1: 2024/03/02(土) 21:00:02 ID:OBvmFKLY00
花帆『はぁ、はぁ……この、練習……大変、すぎるよ……』ゼーハー

さやか『花帆さん、大丈夫ですか? これ、飲みかけですけど、わたしのお水でよければ』

花帆『はぁ、はぁ……あ、ありがとう、さやかちゃん……』

花帆『んくんく……ぷはっ……生き返るー!!』

さやか『水分補給は大切ですから、しっかり飲んで休んでくださいね』

花帆『そうだね、そうする! ……あ、そういえば、あたし気づいちゃったんだけど……』

花帆『……これって、間接キス、だよね、さやかちゃん?///』


花帆「…………んー……」チュンチュン

花帆「朝……ってことは、さっきのは夢……?」

花帆「夢……さやかちゃんがあたしにお水を貸してくれて、それで…………っ!?!?///」

花帆「さ、さやかちゃんと間接キス……な、なんて夢見てるんだろ、あたし……!!///」

2: 2024/03/02(土) 21:01:02 ID:OBvmFKLY00
────

花帆「はぁ、はぁ……朝練、つ、疲れたーー!! もう動けない……」

さやか「あの……花帆さん、大丈夫ですか?」

花帆「さ、さやかちゃん……大丈夫だけど大丈夫じゃない……お水飲みたい……」ハァハァ

さやか「お水、わたしのでよければ飲みますか?」

花帆「……えっ!?!?」

3: 2024/03/02(土) 21:02:02 ID:OBvmFKLY00
さやか「そ、そんなに驚きますか!? 花帆さん、息も切れ切れで苦しそうなので……」

花帆「い、いや……ありがとう、さやかちゃん!」

花帆(これってもしかして、今朝の夢って、まさか……)

花帆(予知夢ーー!?)

4: 2024/03/02(土) 21:03:02 ID:OBvmFKLY00
花帆(……っていやいや、お水貸してくれるくらい、ただの偶然でしょ!)

花帆(そう、偶然……さやかちゃんとの、か、間接キスもきっと偶然だよ……///)

さやか「花帆さん? 顔を真っ赤にして……どうしたんですか? お水、もう少し要りますか?」

花帆「う、ううん、大丈夫! 何でもないよ、何でも……」

花帆(うぅ……さやかちゃんはきっと無意識なのに……あたしが勝手に意識してるだけ……///)

花帆(もうっ、今朝見た夢のせいだよ! まったく……)

花帆(夢……ほんとに予知夢だったら面白いけど)

花帆(今日も何か夢、見ないかなぁ……)

5: 2024/03/02(土) 21:04:02 ID:OBvmFKLY00
────

花帆『うわー!! さやかちゃんとお泊まり会なんて、最高だよ!』

さやか『ふふ、わたしも花帆さんと一緒にいられて嬉しいですよ!』

花帆『こちらこそだよ、さやかちゃん! あたし、さやかちゃんのこと大好き!』


花帆「ん……」チュンチュン

花帆「また……さやかちゃんが出てくる夢……」

花帆「お泊まり会……お泊まり会かぁ」

花帆「さやかちゃんと実際、できたら楽しそうだけど……」

花帆「きっと、ただの夢……だよね」

6: 2024/03/02(土) 21:05:02 ID:OBvmFKLY00
────

花帆「んー……! 今日も練習頑張った! さすがあたし!」

さやか「花帆さん、少しいいですか?」

花帆「さやかちゃん! どうしたの?」

さやか「その……今日、花帆さんのお部屋にお邪魔してもいいですか?」

花帆「!?」ドキッ

さやか「最近お疲れそうだったので、マッサージをしようかと……花帆さん?」

花帆「あ……えと、ありがとう、さやかちゃん! 鍵開けておくね!」

7: 2024/03/02(土) 21:06:02 ID:OBvmFKLY00
花帆(さやかちゃんが、あたしの部屋に来る……)

花帆(それ自体はよくある事のはず……そう、そうなんだよ! でも……)

花帆(最近、さやかちゃんが出てくる夢ばかり見てるから、いつも以上に意識しちゃう……なんてことないはずなのに///)

花帆(……お泊まり会、まさかほんとに予知夢だったり……なんて、まさかね)

8: 2024/03/02(土) 21:07:02 ID:OBvmFKLY00
────

さやか「花帆さん、マッサージ気持ちいいですか?」ギュッギュッ

花帆「あぁー、気持ちいい……練習後の疲れた体にしみるよぉ……さすが、さやかちゃん……」

さやか「花帆さんのお役に立てて、何よりです」クスッ

花帆「ありがとう、さやかちゃん……ああ、安らぐ……」ノビー

さやか「あ、ここも結構凝ってますね……せっかくですから、普段のマッサージよりも時間をかけて丁寧にやりましょうか」ギュッギュッ

花帆「え、いいの! ありがとうございます、さやかマッサージ師!」

さやか「はーい……って、誰がマッサージ師ですか、もう」フフッ

9: 2024/03/02(土) 21:08:02 ID:OBvmFKLY00
────

花帆「あぁ……完全にほぐれたよ……! うーん、気持ち良かったー!」ノビー

さやか「それは良かったです。……あ、もうこんな時間ですね」

花帆「え、いま何時……って、もう消灯2分前じゃん!?」

さやか「困りましたね……今から帰っても、寮母さんに見つかってしまいそうで」ウーン

花帆(……ん!? これって、もしかして……)

10: 2024/03/02(土) 21:09:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「あ……じゃあ、あたしの部屋でそのまんま寝ちゃう……とかは……?」

花帆(……って何言ってんだろあたし! 夢の内容に引っ張られすぎだよ……!)

花帆(でもさやかちゃん真面目だし、流石に断るかな……)

さやか「そうですね。では、お言葉に甘えさせていただきます……!」

花帆「!?!?」

11: 2024/03/02(土) 21:10:02 ID:OBvmFKLY00
さやか「あ、ベッドが一つしかありませんね……」

さやか「よければなんですけど、同じ布団で一緒に寝ませんか?」

花帆「!?!?!?」

12: 2024/03/02(土) 21:11:03 ID:OBvmFKLY00
────

さやか「それでは、お布団お邪魔しますね」ソッ

花帆「う、うん……どうぞ、さやかちゃん……///」

花帆(柔らかいシーツ、暖かい布団、そして隣にはさやかちゃん……///)

花帆(もう逆に、これが夢だったりしない!?)

さやか「ふふっ、流石に二人だと少し狭いですね……」

さやか「もっと花帆さんの方へ、寄ってもいいですか?」ササヤキ

花帆「!?!?!?!?」ドキドキドキ

花帆(さ、さやかちゃんがヤバい!! 魔性の女すぎるよ!!///)

13: 2024/03/02(土) 21:12:02 ID:OBvmFKLY00
さやか「──それじゃ、おやすみなさい、花帆さん」

花帆「お、おやすみ……」

花帆(ベッドから落ちないようにギュっとしたから、さやかちゃんの爽やかな匂いが伝わってきて……)

花帆(こ、この状況で寝れるわけなくない……??///)ドキドキ

さやか「…………」スヤァ

花帆(うっ、寝顔かわいい!!)ドキドキ

14: 2024/03/02(土) 21:13:02 ID:OBvmFKLY00
────

花帆「…………ふあ……?」チュンチュン

花帆(あ、朝……? な、なんとか眠れたんだ……昨日はドキドキしてヤバかったな……)

花帆(さやかちゃんが横で寝てるから、意識しすぎて……思い出すだけで心臓が……///)ドキドキ

花帆(そういえば、さやかちゃんは……って)

花帆「あれ……なんか、美味しそうな匂いが……」スンスン

さやか「あれ、花帆さん、起きましたか?」ヒョコ

花帆「さやかちゃん!」

15: 2024/03/02(土) 21:14:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「ということは、このいい匂いは……」

さやか「ふふ、勝手ながら今、朝ごはんを作っているところですよ。出来るまで少し、待っていてください」ニコッ

花帆「え、わざわざ朝ごはん作ってくれたの!? 至れり尽くせり……ありがとう、さやかちゃん!」

さやか「いえいえ、いつもしていることなので」クスッ

16: 2024/03/02(土) 21:15:02 ID:OBvmFKLY00
さやか「~♪」トントン

花帆(あたしの部屋に、料理中の小気味いい音が響いていて……)

花帆「なんだか、安心する音……」シミジミ

花帆(さてさて、待ってる間にスマホでも見ておこうかな)

花帆「あ、今日午後から雨降るんだ……今日は練習ないし傘持ってこっと」スイッスイッ

17: 2024/03/02(土) 21:16:02 ID:OBvmFKLY00
────

さやか「花帆さーん? 朝ごはん、出来ましたよー!」

花帆「はーい!」トコトコ

花帆「うわぁ……! すっごく美味しそうだよ! さやかちゃん天才!?」

さやか「そんな、言い過ぎですよ」フフッ

さやか「さぁ、温かいうちにぜひ、どうぞ」

花帆「いただきます! ……んー!! 美味しい! 流石さやかちゃん!」

さやか「ふふ、ありがとうございます」ニコッ

19: 2024/03/02(土) 21:17:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「さやかちゃんの手料理がこんなに美味しいなんて……いくらでも食べられちゃう!」パクパク

さやか「あ、なんでしたら、今日のお昼もどうですか? わたし、花帆さんの分もお弁当作りますよ」

花帆「え、嬉しいけど……流石に大変じゃない?」

さやか「いえいえ、綴理先輩の分も作るので、一つ増えても大した負担にはなりませんよ」

さやか「むしろ、ぜひ」グッ

花帆「……じゃあ、お願いしちゃおっかな! さやかちゃん、ありがとう!」

花帆(……なんか昨日もだけど、さやかちゃんがいつもより積極的なような……? 気のせいかな?)

20: 2024/03/02(土) 21:18:02 ID:OBvmFKLY00
────

さやか「それでは、学校に行きましょうか」スタッ

花帆「うん、そうだね……ふわぁ……」

花帆(う……まだ少し眠気が……あんま眠れなかったもんね)

花帆(夢も見てないし…………ってそうだ、夢!)ハッ

さやか「? どうかしましたか、花帆さん?」

花帆「え、いや……何でもないよ!」

21: 2024/03/02(土) 21:19:02 ID:OBvmFKLY00
花帆(……さやかちゃんとのお泊まり会が現実に起こった……)

花帆(それなら、あたしの見た夢はやっぱり、予知夢なのかも……!)

花帆(もしかしてあたし、予知能力に目覚めちゃった!?)

花帆(こんなの……最高すぎるよ!)ウキウキ

22: 2024/03/02(土) 21:20:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「早く学校行こ、さやかちゃん! ~♪」

さやか「なんだかご機嫌ですね」クスッ

花帆「花帆は今、猛烈に気分が良いのです!」ルンルン

花帆(まるで小説の中のような不思議な出来事に、あたし自身が遭遇してるなんて……興奮しないほうがおかしいもんね!)

花帆(……あれ、でも、何でさやかちゃんとの出来事しか夢にみないんだろう……?)

23: 2024/03/02(土) 21:21:02 ID:OBvmFKLY00
────

「── 我妹子に恋ひてすべなみ白袴の……」

花帆(……授業の古文がお経みたいに聞こえてくる)

花帆(う……睡眠不足の反動が……)ウツラウツラ

花帆「…………zzz」スヤァ

24: 2024/03/02(土) 21:22:02 ID:OBvmFKLY00
────

ザーザー

花帆『うわー、やっぱり雨が降っちゃってる! 傘持ってきてて良かった……』タッタッ

花帆『……あれ? あれって……』

さやか『…………』ザーザー

花帆『綺麗……』

花帆『……ってそうじゃなくて、さやかちゃんが雨に濡れちゃってる! 急いで──』

25: 2024/03/02(土) 21:23:02 ID:OBvmFKLY00
────

「──それじゃ、次の文を……日野下さん、読んでください」

花帆「…………zzz」

「あら、日野下さん?」

さやか「……花帆さん、花帆さん!」チョンチョン

花帆「…………ん……?」パチリ

26: 2024/03/02(土) 21:24:02 ID:OBvmFKLY00
「日野下さん、まさか授業中に居眠りなんてことは、ありませんよね? 続きの文を読んでください」

花帆「……!? え、えーっと……」アセアセ

さやか「……7ページの前から5行目からですよ」コソッ

花帆「あ……えと、我が背子が袖返す夜の夢ならし ──」

27: 2024/03/02(土) 21:25:02 ID:OBvmFKLY00
────

花帆「さやかちゃん!! 授業中ありがとー!! ほんと、女神様だよー……!」

さやか「もう、授業はちゃんと聞くものですよ? 今回だけですからね」

花帆「いやー、ごめんね! 次から気をつけるから!」

さやか「分かれば良いんです」フフッ

28: 2024/03/02(土) 21:26:02 ID:OBvmFKLY00
瑠璃乃「さやかちゃん、花帆ちゃん! お昼一緒に食べよー!」ダッ

花帆「瑠璃乃ちゃん! もちろんだよ!」

さやか「あ、花帆さん、これ朝言っていたお弁当です。どうぞ」ササッ

瑠璃乃「あれ? 花帆ちゃん、それは……?」

花帆「へへー、良いでしょ! さやかちゃん手作りのお弁当! 作ってもらったんだ!」

さやか「心を込めて作りました」クスッ

瑠璃乃「おおっ、愛妻弁当じゃん!」

花帆(愛妻……何だかちょっと照れちゃうなぁ……///)

29: 2024/03/02(土) 21:27:02 ID:OBvmFKLY00
瑠璃乃「そういや、今日の古文の授業面白かったよねー! 昔の人って今と考え方違うとこあるんだって、ルリびっくりした」

さやか「ええ、今とは真逆の考え方でしたよね」

花帆「う……寝てたから分かんない……面白いなら聞いとけば良かったなぁ……」

瑠璃乃「どんとまいんどだよ、花帆ちゃん! めぐちゃんだって古典の時間は子守唄だって言ってたし!」グッ

さやか「それは……一度梢先輩にご指導いただいた方がいいのでは……?」

30: 2024/03/02(土) 21:28:02 ID:OBvmFKLY00
瑠璃乃「めぐちゃんが言うにはさ、古典教師は催眠魔法を使えるらしい」

さやか「ゲームじゃないんですし、そんなことはあり得ないと思いますが……」

花帆「あたしは慈センパイの言うこと、ちょっと分かるかも! 例えばさ──」


ガラガラガラ

クラスメイト「おーい、瑠璃乃ちゃーん! なんか、藤島先輩が用事あるって来てるよー?」

瑠璃乃「え、めぐちゃんが? おーけー! 今行くー!」

瑠璃乃「ごめんっ二人とも! ルリちょっと、めぐちゃんのとこ行ってくるから席外すね! 二人でお昼ごはん、ごゆっくりしてて!」ダッ

31: 2024/03/02(土) 21:29:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「丁度、慈センパイの話をしてるときに来るとは……」

さやか「噂をすれば、というやつですかね?」フフッ

花帆「そうかも! ……あ! この卵焼き美味しい!」パクッ

さやか「よく味わって食べてくださいね」ニコッ

花帆「はーい!」モグモグ

花帆(……あれ? 何か忘れてるような……)ウーン

32: 2024/03/02(土) 21:30:02 ID:OBvmFKLY00
────

ザーザー

花帆「わっ、雨! 天気予報どおりだ!」

花帆(雨……ってそういえば!)

花帆(授業中にあたし、夢を見てたじゃん! すっかり忘れてたよ……!)

花帆(今のあたしは予知能力が使えるからね。あたしが、授業中に見た夢も予知夢のはず……)

花帆(……あれ? ということは……さやかちゃんが雨に濡れちゃう!?)ガタッ

33: 2024/03/02(土) 21:31:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「さやかちゃ──あれ、いない!?」

瑠璃乃「さやかちゃんなら、先に帰っちゃったけど……どしたの?」ヒョコ

花帆「瑠璃乃ちゃん! 教えてくれてありがとう! あたし、行ってくるね!」ダッ

瑠璃乃「え!? あ、うん、よく分かんないけど、行ってら!」ビシッ

花帆(……今のあたしなら、さやかちゃんを助けられる!)

34: 2024/03/02(土) 21:32:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「はぁ、はぁ……!」ダッダッ

さやか「……」ボー

花帆「見つけた! さやかちゃんっ!!」ダッ

さやか「花帆さん!?」

花帆「ま、間に合って良かったー……さやかちゃん、傘ないのにそのまま帰る気だったでしょ!」ハァハァ

さやか「えっ……?」

花帆「あたし、さやかちゃんが濡れちゃうのは嫌だったから……ほら、あたしの傘入って! 一緒に帰ろ!」

35: 2024/03/02(土) 21:33:02 ID:OBvmFKLY00
さやか「……ありがとうございます、花帆さん。すみません、お恥ずかしながら傘を忘れてしまって……」

花帆「いいのいいの! あたし、さやかちゃんの為に何かしたかったし、最近色々してもらった分のお返し!」

花帆「さやかちゃんも、言いたいことがあったら遠慮しないで言ってね! あたし、力になる準備バッチリだから!」

さやか「花帆さん……そうですね、ちゃんとそのときは言葉にして伝えたいと思います」ニコッ

花帆「えへへ、それじゃ帰ろっか!」

36: 2024/03/02(土) 21:34:02 ID:OBvmFKLY00
ザーザー

花帆(さやかちゃんと二人、相合傘……改めて意識すると少し、恥ずかしいかも……///)

さやか「花帆さん、もっと近くに寄ってもいいですか?」

花帆「も、もちろんだよ! ほら!」ギュー

さやか「温かい……ありがとうございます」フフッ

花帆(さやかちゃんかわいいなぁ……やっぱり予知夢が見れて良かった)

花帆(ふふん♪ あたしの予知夢で、さやかちゃんの未来が見えて行動できたんだもんね、お手柄だよ!)フフン

37: 2024/03/02(土) 21:35:02 ID:OBvmFKLY00
花帆「……あれ、でも……おかしいな?」

さやか「花帆さん?」

花帆(……あたしはさやかちゃんが雨に濡れてしまう予知夢を見たから、今、傘を持って行ってさやかちゃんを濡らさないようにした)

花帆(でも、その場合だと、“さやかちゃんが雨に濡れる”という出来事は起こらなかったことになるわけで……)

花帆(未来予知は、成立しなくなる……!? つまり、あたしが見ていたのは未来じゃない……!?)

花帆(じゃあ、あたしが今まで、予知夢だと思っていたのは一体……?)

44: 2024/03/03(日) 21:00:02 ID:YzGslN7Q00
────

慈「あれ、食堂に花帆ちゃん? こんな遅い時間にどしたの?」

花帆「……慈センパイこそ、どうしているんですか」

花帆(何となく一人で考えたくて、夜食でも食べながらと思って食堂に来たけど……もうすでに、先客がいるなんて)

慈「お夜食食べるなら、一緒に食べない? 今なら、めぐちゃん特製TKGを作ってしんぜよう」フフン

花帆「それネギトロ丼のやつじゃ……いや、まあ食べますけど!」

45: 2024/03/03(日) 21:01:02 ID:YzGslN7Q00
慈「はい、どうぞ! めぐちゃんの愛情入りだぞ!」トンッ

花帆「いただきます……ん、美味しい!」

慈「でしょー! なんかお腹すいちゃって、お夜食食べよーって思って来たけど、花帆ちゃんと一緒に食べれるなんてラッキー!」

慈「もぐもぐ……んー、おいち♡」

47: 2024/03/03(日) 21:02:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(……あれから、色々考えてみたけど……結局、あたしが見てたのは何だったのか、答えはまだ分からなくて)

花帆「はぁ……」カニョーン

慈「ねぇねぇ、花帆ちゃん!」チョンチョン

48: 2024/03/03(日) 21:03:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「……何ですかー、慈センパイ」

花帆「花帆は今、とっーーっても複雑なことで悩んでるんです……慈センパイ、お話ならまた今度にしてください」

慈「まぁまぁ、そんなこと言わずに! 聞いてよー!」

慈「めぐちゃんさぁ、実は、正夢を見ちゃったの!」

花帆「正夢、ですか……!?!?」ガバッ

花帆(正夢……未来の出来事を夢に見ること……今のあたしと同じ……!)

49: 2024/03/03(日) 21:04:02 ID:YzGslN7Q00
慈「そうそう! どんなのか気にならない?」

花帆「き、気になります!!!」ガタッ

慈「うおっ、ぐいぐいくるね」

花帆(もし、本当なら……今の状況のヒントになるかも……!)

50: 2024/03/03(日) 21:05:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「それで……どんな夢だったんですか?」

慈「私が、るりちゃんのことを吸う夢」


花帆「……」

花帆「…………」

花帆「???」

花帆「……どういう意味ですか??」

51: 2024/03/03(日) 21:06:02 ID:YzGslN7Q00
慈「え、そのまんまの意味だけど」

花帆「それが分からないから、聞いてるんですよ!」

慈「伝わらない? えっとね」

慈「るりちゃんを後ろからギューっとして、そのまま息を深く吸うの」


花帆「……?」

53: 2024/03/03(日) 21:07:02 ID:YzGslN7Q00
慈「いやいやいや! そんな反応しなくても!」

花帆「いや、言ってる意味があんまり分かんなくて……楽しいんですか、それ?」

慈「超楽しいし、花帆ちゃんも絶対、良さが分かるって!」

慈「一回でもやってみなよ! マジで人生変わる、幸せになれるから!」

花帆「怪しい宗教勧誘みたいになってますよ……」

54: 2024/03/03(日) 21:08:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「……そんなに良いんですか?」チラッ

慈「そりゃもちろん! るりちゃんって、何かこう、ふわふわの綿菓子みたいな、甘い匂いがして」

慈「それを肺いっぱいに吸い込むと、脳が溶けて、もの凄い幸福感に包まれるんだよ……」ウットリ

花帆「へぇ……?」

慈「あ、信じてないなー、この良さを!」

慈「猫吸いってあるじゃん! あれと同じだよ!」

慈「大好きな子にはしたくなっちゃう、というか絶対するものなの!」

花帆「そう……なんですか?」

56: 2024/03/03(日) 21:09:02 ID:YzGslN7Q00
慈「まぁ、というわけで、そんな夢を見ちゃった私はね」

慈「目覚めたらお昼休みでさ、こうしちゃいけない! って思って」

花帆「目が覚めてお昼休みって……授業中に寝てるじゃないですか」

花帆(まあ、あたしも寝ちゃったし、人のこと言えないけど)

57: 2024/03/03(日) 21:10:02 ID:YzGslN7Q00
慈「それで、めぐちゃんは、るりちゃんのいる教室に即突撃!」

慈「そのまま、るりちゃんを借りて、吸わせてもらったってわけよ!」フフン

花帆「ああ、昼休みに教室来たのってそういう……」

花帆(じゃあ瑠璃乃ちゃん、昼休みに慈センパイに吸われてたんだ……)

58: 2024/03/03(日) 21:11:02 ID:YzGslN7Q00
慈「こうして、めぐちゃんは今日、正夢を見ることに成功したのだ!」ドヤッ

花帆「……なるほど、そうやって正夢を……」

花帆「……って、それって慈センパイが自分から、夢の出来事に合わせただけじゃないですかー! ……正夢としてはズルですよー」

花帆(自分でその通りに動いて、夢の内容を本当にしちゃうだなんて、そんな……)

花帆(………………あれ?)


花帆「そ……それだぁ!!!」ガタッ

慈「!? ど、どしたの花帆ちゃん?」

59: 2024/03/03(日) 21:12:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(あたし、自分から予知夢どおりになるよう、知らず知らずのうちに動いてたんだ……!)

花帆(ということはもしかして、あれは予知夢なんかじゃなくて……)

花帆(“こうなってほしい”っていう願望、だった……?)

60: 2024/03/03(日) 21:13:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(もし、そうなら……あたしは……!)

慈「……おーい、花帆ちゃん? 突然固まってどうしたの?」

花帆「──すみません、慈センパイ! あたし、帰りますね! 色々教えてくれて、ありがとうございました!!」ダッ

慈「え? あ、うん、バイバーイ……?」

慈「…………何だったんだろ?」

61: 2024/03/03(日) 21:14:02 ID:YzGslN7Q00
────

花帆「やっと……やっと分かった!」

花帆(いままで、夢に見てきたことは……)

花帆(あたしがずっと、さやかちゃんと一緒にやりたいって思ってたこと……!)

62: 2024/03/03(日) 21:15:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(さやかちゃんとのお泊まり会も、二人だけでやってみたいってずっと思ってたし)

花帆(間接キスも…………正直、ちょっと憧れてた節がある)

花帆(全部、あたしがさやかちゃんに対して抱いていた願望……!)

花帆(……あれ、ってことは……?)

──

さやか『…………』ザーザー

花帆『綺麗……』

──

花帆「あたし、雨に濡れたさやかちゃんを見てみたいと思ってたってことじゃん!?」

花帆「確かに妖艶さがあって綺麗だったけど……うぅ、なんて破廉恥な……///」

花帆(ええい、それはともかく!)

63: 2024/03/03(日) 21:16:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(……あたしが、さやかちゃんのことしか夢に見なかった理由も分かった)

花帆(あたし、さやかちゃんのこと……)

花帆(好き、だったんだ)

64: 2024/03/03(日) 21:17:02 ID:YzGslN7Q00
────

花帆(その日の夜、夢を見た)

花帆『さやかちゃん、大好きです! あたしと……』

花帆『付き合ってください!』



花帆「…………」ガバッ

花帆(これが……あたしの、気持ち)

花帆「──よし」

花帆(さやかちゃんに、伝えよう……!)

65: 2024/03/03(日) 21:18:02 ID:YzGslN7Q00
────

さやか「……ふぅ」

花帆「あ、いた! さやかちゃん!」ダッ

さやか「花帆さん! 丁度良かったです!」

さやか「二人きりで、伝えたいことがあるんですが……お時間よろしいですか?」

花帆「え? ……ああ、もちろん! 全然いいよ!」

花帆(……告白するのは、さやかちゃんのお話を聞いてからでも遅くないもんね!)

花帆(うぅ、緊張してきた……!)ドキドキ

66: 2024/03/03(日) 21:19:02 ID:YzGslN7Q00
────

さやか「……実を言うと、今からわたしが話すことは花帆さんに伝えるべきなのか、少し迷っていたんです」

花帆「え、そんな! 何でも言ってくれていいのに!」

さやか「ええ。伝えたいことがあったら遠慮しなくて良いと、花帆さんは言ってくれましたから」クスッ

さやか「だから……伝える勇気が持てました」

さやか「聞いて、くれますか?」

67: 2024/03/03(日) 21:20:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「うん! さやかちゃんの言うことなら、なんだって!」

花帆(これを聞いた後、あたしもさやかちゃんに一世一代の告白を……!)

さやか「花帆さん……」


さやか「──大好きです、よければ付き合ってください!」



花帆「……え」

花帆「え、えーーー!?!?!?」

68: 2024/03/03(日) 21:21:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(さやかちゃんがあたしに、今、告白をした……よね!?!?)

花帆「さやかちゃん、それって……?」

さやか「えと、その、つまり……」

さやか「わ、わたしは! 花帆さんのことが、初めて見たときから、ずっと大好きなんです!!」

花帆「そ、そうだったの!?」

69: 2024/03/03(日) 21:22:02 ID:YzGslN7Q00
さやか「気づいていませんでしたか? わたし、最近花帆さんに結構アピールをしていたんです」

さやか「ちょっと前、花帆さんが息を切らしていたときも、それに乗じて自分から、か、間接キスを仕掛けてしまいましたし……///」

さやか「花帆さんの部屋で、わざと時間をかけてマッサージをしたのも」

さやか「花帆さんと、二人きりで一緒に過ごしたかったからで……全部、花帆さんが大好きだからなんです」

71: 2024/03/03(日) 21:23:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(さやかちゃんが、ずっとあたしにアピールを……)

花帆「……あれ、じゃあ、傘を持ってなかったときも……?」

さやか「“弁当忘れても傘忘れるな”ですよ? あのとき、本当はカバンの中に折り畳み傘が入ってたんです」

さやか「でも……その、花帆さんと相合傘が出来そうだったので、つい嘘を……///」

72: 2024/03/03(日) 21:24:02 ID:YzGslN7Q00
花帆(つまり未来予知だと思ってたあの出来事たちは……)

花帆(あたし自身の知らず知らずの欲望による行動と)

花帆(さやかちゃんの猛烈なアピールが組み合わさった結果だったわけで……)

花帆「あたしも、さやかちゃんも、考えてることは同じだったってことかぁ……」

さやか「花帆さん……?」

花帆「えへへ……両思いだね、あたしたち!」ニコッ


さやか「え……そ、それって」

73: 2024/03/03(日) 21:25:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「さやかちゃん、あたしからも聞いてくれる?」


花帆「──さやかちゃん、大好きです! あたしと……」

花帆「付き合ってください!」



さやか「…………うぅ、はい……」ポロポロ

花帆「さやかちゃん!? 泣いてるの!?」

さやか「だって……花帆さんと両思いだなんて、信じられなくて……嬉しいです……」ポロポロ

花帆「さやかちゃん……うん、あたしも……」ギュー

74: 2024/03/03(日) 21:26:02 ID:YzGslN7Q00
────

花帆「……落ち着いた?」

さやか「はい……すみません、お見苦しい姿を……」

花帆「ううん。むしろ、さやかちゃんがそこまで、あたしのことを思ってくれてたのが凄く嬉しいの!」ギュー

さやか「いえ、こちらこそですよ。……その、花帆さんは本当にわたしを……? 一体どうして……?」

花帆「あたしが、さやかちゃんのことを好きな気持ちは本当だよ! ……この気持ちは、きっと最初からあったんだけどね」

花帆「自覚したのは、つい最近なの」

75: 2024/03/03(日) 21:27:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「あたし、最近さやかちゃんが夢によく出てきててね」

花帆「それであたし、さやかちゃんに対する気持ちに気づけたんだ。あたし、さやかちゃんのことが好きなんだ、って!」

さやか「夢に、わたしが……」

さやか「ふふ、それなら、古文の授業で言っていたお話みたいになりましたね」クスクス

花帆「……え、あたし、その授業寝てたから知らない……! 何それ!?」

さやか「いえ、何でもないです。後で調べてみたら、分かりますよ」フフッ

花帆「えー?」

76: 2024/03/03(日) 21:28:02 ID:YzGslN7Q00
さやか「その……改めてなんですが」

さやか「不束者ですが、これから……その、恋人として、よろしくお願いします」ペコリ

花帆「さやかちゃん……! あたしも、これからもよろしくね!  あたし、一生さやかちゃんと一緒にいるから!」ドンッ

さやか「ふふっ、末永くお付き合い、よろしくお願いします」クスッ

77: 2024/03/03(日) 21:29:02 ID:YzGslN7Q00
────

花帆「さーやかちゃん!」ギュッ

さやか「わわっ……何ですか花帆さん?」

花帆「えへへ……さやかちゃんの姿を見たら、何だか抱きつきたくなっちゃって……」

花帆「せっかく恋人になれたんだし、色々やってみたいなーって!」

さやか「恋人……改めて実感すると、照れちゃいますね……///」

78: 2024/03/03(日) 21:30:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「あ……そうだ!」

花帆「さやかちゃんさやかちゃん」チョンチョン

さやか「なんですかなんですか?」

花帆「ちょっと、さやかちゃんのこと……吸わせて!」ギュー

さやか「……え?」

79: 2024/03/03(日) 21:31:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「……」スゥー

さやか「え、え? 何してるんですか、花帆さんは!?」

花帆「…………なるほど!」

さやか「何がですか!?」

80: 2024/03/03(日) 21:32:02 ID:YzGslN7Q00
花帆「確かに吸うって癖になる……ハマっちゃいそう……」

さやか「吸うってなんですか!?」

花帆「えっとね……」

花帆「大好きな人には、絶対するもの、なんだって!」ニコッ

81: 2024/03/03(日) 21:33:02 ID:YzGslN7Q00
────

花帆(──結局、あの一連の夢は予知夢じゃなかった……けど)

花帆(その夢を見たのがきっかけで、さやかちゃんの恋人になる夢が叶った……なんて素敵なんだろう!)

花帆(あの夢は、未来は自分で掴み取れるっていうメッセージ……なんてね)フフッ

花帆「さやかちゃん、大好き! ずっと一緒にいようね!」ギュー

さやか「ええ。もちろんですよ、花帆さん」クスッ

花帆(これからも、さやかちゃんと一緒に素敵な未来を歩めますよーに!)


おしまい

82: 2024/03/03(日) 21:34:29 ID:Xc/yxswESd
さやかほ結婚式だ!

83: 2024/03/03(日) 21:40:45 ID:VRZuEJiY00
乙、さやかほ助かる

引用: 【SS】花帆「予知夢!?」