611: 2015/04/09(木) 17:01:58.61 ID:X169V24Z0


最初から:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」

前回:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」第五話


東京 大本営

提督「着いたか・・・」

鈴谷「へぇー ここが・・・」

提督「大本営だよ」

鈴谷「やたら大きな建物だねぇ」

提督A「おお! 提督! 久しぶりだな。秘書の娘は、はじめまして」

提督A秘書「・・・」ペコリ

提督「お久しぶりです」

鈴谷「はじめまして」

提督A「確か舞鶴だったか? 遠い所、ご苦労さん」

提督「ありがとうございます」

提督A「まだ時間があるから皆、交流を深めてるよ」ホラ

提督「普段は中々会えないですからね・・・」
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録 (カドカワデジタルコミックス)
612: 2015/04/09(木) 17:02:24.40 ID:X169V24Z0
提督B「私はね、吹雪が最高だと思うんだよ」

提督C「吹雪ですか?」

提督B「吹雪がね、夢の中で私のお嫁さんになって出てきたんだ。そこで思ったんだ!この娘だ!って」

提督C「・・・へぇ・・・それは良かったですね」

提督C(何を言ってるんだろう・・・この人)

提督B「吹雪を育てて結婚するのが目標かな!」

提督C「が・・・頑張ってください」

提督B「そうしたいんだけど鎮守府が敵に襲われて壊滅してね! 参ったよ!」アハハハ

提督C「壊滅!? 大丈夫だったんですか!?」

提督B「皆無事さ。ちょうど私は大型建造を回してる最中でねぇ・・・」

提督C「はぁ・・・そうなんですか」

提督B「そうそう、大鳳が出たんだ!」

提督C「おめでとうございます。 しかしそんな状態で鎮守府の方はよろしいので?」

提督B「ウチは秘書の長門がしっかりしてるから大丈夫さ」

提督B「たまに私、いらなくね?って思うくらいにね」

提督C「ときに提督B殿」

提督B「なんだい提督C殿」

提督C「ハーブとかやってらっしゃいますか? ダメな方の」

提督B「いや、最近はやってないね」

613: 2015/04/09(木) 17:02:51.34 ID:X169V24Z0
鈴谷「色々な提督が居るんだねぇ 知らない人ばっかり」

提督「そりゃ艦娘が他所の提督の顔を見る機会なんてあまりないしな」

鈴谷「連れている秘書艦の艦種もバラバラだねぇ」

提督A秘書「・・・ユニーク」ボソッ

提督A「私は別の提督にも挨拶したいので失礼するよ。また後で」

提督A秘書「・・・」ペコリ

提督「ええ、また後ほど」

鈴谷「しかし・・・提督Aさんの秘書艦、大人しい人だったね」

提督「そうだな・・・」

鈴谷「とても長門型とは思えなかった」

提督「ウチの長門とは性格が違ってたな・・・」

614: 2015/04/09(木) 17:03:22.44 ID:X169V24Z0
???「よぉ!! 糞後輩!!」ドンッ

提督「おっ・・・と・・」ヨロッ

鈴谷「提督、大丈夫?」

提督「・・・先輩?」

鈴谷「・・・あっ」

夜曾野(よその)提督「あれ? 鈴谷? あの鈴谷?」

提督「・・・お久しぶりです。あの時の鈴谷ですよ」

鈴谷「ひさしぶりー」

夜曾野「おう、久しぶりだな! 元気そうで良かった」

鈴谷「今じゃ元気だけが取り得だからね!!」フンスッ

五月雨「提督・・・あんまり一人で行動しないでくださいよぉ・・・」ボロッ

夜曾野「ああ悪ぃ。これウチの秘書」

五月雨「はじめまして。秘書をやっております」

鈴谷「こんにちはー」

提督「はじめまして・・・」

提督(なんでこんなにボロボロなんだろう)

鈴谷「所でなんでそんなボロボロなの?」

五月雨「ウチの提督を探す途中色々ありまして・・・」

提督「・・・色々?」

615: 2015/04/09(木) 17:04:04.95 ID:X169V24Z0
五月雨「道に迷って、慌てて引き返したら転んで・・・」

鈴谷「転んだだけで、そんなにボロボロになるんだ・・・」

五月雨「他にも看板を見てなくて工事中のマンホールに落ちたり・・・バナナの皮ですべって歩道橋から落ちて・・・」

五月雨「落ちた先がトラックの荷台で隣の町まで行っちゃうし・・・もう大変でしたよ」

鈴谷「それは・・・災難でした」

鈴谷(だから頭にバナナの皮が乗ってるんだ・・・)

五月雨「私、そそっかしくて・・・」

夜曾野「こいつドジっ娘だからなぁ この前も滑って転んで基地の対空ミサイル発射ボタンを・・・」

五月雨「もうっ! だから発射2秒前までに解除したじゃないですか!! セーフですよ!!」

鈴谷(ドジの領域を天元突破していらっしゃる・・・)

鈴谷「夜曾野ちゃんも大変そうだねぇ」

夜曾野「もう慣れた。普通の娘だと心臓が止まりそうな驚きがないんだよね」

提督「それが普通なんじゃないですかね・・・」

鈴谷「ウチのとこの五月雨もドジなとこあるけどここまでじゃないよね」

夜曾野「まぁそうだろうな。ウチの鎮守府の自慢だよ。退屈を感じさせないし」

五月雨「別に提督を楽しませようとしてやってるわけじゃないですからね!? ねぇ聞いてます!?」

鈴谷「提督、そろそろじゃない?」

提督「そうだな。・・・そろそろ時間だ」


616: 2015/04/09(木) 17:04:32.83 ID:X169V24Z0
会議中

元帥「何時もの定例会議であれば・・・ここで終わるのだが・・・」チラッ

提督A「と言いますと?」チラッ

元帥「最近、深海棲艦で一部、動きが妙な集団が居る」チラッ

提督D「私の管轄でも確認しております。攻撃をする意思を感じませんでした」チラッ

元帥「そう。出没しては攻撃もせず消える・・・不可解な行動を取っている」チラッ

提督A「報告では国内を航行していた輸送船を襲わず、素通りしたともありますね」チラッ

元帥「ああ、今までにない行動だ。人間の船を見れば必ず攻撃を仕掛けてきたが・・・」チラッ

元帥「行動目的が全く分からん。」チラッ

提督C「・・・不気味ですね」チラッ

元帥「大規模攻撃前の偵察にしては目撃が多すぎる・・・」チラッ

提督「・・・確かに今までに無いパターンですね」

提督D「しかし、この行動を見ると・・・」チラッ

元帥「ああ、まるで・・・何かを探しているようにも見える」チラッ

提督E「探す? 一体何を・・・?」チラッ

提督F「分からん。しかし、警戒する必要はありそうだ」チラッ

夜曾野「・・・まぁ分からんものは分からんでしょう」

617: 2015/04/09(木) 17:05:12.49 ID:X169V24Z0
夜曾野「相手は人間じゃない。何を考えてるかワケの分からん別の生物なんだ」

夜曾野「人間と同じ思考で考えるのは間違いじゃないですかねぇ?」

提督「ええ、現状では話し合っても結論を出すのは難しいかと」

提督「明確な目的が分からない以上は警戒することしか今は出来ませんね」

元帥「そういうわけで、各自そのことを頭に入れて置いて欲しい」

元帥「それと・・・先ほどから気になっていたんだが」

元帥「夜曾野くん・・・」

夜曾野「何か?」

夜曾野「何故、君の秘書艦は頭にバナナの皮を乗っけているのかね」

他の提督((((気になっていたことをズバっと聞いた!! 流石、元帥閣下だ!))))

夜曾野「さぁ? 転んでゴミ捨て場にでも突っ込んだんでしょう。よくあることですので気にしてませんでした」

五月雨「え!? 私、頭にバナナの皮を!? 提督っ! なんで言ってくれないんですか!!?」

夜曾野「最新のファッションかなって・・・」ププッ・・・

五月雨「そんなワケないでしょうっ!! もうっ!!」

提督「先輩、この場であまり騒ぐのは・・・」

元帥「ゴホンッ・・・とりあえず各自、今まで以上に奮闘して欲しい」

そして会議は終わった。



647: 2015/04/11(土) 10:44:13.45 ID:3Dk1vs8q0
鈴谷「やっと終わったねぇ」

提督「疲れたか?」

鈴谷「少しね・・・」

提督「さっさと宿にチェックインして休みたい所だが・・・」

鈴谷「なんかあるの?」

提督「ちょっと元帥殿にな・・・」

鈴谷「仕事の話?」

提督「どちらかと言えばプライベートかな?」

鈴谷「元帥に・・・? ひょっとして知り合い?」

提督「昔から面倒を見てもらっていて・・・」

提督「俺にとってはもう一人の父親みたいな人だよ」

鈴谷「え・・・と、私は先行ってた方がいいかな?」

提督「気を使わせてすまない」

鈴谷「うん、いいよ先行って待ってる。また後でね」

提督「すまん・・・」

女憲兵「あの・・・」

提督「あっ・・・あの時の」

鈴谷「・・・むっ」

女憲兵「こちらに、いらしていると聞きまして・・・」

提督「え・・・と何か・・・?」

女憲兵「いえ、特に用件はないのですけど・・・」

鈴谷(・・・・じゃあ・・・どっか行ってよ)

648: 2015/04/11(土) 10:44:51.70 ID:3Dk1vs8q0
女憲兵「もう一度・・・お礼をと・・・」

提督「・・・お礼ですか? 何かした覚えは・・・」

女憲兵「いいんです、私が一方的に感謝を感じただけですからっ」

女憲兵(感じてる・・・って変な意味に聞こえないかしら)

女憲兵(はしたない・・・Hな娘とか思われたくないな)

女憲兵(それじゃただの五航戦じゃない)

鈴谷(・・・なにその顔・・・顔赤らめてさ・・・)イラッ

女憲兵「とにかくですね・・・あの節はありがとうございました!」

提督「よく分かりませんが・・・どういたしまして」

鈴谷(距離・・・近くない・・・?)ハイライトオフ

女憲兵「あっ私、揺弩蘭 灯香莉(ようどらん ひかり)といいます」

鈴谷(ブランド卵みたいな名前しやがって・・・)

提督「揺弩蘭さんですか・・・珍しい名ですね」

女憲兵「変ですか・・・?」

提督「いえ、とてもステキだと思いますよ」

鈴谷「・・・提督? 用事があったんでしょ? 行かなくていいの?」

女憲兵(・・・鈴谷って言ったかしら・・・この娘)

女憲兵(すごい睨んでいる・・・)ブルッ

649: 2015/04/11(土) 10:45:27.80 ID:3Dk1vs8q0
女憲兵(あの時の恐怖が・・・・)

女憲兵(あっ・・・少し漏れちゃった・・・)

女憲兵(提督さんの前なのに・・・)ビクンッビクンッ

提督「すいませんが、私は所用がありますのでこれで・・・」スタスタ

女憲兵「あっハイっ! 引き止めてすいませんでした」

鈴谷「ねぇ・・・」

女憲兵「なっなんでしょう・・・?」

鈴谷「憲兵さんがさ・・・あんまり提督に馴れ馴れしくしないでくれません?」

女憲兵「え・・・?」

鈴谷「すごい迷惑だから。私ね、憲兵って大嫌いなの」

女憲兵(・・・恐い・・・この娘・・・今にも人を頃しそうな目をしてる・・・)

女憲兵(でも・・・この恐怖に耐えれば・・・)

女憲兵(提督さんが助けてくれる)

女憲兵(前みたいに・・・抱きかかえてくれる)

女憲兵(そう・・・これは試練・・・試練・・・)

鈴谷「・・・聞いてます?」ギロッ

女憲兵「ひっ!!」ゾクッ

女憲兵(また・・・出てりゅ・・・暖かい・・・ああ)

鈴谷「・・・なにこの人」


650: 2015/04/11(土) 10:46:06.50 ID:3Dk1vs8q0
元帥の執務室

コンコンッ

元帥「・・・開いとるよ」

ガチャッ

提督「失礼します」

元帥「おお、よく来たな」

提督「ご無沙汰しております元帥殿」

元帥「おいおい・・・他人行儀だな・・・」

元帥「お前は俺にとって息子みたいなもんなんだ」

提督「ありがとうございます」

元帥「昔みたいな感じでいいんだぞ? どうせ誰も見てない」

提督「いえ、そういう訳には・・・」

元帥「昔みたいに『おじさん』でいいのに」

提督「そういう訳に行きませんよ。軍に居る以上は立場があります」

元帥「まぁいい、活躍は聞いているよ。中々上手くやってるじゃないか」

提督「私個人の力では・・・艦娘の皆が頑張ってくれるからと認識しております」

元帥「だが、上に立ち、指揮をする者が阿呆だと・・・どうにもならん」

元帥「お前はよくやってるよ。あまり謙遜するのはよしなさい」

提督「・・・恐れ入ります」



651: 2015/04/11(土) 10:46:37.78 ID:3Dk1vs8q0
元帥「今後さらなる戦いの激化も予想される。最悪本土が攻撃される恐れも・・・」

提督「・・・はい」

元帥「軍人としてはな・・・お国の為に、戦って氏ねと言うべきなんだろうな」

元帥「だが・・・私個人の気持ちはな・・・」

元帥「氏ぬな・・・絶対に生き残って欲しい・・・それだけだ」

提督(おじさん・・・)

元帥「・・・軍人失格かな?」

提督「・・・そうは思いませんよ。そういう人の気持ちは大事だと思います」

元帥「ありがとう。所で・・・」

提督「はい、なんでしょう?」

元帥「今日の秘書艦の娘とは・・・なにか特別な関係なのかね?」

提督「ええ、まぁ・・・特別と言えば特別ですね」

元帥「恋愛的な?」

提督「いいえ。違いますよ。私にそのような相手はおりません」

元帥(・・・さっきの会議でも秘書の娘、ずーとお前のこと見てたぞ?)

元帥(あれはメスの顔だった。絶対。こういう鈍い所は父親譲りか・・・)

提督「・・・元帥?」

652: 2015/04/11(土) 10:47:03.46 ID:3Dk1vs8q0
元帥「お前は結婚して家庭を持つ気はないのか?」

提督「考えたこともないですね・・・」

元帥「そろそろ孫の顔を見たいのだがね」

提督「私のような者が家内など持てるのでしょうか?」

元帥「・・・え?」

元帥(毎回会議の度に違う秘書艦連れてくるけど・・・)

元帥(皆、同じメスの顔してるけどな・・・幼い駆逐艦すら・・・)

元帥(もうしかしたら無意識に家庭を持つことを恐れているのかもしれないな)

元帥(幼い頃に突然家族を失ったんだ。自分でも知らない内にトラウマになって・・・)

元帥(心の奥底で枷になっているのかもしれん・・・)

提督「あの?元帥殿?」

元帥「・・・おお? なんだ? スマン。考え事を・・・」

提督(無理もない・・・深海棲艦の謎の行動・・・分からないことだらけだしな)

提督「あまり邪魔をするワケにも行きません。そろそろ私は失礼します」

元帥「もっとゆっくりしていけば良いのに」

提督「今回は挨拶に伺っただけですので・・・」

提督「それに連れの秘書を待たせてます」


653: 2015/04/11(土) 10:47:30.03 ID:3Dk1vs8q0
元帥「そうか・・・ではまた会おう」

提督「はい。・・・元帥殿」

提督「一つプライベートなことになりますがよろしいでしょうか?」

元帥「おう、なんでも言ってみろ」

提督「あまりお酒は飲み過ぎぬよう。お体をご自愛ください。では失礼しました」

元帥「ああ、達者でな」

ガチャ バタン

元帥「あいつ・・・生意気を言うようになったな」ハハハッ

妙高(秘書)「きっと先月、呑みすぎて倒れたことを聞いたのでしょう」

元帥「息子に心配されるのは嬉しいものだな」

妙高「今の方は・・・以前お話されていた?」

元帥「ああ、親友だった男の忘れ形見だ。俺の息子みたいなもんだよ」

元帥「彼の親族が元々、結婚に反対でね・・・実家と折り合いが悪く私が面倒を見ていた」

妙高「ひょっとして・・・そこの棚にある写真立てに写っている方ですか?」

元帥「ああ、右が若い頃の俺、真ん中が親友、左が彼の奥さんだ」

妙高「奥様は艦娘だったんですか・・・」

元帥「ああ、日本最強の戦艦だった。結婚を期に解体されて人間になったがね」

654: 2015/04/11(土) 10:48:02.56 ID:3Dk1vs8q0
20数年前・・・

突如として現れた深海棲艦。

通常兵器の効かない未知の脅威に日本の自衛隊に成す術は無かった。

日本だけでなく諸外国も脅威に晒されて海路は閉ざされた。

そんな中、日本は未知の生命体『妖精』との邂逅により、

後に艦娘と呼ばれる存在を得て反撃に移る。

艦娘の活躍により、人類側は初めて深海棲艦に勝利。

自衛隊は縮小され、新たに本土防衛、海路の奪還の為に艦娘を編入した新海軍が設立された。

現在とほぼ変わらない体制が確立され始めた時期であった。


提督父「最近はだいぶ戦況が落ち着いてきたとは言え・・・良かったのか?」

提督母「ええ、艦娘の力を失うことに躊躇いはありません」

提督母「生まれた子供の為に・・・もっともっと近くに居てあげたいんです」

提督父「ああ・・・俺もなるべく仕事を早く終わらせて時間を作らないとな」

提督母「ふふっ・・・お願いしますね。あなた」

提督父「真っ直ぐで・・・良い子に育ってほしいな」

提督母「大丈夫ですよ。私達の子供ですもの」

提督父「そうだな・・・」

続くと思われていた穏やかな時間はそう長くは続かなかった。

655: 2015/04/11(土) 10:48:34.78 ID:3Dk1vs8q0
友人提督(元帥)「え? 南方海域に出撃する? 突然だな」

提督父「正式発表はまだだが、友軍が正体不明の敵に沈められたらしい」

友人提督「正体不明・・・? 深海棲艦の新種か?」

提督父「分からん。ただ、今まで確認されてない固体のようだ」

提督父「上層部からの命で明日出撃するよ」

友人提督「お前の所は戦力も充実しているからってことなんだろうが・・・」

提督父「・・・ひとつ頼みがある」

友人提督「なんだ? 金なら貸さんぞ? 俺もないからな」ハハハッ

提督父「もしも・・・もしもだ・・・」

友人提督「俺達に何かあったら息子を頼みたい」

友人提督「滅多なことは言うな。縁起でもない。・・・ん? 俺達?」

提督父「ああ、妻も同行する」

友人提督「何故? 彼女はもう艦娘じゃ・・・」

提督父「そうなのだが、秘書として優秀でな・・・知識もある」

提督父「本人からの要望なんだ。出来れば・・・本土で待っていて欲しいのだが」

提督父「あいつめ・・・一向に聞き入れん・・・」

友人提督「それだけお前の力になりたいんだろう。焼けるねぇ」

提督父「・・・からかうなよ」

友人提督「おまえさんに何かあったら責任を持って息子は面倒みてやる」

友人提督「ただし、何かあったらだ。絶対生きて無事に戻れよ?」

提督父「分かってる。俺も氏ぬ気は無いさ」

656: 2015/04/11(土) 10:49:09.98 ID:3Dk1vs8q0
南方海域

提督父「くっ・・・被害は!?」

部下妖精「機関部に被弾っ!! 航行不能です!!」

提督父「艦娘の皆はどうなっている・・・撤退させろ」

部下妖精「皆、名誉の戦氏を遂げました」

提督父「・・・糞っ!!・・・当艦を放棄する!!」ギリ

提督父「生き残ってる者は脱出艇へ!! 急げ!!」

部下妖精「了解!! 提督、貴方も早く!」

提督父「指揮官が真っ先に逃げられるか! 俺は貴様ら全員が避難した後だ!」

他の部下達「いえ、貴方を置いて行けません!!」

提督母「あの敵・・・今までの攻撃が通用しなかった・・・何故?」

提督父「お前も早く行け! 何時沈むか分からん!」

提督母「一人では行けません。 逃げるなら貴方も一緒に・・・」

提督母「どこまでも一緒です。私達は夫婦なのだから・・・」

提督母は提督父の手を強く握った。

絶対に離さないとばかりに。

提督父「・・・ったく・・・お前らは・・・」

皆、笑いあった。絶望的な状況でも、心から皆笑った。

その直後、轟音と共に皆の居た艦橋が吹っ飛んだ。



657: 2015/04/11(土) 10:49:45.26 ID:3Dk1vs8q0
提督母が目を覚ますと周りが燃えていた。部下達が皆氏んでいた。

右手に感触があった。夫の手だ。大好きな夫の大きくてゴツゴツした手。

しかし・・・向けた視線の先は腕しかなかった。肘から下だけ。

提督母「・・・え」

理解できなかった。

こんなのは嘘。

幸せになったハズだったのに。

これから沢山の楽しいことがあったハズなのに。

ようやく子供も生まれたと言うのに。

全てはこれからだったのに・・・

壊れた艦橋の隙間から見える海。ゆっくりとこちらへ来る敵が見えた。

新種の深海棲艦。

圧倒的な強さで、猛者揃いの同僚を次々に頃した最悪の敵。

今の私に戦う力はない。

その時になって初めて後悔した。

力があれば・・・夫を氏なせずに済んだのに。

力があれば・・・アイツを殺せたのに・・・

憎い・・・にくい・・・・ニくイ・・・ニクイ・・・

658: 2015/04/11(土) 10:50:15.81 ID:3Dk1vs8q0
敵が次々に砲撃を浴びせてきた。

攻撃なんてしなくても、この艦はもう沈む。

それでも執拗に撃ってくる。

燃え盛る炎の中、ただ自分の運命を呪い、憎む。

提督母(どうか・・・残された子が・・・幸せになれますように)

憎しみで心が壊れる前に、最後に残った母の部分がそう願った。

そして暗い海へ艦は沈んでいった。

元帥(親友は生きて帰らなかった・・・)

艦隊は全滅、提督父が乗り直接指揮を執っていた艦も大ダメージを受けた。

提督父は艦橋が被弾した際に戦氏したようだった。

戦闘海域に強行偵察に出た艦隊が奇跡的に彼の遺体は発見したものの、

妻の方は遺体も発見出来なかった。

659: 2015/04/11(土) 10:51:23.32 ID:3Dk1vs8q0
正体不明の深海棲艦は後に『姫級』と呼ばれるようになる・・・

その最初に確認された固体であった。

現在は十数年の間に行われた技術改良や装備の充実により

艦娘の基本性能自体がかなり底上げされていること、

敵のデータもそれなりにあり、特定の姫級への対処方法の確立など。

以前より脅威ではないが当時としては邂逅すれば氏を意味する

非常に恐ろしい敵であったのだ。

元帥(なぁ・・・親友。お前の息子は立派になったぞ?)

元帥(お前に・・・見せてやりたいよ)

妙高「どうされました? 泣いて・・・いるのですか?」

元帥「・・・ちょっと目にゴミがな」

妙高「・・・そうですか」


669: 2015/04/11(土) 22:28:30.19 ID:3Dk1vs8q0
ビジネスホテル

鈴谷「普通のホテルだねぇ」

提督「しかし・・・まさか同室とは・・・」

鈴谷「まぁいいじゃん。鈴谷は気にしないよ?」

提督「仮にも男と女だぞ? 何を考えているんだ・・・」

鈴谷「全然。全く問題ないよ? うん、本当に全然///」

提督「去年までは秘書艦とは別部屋だったのになぁ・・・」

今回は急遽開かれた会議であった為、

部屋を2つ準備するのが難しかった理由もあるが、

実は元帥のお節介によるものだとは提督達は知る由も無かった。

鈴谷(正直・・・部屋を分ける意味がないんだけどなぁ・・・)

昨年の会議で秘書として同行した雷は提督が就寝してる間に部屋に侵入し、

一緒のベッドで朝まで寝て、提督が起きる前に自室に戻って

何食わぬ顔で翌朝顔を合わせたことは提督は全く知らなかった。

これは運よく出張時期に当たった秘書艦の暗黙の特権になっていた。

経験すれば自慢出来、他者から1歩も2歩もリード出来る。

670: 2015/04/11(土) 22:29:12.83 ID:3Dk1vs8q0
艦娘達からすれば、まさに運命に選ばれた者のみが

一時だけ到達できる領域。天龍と木曾の2人はこの領域を

『幻想の楽園(ファンタズム・アルカディア)』と勝手に呼んでいる。

その為、通常の出張時だと事前に誰が行くか分かるので鎮守府内は

水面下でギスギスし、鎮守府内の空気はマイナス5度くらい下がるのである。

出張に同行することは、宝くじの1等を当てること、

もしくは小学生がクラスでまだ誰も持っていない最新ゲーム機を自分だけが所持している、

または大人気カードゲームで誰も持って居ない超絶レアカードを一人だけ所持している。

これに匹敵するくらい喜ばしいことで、水面下では常に嫉妬の対象であったのだ。

当たった秘書艦の中には嬉しさで失神するものも居る始末なのである。

鈴谷「・・・提督は鈴谷と一緒は嫌?」

提督「俺は嫌ではないが・・・鈴谷こそ嫌じゃないか?」

鈴谷「全然っ! 楽しいじゃんっ!」

提督「まぁならいいか。ベッドも離れてるし」

鈴谷「そろそろ夕食じゃない? どうする?」

提督「そうだな・・・外に食べに行くか」

コンコンッ

671: 2015/04/11(土) 22:29:56.60 ID:3Dk1vs8q0
提督「誰だ?・・・どうぞ」

夜曾野「おう。私だ」

提督「先輩でしたか・・・」

夜曾野「私達は一足先に自分の鎮守府に戻るから挨拶にな」

提督「そうでしたか、わざわざすいません」

夜曾野「鈴谷、お前が元気そうで安心したよ。これからもしっかりな」

鈴谷「分かってるって。ありがとうね」

夜曾野「糞後輩、また来週な」

提督「ええ、よろしくお願いします」

五月雨「提督! 早く行かないとお土産選ぶ時間が無くなりますよ!」

夜曾野「そうだった、そうだった。じゃあな!」ビッ

ガチャ バタンッ

鈴谷「ふふ・・・騒がしい女(ひと)だなぁ 相変わらず」

提督「あの騒がしさに救われたこともある。良い先輩だよ」

鈴谷「所で来週って?」

提督「演習の予定があるんだ」

鈴谷「ふ~ん」

鈴谷(夜曾野ちゃんは女だと舐められるって普段はサラシを巻いてるし・・・)

鈴谷(軍帽被って後髪隠してるから、一見小柄な美少年にしか見えないんだよね)

鈴谷(女だと知ったら他の艦娘はどんな反応するんだろうなぁ・・・楽しみ)

672: 2015/04/11(土) 22:30:27.59 ID:3Dk1vs8q0
夜曾野「お土産何がいいかなぁ」

五月雨「ねぇ提督」

夜曾野「なんだい超絶ドジ娘」

五月雨「酷い!!?」

夜曾野「なんで帰りの電車の時間を1時間も間違えるのよ」

五月雨「・・・すいません」

夜曾野「慌てて出てくることも無かったなアホらしい・・・」

五月雨「だからすいませんって・・・」

夜曾野「で? 用件は何だい?」

五月雨「あの鈴谷さんはお知り合いなんですか?」

夜曾野「以前、助けたんだよ」

五月雨「助けた? どういうことです?」

夜曾野「彼女すんごいブラックな鎮守府に居てね、ムカついて潰したの」

五月雨「そこの方だったんですか?」

夜曾野「まぁね。暫くウチで預かったんだけど・・・」

夜曾野「全然心を開いてくれなくてね・・・」

夜曾野「後輩に丸投げしたのさ。華麗にね」

五月雨「最後まで責任持ちましょうよ!!」

夜曾野(アイツなら、なんとかするって思ったしね。あいつなら・・・)

五月雨「どうしたんです? お顔が赤いですよ」

673: 2015/04/11(土) 22:30:56.54 ID:3Dk1vs8q0
夜曾野「うっせ・・・」ゲシッ

五月雨「蹴った!! 今、蹴りましたねっ!!?」

夜曾野「つい足が滑っちゃったゴメンネ」

五月雨「もう・・・お土産何がいいかな・・・」

夜曾野「チロルチョコとか、チュッパチャップスで良くね?」

五月雨「なんでですかっ!? 良くありませんよ!!」

夜曾野「皆、安くても良いって言ってたし・・・」

五月雨「安すぎですよ!!? 駄菓子じゃないですか!!」

夜曾野「じゃあ・・・うまい棒は?」

五月雨「同じですっ! しかもさらに値段下がってる!」

夜曾野「うまい棒の東京限定の奴とかさ。最高にクールじゃん」

五月雨「駄菓子から離れてくださいよ・・・・」

夜曾野「五月雨・・・」

五月雨「なんです?」

夜曾野「前に看板が・・・」

五月雨「へ? 痛っ!?・・・」ドンッ

夜曾野「危なっかしいなぁ・・・ほら・・・」

五月雨「早く言ってくださいよぉ・・・何です?」ヒリヒリ・・・

夜曾野「危ないから手を繋いであげよう」

五月雨「・・・もう///」ギュッ

674: 2015/04/11(土) 22:31:32.46 ID:3Dk1vs8q0
夜曾野「さぁ早く駄菓子屋へ行こうか」

五月雨「なんで!?」

夜曾野「子供の頃に感じた・・・」

夜曾野「あのワクワクした衝動を抑えられそうに無い・・・」キラキラ

五月雨「なんでそんなに目を輝かせてるんですか・・・」

夜曾野「買おうぜぇ!3個入ってるガムの中の1個だけ超すっぱい奴とか!」

五月雨「とりあえず、それはまた今度にしてくださいよぉ」

夜曾野「冗談だよ。夜曾野ジョーク」

五月雨「ほら早く行きましょう。時間無くなりますよ」

夜曾野「はーい」

五月雨(あっ・・・足を躓いちゃった・・・)

2人「へみゅっ!?」バタン

夜曾野「なんで何も無いところで躓くの!?」

五月雨「私が一番知りたいですよっ!!」

夜曾野「私まで巻き込みやがって!!」

五月雨「手を繋いでたんだから仕方ないでしょ!?」

夜曾野「手をはーなーせー」

五月雨「はーなーしーまーせーんー」

2人は仲良く自分達の鎮守府へ帰っていった。

675: 2015/04/11(土) 22:32:02.33 ID:3Dk1vs8q0
再び・・・
ビジネスホテル

鈴谷「あー食べた食べた」

提督「食いすぎたかもしれん。鈴谷、先に風呂入っておいで」

鈴谷「・・・今の言い方、いやらしいですな」ニマニマ

提督「・・・からかうな」

鈴谷「分かってますよー じゃあ、ありがたく先に頂くね」

それから他愛もない話をして過ごして

あっと言う間に深夜になった。

提督「鈴谷・・・? 寝たか・・・」

提督(本当に・・・よくなったな。明るくて、元気で・・・)

提督(最初に来た頃が嘘のようだ。本当に良かった)

――――誰? アンタ

俺は提督だ。これから君の上司になる。

――――――あっそ。別に興味ないし

何があったかは知ってる。

すぐに信用は出来ないかもしれない。でも・・・

君に信頼される指揮官になれるように頑張るつもりだ。

だから・・・これからよろしく頼む。

――――勝手にすれば? 私も私の勝手にするし。

提督(あの頃よりは少しは・・・君に信頼して貰ってるのかな?)

提督「これからも・・・よろしくな・・・鈴谷。おやすみ」ナデナデ

684: 2015/04/13(月) 01:45:47.44 ID:X9Kn7+jf0
鈴谷(あれ? 私・・・寝てた?)

鈴谷「提督?」

提督「・・・・zzz」

鈴谷(寝ている時は・・・あどけない可愛い顔してるねぇ)

提督は一度、寝付くと中々起きない。

鈴谷「本当に寝ている?・・・キスしちゃうよ? いいのかな? ふふっ」

鈴谷(本当に私は・・・提督が・・・大好きなんだなぁ)



あれは数年前になる。

当時、私は別の鎮守府に所属だった。

最初は国の為にと頑張っていたが・・・

黒提督「鈴谷め・・・また大破か・・・クズが。構わん、進軍しろ」

旗艦娘『・・・しかしっ鈴谷の他にも駆逐艦が一隻、大破しております!』

黒提督「ここまで来て引き返せと? 運が良ければ生き残るだろう」

旗艦娘『ですがっ!!』

黒提督「命令だ。行け。日本国軍人たるもの氏を恐れるな」

旗艦娘『っ・・・了解しました』

結果、出撃海域に居た敵は殲滅したが、

最後の戦闘前に大破していた駆逐艦は轟沈。

それは私を庇ってのことだった。

そして同じく大破していた私は生き残ってしまった。

685: 2015/04/13(月) 01:46:21.01 ID:X9Kn7+jf0
仲間が目の前で沈んだ。

皆が泣いた。

沈んだ子は泣き叫んでいた。

氏にたくない、まだ氏にたくないと。

沈んだ子の名前はもう思い出せない・・・

いや、思い出すことを自分が拒絶しているのだろう。

なんとか鎮守府に帰還して報告すると・・・

黒提督「そうか、沈んだか。まぁいい。大してレベルも高くなかったしな」

それだけ。たったそれだけ。

カチンと来て思わず言ってしまった。

鈴谷「提督が無茶な命令を出したせいで沈んだのにそれだけなの・・・?」

黒提督「貴様・・・俺にその口の利き方・・・何様のつもりだ?」

黒提督「弱い奴はいらん。沈んだのは弱いからだ」

黒提督「氏にたくなければ被弾すんじゃねぇよ・・・」

黒提督「てめぇらの無能を棚に上げて何をほざいてやがる」

そう言うと顔面をぶん殴られた。

黒提督「おい前ら・・・連帯責任だ全員並べ」

皆『!!』

そして皆一人ずつ殴られた。

艦隊の皆が私を見る。憎悪に満ちた目で。

余計なこと言いやがって、アンタのせいだ。と目で訴えてきた。

686: 2015/04/13(月) 01:47:06.68 ID:X9Kn7+jf0
黒提督「おい・・・お前」

駆逐艦「・・・は・・・はいっ!!」ビクビクッ

黒提督「今日はお前だ。夜、部屋に来い」

駆逐艦「・・・はい」

指名された娘は恐怖で涙目だった。

黒提督は毎晩、毎晩、艦娘を抱く。

艦娘の意思なんて関係なしに。

断れば、もっと酷いことをされる。だから従うしかない。

黒提督「戦闘で使えないクズなんだから、せめて黙って股でも開いてろっつんだよ」

黒提督「本当にお前らは使えないな・・・」

黒提督「おかげで大本営から指示された任務の半数も消化出来てない」

黒提督「これは懲罰だ。貴様らに拒否する権利はない」

当時、ただでさえ閉鎖的な軍内部でさらに、次々と造られた鎮守府の内側は

中々、監視の目が届かない世間から隔離されたような場所だった。

その為、この黒提督のように突然与えられた権力と地位に酔いしれて、

感覚が麻痺し、見えない所で好き勝手やる者も後を立たなかった。

何かしても揉み消せる、悪行をしても鎮守府での最高権力者である自分を

咎めるものは居ない。外にさえ情報が出なければなんでも出来る。

687: 2015/04/13(月) 01:47:47.72 ID:X9Kn7+jf0
一般的な人は社会に出るに当たって、

世間的な善悪の定義を理解し、悪行は行わない。

それは行えば罪となり、囚われて法の裁きを受け、

人生の中で今まで築き上げた物も立場も全て失い、

もうその場所に戻れなくなるからだ。

社会にはルールがある。秩序がある。

それを破ることは社会に置いては異端者となる。けして許されないのだ。

だが、もしも・・・そんな世間の常識やルールが及ばないと錯覚するような立場に居たら?

何をしても、自分の力で揉み消せるような世間の目から離れた場所であったら?

『自分は大丈夫』と言う根拠の無い思い込みは、やがて欲望をむき出しにさせる。

そして一度でも一般的な良識を反故にし、自らの欲望に走った時、その人間は堕ちる。

絶対やっては行けない禁忌。その領域を超えるとタガが外れるのだ。

一度でも成功すれば2度、3度・・・

やがては、そうした行いに罪の意識は感じなくなり、行為はエスカレートする。

閉鎖的な環境は人間の持つ醜い感情が浮き彫りになりやすい場であったのだ。

688: 2015/04/13(月) 01:48:43.76 ID:X9Kn7+jf0
なんでだろう。私達はなんで・・・

こんな奴の為に戦っているんだろう。なんの為に?

その頃は、もう戦う意思なんて無かった。黒提督に歯向かい、

とばっちりを受けた娘の噂も広まり、次第に私は孤立していった。

それから暫くしてチャンスが訪れた。

視察に来た憲兵に接触し、事情を説明した。

これでアイツは捕まる。そう思った。

だが予想は裏切られる。

憲兵「そうだな・・・お前が一発ヤラせてくれたら助けてやるよ」

憲兵2「そうだな。俺も俺も」

憲兵達「アハハ いいなそれ」

鈴谷「・・・最低っ」

憲兵「嫌なら現状のままだな。まぁしっかりやれよ?」

憲兵2「ここの提督には良くしてもらってるからな。元々告発する気もねぇしな」

憲兵3「ひでーww」

憲兵隊は新海軍設立で旧大戦以来、急遽作られた組織であった。

構成員もロクに審査もせず採用され、素行に問題がある人物も多く、

酷いもので組織として正常に機能していなかった。

とりあえず作られて、存在していた。それだけの組織。

問題を起こした提督が発覚前に賄賂を送り揉み消す。そんなことは当たり前だった。


689: 2015/04/13(月) 01:49:18.59 ID:X9Kn7+jf0
この時期を知る艦娘は未だに憲兵を嫌っている者も多い。

中にはマジメに仕事をする者も居たが、圧倒的に少数派であった。

そんな正しい憲兵も、悪い先輩に毒されて結局欲望のままに動くようになる。

組織自体が腐りきっていた。

誰も助けてくれない。誰も味方がいない。どうしていいか分からない。

そして結論づけた。黒提督を殺そうと。

アイツを殺さないと、自分も同僚も皆殺される。だからヤルしかない。

結果だけ言うと失敗した。

黒提督は激昂して他の艦娘に命じてリンチを実行させた。

女として大事なモノは奪われなかったけど、

もう生きる希望は無くなりかけていた。

ボロボロになった私は鎮守府の牢獄に入れられた。

暗く不衛生な牢獄で私は毎晩うなされた。

690: 2015/04/13(月) 01:49:46.53 ID:X9Kn7+jf0

私を庇って沈んだ子が夢の中で私を攻め続ける。

オマエのせいで氏んだと。

オマエのせいで・・・オマエのせいで・・・私は・・・

鈴谷「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

もう耐えられなかった。

氏のう。そんなことを考えてた矢先、彼女が来た。

夜曾野(よその)提督。彼女はどうやったかは知らないが、

黒提督は摘発され逮捕された。

黒提督『俺は何もして居ない!貴様ら!俺にこんなことしてどうなるか・・・』

最後の最後まで見苦しく、腹も立ったが有罪判決を受けて、ほんの少しだけ気分が晴れた。

後になって知ったことだが、そんな軍の暗部を嫌悪し、嫌う提督達も一定数おり、

元帥を初め、夜曾野提督、提督、他にも良心的な人達による

大掛かりな軍内部の粛清であった。

その後、事件は大きく報じられて社会問題になった。


691: 2015/04/13(月) 01:50:27.98 ID:X9Kn7+jf0
日本を守る為に命をかけて戦う艦娘に暴行を加える。

指揮をする提督の立場に居る者が権力に目がくらみ好き勝手のやりたい放題。

その行為に対し国民の怒りは凄まじかった。

さらに治安を維持し、軍を取り締まるハズの憲兵までも一部が加担していた。

それはとても衝撃的な事件であり、ごく善良な一般市民には嫌悪されるようなことだ。

インターネット、SNS等の急速な普及により以前は暗部だったモノが、

何かの拍子に外に出てしまうようになった時代。

軍上層部は徹底して内部を調査、こういった悪行を行った者は全て摘発、逮捕され有罪になった。

また、提督に取り入るために積極的に暴行に関わっていた一部艦娘も解体後に有罪として投獄された。

憲兵隊内部も大きく入れ替わった。

前任者達の悪行三昧により世間からも身内からも厳しい目で見られた

新憲兵達は正しくあろうと必要以上に厳しく職務を遂行していくことになる。

正しく在る事だけが過去のイメージを払拭させる唯一の手段だからだ。

ようやく憲兵隊は本来のような正しい役割を果たすようになった。

そして私は救出され夜曾野提督の指揮下に入った。

そこは天国と地獄くらいの差があった。夜曾野提督を初め、鎮守府の皆は優しかった。

でも、私は何もする気になれなかった。

既に戦う意思はない。

生きる意志もない。

そんな時、提督に出会った。

692: 2015/04/13(月) 01:51:00.45 ID:X9Kn7+jf0
鈴谷「・・・誰? アンタ」

男だ。・・・汚らわしい。

提督「俺は提督だ。これから君の指揮官になる」

鈴谷「あっそ。別に興味ないし」

提督「何があったかは知っている」

鈴谷「じゃあ帰ってよ。私はもう・・・」

夜曾野「鈴谷・・・君は彼の元に行け。彼は信用出来る」

鈴谷「・・・どうせ貴女も私がいらなくなったんでしょ?」

夜曾野「違う。もう一度・・・君に生きて欲しいからだ」

鈴谷「は? 鈴谷生きてるし。ワケ分かんない」

夜曾野「・・・そうか? 今のお前さんは氏んでるのも同じだよ」

鈴谷「・・・・・・」

提督「俺のこと、すぐに信用出来ないかもしれない」

鈴谷「・・・信用する気もないけど?」

提督「でも・・・君に信頼される指揮官になれるように頑張るつもりだ」

鈴谷「・・・勝手にすれば? 私も私の勝手にするし」

提督「よろしく頼む」

夜曾野「頼むぜ後輩」

提督「はい。先輩」

693: 2015/04/13(月) 01:51:51.01 ID:X9Kn7+jf0
彼の目は、どこまでもまっすぐで誠意があった。

夜曾野提督が信頼してるくらいだ。問題はないのだろう。

初めから、こんな人が私の提督だったら・・・

違った結末もあったのかもしれない。

そう一瞬思ったがすぐに思考は戻る。

私はもう誰にも期待しない。

勝手にすればいい。私はもう疲れたんだ。

それから提督の鎮守府に配属された。



提督「今日から暫く秘書艦を頼む」

鈴谷「・・・は? めんどくさっ」

秘書艦なんて今まで一度もやったことはない。本当にめんどくさい。

提督「ごめんな? 仕事は少しづつ教えるからさ」

提督の鎮守府の艦娘は皆、楽しそうで、心から提督を慕っていた。

本当に愛されてるねこの人は・・・。

私は愛や友情なんて幻想はとうに捨てた。

期待するだけ無駄なんだ。

提督「鈴谷、そろそろ昼にするか」

鈴谷「勝手にすれば? 私はこれでいいし」

提督「・・・カ口リーメイトって・・・お前」

694: 2015/04/13(月) 01:52:24.13 ID:X9Kn7+jf0
鈴谷「私の勝手でしょ?」

提督「待ってろ・・・」

そう言うと提督はどこかへ行った。20分ほどで戻ってきた。

トレーに2つの炒飯を乗っけて。

提督「口に合うか分からんが・・・」

鈴谷「何コレ」

提督「炒飯だが・・・」

鈴谷「そんなのは知ってるよ。どうしたのこれ」

提督「厨房を借りて作ったんだ」

鈴谷「私、食べたいなんて一言も言ってないけど?」

提督「そんな食事ばかりじゃ体が持たないぞ?」

鈴谷「・・・ほっといてよ」

提督「ほら、早く食べてくれ。暖かい方が旨い」

そう言うと提督は自分の分を食べ始めた。

そして早く食べろとばかりに、こちらを見る。

鈴谷「・・・はぁ・・・食べればいいんでしょ」

提督の作ってくれた炒飯はとても美味しかった。

鈴谷「・・・美味しい」ボソッ

695: 2015/04/13(月) 01:52:50.28 ID:X9Kn7+jf0
提督「どうだ?」

鈴谷「・・・まぁまぁ。食べれなくは無いよ」

嘘。

こんな美味しいもの食べたことがない。

もくもくと食べる私を見て、提督は優しく笑った。

私は恥かしくて、ちょっと悔しかった。

鈴谷「あんまり調子に乗らないでくれる?」

提督「ああ、分かった、分かった」

暖かい・・・気持ち。

こんな気持ちを感じたのは何時以来だろうか。

それからも、提督は私を気に掛けてくれた。

最初は鬱陶しかったそれも、今じゃ心地よく感じた。

そんな毎日を過ごすうちに・・・なんとなく、

もう一度くらい戦闘に出ても良いと思ってしまったのだ。

提督「出撃したい?」

鈴谷「何となく気が向いたからね」

提督「・・・大丈夫なのか?」

鈴谷「さぁ? どうだろうね」

696: 2015/04/13(月) 01:53:54.22 ID:X9Kn7+jf0
提督「・・・金剛、鈴谷のこと頼むぞ」

金剛「イエス!! 泥舟に乗った気で居てくださイっ!!」

提督「・・・大船な」

しかし、久しぶりの戦闘は甘くなく、

あと少しで敵旗艦を倒せる所で大破してしまった。

私が沈む可能性もあるけど・・・

夜戦に持ち込めば・・・

鈴谷(・・・あれ?)

氏んでもいい。そう思ってたはずなのに、今は凄い恐かった。

何時の間にか氏にたくないと思っている自分が居る。

なんとなく脳裏に、優しく笑う提督が浮かんだ。

金剛「じゃあ撤退しマスか~」

他の娘「はーい」

鈴谷「・・・!! ちょっと待って!!」

金剛「はい? なんデス?」

鈴谷「もう少しで倒せそうなのに撤退?」

金剛「だって貴女、大破してるじゃないデスか」

鈴谷(また・・・私のせいで・・・)ギリッ

鈴谷「私のことはいいからっ!!」

697: 2015/04/13(月) 01:54:47.67 ID:X9Kn7+jf0
金剛「ダメでーす」

鈴谷「・・・なんで?」

金剛「中破したら撤退するのがココでのルールでーす!」

鈴谷「・・・了解」

情けなくて涙が出た。

今度は・・・もうしかしたらって思ったのに。

行けると思ったのに。何時もこう。何時も私は・・・

また私は失望されるんだ。オマエはいらないって・・・

そんな重たい気持ちで帰り道は頭が一杯だった。

電「あの程度の敵ならこちらに被害なく一方的に殺せたのです」

金剛「今回は鈴谷に鎮守府のルール(表)を覚えさせるのが目的デスから」

電「・・・そういうことですか」

金剛「早く慣れて貰えればいいんだケドね」

電「そうですね・・・」

金剛「早く慣れてもらわないと秘書艦もローテできませんし」

電「・・・確かにそうなのです」

電「そう遠くない未来・・・」

電「鈴谷さんも電達の本当の仲間になって・・・」

電「皆で笑い合えれば・・・もっと毎日が楽しくなると思うのです」



698: 2015/04/13(月) 01:55:48.44 ID:X9Kn7+jf0
金剛「鎮守府の皆は家族・・・デスからね」

電「なのです!」

しかし、帰ってみると提督は穏やかで・・・

提督「まぁ次があるさ、怪我した娘は入渠して来なさい」

鈴谷(・・・なんで?)

鈴谷「・・・怒らないの?」

提督「え? なんで?」

鈴谷「私のせいで・・・倒せなかったのに」

提督「別に鈴谷のせいじゃないだろう。あんまり気負うな」

鈴谷「・・・でもっ」

提督「今日の出撃・・・マジメに戦ったかい? 手を抜いたり、ふざけたりした?」

鈴谷「真剣にやったよ! 当たり前でしょ!!」

提督「じゃあ仕方ないだろう。 頑張った結果なんだから」

提督「それは受け入れよう。今がダメなら次がある。生きてさえいればチャンスはあるんだ」

提督「何度だって・・・生きて・・・生きてさえ居ればね」

鈴谷「・・・『次』はもっと頑張る」

提督「ああ、期待してるよ」

気まぐれで一度だけ出るつもりが・・・

何時の間にか、次も出撃する気になっている。

そんな自分に驚きを隠せなかった。


725: 2015/04/15(水) 18:22:20.43 ID:EMbF5lNC0
演習場

天龍「おう! 新入りの鈴谷じゃないか」

鈴谷「皆で何してるの?」

天龍「何って、訓練だよ。もっと強くなる為にな」

雷「天ちゃんったら、また馬鹿なことしてるのよ」

天龍「馬鹿とはなんだ!! 見ていろっ!!」

そう言うと、天龍は刀をぶんっと振るう。

天龍「九頭・天龍閃っ!!!」ドンッ


     
     壱 
   捌   弐
   
  漆  玖  参 
   
   陸   肆
     伍



天龍の振るう剣から出た斬撃は

9つの光になって演習用の標的を木っ端微塵にした。

鈴谷「・・・え? 今の何?」

天龍「9つの急所を同時に狙う・・・」

天龍「俺のそこそこ得意な技だよ」


726: 2015/04/15(水) 18:22:59.00 ID:EMbF5lNC0
雷「剣と拳の2段抜刀術とか変な技ばっか使いたがるのよ・・・」

響「そもそも、抜刀してないのにね」

電「連携しての攻撃がセオリー無視で合わせるのが難しいのですよ」

天龍「でもカッコいいだろ!!」

鈴谷「すごいなぁ・・・」

天龍「おっ分かるか? オマエ、いい奴だな!」

鈴谷「皆、強くなろうって頑張ってるんだねぇ」

電「そうなのです。強くなって司令官さんを助けたいのですよ」

暁「もっと頑張るんだからっ!!」

少し離れた所では、長門が何かを繰り出そうとしていた。

鈴谷「・・あれは・・・長門さん?」

長門「ふんっ!!!!」

長門が海面に拳を振るう。

もの凄い轟音と共に海は2つに割れ、

巨大な水柱が空へ舞い上がった。

数秒ではあるものの、海の底が見えた。

突然、水を失った魚がピチピチと跳ねていた。

鈴谷「すごっ!?」

長門「ふむ・・・まだ改良の余地はあるな」

今のとんでもない技にまだ納得が行かないのか

一人ブツブツと呟いている。

727: 2015/04/15(水) 18:23:32.65 ID:EMbF5lNC0
一部始終を見ていた天龍が良いことを思いついたと

言わんばかりに長門に近寄る。

天龍「なぁ、長門!! 俺を殴れ!」

長門「はぁ? 何を言っているんだ」

電「よく分からないのですが・・・」

電「殴って欲しいなら電が殴ってあげるのですよ?」ガチャッ

天龍「おい止めろよ!? そんな大きな錨で殴ったら怪我すんだろ!!?」

電「動かないで欲しいのです。狙いが・・・」ハイライトオフ

天龍「俺がオマエのプリン勝手に喰ったのは謝るからっ!!」

ブンッ

天龍「待って!! ねぇ、待って!!?」

電「・・・・・・」ニコッ

天龍「ごめんなさいっ!! 後で弁償するから!」

電「あれは・・・どこにも売ってないのですっ!」ブンッ

天龍「うわぁっ!!?」パシッ

暁「すごいっ!! 知ってるわソレ!」

暁「シンケンシラハドリって奴よね!!」

響「・・・錨だけどね」

雷(あのプリンは提督が作ってくれたのよね・・・私達・・・)

雷(・・・いえ・・・私だけの為に)ハイライトオフ



728: 2015/04/15(水) 18:24:01.32 ID:EMbF5lNC0
長門「で? なんでオマエを殴る必要がある?」

天龍「俺がジャンプするから、俺の足の裏を殴って欲しいんだよ!!」

長門「よく分からんが・・・いいだろう」

天龍「よしっ!行くぞ!!!」バッ

鈴谷(天龍がジャンプして長門さんの上に・・・)

長門「いくぞ?」

鈴谷(・・・すごいジャンプ力。パンツ見えてるけど・・・)

長門「・・・ふんっ!!!」ドンッ

鈴谷(長門さんがロケットを打ち上げるように・・・)

長門のパンチを足裏で受けた天龍は空高く舞い上がる。

鈴谷「・・・すごい!! まるで飛んでいるみたい!!」

やがて重力に引かれ、落下を始める。

天龍「空中・・・九頭・天龍閃っ!!!」ドンッ

放たれた9つの斬撃は光になって轟音と共に海面9箇所に

降り注ぎ、巨大な9つの水柱が立った。

もし、あの場に自分が居たらと思うとゾッとした。

天龍「どうよ!! ちゃんと連携取れただろ?」

電・雷「おおおっ!!!」パチパチ

長門「・・・手が・・・痛い」ナミダメ


729: 2015/04/15(水) 18:24:45.05 ID:EMbF5lNC0
ブーーーン

音がする。これは航空機が飛ぶ音だ。

鈴谷「あれは・・・零戦?」

長門「龍譲だな・・・」

空を飛ぶ無数の零戦は綺麗に編隊を組み、

まるでひとつの生き物のように動き回る。

龍譲「どうや! 見たか! ウチの艦載機の動き!!」

瑞鳳「あれが九九艦爆だったら100点だったのに」

鈴谷(あの子は・・・確か、瑞鳳って言ったけ・・・)

瑞鳳「九九艦爆可愛いで賞で+20点で120点だったのに」

龍譲「うっさいわっ!まだまだこんなもんやないで!!」

そう言うと零戦はまるで重力を無視したような不規則な動きを見せる。

鈴谷(レシプロ機であるハズなのに音速を軽く超えているような・・・)

早すぎる。あんなの捉えられない・・・

漣「・・・まるでファンネルみたいですなぁ」

鈴谷「ふぁんねる? 何かのブランド?」

漣「いえ、一般人には分からない世界ですので・・・」

鈴谷(ここに居る皆一般人じゃないけどね・・・艦娘だし)

赤城「・・・やりますね」

蒼龍「私も新技、考えないとなぁ」



730: 2015/04/15(水) 18:25:14.60 ID:EMbF5lNC0
飛龍「加賀さんは新しい技があったよね」

加賀「ええ・・・」

龍譲「え? 何? 何? 見せてー」

加賀「良いでしょう・・・」

加賀は甲板を左手に装着すると演習用の的に突っ込み、

甲板をぶっ刺した。的は爆散した。

赤城「なんです? 今の?」

加賀「甲板に電磁シールドのようなものを付けて頂きました」

龍譲「夕張やな・・・」

加賀「本来は、甲板前面にシールドを張って敵の内部に刺したら・・・」

加賀「甲板に搭載されている大量の小型艦載機の一斉射で・・・」

加賀「内側から敵を破壊する技です」

隼鷹「うわぁ・・・えげつねぇなぁ」

瑞鶴「まぁ・・・粗野な人にはぴったりじゃない?」

加賀「・・・貴女にもやってあげましょうか?」ハイライトオフ

瑞鶴「・・・やれるものならやってみなさいよ」ハイライトオフ

飛龍「この2人何時もこうだよね」

蒼龍「喧嘩するほどって奴でしょ」


731: 2015/04/15(水) 18:25:46.14 ID:EMbF5lNC0
翔鶴「本当に・・・妹がすいませんっ」ペコリ

龍譲「・・・!!!」

飛龍「龍譲どったの? 凄い顔して」

赤城「翔鶴さんが謝ったとき、胸がぷるんっと揺れました」

翔鶴「え////」

赤城「それを見て凹んだんでしょう」

龍譲「説明すなっ!! さらに凹むやないかっ!!」

翔鶴「あの・・・すいません」

秋月「翔鶴さんって存在自体がいやらしいですね!」

秋月(あまり気にしない方がいいですよ翔鶴さん!)

翔鶴「!!?」

蒼龍「胸なんて大きくても重たいだけだって」

龍譲「・・・・・・あ?」ハイライトオフ

赤城「むしろ駆逐艦なのに空母並に艦載機を出せる・・・」

赤城「貴女の方が凄いのだから・・・」

赤城「自信を持ちなさい」

加賀「そうよ。とても凄いことなんだから」

龍譲「空母やっ!! ウチ・・・軽空母や!!!」

732: 2015/04/15(水) 18:26:15.60 ID:EMbF5lNC0
瑞鳳「あの・・・私も・・・軽空母ですよ?」

赤城「え? 知ってますよ?」

加賀「ええ、瑞と言う字は見るとイラっとくるので覚えてます」

加賀「気をしっかり持ち、五航戦にならないように気をつけなさい」

瑞鳳「良かった。空母として認識されていて・・・」ホッ

龍譲「なぁ・・・ウチも空母やで? ねぇ?」

浜風「知ってますよ」

蒼龍「良かったじゃない。重巡の娘にも認識されていて」

浜風「あの、私・・・駆逐艦ですけど」

龍譲「なぁ、お前らどこで判断してる? そろそろキレるで」

瑞鶴「所で加賀さん? 何故イラっとくるのかしら? 教えてくれない?」

加賀「教えて欲しい? 言わなきゃ分からないのかしら?」

瑞鶴「ええ、頭が可笑しい人の考えってよく分からないので」

加賀「教えてあげます・・・実戦方式で演習でもしましょうか? 2人きりで」

瑞鶴「・・・別にいいけど? いいんですか? 入渠時間長いのに」

2人「「ふふっ・・・」」

鈴谷「皆、仲良いなぁ・・・」

飛龍「・・・え?」

鈴谷「向こうでは駆逐の子が練習してる・・・」

733: 2015/04/15(水) 18:26:46.15 ID:EMbF5lNC0
飛鷹「・・・じゃあ飛ばすわよ?」

吹雪「何時でもどうぞ」

放たれる無数の練習用の艦載機を吹雪は正確に打ち落とす。

鈴谷「うわぁ・・・凄いねぇ」

鈴谷「普通、あんな高度に居る敵に当てるのって難しくない?」

吹雪「そうですか? 目で見えているなら落とせますよ?」

鈴谷「何かコツでもあるの?」

吹雪「例えばですけど・・・飛んでいる敵機ですけど」

鈴谷「うん」

吹雪「あれを擬人化するんです。脳内で」

鈴谷「・・・うん?」

吹雪「今は中年のイケメンを妄想してました」

鈴谷「はぁ、そうなんですか」

吹雪「そして、撃ち出す弾も擬人化します。脳内で」

鈴谷「ハイ」

吹雪「今の妄想ですと弾は少年です」

吹雪「一見、無垢ですが実は獰猛な狼」

吹雪「自分より年上の男性を手ごまに・・・」

吹雪「最初は抵抗するものの・・・段々と・・・」グヘヘ

734: 2015/04/15(水) 18:27:16.83 ID:EMbF5lNC0
吹雪「実際にやってみせましょう」キリッ

そう言うと吹雪は最後の練習機に狙いを定める。

吹雪「撃ちますっ! ほら!! 」

吹雪「少年が・・・中年男性を目指して・・・」

吹雪「ここですか!? ここがいいんですか!?」

吹雪「ほらっ! 挿れちゃいますよ!? アッーーー!!!」

見事命中して練習機は爆散した。

吹雪「ね? 簡単でしょ?」

鈴谷「・・・うん・・・さっ・・・参考になったよ」

朝潮「彼女、何を言ってるか分からないですけど・・・」

朝潮が話しかけてきた。

朝潮「技術は確かです」

鈴谷「そうだね・・・」

実際、縦横無尽に飛び回る航空機を確実に、正確に落として見せた。

無駄弾も使わず、1発で1機づつ落としていた。

途中で直線上に3機が並ぶ瞬間に撃った時は1発で3機も仕留めた。

まさに神業だった。

まるで敵の動きを全て先読みしているかのように。

鈴谷「皆凄いね・・・ちょっと着いていけないレベルじゃん」

曙「そうかしら? すぐに追いつくと思うけど?」


735: 2015/04/15(水) 18:27:55.36 ID:EMbF5lNC0
鈴谷「どうしてそんなに強くなろうとするの?」

雷「戦うためよ」

鈴谷「雷・・・」

雷「戦って守るため」

鈴谷「・・・人間を?」

雷「それもあるわね。一応は」

電「電達が守りたい人は、この世に、ただ一人なのですよ」

鈴谷「・・・提督?」

暁「そうよ」

瑞鳳「敵を全部倒すには強くなるしかないからね」

鈴谷「敵って・・・深海棲艦だよね?」

この場の艦娘全員『・・・・・・』

まるで、深海棲艦だけが敵ではない。

そんな空気だった。

鈴谷「・・・みんな? どうしたの?」

電「頃すのは悲しいのです」

電「出来れば戦いたくない・・・」

電「でも、司令官さんに危害が及ぶ可能性がある以上は・・・」

電「頃すしかないのです。全て・・・」

長門「敵が深海棲艦だけなら良いんだがな・・・」

736: 2015/04/15(水) 18:28:24.20 ID:EMbF5lNC0
蒼龍「一つだけ言っておくよ」

赤城「敵とは・・・」

この場の艦娘全員『 提督に害を成すモノ全てだよ・・・ 』

鈴谷「・・・・・・っ」ゾクッ

見ると周りの娘は皆、じっと私を見ていた。

誰一人口を開かず、私を見ていた。

私の反応次第で何かしらの対処をする・・・

その為に、どう反応するか伺っている。

何かを試されている。

考えすぎかもしれないけど、そういう風にも感じた。

なんて答えて良いか分からなかった。

如月「もしもだけど・・・」

鈴谷「・・・何?」

如月「司令官が・・・突然殺されたとしたらどうする?」

鈴谷「・・・え?」

如月「貴女は・・・許せる?」

頭に過ぎったのは憲兵だった。

737: 2015/04/15(水) 18:29:03.72 ID:EMbF5lNC0
欲望を剥き出した気持ち悪い顔で体を求めてきたクズ共。

あいつ等が提督を頃す場面が、ふと脳裏に過ぎった。

提督が氏ぬ。

考えてゾッとした。

嫌・・・嫌・・・嫌・・・・嫌だぁ・・・

まるで、世界が終わったかのような絶望。

そんな世界に生きていて意味があるのかと。

想像しただけで足が震えてきた。

如月「もう一度聞くわよ?」

如月「そんなことされて・・・」

如月「 許 せ る ?」ハイライトオフ

許せるか? 提督が殺されたとして許せる?

許せるワケがない。

――――絶対に。

鈴谷「・・・頃してやる」

如月「・・・・・・」

鈴谷「もし、そんなことになったら・・・」

鈴谷「ソイツを頃す!! 深海棲艦じゃなくても・・・」

鈴谷「例え相手が人間でもっ!!!」

如月「・・・ふふっ」ニコッ

如月が満足そうに笑った。

738: 2015/04/15(水) 18:30:03.33 ID:EMbF5lNC0
長門「確かに人を殺せば犯罪だ。許されるわけが無い」

長門「だが、だがだ・・・」

長門「提督が殺害される。もし、そんなことになったら・・・」

長門「私も他の者もソイツを地の果てまで追いかけて頃すだろう」

長門「道徳的にいけないことであってもだ・・・」

長門「それだけ許されないことなんだよ私達の中ではな・・・」

鈴谷「・・・・・・」

赤城「旧大戦時、味方ですら足を引っ張り合いました」

赤城「企業は海外に会社の利益の為に油田や採掘場が欲しい」

赤城「そうやって好き勝手に軍と手を組み・・・賄賂を送り」

赤城「利益を得たい一部の高官、軍部が・・・」

赤城「争うように次々と海外へ戦線を拡大させていきました」

赤城「やがて戦況は不利になっても・・・」

赤城「まだ自分だけの欲の為に好き勝手やる始末」

赤城「ただでさえ、大国相手に戦ったんです」

赤城「一時でも個人の欲を捨て、勝つために一丸となるべきだった」

赤城「でもね、出来ないんですよ人間って。高い地位にある程ね」

赤城「結局は自分の欲。そういう生き物ですから」

赤城「何時の時代も敵よりも・・・」

赤城「味方の方が面倒な敵だったりするものです」

739: 2015/04/15(水) 18:30:33.55 ID:EMbF5lNC0
赤城「だから恐いんです」

赤城「人のいざこざに提督が巻き込まれないか」

赤城「例えば内部の権力争いとかですね」

加賀「そういった最悪の事態に陥ったときに・・・」

加賀「提督に牙を向く全てを殲滅する力を求めているの」

長門「向けられた悪意を事前に摘む・・・」

長門「可能な限り、穏便にな」

長門「殺害・・・と言うのはな」

長門「それ以外の打つ手が、全て途絶えた時の最終手段だ」

長門「誰も好き好んで手を汚そうとは思っていない」

雷「そんなことをすれば司令官が悲しむもの・・・」

長門「その為には力が要る・・・もっとな」

長門「手を出せばタダじゃすまない・・・」

長門「そう思わせるだけの力が・・・」

翔鶴「一言で言えば抑止力ですね」

長門「私達はどのような事態でも・・・」

翔鶴「どんな相手でも・・・」

電「倒せる力を求めているのです」

朝潮「だからもっと強くならないと・・・」


740: 2015/04/15(水) 18:31:03.64 ID:EMbF5lNC0
鈴谷「・・・言いたいことは分かった」

鈴谷「多分ね・・・私も同じだよ」

鈴谷「ここに来て、半年も立ってないけど・・・」

鈴谷「提督のことが・・・好きなんだと思う」

鈴谷「あんなに私を見てくれて」

鈴谷「あんなに私を大事にしてくれて」

鈴谷「あんなに私を理解してくれようとする」

鈴谷「初めて会ったよ・・・あんな人」

鈴谷「あの優しい人が・・・」

鈴谷「酷い目に遭わされたら・・・」

鈴谷「それを実行した奴は絶対に許せない」

鈴谷「実行しようと考えているだけでも・・・」

鈴谷「鈴谷は許せないと思う」

自然とそんな風に言葉が口から出た。

そして気付いた。どれだけあの人に惹かれているか、

どれだけ提督が大好きなのか。

最初は絶対にアンタの思い通りになんかならない、

もう絶対に誰の命令にも従わない。

そんな風にも思ったのに・・・

何時の間にか私は提督のことが大好きになっていた。


741: 2015/04/15(水) 18:31:31.08 ID:EMbF5lNC0
そんな大好きな人が傷つき、倒れるのは

想像するだけでも苦痛だった。

何も恐れることは無い。

既に私は人間を殺そうとしたじゃないか。

当時の私の指揮官・・・黒提督を。

雷「その言葉を聞いて安心したわ」

長門「ああ、これで君も本当の意味でも私達の仲間だ」

皆、笑って拍手をする。

なんか照れくさかった。

鈴谷「でも・・・いいの?」

瑞鶴「何がよ」

鈴谷「・・・私が提督を貰っちゃっても」

加賀「・・・面白い冗談です」

長門「まぁ誰が選ばれても・・・その時は祝福するさ多分」

長門(多分、私は無理だがな・・・)

他の艦娘達「そうだよ。恨みっこ無しだよ。祝福するよ多分」

他の艦娘達(私は絶対無理だけど・・・)

鈴谷「私達は・・・家族で仲間で・・・」

鈴谷「恋敵だね・・・」

響「そうなるね」

翔鶴「・・・負けるつもりはありませんけどね」

全員『ふふっ・・・あははっ』ハイライトオフ

742: 2015/04/15(水) 18:32:23.66 ID:EMbF5lNC0
鈴谷(皆・・・頑張ってるんだ。私だって・・・)

それから頑張って、努力して、もっと強くなろうと思った。

もっと・・・もっと強く。

少なくても、今度は私のせいで撤退なんてしないように。

この時から私は皆と今までより仲良くなった。

だけど・・・だけど・・・

まだ私は完全には他者を信用出来なかった。

この人達は大丈夫。

今度の仲間は大丈夫。

そう信じているハズなのに・・・

心の奥底では、また裏切られるのではないかという・・・

小さな不安が取れずにいた。

大好きと自覚した提督に対しても・・・

鈴谷(本当に私って・・・嫌な女)

思った以上に黒提督の鎮守府での事が、

トラウマになっているようだった。

信じている、信じたい・・・

それでも、どこかで不安があったのだ。

私はもっと絶対的な安心が欲しかった。

760: 2015/04/17(金) 00:03:36.36 ID:j6OWIYr00
それから・・・

私は実戦で勝利を重ね、

レベルも上がり、改装を受けて航巡になった。

提督「おめでとう、鈴谷。よく頑張ったな」

提督はまるで自分のことのように喜んでくれた。

その一言が嬉しかった。

その為に頑張ってきたと思えた。

本当に・・・この人が好き・・・大好き。

なのに不安が消えない。

心の奥底では、『信じていいの? 本当に?』

そう懸念し続ける自分が居た。

そして・・・

ある日の真夜中。

私は全ての不安を消すために決心する。

コンコンッ

提督「誰だ?」

鈴谷「まだ起きていたんだ」

提督「鈴谷か・・・おまえこそまだ起きてたのか」

鈴谷「・・・・・・」

提督「ここには慣れたか?」

鈴谷「・・・うん。みんな優しいよ」

提督「そうか・・・良かった」

761: 2015/04/17(金) 00:04:12.88 ID:j6OWIYr00
鈴谷「・・・私をこのまま、ここに置いていていいの?」

提督「・・・鈴谷? どういう意味だ?」

鈴谷「私さ、前の鎮守府で黒提督を殺そうとした」

提督「・・・知っている」

鈴谷「失敗しちゃったけどね」

提督「・・・・・・」

鈴谷「提督はさ、夜曾野さんに言われたから私を気に掛けてくれたの?」

提督「・・・最初はそうだったかもな。でも今は違う」

提督「君の境遇を聞いて、力になりたいって思った」

提督「心から助けたいって思った・・・」

鈴谷「優しいね・・・提督は」

鈴谷「私はさ、もう何も信用出来なかった。人も艦娘も」

鈴谷「信じても裏切るから。酷いことするから。私を否定するから」

提督「・・・・・・」

鈴谷「でも・・・ここに来て・・・」

鈴谷「暖かさを知ったんだ。とても心地がいい・・・暖かさを」

提督「そう思ってくれるなら嬉しいよ」

鈴谷「でも恐いんだ。全部、全部、全部・・・」

鈴谷「なんかの失敗で消えちゃいそうで・・・」

鈴谷「信じてもまた裏切られるんじゃないかってさ」


762: 2015/04/17(金) 00:04:47.05 ID:j6OWIYr00
鈴谷「今度、裏切られたら・・・」

鈴谷「私は多分、貴方を頃してしまうかもしれない」

鈴谷「こんなに良くしてくれた仲間を頃してしまうかもしれない」

提督「・・・・そんなことはないさ」

鈴谷「皆もさ・・・」

鈴谷「仲間だって言ってくれる一方で・・・」

鈴谷「本当は提督に言われたから・・・」

鈴谷「優しくしているだけなんじゃないかって・・・」

鈴谷「そうやって・・・心の底では誰も信用してない」

鈴谷「嫌な女だよね私」

鈴谷「そんな危険な娘を置いておける?」

鈴谷「だからさ・・・私を完全に貴方のモノにしてよ」

そう言うと鈴谷は服を脱ぎ始める。

提督「・・・おいっ!!」

鈴谷「私ね、色々酷いことされたけど」

鈴谷「女として大事なモノは守ったよ? そこまで奪われたら屈辱だから」

提督「やめなさい・・・」

鈴谷「貴方だったらいいと思ったの」

鈴谷「私を滅茶苦茶にしてよ。悪いこと全部消してよ・・・」

鈴谷「そうしたら変われるから・・・」

763: 2015/04/17(金) 00:05:19.24 ID:j6OWIYr00
提督は自分の上着を脱ぐと私に被せた。

鈴谷「私のことは抱けない?」

鈴谷(また私は失敗したのかな・・・)

鈴谷(私、馬鹿だから・・・)

鈴谷(もう・・・どうしていいかワカラナイや)

提督「自分の体はもっと大事にしろ・・・女の子なんだから」

鈴谷「覚悟して来たんだけどな・・・」

提督「そんなに震えてか?」

そう言われて気がついた。体が震えていることに。

鈴谷「でも、そうでもしないとっ!!」

鈴谷「私はもう裏切られない、そんな絶対的確信が欲しいの!!」

鈴谷「そうじゃないと怖いんだよ・・・」

鈴谷「ようやく楽しいって思えるようになったのにっ!!」

鈴谷「また突然、全部消えちゃう気がして・・・」

提督「もう誰も鈴谷を裏切らない!! 俺も、皆も!!!!」

鈴谷「・・・ありがとう。でも信用出来ないんだ。人なんて内面は分からないから」

提督「鈴谷っ!!!」ギュー

鈴谷「・・・え? 提督?」

鈴谷(抱きしめられてる・・・///)


764: 2015/04/17(金) 00:05:55.08 ID:j6OWIYr00
提督「過去にどんな酷いことがあったかは知ってる」

提督「辛かっただろう、助けて欲しかっただろう・・・」

提督「でも、今はお前は俺の艦隊の艦娘で、大事な部下だ」

提督「オマエは俺が絶対守ってあげるから・・・」

提督「もう、二度とあんなことにはならないから・・・」

提督「絶対に裏切らない。絶対に・・・」

提督「皆だって、俺に言われたからじゃない、お前を認めてるんだよ」

提督「同じ艦隊の仲間だって、友達だって、家族だって」

鈴谷「家族か。前にも言ってくれたよね・・・」

提督「この艦隊の皆は家族だ。共に生活して、共に戦っていく・・・家族だ」

提督「ここでは、もう誰もお前に酷いことはしない」

鈴谷「今度は・・・本当に信じていいのかな?・・・」グスッ

提督「ああ、信じろ・・・信じてくれ」

提督「信じてくれたこと、後悔はさせないよ。絶対に」

提督「悲しい過去は変えられないけど・・・」

提督「これから、いくらでも楽しい未来は作れるんだ」

提督「皆と、これから作っていこう? 楽しいって思える未来をさ」

鈴谷「・・・提督」

提督「それでも・・・もし俺が裏切ったなら・・・」

提督「そう、少しでも感じたなら、その時は俺を撃てばいい」

765: 2015/04/17(金) 00:06:22.09 ID:j6OWIYr00
鈴谷「・・・分かった」

鈴谷「その代わり、もし逆に私が皆を・・・」

鈴谷「提督を裏切ったら・・・提督が私を撃って・・・頃して」

提督「それは・・・・・・」

鈴谷「・・・できない?」

提督「当たり前だろう」

鈴谷「これは契約だよ。そうじゃないと私は前に進めないから・・・」

提督「・・・分かった。約束する」

提督「そして、そんなことに絶対ならないことも約束しよう」

言いたい事を全部ぶちまけたら心の奥底にあった不安は、

何時の間にか綺麗さっぱり消えていた。

鈴谷「ありがとう。改めてよろしくね。提督」

提督「ああ、よろしくな。鈴谷」


766: 2015/04/17(金) 00:06:56.16 ID:j6OWIYr00
それから今まで溜まっていたモノを吐き出すように泣いた。

心に重く圧し掛かっていたモノが消えていく。

これで、ようやく全ての枷から開放された気分だった。

涙で滲む視線の先に・・・

あの時、私を庇って沈んだ娘が見えた。

鈴谷(ごめんね。私は・・・もう大丈夫だから・・・)

今まで悪夢にしか現れなかった彼女が私に向かい微笑んだ。

―――良かったね。これで私も安心して皆の所に行けるかな。

そう言われた気がした。

彼女は氏んだ後も私を・・・そう思うと涙が止まらなかったが、

とてもとても優しい気持ちになれた。

言いたい事は山ほどあった。謝りたかった。

でも自然と頭に浮かんだ言葉は感謝の言葉だった。

鈴谷(本当にありがとう・・・)

彼女はとても満足そうに優しく笑いながら静かに消えていった。

まるでもう心残りはないとばかりに。

鈴谷(もう大丈夫。私は・・・前に進むよ。貴女の分まで・・・)

提督は優しく私を抱きしめて、泣き止むまで撫でてくれた。

767: 2015/04/17(金) 00:07:30.43 ID:j6OWIYr00
そして現在・・・

鈴谷「色々あったよね・・・提督」

優しく、寝ている提督の頬にキスをする。

鈴谷(私は提督が大好きだよ。本当に大好き)

鈴谷(私だけじゃない、皆、提督が大好き)

鈴谷(・・・それこそ狂ってしまうくらいに)

鈴谷(本当は提督に私を選んで欲しい・・・私を・・・)

鈴谷(でもね・・・誰か一人を選んだら・・・)

鈴谷(選ばれなかった他の娘はきっと・・・堕ちると思う)

鈴谷(深い・・・深い・・・闇に・・・)

実際の所、過去何度か負の感情に飲まれそうな艦娘は居た。

だが、陥った本人も、提督も、

無自覚にそれを回避していた為、最悪の事態は免れていた。

提督は常に正しくあろうとした。

それは既に自分自身も忘れてしまった幼い頃の父と母との約束。

父と母が大好きだった幼い提督は、

両親が仕事で家を長期開ける事に不満を抱き、泣いて駄々をこねた。

幼い提督は泣けば両親が家に居てくれると思ったのだろう。

泣きじゃくる我が子に困った両親は約束した。

『正しく、良い子にしてれば、すぐ帰ってくるから』

それを聞いて、提督は頑張った。ずっとずっと。


768: 2015/04/17(金) 00:07:56.98 ID:j6OWIYr00
結局、両親は帰らなかった。

それでも頑張った。ずっとずっとずっと・・・

元帥に引き取られ、そんな約束はすっかり忘れてしまっても、

無意識に正しくあろうとした。それが当たり前のこととして。

やがて、それは彼の人格となり、

本人も無自覚のまま、誰が見ても正しいと思う

模範的すぎる好青年となった。

ある種、彼もまたどこか歪であったのだ。

また、提督は軍人の父と艦娘の母の間に出来た子供であった。

血の半分が艦娘のハーフ。それが理由か定かではないが、

無自覚ながら通常の人間よりも艦娘に対して親近感が強かった。

まるで妹や自身の娘のように心から彼女達を愛していた。

さらに艦娘達からしても、提督は何か・・・

安心出来るような親しみやすい感覚があった。

まるで同族のように。

そんな提督に純粋に愛される艦娘達。

誰だって向けられる無垢な好意を悪く思う者は居ない。

ただの兵器としてではなく、

一人の女の子として、人間として見てくれる優しい人。

それが恋愛感情に変わるまで、そう時間は掛からなかった。

純粋な愛であればある程に艦娘達の恋愛感情は高くなり、

既にその感情は一般のそれとは比べられない領域にあった。

769: 2015/04/17(金) 00:08:31.86 ID:j6OWIYr00
愛が強ければ強い程に裏切られたと、

一度でも思えば負の感情は大きくなる。

愛情の分だけ反転した憎悪に変わる。

もしも・・・提督が誰か一人を選んだ場合、

その負の感情は提督が選んだ、

ただ一人の娘に向けられることになるだろう。

深海棲艦と艦娘の類似点等を理由に、

沈んだ艦娘が深海棲艦化すると言う噂があった。

悲しみや、憎しみが限界を超えた時・・・堕ちると。

あくまで噂だが・・・でも、もしも・・・

もしも事実ならば・・・

きっと選ばれなかった娘達は堕ちる。

それも選ばれた一人を除いて全員が・・・

それ程までに提督は愛されているのだ。

ただでさえ、各々が通常の艦娘のセオリーから外れた

非常識な強さを身につけてる現状で、

もしも噂どおり深海棲艦になったら・・・

鈴谷(この国はどうなるのだろうね?)


770: 2015/04/17(金) 00:09:02.07 ID:j6OWIYr00
艦娘である今の状態でも他の同型の娘を

遥かに凌駕しているのだ。

姫級と対峙した際も、恐ろしい相手であるハズの姫級が

一方的に嬲られて、恐怖と絶望の表情を見せ・・・

こんなことはありえないと否定し、叫びながら沈んでいった。

そんな仲間達が全て深海棲艦と化したら・・・

この国は恐らく滅ぶことになるだろう。

鈴谷(そうなるって分かっても、皆・・・)

鈴谷(提督、貴方に自分が選ばれたいんだよ?)

すやすやと寝息を立てる提督。

鈴谷(でも、提督はそんなこと知りもしないだろうけどね)

鈴谷「・・・この朴念仁」

そう言ってもう一度優しくキスをした。今度は口に。

771: 2015/04/17(金) 00:09:51.28 ID:j6OWIYr00
鈴谷「それじゃあ出張権限を行使しますか」

提督のベッドに潜り込む。

提督は朝に弱いので、自分の方が早く起きるのは確実。

仮に提督が早く起きたとしても、

夜中にトイレに行って、寝ぼけて間違えたとでも言えば

なんとかなるだろう。

鈴谷(折角のチャンスなんだから堪能しないとねぇ)

鈴谷(提督・・・今・・・私、凄い幸せだよ?)

鈴谷(私を救ってくれてありがとう・・・)

鈴谷(これからもっと・・・)

鈴谷(楽しいって思える未来を作っていかないとね?)

布団の中で提督に抱きつく。

大きな背中。とても愛おしく感じた。

鈴谷(おやすみ。提督)

私はとても安心して眠ることが出来た。

772: 2015/04/17(金) 00:18:43.97 ID:j6OWIYr00
投下完了。
感想何時もありがとうございます。
見ていると頑張ろうって思います。本当にありがとう。

ようやく鈴谷編終わった。長々すんませんね。
当初のプロット版から書き足し過ぎて凄い伸びちゃった!

このスレだけで終わらす予定がボリューム付けすぎて
2スレ目まで行きそうで・・・恐い・・・

ちょっと仕事の関係で5月半ばまで忙しいので
投稿頻度は遅くなるかもしれません。
また近いうちに投下しますね。(5日以内くらい)


基本的に安価とかはやるつもりはありませんが、
まだ出てない子で秘書やって欲しい娘が居たらさり気なく
書いておいて貰えると、シーンが浮かべば書き足すかも。

※扱いが一般的な常識と感性から外れる可能性もございます

長々すいません。
おやすみなさい。

774: 2015/04/17(金) 00:27:10.49 ID:CWMWzCsVO

引用: 提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」