248:◆GWARj2QOL2   2017/06/02(金) 22:16:50.92 ID:V45dP1CmO




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チェイス「雛見沢…」その1

沙都子「…あ…」

悟史『…』

沙都子「…何…で…?」

入江「…」

沙都子「…にーにー…」

圭一「…さ、沙都子?」

知恵「…そんな…嘘…」

悟史『…』

沙都子「…にーにー…にーにー!!」バンバン

圭一「…沙都子…」

沙都子「にーにー!!にーにー!!!」バンッバンッ

入江「…!沙都子さん…!」ガシッ

沙都子「離して!!離してぇ!!にーにーが!!にーにーが!!」

入江「起きません!!起きないんですよ!!彼は…!!」

沙都子「…!」

入江「…悟史君は…もう…!!」

沙都子「…え…?」

圭一「…どういうことだよ…あそこで寝てる奴が…沙都子の…?」

悟史『…』

圭一「…」

レナ「…」

圭一「…おい。…おい!!」バン!!

悟史『…』

圭一「おい!!何寝てんだよ!!お前!!!」

入江「…!前原さん!!」

249: 2017/06/02(金) 22:17:26.75 ID:V45dP1CmO
圭一「何なんだよこれは!!何が!!どうなってんだよ!!」

入江「前原さん!!落ち着いて!!落ち着いて下さい!!!」

圭一「落ち着けるかよ!!沙都子が…沙都子がこんなに苦しんでるってのに…!あいつは…!」

入江「今は!!竜宮さんの手当てを優先させて下さい!!」

圭一「…!」

入江「…話は、その後に必ずします」

圭一「…」

レナ「…」

知恵「…」

圭一「…すいません」

入江「…いえ」

250: 2017/06/02(金) 22:18:27.18 ID:V45dP1CmO
…。

梨花「ちょっと!あんまり揺らさないでよ!」

チェイス「足が無い。ならば自力で走るしかない」

梨花「だからってそんな馬みたいな速度で走られても困るのよ!」

チェイス「…」

梨花「…」

チェイス「…」

梨花「…でも、もしもよ?」

チェイス「…」

梨花「…もし、鷹野三四がこの事件の犯人ならば…」

チェイス「…動機か」

梨花「…アンタの事だから、考えてるんでしょ?」

チェイス「…」

梨花「…鷹野三四はどうなの?アンタが思うに…」

チェイス「…」

梨花「どっちなの?」

チェイス「…判断は出来ない。あの女は自分の中身を中々見せない」

梨花「…間宮リナ、北条鉄平とは格が違うって事ね…いえ、あの二人が分かり易過ぎたのかしら」

チェイス「だが、ここまで大々的にそのような事をするのなら、きっとそれに相当する何らかの大義名分がある筈だ」

梨花「…」

チェイス「やらなければならない。そうしなければならない事情が」

梨花「…だからって、人を頃して良い理由にはならないわ」

チェイス「そうだ。だから捕まえる。人を頃す前に。そして罪は償わせる」

梨花「…もう、頃してるかもしれないわよ」

チェイス「ならば、これ以上の犠牲は出させない」

梨花「…どうしてそう言えるの?大量虐殺をしようとしてる奴なのよ?人なんか蟻を踏み潰すくらいに…」

チェイス「あの女にとっては、大量虐殺は必要最低限のものなんだろう。余計な事はしない筈だ」

梨花「…それは何?警察のマニュアルか何かで見たの?」

チェイス「そうではない」

梨花「じゃ…何?」

チェイス「俺の勘だ」

梨花「…それ、アテになるの?」

チェイス「分からない」

梨花「…あ、そ…」

251: 2017/06/02(金) 22:19:12.82 ID:V45dP1CmO
梨花「…ねえ、チェイス」

チェイス「何だ」

梨花「…アンタ、人間を傷つけさせない、殺させないとか言ってるけどさ…」

チェイス「ああ」

梨花「…なら、羽入は?」

チェイス「…」

梨花「もし、 羽入がこの場にいたとしたら…」

チェイス「…」

梨花「アンタは、助けたの?」

チェイス「…」

梨花「助けてくれたの?」

チェイス「…羽入は俺に、こう言った」

梨花「…」

チェイス「自分は生命体かどうかも怪しい、と」

梨花「…生きとし生けるもの、には含まれないってこと?」

チェイス「…一つ、付け加えておこう」

梨花「…」

チェイス「助かりたい。そう思っているのならば」

梨花「…」

チェイス「俺は助ける。人類の脅威でない限り」

梨花「…」

チェイス「例え鬼でも、神だとしても」

梨花「…」

チェイス「守るべき者ならば、守りたい」

梨花「…そ」

チェイス「…」

梨花「…その気持ち、羽入にもきっと伝わってるわよ」

チェイス「…」

梨花「だから、アンタをここに連れてきたんだと思うわ」

チェイス「…」

梨花「…病院はもう直ぐよ」

チェイス「了解した」

252: 2017/06/02(金) 22:20:13.97 ID:V45dP1CmO
校長「…む!」

チェイス「…」

梨花「あ…」

校長「…」

梨花「…今、中はどうなってるの…?」

校長「今現在、入江先生と知恵先生。前原君と沙都子さんが様子を見に行っています」

梨花「…レナは?」

校長「…貴方にとってこれは、予測出来なかったものなのですか?」

梨花「…ええ。完全にイレギュラーだわ。何もかも」

校長「…そうですか」

チェイス「鷹野はどうした?」

校長「…ええ。先程まで居た筈でしたが、まるで逃げるように姿を消してしまいました」

チェイス「…やはりか」

校長「…やはり、ということは?」

梨花「恐らく、鷹野三四こそがこの一連の事件の首謀者よ」

校長「…!」

梨花「動機は分からない。けど恐らく何かしらのバイオテロを大々的にやろうとしてる」

校長「…なんと…!」

梨花「…チェイス。瓦礫の向こうに反応は?」

チェイス「…そこにはない」

梨花「…なら、入るわよ」

チェイス「…待て」

梨花「?」

チェイス「俺の身体では、その穴は通れない」

梨花「…あ」

チェイス「どいていろ」

梨花「…ん」

チェイス「…」ブンッ

253: 2017/06/02(金) 22:21:15.21 ID:V45dP1CmO
圭一「うわっ!?」

知恵「きゃっ!?」

入江「!?…また爆発…!?」

圭一「…何なんだよ…今日は…!」

入江「…私にも分かりません。ですが…」

圭一「?」

入江「…恐らく…いえ、鷹野さんはきっと何かをしようとしています」

圭一「…どういうことですか?」

入江「…彼女は…」

圭一「…」

入江「…いえ…もう隠せる状況ではありませんね」

圭一「…」

入江「話した感じですが…貴方は利口だとお見受けしました。…しかしまだ子供です」

圭一「…?」

入江「理解出来ない話かも、しれません。ですが…」

圭一「…構いません。全部聞きます。黙って、聞いています」

入江「…どうも」

知恵「…」

254: 2017/06/02(金) 22:21:50.01 ID:V45dP1CmO
入江「私と、富竹ジロウ。そして鷹野三四」

圭一「…」

入江「全員表向きの職業がありますが、実は全員、ある組織から此方に派遣されてきた者なんです」

圭一「…ある、組織…」

入江「大元は明かせませんが、私達の属する組織、「東京」はその大元から援助を受けて成り立っています」

圭一「…そんな組織が、どうして?」

入江「この村特有の病気を、調べる為です」

圭一「…この村の、病気?」

入江「ええ。…その名も」

チェイス「雛見沢症候群…だな」

入江「!!」

圭一「!」

255: 2017/06/02(金) 22:22:35.27 ID:V45dP1CmO
チェイス「…」

梨花「…」

圭一「左之助先生…梨花ちゃんも…」

チェイス「…沙都子が見ているのは…悟史か」

圭一「えっ…」

梨花「そうなのですよ。…まさか、こんなところにいたなんて…」

入江「…あの…」

チェイス「…」

入江「…何故、その名を?」

チェイス「話を続けろ」

入江「…私達はこの村に蔓延する病気、雛見沢症候群について調べていました」

圭一「…」

入江「…ですが、一向に解明はされず、援助は打ち切られる寸前でした」

知恵「…」

入江「…ですが、必ずこの村にはその病気があるのです」

圭一「…その根拠は?」

入江「…例えば、竜宮レナ…いえ、礼奈さん」

梨花「!」

入江「…彼女もまた、発症しています」

圭一「…なっ…!!」

入江「雛見沢症候群が発症する原因としては、疑心暗鬼になることや、極度のストレス」

チェイス「…」

入江「どちらも症状は同じく、非常に周りに対して攻撃的になり最後には自分自身を攻撃してしまう」

圭一「…それとレナが…」

入江「…彼女は、以前の学校で一度、大勢の生徒に対して金属バットによる暴力事件を起こしました」

圭一「!!?」

チェイス「…」

梨花「…」

入江「…勿論、この情報は表沙汰にはなりませんでした。まだ未成年ということもありますし、あまりに凄惨だったということもあり…」

チェイス「…」

入江「…保護された彼女は、警察にこう語ったそうです」

チェイス「…何だ」

入江「…オヤシロサマが、呼んでいると」

圭一「…!」

256: 2017/06/02(金) 22:23:36.97 ID:V45dP1CmO
知恵「…あの」

入江「…はい?」

知恵「…そういった込み入った事情までは、私は知りません」

入江「…でしょうね。これは報道規制が入る程のものでしたから」

知恵「…その、オヤシロサマが呼んでいるというのは、いわゆる帰巣本能、ということで良いんですか?」

入江「…ええ」

知恵「…そんな…まるで寄生虫がいるみたいな…」

入江「…」

圭一「…え?」

知恵「…え…?」

入江「…この村に来た者は、必ず…」

圭一「…」

知恵「…」

圭一「…嘘…だろ…?」

知恵「…そんな…」

チェイス「…」

知恵「…だとしたら、この村を出た者は…」

入江「…雛見沢症候群は、空気感染によって起こります」

知恵「…つまり、全員が可能性を持っているということですか?」

入江「…可能性ではありません。間違いなく感染しています」

チェイス「それこそが、鷹野の狙いだ」

入江「え…?」

知恵「…?」

257: 2017/06/02(金) 22:25:07.23 ID:V45dP1CmO
梨花「みー。鷹野三四は、この村を……えーっと……」

圭一「…?」

梨花「…」

圭一「…梨花ちゃん?」

梨花「…やめたわ。もうここまで来たら猫被ってる場合じゃない」

圭一「えっ…?」

入江「え?」

知恵「…」

梨花「鷹野はこの村でバイオテロを起こすつもりよ。…ターゲットはこの村の住人全て」

圭一「!!」

入江「…何と…」

梨花「…まあ、これは私達の推測だけど…でも、何か心当たりは無い?」

入江「え?…あ…え、ええ。…言われてみると…確かに鷹野さんは山狗という部隊を作ってはいますが…」

チェイス「…お前達は、関係無いのか?」

入江「…関係無いとは、言えません。もしかしたら、彼女のやろうとしていることの手助けをしてしまっていたかもしれませんから…」

圭一「…東京…雛見沢症候群…バイオテロ…」

梨花「正確には、雛見沢症候群に見せかけたバイオテロよ」

入江「…ちなみに、何故そのような推測を…?」

梨花「…見てきたからよ」

入江「…?」

梨花「この村の凄惨な結末を、何十回も、何百回も、何千回も」

入江「…ま、待って下さい。…その…つまり…?」

チェイス「古手梨花は、氏ぬ度に何度も時間を戻してきた」

圭一「…は…?」

知恵「…」

入江「…」

258: 2017/06/02(金) 22:26:06.29 ID:V45dP1CmO
入江「…」

チェイス「信じられないだろうが、今は関係無い。鷹野を止める。それだけだ」

入江「…成る程。そうですか…」

梨花「…」

入江「…何故、鷹野さんが、貴方にここまで執着するのか…分かりました」

梨花「…私?」

入江「…ええ。貴方の個人データをとにかく欲していましたから。彼女は」

梨花「…」

入江「…もし鷹野さんが、そのようなことをしているのならば、単純なテロでは終わらせないでしょう」

梨花「…どういうこと?」

入江「この村の象徴。表向きの象徴といえば、御三家の一つ、古手家」

チェイス「…つまり、梨花か」

入江「ええ。裏は園崎家ですが、この場合は無関係でしょう」

圭一「…」

入江「鷹野さんが最も重要視しているのは、雛見沢症候群、始まりの発端なんです」

梨花「…」

チェイス「…しかし、梨花が感染しているとは思えない」

梨花「私は大丈夫なのよ」

チェイス「…どういうことだ?」

梨花「…女王、だから」

入江「女王感染者。…古手家の人間は必ずそうなるんです」

チェイス「…!…そういうことか…」

圭一「…つまり…。…!!まさか…!!」

入江「…古手梨花が氏ぬことで、パンデミックは始まる…」

知恵「!!」

259: 2017/06/02(金) 22:27:06.15 ID:V45dP1CmO
圭一「…そんな…アンタら、病気を治しに来たんじゃねえのかよ!!」ガシッ

入江「がっ…!…そ、そうです…!ですが…彼女は…!!」

チェイス「…あの女だけか?」

入江「…え?」

チェイス「…富竹ジロウは、何処にいる?」

入江「…」

梨花「…いつもならば、もう氏んでるわ。感染して…ね」

チェイス「…だが、仲間になった可能性も…」

入江「…それはありません。彼は常にこの村に対して真摯に向き合ってきた人間ですから」

圭一「…それが、嘘だって可能性も…」

梨花「…邪魔だから、頃した可能性もあるわね」

知恵「…しかし、それなら入江先生は何故…?」

入江「私は医者ですし、ここで毎日過ごしている者をそう簡単に殺せる筈はありません」

圭一「…なら鷹野さんはどうやってテロを起こすつもり…」

レナ「…あのー…」

圭一「ん?」

知恵「え?」

入江「?」

梨花「?」

チェイス「?」

レナ「…みんなでレナを囲んで、どうしたのかな…かな?」

260: 2017/06/02(金) 22:28:04.00 ID:V45dP1CmO
…。

レナ「…やっぱり、鷹野さんは…」

入江「…推測の域を出ていませんが、彼女の普段を考えると、決してないことではない」

梨花「その上…レナを殺そうとした…」

レナ「うん。…でも、不思議な力で…助けられたっていうか…」

梨花「・・・」

チェイス「…」

圭一「…決まりだな。それで…その間宮って人もきっと…」

レナ「…多分、何処かに誘拐されたのかも」

知恵「…多分、自分の氏体役でしょう。…それなら辻褄が合います」

チェイス「自分自身も氏んだことにして、雛見沢症候群を完成させる、か…」

梨花「…止めないと…いけないわね」

圭一「…ああ。絶対に」

チェイス「…お前は、不安にならないのか?」

圭一「え?」

チェイス「お前の身体にも、雛見沢症候群を起こす虫が住んでいる」

圭一「…それは、不安ですけど…」

チェイス「…」

圭一「…でも、今はとにかく目の前の事件を、事件にしない。それが大事なんじゃないかって」

チェイス「…」

…。

梨花『…圭一はね、そんじょそこらの人間とは違う』

チェイス『…』

梨花『何があっても諦めない、強い意志を持った人間よ』

…。

チェイス「…」ポン

圭一「えっ?」

チェイス「…圭一」

圭一「は、はいっ!?」

チェイス「…お前は、強い人間だ」

圭一「…あ、ありがとう…ございます…?」

261: 2017/06/02(金) 22:28:52.46 ID:V45dP1CmO
チェイス「…」スッ

圭一「…」

梨花「…どうするの?」

チェイス「警察に協力を仰ぐ。今は人数が必要だ」

梨花「…警察…」

チェイス「この村とは切っても切れない、刑事がいるとお前は言っていた」

梨花「…まさか…大石に?」

チェイス「そうだ」

梨花「…はぁ…。まあ、この際…仕方ないわね」

チェイス「…それと」ツカツカ

梨花「?」

チェイス「…」

沙都子「…」

悟史『…』

梨花「あ…」

262: 2017/06/02(金) 22:29:42.54 ID:V45dP1CmO
チェイス「沙都子」

沙都子「…」

チェイス「その男は、まだ起きない」

沙都子「…」

チェイス「まだ、その男は戦っている。病気と」

沙都子「…」

チェイス「まだ、今は我慢する時だ」

沙都子「…」

チェイス「待っているのは、お前だけではない」

沙都子「…」

チェイス「…悟史も、きっとお前と再会出来る日を待っている筈だ」

沙都子「…」

チェイス「今は、そっとしておいてやれ」ポン

沙都子「…!」

チェイス「きっと、いつかまた会える。全てを清算した時に」

沙都子「…」

チェイス「…」

沙都子「…あ…」

チェイス「…」

梨花「…!!アンタ…」

チェイス「…?」

沙都子「…左之助さん…貴方…」

チェイス「…どうした」

梨花「…何よ」

チェイス「…?」

梨花「アンタ…笑えるじゃない」

チェイス「…!」

沙都子「…」

チェイス「…そうか」

沙都子「…良い、笑顔ですわね」

チェイス「…笑うというのは…」

梨花「…」

チェイス「…こんなにも、簡単な事だったのか…」

263: 2017/06/02(金) 22:30:34.54 ID:V45dP1CmO
…。

鷹野「ハァッ…ハァッ…」

鷹野「…ハッ…ハッ…」

鷹野「…。開けなさい」コンコン

『…鷹野さんで?』

鷹野「そうよ。…早くしなさい」

小此木「…やけに機嫌が悪そうですなぁ……お」ガチャ

鷹野「…」

小此木「…その怪我…何を?」

鷹野「…ネズミに噛まれただけよ」

小此木「…ああ。やっぱり銃の扱いは下手なまんまですか」

鷹野「早くしなさい!時間が無いの!!」

小此木「はいはい…と、その前に手当てですよ」

鷹野「…こんな傷…」

小此木「裏方が調子悪くちゃ舞台は映えませんぜ」

鷹野「…分かったわよ」

小此木「…全く…」

…。

264: 2017/06/02(金) 22:31:36.18 ID:V45dP1CmO
富竹「…」

リナ「…」

富竹「…静かになったね」

リナ「…」

富竹「きっと、鷹野さんが来たんだ」

リナ「…じゃあ、アタシもアンタも、ここまでってことね」

富竹「…随分、冷静じゃないか」

リナ「…逃げられないと分かってたら、諦めもつくわよ。人間」

富竹「…どうして諦めるんだい?」

リナ「身動き取れないように拘束されて、周りは敵しかいない。助けが来る保証は無し。どうするっていうの?」

富竹「…」

リナ「舌でも噛み切ってやろうかって思ったけど、結局あの女の欲しがってた氏体になるだけ。…それにいざやろうとしたって、そうそう出来るもんじゃないわ」

富竹「…きっと、レナちゃんが事情を察してくれるよ」

リナ「アタシがあの子とあの子の父親に何したか分かってるんでしょ?」

富竹「…それでも」

リナ「でももクソもないわよ。裏切られたって、そう思ってるわよ。きっと」

富竹「…」

リナ「アタシみたいなゴミ屑はね、こういう結末がお似合いなのよ」

富竹「…その歳で、そんな事を思っちゃダメだ」

リナ「アンタみたいに真面目に人生歩んでないのよ。こっちは」

富竹「…」

265: 2017/06/02(金) 22:32:31.37 ID:V45dP1CmO
リナ「…でも、後悔はしてるわよ」

富竹「…後悔?」

リナ「園崎の上納金よ。結局使わず仕舞い。どうせ氏ぬって分かってたらぱーっと使っちゃって氏にたかったわ」

富竹「…」

リナ「…金に執着し過ぎたのね。アタシは」

富竹「…君は一体、どういう人生を…」

リナ「どんなゴミみたいな人生歩んできたらそうなるのって?」

富竹「…そんなことは…」

リナ「…そうねぇ。氏ぬまでの少しの間、まあ…話してあげても良いわ」

富竹「…」

リナ「…アタシね、普通の家庭に産まれて、フツー…に、育ってきたのよ」

富竹「…」

リナ「…なんてね、ウソウソ。ホントはアホみたいな家庭に産まれたわ」

富竹「…?」

リナ「元々ね、裕福じゃなかったんだけどさ、アタシが産まれて尚更貧乏になったのよ」

富竹「…」

リナ「それだけならさ、アタシだって頑張ったわよ。もうちょっと」

富竹「…」

リナ「…ある日を境にね、お父さんの寝室にお母さんが入らなくなったのよ」

富竹「…それは、どういうことだい?」

…。

266: 2017/06/02(金) 22:33:12.90 ID:V45dP1CmO
リナ「ねえ。お父さん、ご飯食べないの?」

「…あの人は調子が悪いのよ。後で食べさせるわ」

リナ「…でも、昨日も、一昨日も…」

「貴方が寝てる時に起きてるから」

リナ「…どうしてリナは入っちゃダメなの?」

「病気が移っちゃうかもしれないでしょ。貴方はまだ子供なんだから」

リナ「でも、お父さんが心配だよ」

「その気持ちだけで私達は嬉しいわ」

リナ「…」

「…さ、お風呂に入って寝なさい。明日も学校あるんでしょ?」

リナ「…うん」

267: 2017/06/02(金) 22:34:14.59 ID:V45dP1CmO
リナ「…zzz…」

「…」

リナ「…ん…んう?」

「…!」ピシャッ

リナ「?…お母さん?」ムク

「…」

リナ「お母さん。どうしたの?」

「…」

リナ「…?」ガラ

「…!」

リナ「…お母さん?何処かに行くの?」

「…ちょっと、出かけるのよ」

リナ「…何処に?」

「…散歩よ。散歩」

リナ「…こんな時間に?」

「ええ。…あと、リナ」

リナ「何?」

「…これ、渡しておくわね」

リナ「…これ……お金?」

「ええ。暫くはそれで暮らして」

リナ「え?」

「…」

リナ「…やだよ。お母さん何処に行くの?」

「…散歩よ。ちょっとだけ」

リナ「…なら、こんなの要らない!」ペシッ

「…リナ!!」

リナ「!」

268: 2017/06/02(金) 22:35:21.74 ID:V45dP1CmO
リナ「…」

「お母さん、しばらく帰ってこれないかもしれないから。ここにお金、置いとくわね」

リナ「…いつ、帰ってくるの?」

「…分からない。…でもあの人もいるし、大丈夫よ」

リナ「…お父さん、昨日も、今日も…寝てるよ」

「…そう。そのうち起きるわよ。起こさないであげて。…絶対に」

リナ「…本当に、帰ってくるよね?」

「…そのお金は、絶対にお父さんには渡そうとしちゃダメよ」

リナ「どうして?」

「…どうしても、ダメなのよ」

リナ「…?」

「…お母さん、行くわね」

リナ「…」

「…じゃあね。さよなら」ガチャッ

リナ「…!お母さん!!」

「…!」ダッ

リナ「お母さん!!待って!!お母さん!!!」

リナ「お母さッ……」

リナ「…ハァ…ハァ…

269: 2017/06/02(金) 22:37:15.19 ID:V45dP1CmO
リナ「お父さん!」バンバン

リナ「お父さん!!開けて!!お母さんが…お母さんが出てっちゃった!!」ガチャガチャ

リナ「起きて!!お父さん!!お父さん!!!」ベリッ

リナ「…!」

リナ「お父さん!!」バァン

リナ「お父さ…」

…。

リナ「…え?」

…。

リナ「…お父…さん…?」

…。

リナ「…うっ…」

…。

リナ「お…おえぇ…」

…。

リナ「…お父…さん…」

…。

……。

270: 2017/06/02(金) 22:38:23.18 ID:V45dP1CmO
富竹「…」

リナ「最初はね、頭が真っ白になったの」

富竹「…」

リナ「そこにあったのが、自分の父親って思えなかったから」

富竹「…」

リナ「首吊っててさ。色んなものが出てたわ」

富竹「…君は…」

リナ「忘れられないわね。あれは」

富竹「…」

リナ「鍵じゃなくてね、接着剤がつけられてたのよ。ドアに。満遍なく」

富竹「…それで、異臭を抑えていたのかい?」

リナ「変な臭いするなってのはあったけどね。お母さんも香水めちゃくちゃつけてたし、よく分かんなかったわ」

富竹「…」

リナ「仕事クビになって、失業保険で頑張ってたけど無理で自殺」

富竹「…」

リナ「お母さんは私を捨てて消えたわ」

富竹「…」

リナ「そこからはもう、堕ちてくだけね。…察して」

富竹「…ごめんよ。そんな話を…」

リナ「良いのよ。減るもんじゃない」

富竹「減るさ」

リナ「…何がよ」

富竹「…「君」が」

リナ「…」

富竹「…」

リナ「…もう、すっからかんよ」

富竹「…」

271: 2017/06/02(金) 22:40:37.00 ID:V45dP1CmO
リナ「…人にさ、迷惑かけちゃいけないってのは、知ってるわよ」

富竹「…」

リナ「…ならさ、この不公平、無くしてくれない?」

富竹「…」

リナ「何が悪いのよ。どん底から這い上がって」

富竹「…」

リナ「アタシの稼いだお金もあんのよ。何で取ったらダメなのよ」

富竹「…」

リナ「まるで、生まれたことが間違いみたいじゃないのよ」

富竹「…そんなことはないよ」

リナ「そんなことあるわよ。生まれて、親に捨てられて、どうやって生きてけってのよ」

富竹「…」

リナ「アタシの人生はね、あそこで終わったのよ」

富竹「…」

リナ「もう、無理。ホント」

富竹「…」

「…だから言ってるじゃない。せめて最後くらい人の役に立ちなさいって」

272: 2017/06/02(金) 22:41:33.22 ID:V45dP1CmO
鷹野「…ね?」

リナ「ね、じゃないわよ」

鷹野「…でも、要らないんでしょ?」

リナ「助からないならね。助かるなら欲しいわよ」

鷹野「助かるのは私よぉ。うふふ…」

リナ「包帯まみれの格好で余裕ぶっこいてんじゃないわよ。アホみたいよ」

富竹「…その、傷は?」

鷹野「あら?何かしらねぇ…うふふ」

富竹「…」

鷹野「…ねえ、ジロウさん?」

富竹「…何度聞かれても、答えは同じだ」

鷹野「…」

富竹「僕は君達とは組まない。僕達はこの村を助けに来たんだ。頃しに来たんじゃない!」

鷹野「…強情な人…」

富竹「…そして、僕は諦めない」

鷹野「…何を?」

富竹「彼女と一緒に助かる事」

リナ「!」

富竹「…そして君を説得することだ」

鷹野「あら…そうなのぉ…うふふ」

富竹「…!」

鷹野「…ねえ、ジロウさん」

富竹「…」

鷹野「…時間は、無いわよ」

富竹「…!」

鷹野「…今日の夜までに決めなさい。じゃないと…」スッ

リナ「!」

富竹「…!それは…!!」

鷹野「うふふ…キレイでしょう?雛見沢症候群のウィルスなのよぉ…」

富竹「…取り出しに、成功していたのか…!!」

鷹野「この虫は人間に寄生するらしいから。だから宿主が氏ぬと一緒に氏んじゃうのよねぇ…」

富竹「…何故、そんなものを…!」

鷹野「…でも、それって、人間の体内に近い環境でも生き残れる可能性があるってことよねぇ…」

富竹「…それを…どうするつもりだい?」

鷹野「…ねぇ。ジロウさん」

富竹「…」

鷹野「ただでさえ感染してる私達が、その上獲物を求めて蠢いてる虫を…さらに注入されたらどうなるかしら?」

富竹「なッ…!?」

リナ「は…?」

273: 2017/06/02(金) 22:42:18.00 ID:V45dP1CmO
…。

『…』ブォォォオオオオオオン

チェイス「…」

梨花「…来たみたいなのですよ」

沙都子「…あの人は…」

圭一「何だ?パトカー…?」

レナ「…警察の…?」

知恵「…」

入江「…」

『…』バタン

チェイス「…」

「お待たせしました。私は…」

チェイス「…お前が、大石か」

熊谷「え?…ああいや、私は違いますよ。熊谷と申します」

梨花「大石はこの人の倍は腹回りがあるのです」

熊谷「…あはは…」

チェイス「…?」

熊谷「…大石さーん!!早く降りて来て下さい!!」

「…いやァ…申し訳ありませんなあ」バタン

チェイス「…」

大石「子供達の目の前で煙草は吸えんですからなぁ。ひとしきり吸わせて頂きました」

チェイス「…大石、蔵人か」

大石「ええ。…その声は…貴方が、私に連絡を寄越した人物ですね?」

チェイス「…」

大石「…改めて、大石です」

チェイス「…左之助、と呼ばれている」

大石「…?……ああ!はいはい左之助さんですねぇ?よろしくお願イダダダダダダダダダダ!!!」

チェイス「…すまない。加減はしたが…」

大石「…ふ…ぬはっはっはっは!!こりゃ頼もしい若者ですなぁ…」

274: 2017/06/02(金) 22:43:15.06 ID:V45dP1CmO
大石「…それで?今回お呼びになったのが…」

チェイス「例の話だ」

大石「…えぇえぇ。聞いていますよ。鷹野さんの、話ですね」

梨花「確証は、ありますですよ」

圭一「レナが命を狙われたんです!銃を突きつけられたって…」

レナ「は、はい」

大石「…そうですか。それならば例えその推測が違っていたとしても、殺人未遂、銃刀法違反の疑いで拘束出来ますからなぁ…」

沙都子「俄かには信じ難いお話ですが、今日起きた事でもう…驚く事も無くなりましたわ」

大石「興宮にその報告はありませんが…まあそれを抜きにしても、調べん事には、いきませんなぁ。ねぇ熊ちゃん?」

熊谷「はいッス!」

校長「…どうか、よろしくお願いします」

知恵「生徒達や、村の方達の為に、私達も出来る限りのことはします」

大石「ええ。お任せ下さい!この大石、久し振りに燃えて来ましたよぉ!!」

入江「…」

大石「…それと、入江…さん?」

入江「…ええ。分かっています。全てを話すつもりです」

大石「話が早くて助かります。こういうものは時間が勝負ですからねぇ…」

チェイス「…」

大石「…?どうされましたかな?」

チェイス「…」

大石「…?」

チェイス「…ギアは、入ったか?」

大石「ぎ、ギア?」

チェイス「…いや」

大石「…ま!それは分かりませんが、ヤル気も…いや、そうですな…」

チェイス「…」

大石「エンジンは全開ですよぉ!!…なんて、ぬっはっはっは!!」

チェイス「…」

梨花「…何の話?」

チェイス「…あいつは…」

梨花「…?」

チェイス「…狸ではない」

梨花「どっからどう見ても…」

チェイス「あの男は…」

梨花「…」

大石「さぁて!事件解決の為、この大石蔵人、一肌でも二肌でも脱いでやりますよぉ!!」

…。

『…脳細胞が、トップギアだぜ!!』

…。

チェイス「「刑事」だ」

第10話 終

275: 2017/06/02(金) 22:44:21.52 ID:V45dP1CmO
続きまたそのうち書きます

見てくれてる方本当にありがとうございます

276: 2017/06/03(土) 04:33:57.93 ID:8JWpJkA0O

ちょくちょく進ノ介を思い出すのがグッとくる

277: 2017/06/03(土) 19:29:14.94 ID:12y8RgnZ0
チェイスだけじゃなくて他のキャラも魅力があって好き

278: 2017/06/03(土) 23:48:53.19 ID:Yx+RGPep0
刑事にはかなり思い入れあるだろうからなあ…


引用: チェイス「雛見沢…」