1: 2011/06/29(水) 01:24:37.01 ID:2fSdrpMjo
※注意点
・禁書、垣根主人公
・ほのぼのギャグ
・時系列は第三次大戦後くらい
・台本形式と地の文が織り成す微妙なハーモニー
・キャラは崩壊させるもの
・遅筆
・最初に無駄に長いシリアス描写があるけど読み飛ばしてもおk
さぁこんなのでよければ少しの間付き合ってくれ
2: 2011/06/29(水) 01:25:06.95 ID:2fSdrpMjo
「………ん……?」
瞼の裏に光の眩しさを感じ、ベッドに寝かされていた少年はゆっくりと覚醒する。
「ここは……?」
彼はベッドから身を起こすと周囲を見回し、首を捻る。
見覚えの無い場所だ。チープな照明器具と、今己の使っているベッド以外には何も無い。
窓すら存在しないその部屋は、危険人物を閉じ込める地下独房を連想させた。
とは言え身柄を拘束されているというわけではないらしい。手足は自由に動くし、五感も正常に働いているようだ。
何故自分がこんな所にいるのか、ここは一体どこなのか、少年には心当たりすらありはしない。
そして何よりも、彼には真っ先に疑問に思わなければならない事があった。
「俺は、氏んだはずじゃなかったのか?」
己の手の平を見下ろしながら、少年―垣根帝督は震える声で呟く。
最後に自分が見た光景が、受けた仕打ちが、鮮明に脳裏に浮かび上がる。
あの時、彼は『暴力』と言う言葉をそのまま具現化したかのような圧倒的な力の前に
為す術も無く打ち据えられ、切り刻まれ、引き千切られ、『虐殺』された。
思い出すだけで冷や汗が滲み、全身の毛が逆立つ。
3: 2011/06/29(水) 01:25:37.39 ID:2fSdrpMjo
自分は氏んだはずだ。震える手を握り締め、垣根は独りごちる。
100歩譲って氏んでいなかったとしても、再起不能の瀕氏になった事に間違いは無いだろう。
己の身体が引き裂かれる感触を、己の命が奪われる恐怖を、脳がはっきりと覚えている。
だと言うのに何故、自分は傷一つ無い状態で生きている?
まるで全てが夢だとでも言わんばかりではないか。
『気分はどうだね?垣根帝督』
混乱する垣根の元にどこからともなく、男とも女とも、子供とも老人とも判別付かない不気味な声が響いてくる。
他者を気遣うような発言であるにも関わらず、その声色には一切の感情が感じられず、
その口調はどこか見下している風ですらある。
その声の主を、垣根は良く知っていた。
「…アレイスター=クロウリー……」
歯軋りをしながら呟く垣根だったが、心の中では「やはり」と納得もしていた。
ここがまだ学園都市内だとすれば、このような理解不能な異常事態にこの男が噛んでいないはずがない。
4: 2011/06/29(水) 01:26:09.46 ID:2fSdrpMjo
学園都市総括理事長、アレイスター=クロウリー。
かつて、垣根はこの男に、学園都市そのものに反逆するために暗躍した。
アレイスターとの直接交渉権を得る為、アレイスターの進めている『プラン』に必要不可欠な存在となる為に、
彼はプランの『第一候補』である『一方通行(アクセラレータ)』と呼ばれる最強の能力者と対峙し、
そして――
殺された。
『ふむ、随分と良さそうだ』
カメラもモニターも見当たらないが、何処かから様子を見ているのだろう。
アレイスターは先程よりも心持ち楽しそうな調子で、虚空を睨みつける垣根を嘲笑う。
「……答えろアレイスター、俺は何故生きている?」
『まずは素直に生きている事を喜んだらどうだ?氏んでしまっては元も子も無いのだから』
「ふざけるな!!」
小馬鹿にしたような口調で言葉を放つアレイスターを、垣根は声を荒げ黙らせる。
何が『生きている事を喜べ』だ、氏に体だった自分をわざわざ生き返らせるなど、
『裏があります』『利用させてもらいます』と言っているようなものではないか。
反逆すべき対象に良い様に弄ばれる未来を想像し、垣根は血が滲むほど強く拳を握り締めた。
5: 2011/06/29(水) 01:26:35.95 ID:2fSdrpMjo
『それ程気負う必要はない。君の解析はもう粗方終わっているのだから』
「な、に……?」
『君が氏んだあの日から、もう一ヶ月以上経っている』
「なんだと!?」
それからアレイスターが話した事は、垣根にとって屈辱以外の何者でもなかった。
あの時、一方通行に殺された彼は、しかし完全に絶命する前に学園都市によって脳や身体の破片を回収されていたらしい。
とは言え、そのまま治療を受けさせて貰える事など勿論無く、脳を分割され、
冷蔵庫のように巨大な、間に合わせの生命維持装置を付けられ、
意識も、生命としての尊厳すらも存在しないような形で、彼はただ生かされていた。
何の為か?決まっている、垣根の、一方通行に次ぐ強大な能力、『未元物質(ダークマター)』を利用する為である。
一ヶ月もの間、垣根は『超能力を吐き出す為だけの塊』として、その氏に体を散々に弄ばれ、
その結果、今では彼の能力を利用した兵器が製造出来るほどに能力の解析が進んでいるとの事だ。
6: 2011/06/29(水) 01:27:03.93 ID:2fSdrpMjo
「……勝手に氏ぬ事すら許されねぇってか、腐ってるよテメェらは」
『今ならもう、君が氏のうとしても私は止めないがね』
「それだ、解析が進んで用済みならどうして俺を今更人間に戻した?そのまま破棄した方が遥かに手っ取り早いだろう?
いやそれより、さっきテメェも言ってたが、解析もまだ完璧には終わってねぇんだろ?」
『……』
「答えろよアレイスター。一体何故、俺に再び意識を与えた?手駒にでもするつもりか?」
静かに、しかしこれまでよりも力強く、垣根はアレイスターを問い詰める。
もし、この先学園都市に利用される未来しか待っていないようならば、彼はこの場で自らの命を絶ってしまうだろう。
二度と己の能力を利用されないよう、完全に。
『……興味があったのだよ』
しばしの沈黙の後、アレイスターは穏やかな口調で切り出す。
7: 2011/06/29(水) 01:27:38.99 ID:2fSdrpMjo
『意識を取り戻した君が何をするか、純粋に興味があった』
「……興味?」
『再び私に反旗を翻すか、拾った命で慎ましく生きるか、絶望して自ら命を絶つか、
何をしようと君の自由だ。私は一切君の行動を制限しない。自由を得た君がどのような行動を取るか、私はそれが楽しみでね』
「人間観察のつもりか?随分悪趣味な楽しみじゃねぇか、反吐が出るぜ。
だが、いいのか?俺はまたテメェのプランとやらの邪魔をするかも知れねぇぞ?」
『それも一興だよ。イレギュラーは時にプランを大きく促進させる効果を持つ。それに―』
「俺如きが何をしようがそう簡単に揺るぐもんじゃねぇってか?ナメやがって」
小さく舌打ちをしながら、しかし垣根はそれ以上言い返すことは出来なかった。
あの時、一方通行に虐殺されるあの瞬間、彼は知った。知ってしまった。
己の全てを賭けたあの反逆すらも、全てはアレイスターの手の平の上の出来事だったという事を。
いくつかの暗部組織を叩き潰し、アレイスターの情報網である『滞空回線』を解析し、
一方通行を寸での所まで追い詰めた垣根だったが、そこまでやってもなお、
彼はイレギュラー因子になる事すら許されなかった。
かつて全能の神に反逆するよう定められ、そして神の当て馬となり地に堕ちたルシファーと同じように、
彼もまた、最初から一方通行の当て馬となる運命だったのだ。
8: 2011/06/29(水) 01:28:05.60 ID:2fSdrpMjo
『さぁ、部屋を出て行きたまえ。君が何をするか、どのように足掻くか、じっくりと見せてもらうとしよう』
「……アレイスター=クロウリー」
憎悪を込め、垣根はもう一度その名を呼ぶ。
「俺を生かした事、自由にした事、必ず後悔させてやる」
『ほう?』
「首を洗って待ってやがれ。その首に、いつか俺が牙を突き立てるその日までなぁ」
『……楽しみにしているよ、垣根帝督』
アレイスターの嘲笑う声を背に受けながら、垣根は振り返る事もせず部屋を出て行った。
9: 2011/06/29(水) 01:28:41.15 ID:2fSdrpMjo
「そこの男、ちょっと止まるじゃん!」
「あぁ?」
外に飛び出した垣根に最初に声をかけたのは警備員(アンチスキル)と呼ばれる
学園都市における治安維持組織の一員の女性だった。
反逆方法を考えている最中に背後から声をかけられ思考を中断された垣根は、
不機嫌そうな声で返事をしつつ女性の方へと向き直る。
「真昼間からそんな格好で何をしてるじゃん?……あれ、お前何処かで……」
「そんな格好?……え?」
ハテ、と垣根は首を傾げ、今更ながら己の格好を確認し、己が目を疑う。
目を覚ました時は布団を被っていた。その後はアレイスターとの会話に集中していた。
その為ずっと気付かなかったが、彼は今―――
「うおぉぉぉ何じゃこりゃぁぁぁ!!!!」
全裸だった。
10: 2011/06/29(水) 01:29:08.45 ID:2fSdrpMjo
「と、とにかく公然猥褻の現行犯で逮捕させてもらうじゃん!」
自分の格好に今更気付き愕然とする垣根に、女性は多少動揺しながらも手錠片手に容赦なく距離を詰める。
いきなりの大ピンチだ。公然猥褻で逮捕なんぞされたら学園都市への反逆どころではなくなってしまう。
(ちくしょう、シリアスだと思って油断してたらこの様だ!!とにかくここは逃げねぇと……)
例え全裸であろうと、垣根は学園都市にたった七人しかいないレベル5の第二位である。
たかだか一警備員に捕まえられるような存在ではない。
彼は能力を行使し、天使のような六枚の翼をはためかせ大空へと飛び立った。
「あぁこら!!待つじゃん!!」
「誰が待つか!!こんなんで捕まったら末代までの恥だクソが!!!」
地上で声を張り上げる女性を無視し、垣根はそのまま飛び去る。
想像していただきたい、神々しい六枚の白い翼をはためかせ空を飛ぶ、全裸の男を。
この日、学園都市に『空飛ぶ全裸男』という新たな都市伝説が誕生した。
11: 2011/06/29(水) 01:29:42.75 ID:2fSdrpMjo
―――――――――――――――
―――――――――
――――
垣根「回想終わり」
垣根「とりあえず服は未元物質で間に合わせのもん作った後にちゃんと買いに行きました。もう全裸ではありません」
垣根「さて、大見得切ったのはいいが俺の所属してた『スクール』は壊滅してやがるし、
暗部そのものの規模が縮小されてるしで動きようがねぇわけだ」
垣根「適当に暗部組織ボコって情報引き出そうにも、んな事やったら速攻でアレイスターの野郎に行動バレちまうし……」
垣根「人手もねぇ、情報もねぇ、じゃ手の打ちようがねぇっつーの」
垣根「幸い銀行口座は止められてなかったから金は腐るほどあるが、金だけじゃどうしようもねぇ」
垣根「それに折角拾った命だ、今度こそアレイスターのクソ野郎に一泡吹かせるためにも、
単独で動くような無謀な行動は避けてぇ」
12: 2011/06/29(水) 01:30:10.89 ID:2fSdrpMjo
垣根「クソ野郎の裏をかくためにも、しばらくは表の世界で人ごみに紛れつつ情報収集に徹するとするか」
垣根「目立たないように表の世界で真っ当に暮らす、情報も集める、両立するにはちっと骨が折れるな」
垣根「ごく自然に情報収集が出来て、尚且つ表の世界で暮らす方法……」
垣根「……あ、探偵とかどうだ?」
垣根「探偵!いい響きじゃねぇか!ハードボイルドな俺にピッタリだ!!」
垣根「他人の役に立つし、職業柄色々な情報が集まっても不自然じゃねぇ、これはいけるぜ……」
垣根「よし、そうと決まれば早速どっか適当な建物買って事務所開くか」
13: 2011/06/29(水) 01:30:38.77 ID:2fSdrpMjo
―垣根探偵事務所―
~俺の推理力に常識は通用しねぇ~
14: 2011/06/29(水) 01:31:04.87 ID:2fSdrpMjo
垣根「探偵事務所といえばやっぱ小ぢんまりとしたビルで住居一体型だよな」
垣根「まぁアレだ、名探偵コ○ンの毛利探偵事務所みてぇな感じだ」
垣根「つーわけで建物も買った、電話も繋いだ、看板も立てた、ビラも撒いた、後は客を待つばかりだ」
垣根「普通ならそう簡単に客なんざこねぇがそこはそれ、SSのご都合主義に常識は通用しねぇ」
垣根「多分もう三回くらい俺が発言する内に最初の客が……」
ドア<コンコン
垣根「思ったより早かったな……どうぞ」
ドア<ガチャ
打ち止め「あの、ここって探偵事務所だよね?ってミサカはミサカは恐る恐る未知の領域に足を踏み入れて……」
垣根「……」
15: 2011/06/29(水) 01:31:31.85 ID:2fSdrpMjo
打ち止め「おあああ!!!あなたはいつぞやあの人と戦ってたイケメンさん!!?
ってミサカはミサカは衝撃の再会に戦慄してみたり!!」
垣根「oh……big fishing」
打ち止め「ど、どういう事!?ハッ!まさか探偵事務所っていうのはミサカを誘き出す為の罠!?
ってミサカはミサカは余りにも巧妙な作戦に驚愕してみたり!」
垣根「落ち着け最終信号、そんな気は全くねぇ」
打ち止め「本当にぃ?ってミサカはミサカは訝しげな目で眺めてみる」ジー
垣根「本当だって本当、一方通行の野郎に手ぇ出すつもりは今の所ねぇよ。
せっかく生身に戻ったってのにいきなりそんな危険な橋渡れるかっての」
打ち止め「むー……」ジー
垣根「そんな目で見んなよ……ほら、飴ちゃん上げるから信用してくれ」スッ
打ち止め「わぁ、ありがとう!ってミサカはミサカは目を輝かせながらキャンディーを受け取ってみる!」パァッ
垣根(……一方通行のアキレス腱を押さえるチャンスではあるが……まだ学園都市の現状すら把握出来てねぇからな。
ある程度情報を集めるまでは迂闊に動くべきじゃねぇ、ここは我慢だ……)
16: 2011/06/29(水) 01:32:13.47 ID:2fSdrpMjo
垣根(つーか一方通行の野郎一緒に来たりしてねぇよな)キョロキョロ
打ち止め「それで、あなたが探偵さんなんだよね?ってミサカはミサカは再確認してみたり」
垣根「おう、喜べ最終信号、オマエがお客様第一号だぜ」
打ち止め「えぇー、それってようするに実績なしって事だよね?ってミサカはミサカは露骨に不満がってみたり……」
垣根「何てかわいくねぇ反応だ……ガキなら素直に『やった一番だ』とか言って喜べよ」
打ち止め「あの人もそうだけど、あなたも子供に対して夢を持ちすぎだよ。
ってミサカはミサカは今時の子供がそんなに純粋じゃない事を示唆してみたり」
垣根「馬鹿が、腹の中でどう思ってようが、ガキの内はとにかく媚売っといた方が特なんだよ。
蝶よ花よって可愛がってもらえるのなんざ今の内だけだぜ?」
打ち止め「でもあなたに媚売っても別に得しそうにないし、ってミサカはミサカは本音を包み隠さずぶっちゃけてみる」
垣根「うわぁ流石あの野郎に飼われてるだけあるな、マジでかわいくねぇ」
打ち止め「それで、相談があるんだけど、ってミサカはミサカはおもむろに切り出してみたり」
垣根「ハイハイ、お聞きしますよ」
垣根(一方通行の野郎を殺るにしろ何にしろ、最終信号を手懐けとけば後々有利になる。
どんな相談事か知らねぇが、ここは一つ良い顔して好感度上げとこうじゃねぇか)
17: 2011/06/29(水) 01:32:46.70 ID:2fSdrpMjo
打ち止め「あのね、ドラマで見たんだけど、探偵さんって浮気調査とかもやるんだよね?
ってミサカはミサカは念押しするように確認してみたり」
垣根「……浮気調査?」
打ち止め「うん!あの人がね、最近ミサカを置いて一人で出かけちゃう事が多いの!
ってミサカはミサカは不満気に口を尖らせてみたり!」
垣根「えっと、あの人ってのは一方通行の事だよな?」
打ち止め「そうだよ、ってミサカはミサカは素直に頷いてみる」
垣根(……浮気、つまりは本命の相手との関係を維持したまま他の相手と関係を持つって事だ。
こいつは面白くなって来やがったぜ、あの野郎の弱みを握るチャンスじゃねぇか……)
垣根(ん……?って事はこのガキがあの野郎の本命?アイツ、まさかガチの口リコンだったのか?)
打ち止め「それでね、前は毎日家で寝転がってたのに、最近は休日になると家にいない事の方が多いんだよ!
ってミサカはミサカはプライベートな情報を惜しげもなく披露してみたり」
垣根「なるほど、くせぇな。それは外に女作ってる可能性が高ぇぞ、探偵の勘がそう告げてる」
打ち止め「や、やっぱり!ってミサカはミサカはあの人が寝取られちゃいそうな事が不安で涙目になってみたり……」
垣根「寝取られるて……」
18: 2011/06/29(水) 01:33:22.21 ID:2fSdrpMjo
打ち止め「一体どこの泥棒猫があの人を誘惑してるのか調べてちょうだい!
ってミサカはミサカは探偵さんに頼み込んでみる!!」
垣根「……わかった、それじゃ垣根探偵事務所最初の仕事は一方通行の身辺調査で決まりだな」
打ち止め「やった!ありがとう!ってミサカはミサカは感謝の気持ちを精一杯伝えてみたり!」
打ち止め「あ、でも報酬とかって必要なんだよね?ミサカのお小遣いで足りるのかな?
ってミサカはミサカはここまできて今更尻込みしてみたり……」
垣根「あ?あー、全然考えてなかったわ……つーか金とか腐るほどあるしぶっちゃけいらねぇんだよなぁ……
けど労働の対価はやっぱり貰っとかねぇとな、ボランティアなんざ性に合わねぇし」
打ち止め「う……おいくらなの?ってミサカはミサカは財布を取り出しながら上目遣いで尋ねてみる」
垣根「そうだな……報酬は、」
垣根「お嬢ちゃんの笑顔ってとこだな(キリッ」
19: 2011/06/29(水) 01:33:54.54 ID:2fSdrpMjo
打ち止め「キモ」ボソ
垣根「……え?」
打ち止め「ありがとう、優しいんだね、ってミサカはミサカは精一杯の笑顔で取り繕ってみたり」
垣根「おい半笑いになってんぞ」
打ち止め「そんな事ないよ、ってミサカはミサカは目を反らしつつ曖昧な笑みを浮かべてみたり」
垣根「……まぁいい、じゃあとりあえず住所と携帯番号教えてもらえるか?何かわかったら報告するからよ」
打ち止め「うん、はいどうぞ、ってミサカはミサカは住所と電話番号の書いた紙を差し出してみる!」
垣根「おう、サンキュー。それじゃもう帰っていいぞ。
あの野郎の浮気の証拠をバッチリ抑えてやるから、大船に乗った気分で待っててくれ」
打ち止め「それじゃ楽しみにしてるね!
ってミサカはミサカは探偵さんに向かって力いっぱい手を振ってサヨナラしてみたり!」
ドア<ガチャ、バタン タッタッタ……
20: 2011/06/29(水) 01:34:21.42 ID:2fSdrpMjo
垣根「行ったか……」
垣根「なーんか、あっさり最終信号の連絡先手に入っちまったなぁ」
垣根「クソ、あん時もこの位楽に行ってりゃ一方通行に遅れを取る事もなかったってのに……」
垣根「……まぁ今更言ってても仕方ねぇか、とにかく今はこの仕事で更にあの野郎の弱みを探るんだ」
垣根「休日出かける事が多いっつー話だったな……丁度明日は日曜、早速張り込んでみるか」
21: 2011/06/29(水) 01:34:47.82 ID:2fSdrpMjo
―翌日
打ち止め「ねー、何処行くの?ミサカも連れてってよー!
ってミサカはミサカはあなたの腰にしがみ付きながら駄々をこねてみたりぃ~」ギュー
一方通行「だあァ!離しやがれクソガキ!今日は用事があるって前から言ってただろォが!!」
打ち止め「ぶー!最近いっつもじゃん!もっと構ってよー!
ってミサカはミサカは頬を膨らませて猛抗議してみたり!」
一方通行「あァもォ、帰りに菓子でも買って来てやるから大人しくしてろ!!」
打ち止め「むぅー、今日はそれで引き下がるけど、次はないからね!
ってミサカはミサカは渋々手を離してみたり」
一方通行「ハイハイ、それじゃ行って来るわ」ガチャ
打ち止め(探偵さん、後は任せたよ!ってミサカはミサカは心の中でほくそ笑んでみる!)
23: 2011/06/29(水) 01:35:31.49 ID:2fSdrpMjo
一方通行「……」カツカツカツ
垣根(ふ、来やがったな、監視されてるとも知らずによ……)コソコソ
垣根(さぁて、どんな奴と逢引してやがるのか、その瞬間をバッチリ撮影させてもらうぜ)
垣根(この、未元物質製超望遠カメラでなぁ!!)
一方通行「……」カツカツ
垣根(公園に入った……ここが待ち合わせ場所か?)
「遅いわよ一方通行」
一方通行「あァ?時間通りだろォが」
「女性との待ち合わせに時間通りにしか来ないって言うのがもうダメね、女性馴れしてないのがバレバレよ?」
一方通行「ほざいてろ。オマエみてェな女に気ィ使う必要なンざねェってだけの話だ」
24: 2011/06/29(水) 01:36:03.53 ID:2fSdrpMjo
垣根(……正直半信半疑だったんだが、まさか本当に女と会ってるとはな。
最終信号にいい報告出来るように気合入れて撮影するか)パシャパシャッ
一方通行「……ン?」クルッ
「どうかした?」
一方通行「いや……気のせい、か?」
「?」
垣根(おいおい、どんだけ勘がいいんだよあの野郎、何でこの距離で反応しやがるんだ……)
垣根(チッ、警戒されると厄介だ、不本意だが写真の撮影はここぞと言う場面だけにしとくか)
垣根(しかし、距離が離れてるせいで何言ってるか断片的にしか聞き取れねぇな……
集音装置でも用意しとくべきだったか)
25: 2011/06/29(水) 01:36:39.76 ID:2fSdrpMjo
一方通行「でェ、今日はなンの用だ、結標?ここ最近頻繁に呼び出しやがって」
結標「えっと……」
一方通行「あァ?」
結標「か、買い物行きたいから荷物持ちが欲しかったのよ!」
一方通行「またかよ……この前も同じ用件だったじゃねェか!どンだけ買い物好きだよオマエ!!」
結標「別にいいでしょう!女の子は買い物好きなのよ!」
一方通行「何で俺が付き合わなきゃならねェンだ……つーか杖付きに荷物持ちさせるとか鬼畜にも程があンだろ」
結標「あいたたた……あの時貴方に殴られた顔面の痛みが急にぶり返して来たわ」イタタタ
一方通行「えェェ……あれもォ二ヶ月以上前の事じゃねェか……しかも悪ィのオマエだし……」
結標「女の子をキズモノにした言い訳がそれ?ちょっと最低過ぎない?」ハァ
一方通行「キズモノにした、とか誤解を招く発言やめていただけますゥ?」
垣根(……『キズモノ』?今キズモノにした、つったよな?一方通行の野郎、もうやる事やってやがったのか)
26: 2011/06/29(水) 01:37:18.50 ID:2fSdrpMjo
結標「あー痛い痛い、余りの痛さに卒倒しちゃいそう。痛くて一人じゃ買い物なんて行けないわー」
一方通行「うっぜェ……クソ、付き合えばいいンだろ、付き合えば……」ハァ
結標「最初から素直にそう言ってればいいのよ」
垣根(『付き合う』発言いただきましたぁ、これもう確定だな。あの赤毛の女が浮気相手ってわけか)フム
一方通行「でェ、今日は何買いに行くンだよ?最初に聞いとくが、俺が持てる程度の物なンだろォな?」
結標「貴方、凄まじく情けない発言してるわよ?」
一方通行「ほっとけ」
結標「ま、安心しなさい。今日買いに行くのはただの服だから」
一方通行「えェー……」
結標「な、何でそこでそんなに露骨にイヤそうな顔するのよ!?」
一方通行「女の服選びってクッソ長ェじゃねェか、待たされてる方は暇で仕方ねェ。
あンなモン付き合って喜ぶのなンざ訓練されたマゾヒストくれェなモンだろ……」
27: 2011/06/29(水) 01:38:16.50 ID:2fSdrpMjo
結標「何、貴方過去に女性の服選びに付き添った事があるわけ?」
一方通行「あァ、何度かな」
結標「そう……」
一方通行「あ?何むくれてンだオマエ?」
結標「別に何でもないわよ」フン
一方通行「……? まァでも、オマエの服選びに付き合うのは意外と退屈しねェかもな」
結標「え、それってどういう……」ドキッ
一方通行「何せオマエ、ファッションセンス最悪だからなァ、どンな服選ぶのか楽しみだ」ニヤニヤ
結標「はぁぁぁ!?特撮ヒーローみたいな服しか持ってない貴方にだけはセンス云々言われたくないわね!!」
一方通行「いやァ、流石の俺も上半身にサラシ巻いてその上にブレザー羽織っただけって格好で表歩くのは無理だわ
もはやファッションじゃねェよそれ、ただの羞恥プレイじゃねェか」
結標「ぐぬぬ……じゃ、じゃあ貴方が選んでよ!!」
一方通行「えっ」
28: 2011/06/29(水) 01:38:46.03 ID:2fSdrpMjo
結標「大口叩いたんだから、さぞ私に似合う服装をコーディネート出来るんでしょうね?」
一方通行「……まァ、サラシブレザーよりはマシなの選ぶ自信はあるなァ」
結標「ふん、いいわ、それじゃ行きましょう。貴方の好みをじっくり見せてもらうから」グイッ
一方通行「おい待て引っ張ンな、こっちは杖付いてンだぞ」カツカツ
垣根「……何あの甘酸っぱいやり取り、出歯亀してる自分が悲しくなってきたんだけど」
垣根「何なんだよちくしょう、一方通行の野郎意外とモテるのかよ、あんな凶相してやがる癖に」
垣根「しかし、これ以上アイツらのデート見てたら自頃したくなっちまいそうだな」
垣根「………帰るか。それっぽい発言も聞けたし、写真も撮ったし、もう十分だろ」トボトボ
29: 2011/06/29(水) 01:39:11.36 ID:2fSdrpMjo
「んー……現像してみたらちょっとインパクトに欠けるな、この写真」
帰宅後、未元物質製の特別カメラで撮影した写真を現像した垣根は、その成果を眺めつつ少しばかり顔を顰める。
結局撮影した写真はたったの二枚、最初に一方通行と結標が遭遇した場面と、
結標が一方通行の手を引いて歩き去っていく場面の二つだけである。
打ち止めの嫉妬心を煽るのにはこれくらいでも十分だろうが、些かパンチ力に欠ける感は否めない。
「もっとこう、決定的瞬間欲しかったよな、キスしてる所とか、ヤッてる最中とか」
独り言を喋りつつ不満気な顔で腕を組む垣根だったが、
ちょっとした微笑ましいやり取りにすら耐え切れず途中で仕事を放棄してしまったのだ。
もし実際に目の前でキスをされたりしたら現在、絶賛一人身である彼は深刻な精神的ダメージを負っていた事だろう。
「とりあえず最終信号に報告を……いやでも、もうちょっと何とかなぁ」
依頼人に連絡しようと電話に手を伸ばす垣根だったが、やはり思いとどまり、もう一度写真を睨みつける。
最初の仕事がこんなに半端でいいのだろうか、もっとどぎついインパクトが必要ではないだろうか。
彼には元々完璧主義者的な側面がある。だからこそ、この程度ではなくもっと確固とした証拠が欲しかった。
かと言って今更再び張り込みに戻るのも面倒だし、
目の前で証拠になりそうな行動を取られても精神的ダメージを受けてしまう。
さてどうしたものか、と垣根は目を閉じ思案する。
30: 2011/06/29(水) 01:39:43.31 ID:2fSdrpMjo
「……待てよ」
その時、垣根の脳に天啓の如き妙案が電流の如く突っ走った。
「俺の能力は何だ?そう、この世に存在しないものを作る力だ!!」
写真を机に並べ、垣根は歪に笑う。
「無いのなら作ればいい……ククク、写真の加工なんざ簡単な事じゃねぇか」
「俺の未元物質に常識は通用しねぇ」
この瞬間、学園都市第二位の手により、世界最高水準のコラ写真が創造された。
31: 2011/06/29(水) 01:40:10.92 ID:2fSdrpMjo
―――――――――――――――
―――――――――
――――
「お邪魔しまーす!ってミサカはミサカは元気良く返事をしながら事務所に飛び込んでみたり!」
「おう、待ってたぞ最終信号」
事務所に飛び込んできた小さな依頼人を、垣根は満面の笑みで迎える。
コラ写真を作った後、彼は早速打ち止めを呼び出したのだ。
「ねぇ、電話で言ってた事は本当?あの人の浮気の証拠を掴んだの!?て言うかあの人本当に浮気してたの!?
ってミサカはミサカは興奮気味に探偵さんに詰め寄ってみる!!」
「あぁ、バッチリ写真に収めてきたぜ、ほら見てみろ」
詰め寄ってくる打ち止めに、垣根はいくつかの写真を手渡す。
勿論、全て彼が未元物質で加工した、本来存在しない光景が写った写真である。
32: 2011/06/29(水) 01:40:43.46 ID:2fSdrpMjo
「こ、これって……」
手渡された写真を見た打ち止めは絶句し、硬直する。
それもそのはず、垣根が彼女に手渡したその写真はX指定認定されてもおかしくない様な
生々しい性描写を含むものであり、ぶっちゃけ子供に見せて良いものではない。
写真の中で、一方通行は今まで打ち止めが見た事も無いような淫らな表情で、女性と絡み合っている。
何度も言うが、それは垣根の作ったコラ写真であり、実際の光景ではない。
だが、打ち止めにはそれを嘘だと判別する能力など勿論ありはしない。
結果――
「あんの野郎!!言語能力ボッシュートじゃ済まねぇぞオラァァァ!!!!
ってミサカはミサカは過去一番の怒りを露にしてみたりいいいい!!!」
マジギレである。
「ミサカ達があの人の演算補助をしてるのはこんな事させる為じゃないのに!!
絶対に許さないよ!!ってミサカはミサカは地団駄踏んで怒りの大きさを猛アピール!!」
「そうとも、許しちゃいけねぇ。今すぐ帰って一方通行にガツンと言ってやるんだ!」
ガンガンと床を踏み込み怒りを露にする打ち止めに対し、垣根は噴き出しそうになるのを堪えつつ、
その怒りの全てを一方通行にぶつけるよう進言する。幼女すらも平気で騙し利用する彼は完全な極悪人である。
33: 2011/06/29(水) 01:41:10.51 ID:2fSdrpMjo
「ありがとう探偵さん、ミサカは今から全ミサカの代表としてあの人を更生させてくるよ!
ってミサカはミサカは決意を胸に駆け出してみたり!!」
打ち止めは写真を握り締めたまま事務所を飛び出して行く。
その光景を黙って見送った垣根は、彼女の気配が完全に消えた後、
ようやく思いっきり噴き出し、その後しばらく笑い続けた。
最高の気分だった。一度自分を頃したクソッタレに思いっきり反撃してやったのだ。
今頃一方通行はどうしているだろうか?突如最終信号に怒りをぶつけられ、わけもわからず謝罪しているかもしれない。
演算補助を打ち切られ、氏にかけの芋虫のようにのた打ち回っているかもしれない。
その姿を想像するだけで、垣根の心はかつて無いほどに満たされて行った。
「いやぁ、探偵は俺の天職かもしれねぇな」
ケラケラと笑いつつ、目尻に溜まった涙を拭いながら呟く。
探偵は写真の捏造など絶対しません。彼のやった行動は探偵活動と何の関係もありませんのでお間違えの無いよう。
34: 2011/06/29(水) 01:41:36.81 ID:2fSdrpMjo
「……ん?」
小一時間ほど笑い続けただろうか。不意にデスクの上に置いてある電話が鳴り響く。
仕事用に引いた電話だ。適当にバラ撒いたチラシにもその電話番号が書いてある。
ならば新しい仕事だろうか、と垣根は何とか笑いの波を抑え、コホンと咳払いをして喉の調子を整えると、
誰も見ていないにも関わらず、気取った様子で受話器をとった。
「はい、こちら垣根探偵事務所」
『……』
「ん、もしもし?」
『その声、どォやらテメェ本当に生き返ったらしいなァ……』
「oh……」
受話器から響いてきたのは、悪魔も震え上がるかのようなデスボイス。
それは紛うことなく、学園都市最強の能力者、一方通行の声であった。
静かな、しかし殺意と敵意の塊のような声が、垣根の耳を貫く。
恐らく打ち止めから情報が漏れたのだろう。予想外の事態である。
35: 2011/06/29(水) 01:42:09.80 ID:2fSdrpMjo
『用件はわかってるよなァ、垣根くゥン?』
「お掛けになった電話番号は、現在使われて……」
『小便はすませたかァ?神様にお祈りは?部屋のスミでガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?』
垣根の必氏の演技も虚しく、受話器からは狂気染みた笑い声と共に氏刑宣告のような言葉が放たれる。
まぁ、自業自得である。
『さァ……』
「スクラップの時間だぜェェェェェ!!!!」
バリィィン!!とド派手に窓を砕きつつ、携帯電話を片手に持った一方通行が事務所に踊り込んでくる。
逃げる暇を与えぬよう、最初から近くに待機して電話をしているようだ。
戦う、逃げる、隠れる、垣根があらゆる動作を取ろうとするその前に、
一方通行の背中から噴射される漆黒の闇が、垣根の視界を黒一色に染め上げて行った。
垣根探偵事務所、いきなり壊滅。
36: 2011/06/29(水) 01:44:13.20 ID:2fSdrpMjo
初回投下終わり
, -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
r===========r‐、: : \
|.―‐――‐―丨‐l┤、 :ヽ
L二二二二二」.ニ|‐{ミi : : |
{/ /ゝ、ノイ ノl/ ― トl!: : :| ミサカ知ってますよ。
|l:/|/≧z z≦ .ト、: :|
|/!:ll “ “ ノ: : :.| 多分次回では何事も無かったかのように
.(\ ー' / ̄)从{ 事務所が復活してるってこと。
| ``ー――‐''| ヽ、.
ゝ ノ ヽ ノ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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.(\ ー' / ̄)从{ 事務所が復活してるってこと。
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63: 2011/06/30(木) 22:09:47.08 ID:ikcUiP5Oo
上等な革張りのチェアにもたれつつ、垣根はのんびりとコーヒーを啜る。
目の前のアンティークなデスクの上には、まだ仄かに暖かいクロワッサンの乗った皿が置かれている。
時刻は午前10時過ぎ。遅めの朝食か、早めの昼食と言ったところだろうか。
まるでどこぞの貴族様のようだな、としがない探偵でしかない自分のあまりに優雅な生活に思わず自分で苦笑を漏らす。
とは言え、先日は大仕事を終えたばかりだ。しばらくはこの位ゆったりした時間を過ごしても罰は当たるまい?
※大仕事……一方さんのコラ写真作って打ち止めちゃんに渡した事。
その後ブチキレた一方さんに事務所を壊されたので頑張って直した事。
64: 2011/06/30(木) 22:10:18.03 ID:ikcUiP5Oo
優雅に、エレガントに、本物の貴族のように、ゆったりと時間をかけて食事を進める。
先日の大仕事を終えてから、設置された電話はうんともすんとも言わず、来客も一切ありはしない。
いわゆる閑古鳥という奴だが、そもそも、探偵とはそう頻繁に仕事が入るものではないし、
半ば道楽でやっているようなものなのだから、垣根は仕事が無い事に一切焦りなどは感じていない。
平穏無事な生活と言うのも悪くないな、と早くも学園都市への反逆と言う大望の牙が抜けそうになりながら、
彼はこの平和でのんびりとした時間を素直に享受していた。
たった一つの事を除いて。
「よォ、相変わらずメルヘンな面してやがンな」
「………また来やがったか」
ノックもせずにドアを開け、一人の少年が事務所に飛び込んでくる。
先日事務所を壊滅させた張本人、学園都市の第一位、一方通行だ。
垣根はその姿を確認すると、ハァ、と溜息を吐きながらコーヒーカップをデスクに置いた。
どういうわけか、一方通行は先日の一件以来こうして毎日のように事務所に顔を出してくる。
そして当然顔を出すだけではなく、朝から晩まで堂々と居座るのだ。勝手に事務所の備蓄を飲み食いしながら。
65: 2011/06/30(木) 22:10:58.16 ID:ikcUiP5Oo
「おいおい、せっかく来てやったンだから茶くらい用意しろよ」
「誰が来てくれなんて頼んだ?客でもねぇカスに出す茶はねぇよ」
「まァいつも通り勝手にもらうけどなァ」
露骨に顔を顰め、シッシと手を振るう垣根を意に介さず、
一方通行は傲慢な笑みを浮かべながら来客用のソファに座り込み、そこを占拠する。
垣根にとって、この現状はあまり好ましいものではない。
何せ、上記でも述べたように、かの白い男は先日事務所を粉々に粉砕している上、
かつて自分を一度氏の淵に追いやっているのだ。
両方とも垣根の自業自得であるとは言え、そんな真似をした男と同じ部屋で一日過ごすと言うのは
真っ当な感性を持っているのなら耐え難いに決まっている。
オマケに、来るたびに来客用のソファを占拠されるのだから堪った物ではない。立派な営業妨害だ。
どうにかして追い出せないものか、と垣根は深い溜息を吐き、額に手を当てながら思案する。
66: 2011/06/30(木) 22:11:28.62 ID:ikcUiP5Oo
「おォっと、俺を追い返すつもりってンならやめとけよ?どォせオマエ如きにゃ無理なンだからよォ」
「……チッ」
一瞬で垣根の思惑に気付いた一方通行は、愉快そうにケラケラと笑いながら釘を刺す。
実力行使で追い出すのは不可能と言って良い。ならば、と知略を巡らせようとしていたのだが、
警戒されていてはそれも難しいだろう。困ったものだ。
「ならせめて聞かせろよ、何でテメェは毎日ここに居座ってやがんだ?」
追い返す事は一旦保留とし、垣根は一方通行に疑問を投げかけながらチェアに身を沈める。
「テメェを野放しにすンのは危険だからなァ、『探偵』なンて妙なモン始めて
何を企ンでるのか知らねェが、しばらく監視させて貰う。そンだけだ」
特に隠す様子も無く、一方通行は淡々と理由を述べる。
なるほど彼はこのような行動に出るというのも道理というものだ。
過去、垣根は一方通行の命を狙い、彼の演算補助をしている打ち止めにまで手を出そうとしたのだ。
そして今回また、早々に打ち止めと接触している。野放しにしておくには少々危険すぎるだろう。
67: 2011/06/30(木) 22:12:01.41 ID:ikcUiP5Oo
「……で、本音は?」
「オマエが打ち止めに渡したコラ写真のせいで家に居辛ェ……」
先程までの傲慢な態度から一転、一方通行は肩を落とし弱々しく呟く。
先日、打ち止めが垣根の特製写真を持って帰宅した時、一方通行はまだ外出しており、
彼女はその隙に黄泉川家の全メンバーにあの写真を公開してしまったのだ。
何も知らずに帰宅した一方通行はいきなり玄関に正座させられ、
黄泉川家総出で身に覚えのない説教を喰らうハメとなった。
なんとか誤解だと説明したが、何処まで信じてもらえているかもわからないし、
それから何となく、黄泉川家の面々が自分を見る目が冷たい気がする。
て言うか自分一人だけ明らかに食事のグレードが低かったりする。イジメだよ!
そんなわけで、その扱いに耐え切れず日中は極力家を出るようにしているものの、
行く宛ても無いので仕方が無く垣根を監視する意味も兼ねてこの事務所に居座っている、というわけだ。
「ざまぁ」
「マジでブチ頃すぞオマエ」
68: 2011/06/30(木) 22:12:27.97 ID:ikcUiP5Oo
落ち込んでいる一方通行を指差し、垣根はゲラゲラと声を上げて笑う。
謝罪も反省も無いその態度に、一方通行はビキビキと青筋を立てながら物騒な発言をするが、
実際には精々半頃しにするくらいで、あの時のように全頃しにしたりはしない。
かつてのように、垣根が明確な敵意を以って向かってくるのなら気兼ねなく叩き潰せるのだが、
今の垣根からは底意地の悪さこそ感じるものの、殺意や敵意といった物はこれといって感じられない。
そもそも本気で敵対する意思があるのなら打ち止めと接触した時点で何か行動を起こしているだろう。
一度氏んでから何があったのかは知らないが、とにかく腹の底が読めない(てか馬鹿になってる)ためやり辛い。
向こうが何かアクションを起こすその時まで、もう少し様子を見るべきだろう。
一方通行はチッと舌打ちを零すと、ごろりとソファに横になった。
「だぁからソファ占拠すんなって!客が来たらどうすんだよ!」
「うっせェなァ、どォせ客なンざ来ねェンだからいいだろォが」
声を張り上げ、せめてソファからどけと訴える垣根に対し、
一方通行はめんどくさそうにパタパタと手を振り答える。
失礼極まりない態度だが、事実として客は全く来ていないのだから仕方ない。
69: 2011/06/30(木) 22:13:00.27 ID:ikcUiP5Oo
だが、噂をすれば影がさす、と言うように、
<コンコン
グダグダと言い争っていたしていた二人の元に、ドアをノックする音が鳴り響いた。
垣根探偵事務所、二人目のお客様のご来店である。
「ほらほら来たじゃねぇか、おい一方通行、オマエ出ろ」
「あァ?ふざけンな、なァンで俺がそンなパシリみてェな真似しなきゃならねェンだ」
「毎日毎日ここでコーヒー飲んでんだから見返りに少しくらい働けよ、ほら、さっさと応対しろワトソン君」
「だァれがワトソンだよ、テメェみてェなうじ虫野郎がホームズ気取りか?」
70: 2011/06/30(木) 22:13:29.21 ID:ikcUiP5Oo
<コンコンコンコン!
反応が無い事に気を悪くしたのか、あらぶる用にドアが連続ノックされる。
しかしどうあっても一方通行は動くつもりは無いらしい。
垣根はハァ、と今日何度目かの溜息を吐くと、仕方なくドアに向かって「どうぞ」と声をかけた。
一拍置いた後、ガチャリとドアが開かれる。
「へぇ、『垣根探偵事務所』なんて間抜けな名前だからもしやと思ったけど、まさか本当にアンタがいやがるとはねぇ」
「………あぁ?オマエ……『原子崩し』か」
開かれたドアの先には、見知った顔の女性が不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
女性は垣根の姿を認めると、気取った仕草で己の長い髪を掻き上げながらバカにしたような声を出す。
レベル5の第四位、『原子崩し(メルトダウナー)』、麦野沈利。
垣根とは、過去に起きた暗部間の抗争の際にドンパチやらかした仲である。
71: 2011/06/30(木) 22:13:56.40 ID:ikcUiP5Oo
麦野「あんな冷蔵庫みたいな状態からどうやって生き返ったのか知らないけど、
第二位様が探偵事務所なんざ随分落ちぶれたものね」
垣根「冷蔵庫言うなや。あと探偵バカにすんな」
麦野「はん、随分と腑抜けてるみたいね?今のテメェならあっさり殺せそうだわ」
垣根「あーやだやだ、これだから血の気の多い奴は……おい一方通行、オマエも何とか言ってやれ」
一方通行「……つか誰だよこの、顔は悪くねェのに性格のせいで全くモテなくて
憂さ晴らしにカラオケで大黒摩季の『夏が来る』を熱唱してそォな女は……」
垣根「何その無駄に具体的で生々しい考察」
麦野「あぁぁ!?誰が女王様気取りの行き遅れだぁ!!?」
一方通行「そこまでは言ってねェよ」
※夏が来る……独身女性の焦りや悲哀をやけに力強く歌った90年代半ばを代表する名曲。
『夏が来る、そして…』という更に物悲しいアンサーソングも存在する。
72: 2011/06/30(木) 22:14:50.97 ID:ikcUiP5Oo
麦野「何なんだこの白モヤシ、ブチ頃すぞ?」
一方通行「あ?口の利き方には気を付けろよクソババアが、愉快なオブジェになりてェのか?」
麦野「ば、ババアだぁ!?テメェブチコロシ確定だよ!!!」
垣根「おいやめとけ、オマエじゃ絶対勝てねぇから」
麦野「あ?」
垣根「あのな、この白モヤシ、こう見えても第一位だぞ」
麦野「……マジ?こんな男だか女だか分からねぇオカマモヤシが?」
一方通行「つーかナチュラルにモヤシ呼ばわりすンのやめろコラ、頃すぞ」
麦野「そういえば第一位はアルビノみたいな外見のガリガリモヤシ体型って話だったわね……」
垣根「そんだけ知ってるなら気付けよ」
73: 2011/06/30(木) 22:15:16.21 ID:ikcUiP5Oo
一方通行「……で、どォすンだ?」
麦野「……」
垣根「……」
一方通行「……ン?」
麦野「……今日のところはこれくらいで勘弁してあげるわ」ガチャ
垣根「あ、逃げやがった」
一方通行「結局何しに来たンだよ」
垣根「ちなみにあれ第四位な」
一方通行「……レベル5ってホントマトモなのがいねェな」
垣根「社会不適合者の筆頭が何他人事みてぇにほざいてやがんだ」
一方通行「何?オマエやっぱ氏にてェのか?」
74: 2011/06/30(木) 22:15:53.65 ID:ikcUiP5Oo
麦野「……」ガチャ
垣根「戻って来やがった」
一方通行「何がしてェンだよ第四位」
麦野「忘れるところだったけどさ、依頼に来たのよ私」
垣根「あぁ、何だオマエ客だったのか?てっきり俺の命でも狙いに来たのかと思ってたぜ」
麦野「今更テメェの命になんざ興味ねぇよ、そりゃ気に喰わないのは事実だけど,
冷蔵庫になってた当時のテメェの姿見たら溜飲も下がったわ」
垣根「だから冷蔵庫はやめろ」
麦野「で、私はお客様なんだけどまさか立ったまま依頼内容話せなんて言わないわよね?」
垣根「そうだな……おい一方通行、いい加減どけ!そこは来客用のソファだつってんだろ」
一方通行「チッ、まァ客が来たンならしょうがねェなァ……奥の居住スペース借りるぞ」スク
垣根「勝手にしろ……ただ、ベッドの下には干渉するなよ?」
一方通行「OK、全部灰にしといてやるよ」
垣根「おいばかやめろ」
75: 2011/06/30(木) 22:16:49.97 ID:ikcUiP5Oo
麦野「さて余計な白モヤシも引っ込んだ事だし、それじゃお話を聞いてもらおうかにゃーん」ポス
垣根「……なんつーか、丸くなったなオマエ」
麦野「腑抜け切ってるテメェに言われたかねぇよ」
垣根「いや、そうじゃなくてこう、前会った時よりも上半身の丸みが……」
麦野「さんにーいちドバーン!!」バシュゥゥン!
垣根「うおぉ危ねぇ!!」サッ
麦野「チッ」
垣根「おま、いきなり能力使うんじゃねえよ!!今避けなかったら氏んでたぞ!?」
麦野「テメェが下らねぇ事言うからだ!あん時から体型は一切変わっちゃいねぇよ!!」
垣根「何だ、てっきりダイエットの為のフィットネスクラブでも紹介して欲しいのかt」
麦野「………」ガシッ
垣根「まぁオマエはスレンダーだからな、ダイエットなんかとは無縁だよな。
あのだからアイアンクローやめてくれません?離して下さいマジ痛いんで」ギリギリ
麦野「わかってるじゃない」スッ
76: 2011/06/30(木) 22:17:31.91 ID:ikcUiP5Oo
垣根「はぁ……そろそろ本題に入るか。
さてお客様、本日はどのようなご用件で?」
麦野「そうね、とりあえず話聞いてくれる?」
垣根「おう、何でも話せ、好きなだけ話せ、それだけ強請るネタが増えるってもんだ」
麦野「おい」
垣根「……冗談だ冗談。守秘義務は守る」
麦野「もし他言しやがったらブチ頃すからな」
垣根「肝に銘じといてやるよ」
麦野「じゃあはい、この写真見て」ピラ
垣根「どれ……ん?これに写ってんのは確か『アイテム』の……」
麦野「そ、うちの構成員の二人よ」
垣根「『能力追跡』と下っ端の無能力者だったか?」
麦野「そう、滝壺と浜面って言うんだけど、その二人の関係について調べて欲しいのよ」
77: 2011/06/30(木) 22:18:00.42 ID:ikcUiP5Oo
垣根「は?テメェんとこの構成員なんだろ?関係調べろとか意味がわかんねぇぞ」
麦野「だ、だからその、あれよ、その二人がこう、どこまで進んでるのか……」
垣根「……あぁ、つまりこの二人が付き合ってるかどうか調べろって事か」
麦野「ま、まぁそうとも言えるわね」
垣根「よし、帰れ」
麦野「はぁ!?テメェここで帰れはねぇだろ!!」
垣根「ふざけんな雑魚、ここは恋愛お悩み相談室じゃなくて探偵事務所なんだよ!
下らねぇ三角関係に何か関わってられっかボケ!!」
※先日浮気話に首突っ込んだ上に証拠の捏造をしました。
78: 2011/06/30(木) 22:18:27.07 ID:ikcUiP5Oo
麦野「おい待てよ、その言い方だと何か私が浜面に恋してるみたいじゃねぇか」
垣根「違うのか?この男の事が気になるからコイツら二人の関係探りたいんじゃねぇの?」
麦野「そんなわけねぇだろ、何でこの私があんな無能力者の事なんか……」
垣根「……じゃぁ何でこんな依頼してんだよ」
麦野「それはその……あれよ、あれ、ほら……」
垣根「どれだよ」
麦野「あの、ほら、うち部内恋愛禁止だから!」
垣根「なるほど、全く意味がわからねぇ」
麦野「あーの……うん、そいつらが恋愛に現抜かして仕事が疎かになっちゃうかも知れないでしょ?
だから今のうちにハッキリさせといた方がいいかなって!」
垣根「だからもう、自分で聞けよオマエ!!何でそんな事で一々探偵使おうとすんの!?」
79: 2011/06/30(木) 22:18:54.26 ID:ikcUiP5Oo
麦野「ガタガタうっせぇんだよ!!いいからテメェは黙って働きゃいいんだよぉぉ!!!」
垣根「逆ギレかよ!!結局テメェは二人が付き合ってるって現実突きつけられるのが怖ぇから聞けねぇんだろ!?
なぁにが第四位だよ!!現実とも向き合えねぇ臆病者が!!」
麦野「ち、違ぇよ!!別にアイツらが付き合っていようがいまいが何とも思わないわよ!!」
垣根「何とも思わねぇんなら尚更もういいだろうが!!依頼の根底崩れてんぞ!!」
麦野「……おいメルヘン、いい加減にして依頼受けなきゃこっちも考えがあるわよ?」
垣根「あぁ?どんな考えだよ、言ってみろやクソビXチが」
麦野「この探偵事務所の悪評ある事無い事流しまくるわよ?」
垣根「ちっちゃ!!超小せぇよ第四位!!オマエそれでも超能力者か!?」
麦野「フン、この探偵事務所がハッテン場だって情報を流されたくなかったら大人しく依頼を受けることね」
垣根「最悪だなテメェ!!」
80: 2011/06/30(木) 22:19:37.94 ID:ikcUiP5Oo
麦野「さぁどうすんの?私の依頼を受けて平穏な生活を手にするか、
依頼を蹴って毎日尻を狙われる生活を送るか……好きな方を選ばせてあげるわ」
垣根「ちくしょう……受ければいいんだろクソッタレがぁ……」ギリ
麦野「ふん、最初から素直にそう言ってりゃいいのよ」
垣根「クソ……じゃぁ依頼はちゃんとこなしてやっから、連絡先教えろ」
麦野「………」
垣根「いやいや、何警戒してんのオマエ?連絡取れねぇと仕事の報告できねぇだろ!」
麦野「チッ、仕方ないわね……ほら」ス
垣根「サンキュー……で、報酬についてだが」
麦野「上手く行ったらその時は言い値を払うわよ、金なんていくらでもあるし」
垣根「いやこっちも腐るほど持ってるから金はいらねぇよ」
麦野「はぁ?じゃあ報酬って何が欲しいんだよ?」
垣根「そうだな……」ウーン
81: 2011/06/30(木) 22:20:04.72 ID:ikcUiP5Oo
垣根「よし、身体で払ってもらおうか」
麦野「……」
垣根「……なんてな、冗談だ冗d」
麦野「構わないわよ」
垣根「えっ」
麦野「そうね、やる気が出るように少し前払いしといてあげる。こっちおいで?」
垣根「マジっスか!いいんスか!!」
麦野「ほら、顔近づけて、目瞑って……」
垣根「お、おう……」ドキドキ
82: 2011/06/30(木) 22:20:31.29 ID:ikcUiP5Oo
麦野「……」ガシッ
垣根「ん?」
麦野「フン!」グイッ
コキャッ!!
垣根「カハァッ!!!」
麦野「それじゃ依頼よろしくねー」ガチャ
垣根「く、首が、首がぁぁ……」ピクピク
83: 2011/06/30(木) 22:20:57.72 ID:ikcUiP5Oo
垣根「クソ、マジ痛ぇ……どう考えても他人に物頼む態度じゃねぇだろ……」
垣根「つーか前払いでこれかよ、仕事終わりに完済する時は何されるんだ?」
垣根「……でも依頼こなさなきゃ事務所がハッテン場にされちまう……ちくしょう………」
垣根「はぁ……それじゃ一方通行、俺出かけるから」
一方通行「あァ?一々俺に断らずに勝手に行けよ」
垣根「……オマエ、家主が出かけるのに居座る気かよ」
一方通行「もう俺に寄越せよこのビル、俺に使って貰えるなンて光栄だろ?」
垣根「どんだけ唯我独尊だよオマエ……クソ、帰る時は鍵かけて帰れよ!」
一方通行「おォ、覚えてたらなァ」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
84: 2011/06/30(木) 22:21:28.58 ID:ikcUiP5Oo
―街中
浜面「悪い滝壺、待ったか?」タッタッタ
滝壺「んーん、私も今来た所だよ、はまづら」ニコッ
浜面「そっか、それならよかったぜ」フゥ
垣根(あーあ、まぁたカップルの監視かよ、これ結構精神的に堪えるんだぞ?ちくしょうめ……)
垣根(俺も彼女欲しいなぁ……)
垣根(あー、第四位もあんな冴えない猿面に構ってねぇで俺に乳揉ませてくれねぇかな)
浜面「それで、今日は何処行くんだっけ?」
滝壺「んー、そういえば考えてないや」
浜面「そっか、参ったなぁ俺も何も考えてねぇんだ」
垣根(二人揃ってノープランかよ、これだから処O童O同士のカップルは……)
85: 2011/06/30(木) 22:22:09.27 ID:ikcUiP5Oo
滝壺「私ははまづらと一緒にいられるだけで十分だよ」ニコッ
浜面「滝壺……あぁ、勿論俺もだ!お前さえいれば場所なんて何処でも構わねぇ!!」
垣根(うっぜぇぇぇ!!!ならもう二人で家に引き篭もってろや!!そんで二度と出て来んなや!!!)
垣根(つーかもう付き合ってる事確定だろ!迷う余地もねぇ、ただのバカップルだアイツら!!)
垣根(あーうぜぇ、つーか第四位この場に呼ぼう、現実突きつけてやる)カチャ
垣根(もしもし第四位か?俺だ、現場押さえたから今すぐ来い)
垣根(おう、マジラブラブだよ、反吐が出そうだ)
垣根(嘘じゃねぇって、さっさと来い!それとも何か?やっぱり現実を直視する度胸はねぇか?)ククク
垣根(……ハッ、それじゃ来れるよなぁ?あぁ、座標はすぐにメールしてやるよ、じゃあ待ってるぞ)
垣根(……ふぅ)カチカチ
垣根(さて、余りにもムカつくから第四位来るまでアイツらが熟年離婚する妄想でもしてやるか……)
86: 2011/06/30(木) 22:22:49.55 ID:ikcUiP5Oo
―妄想中
滝壺「子供も成人したし、私出て行くね?」
浜面「な、なんだ突然!?何の冗談だ!!」
滝壺「冗談じゃないし、突然でもないよ、私はずっと耐えてきたの」
浜面「耐えてきただと……?どういう事だ!!」
滝壺「そうだよ、あなたは稼ぎも悪いし、顔も良くないし、アル中気味だし
子供ができてなかったら絶対結婚なんてしなかったよ。今日まで待ったのは全部子供達の為なの」
浜面「何だと!!一体今日まで誰が養って来てやったと思ってる!?」
滝壺「ぶっちゃけあなた三十代までヒモだったよね?それに今でも私の稼ぎの方が多いんだよ?わかってる?
元々大能力者だった私と無能力者のあなたじゃ出来が違うの」
浜面「ぐぬ……」
滝壺「それじゃ出て行くね。この家と家具はせめてもの情けにあなたに上げるよ
ちなみに子供達は皆私についてくるんだってさ」ガチャ
浜面「ま、待て行くな!後悔するぞ!理后!!」
―妄想終了
87: 2011/06/30(木) 22:23:16.65 ID:ikcUiP5Oo
垣根(……なんてな)フフフ
麦野(……おい、何ニヤついてやがるホストモドキ)
垣根(おっと早かったな、そんなに気になって仕方が無かったのか?)
麦野(言ってろよ羽虫が、それより浜面と滝壺は?)
垣根(おう、それならあそこに……ん?)
「二人とも、超イチャついてないで早く行きましょうよ、今日はそういうのじゃないでしょうに」
浜面「おっと、来てたのか絹旗」
滝壺「ごめんきぬはた、気付いてなかった」
絹旗「はぁ……バカップルも超程々にしといてくださいよ本当」ヤレヤレ
88: 2011/06/30(木) 22:23:48.27 ID:ikcUiP5Oo
垣根(あれ、妄想してる間に何か増えてやがる。あのチビも確かアイテムの構成員だったよな……?)
麦野(えぇ、絹旗ね……どういう事よ?何が『現場押さえた』だ)
垣根(どういう事かは俺が聞きてぇよ。何だあの猿面、二股でもしてやがんのか?)
麦野(は、浜面にそんな甲斐性ないわよ!)
垣根(まぁそうだろうな、魅力もなさそうだし)
麦野(あ゛?)
垣根(何でオマエが怒んの?)
浜面「絹旗は何買うか決めてんのか?」
絹旗「いえ、超決めてませんが」
滝壺「それじゃどうしよう?」
垣根(チビもノープランかよ。つーか何やるつもりなんだ?)
麦野(買い物……にしても何買うか誰も決めて無いってのは変よね、ホント何なのかしら?)
89: 2011/06/30(木) 22:24:14.74 ID:ikcUiP5Oo
滝壺「ところで、むぎのに私達三人で集まってるってバレてないよね?」
麦野(……)ピクッ
浜面「あぁ、そりゃ大丈夫じゃないか?誰も喋ってないだろ?」
絹旗「んー、でも麦野は超勘が鋭いところがありますからねぇ」
滝壺「道端で話してるのは目立つからとりあえず移動しようか。
麦野に見つかったら全部台無しになっちゃう」
麦野(……)ピクピクッ
絹旗「そうですね、麦野に見つかるなんて考えるだけでも超恐ろしいですから」
浜面「だな、それじゃ適当に移動するか」
垣根(え、これ第四位ハブられてねぇ?『台無しになる』とか『恐ろしい』とか言われてんぞ?)
麦野(……ま、まさか、アイツらが私をハブにするなんてそんな事……)
垣根(現実を見ろよ、実際オマエを除いた三人が集まってんじゃねぇか)
麦野(う……)
90: 2011/06/30(木) 22:24:54.85 ID:ikcUiP5Oo
絹旗「それにしても、どこに行けば麦野を超ギャフンと言わせる事の出来るブツが手に入るんでしょうか?」
浜面「難しいよなぁ、あいつ何が起きても動じ無そうだし」
滝壺「大丈夫だよ、むぎのも女の子だし付け入る隙はあるはず」
垣根(うわぁ、ハブどころか下克上企んでねぇかアイツら?)
麦野(……)
垣根(まぁオマエ性格きっついもんなぁ、もっと仲間は大事にしねぇと……)
麦野(……)
垣根(……おい、大丈夫か?)
麦野(ハッ……ごめん、ちょっと夢見てたみたい)
垣根(夢?)
麦野(そう、夢よ……皆が私のこと疎んでるなんてそんな事……)
91: 2011/06/30(木) 22:25:22.63 ID:ikcUiP5Oo
絹旗「やるならやっぱり超深夜ですよね」
浜面「そうだなぁ、麦野に何処まで通用するかわからないけど、寝静まった所を狙うのが一番効果的だろうな」
滝壺「決まりだね、感付かれない内に今晩にでも奇襲を……」
麦野(……)
垣根(うわぁ……うわぁ……)
麦野(ありがとう、もういいわ……)フラフラ
垣根(あ?おい待て、何処に行くつもりだ?)
麦野(……)フラフラ
垣根(おーい?)
垣根(……何だこれ、俺関係ないのにすっごく罪悪感感じてきたんだけど……)
92: 2011/06/30(木) 22:25:53.20 ID:ikcUiP5Oo
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―深夜、麦野宅
絹旗(多分麦野はこの扉の先にいます、超準備はいいですか?二人とも)
浜面(おう)
滝壺(大丈夫だよ)
絹旗(しかし、浜面も偶には超良い事考え付きますね……サプライズパーティーだなんて)
滝壺(最近元気なかったもんね、むぎの)
浜面(やっぱフレンダの事とか引き摺ってるんだろうな……これで少しでも元気になってくれりゃいいんだが)
絹旗(麦野にバレないように超少しずつクラッカーとかパーティーグッズ買うのは大変でしたからね
元気になってもらわないと超割りにあいませんよ)
93: 2011/06/30(木) 22:26:19.77 ID:ikcUiP5Oo
滝壺(大丈夫、きっと元気になるよ。だってはまづらが考えた計画だもん)
浜面(そ、そうか?)テレ
絹旗(はぁー熱い熱い、超さっさと行きましょうか)
浜面(お、おう、そうだな)
滝壺(はいはまづら、きぬはた、クラッカー)スッ
浜面(お、サンキュー)
絹旗(超ありがとうございます。それじゃ飛び込みましょうか)
浜面(おう!)
滝壺(うん)
絹旗(よし、じゃあ超行きますよ?3、2、1………GO!!)ガチャッ
94: 2011/06/30(木) 22:26:46.79 ID:ikcUiP5Oo
絹旗・浜面「「サプラーイズ!!!」」パパパーン!!
麦野「氏ねオラアアアアア!!!!」ブン
浜面「はぐああああ!!!」ゴシャァ
絹旗「は、浜面ああああ!!!」
麦野「ハッ!情報が漏れてるとも知らずのこのこ来やがるとはなぁ!!この私を甘く見るなよ!?」
絹旗「な、まさか超気付かれていたとは!?……いや、何で浜面を超ブン殴ったんです?」
麦野「しらばっくれてんじゃねぇぞ!!テメェらが下克上しようとしてるのなんざとっくに割れてんだよぉぉぉ!!!」
絹旗「げ、下克上!?」
浜面「お、おい待て麦野!誰がそんな事……」
麦野「喋んなこの無能力者がああぁぁ!!!」ブン
浜面「ぶへあぁ!!!」バキィ!!
絹旗「浜面ああああ!!!」
95: 2011/06/30(木) 22:27:13.48 ID:ikcUiP5Oo
麦野「ちょっとでもアンタに心許そうとしてた私がバカだったわ!!今度こそ確実に息の根止めてやるわぁぁぁ!!!」
浜面「ひいいいぃぃぃ!!!?」
絹旗「ちょ、超待ってください麦野!!誤解ですって!!ほら、滝壺さんも説得を……」
滝壺「きぬはた、ここははまづらに任せて逃げるべきだよ」
絹旗「えっ」
滝壺「大丈夫、私ははまづらを信じてる」
絹旗「え、いやでも……」
滝壺「むぎのもはまづらの事は殺さないから、今ははまづらに任せたほうがいいよ」
絹旗「そ、そうですかね?それじゃ……」
浜面「ちょ、見捨てる気かお前らああああ!!!!」
麦野「はーまづらぁ……」
浜面「いやああああ!!!」
108: 2011/07/02(土) 19:03:32.23 ID:IQADHD4ro
「はぁ……」
学園都市の第三位、御坂美琴は物憂げな表情で溜息を吐く。
まだ誰にも相談していないが、彼女は今とある重大な悩みを抱えていた。
というのもここ最近、いや、自覚していなかっただけでもしかしたらずっと前から、
何をしていても、どんな時も、一人の男の事が頭から離れないのだ。
友人達とカフェでティータイムを楽しんでいるこの時も、ふとした瞬間彼の事が頭を過ぎり
ついつい溜息が出てしまう。一緒にいた友人達はそんな御坂を心配そうな目で見つめている。
「どうしたんです御坂さん?最近溜息多いですよ?悩み事ですか?」
頭部に自己主張の強すぎる花飾りを装着した少女―初春飾利が心から心配したような声で御坂に問いかける。
心優しく、周囲の事を良く見ている彼女の善意100%の心遣いが今日の御坂には少しばかり重たい。
『男の事で悩んでいる』など、お嬢様学校に通う女子中学生がそうそう口に出せる物ではないだろう。
109: 2011/07/02(土) 19:04:03.57 ID:IQADHD4ro
「お姉様!何か悩みがあるのでしたら是非この黒子めに!!」
「あ、はは……無い無い、そんなの無いってー」
初春の言を受け、御坂の隣に座っていた少女―白井黒子が身を乗り出して御坂に詰め寄る。
御坂はそんな彼女に対し、曖昧な笑顔を浮かべながら『悩みなど無い』と受け流す。
御坂のパートナーを自称し、運命の赤い糸で結ばれている、と恥ずかしげも無く言い張る白井である。
男に関する悩みなど打ち明けられるはずもない。他の誰に言おうと、こいつにだけは言っちゃいけない。
「お姉様、正直に言ってくださいまし!……それとも、黒子はそんなに頼りにならないでしょうか?」
「いや、そういうわけじゃなくてね?」
「黒子の、黒子の生き甲斐は……お姉様の弱みに付け込んであれこれやる事ですの!」(お姉様の力になる事ですの!)
「本音と建前逆になってんぞコラ」
110: 2011/07/02(土) 19:04:30.63 ID:IQADHD4ro
「白井さんも初春もわかってないなぁ、御坂さんはきっと恋をしてるんだよ。ね、そうですよね御坂さん?」
「ちょ、さ、佐天さん!?」
「恋いぃぃぃぃぃぃ!!!!!?」
その手の話が大好きなロングヘアの少女―佐天涙子が悪戯っぽい笑みを浮かべながら御坂を見つめる。
確かに、御坂の抱いている感情は恋と呼んでいいものだろう。しかし、だからと言ってこんな所で暴露されては堪らない。
佐天の直球な発言を慌ててそれを否定しようとする御坂だったが、その前に白井が過剰反応してしまう。
「く、黒子!?」
「お姉様!!もしや、もしやあの殿方の事ですの!?」
「おっと白井さん、もしかして心当たりがあるんですか?」
「ふえぇ、御坂さんが恋……」
白井は顔を青くしながら大声をあげると、御坂の肩をがっしりと掴み、ガクガクと揺さぶる。
そんな二人の様子を佐天はにまにまと笑いながら眺め、初春は顔を赤らめながら両手で自分の頬を押さえている。
微笑ましい光景だと言えなくも無いが、御坂にとっては笑えない事態である。
なんとか誤魔化さなければ大変な事になってしまう(主に白井のせいで)
111: 2011/07/02(土) 19:05:03.07 ID:IQADHD4ro
「あんの類人猿がぁぁ!!よくもお姉様を誑かして……」
「いい加減にしなさい!!」
バチバチバチ!!
「あうっ!」
依然として肩を掴みながら唸っていた白井を御坂は電撃を流して撃退する。
それは常人ならば悶絶して気を失う程の出力の電撃だったのだが、白井は精々ビクッとして蹲る程度であった。
幾度と無く御坂に粗相を働き、その度に電撃で撃退されている彼女は、恐らく電撃に対する耐性が出来てしまっているのだろう。
とは言え効果はあったようで、白井は何か言いたげな目をしながらも、すごすごと引き下がった。
さて白井も黙らせたしこれで一安心……というわけにはいかないようだ。
佐天と初春はキラキラとした瞳で御坂を見つめている。
思春期の少女達にとって、恋の話ほど興味をそそる物は無い。
それも、名門・常盤台中学のエース、御坂美琴の恋愛とあっては興味を持つなと言うほうが無理というものだ。
112: 2011/07/02(土) 19:05:29.38 ID:IQADHD4ro
「それで、実際の所どうなんですか御坂さん?」
「ほ、本当に恋をしてるんですか?」
「ま、まさか!そんな事無いって!!私が恋なんて……」
「じゃあ白井さんの言ってた『殿方』って誰の事なんです?」
「う……そ、それは……」
何とか誤魔化そうとする御坂だったが、佐天に痛い所を突かれ、つい口ごもってしまう。
そんな反応をしてしまっては、もはや『その男に恋をしています』と言っているようなものだ。
初春はいっそう顔を赤らめ、佐天はチェシャ猫のようににんまりと笑う。
「御坂さんが正直に話してくれれば、私達も協力する事はやぶさかではないですよ。ね、初春?」
「そ、そうですよ!私達御坂さんを応援します!」
「二人とも……い、いや本当に何でもないからさ!」
佐天と初春の言葉に一瞬心が揺らぎかけた御坂だったが、すぐに思い直し言葉を飲み込む。
何せ御坂の思い人である上条当麻は、行く先々で自覚無しにフラグを建ててしまう特一級のフラグ建築士なのだ。
下手に二人に相談し協力を要請してしまえば、最悪彼女達までもフラグを建てられてしまうかもしれない。
ライバルが増えるのも友人同士で争うハメになるのも御免である。
113: 2011/07/02(土) 19:05:57.22 ID:IQADHD4ro
「まぁまぁそんな事言わずに、私達と御坂さんの仲じゃないですかー」
「ぜ、絶対他言しませんから!」
「うぅー……」
「なぁりませんの!!!」
なおも食い下がる二人を、白井が髪を逆立てながら制止する。
彼女にとっては御坂が上条と会っている事すら気に入らないというのに、
ましてやその恋を応援するなど以ての外である。
上条が御坂の心の支えになっているという事は白井とて理解しているが、
理屈ではなく感情で動いている彼女にとって、そんなものは些細な問題である。
「お姉様はあの殿方に騙されているんですの!!」
カッと血走った目を見開き、白井は激昂する。
周囲の人々が何事かと彼女達に注目するがそんな事は気にも留めない。
114: 2011/07/02(土) 19:06:24.74 ID:IQADHD4ro
「お姉様!今から黒子がお姉様に真実の愛を教えて差し上げ……」
「大声で馬鹿な事言ってんじゃないわよ!!」
バリバリバリィィ!!
「ほげぇええ!!!」
『真実の愛』などとほざきながら御坂に抱きつこうとした白井だったが、
再び放たれた電撃により、敢え無く撃沈されてしまう。
先程よりも高出力の電撃を浴びた白井はその名の通り黒焦げになりその場に倒れ伏す。
些かやり過ぎの感はあるが、オープンカフェのど真ん中でレOプレイを強要されそうになったのだから仕方があるまい。
「く、邪険にあしらわれるとは………」
しかしそれでも懲りず、白井はフラつきながらも何とか立ち上がる。
115: 2011/07/02(土) 19:06:52.11 ID:IQADHD4ro
「ならばお姉様の視線を釘付けに……」
「白井さん、何で服脱ごうとしてるのか知りませんけど、御坂さん行っちゃいましたよ?」
「なんと!?」
佐天と初春を誤魔化す方法が見つからなかった御坂は、どうも白井の変態的行動を理由に、
これ幸いとばかりに逃げ出してしまったようだ。
後に残っているのは不満気な顔をしている佐天と、シラけた目で白井を見ている初春の姿のみであった。
「くぅ……わたくしの顔に何度泥を塗れば気が済むんですの……初春ッ!!」
「えぇ!?私ですか!?」
116: 2011/07/02(土) 19:07:29.36 ID:IQADHD4ro
「思わず逃げ出しちゃったけど、実際問題どうしようかなぁ」
とぼとぼと帰途につきつつ、御坂は再度溜息を零す。
佐天や初春に焚きつけられるまでもなく、今のままではいけないという事は理解している。
そもそもじっとしているのは彼女の性に合わない。迷った時はとりあえず動いてみるというのが本分だ。
しかし、そういう方面に疎い彼女は一体どういう行動を取ればいいのかがわからず、
かつ生まれて初めての恋に、どうしようもなく臆病になってしまっている。
それに……
「私、アイツの事あんまり知らないのよね……」
そう、御坂は彼の趣味も、嗜好もほとんど知らない。これでは手の打ちようも無いというものだ。
今更ながらその事実を再確認した御坂は俄かに焦りを感じる。
先に記した通り、上条はフラグ建築士だ。両手の指では数え切れない程の女性が彼を狙っている。
いつ、誰が彼とくっつくかわかったものではない。
(このままじゃダメ……と、とにかく、まずはアイツの事調べないと……でも、どうやって…………ん?)
思い悩んでいた彼女の目が、近くの電灯に貼り付けて合った一枚のチラシを捉える。
「…………垣根探偵事務所?」
117: 2011/07/02(土) 19:08:01.42 ID:IQADHD4ro
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―事務所
麦野「オラアアアアア!!!!」ググググ
垣根「ちょ、待て麦野、締まってる、マジで締まってる!」ガクガク
麦野「氏ね!氏ね!!」グググ
垣根「し、氏ぬ……本当に氏んでしまう……おい一方通行、助けろぉぉ……」
一方通行「コーヒーうめェ……」ズズ
垣根「ち、ちくしょお……」カクカク
麦野「氏ねぇぇぇぇ!!!」ググググ
一方通行「今日も平和だなァ」ズズ
垣根「」ブクブクブク
麦野「ハァ、ハァ、ハァ……」
118: 2011/07/02(土) 19:08:33.16 ID:IQADHD4ro
垣根「……で、何だってテメェは事務所に飛び込んで来るなり俺の首を絞めやがった?」ゲホゲホ
麦野「テメェのせいで、テメェのせいでなぁ……」
垣根「あ?」
麦野「何が下克上だよ!?この前のあれ私の為にサプライズパーティー開こうとしてただけだったらしいわよ!!」
垣根「……え、マジ?」
麦野「大マジよ!!アンタが『下克上』なんて言うから真に受けて浜面半頃しにしちゃったじゃないの!!」
垣根「いやそれは知らねぇよ、多分俺は悪くねぇ」
麦野「ふざけんなクソ野郎が!!!」バシュン!!
垣根「だから事務所で能力使うなって!!」ファサッ
麦野「どうしてくれんのよもう、アイツらに合わせる顔がないわ……」グスン
垣根「滝壺と浜面付き合ってたっぽいしどうせオマエの居場所はなかっだろ」
麦野「テメェ……」ビキビキ
119: 2011/07/02(土) 19:09:02.65 ID:IQADHD4ro
一方通行「おい第四位、オマエが何やらかしたのか知らねェが、ちゃンと謝って来たか?」
麦野「あぁ?」
一方通行「謝ってねェンならすぐ行って来い、勘違いくらい誰でもあンだろ。
半頃しにしたくらいでクヨクヨしてンじゃねェよ」
垣根「何かオマエだけはそういう事言っちゃいけない気がするんだが」
一方通行「うるせェよ。おら第四位、さっさと謝りに行け」
麦野「はぁ?イヤに決まってんでしょ、何で私が頭下げなきゃいけないのよ?悪いのは垣根だし」
垣根「おい」
一方通行「あ、ダメだコイツ」
麦野「謝りに行くんなら垣根のバカでしょ?ほら垣根、『俺が麦野様を騙しました』って土下座して来な」
垣根「いくら俺でも流石にキレるぞこの野郎」
120: 2011/07/02(土) 19:09:45.14 ID:IQADHD4ro
一方通行「良くわかンねェが垣根のせいってのは多分一理あンだろ、もォ一緒に謝りに行けよ」
垣根「事情知らねぇくせに口挟むんじゃねぇよ、俺は探偵として真実を明らかにしただけだ。
麦野が勝手に勘違いして暴走しただけで俺の行いは何一つ間違っちゃいねぇ」
一方通行「なァにが真実だ、捏造写真を証拠として渡すようなうじ虫探偵がほざいてンじゃねェぞ」
麦野「やっぱりこんな奴頼ったのが間違いだったわ……」ハァ
一方通行「真っ先に気付けよそンな事、どンだけテンパってたンだよ」
麦野「で、アイツらに会い辛いからほとぼりが冷めるまでここを隠れ蓑にさせてもらうわ」
一方通行「オマエ正気か?そりゃつまり……」
垣根「俺と同棲したいって事だな?いいぜ、何なら永久就職でも構わねぇぞ」
麦野「馬鹿か?テメェは出て行くんだよ」
垣根「ちょっと意味がわからない」
121: 2011/07/02(土) 19:10:12.53 ID:IQADHD4ro
一方通行「あァなるほど、垣根が出て行けば確かに万事解決だな」
垣根「いやいやいや、俺の事務所だぞここ!!何で俺が出て行かなきゃならねぇんだよ!?」
麦野「私がこういう状況になったのはテメェのせいだ、責任取るのは当たり前だろうが!」
垣根「だから責任取って俺がオマエの居場所になってやるって言ってんだろうが!」クワッ
麦野「えっ……」ドキッ
一方通行「いやおかしいだろ、なンでドキッとすンだよそこで」
垣根「傷心中の女なんざちょっと甘い顔してやればコロッと落ちるモンなんだよ、覚えとけ童O」ククク
一方通行「ゲスにも程があるわ、氏ンだ方がいいぞ?」
垣根「安心しろ、俺は口リコンじゃねぇからオマエの射程圏内の幼女には手ぇ出さねぇよ」
一方通行「氏ね」
麦野「ってこんなカスの口車に乗るわけねぇだろ!それにほら、私には浜面いるし……」
垣根「いねぇよ、オマエの浜面なんてもんは幻想だ。ありゃ能力追跡のもんだろ。
一万歩譲ってまだあの二人が付き合ってなかったとしても、オマエのもんには絶対ならねぇ」
一方通行「そもそも、その浜面をうっかり半頃しにして来たンだろうが」
122: 2011/07/02(土) 19:10:45.48 ID:IQADHD4ro
麦野「うっせぇよクソ虫どもが!素直になれない乙女心を理解できない童Oはこれだから……」
一方通行「素直になれないっからって半頃しにはしねェよ。
全国の乙女に頭かち割って脳漿ブチマケながら詫びろクソババア」
垣根「つーか開き直りやがったな、結局浜面に惚れてんじゃねぇかオマエ」
麦野「ほ、惚れてねぇし!」
垣根「じゃあもう俺にしとけよ、一夜限りの関係でも構わねぇから」
一方通行「それは男の言うセリフじゃねェだろ、一発ヤりてェだけじゃねェか」
麦野「……そういえばまだ報酬払ってなかったわね」
垣根「oh?」
麦野「おるぁ!!!」ゲシッ
キーン!!
垣根「はふぁ!!?」バターン
一方通行「うわァ、躊躇無く金的蹴り上げやがった……」
123: 2011/07/02(土) 19:11:12.35 ID:IQADHD4ro
ドア<コンコン
一方通行「あァ?客みてェだぞ垣根」
垣根「こ、こんな時にか……頼む、オマエらどっちか応対してくれ……」プルプル
麦野「やなこった」
一方通行「しねよ」
垣根「鬼畜かテメェら!?」
ドア<コンコンコン
一方通行「ほォら、急がねェと折角の客が帰っちまうぜェ?」
垣根「く、くそ……何とか呼吸を整えて……スーハースーハー………」ハァハァハァ
麦野「気持ち悪ぃなオマエ」
垣根「誰のせいだよ!?……スーハー……よし、どうぞ!」
124: 2011/07/02(土) 19:11:38.53 ID:IQADHD4ro
ドア<ガチャッ
御坂「すいません、ここが垣根探偵事務所でいいんで……しょ、うか………?」
麦野「……」
一方通行「」
垣根(……あれ、こいつ)
麦野「テメェ第三位!!」
一方通行「超電磁砲……」
御坂「一方通行……?どうしてこんな所に!?」
麦野「おい私を無視すんな!」
垣根「やっぱ本物の第三位か……おい、一応言っとくがこんな所でドンパチ始めんじゃねぇぞテメェら」
125: 2011/07/02(土) 19:12:18.58 ID:IQADHD4ro
御坂「……」
一方通行「……」
垣根「ほんとやめろよ?睨み合うだけにしとけよ?」
麦野「つーか私のことは眼中に無しかよ第三位」
御坂「……妹達から、」
一方通行「……」ピクッ
御坂「あの子達から、アンタが今何をやってるかは聞いたわ」
一方通行「………そォかよ」
御坂「何のつもり?今更あの子達を守ろうだなんて……罪滅ぼしだとでも言いたいわけ?」
一方通行「ハッ、そンな上等なモンじゃねェ、タダの自己満足だ」
御坂「そう…………これだけは言っとくわ。例えアンタが何をしようと、
私はアンタのやった事を絶対に忘れないし、アンタを許さない」
一方通行「フン、許しを乞うつもりなンざ端から……」
御坂「でも、今この場でアンタをどうこうしようとは思わないし、
私の知らない所であの子達を守ってくれたっていうのには感謝してる」
一方通行「………とンだ甘ちゃンだなテメェは」
御坂「そうね、自分でもそう思うわ……妹達に感謝しなさいよ?
あの子達がアンタは悪くないって必氏に説得してきたんだからさ」
一方通行「…………チッ」
126: 2011/07/02(土) 19:12:44.66 ID:IQADHD4ro
垣根「あー、お話終わりました?」
麦野「全く、無駄に長いのよ」
御坂「あ、アンタいつかの!!」
麦野「今頃かよ!!もういいわ!!」
御坂「……もういい、何て言いつついきなりビーム撃ってきたりしないわよね?」
麦野「お望みとあらばいくらでもぶち込んであげるわよ?」バシュゥン!!
御坂「ちょ、もう撃ってるじゃないの!!」ギュオッ!
一方通行「うお危ねェ!!こっちに曲げてンじゃねェぞコラ!!」カチッ
御坂「チッ」
一方通行「……オマエさっき『どうこうしようとは思わない』つったの嘘だろ」
垣根「うぉい暴れるんなら出てけよオマエら!!」
麦野「別に暴れちゃいないわ、ちょっと原子崩し撃っただけじゃないの」
127: 2011/07/02(土) 19:13:12.87 ID:IQADHD4ro
垣根「ちょっとじゃねぇよ!一方通行が反射したせいで天井に穴空いちまってるじゃねぇか!!」
一方通行「次はもっと丈夫に作っとけよ」
垣根「原子崩しで壊れない天井ってどんな素材で作れってんだよ……」
御坂「えっとそれで、アンタが探偵の垣根さんでいいわけ?」
垣根「そうだけど……オマエ何か依頼があって来たのか?下手な理由だったら叩き出すぞ」
御坂「ちょっと、ある人について調べて欲しくて……」
垣根「ふぅん、まぁとりあえず詳しく聞こうか、ソファにどうぞ」
御坂「……あの、あんまり関係ない人には聞かれたくないんだけど」チラッ
垣根「それもそうか。おい一方通行、麦野、オマエらちょっと席外せ」
一方通行「俺に命令してンじゃねェぞ三下が」
麦野「何でこの私がテメェの言う事聞かなきゃならねぇんだ?」
垣根「オマエらマジで苦しみながら氏んでくれねぇかな」
御坂「一方通行、アンタねぇ……」ギロッ
一方通行「……今日は帰るわ」ガチャ
128: 2011/07/02(土) 19:13:39.43 ID:IQADHD4ro
麦野「負い目のある立場は辛いわね」
垣根「いや、オマエも……」
御坂「アンタも出て行きなさいよ!!」
麦野「まぁまぁそう言わないで、調べて欲しい事があるんでしょ?力になってあげるわよ」ニコッ
御坂「む……」
御坂(『男について調べて欲しい』なんてあんまり聞かれたくないけど、
この人経験豊富そうだし、色々有益なアドバイスが貰えるかもしれないわね……)ウーン
麦野(どんな依頼か知らないけど、第三位の弱みを握るチャンスよね、ここを逃す手はないわ)クククク
垣根(なぁんか企んでやがんな麦野の奴……)
御坂「……わかったわ、それじゃアンタも同席して」
麦野「フフ、そうこなくちゃ。頼りにしてくれていいわよ?」ニタリ
129: 2011/07/02(土) 19:14:05.76 ID:IQADHD4ro
垣根「まぁ依頼人がいいっつーんならいいけどよ……
で、人について調べて欲しいつってたよな?どんな奴だ?写真とかあるか?」
御坂「うん、この人なんだけど……」ペラ
垣根「どれ……ふーん、なんつーかイマイチ印象に残らない普通な面してんな」
麦野「何か見るからにお人好しって顔してるわね」
垣根「で、この男の何を調べて貰いたいんだ?そもそもどういう理由だ?」
御坂「う、理由とか言わなきゃダメ?」
垣根「当然、知らない間に犯罪の片棒担がされてたなんてのは御免だからな」
御坂「うー……」
垣根「言い出せないって事は何か後ろめたい事情でもあんのか?」
麦野「おいバ垣根、女が一人で来て男について調べて欲しい、なんて言ってんだから理由なんぞ一つだろうが」
垣根「あ?」
御坂「ちょ、ちょっと!」
130: 2011/07/02(土) 19:14:32.37 ID:IQADHD4ro
麦野「このガキは、写真の男にほの字って事よ」
垣根「ほの字て……氏語にも程があるだろ、オマエはいつの時代の人間だよ」
麦野「何か言ったかにゃーん?」バシュゥゥン!!
垣根「古い言葉って味があって良いよな、温故知新っての?」
麦野「フン……それでどうなのよ第三位、アンタこの男にほの字なんでしょ?」
御坂「……ごめん、ほの字ってどういう意味?」
麦野「………」
垣根「これがジェネレーションギャップかぁ」クククク
麦野「黙ってろクソメルヘン!!」バシュンバシュン!!
垣根「俺何も悪くないだろ!?」ファサッ
御坂(何この羽!?……似合わないわね)
131: 2011/07/02(土) 19:15:20.58 ID:IQADHD4ro
麦野「あー要するによ、アンタこの男に惚れてて、だから調べて欲しいんでしょ?」
御坂「う……ま、まぁそういう事になるのかもね?」
垣根「はぁ、まぁたそういう依頼かよ……つーか何か麦野の時と反応似てやがんな」
御坂「え?」
麦野「余計な事言ってんじゃねぇぞ!」
御坂「そ、それでね?コイツの趣味とか、良く行く場所とか、そういうの調べてもらえると嬉しいなー、なんて」
垣根「めんどくせぇ……麦野の時も言ったけどなぁ、ここは恋愛相談室じゃなくて探偵事務所なんだよ!
大体、恋愛事に探偵使おうなんて発想がおかしいと思わねぇのか!?
相手の好みなんてのは試行錯誤繰り返しながら自分で仲良くなって教えてもらうのが筋ってもんだろうが!!」
麦野「わかったような口利いてんじゃねぇぞバ垣根が!!」バシュン!!
垣根「何でオマエがキレるんだよ!?」ファサッ
麦野「恋愛は奇麗事じゃねぇんだよ!!出し抜いた者勝ち、早い者勝ちの世界だ!!
ちょっとでも優位に立ちたいって乙女心がわからねぇのかテメェは!?」
垣根「そびえ立つクソみてぇな乙女心だなおい」
132: 2011/07/02(土) 19:15:46.71 ID:IQADHD4ro
麦野「何言ってんの、これが普通よ、普通。女はズルい生き物なのよ」
垣根「それが普通だったら世界中の男の八割は女性不審になってるわ」
御坂「それでその、依頼、引き受けてもらえる?」
垣根「オマエ俺の話聞いてた?そういうのは自分の力で勝ち取るからこそ意味が……」
麦野「受けてやれよメルヘン、それともテメェの自慢の面消し飛ばされてぇか?」
垣根「何で女って他人の恋愛沙汰に首突っ込むの好きなんだよ……あーもう、ちょっと待ってろ!!」ゴソゴソ
御坂「?」
垣根「ほらこれ」コト
御坂「……なにこれ?」
麦野「香水の瓶みたいだけど?」
垣根「特製の未元物質香水だ。これさえ使えばどんな異性も即落ちって優れ物だ」
麦野「なっ!?」
133: 2011/07/02(土) 19:16:15.97 ID:IQADHD4ro
垣根「まぁ相手の好意を増幅するって効果だから、少しも好意を持たれて無い場合は効果はねぇが……」
御坂「はい?」
垣根「要は写真の男とよろしくやりてぇんだろ?趣味調べたりなんて遠回りせずに、
コイツを使って一気に既成事実作っちまえよ、効果は保証するぜ?」ニタリ
御坂「き、既成事実って何言ってんのよ!?私はただ、もうちょっと仲良くなれればなーって思ってただけで……」
垣根「いらねぇんなら返してもらうが」ス
御坂「それとこれとは話が別よ」ペチン
垣根「……」
御坂「ま、まぁ効果は眉唾だけど?この香水はもらっといてあげてもいいわ。
そ、それじゃ私ちょっと用事が出来たから、依頼はキャンセルって事で……」
垣根「麦野がさっき言った『女はズルい生き物』説が信憑性を帯びてきたわ……」ハァ
御坂「い、一応お礼は言っておくわ!アンタの説いてくれた恋愛感はそれなりに為になったしね」
垣根「何一つ為になってねぇだろ、香水使う気満々じゃねぇか、オマエも麦野の同類だよ」
御坂「う、うるさいわね!こっから先はプライベートな問題よ、首を突っ込まないで!!」
垣根「何この子、何か残念な頭してない?」
134: 2011/07/02(土) 19:16:42.32 ID:IQADHD4ro
御坂「上手く行ったら報告くらいには来てあげるわ。それじゃね!」ガチャ
垣根「いえ二度と来なくて結構です」
麦野「……」
垣根「ふー、ようやく帰りやがったか……っと、どうした麦野?」
麦野「おいこら、そんな便利な香水あるんなら何で私の時に出さなかった!?」ピキピキ
垣根「あぁ?オマエ浜面の事何かどうでもいいつってただろうが。
つーかあるわけねぇだろそんな便利なもん」
麦野「……は?」
垣根「あのガキ追い返すための口実だよ、さっき渡したあれは何の変哲もねぇただの香水だ」
麦野「腐ってやがんなテメェ……」
垣根「だったらオマエが面倒見てやってくれよ、男は他人の恋愛話なんて好きじゃねぇの」
麦野「……んー、でもこれで第三位が玉砕するのも一興だし、このままでもいいかな」ケロッ
垣根「うわぁ……」
135: 2011/07/02(土) 19:17:10.64 ID:IQADHD4ro
―――――――――――――――
―――――――――
――――
―街中
御坂(えっと、確かアイツはいつもこの辺に………いた!!)キュピーン
上条「うー、特売特売」タッタッタ
御坂(こ、この香水を使えばいいのよね?こんな感じかな?)プシュッ
御坂(よ、よし!これでアイツは私にメロメロになるはず……行くわよ!)
御坂「や、やっほー、奇遇ね?」
上条「ん?何だ御坂じゃねぇか、どうした?」
御坂「い、いや別に用事はないんだけどね、アンタの姿が見えたからさ」
136: 2011/07/02(土) 19:17:39.42 ID:IQADHD4ro
上条「そっか、じゃぁ悪いけど俺今急いでるんだ、またな」
御坂「あ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
上条「ん、どうした、やっぱり何か用があるのか?」
御坂「用っていうか、その……あの……」
上条「?」
御坂「きょ、今日の私、何かいつもと違うと思わない?」ドキドキ
上条「え……?あー………髪切った?」
御坂「違うわよ!!」バチィ!!
上条「ひぃ!!」
御坂「何で?何でわかんないの!?何が『即落ち』よ、全然効果無いじゃないの!!」キー!
上条「あ、あの……御坂さん?」
137: 2011/07/02(土) 19:18:07.38 ID:IQADHD4ro
御坂(あ、そういえば……)
『相手の好意を増幅するって効果だから、少しも好意を持たれて無い場合は効果はねぇが……』
御坂(つ、つまり私は眼中に無いって事!?)ガビーン
上条「おーい、大丈夫か御坂?(あれ、何かいい匂いが……御坂からか?)」
御坂「ふ、フフフ……そう、そうだったんだ……私のことなんて……」
上条「なぁ、ひょっとしてお前、香水使ってるか?」
御坂「え?」
上条「そういうのあんまり興味ないと思ってたけど、結構女の子らしいところあるんだな」
御坂「な、何よ!女の子だもん!私には似合わないっての!?」
上条「いやいや、そうじゃなくてですね……なんつーかその、良いと思うぜ、そういうの」
御坂「へ……」カァッ
138: 2011/07/02(土) 19:18:37.79 ID:IQADHD4ro
上条「っと、特売行かねぇと!!それじゃ御坂、またな!」ダッ
御坂「あ、ちょっと!……行っちゃった」
御坂「………『良いと思う』か……結局香水は効果あったの?なかったの?」ウーン
御坂「てか良く見たらこれその辺で売ってるただの香水じゃない……値札ついてるし!!」ガー!
御坂「騙された!!あんのヘボ探偵がぁぁぁ!!」ピキピキ
御坂「……で、でもまぁこれからアイツと会う時は香水してみてもいいかな」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
139: 2011/07/02(土) 19:19:03.71 ID:IQADHD4ro
―常盤台寮
御坂「ただいまー」
白井「お姉様ぁー!昼間はどうして突然いなくなってしまったんですの!?」
御坂「半分はアンタのせいよ」
白井「そ、そんな……わたくしに何か至らぬ点が……」
御坂「ありまくりだと思うけど……」
白井「酷いですのお姉様ぁ……おや、何やら甘い香りが……」
御坂「あ、そういえば香水つけてたんだった」
白井「全くお姉様ときたら……香水などと言うものは常盤台では禁止されて……
……こ、香水!?お姉様もしや……」
御坂(やば、アイツと会ってたんじゃ~とか言われたらめんどくさいわね……)
白井「もしや、黒子の事を誘っているんですのね!?」
御坂「はい?」
140: 2011/07/02(土) 19:19:31.20 ID:IQADHD4ro
白井「おぉお姉様、そんな香水など使って誘惑せずとも黒子にとってはお姉様の体臭が一番だというのに……」
御坂「た、体臭とか言うな!てか誘ってないわよ!!」
白井「ぐへへへ……照れなくてもいいんですのよお姉様……」ジリジリ
御坂「照れてないから!!それ以上近付いたらまた黒焦げにするわよ!?」バチッ
白井「よろしいのですかお姉様?電撃を使えば寮監が飛んできますのよ?
寮内で能力を使った事を罰せられるだけでなく、
香水を使っているなどと言う事が知れたらどうなることやら……」ニタリ
御坂「し、しまッ……」
白井「抱きしめたいですの……お姉様ぁ!!」ガバッ
御坂「ちょ、こっち来んな!!いやあああああ!!!」
149: 2011/07/05(火) 19:42:32.20 ID:Ni9Hg7Xjo
やぁお待たせ、投下に来たぞ
そういえば普通の上条さん書いたのは初めてだな……
150: 2011/07/05(火) 19:43:01.89 ID:Ni9Hg7Xjo
垣根「ふぁ……今日もいい天気だな……おい麦野、コーヒー淹れてくれ」
麦野「自分で入れろカスが、調子に乗ってっと羽毟って丸焼きにすんぞ」
垣根「朝っぱらから目の覚めるようなパンチの効いたセリフありがとよ……」
麦野「どういたしまして」フン
垣根「つーかコーヒーくらい淹れてくれてもいいじゃねぇか、オマエ助手なんだし」
麦野「ちょっと待て、いつ私が助手になったんだ?」
垣根「いやぁ、名探偵のお供にはやっぱり美人な助手か、解説役の探偵見習いが必要だろ?」
麦野「意味がわからねぇわ、私が美人ってとこだけは同意しとくけど。
そもそも何が名探偵よ?この前なんか依頼人騙して追い返してたくせに」
垣根「もう恋愛相談はたくさんなんだっての!俺はもっとダンディズム溢れるハードボイルドな仕事がしてぇんだよ!!」
※実際の探偵業務もほとんどが浮気調査や身辺調査です。
人探しの依頼すら滅多にありません、そういうのは警察のお仕事ですんで。
151: 2011/07/05(火) 19:43:34.84 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「んなに血生臭い仕事がしたいんなら大人しく暗部にでも戻りゃいいんじゃない?」
垣根「その暗部もほとんど解体されてるじゃねぇか。
それに俺はもう学園都市上層部のクソどもにコキ使われるのは御免なんだよ」
麦野「それじゃ文句言わずに大人しくガキの恋愛相談でも何でも受けとけよ。
それと私が浜面を略奪する方法も考えろ」
垣根「とりあえず半頃しにしたのを謝ることから始めたらどうだ?」
麦野「私に頭下げろってか?それもあの浜面に?笑えない冗談ねそいつは」
垣根「すげぇなオマエ、なんかもうすげぇわ」
麦野「私が凄いって事くらいアンタに言われるまでも無く知ってるわよ」
垣根「皮肉ってわかるか?」
152: 2011/07/05(火) 19:44:02.20 ID:Ni9Hg7Xjo
ドア<コンコン
垣根「おっと朝から客か?おい麦野、応対してくれ」
麦野「だから、何で私がそんな事やらなきゃならねぇんだ?」
垣根「そう言わずにやってくれよ、こういうのは男より女が出た方が印象いいし、
特に麦野みたいに優しそうな美人のお姉さんが応対すると客の警戒心も解けるんだって。
だから、な?頼むよ美人の助手様」
麦野「……チッ、仕方ないわね」コホン
垣根(何だかんだで煽てに弱いよなぁコイツ……
こんな感じで褒め頃したら一発ヤれねぇかな)フム
麦野「どうぞ、お入り下さい」
垣根(うわぁすっげぇ猫撫で声出しやがった!ちょっと鳥肌立ったわ……)ゾクッ
153: 2011/07/05(火) 19:44:29.30 ID:Ni9Hg7Xjo
ドア<ガチャ
佐天「し、失礼しまーす……」
麦野「ようこそ垣根探偵事務所へ」ニコッ
垣根(何だかんだでノリノリじゃねぇか……つーか気持ち悪!!)ゾゾッ
佐天「うひゃぁすごい、美男美女の探偵コンビだなんてまるでドラマみたい……
ほら、初春も警戒してないで早くおいでよ、心配なさそうだよ?」
垣根(ん、二人連れか?つーかまたメスガキの依頼人かよ……もう恋愛相談は御免だぜぇ?)
初春「ちょっと待ってくださいよ佐天さー………ん……?」パタパタ
垣根「………あっやべ」ボソッ
麦野「垣根?」
佐天「どしたの初春?探偵さんの顔見るなり固まっちゃって……
ひょっとして一目惚れでもしちゃったk」
154: 2011/07/05(火) 19:45:10.79 ID:Ni9Hg7Xjo
初春「きゃああああああああああ!!!!」
佐天「初春!?」
垣根「やっべー、よりによってこの子が来ちゃったのかよ……」ハァ
麦野「アンタ知り合い?何かレOプでもされたんじゃないかってくらい怯えてんだけど」
垣根「まぁちょっと、色々あってな………なぁお嬢ちゃん落ち着いてくれ、何もしねぇから」
初春「ヒッ!!来ないでください!!!」ビクッ
垣根「あー、あの時はごめんな?とりあえず落ち着いて……」
初春「いやああああああ!!!」カタカタ
垣根「わ、わかったわかった!これ以上は近付かねぇよ!!だから叫ぶのやめt」
初春「ひいいいぃぃぃぃぃ!!!!」ガクガク
垣根「……」
麦野「プクッ……ククク」クスクス
垣根「笑うところじゃねぇだろ!」
155: 2011/07/05(火) 19:45:38.45 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「初春!!しっかりして初春!!一体どうしたの!?」
初春「か、帰りましょう佐天さん!ここは危険です!!」
佐天「意味がわからないよ初春!何かあったの?これじゃ探偵さん達に失礼じゃん」
初春「事情は後で説明します!!だから今は一刻も早くこの場を……」
佐天「……仕方ないなぁ、わかったよ。すいません二人とも、友達の様子が変なんで今日は帰りますね」
麦野「そう?それではまたのお越しをお待ちしておりますわ」ニコッ
垣根(キャラ作りすぎだろ……)
初春「は、はやく行きましょう………あ、あれ?」ガチャガチャ
佐天「どしたの初春?」
初春「ど、ドアが開かないんです!!」ガチャガチャドンドン
佐天「……初春?」
156: 2011/07/05(火) 19:46:07.01 ID:Ni9Hg7Xjo
初春「と、閉じ込めたんですか!?やっぱりあの時みたいに私を……」ビクビクッ
垣根「いやそのドア内開きだから、押しても叩いてもそりゃ開かんよ」
初春「わ、私をどうする気なんですか!!あの子の居場所は何があっても喋りませんから!!!」
佐天「あの子って誰!?本当に何言ってるの初春!!?」
初春「佐天さんは黙っててください!!」カッ
佐天「あ、え……は、はい」ビクッ
初春「私は風紀委員です、脅しには屈しません!!早くドアを開けて私達を帰して下さい!!」
垣根「勝手に帰れよ、そのドア引けば簡単に開くから」
初春「やっぱり開けてもらえないんですね……何を企んでいるんですか!?」
垣根「話聞いてもらえません?」
157: 2011/07/05(火) 19:46:57.17 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「そっちのアンタ、良かったらコーヒーでも飲む?」
佐天「え、いいんですか?」
初春「さぁ、すぐに部屋から出してくれなければこの場で通報して応援を呼びますよ!?」
垣根「もう好きにしろよ、今回俺何もやってねぇし……」ハァ
麦野「なんだかあっちの二人長くなりそうだしね。待ってて、淹れて来てあげるわ」
佐天「わぁありがとうございます!探偵事務所でコーヒー淹れてもらうの一度やってみたかったんですよ」
初春「その自信……応援が来る前に私を攫って逃げるつもりですね!?
この外道!!人非人!!厨二病!!口リコン!!!」
垣根「こんの花畑がああああ!!!!こっちが下手に出てりゃ調子に乗りやがってええええ!!!」ブチッ
麦野「砂糖とミルクはどうする?」
佐天「あ、両方ください。甘いのが好きなんで……」テヘヘ
垣根「麦野、俺のも淹れろ!!」
初春「私もいただけますか!!」
麦野「何だオマエら」
158: 2011/07/05(火) 19:47:26.43 ID:Ni9Hg7Xjo
―――――――――――――――
―――――――――
――――
麦野「はいどうぞ」ス
佐天「わーい、ありがとうございます!」
麦野「おら、そっちの二人もコーヒー淹れてきてやったわよ」
垣根「お、サンキュー」
初春「あ、ありがとうございます」
垣根「えっとそれで、どこまで話したっけ」ズズ
初春「あ、御坂さんがこの事務所に来たって所まで聞きました」フーフー
垣根「そうかそうか、それで第三位の依頼内容がだな……」
麦野「……え、何でいきなり馴染んでんだ?私がコーヒー淹れてる間に何があった?」
159: 2011/07/05(火) 19:48:10.12 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「あ、探偵さんが身の潔白を証明する為に今までやったお仕事の内容を話してくれてるんですよ。
御坂さんもここに来た事があったんですね、ビックリしました」
麦野「ふーん、第三位の知り合いなんだ、アンタ達」
佐天「世間って狭いですよねー」
麦野(……ん、今までの仕事内容を話してる?って事はまさか……)
佐天「そういえばお姉さんも最初は依頼人だったらしいじゃないですか。
そんなに美人なのに恋の悩みなんてあるんですね」フフ
麦野「うぉぃ垣根ェェ!!!何他人のプライバシー喋りまくってんだコラァァ!!!!」バシュゥゥン!!
垣根「うおぉぉ!!!だからいきなり能力使うのやめろってば!!!
仕方ねぇだろ!安全性を証明する為には俺が今どれだけお気楽な仕事やってるか説明する必要があったんだよ!!!」ファサ
佐天(何かビームみたいの出た!?)
初春(は、羽!!羽が!!トラウマがぁぁ!!)
160: 2011/07/05(火) 19:48:41.89 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「ふざけんなよ!!守秘義務はどうした!!?あん時『守秘義務は守る』ってはっきり言ってたよなぁ!?」
佐天(お、お姉さんの口調が……)
垣根「そんなもん忘れた」
麦野「氏ね!!この場で氏ねや痴呆の不能野郎が!!」バシュゥゥン!!
垣根「誰が不能だ!!俺の未元物質は常に臨戦態勢だぞ!!」ファサッ
麦野「きめぇ事言ってんじゃねぇよ!!んなにビンビンなら一人で引き篭もってシコッてろ!!」
垣根「……おい、テメェが声荒げるから客がビビッてんじゃねぇか」
佐天「」ガクガク
初春「」ガタガタ
麦野「あ、悪い……じゃなくてぇ!!悪ぃのは全面的にテメェだろうが!!」
垣根「オマエの言葉遣いはガキには刺激が強すぎるんだよ、そんなもんにしとけ」
麦野「………クソ、覚えてろよメルヘン野郎」チッ
161: 2011/07/05(火) 19:49:40.93 ID:Ni9Hg7Xjo
垣根「さて、俺への猜疑心も解けた事だし、そろそろ依頼を聞かせてもらおうか」
初春「え、えっと……」
佐天「あの……」
垣根「大丈夫、もう何も怖くないから、真面目に仕事するから」
麦野「驚かせてごめんなさいね、私ったら、何てはしたない事を……」イヤン
初春(変わり身早!)
佐天(美人がキレると怖いって本当なんだ……)
垣根(露骨なキャラ作りやめろよ、気持ち悪いから)
麦野(垣根氏ね)
162: 2011/07/05(火) 19:50:25.23 ID:Ni9Hg7Xjo
初春「あ、あの、最初に確認しておきたいんですけど、依頼料ってどのくらいなんでしょう?
私達まだ子供ですし、能力も高くないからあんまりお金持ってなくて……」
垣根「あー、気にしなくていいよ、前迷惑かけちまったからサービスでタダにしといてやる。
勿論、そっちのお友達もな」
初春「わ、いいんですか!?」
佐天「うわーい太っ腹ー!何があったのか知らないけど初春が迷惑かけられてて良かったー!!」
初春「……サテンサン」
佐天「じょ、冗談だって……」
麦野(随分恩着せがましい言い方しやがったな、最初から依頼料なんて無いってのに)ボソボソ
垣根(あるっての、オマエや第三位が払ってないだけでちゃんとあるの!)ボソボソ
麦野(あぁ?私はちゃんと払ってるじゃねぇか、こうして身体で、働いて)
垣根(同じ身体で払うんならベッドの上で払って貰いてぇもんだ)フゥ
麦野(食い千切られてすり潰される覚悟があんなら好きにしたら?)フン
垣根(おぉっと、怖ぇ怖ぇ……)
163: 2011/07/05(火) 19:50:51.60 ID:Ni9Hg7Xjo
初春「それで依頼内容なんですけど、まず私からいいですか?」
佐天「うん、私は元々付き添いみたいなもんだし」
垣根「よし、ドンと来い」
初春「それでは……ある人を探して欲しいんです」
垣根「人ねぇ……どんな奴だ?」
初春「えっと、あの時貴方をミンチにした白い男の人を……」
佐天「ミンチ!?」
麦野「そういえばアンタ第一位に挽肉にされたんだっけ」
垣根「……」
初春「助けてもらったのにお礼も言えなかったから、探し出してちゃんとお礼を言いたいんです!」
垣根「………」
164: 2011/07/05(火) 19:51:33.67 ID:Ni9Hg7Xjo
初春「はっ、そう言えば貴方はどうして生きてるんですか!?あの時ミンチになったのに!!」
垣根「あー……最近の医療技術はすげぇんだよ……で、あの白モヤシに会いたいのか?」
初春「白モヤシなんて言い方やめてください、私にとっては命を救ってくれたヒーローなんですよ!?
そう、あの服装、あのカラーリング、まるでウルトラマンみたいにかっこよかったです!」
垣根「……多分ウルトラマンつった方がキレると思うわ、アイツ」
初春「学園都市でたった一人の人を探すなんて難しいとは思いますけど、引き受けて頂けますか?」
垣根「あぁ……つーか引き受けるまでもねぇ、多分そろそろ来るから」
初春「へ?」
165: 2011/07/05(火) 19:52:04.80 ID:Ni9Hg7Xjo
ドア<ガチャ
一方通行「よォ、今日もコーヒー飲みに……あァ?客がいンのかよ、珍しい事もあるモンだな」カツカツ
初春「」
垣根「噂をすればなんとやらだな」
麦野「何処で見てたんだ、ってくらいタイミングが良いわね」
一方通行「あァ?何をワケのわからねェ事を……」
佐天(この白くて目付きの悪い人が初春を助けてくれたって言うヒーロー……?)
初春「あ、あうあう……」
垣根「ほらお嬢ちゃん、念願の白モヤシだぞ?言いたい事があったんじゃねぇのか?」
一方通行「いきなりケンカ売ってンのかクソメルヘン、つーか誰だよそのガキ」
166: 2011/07/05(火) 19:52:39.64 ID:Ni9Hg7Xjo
垣根「覚えてねぇのか?ほら、俺らがやり合ったあの日最終信号庇ってた風紀委員だよ」
一方通行「……そンなンもいたなァ、そう言えば。オマエの不愉快な面の印象が強すぎて忘れてたわ」
垣根「男の視線すらも釘付けにする俺のイケメンっぷりが自分でも怖いぜ」フッ
一方通行「ぶち頃すぞ」
垣根「あ、ちなみに俺はノーマルだから。生粋の女好きだからオマエの期待には応えられないんだ、ごめんな?」
一方通行「そうかそうか、要するにオマエ俺と戦争がしてェンだな?いいぜ、おっ始めようじゃねェか!!」カチッ
麦野「性的な意味で」
一方通行「オマエもスクラップにされてェのか!?」
初春「あ、あの!何でこの人がここにいるんですか!?」
垣根「知らねぇ、毎日毎日コーヒー飲みに来て俺も迷惑してんだよ」
一方通行「オマエのせいだろボケが」
167: 2011/07/05(火) 19:53:06.45 ID:Ni9Hg7Xjo
初春「……さては、二人ともグルだったんですね!?」
垣根「は?」
一方通行「あ?」
初春「あの時私を痛めつけて助けたのは、所謂マッチポンプという奴だったんですね!!」
垣根「いやいや、え?」
一方通行「そのマッチポンプにどンな意味があンだよ……」
初春「どうりで助けに入るタイミングが良すぎると思いました!!
さぁ、一体何が目的なんですか!?何を企んでるんです!!」
垣根「意味がわからねぇ……」
一方通行「何言ってンだこのガキ……」
初春「信じてたのに!!ずっと貴方の事をヒーローだと思ってたのに!!
私の心を裏切ったんですね!?もう何も信じられません!!」ウワーン
ガチャ、タッタッタ
168: 2011/07/05(火) 19:53:32.33 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「う、初春ー!!!」
垣根「……泣きながら走って行っちまった」
一方通行「何なンだよ……」
麦野「おい第一位、追いかけて来い」
一方通行「はァ!?なンで俺が……」
麦野「テメェが泣かしたんだ、誤解であれ何であれ責任取るのは当たり前だろうが」
一方通行「いや、意味がわからねェ」
麦野「いいから早く行けっつってんだろうが!!」クワッ
一方通行「うォ、わ、わかったよ、行きゃァいいンだろクソ……」カツカツカツ
垣根(怖ぇ……)
169: 2011/07/05(火) 19:54:03.29 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「あ、それで次に私の依頼いいですか?」
垣根「お友達が走って行ったのに随分マイペースなお嬢ちゃんだな」
佐天「初春はあれで結構強い子ですから大丈夫ですよ!
それに折角依頼料もタダですし、このまま帰ったら損じゃないですか」
麦野「したたかね、嫌いじゃないわよそういうの」フフ
垣根「……まぁいいけどよ、それで嬢ちゃんはどんな依頼なんだ?」
佐天「良くぞ聞いてくれました!」
垣根「そりゃ聞くよ、探偵だもの」
麦野「聞かねぇ事もあるだろうが」
佐天「実は私、都市伝説や噂話を追いかけるのが大好きなんですよ!」
垣根「ふぅん?」
佐天「それで、探偵さんなら何かそういう都市伝説の元になった事件とか知らないかなぁ、と思いまして」
垣根「まぁ、確かに都市伝説や怪談なんかにゃ大抵元ネタがあるもんだが……」
麦野「期待しない方がいいわよ、コイツろくに仕事しないヘボ探偵だし」
垣根「おい」
170: 2011/07/05(火) 19:54:44.60 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「知ってます?最近学園都市に新しい都市伝説が生まれたんですよ!それについて調べて欲しいんです!」
垣根「あー悪い、そういうの疎いんだよ……」
麦野「探偵名乗るんならちゃんとアンテナ張っときなさいよ」
垣根「うるせえよ! で、どんな都市伝説なんだ?とりあえず聞かせてもらえるか?」
佐天「『空飛ぶ全裸男』っていう話なんですけど……」
垣根「ただの変態じゃねぇか」
麦野「アクロバットな露出狂が目撃されただけじゃないの?」
佐天「いえいえ、これがただの露出狂なら都市伝説になんてなりませんって。
なんとですね、この全裸男なんですが、その名の通り空を飛んでいたらしいんですよ!」
垣根「空を、ねぇ……それが事実なら、空飛べる能力者なんて限られてるから結構簡単に調べられそうだな」
麦野「どんな風に空飛んでんの?風を纏ってるとか、何かを噴射してるとか、飛ぶにしても色々あるけど」
171: 2011/07/05(火) 19:55:12.81 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「んー、私が直接見たわけではないんで何とも言えないんですが、
噂だと真っ白い翼を生やしていたらしいです、それも六枚も」
垣根「」
麦野「……」
佐天「その翼の神々しさから、ひょっとして天使なんじゃないかって噂も立ってるくらいで……」
垣根「……」
麦野「……おい垣根」
垣根「……違う、違うぞ、俺にそんな趣味は……」ハッ
垣根(ま、まさか生き返った日に警備員の女から逃げる為に空飛んだアレが原因か!?)
麦野「いやアンタしかいないでしょ、そんなけったいな能力持ってるのなんて」
佐天「……そういえば探偵さん、さっきビーム防ぐ時に翼生やしてましたよね」
垣根「……」
172: 2011/07/05(火) 19:55:44.70 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「……」
垣根「………ちゃうねん」
麦野「……」
佐天「………ま、まぁこの話は置いときましょう!」
麦野「優しいのね」
垣根「だから違ぇつってんだろうが!!」カッ
佐天「それで次の都市伝説なんですが」
垣根「あ、まだあるのな」
麦野「科学の街なのに意外と非現実的な噂があるのね」
佐天「この話は流石に眉唾物だと思うんですけど、とっても面白い噂なんですよ!」
垣根「へぇ、どんなだ?」
佐天「なんでもですね、学園都市には人間に化けた家電製品が紛れ込んでるらしいんです」
垣根「おい」
麦野「ブフッ」
173: 2011/07/05(火) 19:56:23.84 ID:Ni9Hg7Xjo
佐天「家電製品が人間に化けるって変な話ですよね、一体どうして家電製品なんでしょう?
アンドロイドが人間に取って代わる~なんて話はSFでは良くありますけど」
垣根「……」
麦野「そ、その家電製品ってひょっとして冷蔵庫だったりしない?」ククク
佐天「あ、ひょっとして知ってました?そうなんですよ。
よりによって冷蔵庫が人間に化けてるなんて笑い話ですよね、
100歩譲ってテレビやラジオだって言うんならまだわかりますけど……」
垣根「おい……おい」
麦野「アンタいつの間にか有名になってんのね」プークスクス
垣根「うるせぇ!!誰だよそんな噂流したの!?」
佐天「あ、ひょっとしてこの都市伝説にも探偵さんが関わってるんですか?」
垣根「『も』って何だよクソッタレが!!全裸男は関係無いつってんだろ!!!」
佐天「そっか、冷蔵庫から人になったから最初は服が無くて裸だったって事ですね?
それで冷蔵庫だったから人の常識なんか知らずに裸のまま空飛んでた、と……
謎は全て解けました!!」キラーン
麦野「ゴファッ」
174: 2011/07/05(火) 19:57:05.73 ID:Ni9Hg7Xjo
垣根「何なの?最近の中学生は他人の話を聞かないのか?俺は人間だよ!!!
おいこら麦野、今すぐ笑うのやめねぇとマジで犯すからな!!」
麦野「きゃーんこわーい」ニタニタ
垣根「うぜええええ!!!テメェ後でねっとり乳揉んでやるから覚えとけよクソが!!」
佐天「ありがとうございました、まさか二つとも解決するとは思いませんでした!」
垣根「いやしてねぇよ、俺は無関係だって、全裸男も冷蔵庫も知ったこっちゃねぇよ」
佐天「早速皆に報告しなきゃ……本当にありがとうございます、空飛ぶ全裸冷蔵庫の名探偵さん!」ガチャ、タッタッタ
垣根「おい待てなんだそのネーミング!?報告って何処に何を流すつもりだ!!
逃がさねぇぞこのクソガキがあああ!!!」ダッ
麦野「行っちまいやがった……どうすんだよ、今客来たら私が探偵の真似事すんのか?」
麦野「つっても客なんて滅多に来ないし大丈夫か、本でも読んでよう」
麦野「しかしやるわねあのガキ、垣根を手玉に取るなんて」クスクス
175: 2011/07/05(火) 19:57:32.58 ID:Ni9Hg7Xjo
ドア<コンコン
麦野「あ?」
ドア<ガチャ
御坂「あれ、アンタしかいないの?」キョロキョロ
麦野「何だ第三位か、何の用?この前の香水の文句でも言いに来たわけ?」
御坂「まさにその通りよ!何が『どんな異性も即落ち』なのよ!?ただの市販品の香水じゃない!!」ガー
麦野「私に文句言われても知らねぇよ、生憎垣根のバカは今いないわよ?」
御坂「そう、それじゃ待たせてもらうわ、直接文句言ってやらないと気が済まないし」
麦野「はぁ?出直してもらえない?アンタと二人っきりなんて気まずくて氏にそうなんだけど」
176: 2011/07/05(火) 19:58:08.52 ID:Ni9Hg7Xjo
御坂「何よアンタ、お客さんとろくに会話も出来ないほど人付き合い苦手なわけ?」
麦野「テメェは客じゃなくてクレーマーだろ?そもそも私はここの従業員でも何でもねぇ」
御坂「く、クレーマーじゃないわよ!!正当な苦情を言いに来ただけじゃない!!」
麦野「まぁどうでもいいけど。いたいんなら勝手にすれば?私は相手してあげないけどね」
御坂「最悪な性格ねアンタ……いいわよ、勝手に待つわよ!」フン
麦野「はいはいご自由に」ペラ
御坂(く、目の前に人がいるのに本なんて読み始めて……どんだけコミュ障なのよ!)
麦野「……」ペラ
御坂(き、気まずい……せめて何か話してくれてもいいじゃない!もう少し気ぃ使えっての!!)
麦野「……」ペラ
御坂(あーでも何か不思議な気分ね、一度は頃し合いをした仲なのにこうして何もせずに同じ部屋にいるなんて)
麦野「……」ペラペラ
御坂(……あれ、そう言えば)
177: 2011/07/05(火) 19:58:42.36 ID:Ni9Hg7Xjo
御坂「ねぇちょっと、アンタ名前なんて言うの?」
麦野「あ?」
御坂「名前よ名前、教えてくれる?」
麦野「何でそんなもん知りたいのよ?私はアンタと仲良しゴッコする気なんて無いわよ?」
御坂「いや私も無いわよそんなの。ふと、そう言えば名前知らなかったなーって思っただけだし、
別に言いたくないんなら構わないけど」
麦野「まぁ名前くらい良いけどね……麦野よ、麦野沈利」
御坂「沈利……変な名前ね」
麦野「喧嘩売ってんのか?」ピキッ
御坂「嘘嘘、冗談よ。そんな全力で青筋浮かべてキレる事ないじゃない」
麦野「全力でキレてたらアンタとっくに消し炭になってるわよ」
御坂「ふふん、果たして出来るかしら?」ニヤリ
麦野「……」ペラ
御坂(無視して本読み始めた!?折角こっちから話題提供したんだからもう少し乗りなさいよ!!)
※名前を貶して挑発しただけです。決して話題提供とは呼べません。
178: 2011/07/05(火) 19:59:14.42 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「……」ペラ
御坂(く、何か話題を………)ウーン
麦野「ふぁ……」ノビー
御坂(あ、揺れた!今軽く伸びしただけなのに胸揺れた!何なのよこの格差社会は!)
麦野「……」ペラ
御坂「……ね、ねぇ、一つだけ聞いていい?」
麦野「今度は何よ?」チッ
御坂「む……」
麦野「む?」
御坂「む、胸ってどうやったら大きくなるわけ?」
麦野「………は?」
179: 2011/07/05(火) 19:59:42.21 ID:Ni9Hg7Xjo
御坂「ほ、ほら、アンタ胸デカいし、どうやったらそんな風になるのかなって……」
麦野「へぇ、そういうの気にするんだ?まぁ確かに駄乳だもんねアンタ」ニタァ
御坂「駄乳ってどういう意味よ!?か、形やハリなら負けてないんだから!!」
麦野「ハリ(笑)形(笑) 胸の無い子の典型的な言い訳よね」ニタニタ
御坂「な、何よ何よ!!人が恥を忍んで聞いてるのに馬鹿にして!!」ムキー
麦野「良い事無いわよぉ巨Oなんて……肩は凝るし、男の視線は集まるし」ニタニタ
御坂「自虐風自慢はやめてよ!!相談するんじゃなかったわよもう!!」
麦野「……で、教えて上げましょうか?胸を大きくする方法」クス
御坂「あ、あるの?そんな方法……」
麦野「えぇあるわよ、たった一つだけ、だけど、とっても簡単な方法がね」ニタ
御坂「一つだけ……そ、その方法は何?」ゴク
180: 2011/07/05(火) 20:00:11.26 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「聞いた事無い?誰かに揉んでもらうと大きくなるって」ククク
御坂「そ、そりゃあるけど……まさかそれがたった一つの方法だって言うの!?」
麦野「その通りよ、胸を大きくするには誰かに揉んでもらう以外ないわ」
御坂「う、嘘、そんなの……」
麦野「嘘じゃないわ、かく言う私のこの胸もそうやって育てられたんだもの」
麦野(嘘だけど)
御坂「つまり、誰かに揉んでもらえば私もアンタみたいに……」ゴクリ
麦野「……ねぇ、良かったら私が揉んであげようか?」ニタニタ
御坂「はい!?そ、それは流石に……」
麦野「そう?まぁ他に揉んでくれる人がいるってんなら無理にとは言わないけど」
御坂(う……他に揉んでくれる人……アイツとはまだそういう関係じゃないし、
黒子は論外、初春さんや佐天さんにもこんな事頼めない……)
181: 2011/07/05(火) 20:00:41.28 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「言っとくけど私はテクニシャンよ?私に任せれば今日一日でCカップまで持ち上げてみせるわ」クククク
麦野(嘘だけど)
御坂「し、Cカップ……」ゴクッ
麦野「さ、どうする?ん?」
御坂「う……お……」
麦野「んー?」
御坂「お、お願いします!」
麦野「ブファ!!」
御坂「何!?」
182: 2011/07/05(火) 20:01:10.99 ID:Ni9Hg7Xjo
麦野「な、何でもないわ、ちょっと咳き込んだだけよ」クククク
御坂「そ、そう?なんだか肩が震えてるけど……」
麦野「もう冬だし、ちょっと寒くて……」
御坂「暖房効いてるのに?」
麦野「まぁ気にしないで、それより覚悟はいい?揉むわよ?」ニタァ
御坂「ま、待って!あの……は、恥ずかしいから後ろからお願い……それと、目は閉じててもいいわよね?」ビクビク
麦野「えぇ、えぇ、構わないわよ、アンタの言う通りにしてあげるわ」プククク
御坂「……い、いいわよ、お願い」ドキドキ
麦野(クク、単純に騙されやがって、所詮はガキね……盛大に揉みくちゃにしてストレス解消してやるわ)ケケケケ
麦野「それじゃ行くわ」
御坂「う、うん……」
183: 2011/07/05(火) 20:01:41.47 ID:Ni9Hg7Xjo
ドア<ガチャ
垣根「あークソ、あのガキ、口止め料だか何だか知らねぇがクレープ五つも買わせやがって……ん?」
麦野「……」
垣根「……」
御坂(ま、まだかな……)
麦野「……違うわよ?私にそういう趣味は……」
垣根「いや、俺はアリだと思うね」
麦野「違うつってんだろ!!」
垣根「いやスマン、邪魔しちまったみたいだな」
麦野「話聞けよメルヘン馬鹿!!!」
御坂「ね、ねぇ麦野さん、早く揉んで……?」
麦野「」
垣根「中坊のクセに中々工口い声出すじゃねぇか」
184: 2011/07/05(火) 20:02:13.31 ID:Ni9Hg7Xjo
御坂「まだ……? あんまり焦らさないでよ……」
麦野「おい第三位!今すぐ目ぇ開けろ!!つーか垣根の声聞こえてんだろ!?」
御坂「目開けたままなんて恥ずかしいし……私の言う通りにしてくれるって言ったじゃない……」
麦野「テメェ何で後半部分だけ聞こえてねぇんだ!?」
垣根「あー、うん、俺ちょっと買い物行ってくるわ。二時間くらい時間潰してくればいいか?」
麦野「おいやめろ!そんな気の利かせ方いらないわよ!!」
垣根「それと、出来れば鍵かけて奥の居住スペースでやってくれ、
ヤってる最中に客来たらオマエらも気まずいだろ?」
麦野「だからぁ!!!」
御坂「は、早く……こうしてるだけでも恥ずかしいんだから……」カー
麦野「もう黙れよ第三位!!何で垣根の声スルーしてんだ!?」
垣根「それじゃごゆっくり……」ガチャ、タッタッタ
麦野「ちょ、待てコラァ!!誤解したまま行くな!!」ダッ
185: 2011/07/05(火) 20:02:41.85 ID:Ni9Hg7Xjo
御坂「……」ドキドキ
御坂(ちょっと焦らしすぎじゃない?)
御坂(む、向こうも緊張してるのかな?
そりゃそうよね、女同士で胸揉むなんて、そうそうある事じゃないし……)
御坂(……テクニシャンか、どんな感じなんだろ……)ドキドキ
ドア<ガチャ
一方通行「クソが、あの花畑、思いっきりビンタしてきやがって……あァ?」
御坂「……」ドキドキ
一方通行(げェ、なンで超電磁砲がいやがンだよ……)
御坂(まだかなまだかな……)
一方通行(なンか知らねェが目ェ閉じてるし、気付かれる前に逃げるか……)ソー
186: 2011/07/05(火) 20:03:10.78 ID:Ni9Hg7Xjo
御坂「ねぇ!」
一方通行(気付かれた!?)ビクッ
御坂「いい加減焦らしすぎよ!!まだなの!?」
一方通行(何が!?)
御坂「早く揉んでよもう!!女の子に恥かかせるつもりなの!?」
一方通行(も、揉む?何言ってンだこのガキ……)
御坂「さっさと胸揉みなさいよ!!」キシャー
一方通行「はァ!?」
御坂「早く!早く!!」
一方通行「………なンだこの状況……?」
194: 2011/07/08(金) 20:55:23.13 ID:2yatexngo
短めだけど投下に来たよ!
夏バテ気味で微妙にテンションが上がり切らん……これは良くない兆候でござるよ
195: 2011/07/08(金) 20:55:50.00 ID:2yatexngo
「それじゃ、行くわよ?」
「う、うん……」
最後の確認を終えると、麦野は背後からそっと御坂の胸に手を伸ばした。
その手が胸に触れた瞬間、それだけで御坂の身体がビクンと跳ねる。
余りの過剰反応に驚いた麦野は一瞬手を離してしまうが、すぐに嗜虐的な笑みを浮かべると
もう一度手を伸ばし、今度はがっしりと胸を鷲掴みにした。
「ひゃっ!!」
突然の事に思わず声を上げ、身を捩り麦野の手から逃れようとする御坂だったが、
しっかりと胸に食い込んだ手はちょっとやそっとでは離れそうに無い。
電撃で撃退しようかとも思ったが、自分から揉んで欲しいと頼んだ手前、流石にそれは出来まい。
それでもしばらくは、なんとか手を引き剥がそうと抵抗してみたものの、結局力及ばず、
ついに御坂は観念し、為すがままにされる覚悟を決めた。
196: 2011/07/08(金) 20:56:20.45 ID:2yatexngo
(ほ、本当に揉まれちゃうんだ……うぅん、これも胸を大きくする為……)
こういった事に全く免疫の無い御坂は羞恥と緊張で既に真っ赤になっており、思考停止寸前まで追い込まれている。
胸を大きくする為とは言え、何故こんな事になってしまったのか、御坂は己の軽率な行動を少しばかり後悔する。
誰かに揉んでもらう以外に胸を大きくする方法はないと言い放ち、何なら揉んであげようか、と申し出た麦野。
他に胸を揉んでくれる相手など思いつかなかった御坂は、その誘いについ乗ってしまったのだ。
もう少し冷静な判断は出来なかったのか、と言いたい所だが、溺れる物は藁をも掴むというやつである。
彼女のそれは平均よりもかなり小さめで、同輩どころか後輩にすら大差で負ける始末。
更に意中の男性は『年上のお姉さん好き』=『巨O好き』という噂を聞いてしまった為、
つい、『胸を大きくしてあげる』という甘い餌に深く考えずに飛びついてしまったのだ。
「ん……ふぁ……」
麦野がその手を動かすたび、押し頃した喘ぎ声が御坂の口から零れる。
自分の口から自然と溢れた喘ぎに驚き、慌てて口を噤もうとする御坂だったが、
襲い来る快楽の波に抗うには彼女は余りにも幼く、圧倒的に経験が不足していた。
胸を触られているだけにしては少々大袈裟ではあるが、先述した通り、彼女はこういう行為にとことん疎く、
また、目を閉じているが為に感覚が鋭敏化され、否が応にも過敏に反応してしまうのだ。
197: 2011/07/08(金) 20:56:55.87 ID:2yatexngo
「や……ぁ…」
(な、何よコイツ、何でこんなにマジな反応してるわけ?)
御坂が己の口から発せられる淫らな声により一層顔を赤くする一方で、
麦野もまた、予想とは違う御坂の反応に困惑し、頬を朱に染めていた。
断っておくが、麦野にレOビアンの気は無い。
『胸を揉む』という提案をしたのは、あくまでもちょっとした悪戯心からであり、
生意気に取り澄ました第三位の鼻っ柱を圧し折ってやろう、という考えからの行動であった。
その為、彼女は御坂の事など一切考えずに、ひたすら荒々しく揉みくちゃにしているだけなのだが、
どういうわけか御坂はまるで優しく愛撫でもされているかのように切なげな声を漏らしている。
(マゾの素質でもあるのか、それともよっぽど工口い事に耐性がないのか……)
「はぁ…っ…ん……」
(あぁもう!そんな本気で喘ぐなっての!こっちまで妙な気分になってくるじゃないの!)
麦野とてそれ程経験が豊富なわけではない。元来の性質からその方面への耐性こそ高いものの、
これまで真っ当な恋愛などをする時間も環境も無かった為、むしろ同年代の女性よりも経験値は低いとも言える。
同性の本気の喘ぎ声を聞くのが初めてなら、当然胸を揉んで喘がせるという行為も初めての事である。
艶かしく頬を上気させながら熱い吐息を吐く御坂の姿を見て、少々身体が疼いてしまうのも無理はない。
198: 2011/07/08(金) 20:57:32.84 ID:2yatexngo
御坂が声を上げる度、麦野は己の内に言い知れぬ感情が蓄積されていくのを感じる。
それは第三位と言う格上の存在を自分の好きに出来るという嗜虐的な征服感であり、
また、年下の同性を思う存分弄んでいるという背徳的な高揚感であり、
そして、今この瞬間、御坂美琴という存在は間違いなく自分の手の内にあるという不思議な充足感であった。
「ぁふ……ぅ……」
「だあああ!!終わり終わり!!」
これ以上は歯止めが効かなくなる。そう判断した麦野は御坂の胸から手を離し、
自分が赤くなっている事を悟られまいと、慌てて彼女から顔を逸らそうとする。
が、麦野が一連の動作を終えるより先に、御坂の手が麦野の腕を掴み、その動きを制止した。
「な、何の真似よ?」
「まだ……」
「え?」
「まだ、胸が大きくなってない………もっと揉んで?」
頬を染め、息を荒げながら御坂は哀願する。
彼女の蕩けた瞳が、上気した頬が、切なげな吐息が、麦野の理性を蝕んでいった。
「……本当にいいのね?ここから先、待ったは無しよ?」
「うん、麦野さんになら……」
199: 2011/07/08(金) 20:58:11.13 ID:2yatexngo
垣根『御坂の言葉が終わるその前に、麦野は再び彼女の胸を……』カリカリカリ
麦野「……」
垣根『「や、ダメ、それは……」 御坂は思わず身を捩り、抗議の声を上げる。しかし……』カリカリ
麦野「………おい」
垣根「!?」
麦野「……」
垣根「……いつからそこにいた?」
麦野「最初からだけど?」
垣根「……そうか」
麦野「えぇ……」
垣根「……」
麦野「……」
200: 2011/07/08(金) 20:58:45.93 ID:2yatexngo
垣根『麦野の手は止まる事無く、やがて御坂の服の内側に……』カリカリカリ
麦野「続けんのかよ!?つーか何書いてやがんだテメェ!!?」
垣根「いや、ちょっとしたイフのストーリーをだな……俺が邪魔しなかった場合の……」
麦野「ふっざけんなボケが!!何で私があのガキとそういう方向に行かなきゃならねぇんだぁ!!?」ビリビリッ
垣根「あ゛ああ!!この野郎折角書いた原稿破きやがったな!!」
麦野「長々と下らないもの書いてんじゃねぇよ!!どんだけ溜まってんだテメェ!?」
垣根「これのどこが長いんだよ!?本来20レス分くらいねっとり本番寸前まで書いてたのを
余りにも長すぎたから泣く泣くこの位まで省いたんだぞ!!」
麦野「知らないわよ馬鹿!何言ってんだ馬鹿!!つーかもう氏ねよ馬鹿!!」
垣根「馬鹿馬鹿言わないでください!」
201: 2011/07/08(金) 20:59:20.38 ID:2yatexngo
ドア<ガチャ
一方通行「うるせェンだよオマエら、外まで痴話喧嘩の声が聞こえて来てンぞ」
麦野「痴話喧嘩だぁ!?もう一回言ってみろモヤシ野郎!!その杖消し飛ばすぞオラァ!!」
一方通行「杖狙いかよ!?この杖特注品なんだからやめろよ!!」
垣根「まぁたタダでコーヒー飲みに来やがったのかテメェは、どんだけ暇人だよホント」
麦野「暇過ぎて知り合いモデルにした工口小説書いてたテメェが言うかよ」
垣根「イケメンなら何でも許されるんだよ。
一方通行も俺くらいイケメンだったら毎日コーヒー飲みに来ても許されるのにな」
一方通行「あァ?客に向かってそンな態度取ってていいのかァ?」
垣根「はぁ?」
麦野「客ぅ?」
202: 2011/07/08(金) 20:59:51.68 ID:2yatexngo
一方通行「垣根、今日はオマエに依頼してェ事があンだよ」
垣根「オマエが依頼?どういう風の吹き回しだ?」
麦野「ったく、止めといた方がいいわよ第一位、絶対ろくな事にならねぇから」
一方通行「俺だってこの馬鹿に頼み事なんざ本当は氏ンでもしたくねェンだがな、
そうも言ってられねェ状況なンだよ」
垣根「テメェら揃ってこの名探偵をディスってんじゃねぇぞ」
一方通行「まァそンなわけで今日の俺は客だ、まずはコーヒーの一杯でも淹れて貰おうじゃねェか」
垣根「チッ、結局それかよ……おい麦野、砂糖とミルクたっぷりで淹れてやれ」
一方通行「地味なイヤガラセしようとしてンじゃねェよ」
麦野「自分で淹れろ、何で私が働かなきゃならねぇ?」
垣根「働いて依頼料払うんじゃなかったのかよ……
前回は結構ノリノリで助手やってたクセに……」
麦野「細かい事言ってんじゃないわよ、私がここにいるだけでも十分過ぎるほどの報酬でしょうが」
垣根「どんだけ自己評価高いのオマエ」
一方通行「……もうコーヒーはいい、オマエらに任せてたら日が暮れちまいそうだ」
203: 2011/07/08(金) 21:00:18.75 ID:2yatexngo
垣根「そうか、じゃあさっさと依頼内容話せよ。どうせ断るけど聞くだけ聞いてやる」
一方通行「オマエ俺の事舐め腐ってンな?もう一回氏ンどくか?あァ?」
垣根「そう怒んなよ、軽い冗談じゃねぇか」
麦野「短気にも程があるわね、そんなんだから社会に適合出来ないのよアンタは」
一方通行「オマエには言われたくねェよクソババア」
麦野「誰がババアだテメェ!?」バシュゥゥン!!
一方通行「いきなりキレてンじゃねェ!!」カチッ、ペカーン
垣根「うお危ね!!」ファサッ
麦野「チッ、反射してんじゃねぇぞモヤシが!!」バシュンバシュン!!
一方通行「やっぱオマエの方が短気じゃねェか!!」ペカーン
垣根「何でわざわざ俺の方に反射するんだよ!?」ファサ
一方通行「あァ?だって建物壊されたくねェンだろ?だったらオマエに反射すンのが一番じゃねェか」
垣根「あ、なるほど」ポン
一方通行(うわ、納得しちまったよこの馬鹿)
204: 2011/07/08(金) 21:00:49.49 ID:2yatexngo
麦野「フン、それでテメェは何しにきやがったんだモヤシ野郎」
一方通行「だから依頼に来たつってンだろ、つーかいつまでキレてンだオマエ」
垣根「そんなに怒るとせっかくの美人な顔が台無しだぜ?」
麦野「別に怒ってねぇし、怒ったくらいで台無しになる程度の顔でもないわよ」フン
垣根「漫画版超電磁砲でブチギレて顔芸やらかしてたクセに何言ってんだ」
麦野「何の話だ!?」
一方通行「ところでよォ、そろそろ本題に入ってもいいかァ?」
垣根「っと、そうだな、ぼちぼち話を進めるか」
一方通行「ンじゃァ話すが、単刀直入に言うぞ?
オマエを学園都市第二位の実力者と見込んで、ある人物の護衛を頼みてェ」
垣根「ほう、つまりはボディーガードって事か」
麦野「ようやく少しは探偵らしい仕事にありつけそうね」
垣根「今までマジで下らねぇ依頼ばっかだったからなぁ……
で、護衛対象と護衛の期間は?」
205: 2011/07/08(金) 21:01:36.28 ID:2yatexngo
一方通行「期間は明日一日で十分だ。対象はオマエも知ってるが一応写真を持ってきてやった、コイツだ」ペラ
垣根「どれどれ……ってこれ、最終信号じゃねぇか」
麦野「何よこのチビ?何か第三位に似てるわね」
垣根「あぁ、一方通行が飼ってるガキだ」
一方通行「誤解招くような言い方してンじゃねェよ、事情があって仕方なく面倒見てるだけだボケ」
麦野「飼ってるって……何?第一位口リコンだったわけ?」
一方通行「違ェつってンだろ!!話聞けよ!!」
垣根「そう怒鳴るなよアクセ口リータ」
一方通行「よっぽど氏にてェらしいなァ!!よォし右の苦手か左の毒手か好きな方選びやがれ!!」
麦野「性的な意味で」
一方通行「オマエそれ付ければ何でも面白くなると思ってンのか!?意味がわかンねェだろォが!!」
垣根「右手も左手も選ばねぇよ、何でオマエに手コキされなきゃならねぇんだ」
一方通行「あァ性的な意味ってそういう……オーケー、魂ごとぶっこ抜いてやるからそこに直れクソメルヘン!!」
206: 2011/07/08(金) 21:02:02.76 ID:2yatexngo
垣根「え、本気で手コキするつもりなのか?」
麦野「引くわぁ」
一方通行「マジで一回氏ぬかオマエら?」
垣根「で、話を戻すが何だって最終信号を護衛しなきゃならねぇんだ?
誰かに狙われてるのか?何にしろオマエが守ってやりゃいいだろ口リコン野郎」
一方通行「口リコン呼ばわりしてンじゃねェ頃すぞ。
最初に言っただろォが、不本意だがオマエを頼らざるを得ねェ状況なンだ。
俺は明日一日動けねェンだよ」
垣根「つーか、俺に最終信号の護衛なんざ頼んでいいのか?
俺が前あのガキに何しようとしたか忘れたわけじゃねぇだろ?」
麦野「アンタも口リコンだったわけ?」
垣根「違います」
一方通行「忘れたわけじゃねェよ。だがな、ここしばらくオマエの監視をしてみた限り、
どォもオマエはただの馬鹿に成り下がっちまってるらしい。
そンなただの馬鹿が打ち止めに手ェ出すなンて大それた事出来るわけがねェ」
垣根「おい」
麦野「信頼を勝ち取れたみたいね、おめでとう」
207: 2011/07/08(金) 21:02:43.89 ID:2yatexngo
垣根「……まぁ確かに現状、最終信号をどうこうする気はねぇけどよ」
一方通行「で、引き受けて貰えるか?返事はハイかイエスしか許さねェぞ」
垣根「拒否権無しかよ! クソ、とりあえずもっと詳しく話せ。
明日一日最終信号に何があんだよ?何でオマエは動けねぇんだ?暗部絡みか?」
一方通行「いいか垣根、落ち着いて聞けよ」
垣根「あぁ」
一方通行「明日……打ち止めが一人ではじめてのおつかいに行く」
垣根「うん……うん?」
一方通行「本来なら俺が側で見守っててやりてェ所だが、生憎保護者のババアどもが五月蝿くてなァ、
打ち止めがおつかいに行ってる間、俺は家に閉じ込められちまうンだよ」
麦野「……」
一方通行「こンな小せェガキが治安の悪ィ学園都市をたった一人で出歩くなンざ危ねェだろ?
オマケにおつかいって事は帰りは色々買って大荷物を持つ事になる。
そンな状態じゃアイツは普段みたいに身軽に動けねェ……危険度は平常時の数段上だ。
だから頼む、明日、おつかいの間だけでいいから俺の代わりに打ち止めを護衛してやってくれ」
208: 2011/07/08(金) 21:03:10.80 ID:2yatexngo
垣根「……」
麦野「……」
一方通行「引き受けてくれるな?」
垣根「帰れよ口リコン」
一方通行「だから口リコンじゃねェつってンだろォが!!」
垣根「うるせぇよ!何だその下らねぇ依頼!?折角真っ当な仕事が出来ると思ったのによぉ!!」
麦野「あーもう、テンション駄々下がりよ」ハァ
一方通行「オマエらには血も涙もねェのか!?ガキが一人でおつかいに行くのがどンだけ危険だと思ってやがる!?
一般人が丸腰で猛獣の檻に特攻するのとほぼ同義だぞ!!」
垣根「アホかオマエ」
麦野「深夜ならまだしも昼間でしょ?大通り通ってれば大丈夫よ、カメラもあるし警備ロボもいるし」
一方通行「万が一って事もあるだろォが!!それに転んで怪我でもしたらどォすンだ!?」
垣根「どんだけ過保護だよ……」
麦野「将来立派なモンスターペアレントになりそうね」
209: 2011/07/08(金) 21:03:42.71 ID:2yatexngo
一方通行「……言い忘れてたがな、ただおつかいに行くだけなら何もここまで心配しやしねェよ」
垣根「あ?」
一方通行「不安要素があンだよ……」
麦野「不安要素ねぇ?」
一方通行「おつかいに行くに当たってだな、どォしてもある公園の前を通る事になるンだが、
この前その公園近くで妹達の一人が失踪してなァ……」
垣根「失踪?」
麦野「妹達ってのは第三位のクローンだっけ」
一方通行「あァ、幸いすぐに見つかったンだが、行方不明になってる間の事は一切語ろうとしねェ。
ただひたすら、MNWで全妹達に『ツインテールに気をつけろ』って警告を繰り返し行ってるらしい。
お陰で今はその公園に近寄る妹達は一人もいねェンだが……」
垣根「明日、最終信号はそこを通る事になる、と」
一方通行「何か起こるとしたらその公園付近だ、なンならその辺りを監視してるだけでも構わねェ。
だから引き受けて貰えねェか?」
210: 2011/07/08(金) 21:04:10.62 ID:2yatexngo
垣根「……チッ、しょうがねぇな。
まぁここらでオマエに恩を売っとくのも悪くねぇか」
一方通行「すまねェ……それともう一つ、なるべく直に打ち止めと接触するのは避けてくれ。
あのガキが一人でおつかいを達成したって事実は重要なンでな」
麦野「つまり、バレない距離からガキを見守って、降りかかる危険を未然に処理しろって事ね」
垣根「傍から見たら幼女をストーキングする口リコンじゃねぇか……やる気出ねぇな……」ハァ
一方通行「一応言っとくが、もし打ち止めに何かあったら……『ボンッ!』だからな?」ギロッ
垣根「……誠心誠意頑張らせて頂きます」
麦野(今までで一番目がマジだったわね第一位……)
226: 2011/07/11(月) 21:32:32.48 ID:YZ3N7NYRo
相変わらず気が遠くなる程の紳士っぷりだなお前ら
さて出かける前に投下をしていこう
227: 2011/07/11(月) 21:33:06.13 ID:YZ3N7NYRo
「行ってきまーす!ってミサカはミサカは元気良く家を飛び出してみたり!!」
大きな声を上げつつ、打ち止めは元気一杯に家を飛び出していく。
『おつかい』という大仕事を任されたのがよほど嬉しいのだろう、
その顔は使命感に満ち溢れていた。
「転ばないように気をつけるじゃんよー」
駆けて行く打ち止めの背に、家主である黄泉川愛穂が苦笑しながら声をかける。
まだ幼い打ち止めを一人でおつかいに行かせる事に不安が無いわけではなかったが、
防犯ブザーも持たせてあるし、目的地のスーパーまでは見晴らしのいい大通りを歩くだけで到着する。
警備ロボットや監視カメラも十分な数設置されてあるので、万が一にも危険はあるまい。
後は打ち止めにおつかいをやり遂げる精神力と体力があるかどうかだが、
先程の元気な姿を見る限りそちらの心配も不要なようだ。
「ふぅ……一方通行、見送らなくても良かったじゃん?」
打ち止めの後姿が見えなくなるまで見送った後、黄泉川は家の中へと向き直り、
だらしない格好でソファに寝そべっている白い男に声をかけた。
228: 2011/07/11(月) 21:33:42.70 ID:YZ3N7NYRo
「たかが買い物だろォ?なンでわざわざ見送らなきゃならねェンだァ?」
溜息の混じった一方通行の返事に、黄泉川はおや、と首を傾げる。
要所要所で過保護が過ぎるこの男の事だから、打ち止めの後を追いかけようとしたり、
打ち止めが帰ってくるまでずっと玄関で待っていたりするんじゃないかと思っていたが、
どうもそれ程心配はしていないらしい。打ち止めを信用しているのか、
それとも彼の子離れも進んでいるのか、いずれにせよ良い傾向である。
……まさか、既に探偵を雇って打ち止めの護衛をさせているとは思うまい。
(……アイツらに任せてみたが、本当に大丈夫なのかァ?)
クールな態度を装っている一方通行だが、やはりと言うべきか、その内心は穏やかではない。
レベル5の第二位と第四位という学園都市最高クラスの二人に護衛を頼んではいるものの、
どうしても一抹の不安は拭い切れない。
彼の不安の中心にあるのは、やはり先日起きた妹達の失踪事件であった。
とある公園の近くで忽然と姿を消した彼女は、しかし二日ほどであっさりと戻ってきたのだが、
失踪した経緯もその間何があったかも頑なに語ろうとせず、
「あの公園の付近には近寄るな」「ツインテールに気をつけろ」という警告だけを延々行っている。
229: 2011/07/11(月) 21:34:09.38 ID:YZ3N7NYRo
そして打ち止めは今日、スーパーに行く道程でその公園の近くを通らなければならない。
大凡戦いの場に置いて最も厄介な事は情報が不足しているという事である。
何が起きるのかわからないとあっては、こちらの戦力がどれ程強大であろうとも不安は残ってしまうのだ。
勿論、打ち止めも上記の警告を聞いているし、妹達の一人が失踪したと言う事も知っている。
が、無駄に勇ましいこの幼女は『そんな事件ミサカが解決してやるー!ってミサカはミサカは以下略』
などと言い、逆に闘志を燃やしてしまう始末であった。
「不安そうだねぇ第一位」
「あァ?」
顔には極力出していないつもりだったが、一方通行の内心の不安を敏感に察知した番外個体が
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、ソファに寝そべっている彼を見下ろす。
「ニヤニヤしてンじゃねェようざってェ、なンで俺があのガキの心配なンざしてやらねェといけねェンだ?」
自分をからかう事に生き甲斐を見出している性悪にこれ以上心の内を明かされるのは気分が良くない。
一方通行は極めて素っ気無い態度でシッシと手を振りつつ、番外個体から顔を逸らす。
しかし彼がそういう行動を取る事など想像の内だったようで、
番外個体は一層顔を破顔させながら一方通行の側で屈むとツンツンと彼の頬をつつき始めた。
230: 2011/07/11(月) 21:34:55.91 ID:YZ3N7NYRo
「ケケケ、バレバレだっての。『心配で氏にそうです』って顔に書いてあるよ?
大体口リコンのあなたがこの状況で最終信号の心配しないわけないじゃん」
「誰が口リコンだボケ、それとつつくの止めろ、マジでうぜェ」
「あ、口リコンは卒業したんだっけ?そういえばこの前赤毛の女と絡まってる写真が出回ってたね。
いやぁあれは笑えたなぁ」
「あの写真は作り物だって何度言わせりゃ気が済むンだ!?」
先日垣根が作ったコラ写真の事を持ち出された一方通行は、声を荒げながらソファから跳ね起きる。
あの時垣根が打ち止めに渡したコラ写真は、一時的にではあるが
一方通行の家庭内でのヒエラルキーを大きく下げる効果をもたらした。
現在は一方通行の必氏の弁解と説明によって大方の誤解は解けているのだが、
番外個体はこのように、事あるごとに写真の件を持ち出して彼をからかうネタとしている。
件の写真が捏造であろうと無かろうと、彼女にとってはどっちでもいい事なのだ。
彼女はただこうして一方通行を弄る事が出来ればそれだけで幸福なのだから。
231: 2011/07/11(月) 21:35:29.86 ID:YZ3N7NYRo
「冗談だって、わかってるよ。童Oのあなたにあんな事出来るわけないもんね」
「ぶち頃すぞ」
「まぁまぁ一方通行、番外個体は心配性のお前の気を紛らわせようとしてくれてるだけじゃん?
そう目くじら立てずに健気な心遣いを汲んでやるじゃん」
「いや、ミサカにはそんなつもりこれっぽっちもないんだけど?」
「照れなくてもいいじゃん?」
「照れるとかじゃなくて、真剣に……」
「はいはい、そういう事にしとくじゃんよ」
「ねぇ第一位、黄泉川って何で時々人の話聞かないのかな?」
「オマエは常時聞かねェだろォが」
自分の事を棚上げした番外個体の身勝手な言に辟易しつつ、一方通行は再びソファに横になる。
番外個体が自分をからかってきた事の真意がどうであれ、少しは気が紛れたのはまぁ事実だ。
どの道動く事が出来ないのだから、今は垣根達を信用する外無い。
一方通行は軽く欠伸をすると、ゆっくりと目を閉じた。
(……今だけは信用してやる。だから頼ンだぜ、垣根ェ)
「そう言えば芳川はどうしたじゃん?」
「まだ寝てるんじゃないかな?ニートの朝は遅いからね」
232: 2011/07/11(月) 21:36:08.56 ID:YZ3N7NYRo
「あーもしもし、今最終信号を捕捉した。このペースなら後10分くらいで問題の公園付近に到達する。
そっちの様子はどうだ?何か妙な物はあるか?」
パタパタと駆けて行く打ち止めの後方、垣根は気配を消し、彼女と付かず離れずの距離を保ちながら
片手に持った携帯電話に向かって声をかける。
彼の表情は真剣そのもので、かつて無い程に緊張感を湛えている。
それもそのはず、今回の仕事は命が掛かっているのだ。
もし打ち止めに何かあれば、一方通行は本気で垣根を頃しにかかるかも知れない。
『公園周辺見回ったけど特に異常はないみたいね、人通りも疎らだし、目を引くような物もなかったわ』
電話口から麦野のけだる気な声が響いてくる。
依頼の際に一方通行も言っていた通り、一番警戒すべきは失踪事件が起こったという公園付近だろう。
それ故一足先に麦野に公園近辺の探索を頼んだのだが、今の所怪しいモノは見当たらないらしい。
このまま何事も無ければ良いのだが、と垣根は一先ず胸を撫で下ろす。
233: 2011/07/11(月) 21:36:52.58 ID:YZ3N7NYRo
「俺はこのまま最終信号の後をつける。何かあったら連絡してくれ」
『はいはい、仰せのままに』
不機嫌そうな声の後、通話はさっさと打ち切られる。
態度はどうあれ、普段ほとんど仕事に協力してくれない麦野が何故か今回は従ってくれている。
強かで打算的な彼女の事だ、ただの気まぐれや奉仕の心に目覚めたなどと言う事はまずあるまい。
恐らく、学園都市の最高戦力である一方通行に貸しを作っておきたいのだろう。
(無事依頼をこなせれば確かに一方通行に貸しを作れる。だが失敗すれば……最悪殺される)
不吉な未来を想像してしまった垣根は己の身を抱きながら身震いする。
(失敗したら一方通行の野郎は多分マジギレする、下手したらあの黒い翼が出てくる。
麦野はきっと失敗の責任を全部俺に押し付ける。ちくしょう)
234: 2011/07/11(月) 21:37:24.72 ID:YZ3N7NYRo
不安ばかりが募って行くが、実際の所、学園都市にたった七人しかいないレベル5の内、
第二位と第四位の二人が護衛しているのだから、万に一にも護衛対象を傷つけられる事はあるまい。
しかしどれほど低い確率だろうと、命が掛かっているとなるとネガティブになってしまうものなのだ。
(何も起こりませんように……)
打ち止めの後をつけつつ、垣根は柄にも無く、科学の街で神に祈りを捧げた。
―――――――――――――――
―――――――――
――――
235: 2011/07/11(月) 21:38:00.73 ID:YZ3N7NYRo
「はぁ、やはりいませんのね……」
とある公園で、ツインテールの少女が一人肩を落としながらベンチに腰掛けていた。
彼女の名は白井黒子。名門・常盤台中学に通うレベル4の空間移動能力者にして、
この街の治安を守る風紀委員(ジャッジメント)の一員である。
「ふぅ……それにしても、あの方は先程から何をやっているんですの?」
彼女の腰掛けている前で、先程から髪の長い妙齢の女性が行ったり来たり、
何かを探すような、或いは周囲を見張るような素振りをしている。
風紀委員と言う役柄、普段の白井であればその女性に何をしているか尋ねる所だが、
冒頭の彼女のセリフの通り、彼女もまた人を探している途中なので、敢えて声をかける事はしない。
「………あのお姉様に良く似た方はもうここには現れないのでしょうか……」
ハァ、と溜息を吐き、がっくりと項垂れる。
つい先日の事だ、彼女は公園の側をパトロールしている最中に偶然、
彼女が『お姉様』と呼び敬愛している御坂美琴そっくりの少女を見かけたのだ。
見かけた、と言うか最初は本人だと勘違いして話しかけてしまったわけだが。
236: 2011/07/11(月) 21:38:49.43 ID:YZ3N7NYRo
その御坂美琴そっくりの少女は、白井や御坂本人と同じく常盤台の制服を身に着けていたのだが、
御坂に瓜二つの少女など、勿論常盤台には在籍していない。
不審に思った白井はその場で少女に何者かと問いただしてみたが、
少女が何を言っているのかいまいち要領を得ず、
そんな彼女を前にして、白井が『妹達と呼ばれる御坂美琴のクローンが存在する』
という都市伝説を思い出すのに、それ程の時間は必要としなかった。
そんな噂、白井は全くといって良いほど信じていなかったのだが、
目の前の少女はその噂と合致する点が余りにも多すぎる。
『貴女は御坂美琴のクローンなのか』直球で白井がそう尋ねると、
少女は別段悪びれる様子も無く、コクリと頷きそれを肯定した。
しかしそこまでだった。クローンである事を肯定した少女はそれ以上白井の質問に答えようとせず、
素性も、造られた経緯も、スリーサイズも、一切語ろうとはしなかった。
やむなく、白井は立ち去ろうとする少女を捕らえ、彼女をテレポートで連れ去った。
これが先日起きた妹達の失踪事件の真相である。
白井はあくまでも少女の素性を知る為、
国際法で禁じられている人間のクローンが造られている理由を知る為、
学園都市の闇に挑む為、正義の為に行動したのだ。
さて、そうした事情で妹達の一人を捕まえた白井だったが、当然それを公にする事は出来なかった。
もし彼女が本当に御坂のクローンだとしたら、それが周囲に知れ渡ってしまったら、
敬愛する御坂美琴までもがいらぬ誹謗中傷を浴びる事になるのは想像に難くない。
また、好奇の目で見られるのは少女も望まないだろう。
それ故、白井は誰にも知らせることなく少女をホテルの一室に連れ込み、
たった一人で彼女の取調べを行う事にしたのだ。
正義の為に。
237: 2011/07/11(月) 21:39:16.29 ID:YZ3N7NYRo
白井の取調べは執拗を極めた。
いくら彼女の愛する御坂美琴と同じ顔をしていても、
何も喋ろうとしない以上、少女が御坂に仇なす存在である可能性は捨てきれない。
どんな理由で造られたのか、御坂はその存在を知っているのか、
何体造られているのか、複数体作られているのなら一体くらい貰えないか、
知りたい事は山積みである。
白井は一向に口を割らない少女に対し、心を鬼にして尋問を試みた。
抱き付いてみたり、服を引ん剥いてみたり、舐め回してみたり、
鞭で打ってもらったり、蝋を垂らしてもらったり、口汚く罵ってもらったり、
と、白井の尋問は凄惨極まりないものであった。
勘違いしないで頂きたい、あくまでも正義と平和の為の行動である。
しかし、どれほど尋問しようと少女は素性を喋ろうとせず、
結局、少女を監禁してから二日ほど経ったある日、
目隠しプレイ風の尋問をしようと、白井がアイマスクを装着した隙にあっさりと逃げられてしまった。
大失態である。
少女を逃がしてしまった白井だったが、それでも彼女を野放しにしておく気にはなれず、
こうして毎日のように彼女を捕らえた公園付近を散策している。
いつか、少女が再びこの公園付近に現れる事を信じて。
何度も言うが、正義の為に。
(さて、そろそろ休憩は終わりにしてもう一頑張りしますの)
くたびれた身体に渇を入れ、白井はベンチから立ち上がり軽く伸びをする。
と、その時、一人の幼い少女が公園の前を横切っていく姿が彼女の瞳に写った。
238: 2011/07/11(月) 21:39:51.79 ID:YZ3N7NYRo
『もうじき最終信号が公園の前を通る。何か変わった事はないか?』
「……垣根、確か失踪したクローンは『ツインテールに気をつけろ』って警告してんのよね?」
『あ?そういや一方通行の野郎がそんな事言ってやがったか……まさか、いたのか?ツインテール』
「えぇ、公園のベンチにツインテールの女が座ってるわ。
ただ、風紀委員の腕章付けてるから何かやらかすとも思えないけど」
電話口から聞こえてくる垣根の声に、麦野は簡潔に答える。
彼女の視線の先で、ツインテールの少女が一人、何やらくたびれた様子でベンチに腰を下ろしていた。
少女が装着している腕章から、彼女が学園都市の治安維持組織である風紀委員の一員だと言う事がわかる。
ツインテールという髪型は確かに気になるところではあるが、
それでも治安を守る風紀委員が失踪事件の糸を引いているとは考えづらい。
『まさか風紀委員が失踪の件に関与してるとも思えねぇが、まぁ一応注意しといてくれ』
そもそも風紀委員とは志願制の上、任に就くには厳しい適正審査と研究を突破しなければならない。
そんな面倒な事を好き好んでやるくらいだから、風紀委員と言う奴らは、
垣根や麦野達とは違い、どいつもこいつも正義感と責任感に満ち溢れているのだ。
風紀委員が失踪に関与しているはずがない、と二人が思ってしまうのも無理ない事である。
239: 2011/07/11(月) 21:40:17.79 ID:YZ3N7NYRo
『他に異常は?』
「無いわね。風紀委員以外には人影も無し」
『OK、何事も無く行けそうだな。今から最終信号が公園の前通るぞ』
「了解」
喋りつつ、チラリと公園の入口に目をやると、丁度打ち止めがそこを横切る姿が目に入った。
何がそんなに嬉しいのか、彼女はニコニコと満面の笑みを浮かべており、
笑顔のまま駆けて行くその姿はなんとも愛らしい。
(あのクソ生意気な第三位のDNAからあんなに可愛い生き物が生まれるなんてねぇ)
打ち止めの愛らしい姿に麦野も思わず目を奪われ顔を綻ばせる。
しかし、その一瞬の油断が命取りであった。
ふと違和感を感じた麦野はすぐに打ち止めから視線を逸らし、公園内に意識を戻したが、
その時には既に、先程までベンチに座っていた風紀委員の姿が消えていた。
240: 2011/07/11(月) 21:40:45.08 ID:YZ3N7NYRo
「そこの貴女、少々お時間よろしいですの?」
「ふぇ?」
不意に声をかけられ、打ち止めは足を止める。
声のした方を見ると、いつの間にか彼女の隣に風紀委員の腕章を付けたツインテールの少女が立っていた。
「なぁに?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
(ミサカ!やはり……)
打ち止めの反応に、白井はゴクリと生唾を飲む。
先日逃がした少女も語尾に『ミサカは~』とつける独特な喋り方をしていた。
そして目の前の幼い少女も似たような喋り方をしている。これは無関係ではあるまい。
何より彼女の姿もまた、少々幼いとはいえ、御坂美琴に瓜二つなのだ。
「こ、こんな所で一人で何をなさっているんですの?保護者の方は近くにいらっしゃいませんの?」
御坂そっくりの可愛らしい少女に襲い掛かりたくなる衝動を必氏に堪え、何とか平静を装いながら尋ねる。
目的はあくまでも御坂のクローンに関する情報を収集する事である。
出来れば騒がれぬよう、穏便に事を運びたい。
241: 2011/07/11(月) 21:41:18.31 ID:YZ3N7NYRo
「いないよ!ミサカは今一人でおつかいに行く途中なの!
ってミサカはミサカは息を荒げるお姉ちゃんに若干引きながらも正直に答えてみる!」
その返事を聞いた白井は心の中でほくそ笑む。
近くに保護者が居ないという事はつまり、やりたい放題だという事だ。
訝し気な顔をしながら首を傾げる打ち止めに、白井はじりじりと距離を詰めて行った。
「な、何で近付いてくるの?ってミサカはミサカは警戒しながら後ずさってみたり……」
「そう警戒しないでくださいまし、少々お聞きしたい事があるだけですの。
大丈夫ですの、わたくしは風紀委員ですの、怖い事なんて何もありませんの」
「か、顔が怖いよ!ってミサカはミサカは……ハッ!まさかこの前の下位個体の失踪事件はあなたが――」
不気味な笑みを浮かべながらにじり寄る白井を前にした打ち止めはようやく先日の失踪事件と白井を結びつける。
慌ててポケットの中に隠していた防犯ブザーに手を伸ばす打ち止めだったが、
彼女が防犯ブザーを探り当てるその前に、白井が手に持ったハンカチで彼女の口元を覆った。
じたばたと身体を動かし抵抗しようと試みるも、日頃から風紀委員で鍛えている白井に叶うはずも無く、
打ち止めの意識はゆっくりと暗転していった。おそらくハンカチに薬品を染み込ませていたのだろう。
242: 2011/07/11(月) 21:41:50.47 ID:YZ3N7NYRo
「うぇっへっへっへ……」
眠るように意識を失った打ち止めを抱きかかえ、白井は怪しげな笑い声を漏らす。
後は誰かに見られる前に彼女をホテルに連れ込み、また取調べを行うだけだ。
年端も行かぬ少女に責め苦を与えるのは少々気が引けるが、だからと言って
ようやく掴んだ御坂のクローンの手掛かりを諦めるわけにはいかない。
今度こそ逃がさず、クローンの情報を全て聞き出して見せる。
白井は使命と正義に燃え、ダラダラと涎を垂れ流した。
「さて、それではそろそろ……ッ!!」
一頻り打ち止めの寝顔を眺め満足した白井は、ホテルに向かうべく空間移動の演算を行おうとする。
が、彼女が空間移動を行う寸前、突如飛来した一筋の光線が彼女の側頭部を掠め、
ツインテールの一方を跡形も無く消し飛ばして行った。
「な、何事ですの!?」
突然の攻撃に驚いた白井はバランスを崩しその場に尻餅を着いてしまう。
その衝撃で打ち止めが小さく呻き声を上げたが、目を覚ましたわけではないようで、
彼女が再び穏やかな寝息を立てるのを確認すると、白井はホッと安堵の息を吐いた。
243: 2011/07/11(月) 21:42:29.45 ID:YZ3N7NYRo
「どなたですの!?もしこの子に何かあったらどうしてくれるおつもりですの!?」
打ち止めをその胸に抱きつつ、光線の飛んできた方角をキッと睨みつける。
その先に、一組の男女がぽかんとした顔をしながら立っていた。
「そのガキに何かしようとしてたのはオマエだろうが……」
「頭おかしいんじゃないのこのツインテ……っと、一本消し飛んだからもうサイドテールか」
自分の行動を棚上げし怒鳴り声を上げる白井に、垣根と麦野は呆れ果てながらつっこみを入れる。
まさか今まさに誘拐をやらかそうとしていた相手に逆切れされるとは思っていなかったようだ。
「人聞きの悪い事をおっしゃらないでくださいまし!わたくしはこの子に聞きたい事があっただけですの!」
「薬で眠らせる必要はねぇだろ!どっかに連れ去る気満々だったじゃねぇか!!」
「ま、アンタがその子を眠らせてくれたお陰で私達は出て来れたんだけどね」
二人は一連のやり取りを観察しながら打ち止めを助け出すタイミングを窺っていたのだ。
一方通行との約束で打ち止めと直に接触する事は避けなければならず、
どうやって彼女を助けるか悩んでいた二人だったが、都合よく白井が打ち止めを眠らせてくれた為、
こうして、これ幸いとばかりに救出に乗り出したのである。
途中で打ち止めに騒がれぬように、と彼女を眠らせた白井の慎重策が完全に裏目に出てしまったわけだ。
244: 2011/07/11(月) 21:43:08.08 ID:YZ3N7NYRo
「俺達も事を荒立てたく無いんでな、大人しくそのガキをこっちに渡してくれれば、
テメェのやろうとした事は見逃してやっても良い。だから……」
「さてはあなた方、この子を誘拐してあんな事やこんな事をするつもりですのね!?
ジャッジメントとして、そんな事は断じて許しませんの!!」
「それをやろうとしてたのはテメェだろ」
「ジャッジメントですの!ジャッジメントですの!」
「……もういいわ、サクッと実力行使で終わらせましょう」
「だな。最終信号が目ぇ覚ます前に片付けねぇといけねぇしな」
いいかげん白井の言動につっこみ切れなくなった二人は、
さっさと白井を張り倒して打ち止めを救助すべく、無造作に距離を詰めて行く。
これに焦ったのは白井である。考え無しに思いっきり啖呵を切ったものの、先程の光線を見た限り
相手はかなり高位の能力者である事が予測される。おまけに二対一という状況下の上、
こちらは少女を守りながら戦わなければならない。
不利な状況である事は誰の目にも明白である。
245: 2011/07/11(月) 21:43:45.61 ID:YZ3N7NYRo
白井(このままではマズイですの……なんとかこの場を切り抜けなければ……)グッ
白井(あ、あら?おかしいですの、何故か上手く立ち上がれませんの……)グラッ
白井(ハッ!まさか先程ツインテールが一本消し飛んだからバランスが取れなくなって!?)ガーン
白井(あ、あぁぁやばいですの!近付いて来てますの! く、空間移動を……)
白井(だ、ダメですの、間に合わな……あっ)
白井「ぬわああああですのおおおお!!!!」
―――――――――――――――
―――――――――
――――
246: 2011/07/11(月) 21:44:12.18 ID:YZ3N7NYRo
打ち止め「うーんむにゃむにゃ……あれ?」パチッ
打ち止め「ここは……公園のベンチ?ミサカは何してたんだっけ……
ってミサカはミサカは頭を抱えて記憶を掘り返してみる」ウーン
打ち止め「そっか、おつかいに行く途中だったんだ!
ってミサカはミサカは思い出すと同時にベンチから飛び降りてみたり!」ピョン
打ち止め「……でも何でベンチに?天気がいいからお昼寝しちゃったのかな?ってミサカはミサカは……」
打ち止め「なんだろ、何だかあんまり思い出さないほうがいい気がする……
ってミサカはミサカは記憶の片隅に残っている恐怖に肩を震わせてみたり」ブルブル
打ち止め「それよりも早くおつかいに行かなきゃ!ってミサカはミサカは猛ダーッシュ!!」ダッ
260: 2011/07/17(日) 10:28:02.60 ID:ovWukvNXo
なんだ平常運転か、心配して損したぜ
ちょっとばかし間が空いたけど投下に来たよ
261: 2011/07/17(日) 10:28:43.90 ID:ovWukvNXo
そういえばさ、と麦野は雑誌を捲りながら垣根に話しかけた。
垣根は眉を顰めつつ缶コーヒーを口に含む。
依頼の礼に、と一方通行が先日大量に置いていったものなのだが、これが途轍もなく不味い。
わざわざ他の飲み物を用意するのも面倒なので仕方なく飲んではいるが、
次に一方通行に会った時には文句の一つでも言ってやらねば気が済まない。
「どうした?俺に抱かれる気になったってんなら俺の方はいつでも準備は出来てるぜ」
「テメェはそれしか頭にねぇのかよ、吐き気がするからこっちに顔向けんな」
チッと舌打ちし、麦野はその長い髪を掻きあげながら垣根を口汚く罵る。
麦野でなくとも、恋人関係でもない男に「抱かせろ」と言われて承諾する女はそうそういまい。
いかに垣根が整った、美男子に部類される顔立ちをしているとしても、だ。
一ヶ月以上も禁欲生活を強いられたんだ、仕方ねぇだろと垣根は悪びれる様子も無く言う。
「冷蔵庫になってた間の事言ってるんなら、そりゃ自業自得でしょ」
「いーや、一方通行のせいだね」
「だったら第一位に責任取って貰ったら?アイツの尻でも狙ってくればいいじゃない」
「ダメだな、あの野郎は痩せすぎだ。俺はもっと肉感的な方が好みなんだよ」
「そういう問題なわけ……?」
262: 2011/07/17(日) 10:29:09.51 ID:ovWukvNXo
もし一方通行が肉感的な身体つきをしていたらこの男はどうしたのだろうか。
ただの冗談だとは思うのだが、本音である可能性も十分に存在する。
思い起こせば毎日垣根と顔を会わせるようになり、毎日のように言い寄られているが、
強引に迫られた事は一度も無く、彼はただ「抱かせろ」「ヤらせろ」と口にするばかりだ。
まさか、そんなセクハラ紛いの発言を続けるだけで関係を持てるとは思っていまい。
つまりは本気で抱きたいと思っているわけでは無いのではないか。
これはひょっとすると、本当に……
「待て待て、冗談だからな?冗談」
麦野のドン引きした視線に気付いた垣根は慌てて弁解する。
「何なら今ここでオマエに襲い掛かって証明してやろうか」
「無理しなくてもいいのよ?アンタがゲイでも私は別にこれっぽっちも困らないし、
むしろ安心出来るって言うか……」
「生暖かい目で見るのはやめろ!諭すような口調もやめろ!マジに襲うぞテメェ!!」
263: 2011/07/17(日) 10:29:42.59 ID:ovWukvNXo
いい加減にしろと声を荒げつつ、垣根は残っていたコーヒーを胃に流し込む。
それにしても不味い。腐っているのではないかと疑い賞味期限を見てみると、本当に切れていた。
一方通行め、どうやら腐りかけの不良在庫を報酬と言う形で体よく押し付けてきただけらしい。
ペキペキとスチール缶を握り潰す垣根を麦野は呆れ顔で眺めている。
「よくそんな不味い物飲めるわね、ゲイ督」
「そのゲイ督ってのが俺を指す固有名詞だってんなら、オマエは俺に挽肉にされても文句は言えねぇぞ?」
「ちょっと噛んだだけじゃないの、一々キレてんじゃないわよゲイ督」
「妙に語呂がいいからやめてくれ、定着しちまったらどうしてくれんだ……」
はぁ、と溜息を吐きつつ、垣根は力なく肩を落とす。
麦野はと言うと、来客用のソファに横たわったままニヤニヤと薄笑いを浮かべていた。
この野郎と思わないわけではないが、言い返しても泥沼化する事は目に見えている。
さっさと話題を変えてゲイ云々の事など忘れさせてしまうのが得策だろう。
コホンと咳払いを一つしてから、それよりもと垣根は切り出した。
「何か俺に話があったんじゃねぇのか?」
「え?あぁそうね、アンタが話逸らすから忘れてたわ」
264: 2011/07/17(日) 10:30:17.13 ID:ovWukvNXo
「そこまで俺のせいにするのかテメェ」
傲岸不遜、傍若無人を地で行く麦野に、いい加減閉口する垣根だったが、
これだけの態度を取られても尚、垣根は麦野を邪険にしたり追い出そうとしたりはせず、
それどころか、むしろ結構気に入っていたりする。主に顔と身体を、ではあるが。
「まぁただの暇潰しだし、大したことじゃないんだけどさ」
そう前置きし、麦野はようやくソファから身を起こした。
「ちょっと聞いてみたい事があってね」
「まぁ客も来ねぇしな」
答えられる事なら答えてやるよ、と言って垣根は空になった缶をゴミ箱に放り、
ゆったりとチェアの背もたれに身を預けた。
「アンタさ、何で探偵なんてやってんの?」
「あぁ?」
265: 2011/07/17(日) 10:30:45.13 ID:ovWukvNXo
「私の知ってるアンタは自分勝手で自己中心的で、大凡他人の役に立つような仕事をする人間じゃないわ」
「オマエが言うな」
「そのアンタがどうして見返りもなしに表の世界でのんびり働いてるのか、ちょっと気になってね」
「だから報酬はオマエらが払ってねぇだけだつってんだろ」
いつの間にやら、垣根探偵事務所は仕事をするに当たって金銭を一切要求しない、
ボランティアのような探偵事務所だという噂が広がっている。
それでもその怪しさ故に客が来る事は滅多に無いのだが。
「で、探偵やってる理由はあんの?まさか奉仕の心に目覚めた何て事は言わないわよね」
麦野の問いに対し、垣根はすぐには答えようとせず、視線を宙に遊ばせる。
垣根の行動の根底にあるもの、それは学園都市への、アレイスターへの反逆。
表の世界で探偵の真似事をしているのも、全てはアレイスターの目を欺く為であり、
探偵業ならば裏の情報も集めやすいのではないかと考えたからだ。
残念ながら現状、情報収集の面ではからっきしだが。
つまり、探偵業はあくまでも身を隠し機会を窺う為の仮の宿とも言うべきもので、
垣根は虎視眈々と己の牙を研ぎ、その時が来るのを待っているのである。
そのはずだったのだが……
266: 2011/07/17(日) 10:31:18.79 ID:ovWukvNXo
「だってかっこいいじゃねぇか、探偵って肩書き」
「……え、それだけ?」
「いや、色々考えてたんだけど何かめんどくさくてな……」
ぬるま湯に浸かりきったような生活の中で、垣根の牙はすっかり磨り減ってしまっていた。
無論、反逆と言う大望を忘れているわけではないのだが、彼の心は
「もうどうでもよくね?人生楽に生きようぜ、生きてる事が最大の反逆だよ」
という境地に達しつつあった。
かつての彼は何をしてもアレイスターの手の上から逃れる事が出来なかった。
ならば何もしないでいるのが一番の反逆ではないか、という理屈である。
「はぁ……聞いて損したわ、暇潰しにもなりゃしない」
「暇ならコーヒーでも淹れてくれよ、不味い缶コーヒーはいい加減飽き飽きだ」
麦野は垣根の要求など無視しソファに横になるとペラペラと雑誌をめくりはじめた。
一応、彼女は探偵助手という名目でここに置いているのだが、助手らしい働きをしてくれる事など滅多にない。
やれやれと溜息を吐きつつ、垣根が自分でコーヒーを淹れようと立ち上がろうとした丁度その時、
コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえた。
267: 2011/07/17(日) 10:31:44.40 ID:ovWukvNXo
「おっと客か?よかったな麦野、暇潰しが出来そうだぜ」
「客を暇潰し扱いするってのはどうなのよ?」
垣根の言に呆れつつ、麦野はサッとソファから立ち上がると、扉に向かってどうぞと柔らかい声をかけた。
流石に寝そべったまま客の応対をするような真似はしないらしい。
「へぇ、探偵事務所の中ってこんな感じなのね」
ガチャリと扉を開き、季節にそぐわない涼しげな格好をした赤髪の女性が顔を覗かせた。
その顔を見て、垣根はおやと首を傾げる。
「あれ、オマエ……」
「え?」
「何?また知り合い?」
「あぁ、確か……」
彼女の姿には見覚えがある。確か打ち止めの依頼を受け一方通行の監視をしていた際に、
一方通行と一緒に買い物をしていた女性ではなかったか。
268: 2011/07/17(日) 10:32:12.97 ID:ovWukvNXo
「一方通行の彼女だよな?確か結標つったか……何だ、アイツの紹介か?」
「はぁ?第一位に彼女なんていたわけ?つーかあれ口リコンじゃなかったの?」
「あ、あなた達一方通行の知り合いなの!?いやその前に、彼女じゃないわよ!」
「あれ、違うのか?でも手ぇ繋いで一緒に買い物してたよな?」
「何でそんな事知ってるの!?」
「へぇ、あんなガリガリのモヤシ体型のクセに結構やるのね第一位」
「だ、だから違うってば!!あれは荷物持ちをさせる為で……」
「でもアイツにキズモノにされたんだよな?」
「やる事やってんのね、童O臭いと思ってたんだけど違ったか」
「キズモノの意味が違うのよ!!て言うかどうしてそんな事まで知ってるの!?」
「探偵だからな」
垣根はキメ顔でそう言い放つと、口角を持ち上げフッと笑った。
結標は口元に手を当てつつ、探偵って凄いわねなどと呟いている。
それで納得してしまって良いのだろうか。
269: 2011/07/17(日) 10:32:51.94 ID:ovWukvNXo
垣根「それで、一方通行の紹介ってわけじゃないんだな?」
結標「違うわ。アイツとはしばらく会ってないし」
麦野「倦怠期ってやつ?」
結標「だから付き合ってるわけじゃないって言ってるじゃない!」
垣根「あぁうん、まぁ別にどうでもいいけど、それでどんな用件なんだ?」
結標「あ、えっと、あなた達にある物を手に入れて来て欲しいのよ」
麦野「ある物?」
結標「えぇ、下手をすると命を落とすかも知れないほど危険なものよ」
垣根「おっかねぇなオイ、そんなもん探偵に持ってこさせようとすんなよ」
麦野「で、何なのよその危険物は?」
結標「二人とも一方通行の事は知ってるのよね?なら話は早いわ」
垣根「一方通行絡みかよ……そりゃ確かに命懸けだな」
270: 2011/07/17(日) 10:33:20.59 ID:ovWukvNXo
麦野「まさかとは思うけど、第一位の私物盗んで来いとか言うんじゃないわよね?」
結標「違う違う、そんなんじゃないわ。盗みなんて私の能力なら一発だし」
麦野「……あっそ」
結標「あのね、手に入れて欲しい物って言うのは、一方通行の……」
垣根「一方通行の?」
結標「一方通行の、DNAマップが欲しいのよ」
垣根「……は?」
麦野「DNAマップ!?」
結標「そう、DNAマップ」
垣根「あー……無理、諦めろ」
結標「ちょ、何でよ!?」
271: 2011/07/17(日) 10:33:57.21 ID:ovWukvNXo
垣根「アイツ過去に色々あって、多分DNAマップの登録とか流出とか、そういうのに人一倍敏感だから」
結標「そこを何とかするのが探偵でしょ!?」
麦野「DNAマップ採取する探偵なんて聞いたこと無いわ」
結標「せめて理由くらい聞いてくれてもいいじゃない!私にも引けない理由があるのよ!」
垣根「……まぁ一応聞くだけ聞いといてやるが、何でそんなもん欲しがるんだ?」
結標「あのね、私はかわいいものが好きなの」
垣根「……で?」
結標「ん、ちょっと語弊があったわね。かわいい男の子が好きなの」
麦野「語弊があったままにしておいて欲しかったわね」
結標「それでね、一方通行ってかわいいと思わない?」
垣根「全然」
麦野「全く」
垣根「これっぽっちも」
麦野「有り得ないわ」
結標「そんな全力で何度も否定しないでよ!」
272: 2011/07/17(日) 10:34:30.81 ID:ovWukvNXo
垣根「いやだって絶対かわいくねぇだろアイツ」
麦野「かわいいの対極みたいな存在だと思ってたんだけど」
結標「ふぅ、素人ね……いいわ、この写真を見なさい」ペラ
垣根「あぁ?これは……一方通行の、寝顔か?」
麦野「……へぇ、こうして見ると確かに……
目つきの悪ささえ誤魔化せればかわいく見えないこともないような……」
結標「中世的な顔立ち!華奢な身体つき!あどけない寝顔!これ以上何を望むというの!?」
垣根「俺はあの野郎に端から何も望んじゃいねぇよ」
麦野「まぁ寝顔がそれなりに見れるのはわかったけど、だから何?」
結標「一方通行かわいいでしょ?だから……小さかったらもっとかわいいと思わない?」
垣根「……うわぁ」
麦野「……うわぁ」
結標「『うわぁ』じゃないわ、『わぁい』よ」
麦野「それわかる人が何人いると思ってんのよ」
垣根「オマエわかるのかよ……」
麦野「うるせぇ黙れ」
273: 2011/07/17(日) 10:35:09.02 ID:ovWukvNXo
結標「もうわかったと思うけど、私の目的は……」
麦野「わかった、もういいわ、それ以上何も言わないで」
垣根「本当にブレねぇなこの女……」
結標「目的は、設定年齢10歳程度の一方通行のクローン体を作ることよ」バァーン
麦野「うわぁ……」
垣根「一方通行とデートしてたのは何だったんだよ……」
結標「勿論一方通行の事は嫌いじゃないわ、でもちょっと……旬過ぎてるでしょ、アイツ。
悪くはないんだけど、将来性を考えるともうちょっとね……」
垣根「過ぎてねぇよ!むしろ今からだよアイツは!!昔みたいに能力頼りじゃなくなったから
これからようやく少しは男らしい身体つきになりはじめるところだろ!」
結標「そうね、この前会った時に気付いてしまったのよ……
アイツの腕や脚が、初めて会ったときよりも逞しくなっていた事に……」
麦野「……普通はいい事よね、それ」
結標「男らしい身体つきなんてクソ喰らえよ、私は少年のような華奢な身体つきの男が、
ていうかもう少年が好きなのよ」
垣根「言い切りやがったよコイツ」
麦野「業が深いわね」
274: 2011/07/17(日) 10:35:51.85 ID:ovWukvNXo
結標「一方通行は素体としては最高なのよ!もう10年早く会いたかったわ!!」
麦野「10年……あのモヤシ、まだ15,6くらいだろ?それの10年前って事は……」
結標「下は三つくらいからイケるわ」
垣根「業が深いな……」
結標「さて、私の熱意は伝わったかしら?
そろそろ一方通行のDNAマップを入手する方法を考えて欲しいのだけど」
垣根「帰れよ」
麦野「氏ね」
結標「どうしてよ!?何でわからないの!?一方通行のDNAマップさえあれば
最高のアルビノシOタが無限に量産できるのよ!?」
垣根「わかって堪るか氏ね」
麦野「もう気分悪くなってきたわ氏ね」
結標「シOタよ!?わぁいよ!?おち×ち×ランドよ!?」
垣根「おい麦野、殺そう。コイツ頃しとこう」
麦野「そうね、世の為人の為なんて柄じゃないけど、コイツだけは頃しとかないといけない気がしてきたわ」
275: 2011/07/17(日) 10:36:36.92 ID:ovWukvNXo
結標「待ちなさい、私を頃したら一方通行が黙ってないわよ?」
垣根「えぇー……今更一方通行を盾にすんのかよ……」
麦野「第一位に申し訳ないとか思わないわけ?」
垣根「つーかクローン作ろうとしてるのバレたらアイツに殺されるぞ?」
結標「命を懸ける価値は十分すぎるほどあるわ」キリッ
垣根「俺らを巻き込むんじゃねぇ」
結標「アルビノシOタが欲しいの!私だけのアルビノシOター!!」バンバン
垣根「あああうるせぇ!机叩くんじゃねぇよ!!」
麦野「うざ!コイツうざ!!」
結標「ふぅ、わかったわ、それじゃ少し妥協しましょう」
垣根「いやもう妥協じゃなくて依頼取り下げて帰ってくれ、割と切実に」
結標「一方通行の目を盗んでDNAマップ手に入れたり
クローンを製造したりするのは確かに少し無理があるものね。だから、代わりに……」
麦野「あー、イヤな予感しかしないわ」
276: 2011/07/17(日) 10:37:03.57 ID:ovWukvNXo
結標「一方通行の精液を入手してきてもらえるかしら?」
垣根「……」
麦野「……」
結標「アイツの精液を入手する、私がそれを使って受精する、
これで合法的にアルビノシOタが製造できるはずよ」
垣根「……女が生まれた場合は?」
結標「その子のDNAマップを採取して男型のクローンを……」
麦野「気持ち悪い」
垣根「ドン引きだよもう」
結標「DNAマップ取ってくるよりは簡単でしょ?さぁ方法を考えて」
垣根「つーかアイツ種あんのか?」
麦野「あんな見た目だしねぇ、妊娠しようと思ったらガロン単位で精液いるんじゃない?」
結標「なら1ガロンでも1バレルでも持ってきなさいよ!!」
垣根「男の身体を何だと思ってやがる……蛇口じゃねぇんだぞ」
麦野「やっぱコイツ頃しとく?」
277: 2011/07/17(日) 10:37:47.99 ID:ovWukvNXo
ドア<ガチャ
一方通行「相変わらずうるせェなオマエらは……ン?」カツカツ
結標「あ、一方通行!!どうしてここに!?」アセアセ
一方通行「……結標?なンでこンな所にいやがンだオマエ?」
垣根「あー良い所に来たな一方通行」
一方通行「あァ?」
麦野「その変態女引き取ってもらえない?て言うか頃していい?」
一方通行「変態女ァ?……確かに結標は露出狂みてェな格好してるしシOタコン疑惑もあるけどよォ、
殺さなきゃならねェほど変態でもねェだろ」
垣根「いや、頃しといたほうが……」
結標「ちょっと、誰が露出狂のシOタコンよ!?訂正してもらえるかしら!?」カッ
一方通行「あァハイハイ、スイマセンでしたァ」
278: 2011/07/17(日) 10:38:45.36 ID:ovWukvNXo
結標「全くあなたはすぐそうやって私の評価を落とそうとするんだから……」プンスカ
垣根「いやオマエの評価すでに最悪だから」
麦野「猫被ってんじゃねぇぞシOタコン女が」
一方通行「まァ見た目ほど頭おかしいわけでもねェからそォ邪険にしてやンな、
こンなンでも一応、元同僚なンだよ」
結標「こんなんとは何よ!?」
麦野「騙されてる、騙されてるわよ第一位……」
垣根「世の中知らない方がいい事もあるんだなぁと思いました、まる」
麦野「私もあんな世界は知りたくなかったわ」
一方通行「で、結標は何してやがンだ?このうじ虫探偵に依頼でもしに来たのか?」
結標「えぇ、そうなんだけど……なかなか首を縦に振ってもらえなくてね」
垣根「そりゃ振らねぇよ、振る要素がねぇよ」
一方通行「おい垣根ェ、今までも散々下らねェ仕事やってきたンだろ?
どンな依頼かは知らねェが、受けてやれよ」
垣根「えぇ!?いや、でも……えぇー……」
279: 2011/07/17(日) 10:39:43.51 ID:ovWukvNXo
麦野「……第一位、本当にいいの?」
一方通行「あ?なンで俺に聞くンだよ、勝手にすりゃいいじゃねェか」
垣根「いやだってコイツの依頼内容……」
結標「シャラップ!余計な事は言わなくていいわ!!それよりも許可は出たわよ!!」
麦野「うわぁ……」
一方通行「あァ?」
垣根「……オーケー、引き受けてやるよクソったれが!!」バン
麦野「垣根!?」
結標「っしゃぁ!!」グッ
一方通行「……?」
麦野「……垣根、いいの?」
垣根「大丈夫だ、勝利の目算は立ってる……結標、詳しい事は後で連絡するから今日は帰れ!」
280: 2011/07/17(日) 10:40:30.94 ID:ovWukvNXo
結標「え、でも……」
垣根「一方通行がいたら話し辛ぇだろうが」
一方通行(俺が関係してンのか……?)
結標「ん……わかったわ、それじゃ今日は引き上げるから。
あ、これ私の携帯番号ね」ス
垣根「おう、それじゃまた後で連絡してやる」
結標「えぇ、楽しみに待ってるわ」ガチャ、スタスタスタ
垣根「……ふぅ」
麦野「おい垣根、本当に良かったの?言っとくけど私は協力しないわよ?」
垣根「あぁ、俺もほとんど何もする気はねぇよ……それより一方通行!!」
一方通行「ンだよ?」
垣根「オマエこの前寄越したコーヒー、なんだありゃ!?賞味期限切れてんじゃねぇか!!」
一方通行「あァ、だからくれてやったンだが」
垣根「ふざけんなボケ!!テメェあれが報酬だとは認めねぇからな!!」
281: 2011/07/17(日) 10:41:23.14 ID:ovWukvNXo
一方通行「うっせェな、テメェにゃ腐ったコーヒーが似合いだっての」
垣根「……一方通行、オマエ明日の夜、一二学区に行け」
一方通行「はァ?なァンで俺がそンな所に行かなきゃならねェンだ」
垣根「黙って行け!それでコーヒーの件はチャラにしといてやる!」
一方通行「チッ、仕方ねェな……めンどくせェ……」ハァ
垣根「絶対行けよ?メールで座標送っといてやるから」
麦野「……一二学区って宗教施設とかある所よね?何で第一位をそんな所に行かせたいの?
変態女の依頼と関係してるわけ?」ボソボソ
垣根「あぁ、要はあの変態女が一方通行のガキ孕めばいいんだろ?なんとかしてみるわ」ボソボソ
一方通行「何コソコソやってンだ?それよりコーヒー淹れろコーヒー」
垣根「うるせぇ、腐った缶コーヒーでも飲んでろ」
282: 2011/07/17(日) 10:41:49.76 ID:ovWukvNXo
―翌日、第一二学区
一方通行(……指定された座標まで来たが……何だこりゃ?協会?)
一方通行(垣根の野郎一体何のつもりだ?何企んでやがる?)
一方通行(つーか来るだけでいいのか?もう帰っていいのか?それとも何か待ってなきゃいけねェのか?)
一方通行(どォすりゃいいかサッパリわかンねェ……ン?)
結標「あら一方通行、奇遇ね」テクテク
一方通行「なンだオマエか」
結標「なんだ、とは随分な言い草ね」ハァ
一方通行「こンな所で何してンだ?」
結標「別に、ただの散歩よ」
一方通行「ふゥン」
結標「……」
283: 2011/07/17(日) 10:42:39.12 ID:ovWukvNXo
一方通行「……この前、あの馬鹿に何依頼してたンだ?」
結標「あら、気になるのかしら?」
一方通行「いや別に」
結標「じゃあ教えてあげないわ」
一方通行「ならいいわ」
結標「……」
一方通行「……なンかあったのか?」
結標「え?」
一方通行「オマエいつもはもっとうるせェだろ。
つーか俺から話振らなきゃ喋らねェって状況はどう考えてもおかしくねェか?」
結標「……そうね、ちょっと緊張してるのかもしれないわ」
一方通行「はァ?」
284: 2011/07/17(日) 10:43:11.92 ID:ovWukvNXo
結標「ねぇ一方通行、この協会に纏わる噂知ってる?」
一方通行「協会に纏わる噂?そンなモンに俺が興味あるよォに見えるのかよ」
結標「知らないのね、教えて欲しい?」
一方通行「いや……」
結標「……」ジー
一方通行「……そォだな、教えてくれ」ハァ
結標「フフ、いいわ教えてあげる」ニコッ
一方通行「おォ」
結標「この教会の前で鉢合わせた男女は、一生結ばれるんですって」
一方通行「……ハッそれじゃ俺とオマエは結ばれる事になっちまうなァ?
俺みたいなのとそンな事になっちまうなンざオマエも運がねェな、ご愁傷様だ」ケケケ
結標「本当にね、全くやってられないわ」クスクス
285: 2011/07/17(日) 10:44:01.29 ID:ovWukvNXo
一方通行「……ン、こりゃァ?」
結標「……雪?」
一方通行「例年より随分振るのが早ェな、先が思いやられるぜ」ハァ
結標「でも綺麗……」
一方通行「冷てェだけだろこンなモン」
結標「ねぇ一方通行、さっきの噂には続きがあるのよ」
一方通行「あァ?」
結標「出会った二人は神の祝福を受け、空から真っ白い天使の羽が無数に降り注ぐんですって」
一方通行「……ふゥン」
結標「……雪、綺麗よね。まるで天使の羽みたい」
一方通行「……」
286: 2011/07/17(日) 10:44:31.13 ID:ovWukvNXo
結標「ねぇ一方通行、私あなたに言いたい事があるの」
一方通行「……」
結標「聞いて、くれるわよね?」
一方通行「……あァ」
結標「ありがとう。 私ね、あなたの……」
一方通行「……」
結標「あなたの……」
一方通行「……」ゴクリ
287: 2011/07/17(日) 10:44:58.80 ID:ovWukvNXo
結標「あなたの、精液が欲しいの!!」デデーン
一方通行「……は?」
結標「私を孕ませて欲しいのよ!!」バーン
一方通行「む、結標さン?」
結標「愛はなくてもいいわ!とにかくあなたの子供が欲しいの!!」カッ
一方通行「ちょ、待て何言ってンだオマエ!?声でけェよ!!」
結標「アルビノシOタが欲しいのよおおおお!!!」キシャー!
一方通行「結標ええええェェェェェェ!!!!」
288: 2011/07/17(日) 10:45:33.30 ID:ovWukvNXo
―後日
結標「ちょっとどういう事よ、全然ダメだったじゃないの!?」
垣根「そりゃダメだよ!!馬鹿じゃねぇのかオマエ!?」
麦野「うわぁ、うわぁ、うわぁ……」ウワァ
結標「何よ!?『脈ありだから直球でお願いすればいける』って豪語したのは誰よ!?」
垣根「馬鹿かオマエ!馬ッ鹿かオマエ!?普通に告白すりゃいけただろ!!
真っ当に段階踏んで妊娠させてもらえって計画だったろうが!!!」
結標「我慢出来なくてちょっと本音漏れちゃった」テヘペロ
垣根「ふざけんな!!ありもしねぇ噂作り上げた挙句、雪まで降らせた俺の苦労を何だと思ってやがる!?」
結標「雪もあなたが降らせてたの?凄いわね、ありがとう」
垣根「感謝する前に謝れよ!床に額こすり付けて謝れ!!
せっかく誰も損しねぇ八方丸く収まる計画だったのに!!」
麦野「垣根、アンタは良くやったわ……ただこの変態女がイカレ過ぎてただけよ」ポン
289: 2011/07/17(日) 10:46:22.31 ID:ovWukvNXo
結標「まぁ計画は失敗だったけど、あれから一方通行が妙に優しいから良しとするわ。
このまま好感度上げていけばそのうち精液くらい貰えるはずよ」
垣根「絶対無いわ」
麦野「……優しくなったって、どんな風に?」
結標「私の事を凄く心配してくれるのよ。悩みはないのか、とか、病院行かなくていいのか、とか。
きっと丈夫な子供を産めるかどうか気になるんでしょうね」
垣根「どんだけポジティブだ」
麦野「もういいわ、何言っても無駄よこれ」
結標「今日もこの後一緒に病院にデートに行くことになってるから、そろそろ行くわね。
報酬はまた日を改めて持ってくるわ」ガチャ
垣根「いやもういらねぇっす、二度と来ないのが最大の報酬だよ」
麦野「……今度第一位見たら謝っときましょう?」
垣根「だな、これからはコーヒーも淹れてやろう……」
290: 2011/07/17(日) 10:47:18.37 ID:ovWukvNXo
投下終了
フルスロットル!
, -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
r===========r‐、: : \
|.―‐――‐―丨‐l┤、 :ヽ
L二二二二二」.ニ|‐{ミi : : |
{/ /ゝ、ノイ ノl/ ― トl!: : :| ミサカ知ってますよ。
|l:/|/≧z z≦ .ト、: :|
|/!:ll " " ノ: : :.| いい加減マトモなあわきんを書いてみたいってこと。
.(\ ー' / ̄)从{
| ``ー――‐''| ヽ、.
ゝ ノ ヽ ノ |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
書いてみたいなぁ……
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291: 2011/07/17(日) 10:57:06.80 ID:mAwS4D4Qo
マトモなあわきん…そんなのあわきんじゃないだろ
マトモじゃないあわきんが一番輝いてるよ
マトモじゃないあわきんが一番輝いてるよ
292: 2011/07/17(日) 10:58:55.51 ID:sm4Mxp/DO
あわきん可愛いなぁあわきん
引用: 垣根探偵事務所
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