1: 2016/11/13(日) 21:54:17.04 ID:znRlWZ5z.net
雪穂「ほら、この前の仕事も辞めたんでしょ?」


穂乃果「……」


雪穂「バイトからでもまた始めてみればいいのに」


穂乃果「だって…」

雪穂「だって?」


穂乃果「…働くの、辛いんだもん」


雪穂「えぇ…そりゃみんなそうだよ」ハァ

2: 2016/11/13(日) 21:56:27.62 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「雪穂はいいよ、外で仕事続いてるんだから」


雪穂「…もー。仕方ないなぁ」


穂乃果「へ?」


雪穂「私の友達がね、お姉さんが働いてると良かったら紹介してくれるって」

雪穂「そこで働きなよ。今度は辞めちゃダメだからね!」


穂乃果「そ、そんな急に…!!なんで勝手に返事しちゃうの!」

雪穂「文句言わない!チャンスなんだよ、しっかりしてよお姉ちゃん!」

穂乃果「うぅ…」

3: 2016/11/13(日) 21:57:18.27 ID:znRlWZ5z.net
雪穂「はい。この紙に書いてある住所がそこのお店」ピラッ


穂乃果「……」


雪穂「最初は電話するんだからね、わかった?」


穂乃果「……」


雪穂「はぁ。じゃあね、出掛けてくる」ガラッ


バタン


穂乃果「なんで雪穂に決められなきゃいけないの…面倒くさい」

穂乃果「そもそもどういうお店かもわかんないのにさぁ」

穂乃果「…でも、一応調べてはみようかな」カタカタ

6: 2016/11/13(日) 21:58:40.24 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「あ。あった」


穂乃果「【Cafe μ's】…?」


穂乃果「これってあの道にある店だっけ」

穂乃果「にしても飲食店かぁ…」


穂乃果(やだな、飲食って)

穂乃果(ブラックってみんな言うし。休憩も無く働かされたりとか、残業で帰れないとか色々聞くもん)

穂乃果(だから穂乃果も今まで飲食は避けて来たぐらいなのに)

穂乃果「…やめよ。普通に接客がない仕事にしとこう」

穂乃果「時給も900円だし。飲食なのに安いよね、これ。集める気あるのかな」

7: 2016/11/13(日) 21:59:56.94 ID:znRlWZ5z.net
ゴロン

穂乃果「ふわぁ…眠い」

穂乃果「いま12時かぁ~。まだまだ長いなぁ」


穂乃果「……すぅ…むにゃむにゃ」


ガラッ

ほのママ「穂乃果!ダラダラしてないで店番でもしてちょうだい!」

穂乃果「…うるさいなぁ」


ほのママ「外で働かないならうちの手伝いくらいしなさい!もう、ずっとゴロゴロして!」

穂乃果「お母さんにはわかんないんだよ!私だって、働く気持ちはあるもん!」

ほのママ「そんなこと言って、この前の仕事だって結局すぐ辞めたんでしょ?」

10: 2016/11/13(日) 22:01:33.18 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「それは……あのバイトキツすぎるから。内容と給与があってないし、辛いし、」

ほのママ「いい加減にしなさい!何でもいいから1週間以内に新しい仕事見つけること、いいわね?」

穂乃果「うぇぇ!?そんなの無茶だよ…!」

ほのママ「じゃなかったら毎日ずっと、うちの店番してもらうからね」

穂乃果「むぐぐ……」


バタンッ


穂乃果「はぁ…なんで毎日毎日働かなきゃいけないんだろう」

穂乃果「誰からも何も言われないところに行けたらなぁ。日本は働き過ぎってテレビでも言ってたし」

穂乃果「にしても1週間以内に仕事見つけろって…しんどいよ」

12: 2016/11/13(日) 22:03:28.87 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(…とりあえず)


穂乃果「Cafe μ's 評判…っと」ッターン

穂乃果「ん~…、この口コミページがいいかな」


▽雰囲気が良い!★★★★☆
店内落ち着いていて過ごしやすかったです。
料理も美味しい!

▽店員さんが可愛い★★★★★
何度も通いたくなりました。

▽まぁまぁ★★★☆☆
この通りにはこういったお店が少ないので、ランチには最適です。


穂乃果「へぇ…評判いいなー。いや、でもサクラかも…」

穂乃果「………」

14: 2016/11/13(日) 22:04:37.87 ID:znRlWZ5z.net
ヒラッ

穂乃果「…ここ、面接とかあるのかな」

穂乃果(だって何回も落とされたことあるし…今までやってたのは履歴書もいらないってバイトが多かったから)


穂乃果「カフェか…」


穂乃果(電話、してみようかな)

穂乃果(ブラックだったらすぐ辞めればいいし、うん…)

穂乃果(いざとなったらバックれちゃえばいいよね。紹介なんて私には実質関係ないんだから)


穂乃果「電話番号は…っと」

穂乃果(あれ…でも今って、12時過ぎだよね)

穂乃果(この時間って飲食にはすごく忙しい時間帯なんじゃないかな?)

穂乃果(こんな時に電話したらきっと迷惑だよね…たぶん)

穂乃果(電話出なかったり、八つ当たりなんてされたらそれこそ行きたくなくなる)

穂乃果(もうちょっと後で電話しよう。うん、これは仕方ない)


穂乃果「いまはもう一眠り…」スゥ

15: 2016/11/13(日) 22:05:44.94 ID:znRlWZ5z.net
ーーーーー


穂乃果「ぅあ」パチ


穂乃果「んー…体がだるい…」

穂乃果「5時、かぁ」



穂乃果「はっ!!バイトに電話しなきゃっ」


穂乃果「あ、でも5時って…忙しくないかな、これ」

穂乃果「迷惑だよね…。やめた方がいいよね」

穂乃果「もう明日にしよう。明日するよ、明日。うん」

穂乃果「晩ごはんまだかな~♪」

16: 2016/11/13(日) 22:06:44.09 ID:znRlWZ5z.net
ーーーーー



穂乃果(最終確認…えっとぉ…)

穂乃果(電話番号押して、向こうが出たら…「すいません。アルバイトの件でお電話させて頂いたんですけど」って入ってから)

穂乃果(あとは自分の名前と、持ち物は向こうが言ってくれるよね)

穂乃果(最後は「ありがとうございました。失礼します」で、完璧なハズ)

穂乃果「よし…っ」


フルフルフル

穂乃果(て、手が震えちゃうよぉ!!)

穂乃果(うぅぅ…心臓が飛び出そうなくらいドキドキしてきた)

穂乃果(噛んだらどうしよう。電話出た人が怖そうな感じだったらどうしよう)

17: 2016/11/13(日) 22:07:28.24 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(ぅ、もう!!ヤケだ!)


prrrrrr…

prrrrrr…

穂乃果「…っ」ドキドキ


prrrrrr…


穂乃果(あれ…出ない?)


prrrrrr…

穂乃果(もしかして番号間違えた!?)


ピッ


『大変お待たせ致しましたっ、Cafe μ'sの絢瀬です』

18: 2016/11/13(日) 22:08:16.05 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「えっ、と…あの!」


『どのようなご用件でしょうか?』


穂乃果「ぅ……」

穂乃果(あんなに練習したのに…何からいえばいいんだっけ…!)


『…えぇと。お客様?』


穂乃果「ば、バイト!の電話を…」


『失礼ですが、お名前を教えていただけますか?』

穂乃果「高坂穂乃果です…」


『あ、高坂さんですね。紹介があると聞いてました』

『ちなみにそれ、私の妹なんですよ。ふふっ』


穂乃果「あ、あははは…(そうなんだ)」

20: 2016/11/13(日) 22:08:53.19 ID:znRlWZ5z.net
『でもごめんなさい。今店長は出払ってて…メモが無いか見てきますね』


穂乃果「はいっ!」


ターラーラーラー♪


穂乃果(出たのが女の人で良かった…。それにしても綺麗な声だったな)


『高坂さん?書き置きがあったのでお伝えしますね』

穂乃果「は、はい!」

『2日後の午後3時にうち来ることできますか?』

穂乃果「…大丈夫です!」

21: 2016/11/13(日) 22:09:50.10 ID:znRlWZ5z.net
『持ち物は履歴書と印鑑だけで大丈夫です。では2日後の15時、よろしくお願いしますね』

穂乃果「はい!!」


『では失礼します~』

穂乃果「あ…はいっ」


ピッ


穂乃果(失礼しますっていえば良かった)

穂乃果「履歴書書かないといけないんだよね。やっぱり」

穂乃果(紙どこだっけ…はぁ)

22: 2016/11/13(日) 22:11:03.61 ID:znRlWZ5z.net
~2日後.14時半~



穂乃果「ここ、で合ってるんだよね…」


穂乃果(なんか思ってたより大きい?うぅん…そんなことないか)


穂乃果「…ちょっと早く来すぎたかな」キョロキョロ

穂乃果(いや、ネットには早く来る奴wwって書いてあったし…もうちょっと待とう)


ウロウロ


ウロウロ


穂乃果(なんかここら辺ずっといると不審者みたい)

23: 2016/11/13(日) 22:11:48.76 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(あと10分で3時、そろそろ…いいよね?)


穂乃果「…あれ?」


穂乃果(これ、普通に表の扉から入っていいの?)

穂乃果(なんか従業員の裏口的な…じゃないとお客さんだと思われるよね)

穂乃果(でも勝手に裏口から入るのは…そもそもどこかわかんないし)


穂乃果「…」フゥ


穂乃果(がんばれ、自分。ファイトだよ…!)ガチャ

24: 2016/11/13(日) 22:13:10.37 ID:znRlWZ5z.net
カランカラン♪


「いらっしゃいませ~♡」


穂乃果(うわーー。可愛い声だなぁ…見た目もだけど)


ことり「何名様ですかぁ?」ニコ


穂乃果「えっと…!アルバイト、の件で」


ことり「あ、高坂さんですねっ。こちらへどうぞ♪」

穂乃果「ありがとうございます…」


スタスタ

穂乃果(へぇ、飲食店の裏ってこんな感じなんだ…)

ことり「てんちょー?」コンコン

ことり「高坂さんいらっしゃいました~♪」

25: 2016/11/13(日) 22:14:51.68 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「……」ドキドキ


ことり「どうぞ?」ニコ

穂乃果「は、はい」


ガチャッ


にこ「あー、そこ座って。適当に」


穂乃果「…はい」ストン

にこ「私はオーナー兼店長の矢澤にこよ」

にこ「えーと…高坂、穂乃果さんよね?まずは履歴書見せてくれる?」

穂乃果「はい。これ、です」

にこ「ありがと~」


穂乃果(えっと、この子高校生バイトじゃないの…?ほんとに店長?)

穂乃果(にしても、机に肘ついてだるそうだなぁ…)

26: 2016/11/13(日) 22:15:47.02 ID:znRlWZ5z.net
にこ「頻繁に仕事変えてるみたいだけど、何かあるの?」

穂乃果「えっと…その…。自分には合わないなって、思ったりとか」

穂乃果「体調不良とか…いろいろあって」

にこ「ふぅん…」チラ

にこ「うちもまぁ忙しいけど大丈夫?」

穂乃果「え゛っ」

穂乃果(そりゃそうだよね…けどいきなり面接でこんなこと言うとは)

穂乃果(前のとこは楽だって言われて騙されたし)

穂乃果(たぶん、試されてるんだろうな…)


穂乃果「はい!自分なりに精一杯がんばります!」

27: 2016/11/13(日) 22:16:50.85 ID:znRlWZ5z.net
にこ「あい。ちなみに…どれぐらい入れる?うち、一応シフト制なんだけど個人経営だからあんまり自由にできないのよね」

穂乃果「私フリーターなので…固定でも大丈夫です」

にこ「そっか。あとは、んー。志望動機は?」

穂乃果「えっ」

にこ「え?」

穂乃果(志望、動機…?やばい。考えてなかった)ダラダラ

穂乃果「おおお金をっ、稼ぐためです!」

にこ「…うん。まぁそうよね」

穂乃果(はっ!!不味い…!!つい口走っちゃった)

穂乃果(接客業がやりたくてとか適当に言っとくべきだった…うぅ)

29: 2016/11/13(日) 22:17:27.44 ID:znRlWZ5z.net
にこ「高坂さん」


穂乃果「っ、はい!?」


にこ「えっと。悪いんだけど」


穂乃果(あぁなんか…また落ちるんだろうなぁ)

穂乃果(このあと履歴書返されて…かかってくるはずもない電話を待つ日々に戻るんだ)

穂乃果(もう働きたくないよ…)


にこ「いつから入れるの?」

穂乃果「え…?明日、からでも…大丈夫ですけど」

にこ「ほんと!じゃあ明日の朝10時からきてくれる?」

穂乃果「はい?」

31: 2016/11/13(日) 22:18:20.07 ID:znRlWZ5z.net
にこ「あ、無理だった?」

穂乃果「いや…もう採用なんですか?」

にこ「うん」

穂乃果「………」

にこ「営業時間に教育するの難しいから、ちょっと早くきてもらいたいんだけど」

穂乃果「大丈夫ですっ!」グイッ

にこ「え、あぁ…うん…」ビクッ


にこ「この紙に電話番号とか住所とかいろいろ書いといてね」

穂乃果「はいっ」


にこ「持ち物は何もいらないから。制服も渡すし。その時初出勤って形になるけど」

穂乃果「ありがとうございました…!」ペコッ

32: 2016/11/13(日) 22:19:27.09 ID:znRlWZ5z.net
にこ「はーい。また明日」


ガチャッ


「うわぁぁぁ!!!」ドサッッ


穂乃果「え!?な、なに…?」


凛「いてて…かよちんどいてぇ」

花陽「わっ///ごめんね凛ちゃんっ!」


にこ「聞き耳なんてして、相当暇みたいね?」

凛「ち、違うにゃ!別にサボってないもん!」

花陽「にこちゃんごめんね。今お客さんいないから…ちょっとだけ見に行こうってなって」


穂乃果(着てる服からしてここの従業員さん…だよね)

35: 2016/11/13(日) 22:20:23.50 ID:znRlWZ5z.net
にこ「明日から入る高坂さんよ、仲良くしてあげて」

凛「わー!名前はなんていうの?」

穂乃果「穂乃果、ってい」

凛「穂乃果ちゃん!凛っていうんだ、よろしくね~♪」

花陽「小泉花陽です。穂乃果ちゃん、よろしくお願いしますね」ニコ


穂乃果「あ、よろしく…お願いします…」ニコ


にこ「基本的に凛はホール、花陽はキッチン担当よ。どっちかのフォローに回る時もあるけどね」

にこ「あ、そうだ。次も表口から来てくれていいから」

穂乃果「はい…」

36: 2016/11/13(日) 22:21:15.33 ID:znRlWZ5z.net
ーーーーー


トボトボ


穂乃果(…以外とあっさりだったな)


穂乃果(でもみんないい人そうで良かった)

穂乃果(でも帰ったらバイト初日、辺りでくぐってみよっと)



~家~


雪穂「おねーちゃんおかえりー」

穂乃果「ただいま」

雪穂「ねぇ、バイトどうだった?受かったの?」

穂乃果「あ…うん。一応」

雪穂「おぉ!すごいじゃん。やったね!」

37: 2016/11/13(日) 22:22:22.48 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「ありがとう…」

雪穂「そいえばあそこで働いてるの、個性的な人多いよね~。みんな可愛いし」

雪穂「店長の趣味なのかな?あはは」

穂乃果「確かに可愛い人ばっかりだったけど…趣味はどうだろう」

雪穂「それに女の子しかいないでしょ?」

穂乃果「あー…そうなの?」

雪穂「たぶんね。私が行った時はいつもそうだし」

雪穂「でも女の子だけの職場ってさー…なんか。怖いよね。色々ありそうで」

穂乃果「……初日行く前から驚かさないでよ」

雪穂「ごめん!!冗談だよ~、きっとみんないい人だってば!」ニコ

38: 2016/11/13(日) 22:23:47.61 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(飲食店、バイト…検索)カチカチ


0658名無しのバイト
ぶっちゃけ続くかどうかは環境
人間関係うまくいかないと辛いよね

0659名無しのバイト
むかつく先輩がいたら辞めた方がいいよ
飲食とかだとそういうの特に多いし

0660名無しのバイト
教育係になった人と馴染めなくて無事氏亡
なんであんな怖いんだ。目が冷たい

0661名無しのバイト
バイト初日、品定めするように多くの人から見られて早くもバックれたくなる

0662名無しのバイト
女が多い職場はやばい。色々と

0663名無しのバイト
最初はみんな優しいよ。二週間くらいしたら豹変するけど



穂乃果(もう行きたくなくなってきた…)カチカチ

39: 2016/11/13(日) 22:25:37.96 ID:znRlWZ5z.net
~9時45分~


穂乃果(よし、今日はいいぐらいに着けたかな)

穂乃果(とりあえず普通に話しておけばいいよね。緊張するけど)

穂乃果(私人見知りだしな…。でも店長がいるからまだ…)


カランカラン♪


穂乃果「おはようございまー…?」

穂乃果(誰もいないじゃん)


穂乃果「そうだ、今のうちに色々見て回ろうかな。教えられた時覚えやすいし」

40: 2016/11/13(日) 22:26:31.63 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(これがバックへと続く扉で…。あ、少し行ったとこにホワイトボードがある)

穂乃果(んーと…磁石のプレートが貼ってある。従業員の人のかな)

穂乃果(出勤中☆お休みチュン☆……なるほど、タイムカードはないみたい)

穂乃果(キッチンは以外と散らばってるんだなぁ。そうだよね、お客さんから見えないし)

穂乃果(この奥が前に行ったオーナー室?だよね。きっと)

穂乃果(そしてこっちは…)


「っ、誰ですか!?」


穂乃果「あばばばばば…!!」

41: 2016/11/13(日) 22:28:42.88 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「ごめんなさい!ごめんなさい!!誰もいないと思って…!」

海未「あぁ…新人の方ですか。びっくりしました」ハァ

穂乃果(っていうか鍵が空いてた時点で誰かいるって気づくべきだったよね…。うぅ)

海未「休憩室に制服がサイズごとに用意して置いてあります。見本の写真もありますから、着替えてきて下さい」

穂乃果「はいっ…!!」


~休憩室~


穂乃果(…あ、机の上に置いてあるのがそれっぽい)

穂乃果(色々散らばっててわかりずらいよ…。私物っぽいのばっかりだし)

穂乃果(個人営業店ってこんな感じなのかな)

42: 2016/11/13(日) 22:29:32.43 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「あ、でも制服可愛い…♪」

穂乃果(ちょっとスカートが短い気がするけど)

穂乃果「よし、着替え終わったし一応店長のとこに挨拶にいこう」


タッタッ

穂乃果「おはようございまー…す」コンコン

ガチャッ

穂乃果「あれ?空いた」

穂乃果(待って…店長は??まさか)

穂乃果(明日来てって言ったのに店長いないとかある!?どーしよう!)

穂乃果(唯一の知ってる人が…うぅ)

43: 2016/11/13(日) 22:31:24.43 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(はぁ…ホールの方へいこう)


ガチャッ


穂乃果(あれ?あのいかにも怖そうな人いないなぁ…どこ行っちゃったんだろう)

ガタッ

穂乃果「っい!?」クルッ

真姫「ゥヴェ…」

穂乃果(うわ…また新しい子だ)ドキドキ

真姫「……」ドキドキ



海未「あぁ真姫、おはようございます」

真姫「海未…!おはよう」

穂乃果「海未…?真姫…?」

44: 2016/11/13(日) 22:32:41.85 ID:znRlWZ5z.net
海未「まだ自己紹介していませんでしたね。私は園田海未、こちらは西木野真姫です」

真姫「よろしく…お願い、します」ボソ

穂乃果「えぇと、高坂穂乃果です…!園田さ」

海未「あぁ、違います。名前で呼び合うのがここのルールなんです」

穂乃果「名前?」

海未「にこが…いや、店長が決めたルールで。名字だとよそよそしいから全員名前で呼び合うようにと」

穂乃果(えーーー)

海未「年下も年上も関係なく仲良く、というのが目標らしいです」


穂乃果(こ、これがネットでみた…)ブルブル

穂乃果(良好な人間関係の強要だーッッッ!!!)

46: 2016/11/13(日) 22:35:33.19 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果(一見素晴らしい事のように思えるけど、それは違う!!私みたいな人にとっては地獄のような…)

穂乃果(そもそも全員と接して仲良くしろってしんどいよ…休憩時間だって1人でいたい派なのに)

海未「真姫は私達の中では一番遅く入りましたから、穂乃果にとっては一番近い先輩ですね」

真姫「…」ジー

海未「ただ、少し人見知りが激しいんです…仲良くしてあげてください」ニコ


穂乃果(海未ちゃんの後ろから顔を覗かせてこっちを見てる…)

穂乃果(最悪だよ、一番近い先輩は色々気兼ねなく聞けたりする人が良かったのに!)

穂乃果(…うまくやっていける自信なくなってきた)

47: 2016/11/13(日) 22:36:45.04 ID:znRlWZ5z.net
海未「では私は、裏ですることがありますので…もう少しだけ待っていて下さい。真姫、お願いしますね?」

真姫「うん…」


バタンッ

穂乃果「………」

真姫「………」


シーン


穂乃果(いや…は?)

穂乃果(なにこれ…なにこの空気)

真姫「あ、あの…」

穂乃果「っ、はい!?」

真姫「ヴェェ」ビク


真姫「掃除、を…一緒に」

48: 2016/11/13(日) 22:38:45.66 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「あ、掃除…ですか」


カランカラン♪


真姫「あっ…」パァァ

希「おはよーーう♪」

穂乃果(ま、また増えたーーーー)


穂乃果「おおおはようございますっ!」 ペコ

希「あー!期待の新人くん!!噂は聞いとるで!!」

穂乃果「!?」

希「満点笑顔で接客、ストイックにオーダーを取りに行」

穂乃果「いやいやいやいや!!…あのっ」

穂乃果(どういう風に伝わってるの、これ…)

希「まぁ冗談やん」

穂乃果(は?)

49: 2016/11/13(日) 22:41:08.90 ID:znRlWZ5z.net
希「うふふー♪うちは東條希!基本はキッチンの方入っとるよ」

希「穂乃果ちゃんはホールやと思うから…そこにいる真姫ちゃんとか、海未ちゃんとも同じやね」

穂乃果「あ、おふたりともホールだったんですね…」

希「今日は海未ちゃんに色々教えてもらうんやろ?」

穂乃果「え??」

希「頑張ってな!海未ちゃんめっちゃ厳しいから!怒ったら怖いし!」

穂乃果「」


希「あー…固まってもうた。ごめん、言いすぎたね」ニコ

真姫「希。昨日エリーが言ってたもの裏にあるわ」

希「あ、おっけーい」


穂乃果(もう帰りたい帰りたい帰りたい)

51: 2016/11/13(日) 22:42:47.15 ID:znRlWZ5z.net
ーー店に足を踏み入れて30分。

私は既に、表扉の向こうにある澄み切った青空を遠い目で眺めていた。


あっちの世界に戻りたい。
そこなら、自由になれる。


穂乃果(あっははは…最高だよ)

穂乃果(もう既に3つも要素があるなんて、ね)

穂乃果(怖い教育係、壁を作り絶対馴染めそうにない先輩、テンション高く絡んでくる先輩)

穂乃果(加えて身内感が半端じゃない。さすが個人営業)

穂乃果(ブラック臭が漂うバックに休憩室には私物の山。これはあの場所で長い時間過ごしていることを示しているつまり!!)

穂乃果(…初日バックれ、か)


穂乃果(そして初日でバックれたったwwwとでもスレ立てよう)

53: 2016/11/13(日) 22:44:33.62 ID:znRlWZ5z.net
海未「ふぅ…お待たせしました」

穂乃果「あ、いえ!」


海未「それでは改めて教育させていただきますね。よろしくお願いします」

穂乃果「よろしくお願いします…」


海未「まずは挨拶から。前の職場でもやられていたと思うので、練習する必要はあまりなさそうですが…」

海未「お客様をお出迎えする時、お見送りする時。この場合は約30度の角度でお辞儀をします」

穂乃果(かかかか角度ぉ!?)

55: 2016/11/13(日) 22:46:16.61 ID:znRlWZ5z.net
海未「そのとき手は軽く前で合わせること。頭は下げすぎないようにしてください、逆に失礼ですから」


穂乃果(いやいやお辞儀なんてどれも同じだよ…。そんな変わんないのに)


海未「はい。1度やってみていただけますか?いらっしゃいませ、も合わせて」


穂乃果(面倒だなぁ…)


穂乃果「いらっしゃいませー」ペコ


海未「やり直し」

穂乃果「えっ!?」

海未「言葉と共にお辞儀をするのは間違っています。いらっしゃいませ、と言い切ってから頭を下げるのですよ」

穂乃果(んもぅ!誰もそんなとこまで見てないよっ!!)

57: 2016/11/13(日) 22:49:05.98 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「いらっしゃいませ…」ペコ


海未「…何ですかその不格好なお辞儀は」

海未「首を下げるのではなく、体全体を使うんです。背筋が真っ直ぐになるように」


穂乃果(うぐぐぐ…耐えろ…)

穂乃果「いらっしゃいませー…」ペコ


海未「はぁ…。失礼しますね」グイッ

穂乃果「わっ!?///」


海未「こうです。このくらい曲げれば美しく見えますよ。…あと踵は揃えて、足先を少し開いて」

穂乃果「えっと…こう?」


海未「はい。その姿勢を忘れないでください」

海未「あとはお客様に謝罪をする時は45度、店内ですれ違った時などは会釈として15度です」

穂乃果「」

58: 2016/11/13(日) 22:51:09.50 ID:znRlWZ5z.net
海未「次はオーダーの取り方を教えます。と、いってもうちはハンディは使っていませんので」

穂乃果「ハンディ?」

海未「機械のことですよ。レストラン等に行った時、店員の方がメニューを機械で承っているのを見ませんか?」

穂乃果「あ、確かに」

海未「ですから、基本的にはお客様に呼ばれたらそのテーブルに行って注文を伺います。そして全ての料理を運び終わったら伝票を伏せて置いて下さい」

穂乃果「…はい」

穂乃果(今どきボタン式じゃないって大丈夫かな)


海未「……費用が嵩むので仕方がないんですよ」

穂乃果「え!?あ、あはは…」

59: 2016/11/13(日) 22:53:06.53 ID:znRlWZ5z.net
海未「次はレジの使い方です。伝票に書いてある金額を打ち込んで小計、お客様から代金をいただいたらまた打ち込みで合計を」ピッ


穂乃果「……」ジー


海未「…あの」


穂乃果「あ、はい?」


海未「そうやって見ているだけで、わかっているのですか?」

穂乃果「へ?」


海未「…メモをとるとか、あるでしょう?覚える気あります?」


穂乃果「わ、わかってますよ!」

60: 2016/11/13(日) 22:56:33.81 ID:znRlWZ5z.net
海未「…ならいいですけど」



穂乃果(なにさ、馬鹿にするような言い方して…)

穂乃果(それぐらいわかるってば!)


海未「そして、お金をいただく時もお渡しする時も両手で行って下さい」

海未「領収書が必要なお客様は…」


穂乃果(あーあ…辛い)

穂乃果(希ちゃんに教えて欲しかったな…この人怖いし、教え方ってものがなってないよ)

穂乃果(別にメモ取らなくても覚えられるし)

61: 2016/11/13(日) 22:59:15.08 ID:znRlWZ5z.net
ーーーーー



希「はーい、じゃあミーティングはじめよかぁ」

穂乃果「ミーティング?」

ヒデコ「今日1日にやることや業務連絡をするのよ」

穂乃果「は、はぁ…」

ヒデコ「あっと。言い忘れちゃったわね」

ヒデコ「私はヒデコ!いつもはキッチンにいるわ、よろしくね」

穂乃果「お願いします…」

穂乃果(この人は何か優しそうだな…)

62: 2016/11/13(日) 23:02:57.52 ID:znRlWZ5z.net
希「ホールは海未ちゃん、真姫ちゃん、穂乃果ちゃん。キッチンはうち、ヒデコちゃん」

希「休憩は2時から穂乃果ちゃんと真姫ちゃん。3時から海未ちゃん、うち。3時半からヒデコちゃんね」

希「あと、今日は12時半から2つ予約入ってるから。プレート置いてあるところはお客さん通さんといてな~」

希「そして、3時からにこっちとえりちがきまーす。5時からは花陽ちゃん、ことりちゃん、フミコちゃん、ミカちゃん、凛ちゃんが入るから」


ヒデコ「あ、今日は全員出勤日なのね」

希「うん。近くイベントもあるし、まぁこの月で一番忙しくなりそうやからなぁ」

海未「…頑張りましょう」


穂乃果(え、今日って一番忙しいの…?)

穂乃果(それなのに今日新人をシフトにぶち込む店長ってなんなの??ぅん?)

63: 2016/11/13(日) 23:05:35.12 ID:znRlWZ5z.net
真姫「じゃあ掃除の続き、してもいい?」


希「ええよ。ありがとうなぁ」


穂乃果(あぁもうやだ…)


海未「穂乃果」

穂乃果(はぁ、鬱ってきた…)


海未「…穂乃果」


穂乃果「は、はい!?」

海未「次は料理の運び方をお教えします」


穂乃果「はいい…」クスン

64: 2016/11/13(日) 23:07:08.18 ID:znRlWZ5z.net
ーーーーー


12時.カフェμ's開店



穂乃果(お昼から開店かー。いまどきのカフェだとそんな感じ?)

穂乃果(って、営業時間店頭に書いてある。12時から23時…結構遅くまでやってるんだ)

穂乃果(大人の層がターゲットなのかな)


カランカラン♪


穂乃果「あ!い、いらっしゃっせー!!」ペコッ


「2人」


穂乃果「ふたっ、お2人様ですねっっ!!!」

穂乃果「こちりゃ…こちらへどうぞぉっ///」

穂乃果(うぅ、噛んじゃったよ//)

65: 2016/11/13(日) 23:08:50.68 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「こちらメニューですぅ!ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さいっ!」ブンッ

「は、はーい」


穂乃果(…で、いいんだよね?)スッ


穂乃果(とりあえず呼ばれるまで入り口付近で待機しよう)


グイッ

穂乃果「ひぃっ!?」


海未「あの、ここはラーメン屋か何かですか?」


穂乃果(でででででたー!!!)

66: 2016/11/13(日) 23:12:46.88 ID:znRlWZ5z.net
海未「なぜあなたは動くたびに騒がしいのでしょう…声もそんなに張れとは言ってません。静かに接客して下さいと言いましたよね」


穂乃果「ごめ…ごめんなさい…」


海未「あと、あのままお客様は放置ですか?」

穂乃果「え?だってメニュー渡したし」


真姫「…私が持っていくわ」スタスタ

穂乃果「あっ、お水か…」

海未「ボソボソと話すよりかはマシですが…。次からは気を付けて下さいね。以上です」

穂乃果「はぁい…」


「すいませーん」


海未「はい。只今参ります」ニコ

穂乃果(うわぁ…裏表すごいなぁ…)

67: 2016/11/13(日) 23:18:23.97 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「ふー…疲れた…」

穂乃果(まだ案内とお水提供しかやってないけどね)

穂乃果(人前で話すの緊張するなぁ…。すっごく視線感じるし)

客「あのー」


穂乃果「は、はい?」ビク

客「新入りさんですか?」

穂乃果「え?そうです!」

客「あっやっぱりそうですよね。名前は?」

穂乃果「高坂…穂乃果です、けど」

客「穂乃果ちゃんかぁ♪頑張ってくださいね!」

穂乃果「はい…?」


穂乃果(何だったんだろう)


真姫「あの、穂乃果…。休憩していいって」

穂乃果「あ!はい!」ズイッ

真姫「ヴェェ…」ビク

70: 2016/11/13(日) 23:23:20.74 ID:znRlWZ5z.net
~休憩室~


穂乃果「はー…しんど…」

真姫「……」


ガラッ


絵里「おはよう!今日もいい天気ね♪」

にこ「おはよ~…あー。昨日飲み過ぎた…」

穂乃果(!!)


絵里「あっ!!」ガシッ

穂乃果「ひっ」

絵里「穂乃果さんよね?ずっと会うの楽しみにしてたのよ!!」ブンブン

穂乃果「あ、よ、よろし…」

にこ「ちょっと絵里、穂乃果が引いてんでしょーが」

絵里「え?あぁごめんなさい…」

71: 2016/11/13(日) 23:30:22.06 ID:znRlWZ5z.net
絵里「新しい仲間が増えるのが嬉しくて…」

にこ「絵里はこれでも一応副店長なのよ。あと、ホールチーフ。一応」

絵里「一応ってなによ!」

にこ「もう会ってるわよね?希も副店長で、あいつはキッチンチーフなのよ。一応」

穂乃果「あぁ…確かに合ってる」

にこ「あ、真姫ちゃん昨日は大変だった?悪いわね…任せちゃって」

真姫「ううん…大丈夫。にこちゃんが忙しいから仕方ないわ」

絵里「昨日私もいたんだけど!?」

にこ「あーはいはいありがとう」

絵里「むぅ…」

穂乃果(なんか…真姫ちゃんの顔が一瞬にして明るくなった)

73: 2016/11/13(日) 23:35:04.19 ID:znRlWZ5z.net
にこ「そいえばお腹空いたでしょ?ご飯何がいい?」

穂乃果「え?」

真姫「私はパスタだったら何でもいいわ」

穂乃果「あの、ご飯って…」

にこ「言ってなかったっけ?まぁ豪華なものは出せないけど…賄いよ。せっかくうちで働いてくれてるんだし、それぐらいね」

穂乃果「じ、じゃあ…オムライスで」

絵里「おっ。にこが一番得意な料理ね!」

にこ「任せときなさい。とびっきりの作ってあげるわ!」

にこ「…勿論、真姫ちゃんのもね!」

真姫「///」

にこ「じゃ、ちょっと待っててー」ガラッ

74: 2016/11/13(日) 23:41:22.38 ID:znRlWZ5z.net
絵里「ん~…そんなに混んでないし、私もお昼食べてから入ろうかな」

真姫「今日ね、海未が結構早くから来てるの」

絵里「あ、そうなの。海未は本当に真面目ね…助かるわ。早めに上がって貰いましょ」

穂乃果「あの~…」

絵里「ん?」

穂乃果「ここって個人営業ですよね。だから、絵里…ちゃんとか、希ちゃんとかはどういう関係なのかなーって」

絵里「あぁ…ここはね、最近出来たお店なのよ。にこがお店を始めるって聞いて、私達は仕事辞めて手伝うことにしたの」

穂乃果「えぇぇ!?」

絵里「そんなに驚かなくても…。私と希は普通の会社に勤めてたけど、正直飽き飽きしてて。だから…いっそ、賭けに出たってこと」

穂乃果「ほぇー…」

75: 2016/11/13(日) 23:48:16.22 ID:znRlWZ5z.net
穂乃果「じ、じゃあ真姫ちゃんは…?」

真姫「…私はバイトよ。忙しいけど、大学の合間をぬって……」

絵里「凛と花陽もそうね。あと、海未とことりもアルバイトだけど、副職って感じなのよ」

穂乃果「副職??他に仕事があるってこと?」

絵里「海未は家業、ことりは本来デザイナーだから。二人とも凄いのよ?」

穂乃果(何でここで働いてるんだろう)


真姫「…半分はにこちゃんの人望ね」

絵里「ここに集まってる子に、あんまり大きな理由はないのよ。居心地がいいってだけ。それが私達だから」

穂乃果(……)

76: 2016/11/13(日) 23:54:00.32 ID:znRlWZ5z.net
にこ「はい、お待ちー。オムライスとペペロンチーノ!」ガラッ

絵里「あれ、私のは??」

にこ「え?」

絵里「にこぉ…」

にこ「っもう!わかってるわよ。でも希に作ってもらう方が良いでしょ?キッチンにいるわよ」

絵里「あ、そうなの?希に会ってくる!」ガタッ

にこ「露骨に態度変えてくるわね…」


真姫「……」モグモグ

穂乃果「い、いただきまー…す」パクッ

にこ「……美味しい?」

穂乃果「……」ウルウル

にこ「え、は?」

穂乃果「美味し…い…」ズビッ

にこ「なんか、美味しいって泣かれると反応に困るわね…」

109: 2016/11/14(月) 19:56:37.40 ID:A86l5lsv.net
ピビピ…ピビピ


穂乃果「うぅん……うるさい」


ピビピ…


穂乃果「なんで目覚ましなんか…」

ガラッ

雪穂「お姉ちゃん!バイト行かないの!?」

穂乃果「うわぁぁぁぁぁぁ!」ガバッ


雪穂「もう…しっかりしてよ。私も仕事あるんだからさぁ」

穂乃果「遅れる遅れるーっ!」ドタドタ

111: 2016/11/14(月) 19:58:15.96 ID:A86l5lsv.net
ーーーーー



ガチャッ

穂乃果「おはようございまー…す」


ことり「あっ♡おはよう~♪」

穂乃果「え、えっと…」

ことり「南ことりです♪穂乃果ちゃん、よろしくねっ」

穂乃果「ことりちゃん…、よろしくお願いし」

ことり「ううん♪ここでは敬語なんて使わなくていいよ?」

穂乃果「いや、でも」

ことり「早く馴染みたいならむしろそうするべきだって…ことりは思うなぁ♡」

112: 2016/11/14(月) 20:01:19.98 ID:A86l5lsv.net
穂乃果(そういうものなの…??)

ことり「海未ちゃんとは上手くいってる?」ニコ

穂乃果「あー…うん…一応」

ことり「ふふっ。海未ちゃんは厳しいから穂乃果ちゃんとは少し合わないかもね」

穂乃果「…ことりちゃんは、海未ちゃんと仲良いの?」

ことり「うん。私が此処で働いてる時ね、海未ちゃんが来たの。それが初めての出会いだったかな♡」

穂乃果「へー…ことりちゃんの方が早いんだ…」

ことり「私はアルバイトの中なら最古参だよ♡絵里ちゃんと面識があったから、お店の内装や制服を任されてたの。それで…作ってるうちに、ここでは働いてみたいって♪」


穂乃果(“働いてみたい”とか一生言えないよ…。私とは正反対だな)

113: 2016/11/14(月) 20:05:39.30 ID:A86l5lsv.net
ことり「……海未ちゃんがうちで働くきっかけ、知りたい?♡」


穂乃果(これって…海未ちゃんの事を知れるチャンス?いや、少しでも弱味を探りたいって意味なんだけどっ)

穂乃果「うん!」

ことり「教えなーい♪」

穂乃果(…は?)

ことり「海未ちゃんに直接聞いたらいいと思うよ♪会話のきっかけにもなるし!」

穂乃果「………」

ことり「穂乃果ちゃん可愛いのにそんな顔もったいないよ~?」

114: 2016/11/14(月) 20:07:56.02 ID:A86l5lsv.net
ーーーーー



「すいませーん」

穂乃果「は、はい!ご注文は…」


「パンプキンスープと、ハンバーグプレート。あとコーヒーを。んで…カルボナーラにアンチョビキャベツを」

穂乃果「ぅんと…パンプ」

「あ、やっぱりナポリタンで。玉ねぎ抜いてね。そうそう、シーザーサラダも。取り皿は3つで。お子様ランチのBセット…いや、Cセット。以上!」

穂乃果「えっと……あ、あの…」

「あー!忘れてたわ。バニラアイスとチョコアイス追加」

穂乃果「うぅぅ……」

穂乃果(なんだっけ、カルボナーラとナポリタン??いや、ナポリタンに変えるって言ってたから…ハンバーグを…)

穂乃果(うわぁぁん!なんでこんなに早く言うの!?酷いよ…!)

115: 2016/11/14(月) 20:13:47.34 ID:A86l5lsv.net
「あの、まだ?」

穂乃果「すみません…!え、えっとぉ…カルボナーラを1つで…?」

「違うよ。聞いてなかった?ナポリタンって言ったよね」

穂乃果「へっ!?す、すいません…!!」

穂乃果(ふぇぇ……)


タッ

凛「お客様、いらっしゃいませ~♪」

穂乃果「え?」

凛「コーヒーはアイスかホット、どちらになさいますか?」

「んー。ホットにしようかな」

116: 2016/11/14(月) 20:15:18.05 ID:A86l5lsv.net
凛「ホットコーヒーですねっ!お子様ランチCセットのドリンクがオレンジジュース、ウーロン茶、ミルク、リンゴジュースがございますがいかがなさいますか?」

「何がいい?……んじゃ、ミルクで」

凛「ミルクですね♪バニラアイスとチョコアイスは食後にお召し上がりですか?」

「いや、チョコアイスだけ先に持ってきて貰おうかな」

凛「かしこまりました!」


穂乃果(……すごい…)


凛「ご注文を確認させていただきますーっ!パンプキンスープを1つ…」


穂乃果(この子、私より歳下だよね……)

117: 2016/11/14(月) 20:16:37.66 ID:A86l5lsv.net
穂乃果(何処から聞いてたのかわからないけど、詰まること無くスラスラ言えてる)

穂乃果(あぁ…そうだ。アイスとホットがある飲み物は聞かなきゃいけないんだ。お子様ランチのドリンクも)

穂乃果(注文も、イチイチ口に出して自然にお客さんに待ってもらうようにする。わからないことがあったらメモを取ってまとめて最後に聞く…)

穂乃果(……全部、海未ちゃんが言ってたことだ…)


凛「失礼いたします♪」ペコ

穂乃果「!!し、失礼しますっ」ペコッ

118: 2016/11/14(月) 20:20:26.72 ID:A86l5lsv.net
スタスタ


凛「あはは、大変だったね!」

穂乃果「ごめんなさい…迷惑掛けちゃって、」

凛「気にすることないにゃ?穂乃果ちゃん、まだ入ったばっかりだもん!」

穂乃果「でも…」

凛「次から出来るようにすればいいんだよ!」

穂乃果「うん……」


凛「かよちーん、注文入ったよ~!」

花陽「はぁい♪」


穂乃果(次から、か…。)

穂乃果(出来る気しないよ…)

119: 2016/11/14(月) 20:21:26.83 ID:A86l5lsv.net
「すいませーん!!」


穂乃果「は、はい!!ただ今っ!」

「これ会計して。あと、こっちの伝票も一括で」

穂乃果「はい!」


穂乃果(レジは何回も練習したし、自信あるもんね…)ポチポチ


穂乃果「お会計一万二千円になります!」

「はい。一万五千円ね」

穂乃果「えっと…いち、に、さん。三千円のお返しです!」スッ


「ありがとー」

穂乃果(ふぅ。上手くいった)

120: 2016/11/14(月) 20:22:14.16 ID:A86l5lsv.net
穂乃果「またのお越しをお待ちして…」

「あ、そうだ。領収書ください」

穂乃果「え?」

「領収書」

穂乃果「は、はい……」


穂乃果(領収書…ってあれだよね。後でお金請求する時にいるやつ)

穂乃果(ここのボタン押して…)ピッ


ジー


穂乃果(これのはず)

穂乃果「こちら領収書です!」

「は?」

穂乃果「へ?」

121: 2016/11/14(月) 20:26:14.31 ID:A86l5lsv.net
「あのさぁ、印鑑は?」

穂乃果「あっ…すみません…」

穂乃果(そうだった…そんなこと、海未ちゃんが言ってたような)

穂乃果(ここにある矢澤って印鑑を押せば良いんだよね。あと…)


穂乃果「……お品書きはどうされますか?」

「……ふっ…」


穂乃果(あれ…また間違えたのかな……)

「いいよ。こっちで書くから」

穂乃果「あ、あの…でも」

「???」

122: 2016/11/14(月) 20:28:59.72 ID:A86l5lsv.net
穂乃果「領収書はこっちで書かないといけないので」

穂乃果(…って、テレビか何かで言ってたし)


「ッチ……いいから領収書貸せよ!」


穂乃果「で、でも!」


ことり「お客様~♡領収書ですかぁ?」

「あぁそう!領収書だよ。この子全然わかってないからお姉ちゃん変わって!」

ことり「大変失礼致しました…、但し書きは飲食代、宛名はどのようになさいますか?」

「後で書くからいい」

ことり「かしこまりました。こちら、領収書です」

「はいはい」


ことり「またのお越しをお待ちしております♪」

123: 2016/11/14(月) 20:29:39.19 ID:A86l5lsv.net
ガチャッ


穂乃果「ことりちゃん、あれで良かったの…?」

ことり「本当はダメなんだけど…でも、お客様がああ言ったらそのままお渡しして?海未ちゃんに言われなかった?」

穂乃果「…え?」


穂乃果(うぅん…言ってたような、なかったような)

ことり「私、忙しいから…!じゃあ、またねっ」


穂乃果「あ…行っちゃった」

穂乃果(……迷惑かけてばっかりだな)

124: 2016/11/14(月) 20:31:00.80 ID:A86l5lsv.net
~家~


穂乃果「はぁ…」

雪穂「おねーちゃん!今日もお疲れ様!」

穂乃果「雪穂…うん。お疲れ様」

雪穂「どうしたの?暗いじゃん」

穂乃果「別に……働きたくないなって、思っただけで」

雪穂「んもう!だめだってば!お店合わないの?」

穂乃果「多分…なんか、みんな輝いてるんだよね。私とは違って目標もあるし、仲もいいし。なにやっても上手くいかないんじゃ辞めたくなるよ…」

雪穂「はぁ…言っとくけど、今やめたら後悔するからね!」

バタンッ

125: 2016/11/14(月) 20:32:09.41 ID:A86l5lsv.net
穂乃果「……ネット見よう」カタカタカタ


【バイト初心者の集い 252日目】


0089名無しのバイト
もう無理だ…自信ない

0090名無しのバイト
ぶっちゃけ言うと今すぐ辞めたい。
でも、勇気がない。

0091名無しのバイト
高校生のクズと学生のバイトが半端なくうざい。ガキのくせに影でコソコソ悪口言ってるの知ってるんだからな。
教育係も教え方下手くそだし
何も言わずにバックれてやるわ

0092
>>91
耐えろよ。ブランクあるんだから当たり前。
とりあえず続ける癖つけないと何やっても駄目になるぞ

0093
飲食は脳筋の体育会系しかいないから辞めて正解だったな。
ブラックで働いてるやつの気がしれないわ


穂乃果「……」

126: 2016/11/14(月) 20:36:28.61 ID:A86l5lsv.net
穂乃果(書き込んで、みようかな…)カタカタ


名無しのバイト0101
初飲食店で3日目。既に心が折れそう。
周りが忙しそうでわからないことも聞き辛いし、内輪乗りが多いから馴染みにくい。
個人営業ってやめたほうがいいかな?


穂乃果「うーん…どんなレスが来るんだろう」


名無しのバイト0104
>>101
個人はやめとけ。チェーン店の方が絶対にいい。
付き合いが長くなるほど辞めにくいし、サービス残業もある。
仲良いいからってだけで色々任される。
何より、勝手にバックれたりしたら家まで押しかけてくるらしい。


名無しのバイト0105
>>101
自分の前の店は
1 深夜料金どう見てもついてない
2 休めない
3 プライベートまで干渉してくる
4 給料未払いがダラダラと続く
5 そもそもマニュアルがないからやりたい放題


名無しのバイト0106
ふつーに工場にしとけよ。
ミスしない限りは誰からも何も言われないぞ。
サービスなんてやるもんじゃない。


穂乃果「……はー…」

穂乃果「明日は夕方からバイトかぁ…」



穂乃果「辞めたい…」ポツ

127: 2016/11/14(月) 20:37:12.57 ID:A86l5lsv.net
~4時~


穂乃果「おはようございまー…す」ガチャ


花陽「あっ」


穂乃果「あっ」


花陽「今からですか…?」

穂乃果「う、うん」


花陽「えへへ、一緒だね」ニコ

穂乃果「あはは…」ニコ


シーン

128: 2016/11/14(月) 20:37:44.91 ID:A86l5lsv.net
花陽「…穂乃果ちゃん。お店には少し慣れた?」

穂乃果「え?…まぁ、少し…だけ」


花陽「良かった…。ホールは大変だけど、頑張ってね」

穂乃果「花陽ちゃんはキッチン…だよね?」

花陽「うん。最初は何も出来なかったけど、にこちゃんや希ちゃんが色々教えてくれて…本当に感謝してるんだ」

穂乃果「……凄いね」

花陽「へっ?」

穂乃果「ううん!そろそろ行ってくる。店長…にこちゃんに呼ばれてたし」

129: 2016/11/14(月) 20:40:38.27 ID:A86l5lsv.net
ーーーーー



にこ「あ、穂乃果?お疲れ様」

穂乃果「お疲れ様ですっ!」

にこ「いやー…朝から入ってると流石に堪えるわね。腕の力が無いっていうの?」

穂乃果「え、朝から?」

にこ「そーよ。今日はちょっと色々あってね。もちろん休憩も入れてるけど…ふわぁ」

穂乃果「でも、にこちゃんってラストまで入ってた…んじゃ」

にこ「ラストまでよ。今はまだ暇な時間帯だから、こうして休んでるってわけ。今月の売上も人件費削らないと厳しいし…」


穂乃果(…ひぇえ)

130: 2016/11/14(月) 20:41:35.41 ID:A86l5lsv.net
にこ「あ、そうそう。穂乃果を呼んだのはね…」

にこ「バイト始めてどう?」


穂乃果「どう、って…」

穂乃果「まだ覚える事が多くて、えっと…」

にこ「最初はそうなっちゃうわよね。でも、やれば出来ると思うから。私達もサポートするし。だから無理せずにやりなさいよ?」


穂乃果「…はい」

穂乃果(そうだよね…私はやれば出来るんだ。ただ、運が良くないだけで…色々覚えればスムーズに出来るようになる)


にこ「ほら、行ってきなさい。7時を過ぎた辺りからずっとピークだから。うちはお酒も提供してるし、夜の方が稼ぎ時なのよ」

穂乃果「…はい!」


にこ「もう絵里と真姫ちゃん、海未が入ってるから手伝ってあげて」


穂乃果(……海未、ちゃんもいるんだ…)ドヨーン

131: 2016/11/14(月) 20:44:17.22 ID:A86l5lsv.net
ーーーーー


カランカラン♪


海未「いらっしゃいませ。何名様で…ご予約の柳田様ですね。お待ちしておりました」ニコ

絵里「お待たせ致しました。こちら、マティーニと白ワインです。今宵は素敵なひとときをお過ごしください」

真姫「…ご注文を確認致します。和牛ステーキのミディアム250g、オニオンソースで…、」


穂乃果(輝いてるなぁ…あの3人)



客1「ねぇねぇ、あの人が絵里ちゃんよ」ヒソヒソ

客2「カッコいい…///でも私は海未ちゃんが好きかなぁ…」

客3「何言ってるのよ。真姫ちゃんのたまに見せるオドオドしてる感じが可愛いんでしょ?」



穂乃果「…ん?」

132: 2016/11/14(月) 20:46:55.32 ID:A86l5lsv.net
客1「ねぇ、店員さん」

穂乃果「は、はい?」

客1「絵里ちゃん呼んでくれない?」

穂乃果「はぁ…?」


穂乃果「絵里ちゃん、11番テーブルのお客さんが呼んでるんだけど…」

絵里「あぁ…わかったわ。ありがとう」

穂乃果(忙しいそうだったのに、いいのかな)


真姫「…ほんと、大変よね」

穂乃果「真姫ちゃん…?」

真姫「常連客だから適当に扱えないのよ。特にエリーや海未が相手してる…けど」

穂乃果「そういうお店じゃないのに、面倒なお客さんがいるんだね…」

133: 2016/11/14(月) 20:47:44.59 ID:A86l5lsv.net
真姫「ちょっと、声大きいわよ…!」

穂乃果「むぐぐっ」



「すみませんー」


穂乃果「あっ…」

真姫「いい。私がいくわ」

穂乃果「あ、ごめん…」

真姫「……料理運んでおいて」タタッ


穂乃果「…、」ポツーン

134: 2016/11/14(月) 20:50:32.00 ID:A86l5lsv.net
ーーーーー



にこ「穂乃果!さっさとこれ運んで!冷める!!」

穂乃果「は、はぃぃ!」


花陽「穂乃果ちゃんこっちもお願いします!」

穂乃果(えぇとこの皿は5番、こっちは13番…)

穂乃果(次は花陽ちゃんのスープを優先しなきゃ…スプーンを持って、8番だよね)

ワイワイ ガヤガヤ


穂乃果(いいなぁ…みんな楽しそうで)


にこ「穂乃果!次これ!」


穂乃果「パフェ…えっと、パフェ用のスプーンがいるよね」カチャ


穂乃果(これは16番テーブル。少し遠いから面倒だな…)

135: 2016/11/14(月) 20:53:55.91 ID:A86l5lsv.net
男「んー、もう食えねぇ」

女「え?もったいないよ」

男「仕方ないじゃん。ってか、この野菜ソテーあんまり美味しくない」

女「そうかなー」


穂乃果(むっ…美味しくないわけないのに)

穂乃果(にこちゃんや花陽ちゃんが頑張って作ってるものをあんなに簡単に蔑ろにするなんて…)

穂乃果(テーブルも汚してるし、マナーよく出来ないのかな)


穂乃果「お待たせしまし…」


グラッ


穂乃果「……へっ」


ガッシャーーーン!!

138: 2016/11/14(月) 20:59:41.08 ID:A86l5lsv.net
穂乃果「い……つぅ…」

穂乃果(鼻思いっきりぶつけた…)



男「…っ、おい!!!」


穂乃果「…え」


男「お前、どうしてくれるんだよ!?服に生クリームがべっとり付いてるじゃねぇか!」

穂乃果「あ、あわわ……」

男「聞いてんのか!!どこ見て歩いてんだ!この服いくらしたと思ってる!」

穂乃果「す、すみませ……」

男「こんのっ…!」

穂乃果(っ……掴まれる…!)


海未「お客様、お怪我はございませんか!?」

穂乃果(…う…みちゃ…)

139: 2016/11/14(月) 21:03:03.85 ID:A86l5lsv.net
男「大丈夫なわけないだろ!!」

海未「大変申し訳ありません…不注意でお客様にこのような」

穂乃果「も、申し訳…ごめんなさいっ…!」

男「っ」ギロ

穂乃果「……っ」グス


グイッ


絵里「…穂乃果、裏からホウキとチリトリ持ってきて。あと軍手も」

穂乃果「で、でも…」

絵里「私達に任せなさい。いいから」

穂乃果「…はい」

140: 2016/11/14(月) 21:08:07.54 ID:A86l5lsv.net
真姫「…穂乃果、あなた怪我はないの? 」

穂乃果「うん……ごめん、本当にごめんなさ」

真姫「謝るより先にやる事があるわ」

穂乃果「……」タタッ


海未「真姫、タオルをありったけ持ってきてください」

真姫「…」コクン

絵里「お客様、大変な失礼を致しました事を心よりお詫び申し上げます。クリーニング代と先程のパフェのお代はこちらで支払わせていただいてもよろしいでしょうか?」

男「はぁぁ!?俺は不快な思いをしたんだぞ、この食事代もタダにしろ!」

絵里「そ、それは…」

男「できないのか?お客は神様じゃないって?」

141: 2016/11/14(月) 21:12:44.91 ID:A86l5lsv.net
海未「多大なるご迷惑をお掛けしました事は私共の失態です。本当に申し訳ありませんでした。…しかし、お代を…」

男「全然反省してないようだな!ネットなりに書き込むか、口コミでこの話を流してやってもいいんだぞ?」

絵里「お客様…申し訳ございません」

男「いいからこの店で一番上を呼べ!」

絵里「……海未」

海未「はい。…少々お待ちください」




穂乃果「……」ガタガタ

にこ「…穂乃果?急にキッチンに駆け込んできて、どうしたのよ」

142: 2016/11/14(月) 21:15:41.39 ID:A86l5lsv.net
穂乃果「に…にこちゃ…」

海未「にこ!…お客様が」


にこ「…うん。今行くわ」タタッ


海未「穂乃果」

穂乃果「……ご、ごめんなさ」

海未「あの方がお帰りになる際、あなたも出てきてもう一度頭を下げてください。ただ今は出ていかなくていいです」

穂乃果「…うん」


花陽「ちょっと面倒なお客様にこぼしちゃったんだね…穂乃果ちゃん、大丈夫?」

穂乃果「……」

143: 2016/11/14(月) 21:19:54.19 ID:A86l5lsv.net
男「そうだよ。飲食代とクリーニング代、両方頼むからな。ざっと5万くらいになりそうだけど」

にこ「…この度は本当に申し訳ございませんでした。またのご来店を心よりお待ちしております」

絵里「お客様、外にタクシーが到着しました」

男「ふん。これからは気をつけるんだな」


穂乃果「本当に申し訳ございませんでした…!」

男「…ッチ」

ガチャ


にこ「……はー。絵里、海未。今すぐ他のお客様の対応に当たって」

海未「はい」

絵里「にこ、ごめんね。わかったわ」

147: 2016/11/14(月) 21:23:56.53 ID:A86l5lsv.net
穂乃果「……あの、私は…」

にこ「んー…悪いわね。穂乃果、ちょっと早いけど上がってくれる?」

穂乃果「へっ…」

にこ「私はキッチンに戻るから。お疲れ様」


穂乃果(……怒ってる、よね)

穂乃果(で、でも…ここであっさり帰ったら、それこそやる気が無いって)

穂乃果(この料理をあのテーブルに運ばな…きゃ)ブルブル


パシッ


海未「いいです。穂乃果、あなたはにこの言う通りにしてください」

穂乃果「で、でも…!」

海未「今のあなたはここに必要ありません」

穂乃果「………」

148: 2016/11/14(月) 21:28:36.75 ID:A86l5lsv.net
絵里「穂乃果…その」

穂乃果「……っ」

絵里「お疲れ様。今日はゆっくり体を休めて?あまり気にし過ぎるのも…」

穂乃果「もう、いいです…」ダッ

絵里「……」



ダダダダッ

ガチャッ バタンッ


穂乃果「うぅっ…うぅぅ…っぐ」ポロポロ

穂乃果「悔しいよ…なんで…っ」


穂乃果「もうこんな仕事…!!こっちから辞めてあげるよっ…」

208: 2016/11/16(水) 08:41:15.51 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果(あぁ、何で11時に起きちゃったんだろう)

穂乃果(今から行けばバイトには間に合う。でも…)

穂乃果(………私なんかが来ても迷惑だと思うから。にこちゃんは立場があるから表立っては言えないけど、きっと辞めて欲しいに違いないよ)

穂乃果(寝不足の目を擦るにこちゃん。今月もギリギリって言ってたのに……5万も弁償する事になるなんて)

穂乃果(もう、後から手紙だけ送って私の給料から差し引いてもらおう…そして、私は身を引く)

穂乃果(今までの仕事でも……似たようなこと、あったな…。陰口言われてさ。どうせ)

209: 2016/11/16(水) 08:42:20.42 ID:NlVIXFPI.net
* * *


ことり「みんな災難だったね…」

真姫「本当よ。何やらせても出来ないし、むしろ何ならいいのって思ったわ」

凛「いやー…流石にあれは酷いにゃ」

希「5万も払って大丈夫なん?」

にこ「大丈夫なわけないわよ!無駄な経費使わせるし役には立たないし…はぁ」

絵里「最初の面接で落とせば良かったわね。もっと他に適任の人はたくさんいるわ」

花陽「海未ちゃんも毎回怒らなきゃいけなくて大変そうだったもんね…」

海未「全くです。にこ、辞めさせてくれませんか?私の負担になっているので」

にこ「んな事言っても強引にクビにするのは無理よ。法に触れるし。あーあ、どうしよ」

210: 2016/11/16(水) 08:43:04.25 ID:NlVIXFPI.net
ことり「あ、なら辞めるように仕向けたらいいんじゃないかな?♡」

凛「なるほど!じゃあそういうゲームだねっ」

花陽「あはは、誰が一番貢献できるか勝負するってこと?」

真姫「今日のバイトもどうせ来ないわよ。あんな事しておいてメンタル強すぎでしょ」




穂乃果「……もっかい寝よう…」

穂乃果「やっぱりネットの意見を聞いてれば良かった……」

穂乃果「私には向いてなかったんだ…」

211: 2016/11/16(水) 08:44:29.91 ID:NlVIXFPI.net
ーーーーー


穂乃果「んー……」

穂乃果「…2時か。3時間くらい寝ちゃってたんだ」

穂乃果「あ…バイト、本当にバックれちゃった」

穂乃果「……、なーんだ。こんなに簡単にできるんだ…はは」

穂乃果「まぁ誰も気にしてないよ…」


穂乃果(…スマホでゲームでもしよっかな)


スッ【不在着信があります】



穂乃果「……え」

212: 2016/11/16(水) 08:45:07.05 ID:NlVIXFPI.net
【不在着信、21件】


穂乃果「あ…あぅ……」ブルブル

穂乃果「バックれたことを怒ってる…で、でも…それで損害を求められる事はないって書いてあったから」

穂乃果「……無視、しなきゃ」


ダダダダッ


穂乃果「!?」


ガチャッ

雪穂「おねーちゃ……っ、ているじゃん!!」

穂乃果「雪穂…?」

213: 2016/11/16(水) 08:45:58.39 ID:NlVIXFPI.net
雪穂「んもー!!せっかく遊びに行ってたのに!」

穂乃果「え…どういうこと?」

雪穂「亜里沙から電話掛かってきたの、お姉ちゃんが家にいるかもしれないから戻って見て欲しいって!」

穂乃果「なんで、亜里沙ちゃんが…、あっ。絵里ちゃんの妹か……」

雪穂「なんでバイト行かないの?忘れてたの?」

穂乃果「…もう行かない。他の働き口を探すよ」

雪穂「えぇぇ!?まだ一ヶ月も経ってないじゃん!」

穂乃果「雪穂にはわかんないよ!!」

214: 2016/11/16(水) 08:46:49.55 ID:NlVIXFPI.net
ピンポーン


穂乃果「ひっ」ビク

雪穂「ん…?お母さんさっき出かけたし、誰だろ」

穂乃果「ゆ、雪穂!!家に入れないでね!」

雪穂「なにが?」

穂乃果「絶対だからね!部屋にいないって言って!!」



穂乃果(家に押しかけてくるって本当だったんだ……)ガクブル

穂乃果(怖いよ…わざわざ家まで来るなんて!!)

穂乃果(強制労働じゃん、こんなの!)

215: 2016/11/16(水) 08:47:27.77 ID:NlVIXFPI.net
ダダダッ


穂乃果「!?!?」

ガチャッ


にこ「ーーっ、穂乃果!何やってんのよ!」

穂乃果「に…にこちゃ……」


穂乃果(うぅぅっ、雪穂の馬鹿…!!)

穂乃果(何て言われるんだろう…っ)


にこ「どれだけ心配したと思ってんの!!交通事故に巻き込まれたんじゃないかって、絵里と探し回ってたんだから!」


穂乃果「ふぇ…」

217: 2016/11/16(水) 08:48:37.17 ID:NlVIXFPI.net
にこ「ったく…良かったわ、何とも無さそうで。寿命が縮む思いだったわよ」

穂乃果「にこちゃ…怒ってないの…?」

にこ「何が?そりゃ怒ってるけど!」

穂乃果「そ、そうじゃなくて…私が、バイトに行かなかったこと…」

にこ「ん…?あぁ、何で勝手に休んでんの!海未とことりが大変だったのよ!」

穂乃果「………でも、私何かが行っても変わらないし、むしろ」


にこ「その根拠はなに?」

穂乃果「だ、だって…!この前に、私がお客さんにパフェをこぼしたせいで絵里ちゃんと海未ちゃんが怒られて!!」

穂乃果「その間、真姫ちゃんが1人でホール回してたし、にこちゃんも巻き込んで…お金だって、弁償しなきゃいけなくなって!」

にこ「……」

219: 2016/11/16(水) 08:49:30.75 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果「だったら私はいない方がいいよ!にこちゃんだって言ったじゃん!早く上がれってことは邪魔って事でしょっ」


にこ「えぇ言ったわね。体を震えさせて、顔も強ばってるのにお客様の元へ行かせるわけにはいかないもの。二次被害の可能性だってある」

穂乃果「そ…それは…」

にこ「……特に海未が心配してたわ。馬鹿なこといってないで、さっさと」

穂乃果「嘘だっ!あの人が心配なんてするわけない…」

にこ「あのねぇ…絵里が言ってたけど、穂乃果があの客に怒鳴りつけられた瞬間に海未は仕事を置いて駆けつけたのよ。それでもそんな風に言える?」

穂乃果「………っ」

にこ「これ以上穂乃果にトラウマを与えないよう、裏に下げたのは絵里の判断。そりゃ確かに何も思わないって事はないけど、誰もあんたを責めてないわ」

220: 2016/11/16(水) 08:51:25.02 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果「……なんで、にこちゃんはそこまで私に拘るの…」

にこ「は?」

穂乃果「クビにすればいいのに。…仕事が出来ない従業員なんて、それこそ経費の無駄だよ。赤の他人のにこちゃんが、私に情けをかける必要も…」

にこ「あーもう!!勝手に決めつけるな!」

穂乃果「ーーっ」ビク

にこ「私の独断で仲間に入れた奴は、私が責任持って最後まで面倒みてあげるの!絵里や希、ことりや海未、凛、花陽、真姫、ヒデコ、フミコ、ミカ!そして穂乃果!」

にこ「性格も個性もバラバラ、相手にするには骨が折れるけど…でも、私は滅多なことがない限り、この仲間で店をやりたいと思ってる。あんたもそのうちの一人なのよ!」

穂乃果「………」


にこ「…はぁ。仕事に戻るわ」

穂乃果「…ぁ、う……」


にこ「面接の時に言った『自分なりに精一杯がんばります』…その言葉、嘘じゃないんでしょ?」

221: 2016/11/16(水) 08:52:19.21 ID:NlVIXFPI.net
ーーーーー



穂乃果(なんで…だろう)

穂乃果(今まで私が働いてきた所は、みんな冷たくて。お互いがお互いを監視して、仕事が出来ない人や性格がキツイ人は嫌われる)

穂乃果(だから、みんな辛くても周りに頼れないし。嫌われたくないばっかりに、上辺の性格で付き合う)

穂乃果(それが人間関係の淡白さを加速させて…仕事は嫌なものだ、楽しくないって意識が生まれる)

穂乃果(それが……普通なのに)

222: 2016/11/16(水) 08:53:14.13 ID:NlVIXFPI.net
雪穂「お姉ちゃんー、晩ご飯食べないの?」

穂乃果「うん…いい」

雪穂「ふーん…。今日のお昼のことで悩んでる?」

穂乃果「…ちょっとね」

雪穂「私は何があったかなんて全然知らないんだけどさ。でも、働いて…悩むことってすごく大事な事だと思う!」

穂乃果「………」

雪穂「お姉ちゃんの事はお姉ちゃんしかわからないから。私は勇気を出して1歩踏み出したお姉ちゃんに、これ以上とやかく言うつもりは無いよ」

穂乃果「うん…ありがとう」



穂乃果(……心が落ち着くまで、休憩しよう)

254: 2016/11/16(水) 23:10:34.29 ID:NlVIXFPI.net
ーーーーー



穂乃果「あれから1週間か…」

穂乃果「どうしても気になって店まで来ちゃったけど…はぁ」


ガヤガヤ


穂乃果(まぁまぁお客さんいるな…。今日は誰がシフトなんだろう)

穂乃果(あ…でも、あんまり店の外からジロジロ見てると怪しいよね)

穂乃果(もう帰ろうかな……)

穂乃果(ううん…本当は制服を返しにきたんだもん。ちゃんと辞めますって言って、すぐ出てこよう)

穂乃果(…で、でも……)チラ

257: 2016/11/16(水) 23:13:47.43 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果(そういえば、営業時間中に入ったこと無かったっけ…)


穂乃果「………」


カランカラン♪


ことり「いらっしゃいませ♡お客様、何名様ですか?」

穂乃果「……」スッ


ことり「1名様ですね。ご案内致します♪」


穂乃果(な、なんで…私は、変装してまで店に入っちゃったんだろう)

穂乃果(バレてない…よね??)

穂乃果(何か…悪いことしてるみたいで、心臓がドクドクするよ)

258: 2016/11/16(水) 23:15:26.07 ID:NlVIXFPI.net
ことり「本日はCafe μ'sにご来店頂き、ありがとうございますっ♡」

ことり「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください♪」ペコ


穂乃果(ことりちゃん流石だなぁ…。笑顔を絶やさないし、愛想だって凄くいい)

穂乃果(ああいう風にしたら少しミスしても、お客さんは許してくれそうだな…)



穂乃果(メニュー…どうしよう)

ガヤガヤ


穂乃果(忙しいそうだし…手のかからないメニューにしよっかな)


穂乃果「ごほんっ……す、すみませー」


凛「はーいっ♪」

259: 2016/11/16(水) 23:16:25.23 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果「こ、これを…」

凛「カルボナーラですね!ご一緒にお飲み物はいかがでしょうか?」

穂乃果「……」スッ

凛「オレンジお一つで。カルボナーラとオレンジジュース、少々お待ちください♪」ペコ


穂乃果「……私は、どういう風に見えてたんだろう」ボソ


キャッキャッ


穂乃果「…ん?」


子ども1「ねー!これみてー!」タタッ

子ども2「まってーぇ!」タタッ

260: 2016/11/16(水) 23:18:28.21 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果(うわー…子どもが走り回ってる。親は何してるの?)

ペチャクチャ


穂乃果(話に夢中で見えてない…放置されたら危ないよ。こっちの邪魔にもなるのに)


子ども2「がおー!まてまてー!」

子ども1「やだぁ!」

トンッ

ことり「わっ…!危なかったぁ…」

穂乃果(って本当にことりちゃんにぶつかったし…反応が遅かったら、熱いスープが子どもにかかってたかも)

穂乃果(どうするんだろう。やっぱり、親に注意すべきだよね)

穂乃果(でも相手はお客様。強くは言えないし…逆ギレなんてされたら、)



海未「…お母さんの側に行かなくていいんですか?」ニコッ


穂乃果(海未ちゃ…ん?)

261: 2016/11/16(水) 23:20:34.37 ID:NlVIXFPI.net
子ども1「えー?だってつまんないもん!」

海未「お昼ごはんはちゃんと食べました?」


穂乃果(子どもたちの目線に合わせて屈んで…何をするつもりなの?ま、まさか直接子どもを叱りつけるとか…!?)


子ども2「うんっ!いい子だからきらいなものもたべたよ!」

海未「それはそれは偉いですね♪では、私がご褒美をあげちゃいます」スッ


子ども1「あー!カイジュウジャーのおもちゃだ!」

子ども2「おままごとセットだー!」

海未「お母さんの隣で座って遊ぶと、お姉さんに約束してくれるなら…」

子ども「やくそくするー!!」

海未「はい。お利口さんですね」ニコ

262: 2016/11/16(水) 23:23:04.30 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果(……いつも鬼みたいに怖い海未ちゃんしか知らないから、予想外過ぎて開いた口が塞がらなかった)

穂乃果(親に注意するのでもなく、子どもを叱りつけるのでもない。こういうやり方もあるんだ…)



ことり「はぁ~♡かわいい…お姉さんも、特別にアイスあげちゃいます♡♡」

子ども「わーいアイスだー!」

海未「ことり、この子達をそのまま席へ誘導してください。任せましたよ」ヒソ

ことり「はーいっ。了解しました♪」


穂乃果(…あはは。ことりちゃんは通常運転だけど、チームプレーって感じですごいなぁ…)

263: 2016/11/16(水) 23:26:40.77 ID:NlVIXFPI.net
* * *



海未「お待たせ致しました。カルボナーラと、オレンジジュースです」

穂乃果「……ぁ、はい…」ドキドキ


穂乃果(バレそう…って心配する割には、大丈夫だったな)


海未「…あぁ、申し訳ございません」

穂乃果「へっ」

海未「こちら追加注文のチョコレートケーキです。…因みに、当店自慢の看板メニューだったりします」

穂乃果「い、いや…私こんなの頼んでな」


海未「私からの些細なプレゼントですよ。…穂乃果?」

穂乃果「ーーっ!!」ビクー

海未「さっさと食べて、手伝ってください。あと1時間後に団体様の予約があって猫の手も借りたいほど忙しいんです」

穂乃果「…………う、ん…」

264: 2016/11/16(水) 23:27:46.91 ID:NlVIXFPI.net
ーーーーー


ギィィ…


穂乃果「あの…にこちゃ」

にこ「………」

穂乃果(うぅぅ……あれだけ言いたい放題言ったから…そりゃ怒ってるよね)


穂乃果「ご…ごめんなさい!!」ガバッ

穂乃果「迷惑かけた上に開き直って、それでも周りが悪いんだって…。私の弱い心が負けちゃったんだ」

穂乃果「お客さんは色々な人がいるし、覚える事は多いし、立ちっぱなしで辛いし、仕事中に何度も泣きそうになったけど……」

穂乃果「やっぱり私は…」

265: 2016/11/16(水) 23:28:59.88 ID:NlVIXFPI.net
にこ「……すぅ…」

穂乃果「あれ?ね、寝てる…?」


希「あ~許したって♪連勤続きで疲れてるんよ」

穂乃果「希ちゃん…」

絵里「穂乃果、おかえりなさい。またあなたと仕事が出来るみたいで嬉しいわ」ニコ

穂乃果「絵里…ちゃん」


希「にこっちが突っ伏してる机の上、見てみ?」

穂乃果「これって…」

絵里「マニュアルみたいなものらしいわ。といっても、大まかに書いてあるだけだけど…。穂乃果みたいに新人さんを、体だけで覚えさせるのは酷だったって反省してたもの」

穂乃果「じゃあにこちゃんが書いてくれたの…?」

266: 2016/11/16(水) 23:29:57.53 ID:NlVIXFPI.net
希「ふふ、どうやろうね。後で本人に聞いた方がいいんやない?」

穂乃果「……そう、だね。まずは手伝わなきゃ…」


絵里「怖い?」

穂乃果「っ」ビク

絵里「また失敗したらどうしよう。…なんて、考えてない?」

穂乃果「……そりゃ、思いますよ…」

絵里「張り詰めなくていいのよ。始めたばかりの時に、失敗するのは大事だわ」

希「そうそう。だいじょーぶ、穂乃果ちゃんがどんなことしてもえりちが助けてくれるから!」ニコ

絵里「ど、どんなこともされるのは…大変ね」

269: 2016/11/16(水) 23:32:12.14 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果「………ねぇ。この仕事のやりがいとか、楽しさを見つけるのってどうしたらいいの…?」

希「うーん。穂乃果ちゃんの事は、穂乃果ちゃんにしかわからんよ?」

穂乃果「そんな…」

絵里「心配しなくても自然と見つかるわ。一生懸命やれば多少なりの結果はついてくる。物事って、案外そういうものよ?」

穂乃果「……」


希「さ、今日も頑張ろか~」

絵里「っふう…えぇ。でも、にこはもう少し寝かせてあげましょ」

希「ふふ、そやね。穂乃果ちゃん、そこにあるマニュアルちょっとでも読んだってな♪」

270: 2016/11/16(水) 23:35:39.36 ID:NlVIXFPI.net
ーーーーー


穂乃果(はぁ……深呼吸しなきゃ。とにかく落ち着こう)


穂乃果「お、お待たせ致しました!ステーキ250gになります!!」

「はーい」

穂乃果「鉄板が熱くなっていますので、お気を付けください…!失礼致しますっ」



穂乃果(よし…。これで運ぶものも無くなったし、入口にお客さんの姿もない)

穂乃果(でも、時間が出来ると逆に困っちゃうな…他に何をしたらいいんだろう)チラ

穂乃果(海未ちゃんはテーブルを拭いてるし、ことりちゃんはお会見中)

穂乃果(あぁ…そうだ。お水のポットを持って回らなきゃ)

271: 2016/11/16(水) 23:36:32.25 ID:NlVIXFPI.net
彼氏「ん?どうしたの?」

彼女「あ、ううん!何でも」

彼氏「ご飯食べるのにコート着てたら汁とか飛んじゃうよ?」

彼女「ちょっと…」


穂乃果「…お客様、よろしければあちらのお席にご案内しましょうか?」

彼女「え?」

穂乃果「ここ、入口に近いのでどうしても風が入って来ちゃうんです。奥ならまだ暖かいかなって…」

彼女「あ、はい…ごめんなさい、そうさせてもらいます」

彼氏「寒かったのか。気づかなかったよ」

彼女「せっかく連れてきて貰ったのに悪いかなって…えへへ」

272: 2016/11/16(水) 23:38:50.00 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果(…そうだよね。せっかく来て貰ったんだもん)

「すいませーん!」

穂乃果「あ、はい!」タッ



ーーーーー


穂乃果「…お会計、3500円です!」

彼氏「じゃあカードでお願いします」

穂乃果「はい!」


ピッ

穂乃果「ありがとうございました!またお越しくださいませっ」ペコ


彼女「あの」

穂乃果「は、はい…?」ピク

273: 2016/11/16(水) 23:40:35.06 ID:NlVIXFPI.net
彼女「さっきはありがとうございました。お店であんな風に気遣って貰ったこと、無かったので…。感動してお礼を言うのが今頃になったんですけど」

穂乃果「そんな…当然です!ありがとうございます!」

彼女「…お仕事、頑張ってください。応援していますっ」ニコ

穂乃果「……はぃ…」


彼女「ご馳走。行こっか?」

彼氏「うん」


穂乃果(…あぁ…。なんだろう。褒められるって、こんなにも嬉しいんだ)

穂乃果(こうやって面と向かって感謝されたら…体の疲れも、足の痛さも飛んでいっちゃうよ)

274: 2016/11/16(水) 23:41:42.07 ID:NlVIXFPI.net
* * *


~23時15分~


にこ「ふぃー……お疲れさまー」

絵里「お疲れ様。流石に疲れちゃったわ…」

穂乃果「お疲れ様です…」クタ

にこ「最後のレジ締め、さっさとやっちゃうから。二人とも帰っていいわよ?」

絵里「私は明日の発注を書いてから帰るわ。希に頼まれてて…」

にこ「そ、了解。じゃあ一緒にかえろ」


にこ「穂乃果、お疲れ様。気をつけて帰りなさいよ?」

穂乃果「うんっ…!」

275: 2016/11/16(水) 23:43:22.33 ID:NlVIXFPI.net
にこ「ふふ、この前会った時よりいい笑顔してんじゃない。また明日ね」

穂乃果「にこちゃん…ありがとう。私、少しでも…頑張ろうって思えたんだ。あのまま逃げなくて本当によかった」

にこ「……//なんか恥ずかしいわね」

絵里「あっ!にこが赤くなって…」

にこ「なってない!!」

絵里「最近ご機嫌な事が多いけど、何かあったの?真姫と遊びにでも」

にこ「だぁぁぁっ!!///うっさい!あんたも人のこと言えないでしょ!」

絵里「私はいつだって希と良好な関係よ?」

にこ「っち、聞かなきゃよかった…」

穂乃果(仲良いんだなぁ…)

276: 2016/11/16(水) 23:44:25.29 ID:NlVIXFPI.net
カランカラン♪


穂乃果「…あ、あれ?」


ことり「こんばんは~♪お疲れ様ですっ♡」

海未「すみません…閉店作業中でしたか?」

にこ「いや、大丈夫よ。どうしたの?忘れ物?」

ことり「あ~…そうとも言えるかなぁ?」

絵里「それって何処にあるの?」

ピシッ


穂乃果「……へ?」


ことり「穂乃果ちゃん♡今夜、一緒に1杯どうかなぁ?」

277: 2016/11/16(水) 23:46:17.45 ID:NlVIXFPI.net
穂乃果「えぇ!穂乃果!?」

ことり「うんっ♪海未ちゃんも行くんだよ♪」

穂乃果「う、海未ちゃんも…?」

海未「……無理強いはしません。疲れているでしょうし、何なら私は行かな…」

ことり「もー!海未ちゃんまだ言ってる~!」

穂乃果「……」

ことり「穂乃果ちゃん、来たくない?」ニコ

穂乃果「…ううん!行くっ…」

ことり「ふふっ♡」

穂乃果(なんだろう…?)

278: 2016/11/16(水) 23:47:49.64 ID:NlVIXFPI.net
~BAR~


ことり「穂乃果ちゃん、眠たくない?」

穂乃果「大丈夫。だけど…なんで、急に」

ことり「あのね。海未ちゃんが、穂乃果ちゃんに嫌われてるんじゃないか~って私にばっかり言ってく」

海未「っ、ことり!!///」

ことり「えへへ…ごめん♡」

穂乃果「そ、そんな…嫌ってなんて」

ことり「海未ちゃんね、穂乃果ちゃんが来なくなって1週間ずっと悩んでたみたいなの♪けど今日のお昼に穂乃果ちゃんを見て、嬉しかったんだよね?」

海未「なぜそう全て話してしまうのですか……」

穂乃果「っ、ごめんなさい…。でも、海未ちゃんのせいで行かなくなったんじゃなくて、私自身の事で悩んでたから…」

279: 2016/11/16(水) 23:49:22.88 ID:NlVIXFPI.net
海未「…それで、答えはでましたか?」

穂乃果「……うん。今日1日働いてみて、やっと見つかった気がする」


穂乃果「辛い辛いって思って1時間過ごすのと、少しでもやりがいや楽しさを見出して過ごす1時間だったら…後の方が得だなって」

穂乃果「自分一人で何でもやり抜こうとするんじゃなくて、周りに頼ったり…広い目で見て動いたり、自分がされて嬉しい事をお客さんに出来たら…いいな。それが難しいんだろうけど…」


海未「………変わりましたね」


穂乃果「へっ…」


海未「私が何を教えても不満そうな顔をしていたあなたを、よく覚えています。…でも」

280: 2016/11/16(水) 23:51:30.17 ID:NlVIXFPI.net
海未「そんな風に言って貰えるなら、私はとても嬉しいです。教育係のせいで新人さんが辞めてしまう、といったケースはとても多いですから…ずっと不安でした」


穂乃果「…本当に…迷惑かけてばっかりで。でも、これからは少しでも皆の力になりたいと思う…そしていつかは、頼られる存在になれたらなって」


海未「…ふふっ。では、今夜は好きに飲んでください。私が奢りますよ」

穂乃果「えっ?いいの…?」

ことり「わーい♪ありがと~♡」

海未「えぇ。どうぞ」


穂乃果(うわぁ…高いお酒が並んでる…)ゴクッ

281: 2016/11/16(水) 23:53:21.74 ID:NlVIXFPI.net
* * *



海未「…も、う……飲め…らいれす…」グタ

ことり「えぇ~海未ちゃん酔うの早いよぉ…」

穂乃果(大丈夫かな…)


ことり「こほん♪じゃあ、ことりから少しお話しようかな?海未ちゃんの昔のこと!」

穂乃果「あ、前に言ってたことかな?」

ことり「うん♡ことりがね、オーダーを取りに行った先に海未ちゃんがいたの。それで…」

ことり「私がスプーンを落としちゃって、慌てて別のに変えるために拾おうとしたら…海未ちゃんがニコって笑って手渡してくれた」


ことり「もう、一目惚れだったよ…///」


穂乃果「え、??」

282: 2016/11/16(水) 23:54:30.43 ID:NlVIXFPI.net
ことり「そして何度も誘って…遂に!海未ちゃんが一緒にお仕事してくれるって聞いた時は嬉しかったなぁ…♡」


穂乃果「そ、そうだったんだ…」

穂乃果(海未ちゃんも大変だったんだね)


ことり「…じゃあそろそろ帰ろっか?穂乃果ちゃんも眠たくなっちゃうし。ことり一人じゃ二人も持てないから♪」

穂乃果「そうだね、海未ちゃんも寝ちゃいそう…。あ、ご馳走ですっ」

海未「……気持ち悪いれす…」


ことり「ま、待って!ここじゃだめだよ!?」

穂乃果「とりあえずお金払っておくね…!ことりちゃんは海未ちゃんに外の空気吸わせてあげて!」

284: 2016/11/16(水) 23:55:29.44 ID:NlVIXFPI.net
ーーーーー



カランカラン♪


「あのー……」


「はい!いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」ニコ


「あ、違うんですっ!えっと……今日からお世話になる、……ですっ…!」


「あぁ、……ちゃんか!にこちゃんから話は聞いてたよ。よろしくね」


「よろしくお願いしますっ…」ドキドキ

286: 2016/11/16(水) 23:57:14.90 ID:NlVIXFPI.net
「んーと…アルバイト自体が初めてだっけ?」


「はははいっ!だ、だから私…上手く出来るか、心配でっ…皆さんにご迷惑とか…掛けちゃったら、どうしたらって」


「大丈夫。やればなんとかなる!!私が保証するよ!」


「……?」


「あっごめんね。言い忘れちゃったよ。……ちゃんの教育係になった、」



穂乃果「高坂穂乃果です!一緒に頑張ろうね」ニコ

287: 2016/11/16(水) 23:58:20.56 ID:NlVIXFPI.net
保守ありがとう。おわり

288: 2016/11/16(水) 23:58:50.76 ID:TmDwWpJL.net
おつ
よく書き切った

まだいつか書いてくれ

321: 2016/11/19(土) 20:53:46.35 ID:jMnojV0d.net

引用: 雪穂「お姉ちゃんさ、家の仕事やりたくないなら外で働きなよ」穂乃果「えっ」