260:◆TLyYpvBiuw 2015/02/14(土) 19:36:09.07 ID:J3yVIQOro
【第十二回 深雪様のバレンタイン】
「ほら、これ!」
秘書艦深雪が私に小箱を渡してくれている。綺麗なピンクの装飾で包装されていた。
「なんですかこれは?」
私はそう問い返すと彼女は頬を膨らませ、不満そうな顔を見せている。
よく見るとほのかに紅潮してまるで桃かりんごのようだ。
「何って!かぁー!わかるだろ!この日に女の子が渡すモノっつったら!」
口早に言葉を投げかけてくるも、私にはさっぱり見当もつかなかった。
「2月14日……2月14日……」
「バレンタインデーだよ!バ・レ・ン・タ・イ・ン!」
バレンタインデー、思い出した。確か親しい者同士が贈り物をプレゼントして日頃の感謝の想いを伝えるとか。
「ほら、これ!」
秘書艦深雪が私に小箱を渡してくれている。綺麗なピンクの装飾で包装されていた。
「なんですかこれは?」
私はそう問い返すと彼女は頬を膨らませ、不満そうな顔を見せている。
よく見るとほのかに紅潮してまるで桃かりんごのようだ。
「何って!かぁー!わかるだろ!この日に女の子が渡すモノっつったら!」
口早に言葉を投げかけてくるも、私にはさっぱり見当もつかなかった。
「2月14日……2月14日……」
「バレンタインデーだよ!バ・レ・ン・タ・イ・ン!」
バレンタインデー、思い出した。確か親しい者同士が贈り物をプレゼントして日頃の感謝の想いを伝えるとか。
261: 2015/02/14(土) 19:36:52.38 ID:J3yVIQOro
「すまなかった、私はすっかり忘れていましてね。何も用意していませんでした」
「用意って、別に司令官はいらないだろ」
そんなことはない。彼女にはいつも助けられている。
彼女の無邪気さ、元気さがどれほど心の支えとなっていることか。
「そうでもありませんよ、あなたにはただならぬ想いを抱いてますからね」
そう言うと彼女は驚愕の表情で固まった。顔がみるみるのうちに赤くなっていく。
しばらくしてハッとしたかと思うとクルンと翻り、私に背中を向ける。
「い、いいから!食べてみてくれよ!」
「おや、それじゃあいただきますよ」
「早く食えっ!」
262: 2015/02/14(土) 19:37:45.28 ID:J3yVIQOro
開けると、ハートの形にかたどられた小さなチョコタルトが四つ、クローバーの形に並べられていた。
正直、かなり驚いた。彼女の普段の行動、言動からは想像できない。
丁寧に盛り付けられており、食べるがもったいないくらいだ。甘い香りもする。
「すごいですね、普段はガサツなあなたが」
「ど、どーいう意味だ!」
彼女はそっぽを向いたまま怒っている。なんだか滑稽だ。
一つ手に取り、口に運ぶ。
柔らかな感触と生地のサクッとした歯ごたえ、そしてチョコの味が口に広がる。
こういったものを食べたのはいつぶりだろうか。
「美味しいですよ、深雪」
「ほ、ほんとぉ?」
「ええ、こんなに美味しいお菓子は初めてです」
「お世辞だろ」
「まさかでしょう」
「そっか、うふふ。そうかぁ」
263: 2015/02/14(土) 19:38:13.08 ID:J3yVIQOro
深雪は私に背を向けたままクスクスと笑い出した。
嬉しいことがあると、いつもこうなるのだ。ニヤケた顔が目に浮かぶ。
「そろそろ、こちらに顔を見せてくれてもいいんじゃないですか?」
「そ、それはダメ」
なにやら不都合があるようだ。
二つ目を手に取ろうとすると、何やら底にカードのようなものが入っている。
「メッセージカードですか」
「え!」
まさか、といった声色でブツブツと呟く深雪を横目にカードを底から抜き出した。折りたたんである。
彼女が慌てて振り返る。
「ま、待ってくれ!それはダメだ、あのー、異物混入だ!」
「でももうもらっちゃったんだから、どうしようと私の勝手ですよ」
「うぐぅ……」
264: 2015/02/14(土) 19:38:40.46 ID:J3yVIQOro
観念したのか、またそっぽを向いてしまった。
開くと、見慣れた少し汚い文字が並んでいた。
“司令官、いつもお疲れ様。頑張ってる司令官のこと好きだぜ。深雪より愛を込めて”
好きだぜ、と。その瞬間なぜだか急に顔が熱くなるのを感じた。
どうにも私も深雪と同意見のようだ。
「深雪」
「な、なんだよ」
「こちらを向いてください」
恐る恐るという風にゆっくりとこちらに顔を向ける。やはり顔は赤いままだ。
きっと、私の顔も赤く染まっていることだろう。
どうにも頭が火照って、これではつい口を滑らせてしまいそうだ。
「こちらに」
私の傍まで呼ぶ。緊張しているのか少しぎこちない歩き方だ。
彼女の手を取り、目を見つめ、私は口を開く。
265: 2015/02/14(土) 19:39:36.25 ID:J3yVIQOro
「深雪、私はいつでもあなたを一番大切に思っています」
「えっ、そ、それって」
「月が綺麗だの、もう氏んでもいいだの、そういった小洒落た言葉は私たちには似合わない」
「何言って…」
「私もあなたが好きです、愛していますよ」
そう言って私は深雪を抱きしめた。
私も彼女も、それ以上何も言わなかったし言う必要はなかった。
深雪は私の背中に手を回し、もっとくっつこうと力を込める。
私は彼女のk
ガチャ
漣「ブルブルブルブルアイアイwwwブルベリアイwwwwご主人様報告書ですwwwwwwあっ…」
……
漣「す、すいやせんねぇ、へへっ、失礼しやした!また来るぜ!」
バタン
266: 2015/02/14(土) 19:40:21.72 ID:J3yVIQOro
ルールルールルル♪ルールルールルル♪
多摩「お話は変わりまして、『多摩の部屋』へようこそにゃ」
加古「多摩とあたし加古が送る、ちょっとしたトークショーだぜ」
多摩「このコーナーではお便りを紹介していくと共に、ゲストとお話をしていくにゃ」
加古「そんじゃあ、今回のゲストは!」
多摩「通称人頃し長屋、元天城型戦艦、正規空母赤城さんにゃ!」
赤城「第一航空戦隊赤城、出ます」
加古「赤城さんかぁー、あの腹ペコキャラで有名な」
赤城「アレは演技です。全くもって遺憾ともしがたい扱いですね」
多摩「でも実際に食べてるにゃ」
赤城「……いや、食べられはするんですよ!普段からあんなのではありません!」
267: 2015/02/14(土) 19:40:48.21 ID:J3yVIQOro
多摩「怪しいにゃ……」
加古「しっかし、よくプロポーションを維持できるよなぁ」
赤城「……」
加古「えっ、まさか」
プニッ
赤城「ひゃっ」
加古「……」
多摩「あ艦これ、にゃ」プニプニ
加古「つまめるし!」ブニッ
赤城「痛たた!やめてくださいってば!」
268: 2015/02/14(土) 19:41:30.22 ID:J3yVIQOro
多摩「やっぱ女は脱いでみなきゃわかんないにゃ。では質問にゃ。今日はバレンタインにゃ!誰にあげちゃうにゃぁ!?」
赤城「それはもちろん、お世話になってる艦娘の皆さんや提督、間宮さん、伊良湖さんにあげますよ」
多摩「マジレスせんでよろしい」
赤城「ぼ、ボケた方がよかったんですか?」
加古「いやこいつは何言っても食いつくから」
多摩「ちなみに多摩は姉妹艦は当然として、駆逐のチビどもにばらまくにゃ」
加古「へぇ」
多摩「ホワイトデーにはもちろんお返しを徴収するにゃ。三倍で!」
赤城「なるほど、それもいい考えですね」
加古「やっぱ食いしん坊キャラなんじゃないか」
赤城「スイーツに関しては女の子はみんな食いしん坊キャラですよ!」
269: 2015/02/14(土) 19:41:57.97 ID:J3yVIQOro
加古「そ、そうすか。しかし多摩、猫はチョコダメなんじゃないか」
多摩「猫じゃないからいーんにゃ」
加古「そういえば、そう言ってたな……」
赤城「猫じゃないなら、タチですか!?」
多摩「……」
加古「……」
「……」
赤城「ごめんなさい今のところカットで」
多摩「多摩の部屋は常時生放送にゃ」
赤城「ふひぃ」
270: 2015/02/14(土) 19:42:34.36 ID:J3yVIQOro
乙
第六駆逐隊の甘口カレー食べたいな
加古「あたしは辛口のが好きだけどな」
多摩「多摩は甘口にゃ、木曾は辛口を『こんぐらいなきゃなー』とか言いつつ泣きながら食べてるにゃ」
加古「そうなのか」
赤城「美味しければどちらでもいいですね、常識の範囲内なら」
多摩「さっき非常識な発言をしたヤツが何か言ってるにゃ」
赤城「ぐっ…」
加古「あれは赤城が悪い」
赤城「忘れてください!」
多摩「それはどうでもいいけど、次のスケッチどうぞにゃ」
赤城「どうでもよくないぃ!」
271: 2015/02/14(土) 19:43:17.13 ID:J3yVIQOro
今日はバレンタインデー、大切な人への感謝の気持ちや秘めたる想いをプレゼントにして贈る日、なのかもしれない。
ワイワイ
「はい、友チョコ。やるよ」
「うわぁ!ありがとうございます!私もこれ!」
「お姉!これ!」
「ありがとう、私からも。はい」
272: 2015/02/14(土) 19:43:55.18 ID:J3yVIQOro
波止場
時津風「美味しい美味しい♪」パクパク
不知火「美味しい美味しい」モグモグ
時津風「……ねえ、しらぬいー。どーしてバレンタインはチョコなの?」
不知火「どうしてチョコ、ですか。それならまずはバレンタインデーの成り立ちから説明しましょう」
時津風「教えてー!」
不知火「起源は古代ローマまで遡ります。ルペルカーリア祭という豊穣と健康を祈願するお祭りが2月13、14、15日に行われていました」
時津風「それじゃあ、恋愛とかは関係なかったの?」
不知火「その通り。1756年にそういう説が出ましたが、これはデタラメでした」
時津風「どうしてそんな嘘を?」
不知火「まっ、キリスト教徒の考えることですから。そして時代は進み紀元3世紀、ウァレンティヌスという聖職者が現れます」
273: 2015/02/14(土) 19:44:23.67 ID:J3yVIQOro
時津風「ウァレン……ヴァレンタイン?」
不知火「そうです。彼の名を取った名前……ですが、彼の存在というのは非常に怪しく3人の像が重なっているとされています」
時津風「へぇー、じゃあ兵士たちの結婚っていう話は?」
不知火「あれにも歴史的根拠は全くありません」
時津風「じゃあ嘘ばっかりじゃん!」
不知火「そんなものですよ、キリスト教徒の書く事ですから。現在のバレンタイン像が作られたのは15世紀になってからです」
時津風「じゃあバレンタインデーになったのも15世紀から?」
不知火「これはどうしてか5世紀頃なんですよね。まあともかく15世紀から恋人たちの日に変わったのです」
時津風「ふうん。じゃあチョコレートは?」
不知火「それは日本に入ってきてからになりますね。1936年の事です。神戸モロゾフ製菓、現在のモロゾフが
東京で発行されていた英字新聞『ザ・ジャパン・アドバタイザー』にて
『あなたのバレンタイン(=愛しい方)にチョコレートを贈りましょう』とを打ち出します」
274: 2015/02/14(土) 19:45:25.43 ID:J3yVIQOro
時津風「それからチョコレートが?」
不知火「いえ、その時は全く売れませんでした。バレンタインデーという名前が広く知られるまでにはここから数十年後の1970年代の話です」
時津風「戦後まで飛んだね」
不知火「高度経済成長を終え、日本式資本主義の完成と共にある種の余裕が生まれたのでしょう。チョコレートの売上が急上昇しました」
時津風「みんなお金持ちになったんだね!」
不知火「そうですね。小売業界が積極的マーケティングを行いました。最初は学生たちの間で広まり、徐々に大人の女性たちにも広がっていきます」
時津風「じゃあホワイトデーっていうのは?」
不知火「70年代後半、『愛にこたえるホワイトデー』キャンペーンを製菓会社が打ち出しました。1984年、ついに定着してしまいます」
時津風「同じ時期なんだね。チョコレートって言うのも学生たちから?」
不知火「そうです。もちろん最初はチョコレートに限らず色んな贈答品が贈られましたが、
学生層には値段も手頃で食べたらおしまいなチョコレートが受け入れ易かったんでしょうね」
275: 2015/02/14(土) 19:46:04.36 ID:J3yVIQOro
時津風「美味しいしね!」
不知火「ええ、美味しいですから。そして2000年代。義理チョコ、逆チョコ、自分チョコ、義務チョコなど様々な種類が生まれ、現在に至ると」
時津風「へぇ~~~!すごい!物知りだねしらぬいーは!」ナデナデ
不知火「頭を撫でないでください……ちなみに西欧では男性も女性も、花やケーキ、カードなど様々な贈り物を、
恋人や親しい人に贈ることがある日です。アメリカではアンチバレンタインデーっていうのが広がってるそうで」
時津風「チョコだけじゃないんだ!にしてもアメリカは一体どうしたの」
不知火「さあ、アメリカ人の考えることはわかりません」
時津風「そうだ、そしたらしらぬいーにもプレゼントあげる!」
不知火「そうですか、それはどうも」
時津風「えらいえらい!」ナデナデ
不知火「だから、頭を撫でないでくださいって……///」
-次回に続くよ、つぅづぅくぅ~-
276: 2015/02/14(土) 20:51:15.13 ID:eW5KD52cO
落ち度のない不知火、いいぞ!
277: 2015/02/14(土) 20:53:04.27 ID:s94pTVDSO
乙です
子日だよぉ~、次のゲストだよぉ~
子日だよぉ~、次のゲストだよぉ~
次回:変な艦これ劇場 -お話は変わりまして-【第十三話 雪風は沈んでしまった】
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