215: 2014/05/16(金) 00:36:51.21 ID:38k8vLJ70

216: 2014/05/16(金) 00:40:52.28 ID:38k8vLJ70

―――翌日 中央行政区街 建設部門作業現場―――

カンカンカンカン
ギイーッ

「浮遊魔法っ!」ブワッ


副団長(建設部門長)「商人、この通りのそばにはやっぱり宿を設置した方がいいかな」

商人「そうですねぇ。ここは武器屋や防具屋が集まる場所なので、このまま銀行の予定地でいった方がいいかと」

副団長(建設部門長)「ニャるほど……それならこっちは―――で……の:::じゃないかい?」

商人「やはり:::は^^^ですので“”“が得策かと」

はたらく魔王さま!(22) はたらく魔王さま! (電撃コミックス)

217: 2014/05/16(金) 00:46:21.47 ID:38k8vLJ70

―――…

副団長(建設部門長)「ふぅー。一通り終わったね、キミの商売のノウハウは本当に役に立つよ」

商人「いえいえ、まさかこんなところでお役にたてるとは思ってもいませんでした」

商人「これも商売に使えそうです」

副団長(建設部門長)「キミは本当に金欲が尽きないものだね」

副団長(建設部門長)「いったいどこから湧いてくるんだい?」

商人「いえいえ滅相もない。欲こそ人の原理たる要素なのです」

商人「私はそれを有用な形に変換して合理的に使っているだけなのですよ」


218: 2014/05/16(金) 00:47:35.63 ID:38k8vLJ70


商人「それに、建設部門長も大層な物欲をお持ちだと聞きましたが」

副団長(建設部門長)「ニャハハハ、まあね。収集だけは団長にいくら怒られてもやめられないんだよねぇ」

商人「それならば、いくつか穴場をお教えしますが」

商人「良い品物も手に入ったら格安でお譲りしますよ。十分利益は頂いていますので、特別割引です!」

副団長(建設部門長)「ニャにぃっ!? それはありがたいことこの上ない!」

商人「それではそろそろ私は財務の方へ戻りますので」

副団長(建設部門長)「あ、そうだ、魔法石もそろそろ無くなりそうなんだけど……今あるかな」


この世界には、魔力の回復などに使用が可能な『魔法石』という特殊な石が存在している。


219: 2014/05/16(金) 00:52:42.77 ID:38k8vLJ70


商人「おお、これはタイミングがよろしいこと限りないですね」ピーン

商人「ちょうど先日手に入れた純度99.99999999%の超高級魔法石が手元にあるのです!」

商人「これさえあれば1年は平気で魔法を使い放題の優れもの!」

商人「さらに今回は樹齢1200年物の杖とマントをつけてお値段!!」

副団長(建設部門長)「」

商人「……って、ついついいつもの癖が出てしまいました」

商人「代金は結構ですよ、どうぞ貰ってください」

副団長(建設部門長)「おお、流石商人!」

商人「これからもよろしくお願いいたしますね」

商人「それでは」

副団長(建設部門長)「またニャー」ムフフフ


220: 2014/05/16(金) 00:54:36.59 ID:38k8vLJ70


副団長(建設部門長)「そうだ、行政府にコレクションルームも追加しておかなきゃ!」

副団長(建設部門長)「えーっと確かこの辺に空き部屋が……」


ソローリ

ヒュッ


副団長(建設部門長)「敵襲ッ!?」キィン

副団長は、背後から振り下ろされた剣を素手で受け止めた。


221: 2014/05/16(金) 00:55:31.43 ID:38k8vLJ70


戦士「おわっ、俺の剣を素手で受けるとは……相変わらず見事だな!」バッ

副団長(建設部門長)「なんだキミか。邪魔しないでくれるかな」プイッ

戦士「全く、お前の趣味部屋造りの邪魔をして何が悪いんだか」チン

戦士「人が公務で忙しいときに、一体何をしていたのかな猫女?」

副団長(建設部門長)「なっ!ボクは猫じゃない!そういうキミこそどうせ暇だからぶらぶら遊びに来ただけなんだろう?」

戦士「うぐ……ま、まあつまるところ仲間同士ってことだ。仲良くしようじゃねーか」

副団長(建設部門長)「仲間だって? 冗談も甚だしいね」

副団長(建設部門長)「ボクはボク自身が認めた人にしか絶対に従わない。仲間にもしたりしないのさ」ツーン


222: 2014/05/16(金) 00:56:32.38 ID:38k8vLJ70


戦士(さすが猫だな。なかなかの気まぐれ野郎だぜ)

戦士「自分で言うか……まあいい。ならば、剣術で認めさせてやろうじゃないか!」

副団長(建設部門長)「言うじゃないか。でも、ボクは剣は使わないよ」

副団長(建設部門長)「素手で返り討ちにしてやる!」ザッ

戦士「ほう、良いだろう」

戦士「さあ、いつでも来い!」スラリ

副団長(建設部門長)「よーし…………!!?」


223: 2014/05/16(金) 00:57:08.98 ID:38k8vLJ70


副団長(建設部門長)「ギニャッ!?そ、その剣は!!!」

戦士「なんだ?この剣の価値が分かるのか」

戦士「確か魔族領の牢獄跡で手に入れたんだが、どうも出所が分からなくてな」

戦士「切れ味が頗るよくて重用したんだ」

副団長(建設部門長)「分かるも何も、それは密かに伝説として存在を語られていた、『第十三代勇者の剣』じゃないか!!」

戦士「」


224: 2014/05/16(金) 00:57:44.93 ID:38k8vLJ70


副団長(建設部門長)「かの伝説の名工によって生み出され、出征に向かう勇者に渡されたという最高傑作!」

副団長(建設部門長)「何でも十三代勇者が戦氏してしまって行方が分からなくなっていたと聞いていたけど……まさかこんなところでお目にかかれるとは!!」

副団長(建設部門長)「あわわわわわわ、興奮が鳴りやまないいいいいい!!」

戦士「これ、ほしいのか?」

副団長(建設部門長)「ほしい!喉から手が出るほどほしい!!!」キラキラ

戦士「じゃああーげないっ!」

副団長(建設部門長)「」


225: 2014/05/16(金) 00:58:26.90 ID:38k8vLJ70


戦士「おいおい、冗談だっつの。そんな怖い顔をしないでくれ」

戦士「剣を大事にするやつは良い奴だ。そうだな、俺を仲間に入れて守ってくれるんだったらいいぞ」

戦士「俺が万が一氏んだときにでもくれてやる!」

副団長(建設部門長)「するするする仲間でも王様にでもしますしちゃいますニャー!!」バッ 

戦士「うわわっ、抱きつくなよ!」ギュー

戦士「しかし。途中で暗頃しようなんて企んでくれるなよな」

副団長(建設部門長)「大丈夫。ボクは仲間が傷つくことがいっちばん嫌いなんだ」


226: 2014/05/16(金) 00:59:32.16 ID:38k8vLJ70


副団長(建設部門長)「まあ仲間といっても上から団長>>>>>>戦士>勇者だけだけどね。その他のみんなは氏んじゃった」

戦士(勇者に勝った!!)グッ

戦士「そいつは安心したよ。じゃあ……」

戦士「そろそろ離してくれ」ギュー

副団長(建設部門長)「うわっごめん! ついやっちゃった」バッ

副団長(建設部門長)「でも、キミとボクは気が合いそうだ。今まで誤解していたみたいだね」

戦士(道具で釣れるとは……意外とチョロい奴)

戦士「やっぱり素直だな。まあ動機不純なのは目をつぶることにしよう。よろしく頼むよ」

副団長(建設部門長)「こちらこそ!」


227: 2014/05/16(金) 01:00:35.60 ID:38k8vLJ70


戦士「ところで、これいくらになるんだ?」

副団長(建設部門長)「ふーむ。場合によっては国が買えるかもよ」

戦士「」

戦士「そんなにすごいのか……俺としたことが全く知らなかった」

副団長(建設部門長)「まあ……価値には似合わないけど、かなりのレベルの収集家じゃないと知らないようなマイナー品でもあるし」

戦士「今日は暇だろ?ちょっと剣についてでも語らねぇか」

戦士「勇者はそういうのにはめっきりのつまらん男なんだ」

副団長(建設部門長)「じゃあ、仕事が終わったらボクのコレクションを紹介しよう!」

戦士「お、そうこなくっちゃ」


234: 2014/05/20(火) 00:22:26.94 ID:ZOnFCfin0


―――その頃 代表執務室―――


ガチャ

ヒョコ


突然、団長が扉から顔を出した。


団長(行政外交部門長)「勇者、魔法使いが到着したぞ!」

勇者「おっ、通して通して」

団長(行政外交部門長)「ちょっと待っておれ」


バタン


235: 2014/05/20(火) 00:23:20.10 ID:ZOnFCfin0


―――…


ガチャ


魔法使い「失礼するわ」

スタスタ


魔法使い「お久しぶりね勇者」

勇者「お久しぶり!わざわざ戻ってきてくれて本当にうれしいよ!まあ、まだ4か月くらいしか経っていないけどね」

魔法使い「あらそうだったかしら。貴方が出世するのは50を超えてからだと思っていたものだけどね。ちょっと老けたんじゃない?」クスクス

勇者「まーた相も変わらず痛いことを言う。僕はまだ20代だよ。そんな魔法使いは『四賢人』昇進を断ったそうじゃないか」


236: 2014/05/20(火) 00:24:09.01 ID:ZOnFCfin0


勇者「一体何時の間に魔法学の勉強をしていたんだ? 戦士が嫌に不思議がっていたよ」

魔法使い「そうね……でも、努力というのは人前に見せるものじゃないわよ?」

魔法使い「ある人は隠れて剣術を、ある人は薬草学を、そしてある人は魔法学を学んでいただけに過ぎないわ」

勇者「なるほどね、あれ?それだと一人足りないような……」

魔法使い「気にしたら負けね」

勇者「ま、いいか。それより、魔術国連合から労働者を派遣してほしいという旨は伝わっているかな?」

勇者「人手不足はやっぱり一番の問題だよ。人は石垣、人は城、なんても言うしね」

魔法使い「もちろん伝わっているわよ。花の国王が鼻を真っ赤にして勇者に協力することを誓っていたわ」


237: 2014/05/20(火) 00:24:50.53 ID:ZOnFCfin0


勇者「それはよかった。これからも魔法使いには魔法学校の創設などを頼みたい」

魔法使い「お安い御用ね」

勇者「それと、まだ大使事務所が完成していないから、しばらくはこの仮行政本部の空き部屋で我慢してほしいんだ」

魔法使い「それはちょっとお安くないわね。まあいいわ。無いよりはましということにしておきましょう」

魔法使い「それじゃあ、書物の整理をしなくてはいけないから、また後でね」

勇者「あ、今日は歓迎会を開くから、後で食堂に来てくれよ!」

魔法使い「心得たわ」


スタスタ


238: 2014/05/20(火) 00:25:54.50 ID:ZOnFCfin0


―――夜 行政本部食堂 歓迎会―――


歓迎会とはいえ、それは小規模であった。食堂には、商人以外の不干渉区部門長が集まり、魔法使いを迎えることとなった。


勇者「それじゃあ紹介しよう。彼女が元僕のパーティーの一員にして、現魔術国外務省のお役人さんである魔法使いだ!」

魔法使い「よろしくお願いするわ。魔法使いでいいわよ」

団長「わざわざご苦労じゃな」

副団長「……」スリアシ

戦士「……」スリアシ

魔法使い「フフフ。それにしても、可愛いお友達が増えたものね」


239: 2014/05/20(火) 00:29:16.10 ID:ZOnFCfin0


魔法使い「幼女に猫なんて、勇者の右腕にはまず見えないわね」クスクス

団長「なっ。儂は一応勇者と似たり寄ったりの歳じゃ!」←幼女

副団長「ギニャッ!? ボボボボボボクは猫じゃないし!」←猫

魔法使い「これは失敬したわね」

団長「それにしても、魔法だけでなく歴史にも通じているとは、大層なものじゃな」

魔法使い「あら、大したことは無いわよ。故事の中になにか面白いことがないか探していただけに過ぎないわ」

魔法使い「旅中も『遠視魔法』を使って本を読んでいたものよ」


240: 2014/05/20(火) 00:31:46.07 ID:ZOnFCfin0


戦士「いつの間に勉強なんかしたのかと思ったらそういうことだったのか」

魔法使い「そうよ。寝る間も惜しんでね。誰かさんとは違って」

戦士「うぐ……俺はだな、昼行性の健康的な生活を送っていただけだぜ」

魔法使い「さあどうかしら。町に着くたびに酒場に入り浸ったのは貴方じゃなかったかしらね」

魔法使い「お陰でいつも予算不足で僧侶が泣いていたわよ?」

戦士「うぐぐ……」

魔法使い「まだまだ口じゃ負けないわね」

団長「そうじゃ、その僧侶というのはどんな人間だったのじゃ?」

241: 2014/05/20(火) 00:32:44.36 ID:ZOnFCfin0


団長「どうも詳しく聞いたことはなかったのう」

勇者「お、確かにそうだね」

勇者「僧侶はパーティの中で一番の『縁の下の力持ち』だったんだ」

魔法使い「そうね。身の回りのことは食事から予算の勘定までまかせっきりだったわ」

魔法使い「いつもだらしない男二人が叱られていたわ」クスクス

戦士「おいおい、俺を勇者と一緒くたにしてくれるなよ!俺は時々僧侶の手伝いもしてやッたんだぜ」

魔法使い「ごく稀にね」


242: 2014/05/20(火) 00:33:33.23 ID:ZOnFCfin0

勇者「僕だって手伝っていたさ。でも彼女の本領は戦術の方にもあっただろうね」

魔法使い「ええ。勇者の作戦も素晴らしい物ばかりだったけれど、それを応用して改良するセンスは、私や戦士には持ち合わせていなかったわ」

魔法使い「かの魔王軍最強にして最終の防衛ラインだった『氏の谷』を攻略できたのもそのお陰だったしね」

戦士「俺たちはあくまで実行部隊だろ!」

魔法使い「良く言えばそうね」

団長「なるほどのう。それであの光水戦線のスピード決着も説明がつくということじゃな」

副団長「それは是非敵に回したくはないものだね」


243: 2014/05/20(火) 00:34:36.62 ID:ZOnFCfin0

魔法使い「猫ちゃんの言うとおりよ」

副団長「なっ!ボボボボボボクは猫じゃないし!半魔だし!!」カァー

魔法使い「まあ照れちゃって。かわいらしいわね」クスクス

団長(初対面の相手に副団長が翻弄されるとは……珍しいこともあるもんじゃな)クスクス

勇者(戦士<副団長<魔法使い か)

副団長「あーっ!団長まで笑わないでください」

団長「悪かったのう」


244: 2014/05/20(火) 00:36:41.88 ID:ZOnFCfin0

店員「おー!みんな盛り上がってるじゃないか!」

店員「待たせたね、ほら、今日はごちそうだよ!」

テーブルに様々な料理が並べられた。

戦士「酒場の店員なのに料理ができたのか……」

店員「おうよ。昼は店員、夜はシェフ、それがアタシさ!」

魔法使い「台本形式のセリフがややこしくなりそうな肩書きね」

団長「店員、デザートは何かの」

店員「お、デザートは団長の大好物のイチゴショートケーキだよ!」


245: 2014/05/20(火) 00:37:50.00 ID:ZOnFCfin0


団長「ケーキ!? やったぁっ」

勇者「えっ」

戦士「えっ」

団長「はっ!?」

団長「いや……これはじゃな……成りすましの練習でな……」カァー

副団長(照れてる団長も可愛いなぁ……)ニュフフフ

店員「そういう所だけはまだまだ子供っぽいんだよなー団長は」

団長「こら!余計なことを言うな!」

魔法使い「いいじゃないの。私も甘いものは大好きよ」


246: 2014/05/20(火) 00:38:25.75 ID:ZOnFCfin0

戦士「そういう問題なのか……?」

団長「まったく、そろそろ食べんと料理が冷めてしまうぞ」

副団長「いっただっきまーす!」

戦士「あっ!抜け駆けするなっ」

勇者「そう慌てない慌てない」

魔法使い「慌てないと水しか残りそうにないわね」

勇者「それは困るっ!」


ワイワイガヤガヤ



247: 2014/05/20(火) 00:41:30.81 ID:ZOnFCfin0

団長「賑やかでなによりじゃな」

店員「ははは。団長も幸せそうじゃないか」

店員「付き合いは長いつもりだけど、団長がそんなに幸せそうにしてるのは初めて見るかもしれないよ」

団長「そうじゃな」

団長「ようやく、解放されたのじゃろうか……」

団長「儂は、未だに『人間であった頃』のことを覚えておる」

団長「あの時奪われた幸せを、儂は取り戻すことができたじゃろうか」


248: 2014/05/20(火) 00:42:59.36 ID:ZOnFCfin0


店員「さあね。団長が幸せなら幸せでいいんじゃないのか?」

団長「最もなことじゃな」クスクス

団長「平和な世界……か……」

副団長「団長!ぼーっとしてるとイチゴ貰っちゃいますよ!」

団長「ああああっ!ダメっ!それだけはダメっ!!」

魔法使い「キャラが崩れてるわよ」クスクス


ハハハハ
ワイワイガヤガヤ……


253: 2014/05/25(日) 21:14:11.73 ID:lBDRyipG0


―――歓迎会後 副団長の部屋前廊下―――


スタスタ


副団長「いやー食べた食べた。やっぱり店員の料理は最高だなぁ」

戦士「全くだ。あんな美味い料理は宮廷料理でも珍しいぞ」

戦士「しかし、イチゴをとられそうになった時の団長の慌てっぷりといったらなかったな」

副団長「団長は昔から甘い物にだけは目がなくてね」

副団長「一度団長のプリンを食べちゃったときは、3日間口を聞いてくれなかったんだ」

戦士「そこまでするか……」


254: 2014/05/25(日) 21:15:14.41 ID:lBDRyipG0

副団長「まあ、ボクも大切な剣を折られた時に、3日間この部屋に籠っちゃったんだけどね」

戦士「お前も大概だな」

副団長「おあいこさまということで」

戦士「なーにがおあいこさまだ」

副団長「それにしても、ボクの部屋に入れるのなんて団長以外はキミだけだよ」

副団長「それ以下は絶対にドアノブも触らせないからね」

戦士(今『以下』って言ったよな……)

戦士「そうだったのか。そいつはありがたいことだな」


255: 2014/05/25(日) 21:16:04.27 ID:lBDRyipG0

戦士「早く元盗賊団副団長閣下のお手並みを拝見したいものだ。戦闘も含めてな」

戦士「憲兵隊じゃ上級隊長くらいしか物足りる奴がいなくてな」

副団長「お、そうだね。そういえばまだ決着がついてなかったっけ」

副団長「といってもボクにはその剣を傷つけることは到底できないから、適当なのを貸してあげることにするよ」

戦士「そいつは助かる」

戦士「細工は無いだろうな」ジトー

副団長「ご心配なく」ニュフフフ


256: 2014/05/25(日) 21:16:52.78 ID:lBDRyipG0


―――コレクションルーム―――

ガチャ

パチッ


戦士「こ、これはっ!」


コレクションルームには壁中に剣から鎧、珍植物に至るまでがびっしりと並んでいた。


副団長「これがコレクションルーム1さ。まだ4つ奥に部屋があるよ」

戦士「これは凄いな……町の商店で売っていたものも中々の名品ぞろいだったが、比べ物にならないぞ」

戦士「これなんてあの『大魔王の剣』じゃないか!まさかこんなところに本物があるとは……」


257: 2014/05/25(日) 21:17:51.60 ID:lBDRyipG0


副団長「お、キミは随分目利きのようだね。ボクの最高のコレクションを一瞬で見抜くなんて」

副団長「でも『13代勇者の剣』はそれに次ぐ名品と言っても過言じゃないね」

戦士「なるほど……ようやくその価値が分かった気がするぜ」

副団長「他にもこれ!……の^^^さ!」

戦士「これは&&&の“”じゃないのか!?」


258: 2014/05/25(日) 21:19:16.69 ID:lBDRyipG0


戦士「かぁー! これは何時までもいても居たりないな!」

戦士「ここに住めたらどんなに幸せだろうか……」

副団長「おいおい、ボクの部屋に住むのはやめてくれよ」

戦士「その点だけは安心していいぞ」

戦士「しかし、お前がいつも着ているそのブレザーも気になるな」

戦士「何かのアンティークなのか?」

副団長「ああこれ? これはボクが気に入ってる服装ってだけさ」


259: 2014/05/25(日) 21:20:07.34 ID:lBDRyipG0


副団長「特に意味は無いね」

戦士「ないのかよ。変なところで無頓着だな」

戦士「ま、いいや。そろそろ一太刀やろうじゃねえか」

副団長「ん、そうだね」

副団長「んーと、はいっ」ヒュッ

戦士「ありがとよ」パシ

副団長「それは『戦士の剣』って言うんだ。あれ……戦士?」

戦士「って俺のじゃねえか!」

戦士「荒れ地で失くしたと思っていたらこんな奴に盗られていたのかよ!」


260: 2014/05/25(日) 21:21:03.63 ID:lBDRyipG0

副団長「な、こんな奴とは失礼な!」プンスカ

副団長「この上ない丁重なもてなしをしてあげたというのにひどい言いようだね!」

戦士「わ、悪い悪い。ともかく、これは俺が師匠から譲り受けた大切な剣だったんだ」

戦士「戻ってきてよかったよ」

副団長「そらみたことか」フン

副団長「さて、表に出よう。こんなところでやりあったらボクのコレクションが台無しだからね」

戦士「おう。そうだな」


261: 2014/05/25(日) 21:31:01.46 ID:lBDRyipG0


―――地上 新行政府庭園予定地―――


副団長「うーむ、この芝生はもうちょっと茂らせた方がいいかな……」

戦士「こらこらこら。仕事をしに来たんじゃないんだぞ」

副団長「あ、ごめんごめん。つい気になっちゃってね」

副団長「いろんな美しいものを集めるのは好きだけど、自分の手で何かを作るのもたまには楽しいものだよ」

戦士「面白い小説を読むと自分も書きたくなっちゃうっていうあれか」

副団長「キミは小説なんて読まないだろうに」

戦士「大当たり!」

262: 2014/05/25(日) 21:33:03.32 ID:lBDRyipG0

副団長「なんだそりゃ……とにかく、ボクは本気で行くからね」

副団長「あまりボクに回復魔法を使わせないでよね」

戦士「おいおいそりゃあどっちの意味で言ってるんだ?」

戦士「俺だって手加減は無しだ」

副団長「身体強化魔法!」ブワッ


ダッ


戦士(速いっ!?)


ギィィィン


副団長が助走をつけて放った拳の一撃を、戦士は咄嗟に剣で受け止めた。

263: 2014/05/25(日) 21:34:59.35 ID:lBDRyipG0


戦士「魔法とはちょっと反則じゃないのか?」ギリギリ

副団長「剣のハンデということで」

戦士「言ってくれるぜ!」バッ


戦士は一度距離をとる。


戦士(それにしても、華奢なくせになんて重い攻撃だ。まだ手がしびれてやがる)ビリビリ


ダッ

キィン
カキィン
バキッ


副団長「ボクの速さについてくるとは中々やるじゃないか!」

264: 2014/05/25(日) 21:36:05.38 ID:lBDRyipG0


戦士「チッ、褒められても嬉しくはねえな」

戦士「全く。鎧も着ていないくせにやけに堅いったらありゃしない」

副団長「当然さ、防御力増強魔法を一点に集中すれば剣なんて簡単に防げる!攻撃もまた然り!」

戦士「防いでもらっちゃ困るってな!」


カァン
キィン
ガンッ


265: 2014/05/25(日) 21:36:49.51 ID:lBDRyipG0


―――…


戦士「そらっ!」ブン

副団長「まだまだ遅いねっ!」ヒラリ

副団長「そろそろ決着をつけさせてもらうよ!」


副団長は戦士の真上に高くジャンプした。


副団長「……ブツブツ……ブツブツ……」

戦士「自分から攻撃を避けられない体制に入るとはご苦労なこったな!」


戦士もそれめがけてジャンプした。


266: 2014/05/25(日) 21:37:47.53 ID:lBDRyipG0


副団長「かかったね! 石柱魔法!」


ズズズズズズズ


戦士「はっ。 下か!」

副団長「これで挟み撃ちだ!」

戦士「ぐっ!」ダッ


戦士は迫る石柱を逆に足場に利用した。


副団長「いけええええええ!」

戦士「うおおおおおおお!」






ズババッ





267: 2014/05/25(日) 21:38:31.71 ID:lBDRyipG0


―――……


副団長「回復魔法」パァー

戦士「悪いな」

戦士「結局引き分けか……」

副団長「そのようだね」

副団長「やっぱり勇者一行だ。咄嗟の判断力は群を抜いているよ」

戦士「そいつはどうも」


268: 2014/05/25(日) 21:39:03.08 ID:lBDRyipG0


戦士「お前こそ、猫譲りの反射神経だな」ハハハ

副団長「だから猫じゃないっ!」

副団長「しかし、ここまで本気を出せたのも久しぶりだったよ」

戦士「俺も同様にだ。これからもまた相手を頼むぞ」

副団長「喜んで!」

副団長「それにしても、ボクと石柱魔法の挟み撃ちをかわしてくるなんて……ん?」


269: 2014/05/25(日) 21:40:57.44 ID:lBDRyipG0


副団長「ギニャアアアアアアッ!!!」

副団長「ぼ、ボクの芝生がっ! 庭園がぁっ!」


庭園には、先ほどの石柱魔法によって生成された石の柱が芝生を貫いてそびえていた。


戦士「あーあ。熱くなるからだ」

副団長「一様に芝を張るのに2か月もかけたのに……またやり直しじゃないかあああああ」

戦士「そこまでするか」

戦士「ま、俺も同罪だ。手伝ってやるよ」

副団長「うわあああっさすが戦士! ありがとうニャーッ!」ギュー

戦士「のわああっ!だから抱き着くなぁっ!!」


こうして勇者一行にはしばらくの間平穏の日々が流れて行った。


274: 2014/05/26(月) 23:12:36.09 ID:RX/hXIct0


―――…


ソローリ


団長「むふふ……この日のために隠しておいた秘蔵のケーキ……」

団長「さすがの副団長でも見つけ出せはせんかったじゃろう……」パカッ


スカッ


団長「」

副団長「まーたこんな夜中に何をやっているんですか?」

団長「はっ!? 貴様!」

275: 2014/05/26(月) 23:13:24.75 ID:RX/hXIct0

副団長「健康に悪いですよ。罰としてケーキはボクが成敗しておきました」

副団長「さあさあ早く寝てくださーい」

団長「むぅぅ……副団長のばかぁっ!」


ダッ


副団長(涙目の団長もいいなぁ……)ニュフフ

副団長「はっ!? これでまた3日も口がきけないじゃないか!」

副団長「しまったああああああああああああ」


しかし、それも長くは続くものではない。


276: 2014/05/26(月) 23:14:15.34 ID:RX/hXIct0


―――……


魔法使い「あの魔法は『究極破壊魔法』というのね……」パラパラ

魔法使い「しかし、名前だけ大層な割に記録がほとんどないわね」ポム

魔法使い「でも、あの大賢者の最高傑作に対しての反魔法なんて……柄にも合わず熱くなってきたわ」

魔法使い「必ず完成させてやるわよ」カリカリカリ


277: 2014/05/26(月) 23:15:07.64 ID:RX/hXIct0


―――……


勇者「ナイトをここに。チェックメイトだね」

戦士「何っ!? 待った待った待った!」

勇者「もう何回待たせてあげたと思ってるのさ。いい加減勝たせてくれたっていいんじゃないのかい?」

戦士「ま、まだだ。 まだ……キングをこうすれば……」

勇者「ふっふっふ。こうすればそこもチェックメイトだよ」

戦士「ぬああああああ!」

戦士「駄目だ! 俺は頭脳より肉体派なんだよ!」

勇者「はいはい」


278: 2014/05/26(月) 23:15:54.27 ID:RX/hXIct0


戦士「ところで、行政府を新設した後は、あの地下基地をどうするつもりなんだ?」

戦士「どうも迷路じみていて使う気にはなれんのだが……」

勇者「ああ、あれは商人の助言で貯蔵庫にでもするつもりだよ」

勇者「玉座は魔法石、台所は石油、コレクションルームは……何だったかな」

戦士「おいおいまじかよ」

戦士「それじゃあ資源を取りに行ったっきり帰ってこなくなる奴が続出しそうだぜ」

勇者「はは。まあそうなったらまた新しく倉庫でも作ることにしよう」


279: 2014/05/26(月) 23:39:49.31 ID:RX/hXIct0


―――…


団長「どうかの……」

魔法使い「なるほど、回復魔法による再生失敗ね」

団長「治せるか?」

魔法使い「もちろんよ。私は新しい魔法を作り出すのが生業なんだから」

魔法使い「努力するわ」

団長「か、感謝するのじゃ!幻影、屈折魔法」パッ

魔法使い「それにしても、そこまで酷く跡が残るなんて、相当無理したわね」


280: 2014/05/26(月) 23:43:19.57 ID:RX/hXIct0

魔法使い「常に強力な回復魔法をかけながら、敵中に突入でもしたのかしら?」

団長「ご明察じゃ。しかし、そのお陰で平和が訪れたというのなら、儂は後悔などしておらんよ」

魔法使い「あら。じゃあなぜ私にその治療をお願いしに来たのかしらね」

団長「そ、それはじゃな……いつも魔力を保っておくのが面倒でな……」

魔法使い「ま、いいわ。そういうことにしておいてあげるわね」

団長「頼むぞ魔法使い」

魔法使い「お任せあれ」


281: 2014/05/26(月) 23:44:22.49 ID:RX/hXIct0


―――…魔国 魔王城


魔王「今日は星がきれいだなぁ」

魔王「平和、か」

魔王「綺麗ごとだけ並べておいて、結局は自分たち同士で戦争を始める」

魔王「人間っていうのは理解に苦しむ生き物ね……滅ぼしてしまいたいほど」

魔王「はぁ。復興省が来てからろくに外も出歩けないし。つまんないなぁ」

魔王「あれ? 南の丘の向こうが明るい……?」

魔王「あの方角は奇術国連合でもないし……確か勇者が建てた不干渉区、だったっけな」

魔王「…………行ってみようかな」


282: 2014/05/27(火) 00:48:32.00 ID:GcpFferK0


―――…


『火炎魔法っ!』ボォッ

『相手は強力な魔力を持つ半魔だ!心してかかれい!』

『絶対に逃がすな! 母親もろとも処分するのだ!』



『お母さん。どうして外が騒がしいの?』

『早く逃げなさい! ここは私が食い止めます』

『あなたは絶対に生き延びるのです。幻影魔法をかけておきますから、とにかく森の中を進みなさい』


283: 2014/05/27(火) 00:49:11.60 ID:GcpFferK0


『そうすれば必ず道は開けます』

『え、嫌だよお母さん! お母さんも一緒に来てよ!』

『それはできません。私はしてはいけないことをしてしまったんですよ』

『私の罪はあくまでも私の罪であって、貴方の罪ではありません』

『あの父親を持つ貴方ならわかるはずです』

『どうして? どうして私だけ……』

『どうして……』


ゴォォォォォ



284: 2014/05/27(火) 00:49:46.44 ID:GcpFferK0


――…――


「はっ!ここは……」

『…………』

「誰?」

『……………』

「何を言っているの……?」

『…………』

「何を……」

『…………』


――――――
―――――
―――


285: 2014/05/27(火) 00:50:36.35 ID:GcpFferK0


―――建設中新行政府 外交行政部門長執務室―――


団長「はっ!? つい寝てしまっておったか」

団長「またあの夢か。新行政府に移ってから回数が増えたようじゃな……」ゴシゴシ

団長「父親か……まだ生きておるのじゃろうか……」

団長「……まさかな」

団長「はぁ。もう夜か」

団長「あそこにでも行ってみるかな」


291: 2014/05/27(火) 23:40:16.53 ID:GcpFferK0


―――塔最上階展望台―――


ヒュオオオ


団長「うぅっ……さすがにこの季節では肌寒いなぁ……炎魔法(極小)」ボォッ

勇者「おっ。団長じゃないか。どうしたんだいこんな時間に?」

団長「勇者こそよくこんなところに毎日いられるものじゃ」

団長「こちらが聞きたいものじゃな」

勇者「いやあ。こうして夜の街を見下ろすのもいいものだよ」

勇者「一日一日ごとに光が増えていくんだ。この光が増えれば増えるほど平和に近づいてているんだと思うとなんだか自分のやっていることに自信を持てる」

勇者「僕は間違っていなかったんだってね」

292: 2014/05/27(火) 23:40:43.53 ID:GcpFferK0

団長「はは。勇者がそんな小心な部分を持ち合わせている覚えはなかったのじゃ」

勇者「僕だって自分のやる事成す事全てが正しいと思ったことは無いさ」

勇者「もしかしたらここに国を作るせいで犠牲になる者も出てしまうかもしれない」

勇者「いや、必ずでてしまうだろう」

勇者「平和のためにまた血を流すことが本当に正義なのだろうか。本当にここで流れた多くの血の償いとなり得るんだろうか」

勇者「どうしてもそんなことばかり引っかかってしまうんだよな」


293: 2014/05/27(火) 23:41:17.52 ID:GcpFferK0

団長「そうじゃな。儂もそれはわからんでもないことじゃ」

団長「しかし、現に儂は多くの半魔の骸の上に半魔盗賊団の旗を掲げていたのじゃ」

団長「勇者が間違いだというなら、それ以前に儂が間違っていたことになるじゃろう」

団長「そうなれば……一体儂は何をしてきたのかわからなくなってしまうのう」

勇者「そうだね。その通りだ」

勇者「団長の為にも頑張ることにするよ」ニコッ


294: 2014/05/27(火) 23:41:56.32 ID:GcpFferK0

団長「そうしてくれるとありがたいのじゃ」

団長「……最近夢の中で誰かが儂に話しかけてくるのじゃ」

団長「何もない意識だけが存在する世界で……何を言っているかも聞き取れん」

勇者「夢か……」

勇者「確か魔法使いが言っていたんだけど、どうやら他人の夢に何らかのメッセージを残す魔法もあるらしいんだ」

勇者「僕も一度先代魔王の策略で『夢』に干渉されたことがある」

勇者「その時は戦士の気合の一発で目を覚ますことができたんだけどね」


295: 2014/05/27(火) 23:42:37.81 ID:GcpFferK0


勇者「あと一歩で僧侶に切りかかっているところだったよ」

勇者「だから、もしかしたら何らかの支障をきたすかもしれない」

勇者「十分用心した方がいいかもしれないよ。夢の力はかなり強力だからね」

団長「そうじゃな……心に留めておくことにするのじゃ」

団長「すまんな。いきなり変な相談を持ち掛けてしまって」

勇者「相談位だったらいくらでも乗るさ」

勇者「折角だから酒場にでも行ってゆっくり語らないかい?」

勇者「ケーキもおごるよ」

296: 2014/05/27(火) 23:43:30.07 ID:GcpFferK0


団長「ほ、本当かっ!?」

団長「行こう! 飲もう! ゆっくり語ろう!」

勇者「団長は未成年だろう」

団長「うるさいのう。未成年なのは外見だけなのじゃ」

勇者「ははは。この身長じゃあまだまだ育ちざかりなんじゃないのかい?」

団長「うっ。頭をぽんぽんするのはやめんか。身長が縮む」

勇者「伸びはしなくても縮むことはあるんだね」

団長「まあ……万が一じゃ」

団長「さて、早く行こう! ケーキが儂を待っているのじゃ!」グイッ

勇者「わわっ。ひっぱるなって」


297: 2014/05/27(火) 23:44:04.85 ID:GcpFferK0

―――…


着実に、背後に影は忍び寄っているのだった。

商人「……はい……はい。そうですね………そのようです」

商人「……もちろんです……はい………分かりました。ありがとうございます」

商人「はい……それでは」


ガチャ


商人「ふう。あのお方もどうして突然活発に動き出したんだか……」

商人「まあ、平和が来てしまっては私も困ります」

商人「これも利益の為です。勇者様には悪いですが、仕方ありませんね」ニヤリ


事件が起こったのは、不干渉区発足から3年が経とうとした頃であった。


301: 2014/06/03(火) 00:29:25.49 ID:Hcs5mSNf0


―――不干渉区発足から3年後 中央行政区 新中央行政府 代表執務室―――


不干渉区発足から約3年が経ち、不干渉区内にはいくつもの都市が完成していた。
中央行政区も例外ではなく、諸侯国の王城をモチーフにした新行政府を中心に首都機能を備えた大規模都市が発達していった。


各部門も次々と体制の整備が進み、副部門長もほとんどの部門で配置されるに至っていた。


302: 2014/06/03(火) 00:30:12.72 ID:Hcs5mSNf0


団長「今月だけで銀行が13件、魔法薬局が21件、企業連合の支社が10件、魔法学校が7件この不干渉区に進出してきたのじゃ」

団長「貿易額も月を経るごとに上向いておる。景気がいいものじゃな」

勇者「まあね。ここは魔国、奇術連合、魔術連合三勢力の中間にあたる三角地帯だ」

勇者「三角貿易には最適な場所ということさ」

勇者「それに、どうしてあの両連合が幾度となくこの土地を取り合ってきたか分かるかい?」

団長「まあ、ここが戦略的要所であることは自明の理じゃろうが……」

勇者「まあそれもある。でも、もっと重要なのはこの土地が、偏在性の強い『魔法石』と『天然資源』が同時に眠る資源のクロスポイントだということなのさ」


303: 2014/06/03(火) 00:31:25.07 ID:Hcs5mSNf0


勇者「商人にお願いして開発を進めてもらっているけど、その埋蔵量は相当な物らしい」

勇者「僕がここに国を作ろうと思ったのもそれが結構大きかったんだ」

勇者「幸の国王に直接左遷されなくてもいずれはここに来る予定だったしね」

団長「そういえば商人も同じことを言っておったのぅ」

勇者「ははは。彼のお陰で経済基盤が完成したようなものさ」

勇者「ありがたいかぎりだね」


304: 2014/06/03(火) 00:32:11.75 ID:Hcs5mSNf0


団長「しかし、あまり彼一人に経済の大部分を任せすぎるのも問題じゃな」

団長「商人はあくまで利益のために動く男じゃ。いつ儂らを裏切ってもおかしくは無いぞ」

勇者「そうだね。考えておこう……」


ドタドタ

バタン


戦士が扉をはねのけて入ってきた。


305: 2014/06/03(火) 00:33:07.79 ID:Hcs5mSNf0

戦士「おい、大変だ! 西部支部周辺で反乱が起こったそうだ!」

戦士「なんでも昨日西部支部を襲撃し、今は近くの洞窟を本拠地にして立て籠っているそうだぞ」

団長「なんじゃと!?」

勇者「反乱だって?」

戦士「ああ。さっき憲兵隊を派遣したが、俺達も行った方がいいんじゃないのか?」

戦士「どうも反乱の首謀者並びにメンバーは元半魔盗賊団のメンバーらしい」

戦士「この不干渉区に不満があった奴らが潜伏して集まったんだろう」

団長「な、なんということじゃ……」

団長「ぐ……避けられるものでは無かったか……」

団長「儂が甘かったようじゃな」

勇者「団長……」

勇者「よし、部門長を急きょ招集しよう」


306: 2014/06/03(火) 00:33:44.27 ID:Hcs5mSNf0


―――会議室―――


勇者「……ということだ」

商人「それは一大事ですね」

商人「下手に武力で押さえつければ、平等を謳うこの不干渉区の政策に反します」

商人「そうなれば今までの苦労が水の泡ですよ」

勇者「その通りだ商人」

勇者「僕らはこれをできるだけ平穏な形で収めなくてはならない」

魔法使い「しかし、話し合いで解決できるとも限らないわね」


307: 2014/06/03(火) 00:34:41.99 ID:Hcs5mSNf0


副団長「一体誰が反乱なんて……」

団長「元情報隊長だそうじゃ。最近顔を見んと思っていたら……」

団長「盗賊団の時は最も信頼のおける部下じゃったというのに」

団長「どうしてなのじゃ……」

戦士「しかし、現に反乱を起こしているわけだ。昔のよしみじゃどうにもならんぞ」

勇者「うむ。そこで、部門長の中から4人ほどが出て反乱の解決にあたろうと思う」

勇者「1人は僕として、後3人はどうしようか」

団長「元はと言えば儂のせいなのじゃ。儂が行こう」

副団長「団長が行くならボクも行かなくちゃね!」


308: 2014/06/03(火) 00:35:27.70 ID:Hcs5mSNf0


勇者「そうだね。それじゃあ……あとは戦士、君は西部支部で憲兵隊の統率に当たってくれ」

勇者「僕らに何かあったらいつでも出動できるようにね」

戦士「いいだろう」

勇者「それじゃあ、一時この行政区に部門長が4人もいなくなる」

勇者「商人、ゲストではあるけど魔法使い。あとはお願いするよ」

商人「どうぞお任せを」

魔法使い「仕方ないわね」

勇者「それじゃあ明日には出発しようか」

戦士「おうよ!」

商人「……」ニヤ


309: 2014/06/03(火) 00:41:26.32 ID:Hcs5mSNf0


―――2日後 北部不干渉区 西部支部―――


ざわざわ……


西部支部には、中央行政区から派遣された憲兵隊が集結していた。
西部支部は奇術国よりに存在していることもあって魔法都市の面影は薄く、むしろ車が通りを走るような科学都市の影響を強く受けていた。


上級隊長「警務部門長殿、各隊集合を完了したでござる!」ザッ

上級隊長「このまま待機するでござる」

戦士「おう。ご苦労だったな上級隊長」


上級隊長とは、半魔盗賊団時代に警備隊長を務めていた犬型魔族の血を引く半魔である。
その剣の腕前は戦士とほぼ互角であり、部下の統制力も高い。


310: 2014/06/03(火) 00:42:32.90 ID:Hcs5mSNf0


戦士「さて、こっちの方は準備万端だぜ勇者」

勇者「ありがとう戦士、こっちの方もそろそろ行くことにするよ」

団長「わざわざすまんのう」

副団長「ま、キミの出番は今回はお預けだろうけどね~」

勇者「まあ、それが一番いいことではあるさ」

団長「その通りじゃな……」

戦士「ま、無事に帰ってくるこったな」

戦士「ちょうどいいからかい仲間と武器オタクがいなくなっては俺も少し寂しいからな」

副団長「まったく、誰の心配をしてるんだか」

団長「それじゃあ行くぞ。戦士、上級隊長、後衛は任せたのじゃ」

戦士「おうよ!」

上級隊長「お受け奉るでござる!」


313: 2014/06/03(火) 23:27:24.04 ID:Hcs5mSNf0



―――西部支部付近 洞窟―――


団長「さて、ここのようじゃな」


小高い山の麓に大きな洞窟がぽっかりと口を開けていた。


団長「ここは元々盗賊団情報隊の本拠地だった場所じゃ」

団長「おそらく、反乱のメンバーは情報隊だった面々がメインなのじゃろう」

副団長「彼らは特に戦闘能力に長けた連中じゃなかったけれど、もしかしたら罠を張って待ち構えているかもしれないよ」

勇者「そうだね。反乱軍の本拠地にしては静かすぎる」

勇者「警備の1人や2人くらいおいていてもおかしくは無いのに……」

団長「しかし、ここで帰るわけにもいかんじゃろう」

団長「罠と分かっていても飛び込まねばならんことはあるものじゃ」

勇者「確かにそうだね。しかし、罠に嵌める最も効率的な方法は、罠に飛び込まざるを得ない状況に追い込むことだ」

副団長「十分用心した方がいいねぇ」


314: 2014/06/03(火) 23:29:20.10 ID:Hcs5mSNf0


―――…内部


コツ……コツ……


団長「誰もおらんな……」

勇者「本当に静かだね」

副団長「もうそろそろ広場に出るはずだよ」

勇者「あれ? 何か向こうが明るい……?」

団長「広場じゃな。遂にお出ましのようじゃ」


315: 2014/06/03(火) 23:38:02.18 ID:Hcs5mSNf0


―――…広場


勇者「これは……!」


ザワザワ……


広場には大勢の半魔たちが待ち構えていた。そして、正面にはかなり人間に近い容姿の半魔が一人。どうも猿型の魔族の血を引いているようだ。


情報隊長「ようこそいらっしゃいました北部不干渉区の大幹部様方」

情報隊長「私は新半魔盗賊団の情報隊長です」


彼は紳士的な振る舞いで3人を迎えた。


316: 2014/06/03(火) 23:41:31.77 ID:Hcs5mSNf0


団長「『新』、じゃと?」

団長「どうして反乱など起こしたのじゃ情報隊長!」

団長「今すぐにこんなくだらないことを止めて儂の下に帰ってくるのじゃ!」

副団長「そうだそうだ! 戦ってこの3人に勝とうとなんて思わないでよ!」

勇者「僕達は戦いを望んではいないんだ。今すぐに反乱を止めるなら今後の身分も保証する」

勇者「不干渉区のメンバーとして、いや、幹部として尽力してはくれないかな」


情報隊長「……」

情報隊長「やれやれ。くだらないとは物言いが悪いものですね」

317: 2014/06/03(火) 23:56:12.82 ID:Hcs5mSNf0


情報隊長「私はがっかりしたんですよ」

情報隊長「なあ団長。お前はもう忘れたのか」

情報隊長「俺達は長い間人間と魔族、両方に迫害され、こんな惨めな何もない土地へと強制的に追いやられてきた」

情報隊長「そしてその中でも争いは絶えず、いつ氏ぬかもわからない状況で生き延びてきたんだ」

情報隊長「俺はある日お前に出会い、お前なら争いを収め、半魔が安住できる『半魔の国』を作ってくれるものだと確信した」

情報隊長「そして、俺はお前に仕え、情報隊長という幹部職を持ってそれに尽力し、遂にその目標の寸前まで達成したんだ」


318: 2014/06/04(水) 00:00:12.72 ID:6BcAb8iE0


情報隊長「それがなんだ? 勇者?不干渉区?」

情報隊長「ふざけるな! どうしてここまで来て人間に支配されなくてはならんのだ!」

情報隊長「ついに『半魔の国』が建ち、平和が訪れるはずだったのに!」

団長「それはじゃな……」

情報隊長「人間は必ずまた俺達半魔を迫害し始めるだろうよ」

情報隊長「これでもう半魔の平和は永く失われてしまったのだ」

情報隊長「ならば、俺は自分で再び平和を勝ち取ってやるまでさ」


319: 2014/06/04(水) 00:13:15.54 ID:6BcAb8iE0


団長「そ、そんなことは無い!」

団長「お前も聞いたはずじゃ……勇者が半魔だけでなく、魔族、人間三族間の平和を誓った『三族平和宣言』を!」

団長「儂が半魔の国を建てれば、それこそまた迫害の時代への始まりに違いはなかったのじゃ!」

団長「だから儂は盗賊団を解散せずに勇者が……儂よりもふさわしい『王』が現れるのをずっと待ち望んでいたのじゃ」

団長「彼さえいれば必ず平和は訪れる。儂は彼と会った時点でそれを確信したのじゃ。お前が儂と出会った時と同じようにな!」

情報隊長「そんなことがあってたまるものか! 俺は、俺達は自らの手で平和を手に入れなければならんのだ!」

情報隊長「迫害され、争い、命がけで戦ってきたあの日々を忘れたお前に何が分かる!」

団長「忘れてなんかおらん! 儂は『人間』としての生を奪われたあの日から、これまでの日々を一日たりとも忘れたことは無い。いや、忘れられるはずがない!」


シュン


団長は体の表面を覆う魔法を全て解いた。


320: 2014/06/04(水) 00:14:25.08 ID:6BcAb8iE0

ザワザワ……


情報隊長「ぐ……!」


体の傷は顔にまで及んでいた。大きな石をぶつけられた様な跡が生々しく残っている。


副団長「団長……ああ悲しいことよ……」ハラリ

勇者(あの時は右腕だけだったけれど……やはり全身となると……)

団長「これは全て迫害と争いによってできた傷に他ならん」

団長「儂はこの記憶をこの身に刻んで残りの一生を過ごしてゆかねばならないのじゃ」

団長「これで気は済んでくれんものか情報隊長」

団長「儂はお前を失いたくはないのじゃ。幻影、屈折魔法」


元に戻った。


321: 2014/06/04(水) 00:15:16.47 ID:6BcAb8iE0

情報隊長「うるさいうるさい!!」

情報隊長「お前などに邪魔はさせん! かかれっ!この半魔の裏切り者を殺せええええっ!!」


ウオオオオオオオオ!!


団長「情報隊長!!」

副団長「駄目だったようですね」

副団長「うぐぐ。ちょっと数が多いかな……」

勇者(ここで派手に戦う訳にはいかないね……)

勇者「団長、ちょっといいかい?」


322: 2014/06/04(水) 00:21:18.74 ID:6BcAb8iE0


団長「なんじゃ!」

勇者「……ゴニョ……ゴニョゴニョ……」

団長「……分かった。それが最善じゃろう」

団長「副団長。20秒だけ時間を稼いでくれんか」

副団長「お安い御用です!」


ウオオオオオオオオ!!


副団長「数が多けりゃいいってもんじゃないよ!身体強化魔法!」ダッ


バキッ
ドガッ


323: 2014/06/04(水) 00:31:29.15 ID:6BcAb8iE0


半魔1「ぐわああああああっ!」

半魔2「ええい! 回り込んで団長を狙えっ!」

勇者「……ブツブツ……」

団長「……ブツブツ……ブツブツ……」

半魔3「グオオオオオオオッ!」ダッ

副団長「しまった! 回り込まれたっ!?」

副団長「団長っ!!」

団長「……詠唱完了じゃ」

勇者「こっちも完了したよ」ガシッ


2人は手をつなぎ、逆の手をそれぞれ高く掲げた。


324: 2014/06/04(水) 00:32:20.18 ID:6BcAb8iE0

勇者「せーのっ」

団長・勇者「「雷魔法(大)!!」」バリバリバリバリ


ズバババババッ

グワアアアアアアアッ


広場内にいた半魔は、情報隊長を除いて全員が雷魔法によって失神した。

情報隊長「……なんだとっ!!?」

情報隊長「ば、馬鹿なっ! 全滅したというのか!?」

団長「ふう。久しぶりの上級魔法じゃったな。コントロールが上手く出来てよかったのじゃ」


325: 2014/06/04(水) 00:33:20.07 ID:6BcAb8iE0


勇者「全員失神でとどめてあるね。さすが団長の魔法コントロールだ」

団長「分かったかのう情報隊長。このように人間と半魔が手を取ってゆくことも十分に可能なのじゃよ」

団長「人間はもう二度と半魔を迫害することは無い。魔族も同様にじゃ。必ず平和は訪れる!それは儂が誓ってやろう」

団長「儂はお前を責めたりはせん情報隊長」

団長「もう一度儂の下で任を全うしてはくれんかの」

団長「ちょうど行政部門長の席を空けようと思っておるのじゃ」

情報隊長「ぐぐ……」ガクッ

情報隊長「俺は……俺は……」

情報隊長「俺は…………」

326: 2014/06/04(水) 00:37:45.83 ID:6BcAb8iE0






情報隊長「俺は人間の下になどつきはしないいッッ!!!」チャキッ


勇者「なっ! 銃だと!?」


銃とは、魔術国でいう『魔法の杖』にあたる武器である。ちなみに、不干渉区では徹底的な禁輸政策がとられていた。


団長「いかん!!」

副団長「動体視力、反射神経向上魔法!」

情報隊長「氏ねえええええええええ!!」



327: 2014/06/04(水) 00:39:03.09 ID:6BcAb8iE0


>>>>>>スロー>>>>>>


バ゙ァァァァァァァン


長い銃声の中、副団長の周りの世界は減速していく。
反射神経向上魔法により、その元から並はずれている反応速度は更に10倍以上に上がっているのである。


副団長(よし、見える! このままいけば十分間に合う!)

副団長(よーしこのままこのまま……左腕で庇って、防御魔法を集中すれば……)

副団長(これで防いだ……!!?)


<<<<<<<常速<<<<<<


328: 2014/06/04(水) 00:40:19.69 ID:6BcAb8iE0


ビシィッ


弾は、勇者と団長を庇った副団長の左腕に命中した。


副団長「ぐああああああっ!!」

団長「副団長!」

勇者「防御魔法を貫通した!?」

副団長「っつう……一体どんな小細工を……」ポタポタ

情報隊長「はははははは!! この銃は『ある男』が俺に渡した、奇術国の最新の武器なのさ!」

情報隊長「この銃には、魔法を打ち消す『反魔法弾』が込められているのだ!」


329: 2014/06/04(水) 00:41:01.72 ID:6BcAb8iE0


情報隊長「この弾で撃たれれば防御は不可能、回復もできん!」

情報隊長「さあどうする? お得意の魔法は使えんぞ! それとも俺を頃すか?」

情報隊長「はははははは!! 半魔の平和を犯すお前たちはここで皆氏ぬのだ!!」チャキ

勇者「団長! 危ない!」

団長「そんな……」

副団長「くっ、岩壁魔法!」ポタポタ


ズドドドドド


情報隊長「何ッ!?」


情報隊長と勇者たちの間に岩の壁が高くせりあがった。壁は情報隊長を取り囲んでしまった。


330: 2014/06/04(水) 00:41:48.09 ID:6BcAb8iE0


副団長「ぐっ……これで手出しはできないだろう」ポタポタ

団長「すまん副団長。儂のせいで……」

団長「今止血してやるのじゃ」ビリッ

副団長「あ、ありがとうございます!」ギュッ

副団長「でも大丈夫ですよこれくらい! 団長が傷つくことに比べたら安いものです!」

勇者「西部支部ですぐに手当てしよう。奇術連合出身の医者も増えているし、『奇術式』の治療なら対応できるはずだよ」

勇者「しかし、魔法を無効化する間接武器とは……奇術の国も厄介なものを発明したものだ」

団長「そうじゃな。じゃが問題は……!?」ハッ


ゴゴゴゴゴ


団長「この魔力は!?」

勇者「しまった、まだ罠が……?」



333: 2014/06/11(水) 22:40:43.09 ID:ONli8eTm0


―――……洞窟 上空


バサッバサッ


偵察係1「まーだ帰ってこないな勇者」

偵察係2「ほんとだよなー。あの3人のことだからパパッと行ってパパッと帰ってくるものだと思っていたんだけどな」ハハハ

偵察係1「まったくだよな。あのメンツじゃあ魔王軍の1つや2つ簡単につぶれちまうぜ」


ゴゴゴゴ


偵察係2「!? なんだこの魔力は!?」

偵察係1「こ、ここまで魔力が漏れ出てくるとは……『超上級魔法』か!?」

偵察係2「まずい、警務部門長に伝聞魔法を送れっ、早く!!」


334: 2014/06/11(水) 22:43:36.24 ID:ONli8eTm0


―――洞窟付近 憲兵隊待機場所―――


ダダダッ



隊長A「大変です部門長!!」

隊長A「洞窟上空の偵察係から伝聞魔法が入ったのですが……」

上級隊長「何やら騒がしいでござるな」

戦士「なんだ? なにかあったのか」

隊長A「『偵察隊より 洞窟上空にて強力な魔力の漏洩を確認 超上級魔法が内部にて発動した疑いあり 応援を要請する』 だそうです!」

戦士「超上級魔法だぁっ!?」

上級隊長「な、反乱軍にそのような魔法の使い手がおったというのでござるか!」


335: 2014/06/11(水) 22:44:06.08 ID:ONli8eTm0

隊長A「分かりませんが……ここは出動すべきだと」

戦士「チッ。交渉は決裂したようだな」

戦士「全員! 直ちに出動だ!」

戦士「この不干渉区のリーダーを救い出せ!」


オーッ

ダダダダッ


戦士(勇者……団長……そして副団長……)

戦士(氏ぬなよ!)


336: 2014/06/12(木) 00:07:50.50 ID:TtDj1TI40

―――…洞窟内部 広場


ゴゴゴゴゴ


情報隊長「ははははは! 発動せよ、『風化魔法』!」

広場全体に、隠されていた魔法陣が浮かび上がった。

情報隊長「最早反乱など不要! 命などくれてやる!」

情報隊長「半魔に永遠なる平和あれっ!!」

情報隊長「ははははははははははは・・・・・・……」


ガラガラガラ


337: 2014/06/12(木) 00:08:36.49 ID:TtDj1TI40


団長「『超上級魔法』じゃと!?」

団長「まずい、崩れるぞ!」

副団長「急いでここを離れないと!」

勇者「仕方ない、ここは退却だ」

勇者「団長、僕の背中に乗って!」

団長「なっ、儂は自分で走れるのじゃ!」

団長「それに気絶している者達を助けなければ」

副団長「そんな暇はありません! 急いで!」

338: 2014/06/12(木) 00:09:04.30 ID:TtDj1TI40

勇者「彼らは……諦めざるを得ない。それに、僕に考えがあるんだ、頼む」

団長「うっ……」

団長「分かったのじゃ……」


ガシッ


団長「ちょっと剣が邪魔じゃな……」

勇者「しっかり捕まっててくれよ!」

団長「お、落とさんで欲しいのじゃ」


ダダッ


339: 2014/06/12(木) 00:31:51.58 ID:TtDj1TI40

――――…洞窟 通路


ガラガラガラ

ダダダダダッ


勇者「これは間に合うかな」

団長「はっ勇者、危ない!」

団長「爆発魔法(中)」


ドカーン


団長「うっ」ビシッ

勇者「うおっと」


340: 2014/06/12(木) 00:32:54.49 ID:TtDj1TI40


副団長「大丈夫ですか団長!」

団長「大丈夫、破片がかすっただけじゃ」タラー


魔法で傷跡は見えないが、出血までは消せないようだ。


団長「よっぽど左腕を撃たれた副団長の方が重傷じゃろ」

勇者「よくそれで走っていられるね」

副団長「ちゃんと念のため血管も神経も外してあったからね」

副団長「そこまで大きなダメージではないさ」

勇者「なんという技術……」


341: 2014/06/12(木) 00:33:24.20 ID:TtDj1TI40

ダダダッ
ガラガラガラッッ


団長「勇者、入口が見えてきたぞ!」

副団長「でも、もう崩壊に追い付かれますっ!」

勇者「よしっ、団長……ゴニョ………ゴニョゴニョ……」

団長「うむ、分かったのじゃ」

勇者「…ブツブツ……」

団長「……ブツブツ」


342: 2014/06/12(木) 00:34:16.78 ID:TtDj1TI40

ガラガラガラ
ダダダッ


副団長「くっ、もうすぐなのに……出口が崩れてきている……」

副団長「間に合わないっ!?」

勇者「いくぞっ、もう一度共同魔法だ!」

団長「詠唱完了じゃ!」


クルッ


2人は洞窟の奥側に向き直り、剣を構えた。


勇者・団長「「暴風魔法(大)!」」


ビュオオオオオオオオオオオ


副団長「ギニャッ!? 体がっ」フワッ

副団長(そうか! 暴風魔法を『洞窟』という限られた空間の中で使うことで、その威力を格段に押し上げたのか!)


343: 2014/06/12(木) 00:35:07.91 ID:TtDj1TI40


勇者「しっかり捕まってろ!」フワッ

団長「ううう……」ギュウウ


ビュオオオオオオオオオオオ

ガラガラガラ……


副団長「間に合うかっ!?」

勇者「いっけえええええええええええっ!!」


ビュオオオオオオオオオオオ




344: 2014/06/12(木) 00:36:55.56 ID:TtDj1TI40


洞窟の崩壊が3人を飲み込むより一瞬先に、出口の光が3人を飲み込んだ。


副団長「出たっ!」


ドササッ


団長「うわわっ」

勇者「はあ……はぁ……」


ガラガラガラドドドドド……


勇者「間一髪か……」


勇者たちは間一髪で脱出に成功した。


副団長「ギリギリセーフだったね」

団長「危なかった……」


345: 2014/06/12(木) 00:37:40.74 ID:TtDj1TI40

団長「ありがとう勇者。勇者のお陰で助かったのじゃ」

勇者「いやいや礼には及ばないよ」

勇者「それよりそろそろ僕の上からどいてもらえるかな……」ムギュー

団長「はわわっ、すまん!」バッ


ダダダダダダッ


戦士「おい勇者! 無事か?」

上級隊長「洞窟が……奴らはどうなったでござるか!」

勇者「大丈夫、怪我人はいるけれどこっちは無事だ」

勇者「反乱軍は……恐らく全滅したよ」


346: 2014/06/12(木) 00:42:11.13 ID:TtDj1TI40

勇者「反乱の首謀者情報隊長が僕らを道連れにしようと『風化魔法』を発動したんだ」

勇者「今回の事件には不審な点もいくつか残っているからね……これから憲兵隊の仕事が増えるかもしれない」

上級隊長「なぬっ。あの情報隊長殿が反乱を!?」

上級隊長「『三隊長』ともあろう者が……愚かな……」ギリッ


三隊長とは、元半魔盗賊団団長直属三部隊の隊長であった情報隊長、警備隊長、実行隊長を指す。


347: 2014/06/12(木) 00:42:50.41 ID:TtDj1TI40


―――…しばらくして


戦士「そうか……分かった。つまりその武器の出所を探れってことだな?」

勇者「これだけ禁輸政策をとっているのに持ち込まれたということは……内通者がいる可能性がある」

勇者「十分注意してくれよ」

戦士「おうよ。俺とこの上級隊長にかかれば犯人の一人や二人、滅多切りの刑に処してやるぜ」

上級隊長「でござる!」

勇者「ははは。それは頼もしい限りだ」

団長「とにかく、副団長の治療を済ませたら一旦行政府に戻るのじゃ」

団長「作戦会議が必要のようじゃな……」


351: 2014/06/25(水) 00:32:33.23 ID:yN8JIett0

―――西部支部 病院―――

医師「はぁ……弾の摘出だけでいいのですね?」

副団長「うん。あとは回復魔法で大丈夫さ」

戦士「お前ともあろう者が、間抜けなもんだな」ハハハ

副団長「仕方ないだろ! 団長を守るためならボクは命だって差し出すつもりなんだから」ドヤ
戦士「そいつは大層な御意志だ」

戦士「ま、緊急事態だ。なるべく早く出発するぞ」

副団長「心配には及ばないよ」

医師「今麻酔をしますね。少し痛みますが我慢してください」

352: 2014/06/25(水) 00:33:34.18 ID:yN8JIett0

副団長「ギニャッ!? なんだその針は!!」バッ

医師「何って、注射ですよ。腕が痛まないように麻酔薬を注入するんです」

戦士「お前注射も知らないのかよ」ケラケラ

戦士「奇術式の医療じゃ欠かせないもんだぞ」

副団長「し、知らないね! ボクはめったに怪我なんてしないのさ!」

副団長「それに魔法があれば奇術式の医療なんて必要ないし」


353: 2014/06/25(水) 00:34:13.31 ID:yN8JIett0

戦士「魔法じゃどうにもならんからここに来てるんだろ」

副団長「うっ……まあそうだけど……」

医師「まあ座ってください。すぐ終わりますから」

副団長「分かった」

医師「さあ、ちょっとだけ我慢してくださいね~」

副団長「……」ギュッ


パキッ

354: 2014/06/25(水) 00:34:52.95 ID:yN8JIett0

医師「」

副団長「あっ」

戦士「おいおい、何防御魔法をかけてんだよ」

戦士「針が折れちまったじゃねえか」

副団長「ごめんごめん。つい……」

戦士「なーにがついだ」

戦士「医師、もっと傷口の近くなら魔法が効かないから、そこを狙ってやれ」


355: 2014/06/25(水) 00:35:35.55 ID:yN8JIett0


医師「はぁ……分かりました」

副団長「うぅ……」ギュウッ

チクッ

副団長「っつぅ……」

医師「はい。これで20分後には効いてきますから、少し待っててくださいね」

副団長「ふう……氏ぬかと思った……」

戦士「子供かよ」ブフッ

副団長「な、なんだとっ!?ボクは子供じゃない!!」

戦士「あ、子猫の間違いだったな」

副団長「だからちっがあああああう!」

医師「あの……安静に……」

356: 2014/06/25(水) 00:36:12.81 ID:yN8JIett0


―――西部支部からの帰途 馬車―――


あの後すぐ、勇者一行は馬車で中央行政区への帰途についた。


ガタン……ガタン


団長「……」ハァ

勇者「どうしたんだこんな夜中に。眠れないのかい?」

団長「まあな……」

団長「勇者、儂は半魔たちを裏切ったことになるのじゃろうか……」

団長「あの時はこれが最善の選択じゃと思っていた」

357: 2014/06/25(水) 00:36:40.44 ID:yN8JIett0

団長「半魔の長として、半魔の恒久的な安泰を実現するためにはな……」

勇者「団長は何も間違ってはいないさ。そして、反乱を起こした『情報隊長』もまた、ね」

勇者「正義と敵対するものは悪じゃない。また別の正義なんだ」

勇者「情報隊長もまた半魔の平和を望んでいたのさ。まあ、プライドも多少はあったようだけれどもね」

勇者「悪なんて言う物は正義からすれば、取るに足らない汚れに過ぎないんだ」

勇者「かつての『魔王軍』だって例外ではないはずだ」

勇者「僕は旅の途中でそう思ったのさ」


358: 2014/06/25(水) 00:37:15.52 ID:yN8JIett0

勇者「だから彼らはあんなに強かった。命をかけてでも守るべき正義を持っていたからだ」

勇者「正義を実現するには別の正義を倒さねばならないときもある」

勇者「僕は人間代表として、できることをするつもりさ」

勇者「だから、団長も半魔代表として、もっと胸を張ってもいいんじゃないかな」

勇者「あの北部荒れ地を統一した救世主だ。一度半魔に平和をもたらした団長がさらなる平和をもたらそうとしているというのに、どうして半魔を裏切ることになるのさ」

団長「ははは。相変わらず口だけは達者じゃな」

団長「ありがとう勇者。お陰で楽になったのじゃ」


359: 2014/06/25(水) 00:39:43.10 ID:yN8JIett0

勇者「口だけとはちょっと酷いんじゃないのかい」

勇者「ま、団長もいつも偉そうな態度と口調だから、悩みなんてないものだと思っていたけれどね」

団長「そうじゃな……儂はあれ以来人に頼るということをしてこなかったからのう」

団長「ずっと一人じゃったから……頼るべき人間を見つけて、少し安心しているのかもしれんのじゃ」

勇者「僕を頼ってくれるのは嬉しいことだね。じゃあ僕も団長を頼らせてもらうよ」

勇者「一緒に平和な世界を作るんだ!」


勇者は手を差し出した。


団長「ああ、もちろんじゃ!」


ガシッ

360: 2014/06/25(水) 00:40:10.48 ID:yN8JIett0

勇者「さて、そろそろ寝ようかな……」

団長「勇者……ちょっと近くに寄ってもいいかな……」

勇者「えっ。構わないよ」

団長「わぁっ。ありがとう」


365: 2014/07/01(火) 00:23:02.20 ID:FhluEf5P0

副団長「(あああああああっ!勇者が団長をたぶらかしてるウウウウウウ)」ジタバタ

戦士「(おいこら、折角いいところなのに邪魔してやるなよ)」

副団長「(あの口リコン野郎めっ!ボクの目の黒いうちは決して団長には手を出させないよ)」

戦士「(いいじゃないか、俺もあいつのことを馬鹿にできるネタが増える)」

副団長「(そういう問題じゃないっ)」

副団長「(ぐぬぬう……あんなに近くに……羨ましい……)」


366: 2014/07/01(火) 00:23:35.26 ID:FhluEf5P0


戦士「(動機が不純だぞ)」

副団長「(やかましいっ)」

副団長「(ボクはもう何年も団長の側に仕えてきたんだ、それくらいの権利はあるはずだろう)」

戦士「(なんでだよ。じゃあ俺が代わりに隣に行ってやるから……)」

副団長「(冗談じゃないっ)」ゲシッ

戦士「(いててっ。冗談だよ……誰がきまぐれ猫娘の隣になんか行くか)」

戦士「(顔がメロンパンになっちまうぜ)」

367: 2014/07/01(火) 00:24:05.91 ID:FhluEf5P0


副団長「(だから猫じゃない)」

戦士「(いつまでたっても認めないのな……)」

副団長「(認めないも何も、事実じゃないものはどうしようもないね)」ニュフフ

戦士「(どのツラ下げて言ってんだか)」

戦士「(それにしても、団長の剣は一体どんな剣なんだ?)」

戦士「(釣り合わない大きさの割に軽そうに持っているみたいだが)」

副団長「(ああ、あれは『魔法剣士の剣』さ。特に値打ちは無いけど、魔法剣士には持って来いの剣だよ。杖の代わりとしても使えるしね)」


368: 2014/07/01(火) 00:24:43.41 ID:FhluEf5P0


戦士「(なんだ。そこは普通の剣なのか)」

副団長「(団長は華美なものがあまり好きじゃないからね。盗んだものもほとんど売るか倉庫にしまいっぱなしだったし)」

副団長「(『盗賊団』を名乗ったのも、人間族の貴族から奪った品々で半魔の生計を立てるために他ならなかったんだよね)」

副団長「(行政府も、王城をモチーフにしてはあるけど極力贅沢さは抑えておいたんだ)」

副団長「(それに、何度ボクのコレクションを捨てられそうになったことか……)」

戦士「(なるほど、お互い理解に乏しい上司をお持ちということか)」

副団長「(やっぱりボクらは仲間みたいだね)」ニャハハ

戦士「(お前から言ってくるのも奇妙なもんだな)」


369: 2014/07/01(火) 00:25:44.58 ID:FhluEf5P0

―――少し前 中央行政府 財務部門庁舎―――


コンコン


魔法使い「商人、ちょっといいかしら? 魔法学校の予算のことでお願いがあるんだけど……」

魔法使い「商人? 入るわよ」


ガチャ


魔法使い「誰もいないわね」

魔法使い「全く、仕事をすっぽかしてどこへ行っているのかしら」

魔法使い「ん? あれは……」


370: 2014/07/01(火) 00:26:16.89 ID:FhluEf5P0


コト


魔法使い「魔法陣形成用のチョーク?」

魔法使い「しかも使用済み」

魔法使い「でも、彼が魔法を使えたような覚えはないわね」

魔法使い「一体何なのかしら……」


371: 2014/07/01(火) 00:26:48.40 ID:FhluEf5P0


―――西部支部付近 洞窟跡―――


ガラガラ


商人「お、いましたいました」

商人「大丈夫ですか?随分と派手にやりましたね」

情報隊長「う……うう……」

商人「先日手に入った高級薬草です。どうぞ」パァッ

情報隊長「うぅ……ハッ!?」

情報隊長「お前は!」

372: 2014/07/01(火) 00:27:17.45 ID:FhluEf5P0


情報隊長「俺は……生き残ったのか?」

商人「そのようです。その岩壁魔法の残骸が崩壊の際にスペースを作ったのでしょう」

商人「まあ、生きていなければかなり困ってしまったんですがね」

情報隊長「あいつらは?」

商人「全員健在のようですよ。さきほど伝聞魔法が届きました」

情報隊長「チッ。悪運の強い奴らめ……」

情報隊長「それで、お前はどうして俺を助けたんだ?」

情報隊長「恩でも売るつもりか?俺は人間には決して従わんぞ」


373: 2014/07/01(火) 00:27:53.31 ID:FhluEf5P0


情報隊長「お前の情報を信じたのも、お前が俺に武器を与えて手助けしたからにすぎん」

情報隊長「くそっ。俺はただ誰にも邪魔されない、半魔だけの平和を願っていただけなのに……」

商人「それは『半魔の』平和ではなく『貴方の』平和ですよ」

商人「『半魔の』平和を願うなら人間や魔族との協調こそ最も近道だと言えるでしょう」

商人「しかし、貴方は協調を一蹴してしまったではありませんか。自分のプライドのために」

情報隊長「なっ、その平和を目指せと言ったのはお前ではないか!」


374: 2014/07/01(火) 00:28:24.82 ID:FhluEf5P0


情報隊長「矛盾も甚だしいぞ。それに、俺は自分の信念を変えたりはしない。お説教なんかはよそでやれ!」

商人「これは失礼しました。まあしかし、その信念を私は買っているんです」

商人「貴方にはまだやってもらわねばならない仕事があるんです。こちらで隠れ家を用意しますから、そこで潜伏していてください」

情報隊長「チッ。相も変わらず手の内が読めん男だ」

商人「いえいえいえ、私と貴方の利害が一致している。ただそれだけではありませんか」

商人「その他には義理も人情もありませんよ」

情報隊長「そうかい。なら俺もお前を信用はせんぞ」

商人「ご自由に」ニコッ


377: 2014/07/14(月) 00:08:38.52 ID:HOAP79bi0


―――後日 中央行政府 部門長会議室―――

勇者「商人はどうしたんだい?」

財務副部門長「はい。2日前に、南部支部付近にある魔法石採掘所の視察へ行かれました」

財副長「今日中にはお帰りになると思われます」

戦士「なんだなんだ? この緊急事態に何ほっつき歩いてやがるんだ」

魔法使い「私にも一言報告を入れてほしかったわね」

財副長「申し訳ありません」

勇者「まあまあ、商人の努力のお陰でここまで不干渉区が栄えてきているんだ」


378: 2014/07/14(月) 00:09:20.41 ID:HOAP79bi0


勇者「下手に責めてもどうしようもないだろう?」

団長「そうじゃ。それに彼はこの不干渉区の流通のほぼ全てを掌握しているのじゃ」

団長「どちらにせよ偉そうに振る舞うことはできんのじゃ」

副団長「偉そうな態度しかできない誰かさんには氏活問題だね」チラッ

戦士「なんだよ。それじゃあ団長はどうなるんだ」

副団長「団長はかわいいから問題ないのさ」フン

戦士「な、なんじゃそりゃ……」

勇者「とにかく、今回の問題は情報隊長が持っていた『銃』と、それを与えた『ある方』についてだ」


379: 2014/07/14(月) 00:09:58.37 ID:HOAP79bi0


勇者「周知のように、銃に関しては奇術の国との軋轢もあって徹底的に禁輸をしている」

勇者「それを持ち込めたということは内通者か憲兵隊のミスか2つに1つだろう」

戦士「おいおい、奇術連合との国境は特に警備を強化してあるんだ」

戦士「持ち込まれる荷物は全て検査してあるんだぞ、まさか持ち込めるはずがない!」

勇者「その通りだ。だからタチが悪いのさ」

勇者「僕はこれを内通者の仕業だとみている。しかも、憲兵隊に根を回せるということはそれなりの幹部だろう」

勇者「改めて戦士、上級隊長と協力して幹部を中心に調査を行ってくれ。いざとなったら部門長も疑ってくれて構わない」


380: 2014/07/14(月) 00:10:29.25 ID:HOAP79bi0


勇者「まあ、あの場にいなかったのは戦士と商人だけになるけどね」

戦士「冗談はよせよ。どうして俺がお前を頃すために根回しをしないといけないんだ」

戦士「お前みたいな雑魚は直接剣で叩き切ってやるよ!」

勇者「幼馴染だからってひどい扱いだね……」

戦士「お前が先に言ったんだろ」

勇者「まあともかく、それくらい事態は深刻ということだ」

勇者「もしかしたら『暗殺者』というものも入り込んでいるかもしれない。十分注意してくれ」


381: 2014/07/14(月) 00:11:02.40 ID:HOAP79bi0


―――会議終了後 代表執務室―――


コンコン


勇者「どうぞ」


ガチャ


魔法使い「ちょっといいかしら」

勇者「お、魔法使い。留守番してくれて本当にありがとう」

魔法使い「お安い御用よ。それより……ちょっと気になったことがあってね」

魔法使いは商人の部屋のことを話した。

勇者「商人が魔法陣を……?」


382: 2014/07/14(月) 00:11:32.63 ID:HOAP79bi0


魔法使い「ええ。まだ確定ではないけど、その疑いが強いわ」

勇者「しかし彼は奇術国連合の出身だ。まさか魔法なんて使えるだろうか」

魔法使い「そうね。私もそう思ったわ。でも彼は利益の為なら何をしてもおかしくないわよ」

魔法使い「特に魔法陣を使った超上級魔法なんていうものは大した魔法の教養がなくても発動が可能だったりするわけだし」

魔法使い「威力に対して矛盾しているのよね……」ハァ

勇者「なるほど……戦士にも伝えておくことにするよ」


383: 2014/07/14(月) 00:12:11.22 ID:HOAP79bi0


勇者「魔法使い自身も十分用心してほしい」

魔法使い「勇者に言われると皮肉にしか聞こえないわね」

魔法使い「ま、私は魔法学の研究で部屋に籠りっぱなしだから、その心配はあまり必要ではないでしょう」

魔法使い「助手も控えているしね」

勇者「それなら安心だね」

勇者「またそのうち魔法学の最高権威の講義を聴きに行くことにするよ」


384: 2014/07/14(月) 00:14:52.59 ID:HOAP79bi0


魔法使い「あら、学校じゃあ全員を眠らせる『魔法の授業』と言われる私の講義を聞きたいなんて、良い好奇心ね」

勇者「それは君が話に熱くなりすぎるからだろう?」

勇者「中等部の学生に大学校レベルの講義なんて理解できるはずがないじゃないか」

魔法使い「私は基本自由放任主義なのよ」

魔法使い「おかげで助手のような逸材も手に入ったしね」

魔法使い「彼女は鍛えれば私以上の魔法の使い手になるわよ」

勇者「まったく無責任な校長だなぁ……」




―――――
―――





390: 2014/07/21(月) 02:30:44.11 ID:As1SGNFk0


―――数か月後 北部不干渉区 中央行政区付近―――


テクテク


フードを被った何者かが、行政区に足を踏み入れようとしていた。

?「ふーん……ここが首都か。意外と栄えているわね」

?「半魔の癖にやるじゃない。それに比べて私ときたら……」

?「復興省の頭でっかちにも逆らえないなんて、お父様に知られたら高らかに笑われてしまうわ!」

?「ぐぬぬ……こうなったら何が何でも得るもの得てやるわよ!」

?「待ってなさい勇者!」


391: 2014/07/21(月) 02:31:36.34 ID:As1SGNFk0


―――行政区 街―――


ワイワイガヤガヤ


?「うーん……勇者は何処にいるのかしら……」

?「それにしても活気にあふれているわね」

?「半魔も人間も魔族も入り乱れてお互いに関わりあっている……」

?「これが勇者の理想の世界なのね……」

?「はぁ。私たるものが一体何を考えているのかしら」

?「これじゃあお父様に叱責されてしまうわね……」

?「ああ、お父様が生きていればなぁ」


392: 2014/07/21(月) 02:32:31.52 ID:As1SGNFk0


八百屋「いよっ、そこのアンタ!1個どうだい?」

八百屋「森の国産のリンゴが安いよっ」

?「ひゃっ!? ……何? 私は今勇者を探しているんだけど」

八百屋「お、探しているなんて面白いことを言うね。勇者ならこの町で一番でかい建物にいるよ!」

八百屋「ま、一国の代表者なら当然だけどね!」

?「なるほど……私たるものが盲点だったわ……」

?「て、なんでこっちから城にいる勇者を訪問しなきゃいけないのよ!」


393: 2014/07/21(月) 02:33:24.00 ID:As1SGNFk0


?「ふつう逆じゃない……」ブツブツ

八百屋「ん? アンタ魔族かい? ここは不干渉区だよ、そんなフード必要ないない!」バッ

?「きゃっ! 何するのよ!!」

八百屋「おー。姉ちゃん綺麗な顔してるじゃないか」

八百屋「角が無かったらほとんど俺達人間みたいだな!」

?「ぶ、無礼な!私を人間ごときと一緒にしないでくれる?」

八百屋「ハハハ。冗談が上手だな姉ちゃん。最近はやりの『魔王語』ってやつかい?ハハハハ」


394: 2014/07/21(月) 02:34:18.79 ID:As1SGNFk0


?「魔王語……? まあいいわ、勇者の居場所を教えてくれたことに免じて許してやるわ」

?「命拾いしたわね」

八百屋「おやおや、これはなり切ってらっしゃる」

八百屋「ははーっ。魔王様ばんざーいってな」ハハハ

?「分かればいいのよ!」フフン

?「それじゃあ、先を急ぐことにするわね」


テクテク


八百屋「変わった姉ちゃんだったなぁ」

八百屋「もしかして本物の魔王だったりして……まさかな」ハハハ


395: 2014/07/21(月) 02:35:17.46 ID:As1SGNFk0

―――中央行政府前―――


?「なかなか大きなお城ね……」

?「でも、私の城に比べたらこんなもの毛虫みたいなものよ」


テクテク


門番「こらっ、そこのお前。今は特別警戒中だ。通行許可書がないと中には入れんぞ」

?「お前とは失礼ね! 私は勇者に用があるの。ちょっと通しなさい!」

門番「ならんならん! 怪しいやつめ。お前がまさか暗殺者というやつか!?」

?「暗殺者? 何のことかしら……とにかく通しなさい!」

?「半魔の分際で魔族に逆らえると思っているの!?」


396: 2014/07/21(月) 02:36:28.65 ID:As1SGNFk0


門番「魔族だと? ここは不干渉区だぞ。ここでは魔族も人間も半魔も関係ない!」

門番「対等に扱うのがルールなのだ」

?「むむ……私に楯突くとは身の程知らずめ」

?「こうなったら力ずくでも通ってやる!」バッ


フードを投げ捨てた。


?「爆発魔法(中)!」

門番「ッ!?」


ドカーン


397: 2014/07/21(月) 02:37:09.28 ID:As1SGNFk0

ここまで

398: 2014/07/21(月) 04:24:10.21 ID:jkz85nIn0
乙乙

399: 2014/07/21(月) 07:07:33.82 ID:IUyEeRTnO

331: 2014/06/04(水) 00:44:02.24 ID:6BcAb8iE0

てなわけでここまで


ちなみに、この世界の魔法はその威力に応じて5ランクに分かれています。用語の参考までに


5 最上級魔法 魔法陣だけでなく、魔法の実力者複数人の同時詠唱がなければコントロールできないほどの威力。
4 超上級魔法 発動に魔法陣と多大な魔力を必要とする。基本、移動ができないため罠として使われることが多い。
3 上級魔法  どんな熟練者であってもそれなりの時間を詠唱に費やさねばならない。
2 中級魔法  熟練すれば下級魔法と同様に扱える
1 下級魔法  ほとんど詠唱なしで唱えることが可能


引用: 勇者「停戦協定?」