213: ◆TDuorh6/aM 2017/02/25(土) 18:44:51.07 ID:YeiZst/9O
前回:【モバマス】レナ「確率は二分の一」

輝子「キノコーキノコーボッチノコー」


輝子「…あ、み、見てたのか…?」


輝子「トモダチに霧吹きしてたんだ」


輝子「ほ、ほら…こうやって小まめに水分を与えないとな」


輝子「前よりも、沢山生えてるだろ?」


輝子「ま、まぁ…沢山いるから良いって訳じゃないけど」


輝子「と、トモダチは…大切にな?」


「禁しられたメール」


アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(3) (電撃コミックスEX)

214: 2017/02/25(土) 18:45:32.18 ID:YeiZst/9O


「……ふ、フヒ…なにが友達百人出来るかな、だ…」


今日の仕事は、みんなの歌だった。
私達五人のユニットで呼ばれ、歌ったのは一年生になったなら。
周りのみんなは、楽しそうに歌っていた。
きっと小学生だったころの自分を思い浮かべでいたんだろう。


…こ、心がシンドイ…わ、私だって、トモダチなら沢山…


そう思って、キノコの原木を見て気付いた。
百人もいない、と。


しまった…こないだのホームパーティで、トモダチが減ってる…


別段だからと言って何か困る訳でもないけれど。
少し、なんとなく。
ほんのちょっぴっとだけ、悔しかった。
私にだって、トモダチは沢山いるんだ、と。
そう、心を勇気付けたくて。


ぶーん、ぶーん


そんな折、一通のメールが届いた。
今時メールなんて珍しいな。
そもそも前からメールなんてこなかったけど。
…自分で考えてて哀しくなるな。


「…なになに?トモダチメール?」


なんだこれ。
トモダチメール?
意味が分からないぞ…
あ、あれか?ネット上でトモダチを作ろうみたいなやつか?


内容は、凄く簡潔的だった。


『お望みのトモダチ内容を入力して下さい。翌日お届け致します』


な、なんだ?余計に意味が分からないぞ。
これはあれか?
ネットの通販みたいなものなのか?
莫大な請求金額さえこなければ多分払えるし…


そ、それじゃあ…


『身長8cmくらいのシイタケ君を…』


送信。


…私は、何をやってるんだ。
完全に通販じゃないか。
そんな事したって何があるわけじゃないのに。
うん、疲れてるんだな。


寝よう。


215: 2017/02/25(土) 18:46:04.66 ID:YeiZst/9O



ピンポーン


…朝か。
日光が眩しいな…
なんで世界はこんなに明るいんだ…


おっと、お客さんが来てるみたいだな。
こんな朝早くに私の家に誰が…って、宅急便か。
そう思って覗き穴を覗く。
…誰もいないぞ?


ガチャ


ドアを開ける。
誰もいない。
…こ、こどものイタズラか?
こどもは朝から元気だな…


…ん?


足元に、段ボールが開けて置いてあった。
そしてその中には、10cm弱くらいのシイタケ。
…なんでシイタケ?
イタズラか?


…あ、そうだ。
昨日、なんか怪しいメールに返信したんだった。
あれ、本物なんだな。
通販みたいだ…。


あれ、お金とかいいのかな。
…まぁ、いいか。
後から何か言われても、シイタケの代金ならそんなに高くないだろうし。


今日も明日も休みだし、家でトモダチの世話をするとしよう。
新しいトモダチが来たから、みんなに紹介しないと。
ほ、ほら、みんな…転入生だぞ。
と、トモダチになってあげるんだ。


霧吹きを使って、ばい木に水を吹きかける。
…ふ、フフフ…トモダチが増えたぞ…
…あ、もう抜かれてるから育たないな、こいつは。
仕方ない…朝ごはんに頂こう。


216: 2017/02/25(土) 18:46:40.27 ID:YeiZst/9O




…よし。
昨日は本数や状態を指定しなかったからいけなかったんだな。
なら、今日は…


『シイタケ君を10本くらい、まだ育てられる状態で』


送信。
よ、よし。
明日の朝が楽しみだな。


217: 2017/02/25(土) 18:47:08.20 ID:YeiZst/9O


ピンポーン


…届いたのかな。
眠い目を擦りながらドアを開けると…
よ、よし!
トモダチが…沢山…
まだ育てられる。


原木には10本くらいのシイタケ君。
これは…トモダチ百人も夢じゃないな。
いける…いけるぞ。
ふふふ…私は幸せだな…


取り敢えず、日陰に置いて霧吹きをして…
あ、どうせなら…
これを機会に…よし。
タケノコ君とも、トモダチになってみよう。


メールは…夜でいいか。
どうせ届くのは明日だからな。


218: 2017/02/25(土) 18:47:42.96 ID:YeiZst/9O


ピンポーン


お、きたきた。
ドアを開けると…おお、デカイ。
立派なタケノコだ。
しかも、要望通り植木鉢ごときたな。


さて、こいつは…だめだ。
シイタケ君の隣に置いといたら喧嘩しちゃうか。
タケノコ君は…日光に当てなきゃいけないんだったな。
こいつはベランダに置いておこう。


219: 2017/02/25(土) 18:48:14.83 ID:YeiZst/9O



…ふ、ふひっ…
明日は午後から、街で食レポか…
つ、つらいな…
やりますよ?私はちゃんとやりますよー


あ、そうだ。
それなら、午前中は空いてるし。
食レポ得意そうなトモダチを作るのもいいかもしれないな。
…本当に届くかどうか、まだ分からないけど。


『食レポが得意なトモダチ』


よし、送信。
…ほんとに、これ来るのか?



220: 2017/02/25(土) 18:48:52.88 ID:YeiZst/9O


ピンポーン


「…はーい…今開けますよー」


ガチャ


「おはよう!輝子ちゃん!会えてよかった!」


…なんだ?何が起こってるんだ?
目の前にはとっても元気そうな女の子がいて。
私に向かって、元気よく挨拶してきてる。
なんだろう…あ、そうか、夢か。


「今日は一緒に食レポごっこするんでしょ?」


「…あ、そ、そうだったな…ちょっと待っててくれ…」


ほっぺたをつねる…い、痛いぞ。
夢じゃないのかこれ…
…あ、そうだ。
昨日の夜、トモダチメールを送ったんだったな。


だとしたら、これは凄いぞ…
希望通りのトモダチが、沢山手に入るじゃないか…


急いで顔を洗って着替えて。
午後の撮影用の荷物をカバンに詰め込み、玄関へ。
届いたトモダチの女の子は、ニコニコして待っててくれた。
…な、なんだか眩しいな…


「よ、よし…い、行こうか…」


「うんっ!」



221: 2017/02/25(土) 18:49:31.04 ID:YeiZst/9O



人が沢山いるデパートのレストランフロアで。
私達は、のんびりご飯を食べていた。


「うわぁ、このエビプリプリ!キノコの食感とマッチしてて凄く美味しいね!」


「お、おおう…凄いな、そんなに直ぐに言葉が続けられるなんて…」


これは、見習わないとな…
今日の午後に向けて、色々と参考にしよう。
そのまま色んなお店で、少しずつ一品ずつ料理を食べて。
毎回彼女は、多種多様の表現を用いてレビューしてた。


よ、よし。
こういう時は、こう言えばいいのか…
苦手な食べ物っぽいな、それ。
…おお、好きな人には堪らないでしょうね、って言えばいいのか…
勉強になるな。


…おっと。
そろそろ一回事務所に行かないと。


「わ、悪いけど…私は次の用事があるから…」


「え…じゃ、じゃあまた明日か近いうちにまた一緒にご飯食べようね!」


「そ、それじゃ…」


「あ、連絡先交換しない?」


「ご、ごめん…職業上、人にはあんまり連絡先教えられないんだ…」


「そ、それじゃ私の連絡先だけ渡しておくから!」


そんな時、私は目を少し伏せていたから。
彼女の表情を、見れていなかった。
この時少しでも、本当のトモダチみたいにきちんと目を見て話していたら…


222: 2017/02/25(土) 18:50:07.70 ID:YeiZst/9O



撮影は、なかなか上手くいった…と思う。
直前に上手い人と一緒にいたからな。
うん、持つべきは優秀なトモダチだな。
さて…と。


明日は午後からラジオの収録か…
どうせなら、トークが上手い人とトモダチになっておきたいな。
午前中はそのトモダチとおしゃべりして。
そうすれば、ラジオの収録も上手く話せるかもしれない。


『トークが上手い人』


送信。
これでよし。
…あれ、ベランダに置いておいたタケノコ君がいない。
そういえば、その前日に届いたシイタケ君達もいない…


なんでだ?
ドロボウなんて事もないだろうし…
ま、まさか…
ベランダに置いておいたから、カラスに持ってかれちゃったのか…?


オォォォーマイガァァァァァ!!
あ、すみません五月蝿いですね…ふ、ふひっ。


223: 2017/02/25(土) 18:50:42.22 ID:YeiZst/9O



ピンポーン


「はいはーい。星の輝子の家ですよー」


ガチャ


「おはようございます、輝子さん。今日はとってもいい天気ですね、風も心地よいですよ」


「そ、そうだな…洗濯物がよく乾きそうだ」


おお、これまた凄いな。
お互い初対面の筈なのに、会話が続けられそうだぞ。
トークが上手い人って、相手が返しやすい事を言うのか。
これは…いいな、勉強だ。


224: 2017/02/25(土) 18:51:14.77 ID:YeiZst/9O


喫茶店で、カフェオレを飲みながらのんびり会話する。
常に相手の女の子は笑顔で頷いて、私が続けやすいように話題を振ってくる。


「それで、輝子ちゃんはシイタケがトモダチなんだ!」


「う、うん…お、おかしいか?」


「ううん。私だってぬいぐるみに名前つけてたし、別段変じゃないと思うよ?休日はその子達と遊んでるの?」


凄いな、ほんとに。
会話が弾む…そ、そうか。
会話の最後に相手に対する質問や同意を求めればいいんだな。
そうすれば、次の会話が生まれるんだ。


今日のラジオ収録、上手くいきそうだな。
…お、そろそろ時間だ。


「ご、ごめん…そろそろ、次の用事があるから…」


「そ、そっか。また一緒にお話ししようね?」


「そ、そうだな…あ、悪いんだけど連絡先教えて貰っていいか?」


「はい、これ私の電話番号。何時でも掛けていいからね?」


225: 2017/02/25(土) 18:51:45.67 ID:YeiZst/9O


それから、私は仕事の前日や午前中はトモダチを作って色々と学んでいた。
野菜収穫の撮影の時は農家の娘さん。
スポーツ番組の前には体育会系の女の子。
バラエティ番組の前日にはクラスの人気者っぽい子。


毎日が、上手くいっていた。
私も、色んな人と会話して成長できた…と思う。
メールをすれば、新しいトモダチが出来る。
トモダチ百人も全然夢じゃない。


そう言えば、明日はまた食レポか。
一番最初に一緒にご飯食べた子に連絡してみようかな。
折角連絡先教えて貰ったし。


ぷるるるる、ぷるるるる


…あれ?出ないぞ?
お掛けになった電話番号は、現在利用されておりません?
おかしいな…ま、まさか。
私に、適当な番号を…


いや、もしかしたら私が番号を間違えてただけかもしれないな。
もう一回確認してかけ直してみよう…
…ダメだ、繋がらない。


まぁ、いいか…
それならそれで、新しいトモダチを…


『食レポが得意なトモダチ』


送信。
…あれ?出来ないぞ?
なんでだ?もしかしたら電波が悪いのか回線がパンクしてるのかな。


ぶーん、ぶーん


…お、メールだ。
なんだ…?


『ご利用のトモダチ人数が上限に達しました。以降は、あなたがトモダチとなる番です』


…え?どういう事だ?
回数制限があったって事か?
も、もっと考えてからメールするべきだったかな…


そう思いながら、メールをスクロールして。
私は、息が止まりそうになった。


『あなたには、他の方の希望通りのトモダチとなって頂きます。容姿は相手の要望通りのものとなります。相手が次のトモダチをメールで要求した時点で、あなたはいなくなります』


226: 2017/02/25(土) 18:52:23.56 ID:YeiZst/9O


う、うそだろ…?
な、なんだこれ…
いなくなる…え?


急いで今までに貰った連絡先に片っ端から電話を掛けるもの、誰にも繋がらない。
メールの通りだとすると、既に…
…って、ことは…容姿も変わるってことは、もしかして…
最初に送られてきたシイタケ君やタケノコ君は…


う、うわぁぁぁぁぁぁぁ
うう、嘘だ…そんな事…
もしそうだとしたら…


ぶーん、ぶーん


め、メールだ…
ドッキリ大成功とか、そんな内容であってくれ…


『相手:○○ ○○○さん。住所:○○県○○市○○。希望:少し暗くて、少し歌の上手い女の子』


227: 2017/02/25(土) 18:52:54.12 ID:YeiZst/9O




翌日朝、私は始発に乗ってその女の子の家に向かった。
そこまで遠くない、電車で30分もあればつく家に。
それでも、もし私が相手の要望に応えられず。
ほかのトモダチを求めてメールを送ってしまったら…
そう考えると、動かずにはいられず。
彼女が起きて少しくらいのタイミングでインターフォンを押せるように、近くでスタンバッテいた。


部屋の電気がついた。
よ、よし…
大丈夫だ、会話も少しは上手くなったし…
もともと、相手は少し暗めの女の子を要望してるくらいだ。


…ふー…
い、いくか…


ピンポーン。
勇気を振り絞って、インターフォンを押す。
ガクガクと足が震えそうになる。
それでも、不安を相手に察される訳にはいかない。


ガチャ


「お、おはよう…○○ちゃん。きょ、今日は…曇ってるけどいい天気だな」


228: 2017/02/25(土) 18:53:23.85 ID:YeiZst/9O




少し暗い女の子を要望しただけあって、相手の○○ちゃんも少し暗めの子だった。
だからこそ、私なら大丈夫だ…多分。
話のテンポはそんなに良くないけど、ちゃんと続いてる。
上手く、相手の期待通りのトモダチになれてる…


「ね、ねぇ輝子ちゃん。良かったらカラオケにでもいかない?」


「か、カラオケか…あ、あんまり行った事なかったけど、行ってみようかな」


彼女はあまりトモダチがいないらしく、だからこそカラオケに行ってみたかったらしい。
私もあまりカラオケに行った経験はないけれど、大丈夫だろう。
むしろ、カラオケに行きたかったからこそ少し歌の上手い女の子を要望したのかもしれない。
わ、私で大丈夫かな…



229: 2017/02/25(土) 18:54:01.00 ID:YeiZst/9O


お互いオドオドしながら受付を済ませ、カラオケルームに入る。
カラオケあるある…なのか分からないけど、お互い一曲目を入れられない。
少し、沈黙が続く。
こ、これは…まずいな。


し、仕方がない。
私が一曲目を入れよう。


「そ、それじゃあ…わ、私が先に歌っても大丈夫か?」


「お、お願いしていい?カラオケって流れでなんとかなると思ってたけど、最初に曲いれるの緊張しちゃうね」


「そ、そうだな…」


一曲目、どうしようか…
下手過ぎると、相手の気を損ねちゃうかもしれないし…
歌い慣れてて、有名な紅にしよう…


ピッ


「へー、輝子ちゃんってこういう曲歌えるんだ」


「ま、まぁな…」


イントロが流れ出す。
私はマイクを握り締め、大きく息を吸った。
聞き苦しい歌は聞かせられない。
だから…全力で。

230: 2017/02/25(土) 18:54:39.79 ID:YeiZst/9O


「…ふ、ふぅ…大声で歌うって、楽しいな…」


「そーだね。うん。凄く上手かったと思うよ」


よ、よかった…
○○ちゃんは満足してくれたみたいだな。
これなら、あとは流れでなんとかなって…


「…少し上手い、って希望出したのに。上手過ぎて私が歌いづらいじゃん」


「…え?」


う、うそだろ…?
待ってくれよ、私は頑張って歌ったじゃないか。


「次は、普通くらいって希望出さなきゃ」


「ま、待ってくれ…い、いまのは歌い慣れてて…」


「いいや…今のうちにメールだしちゃお」


彼女の指がスッスッと動く。
待って、待ってくれ。
頑張ったじゃないか。
私は、○○ちゃんと気が合ったじゃないか。


「送信、っと」


「私達は、トモダチになれ






231: 2017/02/25(土) 18:56:40.48 ID:YeiZst/9O

投稿終わりです
既に沢山のお話が投稿されていて喜ばしい限りです
是非とも、気が乗った方は参加してみて下さい

232: 2017/02/25(土) 21:12:17.47 ID:MM27W6crO
おつ
世にも奇妙な物語ってわりと理不尽ネタ多いよね


引用: 世にも奇妙な346プロ