17: 2008/01/06(日) 17:49:08.78 ID:yZkUnqOA0

シリーズ:岸辺露伴は動かない-雛見沢-

最初から
岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter1

前回:岸辺露伴は動かない-雛見沢-chapter9



  1983年(昭和58年)
       6月14日(火)




沙都子「露伴さーん、もう朝ですわよー?起きてくださいまし。
    梨花も、起きるんですわよぉー。」

今日も同じく、沙都子が1日の始まりを告げる。
彼女の一日は今日もまた幸せなものになるに違いない。
露伴もこの日常に慣れたのか、文句を言わずに目を覚ます。
いただきますで叱られることもない。

梨花は相変わらずだった。

沙都子「梨ぃ花ぁー、もう起きませんと遅刻しますわよー?」
露伴「置いてって遅刻させてやれよ。夜にキムチでも食べて起きてたんだろ。」
沙都子「あら、露伴さんよく知ってますわね。
    梨花ったら私には食べられないほど辛いキムチを食べるんですわよ。
    ほらぁ、梨花ぁー?」
梨花「みー。もう起きてるのですよー。だからお布団に入れといてほしいのです。」
沙都子「お布団から出ないと起きたことにはなりませんのよっ!」
岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

18: 2008/01/06(日) 17:50:14.84 ID:yZkUnqOA0
なんとか梨花をたたき起こした沙都子も食卓に着く。

沙都子「お味はいかがですこと?」
露伴「いつも通りだよ。

            ・・・いつも通り美味しい。」

沙都子が満面の笑みを浮かべる。
羽入もニヤニヤと露伴を見ていたので天国への扉(ヘブンズ・ドアー)でぶん殴られていた。

羽入「あぅあぅ、痛いのです。」
沙都子「露伴さん、今日はお暇ですこと?」
露伴「ん、まぁ、特に予定はないが。」
沙都子「それはよかったですわ。今日は学校に来て頂きますわよ。」
露伴「ん?授業参観か何かかい?僕は嫌だぞ。」
沙都子「違いますわ。今日は家庭科の授業でカレーを作るんですわ。
    そこで、部活の料理勝負があるので呼んで来いと魅音さんから言われてますのよ。」
露伴「まぁ、それなら別に行ってもいいんだが、部外者の僕が行っていいのかよ?」
沙都子「そこは魅音さんが話を通しておくと言ってましたわ。
    今日は営林署の職員さんにカレーをご馳走するそうですわよ。」

なぜだか露伴は寒気を感じた。

19: 2008/01/06(日) 17:51:00.68 ID:yZkUnqOA0
朝食を終え、露伴たちは家を出た。
魅音が早めに露伴を連れて来いと言っていたようで、沙都子がせかしていた。
しかし、露伴も梨花も相手にしてくれず沙都子はむくれるのだった。

学校に到着すると魅音が待ち構えていた。
レナと圭一はあとから来るらしい。

魅音「お、やっと来たね。遅いよっ、露伴さん。」
露伴「やぁ魅音ちゃん、1日ぶりだね、ふふふ。」
魅音「なーんか嫌な笑い方するなぁ。
   まぁ、露伴さんこっちこっち、先生に会ってもらうからさ。」

そう言って魅音は露伴を連れて職員室へ向かう。
残された沙都子と梨花は教室へと行った。

21: 2008/01/06(日) 17:52:19.70 ID:yZkUnqOA0
職員室へ向かう途中、露伴は魅音に問いかける。

露伴「先生に会うのはいいんだが、僕はどうしたらいいんだ?
   何も説明を聞いてないぞ。」
魅音「あぁ、そうだね。ごめんごめん。
   今日はカレーを作るって言うのは聞いてる?」
露伴「あぁ、それは沙都子ちゃんから聞いたよ。」
魅音「じゃあ話は簡単だね。
   露伴さんはカレーのプロってことで先生に紹介してあるからさ、
   お手本にカレーを作ってくれればいいわけ。
   で、私たちのカレーと含めて得点を争ってもらうよ。」
露伴「おい・・・僕はカレーのプロなのか・・・?」
魅音「あははー、露伴さんは何でもできちゃいそうだからね。
   勝手にそういうことにしといたよ。ほら、入った入ったー。」

そう言い、魅音が職員室の扉を開ける。

魅音「先生ー、昨日話した露伴さんが来てくれましたー。」

魅音がそう言うと職員室にいた青髪の女性は振り返り、ものすごい勢いで睨み付けてきた。
そしてなぜか急に満面の笑みを浮かべ、露伴に微笑みかけている。
露伴は再び寒気を感じた。

22: 2008/01/06(日) 17:53:37.27 ID:yZkUnqOA0
立ち尽くす露伴を魅音が無理やり職員室へと入れた。

魅音「そ、それじゃあ私は教室に行くんでっ!」

露伴が教室に入ったとたん魅音は全力ダッシュで教室へと走っていった。
残された露伴はどうしたものかと思っていると、女性が話しかけてくる。

女性「あなたが露伴さんですね。私は知恵留美子。魅音さん達の担任です。
   ささ、こちらにお座りください。」

そう言うと、知恵は来客用の椅子へと露伴を案内した。
露伴は寒気は気のせいだったと思い、言われたままにする。

露伴が椅子に座って待っていると、知恵はコーヒーを淹れ、持ってきてくれた。
そう露伴は思った。

ティーカップの中身はカレースープだった。

23: 2008/01/06(日) 17:54:15.99 ID:yZkUnqOA0
知恵「ふふふ、カレー仲間とお会いできて嬉しいですわ。
   今日はよろしくお願いしますね。」

知恵の目がカレー色に染まり、瞳は煮込んだカレーのようにぐつぐつとしている。
その眼光に露伴は目を逸らすこともできずにおびえている。

露伴「あ、いや、僕は・・・」
知恵「それではHRまで時間がありますので、カレーについて語り合いましょう。
   露伴さんはどんなカレーがお好みなんですか?」
露伴「あ、あはははは、僕は・・・」

露伴はHRまでに、自分の悪寒が正しかったことを思いしらされるのだった。

55: 2008/01/06(日) 19:58:31.69 ID:yZkUnqOA0
昼10時過ぎ。
午前中の短めの授業を終え、生徒たちは校庭へと出ていた。
いまから校庭でカレーを調理し、営林署の職員さんに食べてもららう予定らしい。
すでに調理するための机なども出され、ほとんど準備は終わっているようだった。
カレー作りの準備を終えた露伴も校庭へと出てみることにした。
すると魅音を見つけた。さっきの恨みを晴らすべく露伴は話しかける。

露伴「おい、魅音ちゃん、ちょっといいか?」
魅音「おっと、露伴さん、その顔はずいぶんとやられたみたいだねぇ。
   いまちょっと困ってるから、後でにしてもらえる?」
露伴「ん?なんかあったのかい?」
魅音「ガスコンロがさ、露伴さんのぶんを予定していなかったみたいで、1個足りないんだよね。
   下の学年の子供は班で料理をするから、そこの人数を先生が調節してるよ。」

露伴はなにか閃いたようでニヤニヤしながら魅音の下を離れた。
名簿を見て班分けをやり直している知恵を見つけ、露伴が近づいていく。

露伴「ふふふ、知恵先生、もっと簡単な方法がありますよ。」
知恵「あら、露伴さん、もう準備は大丈夫なんですか?」
露伴「えぇ、それよりガスコンロが足りないそうですね。」

56: 2008/01/06(日) 19:59:25.06 ID:yZkUnqOA0
知恵「そうなんです。予備のコンロが壊れていまして。」
露伴「下の学年の子よりですね、上の学年を変えればいいんですよ。」
知恵「でも、上の学年の子は自分一人で作ることになっていますから。」
露伴「ふふふ、自分一人で作れるといいんですけどね。
   一人じゃ料理できない子と委員長が二人で1班になったほうがいいんじゃあないですか?
   刃物を使う以上は危ないですからね。」
知恵「一人じゃ料理できない子・・・ですか?」
露伴「えぇ、前原圭一君は非常に危なっかしいと思いますよ。
   委員長に教えてもらいながら作ったほうがいいと思います。」
知恵「た、たしかにそうですね・・・そうしましょうか。」

露伴は思惑通りに知恵を丸め込むと再び魅音のところへと戻る。

57: 2008/01/06(日) 20:00:14.61 ID:yZkUnqOA0
露伴「魅音ちゃん、圭一君が一人じゃあ危なっかしいから、
   委員長とやることになったよ。」
魅音「へ?圭ちゃんと委員長って・・・あ、あたしぃ!?」
露伴「あれ、魅音ちゃんが委員長なのかい?
   僕は全然知らなかったよ。ふふふ。」

露伴は明らかに知っていたという顔でニヤニヤしている。

魅音「ちょ、ちょっと、露伴さんー。
   りょりょ、料理なら、レ、レ、レナのほうが教えるのはうまいよ!」
露伴「ふーん、じゃあレナちゃんのほうがいいって、先生に言ってこようかい?
   レナちゃんと圭一くんが二人っきりで同じ班のほうがいいってさ。」
魅音「うー。露伴さんの馬鹿ー。絶対罰ゲームにしてやるー!」
露伴「ははは、面白い罰ゲームに期待してるよ。」

露伴の復讐は成功したようである。

99: 2008/01/06(日) 21:55:29.38 ID:yZkUnqOA0
準備も整ったようで知恵がカレーについての説明を始めた。
生徒たちはみんなうんざりとした様子で聞き流していた。
最後に知恵から一言付け足しがあった。

知恵「あ、あとですね、前原君は委員長と二人で一班で習いながらやるように。
   委員長に任せっぱなしではだめですからね。ちゃんと前原君もやるんですよ。」
圭一「えっ!?ちょ、先生、俺らは一人一鍋カレー作るじゃないんですか?」
知恵「コンロが一つ足りません。それに前原君は危なっかしいですから、
   委員長にちゃんと指導してもらうように。いいですね?
   それでは皆さん作り始めてください。」
生徒「はーーーーーい。」

100: 2008/01/06(日) 21:56:40.12 ID:yZkUnqOA0
魅音「そ、そういうわけだから、圭ちゃん、同じ班らしいよ。」
レナ「圭一くんに料理教えるのは楽しそうだよね、魅ぃちゃん。」
魅音「あ、あはははは、圭ちゃんを放っておいたら、
   圭ちゃんの指を煮込んだカレーになっちゃうからねぇ。」
圭一「ぐッ・・・おい、魅音、そりゃどーいう意味だよ。」
沙都子「あらあら、もう仲間割れですの?これはもう勝負が見えましたわねぇ。」
露伴「ふふふ、圭一君、仲良くやらないと罰ゲームで仲良くすることになるぜ?」
梨花「圭一と魅ぃは料理も罰ゲームも両方仲良しでらぶらぶなのです。にぱー☆」
魅音「ちょっちょちょちょ、梨花ちゃんららら、ら、らぶらぶって、
   おおお、お、おじさんはそんなつ、つもりじゃないんだけどなぁ。」
レナ「ほらほら、みんなはやくしないと時間なくなっちゃうよ。」
沙都子「そうですわね、梨花ぁ!早く作りますわよー。」
梨花「みー。」

皆が各自の調理台に去っていくと、そこには圭一と魅音が取り残されたのだった。

102: 2008/01/06(日) 21:57:39.03 ID:yZkUnqOA0
圭一「じゃあ、魅音、俺たちもやるか。」
魅音「あ、う、うん。そうだね。」
圭一「俺は、料理できないからさ。魅音が指示を出してくれよ。
   本当は全部魅音に任せるのがいいんだろうけど、先生がさっきだめだって言ってたしな。」
魅音「それじゃあ、最初はご飯を炊かないといけないんだけど、圭ちゃんわかる?」
圭一「飯ごう炊飯だよな?それだけは自力でできるぜっ!」
魅音「本当に?無理しなくていいよ?」
圭一「へへっ、まぁ見てろって。」

圭一は米をとぎ、飯ごうに入れ、自分の手首で水の量を決める。
確かに飯ごう炊飯は手馴れているようだ。

魅音「へぇー、ちょっと意外・・・。」

魅音は圭一が飯ごうを火にかけるまで見とれているようだった。

103: 2008/01/06(日) 21:58:34.87 ID:yZkUnqOA0
圭一「おい、魅音できたぞ。おーい。」

そう言って圭一が魅音の顔の前に手を振る。
飯ごうをセットした後手を洗ったのか、水しぶきが飛び散った。

魅音「うわっ、ちょっと圭ちゃん!顔に水飛ばさないでよー。」
圭一「おまえがぼーっとしてるからだろ。
   それで、次はどうするんだよ?こっからは俺は何もわからないぞ。」
魅音「うん、それじゃあ野菜を切るよ。圭ちゃん、包丁はできる?」
圭一「いや、ぜんぜんできないぞ。でもやらないと怒られるからな、教えてくれよ。」
魅音「うん、じゃあほら、こうやって親指を当てて、こう・・・。」

魅音はするするとジャガイモの皮をむいて見せた。


104: 2008/01/06(日) 21:59:33.68 ID:yZkUnqOA0
圭一「魅音、おまえもしかして料理得意なのか?」
魅音「得意ってわけじゃないけど、婆っちゃに習ってるから大抵のものは作れるよ。」
圭一「・・・野菜炒めとか?」
魅音「圭ちゃん、急に何言い出したの?
   野菜炒めなんて誰でも作れるっしょー。」
圭一「いや、俺のお袋のメニューに野菜炒めってなくてさ・・・。
   だから、魅音は作れるのかなって、いや、なんとなく思っただけだぜ。
   そんなことどうでもいいよな。ほら、さっさと切っちまおうぜ。」




魅音「・・・今度作ってあげるよ。」
圭一「あ・・・うん・・・。」

気まずくなった二人はお互い言葉につまってしまった。

沙都子「ふふふ、何をしてるんだかわかりませんけれど、絶好のチャンスですわ。」

105: 2008/01/06(日) 22:03:25.08 ID:yZkUnqOA0
沙都子が圭一と魅音の調理台に近づいていこうとしたとき。
沙都子の頭に何かが当たった。

コツンッ

沙都子「痛ッ!?なんですの?」

沙都子が振り返ると、そこには露伴がいた。
露伴にゲンコツをもらったようだ。

沙都子「ろ、露伴さん、何をしますの?レディの頭は殴るためのものではありませんことよ?」
露伴「まぁ、普段の部活なら何をしても止めないけどね。
   今日だけは二人の邪魔はしちゃだめだよ、沙都子ちゃん。」
沙都子「これは部活ですのよ?確実なる勝利を得るためには、トラップを仕掛けるしかありませんわ!?」
露伴「圭一君が作るんだから、負けないだろう?
   それに沙都子ちゃんの作ったカレーを食べてみたいよ。」
沙都子「あら・・・そうでしたの?うーん、
    そうですわね。梨花に任せっきりというのもおもしろくありませんわ。
    露伴さん、私のカレーに負けるのを覚悟しなさいませー!」

沙都子はそう言うと、自分の調理台に戻って行ったようだ。
沙都子と入れ違いにレナが露伴に近づいてくる。

106: 2008/01/06(日) 22:04:56.88 ID:yZkUnqOA0
レナ「露伴さん、沙都子ちゃんの扱い上手いですね。
   それに、圭一くんと魅ぃちゃん、いいないいな。」
露伴「魅音ちゃんも素直じゃないからね、あのくらいしたほうがいいんだよ。
   (それにそのほうがおもしろいし。)」
レナ「魅ぃちゃんいいな。なんでレナには気をつかってくれないのかな?かな?」
露伴「うん?レナちゃんの何に気を使ったらいいんだい?」
レナ「はぅ・・・。露伴さんひどいよぅ。
   レナも圭一くんのこと好きなんだよ?だよ?」
露伴「知ってるよ。でも、魅音ちゃんは圭一君に恋してるからね。
   レナちゃんは恋に恋してるんだろ。それと圭一君が好きなのは別さ。
   だから僕が気を使うことなんて何もない。」
レナ「ふーん。やっぱり露伴さんはなんでもお見通しなんだね。
   かっこいいな。露伴さんに恋しちゃおうかな☆」
露伴「おいおい、中学生には興味ないからやめてくれよ。」
レナ「あはは、フられちゃったかな、かな。」
露伴「ふふふ、大人をからかうもんじゃないよ。」

107: 2008/01/06(日) 22:05:54.70 ID:yZkUnqOA0
魅音「ちょ、圭ちゃん、そんな力入れたら危ないって。」
圭一「ん・・・だけど、全然うまくいかなくてよ・・・。」

魅音が圭一にそっと近づく。

魅音「ほら、圭ちゃん、手ぇ貸して、こうやってね・・・。」
圭一「あ、あぁ・・・。」
魅音「ほら、こうだよ、こうゆっくり・・・。」
圭一「こ、こうか?あれ?」
魅音「ほら圭ちゃん、もう1回手ぇ貸して。こうして、あんまり力まないで・・・。」
圭一「ちょ、魅音あんまりくっ付くなよ。」
魅音「こうしないと教えられないでしょ。もう、ほら、手ぇ貸してってば。」
圭一「いや、その・・・魅音・・・胸が当たって・・・。」
魅音「・・・。
   圭ちゃんの馬鹿・・・。」

しかし、そのまま魅音は圭一の手をとり教え続ける。
圭一もそれ以上は文句を言わずに習うことにしたようだった。

191: 2008/01/07(月) 00:00:40.62 ID:utujCsjO0
知恵「はーい、みなさん時間でーーーす。
   カレーをお皿に盛り付けて、採点できるようにしてくださいねー。」

知恵の号令を聞くと、生徒たちは盛り付けをすませた。
営林署の職員さんもすでに準備はできているようで、すぐに採点が始まる。
低学年の子たちが作ったカレーがどんどんと採点されていった。

そして、沙都子と梨花のカレーも採点される。
沙都子が多少手を出したとしてもベースは梨花が作ったものだ。
ほとんどの審査員たちには高評価だったようである。

続いてレナのカレー。
これはもう何も書くことはない。
文句なしの満点のようだ。否定的な声などひとつも聞こえなかった。

次は魅音と圭一のカレー。
カレー以外にも魅音が持ってきた食材に彩られ、見た目ならTOP確実。
味も好評のようだった。圭一が剥いたじゃがいもに皮がついていて審査員は苦笑していた。

193: 2008/01/07(月) 00:01:18.66 ID:utujCsjO0
知恵「それでは、最後にお手本のカレーを作ってくれた露伴さんにお願いします。」
露伴「あー、ちょっといいかい?」

露伴の言葉に何事かと審査員は耳を傾けた。

露伴「カレー、作ってないんだ。」

露伴の衝撃の一言に審査員たちはざわつく。
知恵先生も露伴が何を言っているのかわからず、返答に困っているようだった。

196: 2008/01/07(月) 00:02:27.20 ID:utujCsjO0
露伴「インドではさ、カレーっていう料理はないんだよ。
   カレーという言葉は古来、インドでは使われていなかったんだ。
   外国人が様々なインド料理を見て全てが"カレー"だと勘違いしたものなんだ。
   たとえるなら、そうだな。味噌を使っている料理を全て味噌汁と呼ぶような。
   そんな感じなんだよ。日本には味噌汁がちゃんとあるけどね。」

露伴の薀蓄に審査員たちは静かに聞き入っている。
露伴が間違ったことを言っているわけではないので知恵も特には口を挟まなかった。

露伴「だから、僕が今日作ったのはインド料理なんだ。
   美味しいカレーは、生徒達も作れそうだったからね。
   みなさんにインドの料理を食べてもらおうと思ってつくったんだ。
   審査員の人に限らず生徒の分もあるから、あとで食べてみてほしい。」

薀蓄を言い終えると、露伴は審査員のもとに"カレー"とナンを出した。
昭和58年の人々にはナンは珍しかったのか、みな不思議そうに見ている。

197: 2008/01/07(月) 00:03:38.88 ID:utujCsjO0
露伴「それはナンと呼ばれるパンみたいなもんだ。
   パンと違い、イースト菌で発酵させていないので、あまりふわふわとしていない。
   インドでは、このようなナンは高級なんだ。小麦が手に入らないみたいでね。
   だから庶民の味というわけじゃあないんだが、まぁ、食べてみてくれよ。
   そのナンに"カレー"を付けて、食べるんだ。」

審査員達はものめずらしそうに露伴の"カレー"を食べてみた。
たしかに日本のカレーとは違う珍しい味だった。
好評不評は分かれていたが、皆食べたことのない味を楽しんでいるようだった。
知恵がものすごく幸せそうに食べていたのは言うまでもない。

198: 2008/01/07(月) 00:04:48.85 ID:utujCsjO0
全てのカレーを審査員が食べ終えたあと、魅音が提案した。
部活の順位を決めたいため、自分達のカレーには点数ではなく順位を付けてほしい、と。
審査員たちは快く了承し、生徒達が食べ終えたあとに順位を発表することになった。

沙都子「露伴さん!インド料理なんてできたんですの?
    私にも食べさせてくださいませ。」
圭一「露伴さァァアんッ!食べるッ!オレも食べるッ!食べるんだよォーーーーーーッ!!
   オレに『食べるな』と命令しないでくれェーーーッ!」

部活メンバーの他にも興味をもった生徒達が露伴のところに集まり、露伴の"カレー"は大人気だった。
子供達は上手い不味いと批評しながら、インドの味を楽しんでいるようだった。

レナ「露伴さん、こんなすごい料理作るなんて、どうやって準備したのかな?かな?」
露伴「君達が授業をしてる間にね、車を借りて材料を買ってきたんだよ。
   ただカレーを作るだけじゃ、おもしろくないだろ?」
レナ「みんなすっごく喜んでるよ。露伴さん、やっぱり露伴さんに恋しちゃうかも☆」
露伴「褒めても何もでないぞ。」
レナ「はぅー・・・、やっぱりイジワルだなぁ。」
露伴「ふふ、みんなのカレーを食べに行かないかい?」
レナ「そうだね、そうだね、レナのカレーも食べてほしいな。」

199: 2008/01/07(月) 00:05:35.24 ID:utujCsjO0
そのあとは部活メンバー集まってのカレー試食会だった。
露伴の"カレー"は生徒と知恵に食べつくされてしまったため、
それ以外のカレーを皆で批評しあう。

圭一「やっぱりレナのカレーには勝てないよなー。」
沙都子「そうですわね、流石にこれには勝てませんわ。
    やっぱりトラップが・・・・。」
露伴「うん・・・、たしかにこれは美味しいな。」
レナ「えへへ、沙都子ちゃんたちのも美味しいよ。
   沙都子ちゃんも料理上手くなったね。」
沙都子「私だっていつまでも料理ができないままではありませんのよ。
    でも、やっぱりダークホースは露伴さんでしたわ。」

200: 2008/01/07(月) 00:06:14.83 ID:utujCsjO0
魅音「うんうん、露伴さんなら美味しいカレーを作れると思ってたけど、
   インド料理作っちゃうんだもんねー。こりゃおじさんも一本取られたよ。」
圭一「露伴さんのカレー、美味しかったぜ。俺、ナンって初めて食べたよ。」
露伴「圭一君たちのカレーも美味しかったよ。
   すごく『甘くて』美味しかった。ふふふ。」
レナ「あはは、そうだね、魅ぃちゃんたちのカレーはすっごく『甘かった』ね☆」
沙都子「あら?そうでしたかしら。私には普通の辛さでしたわよ。」
梨花「沙都子にもいつか、『甘ーい』カレーを作れる日が来るのですよ。にぱー☆」

梨花はそう言うと、沙都子の頭をなでる。

沙都子「・・・。これも馬鹿にされてるんですわよね?」

部活メンバーの笑いが校庭に響きわたる。
圭一と魅音も顔を真っ赤にしながら笑っていた。

201: 2008/01/07(月) 00:07:20.37 ID:utujCsjO0
生徒達も食べ終ると、順位の発表があった。

1位は露伴。
審査員は好みは分かれたものの、珍しくインド料理を食べられる機会だったようで、高い評価をしていた。
そして、知恵先生の主張により一位となった。

2位はレナ。
カレーの味だけで言えば、露伴のものより評価は高いようだった。
順当な順位である。

3位は梨花・沙都子。
4位の圭一・魅音と審査員の料理の評価は同等だった。
しかし、同着を許さないということで、年少の彼女達のほうが高い順位となった。

4位は圭一・魅音。
豪華さやカレーの味はよかったものの圭一の皮付きじゃがいもが悪かった。
トータルでは梨花・沙都子と同点だが、上記の理由で最下位となる。

202: 2008/01/07(月) 00:08:09.51 ID:utujCsjO0
圭一「再びかァァーーーッ!!!」
沙都子「圭一さんはこれで3連続部活でビリですわー。
    おーっほっほっほ。」
魅音「くっそー、まさかビリになるとはなー。」
露伴「ふふふ、罰ゲームの取り決めはしてなかったけど、僕が決めていいのかい?」
魅音「だめだめ、ちゃんと取り決めしなかったんだからなしだよ!」

露伴「だが、断る。」

露伴「君達は授業だったかもしれないが、僕は部活だからとわざわざ呼ばれてきてるんだ。
   これで罰ゲームなしってわけには、いかないんじゃあないのかい?」
魅音「・・・わかったよ。」
露伴「ふふふ、じゃあ放課後までに考えておくから、また後で会おうか。」
魅音「あ、私も露伴さんに用があったんだよ。
   うちらが授業終わるまで、待っててもらっていい?」
露伴「あぁ、そのつもりだよ。
   あの先生が帰らせてくれなそうだし・・・・ね・・・。」

露伴は覚悟を決め、職員室へと戻っていくのだった。

382: 2008/01/07(月) 23:59:09.78 ID:bO6a4Wci0
校長の鳴らす鐘が授業の終わりを告げる。
知恵にカレー漬けにされた露伴は鐘の音で意識を取り戻した。
昼休みに意識を失ってから今まで放心状態だったようだ。
HRを終えて教室を出てくる知恵と入れ違いに、露伴は教室へと向かった。

魅音「おーい、露伴さんこっちこっちー。」
露伴「ん?話って部活なのかい?」
魅音「いや、今日は部活はないよ。私がバイトがあるからね。」
露伴「それじゃあ話ってやつを始めてくれよ。」
魅音「うん、簡単に言うと、露伴さんに綿流しのお祭りを盛り上げてほしいってことなんだけど。」
露伴「・・・。」

383: 2008/01/08(火) 00:00:20.93 ID:ZAvA6hiQ0
魅音「露伴さんにね絵を描いてもらおうっていう案が出たんだよ。
   似顔絵とか、あとは子供が喜ぶ絵とか、そういうのを描いてもらう出し物をさ。」
露伴「めんどくさそうだな。遠慮させてもらっていいかい?」
圭一「なんだよ露伴さん、俺たちで宣伝する作戦までもう考えてあるんだぜー?」
レナ「レナ達もお手伝いするから、やってほしいな。」
露伴「勝手に話を進められても困るぜ。僕だって初めて来るお祭りなんだから、楽しませてくれよ。」
魅音「時間はそんなにずっとじゃなくていいんだよ。
   ちょっとした出し物のつなぎでやってくれれば大丈夫だからさ。」
沙都子「露伴さん、やってくださいませ。
    私も露伴さんの活躍を見たいですわよっ。」

385: 2008/01/08(火) 00:02:07.26 ID:ZAvA6hiQ0
部活メンバーは露伴を説得しようと必氏だった。
露伴はどうしたものかと悩んでいたが、梨花が何気なく言った一言が決め手となった。

梨花「お手伝いをすれば、実行委員会のテントに自由に入って泡麦茶を飲み放題なのです。」

梨花を除く部活メンバーにはそれはビールを餌に露伴を釣ろうとする言葉に聞こえただろう。
しかし、露伴と梨花にとっては違った。それは実行委員会のテントに自由に出入りすることにより、
5年目の祟りの情報がもっとも早く入手できるということを示していた。

露伴「わかったよ。そんなに言うならやってやるよ。」

露伴が観念したと思い、部活メンバーは大喜びして宣伝の方法を語りだす。
露伴は皆に気づかれないように魅音に言う。

露伴「魅音ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいかい?」
魅音「うん?みんなに聞かれたくない話?」
露伴「あぁ、一応そうしてくれ。」

露伴と魅音はトイレということにして教室からでた。

386: 2008/01/08(火) 00:03:12.15 ID:ZAvA6hiQ0
魅音「もしかして、お金の話ー?」
露伴「あぁ、報酬があるならその話もしたほうがいいんだろうけど、僕が聞きたいのはそれじゃあない。」
魅音「報酬はね、できれば現金はやめてほしいかな。お祭りで遊び放題とか、
   梨花ちゃんが言ってたビール飲み放題とかにしてほしいねぇ。」
露伴「あぁ、それは考えておくよ。それより、詩音ちゃんと会ったんだよ。」

魅音は一瞬ビクッとなったあと、平静を保って答える。

魅音「あ、あぁ、バイト先で会ったんでしょ?で、電話で聞いたよ。」
露伴「いや、その前にね。町で偶然会ったんだよ。」
魅音「もしかして、露伴さん・・・。」
露伴「あぁ、あの日は詩音ちゃんが親に呼び出されてたっていうのも知ってる。」

魅音は頭を抱えながら答えた。

魅音「あちゃー。バレてたのかぁ。圭ちゃんには言っちゃった・・・?」

387: 2008/01/08(火) 00:04:48.10 ID:ZAvA6hiQ0
露伴「いや、僕は何も言ってないよ。圭一君がどう思ってるかはしらないけどね。」
魅音「それじゃあ、秘密にしといてよ?」
露伴「あぁ、そのつもりさ。それで、詩音ちゃんの連絡先を聞きたかったんだが、いいかい?」
魅音「詩音の連絡先?何か用があるなら伝えておこうか?」
露伴「いや、今度いろいろ話す約束をしててね。だから自分で連絡するよ。」
魅音「そっか、それじゃあね、たしか・・・」

露伴は魅音から電話番号を聞きメモする。
用も済んだので二人は教室へと戻ることにした。

魅音「偶然町で会ってるとは、さすがに予想できなかったなー。」
露伴「僕も最初は魅音ちゃんだと思ってたからね。」
魅音「でも、詩音と露伴さんが仲がいいなんてちょっと意外かも。」
露伴「うーん。まぁ、おもしろい子だとは思うけどね。
   魅音ちゃんも、仲良くしないとだめだよ?」
魅音「え?詩音から何か聞いたの?」
露伴「さぁね。ふふふ。」

露伴はそう言うと、教室の扉を開け、中に入っていってしまった。
魅音も続き、教室へと戻る。
皆はまだ露伴の出し物について話し合っているようだった。

388: 2008/01/08(火) 00:05:55.38 ID:ZAvA6hiQ0
しばらくは露伴の催し物の話をしていたが、途中から脱線し雑談になっていた。
魅音がそろそろバイトの為に帰るというので、罰ゲームの話題になる。

露伴「うーん、前回と一緒じゃあ面白くないしな。
   でも圭一君と魅音ちゃんふたりの罰ゲームなんだよなぁ。」
沙都子「圭一さんは裸で家まで帰ればいいんですわ。」
レナ「はぅ・・・圭一くんのおっとせいかぁいいよぅ・・・。」
梨花「圭一と魅ぃの二人ならなんでも罰ゲームじゃなくなっちゃうのです。にぱー☆」
露伴「そうだなぁ。じゃあ罰ゲームは圭一君に言っておくからさ、綿流しのお祭りまでに実行するってことで。」
沙都子「魅音さんに何かするんですの?」
露伴「ふふふ。それは実行してからのお楽しみだよ。なぁ、圭一君。」

露伴はそう言い、教室の隅へと圭一を連れて行った。
露伴が何かを告げると圭一は顔を真っ赤にして騒ぎ立てる。
部活メンバーはその圭一の様子から罰ゲームとして十分なのだろうと理解し、その罰ゲームに決定することになった。

389: 2008/01/08(火) 00:06:59.13 ID:ZAvA6hiQ0
それで今日はお開きとなり、皆で教室から出ていく。
校庭を通り、別れるところまで来る。

魅音「それじゃあ、みんな、今日は部活なしで悪かったね。
   また明日学校で会おう。」
圭一「じゃあな、梨花ちゃん、沙都子ちゃん、露伴さん。」
沙都子「また明日でございますわー。」
梨花「さようならなのです。」
露伴「あぁ、また会おう。」

そう言うと、圭一と魅音は帰ろうとする。
だが、レナが付いてこなかった。

圭一「おう、レナ?置いてくぞー?」
レナ「あ、うん。レナは露伴さんとお話したいことがあるから、先に帰ってほしいかな?かな?」
圭一「え?そうなのか?うーん・・・。」
レナ「圭一くんは魅ぃちゃんと帰っていいよ。
   レナと露伴さんのお邪魔をしちゃ嫌だよ☆」

レナが笑顔でそう答えるので、圭一は素直に魅音と二人で帰ることにした。
沙都子と梨花も気を使って先に帰っていった。
露伴はレナと二人きりになるが、何の用があるのかまったく心当たりがない。
レナに促され、二人は教室へと戻っていくのだった。

516: 2008/01/08(火) 22:12:24.68 ID:vZcue+Vw0
露伴とレナは無人の教室へと戻ってきた。
教師や営林署職員が学校にいるうちは施錠されないようだ。
レナが自分の机に座ったので、露伴は隣の机に腰掛けた。

露伴「それで、何の用なんだい?」
レナ「露伴さんはなんだと思うのかな?かな?」
露伴「さっきから考えてるんだけど、思いつかなくてね。」
レナ「あれれ、露伴さんはなんでもお見通しだと思ったのになぁ。」
露伴「それじゃあ、僕が推理できる範囲の話なんだな・・・。
   ・・・圭一君のこととかかい?」

517: 2008/01/08(火) 22:13:45.41 ID:vZcue+Vw0
レナ「ぶー。ざんねんでしたー。違うよーぅ。
   レナも圭一くんと魅ぃちゃんのことは応援してるんだよ?」
露伴「そうかい。昼間ので怒ってるのかと思ってね。」
レナ「ううん。露伴さんの言うとおりだし、レナは二人のこと応援するよ。」
露伴「そりゃよかった。レナちゃんを怒らせると鉈で殴られるかねないからね。」
レナ「あれ?露伴さんの前で鉈持ってきたことあったかな?」
露伴「いや、なんとなくイメージだ。それより、何の話だい?」
レナ「うーんとね・・・、お父さんの話なんだけど・・・。」
露伴「僕はレナちゃんのお父さんに会ったことないぞ。」
レナ「あ、うん。そうなんだけど、ほかの人には相談しずらくって。
   露伴さんなら何かいい答えを教えてくれるかと思ったんだよ。」
露伴「ふーん。まぁ、話してみなよ。」

レナは父について話す。いや、正確には彼女の両親。
それと父の愛人についての話だった。

518: 2008/01/08(火) 22:14:23.62 ID:vZcue+Vw0
要約すると話はこうだ。

彼女の父は母と別れてから仕事もせずに愛人に貢いでいた。
その愛人が行方不明になり、またよろしくない店に通い続けている。
どうしたらいいものだろうか。

短くまとめると、この3行が彼女の話だった。
もう少しレナが話した内容を詳しく書いておこう。

519: 2008/01/08(火) 22:15:47.40 ID:vZcue+Vw0
彼女の一家は母の仕事の都合で雛見沢から茨城へと引っ越した。
その後、母は不倫をし、最終的には離婚。レナを引き取ろうとする。
しかし、レナは父と雛見沢に戻ることを決めた。
彼女たちは雛見沢に戻ってきた。母の代わりの慰謝料と共に。

雛見沢に戻ってからの父は定職につかなかった。
母からの慰謝料は父が働かずに日々を過ごすのに十分な金額だったのだ。
父の日々とは、その金を使い、興宮の風俗店に通う日々。
そしていつしか見つけてきた愛人に貢ぐ日々へとなった。

最近はその愛人の行方がわからなくなり、父は再び店へと通うようになった。
以前からレナは父をなんとかしなければと思っていたらしい。
しかし、他人に相談しずらく、自分の心に留めていたのだという。
そこで、雛見沢の人間ではない露伴に、相談をしてみようかと考えたそうだ。

520: 2008/01/08(火) 22:16:42.37 ID:vZcue+Vw0
露伴「ふーん。まぁ大体はわかったよ。で?
   僕にどうしてくれって言うんだい?お父さんをぶん殴って働かせればいいのか?」
レナ「あはは、それで働いてくれればいいんだけど・・・。
   どうしたらいいのかなって思って聞いてみたんだよ。」
露伴「レナちゃんはどうしたらいいと思うんだい?」
レナ「うーん、やっぱりお父さんにはちゃんと働いてほしいと思うかな。かな。
   お父さんとちゃんと話したほうがいいのかな、って思うよ。」
露伴「そうかい。じゃあ、話は終わりでいいよな?」

露伴は机から立ち上がり、教室を出て行こうとする。
レナは意味がわからず、露伴を眺めていたが、露伴が帰ろうとしていることに気づき声を出す。

レナ「はぅー、露伴さんひどいよ。ひどいよ。
   まだレナの話は終わりじゃないよ。」

521: 2008/01/08(火) 22:18:11.98 ID:vZcue+Vw0
レナの制止を聞き、露伴は再び机に腰掛けた。
露伴はなにやら不満そうに口を開いた。

露伴「レナちゃん、人に相談する場合。2つのパターンがある。
   ひとつはどうしたらいいかまったくわからない場合。
   もうひとつは、どうしたらいいかはわかっているが、それが正しいのか自信がない。
   賛成されるしろ反対されるしろ他人に後ろ押ししてもらって選択をしたい場合だ。
   いまの君はどっちだい?」
レナ「うーん・・・。一応、後者になるのかな?かな?」
露伴「そうだね。父にどうして欲しいのか、君はもう考えている。
   それで、なんで僕に話したんだい?村の人間じゃないからかい?」
レナ「・・・。」

522: 2008/01/08(火) 22:18:57.75 ID:vZcue+Vw0
露伴「さっきのパターンの話に戻るぜ?
   前者の場合なら、僕に相談してくれれば僕も思いつくことを答えるよ。
   君より年上なんだし、僕に相談してくれてもいいと思う。
   でも、後者なら、僕に相談するのが正しいのかい?」
レナ「はぅ・・・。じゃあ誰に話せばいいのかな?かな?」
露伴「それは、僕にはわからないが僕じゃあないと思うぜ。
   たとえば、君にとって魅音ちゃんは何だい?」
レナ「魅ぃちゃんは、友達・・・かな?」
露伴「その友達は、君が相談を持ちかけたら乗ってくれないのかい?
   君の意見を後押しして助けてくれないのかい?」
レナ「魅ぃちゃんは、相談に乗ってくれるとおもうけど・・・。」

523: 2008/01/08(火) 22:20:05.52 ID:vZcue+Vw0
露伴「父が無職で恥ずかしいってかい?それとも愛人に貢いでて恥ずかしいか?
   そんなことで相談できないような友達なら、僕はいらないね。」
レナ「はぅ・・・。」
露伴「僕は康一君っていう親友がいるがね、もし僕が君の立場ならすぐに相談するね。
   友達っていうのはそういうもんじゃないのか?」
レナ「うん・・・。」
露伴「おいおい、僕だって好きでこんなこと言ってるんじゃあないんだぜ?
   察しのいい君ならわかるだろ・・・。」
レナ「あはは。そうだね、露伴さんは意地悪なフリして、いい人だからね。」
露伴「ふん。そういう余計なことは言わなくていいよ。」
レナ「あはは、ごめんね、ごめんね。
   ちゃんとレナの友達に相談するね。」
露伴「あぁ、そうしてくれよ。」

524: 2008/01/08(火) 22:20:43.92 ID:vZcue+Vw0
レナ「でもでも、レナは露伴さんも友達だと思ってるんだよ?」
露伴「・・・それはどうだろうね。」
レナ「あはは、素直じゃないな、露伴さん可愛いな。」
露伴「う、うるさいぞ。さっさと君の身近な友人に相談しろよ。」
レナ「あはは。そうするね。聞いてくれてありがとう。露伴さん。」

露伴「・・・。
   ・・・僕も、君の友達なんだろ?」
レナ「うん。露伴さんも友達だよ。あはは。」

レナの顔はとても可愛らしい笑顔だった。
父の話をしているときのレナはずっと悲しい顔をしていた。
露伴は自分が彼女を笑顔にさせたと思うと、少しうれしくなるのだった。
露伴ももう雛見沢の子供たちの友達なのだ。

525: 2008/01/08(火) 22:21:34.80 ID:vZcue+Vw0
話を終えた露伴たちは帰ることにする。
二人は再び校庭を抜け、別れるところまできた。

レナ「それじゃあ、露伴さん。今日は本当にありがとね。」
露伴「あぁ、大したことじゃないよ。」
レナ「うーん。とっても大切なことを教わったと思うよ。
   友達ってとっても大切だと思うな。」
露伴「それじゃあ、友達に相談するだけじゃなくて、
   友達の相談にも乗ってやるんだな。」
レナ「そうだね。最近、魅ぃちゃんに何かあるのかな?かな?」
露伴「やっぱり、レナちゃんは鋭い子だ。猫をかぶりすぎだよ。」
レナ「あはは。なんのことかな?かな?」
露伴「まぁ、魅音ちゃんより詩音ちゃんのほうに悩みがあるんだが。」
レナ「詩音ちゃん・・・?圭一くんが言ってた妹さんかな?」

527: 2008/01/08(火) 22:22:36.29 ID:vZcue+Vw0
露伴「あぁ、あんまり姉妹仲がよくないみたいでね。
   どうにかしてあげたいんだけど・・・。(発症されるわけにはいかないからな。)」
レナ「そっか、じゃあレナも魅ぃちゃんから相談されたらちゃんと聞いてあげるね。」
露伴「あぁ、そうしてあげてくれよ。
   それじゃあ、そろそろ暗くなってくるし、帰ろうか。」
レナ「そうだね、露伴さん、またね。」
露伴「あぁ、またね、気をつけるんだよ。」

レナは嬉しそうに帰っていった。
露伴も沙都子の待つ家へと歩き出す。
すると、朝から大人しくしていたやつがしゃべり始めた。

羽入「ロハンはみんなに頼られているのですね。」

528: 2008/01/08(火) 22:23:51.62 ID:vZcue+Vw0
露伴「さぁね。僕は知らないよ。」
羽入「あぅあぅ。お祭りの出し物を任されたり、
   レナの相談に乗ったりすごいのですよ。」
露伴「梨花も言っていただろう。祭りの件は、実行委員会のテントに入れれば、
   富竹と鷹野の氏の情報が一番早く入手できる。
   綿流しまでに鷹野とは接触するつもりだが、彼女の氏を止められるかはわからないからな。
   (僕は止める気は元からないけどな。こいつにはこう言っておいたほうがいいだろう。)」
羽入「そうなのですか?ボクはそんなこと思いつかなかったのです。
   梨花もロハンもすごいのです。」
露伴「レナちゃんの件も同じだ。彼女の家庭環境が発症の要因になっている可能性がある。
   その影響を少しでも取り除いておいただけだ。」
羽入「だったら、ロハンがレナのお父さんを殴って仕事させたほうがいいんじゃないのですか?」
露伴「それじゃあ何の解決にもならないだろう。馬鹿だな。」
羽入「あぅあぅ・・・。」

529: 2008/01/08(火) 22:25:11.65 ID:vZcue+Vw0
露伴「レナちゃんには、ちょっと悪いことをしたかな、とは思うけどね。」
羽入「そうなのです。もっと親身に相談してあげればいいのに、ロハンは素直じゃないのです。」
露伴「そういうことじゃない。彼女は両親のせいで恋愛に対して嫌悪感を持っているみたいだった。
   僕はレナちゃんは圭一君にそんなに本気じゃないと思っていたんだがね。
   その嫌悪感から本気になれていないのかもしれない。」
羽入「ロハンの言うことはよくわからないのです。あぅあぅ。」
露伴「魅音ちゃんと圭一君をくっつけようとしたのは失敗だったかなってことだよ。
   レナちゃんも圭一君を好きかもしれないってことさ。」
羽入「レナは圭一を好きだと言っていたのです。
   ロハンは聞いていなかったのですか?」
露伴「・・・少し黙ってろ。オヤシロ様ってのは馬鹿の神様なのか?」
羽入「あぅあぅー。神様に馬鹿って言っちゃいけないのです。
   馬鹿っていうロハンが馬鹿なのですー。あぅあぅ。」
露伴「ふんッ。」

露伴は羽入を無視して帰りを急ぐ。
沙都子がもう料理を始めている頃だろう。
今日はなんとか沙都子に怒られない時間に帰れるようだ。

566: 2008/01/09(水) 00:02:58.14 ID:VnyNuKnW0
■TIPS
----罰ゲーム----

圭一と魅音は仲良く下校する。
今日は露伴が来たこともあり、話題には尽きない。
楽しくしゃべりながら歩くうちに、魅音の家への曲がり角が近づいてくる。

圭一「じゃあさ、綿流しのお祭りのときは俺が司会やるって。
   露伴さんのすごさをみんなに伝えるのは俺の仕事だっ!」
魅音「そうだね。圭ちゃんが司会をやれば客寄せはばっちりだねぇ。
   私は何で盛り上げようかなぁ。」
圭一「他の部活メンバーで出し物でもやればいいんじゃないのか?」
魅音「うーん、梨花ちゃんの奉納演舞があるからねぇ。
   沙都子も露伴さんの手伝いをするって聞かなそうだしねぇ。」
圭一「そうだよな、沙都子のやつすっげぇなついてるもんなぁ。
   年の離れた兄妹に見えるぜ。」
魅音「兄妹ねぇ・・・。おっと、もう家だね。
   じゃあ、圭ちゃん。また明日ねー。」

568: 2008/01/09(水) 00:03:53.68 ID:VnyNuKnW0
ついに魅音の家への曲がり角へと到着した。
魅音は圭一に別れを告げ、立ち去ろうとした。


圭一「あ、魅音・・・ちょっと待ってくれ。」
魅音「うん?おじさんはバイトがあるからそんなに時間がないんだよ。
   長話なら、また今度聞くよ?」
圭一「いや、あの・・・そんなに時間はかからないぜ・・・。」
魅音「どうしたの圭ちゃん、顔真っ赤だよ?
   もしかして、愛の告白ー?おじさん照れちゃうなー。あっはっはー。」
圭一「いや、ち、ちがうんだよ。
   魅音、ちょっと目を閉じててくれ。」
魅音「うん?こうでいい?」

そう言って魅音は素直に目を閉じた。
圭一は覚悟を決める。

569: 2008/01/09(水) 00:05:07.66 ID:VnyNuKnW0
圭一も目を閉じ、そっと魅音の唇に自分の唇を重ねた。
魅音の体がビクッっとするのがわかる。少し力みすぎて上唇が痛かった。
だが、こうなってはもはや関係ない。圭一は心の中で必氏に数を数える。

圭一「(1・・・、2・・・、3・・・、。)」

3つ数えると圭一は唇を離した。
目を開けると、魅音も目を開け、じっと見つめてくる。

圭一「ああ、あ、、そそ、その・・・。」

なんとか言葉を出そうとするが、気が動転していてうまくしゃべれない。
そんな圭一を制して魅音が口を開いた。

魅音「圭ちゃん・・・あの、もう1回・・・。」

そう言って魅音は再び目を閉じ圭一に顔を近づけた。

571: 2008/01/09(水) 00:07:13.32 ID:VnyNuKnW0
混乱していた圭一はその魅音の顔を見ると、なぜか気持ちが落ち着いてきた。
そして再び唇を重ねる。今度は上唇が痛かったりしない。
秒数も数えたりはしない、二人が満足して唇を離すまで口付けは続いた。
2度目の口付けを終え、落ち着きを取り戻した圭一は言い訳を始める。

圭一「あ、あの・・・露伴さんの罰ゲームが・・・さ・・・、
   『魅音に3秒以上キスをする』だったからさ。その・・・後回しにしてもあれだし。
   その、あの・・・。」

圭一は喋れば喋るほど混乱していく。
魅音はそれを聞き、ちょっとがっかりしたような表情を見せて俯いた。
それがさらに圭一を混乱させる。もはや圭一の言葉は言葉になっていなかった。

魅音「圭ちゃんさ・・・2回目は、罰ゲームじゃないよね・・・?」

魅音がポツリと呟いた。
圭一はなぜか反射的に答えていた。

圭一「あ、あぁ、罰ゲームじゃない・・・。」

その答えを聞くと、魅音は少しだけ照れるように微笑み、もう一度目をつむった。
圭一はその魅音の表情を見ていると、再び自然と口付けをしていた。

3度目の口付けを終えると、魅音はとびっきりの笑顔を見せた。
そして、別れを告げ、家へと走り去ってしまう。

圭一は返事もできずに立ち尽くしていた。
いまだに何が起こったのか自分でもわかっていないようだった。

576: 2008/01/09(水) 00:10:14.36 ID:VnyNuKnW0

引用: 岸辺露伴は動かない-雛見沢-