839: 2015/07/13(月) 19:42:26 ID:edtHvh.A

840: 2015/07/13(月) 19:43:12 ID:edtHvh.A

午後

雪山 山頂付近


狩人「くらえ、ドドブランゴッ!!」


     ドガアッ!!

     グアアアアッ…


狩人「よしっ」


     ダンッ! ダンッ! ダンッ!

     アオオオッ……!


少女「狩人! 今よ!」

狩人「はああああっ!!」(タメ3)


     ドガアッ!!


841: 2015/07/13(月) 19:44:18 ID:edtHvh.A



     あれから一週間が過ぎた。



     あの時の俺たちの頑張りが功を奏したのか

     結局、雪山を降りてきたドドブランゴは一匹もおらず

     ふもと村を含め、雪山周辺の村々にも被害は全く出ずに済んだ。



     そしてロートルさん達を含め

     駆けつけてきたHR6のハンター総数は60人を超え

     雪山に来たドドブランゴ達は一掃された。




842: 2015/07/13(月) 19:45:04 ID:edtHvh.A



     だけど、それからも1~2日に一頭くらいの頻度で

     ドドブランゴは現れ続け

     ギルド含め、雪山周辺住民にも動揺が広がっていた。



     何かの前触れではないかと……



     無論、ギルド側も事態を重く見て

     調査隊を派遣する事を決めた。

     のだが……




843: 2015/07/13(月) 19:45:42 ID:edtHvh.A


―――――――――――


夕方

ふもと村 集会所


狩人「ふう……」

少女「狩人、もう腕は問題ないみたいね」

狩人「ああ」

狩人「けど骨が折れるのって、もの凄い激痛なんだぜ……」

狩人「あの痛みは もう味わいたくないよ」

少女「それは……ごめんなさい、狩人」

狩人「ん?」

狩人「何で謝るんだ?」

844: 2015/07/13(月) 19:46:43 ID:edtHvh.A

少女「だって……」

少女「私が助けを求めて、複数のドドブランゴを相手にさせたから……」

狩人「……いや、気にしなくていいんだよ」

狩人「俺も少女の事、助けたかったし……」///

少女「!」 ドキッ

少女「そ、そう……」///

受付嬢「お待たせしました」

受付嬢「こちらが今回のドドブランゴ討伐の報酬です」

     ドサッ

受付嬢「そして、これがHR4のギルドカードになります」

受付嬢「これでお二人共、正式に上位ハンターですね」

845: 2015/07/13(月) 19:47:45 ID:edtHvh.A

狩人「ありがとう、受付嬢さん」

狩人「これで上位の猟区に行けるんだな……」

受付嬢「はい」

受付嬢「ただし、塔はHR5から」

受付嬢「樹海猟区はHR6からになります」

狩人「そうですか……まだまだ先は長そうですね」

受付嬢「ええ。 それでは、上位に上がった際の注意点を説明いたします」

狩人「注意点?」

受付嬢「まず……これまでの猟区より危険なモンスターが出没するため」

受付嬢「支給品の配送が遅れる事が多々あります」

受付嬢「ぶっちゃけると、ほぼ毎回、猟区到着時には『無いもの』と思ってください」

846: 2015/07/13(月) 19:48:53 ID:edtHvh.A

狩人「そうなんですか……」

受付嬢「上位猟区配送員の人員確保は難しくなっておりますので……すみません」

狩人「わかりました」

少女(これは……今まで以上に準備を心がけないと)

少女(猟区に着いて『クーラードリンク忘れた!』なんて)

少女(シャレにならなくなるわ……)

少女(…………)

少女(……たぶん、狩人は事の重大さに気が付いてない気がする)

狩人「他には何かありますか?」

受付嬢「猟区の砂漠なのですが」

受付嬢「上位から”夜の砂漠”に行くクエが登場します」

狩人「はい」

847: 2015/07/13(月) 19:49:45 ID:edtHvh.A

受付嬢「これまで下位クエでは昼間ばかりだったので知らないでしょうが」

受付嬢「砂漠は夜になるとホットドリンクが必要になるくらい冷え込むんです」

狩人「……冗談ですよね?」

受付嬢「信じられませんか……」

受付嬢「理屈はまだ分かっていないのですが、本当に『そうなる』ので」

受付嬢「これからの砂漠クエ受注の際、時間帯をよく見て、注意してください」

狩人「はあ……」

狩人(あんなに暑い砂漠なのに……本当かなぁ?)

受付嬢「以上が上位に上がった際の注意点です」

受付嬢「これまで以上にできるだけ無理せず、少しずつ強くなってください」

狩人「はい」

少女「わかりました」

848: 2015/07/13(月) 19:50:22 ID:edtHvh.A


―――――――――――


ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ

狩人「あ……あの荷車」

狩人「まだ調査隊、出発していないのか」

少女「ギルド側は調査隊の護衛にG級ハンターを付けたいみたいなんだけど」

少女「なかなか応じてくれるG級ハンターが居ないみたい……」

狩人「HR6のハンターなら、たくさん居るのに……」

少女「未知の……ううん、モンスターのテリトリーに入っていくのだから」

少女「どんな不測の事態になるのか、分からない」

少女「それに備えてG級ハンターの護衛を付けたいのよ」

849: 2015/07/13(月) 19:51:16 ID:edtHvh.A

狩人「それは分かるんだけどな……」

少女「特に今回は山あいで天候が安定しない地域だから」

少女「気球観測ができないし……」

狩人「…………」

     スタ スタ スタ…

ロートル「……お」

狩人「あ……」

少女「ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「……その様子だと」

ロートル「ドドブランゴ討伐、成功したみたいだな」

850: 2015/07/13(月) 19:51:55 ID:edtHvh.A

狩人「はい」

少女「上位ハンターになれました」

ロートル「そうか……おめでとう」

狩人「ありがとうございます」

ロートル「じゃ……」

     スタ スタ スタ…

狩人「あ……」

狩人「…………」

少女「…………」

狩人「……ロートルさん」

狩人「帰ってきてから様子がおかしいな……」

少女「うん……」

851: 2015/07/13(月) 19:53:12 ID:edtHvh.A


―――――――――――


ふもと村 集会所


     ガヤ ガヤ

ロートル「タンジアビールにモス煮込みを頼む」

     アイヨー

ロートル「ふう……」

ベテラン「……よお」

ロートル「!?」

ロートル「ベテラン……なぜここに居る?」

ベテラン「ま……気まぐれってやつさ」

852: 2015/07/13(月) 19:54:01 ID:edtHvh.A

ベテラン「ねーちゃん、俺は黄金芋酒に刺身盛り合わせな」

     ハーイ

ベテラン「ふう……」

ロートル「…………」

ベテラン「……もう知ってるかも しれねーが」

ベテラン「砂漠のテオ……討伐されちまったよ」

ロートル「…………」

ロートル「……そうか」

ベテラン「お前さんがふもと村に向かって、2日後の事だった……」

ロートル「…………」

ロートル「で? それをわざわざ伝えに、こんな所まで来たのか?」

ベテラン「…………」

853: 2015/07/13(月) 19:55:50 ID:edtHvh.A

     オマチー ソッチノオキャクサンモー

ロートル「おう」

ベテラン「ありがとよ」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「なかなか旨いな」

ロートル「ここは刺身より煮物の方が旨いぞ」

ベテラン「そうか……今度試してみる」

ロートル「……で? 何でここへ?」

ベテラン「……深い意味はねーよ」

ベテラン「ただ……」

ロートル「ただ?」

854: 2015/07/13(月) 19:56:48 ID:edtHvh.A

ベテラン「ソロの兄ちゃんがお前を殴った時」

ベテラン「俺も殴られた気がした」

ロートル「…………」

ベテラン「結局……俺は残って、古龍頃し(エルダーキラー)のおこぼれに預かろうとしたが」

ベテラン「おたくら同様、怪しまれて相手にされなかったよ……」

ロートル「…………」

ベテラン「何でかね……」

ベテラン「ソロの兄ちゃんの方が正しいのは分かってるんだが」

ベテラン「お前の事を応援したかった」

ロートル「…………」

855: 2015/07/13(月) 19:57:33 ID:edtHvh.A

ベテラン「けど……俺はそうしなかった」

ベテラン「目の前にある、細い一本のチャンスって名前の紐を掴みたかったし」

ベテラン「面倒事に巻き込まれるのも、お前さん達の関係を悪くするのも避けたかった」

ロートル「…………」

ロートル「……そんなに気にする事じゃないだろう?」

ロートル「流れのハンターなら、当たり前の事じゃないのか?」

ベテラン「まあな……」

ベテラン「だが、テオ討伐の報を聞いて……ものすごく後味が悪くなった」

ロートル「…………」

ベテラン「こんな事……何度もあった、経験したハズなのに」

ベテラン「逃げるテオを見た後のお前の絶叫を どうしても思い出しちまう」

ロートル「!」

856: 2015/07/13(月) 19:58:09 ID:edtHvh.A

ベテラン「…………」

ベテラン「ねーちゃん、黄金芋酒、おかわり」

     ハーイ

ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「すまなかった、ロートル」

ロートル「…………」

ロートル「……いいさ」

ロートル「もう……」

     ガヤ ガヤ…

857: 2015/07/13(月) 19:59:01 ID:edtHvh.A


―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 集会所


狩人「さて……新しい猟区、さっそく行ってみるかな」

狩人「……ん?」

狩人「!!」

     ツカ ツカ ツカ!

狩人「おい! あんた!」

ベテラン「あん?」

狩人「その頬の傷……間違いない!」

858: 2015/07/13(月) 19:59:53 ID:edtHvh.A

狩人「イケメンの兄貴だな!」

ベテラン「っ!」

狩人「あの時はよくも騙してくれたな!」

狩人「騙し取った金、返せ!」

ベテラン「な、何の事だぁ~??」

ベテラン「何か証拠でもあんのか?」

狩人「まだしらばっくれる気か!?」

     ザワ… ザワ… ナンダ? ケンカカ?

ベテラン「い、いいから落ち着けって」

狩人「落ち着いてられるか! だいたいあんたが……」

ロートル「どうした? 狩人?」

狩人「ロートルさん! 聞いてください!」

859: 2015/07/13(月) 20:00:42 ID:edtHvh.A

狩人「――という訳で」

狩人「このハンターから、お金を騙し取られたんですよ!」

ロートル「……なるほど」

ロートル「ベテラン、何か反論は?」

ベテラン「反論も何も……俺はこんな奴しらねぇし」

ベテラン「言いがかりは よしてもらいたいってだけだが?」

狩人「この……!」

ロートル「落ち着け、狩人」

狩人「でも、ロートルさん!」

ロートル「いくらやられたんだ?」

狩人「は? ……750z(ゼニー)ですけど」

860: 2015/07/13(月) 20:01:26 ID:edtHvh.A

     ゴソ ゴソ…

ロートル「ほら、この財布をやる」

ロートル「中に1000z(ゼニー)くらいは入っているから」

ベテラン「!?」

狩人「はあ!?」

ロートル「金さえ戻れば文句は無いのだろう?」

狩人「え? い、いや、それは……」

ロートル「いいから。 それで抑えておけ」

狩人「…………」

ベテラン「…………」

狩人「……わかりました。 けど」

狩人「そんなハンター、庇っても何もならないと思いますけどね」

狩人「じゃ……」

861: 2015/07/13(月) 20:02:37 ID:edtHvh.A

ロートル「…………」

ベテラン「…………」

ベテラン「……何してくれてんだよ」

ベテラン「礼なんて言わねぇからな?」

ロートル「ああ。 そんなもの気にしていないさ」

ロートル「狩人の奴は、人を信じすぎるきらいがあるから」

ロートル「お前や俺みたいに、ロクでもない人間が居る事を知らないといけない」

ベテラン「…………」

ベテラン「けっ……だからって、お前にまで不信を抱かせるこたぁねーだろ」

ロートル「そうとも」

ロートル「お前が一番いやがるだろうから、ああしたんだ」

862: 2015/07/13(月) 20:03:25 ID:edtHvh.A

ベテラン「…………」

ロートル「…………」

ベテラン「……ロートル」

ロートル「なんだ?」

ベテラン「お前って……いい性格してるな」

ロートル「おいおい。 今頃気がついたのか?」

     ハハハ…

―――――――――――


沼地 BC(ベースキャンプ)


狩人「全く……」

少女「何を怒ってるの? 狩人?」

狩人「ロートルさんの事なんだが……」

863: 2015/07/13(月) 20:03:56 ID:edtHvh.A

狩人「――って事があったんだよ」

少女「ふうん……」

狩人「何だってロートルさんは、あんな奴を庇ったんだか……」

少女「それは私にも分からない……けど」

狩人「けど?」

少女「ロートルさんが何の考えもなしに そんな事はしないと思う」

狩人「…………」

少女「きっと、深い何かがあるんだよ」

狩人「……そうかな?」

少女「うん」

864: 2015/07/13(月) 20:04:52 ID:edtHvh.A

少女「……世の中ってさ」

少女「何もかもが、こう……善と悪、みたいに分かりやすいモノじゃないし」

少女「そういう風に決めつけて見ちゃうと……世間って、小さく見えて……」

少女「!」

狩人「……?」

狩人「少女?」

少女「……何でもない」

狩人「??」

少女「とにかく」

少女「私たちは目の前の採取クエに集中しないと」

少女「ね?」

狩人「あ、ああ……」

少女「…………」

865: 2015/07/13(月) 20:05:27 ID:edtHvh.A

少女「…………」


少女(昔……)

少女(私を引き取ってくれた、おばさんに)

少女(同じ事を言われた……)

少女(…………)

少女(……私は)

少女(悪い奴を悪いと言って何が悪いの!……って)

少女(言い返したっけ……)

少女(…………)

少女(皮肉なものね……) クスッ…

866: 2015/07/13(月) 20:06:15 ID:edtHvh.A


―――――――――――




ふもと村 集会所


狩人「あー……戻ってこれた……」

少女「日帰り、行けるかと思ったけど……」

少女「ぬかるみに足を取られて、想像以上に疲れる上に時間も掛かるわね」

狩人「ああ……今度は沼地猟区近くの村に泊まって帰ろう」

少女「マップで見ると森丘猟区より近くなのに……」

少女「……ん?」

867: 2015/07/13(月) 20:07:14 ID:edtHvh.A



     ✩急募✩

     調査隊ビバーク品輸送員、護衛のハンターを

     募集しています。

     条件はHR6以上でG級モンスター及び

     古龍との遭遇・戦闘経験のあるハンターです。

     報酬などはギルド員と直接交渉で……




868: 2015/07/13(月) 20:08:10 ID:edtHvh.A

狩人「調査隊……ビバーク品?」

少女「簡単に言うと食料や体を温める暖房用の燃料の事よ」

狩人「何でそんな物がいるんだ?」

少女「たぶんだけど……」

少女「雪山のかなり奥地まで調べるつもりなんだと思う」

少女「この前も言ったけど、天候の関係で気球観測は出来ないし」

少女「そうなると、食料やその他備品は歩いて持っていくしかない」

狩人「ふむふむ」

少女「でも、一人で運んでいける荷物の量は限界があるし」

少女「それでは限られた距離しか奥に行けないわ」

狩人「うん」

少女「だから中継地点を設けて、そこに食料品や燃料を備蓄しておけば」

少女「より遠くへ行く事ができる様になる」

狩人「なるほど!」

869: 2015/07/13(月) 20:08:58 ID:edtHvh.A

狩人「この募集の紙は、それを運ぶ人達の護衛ハンターを求めているのか」

少女「そういう事ね」

狩人「…………」

狩人「……という事は」

狩人「本命の調査隊護衛のG級ハンターも見つかった……という事か?」

少女「うん。 少なくともその目処が立ったのだと思う」

狩人「いよいよ動き出すのか……」

     テク テク テク…

ロートル「狩人」

狩人「あ……ロートルさん」

ロートル「…………」

ロートル「俺とソロとベテランは明日の朝、ビバーク品輸送部隊の護衛で出発する」

870: 2015/07/13(月) 20:09:38 ID:edtHvh.A

狩人「!」

少女「!」

狩人「……そうですか」

狩人「ソロさんはともかく、ベテランって、あのハンターですか?」

ロートル「ああ」

ロートル「狩人がどう思っていようが、腕は立つからな」

狩人「…………」

少女「どのくらいで帰ってきます?」

ロートル「一応、往復で約一週間から10日……と言われている」

少女「わかりました」

少女「ふもと村の事は、私たちに任せてください」

ロートル「頼む」

871: 2015/07/13(月) 20:10:11 ID:edtHvh.A

     テク テク テク…

狩人「…………」

狩人「大丈夫かな……」

少女「そういえば……ロートルさん」

少女「この前の遠征について、何も言ってくれないね」

狩人「ああ……」

狩人「あのベテランとかいうハンターに騙されてないといいんだが」

少女「さすがにそれは大丈夫だと思うけど……」

少女「でも今回の急な話。 随分あっさり行くのを決めた気がする」

狩人「いけないのか?」

少女「報酬の部分が曖昧なのが気になるの」

872: 2015/07/13(月) 20:10:58 ID:edtHvh.A

狩人「ギルドと交渉……って書いてあるな」

少女「うん」

少女「破格のお金や素材じゃないのが、どうもね……」

狩人「そういうのを求められる、って事じゃないのか?」

少女「確かにそれは考えられる話だけど……」

少女「ごめん、うまく言えない」

狩人「そうか……」

狩人「じゃ、そろそろ俺たちも休むか」

少女「そうね」

少女「お疲れ様、狩人」

狩人「ああ、お疲れ様」

873: 2015/07/13(月) 20:53:30 ID:edtHvh.A


※それぞれの装備


ロートル(HR 6)

武器:双剣(ゲキリュウノツガイ 火属性)
防具:ガノスU装備一式


ソロ(HR 6)

武器:大剣(ブルーウィング 火属性)
防具:ザザミU装備一式


ベテラン(HR 6)

武器:ランス(シェルクロウランス)
防具:フルフルS装備一式

874: 2015/07/13(月) 20:54:35 ID:edtHvh.A


―――――――――――


翌日の朝

ふもと村 広場付近


     ガヤ ガヤ…

ベテラン「よお」

ロートル「おはよう」

ソロ「……おはよう」

ソロ「ベテラン、その武器……火属性じゃないな?」

ベテラン「ああ。 火属性、あるにはあるんだが……まだちょいと力不足なんでな」

ベテラン「迷ったんだが、こっちにした」

ソロ「そうか」

ベテラン「寒い地域のモンスターは、どうも苦手だ……」

875: 2015/07/13(月) 20:55:24 ID:edtHvh.A

ロートル「……ハンターの集まりが悪いな」

ロートル「昨日聞いていた通りなら、8人の予定だったと思うが……」

ベテラン「寝坊して遅れてるんじゃねーの?」

ロートル「だったらいいんだが……」

     タッ タッ タッ

観測所員「すみませーん」

観測所員「護衛のハンターさん、何人か風邪を引いてしまって参加できないそうです」

     ザワッ…!

ベテラン「おいおい……大丈夫なのか?」

観測所員「と、私に言われましても……」

観測所員「ですが、全部で5人もいらっしゃいますし」

観測所員「もう予定は変えられないので、このまま出発します」

876: 2015/07/13(月) 20:56:40 ID:edtHvh.A

ロートル「……やれやれだな」

ソロ「5……か」

ソロ「何事もなければいいが」

ベテラン「おや? ソロの兄ちゃん、迷信を信じる口か?」

ソロ「多少はな」

ベテラン「へっ……5だろうが、9だろうが、数字は数字」

ベテラン「いちいち気にしてたら、その若さで涼しげなヘアースタイルになるぜ?」

ソロ「……その軽口を叩く癖。 直した方がいいと思うぞ」

ロートル「まあまあ。 その辺りにしておけ」

ロートル「それよりも古龍の情報を優先して貰える、という報酬は魅力だ」

ロートル「参加できなかったハンターは無念だと思っているだろう」

877: 2015/07/13(月) 20:57:25 ID:edtHvh.A

ベテラン「おおともよ」

ソロ「……確かにそれは言えるな」

ロートル「昨日話した通り」

ロートル「観測所は今回の騒動の原因、古龍クシャルダオラと見ている」

ロートル「閃光玉は多めに持ってきたか?」

ベテラン「モチのロンだぜ」

ソロ「俺も調合分を含めて持ってきている」

ロートル「よし」

ロートル「もうひとつの候補はラージャンらしいがな……」

ベテラン「そうだったら、おたくら氏ぬな」

ロートル「他に鍛えている防具がない……その時は尻尾巻いて逃げるさ」

ソロ「クシャルダオラ前提で考えたからな……」

878: 2015/07/13(月) 20:58:17 ID:edtHvh.A


―――――――――――








     3日後の夜










879: 2015/07/13(月) 20:59:10 ID:edtHvh.A





     ビュオオオオオオオオ……





雪山奥地 調査隊中継地点 ビバーク予定地 洞窟テント内


ベテラン「う~さむさむさむ……」

ロートル「見張り、ご苦労さん」

ロートル「あまり旨くないが、モス煮込みだ。 温まるぞ」

ベテラン「ほっ、ありがてぇ……」

     ガツガツ… ムシャムシャ…

ベテラン「熱っ……はふはふ……ふう……あったまるぜ」

880: 2015/07/13(月) 21:00:23 ID:edtHvh.A

ロートル「結局、クシャルダオラは襲来せず……か」

ベテラン「ここらでもドドブランゴのみだったな」

ベテラン「しかも並の奴ばかり……原因の『何か』は、もっと奥地みてーだぜ」

ロートル「…………」

ロートル「……それはしょうがない」

ロートル「モンスターが俺たちの都合を考えてくれる訳はないからな」

ベテラン「ちげーねぇ」

     ハハハ…

ベテラン「……明日はいよいよ帰還、か」

ロートル「何事もなく済めば、それでいいさ」

ロートル「命あっての物種だ」

881: 2015/07/13(月) 21:01:02 ID:edtHvh.A

ベテラン「ほお? ずいぶんあっさりしてるな」

ロートル「今回のドドブランゴ襲来で命を落としたハンターは3人も居る」

ロートル「ネコタクアイルーにも犠牲が出た」

ベテラン「…………」

ロートル「俺たちハンター全員が『そうである』必要はないし、強制もできん」

ロートル「が……自分より若いハンターが命を散らさずに済むよう務めるのは」

ロートル「俺たちにとって、最低限の役割なんじゃないだろうか……」

ベテラン「…………」

ベテラン「……かも知んねぇな」

ベテラン「ハンターやってりゃ、誰だってG級目指したいの同じだが」

ベテラン「さすがに今回は、醜態さらしちまった気がする」

ロートル「……そうだな」

882: 2015/07/13(月) 21:01:43 ID:edtHvh.A

ロートル「さあ、休んでくれ」

ロートル「時間になったら起こす」

ベテラン「ああ。 休ませてもらうぜ」


―――――――――――


??「……ラン……ベテラン」

??「起きてくれ」

ベテラン「……ん」

ベテラン「…………」

ベテラン「……ソロの兄ちゃん」

ベテラン「……もう……交代の時間か……ふあああっ」

ソロ「違う」

883: 2015/07/13(月) 21:02:30 ID:edtHvh.A

ベテラン「はあ?」

ソロ「ともかく、起きて外に出てくれ」

ソロ「帰り道が無くなった」

ベテラン「……何言ってるんだ?」

ソロ「いいから早く」

ベテラン「??」

―――――――――――

     ザッ ザッ ザッ…

ロートル「起きたか、ベテラン」

ベテラン「……どうした、ロートル?」

884: 2015/07/13(月) 21:03:34 ID:edtHvh.A

ロートル「しっ……声を絞れ、ベテラン」

ベテラン「はあ?」

ロートル「百聞は一見にしかず……とりあえず、声を上げないように」

ロートル「あの巨大モンスターを見てくれ」

ベテラン「……!?」

ベテラン(巨大モンスター!?)

ソロ「…………」

     スッ…

ベテラン「」

ベテラン「なっ……何だ、ありゃ……!?」

ベテラン「あんなの知らねぇぞ……!?」

885: 2015/07/13(月) 21:04:16 ID:edtHvh.A



     ベテランが驚くのも無理は無かった。

     いつの間にか吹雪は止み、視界が開けていたのだが

     ロートルに促(うなが)され、岩の影からこっそりと覗いたら

     昨日、自分たちが来た道を塞ぐように

     巨大な『何か』が横たわっていたのだ。



     ……いや、もっと正確に言うと

     寝息を立て、寝ていたのだ。




886: 2015/07/13(月) 21:05:21 ID:edtHvh.A



     大きさは縦に約10~15m。

     丸まっているので全長は推定だが、尻尾を含めると

     軽く50mは超える、と、言ったところか……



     そいつは全身を真っ白なウロコ状の甲殻に包まれ

     全体的に流線型の体型をしている。

     特徴的なのは顔面の顎。

     スコップ状の形で、そのまま地面を掘れそうな感じだった。




887: 2015/07/13(月) 21:06:11 ID:edtHvh.A

ロートル「俺も見た事がない」

ロートル「吹雪が止んだので、帰り道の確認をしに来たら」

ロートル「『あれ』が居たんだ」

ベテラン「…………」

ベテラン「……今回のドドブランゴ騒動は」

ソロ「ああ……たぶん『あいつ』のせいだろう」

ベテラン「…………」

ベテラン「しかしでかいな……ラオシャンロンくらいは ありそうだ」

ロートル「……ともかく、これはまずい事になった」

ロートル「ラオシャンロンは国の軍隊の協力や準備してた防衛設備」

ロートル「そしてHR関係なく、ハンター総出で事に当たって何とかしているのに」

ロートル「あんな奴、たった5人のハンターで相手にできるモンスターじゃない」

888: 2015/07/13(月) 21:07:12 ID:edtHvh.A

ソロ「ましてや、どんな攻撃をするかもわからん」

ソロ「しかも……」

ベテラン「くそったれ……帰り道を塞がれたら、逃げる事もできねーじゃねーか」

ロートル「その通りだ」

ロートル「ともかく今は、奴がどう動くか見極めてからでないと行動できん」

     スタ スタ スタ…

観測所員「何事ですか? こんな朝早く……」

ロートル「しっ……静かに」

ロートル「見た事もない巨大モンスターが寝ている」

観測所員「!!」

ロートル「ゆっくりと……息を頃して『何』なのか、見極めてくれ」

観測所員「……わかりました」

889: 2015/07/13(月) 21:07:57 ID:edtHvh.A


     スッ…


観測所員「……!!」

ロートル「……どうだ? 何か分かるか?」

観測所員「…………」

観測所員「……わ……私の記憶が正しければ」

観測所員「あれは……おそらく……」



観測所員「崩竜……ウカムルバス……!」



一同「…………」

ロートル「崩竜ウカムルバス……詳しい情報はあるか?」

890: 2015/07/13(月) 21:08:47 ID:edtHvh.A

観測所員「残念ながらありません」

観測所員「ウカムルバスが最後に確認されたのは……確か50年くらい前で」

観測所員「当時の雪山周辺は、まだ未開の土地……」

観測所員「ラオシャンロン同様、何年かに一度の割合で回遊しているのではないか?」

観測所員「と、推測されただけです」


一同「…………」


ロートル「ほぼ、情報はなし、か……」

ソロ「ラオシャンロンと同じように回遊する、と推測した根拠はあるのか?」

観測所員「……大きさから、そう推測されたと記憶してます」

ベテラン「こいつはキツいねぇ……」

891: 2015/07/13(月) 21:09:55 ID:edtHvh.A

ベテラン「こっちは戦える奴は5人。 非戦闘員は多数」

ベテラン「おまけによく知らねぇ デカブツ相手で、逃げ道が塞がれちまったときた」


一同「…………」


ロートル「ともかく、確かめたい事もある」

ロートル「一度ビバーク地点まで下がるぞ」

―――――――――――

     ザワ ザワ… ドウスンダヨ…

ロートル「みんな、落ち着いてくれ」

ロートル「ここは洞窟で、とりあえず奴には見つからない」

     …………

ロートル「よし」

892: 2015/07/13(月) 21:10:47 ID:edtHvh.A

ソロ「ロートル」

ロートル「戻ったかソロ」

ロートル「どうだった?」

ソロ「残念だが……お前の懸念が当たっていた」

ソロ「観測所員の話だと、計画されていたルートは」

ソロ「8年前の雪山奥地探索ルートを元に作られているが」

ソロ「ざっと調べた限り、奴の通った跡は見事にそのルートに沿っていた」

ロートル「……そうか」

ベテラン「俺たちは、やっこさんの通った獣道を探索ルートに選んでいたって事か……」

ロートル「回遊する、という言葉を聞いて、ふと、な……」

観測所員「……通りで通りやすいわけですね」

ロートル「…………」

893: 2015/07/13(月) 21:11:20 ID:edtHvh.A

ロートル「俺の考えとしては、3つある」

ソロ「……聞こう」

ロートル「一つ目は、迂回ルートを選択して一刻も早く帰還する、だ」

ロートル「だが、これは予定されていないルートを通る事になる為」

ロートル「遭難の危険性があるし、たぶん時間もかかる」

ロートル「そうなったら手持ちの食料や燃料が、どこまで持つか不安になる」


一同「…………」


ロートル「二つ目は、ここで救助を待つ事」

ロートル「ウカムルバスの目的は何なのか分かっていないので」

ロートル「ふもと村の方向へ向かっている、とも言い切れない」

ロートル「ここには調査隊本隊の食料や備品もあるので」

ロートル「原状、我々が一番安全な方法とも言える」

894: 2015/07/13(月) 21:12:08 ID:edtHvh.A

ロートル「しかし……奴がふもと村の方角へ向かっていった場合」

ロートル「俺たちの救助は遅れに遅れる事が予測される」


一同「…………」


ロートル「最後の選択肢だが……」

ロートル「俺たちハンターが奴の囮となり、非戦闘員たちだけで帰還してもらう事」


一同「!!」


ロートル「……正直、一番危険な策だと思う」

895: 2015/07/13(月) 21:12:54 ID:edtHvh.A

ロートル「囮になるハンターはもちろん、逃げる非戦闘員も」

ロートル「ギアノスやブランゴ等のモンスターの脅威にさらされる」


一同「…………」


ロートル「だが同時に最も早く、迫ってくるウカムルバスの危険や」

ロートル「救助の求めを伝えられる可能性が高い」

ロートル「同じルートを進んでくる後発隊に接触できるしな」


一同「…………」


ロートル「他に何か、いい考えはあるだろうか?」

観測所員「……ひとつ聞きたいんですが」

ロートル「何だ?」

896: 2015/07/13(月) 21:14:50 ID:edtHvh.A

観測所員「囮になったハンターは……どうなるんですか?」

ロートル「もちろんあいつを適当にあしらったら……」

ロートル「ここで救助を待つさ」

ロートル「氏ぬつもりなんて、これっぽっちもない」

観測所員「…………」

観測所員「私は……3つ目の選択肢を選びます」

     ザワ…!

ベテラン「……こいつは意外だったな」

ベテラン「一番反対すると思ってたぜ」

観測所員「私だって安全に行きたいですよ」

観測所員「でも……ふもと村含め、この脅威を雪山周辺の皆さんは知りません」

観測所員「リスクを冒してでも、伝えなければならない事だと思います」

897: 2015/07/13(月) 21:15:29 ID:edtHvh.A


一同「…………」


ロートル「ハンター含め、みんなもよく考えてくれ」

ロートル「自分が『どうすべき』なのかを……」


一同「…………」


―――――――――――


約一時間後

ウカムルバス 就寝地点


     グルルル…zzz グルルル…zzz



898: 2015/07/13(月) 21:16:27 ID:edtHvh.A

ベテラン「……まだ寝てやがるな」

ロートル「どの道、あいつが起きだしたら俺たちが通ってきたルートを進む」

ロートル「退路を絶たれてるのは変わらんさ」

ベテラン「へっ……違ぇねぇ」

ベテラン「なら、こっちの思惑通り動いてもらおうぜ」

ロートル「ああ。 手はずは?」

ソロ「できている」

ソロ「例の洞窟で非戦闘員は待機して、合図を待っているぞ」

ロートル「そうか……」

ベテラン「じゃ……最終確認と行くか」

899: 2015/07/13(月) 21:17:01 ID:edtHvh.A

ベテラン「俺たちハンターは、囮としてあのデカ物をこの先の開けた窪地へ誘導」

ベテラン「その隙に非戦闘員は元来た道を使って帰還」

ベテラン「大体はこうだな?」

ロートル「ああ」

ロートル「しばらく奴に付き合って、時間を稼ぐが」

ロートル「俺たち囮のハンターは、あの洞窟に立て籠って救助を待つ」

ベテラン「合図は大タル爆弾で……だったな?」

ロートル「雪崩が心配だが、他に手段がないからな……」

ベテラン「……よし」

ベテラン「そろそろ、おっぱじめるとするか」

ソロ「……いつでもいいぞ」

ロートル「わかった」つ(ペイントボール)

     ブンッ ……―――ンッ ベチャ!

900: 2015/07/13(月) 21:18:09 ID:edtHvh.A


     グルルル…


ベテラン「おーおー……あのでかい図体で、あんなのでも起きるんだな」

ロートル「先に行け」つ(強走薬グレート)

     グビッ …シュインッ!

ソロ「わかった。 気をつけろよ」

ベテラン「頼んだぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「……ああ」

901: 2015/07/13(月) 21:19:49 ID:edtHvh.A

※ここで ウカムルバス戦闘 のBGMを流すといいかもです。

902: 2015/07/13(月) 21:20:34 ID:edtHvh.A



     ゴアアアアアアアッ!!



ロートル(まずは威嚇……定番だな)


     ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


ロートル「!?」

ロートル「くっ……!」 回避!

ロートル(思ったより素早い……あの図体で かなり動けるみたいだな)

ロートル「はあっ!」

     ズバッ! ズバッ!

903: 2015/07/13(月) 21:21:15 ID:edtHvh.A

ロートル「…………」

ロートル(こんな程度じゃ全然ダメージにならんな……)

ロートル(ラオシャンロンもハンターに切り刻まれながら)

ロートル(その歩みを止めないと聞く……)


     ガアアアアアアアアアアッ!!


ロートル「!!」

ロートル(どうやら、こいつは気が短いらしい)

ロートル「くっ!」

     ダダダダダダダダッ!

―――――――――――

904: 2015/07/13(月) 21:22:06 ID:edtHvh.A

ベテラン「おっ……もう来た」

ベテラン「どうやら頭に血が上りやすい質(たち)の様だな」

ソロ「かえって好都合だ」

ソロ「そっちの準備はいいか!?」


     他のハンター達(ガンナー)は手を挙げて

     OKのサインを送りかえす。


ソロ「よし……」

ソロ「…………」

ソロ「…………」

ソロ「…………」

ソロ「今だ!!」

905: 2015/07/13(月) 21:22:42 ID:edtHvh.A


     ドウッ! ドウッ! ドウッ!

     ドオオオオオオオンッ!!


ベテラン「しゃ! いいタイミングだぜ!」

ソロ「これだけ引き離せば大丈夫だろう」

―――――――――――

ロートル「!」

ロートル(どうやら、作戦の第一段階は成功のよう……)

ロートル「……!?」

906: 2015/07/13(月) 21:23:35 ID:edtHvh.A



     不意に

     ウカムルバスは、ロートルから目を離す。

     何かに気がついた様に自分の後方へと目線を移すと

     その方向へ自分の体の向きを変えた。



ロートル「な……何だ?」

ロートル「…………」

ロートル「!!」

907: 2015/07/13(月) 21:24:33 ID:edtHvh.A



     その目線の先には――

     慌てて洞窟から逃げ出そうとする非戦闘員達の姿が見える。



     この距離で、俺というハンターを目の前にして

     なぜそっちへ……というロートルの疑問は

     次の瞬間、すぐに分かる事となった。




908: 2015/07/13(月) 21:25:20 ID:edtHvh.A






     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!






ロートル「――っ!!」

ベテラン「」

ソロ「」

909: 2015/07/13(月) 21:26:26 ID:edtHvh.A



     たぶん水ブレス……

     ガノトトスが使う、貫通性の高い、直撃を食らうと

     下位の防具なんぞ簡単に穴を開けるヤバイやつ。

     アレだ。 それはすぐわかった。



     だが、破壊力が比較にならない!!



     ブレスを吐いた途端、地面の氷や大岩を巻き上げ

     大地ごと非戦闘員達の姿が……消えてしまった!!




910: 2015/07/13(月) 21:27:18 ID:edtHvh.A

ベテラン「マ……マジかよ」

ソロ「…………」

ロートル「…………」


     モンスターの驚異的な力は

     ハンターであれば、誰でもある程度は分かっている。

     が……

     こいつ……ウカムルバスの この攻撃は

     想像をはるかに超えた破壊力だった。

     故に……ハンター達の動きが一瞬止まる――


ソロ「……!」

ソロ「ロートル! 止まるな!」

ロートル「っ!!」

911: 2015/07/13(月) 21:28:02 ID:edtHvh.A


     ブオッ!


ロートル「うおっ!」 回避!


     すんでのところでウカムルバスの前足攻撃を避けるロートル。


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ロートル(くそっ!)

ロートル(非戦闘員の安否確認に行きたいが……おそらく全員……)

ロートル(…………)

ロートル(完全に俺の見積りが甘かった)

ロートル(どうする?)

ロートル(あの洞窟に逃げ込んでも あの攻撃をやられたらおしまいだ!)

912: 2015/07/13(月) 21:28:48 ID:edtHvh.A

ベテラン(これで本当の意味で逃げ場が無くなったな……)

ベテラン(もう囮なんて意味がねぇ)

ベテラン(できる選択肢は……)

ソロ(残った5人でそれぞれ逃げ散るか……)



     戦って勝つしかない!



ベテラン(……正直、あいつに手を出した瞬間、終わっていたのかもな)

ソロ(まさか……ラオシャンロン以上の化物が居るとは……)

ロートル(くそったれ……!)

913: 2015/07/13(月) 21:29:38 ID:edtHvh.A



     だが、ロートル達以外のハンターは

     『逃げる』という選択を選んだ。

     振り返り、ウカムルバスを確認しながら逃走するハンター達……



ベテラン「ちっ……あいつら!」


     そう舌打ちしつつ、ベテランも気持ちはよく分かっていた。

     が、すぐにその選択は正しくない事を悟る。



914: 2015/07/13(月) 21:30:33 ID:edtHvh.A






     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!







915: 2015/07/13(月) 21:31:26 ID:edtHvh.A



     逃げ出したハンター達は文字通り

     『消し飛んだ』……

     通常、モンスターに限らず

     獣という存在は、逃げるものほど追いかける性質がある。

     決して間違いではないが、今回の場合は

     『一斉に別方向へ』逃げないと意味がないのだ。




916: 2015/07/13(月) 21:32:17 ID:edtHvh.A

ロートル「くそぉっ!!」

     ズバッズバッズバッ!!

ベテラン「ちくしょおおおおおおおおっ!!」つ(ランス)

     ドドドドドドドドドドッ!!(突進攻撃)

ソロ「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

     ドガアッ!!


     ガアアアアアアアアアアアッ!!


ベテラン「!?」

ロートル「!?」

ソロ「!?」

917: 2015/07/13(月) 21:33:07 ID:edtHvh.A


     ほとんどなし崩し的に……いや

     ヤケクソ気味に攻撃を仕掛けたロートル達。


     だが、ウカムルバスの行動に異変が見えたため

     若干引いて様子を見る。


     ズズウゥ……


ロートル(あの巨体で立ち上がるのか……!)

ベテラン(だが、そんなのはラオシャンロンだってやってるぜ!)

ソロ(ラオシャンロンなら……大きな隙になったはず!)

918: 2015/07/13(月) 21:33:42 ID:edtHvh.A



     ロートル達は、ラオシャンロンの例に当てはめ

     この後、咆哮を仕掛け 長い時間の隙があると予測した。

     確かにその予測は間違いでは無かった。





     ゴアアアアアアアッ!!




ロートル「ぐっ!?」

ベテラン「がっ!?」

ソロ「ごふっ!?」

919: 2015/07/13(月) 21:34:14 ID:edtHvh.A



     見えない壁に体を叩き付けられた様な衝撃……!

     これはティガレックス等に見られる

     強烈な咆哮による音波ダメージと原理は同じだ。

     しかし、これもティガとは比較にならないほど強力で範囲が広い!

     ロートル達は、完全に間合いを見誤り

     それぞれの後方へ吹き飛ばされる!



ベテラン「く……くそっ……たれ……!」

ベテラン「は、反則……だろ……こんなの……」つ(回復薬G) グビッ

ロートル「はあっ……はあっ……」つ(回復薬G) グビッ

ソロ「ぐっ……くっ……」つ(回復薬G) グビッ

920: 2015/07/13(月) 21:35:18 ID:edtHvh.A

ソロ「…………」

ソロ「…………」 ゴソゴソ…

ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「閃光玉……!」

ソロ「……効いてくれたか」

ロートル「これで、とりあえず一息つけるな……」

ソロ「ロートル。 このまま逃げてくれ」

ロートル「!?」

ベテラン「…………」

921: 2015/07/13(月) 21:35:52 ID:edtHvh.A

ロートル「何を言って……」

ソロ「俺たちの中……大剣、ランス、双剣で一番身軽なのはお前だ」

ロートル「……!」

ソロ「俺はありったけの閃光玉でお前を援護する」

ソロ「もう一度 強走薬を飲んで、この場から脱出しろ」

ロートル「し、しかし!」

ベテラン「そういう事なら、お任せするぜ。 ソロの兄ちゃん」

ソロ「…………」

ロートル「! ベテラン……お前!」

ベテラン「ほれ、やっこさん、もう治ったみたいだぜ?」

922: 2015/07/13(月) 21:36:37 ID:edtHvh.A


     グルルル…


ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「ロートル、ここで俺たちが全滅したら」

ソロ「誰がウカムルバスの驚異を伝えるんだ?」

ロートル「!!」

ベテラン「……そういうこった」

ベテラン「んじゃ、俺は行くぜ!」

     タッ タッ タッ…

ロートル「だ、だが! ソロ!」

923: 2015/07/13(月) 21:37:19 ID:edtHvh.A

ソロ「…………」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「早くしろ」

ソロ「そう長くは持たない」

ロートル「……っ」

ロートル「…………」

ロートル「……生きろよ、ソロ」

ソロ「ああ。 頑張るさ」

     ダッ!!

924: 2015/07/13(月) 21:38:14 ID:edtHvh.A


     ガアアアアアアアアッ!


ソロ「例の水ブレスは、撃たさせんぞ!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…

―――――――――――

ソロ(これで……最後!)つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


925: 2015/07/13(月) 21:38:51 ID:edtHvh.A

ソロ「…………」

ソロ(ロートル……どのくらい逃げられただろうか)

ソロ(…………)

ソロ(あんたには振り回されてばかりだった気もするが)

ソロ(救われた事も多かった……)


     グルルル…


ソロ(…………)

ソロ(……そういや礼。 言ってなかったな……)

ソロ(あんたとの狩りは、いつだって)

ソロ(楽しかった)

926: 2015/07/13(月) 21:39:33 ID:edtHvh.A

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ソロ「!?」

ソロ「閃光玉!? いったい誰が……」

ベテラン「黄昏(たそがれ)てんじゃねーよ、ソロの兄ちゃん」

ソロ「ベテラン!?」

ベテラン「よっ……と!」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


927: 2015/07/13(月) 21:40:36 ID:edtHvh.A

ベテラン「もう、ほとんど一瞬で回復してるな……」

ソロ「…………」

ソロ「なぜ……」

ベテラン「おりゃ」つ(閃光玉)

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「……何でだろうな」

ベテラン「けどよ」

ベテラン「俺だって……ハンターの端くれだ」

ソロ「…………」

928: 2015/07/13(月) 21:41:23 ID:edtHvh.A

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン(…………)

ベテラン(俺は……出来のいい弟にいつも比べられていた)

ベテラン(そいつは弟のせいじゃねぇ。 んなこたぁ分かってる)

ベテラン(けど……足掻けば足掻くほど、惨めな結果に終わっていった……)

ベテラン(……そしていつしか、それも恥とは思わなくなった)

ベテラン(…………)

ベテラン(最後くらい……カッコつけても)

ベテラン(いいだろーよ……)

929: 2015/07/13(月) 21:42:08 ID:edtHvh.A

     ブンッ…

     カッ!!


     グアアアア…


ベテラン「これで手持ちが尽きた!」

ベテラン「調合するから、しばらく頼んだぜ!」

ソロ「分かった!」


     ガアアアアアアアア!


ソロ(立ち上がった! また咆哮か!)

930: 2015/07/13(月) 21:42:59 ID:edtHvh.A


     咆哮が来る。

     そう判断したソロは、大剣で防御姿勢を取る。

     が……大剣の防御姿勢は、目の前に大剣をかざす為

     一時的に視界を遮ってしまう、という些細な弱点があった。


ベテラン「!!」

ベテラン「違う! 咆哮じゃない!」

ベテラン「逃げ――」

931: 2015/07/13(月) 21:43:50 ID:edtHvh.A





     ド  ズ  ン  ッ !!





     立ち上がったウカムルバスは

     そのままソロに対し、ボディプレスを仕掛けてきた。

     ウカムルバスの重量は見た目の推測でも

     おそらく1000tは下らないだろう。

     防御なんて関係ない。

     ソロは……防御ごとウカムルバスに押しつぶされてしまった……




932: 2015/07/13(月) 21:44:49 ID:edtHvh.A

ベテラン「くそったれ!!」



     目の前で起こった出来事を悲しんでいる暇すらない。

     早く調合を終えないと、次、ああなるのは自分だ!

     ベテランはそう思って調合を急いだのだが……


     そのせいで、ウカムルバスが尻尾を振り上げたのに

     気が付くのが遅れた。



ベテラン「っ!」

ベテラン「テールアタックか!?」

ベテラン(だが、さすがにこの距離なら――)

933: 2015/07/13(月) 21:45:37 ID:edtHvh.A



     ズ  ゴ  オ  ッ !!



ベテラン「がっ……!?」

ベテラン(うそ……だろ……)

ベテラン(………まさか…ここまで)

ベテラン(とどく……なんて……!)

     ドサッ!

ベテラン「がふっ!!」

ベテラン「…………」

ベテラン「ゲボォッ……」 ビチャビチャ…

934: 2015/07/13(月) 21:46:28 ID:edtHvh.A

ベテラン(…………)

ベテラン(あー……こりゃ……体中の骨……逝ったな……)

ベテラン(…………)

ベテラン(痛いんだか……だるいんだか……)

ベテラン(もう……わかんねぇ……な)


     ガアアアアアアアア!


ベテラン(…………)

ベテラン(…………)

ベテラン(へっ……ソロの……兄ちゃんよぉ……)

ベテラン(どうやら……5って……数字……)

ベテラン(迷信なんかじゃ……無かった……みた)

935: 2015/07/13(月) 21:47:20 ID:edtHvh.A






     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!







936: 2015/07/13(月) 21:48:01 ID:edtHvh.A


―――――――――――


ロートル「はあっはあっはあっ……」

ロートル(強走薬が切れたか……)

ロートル(…………)つ(強走薬グレート) グビッ

     シュイン!

ロートル(…………)

ロートル(……くそ)

ロートル(休んでいられん)


     ビュオオオオオオオ……


ロートル(天気まで悪くなってきた……)

ロートル(…………)

     タッ タッ タッ…

937: 2015/07/13(月) 21:48:44 ID:edtHvh.A


―――――――――――







     数日後









938: 2015/07/13(月) 21:49:24 ID:edtHvh.A

午前中

ふもと村 加工店


職人「どこかキツいところは無いか?」

狩人「ええ、大丈夫ですよ」

狩人「オウビートS装備、いい感じです」

職人「そうか」

職人「そっちはどうだい?」

少女「……大丈夫です」

少女「デザイン以外、問題ないですよ」

職人「はっはっはっ!」

少女「…………」

狩人「お、俺は可愛いと思うぞ、うん!」

939: 2015/07/13(月) 21:50:14 ID:edtHvh.A

少女「……どうしてパピメルS装備って」

少女「蝶蝶(ちょうちょ)の羽みたいなデザインになるんですか?」

職人「そりゃ女性用の防具だからだよ」

職人「オウビートに比べて、より軽量化したり」

職人「体型に合わせた結果、こうなるんだ」

狩人(……その理屈が全然わかりませんけどね)

少女(……同じ素材なのに、どう見ても別物なんですけど)

少女「ともかく、ありがとうございました」

少女「デザインは別にしても ようやく上位の防具ができたわね」

狩人「ああ。 ありがとう職人さん」

職人「どういたしまして」

940: 2015/07/13(月) 21:50:52 ID:edtHvh.A


―――――――――――


狩人「さて、これからどうする?」

狩人「俺はできたら、沼地のフルフルをやりたいんだが……」

少女「…………」

狩人「少女?」

少女「きょ、今日は……休まない?」

狩人「……まだ気にしてるのか」

狩人「あれは一応、誤解を解いたと思うが……」

少女「…………」///

941: 2015/07/13(月) 21:51:33 ID:edtHvh.A

狩人(いつだったか……)

狩人(俺の髪の毛目当てで女の子ハンターが寄ってきた事があるが)

狩人(昨日、集会所で少女も欲しいと言ってきた)

狩人(……ここまでは問題なかったんだけど)

狩人(『代わりに私のも挙げるね』と言った事で、集会所が静まり返った)

狩人(俺と少女は訳が分からなかったけど……)

狩人(たまたまそこに居あわせた女が説明してくれた)

少女(……何で女の子が男にあげる場合は『下の毛』限定なのよ)///

少女(顔から火が出るほど恥ずかしかった……)///

狩人(……通りで少女にクレクレ言う男ハンターが居ない訳だ)

狩人(そんな奴、ただの変態でしかないからな……)

942: 2015/07/13(月) 21:52:05 ID:edtHvh.A

少女「……もう恥かきついでに」

少女「これ……あげるわ」つ(お守り)

狩人「え?」

少女「わ、私の髪の毛よっ」///

少女「言っとくけど、下品なモノは入れてないからね!?」///

狩人「! ……あ、ああ」///

狩人「ありがとう、少女。 嬉しいよ」///

少女「そ、そう……」///

少女「…………」///

少女(……ほ、本当は)///

少女(一本だけ……)///

943: 2015/07/13(月) 21:52:52 ID:edtHvh.A

狩人「じゃあ……どうする?」

狩人「今日は休むか?」

少女「うん。 お願い」

狩人「わかった」 クスッ

少女「ふふっ」 ニコッ


     ガアアアアアアアア……


狩人「!?」

少女「!?」

     ザワッ…

狩人「今の……何だ!?」

少女「分からない。 分からないけど……」

944: 2015/07/13(月) 21:53:51 ID:edtHvh.A








     モンスターの叫び声なのは間違いない。









945: 2015/07/13(月) 21:54:45 ID:edtHvh.A

狩人「いったいどこから……」 キョロキョロ…

少女「…………」





     ブシャアアアアアアアアアアアアアッ!!





     ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!






狩人「」

少女「」

946: 2015/07/13(月) 21:55:30 ID:edtHvh.A



     その日は、さ……

     天気も良くて、爽やかな風も吹いて

     本当にいい日になるなって、そんな気持ちにしかなれない

     穏やかな日だった。



     ……けど




947: 2015/07/13(月) 21:56:21 ID:edtHvh.A




     この一撃で……

     それは、ただの幻想だって……



     思い知らされる事になったんだ……





961: 2015/07/13(月) 22:43:51 ID:edtHvh.A

948: 2015/07/13(月) 22:04:08 ID:edtHvh.A
という所で、今日はここまでです。
このスレだけで終わらせるつもりだったけど
ロートル達の奮闘は書きたかった……
前回、泣く泣く救助アイルーの奮闘は削ったのになぁ……
すまねえ救助アイルー……

そんな訳で次スレに続きます。
一応残り2話くらい?と考えてますので。
お付き合いありがとうございました。

964: 2015/07/13(月) 23:42:12 ID:y5I6DBhU

965: 2015/07/14(火) 01:03:11 ID:VleeIG4A
そろそろおわりかー

966: 2015/07/14(火) 02:15:42 ID:3LSBp/w2

引用: 狩人「目指すは伝説級ハンター!」