変な所は、俺や父さんと似たんだな」
孫「ははは、仕事人間な一家だよ……俺達は」
P「………………」
P「……なぁ」
孫「ん?」
18: 2016/01/15(金) 19:11:47.63 ID:Kb0NMXCc0
P「若い頃は仕事ばかりして、先立った婆さんに、よく心配させてしまったが……」
P「そんな自分と一緒にいて、婆さんは本当に幸せだったんだろうか……」
孫「………………」
孫「幸せじゃなかったら、この病院での氏に際に」
孫「じいちゃんに、あんな笑顔で『幸せでした』なんて言えないよ」
P「………そうか」
P「ありがとな……よし、じゃあ、病院の次にもう一箇所行かなくては……」
孫「どっか行くの?車で送るよ」
P「おぉ、すまないな」
孫「どこに行くの?」
P「……婆さんの墓まで頼む」
孫「え?婆ちゃんの墓参り?時期外れだなぁ……なんか用でもあるの?」
P「最愛の妻に」
P「もう少し、この世界に居そうになるから、報告しにな」
完
19: 2016/01/15(金) 19:12:13.68 ID:+mh8W0Wjo
乙です
20: 2016/01/15(金) 19:31:04.16 ID:2SK8d+NEo
おつおつ
21: 2016/01/15(金) 19:42:33.78 ID:1qjXB/3DO
最初どういうことなのかわからんかったがなるほど乙
引用: 貴音「真夜中でぇと」
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