365:◆zvY2y1UzWw 2016/11/28(月) 23:59:04.71 ID:kHQOuUhg0


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


学園祭3日目時系列で投下でして

366: 2016/11/29(火) 00:02:45.52 ID:Jh+eG2pi0
学園祭の舞台である学園敷地の端、すっかり冷えて枯れかけの花壇があるその場所、木の下で李衣菜と奈緒が通信機でLPと連絡をとっていた。

内容はもちろん触れただけで精神に干渉し、人々を狂わせる例のカースの件である。

李衣菜「つまり…そのカースの情報は殆ど無いって事で間違いないんですか?」

LP『ああ、前例がなくてな。先程交戦した際のデータも貴重なほどだ。すまないな、休日だというのにこんな事に巻き込んでしまって』

奈緒「いいんだよLPさん!あたし達だって被害者は出したくないし…」

李衣菜「それに、偶然性が強いというか、巻き込まれたってほどじゃないですからね。ところで、学園以外での目撃情報はあったんですか?」

LP『いや…こちらでは確認できてない。担当の者が他の組織へ連絡したり、様々な情報網でサーチもしているが、目撃情報は学園祭敷地内ばかりだな』

奈緒「そっか、じゃあやっぱりそいつらを生み出してる奴が敷地内にいる…のかな」

LP『類を見ないほど強力な精神に影響を与える力を持っているのだから恐らくは…そうだろうな、数も少なくない』

李衣菜「…この学園、厄払いしてもらったほうが良いんじゃないですかねぇ」
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それは、なんでもないようなとある日のこと。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



367: 2016/11/29(火) 00:07:13.93 ID:Jh+eG2pi0
LP『あー…、そうだな…もう一つ、カースの情報がある』

奈緒「も、もう一つか…」

ただでさえ厄介なカースが居ると言うのにもう一つ。本当に大丈夫なのか?というニュアンスの返事が返ってくるのは当然とも言える。

LP『獣と人の中間のような姿のカースだ。こちらは以前から学園に居付いているらしくてな、目撃情報もそこそこある。だが、カースにしてはおかしなことに被害情報がない。精神的な影響も見つかっていないようだ』

奈緒「へっ?なんだそれ…ホントにカースなのか?獣人のカースドヒューマンとかなんじゃ?」

LP『そう言われても仕方ないとは思うんだが、反応は純粋なカースだ。…今回、そのカースが件のカースと交戦してるらしい。と言っても一方的に潰しているらしいんだが』

奈緒「…縄張り争いか何かか?」

李衣菜「それか、カースドヒューマンの配下で、水面下で動かされてるとか…うーん、ちょっと違う気がするな」

LP『理由は不明だ、だが結果的にか意図的か…そのカースに救われている一般人も少なくない。何か明らかになるまで、向こうが人を襲っていない限りは無干渉でいてほしい』

奈緒「了解…ところで、夏樹ときらりは来ないのか?」

LP『ああ…今のところ「ネバーディスペア」を動かすことができない。危険性こそわかったものの、あのカースの被害自体は今のところ極小だからな』

奈緒「嘘だろ?あんなにみんな逃げ惑ってたじゃんか…」

LP『そう思う気持ちもわかる。しかし現在、実際に被害はほぼ無い…』

李衣菜「ううん…いいんですよLPさん。『ネバーディスペアが動けない』っていうのは…まぁ、そういう意味なんでしょう?」

LP『……ああ、今日はカースのデータのやりとりの為にこうして通信しているが…本来ならば二人は管理局の組員として動かなくていい、休暇中なのだからな』

奈緒「…?………ん?……あ、ああ!そういうことか」

李衣菜「一応フリーだから、やりすぎなければ問題にはならない…そういう事ですよね?」

LP『それを断言をして良い立場ではないが…そうだな。可能であれば避けたい事だが、緊急事態になれば仕事だ』

李衣菜「それだけ確認できれば十分ですよ。私達に任せてください」

奈緒「…まぁ実際やることと言えば例のカースの出現原因の調査とかだよな、アイドルヒーローは来てるからあまり動いてもあれだし」

李衣菜「それも大事なことだから…難しいねぇ、大人の問題って」

LP『…すまないな』

奈緒「いやいや、これは誰も悪く無いって!」

李衣菜「カメラ無い所ならOKだったりしませんかね?」

奈緒「李衣菜も抜け道を探すんじゃない!決まったことなんだから!仕方ないんだって!」

李衣菜「冗談だってー、実際にするわけじゃないし」

LP『ははは…まぁ、無茶だけはしないでくれよ』

李衣菜「わかってますって」

奈緒「大丈夫だって!」

LP『…二人だから心配してるんだが…とにかく切るぞ。また何かあれば連絡してくれ』

李衣菜「了解しました」

LPが苦笑交じりに通信を切る。実際、二人は痛覚がないことや再生能力を持つことから突撃しがちであるから、この心配は当然である。

368: 2016/11/29(火) 00:09:03.94 ID:Jh+eG2pi0
奈緒「それで…どこから調べる?」

李衣菜「親玉の居場所がわかれば楽なんだけど…全然わかんないや、とりあえず地図を…」

そう言って李衣菜はバッグから学園祭のパンフレットを取り出そうとしたが、その腕の動きは中断される。

奈緒「どうした?」

李衣菜「…下の方から音が聞こえてくる」

奈緒「んー…あ、耳を澄ませると聞こえてくるな、地震じゃないみたいだけど」

地下全体に響く重低音。それは怪人によって作られた地下迷宮が響かせたものだ。

まさに真下、足元から聞こえてきたその音は周囲がうるさければ聞こえないほどのものだったが、二人はそれを耳にした。

奈緒「なんだろ、地下に何か基地でもあるのか?」

李衣菜「なるほど、プールが割れて中からロボが…ってことじゃない気がするなぁ」

奈緒「だよな…?」

その音は怪人の生み出した地下迷宮の産声。そして、件のカースである『退廃の屍獣』によってその迷宮が人々を捕える凶悪なものに変化しているとは、まだ気づくことはできなかった。

369: 2016/11/29(火) 00:12:39.38 ID:Jh+eG2pi0
時間は少し遡り、場所も少し変わる。

この日、蘭子とブリュンヒルデ…昼子は店の仕事が入っていなかった。当然、一般的な学生のように、学園祭を楽しもうとしていた。

昼子「しかし、今日はいつにも増して邪悪な気配がそこら中から感じ取れる…のんきに過ごせるほど我は腑抜けてはおらん」モグモグ

蘭子「たこ焼き食べながら言う台詞じゃない気がするけど…?」

昼子「フ…これは浮かれた人間共に紛れるための策よ……このタコ焼きというモノも美味ではあるがな」

そういう通り、二人はベンチに座り、屋台で夢中になりながら買った食べ物を味わいつつも、どこか浮かれきってはいない。

昼子「…ユズが帰ってこないのはそれほど珍しいことでもないが、この学園祭…先程も言ったが汚染された邪気を感じるのだ…嫌な予感がしてならん」

蘭子「昨日も一昨日も大騒ぎだったしね…ところで『汚染された邪気』って?昨日の事件みたいなカースとか悪魔とは違うの?」

昼子「それが…妙なのだ、カースの持つ負の方向の力なのは間違いないのだが…魔王の娘である我にさえ、悍ましさを感じさせるような…未知の力が働いている。断言はできんが、そういう意味ではカースや悪魔とは違うと言えるだろうな」

蘭子「未知の、力が…?前に見えた妖怪とか?」

昼子「あ、あれは…また違うだろうな…正直よく覚えてないのだ…ほんとに…」

蘭子「そうなんだ?」

昼子「我もまだ未熟故に詳しいわけではないが…邪気にさらなる負の力が加わっているのは間違いない」

蘭子「…じゃあ何なんだろう?その原因って」

この騒動で魔導書の力の影響を受けたカースが数を増やしている影響か、魔法の嗜みが有るものなら学園の敷地内で大なり小なり嫌な気配を感じ取れる程に邪気が漂っていた。昼子はそれを常人の何倍も敏感に感じ取り警戒していたのだった。

370: 2016/11/29(火) 00:17:07.70 ID:Jh+eG2pi0
昼子「…ユズならばこの魔力や邪気を更に詳細を調べてくれるのだろうが…」

いつも忙しそうにしている従者は昨日から会えていない。二人は無意識に彼女のプレゼントである腕輪を見つめていた。

人間の錬金術士が作成したという、それぞれユニコーンとペガサスが描かれた一対の腕輪…ユズのプレゼントだ。

マジックアイテムではあるものの、この腕輪は戦闘用という事ではなく、何かの目的があって作られたものではない。

それと共に思い出す。魔法使いだ。魔力を持つ人間達が、魔力を持たない人間から隠れつつも生活に馴染ませるように発展した、攻撃性の薄い魔法。

魔族の生み出したものである魔術という概念にとらわれていたが、少し冷静に考えると、魔力の形は無限であった。

昼子「…魔力は使い手によっても姿を変える…あの邪気は……まさか…いやそんな馬鹿なことが…」

蘭子「どうしたの、何か思い当たることがあった?」

昼子「…思い出したのだ。魔族とはまた別の、旧き神々に連なる者達の秘術…封じられし禁術。魔力の形の一つとして、そういった物もこの世にはあった、とユズから習った記憶がある」

学んだ時…それはただの言い伝えの類だった。魔術の歴史を学ぶ中での小ネタ、遥か昔に消えてしまったもの。そういった扱い。

しかし、今のこの人間の世界は混沌とした世界。ほぼ絶滅したはずの竜族も潜み、人間にとってその「言い伝え」であったものが溢れた世界。

「ありえない」は有り得ない。昼子は数ヶ月の時を人間界で過ごすうちにそれを学んでいた。

昼子「『秘術』だ。何者かによって生み出されし旧き魔道書に記された、魔術の原型…。しかし、そのうちいくつかの魔道書は名だけは伝わっているものの、全て実物どころか写しすら存在するのか不明なのだそうだ」

昼子「原型と言われてはいるものの、記録には残っていない…故に魔族である我らから見ても実在するかどうかは眉唾であった」

ユズから教わっていた事を思い出しながら昼子は秘術について説明を続ける。

昼子「魔族唯一の閲覧者とされる初代魔王の伝承によれば、記されし文字や言語も魔界や人間界のものとは異なると言うが…我が半身ならその能力で読み取れるかもしれんな」

蘭子「それはちょっと気になるけど…でもどうして今の学園の嫌な気配と繋がるの?」

昼子「…これは可能性の話だ。実際に邪気の根源を突き止めぬことには始まらん」

蘭子「えっ!?」

昼子「フフフ…危険だ、と言いたいか?我らは以前よりも力を増した、わざわざ気配を避け、怯える弱者ではない!」

鞄から黒いローブを取り出しほくそ笑む。

蘭子「そ、それ…用意してたんだぁ…」

昼子「我はいかなる時も魔王サタンの娘であるからな、何かあった時の為の黒衣を用意するのは当然であろう」

蘭子「…なるほど?」

何かあった時、とは何なのか。それは精神年齢が人間換算で14歳の悪姫にしかわからない。

371: 2016/11/29(火) 00:19:28.83 ID:Jh+eG2pi0
昼子「む?」

翼を広げ、宙を舞おうとしたまさにその時、彼女も地下から響く重低音を聞き取った。

昼子「感じたか?地の底から響く呻きを…」

蘭子「えっと、何か響いて来たのは感じたかも?」

昼子「それだけではない。その方角の魔力の流れが微かに歪んだのを感じた…禍々しい気配のモノが起こした現象かまでは判別できないが…事件の予感がするであろう?」

そこまで言うと昼子は蘭子の手を取る。

昼子「邪気の根源を空から探してやろうかと思ったが…騒ぎになっていないということは地下に潜んでいるに違いない。我が半身よ、行くぞ」

蘭子「大丈夫なの?もしかしたらユズさんの言ってた大罪の悪魔の罠かも…」

昼子「フフ…違うな。腐っても大罪の悪魔、わざわざ連日の事件で警戒度が上がっているこの場で、地響きを響かせてまで『罠』を用意するとは到底思えん」

その調子で手を引きながらズンズンと人混みをかき分け、人混みから離れた地下通路の入り口まで歩いて行けば、本来ならば無いはずの禍々しい扉がそこにはあった。

蘭子「あれ?通路の入口は閉める時はシャッターが降りるはず…扉なんてなかったような?」

昼子「ふむ…『地脈よ、その巡りを我が前に示せ』」

昼子が魔法の呪文を唱えると、地中に宿るエネルギーである地脈の流れを可視化した、無数の光の筋が足元から四方八方に伸びていく。

しかし、よく見れば扉の方へ伸びた光の筋は扉に触れる直前に掻き消えてしまっていた。

それを見た昼子は満足そうに魔法を解除する。

昼子「これこそが、地下に起きた異変の一端。この先は地下であるのに地脈すら断絶している…何らかの方法で空間ごと隔離されているようだな」

蘭子「それって、入ったら帰ってこれないって事なんじゃ…」

昼子「そうだな」

蘭子「…いくの?」

昼子「当然。ここの所、我は学園祭の準備やらで力を発揮できずにいた…まぁ、人間が巻き込まれた事件を解決しに行くのも悪くはないであろう?」

蘭子「巻き込まれたって…お、大げさだよ…」

昼子「何も知らないままこの扉を通った一般人が一人も居ないと言えるのか?」

蘭子「う、それは…」

昼子は連日の事件の際、他の生徒と同じように教室で待機していた事で鬱憤が溜まっていた。

そんな中、自由に行動できる日に目の前に『倒しても良い敵』の根城があるのだ。居ても立ってもいられない。

372: 2016/11/29(火) 00:21:49.81 ID:Jh+eG2pi0
昼子「正直に、行きたくないと言えばいいではないか」

蘭子「だ、だって…怖いし…」

昼子「…我らと過ごしておいて言う事か?氏神と魔王の娘だぞ?……まぁ魔族の中でも人間に外見が似ている方ではあるが…」

蘭子「それに…扉からして、怪物が潜んでそうというか…」

昼子「いや、これは魔法ではないと思うぞ。恐らく潜んでいるのは魔族や怪物ではなく人間、怪人の類だろうな」

蘭子「それでも…どうしても私も行かなきゃいけないのぉ…?」

昼子「……我は半身が居なければ攻撃魔法が使えない身……二人で居なくては我らは満足に戦う事もできぬ…」

蘭子「だから…む、無理に行かなくても…!」

意地でも迷宮に突入するつもりの昼子を、蘭子は止めることができない。

本当の姉妹のように仲良く暮らし、同じ部屋で寝て同じ時を過ごした半身の様な存在が、ここまで自分の意見を聞かないとは思わなかったのだ。

…と言うよりは、すっかり彼女が正真正銘の悪魔だという事が頭から抜け落ちていた。と言うべきだろうか。

昼子「…唐突だが、主従の契りを結んでいた事を忘れてはいないか?」

蘭子「ふえっ!?」

昼子「普段は同等の立場でいるものの…契約上、我は汝を自由にすることができる…わかるな?これが魔王の娘と契約した事による代償だ…」

蘭子「え、ええ…そんな…」

その天使のような可愛らしい微笑みは、蘭子からしてみれば正に悪魔のそれであった。

昼子「我が半身に命令するのは心苦しいが…行こうではないか、地の底へ!」

蘭子「い、いやあああ!!」

二人を繋ぐ固い主従の契約によって、二人は離れること無く扉の中へ入っていく。

扉は重く閉ざされ、迷宮は新たな客人の訪れを喜んだ。

魔王の娘とその従者。二人は果たしてこの迷宮から脱出できるのだろうか…。

373: 2016/11/29(火) 00:22:28.92 ID:Jh+eG2pi0
・地下通路入り口に発生した扉から地下迷宮にブリュンヒルデと神崎蘭子が突入しました。当然ですが扉は一方通行です。

久々に投下できました…。
学園祭3日目、迷宮には蘭子&昼子が突入。念願の宇宙勢力(?)の怪人と戦えるかもしれない状況だからね、そりゃ突撃させるよね。

374: 2016/12/08(木) 15:07:00.84 ID:oNFst+uio
おつおつ



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13