1: ◆rsH9FLRPiM 2013/07/31(水) 13:23:53 ID:PI5bS/2c
この話は、

サシャ「コニー! 勝負しましょう!」コニー「勝負?」
ユミル「劇場のチケット?」ベルトルト「あっ!」
(逆視点:ベルトルト「このチケット、どうしよう……あれ!?」)

と、時系列的に繋がっています。
初めましての方は、

ライナー「サシャとコニーが、バカ夫婦その2になった」

ベルトルト「僕とユミルが、かりそめの恋人同士になった」

とだけご理解ください。
では投下します。

2: 2013/07/31(水) 13:26:08 ID:NolKuEas

アルミン「い、いきなり何を聞くんだよ、コニー」

コニー「いやだってさ、俺がサシャと付き合う前に相談のってもらった時、言ってただろ?」

コニー「好きな人のこと考えると、幸せだ、とかなんとか」

アルミン「あ……」

コニー「あれって、アルミンも好きな奴いるからそう言ったんだろ?」
3: 2013/07/31(水) 13:27:51 ID:UuVKfqaE

アルミン「い、いや、僕が言ったのは一般論だよ。だから今は、特に好きな子とかはいない、かな」

コニー「ふーん、そうなのか」

アルミン「う、うん」

コニー「まぁいいや。変なこと聞いて悪かったな」

アルミン「ううん。コニーはその後どう? サシャとうまくいってる?」

コニー「ん……まぁな」テレッ

4: 2013/07/31(水) 13:30:23 ID:PI5bS/2c

ライナー「まぁな、じゃ駄目だろうコニー!」バターン!

コニー「なっ、ライナー!?」

ライナー「お前な、サシャはあの食欲を差し引けばかなりいい女だぞ? 顔もいいしスタイルもいい」

コニー「そ、そんなことはわかってるよ」

ライナー「いーやわかってない。お前はどうも慢心が過ぎる。うかうかしてたら他のやつにとられるかもしれないんだぞ?」

コニー「へ? とられる?」

ライナー「そうだ。お前がもたもたしてる間に、こっそり他の奴がサシャを横取りするかもしれない」

コニー「そ、そんな奴がいるのかよ!?」

5: 2013/07/31(水) 13:32:20 ID:UuVKfqaE

マルコ「またライナーがコニーに兄貴風吹かせてるの?」

アルミン「うん。もう慣れたねこの風景」

ベルトルト「ライナー……何をやってるんだ君は」ハア

ジャン「ちくしょう、俺もミカサと……!」ボソボソ

エレン「お前ら何で固まってんだ? もう消灯時間になるぞ」

ジャン「……」イラッ

エレン「何だよジャン。人の顔睨みつけて」ムッ

ジャン「うるせぇうらやましい!!」クワッ

エレン「はぁ!?」

6: 2013/07/31(水) 13:34:07 ID:PI5bS/2c

マルコ「そこまでにしよう。もう本当に寝ないと。みんな今日疲れてるでしょ?」

アルミン「そうだよ。早く寝ないと教官が来ちゃうよ」

コニー「やべっ、ベッドに戻らねぇと。ありがとなライナー!」

ライナー「おう、またな」

ベルトルト「灯り消すよー」

フッ…

7: 2013/07/31(水) 13:34:29 ID:ssXdFyzU

アルミン「……」

アルミン(好きな人、か……)

アルミン(……)

アルミン(本当はいるなんて、言えないよな……)

8: 2013/07/31(水) 13:37:46 ID:UuVKfqaE


食堂

ミカサ「エレン、アルミン、おはよう」

アルミン「ミカサおはよう」ガタン

エレン「ふぁ……ねみ」ドスン

ミカサ「エレン、ちゃんと寝れてないの?」ガタン

エレン「そんなんじゃねぇけど、疲れが抜けねぇんだ」

アルミン「昨日の立体機動訓練、エレンすごく飛ばしてたもんね」

ミカサ「エレンは無理をしすぎ。体が追いついてない」

アルミン(まぁ、無理をさせてるのはミカサなんだけどね……エレンがミカサと張り合おうとするから)

12: 2013/07/31(水) 13:41:31 ID:LIuhK/Ng

ライナー「アルミン、ここいいか?」

アルミン「え? あ、うんいいよ」

ライナー「サンキュ」ガタン

エレン「おー、ライナー、ベルトルト」

ベルトルト「おはよう。今日って何から始まるんだっけ?」ガタン

アルミン「固定砲の整備点検かな」

エレン「あー、あれめんどくさいんだよな」ハア

ミカサ「でも、いきなりハードな訓練をやるよりはまし。エレンが疲れてるのなら尚更」

アルミン「そうだね」フフッ

ユミル「おい、ここのテーブル、まだ空いてるか?」

13: 2013/07/31(水) 13:42:54 ID:D9/.Ja3Y

アルミン「!」

ベルトルト「うん、まだ余裕あるよ」

ユミル「んじゃここでいっか」ガタン

アルミン(ユミルがこっちに来た……てことはもしかして)

ユミル「おーい、クリスタ!」

アルミン「!!」ドキン

14: 2013/07/31(水) 13:44:40 ID:LIuhK/Ng

クリスタ「あっユミル! もう、どこ行っちゃったのかと思った」

ユミル「席探してたんだよ。ほら」ガタン

クリスタ「ありがと」ストン

アルミン(クリスタ……)

ライナー「おぉ、クリスタ! おはよう」

クリスタ「おはよライナー。皆も」

アルミン「お、おはよう!」

15: 2013/07/31(水) 13:45:52 ID:D9/.Ja3Y

ライナー「クリスタが来ると、テーブルが一気に華やかになったな」

クリスタ「そっ、そんなことないよ」テレッ

ユミル「おいライナー」ギロ

ライナー「何だ? 俺は思ったことをそのまんま言っただけだぜ?」

ベルトルト「でも、女子の中でクリスタだけをとりあげるのは、ユミルやミカサに対して失礼じゃないかな」

ユミル「そこはどうでもいいんだよベルトルさん。私が言いたいのは、私の目の前で勝手にクリスタ口説いてんじゃねぇってことだ」

16: 2013/07/31(水) 13:47:20 ID:zl99jIco

ライナー「全く、手厳しいこって」

クリスタ「もう! やめてよユミル。ごめんねライナー」

アルミン「……」

エレン「アルミン? どうした、食べないのか?」

アルミン「え? う、ううん! 食べる、食べるよ」

20: 2013/07/31(水) 14:01:27 ID:raj0cEFI

兵舎廊下


アルミン「……」テクテク

アルミン「……はぁ」

アルミン(最近、気がつくとクリスタのことばっかり目で追いかけてる)

アルミン(僕よりずっとちっちゃくて、華奢な体つきで、お人形みたいに整った顔立ちで)

アルミン(……最初はただ、凄く可愛い子がいるな、って、そう思っただけだったのに)

アルミン(今は、彼女が可愛いからつい見てしまうとか……そういう感じではない気がする)

アルミン(だって――)

クリスタ「アルミン!」

21: 2013/07/31(水) 14:03:01 ID:1NlYELMQ

アルミン「えっ!?」ハッ

クリスタ「どうしたの? もうみんな外に出ちゃってるよ?」

アルミン「え……あっ!」

クリスタ「アルミンがぼーっとしてるなんて珍しいね。何かあった?」

アルミン「いっ、いや、何でもないよ」

クリスタ「そう? ならいいんだけど。今日も頑張ろうね!」ニコッ

アルミン「!」ドキン

22: 2013/07/31(水) 14:04:58 ID:raj0cEFI

アルミン(……そうだ、クリスタは)

アルミン(可愛いだけじゃない。誰よりも優しくて、僕なんかにも気を使ってくれる)

アルミン(本当にこんな子がいるんだって思えるくらい、非の打ち所がなくて――)

アルミン「……」

アルミン(確かに、クリスタのことを考えると幸せになる。でも一方で、不安な気持ちを押さえられない)

アルミン(僕なんかが、好きになっちゃいけなかったんじゃないか?)

アルミン(僕なんかには絶対に、届かぬ花なんだから)

24: 2013/07/31(水) 14:06:39 ID:Z0LpzY56

午前
固定砲整備点検


エレン「地味だよなーこの作業」キュッキュッ

コニー「まぁ楽なのはいいけどさ」カチャカチャ

ミーナ「きゃっ! 火薬がこぼれた!」バサー

トーマス「え!? おいおいミーナ!」

サシャ「あっ! 芋がこぼれました!」ゴロゴロ

コニー「お前は盗むんじゃねぇよ!」

ワーワーギャーギャー

25: 2013/07/31(水) 14:08:22 ID:Z0LpzY56

アルミン(エレン達、楽しそうだな)クスッ

アルミン(あ、奥にクリスタが見える)

アルミン(――ライナーと、一緒か)ズキッ


『うかうかしてたら他のやつにとられるかもしれないんだぞ?』


アルミン「……」

アルミン(別に僕は、クリスタを自分のものにしたいとか、そういうんじゃないと思う。けど)

アルミン(……なんだろう。この気持ち)

26: 2013/07/31(水) 14:12:49 ID:z7BDrgsc

ミカサ「アルミン?」

アルミン「え? 何、ミカサ」

ミカサ「浮かない顔してる。何かあったの?」

アルミン「えっ、そ、そう? 何にもないよ」

ミカサ「ならいいけど、何かあるなら素直に言って。アルミンは昔から、悩みを抱え込みやすいから」

アルミン「……ありがとう、ミカサ」

アルミン(気持ちは嬉しいけど、女の子のミカサに話すのは、ちょっと照れ臭いかな……)

40: 2013/08/01(木) 00:36:31 ID:pZsaEnA.

午後
資料室


アルミン「……」パラ…

アルミン「……はぁ」パタン

アルミン(駄目だ。集中できない。頭の中でライナーの言葉と、クリスタの笑顔がぐるぐる回ってる)

アルミン(このままじゃいけないな……やっぱり、誰かに相談しようかな)

アルミン(それじゃあ、エレンに? でも、エレンは正直こういったことには疎いから、相談相手には向かない気がする)

アルミン(なら、前に相談にのってあげたコニー? でもコニーは自分が成功しているし、僕の複雑な気持ちを打ち明けても、わかってもらえないかもしれない)

アルミン(僕にもわからない僕の気持ちを汲み取って、助言してくれそうなのは――)

ガチャッ

マルコ「あっ、先客がいたみたいだね」

41: 2013/08/01(木) 00:37:08 ID:pZsaEnA.

アルミン「!」

マルコ「やぁアルミン。君も座学の課題、調べに来たの?」

アルミン(そうだ、マルコなら)

アルミン「ねぇマルコ……相談があるんだ」

マルコ「相談? 僕に?」

アルミン「うん。いいかな?」

マルコ「もちろん。アルミンの相談にのるなんて初めてかな。僕にできることがあるなら何でもするよ」

アルミン「ありがとう。あの、実は――」

42: 2013/08/01(木) 00:42:34 ID:pZsaEnA.




マルコ「へぇ……全然気づかなかったな。アルミンがクリスタのこと、そんな風に想ってたなんて」

アルミン「あ、あのマルコ、このことは」

マルコ「もちろん誰にも言わないよ」

アルミン「ありがとう」

マルコ「じゃあアルミンは、クリスタと付き合いたいって思ってるの?」

アルミン「つ、付き合う!? クリスタと!? そ、そんな畏れ多いよ! 僕とクリスタじゃ釣り合わないしっ」

マルコ「じゃあ、ライナーとクリスタだったら、釣り合うと思う?」

43: 2013/08/01(木) 00:46:56 ID:pZsaEnA.

アルミン「――え?」

マルコ「ライナーはあのミカサに次ぐ成績をキープしているから、本当に優秀な兵士だよね。回りからの人望も厚い、僕らの兄貴分だ」

マルコ「そのライナーなら、クリスタと釣り合うと思う?」

アルミン「……」ズキッ

アルミン「……思う、よ。思うけど」

マルコ「けど?」

アルミン「……」

マルコ「ごめんね、意地悪なことを聞いて。でも、今のでアルミンが本当はどう思っているのか、わかってきたよ」

44: 2013/08/01(木) 00:49:16 ID:pZsaEnA.

アルミン「どういうこと?」

マルコ「アルミン今、クリスタとライナーの姿を思い浮かべたよね」

アルミン「うん」

マルコ「辛くはなかった?」

アルミン「……辛い、かも」

マルコ「胸が痛くなかった?」

アルミン「痛いかも」

マルコ「本当にクリスタが好きなんだね」

アルミン「なんか恥ずかしいな」カアア

46: 2013/08/01(木) 00:51:20 ID:pZsaEnA.

マルコ「じゃあ、恥ずかしいついでに聞いて欲しいんだけど、アルミン」

アルミン「何?」

マルコ「君は十分、魅力のある男だよ」

アルミン「へ?」

マルコ「君はクリスタに負けず劣らず、誰に対しても物腰柔らかで優しい。とても頭が良くって、みんなから一目置かれてる」

マルコ「運動能力にコンプレックスがあるみたいだけど、自分に言い訳せず、芯が強くて絶対にめげない」

マルコ「そんな君が、クリスタと釣り合わないわけないじゃないか」

アルミン「マルコ……」

48: 2013/08/01(木) 01:00:33 ID:pZsaEnA.

マルコ「別に何も、今すぐ想いを伝えろって言うわけじゃないけどさ」

マルコ「このまま何もしないで悩むよりは、自分の気持ちに正直になって、行動した方がいいんじゃないかな」

アルミン「!」

アルミン(気持ちに正直に……僕も、コニーにそう言ったっけ)

アルミン(言った本人が出来ないなんていうのは、格好悪いよね)

アルミン「……ありがとう。マルコ」

55: 2013/08/03(土) 14:16:28 ID:b5blT7vQ


男子寮


ライナー「だからな? 女は褒められるのが好きなんだ。一日一回は褒めることだな」

コニー「ふんふん……」メモメモ

ガチャッ

ライナー「お、アルミンにマルコ、戻ったか」

マルコ「ただいま。ライナー、またコニーをからかってるのかい?」

ライナー「何言ってる。俺はただこいつがサシャとうまくいくように、アドバイスしてやってるだけだ」

56: 2013/08/03(土) 14:20:33 ID:b5blT7vQ

コニー「別に今だって、うまくいってないわけじゃないけどな」

ライナー「このまま続けていくってのは案外大変なんだぜ?」

マルコ「まるで経験したような口ぶりだね」

ライナー「おっと、これ以上は黙っておくか」

アルミン「……」

ライナー「うん? アルミンどうした、人の顔じっと見て」

57: 2013/08/03(土) 14:26:27 ID:b5blT7vQ

アルミン「あのさ、ライナー」

ライナー「何だ?」

アルミン「最近、コニーの相談に乗ることが多いみたいだけど」

アルミン「その……自分のことはどうなの?」

ライナー「自分のこと?」

コニー「そっそうだ! お前、俺にばっかいろいろしゃべらせてばっかでずるいじゃねぇか」

ライナー「まぁ、特に進展がある話はないからな」

ライナー「しかし、やはり同期ではクリスタが一番かわいいよな。おまけに最近、特に俺に優しくなってきたような気がするんだ」

59: 2013/08/03(土) 14:33:30 ID:b5blT7vQ

コニー「そうなのか?」

ライナー「そう見えないか?」

コニー「俺には正直わかんねぇな」

ライナー「まぁそうだろうな」

コニー「何だよその言い方」ムゥ

ライナー「お前はサシャに一途でいればいいんだよ」

アルミン「ねぇ、ライナー」

61: 2013/08/03(土) 14:41:14 ID:b5blT7vQ

ライナー「うん? 何だ」

アルミン「クリスタのことが好き?」

ライナー「おいおい、急に改まって聞くなよ。照れるだろ」

アルミン「好きなの?」

ライナー「あぁ」

アルミン「そっか……」

62: 2013/08/03(土) 14:46:47 ID:b5blT7vQ

ライナー「アルミン?」

アルミン「あのさ、ライナー」

アルミン「僕、頑張るね」ニコッ

ライナー「――!」

63: 2013/08/03(土) 14:52:38 ID:b5blT7vQ

コニー「ん? 何を頑張るって?」

アルミン「内緒」

コニー「え?」

ライナー「……」

アルミン「そろそろ僕、ベッドに入るね。おやすみ」スタスタ

コニー「え、お、おい、アルミン?」

マルコ「……ふふっ」

64: 2013/08/03(土) 14:58:40 ID:b5blT7vQ

マルコ「さて、僕も自分のベッドに行こうかな」

ライナー「なぁ、マルコ」

マルコ「何だい?」

ライナー「お前は知ってたのか」

マルコ「ついさっき聞かされてね」

ライナー「てことは、お前らは共闘体制なのか」

マルコ「うーん、どうかな。結局はアルミン次第だし。でもアルミンの相談に乗った以上、君の協力はできないね」

ライナー「そうか」

65: 2013/08/03(土) 15:07:42 ID:b5blT7vQ

コニー「なぁ、何の話をしてるんだ? お前ら」

ライナー「強大な連合軍に立ち向かう兵士の話だ」

コニー「はぁ?」

マルコ「大げさだよライナー」

ライナー「ちっとも大げさじゃないさ」

コニー「だから一体なんの話なんだっつの」

ライナー「さて、そろそろお開きにするか」

マルコ「そうだね。おやすみ」

コニー「おい!」

68: 2013/08/04(日) 16:05:56 ID:XpHLCYDA


翌朝
男子寮


エレン「ふぁ……おはよアルミン」

アルミン「おはようエレン」

エレン「ん? アルミン、なんか今日すっきりした顔してないか?」

アルミン「そうかもね」

ライナー「アルミン。昨日のことなんだが」

69: 2013/08/04(日) 16:13:00 ID:XpHLCYDA

アルミン「なぁに?」

ライナー「その、アルミンからあんな風にキッパリ言われるとは思ってなくてな。昨日は何も言えなかったが」

ライナー「……だが、ああ言われた以上、俺も手加減はしないぞ?」

アルミン「まるで勝負事みたいだね」

ライナー「勝負だろう、これは。欲しいものをどちらが手に入れるかのな」

アルミン「僕は彼女を賞品みたいに扱いたくはないな」

ライナー「そんなつもりで言ったんじゃないが……だが実質そうだろう?」

70: 2013/08/04(日) 16:14:46 ID:XpHLCYDA

アルミン「……」

ライナー「だからといって、お前と険悪な仲にはなりたくないんだ。兵士としての誇りにかけて、決して貶めるような真似はしない」

アルミン「それは、勿論僕もそのつもりだよ」

ライナー「そいつはよかった。これで俺たちは仲間であると同時に、好敵手になったわけだ。まぁお手柔らかにな」

アルミン「……そっちもね」

ジャン「お前ら何こそこそ話してんだ? 早く食堂行くぞ」

コニー「そうだ、忘れないうちにサシャを褒めなきゃな! 行くか!」

71: 2013/08/04(日) 16:21:37 ID:XpHLCYDA

食堂


サシャ「あ、コニー! おはようございます!」

コニー「おはよサシャ。えーっと、えーっと」

サシャ「?」

コニー「きょ、今日も元気だな!」

サシャ「へっ? は、はい」

コニー「よし、これで一回だよな」ウンウン

サシャ「えっと、何のことでしょうか」

72: 2013/08/04(日) 16:31:16 ID:XpHLCYDA

アルミン(コニー……何か間違ってる気がするなぁ)

アルミン(――あ、クリスタがいる。よし……)

アルミン「ク、クリスタ。その、隣」

ライナー「クリスタ、隣空いてるか?」

アルミン(!)

クリスタ「あ、ライナーおはよう。うん、いいよ」ガタン

73: 2013/08/04(日) 16:33:57 ID:XpHLCYDA

アルミン(駄目だ……緊張しちゃって、どうしてもまともに声をかけられない)

クリスタ「アルミン? どうしたの?」

アルミン「えっ?」ハッ

クリスタ「まだ起きたばっかでぼーっとしてるの? 座りなよ」クスッ

アルミン「あ、う、うん! おはよう、クリスタ」ガタン

アルミン(やっぱり優しいな……斜め前の席だけど、会話するには十分だ)

74: 2013/08/04(日) 16:42:19 ID:XpHLCYDA

ライナー「今日はユミルと一緒じゃないんだな」

クリスタ「ユミル、今朝は朝食当番だから」

ライナー「そういや、昼食当番は俺たちの班だったな。よろしくなクリスタ」

クリスタ「うん! がんばって美味しいもの作ろうね」

ライナー「クリスタが作るんだ。美味しくなるに決まってるさ」

クリスタ「そんな、買いかぶり過ぎだよ。私なんて」

アルミン(……あれ、会話に入れない)ズーン

マルコ「おはよう。まだ席空いてるかな?」

75: 2013/08/04(日) 16:44:11 ID:XpHLCYDA

ライ・アル「「!」」

クリスタ「わっ、マルコ! おはようっ」

マルコ「おはよう。そんなにびっくりした? クリスタ」

クリスタ「だって、後ろから来るなんて思わなかったから」

マルコ「ごめんごめん。アルミン、そっち空いてる?」

アルミン「うん!」

マルコ「よかった」スタスタ ガタン

77: 2013/08/04(日) 17:06:53 ID:XpHLCYDA

クリスタ「マルコ遅かったね。当番じゃなかったよね?」

マルコ「ちょっと資料室に行ってたんだ」

アルミン「最近入りびたりだね」

マルコ「今日の座学がどうしても心配でさ」

ライナー「そういや今回は、かなり重い課題が出たな。馬術と立体機動の切り替えに関してだったか」

クリスタ「わたし、自信ない……なんか上手くまとまらなくて」

78: 2013/08/04(日) 17:16:47 ID:XpHLCYDA

アルミン「……ねぇクリスタ。よかったら座学の前に、課題見てあげようか?」

クリスタ「えっ、本当? いいの?」

アルミン「うん。勿論」

クリスタ「わぁっ、すっごく助かる! ありがとうアルミン!」パアア

アルミン「どういたしまして」ニコッ


ライナー「……流石だな」ジィー

マルコ「視線を向ける相手が違くないかい? ライナー」モグモグ

85: 2013/08/06(火) 13:47:39 ID:inpVspds

午前
座学始業前


アルミン(ノートはしっかりまとまってる。字も汚くない。説明もできる)

スゥー… ハァー…

アルミン(よし!)

ガラッ

クリスタ「あ、アルミン。こっちだよ」

アルミン「待たせてごめんね」タタッ

クリスタ「ううん、私が教えてもらうんだし。はい」ガタン

アルミン「あ、ありがと」ストン

アルミン(クリスタの隣! 初めて座った……)

86: 2013/08/06(火) 13:49:36 ID:GQlKqdNk

クリスタ「あっ、それ課題のノート?」

アルミン「うん。僕もうまくまとめられたかわからないけど」スッ

クリスタ「わっ、凄い! アルミン字キレイだね!」

アルミン(近い!)ドキン

クリスタ「うーん……でもやっぱり、難しいな……ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」

アルミン(クリスタ……いい匂いがする……)ドキドキ

クリスタ「アルミン?」

アルミン「えっ、あっ、ごめん!」

89: 2013/08/06(火) 16:59:05 ID:6MHGsJ9M

クリスタ「ここのとこ、聞きたいんだけと」

アルミン「あっ、うんいいよ。えっとね――」





アルミン「――だから、この場合は馬を乗り捨てて、ただちに立体機動に移る方が効率がいいんだ」

クリスタ「そっか! 凄いアルミン! とってもわかりやすい!」

アルミン「ありがと」

アルミン(うまく説明できてよかった……途中クリスタの肩が当たって声が上擦っちゃったけど)

クリスタ「あっ、人が増えてきた。もうすぐ始まるね」

アルミン「うん」

アルミン(今日はこのまま、クリスタの隣で座学の授業を受けるのか)

アルミン(幸せだなぁ……)

94: 2013/08/08(木) 13:19:39 ID:lSNumTno

座学始業


教官「では、課題内容の確認をする。レンズ訓練兵」

クリスタ「は、はっ!」ガタン

アルミン(クリスタ、頑張れ!)

教官「……この場合、馬での並走を続けるべきか、立体機動に移るべきか」

クリスタ「ただちに立体機動に移るべきです」

教官「理由は?」

クリスタ「えっと……」チラッ「第一に――」

95: 2013/08/08(木) 13:22:38 ID:lSNumTno

終業後


アルミン「クリスタ、お疲れ様」

クリスタ「いきなり当てられて緊張しちゃった」エヘヘ「でも、ちゃんと答えられてよかった! アルミンのおかげだよ」

アルミン「ううん、クリスタが頑張ったからだよ。僕は何もしてないさ」

クリスタ「そんなことない。アルミンが教えてくれなかったら、どうなってたかわかんないもん。本当にありがとう!」

アルミン「そ、そんな」テレッ

クリスタ「あっ、私お昼の当番だからもう行くね。また後でね!」フリフリ

アルミン「うん。またね」

パタパタパタ…

96: 2013/08/08(木) 13:31:31 ID:Hj42kdyw

アルミン(ほんと、天使だよなぁ)ホワー

アルミン(……昼食当番、ライナーとだっけ)

アルミン(……)

アルミン(いや、やめよう。そりゃ羨ましいは羨ましいけど、僕だって座学の時間中、ずっとクリスタを独り占めしてたわけで――ひっ、独り占め!?)カアア

97: 2013/08/08(木) 14:56:18 ID:Macl4gNo

アルミン(じゃなくて! とにかくライナーだってクリスタと一緒にいたいって思ってるはずなんだから……)


『お前と険悪な仲にはなりたくないんだ。兵士としての誇りにかけて、決して貶めるような真似はしない』


アルミン(……)


どうしてそんなことが言えるんだ

僕だって君のように堂々としていたい

対等の勝負を持ちかけてきた、君の邪魔をしたくない

なのに


『アルミン!』


心を彼女に独占されて

後ろめたい気持ちが膨らんでいく

98: 2013/08/08(木) 20:35:01 ID:Xr.G/l52


食堂


アルミン「……」ジィ…

ミカサ「アルミン、どこを見ているの?」

アルミン「えっ、あっ、いや、別に」アセアセ

エレン「何だ、厨房の方か? アルミンは食事当番まだだよな?」

アルミン「う、うん。まぁ馬小屋掃除の当番にはなってるんだけどね」

ミカサ「午後の馬術の後?」

アルミン「そうそう」

99: 2013/08/08(木) 20:43:32 ID:Nheig/Oc

コニー「あっ、馬鹿サシャお前! 俺のパンまで食うな!」

サシャ「え~駄目ですかぁ?」ウルッ

コニー「や、やめろ! その目だけはやめろっ!」

エレン「向こうのテーブル騒がしいな」

ミカサ「いつものこと」

アルミン「……」

エレン「でもあの二人、付き合い始めてから成績伸びたよな。コニーなんか、前は座学かなりギリギリだったのに」

ミカサ「……好きな人がいるから頑張れる、というのは、あると思う」

100: 2013/08/08(木) 20:55:25 ID:am8ln/ok

エレン「そういうものなのか?」

ミカサ「そういうもの」ジッ…

エレン「何だよ? 人の顔じっと見て」

ミカサ「何でもない」

アルミン「……」

エレン「アルミン?」

アルミン「あっ、ごめん!」

101: 2013/08/08(木) 20:58:25 ID:xnyiNjDY

エレン「どうしたんだよ、ぼーっとして」

アルミン「う、ううん、何でもないんだ」

ミカサ「アルミン、嘘はよくない」

アルミン「えっ」ギクッ

ミカサ「昨日もぼんやりしてた。やっぱり何か悩みがあるんでしょう?」

アルミン「……」

ミカサ「アルミン、ちゃんと話してほしい」

103: 2013/08/09(金) 00:20:17 ID:sdlo9Kwc

アルミン「……その、羨ましいなぁ、って」

エレン「羨ましいって? 何が?」

ミカサ「……コニーと、サシャ?」

アルミン「うん。さっきミカサが言ってたことにも関係するんだけど」

アルミン「あの二人が最近調子いいのは、やっぱり、お互い好き同士だからなんだろうなぁって」

アルミン「相手も自分を想ってくれているっていう、安心感っていうか」

アルミン「……そういうのがあるから、コニーもサシャも、お互いを高め合えるんじゃないかなって」

104: 2013/08/09(金) 00:22:25 ID:D5IUxiYw

エレン「そうなのか? ハンナとフランツなんてただイチャイチャしてるだけで、お互いを高め合ったりなんかしてないと思うけど」

ミカサ「二人の性格と付き合い方によると思う。ついでにいうと、もう一組の方も大分タイプが違う」

エレン「もう一組って?」

ミカサ「ベルトルトとユミル」

エレン「えっ、あの二人付き合ってたのか!?」

ミカサ「そう見えないのも無理はない。あの二人はかなり淡白だから。でも、休日はどうやら一緒に出掛けているみたい」

エレン「あーでもそっか、道理で最近ベルトルトの奴、時々顔つきが穏やかになったり、休日が近づくとそわそわしだしたりしてたのか」

105: 2013/08/09(金) 00:28:20 ID:jwTUvRR2

ミカサ「だから、付き合い始めてからどんな関係になるかは、当人同士次第だと思う。そこにはお互い想い合っているという安心感も、きっと関わってくる」

ミカサ「アルミンがコニー達を羨ましいと思うなら、アルミンもあの二人みたいな関係を誰かと作っていけばいいだけ」

ミカサ「違わない?」

アルミン「ミカサ……」

アルミン「うん。そうだね。ありがとう」

アルミン(お互いに想い合う関係……)

アルミン(クリスタと、そんな関係になれたらいいな……)

107: 2013/08/09(金) 19:39:16 ID:91Ev89K6

ガチャッ

ガヤガヤ

エレン「おっ、当番の奴らが戻って来たな」

アルミン「!」

アルミン(クリスタ……どこに)

コニー「おー、お疲れ! お前ら」

ライナー「おう」

サシャ「今日のスープ、とっても美味しかったです!」

クリスタ「ありがとう、サシャ」

アルミン(……!)

108: 2013/08/09(金) 19:54:11 ID:91Ev89K6

アルミン(クリスタ……ライナーの隣にいる)

ジャン「なんか今日、いつもに増して疲れた気がするぜ」

マルコ「クリスタの味付け、すごく手が込んでたね」

クリスタ「えっ、ごめんね! 大変だった、よね」

マルコ「違うよ。それだけいいものができたってことだよ」

ライナー「全くだ。いつもは味気ないここの料理も、今日はクリスタのおかげで食うのが楽しみだぜ」

クリスタ「ほっ、本当? ありがとう!」パアッ

アルミン「――!」

109: 2013/08/09(金) 20:02:29 ID:91Ev89K6

アルミン(クリスタがライナーに褒められて、満面の笑みを浮かべている……)

アルミン(あぁ、駄目だ。また僕は)

アルミン(こんな嫌な気持ちになりたくはないのに)

コニー「お前ら早く座れよ。まだ飯食ってないんだろ?」

ジャン「そうだな。マルコ、ここで食わねぇ?」

マルコ「いいけど、ここじゃ全員入らなくないかな」

ライナー「だったら俺とクリスタは、ベルトルト達のテーブルに行けばいいさ」

アルミン(!!)ドクン

ライナー「いいだろ? クリスタ」

クリスタ「うん。いいよ」

110: 2013/08/09(金) 20:08:28 ID:91Ev89K6

ライナー「じゃ、また後でな」

クリスタ「みんなお疲れ様。午後も頑張ろうね」ニコッ

マルコ「……またね、二人とも」

コニー「クリスター! 午後の馬術よろしくなー!」

サシャ「美味しいご飯をありがとうございましたー!」ブンブン

アルミン「……」ジィ…

アルミン(ダメダメ、考えない考えない!)ズズッ

アルミン(――あ、ほんとだ。スープ、美味しいな……)

ズズッ…

111: 2013/08/09(金) 20:19:59 ID:91Ev89K6

午後
馬術訓練終業後


ミーナ「あー! 疲れたー!」

アニ「あんた今日、随分馬使い荒かったね」

ミーナ「違うよー。馬の方が落着きなかったの!」

エレン「お疲れ、ミカサ。アルミンは?」

ミカサ「馬小屋に向かっていった。掃除当番だから」

エレン「あ、そういやそうだったな」

112: 2013/08/09(金) 20:22:55 ID:91Ev89K6

馬小屋


アルミン「よっ……と」バシャッ

アルミン(おかしいな。なんで僕一人なんだ? 馬小屋掃除)

アルミン(普通二人で馬小屋って掃除するのに)

アルミン(僕一人でやるんじゃ大変だよ……)フゥ

馬「バフッバフッ」ブルブル

アルミン「あっ、ごめんね。水かかっちゃった?」ポンポン

113: 2013/08/09(金) 20:27:16 ID:91Ev89K6

ギイイ

アルミン「えっ?」

アルミン(扉が開いた? もしかして、当番の人が遅れてきたのかな)

アルミン(でも、誰だったっけ?)

パタパタパタ

ヒョコッ

クリスタ「あっ、アルミン!」

アルミン「えぇ!? クリスタ!?」ドキーン!

114: 2013/08/09(金) 20:37:02 ID:91Ev89K6

アルミン「な、何で――クリスタ、当番だったっけ?」

クリスタ「ううん、違うの。私、馬術訓練の後はいつもここに寄るんだ」

アルミン「え? どうして?」

クリスタ「ここにいるみんなに『お疲れ様』って言いにね」ポンポン

馬「ヒヒーン」ペロペロ

クリスタ「アルミンは、掃除の当番?」

アルミン「うん。もう一人は、何故かいないんだけど……」

クリスタ「もしかして、トーマスだったんじゃない?」

アルミン「えっ、あっ、そっか! トーマス、確か熱出して――」

115: 2013/08/09(金) 20:47:00 ID:91Ev89K6

クリスタ「じゃあ、アルミン一人で掃除してるってこと?」

アルミン「そういうことになるね。でも大丈夫だよ」

クリスタ「ううん、一人じゃ大変だよ。私、手伝ってあげる」

アルミン「え、でも悪いよ!」

クリスタ「いいの。この子たちのお世話もしたいし。やらせて?」

アルミン「クリスタ……」

アルミン(ここに来た理由もそうだけど……本当に、優しいな)

アルミン「……ありがとう。それじゃあ、お願いしてもいい?」

116: 2013/08/09(金) 22:15:25 ID:91Ev89K6

クリスタ「もちろん! 一緒に頑張ろ?」ニコッ

アルミン(可愛い……)ポー

クリスタ「……? アルミン?」

アルミン「あっ、いや、うん、頑張ろうね!」バシャバシャゴシゴシ





アルミン「あとはこの干し草を敷いて……っと」バサッ

アルミン「よし! 終わった!」

クリスタ「お疲れ様! アルミン」

アルミン「クリスタ、本当にありがとう」

117: 2013/08/10(土) 16:06:24 ID:S0B6J6nY

クリスタ「ううん、今朝の座学の、お礼だと思って?」

クリスタ「もう寮に戻らないとね。途中まで一緒に行こっか」

アルミン「うん!」パアッ

ギイイ

テクテク

クリスタ「もう日が暮れるね」

アルミン「そうだね……」チラッ

アルミン(クリスタ――手が小さいな)

118: 2013/08/10(土) 16:14:09 ID:S0B6J6nY

アルミン(夕陽に照らされて、白い肌に赤みが差して)

アルミン(金髪が風に揺れて輝いて)

アルミン(長い睫毛の一本一本が、目元に影を作っていて)

アルミン(そして――)

クリスタ「わぁ、空が綺麗! ねぇ見て、アルミン!」パアア

アルミン(あぁ……)

119: 2013/08/10(土) 16:26:49 ID:iIch5pHs


お願いだ、クリスタ。

僕の隣に、ずっといてくれ。


クリスタ「こんなに綺麗な茜色、私初めて見たかも!」


僕だけに、その表情を見せて。


クリスタ「日が沈むまで、ずっと見ていたいなぁ」


他の誰のものにもならないで。


クリスタ「でも、それだと夕食の時間に間に合わないかもしれないよね」エヘヘ


僕だけの、君でいて。

120: 2013/08/10(土) 16:55:43 ID:m/GtBZW.


クリスタ「アルミン……?」


首をかしげて僕を見上げる、その仕草も愛らしい。

手を伸ばせばすぐ届きそうなほど近くにいるのに、こんなにも、遠い。


アルミン「クリスタ……」


この気持ちは何なんだろう

今すぐ打ち明けてしまいたい

今すぐ叫んでしまいたい

この、胸が張り裂けるような衝動。

121: 2013/08/10(土) 17:06:29 ID:T1zh8rcA

アルミン「……」

アルミン「多分、時間はまだ大丈夫だと思う。だから……ちょっとゆっくり歩いて、もう少しだけ見てようか。空」

クリスタ「うんっ! ありがとう!」

アルミン「いいんだ。だって僕も――」

アルミン(……もう少し、クリスタと一緒にいたいから)

128: 2013/08/11(日) 14:34:46 ID:4mxEaiNU


資料室


ガチャッ

マルコ「やぁ。待っていたよ」

アルミン「やっぱりここにいたんだね」

マルコ「男子寮じゃ誰が来るかわからないからね。秘密の相談には適してない。そうだろう?」

アルミン「……」

マルコ「浮かない顔してるね」

129: 2013/08/11(日) 14:42:56 ID:4mxEaiNU

アルミン「わからないんだ」

マルコ「何が?」

アルミン「自分の、気持ちが……」

アルミン「昨日僕はこの場所で、自分の気持ちに正直になるって決めたのに」

アルミン「自分の望むがままに行動しようとすると、今まで気づかなかった黒い気持ちが見えてきて」

アルミン「僕がこんな気持ちを持っているなんて、信じられなくて……」

130: 2013/08/11(日) 14:59:07 ID:4mxEaiNU

マルコ「それは、どんな気持ちなの?」

アルミン「クリスタに……ライナーと一緒にいて欲しくない。いや、ライナーだけじゃない。他の男でも一緒だ」

アルミン「僕はライナーに、これはクリスタを取り合う勝負だって言われた。そう思うのは気が引けたんだ。クリスタを物みたいに扱うみたいで」

アルミン「だけど、いざライナーがクリスタの隣にいようとするのを見ると……彼を妨害してでも、クリスタを取り戻したいと思うようになって」

アルミン「それはまるで、僕が嫌っていた物扱いじゃないか」

アルミン「それに、ライナーは座学で僕とクリスタが一緒にいるとき、決して邪魔しようとしなかった。それどころかわざわざ、僕らから遠い席に座った。それも僕にはわかって

いた」

アルミン「彼は、正々堂々勝負するつもりでいるんだ。それをわかっていたっていうのに、僕は――」

131: 2013/08/11(日) 15:10:25 ID:4mxEaiNU

マルコ「……」

アルミン「何だんだろう、これ……こんな気持ち、初めてなんだ」

アルミン「これが自分だなんて思いたくなくて。こんな自分に素直になろうなんて、思えなくて」

アルミン「だって、この気持ちのままに行動したら……僕は自分でも許せなくなるくらい、身勝手な人間になる」

アルミン「僕の中に、こんな僕がいたなんてね――もしかしたら、これが本当の僕なのかも、なんて」

マルコ「ねぇアルミン、僕思うんだけど」

マルコ「それ、決して恥ずかしいことじゃないんじゃないかな」

132: 2013/08/11(日) 15:46:00 ID:4mxEaiNU

アルミン「え?」

マルコ「簡単にアルミンの気持ちを包括してしまうのは気が引けるけどさ」

マルコ「アルミンが今持ってる、その、つまり……独占欲とか、嫉妬とかっていう感情って」

マルコ「誰かを好きになったら、少なからずみんな心のどこかに生まれるんじゃないかな」

アルミン「そう、なのかな……」

マルコ「だったら、聞いてみるかい?」

アルミン「え? 誰に?」

マルコ「実はね、今日、助っ人を呼んでみたんだ。本人には何も伝えてないけどね」

ガチャッ

コニー「おーいマルコ! 座学教えてくれ!」

133: 2013/08/11(日) 21:23:11 ID:4mxEaiNU

アルミン「コニー?」

コニー「ん? アルミンもいるのか? もしかしてアルミンも、俺に勉強教えてくれるのか!」

アルミン「勉強?」

マルコ「最近、コニーに勉強を教えてあげてるんだ」

アルミン「そっか、コニーが最近、座学の成績を伸ばしてるのって……マルコが教えてたからなのか」

コニー「サシャに聞くのはやっぱ、男としてのプライドが許さないからな!」

マルコ「だろうね。サシャと一緒に憲兵団に入りたいんだもんね」

コニー「おい言うなよマルコ!」カアッ

134: 2013/08/11(日) 21:30:02 ID:4mxEaiNU

マルコ「ごめんごめん。でも、ほんとに凄いと思ってるんだ。あれだけ勉強嫌いだったコニーが、ここまで頑張るようになるなんて予想もつかなかったから」

コニー「まぁ、そうだよな。俺もそうだし」

アルミン「確かにコニーの今の成績なら、憲兵団入りも夢じゃないよね」

マルコ「サシャもそうだよ。立体機動は勘頼りだったところがあったのに、今は結構俊敏な動きもするようになったよね」

コニー「あいつ俺より背高いくせに、教えたらすぐ小回りの効いた動き出来るようになったんだぜ? なんか不公平だよな」

マルコ「でも安心したよ。二人が順調なようで。告白の時はあれだけ見せつけてくれたのに、上手くいってなかったら悲しいし」

コニー「見せつけてねぇよ! お前らが勝手に覗き見してたんだろ!!」

135: 2013/08/12(月) 01:20:24 ID:/f47rGUg

アルミン「……あのさ、コニー」

コニー「うん?」

アルミン「前コニーに言ったこと、覚えてる? サシャと付き合う前に、サシャが好きだってことを最初認めなかった君に言ったこと」

コニー「んー、あぁ、『サシャが好きなら素直になれ』ってことか?」

アルミン「そう、そんな感じ……素直になってみて、何か後悔するようなことはなかった?」

コニー「後悔?」

アルミン「その、例えば、誰かに迷惑をかけたりとか、傷つけたりとか……しなかった?」

コニー「あー……なんかあったかも」

アルミン「! どんな?」

136: 2013/08/12(月) 01:21:40 ID:/f47rGUg

コニー「その……今思い返すと馬鹿らしいんだけど、ジャンがさ」

マルコ「ジャン?」

コニー「あー……お前ら、これ絶対誰にも言うなよ?」ポリポリ

コニー「サシャが気になってから、どうもジャンとサシャが、仲良さそうに見えてきたんだ」

コニー「気持ちを自覚してからは、余計にそれが気になって……ジャンに、サシャを取られたくないって思ったかな」

アルミン「!」

マルコ「でもそれと、ジャンに迷惑かけたってのとは、どう繋がるんだい?」

137: 2013/08/12(月) 01:23:49 ID:/f47rGUg

コニー「俺、馬術の訓練の時、ジャンとサシャと同じ班になったんだ。ジャンに負けたくなくて、サシャの前でカッコつけようとして――無茶な動きをした」

コニー「そしたら、馬が制御できなくなって、落ちそうになったんだ。それをジャンが、体を張って助けてくれた」

マルコ「そっか、あの日ジャンが負傷して医務室に行ったのは、そういう――」

コニー「ホントに馬鹿だよな、俺。勝手な思い込みで、ジャンに怪我させちまったんだ。大事にならなくてほんとよかったけどさ」

アルミン「――コニーは、ジャンに嫉妬して、その結果ジャンに怪我させちゃったこと、後悔してるの?」

コニー「んー……後悔っていうか、なんかちょっと違うかも」

アルミン「えっ?」

138: 2013/08/12(月) 01:25:02 ID:/f47rGUg

コニー「だってよ、別に俺は、ジャンに怪我させたことは悪いって思ってるけど、ジャンに嫉妬したことは別に悪いって思わないからな」

コニー「そりゃ、反省はしなきゃいけないし、実際してるんだけど……でもさ」

コニー「あの後、ジャンの見舞い行って、全部ぶちまけて謝ったんだ。そしたら」

マルコ「そしたら?」

コニー「一発はたかれて、『バーカ』って言われた。それだけ」

マルコ「へぇ。優しいじゃないか」

139: 2013/08/12(月) 01:26:03 ID:/f47rGUg

コニー「だからまぁ、嫉妬こじらせてジャンに迷惑かけたのは反省してるけど、後悔してるっていう感じでは、ないかもな」

コニー「それに、今でも嫉妬することはあるし。それでサシャを傷つけることも、たまにある」

アルミン「そうなの?」

コニー「まぁ、お互い様なんだけどな」

アルミン「そっか……」

コニー「何だ? いきなりそんなこと聞いてきて」

140: 2013/08/12(月) 01:27:16 ID:/f47rGUg

アルミン「ありがとう、コニー。お礼に君に助言をひとつあげる」

コニー「ん?」

アルミン「明日も、サシャを褒めるつもりなんだよね」

コニー「おう」

アルミン「だったら、いつもだったら言えないような、照れくさいセリフを言ってみて」

コニー「は?」

アルミン「自分で言うのは恥ずかしいけど、サシャが聞いたら絶対喜ぶセリフを、言ってあげてよ」

141: 2013/08/12(月) 01:28:27 ID:/f47rGUg

コニー「……どういうことだ?」

アルミン「続きは、座学の勉強進めながら話そうか」

コニー「おっ、協力してくれるのかアルミン! 助かるぜ!」

マルコ「じゃあもしかして、僕は用済みかな?」

アルミン「とんでもない。マルコも一緒にやろうよ」

コニー「マルコの解説は解りやすいからな!」

マルコ「ふふ。ありがとう。じゃあ始めようか」

142: 2013/08/12(月) 01:37:35 ID:/f47rGUg




コニー「お疲れ! ありがとうな二人とも!」

アルミン「ううん、僕もいい復習になったよ」

マルコ「僕もだよ。またやろう」

コニー「おう! ……って、もうこんな時間かよ。入浴時間もあるし、そろそろ行くか」

マルコ「僕は資料を片づけてからにするよ。先に行ってて」

アルミン「僕も、一冊貸出許可もらっていきたいから」

コニー「そっか、じゃあまた後でな!」

ガチャッ パタン

143: 2013/08/12(月) 01:46:44 ID:/f47rGUg

アルミン「……ありがと、マルコ」

マルコ「僕は何もしてないよ」

アルミン「ううん、そんなことないよ。コニーから話が聞けててよかった」

マルコ「にしても、アルミンがコニーにあんなこと言ってたなんてなぁ。僕が言ったことにそっくりじゃないか」

アルミン「まさか他人への助言が自分に返ってくるとは思わなかったよ」

マルコ「ねぇアルミン。アルミンはこのまま自分に素直になったら、何を後悔すると思ったの?」

マルコ「ライナーやクリスタを傷つけること? それとも――クリスタを好きになったこと?」

144: 2013/08/12(月) 01:48:19 ID:/f47rGUg

アルミン「……」

アルミン「両方、かな」

アルミン「でも、もうそんな必要ないって気づいたよ」

アルミン「身勝手だけど……身勝手なままでも、いいと思った。この気持ちも僕だから」

マルコ「ライナーもあまり表に出さないだけで、きっと似たような気持ちを持ってると思うよ」

アルミン「そうだね。僕の中で、クリスタを好きだから生まれた感情なら、それは全部、僕なんだ――」

148: 2013/08/12(月) 14:33:54 ID:ImofUnAU

翌朝
男子寮


コニー「……」

ジャン「コニー? どうしたんだお前」

コニー「いっ、いや、何でもねぇ! 何でもねぇんだ!」アセッ

エレン「何か顔赤くないか? 大丈夫かよお前」

コニー「だっ、大丈夫だって! 心配すんなよ!」ダラダラ

149: 2013/08/12(月) 14:35:31 ID:ImofUnAU

ベルトルト「……コニー、なんか企んでる?」

コニー「えっ」ギクッ

アルミン「ふふっ、昨日の夜ずっと考えてたみたいだね」

マルコ「コニー、何を言うかはもう決まった?」

コニー「うっせ! 行くぞっ!」

ライナー「何じゃれ合ってんだ? お前ら」

150: 2013/08/12(月) 14:36:54 ID:ImofUnAU

食堂


サシャ「おはようございます! コニー!」

コニー「お、おう、サシャ、えっと」

サシャ「?」

コニー「えっと、あの、その……」

コニー「っだー! やっぱ無理だ! てかなんでこんな所で言おうと思ったんだ俺!!」ジタバタ

サシャ「コニー? どうしたんですか?」キョトン

151: 2013/08/12(月) 14:38:23 ID:ImofUnAU

コニー「いや、そりゃ、どんなこと言ったらいいかは分かるけど、分かるけどでも!」

サシャ「コニー、ちょっと落ち着いてください」ギュッ

コニー「!」ドキン

サシャ「手、凄く熱いですよ。顔も赤いですし、汗も出てます」

コニー「……」

サシャ「熱があるんじゃないんですか? 具合悪いんですか?」

152: 2013/08/12(月) 14:45:05 ID:ImofUnAU

コニー「……ありがとな、サシャ」

サシャ「えっ、何がですか?」

コニー「心配してくれて」

サシャ「そんなの、当たり前じゃないですか。彼女なんですから」

コニー「そう、だよな……俺、お前が彼女で、ほんとによかったよ」

サシャ「えっ!?」

コニー「ありがとな、サシャ。大好きだ」

サシャ「――!!」カアア

153: 2013/08/12(月) 14:46:23 ID:ImofUnAU

ジャン「って、何こんな公衆の面前でいちゃついてんだこの馬鹿共が!!」バシーン!

コニー「痛ってぇ!」

サシャ「……」ポケー

ユミル「おーい、サシャー? あー駄目だこりゃ、完全に別世界に行っちまってら」

ベルトルト「……君も行きたいの? ユミル」

ユミル「絶対やめてくれベルトルさん」

ベルトルト「じゃあ後でね」

ユミル「おい」

154: 2013/08/12(月) 14:48:06 ID:ImofUnAU

ライナー「何やってるんだあいつらは」

マルコ「元はと言えばライナーが焚き付けたんじゃないか」

アルミン「まぁ、とどめをさしたのは僕らだけどね」

ライナー「何を吹き込んだんだお前ら」

アルミン「内緒だよ……それにしても」

マルコ「うん?」

アルミン「……何でもない」

ライナー「いや待て。わかる。わかるぞアルミン。ジャンじゃないが、俺も全力で叫びたい気分だ。『羨ましい』ってな」

155: 2013/08/12(月) 14:49:15 ID:ImofUnAU

アニ「……あんたたち、そんなとこで立ち止まってたら邪魔なんだけど」

ライナー「ん、あぁ、アニ。悪かっ――」

ミーナ「何かお手洗い行ってる間に、随分騒がしくなってない?」

クリスタ「本当だ。何かあったのかな?」

アル・ライ((!))

156: 2013/08/12(月) 14:51:01 ID:ImofUnAU

マルコ「おはよ、皆」

クリスタ「おはよう!」ニコッ

アルミン「クリスタ!」

ライナー「隣に!」

アル・ライ「「座って(くれ)!!」」

クリスタ「え、ええ!?」

ミーナ「ちょっ、何これ」イラッ

アニ「……馬鹿ばっか」ムスー

157: 2013/08/12(月) 23:15:47 ID:ImofUnAU

午前
立体機動訓練


教官「本日は5人1班で、立体機動による疑似的な巨人掃討訓練を行う! 班分けは事前に指示した通りだ!」

エレン「あれ、事前に班分けなんてあったか?」

アルミン「もう、しっかりしてよエレン。掲示があったじゃない。エレンは僕と同じ班になってたでしょ?」

エレン「そ、そっか。悪りいな、アルミン」アセッ

教官「なお、ワグナー他数名が急病により訓練に参加できなくなったため、それに伴う班変えはこれから行う」

コニー「トーマス、まだ熱下がらないんだな」

サシャ「後でお見舞いに行きましょうか」

158: 2013/08/12(月) 23:16:47 ID:ImofUnAU

教官「まず、アルレルト!」

アルミン「え、は、はっ!」バッ

教官「貴様はワグナーの代わりに、ブラウン班に入ってもらう!」

アルミン「はっ!」

エレン「離れちまったな、アルミン」

アルミン「どうやら欠員補充のために、僕らの班が解体されるみたいだね」

教官「次、イェーガー!」

エレン「はっ! ――みたいだな」ボソッ

159: 2013/08/12(月) 23:20:18 ID:ImofUnAU

アルミン(ブラウン班ってことは、ライナーの班ってことだよね)

アルミン(あれ、てことは――)

クリスタ「アルミン! こっちこっち!」

アルミン「ク、クリスタ!」

ライナー「おー、アルミンが来たか」

アルミン(そうだ……今日の班分け、ライナーとクリスタが一緒だったんだ)

アルミン(しかも――)チラッ

マルコ「頑張ろうね」

ユミル「足引っ張るなよ?」

アルミン(……わーお。なんて面子だ)

160: 2013/08/12(月) 23:22:28 ID:ImofUnAU

教官「それでは訓練を始める! 一列目、行け!」

ミカサ「行こう」バシュッ

ミーナ「うん!」バシュ

ジャン「おい、いきなり前に出るんじゃねぇ!」バシュウ

エレン「分かってるよ! ったくまさか、お前の班に入るとはな……」バシュッ

ライナー「俺たちも行くぞ」バシュッ

ユミル「よし」バシュウ

ビュオオオオ

ヒュウウウ

161: 2013/08/12(月) 23:31:58 ID:ImofUnAU

アルミン「くっ……」ヒュオオオ

クリスタ「アルミン、大丈夫?」

アルミン「だ、大丈夫だよ」

アルミン(みんな速すぎる……そりゃそうだよね。僕以外みんな上位陣だ)

アルミン(本来ここにいるはずだったトーマスだって、立体機動は得意だ。でも僕は)

ユミル「おい! 陣形が乱れてるぞ! 何やってんだ!」

クリスタ「ユミル、そんな言い方駄目だよ!」

マルコ「アルミン、大丈夫。力抜いて。もっと腰を預ける感じでいいんだ」

ライナー「目標接近! 体制を整えるぞ!」

162: 2013/08/12(月) 23:34:51 ID:ImofUnAU

ユミル「はん、あれが目標かよ。毎回思うが、お粗末なハリボテだよな」

マルコ「2体あるってことは、二手に分かれて討伐しろってことだね」

ライナー「俺とユミルは正面のデカイやつをやる! マルコ、クリスタ、アルミンは右のを!」

クリスタ「了解!」バシュウウ

マルコ「行こうアルミン!」バシュッ

アルミン「うん!」ビュオオ

163: 2013/08/12(月) 23:37:35 ID:ImofUnAU

マルコ「クリスタ、そのまま回り込んで右足の部分を削いで! 僕は左足を!」

クリスタ「わかった!」

マルコ「アルミン、君は樹上に行って、僕らが両足を斬りつけたら、うなじの部分を削いでくれ」

アルミン「ええっ、ぼっ、僕が!?」

マルコ「大丈夫、絶対に出来るから!」

アルミン「うっ――うん!」

164: 2013/08/12(月) 23:39:47 ID:ImofUnAU

バシュウウ スタッ

アルミン(落ち着いて……二人が斬りつけてからのタイミングを、しっかり見極めないと)

マルコ「クリスタ、行くよ!」

クリスタ「うんっ!」

ザシュ! ザシュッ!

グラァ

アルミン(今だっ!)バッ

ビュオオオオ

ザンッ!!

アルミン「やった!」

165: 2013/08/12(月) 23:53:17 ID:ImofUnAU

ボロッ

アルミン「え?」

アルミン(首の部分が壊れて――落ちて――)

マルコ「まずい! 右に!」

クリスタ「きゃああっ!」

アルミン「クリスター!!」バシュウウ

ビュオッ!

アルミン(え――人影?)

ゴシャアアア

166: 2013/08/13(火) 00:36:55 ID:fa6ow9K.

ユミル「クリスタ! 大丈夫か!」バシュッ

クリスタ「私は平気、でも」

ライナー「――怪我はないか? クリスタ」ポタッ

マルコ「ライナー、腕から血が!」

ライナー「ん? あぁ、大したことじゃないさ。枝でちょっと切っただけだ」

アルミン「ライナー! クリスタ! 無事なの!?」

ライナー「心配いらない」

167: 2013/08/13(火) 00:38:08 ID:fa6ow9K.

クリスタ「ごめんなさい! 私のせいでっ」

ライナー「何言ってるんだ。班長が班員を守るのは、当然のことだ」

ライナー「それに、対人格闘でミカサやエレンにしょっちゅう投げられるせいで、慣れてるからな。生傷作るのは」ハハッ

アルミン「……ごめん。僕がもっとうまくやれていれば」

マルコ「いや、見たところ、内側が腐敗していたみたいだ。アルミンのせいじゃないよ」

クリスタ「そうだよアルミン。私が足を削いだ後に、ちゃんと安全な所にいなかったのがいけなかったの」

アルミン「そんな……」ズキッ

168: 2013/08/13(火) 00:46:07 ID:fa6ow9K.

ユミル「要するに、ただの事故だろ? 誰が悪いとか考えるだけ無駄だ。おいライナー」

ライナー「何だ?」

ユミル「私のクリスタがこんなに心配してやってるんだ。その腕、とっとと治せよ」

ライナー「言われなくてもそのつもりだ」

クリスタ「ライナー、ほんとにごめんね」

ライナー「謝らなくていい。クリスタの元気のない顔は見たくないからな」

クリスタ「……ありがとう」

ライナー「お前もだアルミン。そんなしょげた顔をするな」ポン

アルミン「……うん」

169: 2013/08/13(火) 01:20:23 ID:fa6ow9K.


医務室前廊下


アルミン「……」

マルコ「アルミン? 中に入らないの?」

アルミン「クリスタが、一緒にいるから」

マルコ「そっか……」

アルミン「多分手当だけだから、すぐ出てくるとは思うけど」

170: 2013/08/13(火) 01:21:59 ID:fa6ow9K.

マルコ「アルミン、まだ、ライナーの怪我、自分のせいだと思ってる?」

アルミン「ううん、それは……それで落ち込んでるんじゃないんだ。ただ」

アルミン「……クリスタに、あんなこと言わせるつもりじゃなかったから」


『私が足を削いだ後に、ちゃんと安全な所にいなかったのがいけなかったの』


アルミン「それに、やっぱりライナーって、凄いよね。僕よりずっと遠くにいたのに、一瞬でクリスタのもとに飛んできてさ」

アルミン「頼りがいがあって、優しくて……普通に考えたら、ライナーの方が僕よりずっと――」

マルコ「アルミン、それじゃあ振り出しに戻っちゃうじゃないか。言っただろ? 君は十分魅力のある男だって」

171: 2013/08/13(火) 01:23:57 ID:fa6ow9K.

アルミン「でも……このままじゃ、遅かれ早かれ、クリスタはライナーに惹かれていくんじゃないかなって、思ったんだ」

アルミン「僕とライナーとじゃ明らかに、勝負できる手札の数が違うんだから」

アルミン「今はまだ良くても、このままだと僕の手札が尽きて、クリスタをライナーに取られてしまう。そんな終わり方は……嫌なんだ」

マルコ「……」

アルミン「でも、どうしたらいいのか……わからないんだ」

マルコ「いや、今もう自分で答え出したんじゃないかな、アルミン」

アルミン「へっ?」

172: 2013/08/13(火) 01:35:59 ID:fa6ow9K.

マルコ「つまりさ、このまま持久戦に持ち込むと、手札が尽きていずれ負けてしまう、ってことだろう?」

アルミン「うん」

マルコ「てことは、手札が残っているうちに短期決戦に持ち込めば、まだ勝機はある、ってことだよね」

アルミン「うん……えっ?」

マルコ「ついでに言うと、最後の手札の前に出す手札も、そこそこ強いものの方がいいね。切り札はここぞって時までとっておくものだ」

マルコ「さて、それじゃあここでいう、最後の手札、になるものと言えば?」

173: 2013/08/13(火) 01:36:49 ID:fa6ow9K.

アルミン「え……ちょ、まさか、まさか!? マ、マルコ! 何考えてんの!?」ガクガク

マルコ「わわっ、揺らさないでアルミン! あと声大きいよ! 聞こえちゃうから!」

アルミン「ご、ごめん、でも、それって」


アルミン「――告白するって、ことだよね?」

175: 2013/08/13(火) 01:49:45 ID:fa6ow9K.

マルコ「そうだよ?」ケロッ

アルミン「そうだよじゃなくてえええ!!」ガクガクユサユサ

マルコ「ごめんごめん。僕は長期戦でもいいと思うんだけど、アルミン自身が不安そうだからさ」

アルミン「そ、それはそうだけど、そもそも本格的にアピールしだしたの、昨日からだしっ」

マルコ「確かに、アルミンが自らって意味では昨日からだけど、クリスタがアルミンの良さを知る機会も、その前からずっとあったわけでしょ?」

マルコ「僕たちはここでずっと一緒に、訓練生活を送っているんだから。クリスタだってきっとアルミンのいいところ、多かれ少なかれ分かってるはずだよ」

アルミン「……」

マルコ「選ぶのはアルミンだよ。長期戦に持ち込むか、短期決戦に賭けてみるか」

176: 2013/08/13(火) 16:16:14 ID:xi28lutA

アルミン「……」

アルミン(正直今のまま告白するのは、怖い……でも)

アルミン(このまま長引けば、不利になるのは僕の方だ。確かに勝機があるとすれば、今――)

アルミン(でもっ、だからっていきなりすぎるよ!)

ガチャッ

マルコ「あっ、ライナー、どうだい?」

アルミン「!」ハッ

177: 2013/08/13(火) 16:19:21 ID:xi28lutA

ライナー「お前ら来てくれたのか。心配ない。もう大丈夫だ」

クリスタ「訓練にも支障はないみたい。本当によかった……」

ライナー「ありがとな、クリスタ。ついててくれて」

クリスタ「ううん。私を庇ってくれたんだから、このくらい当然だよ」

ライナー「お前の手当てのおかげで早く治りそうだ」

クリスタ「そんな」テレッ

アルミン「……」

ライナー「じゃあ、後でな。俺はいったん寮に戻る」

クリスタ「またね、ライナー」

タッタッタッタッ

178: 2013/08/13(火) 16:24:36 ID:xi28lutA

クリスタ「私はもう食堂に行くけど、二人は?」クルッ

アルミン「……ごめんクリスタ。まだ僕ら、ちょっと話したいことがあるんだ。すぐに行くから、先に行っててくれる?」

マルコ「アルミン?」

クリスタ「わかった。じゃあ食堂でね!」タタタッ

マルコ「……もしかして、決めたの?」

アルミン「うん……やっぱり僕、クリスタが好きだ。誰にも渡したくない」

アルミン「だから――」

アルミン「もたもたしていて後悔する前に、ちゃんと想いを伝えたい」

179: 2013/08/13(火) 17:24:03 ID:xi28lutA

マルコ「そっか……応援するよ。頑張って」

アルミン「ありがとう」

マルコ「いつ言うの?」

アルミン「なるべく早く……出来れば、今夜にでも」

マルコ「怖気づかなくなってきたね」

アルミン「まさか。内心バクバクだよ。だけど何でかな、盤上での作戦立案や軍略だと思ってみると、感情と切り離して考えられるから」

マルコ「アルミンらしいね……よし、僕らもそろそろ食堂に行こうか。午後の訓練の後、行動に移そう」

アルミン「そうだね。行こう」

181: 2013/08/13(火) 18:27:54 ID:xi28lutA



男子寮


エレン「ふー、さっぱりしたー」ガチャッ

アルミン「わっ、エ、エレン!」ビクッ

マルコ「早かったね、エレン」

エレン「何言ってんだ? お前らの方が早かっただろ。風呂出るの」

アルミン「そ、そうだけど」

エレン「ん? なんでそんなちゃんとした格好なんだアルミン? もう寝るだけじゃないのか?」

アルミン「いや、あの、これは、その」アタフタ

182: 2013/08/13(火) 18:30:19 ID:xi28lutA

マルコ「んーとね……エレン」

エレン「何だ? マルコ」

マルコ「アルミンは、その……そう、教官に、大事な話をしに行かなきゃいけないんだ」

エレン「大事な話?」

マルコ「訓練方式について、ある提案をしに行くんだ。だから着替えてるんだよ。寝間着姿のまま教官室には行けないからね」

マルコ「だけど、自分なんかが意見していいのかって、不安になってるんだ。元気づけてあげてくれないかな?」

エレン「何だって、おいアルミン!」ガシィ!

アルミン「わっ」グラァ

183: 2013/08/13(火) 18:42:00 ID:xi28lutA

エレン「お前が何を言いに行くのか知らねぇけどさ」

エレン「教官だって、お前の頭の良さを認めてる。成績って形でだけじゃなく、ちゃんとお前のことわかってるはずだ」

エレン「お前は、自分が何をすべきかはっきり見えてる奴だ。そんなお前の提案なら、教官だって無下に断ったりしない。きっと話を聞いてくれる」

エレン「だからさ、アルミン」

エレン「自信もって行けよ!」バシッ!

アルミン「――!!」

184: 2013/08/13(火) 18:44:38 ID:xi28lutA

マルコ「流石だね、エレン」ニコッ

アルミン「……エレン、ありがとう」

エレン「おう!」

アルミン「マルコ。行ってくるね」

マルコ「行ってらっしゃい。待ってるね」

エレン「頑張れよ!」グッ

185: 2013/08/13(火) 19:00:42 ID:xi28lutA

女子寮前


ガチャッ

ミカサ「――アルミン?」

アルミン「ミカサ……あの」

ミカサ「もしかして、人を呼びに来た?」

アルミン「……うん」

ミカサ「……」

186: 2013/08/13(火) 19:02:23 ID:xi28lutA

ミカサ「呼んでくる」

アルミン「え、でも、まだ誰だか言ってないのに」

ミカサ「クリスタ」

アルミン「!」

ミカサ「違う?」

アルミン「どうして……」

ミカサ「昨日の食堂での様子で、なんとなく」

アルミン「ちょっと見過ぎだったかな」

ミカサ「アルミンだから、分かったのかもしれない」

アルミン「そっか。ミカサになら仕方ないか」

187: 2013/08/13(火) 19:04:13 ID:xi28lutA

ミカサ「外に出るならクリスタも着替えたいと思う。少し待っていて」

アルミン「わかった。ありがとうミカサ」

ミカサ「このくらい、お安い御用」パタン


ガチャッ

クリスタ「ごめんアルミン、お待たせ!」

アルミン「ううん、急に呼び出しちゃってごめんね」

クリスタ「そんな、全然大丈夫だよ」

アルミン「ありがとう……少し、歩いてもいい?」

クリスタ「うん!」

188: 2013/08/13(火) 21:57:10 ID:xi28lutA

兵舎裏


クリスタ「わぁ、もう星がたくさん出てる。綺麗~」

アルミン「本当だね」

クリスタ「この前も一緒に空を見たよね。夕焼け空」

アルミン「うん。とても綺麗だった」

クリスタ「私、こうやって空を見上げるの、すっごく好きなの。落ち着くっていうか」

アルミン「ねぇ、クリスタ」

189: 2013/08/13(火) 22:16:04 ID:xi28lutA

クリスタ「なぁに?」

アルミン「空を見る時――その時は、ずっと僕と一緒にいてくれないかな?」

クリスタ「えっ?」

アルミン「晴れの日も、雨の日も、満月の浮かぶ夜も、太陽の昇り来る早朝も」

アルミン「君と一緒に見ていたい。君の隣で、見たいんだ」

190: 2013/08/13(火) 22:17:38 ID:xi28lutA

クリスタ「アルミン……」

アルミン「君みたいな素敵な子にこんなこと言うのは……なんだかおこがましい気がするけれど」

アルミン「でも、僕にだって――」


『本当にクリスタが好きなんだね』


アルミン「誰にも負けない、気持ちがあるんだ」

192: 2013/08/13(火) 22:24:54 ID:xi28lutA

アルミン「クリスタ、僕は、君が好きです」

アルミン「君の隣にいたいです。君と、恋人になりたいです」

アルミン「僕と――付き合ってくれませんか?」


ドクン ドクン ドクン

ドクン…


クリスタ「……アルミン、私――」

193: 2013/08/13(火) 22:31:13 ID:xi28lutA




男子寮入口前


マルコ「……!」ハッ「アルミン!」

アルミン「マルコ、わざわざ出てきてくれたの?」

マルコ「居ても立っても居られなくなって」

アルミン「そっか」

マルコ「それで……どうだった?」

アルミン「うん、あのねマルコ、僕――」

194: 2013/08/13(火) 22:34:50 ID:xi28lutA











アルミン「振られちゃった」ニコッ

197: 2013/08/13(火) 22:40:22 ID:xi28lutA

マルコ「えっ……そんな、クリスタ、何て」

アルミン「好きな人がいるんだって」

マルコ「えぇ!? じゃあまさか、もうクリスタは、ライナーを」

アルミン「分からない。誰かとまでは教えてくれなかった」

マルコ「そっか……」

アルミン「マルコ、本当にありがとうね」

199: 2013/08/13(火) 22:44:36 ID:xi28lutA

マルコ「そんな、僕は――結局、君をけしかけただけで」

アルミン「違うよマルコ。君は本当に、僕の力になってくれたんだ」

アルミン「確かに、結果は望んでいた形ではなかったけれど……それでも僕は、本当にたくさんのものを手に入れたから」

アルミン「だから――っ」ポロッ

アルミン「……!」

201: 2013/08/13(火) 22:47:28 ID:xi28lutA

マルコ「アルミン……」

アルミン「ははっ……駄目だな僕は。泣かないって、決めた、のに」グスッ

マルコ「アルミン」ポンッ

マルコ「――頑張ったね」

アルミン「ふ……うっ……」ポロポロ

アルミン「うぁ……ああ……うぁあああっ……!」

マルコ「……」ギュッ…


―――――――
――――
――

202: 2013/08/13(火) 22:51:03 ID:xi28lutA

マルコ「落ち着いた?」

アルミン「うん……ありがとう」

マルコ「向こうの水道で、顔洗ってきた方がいいかも」

アルミン「そうするよ。マルコ、先に戻ってて」

マルコ「一人で平気かい?」

アルミン「大丈夫だよ。ちょっと風に当たってくる」

マルコ「わかった」ガチャッ

パタン…

アルミン「……」

203: 2013/08/13(火) 22:53:44 ID:xi28lutA

「……ありがとう、マルコ」

君のおかげで僕は、自分に自信を持てた。自分を変えられた。

どれだけ君に救われたかわからない。

だけど。

「……ごめんね」

そんな君相手に僕は、

ひとつだけ、嘘をついた。

204: 2013/08/13(火) 22:59:32 ID:xi28lutA


『アルミン、私――好きな人が、いるの』

『……』

『だから、アルミンの気持ちには応えられない』

『……そっか』

『ごめんね』

『ううん。僕がクリスタを好きなように、クリスタもその人のことが好きなら、応援したいって僕は思うよ』

『……ありがとう』

205: 2013/08/13(火) 23:03:06 ID:xi28lutA

『ねぇ、最後に……教えてくれないかな。クリスタの、好きな人』

『……』


彼女の幸せを、祈ってあげたい。

君も、僕を変えてくれた一人だから。

だから――


『あのね、アルミン』

『私――』




「――クリスタを、幸せにしてあげてね。マルコ」




終わり

206: 2013/08/13(火) 23:05:09 ID:S.XWRklU
乙 なかなか切ない落ちだったな

207: 2013/08/13(火) 23:09:00 ID:xi28lutA
終わりです。ハッピーエンドじゃなくてすみません。男の子アルミンが書きたかったので。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

208: 2013/08/13(火) 23:10:01 ID:Y510DbXE
乙!

引用: アルミン「えっ、僕の好きな人?」