1: 2022/02/03(木) 19:42:18.312 ID:fN3uxmGE0.net
喪黒「私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん」
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭も頂きません」
喪黒「お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は……」
≪戸辞田 斜太郎(72) 無職≫
オーッホッホッホッホッホ……
喪黒「ただのセールスマンじゃございません」
喪黒「私の取り扱う品物は心……人間のココロでございます」
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり」
喪黒「そんな皆さんの心のスキマをお埋めいたします」
喪黒「いいえ、お金は一銭も頂きません」
喪黒「お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
喪黒「さて、今日のお客様は……」
≪戸辞田 斜太郎(72) 無職≫
オーッホッホッホッホッホ……
2: 2022/02/03(木) 19:45:05.347 ID:fN3uxmGE0.net
―商店街跡―
斜太郎「……」
ガラーン…
ヒュゥゥゥ…
斜太郎「ハァ……」
斜太郎(かつて……この地域の住民にとって、買い物する場所といえばここだった)
斜太郎(子供から大人までみんなが買い物に来て、賑やかじゃない日はなかった)
斜太郎(それが今や、やってる店は一軒もない……。どの店もシャッターが下りてる……)
斜太郎「ハァ……」
斜太郎「……」
ガラーン…
ヒュゥゥゥ…
斜太郎「ハァ……」
斜太郎(かつて……この地域の住民にとって、買い物する場所といえばここだった)
斜太郎(子供から大人までみんなが買い物に来て、賑やかじゃない日はなかった)
斜太郎(それが今や、やってる店は一軒もない……。どの店もシャッターが下りてる……)
斜太郎「ハァ……」
5: 2022/02/03(木) 19:48:20.399 ID:fN3uxmGE0.net
―ショッピングモール―
斜太郎(客は全て、この大型店に取られてしまった……)
ワイワイ… ガヤガヤ…
斜太郎(まるで迷路だ。自分がどこにいるのか分からん。何度来ても迷ってしまう)
斜太郎(地図を見ても、どれもオシャレな店名だから一目でどういう店かさっぱり分からん)
ドンッ!
斜太郎「うわっ!」
若者「ちょっとぉ、変なとこで突っ立ってんなよ、爺さん」
斜太郎「これは失礼……」
斜太郎(客は全て、この大型店に取られてしまった……)
ワイワイ… ガヤガヤ…
斜太郎(まるで迷路だ。自分がどこにいるのか分からん。何度来ても迷ってしまう)
斜太郎(地図を見ても、どれもオシャレな店名だから一目でどういう店かさっぱり分からん)
ドンッ!
斜太郎「うわっ!」
若者「ちょっとぉ、変なとこで突っ立ってんなよ、爺さん」
斜太郎「これは失礼……」
6: 2022/02/03(木) 19:52:06.812 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎(やっと食料品の買い物ができたが……)
斜太郎「あ、あれ? レジなのに店員さんは?」
主婦「ここはセルフレジですよ。自分で商品を会計するんです」
斜太郎「ああ、そうなんですか」
斜太郎「えぇと、えぇと……」モタモタ
斜太郎(どうすればいいのやら……)
店員「お客さぁん、やり方が分からないならセルフレジに並ばないで下さいね。つかえちゃいますから」
斜太郎「も、申し訳ない……」
斜太郎「あ、あれ? レジなのに店員さんは?」
主婦「ここはセルフレジですよ。自分で商品を会計するんです」
斜太郎「ああ、そうなんですか」
斜太郎「えぇと、えぇと……」モタモタ
斜太郎(どうすればいいのやら……)
店員「お客さぁん、やり方が分からないならセルフレジに並ばないで下さいね。つかえちゃいますから」
斜太郎「も、申し訳ない……」
7: 2022/02/03(木) 19:54:19.283 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎(疲れた……)グッタリ
斜太郎(昔は買い物した後は、むしろ楽しくなっていたのに)
喪黒「おや、どうなさいました?」ヌッ
斜太郎「あ、いや……」
喪黒「あまりにくたびれた様子でベンチに腰掛けておられるので、つい声をかけてしまいました」
斜太郎「ハハ……これはみっともないところを」
斜太郎(昔は買い物した後は、むしろ楽しくなっていたのに)
喪黒「おや、どうなさいました?」ヌッ
斜太郎「あ、いや……」
喪黒「あまりにくたびれた様子でベンチに腰掛けておられるので、つい声をかけてしまいました」
斜太郎「ハハ……これはみっともないところを」
8: 2022/02/03(木) 19:58:03.827 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎「実は私はこのショッピングモールというものにどうも慣れなくて」
斜太郎「初めて来たわけでもないのに、来るたび迷ったり、新しくできた仕組みに戸惑ったりしてしまうんです」
斜太郎「まったく情けない話です」
斜太郎「自分のいた商店街であれば、店の並び順を今でも暗唱できるんですがねえ……」
喪黒「だいぶ精神的に参っているようですね」
喪黒「どうです、よかったら私と一緒に飲みませんか? たまには気晴らしもいいものですよ」
斜太郎「……そうですな。たまにはいいかもしれません」
斜太郎「初めて来たわけでもないのに、来るたび迷ったり、新しくできた仕組みに戸惑ったりしてしまうんです」
斜太郎「まったく情けない話です」
斜太郎「自分のいた商店街であれば、店の並び順を今でも暗唱できるんですがねえ……」
喪黒「だいぶ精神的に参っているようですね」
喪黒「どうです、よかったら私と一緒に飲みませんか? たまには気晴らしもいいものですよ」
斜太郎「……そうですな。たまにはいいかもしれません」
9: 2022/02/03(木) 20:00:34.079 ID:fN3uxmGE0.net
―BAR魔の巣―
マスター「……」キュッキュッ
喪黒「あなたは商店街の会長さんをやってらっしゃったのですか」
斜太郎「はい……。あなたと出会ったショッピングモールの地域にある……」
喪黒「地域住民の信頼があるからこそ務まる素晴らしいお仕事です」
斜太郎「とんでもない。私は商店街を守り切ることができなかった……」
喪黒「何やら事情がありそうですな。よかったら、話してみて下さい。スッキリするかもしれませんから」
斜太郎「はい……」
マスター「……」キュッキュッ
喪黒「あなたは商店街の会長さんをやってらっしゃったのですか」
斜太郎「はい……。あなたと出会ったショッピングモールの地域にある……」
喪黒「地域住民の信頼があるからこそ務まる素晴らしいお仕事です」
斜太郎「とんでもない。私は商店街を守り切ることができなかった……」
喪黒「何やら事情がありそうですな。よかったら、話してみて下さい。スッキリするかもしれませんから」
斜太郎「はい……」
10: 2022/02/03(木) 20:03:39.489 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎「かつて、私がいた商店街は町の中心でした」
斜太郎「八百屋、肉屋、魚屋、豆腐屋、パン屋、駄菓子屋、オモチャ屋……なんでもそろっていた」
斜太郎「商店街に行けば、全ての買い物は事足りたんです。ですからいつだって賑わっていた」
斜太郎「ところが……」
喪黒「あのショッピングモールですね」
斜太郎「そうです。駅前にあのモールができてから、商店街の客足はどんどん途絶えていきました」
斜太郎「当然です。あっちの方が安いし、商品も多いし、一つの建物の中に無数の店が入ってるのですから」
斜太郎「しかし……私は諦めませんでした」
斜太郎「八百屋、肉屋、魚屋、豆腐屋、パン屋、駄菓子屋、オモチャ屋……なんでもそろっていた」
斜太郎「商店街に行けば、全ての買い物は事足りたんです。ですからいつだって賑わっていた」
斜太郎「ところが……」
喪黒「あのショッピングモールですね」
斜太郎「そうです。駅前にあのモールができてから、商店街の客足はどんどん途絶えていきました」
斜太郎「当然です。あっちの方が安いし、商品も多いし、一つの建物の中に無数の店が入ってるのですから」
斜太郎「しかし……私は諦めませんでした」
11: 2022/02/03(木) 20:06:33.543 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎「クーポン券を作ったり、チラシ配りをしたり、町おこしのようなイベントも催しました」
斜太郎「ですがまるで効果なし。刀や弓矢で戦車に挑むようなものでした」
斜太郎「いつしか誰も来なくなった商店街の店は一つ、また一つと閉店していきました」
『しつこいな……。もう無理なんだよ』
『息子も後を継がないっていうし、閉店するよ』
『いたずらに店を続けても傷を広げるだけさ』
斜太郎「ついには全ての店がシャッターを下ろす事態に……」
斜太郎「商店街の存続を強く訴えた私と皆の間には、深い溝が出来てしまいましたし」
斜太郎「妻にも先立たれ、子供もとうに家を出て、今や独りぼっちで商店街を見つめる日々です」
斜太郎「ですがまるで効果なし。刀や弓矢で戦車に挑むようなものでした」
斜太郎「いつしか誰も来なくなった商店街の店は一つ、また一つと閉店していきました」
『しつこいな……。もう無理なんだよ』
『息子も後を継がないっていうし、閉店するよ』
『いたずらに店を続けても傷を広げるだけさ』
斜太郎「ついには全ての店がシャッターを下ろす事態に……」
斜太郎「商店街の存続を強く訴えた私と皆の間には、深い溝が出来てしまいましたし」
斜太郎「妻にも先立たれ、子供もとうに家を出て、今や独りぼっちで商店街を見つめる日々です」
12: 2022/02/03(木) 20:09:41.998 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎「しかし……しかし、私は……! もう一度……!」
喪黒「かつての活気ある商店街をもう一度見たいとおっしゃるのですね」
斜太郎「!」
喪黒「私ならばあなたの願いを叶えることができるかもしれません」
斜太郎「え……!? あなたはいったい……」
喪黒「大変申し遅れました。実はわたくし、こういう者です」スッ
斜太郎「心のスキマをお埋めします……」
喪黒「悩める人々に救いの手を差し伸べるボランティアをしているのです」
喪黒「かつての活気ある商店街をもう一度見たいとおっしゃるのですね」
斜太郎「!」
喪黒「私ならばあなたの願いを叶えることができるかもしれません」
斜太郎「え……!? あなたはいったい……」
喪黒「大変申し遅れました。実はわたくし、こういう者です」スッ
斜太郎「心のスキマをお埋めします……」
喪黒「悩める人々に救いの手を差し伸べるボランティアをしているのです」
13: 2022/02/03(木) 20:11:43.988 ID:fN3uxmGE0.net
喪黒「かつての商店街よもう一度というあなたのお気持ち、よく分かります」
斜太郎「はぁ」
喪黒「よろしければ明日、もう一度お会いできませんか」
斜太郎「かまいませんが……」
喪黒「では明日、あなたが会長をしてらっしゃった商店街跡で待ち合わせをしましょう」
斜太郎「はい……」
斜太郎「はぁ」
喪黒「よろしければ明日、もう一度お会いできませんか」
斜太郎「かまいませんが……」
喪黒「では明日、あなたが会長をしてらっしゃった商店街跡で待ち合わせをしましょう」
斜太郎「はい……」
14: 2022/02/03(木) 20:14:13.706 ID:fN3uxmGE0.net
次の日――
―商店街跡―
喪黒「来て下さいましたね、戸辞田さん」
斜太郎「ええ……しかし、活気のある商店街を見せるというのは一体どういう意味です?」
斜太郎「昔の仲間にもう一度店をやらせるというのは無理ですよ。亡くなってる者もいますから」
斜太郎「それにそんなことしたって、活気が戻るわけが……」
喪黒「そうではありません。ささ、こちらへどうぞ」
斜太郎「……?」
―商店街跡―
喪黒「来て下さいましたね、戸辞田さん」
斜太郎「ええ……しかし、活気のある商店街を見せるというのは一体どういう意味です?」
斜太郎「昔の仲間にもう一度店をやらせるというのは無理ですよ。亡くなってる者もいますから」
斜太郎「それにそんなことしたって、活気が戻るわけが……」
喪黒「そうではありません。ささ、こちらへどうぞ」
斜太郎「……?」
15: 2022/02/03(木) 20:17:03.417 ID:fN3uxmGE0.net
喪黒「……」スタスタ
斜太郎「……」スタスタ
斜太郎(この商店街にこんな裏通りあったっけな……?)
喪黒「あちらです」
パァァァァァ…
斜太郎「え……(通りの奥が光り輝いてる……)」
喪黒「ささ、お入り下さい」
斜太郎「はい……!」
斜太郎「……」スタスタ
斜太郎(この商店街にこんな裏通りあったっけな……?)
喪黒「あちらです」
パァァァァァ…
斜太郎「え……(通りの奥が光り輝いてる……)」
喪黒「ささ、お入り下さい」
斜太郎「はい……!」
17: 2022/02/03(木) 20:20:10.174 ID:fN3uxmGE0.net
……
斜太郎「……!」
斜太郎「ここは……!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
「いらっしゃいませー!」
「安いよー! どんどん見てってよー!」
「これくださーい!」
斜太郎(かつての……活気にあふれた商店街だ! シャッターを閉じてる店なんて一つもない!)
斜太郎「……!」
斜太郎「ここは……!」
ワイワイ… ガヤガヤ…
「いらっしゃいませー!」
「安いよー! どんどん見てってよー!」
「これくださーい!」
斜太郎(かつての……活気にあふれた商店街だ! シャッターを閉じてる店なんて一つもない!)
19: 2022/02/03(木) 20:23:03.213 ID:fN3uxmGE0.net
八百屋「へいらっしゃい!」
斜太郎「や、やぁ」
八百屋「おや会長、どうしたんだい!?」
斜太郎「ちょっと買い物にね……(年老いた私を会長扱いしてくれるのか)」
八百屋「うちのはどの野菜も新鮮ですよ!」
斜太郎「じゃあ、キャベツを買おうかな」
八百屋「毎度! そうだ、きゅうりもつけちゃう!」
斜太郎「こりゃどうも(こんな感じでサービスしてたなぁ)」
斜太郎「や、やぁ」
八百屋「おや会長、どうしたんだい!?」
斜太郎「ちょっと買い物にね……(年老いた私を会長扱いしてくれるのか)」
八百屋「うちのはどの野菜も新鮮ですよ!」
斜太郎「じゃあ、キャベツを買おうかな」
八百屋「毎度! そうだ、きゅうりもつけちゃう!」
斜太郎「こりゃどうも(こんな感じでサービスしてたなぁ)」
20: 2022/02/03(木) 20:25:10.048 ID:fN3uxmGE0.net
肉屋「いらっしゃい、いらっしゃーい!」
魚屋「持ってけドロボー! ってホントに持ってったら困るよ!」
斜太郎(二人とも、これぐらい切れ味よかったよなぁ……)
子供「えぇ~ん、買ってよ買ってよぉ~!」ジタバタ
母「いけません!」
斜太郎(店頭でオモチャをねだる子供なんてのもいたなぁ……)
魚屋「持ってけドロボー! ってホントに持ってったら困るよ!」
斜太郎(二人とも、これぐらい切れ味よかったよなぁ……)
子供「えぇ~ん、買ってよ買ってよぉ~!」ジタバタ
母「いけません!」
斜太郎(店頭でオモチャをねだる子供なんてのもいたなぁ……)
21: 2022/02/03(木) 20:28:04.132 ID:fN3uxmGE0.net
児童A「どうだった? クジ?」
児童B「やったーっ、当たり! もう一個もらえる!」
豆腐屋「豆腐いらんかえ~!」
酒屋「奥さんお綺麗だからサービスしちゃう!」
婦人「お上手なんだから!」
斜太郎(どこを見ても何を見ても懐かしい)
斜太郎(まさか、本当に見られるなんて……あの元気だった頃の商店街を……)
児童B「やったーっ、当たり! もう一個もらえる!」
豆腐屋「豆腐いらんかえ~!」
酒屋「奥さんお綺麗だからサービスしちゃう!」
婦人「お上手なんだから!」
斜太郎(どこを見ても何を見ても懐かしい)
斜太郎(まさか、本当に見られるなんて……あの元気だった頃の商店街を……)
22: 2022/02/03(木) 20:31:13.187 ID:fN3uxmGE0.net
……
喪黒「いかがでしたか?」
斜太郎「ありがとうございます! 活気ある頃の商店街を堪能できました!」
斜太郎「あの、できればまた……」
喪黒「これからもあなたはここに来ることができます」
斜太郎「本当ですか!」
喪黒「ただし、一つだけ約束して下さい」
斜太郎「なんでしょう?」
喪黒「あの商店街は幻のようなものです。あまり頻繁に来るのはあなたのためになりません」
喪黒「行くのは……せいぜい“一週間に一度”にして下さい。よろしいですね?」
斜太郎「ええ、それで十分です!」
喪黒「いかがでしたか?」
斜太郎「ありがとうございます! 活気ある頃の商店街を堪能できました!」
斜太郎「あの、できればまた……」
喪黒「これからもあなたはここに来ることができます」
斜太郎「本当ですか!」
喪黒「ただし、一つだけ約束して下さい」
斜太郎「なんでしょう?」
喪黒「あの商店街は幻のようなものです。あまり頻繁に来るのはあなたのためになりません」
喪黒「行くのは……せいぜい“一週間に一度”にして下さい。よろしいですね?」
斜太郎「ええ、それで十分です!」
24: 2022/02/03(木) 20:34:03.844 ID:fN3uxmGE0.net
一週間後――
斜太郎「待ちに待った一週間……」
斜太郎「今日も商店街に行くぞ!」
……
ワイワイ…
八百屋「いらっしゃーい!」
肉屋「安いよー!」
斜太郎(これが幻……? とても信じられん! 歩いてるだけで楽しい!)
斜太郎「待ちに待った一週間……」
斜太郎「今日も商店街に行くぞ!」
……
ワイワイ…
八百屋「いらっしゃーい!」
肉屋「安いよー!」
斜太郎(これが幻……? とても信じられん! 歩いてるだけで楽しい!)
25: 2022/02/03(木) 20:37:23.446 ID:fN3uxmGE0.net
文房具屋「ああ会長、お待ちしてましたよ」
斜太郎「え、私を?」
文房具屋「だってほら、今日は商店街を挙げてのイベントをやるじゃないですか」
パン屋「会長に仕切ってもらわないと!」
斜太郎「あ、ああ、そうだね。私が仕切らないと……」
斜太郎(そうだ……私は率先して色んなイベントを開催していたっけ)
斜太郎「え、私を?」
文房具屋「だってほら、今日は商店街を挙げてのイベントをやるじゃないですか」
パン屋「会長に仕切ってもらわないと!」
斜太郎「あ、ああ、そうだね。私が仕切らないと……」
斜太郎(そうだ……私は率先して色んなイベントを開催していたっけ)
28: 2022/02/03(木) 20:40:25.039 ID:fN3uxmGE0.net
歌手「男の道をゆけ~♪」
芸人「なんでやねん!」
ワイワイ… ワハハハ…
斜太郎(歌手を呼んだり、芸人を呼んだり、こんなことする予算もあったんだなぁ……)
八百屋「あ、そうだ! 会長も歌って下さいよ!」
斜太郎「え、私……?」
魚屋「そうですよ~、盛り上げて下さい!」
斜太郎「よぉ~し、じゃあ私の十八番……」
芸人「なんでやねん!」
ワイワイ… ワハハハ…
斜太郎(歌手を呼んだり、芸人を呼んだり、こんなことする予算もあったんだなぁ……)
八百屋「あ、そうだ! 会長も歌って下さいよ!」
斜太郎「え、私……?」
魚屋「そうですよ~、盛り上げて下さい!」
斜太郎「よぉ~し、じゃあ私の十八番……」
29: 2022/02/03(木) 20:42:09.768 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎「商店街ブルース、行ってみよー!」
イェーイ!
ヒューヒュー!
ワァァァァ……!
斜太郎(楽しい……なんて楽しいんだ!)
…………
……
イェーイ!
ヒューヒュー!
ワァァァァ……!
斜太郎(楽しい……なんて楽しいんだ!)
…………
……
30: 2022/02/03(木) 20:47:11.611 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎「……」
ガラーン…
ヒュゥゥゥ…
斜太郎(しかし、どんなに楽しくても現実の商店街はシャッター通り……)
斜太郎(見れば見るほど、いたたまれなくなってくる)
斜太郎(私は活気ある商店街を見られれば満足だった……はずなのに)
斜太郎(あの楽しかった頃を鮮明に思い出してしまうと……!)
ガラーン…
ヒュゥゥゥ…
斜太郎(しかし、どんなに楽しくても現実の商店街はシャッター通り……)
斜太郎(見れば見るほど、いたたまれなくなってくる)
斜太郎(私は活気ある商店街を見られれば満足だった……はずなのに)
斜太郎(あの楽しかった頃を鮮明に思い出してしまうと……!)
32: 2022/02/03(木) 20:50:34.123 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎(もう一度行こう!)
斜太郎(あそこに……あの商店街に!)
タタタッ…
喪黒「戸辞田さん」ヌッ
斜太郎「も、喪黒さん!」
喪黒「あまり頻繁に行くなと申し上げたはずですよ。すぐに引き返して下さい」
斜太郎「お願いします! 行かせて下さい! 私は……私はもう……!」
喪黒「そうまでおっしゃるなら仕方ありませんねぇ」
斜太郎(あそこに……あの商店街に!)
タタタッ…
喪黒「戸辞田さん」ヌッ
斜太郎「も、喪黒さん!」
喪黒「あまり頻繁に行くなと申し上げたはずですよ。すぐに引き返して下さい」
斜太郎「お願いします! 行かせて下さい! 私は……私はもう……!」
喪黒「そうまでおっしゃるなら仕方ありませんねぇ」
33: 2022/02/03(木) 20:53:35.539 ID:fN3uxmGE0.net
喪黒「ドーン!!!」
斜太郎「うわああああああっ……!」
あぁぁぁぁぁ……
…………
……
斜太郎「うわああああああっ……!」
あぁぁぁぁぁ……
…………
……
34: 2022/02/03(木) 20:56:27.229 ID:fN3uxmGE0.net
……
八百屋「……会長!」
魚屋「おお、よかった。氏んじまったのかと思ったぜ」
斜太郎「私は……」
肉屋「今日は商店街の運動会だ! 会長にも頑張ってもらわねえとな!」
斜太郎「運動会? 私はもう年だよ、走ることなんてできないよ……」
文房具屋「なにいってんです?」
斜太郎「え……?」
八百屋「……会長!」
魚屋「おお、よかった。氏んじまったのかと思ったぜ」
斜太郎「私は……」
肉屋「今日は商店街の運動会だ! 会長にも頑張ってもらわねえとな!」
斜太郎「運動会? 私はもう年だよ、走ることなんてできないよ……」
文房具屋「なにいってんです?」
斜太郎「え……?」
35: 2022/02/03(木) 20:59:16.641 ID:fN3uxmGE0.net
斜太郎(これは……私の体もかつてのように……)
「みんな会長を待ってますよ!」
「商店街を盛り上げていきましょう!」
「どんなことがあっても寂れることなんてありえねえ!」
斜太郎「ああ……その通りだ! この商店街は永遠だ! アハハハハ……」
アハハハハ…
ガラガラガラガラガラガラ…
ガシャン!
「みんな会長を待ってますよ!」
「商店街を盛り上げていきましょう!」
「どんなことがあっても寂れることなんてありえねえ!」
斜太郎「ああ……その通りだ! この商店街は永遠だ! アハハハハ……」
アハハハハ…
ガラガラガラガラガラガラ…
ガシャン!
36: 2022/02/03(木) 21:02:23.829 ID:fN3uxmGE0.net
喪黒「現実とあの幻の商店街の狭間にあるシャッターは完全に閉じてしまったようですね」
喪黒「しかし、これもまた幸せの一つの形というものです」
喪黒「それにしても、古きよき商店街が時代の流れに飲まれて消えていくのは寂しいものがあります」
喪黒「私も古きよきセールスマンとして、消えないよう頑張らねばなりませんなぁ」
喪黒「オ~ッホッホッホッホッホ……」
―おわり―
喪黒「しかし、これもまた幸せの一つの形というものです」
喪黒「それにしても、古きよき商店街が時代の流れに飲まれて消えていくのは寂しいものがあります」
喪黒「私も古きよきセールスマンとして、消えないよう頑張らねばなりませんなぁ」
喪黒「オ~ッホッホッホッホッホ……」
―おわり―
40: 2022/02/03(木) 21:03:51.703 ID:3QxrhjLL0.net
ペナルティーというよりご褒美かなぁ
41: 2022/02/03(木) 21:04:23.220 ID:6ptUHQqy0.net
まあご褒美だな
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