1: 2014/03/03(月) 03:23:39.07 ID:xE7lBLcW0
下記内容を予めご了承ください。
・アイドルマスターシンデレラガールズのSSです
・地の文有、一部過度な依存的な描写があります
・拙い文章力故に更新が遅くなるかもしれません
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
過去の作品
渋谷凛『不思議なお店?』
モバP「雨の日の過ごし方」
*直接的な繋がりはありませんが、予め上記2作品を読んでから本作品を読んで頂けると世界観が分かり易くなると思われます。
2: 2014/03/03(月) 03:27:50.68 ID:xE7lBLcW0
~side:白菊ほたる~
私がいると周りの人が不幸になるんです。
小さい頃からそうでした。
物が落ちてきたり、怪我をしたり、私がその場所にいるだけで、皆不幸になってしまうんです。
そんな私は一体何が欲しかったのでしょうか?
周りに不幸をまき散らす私でも誰かを笑顔にしたい。
そう思って、アイドルになりました。
でも、何故、アイドルだったのでしょうか?
それが時々分からなくなってしまうのです。
3: 2014/03/03(月) 03:28:40.21 ID:xE7lBLcW0
そんな私には少し歳の離れた兄がいます。
私の兄はとても不器用な人です。
とても不器用で、いつも少し寂しそうに笑います。
それが兄の癖なのです。
「大丈夫」
私が自分の不幸体質の訴えた時、兄はそのことを否定したりはしません。
きっと、私は私が不幸体質ではないと言われても、それを信じることができないからでしょう。
いつも言葉少なく、問題は無いと伝えて、私の髪をクシャクシャと撫でるのです。
4: 2014/03/03(月) 03:29:27.93 ID:xE7lBLcW0
ある日、私が所属していたプロダクションが潰れてしまいました。
目の前が真っ暗になって、私が所属していたからだろうかと思い、消えてしまいたくなりました。
夏の日の蛍のように、一瞬だけ輝いて、消えてしまいたい。
本当に一瞬だけ、綺麗って思われて、誰かを笑顔にして消えてしまいたい。
あの頃、私は本当に心の底からそう思っていました。
でも、それでも、私の兄は言うのです。
「こらこら、それはダメだろう」
なんで。私がいると周りを不幸にしてしまうのに。
なんでっ!?
「確かにほたるの回りでは色々起こるけど」
「それでも、ほたるは僕の妹だから、幸せになって欲しいよ」
違うんです。兄さん違うんです。私が欲しいのはその言葉じゃないんです。
嘘です。そう言ってくれるだけでも嬉しいです。でも、家族まで不幸にしたくないんです。
5: 2014/03/03(月) 03:30:13.83 ID:xE7lBLcW0
こんな私は消えてしまえばいいのに。
でも、そんなの嫌なんです。
私はどうすればいいのでしょうか?誤って、謝ってばかりの私はどうすればいいのでしょうか?
「じゃあ、こうしよう」
いつもの少し寂しげな笑みを浮かべて兄は言いました。
「1か月間、ほたるが何かある度に『ごめんなさい』って言わない」
「もし、その約束を守れたら。ほたるに幸せになるチャンスをあげる」
指切りをしました。そんなことをしたのは久しぶりでした。
6: 2014/03/03(月) 03:30:46.53 ID:xE7lBLcW0
1か月後、私の兄はアイドルプロダクションの『プロデューサー』になりました。
「ほたるをスカウトしたいんだけど、いいかな?」
私は子供です。子供ですけど、就職することがとても大変で、人生で重いことは知っています。
私のために兄の人生を台無しにしてしまった。
どうして、そんなことを。
こんなことして欲しいなんて言ってない。
言いたいことはいっぱいありました。思ったことはたくさんありました。
でも、私はそんな兄の優しさに甘えてしまいました。
兄さんがプロデューサーで、私が担当アイドル。
私はまたステージに立ちました。
7: 2014/03/03(月) 03:31:34.85 ID:xE7lBLcW0
もちろん、私の不幸体質は変わりません。
それでも、兄は根気強く私のことを守ってくれました。
いつも一緒に居てくれました。
同じ事務所にアイドルが増え、友人も増えました。
今度の事務所は潰れたりしてません。
私のファンになってくださる方も徐々に増えました。
初めて私の歌を収録したCDが店頭に並びました。
私を想ってくれる兄が、家族がいる。それだけで私は十分に幸せなのです。
だから、誰よりも優しい私の兄が、私以外のダレカに私が見たことの無い笑顔を見せていても、私は十分に満たされているのです。
なので、別に妬ましくなんて無いです。
本当ですよ。
8: 2014/03/03(月) 03:33:13.13 ID:xE7lBLcW0
~side:北条加蓮~
「別にこんな風に生まれたくて、生まれたわけじゃない」
誰かが言ってた言葉だけど、結構、私にも当てはまっているような気がする。
誰が望んでこんな不自由な体で、生まれてくるものか。
誰がこんな程度の才能で生まれてきたかったなんて思えるものか。
足りない、足りない、欲しがってばかり、どうしようもないね。
だって、なぁーんにも変わらないもん。
才能には努力だけじゃ勝てない。神様はいつだって、不公平。
何歳まで、生きれるの?さぁ、普通の人よりも短いけど、貧しい国の子供よりは長い。
んで、その程度の長さの人生で、私はどうするの?ねえ、どうするの?
もう、どうだっていいや
9: 2014/03/03(月) 03:33:59.71 ID:xE7lBLcW0
同情って、結局は上から目線だし、お見舞いも、もういいよ。
同情するならその体をくださいってね。
「はいはい、そんな泣きそうな顔で言われても説得力ゼロですよ」
私の歳の離れた従弟は、いっつも、私が愚痴るとこう言う。
そんなに泣きそうな顔してるかな?
「してるって、泣きそうな顔してるよ」
へぇー、そうなんだ。んで、私はどうすればいいの?
「さあ?」
まあ、それもそう。普通、そう言うよね。無責任なこと言われるよりマシだけど。
もうどうでもいいんだけどね。
「本当にもうどうでもいいの?」
うん。別に何かが変わるわけじゃないからね。
「じゃあ、加蓮ちゃんに暴行するけどいい?」
はぁ?何言っているのこの人?頭沸いてるの?キモッ!
10: 2014/03/03(月) 03:34:44.29 ID:xE7lBLcW0
「別にどうでもいいんでしょ?」
いや、まあ、そうだけど。
「じゃあ、別にいいんじゃない?」
いやいや、良くないよ。全然良くないよ。
確かにどうでもいいって言ったけど、さすがにそれは嫌だ。
「じゃあ、アイドルやってみる?」
アイドルってテレビに出てるアイドル?ほたるちゃんがやってるアイドル?
憧れとか、興味が無いといえば嘘になるけど。
「また、ほたるがいた事務所が潰れてね」
確か前も同じ話があったようななかったような。2回目だっけ?
「そうだね。こういう業界だから中小企業は3年以上継続するのは難しいらしいよ」
それ分かってて、就職したの?ちょっと、大丈夫?
「心配してくれるんだ?」
それは、まあ、従弟だし、よくお見舞い来てくれるし。
「そう、ありがとう」
心配してくれてるのは分かってるし。
11: 2014/03/03(月) 03:35:40.63 ID:xE7lBLcW0
「北条加蓮さん。あなたをアイドルとしてスカウトさせてください」
私が体力に自信が無いこと分かって言ってる?あんまり運動できないって分かってる?
「もちろん」
じゃあ、よろしくお願いします。プロデューサー。
そして、私はアイドルになった。病弱少女の成功劇場。
本当にどうなってもいいと思っていた。
この先、希望なんて無いと思っていた。
でも、私の体は完治ではないけど、普通の人以上に動けるようになっていて。
感謝している。この恩は絶対に返したいと思っている。
努力して、プロデューサーの一番になりたいと思う。
でも、まあ、兄妹だし、ほたるちゃんが最優先なのはしょうがないよね。
私は2番目。それでいいよ。それで満足。うん、大丈夫。
だからさ、いつまでも、そのヒトのこと見てないで、ちゃんとコッチ見てよ。
12: 2014/03/03(月) 03:36:50.02 ID:xE7lBLcW0
~side:服部瞳子~
私と白菊君の関係?高校2年生と3年生の時のクラスメートよ。
仲が良かったかと言われると、別にそうでもなかったわ。
ただ、私が一方的にお世話になっていた形ね。主に勉強関連で。
いつとは言わないけど、一時期アイドルデビューしていたことがあってね。
出席できる日数も限られていたから、たまに白菊君にノートを借りていたの。
席が近かったのと、私がアイドル活動をしていることで変な質問とかしない人だったから。
本人には申し訳ないけど、色々と都合がよかったのよ。
まあ、知っているとは思うけど、私の初デビューは失敗。
13: 2014/03/03(月) 03:38:49.45 ID:xE7lBLcW0
芸能界を諦めて、専門職を目指そうと考えている頃に白菊君から連絡があってね。
妹さんがアイドルとして活動し始めたから、業界の話を聞かせて欲しいって。
せっかくだから、直接その妹さんとあってみようと思ったのが再開のきっかけ。
ほたるちゃんの第一印象?
「気が弱すぎる」かしら
芸能業界は世間が認識している以上に複雑な利害関係が絡んでいるから、どうしても人の汚い部分が際立ってしまう。
その世界は、ほたるちゃんでは到底無理だと正直思ったわ。
ええ、厳しい言い方かもしれないけど、身内は皆ライバルくらいの気の強さは必要ね。
それにほたるちゃんが所属していた事務所もあまり良くなかった。
アイドルの移籍が相次いでいたから、資金繰りがよくなかったのでしょうね。
そこは白菊君も気が付いてた。だから、私に話を聞きに来たんでしょうけど。
当初の懸念通り、その事務所はほたるちゃんが所属してから半年で倒産。
事前に予測していたから、私の紹介で別の事務所に移籍する形になった。
白菊君とはその頃、よく話していたわ。主にほたるちゃん関係で。
シスコン?そうね、シスコンね。それも重度の。
14: 2014/03/03(月) 03:39:54.40 ID:xE7lBLcW0
後はご存じの通り。また、ほたるちゃんが所属していた事務所が倒産。
原因は社長による事務所の資金の不適切な運営。本業以外にも投資していたみたいね。
その後、二人で話し合って、白菊君はプロデューサーになる決意を固めた。
私?正直言うと必要以上に関わるつもりはなかったわ。
自分の生活もあるし、年齢を考えれば就職にも限界があるから。
トレーナーをやって欲しいって言われたけど、最初は断ったわ。
それから、3ヵ月間くらいある企業の事務員をやったわ。
お給料は安定していたし、残業も少なめ。真面目で独身の男性も多かったし、このまま身を固めるのもいいかもって思ってた。
優しいこの場所で、ゆっくり過ごすのもありかなって。
でもね、なんでかしら、それだけじゃ悔しいって、まだ足りないって思ってしまったの。
本当になんでかしらね。別にあのままなら生活に困ることはなかったのに。
15: 2014/03/03(月) 03:40:31.46 ID:xE7lBLcW0
ほたるちゃんに触発された?ああ、そうかも。
しばらく、白菊君のところでトレーナーをやっていたら、再デビューの話が来た。
ええ、白菊君が裏で色々と動いていたみたい。本人曰く、
「不完全燃焼だと勿体無いから」
まあ、今は女優してそこそこの知名度で頑張っているわ。
今度はもうやり切ったと思えるとこまでやり切るつもり、
だから、最後までよろしく。
あっ、嘘は許さないから
16: 2014/03/03(月) 03:41:26.14 ID:xE7lBLcW0
~side:鷹富士茄子~
私、とっても運がいいんです。
くじ引きでは外れを引いたことが無く、何かしら運は私の味方をしてくれました。
幸運の才女と呼んでくださる方もいます。でも、白菊先輩はそんな私が好きではないそうです。
私にとって初めての経験だったので、凄く嬉しかったんです。
小さい頃から運が良かった私は、時々、ちょっとした『お仕事』をお願いされていました。
神社のお手伝いだったり、病院に行ったりしてお話をするだけ。
それだけで、たくさんの人が喜んでくれる。私はそれが凄く嬉しかった。
「茄子ちゃんがいれば大丈夫」
皆、そう言ってくれる。
茄子ちゃんはそこに居てくれればいいって。
茄子ちゃんは優しい、茄子ちゃんは可愛い、茄子ちゃんはいい子、茄子ちゃんは…
17: 2014/03/03(月) 03:42:41.08 ID:xE7lBLcW0
ある日、友人が包帯だらけの人を指差して言いました。
「ねえ、茄子、知ってる?また、あの人事故に巻き込まれたんだって」
友人から噂は聞いてました『運の悪い』白菊先輩。
運が悪いことでとても有名な先輩。話したことは無いけど、頻繁に絆創膏とか、包帯とか巻いている人で、目立つ人でした。
でも、先輩は一度も私の所に来ませんでした。幸運を分けて欲しいとか言いに来たことはありませんでした。
何を思ったのか、ある日、私は白菊先輩に会いに行きました。
「白菊先輩は運が良くなりたいとは思いませんか?」
「思うけど、別に今はいいや」
物凄くあっさり断られました。
「だって、鷹富士さんは色々大変そうだし。運が悪いのも強みだから」
運が悪いと言い訳できるからねと白菊先輩は苦笑いで応えました。
「それにさぁ、頑張っても、運の良し悪しで何でも決められたら嫌じゃん」
18: 2014/03/03(月) 03:43:27.71 ID:xE7lBLcW0
幼い頃から、ずっと言われてきました。
茄子ちゃんは運がいいから。
茄子ちゃんは運がいいから。
茄子ちゃんは運がいいから。
茄子ちゃんは運がいいから。
茄子ちゃんは運がいいから。
頑張っても、頑張ってもその一言で片づけられてしまう。それが当時の私はとても悲しかったのです。
凄く切なくて、寂しかったのです。
でも、この人なら、私を運と関係なく、ありのままのちょっと抜けた私を見てくれる。
そんな淡い希望を抱いたのです。
欲しいものは何かしらの形で手にすることができました。
19: 2014/03/03(月) 03:44:43.08 ID:xE7lBLcW0
でも、ずっと、欲しいと思っていたものは、まだ中途半端に
ほたるちゃん。ほたるちゃん。
ほたるちゃんは強い子。
どんなに運が悪くて、どんな逆境でも言い訳しない。
自分ができないことを決して自分の不幸体質を理由にしない。
ほたるちゃん。ほたるちゃん。
蛍よりもずっと、眩しくて強い子。
私の運を全部挙げますから、ほたるちゃんが一身に受けているその愛を私にくださいな。
ほー、ほー、ほーたる恋♪
20: 2014/03/03(月) 03:48:24.68 ID:xE7lBLcW0
嘘吐きには何も残らない。
嘘を付いてしまったら、それを本当にするか、隠すために嘘を付き続けなければならない。
嘘をついてしまった記憶は中々薄れない。
特に自分についてしまった嘘は。
さぁーて、嘘吐きはだぁーれだ
21: 2014/03/03(月) 03:50:26.91 ID:xE7lBLcW0
『不』シリーズ第二作目
北条加蓮 『不幸な兄妹?』
~序章 終~
22: 2014/03/03(月) 03:54:06.10 ID:xE7lBLcW0
本日の更新は以上となります。
過去の作品とは異なり、本作品は地の文有という形となっています。
相変わらずも拙い作品ですが、お付き合いいただけると幸いです。
23: 2014/03/03(月) 04:15:44.92 ID:kG4xQ5l2o
おつおつ
ほたるメインはあまり見ないから期待
ほたるメインはあまり見ないから期待
24: 2014/03/03(月) 06:06:19.27 ID:dxlUjb4jo
おおう、これはおもしろそうだなぁ
かなり気が早いけど「不」シリーズとして続いて欲しいわww
かなり気が早いけど「不」シリーズとして続いて欲しいわww
引用: 北条加蓮 『不幸な兄妹?』
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