1: 2012/06/23(土) 08:08:34 ID:Uzv1VqoY



 その日は、夜風が気持ち良かった。 やっとムシムシした空気が無くなり、

心地よい気候に移りつつある。

 私は、部活動の後、虫の音を聞きながら月を愛でようと、IS学園の裏にある

雑木林奥の丘を目指した。



箒「・・・・・?」
IS<インフィニット・ストラトス>(8) (サンデーGXコミックス)

2: 2012/06/23(土) 08:09:22 ID:Uzv1VqoY

箒「なんだこれは?」

箒「・・・・・・・・・・・」

箒「・・・どう見ても電話ボックスだが」

箒「どうしてこんな所に?」

箒「・・・・・・」

箒「・・・そういえば幼い頃、見ていたアニメに こんな道具があったな」 クスッ

              キィ・・・ パタン ・・・ガチャ

箒「もしも一夏が、私にぞっこんだったら!」

箒「・・・なんてn」

              ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!

箒「・・・!?」

3: 2012/06/23(土) 08:10:06 ID:Uzv1VqoY

            バッ・・・ バタンッ!!

箒「くっ・・・なんなんだ!?」

箒「・・・・・・・・・・・」

箒「・・・・・・」

箒「・・・帰るか」

4: 2012/06/23(土) 08:11:25 ID:Uzv1VqoY



              -翌日・休日の早朝・IS学園寮・箒の部屋-

              コン コン

一夏「箒、起きてるか?」

箒「・・・!? 一夏か?」

箒「なんだ? こんな朝早く?」

一夏「・・・? 何って・・・朝稽古する約束していただろう?」

箒「・・・それは、そうだが」

箒「お前は、休日の朝稽古には、乗り気じゃなかったじゃないか・・・」

一夏「・・・? 何言ってるんだよ・・・」

5: 2012/06/23(土) 08:12:12 ID:Uzv1VqoY



一夏「お前との大切な 二人の時間を ないがしろにするわけ無いだろ?」



箒「・・・!!??」 ///

箒「なっ、何を言ってるんだ! 朝っぱらから!」 ///

一夏(・・・? 箒・・・今日は、元気がいいな?)

一夏「悪い、起きているのならいいんだ。 先に道場に行ってるからな」

箒「あ、ああ・・・」 ///

箒「・・・・・・・・・・」 ///

箒(い、いったい、どうしたんだ? 一夏の奴・・・) ///

6: 2012/06/23(土) 08:13:24 ID:Uzv1VqoY



              -同・IS学園・道場-

              パンッ! パパンッ! パンッ!

箒「はあっ!」 パシンッ!!

一夏「ぐうっ!」

           スルッ・・・バッ(面をとった音)

箒「・・・まだまだ、脇が甘いぞ、一夏?」 フフン

一夏「・・・!?」

一夏(・・・今、笑った)

箒「? どうした? 一夏?」

一夏「! い、いや、何でもない・・・」

箒「?」

7: 2012/06/23(土) 08:14:15 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・箒」

箒「なんだ?」

一夏「そ、その、なにかいい事でもあったのか?」

箒「・・・? いや、特にないが?」

一夏「そ、そうか・・・」

箒「・・・・・・・?」

8: 2012/06/23(土) 08:14:59 ID:Uzv1VqoY

一夏(・・・どういう事だろう?)

一夏(アレ以来、笑顔を見せた事なんて 一度も無かったのに・・・)

一夏(・・・・・・・・・・・・)

一夏(強いて言うなら・・・付き合い始めた頃の箒みたいだ)

一夏(・・・・・・・・・・・・)

9: 2012/06/23(土) 08:15:41 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・箒、そういえばこの後、予定はあるか?」

箒「普通に部活動だが?」



一夏(・・・!? 部活動だと!?)

一夏(・・・・・・・・・)

一夏(やっぱり・・・おかしい)

10: 2012/06/23(土) 08:16:31 ID:Uzv1VqoY

箒「一夏?」

一夏「・・・ああ、すまん」

一夏「もしヒマなら・・・デートでも どうかと思ってな」

箒「・・・・・・・」

箒「はあっ!?」 ///

一夏「・・・ほ、箒?」

11: 2012/06/23(土) 08:17:23 ID:Uzv1VqoY

箒「い、今、何と言ったのだ!? デートと言ったか!?」 ///

一夏「お、おう・・・」

箒「デ、デートというのは、あ、あれか? こ、恋人同士がするアレの事か!?」 ///

箒「実は出・糸でした! なんてオチじゃないのか!?」 ///

一夏「・・・なんだよ、その意味不明なオチは? というか、それ以外の何があるんだよ?」

箒「・・・・・・・・・」 ///

一夏「・・・・・・? 箒・・・さん?」

箒「・・・・・・・・行く」 ///

箒「絶対、行く!!」 ///

12: 2012/06/23(土) 08:18:09 ID:Uzv1VqoY



             -午前中・ショッピングモール-

箒「・・・・・・・・・」 ///

一夏「・・・箒?」

箒「な、なんでもない・・・」 ///



箒(・・・いったい、何なんだ? わ、私は緊張で い、今にも押し潰れそうなのに) ///

箒(一夏め・・・。 ずい分と、慣れている感じじゃないか・・・) ///



一夏(・・・こりゃいよいよもって、初めの頃の箒だな) クス

13: 2012/06/23(土) 08:18:54 ID:Uzv1VqoY

一夏「さて、どこに行こうか?」

箒「そ、そうだな・・・」 ///

箒「・・・・・・」 ウ~ン・・・///

箒「と、とりあえず、服が、み、見たいかな・・・」 ///

一夏「よし、服な」

14: 2012/06/23(土) 08:19:42 ID:Uzv1VqoY

一夏「箒、これなんて似合いそうじゃないか?」

箒「私は、丈の長いスカートは好きじゃない・・・」

一夏「・・・あ、そうだったな。 動きにくいから駄目なんだっけ・・・」

箒「・・・?」



箒(・・・あれ? どうして、その事を知っている?)

箒(無意識に話していた・・・か?)

箒(・・・まあいいか)

15: 2012/06/23(土) 08:20:37 ID:Uzv1VqoY

箒「一夏、これとこれ、どっちが良さそうだ?」

一夏「そうだな・・・そっちの空色のブラウスかな?」

箒「ほう・・・こっちの緑のトレーナーは、似合わないか?」

一夏「いや、そんな事は無いと思う。 強いて言えば、ってだけだから」 ニコ

箒「そ、そうか・・・」 ///

一夏「両方とも試着してみろよ。 俺が見てやるから」 ニコ

箒「う、うむ。 そ、それじゃあ・・・」 ///

              シャッ・・・ ゴソゴソ・・・ シャッ・・・

箒「・・・どうだ?」 ///

16: 2012/06/23(土) 08:21:20 ID:Uzv1VqoY

一夏「うん、ブラウス、いい感じだ」

箒「うん、私も良いと思う」 ///

箒「よし、着替える、ちょっと待っててくれ・・・」

             シャッ・・・ ゴソゴソ・・・ シャッ・・・

箒「今度は、どうだ?」

17: 2012/06/23(土) 08:22:35 ID:Uzv1VqoY

一夏「おう、似合ってるぞ。 でも、やっぱり俺は、ブラウスの方が好きかな」

箒「そうか・・・」



箒(私は・・・こっちの方が、好きなんだけどな)



一夏「箒は、トレーナーの方が 気に入ってるのか?」

箒「えっ?」

18: 2012/06/23(土) 08:23:54 ID:Uzv1VqoY

一夏「あくまで俺の意見だから。 それにさっきも言ったけど」

一夏「強いて言えば、ってだけだし。 両方とも よく似合ってるぞ?」 ニコ

箒「そ、そうか・・・」 ///



箒(ど、どうするかな) ///

19: 2012/06/23(土) 08:24:47 ID:Uzv1VqoY

一夏「結局、両方買ったのか」

箒「ああ、こういうのは一期一会だからな・・・」

箒「せっかく気に入ったのだし、思い切った」 クス

一夏「良いと思うぞ」 クス

            アハハ・・・

一夏「・・・さて、少し早いけど、昼にするか?」

箒「うむ、そうだな」

一夏「どこで、何を食うかな・・・?」

箒「ふむ・・・うどんは、どうだろう?」

一夏「そうだな、軽いものがいいな」

20: 2012/06/23(土) 08:25:46 ID:Uzv1VqoY



              -昼前・ショッピングモール内レストラン-

箒「天ぷらうどんを」

一夏「俺は、かき揚げの天ぷらうどんを」

             カシコマリマシター

箒「・・・今日は ありがとうな、一夏」

一夏「ふふ・・・どういたしまして」 クス

一夏「俺も箒が喜んでくれて・・・うれしいよ」 ニコ

箒「・・・っ」 ドキ///

箒「・・・・・・」 ///

21: 2012/06/23(土) 08:26:50 ID:Uzv1VqoY

箒(・・・なんだろう) ///

箒(本当に付き合っているみたいだ・・・) ///

箒(・・・・・・・・・) ///

箒(・・・あ)

箒(もしかして、あの電話ボックス・・・!?)

箒(ほ、本物だったのか!?)

箒(・・・・・・)

箒(・・・じゃあ、この一夏は)

箒(私に・・・ぞっこん・・・なの・・・か?) ///

箒(・・・・・・) ///

22: 2012/06/23(土) 08:27:28 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・なあ、一夏」

一夏「ん?」

箒「その・・・私達は、つ、付き合っているんだよな?」

一夏(・・・!)

一夏「ああ、もちろん」 ニコ

箒「そ・・・そうだよな、う、うん」 ///



箒(や、やっぱり!) ///

23: 2012/06/23(土) 08:28:17 ID:Uzv1VqoY

一夏(・・・箒)

一夏(もしかして・・・)

一夏(記憶を無くした・・・?)

一夏(・・・・・・・・)

一夏(だとしたら・・・)

一夏(その方が、箒の為かもしれない)

一夏(・・・・・・)

一夏(とにかく、今は様子を見よう・・・)

24: 2012/06/23(土) 08:29:04 ID:Uzv1VqoY

             アリガトウ ゴザイマシター

箒「うむ、美味かった」

一夏「ああ、一心地ついたな」

一夏「箒、この後はどうする? 映画でも見るか?」

箒「う、うむ。 それで構わないぞ?」

一夏「よし。 シネコンに行こう」

25: 2012/06/23(土) 08:29:42 ID:Uzv1VqoY

一夏「どれどれ・・・。 アクション物に ヒューマンドラマ・・・」

一夏「戦争物に、恋愛物・・・。 どれにする?」

箒「一夏に任せる・・・。 私は、そういう物に疎いから・・・」

箒「私が見ても 楽しめそうな映画を選んでくれないか?」

一夏「そうか・・・それじゃあ・・・」

一夏「これにするかな」

26: 2012/06/23(土) 08:30:17 ID:Uzv1VqoY

箒「アクション物か」

一夏「おう、面白いって評判だ」

箒「ふふ、楽しみだな」

一夏「ああ」



一夏(・・・・・・)

一夏(やっぱり、覚えてないんだな・・・)

27: 2012/06/23(土) 08:31:24 ID:Uzv1VqoY

        ソンナ・・・、ボクニ・・・ボクニ ナニガ デキルッテ、イウンダヨ!!

        オマエハエラバレタ・・・。 ソレヲウケイレロ!!

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・・・・・・」

        イヤダ・・・イヤダ! ドウシテ、ボクバカリ コンナメニ!

        サイノウガアルカラダ! オオクノニンゲンハ、ソレヲノゾミナガラ

        サワルコトスラ ユルサレナイ! ソレハ、オウノシカクナノダ!!

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・・・・・・」

28: 2012/06/23(土) 08:31:59 ID:Uzv1VqoY

        オネガイ・・・イキテ・・・・・・・。 アタシノ・・・ゼンブ、アゲルカラ・・・

        ・・・ドウシテ・・・・・・ドウシテ、コンナコトニ!

        ゴメン・・・ボクガ・・・ボクガ、マチガッテタ・・・

箒「・・・・・・・・・」 グスッ

一夏「・・・・・・・・・」

        ボクガ、ゼンブアツメル。 ニクシミモ、カナシミモ、ナニモカモ!

        ボクガ、オウニナル!!

箒「・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・・・・」

29: 2012/06/23(土) 08:32:47 ID:Uzv1VqoY

        イヤダ! モウボクハ、アキラメナイ! カノウセイガナンダ!

        ウオオオオオオオオオッ!!

箒「・・・・・・・・・」 ハラハラ

一夏「・・・・・・・・・」

        コレデ・・・イインダヨネ。 コレガ、キミノノゾンダ

        セカイ ナンダカラ・・・

箒「・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・・・・」

30: 2012/06/23(土) 08:34:10 ID:Uzv1VqoY



箒「なんだ! あの主人公は!」 プンプン!



一夏「ハハハ・・・」

箒「ヘタレで意気地なしで・・・なすがまま行動していたくせに」

箒「ここぞという時に、徹底して逃げ出して ばかりいた!」

箒「ここまで腹の立つ主人公は、初めてだ!」 プンプン!

一夏「最後は、頑張っていたじゃないか」

箒「む・・・。 確かにそうだが・・・」

31: 2012/06/23(土) 08:35:23 ID:Uzv1VqoY

箒「それにしたって幼馴染の扱いが、あんまりじゃないか!」 プンプン!

箒「主人公の気持ちを知りながら、健気に尽くしていたのに・・・」

箒「あんな最後は、酷すぎる!」 プンプン!

一夏「ああ、それについては反論できないな」

一夏「生き延びて欲しかったキャラが、全部氏んでしまったし・・・」

箒「まったくだ!」

箒「生き延びたのはビXチに、裏切り者に・・・」

箒「とにかく、主人公を利用したか、ひどい目に合わせた連中ばかりだ!」 プンプン!

一夏「いくら主人公が覚醒して、心が広くなったと言っても」

一夏「あれは寛容になりすぎだよな・・・」

32: 2012/06/23(土) 08:36:32 ID:Uzv1VqoY

箒「まったく・・・どうしてくれるんだ、一夏!」

箒「私は、気分が悪くなったぞ!」 イライラ

一夏「ハハ・・・すまん。 評判なんて当てにならないな」

一夏「じゃあ・・・体を動かして、うさを晴らすか」

箒「ふむ・・・それには賛成だ」

一夏「よし、ボウリングなんてどうだろう?」

箒「うむ。 いいぞ!」

33: 2012/06/23(土) 08:37:31 ID:Uzv1VqoY



             -午後・ショッピングモール内・ボウリング場-

             ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ・・・ ガッコーン!

一夏「くあっ! 取り切れなかったか・・・!」

箒「惜しかったな」 クスッ

一夏「これで150にも届かないな・・・」

箒「なかなかの成績じゃないか」

一夏「箒は、180オーバー確定だろ・・・」

箒「ふふん♪」

一夏「くっ・・・!」

一夏「箒! もう一回! もう一回、勝負だ!」

箒「ああ、構わんぞ?」 クスッ

34: 2012/06/23(土) 08:38:22 ID:Uzv1VqoY

箒「では・・・」 スっ・・・

一夏「箒!」

箒「? なんだ?」

一夏「愛してる・・・」 キリッ☆

箒「!!?」 ドキッ///

箒「なななな、何を、突然!?」 ///

一夏「ほら、早く、投げろよ?」

箒「くっ・・・!」 ///

箒「・・・・・・ふんっ!」 ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ・・・

箒「ああ・・・・・・」 ガター・・・

35: 2012/06/23(土) 08:38:58 ID:Uzv1VqoY

箒「一夏! 貴様、ずるいぞ!」 ///

一夏「なんでだよ?」 クスクス

箒「! あ、あんな事を、こ、公衆の面前で言うなんて!」 ///

一夏「おう、それは すまなかった」

一夏「ぜひ、仕返し してくれ?」 ニコ

箒「!?」 ///

箒「くっ・・・よ、よし、やってやる!」 ///

36: 2012/06/23(土) 08:39:44 ID:Uzv1VqoY

一夏(・・・ふふふ、できるかな?)



一夏「・・・・・・・」 スっ・・・

箒「!・・・あ、あいっ・・・・あいし・・・」 シドロ モドロッ///

一夏「・・・!?」 ゴロ ゴロ ゴロ ゴロ・・・

一夏「あ・・・・・・」 ガター・・・

37: 2012/06/23(土) 08:40:23 ID:Uzv1VqoY

箒「!」

箒「・・・そら! 見たことか!」 フフン!

一夏「・・・・・・」



一夏(顔を真っ赤にして必氏な箒・・・可愛いすぎる) ///

一夏(反則だろ、こんなの・・・) ///

38: 2012/06/23(土) 08:41:15 ID:Uzv1VqoY

箒「どうだ! 三戦全勝!」 ドヤ!

一夏「・・・負けました。 完敗です・・・」 クスン・・・

一夏「おまけに肩は、痛いし・・・」 シクシク・・・

箒「情けない・・・。 普段から鍛えていないからだ」

一夏「ごもっともでございます・・・」

39: 2012/06/23(土) 08:42:15 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・もう、夕方か。 日が落ちるのが早くなって来たな」

一夏「そうだな」

一夏「・・・・・・・・」

一夏「箒、良かったら・・・少し歩かないか?」

箒「・・・!」

箒「・・・う、うむ、構わないぞ、私は」 ///

一夏「そうか・・・」

40: 2012/06/23(土) 08:43:42 ID:Uzv1VqoY



             -同・ひとけのない公園-

一夏「おっ、ベンチがある。 座ろうぜ?」

箒「・・・あ、ああ」 ///



箒(こ、こ、これは・・・! も、もしかして・・・) ///

箒(・・・ふ、雰囲気もあるし、や、やっぱり・・・) ///

箒(こ、心の準備がっ・・・!) ///



一夏「・・・箒?」

箒「!? ・・・と、す、すまない。・・・なんでもない」 ソソクサ・・・ストン///

一夏「・・・・・・・・・・」

41: 2012/06/23(土) 08:44:51 ID:Uzv1VqoY

一夏「箒、今日は、ありがとうな」

箒「い、いや、そんな事無い。 私も楽しかった」 ///

一夏「映画は、ミスったけどな・・・」 クスッ・・・

箒「・・・・・・・」

箒「・・・ふふ、確かに」 クスッ

一夏「・・・・・・」

42: 2012/06/23(土) 08:46:02 ID:Uzv1VqoY



 ・・・言葉は、無かった。 私の右隣に座る一夏は、私の肩に手をやり

そっと自分の方へ抱き寄せる。

手馴れている感じがした。



 私の緊張は、限界を突破していて・・・ブルブルと無様に体を震わせていた。

そんな私を察してか、一夏は急がなかった。

43: 2012/06/23(土) 08:46:57 ID:Uzv1VqoY



 一夏の肩に頭を載せ・・・私は、どこともなく虚空を眺めていた。

一夏の呼吸音が聞こえる。 一夏の体温を感じる。 一夏の匂いがする・・・。

私は・・・いつしか、安心していた。



 ころあい、と見たのか。 一夏が、私の名を呼んだ。

・・・私は、ゆっくりと一夏の方へ顔を向けると、彼の顔を見ながら

静かに目を閉じた。

44: 2012/06/23(土) 08:47:47 ID:Uzv1VqoY



 それは、聞いていたのとは、少し違っていると思った。

「甘酸っぱい味」なんてものじゃない。



 もっと・・・優しくて、体中が溶けそうになる様な・・・、そんな「感覚」しかない・・・。

適当な言葉が、思いつかない・・・。



 一夏の感情すら、そこから流れてくるような気がした・・・。

45: 2012/06/23(土) 08:49:02 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・・・・・・」 ///

一夏「・・・・・・・・」 ///

箒「・・・・・・・・」 ///

一夏「・・・・・・・・箒」 ///

箒「・・・・・・・・」 ///

一夏「・・・・・・・箒?」

箒「!? ・・・な、なんだ?」 ///

一夏「・・・大丈夫か?」 クスッ

箒「・・・う、うむ。 こ、これぐらいなんでもない」 ///

46: 2012/06/23(土) 08:49:48 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・・・・・・」

一夏「箒、聞きたい事があるんだけど・・・」

箒「?・・・なんだ?」

一夏「・・・違っていたら謝るけど」

一夏「もしかしたら・・・記憶を無くしているんじゃないのか?」

箒「!?」

箒「・・・・・・・どうして、そう思う?」

一夏「今日の箒、いつもと違っていたからな・・・」

一夏「確信したのは、一度見た映画を見て、普通だった事だ」

箒「・・・・・・・・・・」

47: 2012/06/23(土) 08:50:24 ID:Uzv1VqoY

箒(・・・私は、記憶を無くしたわけではないが・・・)

箒(私の事情を説明するのも手間だな・・・)

箒(・・・・・・・・・)

箒(よし・・・ここは話を合わせよう)

48: 2012/06/23(土) 08:51:06 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・そうか。 バレていたのか」

箒「私は、相変わらず隠し事が下手だな・・・」

一夏「ふふ・・・言えてる」

一夏「今のキスも、初めて、と言ってる様だったしな」 クス

箒「・・・なっ!?」 ///

一夏「ハハハ・・・」

49: 2012/06/23(土) 08:51:43 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・まあ、冗談はこれくらいにして、だな・・・」

一夏「・・・箒」

箒「うん?」

一夏「無くした記憶を、取り戻したいと思うか?」

箒「・・・・・・?」

箒「それは・・・そうだろう? 普通・・・」

一夏「・・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・・だよな」

50: 2012/06/23(土) 08:52:44 ID:Uzv1VqoY

一夏「でもな・・・箒。 あえて言う」

一夏「止めておくんだ・・・」

箒「!?」

箒「・・・なぜだ?」

一夏「・・・・・・・」

一夏「お前にとって・・・辛いことだからだ」

箒「・・・・・・」

51: 2012/06/23(土) 08:53:23 ID:Uzv1VqoY

一夏「きっと・・・」

一夏「これから先、疑問に思う事がたくさんあるだろう」

一夏「誰かが居ないとか、ここが違う、とかな・・・」

一夏「でも、それらすべてを無視するんだ」

一夏「・・・・・・」

一夏「頼む・・・」

箒「・・・・・・・・・・」



箒(・・・いったい、何があったんだ?)

52: 2012/06/23(土) 12:35:36 ID:Uzv1VqoY



             -翌日の朝・IS学園・1組教室-

箒「・・・・・・・・・・・・・・・」

箒(居ない・・・)

箒(セシリアが、ラウラが、シャルロットが・・・)

箒(・・・・・・・・・)

箒(しかし・・・シャルロットの席には人が居るが)

箒(セシリアとラウラの席は、空席のまま・・・)

箒(・・・・・・・・・)

箒(一夏の話し方から推測すると・・・)

箒(・・・・・・嫌な予感しかしない)

53: 2012/06/23(土) 16:10:06 ID:Uzv1VqoY



             -昼休み・食堂-

箒「・・・・・・・・・・・」 モグモグ・・・

箒(気のせいか・・・)

箒(クラスの皆も 私に対して、よそよそしい感じがした)

箒(・・・・・・・・・・)

箒(・・・私は、何かしたのだろうか)

一夏「・・・箒」

箒「・・・!」

箒「一夏か・・・」

54: 2012/06/23(土) 16:11:10 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・・・・・・・」

一夏「つ、次の授業、なんだっけ?」

箒「・・・・・・・」

箒「・・・現国だ、一夏」

箒「それに、私は大丈夫だ。 心配するな」 ニコ

一夏「・・・そうか」

55: 2012/06/23(土) 18:16:25 ID:Uzv1VqoY



             -数日後・放課後・IS学園・図書室-

箒(・・・・・・・・・・・・)

箒(・・・とは言うものの、やはり気になる)

箒(一夏は、あから様に話題をそらそうとするし・・・)

箒(合同授業の際に分かったが)

箒(鈴と千冬さんまでいないなんて・・・)

箒(・・・・・・・・・・・・)

56: 2012/06/23(土) 18:16:56 ID:Uzv1VqoY

箒(図書室の端末からなら・・・行けるだろうか?) ピピ・・・ピ・・・ピ・・・ピ

箒(・・・・・・・・・・・・) ピ・・・ピ・・・ピピ・・・ピ

箒(・・・!!)

箒(アクセスできた・・・!)

箒(・・・全学園生徒の名簿)

57: 2012/06/23(土) 18:17:39 ID:Uzv1VqoY

箒()

箒(・・・抹消!?)

箒(・・・・・・・・・・・)

箒(全員・・・在籍を抹消されている)

箒(・・・・・・・・・・・)

箒(・・・・・・一夏)

61: 2012/06/23(土) 20:06:52 ID:Uzv1VqoY



            -同・IS学園寮・一夏の部屋-

            コン コン

一夏「は~い」 ガチャ・・・

一夏「!」

箒「・・・一夏」

一夏「箒・・・」

62: 2012/06/23(土) 20:07:39 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・ほら、お茶」

箒「・・・ありがとう、一夏」 ズズッ・・・

箒「・・・ふう」

一夏「・・・・・・・・・・」

一夏「・・・それで? 何の用かな?」

箒「・・・・・・・・」

箒「・・・わかって いるのだろう?」

一夏「・・・・・・・・」

63: 2012/06/23(土) 20:08:20 ID:Uzv1VqoY

箒「一夏・・・お前が、私の為を思って」

箒「過去を探るな、と言ってくれた事は 感謝している」

一夏「・・・・・・・・」

箒「・・・でも、やはり気になって仕方ないんだ」

箒「・・・・・・・・・」

箒「頼む」

箒「教えてくれ、頼む・・・!」

一夏「・・・・・・・・」

64: 2012/06/23(土) 20:09:00 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・・・・酷い状態だったんだ」

箒「・・・え?」

一夏「あの時以来、箒は目に見えて元気が無くなっていった・・・」

一夏「食事もほとんど取らなかったし、いつも泣き腫らしていた」

一夏「・・・かわれるものなら、俺がかわってやりたかった」

箒「・・・・・・・・・・」

65: 2012/06/23(土) 20:10:11 ID:Uzv1VqoY

一夏「それでも最近は少しずつ持ち直して、良くなっていると思ってた」

一夏「・・・・・・そんな時」

一夏「お前は、記憶を無くして、劇的に元気になっていたんだ」

一夏「・・・嬉しかった」

箒「・・・・・・・・・・」

66: 2012/06/23(土) 20:10:52 ID:Uzv1VqoY

一夏「だから・・・俺は怖い」

一夏「また、元の様に、生気を失う事になるんじゃないかって・・・」

一夏「出来るなら、あんな箒は・・・もう、見たくない」

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「今からでも、遅くない。 考え直してくれないだろうか?」

67: 2012/06/23(土) 20:12:00 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・・・・・」



箒「一夏・・・」

箒「余程・・・恐ろしい事、なのだろうな・・・」

箒「私にとって・・・」

68: 2012/06/23(土) 20:12:42 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・でも、一夏が居てくれるのだろう?」

一夏「・・・!」

箒「それなら・・・きっと私は大丈夫だ」

一夏「・・・・・・・・」

箒「一夏が迷惑に感じるのなら・・・諦める」

一夏「・・・・・・っ」

箒「・・・・・・・・・」

69: 2012/06/23(土) 20:13:31 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・・・・・・」

一夏「わかった・・・」

箒「・・・!」

一夏「・・・・・・どこから話すかな」

一夏「・・・・・・・・・」

一夏「まず、シャルロットから始めるか」

箒「・・・・・・・・・」

一夏「シャルロットが、女の子だったのに 男装して転入して来た事は」

一夏「覚えているだろうか?」

箒「ああ・・・」

70: 2012/06/23(土) 20:14:11 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・俺は、彼女に同情しつつも 産業スパイである事実を見過ごせず」

一夏「千冬姉に相談して・・・できるだけ穏便に強制送還してもらった」

箒「・・・・・・・・・」

箒(この一夏は、IS学園特記事項を使わなかったのか・・・)

一夏「・・・・・・・・・そして」

一夏「ラウラの事件が起こった・・・」

71: 2012/06/23(土) 20:17:25 ID:Uzv1VqoY

一夏「ラウラの事は?」

箒「・・・転校初日に一夏を平手打ちしてたな」

一夏「そうだったな・・・」

一夏「理由は分からずじまいだけど、ラウラは俺を嫌っていた」

一夏「・・・いや、憎んでいた」

箒「・・・・・・・・」

72: 2012/06/23(土) 20:18:09 ID:Uzv1VqoY

一夏「ある日、鈴とセシリアが、ラウラに一方的にヤられていた」

一夏「俺は、二人を助けに入ったけど・・・」

一夏「逆にコテンパンにされてしまう」



箒(・・・私の方は、あの時、シャルロットも助けに入ったな)

73: 2012/06/23(土) 20:19:09 ID:Uzv1VqoY

一夏「はっきり言って、殺されると思った」

一夏「・・・そこに、千冬姉が助けに入ってくれたんだ」

箒「・・・・・・・」

一夏「・・・だが、ラウラは、何かに火が付いていた」

一夏「尊敬しているはずの千冬姉の制止を振り切って、俺に止めを刺そうとした」

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「もちろん千冬姉は、ラウラを止めた。 力ずくでな」

一夏「だけど・・・ラウラは暴走してしまう」

箒「・・・・・・・・・・」

74: 2012/06/23(土) 20:19:45 ID:Uzv1VqoY

一夏「千冬姉は、それをも切り伏せたけど・・・」

一夏「あいつは・・・ラウラは・・・何度も立ち上がっては、俺を殺そうとした」

一夏「そして、千冬姉もラウラが立ち上がる度に 切り伏せ続けた・・・」

箒「・・・・・・・・・・」

75: 2012/06/23(土) 20:20:38 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・どのくらい時間が経ったのか・・・」

一夏「突然・・・ラウラは、パタリと倒れた」

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「・・・ラウラは氏んでいた」

一夏「直接の氏因は、折れた肋骨が 肺に刺さった事による 窒息氏だそうだが・・・」

一夏「体中の骨が何十箇所も折れていて・・・酷い状態だったらしい」

一夏「千冬姉がラウラを救おうとして、何度も峰打ちを繰り返したせいだとか・・・」

箒「・・・・・・・・・・」

76: 2012/06/23(土) 20:21:19 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・千冬さんが学園に居ないのは、そのせいか?」

一夏「いや、違う・・・」

一夏「ラウラの事は、『事故』として処理されたから」

一夏「表向きは、お咎めなしだった・・・」

一夏「もっとも・・・本人は相当ショックを受けていたけどな」

箒「・・・・・・・・・・」

77: 2012/06/23(土) 20:22:18 ID:Uzv1VqoY



一夏「・・・さて、ここから いよいよ佳境に入る」



箒(・・・! ここから、だと!?)

一夏「・・・覚悟はいいか?」

箒「・・・あ、ああ」

一夏「・・・よし」

78: 2012/06/23(土) 20:23:12 ID:Uzv1VqoY

一夏「ラウラの事件の後・・・」

一夏「福音事件が発生した」

一夏「覚えているか? 箒?」

箒「臨海学校の時だったな」

一夏「そうだ・・・」

一夏「当初の作戦は、俺と箒で福音を仕留める手はずだった」

一夏「ふふ・・・俺も箒も、息巻いていたっけ・・・」

箒「・・・・・・・・」

79: 2012/06/23(土) 20:24:17 ID:Uzv1VqoY

一夏「でも・・・、俺は自分のドジのせいで、氏にかけてしまった」

箒「・・・お前は、悪くない」

箒「私の方こそ、専用機を与えられて・・・浮かれていた」

一夏「・・・・・・・・・」

80: 2012/06/23(土) 20:25:31 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・ここから先は、お前から聞いた話だ」

箒「う、うむ」

一夏「・・・お前は、先の戦いで負傷した 俺のかたきを打つ為」

一夏「千冬姉に無断で、しかもたった一人で福音に向かおうとした」

箒「・・・!?」

箒(あの時、私は・・・一夏の傍にいる事も、何かをする事も出来ずにいたはず・・・)

一夏「・・・そんな時、二人の協力者が現れた」

一夏「鈴とセシリアだ・・・」

81: 2012/06/23(土) 20:26:12 ID:Uzv1VqoY

一夏「二人は、こう言ったそうだ」



鈴「別にあんたの為じゃない」

鈴「あんたが氏ぬと、一夏が悲しむ・・・それが嫌なだけよ」

セシリア「それに・・・ドイツの代表候補生から救っていただいた 御恩を」

セシリア「わたくし達は、一夏さんに お返し していませんしね」



箒「・・・!!」

82: 2012/06/23(土) 20:26:45 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・お前は、心から二人に感謝したそうだ」

一夏「・・・・・・・・・・・」

一夏「・・・・・・でも」

一夏「・・・それが」

箒「・・・・・・・・・・」



一夏「二人の・・・最期の言葉になった・・・」



箒「!!!!!!!!」

83: 2012/06/23(土) 20:27:44 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・福音との戦いは熾烈を極め・・・」

一夏「二人共シールドエネルギーが尽きかけていたのに」

一夏「上空1000m付近で戦い続け・・・」

箒「・・・・・・・・・・」

一夏「ISが強制解除され・・・そのまま落下・・・」

箒「・・・!!!!」

84: 2012/06/23(土) 20:28:32 ID:Uzv1VqoY

一夏「俺が、白式の力で怪我を治し、駆けつけた時に見たものは」

一夏「箒が半狂乱になって戦っている姿だった・・・」

箒「・・・・・・・・・・・」

一夏「その時、俺は、よく分かっていなかったので」

一夏「とにかく箒をなだめて、目の前の敵を殲滅させる事に集中させた・・・」

一夏「事の真相を知ったのは・・・福音を倒した後だった」

箒「・・・・・・・・・・・」

85: 2012/06/23(土) 20:29:18 ID:Uzv1VqoY

一夏「その直後、俺たちは 学園の教師部隊と共に、二人を捜索したけど」

一夏「鈴は遺体で見つかり・・・セシリアは・・・行方不明のまま」

一夏「氏亡認定された・・・」

箒「・・・そう・・・だったのか」

一夏「・・・大丈夫か? 箒?」

箒「・・・・・・・・・・・・・」

箒「・・・ショックを受けている」

一夏「・・・そうか」

86: 2012/06/23(土) 20:29:59 ID:Uzv1VqoY

一夏「本当は謹慎と減俸処分で済むはずだったんだけど・・・」

一夏「千冬姉は、その責任を取って辞職した」

箒「・・・!」

一夏「まわりは、俺を含めて、みんな止めたけどな・・・」

一夏「千冬姉の決意は、硬かった」

箒「・・・・・・・・・」

87: 2012/06/23(土) 20:30:48 ID:Uzv1VqoY



一夏「・・・これですべてだ」

箒「・・・・・・・・・・」



箒(・・・きっと、こっちの私は)

箒(とてつもない自責の念に囚われたのだろうな・・・)

箒(・・・・・・・・・・)

箒(一夏が話したがらなかったわけだ・・・)

88: 2012/06/23(土) 20:31:37 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・・・・・・」

箒「一夏」

一夏「うん?」

箒「ありがとう。 真実を話してくれて」

一夏「・・・・・・・・」

箒「・・・だけど」

箒「もしかしたら・・・また私は、迷ってしまうかもしれない」

箒「だから・・・頼まれてくれないだろうか?」

一夏「!・・・うん」

箒「・・・その時は」

89: 2012/06/23(土) 20:33:50 ID:Uzv1VqoY

箒「優しく・・・抱きしめて欲しい」 ///



一夏「・・・・・・・・・」

             ガバッ・・・

箒「!!!???!?!!?」 ///

一夏「ああ・・・! わかった・・・!」



箒(こ、こら、い、今は・・・違っ・・・) アタフタ///

90: 2012/06/23(土) 20:34:39 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・箒、覚えているか? 教室で再会した時の事を」

箒「・・・えっ?」

一夏「俺・・・びっくりしたよ」

一夏「幼馴染の箒が、こんなに綺麗になっていた・・・」

箒「・・・!!!」 ///

一夏「・・・ふふ、そういえば、男女なのに同室にされてお互いびっくりしたよな?」

箒「・・・・・・う、うむ」 ///

一夏「最初は、身構えていたけど 昔の話や、近況報告で盛り上がって」

一夏「いつの間にか打ち解けていた・・・」

箒(・・・そこは、違うな)

91: 2012/06/23(土) 20:35:32 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・再開して数日だったけど、俺、思い切ってお前に告白したら」

一夏「OKがもらえて、信じられないくらい嬉しかった・・・」

箒(・・・そ、そんな早い段階で!?) ///

一夏「・・・・・・でも」

箒「・・・?」

一夏「千冬姉もそうだけど・・・箒も俺を・・・」

一夏「『守るべき者』と認識していた」

箒「・・・!?」

箒「そ、そんなことは無い!!」

一夏「・・・・・・絶対に無いか?」

箒「ああ!」

92: 2012/06/23(土) 20:36:52 ID:Uzv1VqoY

一夏「そうか・・・」

一夏「気のせいなら謝るけど」

一夏「箒が・・・俺を頼ってくれたことは、あるか?」

箒「・・・え?」

一夏「そりゃ、デートとか、一緒に過ごした事は、たくさんあるけど・・・」

一夏「俺が箒に『何か』を頼られた事は 一度もなかった」

一夏「勉強も、ISも、料理も・・・何一つな」

箒「・・・・・・・・・・・」

箒(・・・そう言われてみると・・・確かに・・・)

93: 2012/06/23(土) 20:37:51 ID:Uzv1VqoY

一夏「もちろん・・・ただのわがままかもしれない」

一夏「頑張って、実力をつけて、それからだ、とも思った」

一夏「しかし・・・現実は待ってくれなかった」

一夏「福音の時も、その後の箒も・・・俺は・・・守る事が出来なかった・・・!」

箒「一夏・・・」

94: 2012/06/23(土) 20:39:09 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・だけど」

一夏「今、箒は、俺に頼み事をしてくれた・・・!」

箒「・・・!」

一夏「俺は・・・嬉しい・・・箒」 グスッ・・・

一夏「俺を・・・初めて・・・頼ってくれた・・・!」 ギュッ・・・

箒「・・・・・・・・・」

95: 2012/06/23(土) 20:40:28 ID:Uzv1VqoY

一夏「・・・どんどん頼ってくれ、箒」

一夏「どこまで役に立てるか 分からないけど・・・」

一夏「お前が笑ってくれるなら・・・」

一夏「どんな重みも、辛さも、痛みも・・・俺が背負うから」

一夏「背負ってみせるから・・・!」

箒「一夏・・・」

96: 2012/06/23(土) 20:41:15 ID:Uzv1VqoY

箒(・・・伝わる)

箒(伝わってくる)

箒(一夏の・・・気持ちが・・・)

箒(とても・・・暖かい・・・)

箒(・・・・・・・・・・)

箒(・・・いや)

箒(この一夏の想いを受けるべきなのは・・・)

箒(私では無い・・・)

箒(・・・・・・・・・・)

97: 2012/06/23(土) 20:42:03 ID:Uzv1VqoY



             -夜・IS学園寮・箒の部屋-

箒(・・・・・・・・・・) カリカリ・・・

箒(・・・・・・・・・・) カリカリ・・・

箒(・・・・・・・ふむ)

箒(・・・こんなものか)

箒(・・・・・・・・・・)

箒(読んでくれるといいが・・・)

98: 2012/06/23(土) 20:43:08 ID:Uzv1VqoY



             -深夜・IS学園裏・雑木林奥-

箒「・・・・・・・・・・」 ザッ ザッ

箒「・・・確か、この辺り」 ザッ ザッ

箒「・・・!」

箒「あった・・・」

箒「・・・・・・・・」

99: 2012/06/23(土) 20:44:11 ID:Uzv1VqoY



 私は、電話ボックスに入ると、受話器を取ろうとした。



箒(・・・・・・・・・・・)

箒(・・・どうして私は、もっと早く こうしなかったのだろう?)

箒(・・・・・・・・・・・)

箒(好奇心に負けた・・・)

箒(人の性・・・)

箒(いや・・・業、と言うべきか・・・)

箒(・・・・・・・・・・・)

100: 2012/06/23(土) 20:45:08 ID:Uzv1VqoY



 私は・・・止めていた手を動かして受話器を取った。



箒「・・・・・・・・・」

箒「元の世界に・・・もどれ!」

             ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!

箒「・・・・・・・・・」

             キィ・・・パタン

箒「紅椿!」 スウウウウウウンッ!

101: 2012/06/23(土) 20:46:12 ID:Uzv1VqoY

 私は、ISを起動すると電話ボックスを持ち上げ、湖の中央まで運び

それを思い切り放り投げた。



箒「カラワレ! アマヅキ!」 ズバァ! ズバァ!

             ボウンッ!!

102: 2012/06/23(土) 20:47:45 ID:Uzv1VqoY



 砕け散る電話ボックス・・・。 それは、静かに湖面へ消えていった・・・。



箒「・・・・・・・・」

箒(これでいい)

箒(あれは、在っては いけない物だ・・・)

103: 2012/06/23(土) 20:49:32 ID:Uzv1VqoY



            -翌日の朝・IS学園・1組教室・-

箒「おはよう!」

一夏「!・・・お、おう! おはよう!」

セシリア「お、おはようございます、箒さん」

シャル「おはよう、箒」

ラウラ「おはよう」

一同(珍しい・・・箒(さん)から挨拶してきた・・・)

104: 2012/06/23(土) 20:50:29 ID:Uzv1VqoY



            -休み時間・IS学園・1組教室-

箒「・・・あ、一夏」

一夏「ん? どうした?」

箒「少し頼みがあるのだが・・・」

一夏「? なんだ?」

箒「なに、大した事じゃない」 クスッ

105: 2012/06/23(土) 20:51:26 ID:Uzv1VqoY

箒「職員室に、このプリントを届けてくれと 山田先生に頼まれていたのだが」

箒「代わりに届けてくれないだろうか?」

一夏「なんだ、そんな事か。 いいぜ、お安い御用だ」 ニコ

箒「すまないな、恩に着る」 ニコ

一夏「いいって事さ」 クスッ

106: 2012/06/23(土) 20:52:24 ID:Uzv1VqoY

セシリア(むむ・・・なんですの?)

ラウラ(そこはかとなく)

シャル(いい雰囲気・・・)

107: 2012/06/23(土) 20:53:08 ID:Uzv1VqoY

箒「・・・なあ、みんな」

シャル「・・・!?」

セシリア「は、はい、なんでしょうか?」

ラウラ「何か用か? 箒?」

箒「まあ、用・・・というか、お昼なんだが」

箒「たまには一夏抜きで・・・」

箒「私達だけで、食べないか?」

シャ・セシ・ラウ「「「・・・?」」」

箒「鈴には、私から声を掛けておく」 ニコ

108: 2012/06/23(土) 21:03:20 ID:Uzv1VqoY



             -昼休み・屋上-

箒「すまないな、急に誘って・・・」

シャル「ううん、別に構わないよ?」

鈴「ま、たまには、いいんじゃない?」

鈴(ちょっと驚いたけどね・・・)

セシリア「そういえば、こうやって女の子だけで集まるのは、初めてかもしれませんわね」

ラウラ「いつも一夏中心で行動していたしな・・・」

ラウラ「それで? いったいどうしたのだ?」

109: 2012/06/23(土) 21:04:14 ID:Uzv1VqoY

箒「う、うむ・・・・・・」

箒「・・・・・・・・・・実は、な」

シャル「うん?」

箒「・・・恐ろしい夢を見た」

ラウラ「ほう?」

箒「その夢の中での一夏は、私にぞっこんでな・・・」

110: 2012/06/23(土) 21:05:14 ID:Uzv1VqoY

セシリア「・・・どこが恐ろしい夢ですの?」

鈴「うらやましい夢見てんじゃないわよ・・・」

箒「それだけですめば・・・そうだったんだけどな」

シャル「・・・と言うと?」



箒「結論から言うと・・・」

箒「ここにいる全員と千冬さんがいなかった」

セシリア「・・・・・・・!?」

111: 2012/06/23(土) 21:05:59 ID:Uzv1VqoY

箒「ある者は、強制送還され」

シャル(・・・ボク?)

箒「ある者は、暴走で命を落とし」

ラウラ(・・・私のことか?)

箒「残りは・・・福音との戦いで戦氏していた」

鈴「・・・なんか・・・リアルね」

箒「ああ・・・本当にリアルだった。 だから・・・目を覚ました時」

112: 2012/06/23(土) 21:07:03 ID:Uzv1VqoY



箒「心から、夢で良かったと・・・私は思った」



セシ・シャ・ラウ・鈴「「「「・・・・・・・・・・・」」」」

箒「・・・どうしてそんな夢を見たのか、わからないが」

箒「みんなと・・・話がしたくなってな・・・」

箒「わざわざ来てもらった、というわけだ」

鈴「・・・・・・・・・・」

113: 2012/06/23(土) 21:07:55 ID:Uzv1VqoY

鈴「コメントに困るわね・・・」

シャル「そう? ボクは・・・嬉しく思ったけど」 ニコ

セシリア「わたくしもですわ」 クスッ

ラウラ「私は、鈴と同意見だ・・・」

箒「ふふ・・・さ、私のくだらない夢の話は、これで終わりだ」

箒「これからの事を話さないか?」

114: 2012/06/23(土) 21:09:05 ID:Uzv1VqoY

鈴「これからの事?」

箒「そうだ。 例えば・・・みんなでボウリングとかどうだ?」

箒「もちろん一夏も誘って」 ニコ

セシリア「まあ! それはナイスアイデアですわ! 箒さん!」 キラキラ

シャル「うん、いいね! それ!」

ラウラ「・・・ボウリング? 地質調査でもするのか?」

鈴「ラウラ・・・お約束のボケはいいから・・・」

箒「ハハハ・・・」

115: 2012/06/23(土) 21:10:20 ID:Uzv1VqoY



 こうして・・・私の不可思議な体験は、幕を閉じた。

まるで本当に夢だったかの様に・・・。



 しかし、そうではない事を示す証拠が 手元に残っていた。

116: 2012/06/23(土) 21:12:03 ID:Uzv1VqoY


          -夜・IS学園寮・箒の部屋-

箒(あの時買ったブラウスとトレーナー・・・)

箒(なぜ・・・?)

箒(・・・・・・・・・)

箒(・・・考えても無駄だな)

箒(そして・・・)



箒(あの手紙は無い)

箒(・・・読んでくれただろうか?)

箒(向こうの私・・・)

117: 2012/06/23(土) 21:13:02 ID:Uzv1VqoY


            篠ノ之 箒へ

 お前は、一人では無い。

お前には、一夏が居てくれている。



 過去の過ちに囚われて、今を生きる自分を頃しても・・・

一夏をも巻き込んで悲しいだけだ。

118: 2012/06/23(土) 21:14:06 ID:Uzv1VqoY


 抱え込むな。 吐き出せ。 一夏は、お前の苦しみを受け止めてくれる。

一人では辛いことも、二人でなら重みは半分になる。



 恐れるな。 幸せになる事を。 お前が不幸になる事を一夏は望まない。

一夏の幸せは、望む事は、お前が幸せになる事なのだから。

            もう一人の 篠ノ之 箒 より

119: 2012/06/23(土) 21:14:50 ID:Uzv1VqoY

箒(・・・身勝手な事を書いたかな)

箒(だが・・・)

箒(偽ることのない、私の本心だ・・・)

箒(・・・どうか・・・幸せに)

箒(・・・・・・・・・・・・)

120: 2012/06/23(土) 21:16:23 ID:Uzv1VqoY

箒(さて・・・)

箒(私の方は、前途多難だな・・・) フウ・・・

箒(・・・・・・・・・・・・)

箒(でも・・・)

箒(いつか、こっちの一夏と あ、あんなキスを・・・) ///

箒(~~~~~~~!!) ジタバタ ジタバタ ///

箒(・・・・・・・・・・) ///

121: 2012/06/23(土) 21:17:42 ID:Uzv1VqoY

箒(・・・よし) ///

箒(ボウリングには、あのブラウスを着て) ///

箒(気合を入れるぞ!) ///



             おしまい

122: 2012/06/23(土) 21:24:02 ID:Uzv1VqoY
お疲れ様でした。 箒編、終了です。
正直、箒の魅力を出せたかな? と、>>1は、疑問に思っております・・・。
楽しく読んでもらえたのなら、幸いです。

いつもながら、支援してくださった方、ありがとうございます。

124: 2012/06/23(土) 21:58:45 ID:NgtAES2Y
乙ー

引用: 箒「もしも一夏が、私にぞっこんだったら!」