735: ◆3QM4YFmpGw 2016/02/04(木) 23:18:53.55 ID:A7LbD25lO


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 魔導書イベントもイツキもワクワクですなぁ!

それでは投下します
時系列は一応2日目の深夜って事で

736: 2016/02/04(木) 23:20:21.20 ID:A7LbD25lO
海皇宮。

ヨリコ「すみませんマキノ、貴女には休暇を与えたはずだったのに……」

マキノ「お気になさらないで下さい。人手が足りない今、動ける者が動くだけです」

ヨリコの謝罪に、マキノは涼しい笑顔で返した。

学園祭に赴くはずだった彼女が受けた任務は、GDFが開発していた新型海洋兵器の破壊。

地上に派遣していた斥候からの報告で明らかになったそれは、海底都市破壊用の兵器であった。

高熱のプラズマを発生させて全てを焼き払う『アポロン魚雷』をはじめとした多数の兵器を搭載する予定だった超大型潜水戦艦『ポセイドン』。

しかし、建造が始まる前に極秘ドックをマキノが単独で襲撃、壊滅させた。

そして、ポセイドンやアポロン魚雷の設計図データも全て破棄、海底都市への直接的な危機は去った事になる。

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それは、なんでもないようなとある日のこと。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



737: 2016/02/04(木) 23:22:11.35 ID:A7LbD25lO
マキノ「あれを捨ておけば、海底都市全域が危機に晒される所でした。……それよりも」

ヨリコ「何か?」

マキノがキッと表情を引き締め、データ記録用のチップを取り出した。

マキノ「ドックの端末から、GDF本部のデータベースへのハッキングを試みました。残念ながら中核に辿り着く前に締め出されてはしまいましたが……」

巫女「収獲はあったようね?」

マキノ「ええ、彼らが『ブラックファイル』と呼ぶデータ……これの複製に成功しました」

取り出した携帯用端末に記録用チップを差し込み、マキノは話を続ける。

マキノ「『ブラックファイル』……人類を脅かす存在の情報をまとめたもので、脅威度の高さでランク分けされています」

壁面にその『ブラックファイル』が次々と写し出されていく。

《妖怪》
脅威度○●●●●
活動範囲が限定的かつ規模も小さい。
現地の退魔士で充分対応出来ている為、脅威とはなり得ないだろう。

《海底都市》
脅威度○○○●●
尖兵のアンドロイドはともかく、戦闘外殻と呼ばれる上位種はやや危険。
本拠地の特定が急がれる。

ヨリコ「なるほど、彼らはここを見つけ出そうと躍起になっているのですね」

巫女「カモフラージュ工作は万全だけれど……念のためにダミーとして電波妨害装置を各地にばら撒いておきましょう」

そこで、マキノが操作を止めた。

マキノ「これです。恐らくこれに関しては、地上だけでなく海底都市にとっても脅威となりうるでしょう」

ヨリコ「これは……」

《七つの災厄》
脅威度○○○○○
通常のカースはおろか、災厄級カースすら及ばない力を秘める。
遭遇した場合は応援の到着を待て。

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738: 2016/02/04(木) 23:33:38.43 ID:A7LbD25lO
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??「はっ……はっ……!」

深夜、1人の少女が橙に近い茶色のポニーテールを揺らしながら路地裏を走る。

時折後ろを振り向き、何かに怯えた様子だ。

??「……はぁっ……はぁっ……逃げ、きった……?」

少女はゆっくりと路地裏から這い出し、表通りに顔を出す。

しかし、

隊員「いたぞ! この反応……間違いない、《セブン》だ!」

??「!」

隊員「《トゥスロウス》か……じきに応援も到着する、まず俺たちだけで仕掛けるぞ!」

隊員「おう!」

運悪く追手……GDF陸戦部隊に発見されてしまった。

隊員達はライフルを片手に少女に迫る。

739: 2016/02/04(木) 23:35:27.35 ID:A7LbD25lO
??「っ、仕方ない……!」

少女が両腕を大きく振ると、野球ボールほどの大きさの球が9つ、宙に舞った。

濁った緑色のそれからはどす黒い泥が次々と湧き出し、やがて人の型となって地面に降り立つ。

隊員「チッ、カースを呼ばれたか!」

隊員「構うもんか! 撃て、撃て!」

隊員達はライフルを構えてカースへ向けて掃射した。

『ゥゥグウ……!』

『グァ……!』

顔面に1〜9までの数字を刻まれたカース達が、掃射を受けてよろめく。

隊員「ははっ、大した事ないな!」

隊員「《トゥスロウス》が《セブン》の中でも格下ってのは本当みたいだな! こりゃ応援を待つまでもねえ!!」

隊員「おう、俺たちだけで《セブン》討伐の手柄をいただいちまおうぜ!」

隊員達はライフルを構え直し、少女へ突撃する。

??「…………!」

740: 2016/02/04(木) 23:37:53.95 ID:A7LbD25lO
??「アハハ、クセンしてるじゃないか」

突然、紅い光弾が数発降り注いだ。

隊員「ぐぁあ!!」

『ガフゥッ!』

隊員「ごふっ……!!」

光弾に撃たれ、隊員達は次々と地面に倒れ伏す。

少女の生み出したカースも、巻き添えで消滅してしまったようだ。

??「こ、これって……」

隊員「ま、まさか……」

少女と生き残った隊員が空を見上げた。

ビルの屋上に立つ人影が、こちらへ向けて手を振っている。

人影はふいに飛び降り、数十メートルの高さから悠々と着地してみせた。

隊員「せ、《セブン》が2体……それも、《トゥラース》だと……!?」

学ランと学生帽に身を包んだ、赤毛の少年。

その姿を見て、隊員の体は震え、銃を取り落とす。

??「《トゥラース》かあ…そのヨびナ、あんまりスきじゃないんだよね。ん、んんっ」

片言で喋っていた少年は2、3度喉を鳴らすと、今度は打って変わって流暢に喋り始めた。

キッド「俺はさあ、もう自分の名前決めたんだ。『キッド』って、そう気軽に呼んでくれていいよ」

キッドと名乗った少年はにこやかな笑顔で隊員へ人差し指を向け、そこから紅い光弾を再び放った。

隊員「がっ……!?」

生き残った最後の1人だった隊員が倒れるのを見届け、キッドは少女に向き直る。

741: 2016/02/04(木) 23:40:56.71 ID:A7LbD25lO
キッド「やっと落ち着いて話が出来るね、スロウス。……あー違うや、えっと……」

智香「智香。……今は、そう名乗ってます……」

少女は智香と名乗り、キッドから2、3歩後ずさった。

キッド「そうそう、智香だったね。……何で逃げるんだい?」

笑顔を崩さず、キッドは智香に近寄る。

キッド「俺らは仲間だろ? 怖がる事ぁ無いよ。現に今だって、人間に襲われてた君を助けたんだぜ?」

智香「……じゃない」

キッド「?」

智香「アタシは……もうカースじゃない! アタシは人間に……人間の智香になるんです!」

そう叫んで智香は今来た路地裏を逆走して逃げ出した。

キッド「あらら……フられちゃった」

キッドは肩を竦めて表通りをしばらく歩いていき、角を曲がった所で人影を見つけた。

みく「にゃふふー、肉まんが美味しいにゃあ……にゃ?」

肉まんを頬張るみくはキッドを見つけ、不思議そうに彼を見つめている。

キッド「お、ちょうどいいや」

みく「どちら様かにゃ? みくに何か用?」

キッド「いやあ、可愛いお嬢さんにちょっとプレゼントってね♪」

キッドが指を鳴らすとビー玉ほどの大きさの赤い光が指先に生まれ、ふよふよと漂ってみくの胸の中へと消えていく。

みく「あっ……、……もうっ、何なのにゃ! いきなり話しかけてきて失礼にゃ! みくもう帰るからっ!!」

突然怒りだしたみくは肉まんを袋に押し込み、ドスドスと音を立てそうな足どりで帰っていってしまった。

742: 2016/02/04(木) 23:43:01.72 ID:A7LbD25lO
そしてみくが視界から消えた時、キッドがゆっくりと吐き出すように喋り出した。

キッド「……おっし、結構種蒔きしたねー。どうよ旦那? 名付けて『憤怒養殖』」

ちらりと隣を見やるキッドの目に映るのは、ポリバケツの上で舌をチロチロさせる小さなトカゲの姿。

『シュルルルルル……』

キッド「そーそー、テキトーに誰彼構わずチョイと怒りの沸点を下げてやってさ、怒りやすくさせんの」

トカゲの言葉を理解しているのか、キッドはポリバケツに肘をかけてトカゲへ語りかける。

キッド「それで生まれた憤怒を俺が埋めた球に溜めて、後で回収するって寸法♪ 俺賢いっしょ?」

『シュルルル……』

キッド「んー? いやいや、後遺症なんか残んないよ。だってそんな所から足がついたらマヌケじゃん。周りからは『アイツなんか短気になったよなー』くらいしか思われないって」

キッド「まあ見てなって。じきに旦那が復活するのに必要な量が溜まるさ」

キッドはにっこりと笑ってトカゲを拾い上げ、夜の闇に消えていった。

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743: 2016/02/04(木) 23:44:03.37 ID:A7LbD25lO
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隊員「いたぞ、《トゥスロウス》だ!」

隊員「応援を呼んだ奴ら……まさか、アイツにやられたのか!?」

隊員「許さねえ……俺達で仇を取るぞ!」

一方、智香は応援で呼ばれたGDFの陸戦部隊に遭遇していた。

智香「また……!」

智香は再度核を放り投げてカースを生み出す。

人型のカースが9体、隊員達の前に立ちふさがる。

隊員「たかだかカースに怯むな! 撃て、撃て!!」

銃を構えて突撃してくる隊員達へ、智香はゆっくりと両手を振り上げた。そして、

744: 2016/02/04(木) 23:45:08.64 ID:A7LbD25lO
智香「フレーッ! フレーッ! 『ナ・イ・ン』!!」

突如智香から発された、場違いなほどに爽やかなエール。

それが響いた時、カース達に変化が起こった。

『グォオッ!!』

『フンッ!!』

隊員「な、何だ!? 急にエネルギーが増加した!?」

隊員「まずい、来るぞ!!」

見るからに隆々とした体躯へ変貌を遂げたカース達が、智香へ近づけさせまいと泥の弾丸を吐き出す。

隊員「ぐわっ!?」

隊員「くそっ、これじゃ近付けないぞ!」

9体のカースが次々に吐き出す泥の弾丸は、智香を追う隊員達を見事に足止めしてみせた。

その隙に、路地の奥へ奥へと逃げていく智香。

隊員「しまった、《トゥスロウス》が!?」

智香の姿が完全に見えなくなると、カース達も何処かへと消えていった。

745: 2016/02/04(木) 23:46:55.83 ID:A7LbD25lO
隊員「くそっ、反応は!?」

隊員「無い……どうやらカースの産み過ぎで、体内のエネルギーが少なくなっているようだ」

隊員「で、レーダーにも引っかからない、か……」

隊員「ともかく捜索を続けよう。《トゥスロウス》は被害報告の少ない個体ではあるもの、放っておくと何があるか分からん」

隊員達は四方へ散り、智香を探し回った。

智香「……はぁっ……はぁっ……」

足音が遠ざかるのを確認して、智香はそっと物陰から顔を出す。

カース……『ナイン』を今日だけで5回も召喚している、その内『力』を使ったのは2回。

流石にエネルギーの底が見え始めてきたが、そのお陰で追っ手を撒けたのは怪我の功名と言うべきか。

智香「今のうちに……どこか、隠れる場所を……」

ふらふらと歩き続ける智香は、やがて小さな廃ビルを見つけた。

智香「ここなら……」

中に人が居ないかを警戒しながら、智香はゆっくりと廃ビルの中へと足を運んでいった。

746: 2016/02/04(木) 23:47:43.58 ID:A7LbD25lO
彼女はカースを産み、使役する。

しかし彼女はカースドヒューマンではない。かといって悪魔でもない。

彼女はカースそのもの。

強大な力と知性を得た、7体のカース……その内の1体。

彼らは皆各々の『目的』の為、自由気ままに動く。

智香の『目的』はただ1つ、カースではなく人間になる事。

方法は知らない、有るのかも分からない。

それでも智香は、人間に憧れた。

自分を人間にする方法が有ると信じ、行く当てもなく駆け回る。

彼女に安らぎの日は来るのか。

それはきっと、神でさえも識らない。

続く

747: 2016/02/04(木) 23:48:25.65 ID:A7LbD25lO
若林智香

○職業
不明

○属性
カース

○能力
カースの生成、『呪詛声援』

○詳細設定
《七つの災厄》の1体、《トゥスロウス》。
カースの体を持ちながら人間に憧れ、人間になる方法を探している。
GDFやヒーローなどに襲われた際は、カースによる足留めに終始している。

○『呪詛声援』(カースドエール)
智香の固有能力。
「フレー! フレー! ○○!」のフレーズで発動し、対象の身体能力、魔力などを一時的に増大させる事が出来る。
また、その際に対象の肉体のみを意のままに操る事も出来る。
エールが聞こえた相手にしか効果が無い為、例えばGDFに向けてエールを飛ばしてもGDF全体にしか効果は無い。

○ナイン
智香が産みだす9体の人型カース。
カースに襲われた際に敵のカースと区別して『呪詛声援』を使う為に「ナイン」と名付けられている。

○関連設定
《七つの災厄》

748: 2016/02/04(木) 23:49:01.83 ID:A7LbD25lO
キッド

○職業
不明

○属性
カース

○能力
カースの生成、光線、憤怒感情の増幅

○詳細設定
《七つの災厄》の1体、《トゥラース》。
外見は学ランと学生帽を身につけたにこやかな笑顔の少年。
『憤怒養殖』やカースを使い、憤怒の感情を集める事に固執している。
憤怒Pの事を「旦那」と呼び慕っているが、彼に作られたわけではない。

○憤怒養殖
キッドが憤怒Pの肉体を蘇らせる為に進めている策。
道行く人に「球」を埋め込み、怒りの沸点を下げて怒りやすくさせる。
その怒りを球に集め、後から回収して回る。
過剰に怪しまれたりしないように、球を抜き取られても後遺症などは残らないとの事。

749: 2016/02/04(木) 23:50:22.47 ID:A7LbD25lO
《七つの災厄》
「ザ・セブン・マスターカース」それぞれ7種のカースの中で最も強力な7体、通称『セブン』
外見は人間に近く、高度な知性を持ち、人語を解する。
七罪の悪魔には及ばないものの、それに迫る程の力を持っており、
各個体ごとに名前が付けられて、様々な組織から警戒されている。
GDFでは個体毎に「トゥ○○」(The One Of ○○の略)と呼んでいる。

750: 2016/02/04(木) 23:53:11.81 ID:A7LbD25lO
○イベント追加情報
みくが少しだけ短気になっています、他にも短気になってる人がいるかも…?

智香がこっそり街を歩いています


以上、《七つの災厄》の設定は没ネタスレから拝借しました
恐らくモバマス創作史上最も暗い智香ちゃんです(白目)
みくにゃんお借りしました

751: 2016/02/05(金) 02:01:00.91 ID:ko/Gpcxr0
乙でしたー
人間になりたいカース…幸せになってほしいが…
そんでもって憤怒Pとキッドがなにか仕込んでらっしゃる…

…なんかみくにゃん被害受け過ぎなのでは(やった人)



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12