4: 2008/03/29(土) 20:45:39.14 ID:RGGpyKaB0

5: 2008/03/29(土) 20:46:42.76 ID:RGGpyKaB0
現実と駒遊びは違う。
交互に手を指しあうなんてことはない。アレが動けばコレも動く。
駒遊びと同じなのは、最後に結末があるということだけ。
結末が生か氏なのか、まだわからないけれど。


だから、ここでは少しだけ時間をさかのぼりたい。
露伴と大石が分かれる数十分前に。
露伴と山狗が出会う少し前に。


古手家では、部活メンバー達が夕食を終えていた。夕食は入江が全員に出前をとった。
彼らは夕食の準備の時間も惜しんで作戦を練っていたのだ。
作戦と読んでいいのかはわからないが、彼らなりに梨花を救う方法を悩んでいるようだった。
岸辺露伴は動かない 2 (ジャンプコミックスDIGITAL)

6: 2008/03/29(土) 20:48:02.35 ID:RGGpyKaB0
圭一「ふぃー、寿司なんて久しぶりに食べたぜー。」
魅音「まぁ、うちもお客さんが来たときしか食べないねぇ。」
レナ「監督のお財布の中身は大丈夫かな。かな・・・。」
入江「は、ははは。幸い例の東京からお金はたくさん頂いてますので。
   これくらいなら・・・大丈夫ですよ・・・。」
詩音「なんでも好きなものを頼んでいいなんて言うからこうなるんです。」
沙都子「だから、おそばでいいと言いましたのに。」
梨花「子供は遠慮しないのが礼儀なのですよ。みー。」
魅音「いやいや、遠慮して特上はやめといたよー?」
レナ「魅ぃちゃん・・・。」

子供達はわいわいと出前の食器を片付ける。
その部屋の片隅で、羽入がわさびの刺激で気絶していた。

圭一「それで、さっきの続きなんだけどさ。
   園崎家の力でなんとか、梨花ちゃんが48時間前に氏んだってことにはできないのか?」
魅音「うーん。警察にコネがないってわけじゃあないんだけど、
   今すぐにそれを実行しろって言うのはどうも難しいかなぁ。」
詩音「たしかに園崎家がコネを持ってるのはお偉いさんばっかりですからねぇ。
   偽装の為に、末端の職員まで懐柔するには時間が必要です。」
圭一「くっそー、何か今すぐできる作戦はないのかぁ?」
沙都子「十分な効果を持つトラップにはそれ相応の準備が必要ですわよ。」
レナ「何か、他に相手の隙を見つけないと・・・。監督、他には何か・・・。」
入江「私が知る情報はかなり話したと思うのですが・・・。
   まだ何かあったですかねぇ・・・。」

7: 2008/03/29(土) 20:49:14.70 ID:RGGpyKaB0
彼らが悩んでいると、部屋の隅に寝ていた羽入が飛び起きる。

梨花『羽入ッ!起きていたの?何か思いついた?』
羽入『あぅあぅ・・・。これは・・・。』
梨花『どうしたのよ?』
羽入『露伴が・・・。』
梨花『露伴がどうしたの?』
羽入『露伴の身に何かが起きたようなのです。能力を使いました。』
梨花『この前、入江に使ったと言っていたわね。
   わざわざ能力を使ったということは、鷹野を見つけたのかしら。』
羽入『違うのです。今までとは違う能力・・・。
   敵意を感じますです・・・。露伴の身に何かが・・・。』
梨花『何が言いたいのよ?はっきり言って頂戴。』
羽入『露伴はおそらく何らかの敵と戦ったのです。』
梨花『まさか・・・。』
羽入『もう黙っていてもしょうがないのです。
   今日、梨花は殺されますです。そして露伴が敵と戦った。
   これ以上は、言う必要もないのです。』
梨花『あんた、そういえばいつも私が氏ぬ日にはどこかに行っているものね。
   やっぱり、私が氏ぬ日がわかっていたのね。』
羽入『僕は、梨花の氏ぬ姿を見たくなかっただけなのです・・・。』
梨花『まぁ、いいわ。まずは事態に対処するほうが先よ。』
羽入『抗おうというのですか・・・。』
梨花『あら、自分が殺されるとわかって逃げようとするのは当然じゃあないかしら?』
羽入『当然、ですか。』
梨花『えぇ、信号が青なら進むのと同じくらい当然よ。』
羽入『・・・。(梨花、信号の青は進めではなくて、進んでもよいなのです・・・。)』

8: 2008/03/29(土) 20:50:11.01 ID:RGGpyKaB0
バッ。梨花が立ち上がる。
皆、新しい作戦はないものかと悩んでいたので、
立ち上がった梨花に自然と注目が行った。

圭一「梨花ちゃん、どうしたんだ?なんか思いついたのか?」
梨花「僕を頃す人間が来ますです。」
魅音「ど、どぅいうこと?」
梨花「オヤシロ様のお告げなのです。僕は、今夜殺されますです。
   多分、敵はすぐ近くまで来ているのです。」
入江「梨花さん、急に何を・・・。」
沙都子「どうしたんですの?梨花・・・。」
梨花「うまく説明できないのです・・・。でも、本当なのです。」

誰もが瞬時には梨花が言うことを理解できなかった。
入江は、梨花が精神的不安定から発症したかと疑いさえした。
だが、圭一は、圭一は違った。

圭一「梨花ちゃん。冗談じゃあないんだな?」
梨花「はい。こんな冗談は言わないのです。」
圭一「よし、わかった。みんな、今すぐ梨花ちゃんを連れて逃げるぞ。」
入江「ちょっと待ってください、前原さん。」

9: 2008/03/29(土) 20:51:29.69 ID:RGGpyKaB0
圭一「いや、待たない。俺は仲間の言うことを信じる。
   だから、梨花ちゃんを信じる。、敵がすぐ近くに来ているって言うなら、
   話し合ってる時間なんてないぜ。」
レナ「・・・そうだね。圭一くんの言うとおりだよ。
   私達は梨花ちゃんを信じる。なら、話し合ってる暇なんてないよね。」
詩音「そうですね。これも山狗の件と同じです。
   梨花ちゃまの勘違いならそれに越したことはありません。
   みんなで夜の鬼ごっこでもしたと思えばいいんですから。」
沙都子「おーっほっほっほ、それは楽しそうですわね。
    闇夜に潜む私のトラップがかわせますかしら。」
梨花「みんな・・・。」
魅音「決まりだね!逃げ込むのは園崎家の地下祭具殿が最適だと思う。
   とりあえずは祭具殿の中でまた作戦を考えよう。本家に電話を入れておいたほうがいいね。」
詩音「監督、ここまでは車で来てますよね?
   とりあえず梨花ちゃまとおねぇ、それから沙都子を乗せて行ってもえますか?」
入江「・・・わかりました。逃げることには反対しません。
   ですが、車は・・・難しいかもしれません。電話も控えてください。」

11: 2008/03/29(土) 20:52:59.63 ID:RGGpyKaB0
圭一「監督ッ、協力してくれるんじゃないのかよ?」
レナ「そういうことじゃないよね、監督。
   なにか理由があるんだよ・・・ね?」
入江「えぇ。私が思うに、もし山狗が敵で、すぐ近くに迫っているとしたら、
   私の車はもう押さえられていると思います。
   山狗は富竹さんの事件以来、梨花さんの周辺を厳重に監視しているはずです。
   ですから、私の車がある神社の入り口は確実に山狗に押さえられていると思います。
   また、電話も山狗に盗聴されている可能性があります。」
魅音「たしかに、ここから道に出るには神社の入り口を通るか、林を抜けるしかない。
   林が安全だとは限らないけど、入り口は確実に押さえられてることになるね・・・。」
沙都子「それでしたら、林を抜ければいいだけですわね。」
圭一「でも、林が安全だとは限らないんだろう?」
魅音「うん、園崎家へ向かう方角が安全かはわからないね・・・。
   林にも何人か山狗が配置されてると考えるのが妥当だよ。」
沙都子「あら、私の家の周りがただの林だと思いまして?
    既にいくつかのトラップが仕掛けてありますわ。
    林の道も全て把握してますもの、園崎家までくらいならなんとかなりますわ。」
圭一「はははっ、おもしろくなってきたぜ!
   よし、沙都子に先導を任せる!まずは全員で園崎家へ行くぜ!!」

12: 2008/03/29(土) 20:55:11.03 ID:RGGpyKaB0
「隊長。突入班の準備整いました。
 装備は、テイザーのみでかまいませんね?」
小此木「Rを頃しちまったらどうしようもないからな。Rへのテイザーの使用は許可しない。
    万が一のために出力は最小にしておけ。電話線のほうはどうなってる?」
「切断後の偽装の準備もなんとか間に合っています。」

小此木はここで一度鷹野の顔を伺う。
最後の許可を問うつもりだったが、焦る鷹野は小此木の視線に気づきもしなかった。


小此木「よし、突入班は移動を開始。突入待機位置で待て。
    監視中の隊員も突入時の配置へ移動。全隊員の配置が終わり次第突入する。」
『突入班了解。配置に着きます。』
『監視班了解。突入班の到着を待ちます。』

13: 2008/03/29(土) 20:55:39.04 ID:RGGpyKaB0
鷹野「・・・小此木。」
小此木「は、はい?」
鷹野「あなたは出なくていいの?」
小此木「本当は突入班の指揮をとっとる予定だったんですがね。
    刑事と漫画家のほうがありますんで、こっちに残りますわ。」
鷹野「そう。大丈夫なのね?」
小此木「えぇ、突入班の鳳7,8,9は俺の直の後輩ですんね。指揮をとる鳳2は、」
『こちら鳳4、R含む子供達が家から飛び出してきました!!
 林の中に駆け込んでいきます!!入江所長もいます!!』
小此木「なッ!?」
鷹野「どういうことッ!?」
小此木「作戦がばれてやがるッ!!鳳13,14はそのまま入江の車を押さえておけ。
    鳳4はR宅内に突入、電話を押さえろッ!!残りは全員Rを確保だッ!!」
鷹野「小此木ッ!!」
小此木「大丈夫ですんッ!!」
鷹野「クッ・・・。」

20: 2008/03/29(土) 21:15:18.49 ID:RGGpyKaB0
子供達は沙都子を先頭に林を駆け抜ける。
沙都子より大柄な圭一達や入江は木の枝や草にぶつかるが、そんなことは関係ない。
ただ、必氏に走り続ける。

パパパパンッ

圭一「なんだッ!?」
沙都子「癇癪玉のトラップですわッ!!
    おばかさんがひっかかったようですわね。」
詩音「やっぱりッ、敵がいたいみたいですね!!」
魅音「くッ!追いかけてきてるやつもいるよ!!」
レナ「みんなもっと早くッ!!」
入江「く・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
沙都子「こっちですわよ!!早くッ!!」







梨花「ッ!!」

21: 2008/03/29(土) 21:17:13.73 ID:RGGpyKaB0
梨花の体が林の中の斜面を転がった。
梨花は木の根を踏んだ。その木の根は梨花の右足を見事に受け流したのだ。
梨花は足をひねり、体勢を崩す。
そのまま地面へと転がっていった。

レナ「梨花ちゃん!!」
詩音「梨花ちゃまッ!!」
沙都子「へ?」

沙都子が後ろを振り返る。
梨花が倒れ、梨花より後続の人間は梨花に走りよっていくところだった。

圭一「大丈夫か!?梨花ちゃん!!」
梨花「大丈夫なので・・・あぅッ!」

梨花は自力で立ち上がろうとするが、右足に体重を任せたとたんによろける。
そのまま走り寄った圭一にもたれかかった。

22: 2008/03/29(土) 21:18:40.05 ID:RGGpyKaB0
入江「見せてください!!」

入江が梨花の右足首を手に取る。
その瞬間も梨花は苦痛に顔を歪めた。
入江が触診をしようと右足の靴下を下げる。
だが、触診をするまでもなく梨花の右足はどんどん膨らんでいく。

入江「これは・・・骨折しているかもしれません。
   折れていなくとも・・・この捻挫では・・・。」
沙都子「り、梨ぃ花ぁぁああッ!!」
梨花「逃げてッ!!みんな、私を置いて逃げて!!」
圭一「そんなことできるかッ!!」
魅音「私がおぶるよ!さ、梨花ちゃん掴まって!!」
入江「いえ、大人の私が!!」

梨花「私を連れて逃げるのは無理よ!!みんな殺されちゃう!!」
詩音「でも、梨花ちゃまが殺されるわけにはいかないんです!」
梨花「私は神社で腹を割かれて殺される!!露伴が言っていたわ!!
   だから、逃げて!!私が殺される前に助けてくれればいい!!
   いま捕まれば全員殺される!今は逃げて!!」

23: 2008/03/29(土) 21:19:44.07 ID:RGGpyKaB0
この極限状態では誰も露伴のことに質問はしなかった。
ただ、梨花の言うことを信じ、どうすべきか考えた。
もっとも早く結論を出したのは圭一だった。

圭一「梨花ちゃんはここに置いていく。」
沙都子「そんなッ!?」
詩音「でも、神社はすぐ近くですよ、ここに置いていったら!?」
圭一「いいから、みんなこっちだッ!!」

圭一は皆を怒鳴りつけ、沙都子を無理やり引っ張り進んでいく。

魅音「みんな、圭ちゃんに従おう。迷ってても全員捕まるだけだ!」

魅音の言葉のとおり、山狗が草木を掻き分けてくる音がもうすぐ近くに迫っていた。
誰もが納得はできず、だが、他の案が思いつかずに圭一に従った。

仲間達が去り、残された梨花は山狗と対峙する。
いや、梨花はこの時点まで敵が山狗だとわかっていなかった。
そして彼らの作業着姿を見て、初めて敵が山狗だと理解するのだった。

24: 2008/03/29(土) 21:24:33.19 ID:RGGpyKaB0
梨花「く・・・あいつの予想通りってわけね・・・。」
鳳7「こちら鳳7、Rを発見。負傷している模様。歩けそうにありません。」
『ザザ・・・本部了解。Rを確保せよ。他の子供達と入江所長はどうした?』
鳳7「R以外は見当たりません。」
『本部了解。残りの隊員は子供達と入江所長の確保へあたれ。
 Rはワゴンまでお連れしろ。』
鳳7「鳳7了解。
  そういうことだ、大人してくれよ。手荒なことはするなと言われてるんだ。
  面倒なのは嫌いなんでね。」

目の前の三人の山狗は拳銃のようなものを持っている。
もちろん、梨花に対してそれを使うことはないと思うが、抵抗すればどうなるかはわからない。
梨花は抵抗しないことを決意した。

梨花「黒幕は・・・鷹野?」
鳳8「お喋りは、しないでください。
  仲間に見捨てられたのは気の毒ですが・・・。」

そう言って鳳8が梨花の体を持ち上げようと近づく。

25: 2008/03/29(土) 21:26:25.50 ID:RGGpyKaB0
そのとき、鳳8の横を鳳7の体が横切る。
とっさに鳳8は後ろを振り返った。

そこには、鳳7に全力の蹴りを入れ終えた圭一の姿があった。
鳳9も既に地面に寝転がっている。その傍にはスタンガンを持つ詩音の姿があった。

梨花「圭一ッ!どうしてッ!?」
圭一「へへ、梨花ちゃんはここに置いていったぜ。囮としてなッ!!」
鳳8「くっ!!」

鳳8は瞬時に銃を圭一へと向ける。

鳳8「ぐぁっ!」

しかし、鳳8の手に何か金属のような、とてつもなく硬い塊がぶつかってきた。
持っていた銃を弾き飛ばされる。

まずいッ!!

彼がそう思ったときには、彼の体は宙に浮いていた。
彼の視界が地面だけになる前に、ほんの少しだけ緑髪の少女を見た気がした。
そして地面に叩きつけられると、さきほど彼の銃を弾き飛ばした鉈が彼の目の前に突き刺される。
鉈の裏側では圭一の蹴りに悶絶する鳳7がスタンガンを浴びせられていた。

27: 2008/03/29(土) 21:27:21.37 ID:RGGpyKaB0
レナ「梨花ちゃんちの鉈は使い慣れてないから、動くと危ないかな。かな。」
魅音「梨花ちゃんは置いていくって言ったけど、私達が逃げるとは言ってないんだなー、これが。」
入江「はぁ・・・はぁ・・・ははは、てっきり逃げるんだと思ってましたよ。」

息を切らした入江が、鳳8を組み伏せた魅音とレナに近づいていく。

入江「ここがですね、いわゆる頚動脈というやつです。
   よい子は真似しちゃいけませんよ?」

そう言って入江が鳳8の首に手を当てると、10秒も経たないうちに鳳8の体は急に力が抜け、ぐったりとした。

入江「ほら、今のうちに縛っちゃってください。私が手を離すと復活しちゃいますからね。」
梨花「みんな・・・。」
沙都子「梨花だけを置いて逃げたりはしませんわ。」
圭一「あぁ、説明してる時間がなかったんでな。」
詩音「私もてっきり置いて逃げるのかと思っちゃいました。」
魅音「ほらほら、無駄口叩いてないで手を動かすー。」

魅音「よし、縛り終わったね。」
圭一「よっしゃ、それじゃあ梨花ちゃんを連れて逃げるぜ!!」

梨花を魅音が背負う。沙都子の誘導に従いながら、彼らはその場を後にした。

29: 2008/03/29(土) 21:32:17.29 ID:RGGpyKaB0
彼らが目指していた森の中の砂利道が視界に入った。

ズザザザザァァアアッ!!!

圭一達が目指していた砂利道に車が急ブレーキで止まる。
車がしっかりと止まるのを待たずに扉が開かれ、中から山狗たちが降りてくる。
その数は6人。

詩音「6人・・・。こっちは5人しか・・・。」
梨花「もう大丈夫なのです。逃げ回ることくらいはできるのです。」

そう言って梨花は魅音から降りる。
足の痛みは大きかったが、なんとか逃げ回れることを皆にアピールして見せた。

魅音「よし、梨花ちゃんが囮として逃げ回れば、こっちは7人で1人多い!
   ぶちのめして車をいただくよ!」
沙都子「おーっほっほっほ。そろそろ監督が走るのも限界のようでございますしねぇ!」
入江「ははは、車になると・・・はぁ・・・はぁ・・・ありがたいですねぇ。」
圭一「よっしゃあ、行くぞ!!1人で突っ込むなよ!!仲間と連係するんだ!!」

32: 2008/03/29(土) 21:34:18.75 ID:RGGpyKaB0
レナが先頭になり飛び出していき、山狗を鉈で叩き伏せようとする。
その背後を梨花の家から持ってきた鉄パイプを振り回す圭一が守った。

沙都子が小柄さを生かして敵を撹乱しながら隙をつくらせる。
その隙を詩音のスタンガンが狙う。

梨花は囮として逃げる。
入江はトンカチを振り回して自分の身を守るのに必氏だった。
この時点で6対6。

そして魅音が全体を把握し、
最も隙のある山狗を狙い次々と合気道のようなもので投げ飛ばす。

乱戦になり、組み伏せた山狗を縛り上げるということはできなかったが、
誰の目にも有利なのは圭一達に見えた。
圭一達は冷静に戦い、自分達はまったくダメージを追わずに山狗を追い詰めていく。
山狗たちは混乱し、ダメージを受け、自分達が後続の到着まで持たないであろうことを感じた。

39: 2008/03/29(土) 21:54:28.72 ID:RGGpyKaB0
周囲から駆けつけてくる山狗の気配を魅音が感じとる。
だが、目の前の敵はもう2人。残りの4人は今すぐには動けそうにない状態だった。

魅音「後続が来るよッ!!」
詩音「私が運転しますッ!車に乗ってくださいッ!!」
沙都子「梨花ッ!?」
入江「こ、この距離くらいなら梨花さんを抱えて走ってみせます・・・ッ!!」

入江がそう言って、全力疾走はできないであろう梨花を抱えた。
全員が敵を突破できる状態であることを確認した圭一が叫ぶ。

圭一「いっくぜぇぇぇえええええーッッ!!」
梨花「(いけるッ!!)」









パァン

40: 2008/03/29(土) 21:55:24.75 ID:RGGpyKaB0
魅音は万が一の場合、後続が自分達に追いついた場合。
自分が囮になってでも仲間達を逃がすつもりでいた。
だから車に対して最も後方にいた。
全員が自分より前に駆け抜けるのを確認してから走り出していた。

だから、魅音が一番最初に何が起こったのかを理解した。
後ろから数えたほうが早い位置にいたから。彼が、前原圭一が。

魅音「け、・・・圭ちゃんッ!?」

魅音のその声に、圭一より前に居た仲間達もそれを振りかえる。
そこには、既に地面に横たわり咳をする圭一の姿があった。
いや、咳ににしては不自然に体を動かしている。

圭一「がッ・・・ぐ、ぐ、ごはッ・・・。」
魅音「圭ちゃんッ!圭ちゃぁんッ!!圭ちゃぁぁあーーんッ!!」

41: 2008/03/29(土) 21:56:25.90 ID:RGGpyKaB0
魅音が圭一に駆け寄る。

レナ「け、圭一くん・・・・?」
詩音「嘘・・・圭ちゃん・・・。」
沙都子「圭一さんッ!」
梨花「圭一ッ!?」
入江「前原さ・・・、ど、どいてくださいッ!止血をッ!!」

入江も圭一に駆け寄り、圭一の胸に開いた風穴をどうにかしようと考える。
だが、医師である入江は、ここにいる誰よりも彼の命が助からないことを理解していた。

入江「は、あぁ・・・これは・・・止血を・・・。
   いや・・・診療所に・・・。」
魅音「圭ちゃんッ!!嘘だッ!!圭ちゃん、返事をしてッ!?」
圭一「・・・。」

圭一は声も出せずに、氏ぬ寸前の金魚のように時折口をパクパクとしてみせた。
その様子に仲間達は呆然とし、駆け寄ることさえ躊躇った。

42: 2008/03/29(土) 21:57:57.76 ID:RGGpyKaB0
そうこうしているうちに後続の山狗が彼らのもとに駆けつけた。
入江と魅音を除く4人は抵抗をしようとするが押さえつけられる。

とても医療と呼べるものではないが、できる限り処置をしようとする入江。
そして圭一に泣きつき、とても抵抗するようには思えない魅音。
山狗の隊員もこれを押さえつけていいものか、彼女の顔を伺った。
圭一を撃った張本人を。彼らの指揮者を。鷹野三四を。

鷹野は何も返答をせず、ただゆっくりと圭一のもとへと歩いていく。
入江は鷹野に気づきもせず、圭一に処置をするのに必氏だった。

鷹野「あらあら、入江先生。こんばんは。月の綺麗な夜ね。」
入江「た、鷹野さん・・・。やはりあなたが・・・。
   いえ、そんなことより、彼を診療所にッ!すぐに処置をッ!」

パァン

43: 2008/03/29(土) 21:58:51.53 ID:RGGpyKaB0
入江「あ・・・が・・・。」

入江の胸に。圭一とほとんど違いのない場所に。
もうひとつの風穴が開いた。

鷹野「傷の処置なら、お好きなだけ自分の傷を処置してください。
   入江先生。くすくす・・・。」
魅音「監督ッ!何してるの、圭ちゃんを、圭ちゃんを助けてよッ!?
   圭ちゃんが氏んじゃうッ!!圭ちゃんを助けてよぉぉぉおおーーーーッ!?」

パァン

魅音を魅音たらしめている最も重要なものが飛び出す。
無傷の魅音の体は、ビクビクとありきたりな動きをしたあと動かなくなった。

鷹野「五月蝿いわよ。静かになさい、魅音ちゃん。
   頭首代行が取り乱しちゃあだめよ。くすくす・・・。
   あははは・・・あーっはっはっはっは!」

45: 2008/03/29(土) 22:01:05.81 ID:RGGpyKaB0
鷹野「鷹野より本部へ。制圧したわ。予定通り、氏体袋と水を持ってきてもらえるかしら。
   えぇ・・・そう。あぁ、やっぱり氏体袋は6つね。所長にも弾が当たっちゃったのよ。
   ふふふ、しょうがないじゃない。えぇ、頼むわ。」

鷹野「さぁて・・・誰からがいいかしら・・・?」

鷹野は、組み伏せられ手足を縛り上げられた残りの部活メンバーを見渡す。
その中で、最も強く鷹野を睨み付ける彼女に鷹野の注意は向けられた。
鷹野を睨み付けるレナに。

鷹野「怖い顔ねぇ・・・レナちゃん。おねぇさん、泣いちゃうわぁ。くすくす・・・。」
レナ「鷹野さんが連続怪氏事件の犯人なんですね・・・。
   梨花ちゃんはうまく誤魔化そうとしていたけれど、薄々気づいていましたよ。」
鷹野「あら、2年目と4年目は私じゃあないのよ?
   偶数の年は北条家が祟りを下してくれるの。
   来年はもう北条家もいないけどね。くすくす・・・。」
レナ「5年目で、村が滅ぶからですか?」
鷹野「そうよ、よく知ってるじゃない。
   そして私は神になる。私がオヤシロさまになるのよ。
   まぁ、あなたには何の話かわからないでしょうけれどね。」

46: 2008/03/29(土) 22:02:00.90 ID:RGGpyKaB0
レナ「・・・あははは。無理だよ。
   鷹野さんが何をやってもオヤシロさまにはなれない。
   所詮、ごっこ遊び。あなたには無理だよ。」
鷹野「・・・なれるわ。これからなるもの。」
レナ「あはは。あははははッ。」
鷹野「何がおかしいのかしら・・・。」
レナ「そんなの無理無理。だってオヤシロさまは"居る"んだもの。
   それに、今年はオヤシロさまの使いも来てるんだよ?
   鷹野さんに罰を与えに来たんじゃないかな。かな。あははは」

パァン

鷹野「気味悪い子ね・・・。次は・・・沙都子ちゃんかしら?」
詩音「やめてッ!沙都子は殺さないでッ!!」
鷹野「あらあら、自分の命乞いをしなくていいのかしら?詩音ちゃん。」
詩音「私はどうなってもかまわないッ!だから沙都子は、沙都子は助けてッ!」
鷹野「そう、じゃあ考えてあげるわ。」

パァン

47: 2008/03/29(土) 22:03:11.71 ID:RGGpyKaB0
鷹野「さぁて、最後になっちゃったわね。沙都子ちゃん。
   詩音ちゃんの頼みもあるし、殺さないでおいてあげようかしら?
   ここで氏ぬのと、研究の為のモルモットになるの、どっちがいい?
   選ばせてあげるわよ?」

鷹野は沙都子に歩み寄りながら話しかける。
だが、沙都子は俯いたままモゴモゴとつぶやくだけで鷹野に返事をしようとはしない。

鷹野「あら、沙都子ちゃん、どうしたの?
   ちゃあんと、大きい声でお返事しましょうねぇ?」

鷹野はそう言って俯いた沙都子の顔を持ち上げるように軽く蹴りを入れる。

沙都子「いやぁああッ!やめてッ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」
鷹野「あら?私はどっちがいいか聞いてるのよ?
   ごめんなさいじゃ、わからないわよ。くすくす・・・。」
沙都子「いやッ!私じゃないんです。叔父さまッ!!やめて!!やめてくださいまし!!」
鷹野「叔父さま・・・?あぁ・・・そういうこと。」

鷹野は沙都子がジタバタともがきながら発した叔父という言葉で全てを理解する

51: 2008/03/29(土) 22:04:18.47 ID:RGGpyKaB0
鷹野「精神的ストレスが大きすぎて発症しちゃったのかしら。
   流石に子供には刺激が強かったかしらねぇ。うふふふ。」
沙都子「嫌ぁッ!!叔父様ッ!!ごめんなさいぃぃいい!!
    やめてくださいまし!!やめてッ、嫌ぁあ!!どうしてッ!?」

鷹野はしばらく、面白いものでも見るかのように沙都子を観察していた。
観察される沙都子の目には、もう叔父しか映っていなかった。
鷹野も山狗も、近くに倒れる仲間達も全て叔父にしか見えなかった。

沙都子「何でなんですのッ!?いやぁあああ!気持ち悪いのは嫌ぁあぁああ!!」
鷹野「うふふ・・・。何で、ですって?
   私と沙都子ちゃんは仲良しだったわよね。
   だから特別に教えてあげるわ・・・。」

52: 2008/03/29(土) 22:05:10.96 ID:RGGpyKaB0
鷹野は沙都子に優しく語りかけるが、沙都子には聞こえていない。
錯乱し続ける沙都子に鷹野は語り続けた。

鷹野「この世はね、ババ抜きなのよ。知ってるでしょう?ババ抜き。
   あなた達は部活と言ってよくゲームをするらしいじゃない。」
沙都子「嫌ッ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・。」
鷹野「誰もがババを互いに押し付けあう。一人の敗者と生贄を求めて。
   私はそのババを引かされたのよ。だから押し付けるの。あなた達に。
   この村に。ババを押し付ける。そうすれば私は敗者にならない。
   敗者にならなければ勝者。私は・・・神になる。私も、おじいちゃんも神になるのよッ!」





「へぇ、ババ抜きねぇ。ババを押し付けあうのはいいんだが・・・、
 もう一枚ジョーカーが居たらどうするんだい?」

53: 2008/03/29(土) 22:06:01.46 ID:RGGpyKaB0
その鷹野の背後からの声に、鷹野は振り返る。
だが、振り返る前からそこに誰がいるのかはわかっていた。
この声は、一度だけ聞いたことがある。岸辺・・・岸辺露伴ッ!

鷹野「あら、鬼ごっこをしてるかと思ったら、よくここに来れたわね。
   でも、ちょっと遅かったんじゃないかしら?」

鷹野は銃を露伴に向ける。
直前まで走っていたのか、露伴は息を切らしながら答えた。

露伴「はぁ・・・、はぁ・・・。いや、なんとか間に合ったよ。
   梨花を頃す人間を逃がさずに見つけられたからね。」
鷹野「・・・どこまで知っているのかしら。」
露伴「さっぱりだ。だから梨花を頃す人間を見つけたかった。」
鷹野「そう、じゃあ、おめでとう。ご褒美をあげるわ。」

パァン

54: 2008/03/29(土) 22:06:18.54 ID:RGGpyKaB0
チャプタ36がこれで終わりです

62: 2008/03/29(土) 22:14:33.88 ID:RGGpyKaB0
ブシュゥゥウッ!!

露伴の左手の包帯が飛び散った。
いや、正確には露伴の左手の肉が飛び散り、
その勢いで包帯も飛び散ったのだ。
そして、鷹野が発射した銃弾は、空中に静止していた。

露伴「ふむ。やはり、僕の天国への扉(ヘブンズ・ドア-)には、
   無傷で銃弾をとめるほどのパワーはないようだね。」

そう、露伴は天国への扉(ヘブンズ・ドアー)の左手で銃弾を受け止めた。
それが鷹野には銃弾が空中に静止しているように見えた。
この場に居るものの中で、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)が銃弾を止めているのを認識できたのは、
梨花だけだった。

63: 2008/03/29(土) 22:15:35.86 ID:RGGpyKaB0
鷹野「あなた・・・何者なのッ!?」
露伴「だから言ってるじゃないか、僕はジョーカーだよ。もう一枚のね。」
鷹野「くっ!!」

鷹野は再び引き金を引こうとする。
仮に露伴が銃弾を空中に静止できるとしても、
鷹野にはもう撃つしか選択肢が残されていなかったからだ。

露伴「2発目を撃たせてやる義理はないな。
   天国への扉(ヘブンズ・ドアー)ッ!!」

ドシュッ
『体が動かなくなる』

64: 2008/03/29(土) 22:16:25.10 ID:RGGpyKaB0
露伴が鷹野の体へと文字を飛ばす。鷹野の体が本と融合した状態になり、露伴の文字が書き込まれる。
鷹野は引き金を引けず、その場に立ち尽くしたまま動けなくなった。

鷹野「か、体が・・・、な、何してるのよ!!
   取り押さえなさい!!」
露伴「おっと、口は動いたか。」

山狗たちは一斉に露伴へと飛び掛ろうとする。
後続の山狗が合流したため、その数は6人どころではなかった。

だが、露伴にとって数は関係なかった。
かつて鉄平達を叩きのめしたときと同様に天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使って体術を駆使する。
氏角がなく、人間とは思えないスピードで動き、時には重力に逆らっているかのような姿勢をとる。
そんな露伴に山狗たちは何人居ても勝てるはずがなかった。

66: 2008/03/29(土) 22:17:33.83 ID:RGGpyKaB0
この光景は沙都子には、複数の叔父暴れまわっているように見えた。
叔父が、自分の周りで暴れまわっている。
沙都子にとってこれ以上恐ろしいことはなかった。

だが、沙都子は違和感を感じる。
ほんの少しの違和感。それはじわじわと大きくなり、
錯乱しながらも少しずつ違和感の理由を理解していく。

叔父が暴れまわっている?違う・・・。
叔父は、叔父は戦っているのだ。

叔父は、叔父同士で戦っている。
いや、1人の叔父と、残りの叔父が戦っている。

戦っている?それも違う・・・。
1人の叔父が、残りの叔父を・・・倒しているのだ。
1人の叔父が、沢山の叔父を倒している。


あれ?そうだ、私は覚えている。
叔父が倒されるのを覚えている。

68: 2008/03/29(土) 22:17:59.41 ID:RGGpyKaB0






そうだ、叔父を倒してくれるのは、叔父じゃない。
叔父を倒して、叔父を倒して私を助けてくれるのは・・・、

沙都子「露伴さんッ!!」

71: 2008/03/29(土) 22:20:50.16 ID:RGGpyKaB0
沙都子が露伴の名を叫んだのは、
露伴が最後の叔父の延髄に回し蹴りをぶち込んだときだった。

露伴「すまない。沙都子ちゃん。
   帰るのが遅くなったよ。夕御飯がもう冷めちまったかな?」
沙都子「露伴・・・さん・・・。遅いですわ・・・。
    罰としてお夕飯は抜きですの・・・よ・・・。」
露伴「そりゃあ困ったな。昼から何も食べてないんだ。」

そう言いながら、露伴は手足を縛られ寝転がっている沙都子の頭をなでてやった。
そして立ちつくしたままの鷹野の下へと歩いていく。

鷹野「な、何よ・・・。アンタなんなのよ・・・。」
露伴「君は喋らなくていい。読むほうが楽だからね。」

そう言って、露伴は鷹野の顔のページをペラペラとめくる。
そして、無造作に顔のページを引き剥がした。
鷹野はページを引き剥がされたショックで気を失った。

73: 2008/03/29(土) 22:22:25.72 ID:RGGpyKaB0
露伴「さてっと、羽入はいないのか?」

露伴はそう梨花に問いかける。
だが、梨花は答えず、俯いたままだった。

露伴「・・・。」
「ここにいるのです。」

答えたのは羽入だった。
露伴の後ろにいつのまにか現れていた。

露伴「どこにいたんだよ。おまえのご主人様が氏ぬかもしれないってときに。」
羽入「僕は・・・ちゃんと見ていましたのです。
   露伴こそ・・・こんな大事なときに・・・。」
露伴「うん?さっきも言ったが、僕は間に合ったぞ。
   梨花を頃す人間をちゃあんとみつけたじゃあないか。」
梨花「間に合ってないわよッ!!」

羽入の方から視線を梨花に移すと、梨花が露伴をにらみつけていた。

74: 2008/03/29(土) 22:23:23.71 ID:RGGpyKaB0
梨花「みんな・・・みんな殺されたわ!あんたが来るのが遅いからよ!!
   遅い遅いッ!全然間に合ってないわッ!!
   私だけ助かってもだめよッ!!みんながいなきゃ、だめなのよッ!!」
露伴「僕は・・・君を助ける約束なんてしたか?」
梨花「あんた、まだあんなことを根に持ってるのッ!?
   だからってッ、圭一達は悪くないじゃないッ・・・あなた・・・
   圭一達とあんなに仲よさそうにしてたじゃない・・・。」
露伴「彼らは僕によくしてくれた。
   僕も・・・彼らが好きだったよ。」
梨花「じゃあ・・・どうして・・・。」
露伴「・・・。」
梨花「なによ・・・アンタなんて来なければよかったのに・・・。
   皆が力を合わせても、勝てないなんて知りたくなかった・・・。
   何よ・・・、あんた何なのよ・・・。」
露伴「・・・。
   他の山狗達が来ると面倒なんでね、さっさと終わりにさせてもらうよ。
   ・・・天国への扉(ヘブンズ・ドアー)。」

ドシュシュシュッ

露伴は梨花に天国への扉(ヘブンズ・ドアー)を使い、書き込む。
梨花はそのまま意識を失った。

75: 2008/03/29(土) 22:24:40.57 ID:RGGpyKaB0
羽入「露伴ッ!?梨花になにをしたのですッ!?」
露伴「"この世界では殺されるまで目が覚めない。"、
   そして、"この岸辺露伴と出会った世界の記憶を失う。"
   そう書き込ませてもらった。」
羽入「なぜなのです、露伴ッ!あなたは鷹野の味方なのですかッ!?」
露伴「勘違いするなよ。僕は誰の味方でもない。
   だが、漫画の題材に干渉することが嫌いでね。
   だから、この世界はなかったことにする。
   ジョーカーが2枚あるババ抜きは、やりなおさなくっちゃあな?」
羽入「あなたは・・・最初からボク達を助けるつもりがなかったのですね。」
露伴「そうだよ。圭一君たちが殺されるところに間に合わなかったのは、
   わざとじゃあないがね。もし間に合っていても、助けなかったよ。」
羽入「恩を仇で返すというのですか?」
露伴「この世界に連れてきてもらったことは感謝してるよ。
   でも、僕が干渉して、鷹野を倒せば、それで済むのかい?」
羽入「・・・。」

77: 2008/03/29(土) 22:25:47.08 ID:RGGpyKaB0
露伴「鷹野以外の人間が梨花を頃しに来るかもしれないぞ?
   僕だって、いつかは元の世界に戻ることになる。
   そうしたら、誰が梨花を、村を守るんだ。」
羽入「それは・・・、でも、今見頃しにする理由にはならないのです!」
露伴「・・・。
   もうひとつの理由は、おまえと梨花が気に食わないからだ。
   傍観者を気取った神に、自分を魔女だと言い、賽を振り続けるガキ。
   気に食わないね。」
羽入「僕は露伴をこちらの世界に連れてきたのです。」
露伴「それで?そのあとは僕が勝手に敵を倒してくれるのか?
   梨花だってそうだ。入江と僕を会わせてみたりはするが、それっきり。
   皆が力をあわせても勝てないだって?その皆っていうのにお前ら二人は含まれないのか?」
羽入「あぅあぅ・・・。」
露伴「ふん・・・、だから、少しばかり意地悪をさせてもらったよ。
   もう1つ。梨花に書き込んだことがある。
   それは、"羽入が全力で協力しない限り、この古手梨花は幸せになれない。"だ。」
羽入「・・・。」
露伴「まぁ、これから記憶を消されるおまえに言ってもしょうがないことだけどな。
   それじゃあ、記憶を消させてもらおう。天国への扉(ヘブンズ・ドアー)ッ!!」

ドシュシュッ
『この岸辺露伴と出会った世界の記憶を失う。』
『この世界では梨花が殺される直前まで目を覚ますことはない。』

羽入は意識を失った。

78: 2008/03/29(土) 22:27:08.25 ID:RGGpyKaB0
沙都子は不思議な光景を見ていた。
露伴が助けに来てくれた。そこまでは不思議ではなかった。
だが、露伴の近くには不思議なぼんやりと光る少年の姿がある。
鷹野は顔や体が本のページになり、それが鷹野であるのかすら疑わしい。
さらには宙に浮いた巫女服の少女まで現れた。

発症した沙都子にはスタンドが見えるようになっていた。
だから、さきほどから露伴が梨花を本にしたり、
宙に浮いた少女を本にしたりする不思議な光景に、息を呑んでいたのだ。

露伴「さて、沙都子ちゃん。申し訳ないけど、君ともお別れだ。
   仮に僕がこの場で君を助けても、君は発症してしまう。
   だが置いていけば、殺されるか、実験の材料にしかならないだろう。」

露伴はそう言いながら、沙都子を縛り付けている縄を切った。

露伴「僕には、せめて安らかにいかせてあげることしかできない。」

79: 2008/03/29(土) 22:27:41.26 ID:RGGpyKaB0
沙都子には、露伴の言う意味は難しくてわからなかった。
だから、今の沙都子に答えられる、精一杯の答えをした。

沙都子「私は、露伴さんを信じていますわ。
    だから、露伴さんの思うとおりにしてくださっていいんですわよ。」
露伴「・・・ありがとう。
   天国への扉(ヘブンズ・ドアー)・・・。」

ドシュッ
『安らかに逝く』

露伴の横に現れた少年が指先を光らせたかと思うと、
沙都子は体に力が入らなくなった。

そのまま地面に倒れこむが、痛みはなかった。
意識が薄れていくが、恐怖や不安はない。
むしろ、心地よいくらいだった。

81: 2008/03/29(土) 22:28:14.90 ID:RGGpyKaB0
意識が完全になくなるまえに、
沙都子は親友の顔を一目見ようと梨花に焦点をあわせる。

親友は顔が本になっていたが、可愛い寝顔を見せてくれた。
そして、その顔のページには、後から書き加えられたような。
他とは違う文字でこう記してあった。

"いつか、仲間達とともに幸せな昭和58年7月を迎える。"

その文字を見つけた直後、沙都子の意識は完全になくなった。

83: 2008/03/29(土) 22:28:55.01 ID:RGGpyKaB0
短いですが、これでチャプタ37が終わりです

87: 2008/03/29(土) 22:32:53.04 ID:G3AoSk5CO

88: 2008/03/29(土) 22:34:07.81 ID:RGGpyKaB0
このあとも用意してみたんですが、
蛇足ばっかりになります

もう足が付きすぎて蛇じゃなくてムカデになってしまうくらい

90: 2008/03/29(土) 22:36:40.36 ID:+A/vleMXO
まだ続きあるのか
wktk


to be continued...
岸辺露伴は動かない-雛見沢-epilogue

引用: 岸辺露伴は動かない-雛見沢-