1: 2011/04/25(月) 17:09:13.65 ID:wWBPxVoX0
恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」



4: 2011/04/25(月) 17:27:36.53 ID:wWBPxVoX0
QB「いきなり何をするんだい?」

恭介「あたりまえだろ」フンス!

QB「ボクにはわからないよ」

恭介「ならば説明してあげよう。いいか、目の前にいきなり見たこともない生物が現れたんだ。
   誰でも警戒するのはおかしくないだろう?」

8: 2011/04/25(月) 17:36:58.99 ID:wWBPxVoX0
QB「それは判るよ。でもいきなり殴る理由の説明になっていないんじゃないかい?」

                     U M A
恭介「見たことも無い生物、つまり未確認生物だ。
   そのUMAはどんな性質を持っているだろうか?
   判るわけ無い。なにしろ未確認なんだからな。
   凶暴でいきなり襲ってこないとどうして言えよう?」

QB「だから殴ったのかい? それは性急過ぎる結論だと思うよ。
   それにボクはキミ達人類が警戒を解くような容姿をしているだろう?
   これはボクは一切危害を加えるつもりはないということを、
   判りやすく表現しているつもりなんだけどな」

恭介「それについては反論もあるが、その前にまあ聞け。
    君は知っているがどうか判らないが、
    この地球上では人間以外の生物はそんな風に喋らない」

9: 2011/04/25(月) 17:52:48.17 ID:wWBPxVoX0
QB「それは認めるよ。実際はそうでも無いんだけど、
   キミの生きているこの時代の人類の共通認識としては正しいだろう」

恭介「今の君のオカルト的発言は聞かなかったことにするよ。それより本題だ。
   どんな性質か判らない未確認生物が目の前に現れただけでも危険を感じるというのに、
   キミは流暢に言葉を喋る、しかも日本語だ。
   そして対等の立場で交渉しようとまでしている。
   これで殴らない方がどうかしている。そうだろう?」

QB「いや、その理屈はおかしい。
   一方的に蹂躙しようというわけじゃないんだ。話が出来るなら、
   互いに知的生命体として理性的に交渉すべきじゃないかな?」

10: 2011/04/25(月) 18:10:57.33 ID:wWBPxVoX0
恭介「そこだよ。さっきから聞いていると、どうもキミは上から目線な言い方をする。
    にもかかわらずさっき君は『人類が警戒を解くような容姿』を選択したようなこと言ったね?」

QB「それがおかしなことかい?
   対話を円満にするために相手の警戒心を解こうとすることは、
   正当な努力だと思うんだけどな」

恭介「生物学的にか科学力的にかあるいはその他の何かなのかは判らないが、
    君達は君達が我々人類よりも『上位の存在』であると考えているだろう?」

QB「もしかしたら君は気を悪くするかもしれないけれど、それはその通りだよ」

11: 2011/04/25(月) 18:28:07.14 ID:wWBPxVoX0
恭介「まあ、気を悪くしたりはしないさ。そのくらいは想定内のことだからね。
    そしてそんな君は下位の存在である我々人類の前に、
    わざわざ『警戒を解くような容姿』を選択してここに来た」

QB「それになにか問題があるのかい?」

恭介「おおありだよ」




↓ここで大蟻のAA(ンナモンネーヨwww

12: 2011/04/25(月) 18:49:18.56 ID:wWBPxVoX0
恭介「もし『対等』に交渉するつもりだったら『それ相応の容姿』で現れれば良いはずだ。
   対話というのは相互理解が基本だからね。
   さっき君は『容姿を選択』と僕が言ったのを否定しなかったね。
   つまり、上位存在として相応の容姿で現れることも可能だったってことだ。

恭介「だが君はそれをしないで、わざわざ『警戒を解くような容姿』、
    言い方を変えよう。『可愛らしい姿』を選択した。
    それは君が『上位の存在』だということを隠蔽したかったからに他ならない。
    それは『対等に交渉』しようとしている者のすることではないよ」

恭介「僕はこう思ってしまうね。
    『君は何らかの“人類に知られたくない目的”を持って僕と交渉しに来たんじゃないか?』とね」

13: 2011/04/25(月) 19:00:21.79 ID:wWBPxVoX0
   ̄| / ̄ 
  (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
 _(ノ_)つ
(__ノ/
 UU  

それっぽいのあった

14: 2011/04/25(月) 19:17:03.85 ID:wWBPxVoX0
QB「……人類に君のような論理性を有する固体が存在したことは驚きだよ。
   君の言ったことは否定するほど間違ってはいない。
   だけど補足させてもらうよ。
   『この容姿』を選択したのは本当に君達に必要以上に警戒されないためであって他意はない。
   ボクたちの交渉相手は思春期の少女たちが殆んどなんだ。
   だから変に上位存在を誇示するような姿は適切でないと考えている」

恭介「まあ、そのあたりは良いよ。今までのは君の言質をとらえた遊びみたいなものだ」

QB「それな無いと思うよ」

恭介「本質はそこじゃない。君は最初になんと言った?」

QB「それじゃあ、もう一回言わせて貰うよ。
   上条恭介。ボクと契約して魔法少女になってよ!」

15: 2011/04/25(月) 19:35:04.18 ID:wWBPxVoX0
恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「本質はそこだ!」

QB「ひどいな、また殴るなんて。壁まで吹っ飛んでしまったじゃないか」

恭介「君は今何と言った? 『ボクと契約して』? 『魔法少女になってよ』?」

QB「そのとおりだよ!」
   
恭介「」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「……さっき君は交渉相手は思春期の少女たちって言ってなかったか?」

QB「いや、それにはまだ話があるんだ」

恭介「それを男の僕に魔法少女になってなんて」バキィ!

QB「」

恭介「殴る以外の選択肢はないだろう?」バキィ!

QB「きゅっぷい」

恭介「」フンス

16: 2011/04/25(月) 19:51:50.24 ID:wWBPxVoX0

QB「そろそろいいかな? 話をしても」

恭介「君は懲りないんだね。まあ話だけなら聞いてあげるよ。
    入院生活はなかなか退屈だからね」




~~ 魔法少女システムの説明中略 ~~




恭介「……つまり何でも一つ願いを叶えてくれる代わりに魔法少女になって魔女と戦って欲しいと?」

QB「その通りだよ」

恭介「その願い事が叶う規模は、当人の魔法的素質に左右されると」

QB「そうさ」

17: 2011/04/25(月) 19:54:52.98 ID:wWBPxVoX0
QB「そして君にはその素質がある、それもとびきりのだ。
   男の君にどうしてそれだけの素質が備わったのははまだ解明されていないんだけど、
   これは女の子だけに任せざるを得なかった魔女退治を、
   男の子にも任せられるかもしれないという貴重なデータなんだ」

恭介「つまり実験的な意味も有るってことかい?」

QB「そうだよ。なってくれるかい?」

恭介「聞いていいか? 何故、魔法『少女』なんだ?」

QB「まだ検証段階で、男の子用に調整したシステムが無いんだよ。
   キミがそのフロンティアになるってことさ。
   これはキミにとって名誉なことだと思うよ」

18: 2011/04/25(月) 20:13:17.17 ID:wWBPxVoX0
恭介「ことさらメリットだけを強調する営業マンは信用できないって叔父さんがいってたな」

QB「なんのことだい?」

恭介「まだ、『君達』の目的を聞いていない」

QB「目的? それはもう言ったじゃないか。魔法少女になって魔女と戦ってくれることだよ」

恭介「それは目的の一部だろ? もしくは現象の一面しか表現していないのか?」

QB「どうしてそう思うんだい?」

恭介「願い事をかなえる代わりに、魔女と戦う運命、これはまあ報酬と代償って事で良いだろう。
    だが、君達のメリットについて君は一言も話していない。
    人類に仇をなす魔女の退治が『上位存在』の君達にとってどんなメリットになるのか、
    僕には想像がつかないんだが、そこの説明をしてくれないかな?」

20: 2011/04/25(月) 20:32:13.09 ID:wWBPxVoX0
恭介「君達が願いを叶えて女の子を魔法少女にするというシステムを運用している理由だよ。
    『人類のため』なんていう偽善的な理由じゃ納得いかないからね。
    君の話を聞いていると君達にそんな精神が宿っているなんて到底思えない。
    それに僕が『君は“人類に知られたくない目的”を持って僕と交渉しに来た』と言ったのを、
    君は肯定したじゃないか」

QB「まいったな。君には何回も驚かされる
   確かに、ボクらには目的がある。
   だけど、それはキミが『偽善的』と表現した理由にも合致すると考えているんだけどね。
   ただ、それを明かすことが、どういうわけか契約の成立を阻害する要因になることがあるから、
   あまり明かしたことはないんだ」

恭介「それは契約時の説明責任の放棄じゃないのか?」

QB「そんなことはないよ。願い事を叶えるというメリットと、
   生命を魔女との戦いという運命に委ねるという代償は十分に説明している」

21: 2011/04/25(月) 20:49:43.92 ID:wWBPxVoX0
恭介「君達は人類に対して『上位存在』を自認してる訳だが、
    価値観の相違を考えたことはないのかい?
    君は『どういうわけか契約の成立を阻害する要因になることがある』と言ったろう?
    つまり君達が『説明は必要ない』と考えている内容に、
    人類にとっては『理不尽』と思えるような事柄が含まれているってことじゃないのか?」

QB「『理不尽』というのは不完全な理解による誤謬を他者のせいにした者のいいわけじゃないかい?」

恭介「それは違うよ。説明してなければ誤謬の生じる余地はない。
    理解を阻害して不完全にしているのは『必要ない』として説明を怠った君の方だ」

QB「わかったよ。そこまで言われちゃ説明しない訳にはいかないね。
   それに男であるキミが選ばれたこととも関係する」

恭介「だったら聞かせてくれ」

22: 2011/04/25(月) 20:54:46.44 ID:wWBPxVoX0
間違えた

×QB「『理不尽』というのは不完全な理解による誤謬を他者のせいにした者のいいわけじゃないかい?」

○QB「『理不尽』というのは不完全な理解による誤謬からくる不利益を
     他者のせいにした者のいいわけじゃないかい?」

24: 2011/04/25(月) 21:06:19.25 ID:wWBPxVoX0
QB「ちょっと長い話になると思うから、ポイントを絞って説明するよ。
   判らなかったらその部分を補足するから質問してくれると助かる」

恭介「わかった」

QB「キミはエントロピーという言葉を知っているかい?」

恭介「いきなり質問かい。知ってるよ。
    熱力学の言葉だよね。簡単にいうと『乱雑さ』とか『でたらめさ』の尺度のことだ」
 
QB「それなら話が早いな。ボク達が利用するエネルギーというものは、
   その形を変換する毎にロスが生じるってことをいいたかったんだ。
   そのロスというのはエントロピーの増大という形で、
   どんどん利用不能な形になってこの宇宙に拡散していってしまう」

25: 2011/04/25(月) 21:19:31.49 ID:wWBPxVoX0
恭介「熱力学第二の法則から導き出される、
    宇宙が常に『熱的氏』に向かっていくという理論だね」

QB「そうさ、宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだ」

恭介「『宇宙』の? それが君達の『目的』とやらと関係があるっていうのかい?」

QB「おおありだよ」

27: 2011/04/25(月) 21:24:27.40 ID:wWBPxVoX0
   ̄| / ̄  ̄| / ̄
  (゚Д゚)/  (゚Д゚)/ <大蟻だよ!
 _(ノ_)つ  _(ノ_)つ
(__ノ / (__ノ /
 UU    UU

28: 2011/04/25(月) 21:35:52.28 ID:wWBPxVoX0
QB「ボク達の目的はね、宇宙の寿命を延ばすことなんだ」

恭介「つまりエントロピーの増大を防ぐもしくは逆転させるとかそういうことかい?」

QB「その通り、キミは理解が早くて助かるよ。
   そこでボクらは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを捜し求めた。
   そうして見つけたのが魔法少女の魔力なんだ」

QB「ボク達の文明は、知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した
   ところが当のボク達が『感情』というものを持ち合わせていなかった。
   そこで、この宇宙の様々な一族を調査して、キミ達人類を見出したんだ」

恭介「ちょっとまってくれ。『感情』といったね。君たちは感情を持っていないと」

QB「そうだよ。ボク達はキミ達人類のように怒ったり喜んだり哀しんだり、そういうものは有していないんだ」

恭介「なるほどね。純粋な論理性こそが最高といったところかな?」

QB「まあ近いね。キミ達の言語で正確に表現するのは難しいんだけど、訂正するほど間違ってはいないよ」

29: 2011/04/25(月) 22:00:35.81 ID:wWBPxVoX0
QB「人類の個体数と繁殖力を鑑みれば、一人の人間が生み出す感情エネルギーは、
   その個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕する。
   キミ達の魂は、エントロピーを凌駕するエネルギー源足りうるんだよ」

QB「とりわけ、最も効率がいいのは第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移だ。
   願い事によって魔法少女になった魂が相転移する時、膨大なエネルギーを発生する。
   それを回収するのがボク達の役割なんだ」

恭介「聞いていいかい?」

QB「なんだい?」

恭介「純粋に科学的好奇心なんだけど、感情をエネルギーに変換する方法っていうのは、
    何か目に見える機械のようなものがあるのかい?」

QB「あるよ。キミ達のいう機械というものとは違うけど、
   契約によって魔法少女が手にするソウルジェム。これがそうさ。
   魔法少女の魂は契約によってソウルジェムという高効率なエネルギー変換装置に変えられるんだ。
   これによってその魂はより効率よく感情から変換されたエネルギーを使うことができるようになる。
   これが魔法さ。
   それは手に取って触ることも出来るから、キミの問いの答えになってると思うんだけど」

30: 2011/04/25(月) 22:16:46.48 ID:wWBPxVoX0
恭介「ふうん。ソウルジェムは魂の変換されたものなのか。
    『魂が相転移』という言い方が引っかかったんだけど、それで納得したよ。
    じゃあもう一つ。
    その希望から絶望への相転移で魔法少女はどうなる?」

QB「魔法少女のソウルジェムは相転移によってグリフシードとボク達が呼んでいるものに変化する」

恭介「魔法少女の魂は?」

QB「グリフシードは魔女の卵さ。その時魔法少女は魔女に生まれ変わるんだ。
   けれど、ここで回収された膨大なエネルギーは、
   この宇宙に住まう我々の同胞たちの活動に利用されるんだ」

QB「つまり、魔法少女はその命をただ地球上で人間として寿命を全うするより、
   遥かに有意義に活用することが出来るといえるね。
   どうだい素晴らしいだろう?」

31: 2011/04/25(月) 22:27:09.48 ID:wWBPxVoX0
恭介「……なるほど。話してくれてありがとう。だいたい判ったよ」ニッコリ

QB「キミの理解の役に立てて光栄だよ。
   じゃあ、早速だけど、ボクと契約して魔法少女になってよ!」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「ぎゅっぶい」

恭介「」フンス

33: 2011/04/25(月) 22:38:34.36 ID:wWBPxVoX0
QB「わけがわからないよ。キミは今の話を納得してくれたんじゃなかったのかい?」

恭介「まあ、ボクもキミにしたがって感情的にならずに話をしようじゃないか」

QB「というか殴ったよね? 今、二回壁に叩きつけたよね?」

恭介「さて、キミの『感情をエネルギーに』のあたりの話をもう一度掘り下げてみたいんだけどいいかな?」

QB「まあ、良いけど。替わりがあるとはいえこの身体をあまり痛めつけて欲しくないなあ」

恭介「君たちが『感情』と呼んでいるのは『君たちの技術でエネルギーに変換可能な精神的活動』と
    定義して構わないかな?」

QB「……構わないよ、その通りだ」

34: 2011/04/25(月) 22:48:04.76 ID:wWBPxVoX0
恭介「『希望』というのは、喜びとか充実感とかそういった『感情』を呼び起こさせるものという理解でいいかい?」

QB「そうだね、さっきの説明ではそこは簡単に表現したけど」

恭介「同様に『絶望』は哀しみとか苦しみという『感情』を生起させる、だね?」

QB「そうだよ」

恭介「第二次性徴期の少女が最も効率が良い理由ってのは判ってるのかい?」

QB「それは統計的なものだ。メカニズムまでは解明されていないよ。それでも利用するには十分だしね」

恭介「なるほど。感情自体の研究はなされていないってことか」

35: 2011/04/25(月) 22:59:22.50 ID:wWBPxVoX0
QB「エネルギーに変換するところは研究しているよ。
   でも感情と人類の行動との関係についての詳細は研究しても間接的にしか役に立たないから、
   エネルギー回収の指針になる程度までしかしてないね」

恭介「そうか。でもどうかな?
    統計的なものだけでは既知の現象しか対象にできないんじゃないか?
    感情の究明が進めば、もっと巨大なエネルギーを発生させる方法が、
    発見される可能性だってあるんじゃないかい?」

QB「それは興味深い。
   それを発見できればボク達は少女たちに魔法少女になって貰うために、
   一人一人交渉していく必要が無くなるかもしれないね。
   だが、ボク達が感情というものを持っていないこともあって、
   そういう研究は今までしてこなかったんだよ」

36: 2011/04/25(月) 23:12:53.70 ID:wWBPxVoX0
恭介「まあ、それは君たちの科学が僕には未知数だからなんとも言えないんだけど、
    とりあえず、第二次性徴期の少女が最も効率が良い理由ってのは判るよ」

QB「それは本当かい?
   実は様々な感情が発生するメカニズムはボク達には良く判っていないんだ。
   感情ってものは本当に頻繁にイレギュラーを発生する。
   『条理を覆す』って言い方をしているけど、ボク達はそれでいつも苦労させられているんだ」

恭介「その前に聞きたいんだけど、感情によって発生するエネルギーの回収効率ってどのくらいなんだ?
    魔法少女もそのエネルギーを使うんだろ?」

QB「普通、魔法少女が相転移を起こすまでに消費する魔法力は、
   相転移の際放出するエネルギーに比べたら大したことは無いよ。
   まあ過去に、相転移のエネルギーまで魔法力を消費しつくした魔法少女が居なかったことも無いが、
   それは本当に稀なケースだ」

45: 2011/04/27(水) 00:59:33.46 ID:DW4GflXf0
恭介「なるほどね。じゃあ話を戻そう。
    『希望』っていうのは現実に合致しない願望だったよね?」

QB「もちろんだ。条理に見合わない願い事を叶えるのが魔法少女の力だからね」

恭介「『願い』が叶う、もしくはその力を与えられれば『魂』はそれに向かう。『執着』するって言っても良い。
    そこで生じた『感情』が君たちの発明した仕組み、ソウルジェムの中でエネルギーに変換される。
    それでいいかな?」

QB「その通りだよ」

恭介「そして、そのエネルギーはソウルジェム内で『魂』の『願い』を強化または維持するように働く。
    願いを叶える力になるわけだ。そうだよね?」

QB「そうだね」

恭介「それによって、『魂』はまた『感情』を発生させる。
    まあ具体的に例を挙げれば、
    まず、“願いを叶える力があること”を“喜ぶ”。
    次に“願いを叶えた”あるいは“叶えつつある”ことに喜んだり充実感を感じたり、
    これも感情だよね。総じていえば『希望』ってやつかな?」

46: 2011/04/27(水) 01:09:06.78 ID:DW4GflXf0
恭介「そしてその感情はまたエネルギーに変換される。
    このようにソウルジェム内でエネルギーが循環し、維持され、その一部は溢れ出す。
    ここで溢れ出したエネルギーが魔法少女の行使する魔法力ってわけだ。
    ここまではいいかな?」

QB「それはソウルジェムの原理そのものだ。
   ボク達の科学の精鋭が発明した仕組みをどうして君はいい当てられる?
   君は本当に人類なのかい?」

恭介「君は人類の英知を舐めているよ。これは僕の生み出した知識じゃない。
    それにこのくらいは君の説明から誰だって簡単に推理できるはずだよ。
    君たちは人類を“都合の良いエネルギー発生装置”くらいにしか見ていないから、
    見逃していたんじゃないか?」

QB「人類の生み出した科学にそれが含まれているというのかい?」

恭介「まあそこの論議は長くなりそうだから後にしよう。
    次は相転移だね」

49: 2011/04/27(水) 01:18:11.75 ID:DW4GflXf0
恭介「『希望』を持ち続けた『魂』が少しづつ『希望を持つこと』に飽きてくる。
    これは心理学でも言われていることだけど、
    人間は何もせずに一定の感情を持ちつづけることは出来ないんだ。それには努力が要る。
    感情というものは常に変化していくものだからね」

恭介「ソウルジェムの魂が持つ『希望』は仕組みによって恒常的に維持されているが故に変化しない。
    それは魂がそれを『よいもの』だと思っているうちは『希望』が維持されつづけるだろうが、
    変化しないからやがて『魂』がそれに慣れてしまう。
    慣れてしまうと同じはずの『よさ』を感じなくなってしまう」

恭介「ここで『願いつづけること』に対して『このままでいいのか?』と疑問をもってしまう。
    そうなると『願い』を持ち続けることまでが、
    つまりソウルジェムのシステムに身を置き続けること自体が『苦痛』に変わりだす。
    『願いを叶える力が無くなった』と錯覚してしまうんだな。ここで一気に相転移が起きる。
    『願い』→『感情』→エネルギーのサイクルが回らなくなってしまうからだ」

50: 2011/04/27(水) 01:27:31.65 ID:DW4GflXf0
恭介「『願い』が苦痛をもたらす。
    つまりそれは魔法少女が『最初の願い』に裏切られるってことだ。
    これは『魂』がそう感じるわけだからその『絶望』は深い。
    そして『絶望』した魂は今度は呪いを吐き始める。
    こんどは生起したネガティブな感情がエネルギーに変換されて、それが漏れ出していくんだ」

恭介「ここのポイントは『願い』→『感情』→エネルギーのサイクルが、
    通常、願いから希望を持ちその感情が生起してそれが叶うにしろ諦めるにしろ、
    いずれ消えていくその『健全なサイクル』を超えて維持し続けてしまうところにある。
    それによって感情のエネルギーは過剰に蓄えられていき、
    その裏で魂は飽き、錯覚し、絶望に落ちるプロセスを進めていく」

恭介「そして魂が完全に絶望に落ち、『願い』を放棄した瞬間、
    過剰に蓄えられていたエネルギーは全て放出され、
    絶望に堕ちた魂だけが取り残される。これがグリフシードってわけだ。
    相転移によるエネルギー回収へのシナリオがしっかり組み込まれているんだな」

恭介「これが僕が予想した相転移のメカニズムだけど、あってるかな?」

51: 2011/04/27(水) 01:37:44.13 ID:DW4GflXf0
QB「いやいや、非常に興味深いよ。
   感情の機微まで考慮した相転移の理論化なんて前代未聞だ。
   ボク達の研究ではそれを法則として捕らえているんだ。
   条理に反する願いを叶えればその反作用が必ず起きるとね。
   実際これは現象にも合致する定式が考案されている」

QB「でも、どうやらその考察は間違いでは無さそうだ。
   ボク達も長年人類を見てきたからね。ソウルジェムになった『魂』が、
   そういうプロセスを辿るといわれて違和感は感じないよ。
   ただ、それが少女の希望から絶望の相転移が効率が良い理由に繋がるのかい?」

恭介「もちろんだ。『希望』っていうのは現実に合致しない願望、そう言ったよね」

QB「ああ、ボク達は『条理に見合わない願い事を叶える』というが」

53: 2011/04/27(水) 01:43:12.73 ID:DW4GflXf0
恭介「感情っていうのは相対的なんだよ」

QB「それは判るよ。ボク達はそれをエネルギーに換算して定量的に計る事が出来る」

恭介「そうじゃない。それはエネルギー的側面だろう?
    僕が言いたいのは、願望と現実の相対だよ。君の言葉を使うなら条理と非条理か」

QB「どういうことだい?」

恭介「まず、『希望』の維持される時間は願い事の質によって変わってくる。これは良いよね?」

QB「当然その通りだよ。希望が絶望に相転移するまでの時間には個人差があって、
   それは願い事とそれを叶えたいという想いの強さによって決まる」

恭介「君のいう『第二次性徴期の少女』の持つ願望というのは現実との乖離が大きいんだ。
    ここでポイントとなるのは、その彼女が現実との乖離を認識していないってこと。
    つまり非常識な願望を持っていながら、それがいつか叶うと本気で信じてるってことだ。
    まあ君は知っているか判らないけれど中二病とか邪気眼とか特別な名前が付いているものもあるよね」

54: 2011/04/27(水) 01:50:02.59 ID:DW4GflXf0
QB「つまりキミは少女の願い事は人類の中でもひときわ不条理だからって言いたいのかい?」

恭介「そう。一つは願望を本気で叶えたいと思っていればいるほど、
   そして、もう一つは、その願望が現実から遠ければ遠いほど、
   その感情は強くそして長く維持される。
   それが『第二次性徴期の少女』において顕著だってこと。
   長く維持されるって事は、相転移までに蓄えるエネルギーもそれだけ多くなる。
   でも君は今これを言われて納得したんじゃないかな」

QB「そうだね。それらのパラメータを魔力定数と呼ばれる数値に変換する公式は、
   存在しているが、そういう解釈は今まで無かったよ」

恭介「だったら、ターゲットを第二次性徴期の少女に限ることは無くなるんじゃないかな?
    まあ条件に合いやすいのが彼女達だっていうことは否定しないが、
    逆に条件さえ満たせばそれにこだわる必要はない」

QB「逆に言われてしまったね。まさにそれだよ。例外的に男の君が選ばれた理由じゃないか。
   結論に至る過程は違うが、ターゲットを広げる可能性ってことだよね。
   だからそろそろ、僕と契約して魔法少女になってくれないかな?」

56: 2011/04/27(水) 01:58:45.83 ID:DW4GflXf0
恭介「ふん!」バキィ!

QB「そげぶ」

恭介「判ってない。まだ判ってないな」

QB「何回目だい? こんどは壁と拳骨に挟まれて顔が潰れかかったじゃないか」

恭介「君たちのシステムの欠陥を指摘したい」

QB「それは是非ともご指南願いたい。
   ボク達だって今の魔法少女のシステムが完全だなんて思っていない。
   ただ現状でベストな方法を取っているに過ぎないからね」

恭介「君たちのシステムでは相転移で魔女に変化した魂は破棄するしかないんだろ?」

QB「その通りだ。一旦ソウルジェムがグリフシードに変化して魔女として誕生してしまったら、
   もう元には戻せないからね」

57: 2011/04/27(水) 02:10:38.00 ID:DW4GflXf0
恭介「効率悪いと思わないのか?
    普通に生きていれば希望か絶望に至ってもまた希望に転じることもある。
    人間持つ感情が一種類で一回きりなんてことはありえない。
    なのに、折角稀な資質をもった人間を見つけても、
    一回システムに投入して『使って』しまえばそれきりだ」

QB「それはそういうものだからね。効率の良い悪いはキミの言葉じゃないけど相対的だよ。
   もっと効率の良い方法が発明されれば、今の方法は効率が悪いと言われると思うよ」

恭介「僕はソウルジェムに問題があると思う。
    ああ転化するからグリフシードも含まれてると思ってくれ」

QB「キミの意見を聞こうじゃないか」

58: 2011/04/27(水) 02:35:27.23 ID:DW4GflXf0
恭介「君は『一人の人間が生み出す感情エネルギーは、
   その個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕する』と言ったよね。
   じゃあそのシステムは『一人の人間が一生の間に生み出す感情エネルギー総量』の内の、
   何割くらいを回収できるんだ?」

QB「全部は無理だね。利用できない分も含めて『総量』というならそれはほんの一部分だ。
   だから感情エネルギーが最も集中する十代前半という年齢の子を選ぶんだけどね」

恭介「それでも思春期と呼ばれる時期に少女が発する感情の一部分、
   『一回の機会』のみを利用するにすぎないだろう?
   希望が絶望に変化して、また立ち直って新たな希望を生み出す可能性があるとしても、
   そういうものだとして切り捨ててしまうのかい?」

QB「それは『そういうもの』だとしか言えないよ。
   そしてそれだけでも十分すぎる結果が得られるんだ」

59: 2011/04/27(水) 02:40:18.19 ID:DW4GflXf0
恭介「感情から生成するエネルギーを『願い』に回して、サイクルを維持するソウルジェム。
    この仕組みはエネルギーシステムとしては効率的かもしれないが、
    人の心を収める場所としては最悪だよ」

恭介「だってそうだろう?
    人の持った願望を機械的に強制的に維持し続けようとするんだ。
    それでは感情もその時もったものに固定化してしまうだろう。
    固定化して強制的に増幅し、エネルギーに変換してしまう。
    君たちが感情というものを『利用可能なエネルギー』としてしか見ていないがゆえの誤りだ」

恭介「人間の感情というものはそうじゃない、
    喜び、怒り、笑い、哀しみ、常に変化していくものだ、
    感情というのはその変化の中で輝くものなんだよ」

60: 2011/04/27(水) 02:48:09.96 ID:DW4GflXf0
恭介「それを固定化するって事は、輝きを失わせ、可能性を潰し、
    君達に言わせれば『折角』生じるはずだった未来の強い感情の発露の機会をも、
    失わせてしまう。
    その機会というものを、エネルギーを搾り出した残り滓、『魔女』として廃棄してしまっている。
    そういうことだろ?」

QB「いや、ボク達には感情ってものが無いからそこまで感情というものは理解できないよ。
   君のいう『感情が輝く』という現象がボク達の目的にどれだけ有用なのかは未知数だね」

恭介「もう一つ、君たちの重大な勘違いを指摘しよう」

QB「なんだい?」

67: 2011/04/27(水) 17:13:12.90 ID:DW4GflXf0
恭介「願いを叶え最後は絶望に堕ちるのを『法則』と捉えているってことだけど、
    それはつまり、『絶望』は願いを叶えた魔法少女の責任って言いたいのか?」

QB「その通りだ。契約した魔法少女はそのときよく『裏切られた』という言葉を吐くが、
   ボク達に言わせればそれはナンセンスだ。
   条理にそぐわない願い事を叶えれば、必ず何らかの歪みが生じる。
   そこから厄災が巻き起こるのは当然の摂理だ。
   願いから始まって呪いで終わるのが裏切りだというのなら、
   始めから願い事なんてしなければいいんだ」

恭介「君たちに落ち度はないというんだね?」

QB「もちろんさ」

68: 2011/04/27(水) 17:23:33.73 ID:DW4GflXf0
恭介「だが、願いからくる希望を固定化して一直線に絶望に向かわせているのは、
    君たちが発明したシステムだ」

QB「けれども、システムがなくとも、遅かれ早かれ希望は絶望に変化するよ」

恭介「そこでエネルギーを回収して宇宙の為に役立ててるんだから、
    感謝こそされても恨まれる筋合いは無いっていうのが、君の主張だったね?」

QB「その通りだよ。どこかおかしな点があったかい?」

恭介「おおありだよ」

71: 2011/04/27(水) 17:48:18.39 ID:DW4GflXf0
恭介「君は魔法はエントロピーに縛られないエネルギーと言ったじゃないか。
    魔法少女は条理を覆す存在だと。
    なのに、今、君は『条理』を持ち出して魔法少女の願いが最終的に呪いで終わるのは、
    『当然の摂理』だと言った。
    だとすると、魔法少女が条理を覆した分は何処へ行ってしまったんだろうね?」

QB「それは……」

恭介「初めて口ごもったね?
    これこそが君達の最大の落ち度であり勘違いだ。
    魔法少女が覆した条理は君達がエネルギーとして搾取しているんだ。

    そして、その条理の負債を魔法少女達に『絶望』として押し付けている」

72: 2011/04/27(水) 17:55:17.66 ID:DW4GflXf0
QB「いや、ボク達はちゃんと魔法少女の願いを叶えているじゃないか。
  それは、人類の科学では決してなしえないことだ」

恭介「だが、君たちは『条理を覆す』という恩恵を残らず搾取しているんじゃないか?
    それは本来『感情を持つ人類』のものの筈だ。
    なにか反論は出来るかい?」

QB「それは種族としての優位性を理由にさせてもらうよ。
   キミ達人類はボク達の介入が無ければそれを利用するどころか、
   その存在に気付くことすらできなかったんだ」

QB「『願いの成就』と条理に見合った『厄災』を残すことで君達の文明が、
   破綻しないようにバランスを取っているともいえよう。
   まだ宇宙にも進出していない未熟な段階にある君達人類には、
   条理をくつがえすエネルギーは過ぎた代物だ」

73: 2011/04/27(水) 18:06:29.97 ID:DW4GflXf0
QB「原子力という原始的なエネルギーですら満足に扱えず、
   地球環境に危機的な状況を生じさせている君達がこれを手にしてしまったら、
   地球がどうなってしまうか容易に想像がつくだろう?」

恭介「それは詭弁だ。傲慢な態度と言ってもよい。
    論点をすり替えないで欲しな。
    さっき君も認めたとおり、
    君たちのシステムは人類のもつ『感情』というもののほんの一部しか利用できないんだろ?」

QB「その通りさ。それでも大きな恩恵があるとも言ったよ」

恭介「にもかかわらず、その『ほんの一部』を利用するが為に、
    それに対して発生する『負債』を魔法少女に負わせて、その魂を絶望に貶め、廃棄してしまう。
    さらに魔女という厄災を人類に押し付けている。
    これは立派な『犯罪汚行為』だと思わないかい?」

74: 2011/04/27(水) 18:17:40.65 ID:DW4GflXf0
QB「その言い方は心外だな。
   ボク達は宇宙の為にやってきたんだ。
   そしてこれは、キミ達人類もいずれ宇宙に進出するであろうから、
   長い眼で見れば、キミ達にも利益にもなることなんだよ」

恭介「人類の為というなら、まず厄災を押し付けるのをやめろ。
    君たちが受けた恩恵の分は君たちは負うべきだ。
    最低でも受けたメリットの割合に従って折半すべきだ。そうじゃないか?」

QB「いや、まだ君と論じていないが、それに当たることはやってきている。
   魔法少女が魔女を倒すという行為だよ。
   願い事を叶えた魔法少女は魔女と戦う運命を課せられるといったよね。
   これは魔女という厄災から人類を守る行為だ。
   感情エネルギーを回収したボク達の責務として行わせているんだ」

恭介「その理屈で人類が納得するとでも思っているのかい?
    結局、全てを魔法少女に押し付けているってことじゃないか」

76: 2011/04/27(水) 18:33:48.06 ID:DW4GflXf0
QB「いや、一度放出された魔女の呪いは、魔女を魔法少女が倒すことで、
   最終的にグリフシードに収まる程度に集約されるんだけど、
   それを回収して浄化するのはボク達の役割なんだ。
   キミのいう『負債』をボク達がまったく負担してないっていうのは間違いだよ」

恭介「そうだったのか。それは失礼した。
    だがつまりそれは、君たちだけでは『負債』を負いきれないということだよね。
    負担の割合はどう見ても魔法少女に偏っているじゃないか」

QB「それが妥当かどうか問えるのは魔法少女になる決心をした人間だけだよ」

恭介「だが、君はその辺の説明責任を果たしているとはいえなかったよね?
    特に、『魔女になる』という未来の『大きな負債』を知らずして、
    どうして魔法少女になることの妥当性を計る事が出来るんだ?」

77: 2011/04/27(水) 18:47:28.53 ID:DW4GflXf0
QB「それを言ったら、魔法少女になれるという事は人類にあっては、いや、
   それはボク達にだっておいそれと実行できないような、
   『条理を捻じ曲げる願い』を叶えるという大変大きなチャンスを得たってことだよ。
   その『不条理』がボク達に牙を剥かないという保証はどこにもない。
   ボク達だって、計り知れない大きなリスクを負っているんだ」

QB「互いのリスクを単純には計れないよ」 

恭介「ふん……。
    このへんの話はどうやら君たちとでは平行線のようだな。
    君たちのシステムの話に戻そうか」

QB「そうだね。ボクもそっちの方が有益に思えるよ」

78: 2011/04/27(水) 18:59:25.93 ID:DW4GflXf0
恭介「やはり、ソウルジェムのシステムの最大の問題点は、
    一度、『魂』と共に入力した『感情』を強制的に維持してしまうことだと思う。
    これがあるが故に、
    一人の魔法少女で、ただ一つの『感情』しか利用できないという制約をも生み出してしまっている」

恭介「これは君にぜひ聞きたいんだが、素直に『願いを叶える』ということのみを行った場合、
    願いと共にある『希望』がエネルギーに変換されてその全てが『願い』に使われるんじゃないか?」

QB「その通りだね。でもそれだとエネルギーの回収というボク達の目的は果たせない」

恭介「でも、それだけなら『絶望』も『呪い』も発生しない?」

QB「いや、発生はするよ。ただしそれは、
   当人や当人の周りで辻褄あわせのように発生することになる」

79: 2011/04/27(水) 19:11:26.58 ID:DW4GflXf0
恭介「それは、願いが叶った事に対する、本人や周りの反応であって、
    『希望』のエネルギーがそっくり引っくり返って『絶望』や『呪い』に転ずるようなものじゃないよね?
    つまり、この条件においては、今のシステムのような『条理を捻じ曲げた対価』は発生しない?」

QB「まあそうだけど、それだけではボク達にとって無意味だよ」

恭介「そこで『願い』をシステムに放り込んで『希望』を過剰に回転させ、エネルギーを搾り出すわけだ」

QB「その言い換えが何を意味するのか判らないけどその通りだね」

恭介「この過剰な回転はいわば『不条理』なことだろう?」

QB「感情という現象を『条理』に加えるならばそうなるが、
   ボク達はそう見ていない。感情エネルギーの結果こそが不条理なんだ」

恭介「そこが決定的なミスだよ。君たちの欺瞞といっても良い」

80: 2011/04/27(水) 19:22:05.55 ID:DW4GflXf0
恭介「僕たち人類は有史の過去から感情というものと共にあった。
   感情というのは人類にあって当たり前の現象なんだ」

恭介「それに対して不自然な形で過剰に『感情エネルギー』を搾り出すという
    不条理を起こしているのは君たちの方だろ?
    実際その過剰分だけ『負の感情』、すなわち『呪い』が発生しているんじゃないか?」

QB「確かにその通りだが、過剰といっても、
   最初の願いから生じた『希望』と等量以上の感情エネルギーは取り出せないんだよ。
   つまりそこから生じる呪いも、最初の願いの分と見合っただけの量が生じるんだ」

恭介「それってつまり、
    君たちが余計なことをして呪いを発生させているって事じゃないか?
    それを魔法少女に押し付ける合理的理由をぜひ話してもらいたいものだね」

81: 2011/04/27(水) 19:39:49.78 ID:DW4GflXf0
QB「いやしかし、それをボク達が回収する訳にはいかないよ。
   それは回収したエネルギーと同量のエントロピーの増大を我々が負うことを意味する。
   エネルギー回収が成立しなくなってしまう」

恭介「その発言が地球上での君たちの行為をなんら正当化するものではないことは、
    理解できてるかい?
    しかも問いの答えになってないよね?」

QB「……」

恭介「君は、『条理にそぐわない願い事を叶えれば、
    そこから厄災が巻き起こるのは当然の摂理だ』だなんて言ってたが、
    それを当てはめるべきは君たちの方じゃなかったのかい?」

QB「だけど、
   君のいう『有史の過去』からボク達は幾多の少女たちの願いを叶えてきた。
   中には人類の文明の発展に大きく寄与した魔法少女もいたんだ。
   ボク達は人類とうまく共存できていると思うよ」

82: 2011/04/27(水) 19:50:18.95 ID:DW4GflXf0
恭介「つまり今のシステムで誤りは無いと?」

QB「改善の余地があることは認めよう。
   だけど今のシステムが考えうる最高のものだったんだよ。
   そして実際、長い間運用して成果も出してる」

恭介「期間は関係ないね。成果? どんな成果だい?
    先ほど君は人類の原子力利用を引き合いに出していたが、
    問題があるとはいえ、それは人類全体を見ればエネルギーを利用したツケを、
    人類自らが引き受けているという点で、君たちよりマシじゃないのか?
    君たちは利用するだけ利用してそのツケさえも払えず人類に押し付けているじゃないか」

83: 2011/04/27(水) 20:01:04.05 ID:DW4GflXf0
恭介「つまり君達は『感情をエネルギーに変換する方法を発明した』などと
    したり顔で言っていたが、
    その実その対象もろくに理解しないで、
    『よく判らないが使えそうだから使っている』程度のものだってことだ」

恭介「その結果、君たちから見れば文明科学などある部分が未熟とはいえ、
    宇宙に住まう同胞であるはずの人類に多大な迷惑さえかけてしまっている」

恭介「『上位存在』が聞いて呆れるよ。
    そんなお粗末なシステムを掲げて、『宇宙の為』だの『長い眼で見れば人類にも利益になる』とか、
    よく言えたもんだね。
    人類がこんな連中から搾取を受けていたなんて悲しすぎて僕は涙も出ないよ」

QB「いや、その点については君の言葉には返す言葉も無い。
   確かにボク達は人類の感情というものを完全には理解してない。
   だが何回も言うように、
   その一部を利用するだけで宇宙にとって計り知れない恩恵があることも間違いないんだ」

84: 2011/04/27(水) 20:14:49.95 ID:DW4GflXf0
恭介「君達は僕たち人類は家畜のように思っているのかもしれない」

QB「そうでもない。ちゃんと知的生命体として交渉の上で同意を得ているわけだから、
   地球上の家畜より待遇ははるかにいい筈だよ」

恭介「ふん!」バキィ!

QB「きゅぷい」

恭介「いやすまない。だが本気で言ってるとしたら君たちは、もはや知的生命体などではなく、
    『ただエネルギーを貪るだけの装置』のようなもののような気がしてきたよ」

恭介「君は家畜より待遇が良いなんていっているが、本当だろうか?
    人類の飼育する家畜はその多くが殺されるために育てられているわけだが、
    その身体はなるべく無駄にしないようにするのが普通だ。
    それは自分たちの為に氏んでいく命への最低限の礼儀として。
    もちろん都合で処分してしまうこともあるだろう。
    だがそういう事はなるべく無いように努力するものだ」

85: 2011/04/27(水) 20:24:54.60 ID:DW4GflXf0
恭介「君たちはそういう努力をしているのか?
    この不完全で『感情を持つ人類』に対して失礼極まりないシステムを何の改良も無く、
    馬鹿の一つ覚えのように使い続けてきたんじゃないだろうな?
    もしそれで『地球上の家畜より待遇ははるかにいい』なんてほざくなら、
    僕は君を殴り続けなければならないだろう。
    泣くまでだ」

QB「いや、ボク達は泣くことは出来ないからそれは勘弁して欲しいんだけど、
   キミの言わんとしていることは理解したつもりだ。
   君の話は『感情を持った知的生命体からの提言』として受け止めたいと思う。
   ここまで理路整然とボク達のシステムについて指摘してくれたのは、
   人類の中でもキミが初めてだよ」

QB「ソウルジェムのシステムが不完全であることも認めよう。
   今日君が指摘してくれた点も含め感情の研究をより進めて、
   システムを見直していくことを約束するよ」

QB「ただ、君のいう『多大な迷惑』の改善には時間がかかると思う。
   おそらく結果が出る頃には『君』という個体の寿命は、
   とっくに終わってしまっていることだろう」

86: 2011/04/27(水) 20:36:05.57 ID:DW4GflXf0
恭介「それまでは今のまま運用し続けざるを得ないのかい?」

QB「この宇宙でのボク達の活動は一つのシステムとして動いているんだ。
   この地球でのエネルギーの回収もそれに組み込まれている。
   いきなり止めることは不可能だ。
   無理に止めれば、それこそ宇宙規模の災害が発生しかねないんだ」

恭介「そうか。いや、某電力会社の推進文句のようにも聞こえるが、
    君は『積極的な嘘』は言わないみたいだから信じることにするよ」

QB「そうしてもらえると助かるよ」

恭介「ただし、改善努力をしているという証は僕が生きているうちに示して欲しいな。
    それは可能かい?」

QB「考えてみるよ。成果が上がったらまず君のところに持ってこよう」

恭介「頼んだよ」

87: 2011/04/27(水) 20:38:59.21 ID:DW4GflXf0
※この上条は知り合いが魔法少女に関わってることをまだ知りません。

88: 2011/04/27(水) 20:47:53.34 ID:DW4GflXf0
恭介「ところで感情は相対的だといったが、それは僕と君の間でも成立するんだ」

QB「どういうことだい?」

恭介「君は結構長い間人類と付き合ってきたと思うけど、
    その君が会った一人一人の人間の君に向けられた感情に対して、
    君に中にもそれに呼応した精神活動が生起していた筈だ」

QB「確かにそれは有るね。
   だけどボクの意識は君が見ているこの個体に収まっているようなものじゃなく、
   もっと広範囲の集合的な意識なんだ。
   だから、そこで生起した精神的活動なんて全体から見たら微々たるものなんだよ。
   もし君がその精神的活動を『感情』を呼ぼうとしているのだったら、
   それは違うと思うな」

恭介「いやそれは感情だよ。たとえ集合的意識で薄められていたとしても、
    人間から向けられた感情に呼応して君が生起させたのは間違いなく感情のはずだ」

89: 2011/04/27(水) 20:59:04.01 ID:DW4GflXf0
恭介「実際、僕はこの話の途中で何回か君に感情をぶつけてみた。
    君は明らかに感情的な反応をしていたよ。自覚がなかったのかい?
    君たちには感情が無いんじゃない。それはあり方が違うだけだ」

QB「そうか。そういう考え方もできるのか。
   今までは取るに足らないノイズとしてそういうものは捨てていたんだが、
   そういった微小な精神的活動を『感情』として捕らえるのは新しい視点だね。
   実に興味深いよ」

恭介「それは是非とも研究してみてくれたまえ」

QB「いや、何回も繰り返して申し訳ないが、とても有意義な話が聞けたよ。
   ボク達は人類に対する考えかたを改めた方がいいのかもしれない」

91: 2011/04/27(水) 21:07:37.14 ID:DW4GflXf0
恭介「もういいのかい?」

QB「今日のところはね。
   君はボク達が求めていたのとは別の意味で類い稀な素質をもった人間のようだ。
   契約して魔法少女にしてしまうのが実に惜しいよ。
   君には人間の寿命限界まで生きてもらって是非ともボク達に知識をもたらしてほしいな」

恭介「それは光栄だね。是非ともそうさせてもらうよ」

QB「ボク達はそのための労力を惜しまないよ。何かあったら言ってくれ」

恭介「ああ、そのときは宜しくたのむ」

92: 2011/04/27(水) 21:17:45.97 ID:DW4GflXf0
恭介「……」

恭介「……」

恭介「帰ったか」

恭介「あの未確認生物のぬいぐるみがどういう仕組みで動いているかにも
    興味があったんだけど聞けなかったな。
    でも『中の人』とは気が合いそうだ。
    いい暇つぶしになったし、入院中暇でノートに書き溜めてた妄想が役に立って良かったよ」



その後、
上条恭介の命に関わるということで、QBの指導のもと町の内外から多数の魔法少女たちが集まり、
見滝原町へのワルプルギスの夜の出現が効率的に回避されたり、
この後も提供し続けられた上条恭介の中二病的妄想を真に受けたQBによって、
魔法少女システムが良い具合に歪んだりしたが、
それはまた別のお話。



93: 2011/04/27(水) 21:23:14.48 ID:pdWTaxTWo
言いたいことがあるかって?
大蟻だよ!乙!!

95: 2011/04/27(水) 21:46:16.13 ID:DW4GflXf0
あとは、変身すると男の娘な上条君でキャハハウフフするなり、
振っといたネタで続きを考えるなり、
論理の破綻を指摘してギロンするなり好きにして良し。

頃合を見計らってHTML化依頼する

98: 2011/04/27(水) 22:02:19.41 ID:dfTMYwtE0
「ティロ・フィナーレ」と言い、中二病はマギカ世界の救世主だな
まさかこんな形でHAPPY ENDに繋がるなんて良い意味で予想外だった

>>1超乙!
QB「上条恭介、僕と契約して魔法少女になってよ!」恭介「」【中編】

引用: QB「上条恭介、僕と契約して魔法少女になってよ!」恭介「」