1: 2016/10/21(金) 06:06:52.11 ID:j4gnACjq0.net
 
 とある憂鬱な人の設定パロです


2: 2016/10/21(金) 06:07:33.35 ID:j4gnACjq0.net
 
 みなさんこんにちは、小泉花陽です

 私は音ノ木坂学院の一年生で、

 スクールアイドルμ’sというグループに所属しています

 8人のステキな仲間と一緒に憧れのアイドルになりたくて毎日がんばってます


 


 そんな私が先日、学校の屋上でダンスの練習中足がもつれて転倒してしまいました

 頭を強く打ち付けた私は三日間意識不明の重体になったそうです

 後で聞いた話だと、相当みんなに心配をかけちゃったみたいで、申し訳ない気持ちです
 

3: 2016/10/21(金) 06:08:36.40 ID:j4gnACjq0.net
 
 生氏の境を彷徨い、なんとか無事に生還できた私の体には不思議な事が起こりました

 それはなんと…っ!


 


凛「か~よち~ん!」
 (かよちんが無事でホントによかった……)

花陽「あ、凛ちゃんおはよう」


 人が考えていることがなぜか頭に響くようになってしまったのです

 私みたいな平凡な個性もあまりない女の子にちょっとした刺激的な日々がやってきたのです
 

4: 2016/10/21(金) 06:09:26.77 ID:j4gnACjq0.net
 
 と、最初はこの不思議な現象に少し怖い感覚と、非日常を垣間見れる好奇心でドキドキしていました

 ところが……


 (う、また頭にあの映像が……なんなの一体……?)


 


花陽「穂乃果ちゃん、おはよう」


穂乃果「あ、花陽ちゃ~ん、もう学校きて大丈夫なの?」
 (くっ…花陽ちゃんの顔をみるとどうしてもあの映像が…ほんとにこれは私の前世だというの!?)

花陽「うん、心配かけてごめんね…」

穂乃果「ううん、元気な花陽ちゃんが帰ってきてくれて嬉しいよ!」
 (最近ずっと見る夢のせいかな……あれが本当に私の前世の記憶だとしたら…花陽ちゃんも…)

花陽「……………」


 どうやら穂乃果ちゃんは前世の記憶が蘇ってしまったようで、それに悩まされているようです

 私の前世も見ているのかな? 大変だなー
 

5: 2016/10/21(金) 06:10:13.46 ID:j4gnACjq0.net
 
 すごいものを発見してしまいました


 (そろそろ本国への定時連絡をする時期…)


 


花陽「…………」


絵里「あ、花陽!もう大丈夫なの?」
 (花陽も元気になったのよ…今私の事情でμ’sを離れるわけには行かない…)

花陽「うん、もう大丈夫だよ」

絵里「ほんとに驚いたのよ…ま、無事でなによりだわ…」
 (μ’sの次のライブで…あいつはかならず動く…それまでμ’sの活動に支障がないようにしないと…)


 絵里ちゃんがなんだか物騒な事を考えています。本国ってどこだろう?
 

6: 2016/10/21(金) 06:11:23.86 ID:j4gnACjq0.net
 
 かわいい人がいました


 (あれー、なかなかでないなー)


 


花陽「…………」


希「あ、花陽ちゃん、退院おめでとう」
 (うう、結局でなかった…しょうがない…)

花陽「ありがとう、希ちゃん」

希「見てみ、占いで花陽ちゃんの退院を祝福する希望のカードがでてるんやで!」
 (なんかヤバそうなのしかでないから、こうするしかないよねー)

花陽「わー、すごーい!」

希「花陽ちゃんの未来は明るい兆しがあるんよ、元気だしてがんばろーな?」
 (うぅ…ごめんね、でも笑顔になってくれるなら、いいかな…)

花陽「ありがとう、希ちゃん」


 スピリチュアル?なのも大変みたいです。でも気持ちはすごく嬉しいです
 

7: 2016/10/21(金) 06:12:30.16 ID:j4gnACjq0.net
 
 もう、なんて言ったらいいのかわかりません……


 (この私が学生……しかもアイドルだなんて、冗談がきついです…)


 


花陽「…………」


海未「おはようございます、花陽」
 (この子は小泉花陽。たしか入院していたと聞きましたが…)

花陽「おはよう…海未ちゃん…?」

海未「もう退院したのですね。体のほうはもういいのですか?」
 (そうか、私の名前は園田海未だったな…まったくこんなミッションをどうして私が…)

花陽「う、うん…心配かけてごめんね……」


 海未ちゃんの中身?が知らない人になってました…元の海未ちゃんはどこにいったのかな?
 

8: 2016/10/21(金) 06:13:37.92 ID:j4gnACjq0.net
 
 私にはちょっと刺激が強い人がいらっしゃいました


 (えへへ…もうすぐ花陽ちゃんが登校してくる…ぐへへへへ…)


 


花陽「…………」


ことり「あ、花陽ちゃんオハヨー♪」
 (あぁ、数日ぶりに見る花陽ちゃんやっぱり可愛いよ~~!)

花陽「お、おはよう…ことりちゃん…」ビクッ

ことり「ん、どうかしたの?」ズイ
 (ぐへへ、やっぱりいい匂いだよぅ…それに…あぁ、抱きつきたい…吸い付きたい…)

花陽「なんでもないです、ひさしぶりの学校に緊張しちゃって…」

ことり「大丈夫?気分悪くなったらすぐに言ってね、教室まで付き添うから、いこ?」ズズイ
 (あー、たまんないよぅ…これで眼鏡花陽ちゃんだったら私限界突破してたよぅ)

花陽「あ、平気です。職員室に行かないといけないので、ありがとうことりちゃん」ソソクサ


 しばらく眼鏡は封印しようと思います…
 

9: 2016/10/21(金) 06:15:05.66 ID:j4gnACjq0.net
 
 犯人を見つけました


 (うーん…遠くから観察している分には普通ね…)


 


花陽「真姫ちゃーん、おはよ~」

真姫「おはよう花陽。それと退院おめでとう」
 (花陽に変わったところはない…人間の潜在能力を覚醒させる薬はやっぱり失敗だったのかしら?)

花陽「あ、ありがとう…真姫ちゃん…」ピキ

真姫「それにしても運ばれたのがうちの病院でホントラッキーだったわね」
 (ただの脳震盪で運ばれてくるんだもの…こんなに健康な実験体は他にいなかったからしょうがないわよね…)

花陽「そ、そういえば入院費とか格安にしてくれたんだよね、ホントありがとう」ピキピキ

真姫「それくらい当然じゃない……と、友達なんだし?」
 (ホントはそれだけじゃないけれど、まぁ変化なしなら言う必要はないわね…あーあ、失敗かぁ…)


 よくわからない実験はどうやら大成功みたいだけど、ちょっと酷いなって思うので黙ってようと思います
 

10: 2016/10/21(金) 06:16:57.63 ID:j4gnACjq0.net
 
 物語の主人公のような子がいらっしゃいました


 (花陽……いえ、前世の姫を守れなかったあの時の想いがまた……)


 


花陽「えー………」

にこ「おはよう花陽、無事でなによりだわ」
 (本当にご無事で…しかし穂乃果の覚醒もまだだというのに、今姫を守れるのは銀騎士級である私だけ…)

花陽「えっと…にこちゃん?」

にこ「ん、どうしたのよ?」
 (姫にはこの世界で普通の女の子として生きて欲しい…好きだったというアイドルになって…そのために私は…)

花陽「いきなり重い!」

にこ「どうしたの?あんたまだ体調悪いんじゃないの?」
 (転生したこの体じゃできる事なんてたかがしれている……だけど私は今度こそ姫を守り抜くと誓ったのよ)


 なんだか王子様っぽいにこちゃん……さすがにちょっと驚きです
 

11: 2016/10/21(金) 06:18:11.13 ID:j4gnACjq0.net
 
 こんな感じで私の世界はわりと不思議に満ち溢れていることがわかりました

 わかりましたけど、私に何かできるようなものでもないのでのんびり眺めていきたいと思います


 そういえば海未ちゃんを見つけました


 


花陽「あ、海未ちゃん。これから生徒会?」

海未「花陽。そうですね、少し仕事を片付けてから屋上へ向かいますので、先に行っててください」
 (あぁ、花陽…ホントに無事でよかったです…)

 あれ、いつもの海未ちゃんだと思ったのもつかの間…

海未「それではまた後で……」
 (あの少女は今回のミッションとは無関係のようですが…ちょっといきなり話しかけてこないでください)
 (語り掛けないと私の意思が伝えられないではないですか。それはそうですが…もう、なんでこんな事に…)


 どうやら中?に二人ともいるみたいです。海未ちゃん大丈夫かな?
 

12: 2016/10/21(金) 06:19:36.58 ID:j4gnACjq0.net
 ある日の屋上、ダンスの練習中…


花陽「はっ、はっ、ふぅ……はぁ…」タタン…タン

凛「かよちんすっかり調子取り戻したにゃ~」
 (かえりにラーメン食べに誘ってみようかなぁ…でもご飯のほうがいいかな?)

花陽「うん、少しでも遅れた分を取り戻したいから…ふぅ」

ことり「がんばってるね花陽ちゃん。はい、水分補給も大事だよ?」サッ
 (うふふ、この水筒に花陽ちゃんが口をつけたら回収して…えへへ)

花陽「あ、自分のがまだあるので大丈夫です。ありがとうことりちゃん」

ことり「そう?必要になったらいつでもいってね」ニコッ
 (あうぅぅぅ……また失敗だよぅ……)


 知らずにことりちゃんから色々と仕掛けをされていたのかと思うと少し背筋が凍る思いです

 それでも私達μ’sは今度のライブに向けての猛練習は続きます
 

13: 2016/10/21(金) 06:21:11.33 ID:j4gnACjq0.net
絵里「それじゃ、一度通しでやってみましょ」パンパン
 (なんだか海未の調子が悪そうね…披露が溜まっているのかしら?)

穂乃果「海未ちゃんどうかしたの?」
 (最近時折海未ちゃんが違う人のような印象を受けるけど…なんだろう。私の記憶と関係があるのかな?)

海未「いえ、問題ありません穂乃果。続けてください」
 (全然踊れていませんよ、スズ!…あなたがいちいち口をだしてくるので集中できないのですよ海未!)

真姫「少し休憩したほうがいいんじゃない?」
 (海未ちゃんに栄養ドリンクだって言って新しいクスリためしてみようかな)

希「そうやね、ライブ前に無理しても体調が万全じゃないと意味ないもんね」
 (それに、今度のライブ…あんまり良くない啓示がきてるから…)

絵里「そうね。それじゃ15分休憩しましょ」
 (この間に少し向こうにアプローチしておくのもいいかもね…)


 みんな色々事情がありそうで、大変みたいです
 

14: 2016/10/21(金) 06:22:20.49 ID:j4gnACjq0.net
 
 そういえば私のこの不思議な現象…どうやらμ’sのみんなにしか効果がないようなのです

 教室での賑わいも、街中の喧騒もいつも通りでした。それは家でも同じ…だけど……


 


 (くそっ、見失ってしまいましたか!)


花陽「…………」


 夜…寝ている私の頭に響いてくる声。どうやら誰かが夜の街を徘徊しているようです

 不思議な現象の効果範囲はよくわかりませんが、もっと集中すれば声の主も判別できそうな気もします


 だけど眠いので気にせず寝ます。おやすみなさい…
 

15: 2016/10/21(金) 06:23:46.89 ID:j4gnACjq0.net
 
 またある日の練習中…


絵里「はーい、十分休憩ね」
 (あの報告が本当だとすれば…私達の中にもうヤツが潜んでいる可能性が…?)


花陽「……………」


 なんだか本格的に物騒な事を考えています、絵里ちゃん
 

ことり「花陽ちゃん、クッキー焼いてきたの、食べない?」ニコニコ
 (えへへ、餌付け~餌付け~♪)

にこ「へえ、おいしそうじゃない、私にもちょうだいよ」ヒョイパク
 (最近のことりの花陽にたいする目つきがおかしい…まさかことりもあちらの世界からきた!?)

ことり「あー!もうにこちゃんてば、焦らなくてもみんなの分あるよ~」
 (うぅ…一番出来栄えのよかったやつ、にこちゃんが食べちゃったよぅ…)

凛「あーいいな、凛も食べたい~」
 (おやつもいいけど、ラーメン食べにいきたいな~)

花陽「………………」


 わりと平和だと思うのですけど……何か起こっているのでしょうか?
 

17: 2016/10/21(金) 06:25:19.87 ID:j4gnACjq0.net
 その日の夜、また寝ているところを起こされてしまいました


花陽「………んっ……誰…?」ハフッ


 


海未「ここが花陽の家ですか…」
 (そうですが、どうしたのですか突然…)


 聞こえてくる声は私の部屋の外……まだ半分寝ていた私の意識が一気に覚めました

 窓の外に月明りに照らされてみえる人影……海未ちゃん……


海未「海未、ハッキリいいますが、現時点で一番怪しいと思われるのは花陽です」
 (な…なにをバカな事を…花陽がそんな……)


 ん、私?
 

18: 2016/10/21(金) 06:26:48.43 ID:j4gnACjq0.net
海未「最近の練習中もそうですが、花陽はいつも私達全員の顔色を窺うように見つめていることがあります」
 (そ、それは確かに…私も感じていた事ですが…しかしスズ……)


 へ……なんか知らないうちに私が疑われているようです

 でも、なんの疑い?


海未「あれはあきらかに私達の様子を探っているものと推察されます」
 (し、しかしスズの言う魔物というのは…その…人を食らうとか…それじゃ花陽は…)

海未「食らうというより、意識や精神を丸ごと飲み込むのです。本体には影響はでないでしょう」
 (そ、それでは…あれは花陽であって…花陽ではない…と?)


 なんだか話が飛びすぎていて理解が追い付かないのですけど、私が魔物だと思われているようです

 魔物ってなに?


海未「しかし本来、喰い取った相手が強く想う優先意識でしか動けないのが低級のはず…あの花陽は…」
 (随分と…馴染んでいる…というか普通に生活しているように見えますが……)


 そりゃあ、普通に生活してるだけですから……
 

19: 2016/10/21(金) 06:27:55.45 ID:j4gnACjq0.net
海未「とにかく、彼女は最も注視すべき存在というのを覚えておいてください」
 (ほんとに……これが現実なのですね……)


 しばらくして窓の外の人影は見えなくなりました

 海未ちゃんの中の人…スズさん?が言った事がどこまで本当かは分かりませんが

 もしかして大事件の予感?


花陽「ふぁ…んん、ぅ……」アクビ


 でも眠いのでおやすみなさい……
 

20: 2016/10/21(金) 06:29:18.61 ID:j4gnACjq0.net
 
 穂乃果ちゃんが寝不足みたいで辛そうです


 


花陽「大丈夫、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「うん…ごめんね心配かけて…」ヨロ
 (日増しに夢がリアルになっていく…私と花陽ちゃん…それにもう一人、銀色の鎧を着たあの人は一体…?)


 それたぶんにこちゃんだと思うけど……私が言うとややこしくなりそう……


にこ「おはよ、二人とも」
 (穂乃果どうしたのかしら?)

花陽「にこちゃん、おはよ~」

穂乃果「おはようにこちゃん。ん、ふぁ…ん…」
 (うう、眠い……保健室いこうかな…でもみんなに余計な心配かけたくないし…)

にこ「なによ大きなアクビして、寝てないの?」
 (ふふ、昔を思い出すわ…私と花陽…そして穂乃果…いえ、エミーと一緒だったあの時を…)


 穂乃果ちゃん、エミーって名前なんだ。それより…


花陽「あの…穂乃果ちゃん、無理しないで保健室行った方が……」

にこ「なに、穂乃果アンタまじで体調悪いの?」
 (頑丈なのが取柄の穂乃果にしては…そういえば前にも同じような事で倒れたっけ…)

穂乃果「う、うん……ごめん、やっぱりちょっと行ってくる……」
 (今無理しても、余計に心配かけちゃうよね……花陽ちゃんありがとう…)


 ちょっと心配になったので付き添って行きます。毎日眠れないってツライよね…
 

21: 2016/10/21(金) 06:31:17.71 ID:j4gnACjq0.net
 
 それは本当に突然の出来事でした


 


ことり「花陽ちゃ~ん、新作のおにぎり作ってみたの、食べて~♪」
 (えへへへ、おにぎりなら花陽ちゃんも食いつくはず…具は特性のことり汁だけどぅ…ぐへへへ)

花陽「え、えっと…ことりちゃん……あ、あの…」


 ことり汁ってなに!?せっかくのおにぎりなのにそれはちょっと嫌…です…


ことり「あぅ……これも食べてくれないの……」ジワ
 (はぁ…やっぱり私花陽ちゃんに嫌われちゃったのかな…あーん……)

海未「っ!!?」ハッ
 (いけません、これは!!え、ど、どうしたのですかスズ?)

絵里「ことり!!」
 (ちょっと、ゲージが一気に…なんて事…!)


花陽「え?え?…えー…?」


絵里「わぁ、おいしそうなおにぎりね、私も一つ頂いていいかしら?」
 (とにかく今はことりの機嫌を……!!)

海未「ホントおいしそうですね、私もお呼ばれしたいです」
 (スズ?…ちょっと黙っていてください、緊急事態です!)

ことり「あぁぅ……ありがと、どうぞー……」シュン
 (花陽ちゃんに嫌われちゃった…花陽ちゃんに……嫌われ…ぇぅ…)


 な、なにがどうしたのいうのでしょう?
 

22: 2016/10/21(金) 06:32:25.25 ID:j4gnACjq0.net
絵里「おいしいわねこのおにぎり!」モグモグ
 (うぐっ、この中にある液体は一体……しかし今はガマン…!)

海未「ほんとにおいしいですね、ことりはいいお嫁さんになれます」ハフハフ
 (お腹が空いていたのですか?…そうではありません、が…今は…)

ことり「そ、そう…よかったら全部食べていいよ…」
 (花陽ちゃんが食べてくれないんじゃ、意味ないもん……)

絵里「そう、でも私達だけで頂いたら悪いわね、みんなも食べるー?」
 (どういうこと!?ゲージがまったくプラスにならない!?)

穂乃果「え、なにー?あっおにぎりだ、ことりちゃんが作ったの?」
 (なんとか体調も戻ったし、食べたいなー)

凛「おにぎり~?食べるにゃ~~!」
 (でもラーメンも食べたいなぁ…)


 よくわからない状況ですが、絵里ちゃんと海未ちゃんが困っているようでした
 

23: 2016/10/21(金) 06:33:50.37 ID:j4gnACjq0.net
ことり「わー、みんな綺麗に食べてくれたんだね、ありがとう」
 (花陽ちゃんには食べてもらえなかったけど、嬉しいな…)

絵里「とてもおいしかったわ、ことり」
 (ゲージの下降は止まったけど…どうすればプラスに…)

希「あんまり食べたことない味だったけど、いい感じの塩味やったね」
 (また食べたいなぁ……)

にこ「おいしかったわ、ことり」
 (なんだろう…具の材料がいまいち掴めない…)

穂乃果「よーし、元気もでてきたし、練習がんばろう!」
 (でも食べたらまた眠くなってきたかも…)

海未「そうですね、がんばりましょう」
 (スズ…さっきのは………スズ?)


 ことりちゃんのおにぎりはみんなに好評でした

 うう…怪しい言葉につい避けちゃったけど、おいしそうなのは確かだったし…


花陽「あの…ことりちゃんごめんね、私今おなかすいてなくて…その…」

ことり「花陽ちゃん…」
 (うぅ…花陽ぢゃぁん…)
 

24: 2016/10/21(金) 06:34:49.70 ID:j4gnACjq0.net
花陽「今度また、食べたいな…ことりちゃんのおにぎり…」


ことり「………………」

花陽「……だめ……かな?」


 


ことり「…………」パァ
 (食べたい…花陽ちゃんが…私のおにぎり……!!)

絵里「えっ……なに、急にゲージが…!?」
 (ことりに一体なにが……ん、花陽?)

海未「まさか……女王の対象というのは…」ジッ
 (要注意人物である花陽が…最重要保護対象かもしれません……え?どういうことですか?)

花陽「………………」


 え……ホントにどういうことですか?
 

25: 2016/10/21(金) 06:36:32.81 ID:j4gnACjq0.net
 -放課後 正門前

ことり「それじゃあ花陽ちゃん、明日楽しみにしててね!」
 (ぐふふふ、今日はいっぱいことり汁を抽出しないと♪)

花陽「う、うん…また明日ー……」


 ちょっとした約束をしました…けど、すでに後悔しはじめています。何を抽出する気だろ…


絵里「花陽、ちょっといいかしら?」
 (やっぱり花陽には自分の立場をしっかり認識してもらわないと…)

海未「花陽、少し話があるのですが…」
 (すぐにでも花陽に説明する必要があります。そ、それはスズの言っていた…?)

花陽「え、えっと…あの…」


 なんだか私に向けられる思考が色々まじって入り込んできます

 ここ最近の不思議な状況に私が関係しているのでしょうか?


絵里「ごめんなさい海未。私花陽と大事な話があるの…」グイ
 (お願いだから邪魔しないでよ、海未…)

花陽「あうっ、え、絵里ちゃん……」

海未「待ってください絵里!私も花陽に大事な話があるのです!」グイグイ
 (こんなときに…!…絵里、なにか焦っていますね…)

花陽「う、海未ちゃん引っ張らないで……ぅぅ」


 二人ともなにか私に伝えたいようですけど、ちょっと強引すぎますー ダレカタスケテー!
 

26: 2016/10/21(金) 06:40:26.70 ID:j4gnACjq0.net
にこ「ちょっと、花陽が痛がってるでしょ!」バッ
 (急にどうしたのよ、この二人!)

花陽「あ、にこちゃん…ありがと…」

絵里「にこには関係ないわ、ちょっと邪魔しないでっ」
 (これ以上騒がしくしたら花陽に警戒されちゃうじゃない…!)

海未「申し訳ありませんが、にこも絵里も、今は私に時間をください」
 (スズ、本当に花陽に話をしないといけないのですね?…そうよ、だから邪魔しないで…)

絵里「それは認められないわ、こっちのほうが大事な話なの」
 (ただでさえジョーカーの特定もできていないのに…もうっ)

にこ「ちょっと落ち着きなさいよ二人とも!」
 (どんな理由にしろ、花陽に害をなすのならっ……!)


 はわわわ、ど、どうしよう……


凛「あれー、かよちん達まだ帰ってなかったのー?」
 (はやく帰ってラーメン食べたい……)

穂乃果「みんなどしたの?」
 (どっか遊びに行くのかな?私もいきたいっ)

絵里「くっ……もう!…花陽、あとでメールするから!」タタタ
 (一端出直した方がよさそうね…)

花陽「え…あー…はい……」

海未「むぅ……」
 (スズ、ここは一度引きましょう。強行手段にでるにはまだ早いです)
 
 
海未「花陽、明日で構いません、二人だけで話をする時間をください」
 (それほどまでに重要なのですか、花陽が?……はい)


 そう言って海未ちゃんは帰っていきました
 

27: 2016/10/21(金) 06:42:34.06 ID:j4gnACjq0.net
 
 結局あの後、にこちゃん、穂乃果ちゃん、凛ちゃんと一緒に少し街をブラついてから帰りました

 にこちゃんはいつも通りのようで、終始私の事を気づかってくれていました

 穂乃果ちゃんはこのところ前世?の記憶に悩まされていたけど、体調も戻りつつあるようでいつもの穂乃果ちゃんでした

 凛ちゃんは事あるごとにラーメンを食べたがっているようでした。ホントに好きなんだね


花陽「あ…きた……」trrr


 絵里ちゃんからのメール。きっとさっき話したがっていた事だと思うので少し緊張しつつ見てみました


花陽「………………」


 私の事を普通の女の子だと思っている絵里ちゃんは、その突拍子もない内容の事を信じてもらえるように、

 【絢瀬絵里の名にかけて、真実を伝えます】と、念を押していました


 -この世界は再構築された世界よ。ある人物の無意識下での願いが形となった世界なの-


 


花陽「……わぁ…………」


 この時すでに私は深く考えるのをやめています。ただ言われた事を、そうなんだーと受け入れるだけです

 -詳しく話たいので二人きりでちゃんと話がしたいの。でも、これだけはすぐに伝えないといけない-
 

28: 2016/10/21(金) 06:45:08.96 ID:j4gnACjq0.net
 おいしいごはんを食べて、お風呂に入り、明日に備えてもう寝るだけです

 だけど今日に限ってはお布団ぬくぬく~とはいきませんでした


 -あなたの命が狙われています。相手はまだ花陽がターゲットだと絞り込めていないけど、それも時間の問題-

 -そして残念な事だけど、その相手は私達μ’sの中にいます。念のため今夜から花陽の家の周囲に警護をつけるわ-

 -私と二人きりで話したいと申し出ておいてこんな事言うのは変かもしれないけど、相手がわかるまで…-


 -μ’sの他のメンバーと絶対に二人きりにならないで。一日でも早く私達がなんとかするから、どうか信じて!-

 -それとこの再構築された世界で私は私の役割というのを自覚してるわ。花陽はどう?-

 -ふとした部分で体に変化はない?違和感を感じている事が少しでもあるなら相談して-


花陽「ふぁ……ん……」


 メールを何回か見直し、眠くなってきたのでそろそろ寝ようと思います

 絵里ちゃんの言う事がホントかどうかというのはまだ私にはわかりません

 だけど、一つだけわかる……というか、自分について考えるとおかしく感じる部分はあったりします

 みんなの心の声が聞こえてくるのは、真姫ちゃんのせいじゃないかもしれない事と…

 私達のμ’sがもう…まともじゃないっていう事を言われているのに、私は……悲しくならない


花陽「私の感情……なにかかけてないかなぁー……」


 それでも深く考えるにはもう眠いので今日は寝ます。おやすみなさいー……
 

42: 2016/10/22(土) 06:22:04.34 ID:EO1UInZ70.net
絵里「おはよう、花陽」ニコ
 (むぅ……)

海未「おはようございます、花陽」ニコ
 (どうして……)

にこ「おはよっ花陽、さ、学校いきましょう」ニコニコ
 (なんでこの二人まで……)


 朝、学校へ行こうと玄関を出たところでこの状況です

 昨日のメールの内容を考えるとわからなくはないのですけど…はぁ…


にこ「いよいよ来週はライブだからね、今日も気合いれて練習するわよ!」

海未「そうですね、早く新曲を披露したいですね」

絵里「にこ、あなた通し練習の時にまだミスが目立つわよ?」

にこ「いっ!?だ、大丈夫よ!本番までには完璧にするから見てなさい!」


 あれ…?


にこ「花陽、どうしたの?」
 (ライブの事で心配事でもあるの?)

花陽「う、ううん…なんでもないよ……」


 いま…一瞬だけどみんなの声が響かなかったけど…なんでしょう?
 

43: 2016/10/22(土) 06:24:46.86 ID:EO1UInZ70.net
 
穂乃果「おはよー、今日も一日がんばってにいこー!」
 (あの夢見なくなってから調子でてきたかなー)

にこ「朝から元気いいわね穂乃果」
 (昔のエミーを思い出すわね…)


 穂乃果ちゃんはもう前世の夢に悩まされていないのかな?

 理由はどうあれ元気になったのは良かったです


希「みんなおはよー」
 (うぅ…深夜番組ちょっと控えないと…まだ眠い…)

真姫「おはよ、そんなゾロゾロあつまってどうしたの?」
 (私も一緒に登校したかったな…)


 なにげない、私にとっていつもの日常です


凛「かーよちん、それにみんなもおはよ~!」
 (朝食ラーメン食い足りなかったなぁ…)

ことり「みんなおはよう。少し寒くなってきたねー」
 (んふっ…今日は花陽ちゃんと……えへへ…)


 ホントに……この中に私の命を狙っている子がいるなんて、信じられません
 

44: 2016/10/22(土) 06:28:29.77 ID:EO1UInZ70.net
 お昼休みになり、昨日ことりちゃんと約束していたこともあって私達は屋上で一緒にご飯を食べることになりました

 どうせならと他のみんなもと声をかけましたが、外は寒いとか今日は寝過ごしたから学食とか、色々理由もあって全員とはいきませんでした


ことり「見て見てこれ、早起きして作ってみたんだ~」
 (えへへ、喜んでくれるといいな♪)

絵里「へー、すごいわねぇ、これ全部ことりが作ったの?」
 (あ…ちょっとおいしそう……)

海未「さすがですことり。穂乃果にもこれくらいがんばってもらいたいものです」
 (あの幼馴染の事を海未はよく気にかけていますね……そ、そうですか?)

にこ「あら、これはこの前私が教えたやつじゃない。ちゃんとできてるわね」
 (ふむ…見た目も問題なさそうだし、上達してるわねーことり)

穂乃果「おまたせー、飲み物買ってきたよ~」
 (あっ、ことりちゃんのお弁当すごく豪勢…そしてすごい量…おいしそ)

凛「ことりちゃんのおいしそうだにゃ~」
 (でもやっぱりラーメン食べたいなぁ…)


 こうしてると、なんてことない時間なのに……それでも少しすると…
 

45: 2016/10/22(土) 06:29:23.70 ID:EO1UInZ70.net
ことり「花陽ちゃ~ん、次これ食べてみて~」
 (ふふふ、次が大本命なのだー)

花陽「あ、ありがとう、ことりちゃん…」

絵里「あら、にこのそれもおいしそうね…」
 (このゲージの動きから見ても、花陽が対象で間違いないわね)

にこ「別に、食べてもいいけど…そんな大したものじゃないわよ?」
 (なんだか最近花陽の周りにみんなよく集まってるきがするけど…)

海未「穂乃果、少し野菜が少なくないですか?食事はバランスも大事なのですよ?」
 (さて、この後どうやって花陽に切り出しますか…って、聞いてますか海未?…え、あ、あぁはい)

穂乃果「えー、大丈夫だよう、ほらっ野菜サンドもちゃんとあるから!」
 (もう、やっぱり海未ちゃんはお母さんみたい!)


 すぐにみんな心では違う事を考えます。絵里ちゃんは今の状況を再構築された世界だとか難しい事言ってたけど

 私にはやっぱりよくわからないし、ライブの事をもっと真剣に考えないのかなーとか思います
 

46: 2016/10/22(土) 06:30:44.77 ID:EO1UInZ70.net
 
海未「花陽、今日の練習後、少し時間を頂いてもよろしいですか?」
 (これから大きく変わる状況を前にどうしても…)

花陽「あ、そ、そうだね…昨日言ってたし…でも……」チラ

絵里「……………」ジト
 (ダメよ花陽。二人きりというのは認められないわ)

海未「お願いします。これは花陽にとってとても大事な話なのです」
 (拒まれる事情が逆に気になります……そうですね、花陽はどうして…)

花陽「ああぅ…ど、どうしよ……ぅぅ」

海未「花陽!」
 (お願いします花陽!)

絵里「……………」ジッ
 (絶対にダメよ、花陽)


 ああもう、頭に響く思いがグルグルします…私にそんな決定権なんて

 もう、わかりませんーーー!!
 

47: 2016/10/22(土) 06:31:44.06 ID:EO1UInZ70.net
 
花陽「……………あれ?」

海未「ど、どうかしたのですか花陽?」

絵里「…………花陽?」


 声が……また…聞こえなくなりました

 当たり前だった今の状況がかえって不自然に感じるほど、私は戸惑います


海未「聞いてますか、花陽?」

絵里「どうしたの花陽…」

花陽「ご、ごめんなさい…なんでも…ない…よ」

海未「それで、放課後の件は…よろしいですか?」

絵里「海未…悪いけどそれは……」

海未「どうして絵里がでてくるのですか?関係ないじゃありませんか…」

絵里「ごめんなさい。だけどこればっかりは譲れないのよ…わかって…」

海未「絵里…?あなたまさか……っ!」


 大変です大変です、私が優柔不断なせいで二人が険悪なムードになってしまいます!

 どうしましょう、どうしたらいいのでしょう…唯一の判断材料だった声が響かないから…やっぱり…


花陽「う、海未ちゃんも絵里ちゃんも落ち着いて…!」
 

48: 2016/10/22(土) 06:33:56.10 ID:EO1UInZ70.net
 
 どうにかしなきゃと、がんばって考えました。それがこの結果です!


 -放課後のアイドル研究部部室

海未「……………」
 (スズ……)

絵里「花陽…良かったら説明してくれる?」
 (どうして無関係の海未を…いや、もしかして……)

花陽「えっと………」


 落ち着いて状況を整理しようとしたところ、またみんなの心の声が響くようになりました

 もしかしてと思ったのですが…


花陽「あのね絵里ちゃん……」

絵里「ん………」


 この不思議な現象…名前はよくわかりませんが人の心が頭に響くこれ…

 私が聞きたくないと思えばわりと簡単に聞こえなくなるみたいです

 疲れている時とか、もううるさいなーとかちょっと思っちゃう事ってありますよね?


花陽「海未ちゃんの話って、たぶん……絵里ちゃんと同じ内容だと…思う……」

絵里「なっ!?」

海未「まさか!?」
 

49: 2016/10/22(土) 06:35:21.56 ID:EO1UInZ70.net
 私のこの不思議な現象の事はまだ話さないまま二人には事情を説明します

 説明というか、もう私の感?のようなものだということにしましたけど…


花陽「だって二人とも…私のために色々とやろうとしてくれているみたい……だし…」

絵里「…………」
 (どういうこと…?海未は事前調査でも普通の人間としてクリアされていたはずじゃ…?)

海未「…………」
 (なるほど、考えてみれば至極まっとうな理由かもしれません…スズ、それはどういう?)

花陽「わ、私の命が狙われてるって……そう教えてくれようとしたのでしょ?海未ちゃん…」

絵里「………」
 (その理由が私達と同じ見解なら……)

海未「そうです。花陽の命を狙う存在がいます。そして……」
 (スズ、いいのですか?……花陽自身が言うのでしたら大丈夫でしょう)

絵里「その犯人は校内に……いえ、私達μ’sの中にいる……そうよね?」
 (こいつは…味方か、それとも……)


 お互いに視線をぶつけ合い、この状況を把握しようとしています

 言いながら絵里ちゃんが少し私のほうへ身を寄せたのは私を守ろうとしてくれているから?
 

50: 2016/10/22(土) 06:37:40.47 ID:EO1UInZ70.net
海未「そうです…では絵里、あなたは女王の存在を認識していると…そう判断してよろしいのですか?」
 (絵里まで…もう本当に私達のμ’sは……)

絵里「女王……と、いう呼称が正しいのかは知らないわ。私達はそう呼んでいないし…でも、その人物の名をあげるなら…」
 (これで関係がハッキリするはず……)


 そうして絵里ちゃんと海未ちゃんが、ここにきて驚く名前をあげてくれました


 


絵里海未「「 南 ことり 」」


 頭の中がまたしてもグルグルしてきました…ちょっと自分でも整理したいところなのですが…

 二人は意思疎通ができたのか、ことりちゃんの名をあげると同時に少し笑みが見えます。オイテカナイデー!
 

51: 2016/10/22(土) 06:39:47.16 ID:EO1UInZ70.net
 ちょっといろんな情報が入ってきてこんがらがってるのでしばらく流れに身をまかせます


絵里「あなたは海未じゃない。では聞くけど、ホンモノの海未はどこ?」

海未「ここにいる園田海未が本物ですよ、正真正銘。ただ少し体を間借りしているだけです」

絵里「体を……乗っ取っているということ?」

海未「海未本人も了承しています。今代わりましょう…」スッ


 そういうと海未ちゃんは静かに目を閉じるとこと数秒…次に目をあけると……


海未「絵里、どうか彼女の話を聞いてあげてください」

絵里「……海未……なのね………」

海未「はい、私は彼女…スズにこの体を提供しています。最初は少し強引でしたが…」

絵里「スズ、それが彼女の名前ね」

海未「どうやら絵里もスズと同じような目的で動いているようですし、彼女と協力を…」

絵里「それは出来ないわ。申し訳ないけど……」

海未「なぜです?花陽の命が狙われているのですよ?」

絵里「その狙っているヤツの情報、少しだけど私にも届いているわ……」

海未「な、なにを……」

絵里「ヤツは、対象の体を乗っ取り行動するマインドアサシン。今のあなたがそうであるように…体に、寄生する…」

海未「その情報をあなたが持っているとは驚きです。ですが手間が省けるというのでしたら、まぁいいでしょう…」

絵里「スズ?」

海未「はい。そしてあなたのいうマインドアサシン…それは私達の世界で暗躍する組織の名前そのものでもあります」


 えーっと………お茶でも淹れましょうか……
 

52: 2016/10/22(土) 06:43:38.67 ID:EO1UInZ70.net
 テーブルを挟んで絵里ちゃんと海未ちゃんの熱い情報交換は続きます

 部室に置いてある湯沸かしポットでお湯を沸かし、絵里ちゃんには紅茶を、海未ちゃんには緑茶を出します

 私はどれにしようかなー


海未「隠し立てする必要もないのでハッキリと言いましょう。ヤツは私達と同じ種族です」

絵里「あなたも…そのマインドアサシンというわけ?」

海未「この能力は私の世界では一部の者のみが扱う事の出来るものです。ですが私欲のために使う事は禁止されています」

絵里「それを悪用している組織が、そのマインドアサシンってわけね…ではあなたはヤツを止めにこちらへ?」

海未「…………」

絵里「スズ?」


 私のだしたお茶を一口啜り、海未ちゃん……スズさんはなにか考えています

 って、そうか私見れるんでした


海未「…………」
 (どうしたのですかスズ?……今、絵里の存在を踏まえて言うべきか考えていました。結論は…)

絵里「…………」カチャ
 (目的は……どうやら一つではない…という事かしら?…あ、紅茶おいし)

海未「ヤツを止めるのは、そうですね第三目標というところですか」
 (先にこちらから明かすのは少々…いえ、だいぶ癪にさわりますが…お、落ち着いてくださいスズ)


 あ、お話ししてくれるようなのでまたのんびり聞き専になります


絵里「状況としては随分軽いわね」

海未「第一目標は昨日判明した、小泉花陽の安全確保です」


 なんかよくわかりませんが、ありがとうございます


絵里「まだあるのね……第二目標は?」


 そこでスズさんは一度大きく息を整えます。感じからして、第二目標だけどとても大事な事なのかもしれません


海未「第二目標…それは今度のライブで発生すると思われる女王のエネルギーを回収することです」
 

56: 2016/10/22(土) 16:46:03.57 ID:EO1UInZ70.net
 お茶を飲んで一息ついたのでまた声を聞いて見ようと意識したところ、部室の外からそれは聞こえてきました


にこ(な、なんだっていうのよ…これ、マジメに話してるの?)


 あー……にこちゃんがいるなぁと思っていると、


海未「……………」
 (海未、部屋の外に誰かいます……え…)

絵里「……………」
 (この反応……外にいるのはにこね……さて…)

花陽「おー………」


 さすが悪い事をしようとしてる誰かを捕まえようというお二人です。外の気配には敏感でした

 
絵里「にこー、そこで何してるのー?」
 (話を続ける上で邪魔なのは……)

にこ(えっ、バ、バレてるの!?)

海未「にこ、入ったらどうですか?」
 (絵里、どういうつもりかは知りませんが、ここは合わせておきましょう)


 二人に言われてにこちゃんが平然を装って入ってきます
 

57: 2016/10/22(土) 16:47:50.09 ID:EO1UInZ70.net
にこ「あんた達まだ帰ってなかったのね、なにしてるのよ?」
 (やっぱりこの二人、花陽になにかしようとしているんじゃ…)

絵里「もしかしてさっきの聞いていたのかしら?」
 (合わせてよね…スズ…)

にこ「な、なんか難しい事話してるみたいだったけど?」
 (花陽の安全がどうとか…目標がどうとかって…なんなの?)

絵里「あら、バレちゃったのなら仕方ないわね」
 (花陽は……きっと口を挟まないでしょうから誤魔化せるかな)


 ということらしいので口を挟まないようにします


絵里「実は今年のクリスマスパーティーでね、三人でこっそり演劇の出し物をしようって話してたのよ」
 (という流れにするとにこは深く追及はしてこないはず)

にこ「クリスマスパーティーって、そんな話でてたの?」
 (え、私聞いてないんだけど…え?)

絵里「それもこれからサプライズで発表するつもりだったのだけど、バレちゃったら仕方ないわね」
 (場所とかはこれから真姫に相談しようとしていたと、こういう流れでいいわね)

にこ「そうだったの…な、なによ、驚かさないでよ…」
 (てっきり一人呼ばれてないのかと思ったじゃない…それよりも…)


 にこちゃんが私を見ています。きっと私の事を心配してくれていたのだと思います

 私は大丈夫だよという意思を込めて笑みを浮かべる。少しだけ困った表情を交えつつ

 隠し事がバレてしまったという意味合いが通じればいいです。だけど、私の事を考えてくれるにこちゃんを騙すのは…


絵里「というわけでにこ、この事は秘密よ?」
 (にこなら事情を察して、もう邪魔はしてこないと思う…だけど)

海未「…………」
 (もしもにこがヤツだとしたら……え、にこがですか!?)
 

58: 2016/10/22(土) 16:49:06.39 ID:EO1UInZ70.net
 もう少し台本の打ち合わせをしたいからという理由で絵里ちゃんはにこちゃんを追い出します

 納得をして部屋を出たにこちゃんですが、最後にこちらを向き、私を見つめていました


にこ「それじゃ先に帰るけど、あんまり遅くならないようにしなさいよ」
 (花陽が…姫が楽しくしているのならそれでいい……私は…)


 その気持ちに少し胸が苦しくなります。だけどこんな話を信じてもらうのは……ん?

 あー…わりと簡単に信じてくれる気もします。なんせ私を守るシルバーナイトクラス?だそうですし

 だけど簡単に巻き込んでいいという話でもないみたいなので私はまた二人の話に耳を傾けます


海未「よくもまあ自然と嘘をつけるものですね」

絵里「でも助かったでしょ?事態を大きくする必要はないわ」

海未「そうですね、では話を戻しますが……」

絵里「女王というのは…ことりの事でいいみたいだけど、あなたはことりについてどこまで知っているの?」


 ここにきてさっき名前のあがった人物、ことりちゃんについての話が始まります
 

59: 2016/10/22(土) 16:51:17.23 ID:EO1UInZ70.net
 私の今いる状況、この環境を作ったのは南ことりちゃんだそうです

 作ったという表現は少し違うそうですが私にはよくわかりません

 無意識に願い、思い描く環境を再構築する力。それをことりちゃんは持っているそうです


海未「南ことりが持っているというよりも、この力は誰もが持っているものです」

絵里「みんな持っているといっても些細なものよ。時折強い力を持っている者がいたとしても…」


 せいぜいおかしのアタリを引き当てる程度だそうです。よくて宝クジとか

 それでも稀に現れる存在。その力が世界の構造レベルにまで影響を与える者


花陽「それが、ことりちゃん…?」

絵里「実際彼女は私達のほうでも存在は確認されていたわ。しかしその能力指数はレベルC…」


 レベルCというのはのその能力の中でも下から数える方が早いレベルだそうです


絵里「私は何が原因でことりがこのような事態を引き起こしたかを調べるために派遣されてきたようなものなの」

海未「絵里…あなた達の組織というのは……」

絵里「簡単に言えば、観測所みたいなものよ」
 

60: 2016/10/22(土) 16:54:01.32 ID:EO1UInZ70.net
 絵里ちゃんはレベルC以上の能力を持つ人物に近づき、観測するために活動している世界規模の組織の人だそうです

 それじゃ、スクールアイドルをはじめてくれたのは……


花陽「……………」

絵里「花陽」

花陽「え、あ、はい…?」

絵里「私は…スクールアイドルとしてあなた達と一緒にがんばってきた絢瀬絵里も、本当の私よ」

花陽「え…?」


 どういう事か解り難かったので心の声を聞いて見ます


絵里「正確に言うと、ことりにこの先大きな変化もなく何事もなければ、私もこのままだった…」
 (みんなとスクールアイドルをがんばって、大学に通って…なにげない日々が続くはずだった…)

花陽「絵里ちゃん……」

絵里「でも、ことりがどのタイミングで世界を再構築したのか、その原因を突き止めるために私はここにいる」
 (正確には、何かあったらすぐに動けるように近くに在り続けていたのだけど…)


 一度大きく覚醒しちゃったことりちゃんは今すごく不安定なのだそうです

 世界をどうにかしてしまえるほどの能力だけど、本人にその自覚はないし、知ることもない

 ことりちゃんの感情がそのすべての引き金になるそうですが、その力の属性というのも大きく2つに分けられると…


絵里「負の力…ようはネガティブな感情がある一定値を超えると、ことりはまた無意識に世界を再構築してしまうわ」
 (そしてその内容はマイナス的なものが多い…これだけは絶対に避けないといけない…)

海未「そしてその逆の力…些細な事で感じる幸福、喜び…ポジティブな感情もまた、世界を塗り替える力になります」
 (過去の記録に数回確認されている力です……ことりにそのような…?)


 絵里ちゃんの話を聞く限り、私の周りには不思議な世界が広がっていると思いましたが、もしかして

 これらすべてをことりちゃんが願い、再構築した結果なのかな…私達のμ’sも……
 

61: 2016/10/22(土) 16:57:38.54 ID:EO1UInZ70.net
絵里「そして今回のことりの覚醒と同時に寄せられた情報が…スズ、あなた達の事よ」
 (そして今だから言える…この情報をもたらした人物は…スズの世界の者…)

海未「どうやら内通者……いえ、違いますね、協力者がいるようですね、私達の世界に…」
 (スズの世界もけっこう複雑ですね……そうね、一枚岩でないのは確かね)


 次にスズさんが今回こちらにやってきた事情を説明してくれます

 スズさんの世界は現在深刻なエネルギー不足が続いていて、その改善策として以前からこちらの世界と繋がりを持っていたそうです

 正直聞いていてよくわかってない部分もありますが、かまわず続けたいと思います


海未「事象に干渉する力、思念波のようなものは私達の世界ではエネルギーとして効率よく変換し、運用するシステムがあります」
 (ガスや電気といった意味でのエネルギー消費ですか?……簡略するとそういうことです)


 しかしそのエネルギーは減少傾向にあるそうです。理由は不明ですが挙げるとするなら…人々が夢を見なくなったから?

 そしてスズさん達は私達の世界でその能力を持つ者を探し、こっそりとそのエネルギーを頂いていたというワケです


絵里「そして今回、ことりが謎の大覚醒を果たしたのを観測したあなた達は、次にことりが生み出す力をアテにして来たという事ね」
 (エネルギーの回収そのものはやってくれて構わない。むしろありがたい面もあるわね…)

海未「情けない話ではあるのですが、私達の世界事情はかなり緊迫しています。そしてことりが放つエネルギー指数は…」
 (だから、絶対にミスはできないのです……スズ……)


 ことりちゃんの世界を再構築させてしまうほどの力は、スズさんの世界のエネルギー事情を一気にプラスにしてしまえるほどのものだそうです

 すごいねことりちゃん
 

62: 2016/10/22(土) 17:00:38.07 ID:EO1UInZ70.net
 だけど、やっぱりそこにも悪い人っていうのはいるもので……


海未「マインドアサシン…やつらはことりが生み出すエネルギーを自分達のみで回収、運用することで世界を違う側面から支配しようとしています」
 (横取りというわけですか、許せません!……私達もそう言えたものじゃありませんが…)

絵里「だからことりと……そして花陽が狙われるってわけね…」
 (ライブの日という事は…やっぱり……)

花陽「え……?」


 今までの話を聞いていてやっぱりどこか大変だな~くらいにしか理解していなかった私

 だけどここでまたもや話の主軸にあげられてしまいます。どういうこと?


海未「次にことりが能力を放つとすれば、それはライブ当日」
 (どういうことですか?……ことりにとって大事な日という意味ですよ)

絵里「今度のライブ成功は私達μ’sにとって、ことりにとっても大事なもの。それをやり遂げた達成感、充足感はすばらしいものになるでしょうね」
 (だから諸刃にもなりかねない……)

海未「ヤツらはそこで2つの大きなエネルギーを回収しようとするでしょう」
 (2つ…?……正負ともに…という事です…)

絵里「ライブの成功を持って高揚することりの目の前で、花陽を頃す……まさに天国から地獄ね……」
 (胸糞悪い考えだわ…ホント…)
 

63: 2016/10/22(土) 17:02:21.55 ID:EO1UInZ70.net
 
 ………?


花陽「あの、私の名前がでてるので、やっぱりちゃんと聞きたいのですけど…」


 私が殺されると、ことりちゃんがどうにかなるっていうこと?

 そりゃまぁ、目の前で大切な友達が殺されるなんてことになったらそれはきっと…とっても悲しいはずです


絵里「それは、ことりが一番大事にしている存在が花陽、あなただからよ」
 (事情のためとはいえ、勝手に気持ちを話すのは申し訳ないけど…)

海未「気持ちが最高潮の時、それを共にしている愛する者が殺されるなんて、一体どれほどの感情が渦巻くことになるか、考えたくもありません」
 (は、はは、花陽が!?ことりの…え、ええ!?……気づいてなかったのですか…)


 あ、愛する……者?……ことりちゃんが、私を……?


花陽「え……えええええええ!!!!!」
 

66: 2016/10/22(土) 18:05:18.04 ID:EO1UInZ70.net
 
 なんだか不思議な話を聞いて未知なる世界がどうのこうのよりも一番驚いてしまいました

 私はことりちゃんに愛されているそうです。ぴゃあぁぁぁ……


絵里「私達のところにきた情報は、二つの高エネルギー体と一つのエネルギー体がこの近くに飛来した事…」
 (高エネルギー体というものの一つがおそらくスズ…そして)

海未「待ってください絵里、今の話だとこちらの世界に来ているのは私を含めて三人になるのでは…?」
 (花陽を狙うヤツをいれても二人っていう話では……これは、おかしいですね…)


 えっと、私がことりちゃんにという部分の話はもう過ぎているようです…うぅ…


絵里「この情報を提供してきた人物が言う、エネルギー体というのが花陽の命を狙うマインドアサシンの刺客」
 (スズの反応…どうやらジョーカーっていうのは間違いなさそうね)

海未「そうですね、ヤツは強い自我を持たない魔物ですから…しかしもう一つの高エネルギーというのは?」
 (スズに心当たりがないとなると、本国の応援とか?……それを私に知らせない理由がありません…)


 魔物……そういえばこの前言ってましたが、するとスズさんの本当の姿ってどういうものなんでしょう?


絵里「もう一つについては情報提供者にも不明だそうよ。私達はその存在をジョーカーと呼んでいるわ」
 (なにせ目的も所在も不明、ことりに対して脅威となるのかさえわからないなんて…)

海未「ジョーカーですか…言い得て妙ですが、こちらでも探りをいれてみましょう」
 (問題事がここにきて増えるとは……そのジョーカーというのも私達の中に?)


 どうにも状況は後手に回っちゃってるようですけど、私個人として出来ることはあまりなさそうなので傍観です

 あれ、でも私が命を狙われているということですけど……
 

67: 2016/10/22(土) 18:07:53.90 ID:EO1UInZ70.net
花陽「あ、あの…もしかしなくても、私を狙う人っていうのが私を見つけても、ライブの日までは安全ですか?」


 正直毎日命の危険に怯えながらっていう生活は嫌なのですけど…ちょっと楽観的すぎるのかな?


絵里「それは間違いよ、花陽。ヤツは私達人間に憑依することで行動しているの」
 (エネルギー体のままでは満足に活動できないみたいだしね)

花陽「は、はぁ……」

絵里「そんな相手に見つかってみなさい、ライブの日まで花陽は憑依されて、当日絶対に逃げられない状況で憑依を解く…」
 (これほど適した潜伏場所はないわ)

花陽「あ、体に憑依っていうのは出たり入ったりできるものなんですね……」

海未「そうですね、そのあたりはヤツも可能でしょう」
 (え、スズ!あなた私の体からでられないから協力しろって………ごめんなさい海未…)

絵里「それにしても、ことりのエネルギーを根こそぎ奪うにしてもやり方が陰湿ね…」
 (よくそんな発想が思いつくものだわ…)

海未「もしヤツらの目的が中途半端に達成されてしまうと、最悪な事がおきます」
 (最悪な事……それって……?)


 スズさんは今の状況が如何に危険であるかを認識させるために言葉を選んだわけじゃありません

 本当にそうなるかもしれないという絶対の意思でそう口にします…


海未「この世界は、きっと消滅してしまうでしょう」
 

68: 2016/10/22(土) 18:25:37.27 ID:EO1UInZ70.net
 -夜。花陽の部屋

 
 経緯は不明だけど、能力者として特S級になったことりちゃん

 そんなことりちゃんの中にある、ありとあらゆる感情が、心が乱れる時に生み出されるエネルギー

 もしもライブ成功の後、私が氏ぬような事が起こればそれは発生する。そしてその爆発的に発生するエネルギーを回収しそこねると…


花陽「ことりちゃんはまた…この世界を再構築してしまう……すべての悪夢を振り払うように…」


 スズさんは言いました……そんな状況で願う事なんて一つしかないと。悪夢のような現実からの逃避。現実を否定する感情です

 今日一日で色んな事を知った私ですが、じゃあどうするべきかという問いには何も答えられません

 だって私は…普通だったんですから……。ホントになんの取柄もない、アイドルに憧れるごく普通の…


花陽「………………」


 少し意識して外の様子を探るという気持ちを強くする


(やはりこの厳重な警護は絵里のほうで用意したものでしたか…)

(当然よ。昨日あなたがあれ以上不用意に立ち入ろうとしたら、私がでるところだったわ…)


 聞こえてくるのはおそらく絵里ちゃんと海未ちゃん…いえ、スズさん…

 こんな事が出来る私が普通だなんておかしいですよね。でも、これらすべてがことりちゃんの創った世界だというのなら…

 ことりちゃんは私に何を想い、何を願って今の私にしたんだろう?

 愛されている……なんてちょっと実感のわかない言葉です。好きとか、そういったものではダメだったのかな

 私はことりちゃんの事は好きです勿論。だけど、愛しているかと言われるとちょっとわかりません

 私をそうしなかったことりちゃん……再構築なんて聞きなれない言葉にどれだけの気持ちが込められているのかなんてわからないけど…
 

69: 2016/10/22(土) 19:28:22.53 ID:EO1UInZ70.net
 
花陽「よしっ…!」グ


 次の日、私の中には一つの意思が強くありました

 私が殺されるとかそういうのは勿論嫌だけど、それよりもことりちゃんの気持ちを利用しようとしている悪い人を見つけ出したいと思います

 スズさんの世界で必要とされているエネルギーというのはとりあえずライブ成功という目標が達成され、発生する分を回収できれば十分とのこと

 不必要にことりちゃんの心を掻き乱すなんて絶対にさせません


絵里「おはよう、花陽」

海未「おはようございます、花陽」

にこ「おはよ、花陽。昨日何時まで残ってたのよあんた達」


 私のためにと集まってくれるみんな。申し訳ないけどちょっと考えに集中したいので話は適当に聞き流すね


花陽「おはよー」


 昨日スズさんから私を狙っている魔物さんの情報をいくつかもらいました。それと私のこの不思議な力を駆使すればきっと…


にこ「それで、演劇のほうは順調なの?」

絵里「もう、それ秘密だって言ってあるでしょ?」

海未「当日を楽しみにしていてください、にこ」

にこ「まーそうなんだけどさ…」
 

70: 2016/10/22(土) 19:29:58.95 ID:EO1UInZ70.net
 相手はスズさんと同じエネルギー体で、こちらの世界では実体を現せないから、他人の体に憑依することで活動する

 スズさんのような高エネルギー体だと、対象に何の負荷も与えず、ほぼ共存という形を取れるそうです

 しかし低級の……今回私を探しているであろう相手はそこまでの力はないそうです

 憑依した相手の強く意識していた部分を色濃く残し、極力エネルギーを抑えるため、中で休眠するような形になるそうで

 そしてターゲット…この場合ことりちゃんの気持ち、心を一番強く揺さぶる事の出来る相手、ことりちゃんが大事に思う相手を見つけた時

 魔物さんは活動を開始する……

 とすれば、きっとことりちゃんについて何か探りを入れようと考えていてもおかしくありません。その心の声を読み取ることができれば


穂乃果「おっはよー、あれ、なんだか最近絵里ちゃん達よく一緒にいるね?」

絵里「おはよう穂乃果。ライブ前だからね、色々と意見を出し合っていいものにしようと、ね」

海未「そうですね。今度のライブは今までにないものにしたいと思います」

穂乃果「えー、それは私も一緒だよ~」


 穂乃果ちゃん…少し前まで前世の記憶に悩まされていたけど、もしかしてこれもことりちゃんの創った影響なのかな?


希「おはよーエリチ、みんな……うぅ…寒くなったねぇ……」

絵里「おはよ希。まだ秋も中ごろだっていうのにねぇ…」

にこ「毎朝地獄よ、ほんと…」


 希ちゃん…何も変わらないいつもの希ちゃん……ことりちゃんとの関係も、いつも通り……関係なさげ?
 

71: 2016/10/22(土) 19:31:54.85 ID:EO1UInZ70.net
真姫「おはよ……ってなに、みんなして集団登校が流行ってるの?」

にこ「ここまできたらみんな同じになるでしょ、もう学校よ」

希「真姫ちゃん、ひょっとしてのけ者にされて寂しがっとるん~?」クスクス

真姫「な、なにそれ意味わかんない!」プイ

希「冗談やって~」


 真姫ちゃん……はっ、そういえば私を実験台にして怪しいクスリを試していたよね!?あれって結局なに?

 って考えても、それ以上の事はでてきません。それに再構築がいつ行われたのかわからないので、この真姫ちゃんがどっちの真姫ちゃんかもわからないよね

 でもいちおう、グレー?


ことり「みんなおはよー、寒いねぇ…」


絵里「おはようことり」

穂乃果「ことりちゃんおはよ~」

海未「おはようございます」


 ことりちゃん……どうみても普通の女の子なのに、そんなすごい能力があるなんて微塵も感じさせない

 じつはスズさんの話を聞いて考えてみました。憑依した人物のその時強く意識していた事が色濃くでるという話…

 ことりちゃん、ずっと私の事…考えてくれてるけど……これって、そういうことだったりするのかな?

 あえて最重要人物であることりちゃんに憑依し、ライブ当日に…あれ、でもこれだとことりちゃんの気持ちが昂ることもないからダメなのかな?

 それにことりちゃんの想い人である人物への意識を遮ったままじゃもっと意味ないのかな?…うぅ、私の頭で複雑な事は無理ですやっぱり…
 

72: 2016/10/22(土) 19:33:13.81 ID:EO1UInZ70.net
ことり「どしたの花陽ちゃん?」

花陽「えっ!?」ドキ

ことり「考え事?」ズイ

花陽「は、はい…もうすぐライブだと思うと…そのやっぱり緊張しちゃって……」

ことり「んふ、そういう時は~これ!」


 ことりちゃんはそう言うと持っていた袋から大きな箱を取り出します


ことり「今日ね、みんなで食べようと思ってチーズケーキ作ってきたんだ~」

穂乃果「ケーキ!」

希「えらい気合はいってるんやね、ことりちゃん」

にこ「どうしたのよ急に…」

ことり「なんだろね…ライブ前にみんなに元気になって欲しいって、そう思ったらおもわず…」

絵里「ことり……」


 うん……ことりちゃんはことりちゃんです。絶対憑依なんてされていません!
 

73: 2016/10/22(土) 19:34:38.17 ID:EO1UInZ70.net
 
 さて、となると振り出しに戻っちゃうのかな…?


凛「みんなおっはよ~」

穂乃果「凛ちゃんおはよ~」

にこ「おはよ、朝から元気ねー」


 そういえば凛ちゃん。今のシリアスな展開に一番無縁な感じがして候補にもなってませんでした

 だって凛ちゃんはいつも元気で……


花陽「…………………………………」


 私がこの不思議な現象を体験するようになってからの事を少し思い返しました

 最初に凛ちゃんが私を心配してくれていたのは覚えています

 それから……ええっと……色々あってこんがらがってるかもしれないけど、やっぱり凛ちゃんはいつも元気で……

 大好きなラーメンが食べたいって……ずっと………………そればっかりで………


  『強く意識していた部分を色濃く残す』


花陽「ねえ凛ちゃん……」ジッ


 


凛「ん、かよちんなーに?」
 (かよちんなにかな、ラーメン食べたいのかな?)


 あれ、これじゃないですか?
 

84: 2016/10/24(月) 07:13:33.18 ID:WLcTK2ma0.net
ことり「どうかな?」
 (みんな気に入ってくれるといいけど…)


 お昼にことりちゃんが作ってくれたチーズケーキをみんなで頂きます

 ことりちゃんの自信作だけあってとてもおいしかったです

 授業が終わればライブに向けての最後の練習です。体調を万全にということで練習自体は軽めにして調整します


絵里「もうあとは本番を迎えるだけね…」
 (入ってくる情報に新しいものはない…このままだと…)

穂乃果「やれることはやったし、きっと大丈夫だよ!」
 (μ’sのライブを、もっといろんな人に見てもらえるんだ、がんばらないと!)

真姫「ま、いつも通りやりきれば大丈夫でしょ」
 (パパも見に来るっていってたし…うぅ…ミスしませんように…)

にこ「なにいってんの、いつも以上の力を出しなさい、限界を超えるのよ!」
 (私達ならもっともっとやれるはずよ!)

希「にこっち、えらい気合のはいりようやね」
 (うーん…何度やっても占いにいい結果がでない…なにを暗示してるんだろ…?)

花陽「……………」


 可能性があるのだとしたら、私にできる事はやりたいと思います


凛「かよちんどうしたの?考え事?」
 (悩みでもあるのかな…?ラーメン食べたら元気になるかな?)

花陽「ううん、本番でミスしませんようにって、そればっかり考えてるの…」

凛「大丈夫にゃ!みんなでずっと練習してきたんだもん、かならず成功するよ!」
 (ライブ終わったらラーメン食べ歩きに行きたいな)

花陽「そうだね…がんばろう、凛ちゃん……」
 

85: 2016/10/24(月) 07:14:46.63 ID:WLcTK2ma0.net
 
 -夜。花陽の部屋


 私にできる事……本当に絵里ちゃんやスズさんの言った事が起こるというのなら…


花陽「ごめんなさい、お待たせして……」

絵里「大丈夫よ、こちらもスズと情報交換していたところだから」
 (収穫としては微妙だけれどね…)

海未「花陽の部屋、女の子らしくてかわいいですね」
 (海未の部屋とは随分違いますね……ま、まあそうですね…)


 大事な話があるという事で、二人に部屋にきてもらいました

 ゆっくり話せる場所となるとどうしても限られるのでここにしました


絵里「さっそくだけど、花陽の話ってなにかしら?」
 (このメンツなのだし、ことりに関することだとは思うけど…)

花陽「えっと…まだ決まったわけじゃないんだけど…その…」


 すべて話そうと思います。この不思議な現象と一緒に

 こうすることで私はいよいよ普通から仲間はずれになっちゃうけど、構いません
 

86: 2016/10/24(月) 07:15:55.23 ID:WLcTK2ma0.net
 
海未「凛が?どういうことですか花陽…」
 (花陽のことです、何か根拠があってのこと…)

絵里「一番仲のいい凛の名前を出すなんて、よっぽどの事情なのね?」
 (様子は探っていたけど、凛におかしな事をする気配はなかったけど…)


 絵里ちゃんの問いに頷きます。私が感じているこの気持ちが、どういった答えになるのか…


花陽「あの、その前に…二人に話してない事があってね…私…」

絵里「それは、一連の事態に連なる事…でいいのかしら?」
 (花陽がジョーカーの情報を持っているとは考えにくいけど…)

海未「……………」
 (スズ?……今は黙って花陽の話を聞きましょう)


 私は病院から退院してから身に起こっている現象について話しました

 最初から絵里ちゃんや海未ちゃんがどこか聞きなれない単語を心で呟きながら一緒にいたことも全部

 さすがにすぐに信用してもらえるとも思っていないので、私は直接その現象を見てもらおうと思います
 

87: 2016/10/24(月) 07:17:03.28 ID:WLcTK2ma0.net
 
絵里「……………」
 (ライブはにこと穂乃果が心配なのよね…)

花陽「ライブは…にこちゃんと穂乃果ちゃんが心配…って」

絵里「…!」
 (なんてこと……)

海未「……………」
 (海未はちょっと堅苦しいところがあります……な、あなたがズボラなんですよスズ!)

花陽「あは……海未ちゃんが堅苦しいって、スズさんはズボラだって、海未ちゃんが」 
 
海未「っ!?」
 (花陽……ほんとうに……)


 その後もいくつか実験を繰り返し、二人とも私の話を信じてくれました

 心の中が筒抜けだなんて状況にやっぱり落ち着かない部分もあるのか、絵里ちゃんがそわそわしています
 

88: 2016/10/24(月) 07:18:15.51 ID:WLcTK2ma0.net
 
絵里「確かに不思議ではあるけれど、ここがことりの再構築した世界という事情がある以上、受け入れるしかないわね」
 (うぅ……変なこと考えないようにしないと……)

花陽「すぐに話せればよかったんだけど…」

海未「いえ、花陽の決断は正しい。私は自身の任務に忠実ですが、他はどういう意図なのかわからない以上危険を伴ったでしょう」
 (ということは、私とスズの会話も花陽は聞き取っていたという事ですか……)

絵里「それって、少なからずこちらを疑っているという意味かしら?」
 (って、こんな事いいだしたらきりがないわよ、スズ…)

海未「………そうですね、最初はそういう懸念もあったのは事実です」
 (スズ…あなたはまだそのような……)


 あわわ…二人の間になにか良くない雰囲気が……っと思いましたけど、大丈夫のようです


絵里「ふふ………」
 (なんか、スズの性格って海未とよく似ているわね)

海未「ふ……」
 (もう、驚かせないでくださいスズ……)
 

89: 2016/10/24(月) 07:19:57.67 ID:WLcTK2ma0.net
 
絵里「そう……凛の思考が……」
 (どうしてラーメンなのかしら?)

海未「行動理念としてそこまで強くイメージされているのなら、可能性は高いでしょう」
 (なぜラーメンなのですか?……まぁ、好きではありましたが…)
 

 私の視てきたもの…凛ちゃんの心を伝えたところ、可能性としては十分だという事です

 だったら次にやるべきことは決まっています


花陽「あの…凛ちゃんを助けてくれるん…ですよね?」


 憑依が自在にできるのなら、抜けたあと…凛ちゃんは元に…戻るんですよね?

 私の問いかけに絵里ちゃんはスズさんを見つめます。それは答えがそこにあるからという事

 だけどスズさんはすぐには答えてくれません


絵里「スズ………?」
 (まさか…そういうこと…?)

海未「そうですね…助けるというよりかは、自然と助かるというという形になるとは思いますが…」
 (曖昧ですね、スズ……状況によるということですよ海未)


 スズさんは凛ちゃんに憑依しているものをこちらから引き剝がす事はできないと言いました

 憑依は本人の意思でしか解除ができない、無理に引き剥がすと本体に障害が残る可能性があると…
 

90: 2016/10/24(月) 07:27:35.83 ID:WLcTK2ma0.net
絵里「それでも、ターゲットが特定できたというのは大きな収穫ね」
 (これでこちらも動きやすくなる…)

海未「まだそれと決めつけて動くのは危険ですが、そうですね…基準にはなります…」
 (凛ではない可能性もあると?……いえ、ほぼ凛で間違いないでしょう…ですが)

花陽「スズさん……?」


 スズさんはまだいくつか残っている問題点を挙げます

 一番の問題として、ジョーカーという存在がまだ掴めていないこと

 二番目の問題が、凛ちゃんに憑依している…人?が、どういう方法でターゲットを特定して動くのか


絵里「そういえば、ことりの心に最も影響を与える人物を特定して初めて活動を開始するということだったわね」
 (今の凛が独自に行動してそれを探っている様子はない…μ’sメンバーは全員監視をつけているし…)

海未「ヤツが花陽をターゲットとして認識したとしても、ことりの前で事を起こすというのが目的ですからどういう方法でその状況を作るのか…」
 (聞いているぶんには、随分と雑な作戦ですね……そうなんです…)

絵里「なんだか出たとこ勝負って感じの作戦ね。世界征服をたくらんでいる組織って言う割にはお粗末だわ」
 (ホントにその程度ならありがたいのだけど…)


 私には難しい事はわかりません。だけどどういう流れで目的を達成しようとしているのかは不明のまま時間は過ぎていきます

 凛ちゃんを助けるためにも、やはり行動を開始した後の凛ちゃんを捕まえる必要がある。そのために私が出来ることを少しでも…


 


 そして、私や絵里ちゃん達にとって……いえ、私達μ’sにとっても大事な日、ライブ当日になりました
 

91: 2016/10/24(月) 08:02:24.91 ID:WLcTK2ma0.net
 
 -音ノ木坂学院 秋季文学祭


 文化祭です!そして今日、私達μ’sのライブ会場でもあります!やっぱりテンション上がってきます!

 学校をあげてのお祭り(と言ってもいいよね?)、この日のために私達だけでなく、学校のみんなががんばってきました!

 それぞれのクラスが出し物をする中、私達μ’sはスクールアイドルとしてライブをします

 しかも会場は講堂ではなく、グラウンド全部です!野外ステージです!これだけの場所を私達が使っていいのかという意見もありましたが、

 学校のみんな、それに理事長さんまで背中を後押ししてくれて実現したステージです!


穂乃果「それじゃみんな、屋上で軽くアップだけしよ」
 (あぁ、さっきの出店…おいしそうだったなぁ)

にこ「ちょっと二年でアイドルグッズの販売してるって情報よ!」
 (もしかしなくても私のもある…わよね?)

ことり「あー、そのお店、ほぼ私達専門だったよー?」
 (だからあんまり目新しいのはなかったよぅ)

真姫「ちょ、そんなの勝手に売られてるの!?」
 (恥ずかしい…あぁでも嬉しい気も…あぁ…)

凛「真姫ちゃんいまさらだにゃ~!」
 (ラーメン屋さんはさすがにないかぁ…)


 今日という日が持つ重要性、意味合いはきっとみんなそれぞれ違うけど、想いは同じです

 そんな中、一人朝から暗い顔をしてる人が…


希「ふぅ……」
 (なんで…こんな占い初めてだよ……)


 数日前からずっと希ちゃんは占いの結果が良くないと嘆いていました

 それでも迎えてしまった当日に気持ちが沈んでいるようです
 

92: 2016/10/24(月) 08:11:08.98 ID:WLcTK2ma0.net
花陽「希ちゃん…大丈夫…?」

希「あ、うん…ごめんな、心配ないんよ……」
 (やばい、顔にでちゃってた…うぅ…)

花陽「……………」

希「ん、どうしたん?」
 (気にさせちゃったか…気持ちきりかえないと!)


 そういえば希ちゃんの占い…ずっと良くない啓示がでているんたっけ……

 それはこのライブに関する事?それとも……私?


花陽「今日は、がんばろうね」

希「もちろんや、せっかく校外からたくさんの人が見に来てくれるんやし、がんばらんとね!」
 (ダメダメ、いつまでも引きずってちゃ…切り替えていこ!)


 希ちゃんの占い……これは再構築された世界で……ことりちゃんの中ではどういった意味合いを持っていたのかな
 

93: 2016/10/24(月) 08:25:19.61 ID:WLcTK2ma0.net
 
 私達の出番は午後1時から。クラスのほうも手伝いたいと申し出ていたのですが


「こっちは私達にまかせて、最高のライブを見せてよね!」


 というみんなの声を受け、私達はライブ一つに集中させてもらえました

 だというのに……


穂乃果「にこちゃん!さっきの出店行ってみよう!」
 (売り切れになっちゃうかも~)

にこ「なにいってんの、それより先にアイドルグッズを見に行くわよ!」
 (変なの売られてないかチェックしないと!)

ことり「あー、私もいくー!」
 (おいしいものあるかなー?)


 屋上で軽くアップしたばかりだというのに、もう何か食べようとしてる穂乃果ちゃん

 私の事を気にかけてくれているけど、基本やっぱりにこちゃんはアイドル大好きで

 ことりちゃんは今日という日を全力で楽しもうとしてる


絵里「私もちょっと見て回ろうかな」
 (チェックしておかないといけない場所は念入りに…)

海未「そうですね、絵里、私も行きましょう」
 (そ、その前に穂乃果を止めてください!どれだけ食べるつもりなのか……そうですか?)

絵里「花陽、一緒に見て回る?」
 (声が聞こえているなら、なるべく私達と一緒にいて頂戴)


 便利な使い方をしています絵里ちゃん。でも今日は私の命が狙われる日ということだし、素直に従います
 

94: 2016/10/24(月) 08:36:28.61 ID:WLcTK2ma0.net
 
凛「真姫ちゃんもどっか見に行く?」
 (もしかしたらラーメン屋台があるかもしれない…ラーメン食べたい…)

真姫「ご、ごめん、私はちょっと行きたいところがあるの」
 (パパ、もうきてるのかな…?)


 真姫ちゃんは今日お父さんが見に来るという事でどこか嬉しそうです

 私もお母さんがライブを見に来てくれるらしいです。恥ずかしいけどがんばらないと…


絵里「凛も一緒に行くー?」
 (さて…どう動く……?)

花陽「絵里ちゃん……」


 私達にとってなんの違和感もない会話です。だけどみんなの思惑は違う方向を向いていました


凛「んー、凛はいいにゃ、穂乃果ちゃん達と何か食べに行く~」
 (そのあとラーメンも食べたいなぁ…)

海未「でしたら、穂乃果にあまり食べすぎないように言っておいてください。勿論凛もですよ?」
 (これでいいですか?……スズ、ありがとうございます) 

凛「了解にゃ~!」タタタ
 (でもラーメンだったら食べすぎることはないよね)

 
 希ちゃんもいつのまにかにこちゃん達について行ったいたいです

 こうして私達はそれぞれ別に行動することになりました
 

95: 2016/10/24(月) 08:38:18.19 ID:WLcTK2ma0.net
訂正

 希ちゃんもいつのまにかにこちゃん達について行ったみたいです
 

96: 2016/10/24(月) 09:04:32.82 ID:WLcTK2ma0.net
 校内をあちこち見て回る私達。もうどこもお祭りムード満載で、楽しそうなお店もたくさんです

 一緒に歩く絵里ちゃんと海未ちゃんは文化祭を楽しんでいるという雰囲気だけを醸し出し、実際はするどい視線で色々と観察しています


海未「絵里…凛のほうはよろしいので?」
 (あ、あのクラスかわいい服が……あ、ああもういってしまうのですかスズ…)

絵里「ちゃんと監視はついてるわ。いまこの校内に部下が…そうね、20人は待機しているわ」
 (ここも不自然なところはなし…次……)


 そ、そんなにいらっしゃったんですね…頼もしいです……


絵里「スズのほうはどう?裏はとれた?」
 (あら、綺麗なアクセサリーね…全部終わったら見に…はっ!?)


 なにかに興味を惹かれた絵里ちゃんが慌てて私の顔色を窺ってきます

 今の聞かれた?って表情をしているので私は笑顔で頷くと、少し顔を赤くする絵里ちゃん


海未「はい、夕べ情報を頂きました。絵里の組織に情報提供したのは確かに私達の組織の人間でした」
 (その人物というのは?……マインドアサシンを内偵している調査員です)
 

 最初に絵里ちゃんの組織に情報を流し、動くように示唆してきた人

 ほんとに色んな人が動いているんですね
 

97: 2016/10/24(月) 09:17:45.54 ID:WLcTK2ma0.net
 
 校内を歩く私達……というか私の目にそれは飛び込んできました


花陽「はうあ!?」ビク

絵里「花陽?」サ
 (なにが!?)

海未「っ!!」ササッ
 (花陽?)


  『出張GOHAN-YA in 音ノ木坂』 自慢の黄金米!やっぱり大盛り無料!!
    (お米はすべてとれたての新米だよ)


 なんですと!なんてこと!!なんでここに!!とれたて新米!!


花陽「すいません、私はここで……」ササ

絵里「ちょっと花陽…ってあぁ、そういう事……」
 (なんで校内にこんなもの…?)

海未「海未、花陽は一体どうしたんですか!?」
 (あぁ……えっとまぁ…性分といいますか……ハァ)


 私の中のすべての問題事が、今この瞬間だけは無いものになりました

 それはきっと誰にも抗えない魅惑の言葉……し・ん・ま・い♪
 

98: 2016/10/24(月) 09:36:10.81 ID:WLcTK2ma0.net
 なんでクラスの出し物でGOHAN-YAなんて物があるのか不思議でしたが


「ありがとございましたー」

花陽「あぁ…至福の時でした…」マンゾク


 このクラスの生徒さんの親御さんがGOHAN-YAの支店長さんだそうで…ってそれでもやりすぎ感は拭えません

 でもおいしかったので気にしないことにします!

 さすがにメニューはそう多くなかったけど、ご飯がすでに最高だったので問題なしです


花陽「さて……」


 私の我儘で別行動を取らせてもらったけど、絵里ちゃんと海未ちゃんはどこに向かったのかな?

 いちおう今も護衛として近くに誰かいるらしいですけど、正直文化祭によるいつも以上の人の数で、誰が誰やら分かりません

 絵里ちゃんはなるべく一緒にいて欲しそうでしたけど、私の我儘にこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないのでなんとか合流を…


(懐かしいなぁ……)


 絵里ちゃん達を探そうと心の声を強く感じ取ろうと意識を強くしたところ、近くから聞こえてきた声……


花陽「ことりちゃん…?」


 すぐ近くでやっていたフリーマーケットをやっているクラスにことりちゃんがいました

 いつのまにかことりちゃんも一人で色々見て回っているようです。今は何を見ているんだろ?
 

99: 2016/10/24(月) 09:50:03.00 ID:WLcTK2ma0.net
花陽「ことりちゃん?」

ことり「あ、花陽ちゃ~ん。花陽ちゃんもフリマ見に来たの?」
 (あぁ…やっぱり花陽ちゃんだなぁ……)

花陽「はい、何かおもしろいものありました?」


 ことりちゃんが手にしているものを見て私と見比べるようにしている

 それは…一冊の本でした……


花陽「絵本…ですか?」

ことり「うん。子供の頃から大好きだった絵本なの。こんなところでまた見れられるなんて…」
 (結局あの絵本、なくしちゃったままだな……)


 ことりちゃんが懐かしむように見つめるその絵本を見て、私は知る事が出来ました

 そして同時に、私がことりちゃんにどう見られていたのか、どう思われていたのかも、分かった気がします


花陽「これ……」

ことり「ね、これ花陽ちゃんに似てると思わない?」
 (ほとんどそのままってくらい…うん、やっぱり花陽ちゃんだよ)

花陽「そ、そうだね……」


 その絵本の表紙には三人の人物が描かれていました

 左に銀の鎧を着た騎士、右に金の鎧を着た騎士、そして中央には綺麗なドレスに身を包んだお姫様

 そのお姫様はどこか私に似ている気がしました。絵本なので顔まで同じっていうわけではなかったけど、髪色、髪型…

 瞳の色……それは本当に私もそう思ってしまうほど、私でした……
 

100: 2016/10/24(月) 10:09:44.38 ID:WLcTK2ma0.net
ことり「私ね、子供の頃からこの絵本が大好きで、このお姫様にずっと憧れていたの」
 (いまでも色あせない…本当に可愛いお姫様…)

花陽「憧れ……」


 ことりちゃんが見つめる絵本。私もそれを見せてもらいました


 それは一人のお姫様を悪い魔法使いから守る騎士様のお話しでした

 いろんな困難にも二人で立ち向かう金と銀の騎士様

 その想いは輪廻を経てもかわることなく、永遠に続いたというお話し


ことり「どんなピンチもね、二人が力を合わせると乗り越えられるの…それらがすべて一人のお姫様のため…」
 (あぁ…いいなぁやっぱり…お姫様になりたい……)

花陽「ことりちゃん……」


 絵本の登場人物…花を愛するお姫様、ユリ姫…

 姫を守ると誓った銀の騎士、ソラ…

 そんなソラを支えたいと自らも騎士となった金の騎士、エミー…

 やっぱりっていう気持ちが先にでました……ことりちゃんは、無意識下でこれらのイメージを私達に……

 じゃあ前世の記憶っていうのは…この絵本の話を忠実に再現しているという事なのかな?


ことり「私これ買ってくるね!」タタ
 (今度こそなくさないようにしないと!)


 ことりちゃんが嬉しそうに絵本を持ってレジに走る

 私はことりちゃんにとって憧れたお姫様で、にこちゃんは銀の騎士のイメージがあって、

 穂乃果ちゃんには金の騎士のイメージを持っていたんだね
 

101: 2016/10/24(月) 10:35:21.84 ID:WLcTK2ma0.net
 
 その後ことりちゃんといくつかのクラスを見て回り、純粋にこのお祭りを楽しみました


 そして、私達のライブが開始される時間となりました

 事前にあらかた組み上げていた屋外ステージ。その脇に作られた簡易テントでライブの準備をします


絵里「ここまできたら細かい事は言わないわ、全力でがんばりましょ」
 (不安材料がないわけじゃないけど、今はライブに集中よ)

穂乃果「そうだね、お客さんもだけど、まずは私達が一番に楽しまないと!」
 (う~~~~早く歌いたい!踊りた~~い!!)

にこ「勿論よ、みんなを笑顔にするため……」
 (花陽に…姫なんて立場じゃなく、アイドルを夢みたユリ姫のためにも…)

真姫「みんなと一緒に楽しめる時間を……」
 (うぅ、パパが見てると思うと緊張する……)

凛「凛達の全力で……」
 (終わったらラーメン食べに行く!)

ことり「最高の歌とダンスで……」
 (この日のためにがんばってきたんだもん、絶対に…!)

希「μ’sのライブで最高に盛り上げよう!」
 (もうここまできたらやるだけ!きっと大丈夫!!)

海未「では、行きましょう…!」
 (いいものですね………スズ?)

花陽「うん!」


 ライブが終わった時の事なんて今はいい…て考えはダメかもしれないけど

 それでもこの瞬間は誰のものでもない、私達だけのものです。やってやれです!
 

  「「「μ’s!ミュージックスタート!!」」
 
 

110: 2016/10/25(火) 12:23:18.62 ID:0NTMbkSD0.net
 
 -START:DASH!!

 -友情ノーチェンジ

 -ススメ→トゥモロウ

 -ユメノトビラ


 序盤に4曲通して少しMC、それが終わると3曲通し、ライブはもう開始から盛り上がっています!

 そして今回は普段ライブではあまりしないことを取り入れています。それは…


ことり「はぁ、ふぅ、よし、行こう!花陽ちゃん!」
 (あー、楽しい!もっと…もっとやりたい!!)

花陽「うん、がんばろう!」


 -好きですが好きですか?  私達二人の曲


 今回はユニット曲やカップリング曲をいくつかライブでやってみようという事で、最初は私とことりちゃんの曲で始まります


絵里「次のスタンバイ急いで、補給は配置についてから、ことり達が戻り次第順番に衣装チェンジだから衣装準備!」
 (すごい…ことりの高揚感が生み出すエネルギー…ゲージがこんな数値を示すなんて…)

海未「凛、希、私達は舞台袖で補給です、音響はまかせていきましょう」
 (これが…特S級に覚醒したことりの……すごい……)


 後ろで聞こえてくる絵里ちゃん達の声…見た目にはやっぱりわからないけど、今ことりちゃんの気持ちが昂っているのは私にもわかります

 そしてそれはことりちゃんだけじゃない、私も同じ…今が、今この瞬間が楽しくてたまらないです!!
 

111: 2016/10/25(火) 12:24:43.23 ID:0NTMbkSD0.net
 
 -Angelic Angel

 -それは僕たちの奇跡

 -嵐のなかの恋だから


 ライブも終盤、会場のボルテージはもう最高潮がずっと続き、限界を超えていくんじゃないかと思うほど盛り上がります

 私達μ'sを見に来てくれた人が、これだけ楽しんでくれているのを見ると、嬉しくて、幸せで、感謝したい気持ちで溢れます

 それでも全力で駆け抜けたライブもやがて最後の曲になります


 -Snow halation

 -僕らは今のなかで


 これが終われば……ことりちゃん……凛ちゃん……


花陽「あと少しだけど…ふぅ…」

凛「かよちん、最後まで笑顔、笑顔~!」
 (最後までがんばるよ!おいしいラーメンも待ってる!)


 スズさんは魔物が活動開始しない限り、意識は凛ちゃんのままだって言ってました…その思考基準は固定されちゃってるけど…凛ちゃんだと

 その時というのが近づくと、どうしても気になります…全部解決したらまた…前のように過ごせるよね?
 

112: 2016/10/25(火) 12:26:40.31 ID:0NTMbkSD0.net
 
 最後の曲が終わり、私達μ'sのライブは大歓声の中で無事に終えることが出来ました

 やりとげたという達成感、喜んでくれたお客さん達の笑顔にもらった充足感、私達のこの気持ちすべてを言葉で表すのは難しいけど

 それでも最高に楽しかった!…だから……このままずっと笑顔でいられたらって思うのに…


絵里「お疲れ!みんな!」
 (凛…動くの?)

穂乃果「あーー終わっちゃったぁ、でも楽しかった~~!!!」
 (またやりたい、すぐやりたい、まだまだ歌いた~~~い!)

にこ「あいかわらず元気ねーアンタは…でもまっ、気持ちはわかるけどね」
 (純粋に楽しかった…姫のためとかじゃなく、私自身が楽しかった…)

ことり「お客さん、喜んでくれたよね」
 (ああ~~やっぱりμ'sのみんなは最高だよぅ~)

真姫「当然でしょ、みんないい笑顔だったわ」
 (パパ…手を振ってくれてた…あぁ、嬉しい…)

希「無事やりとげれて良かったねー」
 (なんだ…結局あの占いは最初からはずれっぱなしってことかな…)

海未「みんな精一杯やりましたから…」
 (海未、そろそろ私と交代してください。回収作業を行います……スズ…わかりました)

凛「楽しかったね~かよちん」
 (打ち上げラーメン食べに行きたいな~)

花陽「そうだね凛ちゃん、ホント楽しかった」


 私達のライブが終わったからといって文化祭が終了するわけではありません

 急ぎ着替えて簡易テントを撤去しないといけません。ステージの方は今日一日そのままにするそうです

 お客さんに自由にステージに上がってもらって、そこからの景色を写真に撮ったりと、楽しんでいただくためです
 

113: 2016/10/25(火) 12:28:13.23 ID:0NTMbkSD0.net
 
 というわけで撤収作業に追われる私達ですが、そこに…


理事長「お疲れ様、みんな」

ことり「お母さん?」
 (お母さんも見てくれてたかな…ことりのライブ)

理事長「突然だけど、テントの片付けなら他の子達がしてくれるそうよ」

穂乃果「え、誰かな?」
 (でも私達のステージだし…)

理事長「みんなライブで疲れてるだろうし、それくらいさせてっていう声が多くてね…」

絵里「そうなんですか……」
 (なんて嬉しい…みんな…)

理事長「打ち上げ会場っていうにはあまり立派とはいえないけど、一階の空き教室に簡単だけど用意させてもらったわ」

ことり「お母さん……それって…」
 (私達のために……みんなが……?)

理事長「それも全部、μ'sのファンでもある他の子達が用意してくれたものよ」


 なんていう嬉しい申し出でしょうか。学校をあげての応援も十分に嬉しかったのに、こんなサプライズまでっ!

 そんなみんなの好意を私達はありがたく受けさせてもらいます。つまり、着替えたら打ち上げです!
 

114: 2016/10/25(火) 12:31:53.78 ID:0NTMbkSD0.net
 
海未「絵里…少しいいですか?」
 (スズ…どうしたのです?)

絵里「なにか動きが?」
 (逆に動きがなさすぎて焦っちゃうわ…)


 着替えてから私達はテントの片づけをしてくれる子達にお礼をし、用意されているという教室に移動します

 その途中、海未ちゃん…というかスズさんと絵里ちゃんが並んで後ろを歩きながらこの状況を確認しているようです


海未「予定していたエネルギーの回収…さきほど無事終了しました」
 (え、スズいつのまに?……回収自体はさほど時間はかかりませんから)

絵里「え…どういうこと?」
 (当初の計画ではことりの生み出すエネルギーすべてをやつらは横取りするんじゃ…?)

海未「不可解です…これも相手側の作戦なのか…それとも違う原因で相手側の方で問題がおきたか…」
 (違う理由で失敗した…と?…いい取り方をするならそうです…ですが…)

絵里「凛が結局ターゲットを特定できなかったから動けなかった…という事は?」
 (それなら後は凛を拘束して中身を引きずり出すだけになるけど……)

海未「それならこのまま様子を見て凛を確保して終わりです。ですが……」
 (大きな問題が残ることになります……それというのは?)

絵里「ジョーカー……結局情報にあったもう一つの高エネルギーの行先が不明なまま…」
 (監視は徹底していたはず。凛以外のメンバー…誰にも不穏な動きはなかった…)


 絵里ちゃんとスズさんは相手の計画が曖昧で、ずさんだと言ってました。難しい事はわかりませんが、行き当たりばったり?

 ジョーカーと呼ばれている謎の人物?が結局誰なのか、私達μ'sの中で疑わしいのはもう誰もいません……よね?
 

115: 2016/10/25(火) 12:33:32.84 ID:0NTMbkSD0.net
 
凛「うわ~~~、これって上でやってるGOHAN-YAさんのご飯にゃ~!」
 (おいしそう!…ラーメン、ラーメンないのかな?)

花陽「ご飯!?どこですか!」


 打ち上げ会場として用意された教室は綺麗に飾り付けがされ、黒板には…


  『ライブお疲れ様!楽しんでね!』μ'sファン一同

 
 目頭に熱いものを感じます。なんていうサプライズでしょう、ほんとに…


穂乃果「あ、これうちんとこの和菓子だ……」
 (お母さん……ありがとう…)

にこ「ありがたいわねー、これは」
 (なんだか一流アーティストって気分~)


 ライブの疲れなんてどこかに飛んでいっちゃったかのように、私達は用意された食事やおやつを頂きました

 だけど絵里ちゃんとスズさんだけ楽しそうにはしゃぐ私達を見守るように、一歩後ろに控えます
 

116: 2016/10/25(火) 12:35:24.45 ID:0NTMbkSD0.net
 
理事長「楽しんでいるようね」

ことり「お母さん!ありがとう、こんなにたくさん頂いちゃっていいのかな?」
 (ライブは最高だったし、ご飯はおいしいし、もう幸せ~~)

絵里「……………」
 (ことりからまた……ゲージが上がってる…)

海未「……………」
 (しかしもう必要分は確保した。このエネルギーは自然に高まって、自然に収まっていく…これを狙っては……)

凛「あむっ、ムグムグ…穂乃果ちゃん、これもおいしいよ!」
 (あーんラーメンだけないってなんで~)

穂乃果「あぁちょっとにこちゃんそれ穂乃果のチキンだよ!」
 (もう、食い意地はっちゃってー)

にこ「何言ってんの、早い者勝ちよ!」
 (あ、これもおいしい…ちび達にちょっと持って帰ってもいいかなー)

希「今日はきっと食べすぎても大丈夫やね?逆にカ口リー補給せんとアカンよね?」
 (おいしいわぁ…スーパーのお惣菜とはやっぱり違う!)

真姫「なによそれ、素直に食べたいって言えばいいじゃない」
 (私は遠慮なく食べるけどっ!)

花陽「あは、真姫ちゃんそんなにお皿に乗っけて…」


 この空気が…みんなで笑い合えるこの雰囲気が、私から注意力なんてものを綺麗に消し去った時……

 それは起こってしまいました
 

117: 2016/10/25(火) 12:36:55.49 ID:0NTMbkSD0.net
 
にこ「モグモグ…んー、ジュースはなにが……ん?」
 (ちょ……なにしようとして……え?)

絵里「っ!?」
 (花陽!後ろ!!…な、体が…!?)

海未「…ぐっ、な、なにを…!?」
 (スズ!花陽が!!……か、体が…動かない…!)

穂乃果「おかわりしちゃおーっと…ん?」
 (あれ……なんで…ケーキでも切り分けるのかな?)


 みんなの声が私に響いた時には、その人は私のすぐ後ろにいました


ことり「お母さん……」
 (なに…してるの……?)

理事長「ことり、ちゃんと見ているのよ?」クスクス


 振り返った私に、ことりちゃんのお母さん……理事長さんが何かを振り下ろそうとしていました
 

118: 2016/10/25(火) 12:40:13.02 ID:0NTMbkSD0.net
 
 体に受ける衝撃……意識とともに視界がグルグル回る……なにが?


花陽「…………え……?」


 気が付くと私は天井を見上げていました。いえ、床に倒れていた。そして私に覆いかぶさるようにして…


にこ「うっ……ぐ、あああぁぁ!!!」
 (なにを…なにをするつもりだったの…こいつ…まさか…姫を…!?)

花陽「に…こ、ちゃん……?」


 私を押し倒したのがにこちゃんだったのかはもうわからないけど、にこちゃんが苦しそうに声をあげる

 その背中には、大きなナイフが…突き刺さって……こ、これって…なに?どうして?


ことり「い、いやあああああああ!!!」
 (なにして…なにして…お母さん!?…にこちゃん……なに、これ!??)

穂乃果「に、にこちゃん!!?」
 (なにがあったの?なんで倒れてるの?)

真姫「にこちゃん!な、それ…!」
 (背中に刺さってるのって…なに、事故?これドッキリじゃないよね?)


 みんなの声が事態を把握しきれていない私に流れ込んできます。にこちゃんが刺された…誰に……?


理事長「へぇ…よく動けたわね……」

花陽「り、理事長……さん?」


 その手に真っ赤な血がついている理事長さんが私とにこちゃんを見下ろし……笑っている…

 ジョーカー……瞬時に絵里ちゃんの言っていた言葉が脳裏を過る…だけど、あれって……
 

119: 2016/10/25(火) 12:42:08.94 ID:0NTMbkSD0.net
 
絵里「くっ…なに、この力……!」ググ
 (まるで見えない鎖にでも繋がれたよう…動けない…救援信号も…くそ!!)

海未「しまった……これは……!」
 (やられました…くそっ……スズ、にこが!にこが!!)


 ことりちゃんの…お母さんが…ジョーカーだった……だけど…じゃああの情報は…?


凛「に、にこちゃん!怪我してっ…!」
 (ど、どうしよう、ラーメン食べたら元気になるかな?)

希「理事長……なにしてるんですか!?」
 (嘘でしょ……なにがどうなって…誰か教えてよ……)


 みんながこの状況を理解しはじめたころ、理事長…ジョーカーはみんなに向き直ります


理事長「みんなライブお疲れ様。とてもいいライブだったわ」ニコ

ことり「あ…あぁ……ぁぁぁ……」
 (お母さんが……お母さんが……にこちゃんを……お母さんが……)

理事長「おかげでとてもいいエネルギーが回収できたわ。ほんとうにありがとう」ニコ

絵里「あ、あなたが…ジョーカーだったのね!!」
 (ミスった……きっと最初からあの情報は…!)

穂乃果「に、にこちゃーん!」ダッ
 (と、とにかく手当…救急車!!)

理事長「動かないで~」ギッ

穂乃果「うっ!え、な、なん…で…!?」ググ
 (体が動かない…ど、どうして?なにこれ…!)


 ジョーカーの目が一瞬妖しく光ったかと思うと、穂乃果ちゃんの体が不自然な体勢で動かなくなります

 絵里ちゃんとスズさんが動けないっていってるから、きっと同じような状態にされている…これが…ジョーカー
 

120: 2016/10/25(火) 12:46:56.95 ID:0NTMbkSD0.net
 
にこ「うぐぅ、がはっ!!……げふっ……ぅぅ」
 (くそう……意識が……だめよ…姫が…花陽の前で…こんな…)

真姫「にこちゃん!?ちょっとダレか救急車…え、な…う、動けない…!?」
 (イミワカンナイ、イミワカンナイ、早くしないと、にこちゃんが…にこちゃんが氏んじゃう!!)

理事長「みんなちょっと静かにしててくださいね」ニコニコ

希「ぐっ………!」
 (わ、私も動けない……なんなのこれ、ドッキリとかじゃないの?)


 みんながジョーカーによって体の自由を奪われた。それだけしか私にはわかりません

 ただ体に圧し掛かるにこちゃんからどんどん血が流れてくるのを体で感じていました

 心がザワつく……鼓動がどんどん速くなってくる…だけど、どう行動すべきかの思考はまったく働きません


絵里「あなた…いつから…!?」
 (いや…きっとこの展開を最初から…)

理事長「ご苦労様、A級エージェントさん?」クスクス

絵里「私のことも……じゃあやっぱり…」
 (ジョーカーの正体は……)

海未「絵里の機関に情報提供をし、実際にμ'sの中にターゲットを潜伏させることで意識を完全に反らせた…」
 (スズ!スズ!にこを助けてください!にこが!!)

理事長「うふ…同時にジョーカーという存在も臭わせて、最初の『μ'sの中に』潜んでいるというのをご丁寧に」クスクス

絵里「私達が他のメンバー全員に監視をつけていたのも…知っていたわけね…」
 (でも…それならどうしてジョーカーはターゲットが花陽だと特定できたの?)

理事長「あなた達の機関、情報提供者だからって作戦内容を漏らすのはどうかと思うわよ?」


 つまりこの人は……最初から裏切り者………スズさんの組織に組していて…内偵もやってるフリで……

 じゃあ……スズさんや絵里ちゃんがずっとがんばってきたのを…知っていて、嘲笑って……
 

121: 2016/10/25(火) 12:48:39.05 ID:0NTMbkSD0.net
 
理事長「それに、ことりのターゲットなんてすぐにわかったわよ?」

ことり「あ……ぁぁ……ぅぅぅ……」ガクガク
 (--------------)

理事長「だって、毎日嬉しそうに話すんですもの!今日も花陽ちゃんが、花陽ちゃんがって!」


 ことりちゃんを見て楽しそうに笑うジョーカーを見ても、ことりちゃんの目は動かない

 私と…倒れるにこちゃんを見つめたまま、その意識は糸が切れる寸前でした


海未「では……ライブ直後のエネルギーを回収しなかったのも…!」
 (完全に見透かされていたという事…なんてこと…!)

理事長「あぁ、ちゃんと回収したのでしょ?後でゆっくり頂くわよ、それも」アハハハ
 

122: 2016/10/25(火) 12:50:04.65 ID:0NTMbkSD0.net
 
にこ「ぅ……………」
 (ごめん……………ユリ………ひ…)

花陽「にこちゃん!!だ、ダメだよ!にこちゃん!!」


 にこちゃんの意識がどんどん薄くなっていく。なんで…なんでにこちゃんが…


理事長「さて、長話もなんだし、とっとと済ませましょうか」

花陽「ま、待ってください、あなたの標的は私なんでしょ?お願い、にこちゃんは助けてください!」

理事長「はぁ?」

花陽「わ、私を…こ、頃すのが目的なんですよね…だ、だったら…にこちゃんは…」


 自分の言ってることの意味はわかっています。だけどその言葉は何の抵抗もなく出てきます

 悲しいって感情がなくても…嫌な事はやっぱり嫌です、にこちゃんが氏ぬなんて嫌です!だから…


理事長「嫌よ面倒くさい」ヒュッ

 ドス! …ゴロン

にこ「ごふっ………ぅ…」

花陽「あ……あぁ…にこちゃ……」


 ジョーカーがほとんど意識のないにこちゃんの脇腹を蹴り上げ、私の前に立つ

 許せない……私……この人、許せない…!
 

123: 2016/10/25(火) 12:53:14.65 ID:0NTMbkSD0.net
 
理事長「さ、こっちにおいで」グッ

花陽「あぐっ…!」


 ジョーカーは私の腕を強引に持ち上げると、そのまま引き摺っていく……どうにかしないと…


ことり「………………」

理事長「ことりー、今目の前で大好きな花陽ちゃん、頃してあげるわね」サッ

花陽「ぐっ…う…」


 ジョーカーは私を動けないことりちゃんの前に投げ捨てる。視線だけは辛うじて動いていることりちゃんと目が合う

 だけどもうことりちゃんの意識は空虚……この現実を受け止めきれずに真っ白になっています

 それでも意識を失えず、絶えず目から入る情報に頭も心もグチャグチャにされている……


理事長「大好きなお母さんが、大好きな花陽ちゃんを頃すとこ、ちゃんと見ておくのよ?」

絵里「……ゲス…が……」
 (この拘束する力……くそ、これはこの教室そのものが結界の作用を…!)


 ジョーカーはみんなの見ている前で…これから私を頃す…ことりちゃんの前で……

 許せない…だけど、どうしたらいいの……誰か…この状況を……誰か……

 氏ぬのが怖いとか、本当なら泣き叫んでいると思う私の心は、この人を許せないという気持ちでいっぱいでした

 だからその意識を読み取った時、自分でも驚くほど頭が働きます


穂乃果「ぐっ……うぅ…にこ…ちゃん……」
 (なに…これ…この光景……またあの夢?なんでこんな時に…!?)
 

124: 2016/10/25(火) 12:59:05.91 ID:0NTMbkSD0.net
 
 ことりちゃんが子供の頃から憧れていた絵本

 お姫さまを悪い魔法使いから守る銀の騎士と金の騎士のお話し……


花陽「ほ、穂乃果……ちゃん…?」

穂乃果「うぅぅ……ぬぐうぅぅぅ…!」ギリギリ
 (わかんない、なにこの記憶…あれは…にこちゃん……それに…花陽ちゃん…これ…私!?)


 前世の記憶……本当にそうなのかはわかりません

 だけどことりちゃんは、私を絵本のお姫様みたいだとそのイメージを重ねてくれた

 そして仲良しだった私達…にこちゃんに銀の騎士をイメージした…

 穂乃果ちゃんは金の騎士に見立てて、そんな三人を見てことりちゃんは笑顔だった。楽しそうだった


理事長「あら、まだかろうじて生きてるのね…」ズシャ


 ジョーカーが倒れこむにこちゃんの背中から大きなナイフを抜き取る

 あれで私を頃すつもり……あんなので刺されたら、きっと痛い…にこちゃんは痛かったよね…でも…


穂乃果「あぐっ…!……ぬ、ぎぎぎ…」
 (頭が…割れそう…でも、あの光景……花陽ちゃんが…何か叫んでる……ソ……ラ?)


 絵本の中では、二人の騎士はどんなピンチに陥っても、二人が力を合わせた瞬間、無敵の力を発揮します

 それはまさにヒーロー。姫を守る無敵のヒーローなのです!

 そしてなぜかよくピンチに陥る姫はいつもこう叫ぶんです…


 


   


花陽「助けてえぇぇぇ!!ソラーー!!!エミーーー!!!!」
 

125: 2016/10/25(火) 13:00:16.80 ID:0NTMbkSD0.net
 
  -絵本の世界は夢物語

  -どんな魔法も、不思議な生き物も存在する、夢の世界

  -だけどそれは絵本の中だけの世界


 でも、彼女は……ことりちゃんはそんな夢みたいな世界を願い、再構築したんです


理事長「誰に言ってるのか知らないけど、ここには誰もはいれないようになってるのよ」スッ


 私に振り下ろされようとする大きなナイフ。にこちゃんの血が滴るそのナイフの先…動けない体でこちらを見つめる穂乃果ちゃん


花陽「はぁ…はっ……」


 私は見ました。この世界において……それが現実として顕現する瞬間を……


 


 -穂乃果ちゃんの瞳が…黄金色に輝くのを……
 

131: 2016/10/26(水) 10:40:39.59 ID:RRRfj5/00.net
 
 それはホントに、一瞬の出来事でした


理事長「……………は?」


 私に振り下ろされるところだったナイフが、ジョーカーの手元から消えました

 いえ、消えたように見えただけで、実際は…


希「ひゃあぁっ!な、なに!なんか飛んできた!!」
 (なんかかすめた!ヒュンって音したあ~!)


 希ちゃんや真姫ちゃんが立っているその間をナイフがものすごい速さで飛んでいき、壁に突き刺さっていました

 その状況をジョーカーすら認識しきれないその前に、彼女はそこに立っていました


穂乃果「………………」グッ


 みんながよくわからない力に拘束されている中、穂乃果ちゃんはその中で動き、ジョーカーが振り下ろそうとしたナイフを弾いたのです

 右手に持つ、光り輝く剣を持って……ってなんですかあれ!?


理事長「な、なにが…はっ!?」


 振り返るジョーカーをじっと見つめる穂乃果ちゃん。見た目には何も変化していないのに、その瞳だけが…


理事長「あなた……その目……な、なんだというの?」

穂乃果「……………まったく……」


 黄金の瞳でジョーカーを見つめる穂乃果ちゃんが口を開く。声こそ私の良く知る穂乃果ちゃんだけど、心の声は響かない

 彼女は…絵本に登場する金の騎士……ゴールドナイトクラスの…エミーさん……ほんとに……
 

132: 2016/10/26(水) 10:41:51.24 ID:RRRfj5/00.net
 
穂乃果「花陽ちゃん…姫はほんと厄介事に縁があるんだね」

花陽「えっ……」


 視線をジョーカーから外さないまま、穂乃果ちゃんは私に対して言っているようでした。私が姫でいいんだよね?


穂乃果「ソラも気苦労が絶えないでしょ……ふぅ」

花陽「え…えっと……穂乃果……ちゃん?」

穂乃果「お久しぶり……というのも少しおかしいかな姫…花陽ちゃん…」

花陽「ほ、ほんとにエミーさんなんだね…」


 視線はするどいけど、その口調にエミーさんの持つ優しさを感じる

 そんなエミーさんに睨まれて動けなくなっているジョーカーの右手が怪しく光るのが見えました
 

133: 2016/10/26(水) 10:45:32.76 ID:RRRfj5/00.net
 
絵里「危ない、穂乃果!!」
 (穂乃果…なのよね?わかんないけど…)

穂乃果「……………」

理事長「いきなりでてきて、調子のるんじゃないわよ!!」バッ


 よくわからない光を右手から光線のように放つジョーカー

 穂乃果ちゃんはそれを微動だにせず、視線も動かさないままに受けようとする

 ……だけど、私の心は落ち着いていました。だってあそこにいるのは、無敵のヒーロー


理事長「な、なんだと!?」


 ジョーカーさんの不思議な光線はエミー…違和感あるので穂乃果ちゃん、には届きませんでした

 止められたのです。銀色に輝く剣で……銀色に輝く瞳を持つ騎士によって


理事長「あなた、氏にかけてたはずじゃ…!?」


にこ「そんなもの、エミーが覚醒した瞬間に治ったわよ」

花陽「治ったって……」


 二人が揃うと、無敵になる。このよくわからない絵本の内容をあえて表現するのなら…


海未「デタラメですね…」
 (にこ!?にこ!!よかった無事でー!…ちょっと落ち着いてください)


 そう…デタラメなんです。だって夢物語ですから。ただ無敵なんです。最強のヒーローなんです

 そこにこの世界の常識や理屈も通じません。二人が揃えば無敵のヒーロー。この結果だけが在るのです!
 

134: 2016/10/26(水) 10:49:57.01 ID:RRRfj5/00.net
 
穂乃果「無事でなによりだね、ソラ…」

にこ「たっく…遅いのよアンタは…もう…」

理事長「くっ……くそっ!!」バババッ


 最初のころの余裕のある表情を完全にくずしたジョーカーは、二人の騎士に向かって何かを飛ばします

 魔法のような塊?漫画によくあるようなアレです。色も黒いです。だけど、無敵の騎士には通用しません


にこ「ふん、なによこれ」シュン

穂乃果「悪あがきを…」サッ


 どれほど強力なのかはわかりませんが、二人は飛んできたそれっぽいのを軽く撫でるように剣をかざして消してしまいます
 

135: 2016/10/26(水) 10:51:22.96 ID:RRRfj5/00.net
 
希「な、なんやの!やっぱりドッキリかなにかなん!?」
 (うぅ、でも動けないのはなんで…?)

真姫「ちょっとにこちゃん、悪戯はやめてよね!」
 (それでこれ…筋弛緩剤でも料理にいれてたっての!?)

穂乃果「だってさ、にこちゃん」

にこ「まー、そのほうが都合がいいんだけど…」

絵里「一体…なにが起こっているというの?」
 (あの輝き……物理的なものじゃない…どうしてあの二人に…)

海未「でも、状況は逆転しているようです」
 (穂乃果…にこ…何者ですか?…え、わ、私に聞かれても…)

凛「なんかわかんないけど、カッコイイ!」


ことり「……………」
 (綺麗な光………まるで…あの……)


 ことりちゃんが金と銀に輝く剣を持つ二人に見惚れています

 きっとその姿に、憧れていた騎士のイメージを思い描いているんだと思います
 

136: 2016/10/26(水) 10:55:02.87 ID:RRRfj5/00.net
 
理事長「く…ならばっ…!!」ダッ

ことり「!?」
 (お、お母さん!?)


 正面に立つ二人の騎士に勝てないと思ったのでしょうか、ジョーカーは動けないでいることりちゃんに向かって走ります

 もしかして、人質とかそういうあれでしょうか?


絵里「いけないっ!ことり!」
 (くそ、体さえ動ければ…!…あっ)


 しかし、それさえも無敵のヒーローは回避します。きっとすごく速いとか、そういう次元の話じゃないのでしょう


理事長「なっ…消えただと!?」

穂乃果「ことりちゃん、大丈夫?」

海未「な…………」
 (え、な、なんですか今の?)

ことり「え………へ………?」
 (あれ……ありぇ!?)


 穂乃果ちゃんがまさしく光になったように一瞬煌めくと、身動きが取れなかったはずのことりちゃんが…


絵里「引き寄せたの…?手元に?それとも…超スピードで移動した…?」
 (あぁ……これきっと考えても無駄なヤツよね……でも気になるじゃない…!)


 ことりちゃんは穂乃果ちゃんに抱き寄せられるようにして、移動…ワープ?していました

 難しい事はわかりませんが、とにかくジョーカーの前から瞬時に移動して危険を回避します
 

137: 2016/10/26(水) 10:59:14.26 ID:RRRfj5/00.net
 
にこ「あきらめなさい。アンタに勝ち目はないわよ」

穂乃果「理事長さんに、憑りついているあなたに言ってるんだよ?」ジ

理事長「ぬ、うぐぃ…!」


 射貫くような視線にジョーカーはもう余裕がなさそうでした。二人から距離をとるように後ずさります

 方法は判りません。だけど穂乃果ちゃんは理事長さんに憑りつく者の存在を知っています。となれば助け出す方法も…


海未「いけない…ヤツはこの場から離脱するつもりです!」
 (拘束するための道具はあるのに、動けないとはっ!)

絵里「そうだ……にこ、お願い!床でも天井でもいいから破壊して!!」
 (そうすればこの結界は維持できない、私達も動けるようになる!)

にこ「絵里……んっ…」ヒュン


 絵里ちゃんの声を聞き、にこちゃんは銀の剣を天井に向かって一撫でします

 剣は天井に届いていないのに、一瞬銀色の光が天井の端から端へと走る

 するとどこからか金属と金属がぶつかるような耳を衝く音が教室中に響き渡る


理事長「バカな、この結界を破壊するなんて…!」

真姫「うぅ、なにこのキーンって音…」
 (耳鳴り…?)

凛「響くにゃ~」

ことり「あうぅぅ…」
 (お母さん……んぅ…どうしちゃったの…)


 あ、体が動きます。絵里ちゃんの言った通り、結界に亀裂を入れることによって拘束が解けたようです

 いよいよ追い詰められたジョーカーが私達に背をむけます。だけどその肩に手が置かれる

 間合いを一瞬で詰めた穂乃果ちゃんによって、ジョーカーの体が動かなくなります
 

138: 2016/10/26(水) 11:02:43.65 ID:RRRfj5/00.net
 
理事長「な、ぐうう…キサマ…がっ…あぁ…!」

穂乃果「悪あがきしないのっ」グ


 穂乃果ちゃんが軽く肩を抑えると、強い力に押し込められるかのようにその膝をつくジョーカー

 これで…無事に終わるのでしょうか?


海未「まだです!ヤツは憑依を解いて逃げようとしています!」
 (チャンスはその時、絵里…頼みますよ!)

理事長「くっそがぁあぁあ!」ズズズ…


 動けない理事長の体から青い、靄のようなものが滲み出る。もしかして、あれが…?

 その靄は空気に溶け込むように四散していく……だけど、


絵里「逃がさないわよ!」ビュッ


 その正体を知っている絵里ちゃんが鞭のようなものを取り出し、中空に向かって振りぬく

 すると何かを絡めとったかのように鞭が靄に巻き付く。ジョーカーが捕縛された瞬間でした


にこ「これ、消してもいいの?」

海未「待ってください、こちらにヤツを封じ込める器があります、ここに…」
 (スズ…終わったのですか……)


 スズさんが取り出したのは瓢箪のような器。その蓋を開けると、青い靄のようなものが吸い込まれていきます

 ジョーカーの声は聞こえませんでしたが、こうして悪い魔法使いは退治されたのです
 

140: 2016/10/26(水) 11:06:20.22 ID:RRRfj5/00.net
 
真姫「ちょっとにこちゃん!なんだかよくわかんないけど悪戯にしては手がこみすぎよ!」
 (本気で心配したんだから…もう!!)

希「な、なんかよくわからんけど、終わったん?」
 (カードの啓示って、これのことだったのかな…?)


 姫を守るために悪い魔法使いに立ち向かった二人の騎士…

 絵本の物語は悪い魔法使いを退治して、めでたしめでたしとなります。物語が終わるときです


穂乃果「あ、戻っちゃった…」シュー
 (姫を襲う驚異が去ったからかな…)

にこ「一件落着…ってね」シュー
 (さて、どう説明しようかしら…)


 穂乃果ちゃんとにこちゃんが手にしていた光り輝く剣も自然と消えていきます

 役目を終えたためか、二人の瞳も元に戻っていました
 

141: 2016/10/26(水) 11:07:56.27 ID:RRRfj5/00.net
 
ことり「お、お母さーーん!!」
 (お母さん、どうしちゃったの?もう、さっきからなにがなんだか…)

絵里「気を失っているだけ、大丈夫よ…」
 (やれやれ…結局私達だけじゃやばかったわね…どう報告しようかしら…)


 憑依が解けたためかは分かりませんが、理事長さんは気を失っていました

 穂乃果ちゃんは床にそっと理事長さんを寝かせます


海未「ありがとうございます、にこ、穂乃果…」
 (二人がいなかったらと思うと……)

穂乃果「海未……ちゃん?」
 (そういえば海未ちゃんと絵里ちゃん…この状況を把握しているよね…)


 絵本はいつもここで終わります。だから…誰も知らないのです……
 

142: 2016/10/26(水) 11:09:52.51 ID:RRRfj5/00.net
 
凛「なんかわかんないけど、かよちんも無事でなによりにゃ~!」タタッ


 物語が終わった後の事なんて、誰も考えません。想像すらしない…


花陽「凛ちゃん…うん、ほんとに……っ!!??」


  ドスッ…


凛「ようやくお仕事がはたせるにゃー」グッ

花陽「り……ん………ちゃ…?」


 誰もがその存在を一瞬とはいえ、喪失していました。ジョーカーという存在にすべてかき消されるかのように…


凛「かよちん、氏んでねっ」ググ


 背中に熱いものを感じました…それがなんなのかもう私にはわかりません……

 視界が揺らぐ……私を見ている絵里ちゃん達が何か声をあげています……

 体から一気に力が抜け、膝から崩れ落ちる……背中が熱い……でも頭がすごく寒気を感じている……


花陽「ごふッ………リ……」


 


 私を見下ろす凛ちゃんが、最後にとてもいい笑顔を見せてくれました
 
 

143: 2016/10/26(水) 11:10:48.20 ID:RRRfj5/00.net
続きますぅ…zzz…

151: 2016/10/27(木) 12:39:05.42 ID:Dr2NurMM0.net
 
 
 


   


    


     
 
 
  オーイ…
 
 
 …………んー?
 
 

152: 2016/10/27(木) 12:39:51.67 ID:Dr2NurMM0.net
 
 
「いつまで寝てるん?」


 


   


 え、もう朝ですか……?


「なんでやねんな、ほら、ちょっとがんばって…」ユサユサ
 
 
 ……ううん……そんなに揺らさないで……今起きます……
 
 

153: 2016/10/27(木) 12:41:00.61 ID:Dr2NurMM0.net
 
花陽「………え」

希「起きた?」

花陽「の、希ちゃん?」

希「おはよ、花陽ちゃん」


 私は寝ていたのか、希ちゃんに起こされました。はて、どして私の家にいるのでしょうか?

 ん、そういえばここ……はへ?


花陽「暗い……まだ夜じゃないですか…」

希「寝ぼけとるんやね……まぁええけど…」


 私の周囲は真っ暗でした。周囲……え、えひぇっ!?


花陽「く、暗い…っていうか真っ暗ですよ?」

希「なんもないからね、ここ」

花陽「あ、足元…は、冷たい……でも空も…な、なん……!?」

希「ちょっと落ち着いてな」


 わ、私なんでこんなところに…というか希ちゃんはどうして……?
 

154: 2016/10/27(木) 12:42:32.94 ID:Dr2NurMM0.net
 
希「ゆっくり説明したげるから、ちゃんと聞くんよー?」

花陽「の、希ちゃん…なにを…?」

希「花陽ちゃん、さっき氏んでしもたから」

花陽「はい?」

希「ほら、ついさっき凛ちゃんにブスーっと刺されたやん?」


 凛ちゃんに………ブスーっと………………凛ちゃんが…私を見下ろして……


花陽「あ、あーーーーーーーっ!!!!」

希「思い出したー?」


 そうです、私…凛ちゃん……に、憑依していた人?に…後ろから…

 え……それで私、氏んじゃった?ホントに?


花陽「え、そ、そんな、っと、こ、このへん?」


 自分の背中を触って確認します。だけど刺された感覚があった部分は特に何も変わっていないように感じます


希「傷はないよーその直前の状態に戻してあるからね」

花陽「戻して…ん……というか、希ちゃんはどうしてそれを…?」


 考えるまでもなく、私の目の前にいる希ちゃんから心の声は響きません。これは…誰?
 

155: 2016/10/27(木) 12:44:05.56 ID:Dr2NurMM0.net
 
希「うちを希って呼ぶのもまぁ、いいけど…ん、いちおう自己紹介しとこか」

花陽「………」


 目の前にいるのはさっきまで同じ場所、教室にいた希ちゃんです。見た目にはなんの変りもない

 だからなのか、いつもの希ちゃんから語られるその言葉はどこか掴みどころがないというか…


希「うちな、宇宙人なんよ」


 素っ頓狂というか…


花陽「は?」

希「宇宙人。わかりやすい言葉にしたらこうなるんよ」

花陽「う、宇宙人て…あの、わ、ワレワレハ…っていうあの?」

希「んーまぁそれでもいいけど…」


 いいんだ…割と自分で言ってて偏見しかない例えでしたけど…
 

156: 2016/10/27(木) 12:45:39.39 ID:Dr2NurMM0.net
 
希「正式には対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースっていう呼称もあるけど、長いやろ?」

花陽「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース……?」

希「覚えたんだ…すごいやん……」


 もちろん初めて聞くものでしたが、最近の私はこういう事態に少し慣れてきているのかもしれません


花陽「もしかして、ことりちゃんが再構築した影響で…?」

希「ちゃうよー、うちらはそのことりちゃんのような存在を外側から観測してる存在やね」

花陽「絵里ちゃんのような組織ってこと?」

希「あれは内側…っていうかあの惑星内での組織やから、うちらとはまた別かな」


 それらを含むすべてを外側から観測する存在だと、希ちゃんは付け足します

 もう今さらどんな現実離れした事を言われても驚きはしません。そうなんだと納得します
 

157: 2016/10/27(木) 12:47:19.81 ID:Dr2NurMM0.net
 
希「ホントはな、うちは出てこんほうがよかったんやけど…」

花陽「ん…どういうことです?」

希「一度大きな失態、やっちゃってるから…というのも言い訳なんかなぁ」

花陽「失態?」

希「うちが出てくる条件、それは花陽ちゃんの生命活動が停止したらっていう条件があったんよ」

花陽「わ、私の!?」

希「ことりちゃんがその能力を爆発させたきっかけやからね、二度はないようにって」

花陽「きっかけ……あれ、でも私が氏んだのってついさっきじゃ…?」

希「ちゃうよ。花陽ちゃんはさっきので氏ぬの二回目なんよ」

花陽「あら、そうだったんですか……………え?」


 ………え!?
 

158: 2016/10/27(木) 12:49:29.49 ID:Dr2NurMM0.net
 
 希ちゃんは語ります。小泉花陽は二度氏んだと…カッコよくいわれても…


希「エリチのとこの言葉で分類するとC級レベルで特に警戒対象でもなかったことりちゃんがね、なんで特S級なんて最高レベルに一気に覚醒したのか…」

花陽「そのきっかけが……私…」

希「その素質を完全に見逃していたうちらにもその責任は少なからずあるのかもしれんけど、ほんとにそれは突然やったんよ」


 希ちゃんがそっと右手を私に差し出す


希「見に行ってみる?」

花陽「それって……」

希「過去に少し戻って、花陽ちゃんには理解しておいて欲しいんよ」

花陽「どうして私なんですか?」


 そっと希ちゃんの手を掴む。私の意思を伝えたつもりだけど、その理由はどこからくるのかな?

 そんな私の疑問に対して希ちゃんがくれた答えは、シンプルなものでした


希「花陽ちゃんは『鍵』……だから…」
 

159: 2016/10/27(木) 12:51:44.61 ID:Dr2NurMM0.net
 
 体に感じる浮遊感。足元の感覚が消え、私は落ちちゃうって少し焦っちゃいます

 だけど私を優しく見つめる希ちゃんのおかげでその杞憂はすぐに無くなります


希「はい、着いたよー」

花陽「え?」


 周囲はまだ真っ暗なまま。足元にはまた冷たい感覚が戻ってきたけど、何も変わり映えしない

 どういう事かとキョロキョロしていると、私の後ろに小さな光が見えました


希「空間事象そのものを移動できればいいんやけどね、うちの階級じゃまだそんな権限ないんや、ごめんな」

花陽「どこのどの部分にグチを言えばいいのかすら解らないので丈夫です」

希「後ろのその光、もうちょっと近づいて見たらいいよ。いちおう先に言っておくけど…」

花陽「な、なんでしょうか…」

希「割とショッキング映像やから気ーつけてな。R15くらいの心構えで」


 高いのか低いのかよくわかりません
 

161: 2016/10/27(木) 12:55:58.11 ID:Dr2NurMM0.net
 
 小さな光に近づくと、それはだんだん大きくなっていき、目の前に到着した時には窓くらいの大きさになってました

 その光の中をじっと見つめると、見えてくる光景に驚きます


花陽「あれ…学校?」


 それは私達の通う音ノ木坂学院でした。だけど校門のところに作られた立て看板には、

 音ノ木坂学院 秋季文学祭と表記されていました。もしかしなくても文化祭?

 だけどその看板はまだ表には出されず、隅に置かれている。そして校門を飾り付けている生徒たちが作業をしている

 それは文化祭の準備中の光景でした。私にとってはつい数日前の事…


花陽「これついこの間の事じゃ……私このあたりで氏んでたんですか?」

希「ううん、違うよ。これは再構築される前の世界。花陽ちゃん達は一度この日を経過してるんよ…」


 希ちゃんの補足を受けてもまだよく解りません。再構築された際に時間も巻き戻したという事なのでしょうか?

 そうしてしばらくその光景を見ていると、校門を出てくる集団が見えます。その数、9人…


花陽「あれ…私達です」

希「うん。ちなみに再構築前やから、実際にあの中でことりちゃんを監視してるのはエリチだけな」

花陽「絵里ちゃん……」

希「まぁでも監視云々より、単純に高校生活満喫しとるけどね」


 確か絵里ちゃんは、C級レベルのことりちゃんを監視する役割を持っていると言ってましたけど

 だけど実際のところ、それらを抜きにしても学校の事やμ’sの事を考えてくれていたように思えます
 

162: 2016/10/27(木) 12:58:41.06 ID:Dr2NurMM0.net
 
 学校を出た私達、通いなれた通学路を歩く私達を追うようにして、窓の景色も移動します


希「ドローンで撮影しました」

花陽「えっ!?ここでドローン!」

希「冗談やん…」

花陽「…」


 この宇宙人さんの元々の性格なのか、それとも体を借りている希ちゃんの性格なのかは不明ですが、

 だけどそのほんわかした話し方とか、私の良く知る雰囲気がこの事態を重く感じさせないのかもしれません

 そんなドローンで撮影したかのような少し高いところから見下ろす私達は、秋葉原の繁華街を歩いていました


花陽「こんなとこみんなで歩いたかな?」

希「今の花陽ちゃんにこの時の記憶はないよ。世界線的に見ると、これはもう無かった世界やから」

花陽「そ、そうなんだ……」


 もしかしなくても、今私すごいものを見ているんですよね?

 と、どこか呑気な事を考えている私の目にそれは突然飛び込んできました
 

163: 2016/10/27(木) 13:01:33.00 ID:Dr2NurMM0.net
 
花陽「あれ……信号…はっ!!??」


 その光景に私は言葉を失う。横断歩道を渡っていた私達に、一台の大型トラックがぶつかってくる

 信号は確かに青でした。だから私達の誰もが意識なんてしていなかったように…巻き込まれていく……

 
花陽「あ……あぁ……ああ…」


 窓の光景からは音は聞こえてきません。だけど、いつもの秋葉原の繁華街は騒然となります

 トラックはそのまま暴走を続け、近くのテナントビルにぶつかって止まりました

 その軌跡…トラックがどういう状態だったのかは分かりませんが、ものすごいスピードで走り抜けた後には…


花陽「うっ…げっぇ…うえっ……!」

希「あらら、大丈夫?」スリスリ


 あまりに酷い状況に思わず吐き気を覚えます。希ちゃんが背中を摩ってくれますが、一言いっておきたいです


花陽「げふっ…の、希ちゃん……これは、R18+です…うえぇ…」

希「認識を改めるわー」
 

164: 2016/10/27(木) 13:03:25.97 ID:Dr2NurMM0.net
 
 繁華街に赤いものが飛び散っています。細かく千切れた人の手足があちこちに飛ばされている

 一体何人の人がそれに巻き込まれたのか想像もつきません。そして…その中に……私がいた

 μ’sのみんな、それぞれ怪我をしているようでした。それでもまだ歩けます…動けます…

 動けなくなっているのは…私だけ……


花陽「………………」

希「花陽ちゃんは、この事故に巻き込まれて、本当に突然…命を落とした」


 仰向けに倒れる私を囲むみんなが何か叫んでいます。ことりちゃんが涙を流し、叫んでいます

 私はまだかろうじて生きているようでした…だけどもう絶対助からない…

 人は…身体が二つに裂けては、生きていられません
 

165: 2016/10/27(木) 13:05:33.92 ID:Dr2NurMM0.net
 
希「今の花陽ちゃんなら……聞けると……思うけど……」


 希ちゃんが私にかける言葉……今の私に……きっと、いいものじゃありません

 だけど…ことりちゃんの想いを私は受け止めたいと思っています。だから…強く意識します…


 


   


  ハナヨチャン…   ハナヨチャン…


花陽「あ…………」


 微かに聞こえた小さな声を手繰り寄せるように、私はその音を拾うイメージを強く持つ

 すると、その声……ことりちゃんの声がハッキリと脳裏に響きます
 

166: 2016/10/27(木) 13:07:30.10 ID:Dr2NurMM0.net
 
 (嫌だよおお、花陽ちゃん!!起きてよおお!!花陽ちゃあああああん!!!!)

 (私まだ花陽ちゃんに何も伝えられてないのに…何もしてあげられてないのに!!)

 (ライブで一緒に歌おうって言ったじゃない!!文化祭一緒に回ろうって言ったじゃない!!)

 (なのに…なんでそんな……悲しそうな顔…しないで!笑ってよ…花陽ちゃん!!!)

 (ま、待って!!花陽ちゃん!!花陽ちゃあああああん!!嫌だああああああ!!!)


花陽「………………」


 (なんで動かないの………なんで花陽ちゃんだけ……)

 (嘘だよこんなの……こんなこと、あるわけないよ……)

 (みんなもそう思うでしょ!!?やめてよ!!花陽ちゃんを連れて行かないで!!!)


 (花陽ちゃん……私達のμ’s…どうするの?ダメだよ、途中で投げ出すなんて……ダメなんだよ…)

 (花陽ちゃんに伝えたい事……たくさんあったんだよ?みんなだってそうなんだよ?)


 (私達の気持ち…気づいてくれてた?ああ……なんで…なんで花陽ちゃんなの………) 

 (やっぱり嘘なんじゃないかな……あんなステキな笑顔を見せてくれる花陽ちゃんが、こんな悲しそうな顔…しないよ…)

 (そうだよ、嘘なんだよ、これは夢……現実であるもんか……明日になったら…)
 

167: 2016/10/27(木) 13:08:55.44 ID:Dr2NurMM0.net
 
 (海未ちゃん……何言ってるの?…絵里ちゃん……どうしてそんな顔するの?)

 (真姫ちゃん…お医者さん目指してるんだよね?…だったら、花陽ちゃん…助けてよ……)

 (誰でもいい………花陽ちゃんを………助けて…お願いします………たす………)


花陽「え………?」


 ことりちゃんの言葉が掠れていき……何も聞こえなくなりました


希「この時、南ことりは覚醒したんよ。そして世界を再構築した」

花陽「……………」

希「つらい?」

花陽「…………いえ……」


 ことりちゃんの言葉を聞いて私の心は動きません。ザワつきません。何も感じません


花陽「なにも………」

希「そうなんや。それきっと、ことりちゃんのおかげ…って言うのかな、いいのかわからんけど」

花陽「どういうことですか?」

希「心が何も感じないってことは、本当なら花陽ちゃんの心、いまごろ悲しみで埋め尽くされてるんやと思うよ…」


 悲しみ………他に何も感じないのは、今それしか感じていないから?


希「再構築される中で書き換えられたうちの一つ。小泉花陽に悲しい思いをして欲しくない」

花陽「…………」
 

168: 2016/10/27(木) 13:11:04.39 ID:Dr2NurMM0.net
 
 ことりちゃんが無意識下で願い、渇望し、再構築された今の私…これって、ことりちゃんの…


花陽「あ…でも……嬉しく思います…」

希「感情が削られても?」

花陽「なんだろう……ハッキリと言えないんですけど…温かい気持ちなんだなって思うと…うん」


 私はそれを…嬉しく思いますし、きっとことりちゃんに感謝すると思います

 悲しくならないってことは…私、涙も流せないのかもしれませんが、それでもやっぱり……


花陽「きっと、後悔なんてしません」

希「そう。受け入れてくれて感謝するわ。これで次に進めるし…」

花陽「次?」


 希ちゃんはただ単にこの光景を私に見せるために連れてきたわけじゃない。すべて意味のある行動

 そのために必要な事。私が…今の私が私を受け入れる事なんだそうです


希「それじゃ、いこっか……世界を救いに!」ニコ


 そういう希ちゃんの笑顔、いつか見たスピリチュアル?に溢れていました
 

178: 2016/10/28(金) 09:54:05.47 ID:fAfLUML40.net
 
 地球の外、宇宙からやってきたという対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース

 それが名前なのか分かりませんが、彼女?…希ちゃんは言います。世界を救うためにと…


希「花陽ちゃん、ゲームとかするん?ドラクエとか」

花陽「えっ!?ゲ、ゲーム?」


 その言葉の重さに、マジメに身構えていたら次はゲーム……ホント掴めないですこの人…


希「あれおもしろいよね、FFも好きだけどうちはドラクエ派やねん」

花陽「は、はあ……あの、それが一体……」


 正直ゲームは少しやっていた程度で、その知識を問われているのなら私はあまり知りません

 でもおそらくこの人その事に関して意味は持たせてないよね……


希「花陽ちゃんにやって欲しい事があるんやけど、ゲームで例えるとわかりやすいかなって」

花陽「わ、私がゲームみたいなことをするってことですか?」


 ドラクエ?FF?私が?


希「いわゆる、強くてニューゲームってやつやね」

花陽「強くて……?」


 やっぱり私には分からない事でした
 

179: 2016/10/28(金) 09:55:53.06 ID:fAfLUML40.net
 
希「花陽ちゃんには、花陽ちゃんが氏ぬ前の時間に戻って、一連の問題を解決して欲しいんよ」

花陽「氏ぬ前に戻るって……つまり、私が凛ちゃんに刺されちゃうのを回避する?」

希「そこはもうアウト」

花陽「へ?」

希「厳密にいうと、南ことりが世界の構造を知ることは避けたい…っていうのがうちらの本音」

花陽「んん……ごめんなさい、やっぱりよく……」


 希ちゃんなりに言葉を選んでくれてはいるのだろうとは思いますが…うちら?


希「んーじゃあ違う説明から」

花陽「は、はい」

希「花陽ちゃんには、さっきことりちゃんが起こした再構築直後の時間に行ってもらうね」

花陽「直後……っていうと、どのへんですか?」

希「花陽ちゃん達が学校の屋上でダンスの練習してるとこかな、花陽ちゃん、躓いて転んだやろ?」


 転んだ……そうだ、私はそこで病院に運ばれてしまうのでした

 あの時からもう世界は変わっていたんだ…
 

180: 2016/10/28(金) 09:58:39.16 ID:fAfLUML40.net
 
希「この段階ですでにうちらはことりちゃんの覚醒に気づき、その要因、人物構成を確認して花陽ちゃんに目を付けた」

花陽「それって…私が……」

希「そっ、花陽ちゃんが『鍵』であるという存在。だからうちらは動いた」


 希ちゃんは対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースという存在だけど、その立場は様々だと教えてくれました

 この辺りの地域を担当しているらしいのですがその階級は下っ端で、派閥争いに巻き込まれて飲まなきゃやってられないとか…


希「まぁことりちゃんが特S級になったおかげで、この問題をうまく纏めれたら、うちの階級も飛躍的に上がるんやけど…」

花陽「世界を救う話から、出世の話になりました?」

希「それとこれとは別やん?うちも階級上がりたいんよ…」


 サラリーマンみたいな事言ってる…ほっとくとグチとか言いそうです


花陽「あ、あの…結局私は何をすれば…?」

希「ん、ああえっとな…簡単に言うと問題として上がってる案件を解決して欲しいんよ。ことりちゃんに知られる事なく」

花陽「問題……あ、ジョーカー!?」

希「うん。ジョーカーとその部下の動きを事前に抑えて、スズちゃんやったっけ、あの子に捕まえてもらえたらクリアね」


 それは…出来たとしたらすごい事だと思います……でも、少しだけ疑問に思う事もあるので聞いてみます
 

181: 2016/10/28(金) 10:00:16.08 ID:fAfLUML40.net
 
花陽「あの…ちょっといいですか?」

希「はい花陽ちゃん」

花陽「過去に戻れるなら、あの…さっきのトラック事故を防ぐというほうが色々といいんじゃないかと…」


 そうすればことりちゃんは普通のままでいられて、私達μ’sもそのまま活動して…何の気概もなく…

 だけど希ちゃんはその提案を却下しました。そこにはとても個人的な理由があるのでした


希「特S級をみすみす逃す手はないんよ」

花陽「逃すって……それじゃまるで……」

希「希少なサンプルやもん」


 私のよく知っている希ちゃんの笑顔で…彼女はそう言いました。ことりちゃんはサンプルだと

 まるで物扱いです。宇宙人……わかりやすい表現と言っていましたが、よくわかりました


花陽「酷いです……ことりちゃんを実験用具みたいに扱うなんて…」

希「うちらの大本…情報統合思念体の目的の一つやからね」

花陽「情報統合思念体?」


 また知らない言葉です。大本というと、会社でいう社長とかそういう役職の方でしょうか?

 だとしても、心に感じるこの気持ち……宇宙人である彼女には理解できないでしょうこの気持ちは…
 

182: 2016/10/28(金) 10:02:28.91 ID:fAfLUML40.net
 
希「やりたくない?」

花陽「わ、わかりません…なんだか悪い事に手を貸すみたいで…でも…」


 もう起こってしまった現実には、とんでもない、それこそ奇跡のような譲歩が差し出されているのはわかります

 だけど…ああもう、この感情はきっと優先するものじゃないってわかっているのに…っ!


希「これは…すごーーく、個人的な意見なんで…適当に聞き流してくれてええよ…」

花陽「え?」

希「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースであるうちらには階級があってな、うちは最下級なんやけど」


 希ちゃん……対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの彼女が語る。彼女個人の感情


希「ま、最下級なんはうちがあまりに感情を情報として処理できないポンコツやからやねんけどな」

花陽「ポンコツだなんて……そんな」


 希ちゃんは私を助けてくれました。それにきっと、希ちゃんであるという事実に私はどこか救われている部分もあります

 そんな彼女が自分を卑下しているのはなんだか嫌だなって、素直に思います


希「最下級だから、うちが権限を持って行使できる情報処理も限られてるし、場所も限られる」

花陽「場所?」

希「うん、この空間。起源隔断層っていうねんけどな。前と後ろを繋いどるとこな」


 両手を広げてこの空間の大きさを表現するように希ちゃんはクルクルと、踊るように回ります
 

183: 2016/10/28(金) 10:03:50.55 ID:fAfLUML40.net
 
希「うちら最下級のインターフェースは、ここから出られへん。誕生した時からずっとここにいるんよ」

花陽「……え?」


 彼女……希ちゃんの言葉の意味が一瞬理解できませんでした。それでも彼女は続けます…


希「観測対象がいてもいなくても、うちはここにいる。だからことりちゃんにはそういう意味では感謝しとるんよ」


 自分の存在に意味を持たせてくれてありがとうって…

 出会ってからずっと表情をコロコロかえていた希ちゃんが、初めて寂しそうに言います

 
希「うちらは情報統合思念体として、この世界の情報システムとしては最高やと思っとるけど、別に神様気取ってるわけやないよ、ただ思念として進化したいだけなんよ」

花陽「進化……?」

希「だから今回のことりちゃんの覚醒を好機に、うちは情報統合思念体としての目的とうち自身の目的を同一に扱うと決めた」


 そして彼女は、思念体なのに持っている『個人』としての気持ちをようやく口にしました


希「うちな…ここから出たいんよ……」
 

184: 2016/10/28(金) 10:08:12.76 ID:fAfLUML40.net
 
 こうして目的が明確になりました。希ちゃんは私を任意の時間に送り届ける。私はそこから、現在考えられる最高の解決を試みる

 特S級となったことりちゃんを観測するとなると必然的に階級は上げられる。階級が上がると、情報処理の権限が拡大され…


希「観測対象者への接触も許可される…つまり……」

花陽「ここから出られる……?」


 管轄範囲の変更は原則無いということから、その地域の担当者の階級が変動されるという事です

 希ちゃんがこの場所から私達の世界に影響を与えられるのは些細なものでしかないので、私が戻ると一切の協力は出来なくなるそうです


花陽「すべてが解決したら……私達はどうなるのでしょう?」

希「別に何もかわらないんやない?普通に学校通って、スクールアイドルとして活動して、みんなと一緒に歩いていく…」

花陽「だけど、ことりちゃんは何も知らないままその力を持ったままで…」

希「エリチはことりちゃんを監視し、花陽ちゃんは『鍵』としてうちらやエリチらにも監視されるやろね」

花陽「そ、それは……」

希「それでもやっぱり…みんなと一緒に未来を夢見て、いけるんとちゃうかな?」


 先の事はうちにもわからんけど~と、希ちゃんは他人事のように笑い飛ばします。だけどそれは私も同じですよね

 私達も…先の事なんてわかりません。ただただ良くなるように精一杯生きているだけですから


希「ま、何もしないで戻ったら世界はもう消えてないんやけどな」

花陽「へ?」

希「正確には、ことりちゃんが否定した現象すべてが無くなった世界になっとるんよ」

花陽「私が…氏んだから?」

希「まぁたぶんそうなんやろね。その後の情報は取得できないんよ。そのへん全部消えとるからね」


 これは結局のところやるしかないって事ですね…
 

185: 2016/10/28(金) 10:10:18.63 ID:fAfLUML40.net
 
希「さっき覗いてたとこ、見てみー」

花陽「この窓ですか?……あ…」


 ことりちゃんが覚醒したと同時に何も映していなかった窓に、懐かしい光景が見えました

 それは学校の屋上。あの日…思えばこの不思議な力を持ってすべてが始まった日でした


希「覚悟が決まったら送り届けるよ……」

花陽「ん、でも確かこの直後、私は転んで頭を打って入院するんですよね…痛いかな…?」

希「時間移動の対象となる、出来事の起点っていうのがあってな、その前後は無理なんよ。あ、これも今のうちの階級のせいな」


 だから文句は上に言ってと言われましたが、ここでそんな文句まで言ったらただのクレーマーさんです

 ちなみに希ちゃん的に言うと、セーブポイントだそうです。でも…


花陽「確かただの脳震盪なのに真姫ちゃんに薬の実験体にされるんだよね……うぅ、今度も失敗してくれるかな…」


 最初は私に起こった不思議な現象は真姫ちゃんのせいだと思っていたけど、結果としてあれはやっぱり失敗してたんだよね
 

186: 2016/10/28(金) 10:12:01.42 ID:fAfLUML40.net
 
希「ん、そうなん?」 

花陽「うん。なんだっけ、人間の潜在能力を覚醒させる薬の実験かなんかされちゃうんです。結果なにも変化なかったけど…」

希「潜在能力の…覚醒?」

花陽「よくわからない実験ですけど、もしかしてこの真姫ちゃんもことりちゃんの再構築を受けての影響なのかな?」


 特に深い意味を持って言ったわけでもない私の言葉に、希ちゃんが何か思案顔になります

 真姫ちゃんも、やってる事は凄いけど友達を実験体にしちゃいけませんよね?


希「ねえ花陽ちゃん、一つお願いしてもええかな?」

花陽「ん、なんでしょう?」

希「花陽ちゃんが無事に戻って、問題もすべて解決したらな、ことりちゃんに聞いて欲しい事があるんよ」

花陽「はぁ……」


 希ちゃんの考えている事はわかりませんが、そのお願いは簡単で、私でもできそうなので了承しました

 内容は単純 『西木野真姫の印象を聞く』 だそうです
 

187: 2016/10/28(金) 10:14:28.88 ID:fAfLUML40.net
 
 そして時間になりました。私が再び生きていくために……


希「おもいきってその光に飛び込んだらもう花陽ちゃんはあの時間に立つから」

花陽「は、はい……」


 光を見つめる私の後ろから希ちゃんが優しく声をかけてくれます

 この状況が彼女の望む我儘の結果なのだとしても、私はやっぱり希ちゃんには感謝すると思います


希「大丈夫?やるべき事、整理できてる?」

花陽「ことりちゃんに悟られないように、ジョーカー達を捕まえる…」

希「相手は?」

花陽「理事長さんと、凛ちゃん……」

希「味方と手段は?」

花陽「味方は…絵里ちゃんとスズさん、それに無敵のヒーロー!手段は、スズさんにお任せ!」

希「ん、冷静やね……こんな事いきなりやらせといて、アレやけど…」

花陽「……ん?」

希「強くてニューゲーム、がんばってな……」


 そう言って、希ちゃんが私の背中を軽く押す

 目前に広がる光が眩しく感じるほど大きくなると、私は光に包まれていました


希「そんじゃ、ドラクエの続きでもして待ってるなー」

花陽「なっ……なんですかそれ~~~~!!」


 階級上がらないのって、もしかしてサボリ癖があるせいじゃないですか?
 

197: 2016/10/30(日) 10:45:23.91 ID:C0BUZiWx0.net
 
 そもそもあの何もない空間にずっと居るっていう話に、辛いだろうなとか、可哀想だななんて思ってしまったのに

 本人わりとゲームとか他の事とかしてエンジョイしているんじゃないのでしょうか?

 …なんて事を考えながら光の道を進む事、体感にして10秒ほど…その時は突然やってきました


ことり「花陽ちゃん!」
 (危ない!!)

花陽「……えっ?」


 光を抜けた先は綺麗な青空……屋上でよく見上げていた光景でした

 あ、そうか……私まさに今ひっくり返ろうとしているところなんで……


  ガン!!


ことり「花陽ちゃ~~~~ん!!」
 (嫌ーー頭打った?大丈夫かな?)


 痛いだろうなと覚悟していた衝撃ですが、やっぱり痛い…そして急速に引いていく血の気も感じます

 ことりちゃん……ごめんね、また心配かけて……私は…大丈夫…だから……
 

198: 2016/10/30(日) 10:46:45.65 ID:C0BUZiWx0.net
 
 こうして私は再びこの場所に戻ってきました。すべてをやり直すために

 希ちゃんが言っていた強くてニューゲームの意味をしっかりと考え、行動にうつします


凛「か~よち~ん!」
 (かよちんが無事でホントによかった……)

花陽「凛ちゃん………」


 退院した私に最初に声をかけてくれた凛ちゃん。再構築された世界での凛ちゃんはまだいつもの凛ちゃんです

 おそらくもう動き出している絵里ちゃんに、凛ちゃんを守ってもらうように頼むか考えます


凛「かよちんどうしたの、まだどこか…?」
 (うぅ…かよちんまだしんどいのかな?)

花陽「ううん、ごめんね心配かけて。もう大丈夫だから!」


 少し考えてもそれは無しだと判断しました。そして凛ちゃんに心配かけないように精一杯の笑顔で答えます

 この世界にやってきたエネルギー体というのを追ってスズさんはこの世界にやってきます。おそらくもう海未ちゃんのところに

 今ここで凛ちゃんに憑りつく予定の人に対して凛ちゃんを守るよりも、ちゃんと凛ちゃんに憑依して、居場所を明確にした方がいいと思います

だから…凛ちゃんごめんね、少しの間我慢してください
 

199: 2016/10/30(日) 10:47:58.98 ID:C0BUZiWx0.net
 
 ヒーロー発見です!


穂乃果「あ、花陽ちゃ~ん、もう学校きて大丈夫なの?」
 (くっ…花陽ちゃんの顔をみるとどうしてもあの映像が…ほんとにこれは私の前世だというの!?)

花陽「うん、心配かけてごめんね…」

穂乃果「ううん、元気な花陽ちゃんが帰ってきてくれて嬉しいよ!」
 (最近ずっと見る夢のせいかな……あれが本当に私の前世の記憶だとしたら…花陽ちゃんも…)


 おそらく再構築が成されてから今日までずっと夢に見てたんだと思います

 しばらく夢に悩まされ、体調を崩しがちになる穂乃果ちゃん……今回は少し早めに解消してあげられそうです

 それまでもう少し…待っててね


 そして次は絵里ちゃんです。一番私の今の状況を理解してくれる人だと思います


 絵里「あ、花陽!もう大丈夫なの?」
 (花陽も元気になったのよ…今私の事情でμ’sを離れるわけには行かない…)

花陽「うん、もう大丈夫だよ」

絵里「ほんとに驚いたのよ…ま、無事でなによりだわ…」
 (μ’sの次のライブで…あいつはかならず動く…それまでμ’sの活動に支障がないようにしないと…)


 今この場でお話しするにはちょっと落ち着かないので、絵里ちゃんには後でお話しを聞いてもらおうと思います
 

200: 2016/10/30(日) 10:49:09.85 ID:C0BUZiWx0.net
 
 あの時と違って、今の彼女は本当の笑顔でそう言ってくれました


希「退院おめでと、花陽ちゃん!」
 (ほんと心配したんだから…でもよかった)

花陽「希ちゃん……」


 一応3日ほど会っていない状態なのですが、ついさっきまで一緒だったイメージがまだ強いです

 だけどこの希ちゃんは、私の良く知る希ちゃんです


希「見てみ、占いで花陽ちゃんの退院を祝福する希望のカードがでてるんやで!」
 (ふふん、我ながら会心の出来だよ!)

花陽「わー、すごーい!」

希「花陽ちゃんの未来は明るい兆しがあるんよ、元気だしてがんばろーな?」
 (やっぱり誰か一人でも欠けたらダメなんだから…私達は…)

花陽「ありがとう、希ちゃん…」


 希ちゃんと……それともしかしたら今も見ているかもしれない彼女にも、あらためてお礼をいいます

 それにしても希ちゃんの占い…すごく勇気づけられるけど、この啓示ってどこまでを指しているのかな?

 それに気になる部分として……彼女、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースのあの人は

 どうして希ちゃんの姿で私の前に現れたのかな?
 

201: 2016/10/30(日) 10:51:17.03 ID:C0BUZiWx0.net
 
 今にして思えば、海未ちゃんも大変ですね


海未「おはようございます、花陽」
 (この子は小泉花陽。たしか入院していたと聞きましたが…)

花陽「おはよう海未ちゃん!」

海未「もう退院したのですね。体のほうはもういいのですか?」
 (そうか、私の名前は園田海未だったな…まったくこんなミッションをどうして私が…)

花陽「うん、心配かけて、ゴメンね」


 スズさんと、そしておそらく中にいるだろう海未ちゃん。私だけじゃない、スズさんや海未ちゃんのためにもがんばらないと

 だから、もう少し待っててね海未ちゃん
 

202: 2016/10/30(日) 10:51:39.67 ID:C0BUZiWx0.net
 
 そして彼女は校門前で待っていました


花陽「…………」

ことり「あ、花陽ちゃんオハヨー♪」
 (あぁ、数日ぶりに見る花陽ちゃんやっぱり可愛いよ~~!)

花陽「おはようことりちゃん!」

ことり「ああ、すっかり元気だね、良かったー」ズイ
 (ぐへへ、やっぱりいい匂いだよぅ…それに…あぁ、抱きつきたい…吸い付きたい…)

花陽「う、うん…心配かけてごめんね。私はもう、大丈夫だから……」

ことり「大丈夫?気分悪くなったらすぐに言ってね、教室まで付き添うから、いこ?」ズズイ
 (あー、たまんないよぅ…これで眼鏡花陽ちゃんだったら私限界突破してたよぅ)


 ことりちゃんが覚醒した時の光景を思い出しちゃって、つい言葉を詰まらせます

 好きだった絵本のお姫さまと私を重ねて、憧れを抱いてくれたことりちゃん

 それはやっぱりどこかくすぐったく感じますが……どうにもそれだけじゃない気もします…

 絵里ちゃんとスズさんが言っていた言葉を思い出す。ことりちゃんが…私を…


ことり「あれ、顔が赤いよ?」グイグイ
 (やっぱりまだ体調が…?うぅ…)

花陽「えっ!?あぅ、な、なんでもない…です~」タタタ

ことり「あーん花陽ちゃ~ん」
 (あいかわらず照れ屋さんだなー…でもかわいい!)


 気が付くと目前にはことりちゃんの顔。思わず声が上ずってしまい、私はそこから逃げるように先に行きます


 あれ……なんだか心臓がドキドキしてます
 

203: 2016/10/30(日) 10:52:29.73 ID:C0BUZiWx0.net
 
 微妙な心の変化に動揺していると、彼女が声をかけてきます


真姫「おはよう花陽。どう、調子は?」
 (花陽に変わったところはない…人間の潜在能力を覚醒させる薬はやっぱり失敗だったのかしら?)

花陽「おはよう真姫ちゃん。おかげさまで元気だよ」

真姫「それにしても運ばれたのがうちの病院でホントラッキーだったわね」
 (ただの脳震盪で運ばれてくるんだもの…こんなに健康な実験体は他にいなかったからしょうがないわよね…)

花陽「そうだね。あ、入院費格安にしてくれてホントありがとう」

真姫「それくらい当然じゃない……と、友達なんだし?それと、退院おめでとう」
 (ホントはそれだけじゃないけれど、まぁ変化なしなら言う必要はないわね…あーあ、失敗かぁ…)

花陽「うん、お世話になりました」


 やっぱり今回も何か薬を盛られていたようです。そのうち問い詰めてたやりたいです
 

204: 2016/10/30(日) 10:54:14.77 ID:C0BUZiWx0.net
 
 次は確かにこちゃん。声が聞こえてくるかなーと意識していると…


 (花陽……いえ、前世の姫を守れなかったあの時の想いがまた……)


 聞こえてきましたにこちゃんの心の声。ん……?


花陽「守れなかった…?」

にこ「おはよう花陽、無事でなによりだわ。ってどうかしたの?」
 (本当にご無事で…しかし穂乃果の覚醒もまだだというのに、今姫を守れるのは銀騎士級である私だけ…)

花陽「あ、ううん、なんでもない。おはようにこちゃん」

にこ「ん、どうしたのよ?」
 (姫にはこの世界で普通の女の子として生きて欲しい…って、ホントに大丈夫かしら…?)

花陽「にこちゃんの顔ひさしぶりに見たから…嬉しくなって」

にこ「な、なによ突然。まあいいけど…。もう転んで入院なんてヘマしないのよ?」
 (私にはもったいない言葉…だけど、昔のように一緒に笑い合えたら…私は…)

花陽「うん。心配かけてごめんね」


 確か絵本の騎士は…姫を守り抜いてめでたしめでたしでした。前世の記憶として再構築された絵本の記憶

 にこちゃんは前世の記憶をどういう風に捉えているのかな…。今度聞いてみたいな
 

205: 2016/10/30(日) 10:55:34.81 ID:C0BUZiWx0.net
 
 μ’sのみんなにあらためて挨拶をし、私小泉花陽の日常は再スタートします

 だけどそれは表向き。本当の目的のため、もう今日から行動を開始していこうと思います!


絵里「え、練習後?別にいいけど…まだどこか悪いの?」
 (見た感じ以前の花陽…元気いっぱいな花陽だけど…)

花陽「ううん、私の体調の問題じゃなくて、ちょっと大事な話で…」


 すべてを話して状況を理解してくれる人物として挙げられる最初の一人

 そしてもう一人…


海未「え、後で話…ですか…?」
 (どうしましょうか…今日はこの後周囲の環境視認を目的とした活動を考えていたのですが…)

花陽「大事な話です。きっと海未ちゃんに……ううん、スズさんにとっても大事な話です」

海未「なっ!?」
 (花陽?どうしてスズの事を……こいつがまさか!?)
 

 私の一言で海未ちゃん…スズさんが一歩下がり、構えを取ります

 でもそれに怯んでいてはダメです。知っているという事実は私にこんなにも勇気を与えてくれます


花陽「私は敵じゃないよ…。ことりちゃんのため、自分のために…協力して欲しいの」

海未「……………」
 (女王の事も…何者ですか?……え、花陽は私達の仲間です。それ以外には…)

花陽「ダメ…ですか?」

海未「………いいでしょう。ただし条件があります……」
 (スズ、なにを?………私の存在を知っている以上、ただ言いなりになるわけにはいきません)


 そうして提示してきたスズさんの条件を、私は受け入れます。話さえ聞いてくれたら、きっと大丈夫だから
 

206: 2016/10/30(日) 10:57:39.17 ID:C0BUZiWx0.net
 
 -放課後 アイドル研究部部室


絵里「お待たせ花陽。それで話って……」ガチャ
 (誰にも見られずにっていう事は、よっぽどの事なのよね…)

花陽「絵里ちゃん、来てくれてありがとう」

絵里「って、ど、どうしたの花陽!?」
 (なに、これはどういった状況?花陽の趣味なの!?)


 部室に入ってきた絵里ちゃんが私を見て驚いています。まー当然だと思います…

 私は椅子に縛り付けられているのです。スズさんの言った条件を呑んだために


海未「それは私がやりました。花陽に変な行動をとらせないために」
 (もう一人来るというのは絵里……確か元生徒会長でしたか。…そうです、しかしなぜ絵里が…)

絵里「海未?あなたもいたの…それに…」
 (もしかしてこれ、普通の話で終わらない感じかしら?)


 二人の視線がぶつかり合います。またこの光景かーっていう思いもありますが、先に説明しないといけません


花陽「二人とも敵対関係じゃないから安心してください。スズさん…それと…A級エージェントさん」

絵里「っっ!!?」ジャキ
 (こいつ……花陽じゃない!?)

海未「エージェント?」
 (え、え、ど、どういうことですか?)


 私の言葉に反応し、絵里ちゃんが懐から取り出したもの。それは…拳銃でした。って、えええ!?
 

207: 2016/10/30(日) 10:59:22.38 ID:C0BUZiWx0.net
 
絵里「あなた、何者なのかしら?海未も動かないで!」チャッ
 (まさかもうヤツが動き出していたというの……外の現地隊員は、3名か…)

花陽「お、おお、落ち着いて絵里ちゃん、だから私は敵じゃないよ~!」ブルブル


 ビ、ビックリしました、色々裏で活動していた絵里ちゃんだけどそういうのやっぱり持ってたんですね!

 う、撃たないよね?…は、話聞いてくれますよね?


絵里「では10秒で説明しなさい。できなければこちらで対処します。10…」ガチッ
 (海未も動いたら外に向けて信号……しかしこの二人が……)

花陽「う、海未ちゃんも敵じゃないよ!外の人に信号打たなくていいから…」

絵里「7…6…5…」
 (こいつ……私の思考を?くっ……)


 あわわわわ、どうしよう、絵里ちゃんなら話を聞いてくれると思っていたのに、ど、どうしたら!?

 えっと、私が敵じゃない証明……か、考えて……一番わかってくれそうな……ええっと…んーと…


絵里「3…2…1…」
 (どうでる……?)


花陽「わ、私、ことりちゃんが覚醒した…さ、再構築した原因で、か、『鍵』なの!!」


絵里「鍵……ですって……?」
 (花陽に関してその情報はない……しかし、それを知る存在がいないという情報もない…)

花陽「私はことりちゃんがどのタイミングで覚醒したのか、知ってるよ。再構築前の世界を見てるから…」

海未「……………」
 (あの、花陽は何を言って……少し様子を見ます……)


 お願い信じて~~~!!
 

208: 2016/10/30(日) 11:02:07.68 ID:C0BUZiWx0.net
 
絵里「いいわ。話は聞いてあげる…ただしこのままで、海未も少しでも動いたら…」
 (いえ、きっと海未も聞かされる側なのね。そういう顔をしているわ)

海未「大丈夫ですよ、話を聞きたいのは私も同じです」
 (あの…スズ?……海未、まずは小泉花陽の話を聞いてからです)

花陽「はふっ……ありがと、絵里ちゃん……」


 椅子に縛られて銃口を向けられてはいますが、二人とも私の話を聞いてくれるようです

 もっと簡単に『あ、そうなの!じゃあ協力しましょう!』ってノリを想定していた私がバカでした…


 私は状況を整理するために、まずはここに至るまでの経緯を話します

 ことりちゃんの立場、それを狙う周囲の環境、状勢、私の命が狙われていて、実際に命を奪われた事…

 それらすべてをやり直すために、今ここに戻ってきているという事…包み隠さず話しました


絵里「……………」
 (にわかには信じきれない話だったけど……その言葉がでてくるって言うのなら…)

海未「……………」
 (なるほど……あの存在は宇宙人と自らを呼んでいるわけですか……ん?)

花陽「だから、あの…お願いです、力を貸してください…」


 言うべき事はすべて言いました。言葉足らずなところは正直あったかもしれません

 だけどこの想いは本気です。それだけは絶対に分かって欲しいです!
 

209: 2016/10/30(日) 11:04:49.79 ID:C0BUZiWx0.net
 
絵里「………ふぅ…」チャッ
 (確認は取るけれど、この花陽がねぇ…)

花陽「絵里ちゃん………」


 絵里ちゃんが、私に向けてた銃口を下げてくれました。そして私に近づくと……


絵里「バカねっ…」ペシ
 (それも含めて、花陽らしい…って事なのかしら)

花陽「あぅ」


 で、でこぴんされました…なんで?


絵里「発想は良いとしても、その手段にミスが多いわよ、花陽」
 (私が敵じゃないと信用できていたとしてもね…)

海未「そうですね。けれども先の話は私の懸念を裏付けるものでもありました」
 (わ、わからない事ばかりで……花陽は、大丈夫ということですよ)

花陽「え……ミス…?」

絵里「その…凛に憑依している…する予定の低級の魔物だっけ…そいつが今どこにいるか分からないのよね?」
 (凛が憑依されるっていう確証もないけれど…)

花陽「う、うん…たぶんスズさんが夜中に追いかけまわしていた気もします…」

絵里「だったら、今の花陽の話をすぐ近くで聞かれていたら、すべてアウトになるのも分かるわね?」
 (こちらが手のうちを知り尽くしている…というのを知られているというのは最悪なのよ?)

花陽「あ……そ、そうです…ね…私…」

海未「幸いな事に近くにそのような気配はありません。所詮低級ですから、憑依対象を決めるまでそう大きく動き回る事もできないでしょう」
 (活動するにしても陽が沈んでから……そうなのですか…)


 私のミスは、場合によっては取返しのつかないものだったと、絵里ちゃんは指摘してくれます

 それには反論はありません。所詮私はそういう道の知識が十分ではなかったのです
 

210: 2016/10/30(日) 11:06:41.48 ID:C0BUZiWx0.net
 
絵里「それと、私の正体を聞いたからといって、不用意にそれを私に言うのもミス」ペシ
 (相手が敵対勢力って確定していたら私は迷わずやるからね…)

海未「最低限、交渉材料に使える情報は吟味してしかるべきですね」
 (例えば、南ことりの覚醒時期の特定情報などですね……うぅ、難しいものですね)

花陽「あう……」

絵里「でも、今回はそれがあったから、私は私の中の小泉花陽に当てはめられたっていうのもあるけどね」
 (一連の話と、行動…言ってしまえば、とても花陽らしい部分もあるわ)

花陽「それじゃ……あの…」


 厳しい言葉を受けましたが、絵里ちゃんは私の良く知る絵里ちゃんの顔で微笑んでくれます

 そして、私を縛っていた縄を解いてくれました


絵里「構わないわよね、えっと…スズ…さん?」
 (言われてみると確かに構え方が海未とは違う。どちらも武道の道を歩んでいるのか、判別し辛いわ)

海未「スズでいいですよ絵里。花陽に対する警戒を、一端取り下げましょう」
 (スズ、ありがとう。……ミッションが早く終わるならこちらもありがたいですし)

花陽「あ、ありがとう…」


 ふひゃあ……すっごく疲れましたけど、なんとか話は信じてくれたみたいです

 そして同時に、最初考えていた私なりの作戦みたいなものはちゃんと絵里ちゃん達に指摘してもらったほうがいいですね…はぁ
 

220: 2016/10/31(月) 13:48:46.40 ID:O27AHdB30.net
 
 私にμ’sメンバーの心の声が頭に響く現象のことを、今回も実験をして理解してもらったところで今日は時間です

 理由は海未ちゃんの門限ですが、しょうがないですよね


海未「申し訳ありません、遅くなる時は事前に言っておかないといけないので…」
 (こんな重要な話になるとは思っていなかったので……まあ問題はないでしょう)

絵里「それじゃ、花陽の話を全部事実とした場合の今後の行動だけど…」
 (いきなりその一点で行動するのはまだ避けたいところね…)

花陽「は、はい…」


 私を信じる信じない以前に、私自身が持つ情報の正確性がまだ確定事項ではないと絵里ちゃんは言います

 要は、私がそう信じて話していても、私が間違っていたり、勘違い等の記憶違いを念頭に置くという事です

 そういう考えなんてまったく持っていなかった私はただただ尊敬の眼差しを絵里ちゃんに送ります


絵里「スズは夜に活動する予定だって言ってたわね」
 (私も予定はあった。状況によっては鉢合わせしていたという事ね)

海未「はい。私自身がまだこの街に慣れていないという分も加味して偵察は重要だと思われます」
 (夜中に出歩くなんて、本当は許可したくないんですよ?……もう話はつけたはずですよ海未)

絵里「じゃあそれは予定通りお願い。ただし対象を発見しても捕獲しようとはしないで」
 (スズならその理由、理解してくれるわよね)

海未「そうですね、悟られない範囲で威嚇する程度にしておきましょう。ジョーカーの所在がまだ確定していませんからね」
 (理事長に憑依するという事ですが、時期が特定できないと動けませんね)

絵里「OK、それでいいわ。いきなり部下が捕らえられたとなると、作戦を変更されかねないからね」
 (ジョーカーはスズと同程度の高エネルギー体という話だった……手強そうね…)


 私が口を挟む余地のないほど、これからの行動方針が次々決まっていきます
 

221: 2016/10/31(月) 13:50:27.84 ID:O27AHdB30.net
 
花陽「はぁ……なにもしない…ですか」


 絵里ちゃんが私に出した指示は二つ。一つは凛ちゃんが憑依されたかどうかの確認

 方法は以前と同じでいいみたいです。今にしてみればやっぱりラーメンが好きだからってあの思考は変ですよね

 そしてもう一つが、それ以外は何もしないで、普通に生活することでした


絵里「無理になにかしようとしないで。花陽は情報こそ持っているとしても、所詮は素人なのを自覚して」
 (偶発的なものにしても、戦闘に巻き込まれたら大変だからね)

花陽「は、はい」


 その指示に私は素直に従います。私も何かしたいという気持ちがあるのは確かです

 でもその考えが甘いものだというのはもう思い知りましたから、この決定に異論はありません

 あくまで知っているだけ…だけどそれを敵に悟られては意味がないというのも分かります


花陽「わかりました、今日も帰ってご飯食べてお風呂はいって寝ます!」

絵里「理解が早くて助かるわ」
 (ミスリードの可能性を先に潰すまでは大人しくしててね…)
 

222: 2016/10/31(月) 13:52:04.71 ID:O27AHdB30.net
 
 こうして私は以前の私と同じ日常生活を過ごします。当面の目標はやっぱり…


ことり「はい、ここでターンして…」タン タン
 (もうちょっと勢いつけた方がリボンの揺れを大きくできていいかな…)

花陽「はい…はぁ、ふぅ……」タタッタン

ことり「こうきて……はいっ!」パン
 (花陽ちゃんとハイタ~~ッチ!)

花陽「っほ!」パン


 今度のライブで披露する私とことりちゃんとのユニット曲のダンス練習です

 ジョーカーの問題は勿論大事ですが、だからといってライブを疎かにするわけにもいきません

 ライブ成功時に回収できるエネルギーを必要としているスズさんのためにというのもありますし


凛「かよちん達、気合はいってるね~」
 (凛達も負けてられないなー)

花陽「ライブ、絶対いいものにしたいからね…ふぅ…」


 凛ちゃんの様子はまだ変化しません

 意識して聞いていたわけじゃないので、凛ちゃんがどのタイミングで憑依されるのか……


凛「でもかよちんすっかり調子取り戻したにゃ~良かったー」
 (かえりにラーメン食べに誘ってみようかなぁ…でもご飯のほうがいいかな?)

花陽「あ……」

ことり「がんばってるね花陽ちゃん。はい、水分補給も大事だよ?」サッ
 (うふふ、この水筒に花陽ちゃんが口をつけたら回収して…えへへ)

花陽「…………」


 凛ちゃん…もしかして、この日に……?

 ってことりちゃんはことりちゃんで自分の欲望に素直です…でも、今はちょっと怖いかなって気はありません


花陽「あ、ありがとう…ことりちゃん…」グイ

ことり「いえいえ、必要ならいつでも言ってね~」パァ
 (やった~♪)


 やっぱりどこか恥ずかしい部分もあります。だけど、それを嬉しく思う気持ちのほうが大きくなっていく…

 私がもつことりちゃんへの気持ち……どういう風に変化していくのかな…?
 

223: 2016/10/31(月) 13:53:42.76 ID:O27AHdB30.net
 
 練習が終わり、それぞれ帰宅したり部室に残って作業をしたりと、時間の使い方は自由です

 私が覚えている範囲だと、今日の晩スズさんが魔物を追いかけて…おそらくだけど魔物さんは憑依対象を凛ちゃんに決めて憑りつく

 それ以降、凛ちゃんの一番強く意識していた事が強く表にでるようになるんだっけ…。じゃあ…


凛「それじゃ凛は先にかえるね~」
 (うぅ…いきなりお使い頼まれるなんて…明日はかよちんとラーメン食べにいきたいな)

花陽「う、うん…じゃあまた明日ね…」


 ごめんね凛ちゃん……わかっていて止めてあげられないこの感じ……うぅ、もやもやします

 でもこれもすべてを無事に解決するためです。終わったらみんなでラーメン食べに行こうね、凛ちゃん

 
 屋上で絵里ちゃんと海未ちゃんが居残りダンスレッスンをしているはずですが、今の二人だと違う事を話してそうです

 私にはいつも通りを心掛けるようにという指示に従い、今日はこのまま帰る事にしましょう

 っと、その前におトイレ……


花陽「真姫ちゃんは家で曲のアレンジを煮詰めたいっていってたからもう帰ったんだね…」


 相変わらずよくわからない薬を開発している真姫ちゃん。ほんとになにやってるんですかね?
 

224: 2016/10/31(月) 13:54:55.63 ID:O27AHdB30.net
 
 アイドル研究部の部室を出て廊下を歩けばすぐに女子トイレはあります

 基本女子高なので女子トイレばかりなのですが、男性教員用のトイレは別の階にあります
 
 別にトイレ事情を話す必要はないのだけど、それは少し違和感のある光景だったのです


花陽「あれ…先生……?」


 廊下に先生が立っていました。確か物理の先生…男の方です。でもこの先は女子トイレしかないので、先生が行く用事はないです

 先生は廊下の中央に立って……ん、こっちを見ている……?


花陽「あ、あの……」


 先生はけっこうなお年で、60代だったと思います。だからその瞳に…光を失った虚ろな瞳に、私はすぐに違和感を感じませんでした

 お疲れなのかな、なんて呑気な事を考えながら先生の横を通り抜けようとした時、それは現れました


花陽「え……?」


 先生の背中から靄のようなものが……あれって……どこかで見たような……

 ゆっくりと…まるで魂が抜け出たかのように、先生の体から靄が浮き上がり、頭上に集まっていく。それは深い碧色をしていました


花陽「………はっ!!?」


 私がそれを思い出すと同時に、靄は私に向かって動き出していました
 

225: 2016/10/31(月) 13:56:17.93 ID:O27AHdB30.net
 
にこ「花陽っ!!!」ダッ
 (間に合え!!!)

花陽「に、にこちゃ……っ!」ドッ


 突然後ろからにこちゃんの声が聞こえたかと思った次の瞬間、私の体は吹き飛ばされていました

 背後からにこちゃんが体当たりで私を飛ばしてくれたのです


花陽「あ、ぐぅ!」ドサ

にこ「ごめん、大丈夫?…てか、なによあれ!」
 (まさか魔法使いの刺客…?こんなときに?)


 にこちゃんにも見えている靄。あれは…色は違うけどジョーカーと同じエネルギー体……どうしてここに?

 その靄が完全に先生の体から抜け出ると同時に先生は廊下に倒れこむ。さらに屋上から聞こえてくる声…


(なぜ急に反応が…!?…スズ、どういう事ですか?)

(スズの様子…あながち間違いではなさそうね、だけどどうして急に…!?)


 絵里ちゃんと海未ちゃん、スズさんの声が響きます。その反応から、やっぱりこれは…魔物…


にこ「ほら立って、よくわかんないけど逃げるわよ!」
 (穂乃果もいないのに、私一人で守り切れるか……だけど)

花陽「う、うん…」グッ


 靄の正体はにこちゃんには分からないと思います。だけどにこちゃんは私を守るために動いてくれる

 姫を守ると誓った、騎士だから……相手がなんであれ、私のために…
 

226: 2016/10/31(月) 14:00:43.89 ID:O27AHdB30.net
 
にこ「走って!どこか広いところへ!」
 (今の私にできる事…くそっ……!)

花陽「は、はひっ!」


 靄は確実に私を狙っているようです。だけどあれって、凛ちゃんを狙っていたんじゃ…!?

 どこかでその目的が変わった……変わるような要因が?


にこ「危ない!こっち!!」グイ
 (やっぱりあれ、花陽を…姫を狙ってる!?)

花陽「あうっ!?」

 
 突然腕を引っ張られて廊下の角を曲がる私達。そのすぐ後ろを靄が突き抜けていく

 にこちゃんが引っ張ってくれなかったら、私…憑りつかれていた?


にこ「とにかく人目のあるところ、上はダメよ、袋小路になるから!」タタタタ
 (このルートだと……この先を……あ、あそこ窓が開いてる?)

花陽「はいーー!!」ダダダダ


 逃げるのに必氏で、私は屋上から向かってくれている絵里ちゃんやスズさんの声を見失ってしまいます

 だからと言って立ち止まってゆっくり状況を分析するような頭は私にはありませーーーん!!
 

227: 2016/10/31(月) 14:01:14.77 ID:O27AHdB30.net
 
にこ「花陽、そこの窓からグラウンドに出て!!開いてるから!!」
 (外にはまだ部活動中の生徒が少しだけど残っているはず…敵がそれでもくるのなら…)

花陽「は、はい!」


 にこちゃんの指示に従って窓に飛びつき外へ飛び出そうとした、その時…


花陽「うあっ?!」ガク


 体を引っ張る抵抗を感じる。見るとスカートが窓と窓枠の隙間に挟まってしまってます!


にこ「花陽!くっ…でえええええぇ!!!」バッ
 (守るって、誓ったのよ…もうあんな想いは…!!)

花陽「にこちゃん!!!」


 もがく私の背中をにこちゃんが強引に蹴り飛ばす。スカートがビリビリと破けていく音が聞こえる

 窓の外、誰かが丹精こめて育てていた花壇に私は勢いよく倒れこむ

 だけどお花さんごめんなさいなんて気持ちは今は後回し、すぐににこちゃんを……
 

228: 2016/10/31(月) 14:03:50.96 ID:O27AHdB30.net
 
花陽「にこちゃん!?」

にこ「……………」


 窓枠に倒れこむようにしてにこちゃんが項垂れている。近くにあの靄は見えません。外には出れないのか、あきらめてくれたのか…

 とにかく靄がいないのなら今のうちに……


海未「花陽!無事ですか!!」
 (反応が消えた…?……花陽、よかった…)

絵里「ヤツは!?」
 (おかしい…隊員の監視は何をしてるの…?)

花陽「絵里ちゃん、スズさん。私は平気、それよりにこちゃんが…」


 二人が駆けつけてくれました。これでまた靄が出てきても大丈夫と思います

 それよりも私を逃がすためににこちゃんが怪我でもしていたら大変です…
 

229: 2016/10/31(月) 14:04:46.89 ID:O27AHdB30.net
 
にこ「ん……うぅ……っん…」
 (あれ……私なんで寝てるの?…姫が無事ならいいけど…)

花陽「にこちゃん、大丈夫?」

絵里「にこ……」
 (花陽の話では、にこと穂乃果がすごい力を持っているという事だったけど…花陽を守ったの?)

にこ「へ、平気よ…それよりさっきのはなんだったの…?」
 (姫を狙うやつがいるのなら……私は今度こそ姫を…)

花陽「よかった……」


 にこちゃんに目立った怪我はありませんでした。きっと絵里ちゃん達が来たので逃げたのかな?

 絵里ちゃんは小さなマイクで誰かとお話ししている。スズさんは周囲を警戒しているようです


にこ「ちょっと、まさかさっきの絵里達のイタズラじゃないでしょうね!?」
 (それにしたらやりすぎよ…それでも私は姫を守るけど……)

花陽「は、はは…わかんないけど……?」


 にこちゃんはいつものにこちゃんです。私の事を守ってくれた、ステキな騎士さまです

 だからそれは不自然には聞こえませんでした。それでも……
 

230: 2016/10/31(月) 14:06:05.45 ID:O27AHdB30.net
 
絵里「ごめんなさいにこ、怪我はない?」
 (状況として勘違いしてくれているのならいいのだけど……)

にこ「なに、やっぱりアンタ達の仕業?もー、やめてよねぇ…」
 (イタズラであれなんであれ、私が姫を守るのは同じだけど…)


花陽「………………」


海未「申し訳ありませんにこ…」
 (悪戯で納得してくれるなら……にこはそういうところ単純で…)

にこ「まったく手のこんだ事して…帰りにジュースだからね!」
 (私はいくら怪我してもいいけど…姫だけは……)


花陽「………………」


 私を……姫を守る無敵のヒーロー……


花陽「ね、ねえにこちゃん……お腹すかない?」

にこ「はぁ?いきなりなによ……まぁ、練習後だし多少はね」
 (姫を守るための体力はまだまだ大丈夫だけど…)


 銀の剣、銀の鎧に身を包み、悪い魔法使いに立ち向かう銀の騎士…ソラが……


にこ「あー、ジュースよりご飯奢ってもらおうかな~?」
 (姫を守るために体調は万全にしないと)


花陽「……………」


 


 魔物に…憑依されちゃいました?
 
 

241: 2016/11/01(火) 15:13:05.13 ID:RCB7AhNU0.net
 
 -夜。花陽の部屋


 しばらく様子を見て対策していくという私達の思惑は突然崩れ去ることになります


絵里「花陽………」
 (まいったわね……)

花陽「はい…」

絵里「ごめんなさい」
 (早々にミスをやらかしちゃうなんて…)


 私に対して深々と頭を下げる絵里ちゃん。絵里ちゃんに対して私が言える言葉なんてありません


花陽「私のほうこそ、ごめんなさい…」


 私達はほんの小さな事も大きな事に影響を与えるという、バタフライ効果の怖さを身をもって知りました

 いつものように日々を過ごす事と、一度通った日々をまったく同じように過ごす事はほぼ不可能に近いそうです

 ちなみに海未ちゃん曰くです


海未「二人とも元気を出してください。すぎた事を悔やむより次の対応を失敗しないようにしましょう」
 (海未の言う通りです……無責任な発言にならないようにしないといけませんが…)

絵里「ええ…それは勿論よ」
 (ライブへの影響を考えても、もうミスは許されないわ…)
 

242: 2016/11/01(火) 15:14:31.93 ID:RCB7AhNU0.net
 
 今回のミスは、絵里ちゃんが言うには「知っている」からこその結果だそうです

 私達が毎日屋上で練習をしている時、絵里ちゃんは部下の人に校内や私達を警戒、監視していたそうです

 それ自体には問題はないのですが、その日は違いました。夜にスズさんが魔物を発見し、作戦通り捕まえる素振りをします

 そして魔物は翌日、エネルギー低下の問題を解消するために憑依対象を早急に決める事になります

 しかしここで、絵里ちゃんは相手の魔物の事情を「知っている」からこそのミスをしてしまいます


絵里「本人は今だに意識が戻らないみたいね」
 (命に別状はないといっても、衰弱状態が続いている…)


 魔物が弱っていて、凛ちゃんに憑依するのが分かっていたから、絵里ちゃんはその日の校内警護の人員配置を変更しました

 絵里ちゃんの部下の人達は魔物に後れを取るような事はないそうですが、主力部隊を理事長さん方面に回し、

 部隊内でも情報系に精通した監視員を屋上近辺に配置する指示を出します

 あの先生…絵里ちゃんの部隊の一員だったそうです。武闘派ではないあの先生が配置について行動を開始する前、魔物の標的にされたのです
 

243: 2016/11/01(火) 15:16:01.87 ID:RCB7AhNU0.net
 
 そしてもう一つは私のミス。ことりちゃんが私に好意を寄せてくれているのを「知っている」から、私は好意を受け入れました

 屋上でのやり取り…あれを監視していたあの先生が見ていた可能性はとても高いという事です。そして魔物は今回のターゲットが私であると認識します


絵里「低級っていうわりには随分と狡猾じゃない?そいつ…」
 (報告によれば低級のエネルギー体は行動理念が大まかなパターンしかないらしいけど…)

海未「目的意識がハッキリしている分、そのために活動する上での思考はあざとくもあります」
 (だから本来部下には使い辛いとされているのですが……ふむ…)

絵里「問題として、今にこに憑依しているとされるヤツが行動を開始する時期だけど…」
 (憑依している魔物は本来のターゲットをもう把握していると考えるべきよね)

海未「やはり消耗は激しかったのでしょう、にこに憑依してすぐに気配が消えるという事は、一端そこで休眠状態にはいったという事です」
 (にこは大丈夫なのでしょうか……命に別状はありません…今のところは…)


 休眠状態が続く間は、以前の凛ちゃんのような状態になるそうです。しかし一度行動を開始すると、凛ちゃんの時と同様心の声が聞こえなくなるので判別はできます

 つまり、私はにこちゃんにいつ襲われてもおかしくない状況になっているそうです


絵里「先に言っておくけど、憑依された人から強引にそれを?がそうとしたら…?」
 (作戦候補としては必要だからね…)

海未「良くて数日の拘束ですみますが、悪い結果だと人体に少し後遺症……障害がでる恐れはあります」
 (障害……精神に関係する部類です……)

花陽「障害……」


 ライブ本番の日はもうすぐだというのに、一つも上手くいかないです

 結局対策としてできるのは、可能な限り私はにこちゃんと二人きりにならないこと。今はそれしか…
 

244: 2016/11/01(火) 15:17:11.24 ID:RCB7AhNU0.net
 
 prrrr…


花陽「あれ、電話……こんな時間に?」


 すっかり暗い雰囲気に陥っていた私達に、その音は大きく響きました

 見ると私の携帯が着信を知らせていました。相手は……番号表示のところに…DQLと…


絵里「電話みたいね…誰なの?」
 (にこだったら…ちょっと警戒が必要ね…)

花陽「それが…なにも表示してなくて…かわりに…」


 私はその不自然な表示画面を絵里ちゃんに見せます。もしかしたら絵里ちゃんの組織とか、なんか裏で暗躍してそうな人達からのメッセージとか!?

 と思っていたのですが絵里ちゃんも怪訝な顔をするだけで心当たりはないようです。それは海未ちゃん達も同じでした


絵里「とりあえずでてみるしかないわね」
 (ジョーカー側からの接触の可能性も…?)

花陽「は、はい…」


 私は電話にでました。すると、懐かしい口調が私の耳に届きました


希『おひさしぶり…やね、元気してる~?』
 

245: 2016/11/01(火) 15:18:46.14 ID:RCB7AhNU0.net
 
 電話の相手はまさかの希ちゃん……この場合、あっちの希ちゃんでした

 いきなりどうしたのかと考える前に、希ちゃんはまくしたてるように言います


希『ごめんな、あんまり長い時間繋いでられんからな、手短に話すね』

花陽「え、ちょっとあの……」


 私の応対に絵里ちゃんと海未ちゃんも身を寄せ、耳を傾けてくる。私は電話をスピーカーモードにしました


希『なかなか大変な状況になってるみたいやね』

花陽「や、やっぱり見てたんですか?」

希『全部やないけどね、ところどころ起点となる部分は把握しとるよ』


 起点……セーブポイントでしたっけ?


絵里「あ、あなたが花陽の言ってた…情報統合思念体?」
 (ホントに…希じゃないの?)

希『あー、はじめましてやねエリチ。でも悪いねんけど、挨拶してる時間も惜しいんよ』

絵里「そう、ごめんなさい。続けて…」
 (情報統合思念体からの接触なんて、聞いた事無いけど…)

希『うちがそっちに行けるようになるための審査はまだ先やから、花陽ちゃん達が問題を解決するわけやけど』


 希ちゃんが私に対して力を貸すことは出来ないと言ってました。もしかして何か制約があるのに無理やり連絡してくれたのでしょうか
 

246: 2016/11/01(火) 15:20:35.18 ID:RCB7AhNU0.net
 
希『時間ないから結論だけ言うなー。魔物とジョーカーの関係、もっかい見直したほうがいいよ』

花陽「関係?え、どういうことですか?」

希『花陽ちゃん、自分がジョーカーとの戦闘に巻き込まれたときの事、思い出してみ。違和感いっぱいあったはずやん?』

絵里「ゴメン、時間ないのならそういう謎かけみたいなのも無しで、答えだけ言ってくれない?」
 (声と口調がまんま希だから調子くるっちゃうわ…)

希『うちの答えはそっちの答えとはまた別なんよ。だから花陽ちゃん達が出した答えが真実』

海未「回りくどい言い方ですね…あなたは花陽に助言するために電話してきたのでしょう?」
 (情報統合思念体…宇宙人と自分達を揶揄しているようですが……え、これ希じゃないのですか?)

希『そうなんやけどな、うちの階級でできる事と、伝える情報を同一にすることはできへんのよ、ゴメンなー』


 正直、よくわかりません…。だけどこうして何かを伝えようとしてくれているという事実は私の心に温かいものを感じさせます


花陽「ありがとう希ちゃん、きっと無理して交信してくれてるんだよね。さっきの言葉、ちゃんと考えてみる」

希『うん、がんばってな。うちの昇進のためにも!』

花陽「はは…それが恩返しになるなら、私がんばります」

絵里「ちょっと待って、今こっちにいる希とあなたはどういう関係なの?」

希『そっちにいる希ちゃんは、そのまま本当の東條希ちゃんでいいんよ。うちはどっちかっていうとことりちゃんの幻想に乗っかったほうやね』

絵里「幻想……再構築に紛れ込んだって言う事?」
 (そんなマネが出来てしまうのが情報統合思念体のなせる業ってことなのかしら…)

希『そうやね、今のその世界で気になる事は全部ことりちゃんに聞いたほうが早いかもね』
 

247: 2016/11/01(火) 15:21:42.30 ID:RCB7AhNU0.net
 
 結局話の大部分は謎のまま、希ちゃんとの電話は終わりました

 だけど意味のない言葉ではないのは確かです。それを私がしっかりと見極め、考えるのが今の私にできること


絵里「さっきの希……でいいか、彼女の言ってた事…わかる?」
 (その状況は記憶を持つ花陽にしか判断できない。でもそこに鍵があるのなら…)

花陽「私達がライブを終えて、打ち上げ会場として用意された教室に移動して…」

海未「その教室がすでにジョーカーの結界の中だった…」
 (手の込んだ事をしてくれます……)


 希ちゃんは言いました。違和感があったと……違和感……?


絵里「私達も考えてみるわ、ゆっくりでいいから状況を正確に話してみて」
 (ジョーカーと魔物の関係……ただの上下関係じゃないというの?)


 絵里ちゃんの言葉に頷き目を閉じます。あの時の状況…感じる違和感というのは…?
 

248: 2016/11/01(火) 15:24:29.52 ID:RCB7AhNU0.net
 
 理事長さんに招待されて、空き教室でμ’sのファンだっていう子達が用意してくれた打ち上げパーティーを楽しむ私達

 みんな用意された料理やおかしに喜んでいました。私もGOHAN-YAさんのご飯をおいしく頂こうとしました


海未「あのご飯に秘密が?」
 (いえ、それ無いでしょう海未…)


 私の言葉を手帳に書き記しながら絵里ちゃんが聞いてくる


絵里「私達はなにをしてたの?」
 (状況的には襲撃の可能性が一番高いところだから、協力者のスズと少し後方に構える…かな)

花陽「絵里ちゃんが今考えた通りだよ。スズさんと二人、離れたところで状況を見守っていたと思う」


 そして私が料理に夢中になっている中、背後にせまる理事長さん…ジョーカーの行動にいち早く気づいたのは…

 にこちゃん、穂乃果ちゃん、ことりちゃん、絵里ちゃん、海未ちゃん

 だけど絵里ちゃんと海未ちゃんは確かもう体が動かないって言ってた…のかな…


絵里「私の正体は最初からバレているみたいだったしね。おそらく行動を共にしている海未の中にスズがいるのも筒抜けだったようね」
 (情報提供者という事でこちらの情報を流しすぎた結果ね…)

花陽「うん。それはジョーカーも言ってた。それで私をかばってにこちゃんが……刺されて……」


 あの光景を思い出す。そして…えっと…穂乃果ちゃんがにこちゃんに駆け寄ろうとしたところで、ジョーカーの目が光って…


花陽「穂乃果ちゃんが動けなくなって、それから次々にジョーカーの目が光って、みんな動けなくなっていって…」


 作戦が上手くいってどこか得意げにあれこれと話すジョーカー。ことりちゃんの想い人が私というのはことりちゃん本人から聞いたとも…
 

249: 2016/11/01(火) 15:29:03.72 ID:RCB7AhNU0.net
 
 そして私はことりちゃんの前に連れていかれ、殺されそうになります。だけどそのピンチを救ったのが無敵のヒーロー

 覚醒したソラとエミーによってジョーカーは一気に劣勢になります。繰り出す攻撃も通用せず、撤退を余儀なくされる

 しかし絵里ちゃんの機転で結界を破壊し、動けるようになった絵里ちゃんとスズさんの協力でジョーカーは瓢箪のような器に吸い込まれました

 そうして動けるようになったみんなにどうやってこの状況を説明しようかと考えていると、私は凛ちゃんに背後から刺されてしまいます

 凛ちゃんが魔物に憑依されているのを知っていたにもかかわらず、ジョーカーを退治したことによる油断でした。そして私は氏んでしまいます

 私の氏がきっかけとなり、ことりちゃんは暴走とも言える再構築をおこなったそうです


花陽「………正直それくらいで、動きの細かい部分は覚えていないです…」

絵里「…………」
 (違和感……おかしい部分……)

海未「…………」
 (ジョーカーはソラという存在を知らなかった…いえ、それは皆同じです……だとすると…)


 ここまでで感じる違和感というのは私にはピンときません。悪い魔法使いがヒーローに退治された…で終わらないのでしょうか?

 と、色々と思案していると、スズさん……ではなく海未ちゃんが口を開きます


海未「あの、違和感…というよりも、疑問に思う部分がいくつかあるのですが…」
 (海未?……スズも、きになりませんか?)

絵里「スズ…じゃなくて海未ね?」
 (わりと簡単に入れ替わりできるものなのかしら?)

海未「はい、正直専門家ではない絵里やスズに対して私の疑問はさして問題にならないのかもしれませんが…」
 (構いませんよ海未。今はどのような情報でも欲しいところです)

絵里「いいわ、話してみて」
 (むしろ専門的視野でしか見れない私達より素人の海未のほが…)


 海未ちゃんが思う疑問を話します。それは私にも、そして絵里ちゃんとスズさんをも驚かせる内容でした

 言われてみれば当たり前…だけど見落としていた私達。海未ちゃんの指摘はこの状況に一縷の望みを見出すのに十分な内容でした
 

256: 2016/11/02(水) 11:48:15.67 ID:DnbFZi7T0.net
 
 -次の日 学校の屋上


絵里「そろそろライブに向けて体調管理と調整をしていくわ」
 (出来は上場ね。ユニット毎の仕上がりもいい感じ…)

凛「今日はもう終わり~?」
 (もっと体動かしたいなー)

穂乃果「はぁ…ふぅ……ふぃ…」
 (ようやくあの夢も見なくなってきたし、ライブは大丈夫かな…)


花陽「…………」

にこ「どうしたの、花陽?」
 (心配事?…ま、なにがあっても姫は私が…)


 にこちゃんの中に、おそらく潜伏していると思われる魔物。ジョーカーとの関連を夕べ海未ちゃんが指摘しました

 そして私達はジョーカー捕獲作戦を決行することにしたのです!

 といっても、私にできることはあまりないので、絵里ちゃん達の無事を祈るばかりです

 今日はこの後、私にできる数少ない事をやりたいと思います


ことり「花陽ちゃ~ん、クッキー作ってみたんだ~、食べて~♪」
 (ぐふふ、特性ことり汁た~っぷりだよ~)

花陽「あ、ありがとう…」


 危ない物ではなさそうなので、観念して頂こうと思います…うぅ…
 

257: 2016/11/02(水) 11:49:51.69 ID:DnbFZi7T0.net
 
 -放課後 穗むら


穂乃果「いらっしゃーい。上で待ってて~」
 (えっと、あのお茶菓子まだあったかなー)

花陽「お邪魔しますー」

海未「お邪魔します」
 (おいしそうな匂いが……スズ、和菓子が好きなのですか?)


 学校帰りに穂乃果ちゃんのお家へお邪魔します。ジョーカー捕獲作戦を成功させるために必要な要素です

 前世の夢に悩まされていた穂乃果ちゃん。ここ数日でそれは随分とましになっているようですが、まだ不完全です


花陽「あ、また漫画増えてる?」

海未「海未や花陽の部屋とはまた違った趣ですね」
 (スズの世界にはこういったものはないのですか?)


 穂乃果ちゃんがお茶を用意してくれているので、先にお部屋にお邪魔します。妹さんは不在かな?


海未「私達の世界には、個人で部屋を持つという習慣がまずないのです」
 (そうなのですか?……集合住宅のようなものですか?)

花陽「それはちょっと違うような…」


 この奇妙なやり取りにもすっかり慣れました。海未ちゃんとスズさん、すっかり仲良くなったようです
 

258: 2016/11/02(水) 11:52:18.77 ID:DnbFZi7T0.net
 
穂乃果「お待たせ、これよかったら食べて」
 (雪穂にあらかた食べられちゃってた…)

花陽「ありがと、穂乃果ちゃん」

海未「ありがとうございます、穂乃果」
 (これはまたおいしそうな……穂乃果のところの和菓子はどれもおいしいですよ)


 スズさんには和菓子が珍しかったのか、とてもおいしそうに食べています

 私も一つ頂きます。おいしいんですよね、ホント…


穂乃果「それで、二人してどうしたの?あ、お茶もどうぞ」
 (ちょっと珍しい組み合わせかも?)

花陽「ありがとう。ちょっと穂乃果ちゃんに大事なお話しがあってね…」

穂乃果「私に?なんだろ、緊張するなぁ…」
 (ライブの事かな…はっ、まさか私が振付今だミスってるのがバレたとか!?)


 ミスってるんだ……それは後日ちゃんと修正してもらうとして、今は穂乃果ちゃん自身の事を…

 海未ちゃんの門限などであまり時間かけてもあれなので、サクっと本題にはいりたいと思います


花陽「穂乃果ちゃんが最近見ている夢の話なんだけど…ね」

穂乃果「え……?」
 (夢…夢っていうと…花陽ちゃんがでてくる……あの夢?)


 頂いたお茶をテーブルに置いて、穂乃果ちゃんときちんと対峙します

 その雰囲気から真面目な内容だと伝わったのか、穂乃果ちゃんも私に向き直ります

 にこちゃんと共に私を守ってくれた穂乃果ちゃん。その力を、もう少しだけ貸して欲しいのです
 

花陽「穂乃果ちゃん……ううん、エミーさん。私の話を聞いてください」
 

259: 2016/11/02(水) 11:53:29.64 ID:DnbFZi7T0.net
 
 にこちゃんもそうですが、前世の記憶として持っているソラとエミーの物語は、絵本です

 絵本なのでソラにもエミーにも決まった性格付けはなく、台詞もほとんどありません


穂乃果「あー、あの夢…姫だったんだね、思い出したよー!」
 (ってことはあれソラか…ふむ)


 なのでソラもエミーも、基本にこちゃんと穂乃果ちゃんです。感覚的には子供の頃の思い出が蘇った感じでしょうか?

 私に名前を呼ばれると、穂乃果ちゃんは少し呆けたあとにハっと顔を上げ、すべてを思い出しました


穂乃果「ソラ……にこちゃんは?」
 (私思い出したよ、ソラ……)

花陽「そのことについて話があるの。できれば力を貸して欲しいです」


 穂乃果ちゃんが覚醒しても、無敵のヒーローは生まれません。にこちゃんの精神に蓋をされているからです

 そしてソラとエミーが力を発揮するには、明確な敵が必要になります。魔法使いの立場にある敵が…
 

260: 2016/11/02(水) 11:54:36.87 ID:DnbFZi7T0.net
 
 -夜。花陽の部屋


花陽「はう~~~」ボフッ


 お風呂上りにそのまま布団に倒れこむと、すぐに心地よい睡魔がやってきます

 今日で私がやれることはやりました。あとは…本番を迎えるだけです。ライブも勿論ですが…その前に


 prrrr…


花陽「ん……誰……?」ゴソゴソ


 こんな時間に電話…もしかしてまた…?


花陽「って、絵里ちゃんか…」ピッ

絵里『あ、花陽?ごめんなさいね、こんな時間に』

花陽「ううん、大丈夫だよ。どうしたの絵里ちゃん?」

絵里『穂乃果のほうはどう?うまくいったの?』

花陽「あれ、海未ちゃんから連絡いってないかな?」

絵里『海未からLINEはきたけど、無事終了って、淡泊すぎて…』


 海未ちゃんらしい…


花陽「大丈夫だったよ。穂乃果ちゃんも…海未ちゃんも…」

絵里『そう……』


 絵里ちゃんのこの内容もLINEやメールで済む話だと思うけど、絵里ちゃんはまだ何か言い淀んでいます
 

261: 2016/11/02(水) 11:56:09.13 ID:DnbFZi7T0.net
 
絵里『その、ホントは全部終わってから、直接言いたいところなのだけど…』

花陽「ん?」

絵里『って、心の声…聞こえてるんだっけ?』

花陽「電話越しじゃ無理みたい…」

絵里『そう…じゃああらためてお礼を言わせて花陽』

花陽「急に、どうしたの?」

絵里『ん……今日ね、理事長に動きがあったの』


 絵里ちゃんがここでだす理事長というのはジョーカーの事。動きがあったというのは…


絵里『使われていない空き教室でなにかしていたそうなの。警戒監視レベルだから無理に行動は確認させてないけれど…』

花陽「それは…たぶん、結界の準備とかですか?」

絵里『こっちが調べたっていう痕跡を残すのも危険だから、作戦決行日の朝に確認するわ。でも、ほぼ花陽の言う通りだった』

花陽「お役に立てたのなら、嬉しいです」

絵里『情けない話だけどね…花陽に言われるまで、ジョーカーの所在にμ’sのメンバー以外考えていなかったの…』

花陽「魔物もμ’sに潜伏してるっていう前情報があったし、しょうがないよ…」


 私はそう思います。それらもすべてジョーカーがもたらした情報で、絵里ちゃん達に先入観を植え付けるには十分でした

 だけど絵里ちゃんはそれではダメなのだといいます。私のような普通の考えとはまた違う…責任のある立場だからこその言葉です
 

262: 2016/11/02(水) 11:57:23.14 ID:DnbFZi7T0.net
 
絵里『正直に言うとね、私は…ことりが特S級になったという事を聞いて、自身に課せられた任務の重要性を再認識した』

花陽「うん……」

絵里『初めてなのよ…こんな任務。むしろ定時連絡だけで、私はみんなとの高校生活を楽しんでいた…』

花陽「絵里ちゃん……」

絵里『だから、ちょっと怖かったの……私にできるのかなって…』


 絵里ちゃんは私達の知らないところでたくさん苦労して、努力もして、任務とかそういうの以外でも一生懸命で、

 そんな絵里ちゃんだから、私達は一緒にスクールアイドルをやってこれたのだと思います。だけど絵里ちゃんもやっぱり女の子で…


絵里『ただの愚痴なのに…言ってもどうしようもないのもわかってるのに……でも…』

花陽「うん…いいよ……」

絵里『失敗したくなかったの…だから、ホントにありがとう花陽…』

花陽「こちらこそです」


 まだ作戦は終わってません。だけど絵里ちゃんの提案したこの作戦はきっとうまくいくと思います


絵里『それだけちゃんと言葉で言いたかったの、それじゃ…』

花陽「うん、おやすみ…」


 きっと作戦を成功させて、みんなでライブも成功させようね…
 

263: 2016/11/02(水) 11:59:25.60 ID:DnbFZi7T0.net
 
 -作戦決行日 秋季文学祭前日


 明日はいよいよ文化祭ということで、学校中が準備の最終段階に追われています

 私達μ’sは明日のライブに集中するためにクラスの出し物には基本参加はしていませんが、今日は手が空いてます

 明日にそなえて今日は練習も無いからなのですが、だから雑用でも手伝うよという私達の申し出はやんわりと断られました


凛「お手伝いできないのっていうのもなんだか気が引けちゃうね…」
 (買い出しくらいならできるのにー)

真姫「ちゃんと休んで体調を完璧にしろっていう事でしょ」
 (体調なんて、この前作った新薬で…)

花陽「ありがたい事なんだけど、ちょっと居場所に困るというか…ね」


 真姫ちゃんがまた怪しい事考えてるけど、昔からこうなのかな?

 そういえば全部解決したら、ことりちゃんに真姫ちゃんの印象を聞いてってお願いされていました

 それは真姫ちゃんも少なからずことりちゃんによる再構築の影響を受けたという事なのかな?


真姫「ん、どうしたの花陽?」
 (私の顔をジロジロと……照れるわね…)

花陽「ん、あ…いえ、なんでも…」

凛「ウロウロしてても邪魔になっちゃうし、どこかいこっか?」
 (穂乃果ちゃん達は生徒会だって言ってたし、どこか遊べるとこないかなー)


 時計を見るとお昼になろうかという頃合い。絵里ちゃんの作戦決行にはまだあります

 どこかでお昼でもと話している私達の前に、彼女はやってきました
 

264: 2016/11/02(水) 12:00:43.20 ID:DnbFZi7T0.net
 
凛「あ、にこちゃん、希ちゃーん」
 (二人も暇そう?)

希「あれ、みんなどうしたん?」
 (私達と同じような理由かな?)

真姫「教室から追い出されたのよ」
 (他も同じってワケね…)

花陽「…………」


にこ「どこいってもみんな忙しそうね、まいったわ」


 にこちゃんが希ちゃんと一緒に……おそらく私達と同じような理由で教室から追い出されたと思います

 落ち着いている自分に少し驚きます。んー…本当なら今私はどういう感情を抱いていたのでしょうか?


希「エリチは用事があるってどっかいくし、しょうがないからにこっちとどっかでお昼食べようかってね」
 (生徒会関連は完全に引き継ぎしたはずだし、用事ってなんだろ…まあすぐ戻ってくるか)

にこ「しょうがないってなによ!」

凛「あー、じゃあみんなでいくにゃ~」
 (ラーメン!)

真姫「別にいいけど?」クルクル
 (ん、にこちゃん…少し疲れが見える顔ね…)

花陽「……………」
 

265: 2016/11/02(水) 12:03:34.63 ID:DnbFZi7T0.net
 
 何も変わらない…見た目も、話し方も…性格も…私の良く知るにこちゃんです

 でも……スズさんが言ってた、魔物が憑依してのっとるのは、体ではなくて精神…思考そのもの…

 普段の行動に違いはない……だけどその目的のために、突然人が変わったように豹変する…

 凛ちゃんもそうでした……だから、油断はしません


にこ「ほら、花陽もいくわよ」

花陽「うん……」


 このままライブ当日を迎え、終了後に彼女はことりちゃんの前で私を殺そうとする

 それが最初に与えられた任務…というか、意識だからだそうです。ジョーカーの意思とか関係なく…

 確実な方法を取れるなら彼女はその方法を優先する。それは、対象である私自身に憑依する事…

 彼女は……私を狙っています

 スズさんから護身用にと、ある道具を受け取りました。念のため使えるようにするべきかな…


希「じゃあ屋上いこっかー」
 (なんかあそこホントに私達専用になっちゃってるのよねぇ)

にこ「寒いんじゃないの?」

真姫「中庭も資材が置いてあるから無理だし、仕方ないんじゃない?」
 (ふふ、ほっカイロは万全よ)


 絵里ちゃんのジョーカー捕獲作戦に、にこちゃんの問題は入っていません

 なぜなら作戦時間前ににこちゃんは先生に呼び出されて職員室に隔離されるからです

 でも……捕まえられるなら……私にも……役に立てる何かが…
 

266: 2016/11/02(水) 12:05:10.13 ID:DnbFZi7T0.net
 
 購買でパンやおにぎりを買った私達は屋上でご飯を食べます

 魔物は他に誰かがいると襲ってくることはないとスズさんは言ってました。問題は起こさないと、

 それはライブ成功時のエネルギーを回収するという目的があるからです。律儀な思考してます

 でも、一度私に憑依しようとして失敗してるのは、どう考えているのかな。疲弊してたって事ですが…


凛「かよちん、どうかしたの?」
 (おにぎり食べる手が止まるなんて…一大事?)

花陽「ううん、明日本番だなって思ったら緊張してきて…」

にこ「今から何言ってんのよ!」ガバッ

花陽「ぴやっ!?」ビク


 に、にこちゃんが私の首に腕を…まわし……だ、大丈夫ですよね!?


にこ「あ~、やっぱあったかいわねー花陽は」プニプニ

花陽「あうあう…うぅうぅ…」ドキドキ

凛「あーにこちゃんズルイにゃ~、凛もっ!」バッサ
 (かよちんは昔からあったかいんだよね~)

花陽「ぴひゃあ~~!」

希「なになに、楽しそうやん~?」ドサッ
 (みんなかわいいな~ほんと)

真姫「…………」クルクル
 (まざりたい……)


 あうっ、希ちゃん重……動けない…大丈夫!?これ大丈夫ですか!!?

 絵里ちゃんの部下さん、どっかで見てくれてるんですよね?ああでも零距離憑依とかきたら危ないですよ!?
 

267: 2016/11/02(水) 12:07:06.04 ID:DnbFZi7T0.net
 
 結果的に取り越し苦労でした……はぁ、一気に疲れましたー…

 でもそうも言ってられない時間がきたのも確かです


凛「にこちゃんさっき先生に呼ばれたのなんだったの?」
 (いきなりだったけど…)

にこ「なんか明日のライブの事とか、一応アイドル研究部としての参加だから、書類とか書けってさ」

希「部長やし、仕方ないね。これからいくん?」
 (たまーに部長っての忘れちゃうけど)

にこ「ちょっと職員室いってくるわ」


 このそれっぽい理由も絵里ちゃんの作戦です。でっちあげです

 だけどそれらをあーだこーだと言い、結果職員室に拘束するのです

 つまり、絵里ちゃん達がジョーカー捕獲作戦を実行する時がきたのです

 場所は理事長室。作戦所要時間は10分だそうです


凛「凛達はどうしよっか?」
 (一日何もしないっていうのも逆に変な感じ…)

希「生徒会にでも行ってみる?」
 (まだ仕事してるのかな?)

真姫「邪魔になるんじゃないの?」
 (すごく忙しそうなのは知ってるけど…)

希「そこはそれ、元副会長として手伝えることあるんやないかなって」
 (まぁほとんど予定通りに進んでそうだったけどね)


 私も希ちゃんの意見に賛成し、私達はことりちゃんのいる生徒会室に行くことになりました

 まもなく作戦が開始されます……どうか…どうか無事にすみますように…!
 

277: 2016/11/04(金) 14:30:45.77 ID:/x+TUz3R0.net
 
ことり「あれ、みんなどうしたのー?」
 (今日は練習もお休みだったはずだけど…?)

穂乃果「もしかして手伝いにきてくれたの?」
 (さっきの連絡だと作戦開始の時間…穂乃果も……)


 生徒会室ではことりちゃんと穂乃果ちゃんがたくさんの資料を前に仕事をしているところでした

 今回の作戦で、穂乃果ちゃんもある大事な役目を担っています。そのため、あと数分もすると行動を開始する予定のはずです


希「あら、ほんまに仕事してたんやね。手伝うよー」
 (場合によっては邪魔してたの…かな?)

にこ「あれ、海未はどこいったの?」

ことり「海未ちゃんは今他の出店予定のクラスへ確認業務に行ってくれてるよ」
 (確か全部回ったとおもったんだけど、まだ抜けてるとこあったんだよねぇ…)


 きっと今頃絵里ちゃんと二人で理事長室です


凛「ことりちゃん、凛にも何か手伝えることある~?」
 (難しい書類整理はパスするけどっ)

ことり「ありがとう凛ちゃん。と言っても、あとすることは書類の判を確認してファイルするだけなんだけどね」
 (これも確か全部終わらせたと思ってたんだけどなぁ…不思議)


 確認作業は簡単で、ファイル作業も難しくありません。凛ちゃんと真姫ちゃんも手伝い始めたのですぐに終わりそうです

 どれだけ大変な雑務も、助けてくれる仲間がいれば簡単に済むのです。そんな仲間の関係を指摘したのが海未ちゃんでした
 

278: 2016/11/04(金) 14:32:08.32 ID:/x+TUz3R0.net
 
 私の部屋で希ちゃんからの電話をきっかけに始まった違和感探し。それは海未ちゃんの一言からはじまりました

 少し回想です


海未「どうしてジョーカーは、仲間に助けを求めなかったのでしょうか?」
 (ん………?)

絵里「え……?」
 (仲間……?)

花陽「…………んー?」

海未「話を聞いただけのイメージなので細かいところはわかりませんが、ジョーカーは穂乃果達によって劣勢になった…」
 (ふむ……)


 私の見ていた記憶でも確かにジョーカーはことりちゃんを人質に取ろうとさえしていたほどに追い詰められていました

 だけど仲間……というか魔物が憑依した凛ちゃんは結界かなにかで動けなくて……あれ?


海未「私なら追い詰められた場合、仲間に助けてもらうという考えになるのですが、おかしいでしょうか?」
 (いえ……それは……)

花陽「凛ちゃんも拘束されて、動けなかった……でも、どうして仲間まで?」

絵里「そうか……低級を潜り込ませる意味、危険性がどうにも引っかかっていたけど、わかったわ」
 (おそらくジョーカーは単独…)

海未「え……」
 (なるほど……)

絵里「あの結界はあくまでジョーカーの術を強化するためのもの。術自体はジョーカーが行使しているって話よね」
 (おそらく魔眼のような類か…)

海未「私と絵里が最初に動けなくされていたのは、私達がジョーカーと敵対する存在だとはじめから確定していたからですね」
 (情報を提供し、作戦内容と称して絵里と行動を共にする私の存在もすぐに確認されていたのでしょう)


 つまり……ええっと、どういうことでしょうか?
 

279: 2016/11/04(金) 14:33:16.47 ID:/x+TUz3R0.net
 
絵里「つまり、魔物はあくまで適当に潜入させて自分の邪魔にならない範囲でかく乱させる目的…いえ、もっと言うと…」
 (それなら低級を使った理由もわかる…)

海未「捨て駒…ということですね…」
 (あれ、スズもう交代ですか?…ごめんなさい海未)

花陽「捨て駒……」

絵里「適当に放置しておいて、うまくかき乱せれば良し、例え失敗しても足がつかないようにしていたでしょうね」
 (おそらく魔物本人はジョーカーの顔すら知らなかった可能性もあるわね)

海未「それと、これは花陽の話を聞いて、今海未の話とを合わせた私の意見ですが…」
 (捨て駒などと…卑劣な…!) 

花陽「………」

海未「魔物は、作戦の内容をライブ終了後にことりの前で花陽を頃す。これしか知らされていなかったと思われます」
 (ジョーカーの話を聞いてその目的対象を認識し、活動を開始した…)

絵里「そうね。ジョーカーが捕らえられた後にまだ作戦を実行している事と、エネルギー回収という目的を達成せずに世界が再構築されているという話だというのならその線が濃厚ね…となると…」
 (ジョーカーと魔物……)

海未「単独でやりきる自信があるからこその周到な準備だったのでしょう。だからジョーカーは凛が憑依されているのを知らなかった…」
 (あるいわ、作戦上…すでに問題にすらしていなかったかもしれません)


 芋づる式に話が繋がっていくようですが、少し置いて行かれてます…
 

280: 2016/11/04(金) 14:34:41.25 ID:/x+TUz3R0.net
 
絵里「だとしたら状況はまだこちらが有利になるわね」
 (いくつか確認する必要があるけれど…)

海未「はい、魔物がジョーカーにとってただのかく乱目的の捨て駒という認識なのだとしたら、両者に繋がりはない」
 (それは、にこにも通じる話なのでしょうか…?)

絵里「にこが憑依されたという事で、こちらは色々と情報が洩れる事を危険視していたけど…そうね…」
 (結界に使われた空き教室…ここかしらね)

海未「絵里、すぐに理事長への監視を強化してください。おそらく近いうちに行動を起こすかもしれません」
 (行動?)

絵里「ええ、わかってるわ。ジョーカーが得意気に話したという内容だと、ターゲットが花陽だというのはライブより数日前に判明しているはず」
 (ことりが毎日のように話して聞かせていたって事よね…)

海未「ジョーカーは私達が魔物相手に四苦八苦している間に、悠々と結界の準備をするはずです…」
 (再構築前と違う事がすでに起きているという事ですが、ジョーカー自身に大きな変化がなければ…)

絵里「花陽がやり直しのためにやってきた今でもそうだというのなら確定ね。すぐに手配するわ」
 (逆にこちらから奇襲をかけられるという事にもなるわね……考えなくちゃ…)

花陽「……………」


 もう途中から話に割って入る事もなく、二人のやり取りを聞いているだけですが、状況はいい流れ?


海未「絵里、ジョーカーを捕獲するうえでの作戦の提案があります」
 (スズ、もう何か案が?……海未にも手伝って欲しいのです)

絵里「なにかいい作戦が?」
 (それは興味深いわね…)


 スズさんは提案します。知っている事と、知らない事、知っているという事が知られている事について

 正直ややこしい話ですが、スズさんはその作戦の決定打をこう言いました…


海未「ずばり、不意打ちです」
 (えー……)
 

281: 2016/11/04(金) 14:36:02.49 ID:/x+TUz3R0.net
 
 回想終わり。最終的に絵里ちゃんはスズさんの作戦を採用します。そして、海未ちゃん、穂乃果ちゃんも…。

 時計を確認すると作戦開始からもうじき5分…そろそろ……


穂乃果「ごめん、ちょっとおトイレいってくるねー」ガタ
 (ちょっと緊張してきた…)

ことり「はーい」
 (花陽ちゃん可愛い…えへへ…)

花陽「…………」


 気がつくと私の隣にまでせまっていたことりちゃんが笑顔で穂乃果ちゃんを見送る

 私がここにいるのは、ことりちゃんをここから動かさないようにするためという意味もあるのですが、

 単純に作戦行動においては私は邪魔にしかなりません。ここまで慣れない事だらけの非現実な世界でがんばってきたけど…


ことり「ん……どうしたの花陽ちゃん?」
 (暗い顔……悩み事?)

花陽「ご、ごめん…なんでもないよ…」


 つい顔にでていたのか、隣にいることりちゃんに心配をかけてしまいました

 わかっています…私が行ったところで何の役にも立ちません。むしろ人質にされちゃったりと、マイナス要素しかない

 なのに……感じるこのモヤモヤしたものは……


ことり「……………」
 (花陽ちゃん……苦しそう……)

花陽「え………?」


 まだ私を心配そうに見つめることりちゃんの声が響く…

 私が…苦しそうだと、ことりちゃんは言います
 

282: 2016/11/04(金) 14:39:00.06 ID:/x+TUz3R0.net
 
凛「希ちゃん~、残り少し競争するにゃー!」
 (いつもこれくらいなら生徒会も楽なのにねー)

希「ふふん、負けへんよー?」
 (といってもこっちもう終わるんだけどねぇ)

真姫「凛、仕事で遊ばないの!」
 (どんなときでもマイペースなんだから…)


花陽「……………」


 凛ちゃん達が賑やかにしているその横で、私とことりちゃんの間には沈黙が続きます

 なんでもないよって言った言葉はことりちゃんには通じませんでした

 私が誤魔化した以上、ことりちゃんは深く追及してくることはありません。彼女はそういう人です


ことり「…………」
 (ダメ…だな私…かけてあげたい言葉がでてこない……こんなに…花陽ちゃんは…)


 ことりちゃんを悩ませているのは私……それを解消してあげられるのも私……

 私が苦しそうだって言いました。それは私自身もどこか感じています

 大事な時に……わかっていても、感じるのです


花陽「んんっ!」ガタ

ことり「は、花陽ちゃん?」
 (急に立ち上がって…どうしたのかな…)


 海未ちゃんも穂乃果も……普通の人なのにがんばってるんです!

 仲間はずれは悔しくもあり、私の我儘でしかないもので…だけど私にも出来る事があります、だから!
 

283: 2016/11/04(金) 15:58:25.30 ID:/x+TUz3R0.net
謎のNGワードで規制に…

284: 2016/11/04(金) 16:04:54.13 ID:/x+TUz3R0.net
 
花陽「ちょっといいかな…」

ことり「え?ど、どうしたのいきなり…」
 (すごく真剣な顔…ご飯やさんの黄金米を前にしたときのよう…)

花陽「じつはことりちゃんにプレゼントがあるの」

ことり「プレゼント?」
 (え、なに?…え?)

花陽「それをちょっと用意してくるので、ここで待っていてくれないかな?」

ことり「う、うん…それはいいけど、どうして急に…」
 (悩んでそうだったのはそれが原因なの…?)

花陽「そこは内緒です。ではすぐに戻るので、楽しみに待っていてください」ニコッ

ことり「はっ……はい……!」ドキ
 (か、可愛い~)


 正直、何事もなく終わっていればそれでいいです。そう願います

 だけどもしもそうじゃない時、何もしなかったなんて後悔したくありません
 

285: 2016/11/04(金) 16:06:36.95 ID:/x+TUz3R0.net
 
 理事長室に向かう廊下に、おそらく絵里ちゃんの部下だと思われる先生が道を塞いでいました

 短い時間であろうと、誰一人近づけないようにしているのと、万が一の状況に突入できるためだそうです


花陽「あの………」


 私はそのおひとりに声をかけます。いつもお世話になっていた先生がまさかって気持ちもありますが、今はいいです

 案の定、私が言葉をかけようとする前に先生……いえ、絵里ちゃんの部下は私に下がるよう言います

 だけど単なる我儘でここに来たわけじゃありません。この人も絵里ちゃんから私の立場を聞いているはずです


花陽「これ、大事なもの…届けないといけないんです!」


 差し出したのは私がスズさんにもらった護身用の魔封箪という、瓢箪のお手頃サイズバージョン

 もしもにこちゃんの中の魔物が私に憑依してこようとしたらこれの蓋をはずすことで吸引できるもの

 だけど状況により準備する前に襲われたら意味がないのと、タイミングの問題もあるので、あくまで護身用です

 これを理由になんとかと思いましたが、部下の先生はそれでも認められないと言います


花陽「通してください、お願いします!」


 私が強引に横を通り過ぎようとしてもあっさりと捕まえられてしまいます

 むぅ……どうしよう……すぐそこに理事長室のドアが見えるのに…あの中で今…


花陽「そうだ…集中すれば……」


 目を閉じ、絵里ちゃんと海未ちゃんの声を聞けるように意識を集中させます
 

286: 2016/11/04(金) 16:08:23.89 ID:/x+TUz3R0.net
 
(まいったわね…よりにもよって信号弾のみが破壊されるなんて…!)

(絵里……どうするつもりですか?)


花陽「えっ……?」


 聞こえました。絵里ちゃんと海未ちゃんの声。だけど…


花陽「あの、今絵里ちゃんが信号弾を破壊されたって…ま、まずいんじゃないですか?」


 私のその言葉に先生は初めて顔色を変えました。知っているんですね、私が絵里ちゃん達の声を聞くことができるという事を…


(誘導は十分なのに、穂乃果に知らせる手段が……!)

(このままでは穂乃果が……)

 
 穂乃果ちゃん……そうだ、今回の作戦は不意打ちです。そのタイミングが来ているというのに行動に移せない穂乃果ちゃん

 私はもっと意識を強く……穂乃果ちゃんがいる場所……理事長室の外…屋上に向けます


(まだなのかな…?結界で中の様子が…)


 います、穂乃果ちゃん。だったら……!


花陽「考えがあります、中に入れないのなら扉の前まででいいので、お願いします、急いで!!」
 

287: 2016/11/04(金) 16:10:14.64 ID:/x+TUz3R0.net
 
 状況が良くない流れだというのを理解してくれたのか、先生は私に付き従うようについてきます

 だけど今はそういう事よりも急がないといけません。私は考えます……

 理事長室…ジョーカーがいるのはいつも理事長さんが座っている椅子のあたり…穂乃果ちゃんの突入場所はその後方の窓

 屋上からロープで下降し、一気に窓を破って背後からの不意打ちです。絵里ちゃん達はそのための位置取りを念頭に行動します

 つまりジョーカーの意識を自分達に向け、背後が窓になるような位置取る…それはこの扉のちょうど向こう側

 扉には結界が張ってあるから触らないようにと言われたので、ゆっくり近づき私は声をかけます。大きすぎず、小さすぎず…


花陽「絵里ちゃん、海未ちゃん、聞こえる?聞こえていたら心で教えて」

(え、なに花陽?どうして!?)

(き、聞こえます花陽!)

花陽「ごめん、やっぱり私心配で…でも、来てよかった…」

(そこにいると危ないわ!いまはまだジョーカーの攻撃に耐えているけど、いつここが爆発するかわからないのよ!?)

(そうです花陽、あなたは逃げて…)

花陽「海未ちゃんだって危険を承知でがんばってるんです、それに考えもあります」

(なにをしようっていうの!?)


 攻撃に見せかけた信号弾からでる合図を屋上の外壁沿いから下の窓を注視している穂乃果ちゃん

 その合図を窓からこぼれ出るのを待ってる穂乃果ちゃんに教えてあげるの


花陽「こっちで携帯から穂乃果ちゃんに突入許可をだすから、良ければ言って、穂乃果ちゃんのカウントダウンも知らせられる」

(そうか、私達じゃ携帯なんて弄ってたら即警戒されるけど、外の花陽なら……)

(いい考えです、花陽!)


 そうと決まれば急ぎです!
 

288: 2016/11/04(金) 16:11:31.74 ID:/x+TUz3R0.net
 
花陽「もしもし穂乃果ちゃん、緊急事態です!」

穂乃果『作戦中にかけてくるから何かあったんだろうなってのはわかったよ、それで?』

花陽「絵里ちゃんの信号弾が破壊されて使えなくなったの、でも誘導はうまくいってるからタイミングさえ合わせられたらいけるって」

穂乃果『あわわ、そんな事に…じれったいからそろそろ突入しようかって考えてたよ』

花陽「絵里ちゃん、穂乃果ちゃんも準備オッケーみたいだよ、どう?」

(いいわ、じゃあ穂乃果のカウントダウン10でスタートするように言って、合わせる!)

花陽「穂乃果ちゃんのタイミング、カウントダウン10でスタートしてって!」

穂乃果『わ、わかったけどカウントのタイミングうまくいくかな…』

花陽「そこは声に出さないで、心で念じるようにお願い、私がひろうから」

穂乃果『おーそっか、花陽ちゃんそういう特技あるって言ってたね。了解!』

花陽「絵里ちゃん、海未ちゃん、穂乃果ちゃんが行動開始するよ」

(了解…海未、カウント3で私が前にでるから、後ろについてなさい)

(わかりました!)


(聞こえてるのかなこれ、じゃあ行くからね!カウント~~スタート!!)


花陽「カウント…スタート!」
 

289: 2016/11/04(金) 16:13:08.39 ID:/x+TUz3R0.net
 
 今回の作戦を立案したスズさんの申し出。絵里ちゃんは最初大反対でした

 それもそのはず、普通の人間である海未ちゃんと穂乃果ちゃんに危険があるからです

 それよりも、ジョーカーと繋がりのないにこちゃんに対して私を使った囮作戦も考えられます

 だけど、繋がりがないという根拠はあって、確率的にもすごく高いけど、そうじゃなかった場合

 もしくは魔物に何かあったというのをジョーカーに知られた場合と、考えるとキリがないです

 だからスズさんのこの作戦は、この対象二人を分断できている状況なら繋がり以前に決行できるものでした

 個人的ににこちゃんから魔物を取り除けたのならジョーカーも楽勝ですよ!って言いたいところでしたが我慢しました

 取り除けたらを前提に作戦を立てるわけにはいきません


 この作戦で、一番危険なのは海未ちゃんです。だけどスズさんは言いました


海未「海未もかなり武道の達人と見受けました、だからこその作戦です」


 この達人というのが海未ちゃん本来培ってきた鍛錬によるものなのか、ことりちゃんのイメージでそうなっているのかはわかりません

 だけどスズさんは続けて言います


海未「私と絵里を敵と認識しているジョーカーにあえて二人で立つことに意味があります」


 ジョーカーは知っています。絵里ちゃんと海未ちゃんの中のスズさんが敵であるという事を…

 だけどジョーカーもスズさんも、互いに憑依した人間の中の存在は感知できません。ジョーカーが知っているのは情報が露呈していたからです

 だからと、スズさんは言いました…
 

290: 2016/11/04(金) 16:14:02.57 ID:/x+TUz3R0.net
 
(不意打ち作戦開始、10…9…8…7…)


花陽「6…5…4…3……」

(行くわよ海未!)

(はい!!)


 理事長室の中で動きがありました。結界というもののせいか、音は聞こえてきますが爆音ってほどではないです


花陽「2…1……0!!」


 だけどカウントが0になると同時に……


  …ギキイイイイイイイイイイイイインンンン!!!


花陽「あうっ!?」ビクッ!


 耳を切り裂くかと思うような金属音が響きます。これは一度聞いたことのある音でした。大きさが全然違うけど

 結界を切り裂いた音です。穂乃果ちゃんが……いえ、


 あの作戦が決まった日から、ずっと穂乃果ちゃんの中にいたスズさんに手によって
 

291: 2016/11/04(金) 16:15:56.49 ID:/x+TUz3R0.net
 
 少しの静寂の後、私の脳裏に響いてくる声…


(ハラショー!!やっぱりスズは隠し持っていたようね!すごい力だわ!)

(お、終わったのですか…?)

(こ、怖かったー…ふふ、ご協力感謝しますよ、穂乃果)


花陽「は…ふひ~~……」ペタ


 どうやら作戦はうまくいったようです。スズさんが自信を持っていた言葉が証明されました

 一度不意打ちという状況で結界の罠にかかり動けなくなったスズさん。その話を私から聞くと、少し不満げでした


海未「そんな姑息な手に……まともにやれば後れを取る事などないというのに…」


 ジョーカーと同じ高エネルギー体として絵里ちゃん達に観測されていたスズさんですが、その実力は本物でした

 確実な方法という事で不意打ち作戦を持ち出しましたけど、まともにぶつかってもよかったのではないでしょうか?

 と、すぐこういう短絡的な考えをしているようではダメですとも言ってました…なるほどです


花陽「とにかく、無事に終わってなによりです」


にこ「そう、よくわからないけど良かったわね」


 へ……?
 

304: 2016/11/07(月) 18:33:34.54 ID:+ourTQtB0.net
 
花陽「に…にこちゃん…?」


 あれ、どうしてにこちゃんがここに…職員室にいるんじゃ…?


にこ「職員室の用事が終わったから部室いったのに誰もいないし、みんななにしてんの?」

花陽「え、あ…その…生徒会の仕事を手伝うのにみんな生徒会室に……」

にこ「そうなんだ。ところでさっきこっちからすごい音しなかった?」

花陽「そうだね……なんの音だろうね……」ズリズリ

にこ「なんでそんな後ずさりしてるわけ?」


 作戦所要時間は…10分……アクシデントがあったせいでそれはとうに過ぎています

 ここにいた先生は……って、離れたところで電話してる?

 え、絵里ちゃん、海未ちゃん!!


(コレが向こうの術式か…興味深いわ…)

(大丈夫ということですが、心配です…高エネルギー体専用の解魂術…)

(ドキドキする……大丈夫ですよ、理事長からジョーカーを引き出します)


 と、取り込み中!?私の事忘れちゃってます!? せ、先生…!


花陽「あ、あの先っ…」

にこ「ねえ花陽」ズイ


 は、速…って近い!にこちゃん、近い…!
 

305: 2016/11/07(月) 18:34:08.36 ID:+ourTQtB0.net
 
にこ「なにをそんなに動揺してるのよ?」

花陽「に、にこちゃんこそ…なに…?」


 いつものにこちゃんが私に近寄る。心の声がまったく響かない…やっぱりこのにこちゃんは…魔物です

 先生が電話をしながらこちらをチラチラ見ている。そうです、私に憑依しようと靄を体から出したらすぐにバレるんですよ?


(っ!?この反応は!!)

(魔物の反応がすぐ近くに!)


 聞こえてくる理事長室からの声。魔物…って、え、どこ?目の前のにこちゃんは何も変わらないのに…って!


にこ「花陽の体、居心地いいのかしら?」クスッ

花陽「!!!?」


 おそらく少し離れた背後から見ている先生にはコレは見えない。にこちゃんの足元から地を這うようにして私にゆっくりと靄が…!


絵里「花陽!!」バン
 (スズはしばらく術式のため動けない…なら私が…!)


 絵里ちゃんが理事長室の扉を吹き飛ばす勢いで飛び出してきます。それを見た先生も何事かとこちらに向かってきます

 だけど、もう遅いです


にこ「…………」フラッ

花陽「…………」


 にこちゃんが意識を失い、私にもたれ掛かるようにして倒れこみます。憑依されていたせいで少し衰弱していると思います

 魔物はにこちゃんの体から抜け出したのです
 

306: 2016/11/07(月) 18:34:48.14 ID:+ourTQtB0.net
 
絵里「花陽、大丈夫?魔物は!?」
 (にこから反応がない、でも周囲にもない…まさか…)

花陽「大丈夫だよ絵里ちゃん…魔物は、ここ…」


 私は後ずさりながらも後ろでに隠し持っていたそれを絵里ちゃんに差し出します


絵里「これは、スズの用意した護身用の…?」
 (ということは、魔物は…花陽が?)

花陽「ちょっと驚いたけど、冷静に対処できたのも、無駄な恐怖心がないおかげだったのかな…えへ」


 氏角だった足元からの奇襲はいい考えだったんだろうけど、絵里ちゃん達が存在を知らせてくれた

 私はすぐに瓢箪の蓋をはずして背中で構えていたけど、どうやら効果あったみたいです

 中でなにやらカタカタと震えている瓢箪の蓋をキュっと閉じる。これで……


花陽「捕まえちゃいました」

絵里「まったく……ハラショーね」
 (残っていた問題も解決…あとは…)


 絵里ちゃんが倒れているにこちゃんに駆け寄り声をかけます。だけどにこちゃんは反応しません

 やはりそのままでは衰弱による入院が必要かもしれないとのこと…だけどこれもどうにかなります
 

307: 2016/11/07(月) 18:35:50.10 ID:+ourTQtB0.net
 
穂乃果「少しの間でしたが、ご協力感謝します、穂乃果」スッ
 (こちらこそ、色々お世話になったよ、ありがとう)


 理事長さんから無事高エネルギー体であるジョーカーを引き剥がし、理事長さんは病院に運ばれました

 そして今、穂乃果ちゃんに憑依していたスズさんが……


海未「勝手な話だと思っていたのですが…」
 (いざ離れると感じる寂しさは…疑う余地もありませんね)


 元の宿主、海未ちゃんの体に憑依します。するとそこには精神が解放されたエミーがいます

 ソラとエミー、二人が揃えば……


にこ「ん、寝てたのね……」ヒョコ
 (意識がボーっとしてるけど、これは…エミー?)

絵里「ほんとに回復したわ。二人が揃えば無敵って、どういう理屈なのかしら…」
 (まあ、考えても無駄なのでしょうね…)


 理事長室に寝かされていたにこちゃんが覚醒し、目覚めます。

 今回は出番なかったですね~ソラ
 

308: 2016/11/07(月) 18:37:14.39 ID:+ourTQtB0.net
 
穂乃果「にこちゃん……ソラ、ひさしぶりだね」
 (あいかわらず姫のトラブルに巻き込まれてるんだね)

にこ「エミー、思い出したのね。うぅ…なんだか記憶が曖昧だわ」
 (うっすらと覚えてはいるんだけど、明確じゃないというか…気持ち悪いわねぇ…)

海未「それはにこに憑依していたのが低級だったせいでしょう。ヤツの強引な憑依は対象の記憶に障害を残す場合もあります」
 (スズ…おかえりなさい……海未…ありがとうございます)

にこ「むー、よくわかんないヤツに好き勝手されて、気づいたら終わってるなんて…!」
 (変な事してないでしょうね…もう…)


 にこちゃんも無事に戻り、これでジョーカー関連の騒動はようやく終わりとなります

 スズさんの話だと、高エネルギー体であったジョーカーが強引に理事長さんの体に憑依した場合、

 憑依された瞬間からすべての意思、自由は奪われるので、理事長さんはここ数日の記憶が無い状態なのだそうです

 これに関しては日々の激務からの披露で倒れてしまったという理由で納得してもらうしかないのかもしれません

 絵里ちゃんが理事長さんの携帯を失礼して操作しています。ことりちゃんへの連絡をするためです


花陽「…………」


 絵里ちゃんはまだ後処理に時間がかかりそうです。海未ちゃんとスズさんはそんな絵里ちゃんを手伝うようです

 今回出番のなかったにこちゃんを穂乃果ちゃんがからかって弄り倒してます。元々仲のよかった二人ですが、どこか幼馴染のよう

 
 ということで、私は私で行くところがあるのでちょっと失礼していきます
 

309: 2016/11/07(月) 18:38:07.92 ID:+ourTQtB0.net
 
ことり「あ、遅いよ~花陽ちゃん」
 (待っててっていうから待ってたのに~)

花陽「ごめんなさい、ちょっと手間取っちゃって…」


 生徒会室に戻ると、ことりちゃんが一人で私を待っていてくれました

 凛ちゃん達はなかなかトイレから戻らない穂乃果ちゃんや用事で出てから戻らない海未ちゃん達を探しに出たようです


ことり「えへへ、みんなどこか行っちゃった~」
 (二人きりなんてひさしぶりかも…)

花陽「そ、そうだね…」


 私が絵里ちゃん達のお手伝いのためについた言葉。ことりちゃんをここから動かさないようにするためのプレゼント

 正直可愛いラッピングもなければ綺麗な包装紙もない、ビニール袋に詰められた無骨なものですけど…


花陽「ことりちゃん…これ、良かったら…」


 袋から取り出しことりちゃんに手渡す。最初何かわからず戸惑うことりちゃんですが、すぐに表情は明るくなります


ことり「これ…どうして……」
 (懐かしい……何年振りかな…)

花陽「ことりちゃん、好きかなって思って…」


 それはことりちゃんにとっての思い出深い絵本。ことりちゃんと私を繋いでくれた絵本でした
 

310: 2016/11/07(月) 18:39:13.82 ID:+ourTQtB0.net
 
ことり「ホント懐かしい…これどうしたの?」
 (どうして花陽ちゃんはこれを私に……言ったことあったっけ?)

花陽「明日の文化祭でね、フリーマーケットをやるクラスがあるんだけど、そこに出す予定だったものなの」


 前回は明日ことりちゃんが直接見つけて買う絵本だけど、状況は前と色々違うのです

 もう私は絵里ちゃん達と校内を見回る事もないし、にこちゃんや穂乃果ちゃん……は変わらないかな?

 それでも、もし何かの変化が原因でことりちゃんがあのマーケットを覗かなかったらって思うと、寂しいです

 だからこれは私の我儘です。無理いって(μ’sのサインとかで釣って)文化祭前に買わせてもらいました

 ことりちゃんは絵本を懐かしむようにして楽しんでいる。私に持ってくれたイメージを再確認するように、時折視線をこちらに寄せながら


ことり「あの…花陽ちゃん。どうして私にプレゼントを?」
 (素直に嬉しいけど、理由がわからないなぁ…)

花陽「え、そ、それはですね…えっと」


 理由……喜んでくれるとは思ってましたが、理由を聞かれるとなると…えーっと……


花陽「ひ、日頃のお世話と…その、ことりちゃんが喜ぶかなって思って…」

ことり「花陽ちゃん……うっ」ジワ
 (嬉しい…花陽ちゃんが私のことを考えてくれて…)


 実際、高校生にいきなり絵本のプレゼントってセンスはどうかと思いますけど、知っている事のズルさを今は大目に見てもらいます

 ことりちゃんはよっぽど嬉しかったのか、目にうっすらと涙を浮かべ……えっ?
 

311: 2016/11/07(月) 18:40:11.62 ID:+ourTQtB0.net
 
ことり「ありがとうっ!」ダキ
 (花陽ちゃん、花陽ちゃん~)

花陽「え、あ、ちょ…」


 突然ことりちゃんに抱き着かれて私は困惑します。憧れていたお姫さまのイメージを私に重ねて、同じような気持ちを持ってくれたことりちゃん

 だけどこんな直接的なアプローチは初めてです、正直…ちょっとドキドキしてしまいます


ことり「私この本、大事にするね、ほんとにありがとう」
 (あうう、花陽ちゃん…やっぱり大好き~~)

花陽「あ、うぅ…うん…」


 好き……ハッキリ聞こえちゃった…。絵里ちゃん達がことりちゃんが私を愛してるなんて言ってましたけど、

 言葉の意味を少し違う捉え方をしていました。愛なんてだいそれたものじゃなく、誰もが持つような他者への憧れのような感情

 だけどこれはもう間違いなさそうです…うう…どうしよう…


ことり「はぁー……」ウットリ
 (今なら私……言えるかな…花陽ちゃんにこの気持ち…)

花陽「えっ!?」ドキ


 言えるって…私に? こ、告白?

 そ、それは…ちょっと……ん~~!
 

312: 2016/11/07(月) 18:41:02.86 ID:+ourTQtB0.net
 
花陽「そ、そうだ!にこちゃん達遅いね、さ、探しに行きましょう!」

ことり「え?あ、うん…そうだねー」
 (むぅ…残念……でも、また次があるよね)


 や、やばいです……そのうち本当に告白されてしまうかもしれません

 いやまあ気持ちは嬉しいのです。嬉しいのですが、それを受けて私はどうしたらいいのかな…?


ことり「花陽ちゃんっ!」
 (でも、これだけは今ちゃんと言いたい…)

花陽「は、はひっ!」

ことり「絵本…ありがとうね。それと、明日がんばろっ」ニコ
 (ずっとがんばってきた私達のライブを、みんなと一緒に…)


 その気持ちには私は答えてあげられます。私も気持ちは同じだからです

 だけど、ことりちゃんと私の間にあるこの微妙な関係は、どうしたらいいのでしょう…?
 

313: 2016/11/07(月) 18:41:47.76 ID:+ourTQtB0.net
 
 私にとって二回目となる秋季文学祭が開催されました

 絵里ちゃん達は念のためにと今日一日はまだ見回りを続けます。スズさんは今日のライブで目的のエネルギーを回収した後に、捕らえたジョーカ達を連れて帰るそうです

 にこちゃんと穂乃果ちゃんは覚醒したこともあり私の周辺を警戒してくれていますが、もう脅威は去ったよと、自由にしてもらいます

 二人にはお世話になりましたが、これからは普通に仲良く過ごしてくれると嬉しいです


 そして私達は前と同じようにライブ前にそれぞれ行動します

 私は凛ちゃんを誘ってGOHAN-YAさんに突撃しました。これははずせないのです!

 にこちゃん、穂乃果ちゃん、ことりちゃんはアイドルグッズを扱っているお店に

 希ちゃん、真姫ちゃん、海未ちゃんはわかりませんが、文化祭を楽しんでいると思います


 そして、二回目となる私達のライブがはじまりました

 すべてをやり直すためにと行動してきましたが、ライブのための練習は念入りにやってきました

 その甲斐もあって、前回同様ライブは大盛況に終わるのです

 今回もことりちゃんからすごい量のエネルギーが放出され、スズさんが回収しました
 

314: 2016/11/07(月) 18:42:35.61 ID:+ourTQtB0.net
 
海未「それでは、ジョーカーの件についての報告も急かされていますので、私はここで…」
 (スズ……お元気で……海未も、ご協力感謝します…)

絵里「エネルギー事情、解決するといいわね」
 (スズ達ならうまくやりそうだけどね)


 ジョーカーの策略とは関係ない、本当の意味でみんなが用意してくれた打ち上げ会場となった空き教室

 その隅で、スズさんとお別れする時が来ました

 本当ならみんなで騒いで、楽しくやりたいところですが、スズさんにも事情があります。そしてもう一つ…


ことり「…………」
 (お母さん、文化祭なのに急な出張って言ってたのに、倒れたって……大丈夫かな)

花陽「ことりちゃん……」


 さっきまでの気分が嘘のように、ことりちゃんは理事長さんの心配をしています

 入院理由を過労で倒れたということにした絵里ちゃんですが、その知らせはライブ終了後に伝えられました

 変に引き延ばすのもタイミングとしておかしくなってくるからということだそうですが……


凛「ことりちゃん、お見舞いに行くなら凛達も……」
 (うぅ、大丈夫かな…)

ことり「ううん、大丈夫だよ、ありがとう。お母さんも一日入院すれば大丈夫だってことだから、後で連絡いれるよ…」
 (ライブ…結局見てもらえなかったな……)

花陽「……………」


 どうにかして元気になってもらいたいです。だけど、私の言葉はうまく伝わりません

 どうしても軽いものになってしまいます。事情を知っている私と、何も知らないことりちゃん

 彼女は今回、何が起こったのかの一切を知りません。知ってはいけないそうです
 

315: 2016/11/07(月) 18:44:23.60 ID:+ourTQtB0.net
 
絵里「実際、この世界を再構築した事のある事例は一つじゃないのよ」
 (それこそ数百年前からの観測がされている…)

花陽「今のこの世界も、なにかしら再構築されてきた結果?」


 絵里ちゃんの言う言葉は少し難しくて、きっと私が理解する必要もない事なのでしょう

 だけど納得できる理由として「再構築を行うものが知らない事」という条件が絶対だそうです

絵里「私達の組織や、情報統合思念体の存在がこうして活動できているのは、知らない事だからよ」
 (私達の存在を認識し、それを否定するような思考に支配された再構築は……過去にたった一度だけあったそうだけど…)


 ことりちゃんが知らない事は世界規模でも影響を与えない。ということだそうです

 実際ことりちゃんが再構築で改変したのは、私達身近な人物構造。そして否定した現実です

 私が氏ぬという現実を拒否し、どうしてあのような形になるのかはことりちゃん本人にしかわかりません

 ただ、やはり覚醒直後は不安定なものだそうで、再構築前と後の世界が微妙に交じり合っていたそうです


花陽「にこちゃんが言ってた意味はそういうことだったんですね」

絵里「守れなかったとか、どうとかの話?」
 (絵本と食い違う内容だそうだけど、それなら…)

花陽「にこちゃんも穂乃果ちゃんも、あのトラック事故を目撃していて、私が氏んじゃうところを見ていたそうだから…」


 それを、守れなかった前世として記憶違いだけど認識した。言われてみると単純な話です

 でも、それらを乗り越えて今があるのなら、特に言う必要はありませんし、もうあとは無事平穏を願うのみです
 

316: 2016/11/07(月) 18:44:50.73 ID:+ourTQtB0.net
 
 色々あった数日間でしたが、すべて終わりました。これからも私はみんなの心の声が聞けるという現象を持って生きていきます

 あの起源隔断層で見た光景は忘れません……いつかこの記憶も思い出として……あ…


花陽「忘れてました……希ちゃんのお願い事…」


 私にもう一度チャンスを与えてくれた彼女の言葉を思い出しました

 ことりちゃんに聞かないといけない話ですが、今日はさすがにやめておきます

 また落ち着いてから話の流れで聞いてみたいと思います

 そういえばあの人、昇進できるのかな?
 

317: 2016/11/07(月) 18:46:33.31 ID:+ourTQtB0.net
 
 南ことりちゃんはメルヘンな女の子です。子供の頃に読んだ絵本のお姫さまに憧れ、フリフリドレスを自分もと思う

 そんなフリフリ好きがレベルアップした結果がアイドル衣装へと繋がり、スクールアイドルになるという流れになります

 彼女は夢見がちな妄想をよくします。私をお姫さまのようだと思ったり、にこちゃんを騎士様のようだとイメージつけたり

 そんな本人だけの楽しみであるイメージ作りは衣装にも反映され、私達μ’sの大事な要素となります

 そのイメージは当然、他のメンバーにも適用されます


ことり「真姫ちゃんの印象?うーん、そうだなぁ」


 彼女は少し思案すると楽しそうに話します


ことり「なんだか真姫ちゃんって、漫画とかにでてくるマッドサイエンティストって感じしない?
 白衣着て、怪しい薬を日々作ってるんだけど、真姫ちゃんってちょっと可愛いところあるっていうか、いいとこでドジっていうか…
 なんかそんな感じで薬も全然うまくいかなくてう~んって唸ってる感じ?可愛いよね」


 だそうですよ、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースさん

 この質問と答えにどういう意味があるのかわかりませんが、いつか伝えることができるのでしょうか?
 

318: 2016/11/07(月) 18:47:50.58 ID:+ourTQtB0.net
 
 秋季文学祭も終わり、私達の日常が戻ってきました

 理事長さんも無事復帰し、ことりちゃんの不安も解消されたようです。少し記憶に混乱があると言ってましたが、もう大丈夫です

 すべてを平穏に…普通の日々とするために、私は極力みんなの心の声を拾わなくなりました

 一方的に知られるのって、やっぱりいい気がしないかなって思うのと、それを当たり前にしたくないというのが私の理由です


希「ひさしぶりやね」

花陽「希ちゃんどうしたの?ひさしぶりって…」

希「ん…あれ……うちやん、ほら、情報統合思念体の…」

花陽「え?あ、ああっ!!」


 朝、なにげない通学路で待っていた彼女…対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースさんがいらっしゃいました

 って、ここにいるってことは……


花陽「おめでとう、外にでられたんですね」

希「うん。おかげさまでな、無事出所したんよ」

花陽「出所って……」

希「ちょっと情報の精査に時間かかってしもてんけど、昇進したからにはこっちのもんや!」


 なぜか空に向かってガッツポーズの希ちゃん……ん、希ちゃん?
 

319: 2016/11/07(月) 18:48:48.55 ID:+ourTQtB0.net
 
花陽「あ、あの…どうしてあなたは希ちゃんの姿を?」

希「それは花陽ちゃんのイメージかな」

花陽「私?」

希「あの真っ暗なところでな、自分は氏んでます、もう一回やり直せるけどどうする?って説明あったやん?」

花陽「は、はい…」

希「あれな、うちが東條希っていう姿、声で語ったおかげで随分すんなりと受け入れられたやろ?」

花陽「あ…そうですね、それは確かにあったかも……?」

希「実際あそこでうちは東條希の姿なんてしてなかったし、意思を言葉に変換して伝えてただけなんよ?」

花陽「ん?」

希「それを花陽ちゃんが希ちゃんの姿として見て、希ちゃんの声に聞こえたのは、花陽ちゃんが持ってるイメージのせいやろね」

花陽「スピリチュアル?」

希「そうなん?うちは知らんけど」

花陽「えー…」

希「ようは、小泉花陽にとってもっとも不思議な事を言い出してもおかしくない存在っていうフィルター越しに見てたわけやね」

花陽「じ、じゃああの電話の時のは…?」

希「あれはもう花陽ちゃんの中で対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースのうちは東條希として浸透してたからね」


 だから電話の時はこっちから似せていったと、彼女…対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースさんは言いました


花陽「じゃあ、今のその姿は?」

希「これ?本物の希ちゃんよ?」

花陽「の、乗っ取り!?」ビク

希「人聞きの悪いこと言わんといてーな。ちゃんと東條希であって、情報統合思念体でもあるんよ~」クルクル


 いつものように登校し、靴を履き替え、当たり前のように3年生の教室に向かう希ちゃん…

 どうやら彼女は本当の意味でスピリチュアルになってしまったようです

 って、これって…私のせいですか?
 

320: 2016/11/07(月) 18:49:39.68 ID:+ourTQtB0.net
 
(花陽ちゃんのせいって事はないから、変に重く考えないでね?)

花陽「ひゃあぁ!い、いきなり電波飛ばさないでください!って、どこにいるんですか?」

(自分の教室だよ?あ、エリチおはよ~)

花陽「はあ……もしかしてまだ問題は続いているんですか…?」

(問題っていうか、前にも言ったけどうちの階級が上がったら権限も増えるって言ったやん?)

花陽「そうでしたね……」

(これからは直接ことりちゃんの観測をするためにうちは東條希として傍にいることにしたんよ)

花陽「それ、希ちゃんの人生を犠牲にしてますよね……」

真姫「……………」

(それは大丈夫や、だってうちは最初から情報統合思念体やから)

花陽「は?えっと……意味が…」

凛「……………」

(階級があがって、情報統合思念体として外にでてやっていくうえで必要な事…それは人として存在する事)

花陽「はぁ……」

(だからちょっと希ちゃんが生まれた瞬間まで遡ってな、うちはそこからスタートしたわけね)

花陽「へ?」

(昇進した時間帯まで表にはでられなかったけど、東條希としてその時まで普通に生活してたんよ。これでわかる?)

花陽「わかるっていうか……なんかもう、考えるのがしんどくなってきました…」

(花陽ちゃん、記憶力いいのに思考能力がいい具合に怠けてるよねぇ)

花陽「ほっといてください…」


凛「かよちんが…」

真姫「天井みながらブツブツと…」
 

321: 2016/11/07(月) 18:50:24.30 ID:+ourTQtB0.net
 
 過程は考えるだけ無駄。そのたった一つの事だけを理解するのにその日一日使ってしまいました

 だけど納得したなら次は私の番です。私はあの約束を希ちゃんに伝えました


花陽「というイメージだそうですけど…」

希「ほうほう…」


 練習後の屋上。話があると希ちゃんに残ってもらって話を切り出しました

 ことりちゃんが真姫ちゃんに持つイメージを伝えたところ、希ちゃんが閃いたように顔を輝かせます


希「やっぱり犯人は真姫ちゃんやってんなー」

花陽「え?」

希「なんでことりちゃんが急激に覚醒したのか、その資質を得るようになったのか…これで繋がったわ」

花陽「ど、どういうことですか?」

 
 すべてが解決したこの世界で、まだ何か問題があるのかと考えますが、やっぱり希ちゃんは飄々としていて…


希「犯人わかったけど、同時に犯人は消えてしまったんやけどね」

花陽「あの、すいません…たまには直球で教えてくれてもいいんですよ?」


 こののほほんとした雰囲気はやっぱり私の良く知る希ちゃんで、今はもう希ちゃんそのものが情報統合思念体

 そんな彼女が語る話は、終わっていた脅威のお話し
 

322: 2016/11/07(月) 18:51:13.45 ID:+ourTQtB0.net
 
希「じゃあ答えから先に言うとな、真姫ちゃんは情報統合思念体と似たような存在やね」

花陽「ヴェエ!?」

希「そんなとこマネんでもいいんよ。厳密にはうちらの別勢力、派閥違いやねんけどな」


 そういえば一枚岩ではないと言っていたのを思い出します。それでもこの事実は衝撃です

 そして希ちゃんは話の最中ですが、空に向かって右手をかざします。時間にしてわずか数秒でしたが


希「ん、確認完了。やっぱり、ことりちゃんは真姫ちゃんの実験台にされたんやね」

花陽「あ……人の潜在能力を覚醒とかなんとか……」

希「Cランクの能力者に投与して、人工的にそのレベルを上げれないかの実験しとったんやねー、あの子ら」

花陽「そんな…じゃあことりちゃんは……」

希「ざっと調べた結果、どうも真姫ちゃんとこの別荘で合宿したときに薬を投与されてるね。実際効果がでるのは先だけど」


 真姫ちゃんがそんな事を……じ、じゃあ私にも薬を使ったのって……まさか私も!?


希「花陽ちゃんも薬盛られたって話やけど、それはもう大丈夫やね。今の真姫ちゃんはホントにただの一般人やから」

花陽「え…ど、どういうことですか?」

希「確かに以前の真姫ちゃんは裏でコソコソやってたけど、結果が予想外すぎたんやね」

花陽「それは……ことりちゃんが特S級になった……?」

希「そう。覚醒を促したけど、その力はあくまでCがBになるか、よくてAになるか、そういう段階の実験やったんよ」

花陽「じゃあ実験は大成功って…わけでもなさそうですね」


 本来の実験目的としては大成功。だけど現状その余波はなにもない。真姫ちゃんも普通です

 それが、予想外というか、大誤算だったわけです
 

323: 2016/11/07(月) 18:51:55.22 ID:+ourTQtB0.net
 
希「真姫ちゃん自身も特S級の瞬間的な再構築に巻き込まれてしもたんやね。あれは確かに逃げる間もないからなー」

花陽「巻き込まれたって…つまり…」


 私やにこちゃん達がことりちゃんの持つイメージによって再構築されたように、真姫ちゃんもまた、再構築された?

 じゃあことりちゃんの持つイメージといえば……可愛いマッドサイエンティスト……もどき?


希「再構築に巻き込まれ、その存在が書き換えられた真姫ちゃんの大本は、もう彼女を切ったようやし、ほんとに普通の女子高生になったわけ」

花陽「切ったって…それはそれで酷い話です」

希「それほどの影響やったんよ、特S級っていうのは…まぁでも……」


 希ちゃんは一度背伸びをすると、屋上をトコトコ歩き出す

 何かを考えているようですが、私にかけられる言葉はありません。すでに違う次元の問題です


希「ん、そうやね。うちもそう思います」

花陽「え?」

希「ああゴメン、今のはうちの先輩との会話。うちまだ昇進したてで新人やから」

花陽「せ、先輩…」

希「ちょっと先輩の意見聞いてたんやけどね、やっぱりこのままにはできないみたい」

花陽「そ、それは真姫ちゃんを?」

希「んーや、真姫ちゃんはもうなんの害もない普通の女子高生。これからも仲良くしたって。問題は別」


 希ちゃん…対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースさんが口にする問題…


希「真姫ちゃんとこの大本、ちょっと言って懲らしめてくるわ~」


 いつもののんびり口調で彼女は物騒な事を言いました
 

324: 2016/11/07(月) 18:53:17.46 ID:+ourTQtB0.net
 
花陽「こ、懲らしめるって…文句言いに行くんですか?」

希「真姫ちゃんを犠牲にしたとはいえ、薬の実験は成功してるからね、第二の被験者を探してなにかしとるかもしれんから」

花陽「き、危険な事…しにいくんですか?」

希「先輩もいるし大丈夫やと思うけど。まぁこれは花陽ちゃんにはすでに無関係の話」

花陽「そ、そうですけど…心配です…」


 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースだろうと情報統合思念体だろうと

 私達μ’sの仲間であり、友達の東條希ちゃんでもあるんです。心配して当たり前じゃないですか


希「んふっ、ありがとーな。やっぱ外に出て正解やったわ」

花陽「は、はぐらかさないでください…」

希「んー、でもこれは花陽ちゃんからしたら外伝みたいなもんやし」

花陽「ん?」

希「こっち側のはうちの物語や…言うなれば「東條希の〇〇」的なやつやね」

花陽「ちょっと油断するとすぐ意味不明な事を言うのをやめてください」

希「ようは、心配せんでも小泉花陽の物語の傍らには、ずっとうちはいるよってこと…これからも、な?」


 そういっていつもの笑顔を見せる希ちゃん。事情をよく知らない私でも、唯一知っているもので納得しておきます

 この笑顔の希ちゃんは、いつだって嘘はついてこなかった事を……
 

325: 2016/11/07(月) 18:54:01.33 ID:+ourTQtB0.net
 
希「ところで、みんなの心の声、もう聴いてないの?」

花陽「あ、はい。なんかずっと筒抜けなのはみんな嫌かなって思って…」

希「そうなんや。でも、今はちょっと必要と違うかな?」

花陽「へ?」


 どこか意地悪そうな笑みを浮かべて希ちゃんがニヤニヤしているので私は意識を集中させます。すると……


(何話してるのかな…っていうかにこちゃん…重い……)

(二人とも声あげたり笑ったり、いい雰囲気にゃ~?)

(は、花陽ぢゃーん…楽しそうー)

(てっきり花陽はことりと仲良くやるものだと思ってたけど、ここにきて希がライバルなのかしら?)

(珍しい組み合わせですね…)

(って、ことりのゲージほんのちょっと下がってるじゃないの…花陽、なにしてるのよ!)

(べべ、別に姫…花陽が誰とどうなろうと知った事じゃない…けど……ぅぅぅ…)


花陽「わあ」

希「みんな気になってるみたいやね」クスクス
 (しょうがない子達ね)


 あ……みんなの声を聞こうと意識したらちゃんと希ちゃんの声も響きました

 それを彼女もわかっているのか、にっこりと微笑みます。やっぱり、希ちゃんは希ちゃんでした
 

326: 2016/11/07(月) 18:55:01.83 ID:+ourTQtB0.net
 
 改めましてみなさんこんにちは、小泉花陽です

 私は音ノ木坂学院の一年生で、

 スクールアイドルμ’sというグループに所属しています

 8人のステキな仲間と一緒に憧れのアイドルになりたくて毎日がんばってます


 私には仲間の心の声を聞く事ができる不思議な現象……能力があります

 それだけで、あとは普通の女の子です

 最近は色々あってその能力もある二人にしか使っていません。その二人は使わないと不便だったり危険だからです


花陽「おはよう、海未ちゃん」

海未「おはようございます花陽」
 (あ、海未私も…)

花陽「それと、おはようございます、スズさん」

海未「はい、おはようございます花陽」
 (学校の間は私が表だって話じゃありませんか!…挨拶くらいはさせてください…)

花陽「はは……」


 ジョーカー事件の時に知り合った異世界人であるスズさん。なんとまたいらっしゃいました

 特S級のエネルギーの効率的な回収要員として選ばれ、定期的にことりちゃんからエネルギーを回収しては本国に送り届ける仕事です

 その現地協力員という形でスズさんは海未ちゃんを指定し、海未ちゃんはそれを了承しました
 
 海未ちゃんもそうですが絵里ちゃんもこれにはとても喜んでいました。なんだかんだで馬が合うというやつなのでしょうか

 問題であったエネルギー不足問題は当面乗り切れるようにはなったらしいですが、自国だけで循環させるにはまだ不安材料はあるそうです

 マインドアサシンも規模が縮小されたとはいえ、まだ存在しているのも事実だそうです


 ちなみに見た目には普通です
 

327: 2016/11/07(月) 18:55:37.18 ID:+ourTQtB0.net
 
にこ「おはよう花陽」

穂乃果「おはよう花陽ちゃん」

花陽「おはようございます」


 仲間であり、先輩でもあり、なにより私を守る騎士のお二人。何があるかという話ですが、もしも何かあれば

 彼女達は最強で無敵のヒーローとして立ち上がります!

 でも何もなければやっぱり彼女達も普通で…ちょっと人より体が異様に丈夫という事を覗けば…普通?です


凛「おっはよ~かよちん」

真姫「おはよ」

花陽「おはよう、凛ちゃん真姫ちゃん」


 正真正銘普通のお二人。私の心のオアシスです。真姫ちゃんにはこっそりと前科ありということですが

 それでもすべて過ぎ去った今となっては問題にもなりません

 普通が一番です。そういえばことりちゃんって、凛ちゃんにはどういうイメージを持っていたのでしょうか?
 

328: 2016/11/07(月) 18:56:25.00 ID:+ourTQtB0.net
 
絵里「おはよう花陽、希」

希「おはよーさん…ふあ…ふ…」

絵里「眠そうね希。また徹夜でドラクエ?」

希「あふ…まーねー…」

花陽「おはようございます」


 仲間で先輩で…なぜか最近は仕事の愚痴を言い合う仲になったお二人です

 絵里ちゃんと海未ちゃん…というかスズさんには希ちゃんの事を話しました。本人の希望でもありましたし

 噂の情報統合思念体の登場に絵里ちゃんのはしゃぎっぷりは正直かわいかったですが、最近はなにかと…


絵里「聞いてよ~また連絡事項の項目増えたのー…面倒くさいのよねえ…」

希「特S級担当ともなると大変みたいやね。仕事が減りますようにって神社でお祈りしといたるわ」

花陽「は、はは……」


 絵里ちゃんも希ちゃんほどじゃないにしろ、ジョーカー事件の功績を称えられ、昇進したそうです

 もとよりどのような階級なのかも不明なので私にはどうでもいいことですが…


 それでも私達は普通に生活しています。なにごともなく……
 

329: 2016/11/07(月) 18:57:25.33 ID:+ourTQtB0.net
 
 そして私が自分の能力を使わなければいけない一番の問題がやってきます


ことり「みんなおはよ~~♪」ブンブン
 (えへへ、今日も花陽ちゃんかわいいな~~~)

花陽「お、おはようことりちゃん」


 あの日…ことりちゃんにプレゼントした絵本がきっかけで、彼女…ことりちゃんは心に決めたことがあります

 それは私にとっても、場合によってはみんなにも影響を与えてしまうほどの問題なのです

 それを回避するために、私はことりちゃんの行動に目を配る必要があるのです!


絵里「おはようことり、えらくご機嫌ね」

ことり「絵里ちゃん、あのね、昨日お母さんがみんなで行きなさいって映画のチケットくれたの」
 (みんなでいけば花陽ちゃんも…ぐへへ……)

穂乃果「わー、なんの映画~?」

ことり「スクールアイドル伝説3だよ!」
 (花陽ちゃん好きだよねーこのシリーズ)


 お、おぉぅ……そうです私それ好きです…映画は正直見たいです。だけど…
 

330: 2016/11/07(月) 18:58:05.62 ID:+ourTQtB0.net
 
ことり「ね、これ今週末みんなでいかない?」
 (その帰りに…今度こそ私は花陽ちゃんに、この気持ちを…)

花陽「あぐ………」

凛「行きたいにゃ~」

真姫「いいんじゃない?」クルクル


 ことりちゃんは私の事を好きでいてくれます。それは正直嬉しいし、ありがたいのですが

 隙あらば私に告白しようと機会を伺っているのです。これにはまいりました

 もしも告白されてしまったら、もう私に逃げ場はありません

 というかですね、女の子と付き合うって…その、よくわかりませんし…なんか違うかなって思ったりも…でも…


ことり「花陽ちゃん、どうしたの?」ズイ
 (最近よくこの顔してるなー…可愛いけど!)

花陽「ちかーい!」

ことり「ん?」
 (慌ててる花陽ちゃんもイイ…)

花陽「あ…うぅ……」


 なにより、ことりちゃんの顔を見てるとなんだか熱くなってきて…

 心臓がバクバク鳴ってることもあります。そして顔が火照るんです…
 

331: 2016/11/07(月) 18:58:53.54 ID:+ourTQtB0.net
 
ことり「ね、花陽ちゃん…映画」
 (あれ、赤くなってる……?)

花陽「ご、ごご…」


 こんな状態の私がもし告白されようものなら……絶対にそれはダメです!


花陽「ごめんなさ~~~い!!」ダダ

ことり「あーん花陽ちゃ~~ん」
 (うぅ、でもあきらめないもん!)


 絵里ちゃんにはことりちゃんを無碍にしないようにと言われました

 スズさんにもできればポジティブなエネルギー回収をと念を押されました

 でも、そんな事情知った事ではありません、私の「普通」が問われている問題なのです!

 考えるのが面倒だと放り投げてしまいたいのですけど、それもできない状況なのですよ!


希「軽く考えたらいいのに……ってわけにもいかないのがイイとこなんやろね」

絵里「認めたら最後、ズルズルいくのが自分でわかってるのよね…」

海未「正直よくわかりませんが、元気そうでなによりです」
 (スズ……それはどうかと……)


 無責任な外野の声を後にし、私は校舎に逃げ込みます

 押されるのも引かれるのもどっちも強すぎちゃうと、今の関係が崩れちゃいそうです

 私の日常が崩れた一つの大事件はもう終わってます


 だけどすぐ近くにいる存在が、新しい事件を引き起こしそうな予感は絶えず感じるのでした


ことり「花陽ちゃ~~ん待って~~♪」
 (んふふ、ぜーったい逃がさないから♪)


 


   


 SS 「小泉花陽も憂鬱」 終わり
 

332: 2016/11/07(月) 19:00:33.92 ID:+ourTQtB0.net
うぅ…地域表記の設定はよくわからないのですがたこやきじゃなくなってしまいました;
長々とお付き合いしてくれた方、保守してくれた方ありがとうございました

これから私…舞妓なん?;

335: 2016/11/07(月) 19:04:05.81 ID:YDkoUbLt0.net
面白かった乙!

336: 2016/11/07(月) 19:18:33.39 ID:lJN5iuxZ0.net
ついに完結か乙

引用: SS 「小泉花陽も憂鬱」