172: 2017/02/20(月) 21:01:11.93 ID:djwTKyCd0
前回:【モバマス】小梅「しかく」

紗南「シミュレーションゲームって、選択肢の中から物語が進むよね」

紗南「それって、人生も同じだと思うんだ。選択肢が極端に多いだけで」

紗南「じゃあ、人生の選択肢が極端に少なかったら、どうなるんだろう?」


紗南「それに、その選択から逃れられないとしたら?」


  「1/N」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(3) (電撃コミックスEX)
174: 2017/02/20(月) 21:02:30.15 ID:djwTKyCd0
私は同じ事務所の友達とファミレスに来ていたんだ。

メンバーは、美玲、ライラ、杏さん、それからあたしの4人だ。
ゲームを協力プレーするにはもってこいの人数だね!
でも今日のメインはは友達と雑談するだけ。たまにはこんなのもいいよね。
まあ、ゲームやらないって言ったらうそになるけど。

ってことで、これまで一緒にお仕事したことがあって、たまたま今日オフだった人で集まったんだ。

店は結構混んでたけど、思ってたよりすんなり入れたよ。
窓際だからちょっと心配だけど、通り道だからじろじろ見ていく人もいないよね。

ライラ「おー、メニューがいろいろあって迷ってしまいますねー」

美玲「ライラ、好きなもの頼んでいいんだぞ!ウチはメロンソーダな!」

杏「杏はなんでもいーよー。ゲームやってると手が離せないしー」

美玲「そうだ杏!このゲーム操作教えてくれよ!」

杏「お、おう。(杏このメンバーで最年長なんだけどなー…)」

ライラ「おー、画がとってもきれいですねー」

うん、みんなが楽しそうで何よりだ。

175: 2017/02/20(月) 21:03:41.78 ID:djwTKyCd0
「ご注文お決まりでしょうか」


ウェイターさんがテーブルに来た。

しまった!あたし注文するもの決めてなかった!

杏「ドリンクバー4つとー、山盛りポテトと」

ライラ「ライラさん、この『イチゴパフェ』、食べたいですねー」

美玲「じゃあ、ウチは『メロンシャーベット』!」

杏「メロン好きだねぇ」

美玲「いいだろ!紗南はどうする?」

えーっと…どうしようかな… どれもおいしそうで目移りするんだよなぁ…

176: 2017/02/20(月) 21:04:44.40 ID:djwTKyCd0
メニューを見て迷っていると急に店内が静まり返った。

さっきまで騒がしかった店内からは何の音も聞こえない。

というか、止まっている。グラスに注ぐ水も、外を走る子供も、目の前にいる友達も。


コツーン…

あたしが戸惑っていると靴の音が聞こえた。

周りが止まっていて何も聞こえないはずなのに、その足音だけが聞こえた。

明らかに店舗の大きさとは不釣り合いな反響音が聞こえる。


コツーン…

足音が近づいてくる。誰だろう…周りが静止したこの状況で動けるってことは普通じゃない。


177: 2017/02/20(月) 21:05:33.73 ID:djwTKyCd0
コツーン…

ようやく足音の主が見えた。中年の男性だ。あたしはこの男を知らない。

身の丈は180センチくらい…かな。年齢は30から40歳あたりだと思う。

スーツを身に着け、シルクハットをかぶっている。アフロヘアーなのか、ハットの隅から髪が飛び出ている。

変な笑みを浮かべたうさん臭い男は、あたしにサイコロを渡してきた。

何の変哲もないサイコロ。これを振ればいいのか?


男のほうを見ると、今度はフリップを掲げてこっちに見せてきた。

1:無難に ショートケーキ
2:ちょっぴり大人 ガトーショコラ
3:甘々 メープルパンケーキ
4:激甘 クリーム白玉ぜんざい
5:リッチ気分で スペシャルパフェ
6:何も頼まない

サイコロの目で注文を決めるってこと?面白そうではあるけど知らないおじさんが渡してきたサイコロで決めるのはなあ…

でも振らないとたぶん状況は好転しそうにないな…それに6を除けばそんなに悪い条件じゃないし。

じゃあ振ってみよう!あたしは手渡されたダイスを思い切り振った。

178: 2017/02/20(月) 21:07:26.99 ID:djwTKyCd0
出た目は…1!


男がサイコロを拾うとにやりと笑って指をぱちんと鳴らした。

するとサイコロが光ってはじけた。眩しさに目を閉じると、さっきの店の賑やかな音が戻ってきた。

美玲「紗南、どうしたんだ?」

ライラ「紗南さん、ぼーっとしていますよー。考えごとでございますかー?」4

さっきまで止まっていたみんなも普通だ。何事もなかったように日常が流れている。

紗南「いや、なんでもないよ!それより注文は?」

杏「さっきしてたじゃん。ショートケーキ、注文したでしょ?」

そういうことになってたのかな。サイコロを振った時点で選択肢が決まった…みたいな?


とりあえずその場は何とかごまかした。変な男のことを聞くべきか考えたけど、あの時みんな止まってたから聞いてもダメだろうなって思って聞くのをやめた。

まあ、悪くはなかったよ。ショートケーキもおいしかったし。

179: 2017/02/20(月) 21:09:00.11 ID:djwTKyCd0
紗南「腹ごなしも済んだし、ゲームやろう!」

杏「うん、初心者二人をガチ勢二人でサポートしようじゃないか。」

ライラ「おー、よろしくお願いしますですよ。」

美玲「うー、この装備、どれ選べばいいんだ?」

杏「初心者なら、ガードできる武器がいいんじゃないかなー。あとは好みだね。」

紗南「あたしは何にしよっかなー。どの武器もやりこんでるからどれでも行けるよー…あれ?」



ゲーム画面が動かなくなる。周りの人も、音も止まる。あたし以外のすべてが止まって、あの男が来る。

今度はカードを3枚持ってきた。フリップは…

1:裸一貫!片手剣
2:大砲は浪漫!ガンランス
3:乱舞!双剣
4:矢なし!弓
5:残弾ゼロ!ボウガン

おお…1、4、5が地雷じゃん。これ引かなきゃいいけど…

いや、大丈夫だ!あたしは運がいいんだ!引いたカードは…

やった!3だ!

男がにやりとわらって指を鳴らす。カードが光ってあたしが目をとじる。


目を開けるとゲームが始まっていた。装備は…双剣。

結局この日は、4人で2時間ぐらいゲームして遊んだ。装備選択を迷うたびにあの男が現れてはサイコロ振ったりカード引いたりめんどくさかったけど、それでもみんなと遊べて楽しかった。

180: 2017/02/20(月) 21:09:34.39 ID:djwTKyCd0
次の日、プロデューサに呼び出された。

紗南「プロデューサー、話って何?仕事お話?」

P「おう。ただ、ダブルブッキングしているからどっちかを選んでほしい」

紗南「へー、何の仕事?」

P「一つはクイズ番組、もう一つはラジオ番組のゲストだ。」

…ということは、ここで時間が止まってあの男が来るんだな?


あたしの予想通り、今度はコインをもって男が来た。

表ならテレビ、裏ならラジオの仕事らしい。あたし的にはテレビの方が魅力的なんだけど…

男がコインをトスしてキャッチする。コインは…裏だ。

時間が動き始める。プロディーサーが電話をしている。できれば両方に出たかったんだけど、こればっかりは仕方ないよねー。あたしには決められなかったし、ちょうどいいや。

181: 2017/02/20(月) 21:10:03.91 ID:djwTKyCd0
こうして、気が付くと何かの選択を迫られて、自分で決めかねていると、その男が出てくることが当たり前になっていた。

お昼ごはんに迷ったらカードを引き、買うゲームに迷ったらサイコロ、10面ダイスを振ることもあったね。
基本そんなにめちゃくちゃな選択肢はなかったよ。たまに引いたらまずい選択肢とかもあったけどね。「昼食なし」とか。
そんなわけで、あたしはこの奇妙なシステムに完全に依存していたんだ。

182: 2017/02/20(月) 21:10:44.76 ID:djwTKyCd0
さらに翌日

今日はラジオ収録。ゲストってことで招かれたよ。

案の定、ゲストトークの話題を決めるときに例の男が出てきた。

やけに大きなサイコロと話題の書かれたフリップをもって、いつの間にかブースにいた。

いつものようにサイコロを振ってそのお題でトーク、といっても、パーソナリティから見たらあたしがテーマ決めてるようにしか見えないけどね。

結果は…今回はいまいちだったかな。そりゃあ「最近あった女子力高い話」なんて、あたしにはレベルが高すぎたんだ。

今度あの男が出てきたら文句言ってやる。


軽く落ち込んでいると杏さんから電話が来た。

杏「紗南、大丈夫?落ち込んでない?」

紗南「杏さん、そうなんだよねー。トークテーマの選択肢ミスったっぽくてさー」

杏「たまにはそんなこともあるさー。気晴らしに家来てゲームする?」

紗南「お!いいね!じゃあそっちに……」

そういえばゲーム機、カバンに入れたかな…

カバンの中を探してみると、やっぱりない。

たしか楽屋で遊んでて、ロッカーの中に入れたからそこにあるはずだ。

紗南「じゃあ、あとで杏さんの家に行くね!」

杏「おー、ゆっくりおいでよー。またあとでねー」

電話を切って急いで戻る。まだあるよね?大丈夫だよね?

あたしは急いで横断歩道を渡った。

183: 2017/02/20(月) 21:15:06.84 ID:djwTKyCd0
……あれ?

横断歩道の途中で体が動かなくなった。というか走っている状態のままだから浮いている。

なんで?また何か変なことが……

あたりを見て愕然とした。すぐ横までワゴン車が迫っていた。

焦っていて気付かなかった。ああ、あたしはここで氏んでしまうんだ…

でも、なんで周りとあたしの時間が止まっているんだろう…もしかして…


そんなことを考えているとあの男が来た。

あたしの手にまたサイコロを渡してきた。冗談じゃない。あたしの氏因をサイコロで決めろってこと?


またあのフリップだ!今までと同じ、1から6までの選択肢。やっぱりサイコロを振って[ピーーー]ってこと?

これは優柔不断で物事を決められなかったあたしへの報いなのか…?

だとしても、どうしたいかを自分で決められないなんておかしい!

よくよく考えてみたらサイコロやコイントスで人生が決まってしまうなんて馬鹿げてる!


あたしはこのサイコロで生き氏にが決められることに腹を立てて、サイコロをその男に投げ返した!


サイコロが光るかと思ったら男のほうが光ってはじけた。

だんだん いし  き  が  とお く  …





184: 2017/02/20(月) 21:15:34.37 ID:djwTKyCd0




……な…

誰かの声がする

美玲「紗南!」

紗南「うわぁ!?」

ゴツン

頭を美玲にぶつけてしまった。

ということは、ここは…?

ライラ「紗南さん、おつかれですか?メニュー持ったまま寝てたですよ?」

紗南「えっ?」

スマホで日にちを確認すると、4人でファミレスに行った日だ。

ということは今までのは夢だったのか…

紗南「ごめんごめん、最近徹夜でゲームばっかりしてたから疲れてたみたい。」

杏「ゲームが楽しいのはわかるけどさー、やりすぎはよくないよ?アイドルなんだし。」

紗南「それ、杏さんが言う?昨晩一緒に徹夜狩猟してたじゃん」

杏「そうだっけ?」

美玲とライラが笑っている。よかった。夢だったのか…

185: 2017/02/20(月) 21:16:03.57 ID:djwTKyCd0
ふと、窓の外を見る。

そこには、スーツ姿の男がフリップをもって立っていた。



1:意識不明の重体 1年休み
2:複雑骨折で後遺症 引退
3:四肢切断の大けが 引退
4:出血多量で一気にゴール
5:頭を強打して一気にゴール
6:ふりだしにもどる

186: 2017/02/20(月) 21:16:45.10 ID:djwTKyCd0
以上です。お付き合いありがとうございました。

187: 2017/02/20(月) 22:16:02.78 ID:K6ogX+hDO

188: 2017/02/21(火) 02:55:34.33 ID:Qz3h5W2u0

(人生の)ゴール

189: 2017/02/21(火) 08:03:06.67 ID:NbSuUJ+So
こりゃ、発狂エンドですわ


引用: 世にも奇妙な346プロ