671: 2015/06/21(日) 07:11:44 ID:HE6GVzOQ

672: 2015/06/21(日) 07:12:32 ID:HE6GVzOQ

午前中

狩人の家


狩人「……っと」

狩人「これが秘薬か」

少女「うん。 そう」

狩人「回復薬にもグレートとかあるし……」

狩人「調合って奥が深いな」

少女「奥が深いとは思わないけど……」

少女「すごいハンターを見た事があるわ」

狩人「すごいハンター?」

少女「すごい、と言うか、器用、と言うか……」

673: 2015/06/21(日) 07:13:21 ID:HE6GVzOQ

少女「ババコンガに追いかけられながら調合していたのよ」

狩人「ぶっ!?」

狩人「嘘だろ!?」

少女「エリチェンしてからやればいいのに……と思ったけど」

少女「調合し終わったら、また戦っていたわ」

狩人「……すごいんだか、無駄な才能というか」

狩人「判断が難しいな」

少女「まあ出来るにこした事はないとは思うけど」

少女「調合書開きながらやってるのにも驚いたわ」

狩人「……もうそれ曲芸でお金取れるレベルだな」

少女「それにしても字、大分読める様になったんだね」

674: 2015/06/21(日) 07:14:33 ID:HE6GVzOQ

狩人「にひひ、まあな」

狩人「女が辞書っての持ってきてくれて」

狩人「知らない単語が出てきたら、これを調べて読んでるよ」

少女「そこまで出来るようになったんだ……」

少女「狩人って頭いいね」

狩人「女にも言われたけど、そうなのかな?」

少女「だって普通は、子供の頃から何年もかけて覚えていく事なのよ?」

少女「狩人は覚え始めて一ヶ月、経ってないし」

狩人「ふうん……」

狩人「まあ何て言うか、こう……出来なかった事が出来る様になっていってるという」

狩人「実感がすごくあってさ」

狩人「それが楽しいし、世界が違って見える気がするんだよ」

少女「そうなんだ」

675: 2015/06/21(日) 07:15:25 ID:HE6GVzOQ

狩人「まあ、まだ調合書1巻目の半分くらいしか読めてないけど」

少女「うふふ」

     トコ トコ トコ…

板前アイルー「旦那、もうそろそろ昼だニャ」

板前アイルー「どうするニャ?」

狩人「もうそんな時間か」

狩人「少女、どうする? 一緒に食うか? もちろん奢るぜ?」

少女「そうね。 じゃ、お願いするわ」

狩人「んじゃ、俺はいつもの肉料理」

狩人「少女は?」

少女「んー。 魚の煮付け……みたいなのできる?」

板前アイルー「できますニャ! まどもわぜる」

676: 2015/06/21(日) 07:16:39 ID:HE6GVzOQ

狩人「何だよ、まどもわぜるって……」

板前アイルー「何か、れでーに対しての親愛の言葉って聞いたもんで……」

狩人「相変わらず覚えた事、すぐ使いたがるな……」

狩人「おっと、くれぐれも冒険はするなよ?」

板前アイルー「……ニャハハ、分かってますって旦那!」

狩人(やる気だったな、こいつ……)

狩人「ほい、100z(ゼニー)」

板前アイルー「ガッテン承知だニャ!」

板前アイルー「少々お待ちくださいニャ!」

     タッ タッ タッ

少女「元気なキッチンアイルーね」

狩人「それはいいんだけど、時々俺で新メニューの実験しようとするんだよ……」

677: 2015/06/21(日) 07:17:30 ID:HE6GVzOQ

少女「そういえば、いつだったか……」

少女「猫飯でお腹壊したって言ってたっけ」

狩人「黙ってやるな、とは言っておいたんだが」

狩人「この前、調味料間違えたとかって 言い訳してきたし」

狩人「何でこっそりやろうとしたがるのか……」 ハアッ…

少女「解雇すれば?」

狩人「それも考えたんだけど……そこ以外は真面目に完璧なんでな」

狩人「まあ、あいつの個性だと思って、そのままにしてる」

少女「個性……か」

少女「そういう意味じゃ、私のコックアイルーはどれも無難な感じね」

少女「時々、材料を焦がしたりしてダメにしちゃったり」

少女「食器を割ったりしてごめんなさいって言ってくるわ」

678: 2015/06/21(日) 07:18:29 ID:HE6GVzOQ

狩人「そうなのか」

狩人「板前アイルーはそういうの無いよ」

少女「ちょっと羨ましいかも」 クスッ

狩人「でも時々雇い主で実験します」

少女「やっぱり羨ましくないわ」

狩人「ははは……」

少女「ふふふっ」

狩人「…………」

狩人「そういやさ」

少女「ん?」

狩人「昨日、集会所に行って少し気になったんだけど」

狩人「なんか、ハンターの数が少ないな?」

679: 2015/06/21(日) 07:19:35 ID:HE6GVzOQ

少女「あ、それ私も気になってるのよ」

少女「どういう訳か、上位の……それも」

少女「HR6のハンターばかり、急に姿が見えなくなってるの」

狩人「へぇ……」

狩人「どうしてなのかな?」

少女「さあ……でもHR6のハンターに限って、というのが」

少女「何か関係しているのかもね」

狩人「HR6か……」

狩人「…………」

狩人「ロートルさん達は、どうしてるのかな」

少女「そうね……あれっきり何の連絡もないから」

少女「さっぱり分からないわ」

狩人「…………」

680: 2015/06/21(日) 07:20:47 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


砂漠村 集会所


     ワイ ワイ ガヤ ガヤ

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……あれから、あの場所のクエを受注しにくくなったな」

ロートル「……そうだな」

ソロ「……ギルド観測所・所員の報告を聞いてたのが居たんだろう」

ソロ「ネコタクアイルーから、という事もあるかもしれん」

681: 2015/06/21(日) 07:21:46 ID:HE6GVzOQ

ロートル「結局……こうなったか」

ベテラン「正式な古龍討伐依頼はG級扱いだし」

ベテラン「俺たち上位ハンターは『偶然遭遇』しないと、ありつけないからな」

ソロ「……古龍は、現れた場所にまた舞い戻ってくる」

ソロ「それは周知の事実……」

ロートル「…………」

ロートル「くそっ……」

ベテラン「…………」

ソロ「…………」

682: 2015/06/21(日) 07:22:18 ID:HE6GVzOQ

ロートル(……またか?)

ロートル(また、なのか……?)

ロートル(…………)

ロートル(5年前も……この前の半年間も)

ロートル(最終的には別のハンター達が仕留める結果に……)

ロートル(…………)

ロートル(ここからは、あの場所のクエの奪い合いになる)

ロートル(時間が経てば経つほど、受注が難しくなっていく……)

ロートル(…………)

ロートル(……いや、諦めるな)

ロートル(まだ……チャンスはある)

ロートル(きっと……)

683: 2015/06/21(日) 07:23:48 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


さらに数日後の朝

ふもと村 集会所


狩人「…………」

狩人「あ」

狩人「ババコンガの依頼がある」

少女「おはよう、狩人」

狩人「少女。 おはよう」

少女「どうしたの?」

狩人「ああ、ババコンガの依頼があってな」

684: 2015/06/21(日) 07:25:00 ID:HE6GVzOQ

少女「ババコンガかぁ……という事は密林ね」

狩人「そう」

狩人「俺たち下位ハンターは、ここでしかババコンガを狩れないからな」

狩人「上位の沼地って猟区が、よく出るんだっけ?」

少女「正解。 でもランクアップ対象モンスターだから」

少女「必ず狩らないといけないし……面倒なモンスターよね」

狩人「ははは……モンスター書物を読んだけど」

狩人「ウ○コぶつけてくるんだってな……喰らいたくねぇ」

少女「私は出来れば、もう二度と狩りたくないわ……」

狩人「ははは……」

狩人「それじゃ、ちょっと行ってきていいか?」

685: 2015/06/21(日) 07:25:30 ID:HE6GVzOQ

少女「うん。 これを狩猟できたら、狩人も上位ランクアップクエを」

少女「受注できるようになるね」

狩人「そうだな」

少女「帰ってきたら、一緒に上位ランクアップクエに挑戦かも?」

狩人「そうそう上手く行くかな……」

狩人「ドドブランゴだっけ?」

狩人「今、待っている状態なんだよな?」

少女「うん」

少女「ドドブランゴはシーズンがある訳じゃないから」

少女「基本待つ事になるのよねぇ……」

狩人「こっちの都合に合わせて出てくれたらいいのにな」

少女「ふふっ、ホントだね!」

     ハハハ…

686: 2015/06/21(日) 07:26:41 ID:HE6GVzOQ

狩人「じゃ、持っていくもの準備し直して行ってくる」

少女「うん」

少女「頑張ってね」

狩人「ああ」

狩人「……それにしても」

狩人「さらにハンターが居なくなってるな……?」

少女「うん……原因は何なのかしら?」

狩人「帰ってくる頃には、分かっているといいんだが」

狩人「ともかく、行ってくるよ」

少女「ええ」

687: 2015/06/21(日) 07:27:35 ID:HE6GVzOQ



※狩人の装備


武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式




688: 2015/06/21(日) 07:29:11 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


密林

BC(ベースキャンプ)


狩人「ふう……やっと着いた」

狩人(いつも思うけど、どうしてここだけこんなに遠いのかなぁ)

狩人(さて、愚痴っててもしょうがない)

狩人(初見な上にまた一人……まあ今回はハンターが少なかったからだけど)

狩人(難易度高くなるのは事実だからな)

狩人(消臭玉に閃光玉と罠……)

狩人(思いつく限りの準備はしてきたつもりだ)

狩人(そして……)

     ゴソゴソ…

狩人「秘薬!」つ(秘薬)

689: 2015/06/21(日) 07:30:14 ID:HE6GVzOQ

狩人(飲んだハンターの耐久力を引き上げる効果がある)

狩人(これも最初から知っておけば……)

狩人(って、それは言いっこなしだな)

     ゴクゴク… シュオオオッ!!

狩人「おおっ!?」

狩人「なんか……うまく言えないが」

狩人「ちょっと強くなった気がするな!」

狩人「よし、回復薬グレートに、その予備として調合分も持ってきている」

狩人(……ハチミツなんて使い道を知らなかった時は売っぱらってたからなぁ)

狩人(今からすると、何てもったいない事をしてたのかって思うぜぇ……) トホホ…

狩人(よし、準備万端)

狩人(待ってろよ、ババコンガ!)

690: 2015/06/21(日) 07:31:12 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


     フゴッ フゴッ

狩人(居たいた……全身ピンクの体毛の牙獣種)

狩人(普通のコンガと見分ける一番の特徴は、頭にある黄色いトサカみたいな毛)

狩人(まあ大きさで だいたい分かる気もする……)

狩人(いずれにしても、間違いなくコンガの親分格、ババコンガだな)

狩人(…………) ゴソゴソ…

狩人(…………)つ(ペイントボール)

狩人(よっ……と) ブンッ!

     ヒュ―――…… ベチャ!

狩人「……でやあああああっ!!」

691: 2015/06/21(日) 07:31:50 ID:HE6GVzOQ


     ドガアッ!!

     アオオオォッ……


狩人「先制攻撃成功!」

狩人「ここで……タメ3!」


     バキッ!


狩人「ぶげっ!?」

狩人(い、意外と素早い!?)

狩人「くっ……」

692: 2015/06/21(日) 07:32:38 ID:HE6GVzOQ


     ブロロオオオオオオオオオンッ!!


狩人(怒ったか……まあ当然だな)


     フゴッ! フゴッ! フゴッ!

     ドドドドドドドドドッ!!


狩人「うおっ!」(防御姿勢) ガシッ!

狩人(あの時のティガに比べたら大した事はないけど)

狩人(この突進は要注意だな……)

狩人「おりゃあああっ!!」


     ドガァッ!!



693: 2015/06/21(日) 07:34:06 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


狩人「…………」

狩人「ふう……」

狩人「とりあえず倒せたけど……」

狩人「臭ぇ……」

狩人「剥ぎ取りもあんまりしたくないなぁ……」

狩人「…………」

狩人「消臭玉使えば、多少はましかな?」

     ザシュ… ベリリ…

狩人「…………」

狩人「……おえっ」

694: 2015/06/21(日) 07:35:37 ID:HE6GVzOQ


―――――――――――


数日後の午前中

ふもと村 集会所


狩人「あ~……やっと帰ってきた」

狩人「一応、体も装備も洗ったけど」

狩人「まだ臭う気がするなぁ……」

     ソ、ソンナ! デスガ…

狩人「……ん?」

狩人(ハンターが……ひとりも居ないな?)

狩人(それにあれは、村長さんに女……受付嬢さんと何の話をしているんだろう)

狩人(やけに深刻そうだけど……)

695: 2015/06/21(日) 07:36:40 ID:HE6GVzOQ

狩人「あのー……」

女「!」

村長「か、狩人!」

女「良かった……帰って来たんだね!」

狩人「ど、どうかしたんですか?」

狩人「ハンターが一人も居ませんけど……」

女「…………」

女「狩人、最初から話すわね」

狩人「あ、ああ……」

女「まずね……3~4日くらい前に」

女「ドドブランゴが現れたの」

狩人「はい」

696: 2015/06/21(日) 07:38:19 ID:HE6GVzOQ

女「それ自体は普通のこと」

女「特に気にするべき事案じゃない……でも」

女「次の日、さらにドドブランゴがもう一頭現れた」

狩人「…………」

女「それだって珍しいけど、まあ無かった事じゃないわ」

女「だけど……」

女「昨日になって、全部で4~5頭ものドドブランゴに増えていたの!」

狩人「!?」

女「こんな事は、さすがに初めてよ……」

女「ブランゴじゃなく、ドドブランゴが群れになって現れるなんて……!」

女「最新のギルド観測所の話だと、今は、もう2~3頭増えているかもしれないって」

狩人「い、一体どうして!?」

697: 2015/06/21(日) 07:39:38 ID:HE6GVzOQ

女「…………」

女「狩人、もうそれは問題じゃないわ」

狩人「え……?」

女「今、受付嬢さんから、ギルドからの避難勧告が伝えられたの」

狩人「!?」

女「今朝、参加できるハンター総出で討伐隊が結成され、出発したけど」

女「全部で8人しかいない」

狩人「なっ……!?」

狩人「それで避難って……」

狩人「! そ、そうだ、少女は!?」

女「……もちろん討伐隊に参加してる」

狩人「」

698: 2015/06/21(日) 07:40:50 ID:HE6GVzOQ

女「受付嬢さんの話では……」

女「雪山周辺の集落全部に避難勧告が出ているそうよ」

女「理由はわからないけど……」

女「どこの村も強いハンターが遠征しているそうで」

女「こんな状態で、この数のドドブランゴ相手では……難しいと判断したみたい」

狩人「難しいって……!」

狩人「じゃあ討伐に行ったハンターは、どうなるんですか!?」

女「………っ」

村長「狩人……」

村長「どう言い繕っても結果は同じ事だから、私がはっきり言うよ」

狩人「…………」

699: 2015/06/21(日) 07:41:53 ID:HE6GVzOQ










村長「ただの……時間稼ぎにしかならない、という事だ……」











700: 2015/06/21(日) 07:42:48 ID:HE6GVzOQ

狩人「」

狩人「そ……そんな!!」

狩人「じゃ、じゃあ……少女や、他のハンターを」

狩人「見捨てるって言うんですか!?」

女「…………」

村長「…………」

受付嬢「…………」

狩人「……っ!」

     ダッ!!

女「!!」

女「狩人! 待って!!」

     ギュッ!

狩人「止めるな! 女!」

701: 2015/06/21(日) 07:43:38 ID:HE6GVzOQ

女「あなた一人が行って、どうにかなるの!?」

狩人「っ!!」

狩人「…………」

女「狩人……落ち着いて聞いて」

女「今、ギルドが総出で近隣の村や街に、この異常事態を知らせに回ってる」

女「だけど、どうやっても上位ハンターがここに来るまで」

女「3日以上はかかってしまうのよ……!」

狩人「…………」

女「私だって……こんなのは嫌よ……!」

女「でも、他にどうすればいいの?」

女「少女ちゃん達が居てくれたからこそ、逃げる時間ができた」

女「今は……早く避難しないと、雪山を降りてきたドドブランゴに対抗する手段が」

女「私たちには全くないのよ!!」

702: 2015/06/21(日) 07:44:39 ID:HE6GVzOQ

狩人「……っ」 ギリッ…

狩人「…………」

狩人「……く」

狩人「くっ……そおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

村長「…………」

村長「……皆に知らせてくる」

村長「もう時間が無いからね……」

     スタ スタ スタ…

狩人「ぐっ……くっ……くそっ……くそぉっ……うぐっ……」

女「ごめん……狩人……ごめ、ん……」

女「ごめんなさい……少女ちゃん……ひっく……」

703: 2015/06/21(日) 07:45:35 ID:HE6GVzOQ



     ……この世の中は、本当に理不尽だ。

     こういう事態が起きた時

     自然の営みとか、神様って奴の気まぐれとか

     何かしらそう理屈づけて語る奴が多い。

     でも……どんな奴でも必ず最後にこう付け加えるんだ。



     『仕方ない』



     ああ、そうさ。 その通りだ。

     『仕方ない』んだよって……納得するしか無いんだよな。

     弱いから……




704: 2015/06/21(日) 07:46:26 ID:HE6GVzOQ



     …………



     だけど……俺はハンターだ。

     弱くても……ハンターなんだ。

     モンスターを狩る、ハンターなんだ!



     俺は……俺は……




705: 2015/06/21(日) 07:47:13 ID:HE6GVzOQ









     俺は、ハンターだ!






   



716: 2015/06/28(日) 07:44:04 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

少女「くっ……!」

モブハンター1「くそっ! こっちにも一頭いるぞ!」

ロン毛ハンター「いったい何匹いるんだ!?」


     ドバァッ!!


モブハンター2「うわあああああっ!!」

モブハンター2「」 ドサッ…

モブハンター3「くっそおおおおおおおっ!!」

717: 2015/06/28(日) 07:45:00 ID:N5KSyVGo

少女「だめ! やけにならないで!」

少女「!」

少女「あっちのドドブランゴ、雪塊を投げてくるわ!」

ロン毛ハンター「固まるな!」

ロン毛ハンター「巻き添えを食うぞ!」


     ドド―――――ンッ!!


少女「きゃあっ!」

ロン毛ハンター「くっそおおおおおっ!!」

718: 2015/06/28(日) 07:45:57 ID:N5KSyVGo

モブハンター1「」 ドサッ…

モブハンター3「」 ドサッ…

少女「ああ……」

ロン毛ハンター「畜生!」

ロン毛ハンター「もうだめだ! 一時撤退しよう!」

少女「分かったわ!」つ(閃光玉)


     ブンッ!  カッ!

     オオ――――ン……


少女「洞窟に向かいましょう!」

ロン毛ハンター「賛成だ!」

モブハンター4「はあっ……はあっ……」

     タッ タッ タッ…

719: 2015/06/28(日) 07:46:50 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「くっ……みんな、怪我はない?」

ロン毛ハンター「ああ、なんとかな。 俺は擦り傷程度だ……」

モブハンター4「こっちも一応大丈夫だ……」

少女「そう……とりあえず朗報ね」

ロン毛ハンター「くそっ……それにしても数が多すぎる」

ロン毛ハンター「昨日言ってた4~5頭より絶対多く居るぞ……」

720: 2015/06/28(日) 07:47:47 ID:N5KSyVGo

少女「ええ……そうね」

少女「それにドドブランゴ達で連携しているようにも思える」

少女「一匹だけでも厄介なのに……」

ロン毛ハンター「それのせいで一匹に集中砲火を浴びせられないしな……」

ロン毛ハンター「くそっ……」

モブハンター4「どうする?」

モブハンター4「正直、お手上げだ……」

モブハンター4「少なくとも もう数の上で敵いっこないぞ」

少女「…………」

少女(冷静に考えなくても撤退しかない)

少女(でも……それじゃあドドブランゴ達が雪山を降りてきてしまう)

721: 2015/06/28(日) 07:48:57 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「ニャ! ここに逃げ込んでいたのかニャ!」

少女「!」

少女「救助アイルー!」

ロン毛ハンター「おお、ネコタクのアイルーか!」

ロン毛ハンター「ちょうどいいところに……ん?」


モブハンター1「」

モブハンター3「」


救助アイルー「…………」

モブハンター4「……おい、なんで乙ったハンターを」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)に連れて行かないんだ?」

モブハンター4「それに……どうして二人だけなんだ?」

722: 2015/06/28(日) 07:50:16 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「…………」

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)には、もう戻れないニャ」

救助アイルー「すぐ手前のエリアに2頭のドドブランゴが陣取ってて……」

救助アイルー「乙ハンターを抱えながら通るのは……無理だと判断したニャ」


一同「!?」


救助アイルー「乙ハンターが二人なのは……これが精一杯だったからニャ」

救助アイルー「今の俺たちの人数と技量の限界というだけニャ……すまないニャ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「なんてこった……」

ロン毛ハンター「下山する事も出来ないなんて……」

723: 2015/06/28(日) 07:51:11 ID:N5KSyVGo

モブハンター4「……とりあえず」

モブハンター4「ここで救助を待つしかないんじゃか?」

モブハンター4「俺たちのみじゃ、どうしようもない」

ロン毛ハンター「確に……と言いたいが」

ロン毛ハンター「BC(ベースキャンプ)の手前まで降りてきているのなら」

ロン毛ハンター「奴ら、いつ猟区外へ行ってもおかしくないぞ」

ロン毛ハンター「今は、上位ハンターが極端に不足している異常状態……」

ロン毛ハンター「俺たちの救助は、いつになるのか……」

モブハンター4「なら、その手前のドドブランゴ達だけを倒せばいんじゃないのか?」

モブハンター4「2頭だけなら俺たちだけでも何とか……」

724: 2015/06/28(日) 07:52:16 ID:N5KSyVGo

ロン毛ハンター「仲間を呼ばれたらどうする?」

ロン毛ハンター「下手に戦えば、返ってBC(ベースキャンプ)に戻れなくなるぞ」

モブハンター4「じゃあどうしろって言うんだ!?」

モブハンター4「ここにいる乙ハンターだって、早く何とかしないと氏んじまうぞ!?」

ロン毛ハンター「俺にだってわからねーよ!」

ロン毛ハンター「くそっ……どうしてこんな事に……」

少女「…………」

少女「……ひとつだけ、私に提案がある」


一同「!」


ロン毛ハンター「提案?」

モブハンター4「聞かせてくれ」

少女「その前にまず……救助アイルー」

少女「あなただけなら、BC(ベースキャンプ)に戻れる?」

725: 2015/06/28(日) 07:53:20 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「それなら問題なくできるニャ」

少女「そう……」

少女「ここからは推測も入っちゃうけど」

少女「今日、ふもと村に帰ってくる予定のハンターが一人いるわ」


一同「…………」


ロン毛ハンター「上位か?」

少女「残念ながら下位よ」

少女「でも、ドドブランゴと戦う条件を満たして帰ってくる」

モブハンター4「あんたと同じ、ランクアップ直前ハンターか」

モブハンター4「で?」

726: 2015/06/28(日) 07:54:07 ID:N5KSyVGo

少女「救助アイルーにふもと村まで行ってもらって」

少女「彼に助力を仰ぐわ」

少女「まず、BC(ベースキャンプ)手前のドドブランゴの相手をしてもらって」

少女「その隙に乙ハンター二人をネコタクアイルー達で」

少女「BC(ベースキャンプ)に連れて行ってもらう」

ロン毛ハンター「ちょっと待ってくれ」

ロン毛ハンター「さっきも言ったが、仲間を呼ばれたらどうするんだ?」

少女「…………」

少女「私達が雪山に打って出て囮になれば」

少女「数の多い、こちらに気を取られるはずよ」

ロン毛ハンター「」

モブハンター4「」

727: 2015/06/28(日) 07:58:49 ID:N5KSyVGo

ロン毛ハンター「しょ、正気か? あんた……」

ロン毛ハンター「またあれだけのドドブランゴとやり合おうってのか!?」

少女「やり合う必要はないわ」

少女「あくまで囮……引きつけておくだけ」

少女「少し戦う素振りを見せて、引く」

少女「それを繰り返せばいい」

モブハンター4「し、しかし!」

少女「上手く行けば、乙ハンター達も狩りに復帰できて」

少女「私たちの下山も可能になるかもしれない」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

728: 2015/06/28(日) 07:59:55 ID:N5KSyVGo

少女「どの道、賭けになる」

少女「ここで救助を待つのが私たちにとっては一番安全だけど」

少女「この乙ハンター二人は治療できないから助からない」

少女「かと言って、私たちだけで打って出ても結果は目に見えている」

少女「また、ふもと村に狩人……さっき私の言ったハンターが」

少女「都合よく帰っているかどうかも分からない」


一同「…………」


少女「救助アイルーをふもと村に向かわせるのは」

少女「状況を把握したい、というのもある」

少女「最悪……私たちを見捨てて避難しているかもしれないわ」

ロン毛ハンター「っ!!」

モブハンター4「!!」

729: 2015/06/28(日) 08:00:53 ID:N5KSyVGo


一同「…………」


ロン毛ハンター「……確に上位ハンターが極端に居ない上に」

ロン毛ハンター「俺たちがボロ負けしたのは、ギルド観測所が把握しているだろうしな」

モブハンター4「ふもと村含め、周辺の村とかも同じ状況だったし」

モブハンター4「住民の安全を考えたら、やりかねないな……」

少女「…………」

ロン毛ハンター「いいだろう」

ロン毛ハンター「あんたの策、乗ってやる」

少女「!」

モブハンター4「……やるしかなさそうだな」

モブハンター4「幸い、回復薬のたぐいはタップリ残っている」

モブハンター4「使う暇が無かったからな……」

730: 2015/06/28(日) 08:01:54 ID:N5KSyVGo

少女「……ありがとう」

ロン毛ハンター「礼は及ばんさ」

ロン毛ハンター「自分の命の為でもある」

ロン毛ハンター「それにこの二人をただ見捨てるのも寝覚めが悪いしな」

モブハンター4「まあどの道、あんたの言うハンターが居なかったら」

モブハンター4「そこで終わりだけど……」

少女「…………」


少女(……本当は居ない方がいい)

少女(狩人は……こんな無茶な作戦で命を散らしていいハンターじゃない)

少女(きっと、とんでもなく強くなれる才能を秘めている)

少女(私なんて遠く及ばないような……)

731: 2015/06/28(日) 08:02:58 ID:N5KSyVGo

少女(…………)

少女(でも……私……)

少女(まだ氏にたくないよ……!)

少女(あなたにもう会えなくなるのも……嫌……)

少女(…………)

少女(……私は……わがままね……)

少女(…………)

少女(ごめんなさい……狩人)


少女「……それじゃ救助アイルー」

少女「往復でどれくらいの時間がかかるかしら?」

救助アイルー「ふもと村なら……だいたい2時間ってとこニャ」

732: 2015/06/28(日) 08:04:10 ID:N5KSyVGo

少女「2時間……乙ハンター達は、それまで持ちそう?」

救助アイルー「ひどい外傷は見当たらないし、脈もしっかりしているニャ」

救助アイルー「凍えさせなければ、たぶん大丈夫ニャ」

少女「分かった。 凍えさせないようにできるだけ気を配るわ」

救助アイルー「それは部下たちに任せてあるニャ」

救助アイルー「ホットドリンクもあるから問題ないニャ」

少女「そう。 じゃ……お願いね」

少女「あなたが帰って来なかったら……私たちはここで救助を待つ」

救助アイルー「……わかったニャ」

救助アイルー「じゃ、行ってくるニャ!」

     タッ タッ タッ…

733: 2015/06/28(日) 08:05:04 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


ふもと村 狩人の家


狩人「…………」

狩人「…………」

板前アイルー「旦那」

狩人「……ん?」

板前アイルー「どうするんだニャ?」

板前アイルー「本なんて読んでる時じゃねぇと思うニャ」

狩人「…………」

狩人「少女達を助けに行くつもりだ」

板前アイルー「……左様ですかニャ」

734: 2015/06/28(日) 08:05:58 ID:N5KSyVGo

狩人「……短い間だったけど」

狩人「ありがとうな」

狩人「本当に助かったよ」

板前アイルー「…………」

板前アイルー「なあ、旦那」

狩人「ん?」

板前アイルー「せめて、あっしの飯を食ってから行きやせんかニャ?」

狩人「……冒険は無しだぞ」

板前アイルー「もちろんニャ」

板前アイルー「今のあっしにできる、最高の猫飯を食って行ってくだせぇニャ」

735: 2015/06/28(日) 08:06:55 ID:N5KSyVGo

板前アイルー「どうぞだニャ」

狩人「いただきます」

     ムシャムシャ モグモグモグ…

―――――――――――

狩人「ありがとう、板前アイルー」

狩人「とても旨かっ……」

狩人「……!?」

     シュインッ!!

狩人「こ、これは……!?」

板前アイルー「いかがですかニャ?」

狩人「なんか……秘薬を飲んだ後みたいだ」

板前アイルー「たぶん、その通りだニャ」

狩人「どういう事だ?」

736: 2015/06/28(日) 08:07:50 ID:N5KSyVGo

板前アイルー「これはあっしの故郷に伝わる秘伝の猫飯でして」

板前アイルー「旦那のお役に立てれば、と思って作りましたニャ」

狩人「……なんで今頃」

板前アイルー「実は人によっては、拒絶反応でお腹を壊したりする食材が含まれてまして」

狩人「おい!?」

板前アイルー「悪いと思いましたけど」

板前アイルー「普段の食事にその食材を少しずつ混ぜて」

板前アイルー「旦那の体を慣れさせてましたニャ……」

狩人「それなら最初から言ってくれよ……」

板前アイルー「これまで雇ってもらえた旦那には、全て断られてきましたんで……」

板前アイルー「旦那も強くなれるかもしれないけど、お腹を壊すモノを」

板前アイルー「体を慣らしてまで食べたいとは思わねぇでしょ?」

狩人「まあ……そうだな」

737: 2015/06/28(日) 08:08:36 ID:N5KSyVGo

板前アイルー「実は、本当はこれでも完璧じゃねぇですニャ」

板前アイルー「もっとすごい効果のある猫飯なんですが」

板前アイルー「今のあっしの腕前では、これが限界……」

板前アイルー「許してくだせぇ……旦那」

狩人「…………」

狩人「……今の飯、本当に旨かった」

狩人「また食いたい」

板前アイルー「旦那……!」

狩人「じゃ……行ってくる」

板前アイルー「へい! 必ず……必ず! 戻ってきてくだせぇニャ!」

狩人「ああ……」

738: 2015/06/28(日) 08:09:21 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


ふもと村 集会所


受付嬢「いいえ、ダメです」

受付嬢「許可できません」

狩人「なら……勝手に行かせてもらうだけだ」

受付嬢「ですが!」

女「狩人!」

女「バカ! もうダメなのよ!」

女「あなた一人行ったって、何も変えられないのよ!!」

女「無駄に氏にに行くのと同じなんだから!!」

739: 2015/06/28(日) 08:10:12 ID:N5KSyVGo

狩人「…………」

狩人「……でも」

女「え……?」

狩人「俺はハンターだ」

狩人「このまま逃げ出して、少女達を見捨てたら……」

狩人「きっと後悔すると思う」

女「なに、かっこいいこと言った!みたいな顔してるの!?」

女「ふざけないで!!」

女「命がかかってるのよ!?」

女「少女ちゃんを助けに行って、あなたが氏んだら、何にもならないじゃない!」

狩人「女、分かってくれ……」

女「分からないわよ!!」

740: 2015/06/28(日) 08:11:07 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「……取り込んでる所、ごめんだニャ」


一同「!?」


狩人「お前は……救助アイルー! 無事だったか!」

救助アイルー「そっちも元気そうで何よりニャ」

狩人「それで!? 少女達は無事なのか!?」

救助アイルー「今話すニャ」

―――――――――――

救助アイルー「……という状況ニャ」

女「…………」

狩人「そうか、分かった」

741: 2015/06/28(日) 08:12:10 ID:N5KSyVGo

狩人「受付嬢さん、女」

狩人「俺、行ってくるよ」

狩人「もう討伐じゃない。 少女達の下山を助けてくる」

狩人「それなら、みんな揃っての避難だ」

女「…………」

女「……分かったわ」

女「でも……相当に危ない道よ?」

女「全員が生きて帰ってくる事は……難しいと思う」

女「その事は忘れないで」

狩人「ああ。 肝に銘じておく」

狩人「女も他の人たちと一緒に逃げてくれ」

狩人「草原村で落ち合おう」

女「……うん」

742: 2015/06/28(日) 08:13:00 ID:N5KSyVGo

※ それぞれの装備と状況


行方不明

モブハンター2(HR 4)

武器:片手剣
防具:ハンターS装備一式


氏亡

モブハンター5(HR 3)

武器:太刀
防具:フルフル装備一式


モブハンター6(HR 4)

武器:ハンマー
防具:ハイメタS装備一式

743: 2015/06/28(日) 08:13:51 ID:N5KSyVGo

乙中

モブハンター1(HR 4)

武器:太刀
防具:ギアノスS装備一式


モブハンター3(HR 5)

武器:弓
防具:ガンナー用ギザミS装備一式

744: 2015/06/28(日) 08:14:43 ID:N5KSyVGo

健在

モブハンター4(HR 4)

武器:双剣
防具:ゲネポスS装備一式


ロン毛ハンター(HR 5)

武器:ハンマー
防具:フルフルS装備一式


少女(HR 3)

武器:ライトボウガン
防具:ガンナー用ザザミ装備一式


狩人(HR 3)

武器:大剣(フルミナントソード)
防具:フルフル装備一式

745: 2015/06/28(日) 08:17:37 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人「…………」

救助アイルー「じゃ、手はず通り、合図が来たら頼むニャ」

狩人「わかってる」

狩人「……少女によろしく言っといてくれ」

狩人「必ず生き残ろう、と」

救助アイルー「分かったニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

746: 2015/06/28(日) 08:19:03 ID:N5KSyVGo

狩人(ドドブランゴ……別名『雪獅子』の異名を取る全身真っ白の牙獣種)

狩人(ブランゴを束ねるリーダーであり、大きな特徴として)

狩人(鋭く、大きな牙を持つ)

狩人(ドスギアノスの様に群れを従え、統率の取れた動きで)

狩人(ハンターに襲いかかってくる、厄介なモンスター)

狩人(…………)

狩人(動きが俊敏で、慣れるまでは攻撃を当てるのにも苦労する)

狩人(ドドブランゴの攻撃方法は幾通りか有り)

狩人(突進攻撃や大きなモーションの後に行う 飛びかかり攻撃は)

狩人(よく見ていれば、避ける事はそれほど難しくない)

狩人(が、地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は)

狩人(相当に悪辣な攻撃だ)

747: 2015/06/28(日) 08:19:55 ID:N5KSyVGo

狩人(さらに巨大な雪の塊を投げてきたり、ブレスを吐いて)

狩人(ハンターの動きを大きく制限する『雪ダルマ』状態にする事も)

狩人(…………)

狩人(……それが、最低でも2頭同時……か)

狩人(…………)

狩人(いや、困難なクエなのは最初から分かっていた)

狩人(一応対抗手段は用意してある)

狩人(消散剤は持ってきた。 走り回るだろうから強走薬も作れるだけ作ってきた)

狩人(…………)

狩人(少女……)

748: 2015/06/28(日) 08:20:59 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山の洞窟


     タッ タッ タッ

救助アイルー「お待たせニャ!」

少女「救助アイルー!」

少女「待ってたわ……」

モブハンター4「それで? 状況はどうなっている」

―――――――――――

救助アイルー「という事で、BC(ベースキャンプ)で待機してるニャ」

少女(狩人……!)

ロン毛ハンター「よし、何とか首の皮一枚つながったな」

少女「ええ……でも、ここからが正念場よ」

ロン毛ハンター「わかっているさ」

749: 2015/06/28(日) 08:22:00 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「それじゃ、俺は乙ハンターのところに行くニャ」

救助アイルー「ああ、それから狩人は必ず生き残ろうって……囮役、頑張ってくれニャ」

少女「うん……ありがとう、頑張るわ」

     タッ タッ タッ…

少女「…………」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

モブハンター4「さて、行きますか」

ロン毛ハンター「雪山の地形は大丈夫か?」

少女「問題ないわ」

少女「ドドブランゴに分断されないよう気をつけましょう」

750: 2015/06/28(日) 08:24:14 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター(ひょー……居るいる)

ロン毛ハンター(今のところ3匹か……)

少女(まず、私がペイント弾でマーキングしていくわ)

少女(その後、少し戦って山頂方向へ向かい、脇道にそれて洞窟へ入る)

少女(こんな感じでどうかしら?)

モブハンター4(先がどうなってるのか、分からないから不安だ……)

モブハンター4(だが、雪山にいるドドブランゴを引き付けないと意味がないからな)

モブハンター4(OK。 それで行こう)

ロン毛ハンター(よし。 合図の爆弾も用意できてる。 いつでもいいぞ)

少女(……分かった。 始めるわ)

751: 2015/06/28(日) 08:25:28 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


狩人(…………)

狩人(…………)


     ……ドドーン


狩人「!!」

狩人「よし、始まったな」つ(強走薬) グビッ

     シュイン!

狩人「少女……頑張ってくれ」

狩人「行くぞ!」

752: 2015/06/28(日) 08:26:19 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くの洞窟出口付近


救助アイルー(始まったかニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(正直、あいつじゃドドブランゴ2頭同時なんて)

救助アイルー(もって5分……というところだニャ)

救助アイルー(何としてもこの二人を早く気づかせて、戦列に復帰させないと)

救助アイルー(いくらあいつでも氏んでしまうニャ……)

救助アイルー(…………)

救助アイルー(雪山の方も……どこまで持つのか……)

救助アイルー(…………)

753: 2015/06/28(日) 08:27:13 ID:N5KSyVGo


     ザッ ザッ ザッ…


狩人「…………」


     グルルル……?


狩人「……さて、どうなるかな」つ(ペイントボール)


     ヒュッ ヒュッ… ――――ンッ ベチャ! ベチャ!


狩人(まずは……様子を見るだけでいい)

狩人(救助アイルー達に注意が向かない様にしないと……!)

754: 2015/06/28(日) 08:28:15 ID:N5KSyVGo


     ゴアアアアアアアッ!!


狩人「まずは威嚇か……!」


     ググッ……バッ!


狩人「……!」 回避!

狩人(なるほど……あれが大きな動作からの跳びかかり攻撃か!)


     バキッ!


狩人「ぐっ!」

狩人(別の一頭からの攻撃……!)

狩人(これは……相当に厄介だ!)

狩人「このおっ!」

755: 2015/06/28(日) 08:29:21 ID:N5KSyVGo


     ブウウンッ! ドガッ!

     グアアッ!


狩人「うしっ!」

狩人(だけど大剣の溜め攻撃は、しない方がいいな)

狩人(今は倒す事より、あいつらの注意を引き、動きを見る)

狩人(これに徹するんだ!)


救助アイルー「…………」

救助アイルー(おいおい……何があったのか知らないけど)

救助アイルー(俺はあいつを過小評価してたみたいだニャ)

救助アイルー(いつの間にあんなに冷静な行動を取れるように……)

救助アイルー(いや、それどころじゃないニャ)

756: 2015/06/28(日) 08:30:18 ID:N5KSyVGo

救助アイルー「いいか、野郎ども」

救助アイルー「もうすぐドドブランゴ達が怒るニャ」

救助アイルー「俺たちはそれを確認した後、全速力でBC(ベースキャンプ)に戻るニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「BC(ベースキャンプ)に戻った後」

救助アイルー「医療班を除いた1班2班は、雪山のハンターの援護に向かってくれニャ」

救助アイルー「残りは、俺と共にここのハンター達を援護するニャ」

     ニャー!!

救助アイルー「よし」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「…………」

757: 2015/06/28(日) 08:31:14 ID:N5KSyVGo



     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!



救助アイルー「ミッションスタート!!」


―――――――――――


狩人「……!」

狩人(よし、いいタイミングだ! 救助アイルー!)

狩人「うおおっ!!」


     ザシュッ!!

     グガアアッ!!



758: 2015/06/28(日) 08:32:04 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 山頂付近


     ゴガアアアアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「ちっ、この程度で怒ってんじゃねーよ!」

     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

少女「ペイントは済んだわ! そこの脇道に行くわよ!」

モブハンター4「わかった!」

モブハンター4「オラァッ! そこをどきやがれ!!」つ(ハンマー)


     ドゴオッ!!


少女「上手い! スタンを取った!」

759: 2015/06/28(日) 08:32:51 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 中腹付近の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「はあっはあっはあっ……」

少女「確認できるペイントの煙は……全部で……はあっはあっ……8頭かしら」

ロン毛ハンター「通りで……ふうっふうっ……敵わないわけだな」つ(回復薬G)グビッ

モブハンター4「くそっ……はあっはあっ……何でこんな数のドドブランゴが……!」

少女「残念だけど、これで全部かどうかは分からない」

少女「それに……」

760: 2015/06/28(日) 08:33:36 ID:N5KSyVGo

ロン毛ハンター「ああ、分かってる。 みなまで言うな」

ロン毛ハンター「俺たちの仕事はこれで終わりじゃない」

モブハンター4「最後まで持つかなぁ……」

ロン毛ハンター「今から泣きごと言ってどうする」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りとか、確認しとけ」

モブハンター4「わかってるよ……」

モブハンター4「あと2発だ」

ロン毛ハンター「俺は5発丸々残ってるぞ」

少女「私は3発と調合で10個作れるわ」

ロン毛ハンター「そいつは頼もしいな」

モブハンター4「唯一とも言えるいいニュースだぜ」

少女「急いで山頂手前付近の出口に向かわないと……さ、行くわよ」

761: 2015/06/28(日) 08:34:17 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


救助アイルー「よし!」

救助アイルー「医療アイルー以外の1班2班は予定通り雪山のハンター援護へ!」

救助アイルー「それ以外は、俺について来いニャ!」

     ニャー!

救助アイルー「今回は異常事態ニャ!」

救助アイルー「普段は禁じられている出過ぎたサポートも俺の責任で許可するニャ!」

救助アイルー「ハンターの命を守る事に全力を尽くすんだニャ!!」

     ニャー!!

762: 2015/06/28(日) 08:36:14 ID:N5KSyVGo


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)近くのエリア


狩人「ぐあああああああああっ!!」


     グルルル…


狩人「く、くそっ!」


     バキッ!


狩人「ぐはっ!?」

狩人(くそったれ……! もう1頭の氏角からの攻撃がキツいっ!)

狩人(……いや、やけになるな)

狩人(冷静になれ! もっと集中するんだ!)つ(回復薬G) グビッ

763: 2015/06/28(日) 08:38:32 ID:N5KSyVGo



     狩人は確かに成長していた。

     事前にモンスターの情報を知り

     調合の知識や薬効を理解し

     状況を見、頭で考え、冷静に行動していた。

     それは目を見張るほど素晴らしい成長ぶりである。




764: 2015/06/28(日) 08:39:41 ID:N5KSyVGo



     だが……



     決定的に足りないものがひとつだけあった。

     才能がどれだけあろうとも

     それは……時間をかけなければ得る事ができないのである。




765: 2015/06/28(日) 08:40:26 ID:N5KSyVGo


     ゴアアアアアアアッ!


狩人(雪塊攻撃!)

狩人(何度も見たぜ!) 回避!


     グルルル…


狩人「!?」

狩人(もう一匹が……居ない!?)

     地中移動して地面の下から襲いかかる『地中急襲』は

     相当に悪辣な攻撃だ

狩人「!!」

766: 2015/06/28(日) 08:41:07 ID:N5KSyVGo

狩人(しまっ―――)



     ド  ガ  ア  ア  ッ !!



狩人「がっ……」



     ゴ  キ  ン  ッ !!



狩人「」

767: 2015/06/28(日) 08:41:52 ID:N5KSyVGo










狩人「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」











768: 2015/06/28(日) 08:42:42 ID:N5KSyVGo



     狩人の右腕から鈍い音と同時に

     強烈な痛みが彼に襲いかかる。




     そう……

     狩人は、複数同時の討伐モンスターを相手に戦った『経験』が

     圧倒的に足りていなかった。




777: 2015/07/04(土) 19:20:12 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 山頂手前付近



     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女(くっ……! ペイントの効果を消してるのが、もう何頭か居る!)

少女(…………) チラッ…

少女(山頂に2頭……ここに3頭、脇道付近に1頭……)

少女(そして、BC(ベースキャンプ)近くに2頭)


     ゴアアアアアアアッ!


ロン毛ハンター「ちっ、また怒りやがったか!」

モブハンター4「そろそろ移動じゃないか!?」

778: 2015/07/04(土) 19:20:52 ID:Dd/kherE

少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ… カッ!

     グアアアア……

少女「今のうちよ!」

ロン毛ハンター「ヒュー……いつもながら3頭同時に見事なもんだ」

モブハンター4「これが終わったらギルカ交換してくれ」

少女「無駄口叩かない!」

少女「あなた達、私よりHR上なんでしょ!?」 ←HR 3

ロン毛ハンター「……そうですね」 ←HR 5

モブハンター4「……すみません」 ←HR 4

少女「さ、早く行くわよ」

     タッ タッ タッ…

779: 2015/07/04(土) 19:21:37 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前エリア



 痛い     痛い  痛い         痛い
              俺……どうしたんだ……?

   あれ? 何を…           痛い
痛い     ヤバイ…               痛い        痛い
                   ああ……
         痛い     痛い          痛い

    ドドブランゴから逃げないと……
                        苦しい……
   ここは……?         何が……?     少女……
 痛い      痛い      痛い      痛い
      ドドブランゴ……?
                       くそっ……
        痛い

780: 2015/07/04(土) 19:22:50 ID:Dd/kherE



     ドサッ!!



狩人「がふっ!!」

狩人「……ぐ……くっ……はっ……」


     ドドブランゴの「地中急襲」の直撃を寸前で避けた狩人だったが

     代わりに右腕が犠牲になった上に、結局数メートル上空に突き上げられ

     地面に叩きつけられる結果となった。

     その落下の衝撃で意識が飛びそうになるが

     何とか持ちこたえるものの……朦朧(もうろう)とするのはさすがに抑えられなかった。


狩人「はっ……はっ……」

781: 2015/07/04(土) 19:23:22 ID:Dd/kherE



     ゴアアアアアアアッ!



狩人「!」


     まるで勝ち誇ったかのような

     ドドブランゴ達の雄叫びでようやく意識がはっきりする。

     ヨロヨロと立ち上がり、首を軽く振ると

     狩人は自分の右腕を見る。


狩人(……くっ)

狩人(痛みの場所から そうだと思ったが……折れてるな……これ)

狩人(おまけに……武器まで失った……くそっ……!)

782: 2015/07/04(土) 19:24:15 ID:Dd/kherE

狩人(だけど……)

狩人(最後まで諦めるものかっ!)


     狩人は、剥ぎ取り用の小さなナイフを左手に構える。

     だがこれは、剥ぎ取るために作られたものなので

     討伐用の武器とは比べ物にならないほど貧弱で脆い代物だった。


狩人(……これがダメになったら、噛み付いてでも戦ってやる)

狩人(さあ……かかってこい、ドドブランゴ!)


     威勢のいい事を考えているが

     どう見ても悪あがきでしかない……


狩人「はあっ……はあっ……」

783: 2015/07/04(土) 19:25:20 ID:Dd/kherE



     だが、そんな狩人を見て

     ドドブランゴ達は少々戸惑っていた。

     これだけ圧倒的に不利な状況で大ダメージを受け

     ましてやあの奇妙な道具(武器)も失い

     自分たちに抗う術(すべ)などないハズ……


     だが、いま目の前に居るこの小さいのは

     それでも立ち上がり、何かを取り出して

     圧倒的に有利である自分たちを睨みつけ、戦う姿勢を崩さないでいる。

     何かあるのか……?


     ドドブランゴ達は、本能的に狩人を警戒してしまったのだった。



784: 2015/07/04(土) 19:26:10 ID:Dd/kherE


     グルルル…


狩人「はあっ……はあっ……」


     一方、狩人の方に余裕など少しもない。

     正直、立っているだけでも辛い、という状況だった。


狩人(……何とか……武器を……!)

狩人(ドドブランゴの後ろにある大剣を拾わないと……!)


     狩人は もう冷静ではなかった。

     痛みで気を失いかけながら考えた事は、ただ”勝つ事”のみ。

     根拠など何もなく、自分の武器さえ取り戻せば何とかなる、と

     思い込んでいるにすぎない……


狩人「はあっ……はあっ……」

785: 2015/07/04(土) 19:27:16 ID:Dd/kherE



     ゴガアアアアアアアッ!



狩人「!」

狩人「く……うおっ」 回避!

狩人「ぎ……ああああっ!」


     しびれを切らしたドドブランゴの突進に思わず避けたが

     その動きだけで激痛が狩人の体を駆け抜ける……!


狩人「はあっはあっはあっ……」

786: 2015/07/04(土) 19:28:16 ID:Dd/kherE

狩人(痛ぇ……たった……これだけの動作で……)

狩人(どうすればいい……)

狩人(どう……すれば……)


     あまりの痛みに気が遠くなる狩人。

     ついには、剥ぎ取りナイフすらも落としてしまった……


狩人「はあっ……はあっ……」

狩人(もう……ダメ……かな……)

狩人(…………)

狩人(……女……君の言う通りになってしまったよ……)

狩人(俺一人じゃ……何も変えられなかった……)

狩人(…………)

787: 2015/07/04(土) 19:29:05 ID:Dd/kherE


     ドドブランゴの一頭が、飛びかかりの前動作を始めるのが見えた。

     狙いはもちろん狩人だ。


狩人(…………)

狩人(畜生……)



     カッ!!


     ゴアアアアアアアッ!?



狩人(!?)

狩人(閃光……玉!?)

788: 2015/07/04(土) 19:29:44 ID:Dd/kherE

救助アイルー「3班は右のを!」

救助アイルー「4班は左の注意を引くんだニャ!」

救助アイルー「乙ハンターは居ないから、いつもより軽い仕事だニャ!」

     ニャー!!

救助アイルー「大丈夫かニャ!?」

狩人「救助……アイルー……うっ」

救助アイルー「……折れているニャ」

救助アイルー「…………」

救助アイルー「状況が変わったニャ!」

救助アイルー「3班! このハンターをBC(ベースキャンプ)へ!」

救助アイルー「3班のドドブランゴは、俺が何とかするニャ!」

     ニャ!?

789: 2015/07/04(土) 19:30:34 ID:Dd/kherE

救助アイルー「時間がもったいないニャ!」

救助アイルー「早くしろニャ!」

     ニャ……ニャー!!


―――――――――――


BC(ベースキャンプ)


     ガラガラガラ…

3班アイルー「状況! 右、前腕部骨折!」

医療アイルー「了解!」

3班アイルー「俺たちは戻るニャ!」

医療アイルー「こっちも済んだらすぐ行くニャ!」

790: 2015/07/04(土) 19:31:24 ID:Dd/kherE

医療アイルー「さ、この布を噛むニャ!」

狩人「……え? ぐもっ」

医療アイルー「他の連中は、患者を抑えるニャ!」

     ニャー!

医療アイルー「時間が惜しいから荒療治ニャ!」


     コキッ パキョ…

     グギギギギギギギギギギギギギ……コキンッ✩


狩人「―――――――――――ッ!!!!?」

医療アイルー「添え木……固定完了!」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「」

791: 2015/07/04(土) 19:32:11 ID:Dd/kherE

医療アイルー「ほれ、起きるニャ」 ペチペチ

狩人「……う、う~ん……」

医療アイルー「回復薬や秘薬は持っているかニャ?」

狩人「え……?」

狩人「あ、ああ……持ってるけど」

医療アイルー「じゃあ回復薬……できればグレートと秘薬を飲んで休んでいるニャ」

医療アイルー「安静にして一日一回は回復薬Gと秘薬を飲んでいれば」

医療アイルー「3日後くらいに治っているニャ」

狩人「そうなのか……わかっ」

狩人「って! 休んでなんていられないんだよ!」

医療アイルー「お前は意識こそ失わなかったけど」

医療アイルー「武器を手放した段階で乙扱いになるニャ」

792: 2015/07/04(土) 19:33:01 ID:Dd/kherE

狩人「し、しかし!」

医療アイルー「……その腕じゃ、どの道足でまといニャ」

狩人「……っ」

医療アイルー「けど、お前はよくやってくれたニャ」

医療アイルー「おかげで二人のハンターを治療できたニャ」

狩人「!」

医療アイルー「だから、休んでいてくれニャ」

医療アイルー「乙から復帰したハンターが、きっと何とかしてくれるニャ!」

医療アイルー「じゃ……」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

793: 2015/07/04(土) 19:33:57 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 山頂付近


モブハンター4「くそっ!」

ロン毛ハンター「雪塊、来るぞ!」


     ドガァァァァンッ!!


少女「はあっはあっ……そろそろ潮時」


     ガウウウウッ!!


少女「きゃあっ!!」

ロン毛ハンター「野郎!!」

モブハンター4「大丈夫か!?」

794: 2015/07/04(土) 19:34:34 ID:Dd/kherE

少女「っ……な、何とか……」

ロン毛ハンター「脇道に入るぞ!」


     グルルル…


少女「!」

ロン毛ハンター「なっ!?」

モブハンター4「ま、待ち伏せ……だと!?」


     ガアアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くそっ! だめだ、散れっ!」

795: 2015/07/04(土) 19:35:17 ID:Dd/kherE

モブハンター4「畜生!」

     バババッ!

少女(いけない……このままじゃ分断される!)


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!


少女「はあっはあっはあっ……!」

少女(今、このエリアには4頭……)

少女(確認した最大の頭数から単純計算でBC(ベースキャンプ)近くのを除けば)

少女(残りは2頭ということ)

少女(なら……!)

少女「このまま、それぞれでエリアチェンジしよう!」

ロン毛ハンター「!」

モブハンター4「!」

796: 2015/07/04(土) 19:36:00 ID:Dd/kherE

ロン毛ハンター「ちっ……!」

モブハンター4(それしかないか……!)

ロン毛ハンター「わかった!」

モブハンター4「洞窟で落ち合おう!」

少女「ええ!」つ(閃光玉)

     ブンッ!  カッ!

     グアアアア…

―――――――――――


雪山 山頂手前付近


ロン毛ハンター「はあっはあっはあっ……」

797: 2015/07/04(土) 19:36:55 ID:Dd/kherE


     ゴアアアアアアアッ!!


ロン毛ハンター「くっ!?」

ロン毛ハンター(どうやら……貧乏くじは俺が引いたみたいだな……)

ロン毛ハンター(くそったれ!)

ロン毛ハンター「だが、何としてもそこを通してもらうぜ!」

ロン毛ハンター「うおおおおおおおおおおおっ!!」

―――――――――――


雪山の洞窟


少女「はあっはあっはあっ……」

モブハンター4「! 良かった……あんたは無事だったか」

少女「ええ……はあっはあっ……なんとか、ね……」

798: 2015/07/04(土) 19:37:31 ID:Dd/kherE

モブハンター4「……という事は」

少女「…………」

少女「助けに行きましょう」

少女「彼が行ったルートは、たぶん、山頂の手前に出る場所」

少女「すぐに行かないと命に関わ……」


ロン毛ハンター「……大丈夫だ」


少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「無事だったか!」

ロン毛ハンター「…………」

799: 2015/07/04(土) 19:38:08 ID:Dd/kherE

モブハンター4「……?」

モブハンター4「どうした?」

少女「どこか、怪我でも?」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「……ネコタクアイルーが一人氏んだ」

ロン毛ハンター「俺を庇って……」

少女「!」

モブハンター4「!」

モブハンター4「……そうか」

ロン毛ハンター「…………」

ロン毛ハンター「閃光玉の残りは、後どれくらいある?」

800: 2015/07/04(土) 19:38:58 ID:Dd/kherE

モブハンター4「……俺は使い切った」

少女「私は……あと2発」

ロン毛ハンター「……俺も使い切ってる」

ロン毛ハンター「正直、これはヤバイ状況だ」

ロン毛ハンター「俺たちの行動は、だいぶ奴らに読まれている上に」

ロン毛ハンター「頼みの閃光玉も無くなりかけている」

少女「…………」

モブハンター4「……囮のアタックもあと一回できるかどうか」

モブハンター4「BC(ベースキャンプ)手前の2頭は、どうなったんだ?」

モブハンター4「こっちはそろそろ限界だぞ……」

少女「…………」

801: 2015/07/04(土) 19:39:43 ID:Dd/kherE

少女「でも、信じて合図を待つしかないわ」

少女「ネコタクアイルーも加わってくれるのなら、多少私たちの負担も減る」

ロン毛ハンター「…………」

モブハンター4「…………」

ロン毛ハンター「……しょうがない、か」

モブハンター4「よし、思い切って今度は逆ルートで行ってみないか?」

モブハンター4「単純だが、少しは時間稼ぎになると思うが?」

少女「そうね……試してみる価値はあると思う」

少女「じゃ、今度は中腹あたりの出口から山頂を目指して」

少女「山頂手前の洞窟を目指しましょう」

ロン毛ハンター「ああ、わかった」

モブハンター4「早いとこ合図来てくれよぉ……」

802: 2015/07/04(土) 19:40:55 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)手前付近



     ゴアアアアアアアッ!!


救助アイルー「ギニャアアアアアッ!!」

3班アイルー「隊長! もう下がるニャ!」

3班アイルー「乙ハンターも復帰して今戦ってくれているニャ!」

救助アイルー「かはっ……」 ビチャ…

3班アイルー「医療アイルー!」

3班アイルー「来てくれニャ!」

救助アイルー「はあ……はあ……」

803: 2015/07/04(土) 19:41:42 ID:Dd/kherE

救助アイルー「誰か……ハンターに……」

救助アイルー「合図の仕方を……教えるニャ……」

3班「分かってるニャ! だからもう休むニャ!」

医療アイルー「……!!」

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「……ここは僕に任せるニャ」

医療アイルー「BC(ベースキャンプ)に連れて行くから……」

3班アイルー「任せたニャ!」

     タッ タッ タッ…

救助アイルー「はあ……はあ……」

医療アイルー「…………」

804: 2015/07/04(土) 19:42:30 ID:Dd/kherE


―――――――――――


雪山 BC(ベースキャンプ)


     タッ タッ タッ…

狩人「!」

医療アイルー「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「救助アイルー!?」

狩人「だ、大丈夫か!?」

医療アイルー「…………」

医療アイルー「……静かに見てやって欲しいニャ」

狩人「え? で、でも俺……」

805: 2015/07/04(土) 19:43:14 ID:Dd/kherE

医療アイルー「……っ」

医療アイルー「内蔵をしこたまやられてて……手の施しようがないニャ……!」

狩人「っ!!」

医療アイルー「だから……看取ってやってくれニャ」

狩人「だ……だから……って」

医療アイルー「僕は……まだ仕事が残ってるニャ!」

医療アイルー「ここで放り出したら、隊長は僕を怒るニャ!」 グスッ…

狩人「!」

医療アイルー「……頼んだニャ」

     タッ タッ タッ…

狩人「…………」

806: 2015/07/04(土) 19:44:20 ID:Dd/kherE

救助アイルー「はあ……はあ……」

狩人「…………」

救助アイルー「……ふふふ……そんな顔するな……」

救助アイルー「俺が……自分の判断で……やった事ニャ……」

狩人「……けど」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「やっぱり……アイルーじゃ……」

救助アイルー「どうやっても……討伐モンスターには……勝てないみたいだニャ……」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「昔は……オトモアイルーとして……」

救助アイルー「旦那さんと……フィールドを……駆け回ってたニャ……」

狩人「…………」

807: 2015/07/04(土) 19:45:00 ID:Dd/kherE

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……旦那さん……守れなかったニャ……」

救助アイルー「目の前で……グラビモスの……ブレスで……」

救助アイルー「……俺は……悔しかった……ニャ」

狩人「…………」

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「何度も……何度も……自分がハンターだったらって……」

救助アイルー「そうしたら……仇(かたき)を討って……やれるのにって……」

救助アイルー「考えたニャ……」

狩人「…………」

808: 2015/07/04(土) 19:45:52 ID:Dd/kherE

救助アイルー「はあ……はあ……」

救助アイルー「でも……こうやって……ハンターを救っていけば……」

救助アイルー「いつか……俺の旦那さんの無念を……晴らしてくれるって……」

救助アイルー「そう考えるように……して……この仕事……始めたニャ……」

狩人「……そうだったのか」

救助アイルー「はあ………はあ………」

救助アイルー「なあ……新人ハンターさん……」

狩人「……なんだ?」

救助アイルー「俺は……頑張れたかニャ……?」

救助アイルー「旦那さんは……喜んで……くれるかニャ?……」

狩人「当たり前だ」

狩人「きっと……笑顔でお前を迎えてくれるさ」

809: 2015/07/04(土) 19:46:56 ID:Dd/kherE

救助アイルー「ふふふ……そうか………」

狩人「…………」

救助アイルー「あんたみたいな……ハンターを……最後に……救えて……」

救助アイルー「本当に……良かった……ニャ……」

狩人「ああ……俺も感謝してる」

狩人「そしていつか、お前の主より強くなって」

狩人「グラビモスだって、ラオシャンロンだって」

狩人「一人ででも倒せるくらいになってみせるさ……!」

救助アイルー「ふふふ………はあ………はあ………」

救助アイルー「……期待…………してるニャ」

狩人「絶対に裏切らないよ」

救助アイルー「ふふふ…………」

810: 2015/07/04(土) 19:47:35 ID:Dd/kherE

救助アイルー「…………」

救助アイルー「あんたが……そういう…………ハンターになった……」

救助アイルー「武勇伝を……」

狩人「…………」

救助アイルー「……あっちで……」

救助アイルー「旦那さんと…………聞け……るの…………」

救助アイルー「……楽…………し……み………………に…………」

救助アイルー「」

狩人「…………」

狩人「…………」

狩人「救助……アイルー……」

救助アイルー「」

811: 2015/07/04(土) 19:48:17 ID:Dd/kherE

狩人「…………」

狩人「……っ」

狩人「……ぐっ……うくっ…………ぐっ…………」

狩人「……うあ……ああああっ……ぐっ……くっ……」

狩人「バカ……野郎っ……ひぎっ…………ぐっ……くっ……」

狩人「何で……ぐくっ……何で、だよっ……うあっ………はっ…」

狩人「ひぎっ……うっ、うっ……ぐっ……うあっ……はっ……」

狩人「あああっ……ぐっ……ひぎっ……くっ……うっ……ああっ……」

狩人「……ひうっ……ぐっ……くっ……ぎっ……くあっ……」

812: 2015/07/04(土) 19:48:53 ID:Dd/kherE



     ……俺が、救助アイルーを看取って

     泣いていると……



     ドドブランゴを倒した、という合図である

     大タル爆弾の炸裂音が響いてきた。



     ……これで、やれる事は一応全部済んだ。

     けど……




813: 2015/07/04(土) 19:50:15 ID:Dd/kherE








     下山してきた少女達も含め

     喜んでいる者は、誰ひとりとしていなかった……









814: 2015/07/04(土) 19:50:59 ID:Dd/kherE


―――――――――――


翌日の昼

草原村 仮設テント


女「狩人!」

女「それに……少女ちゃん」

狩人「……やあ、女」

狩人「怪我したけど何とか帰ってきたよ……」

少女「すみません……討伐できなくて」

女「ううん……謝る必要はない」

女「むしろ、私たちの方こそ許しを請う立場よ……」

女「何しろ我が身可愛さに少女ちゃん達を見捨てて逃げたんだから」

少女「…………」

狩人「…………」

815: 2015/07/04(土) 19:51:39 ID:Dd/kherE

女「……でも」

女「ここへ生きて帰ってきてくれて」

女「本当に良かったわ……」

少女「…………」

狩人「…………」

女「ここには駆け足で来てくれたHR6のハンターが、ついさっき何人か着いたの」

女「明日にはもっと来る予定よ」

女「今は……体を休める事に専念して」

少女「ええ」

狩人「そうさせてもらうよ……」

816: 2015/07/04(土) 19:52:26 ID:Dd/kherE


―――――――――――


砂漠村 集会所


ギルド連絡員「急報!」

ギルド連絡員「現在、雪山猟区にて、ドドブランゴが大挙して襲来!」

     ザワッ……!

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」

ギルド連絡員「繰り返す!」

ギルド連絡員「手の空いているハンターは救援に向かわれたし!」


ロートル「…………」

ソロ「…………」

ベテラン「…………」

817: 2015/07/04(土) 19:53:05 ID:Dd/kherE

ロートル「…………」

ソロ「…………」

ソロ「……?」

ロートル「…………」

ソロ「……ロートル?」

ロートル「! ……なんだ?」

ソロ「なんだ?は、無いだろう?」

ソロ「ふもと村に戻る準備をしないと」

ロートル「…………」

ソロ「……おい、ロートル」

818: 2015/07/04(土) 19:53:51 ID:Dd/kherE

ロートル「……大丈夫だろう」

ロートル「俺やお前がいなくたって……」

ロートル「何とかなるさ」

ソロ「…………」

     バキッ!

ロートル「ぐっ……!」 ドサッ…

ベテラン「…………」

ソロ「……今のは聞かなかった事にしてやる」

ソロ「さあ、ふもと村に帰る準備をするんだ」

ソロ「俺たちは、ふもと村の村付きハンターなんだぞ」

ロートル「…………」

ロートル「…………」

ロートル「……わかった」

ベテラン「…………」

819: 2015/07/04(土) 19:54:43 ID:Dd/kherE


―――――――――――


翌日の昼

草原村 墓地


ネーコ「……そうですか」

ネーコ「救助アイルーさん、そんな事を……」


ネコタクアイルー一同「…………」


狩人「…………」

狩人「なあ、ネーコ」

ネーコ「はい?」

820: 2015/07/04(土) 19:55:28 ID:Dd/kherE

狩人「もしかしたら……ネコタクアイルーって」

狩人「救助アイルーみたいな 元オトモアイルーなのか?」

ネーコ「…………」

ネーコ「半分くらいは……その通りです」

ネーコ「もう半分はご主人様と生き別れ、とういうわけでなく」

ネーコ「ただ給金がいいから、という理由できている元オトモアイルーです」

ネーコ「人間とあまり変わりませんよ」 クスッ…

狩人「そうか……」

狩人「でも、みんな元オトモアイルーなのか」

ネーコ「ええ」

ネーコ「ネコタクアイルーの条件にありますので……」

821: 2015/07/04(土) 19:56:45 ID:Dd/kherE

狩人「…………」

狩人(救助アイルー……)

狩人(俺……必ずあの約束を守るよ)

狩人(…………)

狩人(でももし守れなかったら……)

狩人(その時は遠慮なく、俺を蹴っ飛ばしてくれ)

狩人(…………)

狩人(だから……)

狩人(あっちでもまた会おうな……)

狩人(救助アイルー)

822: 2015/07/04(土) 19:58:52 ID:Dd/kherE




     今回のドドブランゴ襲来で犠牲になったのは

     ハンターが3人 ネコタクアイルーのアイルーが2人……



     覚悟こそそれなりにしていたが

     俺にとって、最も辛く、苦い経験となった……





823: 2015/07/04(土) 20:00:16 ID:Dd/kherE


―――――――――――









     ビュオオオオオオオオオオ……












824: 2015/07/04(土) 20:01:06 ID:Dd/kherE



     ここは雪山の遥か北に位置する場所。

     見渡す限り……白く凍てつく氷の大地。

     一見すると息づくものはなく

     常に吹雪が渦巻いていた。





     が……







825: 2015/07/04(土) 20:02:01 ID:Dd/kherE

雪山深奥



     ズシン… ズシン… ズシン…



     



     ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!










826: 2015/07/04(土) 20:03:19 ID:Dd/kherE






     付近の山と見間違うほど巨大で大きい何かが突然吠えた。

     生き物、というのには躊躇(ちゅうちょ)するそれは

     何かに導かれるように南に向かって進み始めた……







827: 2015/07/04(土) 20:04:47 ID:Dd/kherE
という所で、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。

828: 2015/07/04(土) 20:05:10 ID:uT5uVu16
乙!!

829: 2015/07/04(土) 20:05:43 ID:lYBAup2U

引用: 狩人「目指すは伝説級ハンター!」