349: ◆DMVtSSFzcg 2013/12/06(金) 19:27:05.16 ID:GIAIarxd0
書き溜めは終わってないけど今日中に終わる予定です

P「どうも。元スパイの赤羽根です」【前編】

350: 2013/12/06(金) 19:30:29.74 ID:GIAIarxd0
1F 仮眠室 ??:??

P「――っ、うーん……ここ、は……っ痛!」

目を覚ますと、そこは仮眠室だった。
後頭部がまだ痛む。
頃すつもりで殴ってきたみたいだな。

P「……ハッ、今何時だ!?」

慌てて765プロウォッチに目をやる。

P「22時、だと……」

6時間近く気絶していたことになる。
やけに外からの音が騒がしい。

対照的に、中は静まり返っている。

まさか、氏んで――そんなハズない。
最悪の状態だけは、想像したくない。

嫌な想像をかき消し、まずはここから出なければならない。

P「ん?開かない?」

仮眠室は外からつっかえ棒のような何かで塞がれているようだった。
ぷちます!(14) (電撃コミックスEX)

351: 2013/12/06(金) 19:31:55.13 ID:GIAIarxd0
P「クソ、何か武器になるようなものは……」

ガタン

不意に上から音がした。
そこでようやく天井を見る、すると、大きな排気口からまた音がした。

ここから脱出できるか?
思考を巡らせていると、見覚えのある顔が金網越しに現れた。

吉澤「遅くなってすまないね、悪いがネジを外してくれないか?」

吉澤さんはこちらに小さなマイナスドライバーをよこす。
サイズが小さく、開けるのに手間取ってしまった。

P「怪我は大丈夫なのか!?」

吉澤「大丈夫なわけないだろう。マトモな戦闘は期待しないでくれ。よいしょっと」

吉澤「ふぅ、疲れたよ。あ、ここから外には出られないよ」

P「ならどこから?」

吉澤「実は記者として今日ここに来ていたんだ。奴らは2時間前に銃声をぶっ放した」

P「アイツらは無事なのか!?」

吉澤「直前で僕はトイレに行ってたんだ。異変に気づいて、3階のトイレからここまで君を探していたんだ」

吉澤「おかげで2時間も排気口をさまよっていたよ」

P「……アイツらを助けなきゃ」

352: 2013/12/06(金) 19:33:10.08 ID:GIAIarxd0
P「協力してください。このままじゃ、アイツらが!」

吉澤「もちろんだ。安藤を止めるのは、今が最後だ」

見張り『中に誰がいる!そこを動くなよ!』

扉の向こうで、棒を外す音がした。
チャンスだ。

見張り「止まれぐぁ!」

扉の氏角に入り、思いっきり扉を蹴り返した。

吉澤「悪いが若造にはまだ負けんよ」

ひるんだ瞬間、吉澤さんは武器を取り上げあっという間に無力化してしまった。

P「悪いが代わりに眠っていてくれ」

新米らしき見張りを気絶させ、仮眠室に拘束しておいた。

吉澤「撃たずとも威嚇にはなるだろう。あと無線も持っていてもいいかもしれない」

P「吉澤さんの分もあとで調達が必要ですね」

吉澤「きっと手に入るよ。さて、このまま行くか、排気口を使うか……」

排気口の方が時間はかかるかもしれないが、安全だ。
このまま行けば危険だが、時間はかからない。

――待て、安藤ならどうする?
排気口を見落とすか?

もしも排気口を進み見つかれば、あっという間に終わる。

P「どのみち危険ですが、このまま行きましょう」

吉澤「分かった」

353: 2013/12/06(金) 19:34:07.38 ID:GIAIarxd0
1F 仮眠室前廊下 22:07

敵は皆銃を持っており、定位置を中心に徘徊している。

だが人数が足りないようで、いずれも単独行動。
しかも連携はとれない距離に配置されている。
だからこそ使えない新人が見張り役に無理やりされていたのかもしれない。


都合のいいように思えるが、裏を返せば危険だ。
本当の戦力は、安藤の近くに集中させているといえる。

また外がうるさいのはおそらく警察やメディアの報道機関だと思われる。
ヘリの音が聞こえるのは、上空からの報道部隊だろう。

まさか自衛隊が出動するとは思えない。

P「吉澤さん、俺が注意をひきつけます。後から出てきて気絶させてください」

吉澤「……ふふ」

P「吉澤さん?」

吉澤「殺せと言わないのが、実に君らしいと思ってね。さあ行こう、まずは会議室まで」

354: 2013/12/06(金) 19:36:01.66 ID:GIAIarxd0
B「……誰だ」

P「俺だよ」

B「拳銃一丁で勝てると?」

P「負けはしない、俺を殺せないからな」

敵は明らかに嫌な顔をする。

P「安藤の指示で、殺せないハズだ」

B「……だが傷つける程度なら許可は出ている」

言い終わると同時に、サイレンサー付きのベレッタを撃ってくる。

B「……なんで避けれるんだ」

しかし当たることはなく、あっという間に距離をつめて銃口を額に当てる。

P「別に見てから避けてるわけじゃない」

吉澤「ごめんよ」

スタンガンが敵の背中を直撃する。

B「……化け物め」

ゆっくりと敵は倒れた。
これで二人分の無線は確保した。

355: 2013/12/06(金) 19:37:31.20 ID:GIAIarxd0
1F 会議室 22:16

C「うわぁ!」
D「話せば分かるって、だからやめろぉぉ!」

吉澤「やはり精鋭部隊は安藤の周りを固めているのか」

P「スタンガンの出力を上げすぎてないか?」

まさかそんなハズないだろうと乾いた笑い声をだす。
氏なない程度に押さえてくれればそれでいいけど。

吉澤「ところで、私がトイレに行ったときの話なんだが」

P「トイレ?」

吉澤「ああ2Fの廊下の途中だよ。私の他にも、誰か個室に入っていたような気がするんだ」

P「……敵、でしょうか」

吉澤「分からないが、注意はした方がいい」

P「そうですね、今のところ無線で指示もでていないみたいだし、ゆっくり攻略していきましょう」


2F 障害者用トイレ個室 同時刻

北斗「……翔太、少し詰めてくれ」

翔太「静かに!バレちゃうよ!」

冬馬「なんで男四人で個室に……」

黒井「やっぱり来なきゃ良かった」

356: 2013/12/06(金) 19:39:55.55 ID:GIAIarxd0
1F エントランス受付の机の下 22:19

吉澤「現在地点エントランス、敵は7名、いずれも銃を所持」

P「了解、麻酔銃での狙撃をお願いします」

俺はゆっくりとエントランスに出る。

5人が正面入り口を向いて待機していた。
おそらく警察の突撃を少しでも遅らせるためだろう。

K「っ!動くな!」

一人が気づき、こちらに銃口を向ける。
その声で、残りの6人もこちらに向き直った。

P「なるほど、入り口とボスの二か所はそれなりに考えてるわけか」

L「余計なことは喋るな!」

P「おいおい、俺は氏なない技術もあるけど裏返せば氏ぬ技術もある」

P「下手に撃とうとすれば氏ぬぞ?射殺許可は出てないのに」

I「な、なぜそれを!」

P「へぇそうなんだ。単なるブラフだったんだけどまだ許可は無しか」

K「貴様!「待て」」

柱の氏角から、がたいのいい男が出てきた。
手には軽機関銃がある。

357: 2013/12/06(金) 19:43:49.63 ID:GIAIarxd0
P「開発しているという噂は聞いたが、本当に武器作ってたのか」

工藤「そうだ、とてもスリムな形だろう?」

P「物騒だな、ソレもお前も」

工藤「君ほど危ない存在じゃあない」

依然として8つの銃口は俺を見つめたままだ。

P「8人か……まあ普通に処理できる人数だな」

H「なんだと!」
工藤「慌てるな、これがコイツのやり口だよ」

P「そういう工藤さんこそ、幹部のくせに小心者って噂だぜ」

工藤「まったく口がよく回るやつだ」

P「寡黙な人間って近寄り難いでしょ?」

工藤「……お前らは撃たずに援護しろ、氏なれちまうからな。俺が気絶に抑える」

目の前の銃口がわずかに上下した。
工藤は右利き、俺から見て右側に体を運べば躱せる。

工藤「チィ!なめるなよ!」

俺は接近から一転、バク転で体重移動を後ろに切り替える。

358: 2013/12/06(金) 19:45:59.82 ID:GIAIarxd0
M「クソっ、遠ざけるだけでいっぱいだ!」

こっちもいつまでも避けられない。
急いで柱の後ろに身を隠す。

周りであちこちが火花を散らせる。

N「ち、くしょ…」

工藤「どうしたどうしたぁ!天下のパーフェクトが逃げの一手か!」

俺は近くの観葉植物を投げる。
瞬く間に鉢が蜂の巣になった。
投げた方向とは逆に飛出し、Mの左足を打ち抜く。

M「ぐあぁぁ!」

工藤「ちょこまかと!」

また別の柱へ身を隠し、呼吸を整える。

P「次は……アレだ!」

俺はモニターを打ち抜く!
液晶画面が割れ、工藤以外の目を引く。

ウッ ウァ

工藤「ミスディレクションにはもう引っかからんぞ!」

P「危ねぇ!」

グフ

弾の出所から俺の場所を推測し、滅茶苦茶に撃ってくる。

359: 2013/12/06(金) 19:50:44.23 ID:GIAIarxd0
机の下へと戻ったが、いくつかすり傷を作ってしまった。
致命傷じゃないだけマシか。

工藤「ククク、追い詰めたぞパーフェクト」

P「……」

工藤「観念してそこから出てこい、頃してやりたいがそこまではしないさ」

I「かはっ、く、工藤さ、ん…」

工藤「流れ弾に当たったか、クズめ」

I「そ、そん、な、ゴフ!」

工藤「フン、間抜けも一人いたが、この状況と人数で勝てるのか?」

工藤が威嚇射撃を一発撃つ。
同じタイミングで、吉澤さんが最後の一人を狙撃した。

P「……降参だ」

両手を挙げ、降伏の意思を示しながらゆっくりと出る。
そして、ゆっくりと入り口側へ歩く。

工藤「ゆっくり歩けば逃げられるとおもってんのか?」

工藤も合わせて、ゆっくりと向きを変える。
工藤の目と銃口は、俺一人にしか向けられていない。
机から目を離したお前に、もう勝機はない。

P「追い詰めた?間抜けが一人?」

工藤の表情が、次第にこわばっていく。

工藤「お、お前ら、なぜ寝ている…」

P「追い詰められた間抜けはテメーだ」

吉澤「おやすみ」ドシュッ

360: 2013/12/06(金) 19:51:58.02 ID:GIAIarxd0
2F シーサイドロビー 22:26

吉澤「君はどうやって弾を避けているんだ?」

P「発射のタイミングを読んで、少し前に射線から外れるだけです」

P「利き手、クセ、銃の反動……なんだか昔に戻ったみたいだ」

吉澤「戻った?」

P「殴られたせいなのか、アイツらのために動いているのか……」

P「どっちかは分かりませんが、訓練されたばかりのように、全てが研ぎ澄まされている感じです」

吉澤「それで眼鏡をつけているのか」

P「鋭敏すぎて、使い物になりませんから。抑制した方がちょうどいいんです」

吉澤「なるほど、ちょっとストップ」

P「ええ、敵がいますね」

カーブを描く廊下のおかげで、ギリギリまでは近づける。
だが、逃げ場も少ない危険地帯だ。

吉澤「さっきみたいな無茶な真似は、できるだけしないでくれ」

P「善処します……ところでどうしてポカリがリュックに?」

吉澤「ライブ前に買った物だが」

P「あのですね、水以外は持ち込み禁止なんですよ」

吉澤「いやぁすまない。僕はあまり動かないからそんなに飲まなかったけどね」

P「没収します」

吉澤「立派なプロデューサーだね」

361: 2013/12/06(金) 19:53:33.14 ID:GIAIarxd0
P「さてリュックの中を見回したけど、スタンガンぐらいしか使えないかな」

吉澤「麻酔銃も切れてしまったからねぇ…年を取るとどうも射撃が苦手になる」

P「向こうは全員銃を持ってる。かなり不利だな……はっ!」

吉澤「……!一旦こっちに!」

急いで俺たちは引き返す。
偶然なのか、敵の一人がこちらへ歩いてきた。

P「気づかれてはいないが…どうすれば」

いっそこのまま突撃をかけた方がいいのか。
しかし、敵には見覚えがあった。

安藤の参謀役、松下。
カリスマ性はないが、戦える頭脳派といった感じだ。
そしてなにより鼻がつまっているため話し方がキモい。

吉澤「もう少し戻ろう、確かトイレがあったハズ」

P「……トイレにいる奴が敵なら無力化しておかないと、挟み打ちになりますね」

もし誰もいなければ、作戦を考える場所にしよう。

362: 2013/12/06(金) 19:58:11.60 ID:GIAIarxd0
P「……」
吉澤「……」

障害者用トイレから、なんというか気配を感じた。
鍵までかけて、ここに誰かいますよと主張が激しい。

吉澤「……これで敵がいたら間抜けにもほどがあるねぇ」

冬馬(だ、誰か来ちまったぞオイ!)

翔太(冬馬くんどうにかしてよ!)

冬馬(なんで俺!?)

北斗(リーダーじゃないか)

冬馬(リーダーって氏ぬポジション!?)

黒井(骨は拾ってやる。……残ってれば)

冬馬(ふざけんなオッサン!)

吉澤「念のため銃は構えさせてもらうよ」

北斗(じゅう?)

翔太(銃のことかな)

北斗(氏ぬときって怖さを通り越して何も考えられないな)

翔太(きっと天国に行けるよボクたち)

冬馬(誰かあぁ、助けてくれえぇー!」

北斗「あ、声に出ちゃった」

363: 2013/12/06(金) 20:00:01.12 ID:GIAIarxd0
2F トイレ 22:33

P「なにやってんだお前ら」

黒井「ノーン!こちらの台詞だ!どういうことだこれは!」

翔太北斗冬馬「「「シー!」」」

黒井「す、すまん」

P「えっと、説明するとだな、ここはテ口リストに占拠された」

冬馬「( ゚д゚)」

P「そして俺は元スパイでテ口リストの元同僚」

北斗「(;゚д゚)」

P「この方は俺の味方で、普段は芸能記者」

翔太「(;;゚д゚)」

P「生き残りたければ素直に指示に従え。冬馬、ちょっと小型マイクをつけさせてもらう」

黒井「(´;ω;`)」

吉澤「やれやれだねぇ……メイクと演技の稽古の時間だ」

364: 2013/12/06(金) 20:02:36.81 ID:GIAIarxd0
2F シーサイドロビー 22:49

P?「久しぶりだな、松下さん」

松下「おや、やはり出てきましたか」

P?「じゃないと目的地に行けないし」

松下「それで、どうするつもりですか」

P?「見逃してくれたら嬉しいね」

松下「そんなわけないでしょう」パチン

松下が指を鳴らすと、部下たちがぞろぞろと前から集まってくる。

松下「さて、この状況で一斉射撃を行ったらどうなる?」

P?「蜂の巣だ」

松下「ですが射殺許可は無い」

松下「しかし誤射にしましょう、工藤は責任を自らの命で払ったことにしてね」

P?「……残念だが、俺は本当に俺かな?」

松下「気が狂いましたか?」

P?「いーや、いたって正常だ」

365: 2013/12/06(金) 20:05:30.07 ID:GIAIarxd0
前には松下を含め9人の敵。
横には食堂へのスタッフ用の入り口。
松下たちより5メートル前にはトイレ。

そこで松下を指さし、こう言う。

P?「例えばお前らの後ろにいるのは誰だ?」

松下「誰か確認しなさい」

後ろを振り返った部下が慌てて叫ぶ。

E「ま、松下さん!後ろにも奴がいます!」

松下「……ほぉ、影武者ですか」

P?「そうだ、どちらが本物か分かるか?」

松下「分かりません」

松下「が、二人とも捕らえましょうか」パチン

指を鳴らすと同時に、5人が前へ、4人が後ろに走り出す。

そこで横の扉をくぐる。

P「5人は任せたぜ、冬馬」

366: 2013/12/06(金) 20:08:15.57 ID:GIAIarxd0
P(冬馬)「ダアアアァァァ!」

翔太「こっちこっち!」

北斗「階段だ冬馬!」

冬馬「分かってらぁー!」

松下「どうやらニセモノですね、無暗に撃たないように」



P「走りながらじゃショットガンは狙えねぇだろ!」

とは言え殺傷能力はかなり抑えた弾薬を使っているようだ。
当たれば氏にはしないが激痛だ、すぐに捕まる。

P「カーブ構造にこんなに感謝する日がとはな」

E「クソ!こっちが本物か!?」

F「どっちでもいい!」

G「このままじゃいつまでもグルグル回るだけだぞ!」

Q「口より足動かせ!」

回るのは1周で充分だ。

367: 2013/12/06(金) 20:11:25.30 ID:GIAIarxd0
R「どこに行った!」

S「警戒を高めろ!」

V「……非常口が開いてる」

T「報告しますか?」

松下「待ちなさい、報告したら殺せないでしょう」




~非常階段 踊り場~

吉澤「よくやった」

黒井「ケガはないか?」

冬馬「ぜぇっぜぇっ…二度とこんなに速くは走れねぇ…」

翔太「それで、このあとは?」

吉澤「まずは彼が来るまで待機だ」

北斗「その間に襲われるのでは?」

吉澤「こちらにも銃はある」

冬馬「なっ!変装道具にピストルって……」

黒井「見るな、見てはならないものだ」

368: 2013/12/06(金) 20:13:50.43 ID:GIAIarxd0
P「よし、着いてきてるな」

後は俺も食堂に飛び込むだけだ。
だが、このまま終わるわけがない。
そう、一人ぐらいは逆回りしてるかもしれない。

G「行き止まりだ!」

こんな具合にね。

P「どけよ雑魚がぁ!」

G「くっ!止まれぇ!」

目の前の男が引き金を引く。
氏ぬ間際には映像がスローに見えるというが、まさにスローに見える。
危険を察知し、記憶の密度が高くなるからだという。

そしてそれは、引き金を引く方も同じだ。

違うのは、そこで次の行動に移れたかどうかだ。

俺はほぼスピードを落とさず、スライディングで股を通り抜ける。

男は反動で次の行動には移れなかったようだ。

G「コイツ……!」

後転倒立から両足を首に絡め、そのまま気絶させる。
首4の字固めに近い感じだが、上手く決まって良かった。

369: 2013/12/06(金) 20:16:01.13 ID:GIAIarxd0
その後3人がついてきていることを確認し、食堂へ入る。
松下たちの姿は見えない。

P「上手く階段へと誘い込めたか…」

俺は開いている非常口へと目をやる。
罠が仕掛けられている可能性もあるが、こんなに狭い場所では爆弾も設置できない。

なぜなら自分たちが巻き込まれるからだ。

P「……やっと三人が来たな」

隠れるところはいくらでもある。

Q「奴はどこだ!」

E「非常口が開いてる……」

F「気をつけろ、常に構えておけ」

案の定、俺には気づかなかったようだ。
じゃあ、ひとつやりますか――。



松下「もしかして吉澤かな?」

吉澤「やあ松下くん、できればその銃を下ろしてくれ」

松下「嫌ですね。あなたこそ下ろしてください」

吉澤「そしたらあっという間に階段を下りて撃ち頃すんだろう?」

松下「ええ、当たり前でしょう?あなたのことを報告したら」

松下「殺せ、と」

370: 2013/12/06(金) 20:17:58.72 ID:GIAIarxd0
ステージ 同時刻

安藤「……こちら、ステージ、なんだ」

安藤「……そうか、氏にぞこないめ」

安藤「殺せ」

安藤「……ん?そんなに怖がることはないじゃないか」

高木「っ、頼む、誰ひとりとして危害は加えないでくれ」

安藤「ああ、下手な真似をしなけりゃ危害は加えない」

安藤「我々はこの腐った世界を変えるだけだ」

高木「ば、バカなことをするんじゃない」

安藤「ムダな言動は慎め」

高木「ヒッ……わ、わかった……」

安藤「それでいい。氏に急ぐことはない」

371: 2013/12/06(金) 20:20:02.31 ID:GIAIarxd0
2F 非常階段 踊り場 22:54

F「松下さん!」

E「奴はどこに?」

Q「気をつけろ……どこかに潜んでいるかもしれん」

どうやら8人が踊り場に集合したか。

P「まんまと挟み撃ち成功ってことだな」

俺は踊り場に近づき、拳銃を構える。

松下「ククク、かーっかっか!」

しかし松下は臆することなく笑う。

松下「あのですね、私がこうなることを想像できないとでも?」

北斗(これってなんだかやばそうじゃないですか?)

吉澤「……なんだか余裕そうだねぇ」

松下「階段なら廊下よりも狭い、数を活かせないのはすぐに分かる」

松下「だからわざと挟まれたんですよ」

372: 2013/12/06(金) 20:22:29.71 ID:GIAIarxd0
P「どういうことだ」

松下「これですよ」

試験管を2本取り出し、ニヤリと笑う。

松下「これを混ぜれば爆破する。だが、指向性なんだよね」

翔太(指向性?)

黒井(……指向性マイクとかの指向性か?)

松下「分かるな?我々を中心に周りだけが吹っ飛ぶということだ」

松下「挟み撃ち……いい作戦だがあなたの負けだ、パーフェクト」パチン

冬馬(これってヤベーぞ!)

P「……吉澤さん、銃を下ろそう」

P「俺も下ろす」

373: 2013/12/06(金) 20:26:35.81 ID:GIAIarxd0
吉澤(みんな、耳を塞ぎなさい)

松下「かーかっか!懸命な判断ですよ」

P「……なあ、氏ぬかもしれねえから一つ言わせてくれ」

松下「なんですか?」

P「アンタのその喋り方さあ、キモいんだわ」

P「常に点鼻薬を持つことを、おすすめするよ」パチン

次の瞬間、バチバチと大きな音を立てて松下は崩れた。
もちろん他の敵もである。

黒井「……何が起きたんだ」

冬馬「お、終わったのか?」

吉澤「もういいよ、我々の勝利だ」

P「うまくいって良かったな」

翔太「どういうこと?」

P「おっと、濡れてるところは踏まないように」

北斗「濡れてる?……なんですかこの匂い。どこかで嗅いだような」

P「これだよ」

374: 2013/12/06(金) 20:29:18.90 ID:GIAIarxd0
俺は先ほど没収したポカリの空の容器を見せる。

P「気づかれないように、奴らの足元に流しておいた」

吉澤「指で合図が鳴ったから、スタンガンで一気に感電させたんだ」

P「アイツは鼻が詰まってるから気づかなかったみたいだな」

北斗「というか氏ぬかもしれない状況でこんな微かな匂いに気付けませんよ」

P「俺なら普通にわかるけど?」

翔太「765のお兄さん凄すぎ……」

P「ここはさすがに見回ってないみたいだな。ここを降りていけば出られる」

黒井「本当か!?」

P「俺はみんなを助けるから残るけどな」

冬馬「……俺も残る」

翔太「ええ!?」

北斗「冬馬!?」

冬馬「アンタにだけカッコつけさせたくねぇ。それに、俺だって協力できるだろ!」

375: 2013/12/06(金) 20:30:43.36 ID:GIAIarxd0
P「あのなぁ、運が良かっただけかもしれないぞ」

冬馬「それでもだ!今日のライブで、やっぱりアイツらには負けられねぇって思った」

P「だから頼むってか?危ねえんだぞ」

黒井「……貴様がいるからこそ安全だろう」

P「正気か?」

黒井「万が一ここを降りた先で撃たれたらどうする」

P「……分かった、前にもそんなこと言われたな」

P「あの時は伊織だったっけ」

吉澤「はははっ、それじゃあとは3階に行くだけだ」

翔太「それが一番危ないんじゃ……」

北斗「でも、ここにいつまでもいたら不安が増すばかりだ」

P「はいはい、それじゃ作戦を立てよっうぐ」フラリ

冬馬「おいアンタっ!やっぱりどこか撃たれて」

P「違うよ、耳が良すぎるんで至近距離での発砲が耳に響くだけだ」

北斗「完璧の代償ですか」

P「痛みを鈍化させても、すぐに治癒させるなんてできない。完璧な人間なんかいないんだよ……」

376: 2013/12/06(金) 20:32:39.02 ID:GIAIarxd0
ステージ 23:07

春香「あ、あの……」

A「黙れ」

春香「は、はい…」

安藤「こらこら、怖がらせるんじゃない」

安藤「なんだねお嬢さん。言ってみなさい」

春香「…みなさんは何が目的なんですか?」

安藤「革命だよ、腐りきった世界を正す時がきたのさ」

春香「……どうして私たちのライブなんですか」

安藤「別に君たちに恨みがあるわけじゃない」

安藤「だが、君たちの関係者には、ある人物が関わっていてね」

千早「……プロデューサーのことですか」

安藤「ほう、そんな役職だったのか」

安藤「奴は世界にとってもはや脅威だ、危険因子は排除する」

千早「……クッ!」

真「なら、どうして逃げられたんだよ!その前にだってそういうチャンスはあったじゃないか!」

Y「威勢のいい娘ね、でもそれ以上は頭と引き換えよ」チャキ

真「…!」

377: 2013/12/06(金) 20:34:05.54 ID:GIAIarxd0
亜美「うぅ……」

真美「パパ…ママ…」

あずさ「大丈夫、きっと警察が助けに来るわ」

U「警察ぅ?こりゃたまげたぜハッハ!」

O「怪我人の分際で笑ってんじゃねーよ」

U「あぁん!?なんか言ったかコラ!」

樋口「騒ぐなやかましい…転がすぞ」

W「キャー樋口さん怖ーい(棒)」

貴音「革命ですか。あなた方は、歴史に名でも残すつもりですか」

Z「発言するときは手を挙げてって習わなかった?」

X「どっちでもいいじゃん」

安藤「別に英雄になりたいわけじゃないさ」

伊織「じゃあなに?誘拐ってわけ?」

安藤「水瀬財閥にも興味はない。まあ国民の金が不平等なのはお前のせいかもな」チャキ

律子「やめて!」

378: 2013/12/06(金) 20:36:40.31 ID:GIAIarxd0
安藤「撃たない撃たない、むやみに命を奪いたくはないからね」

美希「こ、こわい…助けてハニー…」

やよい「げ、元気でいなきゃ…」ブルブル

雪歩「ふぇぇ、怖いですぅ…」プルプル

安藤「もう少しすりゃあ我々の要求を全世界に届けられる。それまでの辛抱だ」

小鳥「こ、こんなことがいつまでも続くもんですか!」

安藤「……なに?」

響「そ、そうだぞ!プロデューサーがお前らなんかすぐにやっつけるさー!」

安藤「……くく、そうだな。奴はまだ生きている」

安藤「だが、我々の元へ必ず帰る。奴の居場所は我々しかないのだから」

安藤「そもそも彼の何を知っている?」

安藤「世界をひっくり返す情報を、君たちは知らない」

安藤「それが奴を活かす理由さ。情報さえ手に入ればどうだっていい」

379: 2013/12/06(金) 20:38:11.84 ID:GIAIarxd0
安藤「世界各地で紛争が絶えないのも」

安藤「無数に宗教が派生したのも」

安藤「すべて奴は知っている」

安藤「だが奴はエリートだ、情報漏れが無いようにある工夫をしている」

安藤「奴以外は認証しないコンピューターがある」

安藤「奴のアクセスが1年間無ければ、自動的に消滅だ」

安藤「氏後の処理まで想定しているとはな……。だが奴は氏ねない」

安藤「氏ねばここにいる人質全員が道連れだと、ちゃんと理解しているようだ」

高木「……全ての情報を公開すれば、平和になるとでもいうのか」

Z「手ェ挙げて言えってば」

X「律儀なやつ」

安藤「全てではないが、可能な限り公開はしよう」

安藤「どのみち革命後には一般人には扱えねぇだろうがな」

安藤「むしろ知ってしまうことで、立ち直れなくなるかもしれないが…」

380: 2013/12/06(金) 20:40:11.30 ID:GIAIarxd0
江角「安藤、客は全員3Fに集めたぞ」

安藤「ご苦労、少し狭いが管理はしやすくなった」

A「安藤さん、無線がほとんど応答しません」

安藤「放っておけ、革命についてこれないクズどもだ」

A「イエッサー!」

安藤「……さて、もうそろそろか?」






1B  搬入口  23:09

P「いいな、これが最後だ」

冬馬「本当にいいのか?」

翔太「なんか、緊張してきたかも」

北斗「普通のUSBが、こんなにも重く感じるなんて……」

黒井「さあ、我々はさっさと6階の客席まで行くぞ」

吉澤「くれぐれも気をつけるように」

P「……それじゃ、俺の合図でやれ」

P「合図は『取れるもんなら取ってみろ』」

381: 2013/12/06(金) 20:42:17.46 ID:GIAIarxd0
1F 動力室 23:14

北斗「……あの、いいですか?」

吉澤「なんだね?」

北斗「この袋に入った粉はなんですか?」

吉澤「仮眠室にあったマイスリーという睡眠薬だよ」

翔太「睡眠薬?強力なの?」

吉澤「まあまあかな。他にも色々あったが、副作用がなるべく少ないものを選んだ」

翔太「ふーん。ねえねえ、僕も質問いい?」

吉澤「どうぞ」

翔太「最後の作戦なんだけどさ、どこまで信用できるの?」

黒井「確かに。すべて”ハズだ”をつけて話していたな」

冬馬「それに肝心の最後は任せろとしか言わなかったぜ?」

吉澤「あぁ、まぁ…すべて推測は当たるだろうね。しかし最後は私もどうするのか…」

黒井「なんでもいい。空調の電力はどれだ」

吉澤「えーっと…これだね。予備電源はこっちか。じゃあオフにしたし6階に行こう」

冬馬「推測外したら一生呪ってやる」

北斗「外れたら氏ぬから呪えないよ」

冬馬「……氏んでもあの世で呪い続けてやる」

382: 2013/12/06(金) 20:44:31.14 ID:GIAIarxd0
業務用エレベーター 23:22

俺が安藤ならどうするか。

まず部隊の人数は少ない。
精鋭部隊の数は6、7人くらい。
幹部が3人はいるかもしれない。

その人数で制圧するには、5000人近くの人質を一か所に集めるだろう。
ステージも使えば狭いが無理ではない。

そしてパーフェクトをおびきよせ、情報を聞き出す。
パーフェクトには吉澤という負傷者がいる。
つまり安藤一人でパーフェクトを対処し、他は吉澤を。

ホールの入り口は3か所。扉に向けて狙撃体制を取る。

それでも残りの人間で人質は抑えられる。

そしてパーフェクトと対峙したとき、最悪の場合は撃ち合いだ。
こちらには残り6発のリボルバーが一丁。

不利もここまで不利だと笑える。

……そういえば、亜美真美とクロックタワーやったときを思い出すな。

確かエレベーターでシザーマンに殺されたっけ。

流石に今は打ち殺せるから別にってそもそもいるわけねーよな。

383: 2013/12/06(金) 20:47:27.36 ID:GIAIarxd0
6F 観客席 扉前 23:25

吉澤「いやぁ遅れてすまない」

冬馬「何してたんだ?」

吉澤「扉に罠を仕掛けてきた」

北斗「あぁ…彼が言ってましたっけ」

翔太「大丈夫なの?」

吉澤「それはお楽しみだよ。じゃあ僕はここまでだ」

黒井「我々だけで行くのか!?」

吉澤「大丈夫、推測は当たるよ」

黒井「それなら貴様はどこに行く」

吉澤「僕は警察を非常口から呼んでくる。適度に負傷してるし逃げてきたように見えるだろ?」

吉澤「大丈夫、空調操作は怠らないから」

冬馬「……分かった。行くと言ったのは俺だ、覚悟を決める」

翔太「冬馬くん…分かった。ここまで来たら引き返せないもんね」

北斗「そろそろ時間です」

黒井「ウィ、気づかれないようにそっと扉を開けろ」

384: 2013/12/06(金) 20:48:58.40 ID:GIAIarxd0
3F ステージ裏 23:30

……暑い。どうやら作戦は進行中らしい。

吉澤【……チャンネル4-2、聞こえ…か…】

そこで吉澤さんから無線が届いた。
安藤たちとは別のチャンネルを使うように改造した。
だがもともと制度が悪いのか、改造がダメだったのか……かなり聞き取り難い。

P「聞こえた、どうぞ」

吉澤【無事に……らは着いた…ぬなよ…】

ジュピターたちは無事に配置についたようだ。
最後の出番か。





P『だから12月に入った時点で、こちらから仕掛ける。先手必勝だ』

吉澤『勝ち目は、あるのか?』

P『……今は、それ以外じゃ勝てない』




無線のスイッチを切り、おもむろにつぶやく。

P「氏ぬなよ、か……」

385: 2013/12/06(金) 20:50:45.56 ID:GIAIarxd0
ステージ 23:55

U「クソ……血が少し足りねぇ」

Y「そういえば刺されたんだっけ」

U「あぁ、なんだか睡魔が襲ってきやがった…血が頭にいってねえな」

O「名誉の負傷だよ」

樋口「足手まといになるくらいなら寝てろ……じゃなきゃ転がすぞ」

W「樋口さんマジ怖ーい(棒)」

X「俺も眠い…ふわぁ」

江角「いつものことだろ」

A「……暑くないですか?」

Z「発言するときは手ェ挙げろっての」チャキ

安藤「銃を下ろしてやれ、まったく……暇だな」

X「逃げたんじゃない?それか氏んだんだよ……ふわぁ」

安藤「オイお前ら、奴が来るまで何か一曲歌え」

386: 2013/12/06(金) 20:53:15.74 ID:GIAIarxd0
小鳥「な、なに言ってるんですか……」

安藤「歌って踊るのが仕事だろー?」

律子「っ!……なんて、人なの」

安藤「もう少ししたら警察が要求を聞いてくるだろう」

安藤「その時に世界の真の姿を教えるのさ」

安藤「全てではないがな」

千早「……『約束』でいいですか」

美希「千早さん!」

真「な、何考えてるんだよ!」

江角「安藤、お前頭大丈夫か?」

安藤「大丈夫なわけないだろう」

安藤「俺はどうしようもないバカだ」

安藤「だがいつだってそういう奴が時代を動かしてきた」

響「! それ、プロデューサーの台詞!」

安藤「で、歌うの?歌わないの?」

387: 2013/12/06(金) 20:57:09.15 ID:GIAIarxd0
あずさ「……歌いましょう」

亜美真美「「あずさお姉ちゃん!?」」

貴音「……わたくしたちは、不安になっているふぁんの皆に歌うのです」

伊織「アンタたち、正気!?」

雪歩「うぅ、わ、私足がすくんじゃって立てませぇん……」

やよい「怖いです……」グス

千早「私も、怖いわ。でも、不思議と緊張はしない」

千早「歌っていた方が、まだ気は紛れる」

千早「だからみんなお願い、一人じゃ怖くて……」

春香「千早、ちゃん……」

O「アイドルの生歌かー」

Z「手を挙げて歌うのか?」

樋口「挙げなくていい……転がすぞ」

W「もう逆に怖くなーい(棒)」

春香「……そうだね、私も緊張はしてない」

小鳥「無理しないでみんな!」

高木(クソ!極度の緊張でみんなが壊れたか…?)

高木「早く…早く来てくれ…」

A「緊張していない……副交感神経……なんだこの違和感」



P「アカペラでやるつもりか?」

アイドル「プロデューサー「さん」!!!!」

388: 2013/12/06(金) 21:00:42.40 ID:GIAIarxd0
11月25日(月) 0:02 会場前

レポーター「――えー犯人グループは未だに立てこもっています」

レポーター「今から約一時間前に銃声が聞こえて以来、現場に変化はありません」

レポーター「…ん?あれ、ちょっとカメラさんあそこを!」

レポーター「男性です!男性が非常階段を降りてきました!」

レポーター「どうやら怪我をしてるしているようですが…今、警察に保護されたようです」



吉澤「ふぅ、いやぁ疲れた」

刑事「すみません、あなた今、中から出てきましたよね」

部下「お話をお聞かせ願います。中の様子は?おい誰か、手当てを頼む!」

吉澤「まあまあ慌てなさんな。先に警視総監へ連絡しなさい」

刑事「警視総監?失礼ですがあなたのご関係は?」

吉澤「そうだねえ…『JEIO』で確認を取ってくれ」

刑事「は、はい…」

吉澤(日本特殊諜報機関JEIO。さすがに話が通じるだろう)

刑事「分かりました。警視総監から変わってくれと」

吉澤「ありがとう、手当てはいいから少し席を外してくれ」

刑事「了解しました」

389: 2013/12/06(金) 21:03:06.98 ID:GIAIarxd0
ステージ 0:04

安藤「会いたかったよ」

P「会いたくなかったぜ」

安藤「よく来たと言いたいが、むしろ来れなければこちらが困っていたよ」

P「来なきゃ紅い部屋になってただろうからな」

安藤「ククク……ヒーローは遅れてやってくるというが」

P「遅すぎたってか?俺はヒーローなんかに憧れてない」

安藤「まぁ、いい……チャンスをやろう」

安藤「今なら戻っても罰は与えない」

P「……いくつか知りたいことがある」

安藤「世界にお前の存在をバラしたのは俺だ」

P「なぜ?」

安藤「お前はあまりに脅威的だ」

安藤「優秀ゆえに、危ない」

P「俺が戻ってもその事実は変わらない。戻るメリットは?」

安藤「充分にあるさ」

390: 2013/12/06(金) 21:05:55.99 ID:GIAIarxd0
安藤「なぁパーフェクト、この世界は腐ってると思わないか?」

P「腐りきってるな」

安藤「俺は世界を変えたいんだ」

安藤「平等を掲げつつ何も平等じゃない」

安藤「異性は見た目じゃないと言いつつ最低限のラインを引く」

安藤「生まれつきの運動神経だけでイジメは発生する」

安藤「そしてイジメは命まで奪う」

安藤「勉学に励めば逆転できると思うが」

安藤「落ちこぼれが妬み、負の感情は負の感情を生み出す」

P「……それが現実だな」

安藤「だからこそ、すべてを一度無に返し再生する」

P「誰が導くつもりだ」

安藤「もちろんパーフェクトだ」

P「それが利点か」

391: 2013/12/06(金) 21:08:47.43 ID:GIAIarxd0
安藤「どうだ、戻ってこないか?」

P「……」

世界の脅威。
なんだかいい気はしないな。
俺を武器として見るなら、俺を手に入れた奴は世界を手に入れることになる。

いわば最強の武器、グングニルの槍。
その槍が直接世界の頂点に立つ。
そりゃあ誰も逆らえない。

P「確認させてくれ」

P「断ったらどうなる」

安藤「断れないさ」

P「……いったい何の罠を仕掛けている」

安藤「そういうわけじゃないが、お前をしばらくは生かすよ」

P「何が狙いだ」

安藤「分かってるだろう?」

P「……なるほど、俺の持つ情報か」

392: 2013/12/06(金) 21:11:50.62 ID:GIAIarxd0
安藤「そうだ、お前以外にアクセスできないコンピューターがあるだろ」

P「頑張ってハッキングしろ」

安藤「それができないから言ってるんだ」

P「ふーん…」

安藤「分かるか?お前の持つ力は強すぎるんだ」

安藤「一人じゃ管理もたいへんだろう」

P「俺はアンタの教育のおかげで、あいにくだが革命なんか興味はない」

P「アンタの教育のおかげで、表情も感情も捨てた」

P「アンタの教育のおかげで、銃火器の扱い方も覚えた」

P「アンタの教育のおかげで、テ口リストの制圧のしかたを覚えた」

P「アンタの教育のおかげで」

P「俺はアンタからパーフェクトの名を継いだ」

P「今日の推測も行動も、ここに来るまでの動きも」

P「俺かアンタかの違いでしかない」

P「全く同じ考えを持つ人間が二人いた……簡単な理論だが恐ろしいよな」

393: 2013/12/06(金) 21:14:42.46 ID:GIAIarxd0
6F 0:11

冬馬(推測は外れない…)

翔太(そういう意味だったんだ…)

北斗(なんだかとんでもないことになってますね…)

黒井(……つまり、ここにくるのは必然だった)

黒井(罠と分かってそれでも進んだのか…バカな男だ)




3F 同時刻

安藤「ククク……そうだな」

安藤「パーフェクトってのは初代からずっとそうだ」

安藤「姿が違うだけで、ただのコピーさ」

安藤「俺はそこも気に入らない」

安藤「気に入らなかった……なぜ俺だけ個性を消さなきゃならないのかと」

安藤「ところがお前を教育して気づいたよ」

安藤「みんないっしょにすればいいやって」

P「あんなツラい訓練、耐えれない奴はどうなる」

安藤「そんなのは革命後の世界にはいらない」

P「……どうして変わった。昔はそんな野望も捨てていただろう」

安藤「全て捨てた私が、密かに捨てきれなかったものだ」

P「……はぁ」

394: 2013/12/06(金) 21:16:31.80 ID:GIAIarxd0
P「先に言おう。俺は導き手になんかならない」

P「俺は自由が欲しい、お前の元には戻らない」

P「そして革命後の世界には、自由はない」

P「全て平等なら、悲しみも楽しみもない」

P「俺はこの世界が大っ嫌いだ」

P「任務に就くたびに、醜さを知ってしまう」

P「本当にバカだ。人類はどうしようもなくバカだ」

安藤「そうだろう?なのになぜ戻らない。自由がないからというだけか?」

P「……救いようのないバカなこの世界」

P「だがいつだって、そんなバカが時代を動かしてきた」

P「俺はこの大っ嫌いな世界が大好きで大っ嫌いだ!」

安藤「ククク……お前もパーフェクトの器じゃなかったのか」

安藤「いいだろう。大人しく情報を渡して氏ね」

P「どうしても欲しいか」

俺はゆっくりと安藤にから遠のく。
誰も背後にいないように移動する。

安藤「よこせ、いまや貴様には過ぎた玩具だ」

横目で部下を見る。わずかに目の瞳孔が小さくなっている。
暗い所では普通大きくなるのに。
準備は整った。

P「欲しけりゃくれてやる。ただし」




P「取れるもんなら取ってみろ」




395: 2013/12/06(金) 21:18:24.50 ID:GIAIarxd0
合図と同時に、6階から4つのUSBが宙を舞う。

江角「! 回収しろ!」

江角の一言で一斉に動き出す。
俺はすぐにに拳銃を構える。

まずは左手にいる男の右手を狙い撃つ。

A「ぐあぁ!」

派手に倒れ、見覚えのある女がこちらを見た。
右手を同じく狙い撃つ。

Y「っだあ!」

そこで何人かの銃弾が飛んでくる。
横っ飛びでステージから降り、体制を直しながらもうひとりの女を狙う。
左利きらしかったので当然左手を狙う。

W「あーあ、やられたー(棒)」

樋口「調子に乗るな!転がされてーのか!」

樋口は確か右利きだった。
そしてリボルバーの名手でもある。

P「フン……おっと手元が」

樋口「甘いぜ!転がしたる!」

396: 2013/12/06(金) 21:20:46.24 ID:GIAIarxd0
樋口はステージに上り、上から射撃してきた。
俺が撃った弾は、いつもよりも大きな音を立てながら飛ぶ。
だが無情にも外れ、セット一部を破壊する。

樋口がハンマーを引く隙に、視界に映った男が狙っていた。
容赦なく右手を打ち抜く。

O「あ痛!やり、返された…」

そして俺は動きを止める。

樋口はステージ上から俺を見下しながら言う。

樋口「よくやったよお前。だがこの距離じゃ俺は外さねぇ」

江角「気をつけろ、そいつは射線を見極めてかわすぞ」

樋口「ほう…なら俺の弾を避けた時にお前が撃て」

ギシ

江角「手柄は私のものか?」

ギシ…ギギ

樋口「追い詰めた俺の手柄だ。舐めてると転がすぞコラ」

江角「分かりましたよ……なんだこの音」

ステージのはるか上で、バキっとセットの柱の一部が崩れた。
それらは樋口と江角目がけて降ってくる。

樋口「チィ!邪魔だ!」ドン

江角「何をすっうわぁ!」

樋口は江角を突き飛ばし、降ってくる大きな欠片に発砲。
体制を崩しながらも、直撃はまぬがれたようだ。

江角は頭に受け、気絶してしまった。

立ち上がろうとする樋口の右手を狙い撃つ。
だが激しく動くせいで、リボルバーだけを弾き飛ばす。

そのまま抵抗できないよう、顔めがけて拳銃を構える。

樋口「ハァハァ……始めから狙いはコレか」

P「ああ、射撃訓練はアンタにしてもらったからな」

P「戦イ方其ノ四、地形ヲ利用セヨ……そう言ってたよな」

樋口「ハァ、ハァ…転がせ」

P「そうしたいが扉の近くから三人、安藤がステージから狙っていてね」

安藤「面白い、戦闘力だけを奪っていくとは……五年前のマリツール紛争の戦い方にそっくりだ」

397: 2013/12/06(金) 21:24:16.88 ID:GIAIarxd0
U「たまげたね、樋口さんと同等かそれ以上の腕前だァ」

X「でももう詰みっしょー…ふわぁ」

Z「てめぇ江角さんに手ぇ出したな!ぶっ頃す!」

安藤「さて、これで終わりかな?」

P「……かもな」

実はもう弾は残ってない。
安藤なら、きっとそれもバレている。

それでも言わないのは、俺から情報を抜き出せていないからだ。

安藤「後ろの三人、落ちたUSBを回収しなさい」

P「――いいのかな?扉を離れて」

安藤「……なんだ?」

P「これを見越して、扉の外側に爆弾をしかけた」

P「警察のスピード違反を検知する機械を応用した」

P「扉の向こうの人間がある一定の距離を離れると、音波が距離を探知して起爆する」

P「松下が昔、俺に熱心に教育してくれたよ」

398: 2013/12/06(金) 21:24:55.66 ID:GIAIarxd0
6F 0:18

翔太(警察のあの機械ってそんな危ないの!?)

冬馬(あのジジイ、なんてもんつくってやがる!)

北斗(……ブラフ?どっちにしろ爆発したら巻き込まれて終わり?)

黒井(そもそもその機械を手に入れてないだろう…ブラフか…)

        会場前 同時刻

レポーター「えーたった今この会場内で銃声が聞こえました!」

レポーター「事態を重く見た警察は、SATを非常口に配置させました」

レポーター「そのため我々取材班はえー少し離れたところに、えー避難するようにと」

レポーター「警察の方から指示がありました」

レポーター「はたして人質は無事なのでしょうか?えーー、一旦スタジオに……たった今情報が入りました!」

レポーター「どうやらSATの配置が完了したようです!えー今度こそスタジオにお返しします」

        非常口前 同時刻

吉澤「私の指示で突撃してくれ」

吉澤「テ口リストは皆、黒い服で背中に白い八咫烏のマークがついている」

吉澤「人数は10人近くいる、いずれも軍人だと思って対応しなさい」

吉澤「私も着替えたら配置につく、心してかかれ」

SAT「「「「了解!」」」」

402: 2013/12/06(金) 22:33:18.49 ID:GIAIarxd0
再開します

403: 2013/12/06(金) 22:35:26.81 ID:GIAIarxd0
3F 同時刻

P「さぁ、どうする」

安藤「……いいだろう、そっちの方が面白そうだ」

P「安藤、お前は必ず確認させる」

P「だから俺はあえて教える」

P「教えなきゃ、ここにいるみんなが吹っ飛ぶからだ……まぁ、どうしようもなかったら」

P「それもいいかもな」

安藤「……その表情を教えたのは俺だが、今は腹が立つばかりだ」

安藤「後ろの三人、扉を一斉に開けて爆弾を確認せよ」

先ほどの三人が、お互いに顔を合わせて頷く。

そして三人が取っ手に触れる瞬間

安藤「どのみち着いて来れん」

そう呟いた。

三人は触れるとどうじに苦痛な表情で悲鳴を上げ倒れる。

安藤「爆弾というのは見え透いたブラフだ」

安藤「だがアイツらは革命後の世界についてこれない」

安藤「そうなる前に前もってドロップアウトさせた」

安藤「優しいだろう?」

P「……俺が言うのも変だが、お前は狂ってる」

安藤「狂ってなきゃ、世界は変えられないんだよ」

404: 2013/12/06(金) 22:37:15.42 ID:GIAIarxd0
安藤「…感電?スタンガンでも取り付けてあったのか?」

P「ご名答、予備も合わせて3か所だ」

安藤「予備…」

P「なかなか回路を組む材料が足りなくてね」

P「いくつか蛍光灯を破壊して手に入れたよ」

安藤「…はっはーん、吉澤か…なるほど、計算外だった」

安藤「てっきり吉澤ぐらいは頃したと思っていたよ」

安藤「ということは今頃SATが来ているハズだ」

安藤「ふむ……まいったな」

A「ハァ…ハァ…ハァ…安藤、さん…ハァ、ゆ、USBを回収しました」

安藤「……ご苦労、氏ね」

A「え?」

パン

サイレンサー付きの銃は乾いた音を鳴らし、あっけなく命を奪った。

405: 2013/12/06(金) 22:38:32.92 ID:GIAIarxd0
雪歩「ひぅ!……ぅーん」パタ

真「雪歩!?しっかりして雪歩!」

貴音「落ち着くのです、音に驚いて気絶しただけですから」

O「あ、あれ?」

Y「な、なにしたって言うのよ」

安藤「実はパーフェクトにはスタンガンをあまり持たせるように言ってない」

安藤「なぜならスタンガンは言うほど強力じゃあないし、どちらかと言えばけん制用に持つからだ」

安藤「つまりは仲間がいる、この計画は失敗だ」

安藤「そこで、プランKに変更する」

樋口「な、なんだそれ聞いてね」

パン

またもや簡単に命は消える。
今度は樋口だ。

樋口「かは…っ!」

安藤「プランKはKILLのKさ」

P「……みんな、目をつぶっていなさい。絶対に見ちゃダメだ」

春香「は、はい!」

406: 2013/12/06(金) 22:40:02.61 ID:GIAIarxd0
安藤「まったく…おかげで部下をみんな撃つことになるとはね」

安藤「もう組織は終わりかな」

P「もう俺とお前、吉澤さんしかいない」

安藤「吉澤ねぇ……最も長いつきあいだったが、裏切るとは」

P「先に裏切って頃しにかかったのはお前だ」

安藤「ああそんなこともあったな」

P「……指導者になるか、氏ぬか」

P「俺の道は二つだけか」

安藤「その必要はない、お前は氏んでもらう」

安藤「USBは集まった。捕まってしばらくしたら、それこそ俺の時代が来る」

安藤「この”情報”を守るなら、檻の中が安全だろう」

P「……ふふ」

安藤「何がおかしい」

P「残念だがそいつはニセモノだ。安売りで買った」

安藤「ほう…つまりニセモノを巡って俺は自ら組織を壊したと」

P「そういうことだ。独裁者のなれの果てだよ」

407: 2013/12/06(金) 22:42:35.59 ID:GIAIarxd0
安藤「はぁ…やられたよ、まんまとやられた」

安藤「ククク…だがまだやることはある」

安藤「お前を殺さなきゃ」

P「なぁ、どうして俺を世界にバラした」

P「いままで通り秘密で良かったじゃないか」

P「どうしてだ?何のメリットがある?」




安藤「メリットなど無い、お前は力がありすぎるんだ」


P「……醜いぜ、あまりにも醜い」

安藤「そうさ、この際だからハッキリ言おう」

安藤「お前が羨ましい…お前が憎い」

安藤「勘違いするな、根幹の行動原理は正義感だ」

安藤「格差と怨恨に満ち溢れたこの世界を、平等にしたいだけなんだ」

安藤「同じパーフェクトなら、やはり平等にあるべきだ」

P「狂ってるなんてレベルじゃねーな」

408: 2013/12/06(金) 22:44:07.19 ID:GIAIarxd0
安藤「しかしまぁいい教訓にはなった」

安藤「負うた子に浅瀬を教えられるとはこのことか」

安藤「そしてこれからは少しも油断はしないようにする」

安藤「俺はお前を頃したい、お前は俺を止めたい」

安藤「分かりやすい構図だな」

安藤「違うのはただ一つ、お互いの実力は同じ、互いの考えも同じ」

安藤「このこう着状態を先にくずした方が勝ちってことだ」

P「SATがそろそろ来るだろう」

P「こう着状態に時間制限がある以上、俺の絶対的有利にはかわりない」

安藤「その時は私は自頃する」

安藤「ちょうど弾もあと2発あるしな」

P「丁度?」

安藤「お前を頃して俺も氏ぬ」

安藤「どうせ俺はもう氏ぬ運命だ」

安藤「クク、こんなセリフは小説の世界だけかと思っていたよ」

P「……以前の俺なら、氏ねと命令されたら氏んでいた」

P「今だけは、どんな手を使ってでも生きたい」

409: 2013/12/06(金) 22:46:04.31 ID:GIAIarxd0
ステージに上がり、安藤との距離を詰める。
その距離は腕を伸ばせば届くほどだ。

安藤「アイドル14人と社長、そして銃を持った戸籍の無い男が二人」

安藤「この舞台は喜劇か?それとも悲劇か?」

P「吟遊詩人気取りか?」

安藤「辞世の句の延長線上にあるものだと思え」

P「じゃあ戦国武将は皆ナルシストか」

安藤「カリスマ性があるなら、自分にも惚れると思うが、ね!」

互いに拳銃を相手の額に構えて対峙する。

春香「プ、プロデューサーさん!」

俺は目を安藤からは離さずに、静かに怒る。

P「目をつぶれと言ったろ…春香だけじゃなく、みんなだ」

安藤「少しでも隙を見せたら撃つつもりだが、そんなことはないか」

410: 2013/12/06(金) 22:48:11.65 ID:GIAIarxd0
P「口を動かすより頭を動かせ。じゃなきゃ」

安藤「今考えたことは――」

P安藤「「お前の銃がなくなっても気づかないぞ」」

言い終わると同時に俺は動く。
左掌底で銃口を上へと向けさせる。

もちろん安藤も同じ行動だ。
俺の右手も上を向く。

そこで俺は、右手の銃を捨てる。
どうせ弾は入ってない、持ってても意味がない。。
それよりも両手が開いている方が都合がいい。

左手で銃身を掴み、右手で手首を掴む。
そのまま本当は肘を曲げさせるのだが、そこは安藤。

安藤「下ががら空きだ!」

腹に激痛が走る。
大きくあとずさりしてしまった。

安藤「流石だ、それでも俺の銃を奪うとは」

そう、俺は奪った。
あとは撃つだけ。

411: 2013/12/06(金) 22:50:01.91 ID:GIAIarxd0
しかし、俺は撃てない。
俺が構える前に安藤が構えていたからである。

安藤「発想は悪くない。だがその先は考えなかったのか?」

P「俺が捨てた銃…」

頭に浮かんでいなかったわけではない。
安藤が部下を撃つとき、弾を6発入れ直した。
そしてあと2発あると言った。

つまり、2発は装填しているが、まだ予備の弾丸を持っている。
……かもしれない。

それでも勝つには、賭けに勝たなきゃならない。

安藤「お前は悩んでいる、俺が予備の弾を入れたかどうか」

安藤「お前は蹴られていたから、弾を詰めるところを見ていない」

安藤「悩んでるということは、自慢の張力が完璧には使えない」

安藤「耳元で撃たれたか、耳元で松下の爆弾が爆発したか」

安藤「それで正常に機能しないといったところだろう」

P「大正解」

悩んでいる。
仮に装填していると厄介だ。
よく銃を突きつけたまま対峙するなら、先に撃てばいいという奴がいる。

しかし、撃たれた側は反射反応で引き金を引いてしまい、結果相撃ちになってしまう。
そう、悩んでいる。




賭けに勝っていなければの話だが。

412: 2013/12/06(金) 22:53:20.52 ID:GIAIarxd0
P「悪いが一時休戦だ」

俺はステージを駆け抜け、ステージ裏に姿を隠す。

安藤「ほう、精神的に動揺するかと思っていたが……」

安藤は銃をあっという間に分解すると足元にバラバラと落とす。



安藤は銃を撃てなかった。
理由は簡単、俺が撃てなくした。
銃身をわずかに曲げておいた。

俺は怪力というわけじゃないが、てこの原理で一点に力を集中させれば曲げられる。
当然撃てば銃自信が壊れる。

安藤「お前なら、いや俺ならそうすると思ったよ」

しかし俺も撃てない。
安藤の銃は撃てるだろう。
そうでなければ部下を撃てない。

しかし安藤を撃てるかどうかは話が違う。

部下よりも強力な防弾チョッキを着ているかもしれない。

ありとあらゆる可能性を、行動と確定情報、クセ、そして俺ならどうするか――
そうやって可能性を絞っていく。

なにより考えを裏切らなければ勝てない。
出し抜くには……。

414: 2013/12/06(金) 22:55:51.38 ID:GIAIarxd0
安藤「なにを迷っている?やればいいじゃないか」

安藤「さっきみたいに弾丸の火薬量を増やせばいいじゃないか」

P「……そこもバレてるか」

樋口に向けて撃ったあの5発目。
俺は確かに火薬の量を増やして威力を挙げていた。

安藤「音が少し大きかったからね、すぐに分かったよ」

もちろん普通の人間には分かるはずもない。

安藤「つまり、お前には弾頭を外すツールも、少量の火薬もある」

安藤「そしてその判断自体は正解だ」

安藤「威力を挙げないと、防弾チョッキを貫通できない」

安藤「ところが仕方なく樋口相手に使った」

安藤「だからお前は、いや俺でも、いま弾頭を外して火薬を詰める」

安藤「かといって阻止しようとすれば、あっという間に組み立てて撃たれる」

安藤「万事休すというやつだ」

安藤の言うことはすべてが当たっている。
当たり前か、俺でも当てる。
「パーフェクト」が相手という条件なら、全てを。

P「解説役どうも、負ける覚悟はできたか?」

安藤「する必要はない」

415: 2013/12/06(金) 22:57:43.65 ID:GIAIarxd0
安藤「絶対に勝てる方法を知ってるか?」

P「……いつか言ってたっけ」

P安藤「「負けなきゃいい」」

コイツ、この状況でもまだ策があるのか?
……やはり、あれをするつもりか。

確かにあれなら、俺も動揺する。
頼む、それだけはやめてくれ。

安藤「さて、また舞台に役者が揃ったか」

P「……おとなしく両手を上に上げろ」

安藤「はいはい」

P「顔の位置よりも高く上げろ」

安藤「奪う算段も看破してるか」

P「当たり前だ」

安藤はしぶしぶ上げる。

P「ゲームオーバーでいいか?」

安藤「んー……アレをやるしかないか」

417: 2013/12/06(金) 23:01:38.03 ID:GIAIarxd0

安藤「命令だ、銃をよこせ」

P「……嫌だ」

安藤「ではしょうがない」

――やめろ。

安藤「唯一お前が欲しくても手に入らなかった情報」

――言うな。

安藤「お前の両親と出生の秘密は話さないことにしよう」

P「……約束が違う」

安藤「なんのことだ?」

P「俺が組織と世界の平和を守ったら、いつかは教えると言った」

P「いつとは明言していない……だが言わないのは約束が違う!」

安藤「だからなんだ?」

P「その情報は渡せ!」

安藤「嫌だ、ついでに言うと、いつでも消せる」

P「待て!消すのだけは…クソ!」

安藤「そうだな……銃と取引だ」

418: 2013/12/06(金) 23:02:19.45 ID:GIAIarxd0
パーフェクトは初代のコピーとは言うが、多少は違いがある。

例えば潜入に長けた者もいれば、暗殺に長けた者もいる。
俺は情報操作に秀でていることと、任務の遂行率が異常に高かった。

そして目の前にいる安藤は、カリスマ性に長けている。

巧みな話術で人の心を見通し、弱点を見つけて揺さぶる。
その逆もまた然り、人を心酔させることも得意とする。

P「チッ…分かった、情報は諦める…ただし銃は渡さない」

安藤「いいのか?」

P「構わない。これがお前のやり口だということはよく知っている」

安藤「そうか、じゃあ頑張って自分で調べるんだな」

安藤「まぁ、調べても両親の存在など見つからないがね」

両親が、いない――?

安藤「そもそも少しの教育で感情を捨て切れる人間など存在するハズがないじゃないか」

何を、言っているんだコイツは……。

安藤「人間離れした能力は、そりゃあ普通の人間じゃないんだから当り前さ」

安藤「……おや?どうやらめったにかかない汗をかいているようだな」

419: 2013/12/06(金) 23:06:32.00 ID:GIAIarxd0
安藤「そうそう汗といえばここは暑いな」

安藤「いやあ見事な手腕だよ」

安藤「睡眠薬を細かく砕いて上から撒く」

安藤「また体温を上げて血液の巡りを良くすれば、薬の効果は早く効きはじめる」

安藤「ことごとく弾をかわしたのは、射線を見極められるからだけじゃない」

安藤「脳内のメラトニンが急激に増え、それに伴って集中力が切れたから当たりずらかった」

安藤「しかも、緊張とリラックスをどちらも高められた結果、自律神経が乱れてイライラさせた」

安藤「睡眠薬もUSBも、時間経過に伴って落ちる仕掛けか…よくできてるよ」

俺に固執してるせいか、他人が行ったことの推理はすべて外れている。
当たり前だ。
吉澤さんを除き、俺に協力者がいるとは普通考えもつかない。

それより恐ろしいのは、この口車で安藤のペースに持ってかれることだ。
わずかに芽生えた感情を、ありったけの理性で抑える。

P「そろそろ解説は聞き飽きたぜ」

安藤「……あっそ、じゃあ撃てよ」

P「本気だぞ」

安藤「育ての子になら、撃たれても悔いはないさ」

俺は引き金に指をかける。

安藤「大した度胸だ。頃したくないという葛藤で指が震えるハズなのに」

だが、そこから先は少しも動かせない。
動揺を悟られないよう必氏に取り繕う。

430: 2013/12/06(金) 23:36:41.19 ID:GIAIarxd0
安藤「もしや、引けないのかな」

P「黙れ!」

安藤「怒るなよ、確かに両親がいないのは残念だけどさぁ」

P「黙れ黙れ黙れぇ!」

安藤「叫ぶな聞こえてるから」

安藤「でもさ、世界の統治者になって両親のことを知って」

安藤「何が不満なんだ?」

P「黙れと言ってるだろう!」

安藤「ああそうか。結局孤独は解消されないもんね」

P「黙れぇ!!」

安藤「そりゃあ自由も欲しくなるな」

P「黙れ……頃すぞ!」

安藤「ちょっとアイドルに優しくされたら、そりゃ嬉しくなるよな、孤独なんだもん」

P「だ、まれ…」

安藤「泣くなよ~、事実は受け入れなきゃ前に進めないだろ?」

P「…だ……れ…」

安藤「うなだれたら外すぞ?」

P「だ……黙れ……黙れよ……」

安藤「黙ってもお前は……これ以上は言わなくてもいいか」

P「ひっく……そうだ……俺は孤独だ……だからそれ以上はその口を開くな!」

420: 2013/12/06(金) 23:09:44.82 ID:GIAIarxd0
安藤「……はぁ?」

P「なに、しらばっくれてんだテメー!」

安藤「しらばっくれ……なに言ってんの?」

P「この野郎!」

安藤「あぁ、孤独ってこと?」

P「黙れ!」チャキ!

安藤「……よく考えたら間違いだった」

ダメだ。
このままだと、引き金を引いてしまう。

……ダメ?
こんなクズ相手に何がダメなんだ?

やめろ、こんなのは俺じゃない。
だが負の感情に覆われそうな俺がいる。
俺であって俺じゃない。

今にも引き金を引いてしまいそうな俺は、誰なんだ?

421: 2013/12/06(金) 23:13:17.56 ID:GIAIarxd0
安藤「――俺じゃ、ダメか?」

うつむいていた顔を思わず上げてしまう。

安藤「そりゃ俺はお前の本当の親じゃない」

安藤「だけどさ、ガキの頃から知ってる」

安藤「一番長く接してきたのは俺だ」

ゆっくりと手を差し出してくる。

安藤「戻ってこい、お前の居場所はここだろう?」

P「俺の、居場所…」

春香「プロデューサーさん!」

千早「プロデューサー!」

安藤「孤独ってツライよな…」

やよい「プロデューサー!」

美希「ダメなのハニー!」

422: 2013/12/06(金) 23:16:10.11 ID:GIAIarxd0
P「孤独は…嫌だ…」

高木「君ぃ!落ち着くんだ!」

律子「プロデューサー殿!」

安藤「お前は、誰かに必要とされたかった」

雪歩「プロデューサー!ダメですぅ!」

響「そんなの聞いちゃダメだプロデューサー!」

P「誰かに、居てほしいと言われたい…」

伊織「アンタが必要なのよプロデューサー!」

亜美「兄ちゃん!そんなのってないよ!」

安藤「今からなら遅くはない。お前と二人なら、SATなんか大したことはない」

貴音「いけませんあなた様!」

真「こっちを見てプロデューサー!」

423: 2013/12/06(金) 23:18:39.16 ID:GIAIarxd0
安藤「知っているだろう?世界は闇に包まれている」

真美「兄ちゃん!真美たちを守るって言ったじゃん!」

あずさ「目を覚ましてくださいプロデューサーさん!」

安藤「俺が、その闇から守ってやる……俺以外には誰も守れないだろう?」

P「守る…」

小鳥「プロデューサーさん……プロデューサーさん!」
















――気づけば俺は、銃を手渡していた。

424: 2013/12/06(金) 23:25:40.27 ID:GIAIarxd0
安藤「ククク……分かっていたよ、こうなることは」

高木「そんな…そんな…」

P「安藤さん、俺に指示をください」

安藤「では……そのまま待機だ」

安藤が銃を持ったまま、五歩後ろに下がる。

安藤「指示を出そう」

安藤はゆっくりと、その銃を上げる。

安藤「統治者となる神は一人でいい。パーフェクトは二人もいらない」

安藤「世界のために、氏ね。孤独であわれな男よ」

やられた。
結局やつのペースに呑まれた。

氏ねと言われると、命令通りにしようとする自分がいる。
あぁ、ここで氏ぬのかと思うと、途端に恐怖は消え、冷静さが戻ってくる。

そして気づく。

やられた。
こんなことになるなんて……

425: 2013/12/06(金) 23:26:08.51 ID:GIAIarxd0















         分かっていた















426: 2013/12/06(金) 23:26:37.00 ID:GIAIarxd0
~回想~


どうあがいても安藤相手に心理戦で勝てないことは分かっていた。


安藤『なにを迷っている?やればいいじゃないか』

安藤『威力を挙げないと、防弾チョッキを貫通できない』

安藤『だからお前は、いや俺でも、いま弾頭を外して火薬を詰める』

安藤『万事休すというやつだ』

安藤は分かっていた。
最後に必ず銃を手に入れると。

そして安藤は俺でもある。
安藤の考えは俺の考えでもある。

だから俺は1発の弾頭を外した。




そして火薬を、すべて抜き取って戻した。

427: 2013/12/06(金) 23:28:41.41 ID:GIAIarxd0
P「……目が覚めたぜ」

P「やっぱり、俺はもう戻らない」

P「俺はもう、孤独じゃない」

P「俺には、家族がいる……こんなにも立派な家族がな!」

いま引き金を引かれても、弾はただジャムるだけ。
そこで生まれる隙を、俺は絶対に見逃さない。
負けない……俺は必ず、みんなを守る。



     吉澤『勝ち目は、あるのか?』

   P『……今は、それ以外じゃ勝てない』


……例え、命を犠牲にしてでも。
俺の命で助かるなら……

P「俺の命なんか、喜んでくれてやる!安藤!」



安藤「……ククク」

428: 2013/12/06(金) 23:31:15.60 ID:GIAIarxd0






    安藤「分かって、いたよ」






429: 2013/12/06(金) 23:34:12.28 ID:GIAIarxd0
安藤「正常な判断ができなくなる……それをお前は恐れた」

安藤「お前は俺で、俺はお前だ」

安藤「最後の罠も、見事だが残念だったな」

安藤「どうして五歩離れたか分かるか?」

――しまった。

安藤「正常な思考に戻る前に、距離さえ取れれば俺の勝ちだった」

安藤「なぜなら」

弾倉を抜き、一番上の弾丸。
トラップバレッドを親指で弾き捨てる。

安藤「ジャムらせる弾を、取るための安全圏が欲しかったからだ」

P「……ふふ、分かってたよ」

わずかに安藤の表情が曇る。

安藤「……まだ、何かあるというのか」

P「いや、もう本当に手は尽きた」

P「俺の、負けだ」

433: 2013/12/06(金) 23:44:36.57 ID:GIAIarxd0
P「春香」

春香「い、イヤです……聞きたくありません!」

P「お前はドジでバカみたいに明るくて前向きで」

P「お前のお菓子はちょっと甘ったるくて」

P「最初は危ないヤツだって思った」

P「だが……いままでありがとう」

春香「うぅ……」ポロポロ


P「千早」

千早「やめてください!」

P「これほどまでに面倒な女はそういない」

P「頭が固いというか、なんというか」

P「だがそれでも、お前の魅力と歌は、かけがえのない宝になったよ」

P「お前の歌は、最高だ」

千早「……くっ!」

434: 2013/12/06(金) 23:46:28.95 ID:GIAIarxd0
P「雪歩」

雪歩「うぅ……」

P「いつも劣等感をまとっているし」

P「犬も男も苦手だって本当に大変だった」

P「だが時に癒され時に芯の強さで成長し」

P「お前を見てるのが、初めて心から楽しいと思えた…ありがとう」

雪歩「こんなの、あんまりですぅ…」


P「やよい」

やよい「グス、うぇ、うう」シクシク

P「周りを元気にできるなんて、本当にすごい」

P「お姉さんだからか、大人でもあった」

P「苦労を苦労と思わない、そんなお前だからみんな好きなんだろうな」

P「ハイタッチ、嬉しかったよ」

やよい「うわあぁぁん……ぷ、プロデューサー…」

435: 2013/12/06(金) 23:50:58.96 ID:GIAIarxd0
P「律子」

律子「……なんですか」

P「お前は俺を目標にするなんて言ってたけど」

P「俺の目標はお前だった」

P「データだけじゃない、人の気持ちすらもちゃんと考えて行動できる」

P「それが大事だって、俺は教えてもらったよ」

律子「……そう、ですか……」


P「伊織」

伊織「……黙りなさい」

P「わがままで、自信家で、猫かぶって」

P「でも本当は優しくて、努力家で」

P「許されるなら、お前の執事に生まれ変わりたいよ」

P「大事に思ってくれるからこその罵声、最後に聞かせてくれ」

伊織「うるさいうるさいうるさーい!アンタなんて…アンタ、なんて…!」

436: 2013/12/06(金) 23:54:16.83 ID:GIAIarxd0
P「あずさ」

あずさ「はい」

P「俺はお前と手を繋いだが、そこで人のぬくもりってやつを知った」

P「……こうなったのも運命、なのかな?」

P「だとしたら、俺はお前に出会えたこの運命にこう言おう」

P「ありがとう、願わくばまた会わせてくれ……ってな」

あずさ「はい……ダメ、涙が……」ポロポロ


P「亜美」

亜美「兄ちゃぁん…グス…」

P「よく、頑張ったな」

P「後先考えないお前にはよく振り回された」

P「でも、その行動力はお前の最強の武器だ」

P「……俺も、俺の役目を果たせたかな?」

亜美「うぅ……兄ちゃぁん!」

437: 2013/12/07(土) 00:03:21.92 ID:6lPse6jn0
P「真美」

真美「イ゛ヤだよ兄ぢゃん!」

P「……ゴメンな、亜美とレギュラー取らせるって、約束したのに」

P「行動力だけじゃなく、思いやりの気持ちをもった」

P「超ナイスでグレートな女の子だ」

P「本当に、ゴメンな」

真美「グス、ずるいよ…イヤだよ…」


P「真」

真「ボク、ボク…」ボロボロ

P「誰よりも強く、誰よりもカッコイイ」

P「誰よりも最強だ。間違いなく」

P「俺は知ってる、最強だがカワイイ瞬間はもっと最強だって」

P「……誰が何と言おうと、お前が可愛くないなんて認めない」

真「ぷ、ぷろでゅーざぁ!ボクは!ボク、は……うう」ボロボロ

438: 2013/12/07(土) 00:04:02.37 ID:6lPse6jn0
P「美希」

美希「ハニー…」

P「ありとあらゆることにおいて小悪魔だったよ」

P「どうすれば本気出すか、本気ならどれだけすごいか」

P「俺の知ってるなかでこれほど先の展開を裏切ってくれた奴はお前だけだ」

P「もっとお前を見ていたかった…ありがとう」

美希「待ってハニー!そんなの、ヤ!だって美希、美希は……!」


P「響」

響「な、なんだよプロデューサー!」

P「実は感情を教わったのはお前からだ」

P「その豊かな表情と、ダンスへの情熱」

P「他にも数えきれないほど、完璧だった。完璧を目指すからこそ、美しくなれるのかな」

P「響、にふぇーでーびる」

響「うぅ…か、完璧なんて…まだまだだから…こ、こんなの嫌だぞ!」

439: 2013/12/07(土) 00:07:35.46 ID:6lPse6jn0
P「貴音」

貴音「……はい」

P「月は一人じゃ輝けない…それでも、輝けば美しく華麗で儚い」

P「そんなお前を見たくて、俺はお前を照らす太陽になりたかった」

P「だけどお前は月のように美しい太陽だった」

P「こんな俺を慕ってくれて、感謝しきれないな」

貴音「あなた様…それは、わたくしの言葉です…言い足りないのでまだ居てください!」


P「小鳥」

小鳥「……プロデューサーさん」

P「いつもみんなを一番支えているのは、あなたでした」

P「俺はみんなに愛されてるって、言ってくれたのもあなたでした」

P「そんなあなたも、みんなから愛されているんです」

P「こんな俺でも支えてくれて、嬉しかったよ」

小鳥「いやです…お別れなんていやです!」

440: 2013/12/07(土) 00:13:30.62 ID:6lPse6jn0
安藤「時間だ」

P「……あぁ、そうだな」

安藤「ククク…知ってるか?頭蓋骨は意外と硬い」

P「だから自殺の時は銃口を咥えた方が成功するって話か」

安藤「そうだ、そこで心臓を狙うことにする」

安藤「その前に、防弾チョッキを着ていないか確かめる」

P「もういいだろう、最後の1発は威力を上げてあるんだから」

安藤「ククク…それもそうだったな。俺を撃つために威力を上げた弾丸を2発目に仕込んだ」

安藤「完全に裏目に出たな」

P「……安藤、俺は撃たれて氏ぬ」

P「だが、銃声とともにSATが来るぞ」

安藤「知っている、もうすぐ近くまで来ている事ぐらい分かるよ」

あと5分もしないうちに、きっと突入するだろう。

安藤「時間稼ぎにしては、大成功だな」

442: 2013/12/07(土) 00:18:28.22 ID:6lPse6jn0
11月25日 0:49

扉(外側)

吉澤「いいか、銃声がしたら一気に突撃だ」

SAT「了解!」






ステージ

安藤「……さらばだ」




バン




空気の層を突き抜け、あっという間に俺に飛んでくる。
そして、弾丸は俺の胸を捉えた。

勢いよく後ろに倒れる。


「突撃ーーー!!!」


春香「イヤ…イヤ…いやあああぁぁぁぁぁ!!」

443: 2013/12/07(土) 00:19:24.33 ID:6lPse6jn0
SAT「犯人を確保!遺体が数人転がっている、確認急げ!」

SAT「人質との接触に成功!ただちに避難誘導します」

千早「プロデューサー!」
雪歩「プロデューサー!」

SAT「君たち!ここは危ないんだ、ただちに離れるぞ!」

真「イヤだ!プロデューサーを置いてなんかいけない!」
あずさ「こんなところで終わるわけがありません!」
真美「そうだそうだ!だって兄ちゃんなんだから!」

SAT「くそ、おい!こっちにも手を貸せ!」

響「自分完璧なんかじゃないぞ!だから完璧にする義務があるさー!」
やよい「もやし祭りにまだ招待してません!だから絶対に連れて行きますー!」
律子「私一人で12人も見れるわけないでしょう!寝てないで起きてください!」

SAT「こうなったら無理やり連れて行くしかない!」

伊織「どこ触ってんのよ変態!アイツじゃなきゃ抱っこなんかさせてって離しなさい!」
美希「離すの!勝手に連れて行かないで!ハニーがまだ残ってるの!」
亜美「はーなーせー!おーぼーだ!訴えてやるー!」

SAT「こっちにもまだいるぞ!」

小鳥「プロデューサーさん!プロデューサーさん!」
貴音「あなた様!あなた様!」

444: 2013/12/07(土) 00:29:14.38 ID:6lPse6jn0
会場外 0:53

レポーター「たった今SATが突入しました!」

レポーター「どうやら人質の救出に成功したようです!」

レポーター「あ!あれが主犯でしょうか!顔は見えませんが両手を拘束されています!」




SAT「車に乗れ!」

安藤「ククク……アイツの氏をもって作戦を終了する」

安藤「俺は諦めんぞ…最大の障害が無くなったいま、いつの日か…」

安藤「いつの日か必ず世界を変えてみせる」

安藤「クックック…」


―――――――――
――――――
――

445: 2013/12/07(土) 00:29:46.16 ID:6lPse6jn0
12月24日(火) たるき亭 13:07

高木「やぁ、遅れてすまない」

黒井「この距離でも遅刻するのか貴様は」

高木「今日は家から来たんだ」

黒井「フン…調子はどうだ」

高木「あれからしばらくはマスコミが騒ぎたてたからね、あと2か月は活動自粛だ」

黒井「そうか……」

高木「ジュピターは元気かね?」

黒井「活動に影響はない」

高木「そうか。あの会場に、お前とジュピターはいなかったことになってるのだが」

黒井「マスコミに圧力をかけて、我々のイメージダウンにつながらないようにしただけだ」

高木「そうか…ケガなどが無くてなによりだ」

446: 2013/12/07(土) 00:38:38.02 ID:6lPse6jn0
黒井「……今日はクリスマス・イブだ」

高木「街は賑やかだな」

黒井「ささやかながら、貴様の事務所宛てにプレゼントを送った」

黒井「ジュピターの連中が、どうしてもというからな」

高木「……ありがとう、きっと彼女たちも喜ぶよ」

高木「実は、今日は萩原君の誕生日でね」

高木「仕事もできない状況だし、事務所で夜にお祝いしようということになったんだ」

黒井「私は行かないぞ、ジュピターも行かせん」

高木「……そうか」

黒井「……話だけなら聞いてやる」

高木「はは、まあそれでだねぇ……萩原君は誕生日を優先されてきたそうなんだ」

黒井「だから今年はクリスマスのお祝いをしようということか?」

高木「あぁ、みんなで決めたみたいだ」

447: 2013/12/07(土) 00:43:03.29 ID:6lPse6jn0
黒井「……今日はクリスマス・イブだ」

高木「街は賑やかだな」

黒井「……ささやかながら、貴様の事務所宛てにプレゼントを送った」

黒井「ジュピターの連中が、どうしてもというからな」

高木「……ありがとう、きっと彼女たちも喜ぶよ」

高木「実は、今日は萩原君の誕生日でね」

高木「仕事もできない状況だし、事務所で夜にお祝いしようということになったんだ」

黒井「私は行かないぞ、ジュピターも行かせん」

高木「……そうか」

黒井「……話だけなら聞いてやる」

高木「はは、まあそれでだねぇ……萩原君は誕生日を優先されてきたそうなんだ」

黒井「だから今年はクリスマスのお祝いをしようということか?」

高木「あぁ、みんなで決めたみたいだ」

448: 2013/12/07(土) 00:46:16.47 ID:6lPse6jn0
高木「あとは、彼がいてくれれば良かったんだがね…」

黒井「忘れろ、所詮捨て駒だ」

高木「お前もなかなか気に入っていたみたいじゃないか」

黒井「私が?ノンノン目上の者に対する言葉づかいを直してやろうと思っただけだ」

高木「それはお前だけじゃないかな」

黒井「……」

高木「……」

黒井「早く新しいプロデューサーを見つけろ」

高木「ああ」

黒井「日高舞に追い越されるぞ」

高木「そうだな」

黒井「…アデュー」

高木「メリークリスマス」

449: 2013/12/07(土) 00:51:39.76 ID:6lPse6jn0
某所 14:25

吉澤「……安藤」

吉澤「戦友として、君を救えなかったな」

吉澤「……私の友であり」

吉澤「彼にとっては親同然だった」

吉澤「……さて、何か新しい記事でも探すとしよう」

渋沢「見つけた」

吉澤「ん?あー如月千早の記事の」

渋沢「そうだ、アンタを探していた」

渋沢「ヒャハハ、いったいあの男は何者だ?」

渋沢「妙にアンタと話していたみたいだからな、アンタをつつけば何かは出るだろっ…ぅぐ!」

吉澤「……ご愁傷様だねぇ、今すぐ病院に行ったほうがいいよ」

渋沢「うぐわぁ!な、んあ!急に息が……!」

吉澤「安藤と接触したな?少しでも証拠を残さないために一服盛られたな」

吉澤「連れて行ってやる。運が良ければ一生入院で済むよ」

渋沢「あああぁぁぁあああぁぁああぁああぁぁあぁああああぁ!!」

450: 2013/12/07(土) 01:01:33.82 ID:6lPse6jn0
765プロ事務所前 17:54

真「あれ?春香?」

春香「あ、真!会いたかったよー!」

真「何時からいたの?集合時間18時だよ?」

春香「えっと30分くらい前に…」

伊織「早すぎるわよ」

やよい「でも伊織ちゃん、早く行こうって」

伊織「それは別なのよやよい!」

春香「まぁまぁ。伊織、やよい、久しぶり!」

伊織「そうね、元気してた?」

やよい「お久しぶりですー!」ガルーン

千早「ふぅ、家を出た時は吹雪みたいだったわ」

春香「千早ちゃーん!」

千早「春香、本当にいつも元気ね」

やよい「私も負けてられませーん!」

千早「ふふ、高槻さんはもっと元気ね」

451: 2013/12/07(土) 01:06:15.15 ID:6lPse6jn0
響「うぅ、寒いぞ…」

貴音「こんばんわ皆様」

真「あ、響、貴音さん!」

貴音「こんばんわ真、真、今日は楽しみですね」

真「え、えっと…まこと…あぁ、そういうことか!」

千早「くくく」プルプル

響「千早の沸点もいつも通り低いなー」

亜美「ただいま参上!」

真美「いえーい!」

やよい「亜美、真美、なんだか今日はとっても可愛いですー!」

亜美「んっふっふー、やはりやよいっちは気づくか」

真美「さすがじゅーしームックの申し子!」

律子「それを言うなら純真無垢ね。そもそもジューシームックってなに?」

響「今日はどこか変わってるのか?」

春香「んー…あ!そのマフラー!」

452: 2013/12/07(土) 01:10:02.93 ID:6lPse6jn0
真美「おーさすがはるるん!」

亜美「ミキミキが雑誌でオススメしてたやつだよ!」

美希「うー寒いの…」

律子「噂をすれば」

美希「みんなこんばんあふぅ」

伊織「いつ見ても眠そうというか…」

美希「あ、でこちゃんそのホッカイロ借りるの」

伊織「それぐらいいいわよ、あとでこちゃんゆーな」

美希「さすがなの、これからはなんでもでこちゃんに借りるの」

伊織「少しは自分で用意しなさいよこの金髪毛虫!」

雪歩「お、遅くなっちゃいましたかぁ?」

あずさ「ごめんね雪歩ちゃん、つい雪だるま作りに夢中になっちゃって」

響「いったいどういう状況なんだ?」

453: 2013/12/07(土) 01:16:56.94 ID:6lPse6jn0
小鳥「す、すみませーん!電車が遅れちゃって!」

千早「これで全員集合ね、ぷぷ…」

真「まだ抜けきってなかったんだ…」

春香「あれ?社長とプロデュー、……社長は?」

小鳥「え?いないの?」

高木「ふぅ、なんとか飲み物が買えたよ」

小鳥「社長!遅刻ですよ!」

律子「いや言える立場じゃないでしょう…」

社長「ハッハッハ、仲良きことはいいことかな」

雪歩「仲、いいんでしょうか…?」

あずさ「うふふ、いつも通りで平和ね~」

小鳥「いつも通り……」

一同「……」

伊織「……小鳥」

454: 2013/12/07(土) 01:17:25.22 ID:6lPse6jn0
小鳥「あ、あの…私、そういうつもりじゃ」

伊織「違うわ、早く鍵開けて。みんな待ってるわ」

小鳥「そ、そうね、今開けるわ」


カシャン


小鳥「……アレ?」

響「どうかしたのかピヨ子ー?」

小鳥「なんか、鍵がかかっちゃった」

あずさ「え、えっとーそれって鍵が開いてたってこと?」

455: 2013/12/07(土) 01:20:08.10 ID:6lPse6jn0
律子「小鳥さん?」

小鳥「ちゃ、ちゃんと昨日、閉めて帰りましたよ!?」

真美「じゃあ誰が?」

亜美「しゃちょーが犯人だー!」

高木「わ、私は昨日は休んでいたが…」

雪歩「まさか、ど、泥棒さん!?」

真「えぇ!?」



美希「じゃあ開けてみればいいの」



千早「み、美希?」

美希「美希たちはまだ飾り付けもやってないんだよ?」

美希「ホントに誰かがいるなら、美希たちみんなで捕まえちゃえばいいって思うな」

貴音「しかし……もしも、もしもあの安藤とかいう者の仲間がいたとしたら…」

高木「……分かった、私が代わりに開けよう。下がっているんだ」

456: 2013/12/07(土) 01:22:55.67 ID:6lPse6jn0
18:03

カチャン、と音がしてドアは開く。

高木「電気は……あった」

765プロの事務所内に、明かりが灯る。

高木「な、なんだこれは……?」

小鳥「どうしたんですか社長って、ええ!?」

その後も次々と入っては驚きの声を上げる。

どうして、飾り付けがしてあるのか、と。

457: 2013/12/07(土) 01:23:33.14 ID:6lPse6jn0










P「メリークリスマース! チキンあるけどみんな食う?」










458: 2013/12/07(土) 01:27:57.74 ID:6lPse6jn0
春香「プロデューサーさん!」
千早「プロデューサー!」
真「えぇ!?プロデューサー!」
雪歩「プ、プロデューサー!」
美希「ハニー!」
やよい「プロデューサー!」
伊織「この変態!なんでいるのよ!」
亜美「兄ちゃん!」
真美「兄ちゃんだー!」
あずさ「プロデュ~サ~さ~ん!」
響「プロデューサーじゃないか!」
貴音「あなた様!」
律子「プロデューサー殿!」
小鳥「プロデューサーさん!」
高木「き、君ぃ!」





P「よっ」

459: 2013/12/07(土) 01:28:33.02 ID:6lPse6jn0
その後はまぁ大変だった。

なんでいるんだとか。
どうして生きてるんだとか。
幽霊じゃないのかとか。


P「正直、本当にもうダメだと思った」

P「でもよ、氏亡フラグは10人以上立てれば生存フラグかハーレムフラグになる」

P「だろ?亜美」

亜美「それ、夏合宿の時の…」

P「生まれて初めて神頼みってやつをしたよ」

P「そしたらさ、弾丸は心臓に当たらなかったんだ」

俺はかつてつけていた腕時計を出す。
弾丸が埋まっていて、当然壊れている。

P「こいつは耐久性の高い特別使用なんだ」

P「利き手側に着けて、手首のささやかな保護に使うんだ」

P「ちょうど別の着けてたから、内ポケットに入れてたんだ」

P「ほら、丁度0時49分で止まってる」

461: 2013/12/07(土) 01:32:08.19 ID:6lPse6jn0
P「まぁこの時間が、本当の俺が始まった時間ってことだな」

P「……なんだ、どうしてみんなそんな怖い顔してんだ?」

P「――え?本気で心配して本当に悲しかった?」

P「悪かったって、俺だってまさか助かるとはさぁ」

P「……許してくれんのか?」

P「条件? 言うべき言葉?」

P「えー…この度は本当にご心配をおかけして大変申し訳ございませんでした」

P「……足りない?」

P「え、えーと…焼き土下座でもすればいいか?」

P「いやぁさっきコンビニで立ち読みしたら出てきたから……」

P「そんなことじゃない? じゃ、じゃあ血を賭けて…」

P「謝罪はもういい? じゃあなんだよ?」

P「ああそれか…あーいやなんでもございません」

P「なに、とびっきりの笑顔で?」

P「あーもう分かったよ、精一杯やるよ。こんな感じか?」

P「な、笑うなよ…ったく、いいか?言うぞ?」

462: 2013/12/07(土) 01:34:09.30 ID:6lPse6jn0





       P「ただいま!」





「「「「「「「「おかえりなさい!」」」」」」」」





エンディング曲
Colorful Days (M@STER VERSION 12 Colors)

465: 2013/12/07(土) 01:38:39.05 ID:6lPse6jn0
これにて終わりです。
読んでくださった方、レスしてくれた方、ありがとうございました。

今のところは続編とかはあまり考えていませんが、
気が向いたら書くかもしれません。

アドバイスや疑問等があったらご自由にどうぞ。
ただし荒らしは他の人の迷惑になりますのでやめてください。




ちなみに実はスパイという設定と負ける事、
最後のオチ(?)ぐらいしか考えていませんでした。

なので途中で結末にどう持っていくべきか悩みました。
なので最後の方はちょっと強引でした、すみません。

このスレはあとはアイマス雑談スレとかにでもしてください。
もしくはこういうの書いてくれとか言われたら書くかもしれません。
※あまり期待はしないでください

それではみなさん、また会う日まで(`・ω・´)ノシ

467: 2013/12/07(土) 01:43:05.00 ID:6lPse6jn0
携帯からすみません、急にpcが動かなくなったので

依頼を出してきます

初心者ですみません

470: 2013/12/07(土) 01:54:20.56 ID:T7FZh9TK0

引用: P「どうも。元スパイの赤羽根です」