1: 2016/11/23(水)12:56:18 ID:gKK
独身の頃の話なんやけど、地方から東京の本社に採用になった。
とはいえいずれ地方の支店に必ず戻されるんだけど。
そんで総務部が東京だけど23区じゃないところのアパートを借り上げ社宅として用意してくれた。
そこが見た目はいいんだけど手抜き施工なのかしらんが、とにかく壁が薄かった。

引っ越し初日。やっとベッドを設置して寝たが、初めての一人暮らしで緊張していろいろ考えていたら
かすかにテレビの音が聞こえるのがわかった。
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)

3: 2016/11/23(水)12:58:18 ID:gKK
隣のやつの生活音が聞こえるのか!ってなぜかしらわくわくした。

翌日、一応引っ越しのあいさつに行ったら30歳ぐらいのややイケメンの兄ちゃんだった。

6: 2016/11/23(水)13:01:28 ID:gKK
ちなみにアパートの部屋なんだけど、2階建てで各階4世帯づつ。
俺は階段上がってすぐの角部屋。

越してきて半月ぐらいたった夜中。
ふと猫の鳴き声らしき音で目が覚めた。

アッ アッ ん やだ 痛いって ん あ あ あ

7: 2016/11/23(水)13:01:41 ID:5j9
ひなだお!

8: 2016/11/23(水)13:03:23 ID:gKK
!!!!!!!!!!!! おんな連れ込んどるーーーー

そのアパートの部屋の作りは隣と反転するような間取り。
水回りの配管とかの関係だと思うけど。
つまり俺がベッドを置いている壁の向こうが隣のベッドらしい。

9: 2016/11/23(水)13:07:41 ID:gKK
そこでおれは漫画でしか見たことのないイニシエの技を使ってみることにした。

壁にガラスのコップをつけてさらに音を聞きやすくするアレだ。

結果は全く意味がねえ。こんなことするぐらいなら直に耳付けたほうがいい!

隣の兄ちゃんは壁の向こうで俺がコップをもってきたり置きにいったりバタバタしてることを
しらず、せっせと女を鳴かせる。

あっ ん  あ え?こう? あっ あっ うっ
声に連動してギッギッギッギッギッ ベッドの軋みがうるせえ。

12: 2016/11/23(水)13:10:03 ID:gKK
やがて訪れる静寂。
ギッっとベッドが大きく軋んだあと、女が何か喋ってる声。

再びベッドが軋み はっきり女の声が聞こえた。

「もー こんな時間じゃん!明日起きれないよ」


14: 2016/11/23(水)13:12:50 ID:gKK
俺も明日早いんだよーと思いつつお片付けして寝たわ!ボケがっ!くそー

それから週末になると女が来ていることが分かった。
サッカーファンらしいんだけど、女と盛り上がって騒ぐのはマジで殺意が沸いた。
ゴーーーーーーールじゃねえよ!くそボケが!!!

17: 2016/11/23(水)13:22:14 ID:gKK
そして半年が過ぎようとしたある日。帰宅すると隣の家の玄関前に若い男が立っていた。
隣の部屋の真下に住む大学生に兄ちゃんだった。

俺をみるとキョドった顔して話しかけてきた。
学生「なんかすげー喧嘩してるんです。うるさくて…」
俺「え?」 って思う間もなく廊下でもわかる女の怒鳴り声

ざっけんなよー キイいいいい くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!

うわぁ うるせぇ これはうるせぇ と思っていたら階段を上がってくる女。

30歳後半と思われるちょっと暗めのその女性は俺とは反対の隣に住んでる人だ。
俺たちをみてびっくりしていたので事情を話したら迷惑そうな顔をした。

18: 2016/11/23(水)13:32:12 ID:gKK
怒鳴り声のほかにもドッスンバッタン なんかぶつかるような音もしている。

すると学生の兄ちゃんが「あの、一緒に苦情言ってもらえませんか?」と言い出した。
一人では苦情を言う勇気がなかったんだろうな。俺が代表してピンポン押して
「すいません!」とでかい声で呼んでみた。
ちなみに暗い女は巻き込まれたくないようで鍵を出して逃げようとしていた。

しばらくすると、ややイケメン(面倒だからコイツをヤヤイケとする)が顔を出した。
苦情を言われると察知していたらしく、薄ら笑いでへらへらしながら
するっと廊下に出てきて「すいません。お騒がせしてー」と一人一人をみていった。

暗い女は私関係ありません的な感じでカギを出そうとしてモタモタしていたので、
ヤヤイケから謝られて顔が引きつっていた。

学生の兄ちゃんは俺に(言ってくださいよ)的な視線を送ってくるだけなので
時間も遅いし、俺はもう寝るからほどほどにしてくださいよ。的なことを言ったと思う。

ヤヤイケはヘラヘラっとはい、はい、すんませんでしたー って謝って部屋に戻ったんだけど
一瞬部屋の中が見えた。

入ってすぐがキッチンなんだけど、その床にペタっと座り込んで髪ぼさぼさで泣きじゃくってる女がいた。

19: 2016/11/23(水)13:43:44 ID:gKK
それから3日後の深夜、再び言い争う声が聞こえてきた。
女が来るのは大体週末だったんだけど、この時は平日だった。
俺はとっくに寝ていたんだけど、男の怒鳴り声で飛び起きた。
壁にドーンと衝撃音もあって、こっちの部屋まで揺れたわ。

ヤヤイケの声で ざけんなくそがー 調子乗ってんじゃねえぞ!
何べんも言ってんだろうがーー 

ドスン ガン!! 

女の金切り声で なんだと思ってんのよおおおおおお
なんだと思ってんのよおおおおおおお

止めろ馬鹿! ふざけんな! 












うわっ!!!

おい! おい! 馬鹿じゃねぇの?! 動くな! 動くなって! 




ドタバタ ドタバタ



そして俺の家のチャイムが鳴り、ドアが乱暴に叩かれた。









 

20: 2016/11/23(水)13:48:14 ID:H0j
NHKですー

21: 2016/11/23(水)13:48:56 ID:gKK
出ると髪振り乱したヤヤイケがいて「すんません、ちょっと来てもらっていいですか?」
と、なぜか俺がよばれた。 

俺も喧嘩の仲裁ならお断りだったんだけど、聞こえてきた音とヤヤイケの様子で
ただならぬものを感じてヤヤイケの家にいった。
ベッドのある部屋が血だらけになってて。
ベッドに女が腰かけていたんだけど、左手首を右手で押さえているんだけど
指の間から血がどんどん流れていた。血の勢いってすごいのな。


24: 2016/11/23(水)13:59:44 ID:gKK
ヤヤイケに救急車呼んだんですか?って聞いたら
「てっが 手がふっ 震えて ボタンおせなくて…」
たしかに携帯握ってるのに手がブルブルしてた。
自分の携帯を取りに行って自宅から救急車呼んでヤヤイケの部屋に戻った。

ヤヤイケは役立たずだった。
女の周りでオロオロとしているだけで、女の背中をさすったり意味不明なことしてた。
タオルもってきて!って命令したらピョン!と立ち上がって四角いタオルもってきた。
一枚じゃねえ!もっともってこい!それにちっせよ!普通のタオルもってこい!って怒って女に
とりあえずこれで押さえてって四角いタオル渡した。女は顔真っ赤にして嗚咽してたけど
言われたとおりにタオルで押さえてたんだけど、血の勢いがすごくてビビった。
水道の蛇口を布で押さえて水出した感じ。わかるかな?血がタオル貫通して盛り上がって出てくる。
ヤヤイケがもってきた長めのタオルで腕を縛って止血してさらに手首とひじの間付近もヤヤイケに押さえさせた。

俺も救急なんてしたことない素人だけど、何もやらないよりましだろうぐらいにやったから間違っているかもしれん。

しばらくして救急車が来て、女とヤヤイケは去っていった。
俺も事情聴かれたりして寝床にもどれたのは朝だった。2時間ぐらいしか寝れなかったぞ。くそが。

28: 2016/11/23(水)14:07:12 ID:gKK
タオルで処置しているときに女がヤヤイケにぶつぶつ言ってたんだけど
また堕すのやだー って。
俺、パジャマにしてたスエット血だらけになったけど、洗濯して着る気になれなくて捨てようと思い
スーパーの袋に突っ込んでゴミ出し日に出すつもりだったんだ。

あとからそれを自称霊感ありの友人に言ったら「それに呼ばれたんかなー?」って。

翌日の夜はヤヤイケも帰宅していないみたいで静かだったんだけど、この日、人生初の金縛りにあった。

29: 2016/11/23(水)14:09:13 ID:N7l
ホラーか

30: 2016/11/23(水)14:15:08 ID:gKK
間取りは玄関→キッチン→ベッドおいてる部屋なんだけど、ベッドから一直線に玄関まで見える。

熟睡してたのに急にさーっと意識が戻って、すでに動けなかった。
玄関の天井に何かいる。黒い何かいる!!!! ひえええええええ こわいいいい
ちなみにスエットは玄関の土間においてた。

んで、黒いやつが天井から俺のとこまで一直線に飛んできて、首絞められた?押さえつけられた?
とにかく痛かった。ぐえええ 苦しいい 怖いいいい って思っていたのに気絶したのか寝たのかわからんが
朝になっていた。とにかくとにかく 痛かった。霊って物理的に攻撃できるのかと驚いたわ。
あと顔がついていたのは覚えてる。目があったし。

35: 2016/11/23(水)14:27:13 ID:gKK
ヤヤイケは引っ越しせず、相変わらず俺のお隣さん。
特にお礼も謝罪もなかったけど、関わりたくないから別によかった。
だけどそれから2~3か月後ぐらい経過したときだった思う。
帰宅したらヤヤイケの家の前にあの女が立っていた。
俺と目があうと「あの、あの時はありがとうございました。」と頭を下げた。
長袖を着る季節になっていたから、傷とかはわからんが、とにかく生きていたんだとほっとした。
すぐにヤヤイケが玄関開けて、女はさっと家に入ってしまった。

なんか、信じられなかった。
また隣から アン ん、 アア アッ 好き ん とか聞こえんの。
お腹も膨らんでなかったから堕胎したんかな… 

霊体験より、こっちのほうで嫌気がさして総務に
「隣のカッポーが任侠沙汰で怖いよー」と訴えてアパートを替えてもらった。

その後のことは一切わからん。


最後に会釈した女の髪が茶色くてサラサラだったことと、俺の首を絞めた霊の黒さだけは覚えてる。




以上、壁の向こうでアン アン アン でした。ご清聴ありがとうです!

引用: 壁の向こうから 「アッ ンン アッアッ」