28: 2014/03/16(日) 02:01:39.19 ID:ekKQ3G980

投稿が遅くなり申し訳ございません。

纏まり次第 第一話「日常」を投稿します。

尚、本作品は前作同様に5~7話構成となっております。

最初から:北条加蓮『不幸な兄妹?』
前回:【モバマス】北条加蓮『不幸な兄妹?』序章

アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(12) アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場 (電撃コミックスEX)

30: 2014/03/16(日) 02:56:19.13 ID:ekKQ3G980


~side:プロデューサー~


「今日いいことがありました♪」


事務所でスケジュール調整を行っていると唐突に鷹富士さんが話し掛けてきた。

「今日、ほたるちゃんとお買い物をしていたら『お姉ちゃん』と一緒って言われちゃいました」

確かに似てなくもないかもしれない。鷹富士さんは何かと妹の面倒を見てくれているのでいつもお世話になっている。

「ほたるちゃんにお姉ちゃんって呼んで欲しいって頼んでるのに、中々呼んでくれないんですよ」

困りましたという鷹富士さんにただ恥ずかしいだけだと思うと告げると非常に残念そうな表情になった。

「加蓮ちゃんのことは加蓮お姉ちゃんって呼んでるのにぃ」

従妹なら特段珍しい話でもないと思うが。頬を膨らませて怒ることでもあるまい。

「ズルいです」

確かに加蓮ちゃんとほたるは昔から仲は良い方だったと思う。

「服部さんと私はさん付けなのに、加蓮ちゃんだけちゃん付けなのはズルいです」

ほたるは呼び捨てなのだが。


31: 2014/03/16(日) 02:57:57.35 ID:ekKQ3G980



「私も早くほたるちゃんのお姉ちゃんにならないと茄子ちゃんって呼んでもらえませんね」

別にほたるの姉になる必要性は必ずしもないと思うが。

「いーえ、ほたるちゃんみたいに可愛い子はみーんな大好きなんです♪」

「早くお姉ちゃんって呼ばれたい♪」

まあ、確かにほたるも姉がいた方があれ程ネガティブにならずに済んだかもしれない。


「ほたるちゃんに『お姉ちゃん』はレッスンに行ってきますって言っておいてくださいね♪」


ヒラリヒラリと手を振って鷹富士さんは事務所を出て行った。

ほたるちゃんのお姉ちゃんか。少し考えてみるべきなのかもしれない。


32: 2014/03/16(日) 03:01:07.59 ID:ekKQ3G980


「担当アイドルはダメよ」

言われなくても分かってますといつの間にか後ろにいた服部さんに返した。

「高校の頃からシスコンは変わらないのね」

家族を大事に思うことは悪いことじゃないと思う。

「もちろん。それがあなたの良い所。家庭を持ったらきっといいお父さんになれるわ」

確かに自分の家庭はちゃんと欲しいと思う。

「で、この写真は何かしら?うちのスポンサーの社長秘書だったと思うけど」

そう言って、服部さんは僕の机から書類と『和久井留美』さんの写真を取上げた。

「確か、他のプロデューサーもこの人の写真を持っていた気がするけど、アイドル候補かしら?」

そうだったらまだよかった。あまり楽しい話じゃない。

「スポンサー企業の社長の愛人か何かが邪魔だって言ったんでしょ?代わりに秘書やらせろとか?」

正解。社長経由で知ったのだろうか。



33: 2014/03/16(日) 03:03:45.18 ID:ekKQ3G980


「そんなとこ。優秀な人材はどこも欲しい。特に人手不足のうちの事務所は」

また正解。この業界については、服部さんの方が遥かに詳しい。

「スポンサーとしては表向き円満退社にしたい。女性の場合、結婚して辞めることは別に不自然ではない」

その通り、結婚して職場を離れるというのはよくある離職理由だ。

「ぜひ、総務としてうちに欲しいと思った社長はお見合いか何かを企画して、引き込もうとしているそんなとこかしら?」

実は全部知っているのではないだろうか。

「あ、それ社長が手軽な独身男性に声を掛けてるみたいだけど、もうすぐ撤回されるから」

何故、和久井さんとは何度か仕事をさせてもらったことがあるが、うちに欲しい人材であることに間違いない。

「総選挙の上位者が社長室に怒鳴り込みに行ったわ。社長もさすがにお手上げね」

ああ、佐久間さんだろうか。彼女ならそういうことをするかもしれない。

「まったく。誰が変な入れ知恵したのかしら」

と楽しげに服部さんは笑った。

「うちの事務所の情報管理を一度見直した方がいいのかもしれないわね」

社長の考えてることがバレバレなのも問題ではある。風通しが良けれはいいわけではない。




34: 2014/03/16(日) 03:07:30.80 ID:ekKQ3G980


「和久井留美、25歳。ちょうど、私と同じね」

一応社長から貰った書類だったのだが、服部さんにシュレッダーされてしまった。

「私がいるから別にいらないでしょ」

服部さんは一通りの事務がこなせるので確かに僕は他のプロデューサーと比較して余裕がある方だ。

「元事務員の経験がこんな形で役に立つなんてね」

アイドルに事務やらせるなって社長にこの前指摘されたことは言わない方がいいだろう。

「あ、それも解消したわよ」

考えていることが顔に出ていたらしくすぐに指摘された。

「私は自分の引退後のことも考えているって言ったら納得してくれたわ」

まだ担当して1年程度で引退と言われても困るのだが。



35: 2014/03/16(日) 03:14:56.60 ID:ekKQ3G980


「安心して、別にどこかに行くわけじゃないから」

それならいいのだろうか。

「再デビューの時、ちゃんと最後まで見ててくれるって約束でしょ?」

無論その約束は守るつもりだ。

「ならいいわ。何でも言うけど、私は嘘を許さないから」

担当になった時に度々聞かされた。服部さんは約束を破ることを何よりも嫌う。

「あと、今度の同窓会の参加はどうする?」

仕事のスケジュールを見て決めると応えると、服部さんは珍しくすねた表情を見せた。

「女優も悪くないのよ。ただ、結婚したヒト増えたでしょ。行き辛いのよ」

男性には分からないが、女性にはそういうこともあるのかもしれない。



36: 2014/03/16(日) 03:27:25.18 ID:ekKQ3G980


「同窓会の代わりに飲みに行かない?」

最近、服部さんには助けて貰ってばかりだったので、ちょうどいい機会だ。おごらせてもらおう。

「なら、お店は私が決めるわ」

正直その方が助かる。

「そう、約束よ。一緒に飲みましょう」

スケジュール調整が出来たらまた連絡すると告げると揚々と服部さんが離れていった。

社長室の方が何やら騒がしかったが、関わらないことにした。

和久井さんは残念だが、他の担当に頑張ってもらおう。


37: 2014/03/16(日) 03:49:06.18 ID:ekKQ3G980


「兄さん」

ほたるの声が後ろから聞こえたので、ふと振り返ると髪を編んだほたるが立っていた。

「どう?自信作なんだけど」

加蓮ちゃんがやってくれたのだろう。普段からファッションに気を使っている彼女らしく、丁重に編まれている。

加蓮ちゃんも同じ髪型にしたのか二人ともよく似合っている。

「ね、ほたるちゃん言ったでしょ」

「はい」

加蓮ちゃんが後ろからほたるを抱きしめ頬擦りした。

「もう、ホント、カワイイなぁ。お姉ちゃんは妹がこんなに可愛いと辛いよ」

「くすぐったいです」

本当の姉妹のような二人を見て仕事の疲れが少し和らいだ。

「今日はこのまま撮影行こうね♪」

そろそろ時間なので、車を用意するべきかと立ち上がった際に加蓮ちゃんはこう言った。

「今も、昔も、ずっと私はほたるちゃんのお姉ちゃんだからね」

本当にこれからもそうあって欲しいと思う。



46: 2014/03/16(日) 22:38:23.98 ID:RsM3c0/00

~side:服部瞳子~


二人で飲むのは久しぶりね。

皆は今頃、同窓会かしら。

悪いわね、無理矢理。

どうしても、今日は飲みたかったの。

今日はね、私の初デビュー記念日よ。

私の原点。

初めて芸能界にデビューした日。

別に謝らなくていいって、私が言ってなかっただけ。

二回目にデビューして初めて迎えた、初デビュー記念日。

だから、なんとなく二人で飲みたかったの。


47: 2014/03/16(日) 22:39:41.97 ID:RsM3c0/00


私ね、普通に歩いていてスカウトされたの。

その時のプロデューサーがね、私をスカウトした際にこう言ったの。

「君を必ずトップアイドルにして見せるって」

トップアイドルになれるか、なれないかは、本人の実力、プロデューサーの手腕とか次第だから、最初失敗したのは私の自業自得。

ただね、一つだけ許せなかったことがあるの。

私をスカウトしてくれたプロデューサーが途中で担当を変わったこと。

会社の方針もあったんだろうって?

ええ、そうね。そうかもしれないわね。

でもね、当時は、少なくとも私が知っている限りは違ったの。


48: 2014/03/16(日) 22:43:25.96 ID:RsM3c0/00

私の最初のプロデューサーはね、

別の子の担当になるために私の担当を降りたの。

本当に唐突に、十分な説明もないまま。

アイドルとして輝けなかったのは、私の責任。

他の誰でもない私自身の実力不足。

でもね、最後まで見てて欲しかった。

私が頑張って、手が届かなくても最後まで見て欲しかったの。

今までの私はなんだったんだろうって。

たくさんの優しい言葉も、アドバイスも、全部なんだったんだろうって。

嘘?それともその時は本当にそう思ってた?

ねえ、どう思う?

そう、分からない?ええ、そうね。私も分からないわ。

ただね。嬉しかったの。何にも無かった私に頑張る理由をくれたのが。

嬉しかったのよ。

認めて欲しかった。愛されたかった。必要として欲しかった。

あの人の役に立ちたかった。


49: 2014/03/16(日) 22:45:06.80 ID:RsM3c0/00

まあ、結果はご存じの通りだけど。

でもね、またこうしてこの場所に戻ってこれた。

だからね、白菊君。私にもう一回チャンスを与えた以上はちゃんと最後まで見ていて。

私がどうなるか、最後まで見ていて頂戴。

ほたるちゃんの参考になるか、分からないけど。

何度も言うけど、約束よ。

絶対に、絶対に約束よ。

もう嘘は嫌なの。

嘘だらけの世界にいるのに、嘘が許せない。

絶対って思える約束に縋りたくなる。

こんなんだから駄目なのかもしれない。


50: 2014/03/16(日) 22:48:23.09 ID:RsM3c0/00

あー、呑み過ぎたわ。

でも、今日は飲む。

予め、謝っておく。ごめん、白菊君。私今日、荒れるから。

ほたるちゃんを加蓮ちゃんの家に預けてきたから大丈夫?

そう、なら飲むわね。

パパラッチ対策だけお願いね。

ええ、ごめんね。これも仕事だと思って。


プロデューサーのバーカ。私の青春と初恋返せ


最後まで見ててくれるって約束したのに。


なんで、駄目だったの


ねえ、どうして?


51: 2014/03/16(日) 22:49:45.04 ID:RsM3c0/00

ごめんね。白菊君。こんなトラウマ持ちでごめんね。

ねえ、白菊君。お願いがあるの。無理だったら別にいいから。

もう、こんな歳だけど、ライブバトルに挑戦してみたいの。

一回だけ、もう一回だけ。

相手はね、XXXXXのXXXXXでお願い。

なーんだ、知ってたの?私の元プロデューサーのこと。

担当になる時に社長から聞いた?なら、しょうがないか。

うふふふ、え?大丈夫よ。

大丈夫、私はダイジョウブ。

泣いてる?あら、嫌だ。本当だ。

ううん。ライブバトルはやりたいの。自分なりのけじめをつけたいから。

うん。ごめん。ごめんね。私、お酒が入ると駄目なの。

うん、大丈夫。今日だけだから。

今日だけ甘えさせて。


52: 2014/03/16(日) 22:55:56.71 ID:RsM3c0/00

うん、お水ちょうだい。

うん、ありがとう。

白菊君。ありがとうね。

いつも、ありがとう。

あのさ、その笑い方止めた方がいいわよ。

凄く寂しそうに見えるから。

ああ、ごめん。私まだ泣いてた?

だから、そんな顔してるの?

私が泣いてるから?

そう、あのね。

白菊君は重いわ。正直、凄く重い。


53: 2014/03/16(日) 23:01:06.41 ID:RsM3c0/00


優しくて重い。あの人とは正反対。

重い想いってね。ねえ、どうして、そこまでほたるちゃんのためにできるの?

あなたなら大手企業に就職して、安定した生活を送れたはずよ。

能力的にも標準以上、性格は堅実。

それこそ、この前の和久井さんとお見合い結婚とかできたはず。

ねえ、どうして?

インセストとか、異常な性癖でも持ってるの?

ねえ、どうして?




だって、白菊君はXXXXを理解できないのでしょう?




なのにソレを知りたいと切実に願っている

ああ、その顔良いわね。凄くいい。

私ね、人を分析するのが得意なの。

あながち、この自己評価は間違いじゃなかったみたいね。



54: 2014/03/16(日) 23:23:57.60 ID:RsM3c0/00


約束をしましょう白菊君。

私はもう一度、この舞台で全力を尽くす。

最後まで白菊君は一緒に私とその道を歩く。

その代わりに私が一緒に探してあげるわ。

白菊君が欲しくて、ずっと探していて、ほたるちゃんに見出そうとしているモノを

私なら見つけてあげられる。ソレがあれば、教えてあげられる。

今ね、私がここにいるのは白菊君のおかげ。本当に感謝してる。

だから、約束しましょう。

二人だけの破らない約束。


白菊君は最後まで私と一緒にいる。

その代わりに、私が見つけてあげる。そうすれば、もう、そんなに寂しそうな顔しなくていいわ。

ね、約束よ。白菊君。

破らないでね。嘘はダメよ。




55: 2014/03/16(日) 23:26:45.01 ID:RsM3c0/00


~幕間① 服部瞳子 『トラウマと嘘』~


は以上となります。お目汚し失礼致しました。
  

57: 2014/03/16(日) 23:34:21.30 ID:RsM3c0/00

本作品構成は以下の通りです。

序章
第一話『日常』

幕間① 服部瞳子 『トラウマと嘘』

第二話『仕事』

幕間② 北条加蓮 『不器用』

第三話『新人』

幕間③ 鷹富士茄子『言い訳』

第四話『発覚』

幕間④ 白菊ほたる『シアワセ』

第五話『異常性癖』

幕間⑤ プロデューサー『嘘吐き』

最終話 『不幸な兄妹』

なるべく早く投稿したいと思いますので引続きよろしくお願い致します。


58: 2014/03/16(日) 23:36:09.50 ID:X9KMWSfMo
激しく期待してる

60: 2014/03/17(月) 01:11:27.55 ID:EF3UOC1FO


引用: 北条加蓮 『不幸な兄妹?』