148: ◆3QM4YFmpGw 2015/04/27(月) 20:23:20.07 ID:88jNd8ai0

149: 2015/04/27(月) 20:24:30.37 ID:88jNd8ai0

将軍が逮捕された日の夕方、学園付近にて。

カイ「……じゃあね、サヤ。ヨリコやマキノにもよろしく」

サヤ「ええ。と言っても、サヤはスパイクPさんを海底都市に送り返したらまた来るんだけどねぇ」

スパイクPを引きずりながらサヤは微笑んだ。

サヤ「あ、それから。エマを見かけたら、先にホテルに戻ってるって伝えておいてねぇ」

カイ「うん、オッケー」

サヤ「まったくもう、エマったらどこに行っちゃったのかしら」

カイ「親譲りなんじゃない? 自由奔放っぷりが、さ」

サヤ「うふふっ、そうかもねぇ」

カイの言葉に微笑んだサヤだったが、不意に表情を引き締めた。

サヤ「……カイ。あの女……海竜の巫女に気をつけて」

カイ「海竜の巫女……あの人が、どうかしたの?」

サヤ「まだ確証は無いけれど……多分、ヨリコは巫女に操られてるの」

カイ「えっ……そんな!?」

サヤ「今は海底都市に留まってるけど……地上にも何か仕掛けてくるかも知れないわ」

カイ「……アイツが……分かった、ありがとうサヤ」

サヤ「ええ。じゃ、サヤは帰るわねぇ」

サヤはスパイクPを引きずってその場を後にした。

----------------------------------------


それは、なんでもないようなとある日のこと。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



150: 2015/04/27(月) 20:25:41.01 ID:88jNd8ai0
カイ「じゃあねー。…………海竜の巫女……」

真の黒幕は奴か、そう考えるカイの背中に、聞きなれた声が投げかけられた。

亜季「おや、カイ」

カイ「あ、亜季。良かった、無事だったんだね」

亜季「それはこちらの台詞でありますよ。星花は一緒ではないでありますか?」

カイ「ううん、あたしもさっき学園を出た所だから……」

所在が知れない仲間に、二人は思わず表情を曇らせる。

と、そこに。

瞳子「あら、カイちゃんに亜季ちゃん」

アヤ「ん、知り合いか?」

瞳子「ええ、まあね」

同じく学園から出てきた瞳子とアヤが通りがかった。

亜季「おや、瞳子殿。瞳子殿もいらしていたのですな」

カイ「こんにちはっ。……そっちの人は、お友達ですか?」

瞳子「アヤちゃんって言ってね、さっき知り合ったのよ」

さっちゃん「フフーン!」

アヤ「お、おいコラ! 頭ペシペシすんな!」

頭上で得意げな表情を見せるぷちどるを、アヤは少し慌てて頭から取り上げた。

カイ「ず、随分可愛いの連れてるね」

アヤ「お、アンタこいつの可愛さが分かるか! 人間にしちゃあ話が分かるじゃねえか!」

カイ「人間にしちゃあ?」

アヤ「あっ、いやいや何でもない!」

自らの失言を、アヤは目を逸らして誤魔化す。

151: 2015/04/27(月) 20:26:24.06 ID:88jNd8ai0
カイ(まあ、あたし厳密には人間じゃないけどね。ん、あれ? ウェンディ族って人間なのかな? 亜人ってヤツ? あれ? あれ?)

目を逸らすアヤと頭がショートしはじめたカイを置いて、瞳子が思い出したように亜季に話しかけた。

瞳子「そういえば、お昼くらいに星花ちゃんを見かけたわ」

亜季「ほ、本当でありますか!?」

瞳子「ええ。あの銀の馬に乗って大急ぎで学園から出て行くのを」

亜季「良かった、どうやら無事そうですな」

瞳子「ただ……その時後ろにスーツ姿の女の人が乗っていたのよね」

亜季「スーツ姿の……? 一体何者でしょうか……」

亜季は顎に手をあて考え始めたが、それをすぐに中断した。

亜季「いえ、今考えても仕方ない事でありますな。ともかく公園へ行きましょう、星花が戻っているかも」

そう言って亜季はくるりと踵を返したが、思い直して再び瞳子に向き直る。

152: 2015/04/27(月) 20:27:22.95 ID:88jNd8ai0
亜季「瞳子殿、情報の提供に感謝するであります」

瞳子「ええ、お役に立ててよかったわ」

亜季「では、失礼いたします。行きますよ、カイ」

カイ「えっ? あ、うん。瞳子さん、ありがとうございました!」

亜季の言葉で我に帰ったカイは瞳子に頭を下げ、急いで亜季の後ろについて行く。

『キンキキン』

ヴ-ン ヴヴ-ン

そして、その後ろをホージローとマイシスターがついていった。

瞳子「……さて、アヤちゃん。せっかく助けてもらったんだから、何かお礼がしたいわ」

アヤ「あ? いーよ別に気にしなくて……」

瞳子「そうもいかないわ。お夕飯くらいおごらせてくれないかしら」

アヤ「…………」

本来、アンドロイドであるアヤに食事などは必要無い。だが……

アヤ(申し出を受ける理由はねえけど、断る理由もねえか……)

アヤ「……ま、そこまで言うんなら。ご馳走になろうかね」

瞳子「そう来なくちゃね。ええと、確かこの先に……」

瞳子はアヤの手を取り、少し嬉しそうに目当ての店へ向かって歩き始めた。

――――――――――――
――――――――
――――

153: 2015/04/27(月) 20:28:32.20 ID:88jNd8ai0
――――
――――――――
――――――――――――

カイ達フルメタル・トレイターズが活動拠点としている公園。

カイ「……あ、いたいた。亜季、星花いるよ」

公園隅のベンチに、星花の姿はあった。

傍には、ユニコーン形態のストラディバリの姿もある。

そしてその反対側には、瞳子の言っていたスーツ姿の女性が座っている。

亜季「……確かに、隣に誰か座っていますな」

カイ「あれ? あの人……」

二人が疑問に思って近寄ると、星花と女性がそれに気付いた。

星花「あっ……カイさん、亜季さん……」

??「君達は……確か、メイド喫茶で」

カイ「あっ、やっぱり。エトランゼで相席だった人だ」

亜季「あの時のお嬢様……? 何故ここに?」

昼にメイド喫茶エトランゼで女性と面識があった二人は、思わぬ再開に戸惑ってしまう。

154: 2015/04/27(月) 20:29:42.82 ID:88jNd8ai0

星花「お二人に、ご紹介いたしますわ……」

星花は弱々しく、申し訳なさそうにそう言うと、すっと立ち上がって彼女を紹介した。

星花「こちらの方は涼宮月葉。わたくしの遠縁の従姉にあたりまして……お父様より遣わされた、涼宮星花捜索隊の隊長です」

月葉「月葉だ、よろしく」

星花に紹介された月葉は立ち上がり、二人に軽く頭を下げた。

カイ「捜索隊って……まさか、星花を連れ戻しに来たの!?」

亜季「そんな……」

それを聞いた二人は、大きなショックを受けた。

彼女の来訪は、星花の強制送還、ひいてはフルメタル・トレイターズの解散を意味している。

短い間とはいえ、苦楽を共にした仲間との突然の別れに、二人は動揺を隠せないでいた。

月葉「その事だがな、少し星花と二人きりで話したい」

月葉は一度そこで言葉を切り、カイ達が入ってきたのと反対側の出口を指で示した。

月葉「そこの出口に部下達が待機している。悪いがそこで少し待っていてくれ」

カイ「えっ……」

亜季「……り、了解しました……」

釈然としないながらも、カイと亜季はそれぞれ相棒を連れて、出口は歩いていった。

星花「…………」

月葉「悪いが、お前もだ。少しだけでいい」

ストラディバリ『……レディ』

月葉に促され、ストラディバリも体を起こして出口へ向かった。

――――――――――――
――――――――
――――

155: 2015/04/27(月) 20:30:53.64 ID:88jNd8ai0
――――
――――――――
――――――――――――

隊員A「……あ、ども」

カイ「こ、こんにちは」

隊員B「え、と……お嬢様のお仲間の方で?」

亜季「は、はい。……そういうあなた方は、月葉殿の部下の方々でしょうか」

隊員C「そうです。ここで待ってろ、って言われましたけど……」

カイ「…………星花、連れてかれちゃうんですか……?」

隊員D「本来ならそれが任務なんですけど……隊長がその前に少し話させろって」

亜季「……星花……」

『キンキン……』

ヴ-ン ヴ-ン

『レディ……』

六人と三体は、茂みから二人の様子をこっそりと伺っていた。

――――――――――――
――――――――
――――

156: 2015/04/27(月) 20:31:54.03 ID:88jNd8ai0
――――
――――――――
――――――――――――

月葉「星花……ここでの暮らしはどうだ?」

星花「はい……時々辛い事もありますが……カイさんや亜季さんにはよくしていただいています」

月葉「そうか。……なあ星花」

星花「何でしょうか?」

月葉「お前は……何故戦っている?」

星花「え……」

月葉「今は、あの仲間達を守る為かも知れない。私が聞きたいのは、彼女達と会う前、お前が家を飛び出した時の事だ」

星花「……」

月葉「あの時のお前には、護るべきモノも倒すべき宿敵も存在しなかった。戦う義務は無かったはずだ。それなのに、何故だ?」

星花「…………」

星花から、答えは無い。

ただ俯き、押し黙っている。

月葉「……答えられないか? なら……」

157: 2015/04/27(月) 20:33:55.26 ID:88jNd8ai0
星花「……確かに、あの時のわたくしには……護るモノも、倒す敵もありませんでした」

月葉の言葉を、星花が唐突に遮る。

星花「…………しかし……『力』は、ありました」

月葉「……!」

星花「オーラを操る力……それも、膨大な量のオーラを、です」

星花「それほどのオーラを操る力は……他に二つと無い、わたくしだけに与えられた力です」

月葉「…………」

星花「……『権力、武力、知力、財力、魅力。いずれであろうと、大きな力を持つ者は、それと同時にそれを世の為に、力を持たぬ者の為に振るう義務をも持つ』……お父様が、昔よく仰っていた言葉です」

月葉「……叔父様の言う、ノーヴレス・オブリージュ、か……」

星花「ええ。力を持つ者は義務を持つ。なのでわたくしには、世の悪と戦う義務を持っています」

星花はキッと引き締まった表情で、まっすぐ月葉を見つめている。

星花「先程申し上げた通り、護るモノも倒す敵もいませんでしたが、戦う義務なら……家を飛び出した時既に、持っていました。だから、わたくしは戦うのです」

158: 2015/04/27(月) 20:34:46.62 ID:88jNd8ai0
月葉「…………なるほど。しばらく見ない内に、随分言うようになったじゃないか」

月葉はそれを聞いてフフッと笑うと、おもむろに立ち上がり出口に声を掛けた。

月葉「全員集合!」

その言葉を聞いた隊員達が、月葉の元へ駆け足で向かっていく。

カイ「な、なになに!?」

亜季「……我々も行きましょう!」

ストラディバリ『レディ』

カイ達二人と三体も、それに続いた。

月葉「よし、全員揃ったな」

隊員A「はい!」

隊員D「隊長、指示を!」

月葉「ああ」

整列した四人の隊員達へ、月葉が指示を下す。

159: 2015/04/27(月) 20:35:47.21 ID:88jNd8ai0
月葉「今日、お嬢様を見つけた事は総裁には誤魔化せ。帰還するぞ」

隊員C「は……?」

隊員B「えっ……?」

カイ「今、何て……?」

亜季「誤魔化せ、と言ったのでありますか……?」

隊員達はもちろん、カイと亜季も、その言葉に呆気にとられた。

月葉「聞こえなかったか? 帰還するぞと言ったんだ」

星花「あ、あのっ、月葉姉様……?」

慌てて立ち上がる星花を、月葉がそっと手で制した。

月葉「どうやら、お前は私が思っていた以上に成長していたようだ」

フッと笑い、星花の頭を軽く撫でる。

星花「んっ……?」

月葉「そんなお前を、信じてみたくなった」

星花「……姉様……」

カイ「じゃっ、じゃあ、あたし達今のまま活動出来るんですか!?」

月葉「ああ。当分は私達以外の追っ手は来ないだろう、安心していい」

亜季「……感謝いたします、月葉殿!」

カイ「ありがとうございます!」

二人が月葉へ頭を下げる。

160: 2015/04/27(月) 20:36:51.52 ID:88jNd8ai0
月葉「ああ。では、私達は帰還するが……星花」

星花「はい」

月葉「……頑張れよ」

星花「……はいっ!」

その返事を聞き届けた月葉は満足そうに頷き、部下達へ向き直った。

月葉「よし、撤収!」

部下A「はっ!」

月葉を筆頭に、捜索隊が公園から引き上げていく。

星花「……姉様……星花は、頑張ります……」

その背中を、見えなくなるまでじっと見据える星花。

カイ「……良かったね」

亜季「ですな。お祝いに、今夜は少し奮発しますか」

そして、その星花の背中を眺めながら、二人はそっと微笑むのだった。

――――――――――――
――――――――
――――

161: 2015/04/27(月) 20:38:05.36 ID:88jNd8ai0
――――
――――――――
――――――――――――

海底都市。

マキノ「あら、サヤ。あなたも戻って来ていたのね」

サヤ「ええ。スパイクPさんが動けなくなったから、運んできたとこなのぉ」

海皇宮の廊下で、マキノとサヤが鉢合わせした。

サヤ「……っていうか、どうかしたの? なんだか騒がしいけれどぉ……?」

マキノ「なんという事は無いわ。ちょっとした暴動の鎮圧みたいなものよ」

サヤ「ああ……例の?」

マキノ「そう、例の。まあ侵入者そのものには逃げられたようだけれど……それとは別に、大きな収穫があったのよ」

マキノが眼鏡を指で軽く持ち上げ、不敵に微笑む。

サヤ「へえ……そういえば将軍のおじさんはどうなったのかしら?」

マキノ「地上の電波放送を傍受したわ。それによると、日没前に逮捕されたそうよ」

サヤ「あら、あっけないのねぇ」

162: 2015/04/27(月) 20:38:48.30 ID:88jNd8ai0
マキノ「……エマはいないのね。ホテル?」

サヤ「多分ねぇ。サヤも途中から姿を見てないの」

サヤが少しおどけた様子で肩をすくめてみせると、マキノは軽く溜息をついた。

マキノ「はあ……まあ、エマの事だから無事だとは思うけれど」

サヤ「地上に戻ったらまた探すわぁ」

マキノ「頼むわね。私は少し休んでから地上へ向かうわ」

サヤ「りょうか~い。じゃ、お疲れぇ」

マキノ「ええ、お疲れ」

労いの言葉を交わし、すれ違う二人。

マキノ(…………にしても)

マキノの脳裏に浮かぶのは、海皇宮の普段使われない区画で見かけた、海竜の巫女の言動。

巫女『……殺せるなら……しかし……せめて封印……チッ……』

マキノ(遠巻きで声はよく聞こえなかったけれど……あんな区画に何の用だったのかしら……?)

疑問を抱きつつ、マキノは自室へ向けて歩を進めていった。

――――――――――――
――――――――
――――

163: 2015/04/27(月) 20:39:27.78 ID:88jNd8ai0
――――
――――――――
――――――――――――

ちなみにその頃エマは。

エマ「うっめー! 巴巴、これおかわり!」

巴「おう、ドンドン食え! 海底人にも話せるやつはおるんじゃのう、あはははっ!」

雪菜「楽しそうね、巴ちゃん」

イヴ「裕美ちゃん、次はアレ取って下さい~」

裕美「あっ、はい。……って、イヴさん充分取れる位置だったじゃないですか!」

乃々「……すごいです」

ほたる「うん……海底都市の人と、こうして仲良くご飯が食べられるなんてね」

エマ「ほらほら乃々、ほたる! お前らも食わないと無くなっちゃうぞー!」

乃々「わわっ、エマさん速いです……」

ほたる「もう半分しか残ってない……」

イヴ非日常相談所で夕飯をご馳走になっていた。

続く

164: 2015/04/27(月) 20:40:53.57 ID:88jNd8ai0
・イベント追加情報
月葉隊長の協力で、星花が実家からの追手から遠ざかりました

サヤに教えられ、カイが巫女を警戒しはじめました

アビスエンペラー(プレシオ)がマキノの手であっさり捕縛されました

以上です
三日目が始まる前にやっておきたかった二日目夜ネタ
この出来事がまさかあんな事態に発展するなんてね(不穏)

アヤ、さっちゃん、巫女、巴、雪菜、イヴ、裕美、乃々、ほたるお借りしました

165: 2015/04/28(火) 01:45:01.12 ID:w3WJ++t5o
>>164
おつー

幕間の静かな一時って感じですなぁ
これが嵐の前の――と、ならなければ良いけれど……

しかし月葉さんが話のわかる人で良かったよ
星花さんの強い意志も確認できたし、ひとまずは一件落着かな



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12