98: ◆ikbHUwR.fw 2019/01/03(木) 20:58:38.22 ID:p8Id/7Jt0
前回:だいたいなんでも解決してくれる杏ちゃん~村上巴編~
~森久保乃々編~
99: 2019/01/03(木) 20:59:26.94 ID:p8Id/7Jt0
――事務所内の一室
杏「ふー、疲れた」ボフッ
杏「…………」
杏「…………」
杏(あ、これ誰かくるやつだ)
杏(せめて面倒な人じゃありませんように――)
『ガチャ』
乃々「あんずさぁーん……」プルプル
杏「乃々かー、なんか生まれたての小鹿みたいになってるけど、だいじょうぶ?」
杏「ふー、疲れた」ボフッ
杏「…………」
杏「…………」
杏(あ、これ誰かくるやつだ)
杏(せめて面倒な人じゃありませんように――)
『ガチャ』
乃々「あんずさぁーん……」プルプル
杏「乃々かー、なんか生まれたての小鹿みたいになってるけど、だいじょうぶ?」
100: 2019/01/03(木) 21:00:26.08 ID:p8Id/7Jt0
乃々「あ、はいなんとか……あの、それより……杏さんがどんな願いでも叶えてくれるというのは、本当でしょうか……?」
杏「なにひとつとして本当じゃないよ。杏はシェンロンでもランプの魔人でもないんだよ」
乃々「そ、そんな……」ヨロッ
杏「あー……もうあきらめてるから、いちおう聞くだけ聞いとくよ。願いってなに?」
乃々「その……もりくぼは今からお腹を切って果てるので……介錯をお願いできたらと」
杏「嫌だよ!?」
乃々「あう……では、セルフでなんとかしますので、せめて見届けてくれれば……」
杏「それも嫌だよ、一生モノのトラウマになるよ」
杏「なにひとつとして本当じゃないよ。杏はシェンロンでもランプの魔人でもないんだよ」
乃々「そ、そんな……」ヨロッ
杏「あー……もうあきらめてるから、いちおう聞くだけ聞いとくよ。願いってなに?」
乃々「その……もりくぼは今からお腹を切って果てるので……介錯をお願いできたらと」
杏「嫌だよ!?」
乃々「あう……では、セルフでなんとかしますので、せめて見届けてくれれば……」
杏「それも嫌だよ、一生モノのトラウマになるよ」
101: 2019/01/03(木) 21:01:01.56 ID:p8Id/7Jt0
乃々「誰にも看取られないのは寂しいんですけど……」
杏「まず、なんで果てようとしてんの? なにがあった?」
乃々「……もりくぼの、ポエム帳を落としてしまったんですけど」
杏「うん」
乃々「…………」
杏「…………」
乃々「…………?」
杏「だけ!? そんなことで!?」
乃々「そんなことじゃないんですけど! あれを誰かに見られたら、もりくぼは地獄に帰るしかないんですけど!」
杏「地獄出身みたいになってるけどそれでいいの?」
杏「まず、なんで果てようとしてんの? なにがあった?」
乃々「……もりくぼの、ポエム帳を落としてしまったんですけど」
杏「うん」
乃々「…………」
杏「…………」
乃々「…………?」
杏「だけ!? そんなことで!?」
乃々「そんなことじゃないんですけど! あれを誰かに見られたら、もりくぼは地獄に帰るしかないんですけど!」
杏「地獄出身みたいになってるけどそれでいいの?」
102: 2019/01/03(木) 21:02:26.18 ID:p8Id/7Jt0
乃々「とりあえず巴さんからドスを借りてきますので……」
杏「万が一持ってたら困るからやめて」
乃々「では、紗枝さんから……」
杏「乃々はなにを言ってるんだよ」
杏「万が一持ってたら困るからやめて」
乃々「では、紗枝さんから……」
杏「乃々はなにを言ってるんだよ」
103: 2019/01/03(木) 21:03:22.24 ID:p8Id/7Jt0
杏「ええと、そのポエム帳? は見つかってないの?」
乃々「はい……」
杏「いつどこで落としたかは?」
乃々「わかりません……」
杏「んー、だったら、まだ誰も拾ってないって可能性もあるんじゃない?」
乃々「でも……今日通ったところは、くまなく探したんですけど……階段を何往復もして……」
杏「ああ、それで脚プルプルしてたんだ。でもそれ、拾われてたとしても乃々のだとはわかんないよね?」
乃々「名前書いてありますので……」
杏「えらいな。じゃあ、最後にそれ確認したのいつかってのと、それからどう動いたか教えてもらえる?」
乃々「はい……」
杏「いつどこで落としたかは?」
乃々「わかりません……」
杏「んー、だったら、まだ誰も拾ってないって可能性もあるんじゃない?」
乃々「でも……今日通ったところは、くまなく探したんですけど……階段を何往復もして……」
杏「ああ、それで脚プルプルしてたんだ。でもそれ、拾われてたとしても乃々のだとはわかんないよね?」
乃々「名前書いてありますので……」
杏「えらいな。じゃあ、最後にそれ確認したのいつかってのと、それからどう動いたか教えてもらえる?」
104: 2019/01/03(木) 21:03:57.38 ID:p8Id/7Jt0
乃々「……今日は朝からレッスンがあったので、プロデューサーさんの机の下に隠れていました。そのとき新しいポエムを書いていたので、それまであったのは間違いないんですけど」
杏「うん、それから?」
乃々「たしか……レッスン開始時間になってもプロデューサーさんが探しにこないので、不思議に思って通路の様子を確かめようと思いました」
杏「うん」
乃々「そうしたら……部屋を出たところでプロデューサーさんと鉢合わせて、抱えられて更衣室まで連れていかれました」
杏「うん」
乃々「それで、第二レッスン室でレッスンを受けて……更衣室に戻ってから、ポエム帳がないことに気付いて……」
杏「…………ふーん」
乃々「ああ! 今頃拾った誰かにSNSにアップされて笑いものにされてるに違いないんですけど! 氏ぬしかないんですけど!」
杏「うん、それから?」
乃々「たしか……レッスン開始時間になってもプロデューサーさんが探しにこないので、不思議に思って通路の様子を確かめようと思いました」
杏「うん」
乃々「そうしたら……部屋を出たところでプロデューサーさんと鉢合わせて、抱えられて更衣室まで連れていかれました」
杏「うん」
乃々「それで、第二レッスン室でレッスンを受けて……更衣室に戻ってから、ポエム帳がないことに気付いて……」
杏「…………ふーん」
乃々「ああ! 今頃拾った誰かにSNSにアップされて笑いものにされてるに違いないんですけど! 氏ぬしかないんですけど!」
105: 2019/01/03(木) 21:04:51.44 ID:p8Id/7Jt0
杏「落ち着いて。まだ拾われてるかどうかもわかんないし、見つけてからでも遅くないからね?」
乃々「さんざん探したんですけど……」
杏「たしか落とし物はビル管理室に届けられるんじゃなかったかな? 行ってみた?」
乃々「!! い、いえ……」
杏「いちおう行ってみたら? 拾ったひと、中身見ないでそのまま届けてるかも知れないし」
乃々「は、はい! 行ってみますけど!」
『ガチャ』『バタン』
杏「…………」
杏「しょうがないなあ、もう……」トコトコ
乃々「さんざん探したんですけど……」
杏「たしか落とし物はビル管理室に届けられるんじゃなかったかな? 行ってみた?」
乃々「!! い、いえ……」
杏「いちおう行ってみたら? 拾ったひと、中身見ないでそのまま届けてるかも知れないし」
乃々「は、はい! 行ってみますけど!」
『ガチャ』『バタン』
杏「…………」
杏「しょうがないなあ、もう……」トコトコ
106: 2019/01/03(木) 21:05:26.09 ID:p8Id/7Jt0
――エレベーターホール
杏(……階段を何往復も、ね)
ちひろ「――あら、杏ちゃん。どうしました?」
杏「あ、ちひろさん。このエレベーターって、もう使っていいの?」
ちひろ「はい、点検工事は午前中で終わってますよ」
杏「……そっか、ありがと」
杏(……階段を何往復も、ね)
ちひろ「――あら、杏ちゃん。どうしました?」
杏「あ、ちひろさん。このエレベーターって、もう使っていいの?」
ちひろ「はい、点検工事は午前中で終わってますよ」
杏「……そっか、ありがと」
107: 2019/01/03(木) 21:05:56.83 ID:p8Id/7Jt0
『チーン、ジュウキュウカイデス』
杏「…………」トコトコ
杏(ここ、かな?)ガチャ
杏(で、机はこれで……。あ、やっぱりあった、ポエム帳)
杏「…………」
杏(……ちらっとね、ちらっとだけ)
杏「ごめんね……」ピラッ
杏「…………」トコトコ
杏(ここ、かな?)ガチャ
杏(で、机はこれで……。あ、やっぱりあった、ポエム帳)
杏「…………」
杏(……ちらっとね、ちらっとだけ)
杏「ごめんね……」ピラッ
108: 2019/01/03(木) 21:06:44.13 ID:p8Id/7Jt0
『女の屍体』
目の前で女が氏んでいる。
胸から銀のナイフを生やし、ゆっくり血だまりを広げている。
はて曲者はいずこに消えたものか。
とうに逃げ出してしまったろうか。
目の前で女が氏んでいる。
よく見ればその顔に覚えがある。
屍体はわたしの知人だろうか。
よく見ればナイフにも覚えがある。
凶器はわたしのナイフだろうか。
よく見ればわたしも血にまみれている。
しかしわたしの血ではないようだ。
目の前で女が氏んでいる。
胸から銀のナイフを生やし、ゆっくり血だまりを広げている。
はて曲者はいずこに消えたものか。
とうに逃げ出してしまったろうか。
目の前で女が氏んでいる。
よく見ればその顔に覚えがある。
屍体はわたしの知人だろうか。
よく見ればナイフにも覚えがある。
凶器はわたしのナイフだろうか。
よく見ればわたしも血にまみれている。
しかしわたしの血ではないようだ。
109: 2019/01/03(木) 21:07:11.52 ID:p8Id/7Jt0
杏「…………」パタン
杏(なんか想像してたのと違った)
杏(……私が持ってっちゃうと、どうしても『見られたかもしれない』という疑惑が残るから、これは乃々が見つけた方がいい。戻ろう)
杏(なんか想像してたのと違った)
杏(……私が持ってっちゃうと、どうしても『見られたかもしれない』という疑惑が残るから、これは乃々が見つけた方がいい。戻ろう)
110: 2019/01/03(木) 21:07:51.57 ID:p8Id/7Jt0
――元いた部屋
杏「よし、乃々はまだだね」ボフッ
『ガチャ』
乃々「杏さん……」
杏(あぶね)
乃々「ビル管理室にも……届いてませんでした……」
杏「じゃあ、今日乃々が通ったところいっしょに探してみよう。ほら、ひとりだと見落としがあるかもしれないし」
乃々「無駄だと思いますけど……」
杏「よし、乃々はまだだね」ボフッ
『ガチャ』
乃々「杏さん……」
杏(あぶね)
乃々「ビル管理室にも……届いてませんでした……」
杏「じゃあ、今日乃々が通ったところいっしょに探してみよう。ほら、ひとりだと見落としがあるかもしれないし」
乃々「無駄だと思いますけど……」
111: 2019/01/03(木) 21:08:46.44 ID:p8Id/7Jt0
『チーン、ジュウキュウカイデス』
杏(乃々が階段を重点的に探したのは、そこで落とした可能性が高いと思ったから。なんでわざわざ階段を使うかというと、午前中このエレベーターが点検中だったから。――だけど、乃々が階段で19階まで昇ろうとするとは思えない。階段を通ったのは、プロデューサーに抱えられて更衣室に向かってるときだ)
『ガチャ』
乃々「隠れていたのは、ここですけど……」
杏「うん、なにもないね」
乃々「何度も見ましたから……」
杏「朝ここに来たときの道のりは、今通ったのと同じ?」
乃々「え? あ、いえ。さっきのエレベーターは工事中だったので、通路の奥のほうの別のエレベーターで……」
杏「ふうん、エレベーターを降りてからは、間違いなくこの部屋に入った?」
乃々「??」
杏(乃々が階段を重点的に探したのは、そこで落とした可能性が高いと思ったから。なんでわざわざ階段を使うかというと、午前中このエレベーターが点検中だったから。――だけど、乃々が階段で19階まで昇ろうとするとは思えない。階段を通ったのは、プロデューサーに抱えられて更衣室に向かってるときだ)
『ガチャ』
乃々「隠れていたのは、ここですけど……」
杏「うん、なにもないね」
乃々「何度も見ましたから……」
杏「朝ここに来たときの道のりは、今通ったのと同じ?」
乃々「え? あ、いえ。さっきのエレベーターは工事中だったので、通路の奥のほうの別のエレベーターで……」
杏「ふうん、エレベーターを降りてからは、間違いなくこの部屋に入った?」
乃々「??」
112: 2019/01/03(木) 21:09:26.06 ID:p8Id/7Jt0
杏(乃々の使ったエレベーターはちょうど通路の反対側になるから、出てから見える景色がほとんど変わらない。ついいつものクセで、いつもと同じように部屋に入ったら)
乃々「……!! ちょ、ちょっと待っててほしいんですけど!」ダッ!
杏(ここの、向かいの部屋なんだよね)
<アッタンデスケドー!
杏「はい、めでたしめでたしっと」
乃々「……!! ちょ、ちょっと待っててほしいんですけど!」ダッ!
杏(ここの、向かいの部屋なんだよね)
<アッタンデスケドー!
杏「はい、めでたしめでたしっと」
113: 2019/01/03(木) 21:10:26.32 ID:p8Id/7Jt0
*
――翌日
きらり「あ・ん・ず・ちゃぁーん!!!」
杏「きらりは今日も元気だねえ」
きらり「ねえねえ、杏ちゃん。最近みんなのお悩み解決してくれてるって、ホントぉ?」
杏「あー、まあ、結果的にね」
きらり「きらりもお悩み相談していいかなあ?」
杏「うん? いいけど、なに?」
きらり「えっとねえ、杏ちゃんがみんなから頼りにされてて、きらりもとーってもハピハピ☆」
杏「杏としては不本意なんだけどね」
きらり「でもでもぉ、杏ちゃんをみんなに取られちゃったみたいで、きらり、ちょっぴりさみしい☆」
杏「…………」
きらり「…………」
杏「……じゃあ、今日は1日きらりに付き合うよ。どこでも連れてっていいよ」
きらり「にゃっほーい! 杏ちゃんひとり占め~☆ きらりーんこーすたー!」
杏「こわいこわい、せめて肩車にして」
――翌日
きらり「あ・ん・ず・ちゃぁーん!!!」
杏「きらりは今日も元気だねえ」
きらり「ねえねえ、杏ちゃん。最近みんなのお悩み解決してくれてるって、ホントぉ?」
杏「あー、まあ、結果的にね」
きらり「きらりもお悩み相談していいかなあ?」
杏「うん? いいけど、なに?」
きらり「えっとねえ、杏ちゃんがみんなから頼りにされてて、きらりもとーってもハピハピ☆」
杏「杏としては不本意なんだけどね」
きらり「でもでもぉ、杏ちゃんをみんなに取られちゃったみたいで、きらり、ちょっぴりさみしい☆」
杏「…………」
きらり「…………」
杏「……じゃあ、今日は1日きらりに付き合うよ。どこでも連れてっていいよ」
きらり「にゃっほーい! 杏ちゃんひとり占め~☆ きらりーんこーすたー!」
杏「こわいこわい、せめて肩車にして」
114: 2019/01/03(木) 21:11:43.63 ID:p8Id/7Jt0
ベテトレ「双葉ァ!!」バァン!
杏「あ、まずい」
きらり「にょわ?」
ベテトレ「なにをしている! とっくにレッスンの時間だぞ!」
杏「逃げろきらり、このまま杏を乗せて」
きらり「え、杏ちゃん、これからレッスンだったのぉ!?」
ベテトレ「諸星! 双葉をよこせ!」
きらり「え……えっと……」
杏「ほらほら、今日はひとり占めするんでしょ?」
杏「あ、まずい」
きらり「にょわ?」
ベテトレ「なにをしている! とっくにレッスンの時間だぞ!」
杏「逃げろきらり、このまま杏を乗せて」
きらり「え、杏ちゃん、これからレッスンだったのぉ!?」
ベテトレ「諸星! 双葉をよこせ!」
きらり「え……えっと……」
杏「ほらほら、今日はひとり占めするんでしょ?」
115: 2019/01/03(木) 21:12:27.52 ID:p8Id/7Jt0
きらり「…………ご、ごめんなさーい!!!」ダッ!
ベテトレ「諸星!?」
杏「おー、さすがきらり、速い速い」
きらり「もお! 杏ちゃんあとで怒られちゃうよぉ!」
杏「今回はきらりも共犯だよー」
きらり「むー……杏ちゃんは困った子だにぃ」
杏「そりゃそうだよ。だって杏は、杏だからね」
<森久保乃々編、終わり>
ベテトレ「諸星!?」
杏「おー、さすがきらり、速い速い」
きらり「もお! 杏ちゃんあとで怒られちゃうよぉ!」
杏「今回はきらりも共犯だよー」
きらり「むー……杏ちゃんは困った子だにぃ」
杏「そりゃそうだよ。だって杏は、杏だからね」
<森久保乃々編、終わり>
116: 2019/01/03(木) 21:13:22.66 ID:p8Id/7Jt0
以上ですべて終わりです。
117: 2019/01/03(木) 21:22:39.85 ID:OBTwQ0+Uo
乙でした
杏はなんかT◯Heartとかのギャルゲの主人公みたいなキャラだな
やれやれ系の
杏はなんかT◯Heartとかのギャルゲの主人公みたいなキャラだな
やれやれ系の
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