前回:「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」
12: 2014/01/17(金) 18:08:10.97 ID:ERs1yVAC0
店主「私の店では、お客さんのリクエストで店内BGMを変えてみたりすることがある」
店主「例えば彼女なんかは、いつも決まって同じものを頼み、いつも決まってCDを持参してくるわね」
店主「丁度、こんな感じに」
――case2 如月千早
千早「こんにちは」カランカラン
店主「はい、いらっしゃい。カウンターへどうぞ」
店主「今日もいつもと同じの?」
千早「はい」
店主「はい、インスタントコーヒー一つ」
店主(彼女は毎回、必ずほかのどのコーヒーでもなく、インスタントコーヒーを頼む)
店主(最初は冗談でメニューに書いたけど、こうも毎回頼まれると消すに消せないからそのままにしてある)
千早「それと、これを流してもらっても良いですか?」
店主「ん、今日はどんなクラシックを……っと、『アルルの女』、しかも第二組曲」
千早「はい」
店主「『ファランドール』か、良いね。クラシックは詳しくないけどこれは好きよ」
千早「有名ですからね」
店主「例えば彼女なんかは、いつも決まって同じものを頼み、いつも決まってCDを持参してくるわね」
店主「丁度、こんな感じに」
――case2 如月千早
千早「こんにちは」カランカラン
店主「はい、いらっしゃい。カウンターへどうぞ」
店主「今日もいつもと同じの?」
千早「はい」
店主「はい、インスタントコーヒー一つ」
店主(彼女は毎回、必ずほかのどのコーヒーでもなく、インスタントコーヒーを頼む)
店主(最初は冗談でメニューに書いたけど、こうも毎回頼まれると消すに消せないからそのままにしてある)
千早「それと、これを流してもらっても良いですか?」
店主「ん、今日はどんなクラシックを……っと、『アルルの女』、しかも第二組曲」
千早「はい」
店主「『ファランドール』か、良いね。クラシックは詳しくないけどこれは好きよ」
千早「有名ですからね」
13: 2014/01/17(金) 18:18:12.01 ID:ERs1yVAC0
店主(彼女の名前は如月千早。今や国内で知らないものは居ないとまで言われる『歌姫』だ)
店主(アイドルとしてデビューした当時から歌手を目指していたけど、最近はアイドルも悪くないと思ってるとか)
店主(そういえば、どこかの雑誌で『ディーヴァ・オブ・アルカディア』なんて仰々しい名前付けられてたかな)
~♪
千早「今日はさっきまで番組の収録だったんです」
店主「へえ、どんな番組?」
千早「実は春香たちと一緒に子供番組を……」
店主「子供番組!? 千早ちゃんが?」
千早「自分でもなんで出たのか未だに分かりません……」
店主「録画しとこうかな」
千早「やめて下さい! あんな恥ずかしい映像!」
店主(俄然、録画したくなった)
千早「まさか犬のきぐるみで踊らされるなんて……くっ」
店主「私の目には、きぐるみ姿で童謡熱唱してる千早ちゃんの姿が見えるよ」
千早「…………」
店主「図星なのね。はい、インスタントコーヒー」
千早「ありがとうございます」
店主(アイドルとしてデビューした当時から歌手を目指していたけど、最近はアイドルも悪くないと思ってるとか)
店主(そういえば、どこかの雑誌で『ディーヴァ・オブ・アルカディア』なんて仰々しい名前付けられてたかな)
~♪
千早「今日はさっきまで番組の収録だったんです」
店主「へえ、どんな番組?」
千早「実は春香たちと一緒に子供番組を……」
店主「子供番組!? 千早ちゃんが?」
千早「自分でもなんで出たのか未だに分かりません……」
店主「録画しとこうかな」
千早「やめて下さい! あんな恥ずかしい映像!」
店主(俄然、録画したくなった)
千早「まさか犬のきぐるみで踊らされるなんて……くっ」
店主「私の目には、きぐるみ姿で童謡熱唱してる千早ちゃんの姿が見えるよ」
千早「…………」
店主「図星なのね。はい、インスタントコーヒー」
千早「ありがとうございます」
14: 2014/01/17(金) 18:30:56.29 ID:ERs1yVAC0
千早「それにしても、いつ来てもほかのお客さんが居ない気がするんですが」
店主「痛いところを突くわね」
店主「まあ、確かに客は少ないよ? 否定は出来ない。数人の常連客様のお陰でこのお店は成り立ってるのです」
千早「はあ」
店主「念の為言うけど、765プロのアイドル以外にも常連客は居るからね? 夜に来る客が多いからあまり合わないだろうけど」
千早「夜もやってるんですか」
店主「うん」
店主(実は765プロのアイドルにも夜の時間しか来ない子が居るけど、その話は今はいいかな)
千早「…………」ズズ…
店主「……どうしたの?」
千早「やっぱり、事務所のコーヒーと違いますね、コーヒー」
店主「市販品だけど?」
千早「でも、事務所で出てくるコーヒーはこんなに美味しくないです」ズッ…
店主「……はっはーん、成程」
千早「?」
店主「毎回毎回インスタントコーヒーばっかり頼むのは、そういうわけね?」
千早「へ?」
店主「インスタントコーヒーの作り方くらい聞いてくれればいいのに」
千早「」ブフッ
店主「ちょ」
店主「痛いところを突くわね」
店主「まあ、確かに客は少ないよ? 否定は出来ない。数人の常連客様のお陰でこのお店は成り立ってるのです」
千早「はあ」
店主「念の為言うけど、765プロのアイドル以外にも常連客は居るからね? 夜に来る客が多いからあまり合わないだろうけど」
千早「夜もやってるんですか」
店主「うん」
店主(実は765プロのアイドルにも夜の時間しか来ない子が居るけど、その話は今はいいかな)
千早「…………」ズズ…
店主「……どうしたの?」
千早「やっぱり、事務所のコーヒーと違いますね、コーヒー」
店主「市販品だけど?」
千早「でも、事務所で出てくるコーヒーはこんなに美味しくないです」ズッ…
店主「……はっはーん、成程」
千早「?」
店主「毎回毎回インスタントコーヒーばっかり頼むのは、そういうわけね?」
千早「へ?」
店主「インスタントコーヒーの作り方くらい聞いてくれればいいのに」
千早「」ブフッ
店主「ちょ」
15: 2014/01/17(金) 18:38:15.94 ID:ERs1yVAC0
千早「な、なんで分かったんですか!」
店主「いやね、前からおかしいと思ってたのよ……」
店主「コーヒー飲む度に机の下でメモ取ってるし」
店主「酸味がどうとか苦味がどうとか言い始めるし」
店主「挙句の果てにブラックで飲んで顔歪ませたりするし」
千早「」
店主「大方、プロデューサーに感謝の気持を~とかじゃないの?」
千早「なんでそうスラスラと分かるんですか!?」
店主「女の勘はね、時に人の秘密を簡単に暴くものなの」
店主「で、どうする? インスタントコーヒーの美味しい作り方くらいならお姉さんがいくらでも教えてあげるけど」
千早「お姉さん?」
店主「どう見てもお姉さんでしょ」
千早「……お願いします」
店主「はい。じゃあほかのお客さんも居ないし、カウンターの中に入って。見せるから」
千早「はい」
店主「じゃあ、【インスタントコーヒー講座~in 喫茶『アイドル』】、急遽開催ー」パチパチ
千早「わー」パチパチ
店主「案外ノリがいいのね」
千早「料理番組に出ることも多かったので」
店主「職業癖って怖いね」
店主「いやね、前からおかしいと思ってたのよ……」
店主「コーヒー飲む度に机の下でメモ取ってるし」
店主「酸味がどうとか苦味がどうとか言い始めるし」
店主「挙句の果てにブラックで飲んで顔歪ませたりするし」
千早「」
店主「大方、プロデューサーに感謝の気持を~とかじゃないの?」
千早「なんでそうスラスラと分かるんですか!?」
店主「女の勘はね、時に人の秘密を簡単に暴くものなの」
店主「で、どうする? インスタントコーヒーの美味しい作り方くらいならお姉さんがいくらでも教えてあげるけど」
千早「お姉さん?」
店主「どう見てもお姉さんでしょ」
千早「……お願いします」
店主「はい。じゃあほかのお客さんも居ないし、カウンターの中に入って。見せるから」
千早「はい」
店主「じゃあ、【インスタントコーヒー講座~in 喫茶『アイドル』】、急遽開催ー」パチパチ
千早「わー」パチパチ
店主「案外ノリがいいのね」
千早「料理番組に出ることも多かったので」
店主「職業癖って怖いね」
17: 2014/01/17(金) 18:48:53.78 ID:ERs1yVAC0
店主「じゃあまず、どんな状況でもだいたい使える基本的な技ね」
千早「はい、お願いします」
店主「まず、大前提。最適な分量を守ること」
店主「こだわりがあるなら別だけど、分量は基本的に守らないとね。マグカップの場合はティースプーン山盛り1杯と水200ml弱くらいね」サラサラ
千早「成程」メモメモ
店主「で、今度はお湯の話。お湯は沸騰してから少し時間を置いて、大体90℃弱くらいが最適」
店主「熱すぎると渋みが出ちゃうし、ぬるいと酸味が出ちゃうから」ピーカラカラカラ
千早「そういえば、事務所ではいつも熱いままです」
店主「普通はそうしちゃうよね。あ、あとお湯を冷ますのと並行できる工夫があってね」
店主「事前に、使うマグカップとかにお湯を注いで、容器を温めておくの」
千早「コップをですか?」
店主「うん。さっきも言ったけど、お湯がぬるいと酸味が出るの。容器が冷えてるとお湯も温度が下がってコーヒーの酸味が強くなるから、先に温めておくの」コポポ
店主「インスタントコーヒーを作るまでに出来る基本的な技はこのくらいかな」
千早「これだけでいいんですか?」
店主「これだけでも十分変わるよ。で、ここからは明日誰かに話したくなるトリビアタイム」
千早「はい、お願いします」
店主「まず、大前提。最適な分量を守ること」
店主「こだわりがあるなら別だけど、分量は基本的に守らないとね。マグカップの場合はティースプーン山盛り1杯と水200ml弱くらいね」サラサラ
千早「成程」メモメモ
店主「で、今度はお湯の話。お湯は沸騰してから少し時間を置いて、大体90℃弱くらいが最適」
店主「熱すぎると渋みが出ちゃうし、ぬるいと酸味が出ちゃうから」ピーカラカラカラ
千早「そういえば、事務所ではいつも熱いままです」
店主「普通はそうしちゃうよね。あ、あとお湯を冷ますのと並行できる工夫があってね」
店主「事前に、使うマグカップとかにお湯を注いで、容器を温めておくの」
千早「コップをですか?」
店主「うん。さっきも言ったけど、お湯がぬるいと酸味が出るの。容器が冷えてるとお湯も温度が下がってコーヒーの酸味が強くなるから、先に温めておくの」コポポ
店主「インスタントコーヒーを作るまでに出来る基本的な技はこのくらいかな」
千早「これだけでいいんですか?」
店主「これだけでも十分変わるよ。で、ここからは明日誰かに話したくなるトリビアタイム」
18: 2014/01/17(金) 18:58:47.94 ID:ERs1yVAC0
店主「多分事務所では、好みとか分かると作った人が砂糖とか入れちゃうでしょ? わざわざ飲む人がキッチンないし作ってる場所まで行くとは思えないし」
千早「はい。と言っても、プロデューサーはブラックで飲んでますけれど」
店主「ブラック派かあ。ならさっきまでの技で十分違いに気づいてくれると思うよ。でも豆知識は止めない」
店主「インスタントコーヒーを作るときは、お湯→混ぜる→砂糖→混ぜる→ミルクの順番が基本よ」
千早「お湯と砂糖はなんとなく分かるんですが、ミルクは後なんですか?」
店主「砂糖は先に入れるとしつこくなるからなんだけど、ミルクはほら、タンパク質だからさ」
店主「コーヒーの酸と結合すると固体化しちゃうから。適度にコーヒーを冷ませばそうならないから、後回し」
千早「成程」メモメモ
店主(こんだけ熱心に勉強する程、プロデューサーに美味しいコーヒー飲ませたいのね……)
店主(そういえば一度も見てないけど、ここまで想われるプロデューサーってどんな男なのか凄い興味深いわ)
千早「ほかには無いんですか?」
店主「ん、ほかにはね――」
――――――――――――
――――――
―――
店主「と、こんなところかな」
千早「メモ帳のページが5ページくらい埋まりました」
店主「熱心でよろしい。そんだけの熱意があれば否が応でも美味しいコーヒーが作れるはずよ」
千早「はいっ」ニコッ
店主「!」
店主(千早ちゃんの満面の笑み……良い顔ね。作り物じゃない、綺麗な顔)
店主「これは……プロデューサーさんも振り向くかもねぇ」ボソッ
千早「なんですか?」
店主「うんにゃ、なんでもない」
千早「はい。と言っても、プロデューサーはブラックで飲んでますけれど」
店主「ブラック派かあ。ならさっきまでの技で十分違いに気づいてくれると思うよ。でも豆知識は止めない」
店主「インスタントコーヒーを作るときは、お湯→混ぜる→砂糖→混ぜる→ミルクの順番が基本よ」
千早「お湯と砂糖はなんとなく分かるんですが、ミルクは後なんですか?」
店主「砂糖は先に入れるとしつこくなるからなんだけど、ミルクはほら、タンパク質だからさ」
店主「コーヒーの酸と結合すると固体化しちゃうから。適度にコーヒーを冷ませばそうならないから、後回し」
千早「成程」メモメモ
店主(こんだけ熱心に勉強する程、プロデューサーに美味しいコーヒー飲ませたいのね……)
店主(そういえば一度も見てないけど、ここまで想われるプロデューサーってどんな男なのか凄い興味深いわ)
千早「ほかには無いんですか?」
店主「ん、ほかにはね――」
――――――――――――
――――――
―――
店主「と、こんなところかな」
千早「メモ帳のページが5ページくらい埋まりました」
店主「熱心でよろしい。そんだけの熱意があれば否が応でも美味しいコーヒーが作れるはずよ」
千早「はいっ」ニコッ
店主「!」
店主(千早ちゃんの満面の笑み……良い顔ね。作り物じゃない、綺麗な顔)
店主「これは……プロデューサーさんも振り向くかもねぇ」ボソッ
千早「なんですか?」
店主「うんにゃ、なんでもない」
20: 2014/01/17(金) 19:34:07.49 ID:ERs1yVAC0
千早「…………」ズズッ
店主「どう? 自分で作ったコーヒーのお味は」
千早「美味しいです。まだマスターのコーヒーには及びませんけれど」
店主「千早ちゃんもマスターって言うのね。まあ、なんでもいいですけれど?」
千早「! それ、私の真似ですか」
店主「似せる気はさらさら無いけどね。ところで、来てから一時間くらいになるけど時間大丈夫?」
千早「はい。今日はさっきの収録で最後なので。でも、そろそろいい時間ですしお暇しますね」
店主「はい。お会計190円です」
千早「えっ、380円じゃあ……」
店主「さっきのコーヒーは、千早ちゃんの頑張りと武運を祈って、私のおごりです」
千早「あ、ありがとうございます」
店主「またのお越しを」
千早「はい、また来ますね」カランカラン
店主「…………」
店主「どう? 自分で作ったコーヒーのお味は」
千早「美味しいです。まだマスターのコーヒーには及びませんけれど」
店主「千早ちゃんもマスターって言うのね。まあ、なんでもいいですけれど?」
千早「! それ、私の真似ですか」
店主「似せる気はさらさら無いけどね。ところで、来てから一時間くらいになるけど時間大丈夫?」
千早「はい。今日はさっきの収録で最後なので。でも、そろそろいい時間ですしお暇しますね」
店主「はい。お会計190円です」
千早「えっ、380円じゃあ……」
店主「さっきのコーヒーは、千早ちゃんの頑張りと武運を祈って、私のおごりです」
千早「あ、ありがとうございます」
店主「またのお越しを」
千早「はい、また来ますね」カランカラン
店主「…………」
21: 2014/01/17(金) 19:39:19.85 ID:ERs1yVAC0
店主「その後千早ちゃんは無事、愛しの? プロデューサーさんに美味しいコーヒーを振る舞えたとか何とか」
店主「砂糖とミルクの順番なんかも、事務員の人に教えたら好評だったらしく、嬉しそうに話してくれたなあ」
店主「こんな喫茶店なんかをやってると実感するけど、飲み物一杯でも人っていうのはきっかけになるのね」
店主「ところで、インスタントコーヒーの裏技にはほかにも、乾煎りしてから作るとか鍋で煮るとか塩を入れるとかあるけれど」
店主「前に大失敗して麦茶をドバドバに入れた時には目も当てられないものが出来上がったわ」
店主「本当にもう、ああいう凡ミスって誰に見られてるとかじゃなくても、思わず穴ほって埋まりたくなるよね?」
Next→「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」―case3 萩原雪歩
店主「砂糖とミルクの順番なんかも、事務員の人に教えたら好評だったらしく、嬉しそうに話してくれたなあ」
店主「こんな喫茶店なんかをやってると実感するけど、飲み物一杯でも人っていうのはきっかけになるのね」
店主「ところで、インスタントコーヒーの裏技にはほかにも、乾煎りしてから作るとか鍋で煮るとか塩を入れるとかあるけれど」
店主「前に大失敗して麦茶をドバドバに入れた時には目も当てられないものが出来上がったわ」
店主「本当にもう、ああいう凡ミスって誰に見られてるとかじゃなくても、思わず穴ほって埋まりたくなるよね?」
Next→「喫茶『アイドル』に集うアイドルたち」―case3 萩原雪歩
22: 2014/01/17(金) 19:39:49.40 ID:ERs1yVAC0
今日の分はこれで。
続きはまた後日。
続きはまた後日。
23: 2014/01/17(金) 19:40:26.63 ID:LFFvvlifo
乙乙
いい雰囲気
いい雰囲気
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