1: 2021/01/31(日) 01:24:10.521 ID:8EdW5duT0.net
青年「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

店員「はーい!」

――

青年「ごちそうさまでした」

店員「またお越し下さいませー!」

青年「ふぅ、おいしかった……」

狩人A「ちょっと待ってクレメンス」

青年「! なんだ君たちは……」

狩人B「ワイらか? ワイらは……“チー牛狩り”や」
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)

3: 2021/01/31(日) 01:27:14.923 ID:8EdW5duT0.net
人気のない路地裏。

青年「なにする気だ!?」

狩人A「だから“チー牛狩り”いうたやんけ。耳遠すぎやろ」

青年「なんだよそれ!?」

狩人A「モンハンってあるやろ? モンスターハンター。あれのチー牛バージョンみたいなもんや」

狩人B「そのうちカプコンからガチで発売されるんちゃうか?」

狩人A「そんなん草生えるわ」

狩人B「ま、とりあえず……一発喰らっとけや」

バチッ!

7: 2021/01/31(日) 01:30:22.431 ID:8EdW5duT0.net
青年「あ、あぐうう……!」ボタボタ

狩人A「メッチャ鼻血出とるやん。真っ赤や」

狩人B「鼻の周りだけカープみたいになっとるで」

狩人A「草」

青年「お金ならあげますから……見逃して……」

狩人B「別にワイら金なんていらんわ。お前みたいなチー牛狩るのが趣味やからな」

狩人A「今度はワイや!」

ドズゥッ!

拳がボディに突き刺さる。

青年「ぶげえっ!」

狩人B「うわっ、きたな。ゲロったで、こいつ」

8: 2021/01/31(日) 01:34:14.377 ID:8EdW5duT0.net
狩人A「おいおい、食い物は粗末にしちゃいかんとマッマに教わらんかったんか?」

バキィッ!

回し蹴りでダウンさせ、がら空きの腹部に、

狩人A「ファッ!? ファッ!? ファッ!?」

ドズッ! ドズッ! ドズッ!

青年「ガボッ! ゴボッ!」

奇声と共に執拗に蹴りを入れる。つま先で。

狩人A「ファッ!? ファッ!? ファッ!? ファッ!? ファッ!? ファッ!?」

ドズッ! ドズッ! ドズッ! ドズッ! ドズッ! ドズッ!

青年「ウゲッ! グボッ!」

狩人B「どんどん肉と米が口から出てくるで。だいぶダイエットできたんちゃうかこいつ」

狩人A「せやな。新しいダイエット法として流行るかもしれんでこれ」

9: 2021/01/31(日) 01:37:27.592 ID:8EdW5duT0.net
狩人A「そろそろアレの出番やな」

狩人B「せやな」

青年「アレ……?」

狩人A「ワイらの武器といえばこれに決まってるやろ。金属バット~!」

狩人B「今のかなりドラえもんに似とったわ。114514点」

狩人A「サンガツ」

青年「や、やめ……」

狩人A「一本足打法や! せーのっ!」ブンッ

ガゴォッ!

青年「……!」

狩人B「前歯全部いったで! 草生えまくるでこんなん!」

12: 2021/01/31(日) 01:40:22.860 ID:8EdW5duT0.net
狩人B「次はワイにやらせてくれや」

狩人A「ええで」

狩人B「そりゃっ!」ブンッ

ガツッ!

青年「……」ドサッ

狩人B「あー、ミスった。失神させてもた」

狩人A「もっとチー牛リアクション楽しみたかったンゴ……」

狩人B「すまんな」

狩人A「ええんやで」ニッコリ

13: 2021/01/31(日) 01:43:10.566 ID:8EdW5duT0.net
狩人A「しゃーない。もうちょいボコってから、画像撮るで」

狩人B「せやな。またスレ伸びまくるで」

狩人A「ファッ!? ファッ!? ファッ!?」

狩人B「ファッ!? ファッ!? ファッ!?」

ドカッ! ガッ! ドゴッ! ガッ! ガッ! ドゴッ!

――――――

――――

――

14: 2021/01/31(日) 01:47:26.681 ID:8EdW5duT0.net
男「チー牛狩り……?」

刑事「ああ、これでもう10件目だ。被害者はいずれも意識不明の重体になってる」

刑事「ここらで被害を食い止めないと……」

男「ちょっと待ってくれ。そもそも“チー牛”ってのはなんなんだよ」

刑事「“チーズ牛丼を食ってそうな男”を表すネットスラングで、一言でいや根暗男を指す言葉だ」

男「さっぱり分からん」

刑事「このイラストを見せた方が分かりやすいか」サッ

男「眼鏡かけて冴えないツラしてんな」

刑事「被害者は全員、このイラストの男みたいな外見をしていた」

刑事「こういう奴をボコボコにしてヒーロー気取りしてる奴がいるってことだ」

男「ヒーロー気取り?」

刑事「犯人はチー牛をボコったら、掲示板にスレを立てるんだ。『ぬんJ』って匿名掲示板にな」

男「どこぞの大統領みたいな名前だな」

刑事「ほら、こんな具合だ」

15: 2021/01/31(日) 01:50:18.447 ID:8EdW5duT0.net
『スレ:【速報】チー牛狩ったから見てくれや>画像』

『ほとんど氏んどるやんけ。こんなん草生えるわ』

『まーたチー牛が罰を受けてしまったのか…』

『次はちゃんと頃してクレメンス』

『ファーwwwwww』

『【朗報】チー牛さんまたまた狩られてしまう…』

『最高や! 人の不幸は蜜の味や、サンガツ!』



男「なんだこりゃ……。日本語だけどこれ本当に日本の掲示板なのか? メキシコとかじゃなくて?」

刑事「紛れもなく日本の掲示板だ」

男「まだまだ22世紀は先だけど時はまさに世紀末だな」

16: 2021/01/31(日) 01:52:30.993 ID:8EdW5duT0.net
男「つか、自分から画像までアップしてるんだから、とっとと捕まえりゃいいじゃないか」

刑事「ところが、この『ぬんJ』はいわゆる闇サイトでな。発信元を特定できない仕組みになってる」

刑事「犯人は二人組らしいんだが、どっちも奇妙な覆面をつけてて、なかなか尻尾を出さない」

男「なるほどな……。特定の誰かを狙うわけじゃない犯罪が一番厄介だからな」

刑事「ああ、被害者の人間関係から洗うこともできない」

男「で、俺にやって欲しいことは?」

刑事「ずばり、チー牛狩りを捕まえて欲しい」

17: 2021/01/31(日) 01:55:27.717 ID:8EdW5duT0.net
男「ダーティワーカーの俺に依頼するってことは……」

男「無傷で捕える必要はない……というか求められてないってことでいいんだよな?」

刑事「ああ……」

刑事「実は被害者の中に有力者の息子が混じってたらしくてな。そいつがカンカンなんだと」

男「ようするに、ただ逮捕するだけじゃ飽き足らず、制裁を期待してるってことか」

刑事「そうだ。となると頼めるのはお前しかいない。警察がそんなことするわけにはいかんからな」

男「分かった、引き受けよう」

刑事「ありがたい。報酬は――」

男「いや、今回は金はいいや」

刑事「金にがめついお前が珍しいな」

男「そういうバカどもは俺も嫌いだからな。たまにはロハで引き受けるのも悪くない」

18: 2021/01/31(日) 01:59:10.352 ID:8EdW5duT0.net
ウイーン…

男「ご無沙汰」

女美容師「あらぁ、いらっしゃい」

男「予約してないけどいいかな?」

女美容師「もちろんよぉ、あなただったら24時間お待ちしてまぁす」

男「今日はこういう風にしてもらいたいんだが――」

女美容師「え、なにこれ!?」

20: 2021/01/31(日) 02:01:25.095 ID:8EdW5duT0.net
ガチャッ

男(眼鏡屋なんて初めて入るな)

中年「いらっしゃいませ」

男「この店で一番ダサイ眼鏡が欲しい」

中年「へ?」

男「ああ、ついでに伊達メガネにしてもらえるとありがたい。ぶ厚いレンズで」

中年「変わった注文をするお客さんだ……」

22: 2021/01/31(日) 02:04:39.323 ID:8EdW5duT0.net
鏡を見つめる。

眼鏡男「うん……うん」

眼鏡男(どっからどう見てもチー牛だな。バッチリだ)

眼鏡男(試しに……)

――

眼鏡男「あ、社会のゴミが道を歩いてる」

チンピラ「なんだと!? てめえ、殴られてえか!?」ガシッ

眼鏡男「俺だよ」サッ

チンピラ「ゲッ!? す、すいませんっ! 殺さないで!」

眼鏡男「ハハ、気づかなかったか。オーケーオーケー、テスト成功だ」ポンポン

チンピラ(あの人、なんであんな格好を……!?)

23: 2021/01/31(日) 02:07:24.607 ID:8EdW5duT0.net
眼鏡男(町中をぶらぶら歩く……)

眼鏡男(なるべく挙動不審に……周囲にビクビクしながら……いかにも職質される感じで……)

眼鏡男(歩く……歩く……)

眼鏡男(なりきる……なりきる……)

眼鏡男(そろそろいいだろ。あの牛丼屋に入るとしよう)

24: 2021/01/31(日) 02:10:17.838 ID:8EdW5duT0.net
眼鏡男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」

――

眼鏡男「ごちそうさまでした。大変おいしかったです」

眼鏡男(さて、どうなる――)

狩人A「SSRチー牛発見したンゴ!」

狩人B「親の金で免許取ってそう」

眼鏡男(釣れた……)

25: 2021/01/31(日) 02:13:28.326 ID:8EdW5duT0.net
路地裏に連れ込まれる。

眼鏡男「な、なんですかあなたたちは!?」

狩人A「“チー牛狩り”や」

狩人B「お前みたいなんをハントするのが趣味なんや」

狩人A「そろそろワイら、ハンターハンターにも登場できるんちゃう? もうプロハンターやろ」

狩人B「草生える。その前に連載再開してもらわんとな」

眼鏡男「やめて下さいっ! お金なら払いますからっ!」

狩人B「金なんかいらんわ。ま、とりあえず……一発喰らっとけや」

バキィッ!

26: 2021/01/31(日) 02:15:20.518 ID:5dV60RYZr.net
冨樫仕事しろ

29: 2021/01/31(日) 02:16:49.589 ID:8EdW5duT0.net
狩人B「ぶっ……!?」

狩人A「どうした!?」

狩人B「こいつ……!」ボタボタ

眼鏡男「どうした、ハンターども」

眼鏡男「ひょっとして獲物がウサギじゃなくライオンだった時のことは想定してなかったか?」

狩人B「てめえ、やりやがったな……!」

眼鏡男「さっきまでの奇妙な関西弁はどうした。最後までキャラ貫けよ」

狩人B「ブッ頃してやるゥ!」

30: 2021/01/31(日) 02:19:30.595 ID:8EdW5duT0.net
ズブッ!

右目に指を突っ込む。

狩人B「ギャアアアッ!」

眼鏡男「やろうと思えば両目イケたが……完全失明は勘弁しといてやるよ」

指を突っ込んだまま、投げ飛ばし、頭から叩きつける。

ズドンッ!

狩人B「あ、が……」ビクッビクッ

ガゴッ!

トドメに顔面踏みつけ。靴の裏に折れた歯がこびりつく。

31: 2021/01/31(日) 02:22:21.645 ID:8EdW5duT0.net
狩人A「あ……あ……」

眼鏡男「どうした、かかってこい。ハンターってのは獲物が大物なほど燃えるもんだろ」

狩人A「うおおおおおっ!」

金属バットをやみくもに振り回す。

眼鏡男「そんなスイングじゃ、バッティングセンターの80キロボールも打てないぜ」

眼鏡男「しかもこっちのボールは……がら空きだ」

グシャンッ!

股間を蹴り上げる。何かが潰れた音がした。

狩人A「……!」

ドサッ…

32: 2021/01/31(日) 02:24:35.453 ID:8EdW5duT0.net
眼鏡男「あとは……二人とも知恵の輪に見えるぐらい手足ヘシ折って、交番近くに捨ててやるか」

眼鏡男「せいぜいリハビリ頑張りな、お二人さん」



――――――

――――

――

34: 2021/01/31(日) 02:25:31.773 ID:vCuioxmEa.net
第二第三のハンターが

35: 2021/01/31(日) 02:27:43.238 ID:8EdW5duT0.net
刑事「仕事が早いな。ったく大したもんだ」

男「それがセールスポイントの一つなもんでね」

刑事「しかし、逮捕した二人、素性を調べたらちょっと格闘技経験があるぐらいの普通の若者だった」

刑事「それがあんな風になっちまうなんてなぁ……」

男「人間何がきっかけで変わるか分からんもんさ」

男「きっかけさえありゃ、俺やお前だって明日銀行強盗にでもなってるかもしれない」

刑事「お前の相手をするのは御免こうむりたいよ」

刑事「ところで今回の事件、なんでタダで引き受けてくれたんだ? ちゃんとした理由が知りたい」

男「ああ、悪い。この後用があるからここでお別れしよう」

刑事「はぐらかしやがって……まあいい。じゃあな!」

36: 2021/01/31(日) 02:30:38.231 ID:8EdW5duT0.net
ウイーン…

店員「いらっしゃいませー!」

男(タダで引き受けた理由? んなもん決まってるだろ)

男「すいません、三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします」







― 完 ―

37: 2021/01/31(日) 02:31:16.330 ID:vCuioxmEa.net

最後少し物足りなかったが

38: 2021/01/31(日) 02:33:02.713 ID:5dV60RYZr.net
納得のオチ

引用: 男「チー牛狩り……?」