21: 2008/01/02(水) 17:33:12.34 ID:f4Fnty2X0

シリーズ:岸辺露伴は動かない-雛見沢-

最初から
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter1

前回:
岸辺露伴は動かない-雛見沢-外伝:入江京介の『王国』




【警告】
ひぐらしをプレイする予定のある者は、
ここから先を読んではいけない。
岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

20: 2008/01/02(水) 17:32:35.53 ID:f4Fnty2X0
露伴が駅に着くと、圭一がちょうどよく走ってきた。

圭一「うぉーい、露伴さーん、こっちこっちー。」
露伴「圭一君。君はもうちょっと静かにはできないのか?
   さすがに街中で騒ぐのはどうかと思うんだが。」
圭一「あ、すんません。」
露伴「それで?けっこう歩くのかい?」
圭一「いや、そこちょっといって曲がったところっスよ。」

露伴は自転車を駅の駐輪場に止め、圭一と共に店へと向かう。

22: 2008/01/02(水) 17:34:12.30 ID:f4Fnty2X0
圭一「露伴さん、そういえば親父がいないうちに聞いてもいいっすか?」
露伴「あぁ、祟りの話かい?」
圭一「た、たたり・・・?そんな話なんすか・・・?」
露伴「今から5年前の綿流しのお祭りの日。
   ダム建設現場でバラバラ殺人事件が起きたのさ。」
圭一「バラバラ・・・殺人ですか・・・。」
露伴「被害者は工事現場の監督。犯人はその部下の従業員6人だ。
   ちなみに5人は自首したが、主犯格の男が逃走中で行方がわからない。
   それを村の人たちはオヤシロ様がダムを造るやつらに祟りを起こしたって言ってるのさ。」
圭一「な、なるほど・・・。それでレナが犯人っていう話につながるんですね。」

23: 2008/01/02(水) 17:34:57.10 ID:f4Fnty2X0
露伴「あぁ、犯人たちは遺体を隠すために、遺体をバラバラにした。
   全員で隠そうってわけさ。それで主犯格が隠した右腕だけが見つかってないんだよ。」
圭一「なるほど。よくわかりましたよ。
   でも、レナに聞いても知らないって言われたんですよね・・・。」
露伴「あぁ、村の人は嫌いだからね、この話。
   自分の村に祟りがあるなんて知られたくないだろう?」
圭一「そうっすよね。あ、露伴さんここっすここっす。」
露伴「じゃあ、祟りの話はまた今度だな。」
圭一「え、まだ続きあるんすかぁ?」
露伴「ふふふ。さぁ、入ろうぜ。」

露伴と圭一は店の階段を登っていく。
その店には「エンジェルモート」と店名が掲げられていた。

25: 2008/01/02(水) 17:36:08.13 ID:f4Fnty2X0
店に入るとすぐ、BOX席から呼ぶ声が聞こえた。

??「おぉーい、圭一ーッ。こっちだこっちー。」

この親子はどれだけ騒げば気が済むんだ?露伴はそう思った。

圭一「父さん、この人が露伴さん。
   で、露伴さん、こっちが俺の親父。」
父「こんにちわ。前原伊知郎といいます。よろしく。」
露伴「岸辺露伴です。画家の方とお会いできるなんて光栄です。
   今日はよろしくお願いします。」
圭一「露伴さん、そんな硬くならなくていいよ。俺の親父なんだからさぁ。」
伊知郎「えぇ、気軽にお話していただければいいですよ。
    お仲間ですからねぇ。」
露伴「そ、そうですか。画家の方に仲間と言ってもらえると光栄です。」
圭一「ちょっと俺トイレ行ってくるよ。日替わりセットでいいから頼んどいて。」

そう言うと圭一は席から立ち、トイレを探しに行った。

26: 2008/01/02(水) 17:37:14.11 ID:f4Fnty2X0
伊知郎「えっと、露伴さんはどうなさいますか?」
露伴「あ、私は夕飯は家にありますので、コーヒーとケーキくらいで。」
伊知郎「あらら、それは圭一が無理にお誘いしちゃいましたか?」
露伴「いえ、画家の方とお話できる機会ですからね。喜んでお返事しましたよ。」
伊知郎「あー、それがですね。露伴さん。
    息子には内緒にしてほしいですがね、私画家じゃないんですよ。」
露伴「それじゃあ何をなさってるんです?息子さんに隠してまで。」
伊知郎「いやぁ、同人作家をしてましてね。露伴さんも漫画家さんなら気が合うかなーなんて思ったんですよ。」
露伴「同人作家・・・ですか。」
伊知郎「えぇ。妻も仕事を手伝ってくれてます。
    商業の仕事もしてますので、一応そこそこに稼げてるんですよ。」

29: 2008/01/02(水) 17:40:44.60 ID:f4Fnty2X0
露伴は画家じゃないと知り、落胆した。
しかし、この時代の同人作家なら現代のオタク向けな同人作家とは違うかもしれない。
そう気を取り直し、話を続けることにした。

伊知郎「それで、露伴さんはどんなジャンルで活動されてるんですか?」
露伴「ジャンル・・・ですか?一応少年漫画を描いてるんですが。」
伊知郎「へぇ、ジャンプ系の801ですかー。シOタですかぁ?
     たまにいらっしゃいますよねぇ、男性で801を描かれてる方。」
露伴「あ、いや・・・僕は普通の・・・」
伊知郎「私は18禁の工口漫画ばっかり描いてましてね。だから息子には内緒なんですよ。
    まぁ、似たもの同士ですな。なっはっはっはー。
    私はですね、これから絶対にオタクの時代が来ると思ってるんですよ。
    そのとき、美少女工口漫画と801は絶対にヒットしますよぉ。
    そもそもですね、二次元というのは三次元と比べて・・・」

伊知郎は露伴の返答も聞かずにしゃべり続けている。
露伴は伊知郎の先見性には驚いたが、汚らわしい豚を見るような目で伊知郎を見ていた。

30: 2008/01/02(水) 17:41:43.60 ID:f4Fnty2X0
圭一「ただいまー。もう注文してくれた?」

圭一が戻ってきたことで伊知郎の固有結界は解除された。
露伴は今すぐに帰りたかったが、注文をしてしまったからにはしょうがない。
できるだけ伊知郎と会話しないように、圭一と雑談に花を咲かせるのだった。

圭一も伊知郎も食べ終わり、圭一が感想を漏らす。

圭一「親父が薦めてたからどれだけうまいかと思ってたんだけど、
   ・・・味だけで言えば、普通のファミレスだと思うんだけど・・・。」
露伴「あぁ・・・味は普通のファミレスだ。」
伊知郎「味なんかはどうでもいいんだ圭一!
    なー・・・いいだろうー。ねっ露伴さん☆」

露伴は苦笑いすることしかできなかった。

31: 2008/01/02(水) 17:42:56.35 ID:f4Fnty2X0
そう、この店は味で勝負しているわけではないのだ。
露伴は入店してからしばらくして気づいていたが認識したくなかった。
圭一もやっとそれに気づいたようである。

伊知郎「すいませェん、セットのデザートがまだ来ないんですけど。」
店員「あ、・・・も!も、申し訳ございません・・・。」
伊知郎「日替わりAセットのデザートでェす。さっきからずっと待ってるんですけどねェ。」
店員「その、・・・す、すみません。すぐにお持ちしますので・・・!」

新米っぽいウェイトレスさんはおたおたとしながら駆けて行った。

圭一「・・・父さん。・・・ひょっとしてこの店って・・・。」
伊知郎「いいだろうー。ここのウェイトレスさんの制服ー♪
    最高ですよね?露伴さん☆」

ドグシャァァァアアアッ!!

34: 2008/01/02(水) 17:46:27.43 ID:f4Fnty2X0
伊知郎「なっ!何をするだァーーーーッ!許さんッ!!父さんにも殴られたことないのにー!」
圭一「俺は息子だァーッ!!」
露伴「圭一君が殴らなければ、僕が二度と喋れなくするところだった。」
伊知郎「いいか圭一、父さんは決して不埒なつもりで来ているんじゃないんだぞ。
    あのグッドでキュートでエキセントリックな衣装から受けるインプレッションを!
    芸術的インスピレーションを!お前に感じさせてやりたかったんだよ!!
    お前だってこういう刺激を求めていたはずだ!そうだろ!?でも、一人じゃ恥ずかしい。
    わかってる!!だから父さんが無理やり連れてきたんだ!父さんのせいにしていいんだぞ!
    そしておまえには新しい仲間、露伴さんといういい友人がいるじゃあないかッ!!
    露伴さんと、この気持ちを語り合ってほしかったんだぁぁああああ!!
    そういうわけで、俺はトイレ行ってくる。露伴さんとしっかり語り合ってくれ。」

伊知郎は一人しゃべり終えるとトイレへと歩いていった。
圭一が露伴のほうを見ると、露伴は頭を抑え頭痛をこらえていた。

35: 2008/01/02(水) 17:47:45.65 ID:f4Fnty2X0
圭一「へ、変な親父で・・・すみません・・・。」
露伴「いや、圭一君も大変だね・・・。心中お察しするよ・・・。」

二人で伊知郎に失望していると、さっきデザートを頼んだウェイトレスさんが近づいてきた。

店員「あ、あの・・・えっと・・・。」
先輩?「ほら、落ち着いて、大変お待たせしました、って。」
店員「えっと・・・大変お待たせして申し訳ありませんでした・・・。」
先輩?「そうそうその調子、がんばってねー!」

先輩らしき店員は耳打ちすると、すぐに去って行った。
新米らしくウェイトレスは慣れない手つきでデザートを配膳する。


36: 2008/01/02(水) 17:48:24.22 ID:f4Fnty2X0
露伴「(メイド喫茶とかいうやつよりひどいな、こりゃ・・・。
    昭和の時代からこんな店があったのかよ。
    ん・・・?なんだか入江京介の声が聞こえた気がする・・・。)」

露伴はそう思い、あたりをキョロキョロ見渡してみるが、入江は見当たらなかった。
露伴がそうしていると、圭一が口を開いた。

圭一「・・・魅音、だよな?」
店員「・・・・・・へ・・・。」
圭一「お前・・・、何でこんなとこで働いてるんだよ!!」
魅音「え、あ、あの、・・・叔父さんのお店の手伝い・・・。」

37: 2008/01/02(水) 17:50:00.63 ID:f4Fnty2X0
圭一「・・・ほー。それはご苦労さんなことで。
   しかし・・・こうして見ると、結構そーいう服も似合ってるじゃねーの☆」
魅音「は、恥ずかしいんだからその、・・・あまり見ないでよー・・・。」
露伴「圭一君は魅音ちゃんのウェイトレス姿が見れて嬉しいそうだよ。」
圭一「ちょ、露伴さん、そんなこと言ってないっすよォ!!」
露伴「ふふふ。この前の罰ゲームで魅音ちゃんが意外に女の子らしいって気づいたって言ってたじゃあないか。
   だから可愛い魅音ちゃんのそういう格好を見つめずにはいられないんだよなー?」
圭一「露伴さん!!それは聞かなかったことにしてくれるって言ってたじゃないっすかぁぁー!!」
魅音「え・・・け、圭ちゃん・・そそそ、そんなこと思ってくれてたんだ・・・。」
圭一「だぁー!ちちち、違うって、ろろろ、ろ、露伴さんなんとか言ってくださいよぉ!!」
露伴「圭一君はね、魅音ちゃんとまた手を繋いで帰りたいんだってさ。」
魅音「あわわ・・・はわ・・わわ、わ、私は・・・別にい、いい、いいけど・・・。」
圭一「ぐわぁーもう露伴さんやっぱり何も喋らないでくれぇぇええええええ!!」
露伴「圭一君、魅音ちゃんと幸せにな。カッハッハッハーッ!」

41: 2008/01/02(水) 17:51:22.34 ID:f4Fnty2X0
周りの客に睨まれたので馬鹿騒ぎは止めにする。
まだ圭一はぶつぶつと言い訳をしていた。

魅音「・・・あ、あの・・・違うんです。」
露伴「ん?何がだい?」
魅音「わた、私!魅音じゃないんです!!!」
圭一「え・・・?魅音じゃないって、
   ・・・じゃあお前は誰だよ。園崎魅音だろ?」
魅音「あの・・・ごめんなさい。言いそびれてました。
   私、魅音の妹の園崎詩音なんです。」
圭一「えっと・・・さっきまでの反応は初対面だと思えないんだけどな・・・。」
詩音「えっと、おねぇからよく話を聞いていたので・・・」

圭一「そ、そっか・・・。あの、悪かったな・・・。」

圭一は何かを察したように急に態度を変えた。

42: 2008/01/02(水) 17:52:22.44 ID:f4Fnty2X0
ちなみに露伴は最初から察している。
詩音は父親のところに行くといっていた。なら、ここにいるのは魅音なのだ。
そして園崎姉妹お得意の入れ替わりのつもりなのだろう、と。

露伴「いや、悪かったね。僕らは君のお姉さんの知り合いなんだよ。」
詩音「いえ、おねぇも敵が多い人ですから。」
露伴「慣れてなさそうだけど、仕事初めてなのかい?」
詩音「実は・・・圭ちゃんと露伴さんが最初のお客さんなの。」
露伴「へぇ、最初のお客が姉の彼氏なんて奇遇だねぇ。」
圭一「ブッ!!」

コップに口を付けていた圭一が水を勢い良く吹き出した。
周りに撒き散らした水を気にせずにぎゃーぎゃーと反論を始める。
そうしてしばらく露伴は二人をからかっていた。
しばらくすると、詩音は休憩が来たらしく厨房の奥へと戻っていった。

43: 2008/01/02(水) 17:53:08.67 ID:f4Fnty2X0
圭一「露伴さん・・・今の・・・魅音すよね・・・?」
露伴「さぁ?どうだろうね。僕にはわからないよ。」

露伴がニヤニヤしながら圭一をからかっていると、伊知郎が戻ってきた。

伊知郎「圭一、露伴さん、そろそろいいかい?帰ろうと思うんだけど。」

やけに長いトイレだった。この親父、間違いなく賢者化している。
露伴はそんな天の声が聞こえた。

会計を済ました露伴は圭一達と別れ、自転車で雛見沢に戻っていった。
店を出た時点で、すでに夕暮れをすぎ、あたりは暗くなっていた。
家に戻った露伴が沙都子のお説教にあったのは言うまでもない。

153: 2008/01/03(木) 12:56:14.14 ID:qTxbOB2C0
■TIPS
----沙都子の検査----

  1983年(昭和58年)
       6月13日(月)朝

露伴「ガキが変な気を使うなよ。ほら、学校に遅刻するぜ。」
沙都子「行ってきますわぁー!夕方には帰ってこないとだめですわよーっ!!」

露伴と別れた沙都子と梨花は神社の階段を降りる。

沙都子「本当に梨花も来ますの?
    学校に行ってくださって結構ですわよ?」
梨花「僕も少し風邪っぽいので入江に診てもらいたかったのですよ。
   だから沙都子のせいじゃないのです。にぱー☆」
沙都子「まぁ、そう言うんでしたらいいですわ・・・。」

二人は露伴に嘘をついた。
今二人が向かっているのは学校ではない。
入江診療所だった。

154: 2008/01/03(木) 12:57:32.19 ID:qTxbOB2C0
沙都子は毎週日曜日の午前中に診療所で検査を受ける習慣があった。
本人は、入江の研究する栄養剤の効果を調べるための検査だと思っている。
昨日も本来は検査が予定されていたが、沙都子が日程を変更するよう頼み込んだ。
沙都子はどうしても露伴に村を案内したかったようだ。

実際にはこの検査は雛見沢症候群の診断である。
露伴にも知らされていないことだが、沙都子は過去に発症しているのだ。
それを知るのは診療所の職員と梨花だけだった。

155: 2008/01/03(木) 12:58:40.94 ID:qTxbOB2C0
入江「ようこそ、沙都子ちゃん。おはようございます。」
沙都子「おはようございますですわ。監督。
    昨日は無理を言って検査の日程をずらして頂いてすみませんですわ。」
入江「いえいえ、検査に協力していただいているのはこちらですからね。
   何日も来られないというのだと困りますが、1日ずらすくらいでしたらかまいませんよ。
   これからも何かありましたら気軽に言ってくださいね。」
沙都子「なんだかお金を頂いているのに、申し訳ないですわね。」
入江「いいんですよ。医学の発展に善意で協力して頂いているんですから。
   お互い持ちつ持たれつだと思ってください。
   それでは、沙都子ちゃんはいつもの検査室のほうにお願いします。」
沙都子「わかりましたわ。」

沙都子はそう言うと診察室を出て行った。
入江の下には梨花だけが残された。

入江「沙都子ちゃんが検査をずらしてほしいなんて言うからびっくりしたんですが、
   昨日の露伴さんという方は沙都子ちゃんと何かご縁でもあるんですか?」
梨花「沙都子と露伴は一昨日会ったばかりなのです。
   でも、すっごく仲良しなのですよー。にぱー☆」

156: 2008/01/03(木) 12:59:49.94 ID:qTxbOB2C0
沙都子の検査も一通り終わりかけ、最後の鷹野によるクイズ形式の検査が行われていた。
これは検査というより研究に近いものだ。雛見沢症候群を発症した沙都子の状態を観察するためのものである。

梨花「入江、沙都子の状態はどうなのですか?」
入江「うーん。なんとも言えませんね。
   過去にない結果が出ています。良い物なのか悪いものなのか・・・。」
梨花「どういうことなのですか?」
入江「えぇとですね。沙都子ちゃんの状態はL3マイナス。症候群の発症レベルは前回と変わりありません。
   ですが、肉体的な部分では悪化が見られます。
   交感神経がかなり活性化されていまして、あまり良い状態とは言えません。
   逆に、心理的な検査はすべて改善されている傾向にあります。
   過去にこういった結果が出たことはありませんので、これがどういったことなのか私には判断できません。
   総合的に診た発症レベルがL3マイナスであるとしか、申し上げることはできないんです。」
梨花「・・・。
   昨日、沙都子の叔父が、北条鉄平が帰ってきたのです。」

157: 2008/01/03(木) 13:01:02.28 ID:qTxbOB2C0
入江「そ、それは・・・大変なことになりましたね・・・。」
梨花「でも、露伴が追い払ってくれたのです。
   もう鉄平は帰ってこない約束をしたらしいのですよ。にぱー☆」
入江「ほ、本当ですか!?どうやって?」
梨花「僕は知らないのです。」
入江「・・・。
   露伴さんにお礼を言わなくてはいけませんね。
   今度、野球の練習でも見に来てくださるようにお伝えください。」

入江は露伴という男に少し興味を持った。

159: 2008/01/03(木) 13:01:31.43 ID:qTxbOB2C0
TIPS終わりですよ

そして、みなさん
保守しないで大丈夫ですよ
また投下するときに立てますから

200: 2008/01/03(木) 17:13:17.47 ID:qTxbOB2C0
ドタンバタンッ!!
ドタンバタンッ!!

誰かが騒ぐような音を聞き、露伴は目を覚ました。
まだ暗い。夜が明けている気配はない。
起き上がり、辺りを見渡してみる。
ドタバタと騒いでいたのは羽入だった。

露伴「ん・・・。何を騒いでるんだ。うるさいぞ。」
梨花「ほら、あんたが騒ぐから起こしちゃったじゃない。
   今はあんたのことを見える人間がいるのよ。」

露伴が寝ぼけた目の焦点を合わせると、冷蔵庫の前で戯れる梨花と羽入の姿があった。
その床にはワインらしき瓶と開いたキムチのパック、それからオレンジジュースが出ていた。

201: 2008/01/03(木) 17:13:59.40 ID:qTxbOB2C0
露伴「何をやってるんだ?それ、ワインじゃあないのか?」
梨花「ちょっと羽入にお仕置きをしてたのよ。」
羽入「あぅあぅ。辛いのですー。梨花のばかー。」
梨花「まだお仕置きが足りないようね。」

梨花はそう言ってキムチをもう一口食べた。
羽入はさらにドタバタと暴れながら抗議をしていた。

露伴「人が寝てるのに騒ぐんじゃあないよ。ったくッ。」
梨花「そうね、このくらいにしてあげるわ。」

そう言うと、梨花はキムチを冷蔵庫にしまった。
そしてグラスを二つ用意し、露伴のいるほうへと持ってくる。

202: 2008/01/03(木) 17:14:41.74 ID:qTxbOB2C0
梨花「あなたも飲む?ワインしかないけど。」
羽入「梨花ぁー、飲んじゃ駄目なのです。」
露伴「お前と飲むってのは気に食わないが、もらうとするよ。」
梨花「口の減らないやつね。
   まぁ、飲むと文句を言ってくるやつよりはマシね。」

露伴と梨花は沙都子を起こさぬように二人で飲み始めた。
いつもなら、梨花はオレンジジュースで薄めてワインを飲む。
味覚を共有する羽入がうるさいからだ。
しかし、今回は露伴に馬鹿にされるのが嫌でそのまま飲むことにした。

204: 2008/01/03(木) 17:16:54.07 ID:qTxbOB2C0
露伴「いつも飲んでるのかい?」
梨花「たまにね。羽入が文句を言うから頻繁には飲まないわよ。」
露伴「そういえば僕もシュークリームをおみやげにしろとか言われたな。」
梨花「辛いものを買ってくると喜ぶわよ。とびきりのやつをね。」
羽入「あぅあぅあぅーあぅーーあぅあぅ。」

もはやワインのせいでまともに喋れなくなった羽入が何か抗議しているようだった。

梨花「羽入に、あなたの推理を聞いたわ。」
露伴「・・・。(勝手に話すなよな、この馬鹿が。)」
梨花「私は、そんなこと考えたこともなかったわ。
   富竹と鷹野が氏ぬことにより山狗の警備が薄くなる。
   そして私は殺されるんだと思っていた。」
露伴「軍隊ってやつを甘く見てるだろ。
   たとえ二人が氏んでも警備を解いたりはしない。
   間違いなく警備を強化するさ。」

206: 2008/01/03(木) 17:17:49.49 ID:qTxbOB2C0
梨花「そうね。私も羽入から聞いて納得したわ。
   100%警備を強化しないとしても、何回か警備が強化される世界があって、
   1回くらい私が助かる世界があってもおかしくないものね。」
露伴「ふん、なかなか鋭いじゃないか。
   僕は警備を強化する可能性のほうが高いとは思うが、それも絶対じゃない。
   君の言うとおりだ。」
梨花「そうすると、あなたの言うとおり、
   山狗を超える組織、または山狗が私を頃すということになるわね。」
露伴「あぁ、山狗の場合は部隊全てなのか、一部なのかはわからないがね。」


ここで二人の会話は途切れる。二人はしばし沈黙を続けた。
露伴は特に気にも止めずにワインを飲み続けている。
時折聞こえる沙都子の可愛いいびきや寝言を楽しんでいるようだ。

207: 2008/01/03(木) 17:18:43.53 ID:qTxbOB2C0
露伴とは対照的に、梨花は飲むのをやめ、何かを考え込んでいるようだった。
長い長い沈黙の末、梨花はやっと何かを心に決めたようだった。

梨花「露伴、あなたに謝ることがあるわ。」
露伴「なんだよ、急に。」
梨花「私はあなたに何をしても無駄だと言ったわ。
   でも、あなたは鉄平を退け、沙都子を助け出した。」
露伴「ふんッ、ちょっとは見直したってわけか?」
梨花「えぇ、そうよ。
   私は過去に何度挑んでも沙都子を助けることはできなかったわ。
   鉄平が帰ってきた時点で終わり。私にはどうすることもできないといじけていた。
   しかしあなたはその運命を退けた。たった一日で、いえ、違う。
   たった数時間のうちに私が何十年も退けられなかった運命を退けた。」
露伴「それで?だからどうしたって言うんだよ。」

208: 2008/01/03(木) 17:19:57.23 ID:qTxbOB2C0
梨花「私はあなたに託してみようと思う。」
露伴「・・・どういうことだ?」
梨花「私はあなたが嫌いよ。だから本当は伝えたくなかった。
   けど、あなたなら私を頃す犯人を暴いてくれるかもしれない。
   だから託そうと思うの。」
露伴「だから何を託すんだよ?話が見えてこない。」
梨花「入江が、あなたに会いたいと言っていたわ。
   沙都子を助けてくれた礼を言いたいと。野球の練習をしているときにでも会いに来てほしいそうよ。」
露伴「それは・・・願ってもないことだが。
   野球の練習ってのは?」
梨花「興宮小学校のグランドでやってるわ。たしか、次の練習は木曜日だと思う。」
露伴「木曜日・・・綿流しまで日がないな。」
梨花「そうね。別に診療所に行ってもいいと思うけど。」
露伴「僕の能力は、人前で使えない。診療所は自衛隊の人間もいるんだろ?
   会うなら、確かに野球の練習で会ってから二人きりになるのが都合が良い。
   時間はなくなるが、それがベストだろう・・・。」

そう言うと、今度は露伴が考え込んでしまった。
梨花は邪魔をしないように羽入をからかっていた。

210: 2008/01/03(木) 17:20:56.09 ID:qTxbOB2C0
露伴「うん、木曜に会うことにする。
   それより、なぜ入江と会ったんだい?」
梨花「嫌に鋭いわね・・・。」
露伴「ふふふ。これは興味で聞いただけだよ。」
梨花「午前中は診療所に行っていたのよ。
   あなたにはまだ教えてなかったわね。沙都子が発症したのは言ったわよね?
   雛見沢症候群はね、一度発症するともう元には戻らないのよ。」
露伴「・・・。沙都子ちゃんは普通に見えるが・・・。」
梨花「入江の言い方をすれば、
   薬で発症レベルを抑えられているだけ、
   という言い方になるわ。」

211: 2008/01/03(木) 17:22:13.99 ID:qTxbOB2C0
露伴「もう少し詳しく話せよ。」
梨花「症候群の発症は発症レベルL1(-)~L5(+)に分類されるらしいわ。
   今の沙都子の状態はL3(-)。一般的な雛見沢の住人と変わらない。
   ただ、一度L5状態になった沙都子は一般の住人より過敏になっているそうよ。
   スズメバチに刺されたのと似ていると言っていた気がするわ。」
露伴「アナフィラキシーか。つまり、沙都子ちゃんは薬を与えないとすぐに発症すると?」
梨花「そういうことになるわね。沙都子は普通の子よりも心理的ストレスを受けている。
   だから投薬をやめれば、すぐに発祥レベルは上がると考えられるわ。
   ただ、あなたが鉄平を退けてくれたおかげでストレスはちょっと減ったみたいよ。
   今日の検査はそいう面では改善が見られたそうよ。」
露伴「そうなのか・・・。薬を飲んでいるところは見たことないが?」
梨花「いちいち鋭いやつね。沙都子はあなたに見られたくないよの。
   今は朝と夜の2回。あなたが起きる前とお風呂に入っている間に注射を打っているわ。」
露伴「・・・そうかい・・・。」

212: 2008/01/03(木) 17:23:19.21 ID:qTxbOB2C0
梨花「そろそろ、私は寝るわ。
   明日に響くと困るから。あなたも、明日は忙しいと思うわよ。」
露伴「ん?明日は何かあるのか?」
梨花「それは私からは言わないでおくわ。
   沙都子が言いたそうだったから。じゃあ、おやすみなさい。」
露伴「あぁ・・・。」

梨花が眠ったあと、露伴は羽入に話しかける。
羽入はずっと酔って気持ち悪がっていたが、だいぶ戻ったようだった。

露伴「おい、おまえがオヤシロ様なんだよな?」
羽入「そうなのですよ。」
露伴「雛見沢症候群ってのは・・・おまえのせいなのか?」
羽入「あぅあぅ・・・。それは・・・僕にはなんとも・・・。」
露伴「ふん・・・。もしそうなら、ぶん殴ってやりたかったんだがな。」
羽入「あぅあぅ。僕のせいじゃないのです。」

露伴は羽入を無視して布団に入る。

雛見沢症候群にとりつかれた人々。
沙都子だけではない、あの少女、園崎詩音もそうだ。
大石や赤坂もそうなのかもしれない。
彼女たちの不幸を考えると、露伴は胸が熱くなった。

44: 2008/01/02(水) 17:53:18.63 ID:f4Fnty2X0
おわりっす


to be continued...
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter10

引用: 岸辺露伴は動かない-雛見沢-