1: 2016/10/06(木) 00:27:28.676 ID:6HwXqiJW0.net
ある町にて――
勇者「おはよう」
主人「おはようございます」
勇者「とてもいい寝心地だったよ。おかげですっかり全回復したよ!」
主人「ありがとうございます」
勇者「ところでさ……今ふと思ったんだけど」
主人「なんでしょう?」
勇者「ひょっとして……宿屋を持ち歩けば、いつでも全回復できるから最強じゃね?」
主人「たしかに!」
勇者「おはよう」
主人「おはようございます」
勇者「とてもいい寝心地だったよ。おかげですっかり全回復したよ!」
主人「ありがとうございます」
勇者「ところでさ……今ふと思ったんだけど」
主人「なんでしょう?」
勇者「ひょっとして……宿屋を持ち歩けば、いつでも全回復できるから最強じゃね?」
主人「たしかに!」
2: 2016/10/06(木) 00:30:18.411 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「というわけで、この宿屋、持ち歩いていい?」
主人「お待ち下さい」
主人「勇者様に持ち歩かれると、私が商売できなくなってしまいます」
勇者「そりゃそうだ」
勇者「だったら……」
勇者「持ち歩いてる期間、全部屋分の宿賃を俺が負担するってことでどう?」
主人「なるほど、それならば私はなんの不満もございません」
主人「お待ち下さい」
主人「勇者様に持ち歩かれると、私が商売できなくなってしまいます」
勇者「そりゃそうだ」
勇者「だったら……」
勇者「持ち歩いてる期間、全部屋分の宿賃を俺が負担するってことでどう?」
主人「なるほど、それならば私はなんの不満もございません」
3: 2016/10/06(木) 00:32:21.803 ID:6HwXqiJW0.net
主人「ですが、お待ち下さい」
勇者「まだなにか?」
主人「実はこの宿にはずっと宿泊しているお客様がいるのです」
主人「その方の許可を取りませんと」
勇者「もっともな話だ。よし、許可をもらいに行こう」
勇者「まだなにか?」
主人「実はこの宿にはずっと宿泊しているお客様がいるのです」
主人「その方の許可を取りませんと」
勇者「もっともな話だ。よし、許可をもらいに行こう」
4: 2016/10/06(木) 00:35:12.335 ID:6HwXqiJW0.net
客「…………」スースー…
主人「あの、もしもし」
客「……なに?」
主人「実は勇者様が、この宿を持ち歩きたいとおっしゃってるのですが、よろしいですか?」
客「……いいよ」
勇者「かなり揺れると思うけど、大丈夫かい?」
客「……平気」
主人「だ、そうです」
勇者「よーし、そうと決まればさっそく出発だ!」
主人「あの、もしもし」
客「……なに?」
主人「実は勇者様が、この宿を持ち歩きたいとおっしゃってるのですが、よろしいですか?」
客「……いいよ」
勇者「かなり揺れると思うけど、大丈夫かい?」
客「……平気」
主人「だ、そうです」
勇者「よーし、そうと決まればさっそく出発だ!」
7: 2016/10/06(木) 00:38:23.980 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「じゃあ持ち上げるよ」
主人「はい」
勇者「ふんっ!」グイッ
主人「いかがですか? ウチの宿は20部屋ありますから、かなり重いでしょう?」
勇者「思ったより重いけど……なんとか持ち運ぶことはできそうだ」
主人「それはなによりです」
主人「はい」
勇者「ふんっ!」グイッ
主人「いかがですか? ウチの宿は20部屋ありますから、かなり重いでしょう?」
勇者「思ったより重いけど……なんとか持ち運ぶことはできそうだ」
主人「それはなによりです」
8: 2016/10/06(木) 00:42:08.584 ID:6HwXqiJW0.net
平原を歩いていると――
勇者「――ん?」
スライムA「キシャーッ!」
スライムB「ピギャァッ!」
スライムC「フシュルルル……」
勇者(スライムの群れ! 十数匹はいやがる!)
勇者「――ん?」
スライムA「キシャーッ!」
スライムB「ピギャァッ!」
スライムC「フシュルルル……」
勇者(スライムの群れ! 十数匹はいやがる!)
11: 2016/10/06(木) 00:45:20.052 ID:6HwXqiJW0.net
勇者(宿屋で両手は塞がってるから、剣は使えない!)
勇者(どうすればいいんだ!?)
スライムA「キシャァァァッ!」バッ
勇者(――そうだ!)
勇者(剣を使えないなら、宿屋を使えばいいじゃない!)
勇者「うおおおおおおおおおっ!!!」ブオンッ
グシャァッ!!!
勇者(どうすればいいんだ!?)
スライムA「キシャァァァッ!」バッ
勇者(――そうだ!)
勇者(剣を使えないなら、宿屋を使えばいいじゃない!)
勇者「うおおおおおおおおおっ!!!」ブオンッ
グシャァッ!!!
13: 2016/10/06(木) 00:49:55.250 ID:6HwXqiJW0.net
シュゥゥゥ……
勇者「宿屋を地面に叩きつけたら、スライムをまとめて倒すことができた……!」
勇者「一撃必殺どころか、一撃全滅じゃないか……!」
勇者「これイケる!」
勇者「そうか……宿屋は優秀な回復施設なだけでなく、優秀な武器でもあったんだ!」
勇者「よぉーし、今日で剣は捨てて、これからは宿屋を武器にして戦おう!」
勇者「宿屋を地面に叩きつけたら、スライムをまとめて倒すことができた……!」
勇者「一撃必殺どころか、一撃全滅じゃないか……!」
勇者「これイケる!」
勇者「そうか……宿屋は優秀な回復施設なだけでなく、優秀な武器でもあったんだ!」
勇者「よぉーし、今日で剣は捨てて、これからは宿屋を武器にして戦おう!」
14: 2016/10/06(木) 00:53:12.847 ID:6HwXqiJW0.net
それからというもの――
勇者「うおおおおおおおおおおおっ!」ブオンッ ブオンッ
ドゴォッ! バキィッ! ドガァンッ!
魔物A「グギャァァァッ!」
魔物B「グエエエッ!」
魔物C「ウギャァァァッ!」
勇者は昼は宿屋を振り回して戦い――
勇者「うおおおおおおおおおおおっ!」ブオンッ ブオンッ
ドゴォッ! バキィッ! ドガァンッ!
魔物A「グギャァァァッ!」
魔物B「グエエエッ!」
魔物C「ウギャァァァッ!」
勇者は昼は宿屋を振り回して戦い――
16: 2016/10/06(木) 00:56:07.118 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「あ~……疲れた」
主人「お疲れ様です」
勇者「今日はだいぶ振り回したけど、宿屋の中は大丈夫だった?」
主人「はい、大丈夫でございます。一人だけいるお客様からも苦情はありません」
勇者「じゃ、おやすみなさい」
主人「おやすみなさいませ」
夜は宿屋で眠るという生活を続けた。
主人「お疲れ様です」
勇者「今日はだいぶ振り回したけど、宿屋の中は大丈夫だった?」
主人「はい、大丈夫でございます。一人だけいるお客様からも苦情はありません」
勇者「じゃ、おやすみなさい」
主人「おやすみなさいませ」
夜は宿屋で眠るという生活を続けた。
17: 2016/10/06(木) 00:59:28.162 ID:6HwXqiJW0.net
ゴーレム「グオオオオッ!」ズシンズシン
勇者「ゴーレムか!」
勇者「だけど、どんなにパワーがあっても、この宿屋にはかなわないぜ!」ブワオンッ
ドガシャァァァンッ!
勇者「どんなもんだ!」
闇魔術師「ひえええ……私の最高傑作が一撃で……!」
勇者「ゴーレムか!」
勇者「だけど、どんなにパワーがあっても、この宿屋にはかなわないぜ!」ブワオンッ
ドガシャァァァンッ!
勇者「どんなもんだ!」
闇魔術師「ひえええ……私の最高傑作が一撃で……!」
19: 2016/10/06(木) 01:02:56.912 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「ここは氏霊がうごめく谷だけど、宿屋を持ち歩いてるおかげで」
勇者「快適な睡眠を取ることができるよ」
勇者「宿屋を持ち歩くって選択は大正解だったよ!」
主人「勇者様に喜んでいただいて、私も嬉しく思っています」
勇者「それじゃ、おやすみ!」
主人「おやすみなさいませ」
いかなる強敵や難所も、宿屋とともに乗り越えてみせた。
勇者「快適な睡眠を取ることができるよ」
勇者「宿屋を持ち歩くって選択は大正解だったよ!」
主人「勇者様に喜んでいただいて、私も嬉しく思っています」
勇者「それじゃ、おやすみ!」
主人「おやすみなさいませ」
いかなる強敵や難所も、宿屋とともに乗り越えてみせた。
22: 2016/10/06(木) 01:07:01.453 ID:6HwXqiJW0.net
魔王城――
部下「報告いたします!」
部下「勇者は闇魔術師を退け、氏霊の谷も越えたもようです!」
魔王「おのれ、勇者め……」
魔王(たかが人間と放っておいたが、どうやら間違いだったようだな)
魔王(こうなれば、こちらも全力でもって叩き潰すしかあるまい!)
魔王「出でよ、四天王!」
部下「報告いたします!」
部下「勇者は闇魔術師を退け、氏霊の谷も越えたもようです!」
魔王「おのれ、勇者め……」
魔王(たかが人間と放っておいたが、どうやら間違いだったようだな)
魔王(こうなれば、こちらも全力でもって叩き潰すしかあるまい!)
魔王「出でよ、四天王!」
24: 2016/10/06(木) 01:11:01.558 ID:6HwXqiJW0.net
魔王軍四天王――
灼熱の炎を自在に操る炎魔将!
炎魔将「勇者如き、オレが焼き尽くしてみせますぜ!」
暗殺を得意とする影魔将!
影魔将「……音もなく始末してくれよう」
高い実力と色気を誇る紅一点、女魔将!
女魔将「うふふっ、勇者……なかなかの男前みたいね」
肉体と技を極限まで鍛えた闘魔将!
闘魔将「勇者ですか……相手にとって不足なし!」
魔王「よいか、必ずや勇者の首を取ってくるのだ!」
灼熱の炎を自在に操る炎魔将!
炎魔将「勇者如き、オレが焼き尽くしてみせますぜ!」
暗殺を得意とする影魔将!
影魔将「……音もなく始末してくれよう」
高い実力と色気を誇る紅一点、女魔将!
女魔将「うふふっ、勇者……なかなかの男前みたいね」
肉体と技を極限まで鍛えた闘魔将!
闘魔将「勇者ですか……相手にとって不足なし!」
魔王「よいか、必ずや勇者の首を取ってくるのだ!」
26: 2016/10/06(木) 01:15:37.358 ID:6HwXqiJW0.net
VS.炎魔将――
炎魔将「フハハハ、勇者! オレの業火でてめえを焼き尽くしてやるぜェ!」
勇者(こいつ……今までの敵とは格が違う!)
炎魔将「氏ねえっ!」ゴォアァァァァッ
勇者「ぐあぁぁっ!」
炎魔将「ハッハッハ、オレの炎は並の装備じゃ防げねえぞぉ!」ゴォアァァァァッ
勇者「そうか、だったら――」
炎魔将「フハハハ、勇者! オレの業火でてめえを焼き尽くしてやるぜェ!」
勇者(こいつ……今までの敵とは格が違う!)
炎魔将「氏ねえっ!」ゴォアァァァァッ
勇者「ぐあぁぁっ!」
炎魔将「ハッハッハ、オレの炎は並の装備じゃ防げねえぞぉ!」ゴォアァァァァッ
勇者「そうか、だったら――」
28: 2016/10/06(木) 01:18:30.577 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「宿屋で防ぐ!」サッ
炎魔将「なにィィィィィ!?」ゴォアァァァァッ
炎魔将「たかが宿屋! オレの炎で全焼させてやるゥ!」ゴォアァァァァッ
主人「無駄ですよ……」
主人「この宿屋の耐火性は抜群でしてね」
主人「あなたの炎程度では、ボヤすら起こせませんよ」
炎魔将「ちくしょう! 焦げすらつかねェェェェェ!」ゴォアァァァァッ
炎魔将「なにィィィィィ!?」ゴォアァァァァッ
炎魔将「たかが宿屋! オレの炎で全焼させてやるゥ!」ゴォアァァァァッ
主人「無駄ですよ……」
主人「この宿屋の耐火性は抜群でしてね」
主人「あなたの炎程度では、ボヤすら起こせませんよ」
炎魔将「ちくしょう! 焦げすらつかねェェェェェ!」ゴォアァァァァッ
30: 2016/10/06(木) 01:21:46.051 ID:6HwXqiJW0.net
炎魔将「ハァ、ハァ、ハァ……もう無理……炎出せない……」ドサッ
勇者「やったぜ!」
勇者「だけど、なんでこんなに耐火性をアップさせてたんだ?」
主人「前に一度、宿を放火されたことがありまして、それで……」
勇者「なるほど!」
勇者「――――!」ピクッ
勇者(宿屋の中に気配が……増えてる!?)
勇者「やったぜ!」
勇者「だけど、なんでこんなに耐火性をアップさせてたんだ?」
主人「前に一度、宿を放火されたことがありまして、それで……」
勇者「なるほど!」
勇者「――――!」ピクッ
勇者(宿屋の中に気配が……増えてる!?)
31: 2016/10/06(木) 01:25:00.736 ID:6HwXqiJW0.net
VS.影魔将――
影魔将「ここが宿屋の内部か……」コソコソ…
影魔将「勇者の寝込みを襲おうと考えたが、この宿にはあの主人以外にも宿泊客がいるようだ」
影魔将「ならば、そやつを人質に取ってしまえば、勇者を無力化することも可能……!」シャッ
影魔将「ここが宿屋の内部か……」コソコソ…
影魔将「勇者の寝込みを襲おうと考えたが、この宿にはあの主人以外にも宿泊客がいるようだ」
影魔将「ならば、そやつを人質に取ってしまえば、勇者を無力化することも可能……!」シャッ
32: 2016/10/06(木) 01:27:34.066 ID:6HwXqiJW0.net
客「…………」スースー
影魔将「おい」
客「…………」スースー…
影魔将「おい、起きろ」
客「…………」スースースー…
影魔将「とっとと起きんと、貴様の首を引き裂くぞ! 起きろ!」ドカッ
影魔将「おい」
客「…………」スースー…
影魔将「おい、起きろ」
客「…………」スースースー…
影魔将「とっとと起きんと、貴様の首を引き裂くぞ! 起きろ!」ドカッ
33: 2016/10/06(木) 01:30:46.772 ID:6HwXqiJW0.net
客「人がせっかく気持ちよく寝てるのにいいいいいいいいい!!!!!」
影魔将「!?」ギョッ
客「起こすんじゃねえよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
ドゴンッ! バキッ! グシャッ! ボゴッ! ドゴォッ!
影魔将「ぐぎゃあああああああああああああああ!」
主人「あのお客さん、乱暴に起こすとああなっちゃうんですよ」
勇者「おっそろしい……」
影魔将「!?」ギョッ
客「起こすんじゃねえよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
ドゴンッ! バキッ! グシャッ! ボゴッ! ドゴォッ!
影魔将「ぐぎゃあああああああああああああああ!」
主人「あのお客さん、乱暴に起こすとああなっちゃうんですよ」
勇者「おっそろしい……」
34: 2016/10/06(木) 01:33:37.826 ID:6HwXqiJW0.net
VS.女魔将――
女魔将「あなたが勇者ね?」フフッ
勇者「…………」ドキッ
女魔将「アタシの美貌で、あなたを――」
勇者「そんなことより、宿屋に泊まらないか! いい部屋があるんだ!」
女魔将「えっ、ちょっ、待っ」
勇者「さ、早く!」グイッ
女魔将「あなたが勇者ね?」フフッ
勇者「…………」ドキッ
女魔将「アタシの美貌で、あなたを――」
勇者「そんなことより、宿屋に泊まらないか! いい部屋があるんだ!」
女魔将「えっ、ちょっ、待っ」
勇者「さ、早く!」グイッ
37: 2016/10/06(木) 01:37:33.131 ID:6HwXqiJW0.net
女魔将「まぁ、ステキな部屋……」ウットリ…
女魔将「部屋中がピンク色で塗られていて、かかってる音楽もムードたっぷり……」
勇者(しかも、この部屋で使われてるお香には、媚薬が仕込まれているのさ……)ニヤッ
女魔将「ああ、もう我慢できないわ!」
女魔将「抱いてっ!」ガバッ
勇者「もちろんだとも! 快楽の花園(パラダイス)に連れてってやる!」
女魔将「おおお~っ!」
女魔将「部屋中がピンク色で塗られていて、かかってる音楽もムードたっぷり……」
勇者(しかも、この部屋で使われてるお香には、媚薬が仕込まれているのさ……)ニヤッ
女魔将「ああ、もう我慢できないわ!」
女魔将「抱いてっ!」ガバッ
勇者「もちろんだとも! 快楽の花園(パラダイス)に連れてってやる!」
女魔将「おおお~っ!」
38: 2016/10/06(木) 01:40:20.788 ID:6HwXqiJW0.net
チュン… チュチュン… チュン…
勇者「いい朝だね」
女魔将「ええ……とっても」
主人「ゆうべはおたのしみでしたね」
勇者「いい朝だね」
女魔将「ええ……とっても」
主人「ゆうべはおたのしみでしたね」
39: 2016/10/06(木) 01:45:27.350 ID:6HwXqiJW0.net
VS.闘魔将――
闘魔将「我は四天王筆頭、闘魔将なり! 勇者よ、尋常に勝負せい!」
勇者(強そうだが……最強の武器である宿屋を信じるんだ!)
勇者「宿屋アタック!」ブオンッ
勇者「宿屋クラッシュ!」ブオンッ
勇者(当たらない!?)
闘魔将「その宿屋という武器……大した巨大さと重量だが、それゆえ軌道が単純!」
闘魔将「我ほどの武闘家であれば、回避することは容易!」
闘魔将「喰らえ、我が拳をッ!」
バキッ! ドカッ! ドゴォッ!
勇者「ぐはぁっ……!」
闘魔将「追い詰めたぞ! 次の一撃で我の勝利だ!」
闘魔将「我は四天王筆頭、闘魔将なり! 勇者よ、尋常に勝負せい!」
勇者(強そうだが……最強の武器である宿屋を信じるんだ!)
勇者「宿屋アタック!」ブオンッ
勇者「宿屋クラッシュ!」ブオンッ
勇者(当たらない!?)
闘魔将「その宿屋という武器……大した巨大さと重量だが、それゆえ軌道が単純!」
闘魔将「我ほどの武闘家であれば、回避することは容易!」
闘魔将「喰らえ、我が拳をッ!」
バキッ! ドカッ! ドゴォッ!
勇者「ぐはぁっ……!」
闘魔将「追い詰めたぞ! 次の一撃で我の勝利だ!」
40: 2016/10/06(木) 01:48:34.551 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「なんの! 宿屋に入って――」ササッ
勇者「一泊!」シャキン
闘魔将「なにィ!? 全回復しているだと!?」
闘魔将「ぬおおおおおっ!」
ドゴッ!
勇者「宿屋に入って一泊!」シャキン
闘魔将「おのれえっ!」
バキッ!
勇者「宿屋に入って一泊!」シャキン
闘魔将(うおお……いくら追い詰めても、宿屋に一泊されて全回復されてしまう!)
勇者「一泊!」シャキン
闘魔将「なにィ!? 全回復しているだと!?」
闘魔将「ぬおおおおおっ!」
ドゴッ!
勇者「宿屋に入って一泊!」シャキン
闘魔将「おのれえっ!」
バキッ!
勇者「宿屋に入って一泊!」シャキン
闘魔将(うおお……いくら追い詰めても、宿屋に一泊されて全回復されてしまう!)
43: 2016/10/06(木) 01:53:56.969 ID:6HwXqiJW0.net
二週間後――
闘魔将「ハァ……ハァ……」
勇者「お前の敗因を教えてやろう」
闘魔将「我の敗因だと……!?」
勇者「宿屋ボンバー!」ブオンッ
ズガァンッ!
闘魔将「…………」ピクピク…
勇者「お前は……宿屋を甘く見すぎていた」
闘魔将「ハァ……ハァ……」
勇者「お前の敗因を教えてやろう」
闘魔将「我の敗因だと……!?」
勇者「宿屋ボンバー!」ブオンッ
ズガァンッ!
闘魔将「…………」ピクピク…
勇者「お前は……宿屋を甘く見すぎていた」
46: 2016/10/06(木) 01:57:10.121 ID:6HwXqiJW0.net
いよいよ魔王城が目前に迫る。
主人「ふんふ~ん」トンテンカン
勇者「なにしてるんだ?」
主人「もうすぐこの冒険も終わるし、宿を改築してるんですよ」
勇者「なぜ、このタイミングで改築を?」
主人「そりゃもちろん、この冒険が終われば、世界は平和になりますから!」
勇者「なるほど! 平和になれば旅人も増えるだろうし、20部屋じゃ足りなくなるだろうしな」
勇者「よし、魔王との対決だ!」ザッ
宿屋を持ち上げ、勇者はいざ魔王城へ――
主人「ふんふ~ん」トンテンカン
勇者「なにしてるんだ?」
主人「もうすぐこの冒険も終わるし、宿を改築してるんですよ」
勇者「なぜ、このタイミングで改築を?」
主人「そりゃもちろん、この冒険が終われば、世界は平和になりますから!」
勇者「なるほど! 平和になれば旅人も増えるだろうし、20部屋じゃ足りなくなるだろうしな」
勇者「よし、魔王との対決だ!」ザッ
宿屋を持ち上げ、勇者はいざ魔王城へ――
47: 2016/10/06(木) 01:59:24.967 ID:6HwXqiJW0.net
魔王城――
魔王「よくここまで来たな、勇者よ」
魔王「だが、貴様の快進撃もここまでだ。ワシ自ら、地獄に叩き落としてくれる!」
勇者「魔王、この宿屋で必ずお前を倒してみせる!」
勇者「勝負だ!」
魔王「来い!」
魔王「よくここまで来たな、勇者よ」
魔王「だが、貴様の快進撃もここまでだ。ワシ自ら、地獄に叩き落としてくれる!」
勇者「魔王、この宿屋で必ずお前を倒してみせる!」
勇者「勝負だ!」
魔王「来い!」
48: 2016/10/06(木) 02:03:51.652 ID:6HwXqiJW0.net
勇者「宿屋アタック!」ドガァッ
勇者「宿屋クラッシュ!」ズガァッ
勇者「宿屋ボンバー!」ドゴォォォン
魔王「これが宿屋か……たしかに剣よりは強かろうが、思ったほどではないな」シュゥゥ…
勇者「な、なんだと……!? 宿屋が……通じない!」
魔王「今度はこちらの番だな! 我が暗黒魔法を受けてみよ!」グワッ
ドゴォォォォォンッ!!!
勇者「ぐあぁぁぁ……っ!」
勇者(攻撃力も防御力もケタ違いだ……敵わない!)
勇者「宿屋クラッシュ!」ズガァッ
勇者「宿屋ボンバー!」ドゴォォォン
魔王「これが宿屋か……たしかに剣よりは強かろうが、思ったほどではないな」シュゥゥ…
勇者「な、なんだと……!? 宿屋が……通じない!」
魔王「今度はこちらの番だな! 我が暗黒魔法を受けてみよ!」グワッ
ドゴォォォォォンッ!!!
勇者「ぐあぁぁぁ……っ!」
勇者(攻撃力も防御力もケタ違いだ……敵わない!)
49: 2016/10/06(木) 02:07:44.166 ID:6HwXqiJW0.net
魔王「いっておくが、一泊して全回復などさせんぞ」
魔王「宿屋の主人に話しかけた瞬間、背後から攻撃してくれるわ」
勇者「ぐ……!」
勇者(こいつ、宿屋戦法の弱点を見切っている!)
魔王「宿屋を持ち歩くというアイディアは大したものだったが、相手が悪すぎたな」
魔王「トドメだ!」
勇者(ここまでか……!)
魔王「宿屋の主人に話しかけた瞬間、背後から攻撃してくれるわ」
勇者「ぐ……!」
勇者(こいつ、宿屋戦法の弱点を見切っている!)
魔王「宿屋を持ち歩くというアイディアは大したものだったが、相手が悪すぎたな」
魔王「トドメだ!」
勇者(ここまでか……!)
50: 2016/10/06(木) 02:12:40.806 ID:6HwXqiJW0.net
主人「戦いの最中にすみませんが、お知らせです」
勇者「なんだい?」
主人「勇者様、改築終わりましたよ」
勇者「おお、おめでとう!」
主人「ありがとうございます。おかげさまで我が宿屋は超大型ホテルになりました!」
勇者「ホテルに!?」
魔王「し、しまった……!」
勇者「これなら勝てる! いくぞ、魔王!」
勇者はホテルを持ち上げると――
勇者「ホテル・チェックイン!」
ズガドゴォォォォォンッ!!!
魔王の脳天に叩きつけた。
勇者「なんだい?」
主人「勇者様、改築終わりましたよ」
勇者「おお、おめでとう!」
主人「ありがとうございます。おかげさまで我が宿屋は超大型ホテルになりました!」
勇者「ホテルに!?」
魔王「し、しまった……!」
勇者「これなら勝てる! いくぞ、魔王!」
勇者はホテルを持ち上げると――
勇者「ホテル・チェックイン!」
ズガドゴォォォォォンッ!!!
魔王の脳天に叩きつけた。
51: 2016/10/06(木) 02:16:12.192 ID:6HwXqiJW0.net
魔王「このワシが……敗れるとは……。ホテルの威力恐るべしよ……」
勇者「魔王、お前はいったいなぜ人間界侵略を目論んだ?」
魔王「今……魔界は大不況でな」
魔王「魔族には失業者が多く、貧困が深刻な社会問題となっている」
魔王「だから人間界の豊かな富や資源がどうしても欲しかったのだ……」
勇者「そうだったのか……」
勇者(こんな事情があったのか。ちょっと同情しちゃうな……)
勇者「魔王、お前はいったいなぜ人間界侵略を目論んだ?」
魔王「今……魔界は大不況でな」
魔王「魔族には失業者が多く、貧困が深刻な社会問題となっている」
魔王「だから人間界の豊かな富や資源がどうしても欲しかったのだ……」
勇者「そうだったのか……」
勇者(こんな事情があったのか。ちょっと同情しちゃうな……)
52: 2016/10/06(木) 02:19:25.376 ID:6HwXqiJW0.net
主人「私にいい考えがあります」
魔王「え……?」
勇者「なにか魔族を救う方法があるのかい?」
主人「ようは、魔族に仕事があればいいんですよね?」
主人「だったら――」
………………
…………
……
魔王「え……?」
勇者「なにか魔族を救う方法があるのかい?」
主人「ようは、魔族に仕事があればいいんですよね?」
主人「だったら――」
………………
…………
……
53: 2016/10/06(木) 02:22:29.634 ID:6HwXqiJW0.net
勇者はホテルを抱えながら故郷へ戻り、
国王「勇者よ、よくぞ世界の平和を取り戻してくれた!」
国王「おぬしの功績には、国をあげて報いようぞ!」
勇者「ありがたき幸せ!」
勇者の名は永久にこの国の歴史に残ることとなった。
国王「勇者よ、よくぞ世界の平和を取り戻してくれた!」
国王「おぬしの功績には、国をあげて報いようぞ!」
勇者「ありがたき幸せ!」
勇者の名は永久にこの国の歴史に残ることとなった。
54: 2016/10/06(木) 02:26:18.140 ID:6HwXqiJW0.net
そして――
勇者「こんにちは」
主人「これはこれは勇者様、我がホテルに泊まりにきて頂いて、ありがとうございます」
勇者「家にもベッドはあるんだけど、やっぱりこのホテルの方が寝心地がいいんだよね」
主人「勇者様にそういっていただけるのは光栄の極みです」
勇者「ところで、あの一人だけいたお客さんは今も?」
主人「ずっと同じ部屋で寝てらっしゃいます」
勇者「相変わらずだな……あの人も」
主人「宿泊費はいただいてるんで、私としては問題ないんですがね」
勇者「こんにちは」
主人「これはこれは勇者様、我がホテルに泊まりにきて頂いて、ありがとうございます」
勇者「家にもベッドはあるんだけど、やっぱりこのホテルの方が寝心地がいいんだよね」
主人「勇者様にそういっていただけるのは光栄の極みです」
勇者「ところで、あの一人だけいたお客さんは今も?」
主人「ずっと同じ部屋で寝てらっしゃいます」
勇者「相変わらずだな……あの人も」
主人「宿泊費はいただいてるんで、私としては問題ないんですがね」
57: 2016/10/06(木) 02:30:40.410 ID:6HwXqiJW0.net
魔王「いらっしゃいませ!」
勇者「おお、魔王! 元気そうだな!」
魔王「おかげさまで、部下みんなこのホテルで働かせてもらえることになったのだ」
主人「魔族や魔物の皆さんは、働き者で助かりますよ」
主人「では勇者様、おやすみなさいませ!」
魔族が主な従業員を務めるこのホテルは、その特異さ物珍しさも手伝い、大繁盛したという――
~おわり~
勇者「おお、魔王! 元気そうだな!」
魔王「おかげさまで、部下みんなこのホテルで働かせてもらえることになったのだ」
主人「魔族や魔物の皆さんは、働き者で助かりますよ」
主人「では勇者様、おやすみなさいませ!」
魔族が主な従業員を務めるこのホテルは、その特異さ物珍しさも手伝い、大繁盛したという――
~おわり~
60: 2016/10/06(木) 02:52:07.714 ID:E5u6W0epr.net
おつ
勇者の腕力と主人の対応力の勝利だな
勇者の腕力と主人の対応力の勝利だな
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