1: 2021/03/08(月) 22:03:10.409 ID:2n3I/n5c0.net
編集長「今度、雑誌で『渋谷のJK特集』をやりたいから、ひとっ走り取材してきてくれ」

男「えっ……。俺、ああいうチャラチャラした連中苦手なんですよ。他の奴に……」

編集長「今のご時世、転職や再就職は難しいだろうなぁ……」

男「わ、分かりましたよ! 行きますよ、行けばいいんでしょ!」

編集長「いい返事だ! さっすがウチの雑誌のエース!」

男「よくいうよ……」



男(というわけで渋谷に来たが……女子高生は、と……)キョロキョロ

男(お、いたいた。顔もまあまあじゃないか)

男「ねえ、君」

JK「オラか?」
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)
2: 2021/03/08(月) 22:06:34.482 ID:2n3I/n5c0.net
男(オラ……?)

男「えぇと、渋谷の女子高生に取材したくて……」

JK「やったぁ! ついにオラにもこういうのが来ただか!」

男「あ、いや……ちょっと間違えたような……」

JK「間違えてねえべ! オラ、じょす高生だっぺ! よろすくお願いすます!」

男「よろしく、といわれても……」

JK「ささ、どんな取材でもお受けするだ!」ガシッ

男(JKらしからぬ腕力! とんでもないのに引っかかっちまった……)

3: 2021/03/08(月) 22:09:29.633 ID:2n3I/n5c0.net
―カフェ―

男「ここで少し話を聞かせてもらおうかな」

JK「いんや~、オシャレなサ店だべ!」

店員「ご注文は?」

男「なに飲む?」

JK「牛乳!」

男「ミルクね。じゃあ店員さん、コーヒーとミルクを一つずつ」

店員「かしこまりました」

4: 2021/03/08(月) 22:12:10.657 ID:2n3I/n5c0.net
男「……で、君、本当に渋谷の女子高生……JKなの?」

JK「本当だっぺ! ほら、こいつ見てけれ!」サッ

男(生徒手帳……ウソではないのか)

JK「オラ、生まれも育ちも渋谷だっぺ!」

男「“生まれ”も……?」

JK「すまね。ちょっと見栄張っちまっただ……」

男(見え透いたウソをつかないでくれ……反応に困る)

6: 2021/03/08(月) 22:16:13.726 ID:2n3I/n5c0.net
男「いくつか質問に答えてもらえるかな?」

JK「なんでも聞いてけれ!」

男「んー……じゃあ趣味は?」

JK「趣味……」

男「例えば、カラオケ行ったりとか……」

JK「歌は好きだ! オラばりばりの演歌派だべ!」

男(演歌歌う女子高生なんて天然記念物じゃなかろうか)

JK「あと……モグラ叩きとか!」

男「モグラ叩き? ゲームセンターにでも行くの?」

JK「いんや、畑に出てくるモグラさブチのめすだよ!」

男(リアルモグラ叩きかよ……)

7: 2021/03/08(月) 22:19:11.164 ID:2n3I/n5c0.net
男「料理とかする?」

JK「もちろんするだ!」

男「へえ、家庭的なんだ。どんな料理?」

JK「えーと、おむすびとか、ぬか漬けとか、佃煮とか……」

男「なかなか渋いラインナップだね……」

JK「甘いのも作れるだ! おまんじゅうとか……きんつばとか……」

男(そういう意味じゃない)

9: 2021/03/08(月) 22:22:30.438 ID:2n3I/n5c0.net
男「動物は好き?」

JK「大好きだっぺ!」

男「もしかしてペットとか飼ってる?」

JK「飼ってるだ!」

男「犬? 猫?」

JK「もちろん牛だべ! こいつがめんこくてよぉ~」

男(酪農めいたこともやってるのかよ……)

12: 2021/03/08(月) 22:25:50.954 ID:2n3I/n5c0.net
男(ダメだ。これ以上この子を取材しても、変な記事になるだけだ)

男「貴重なお話ありがとう。今日はこの辺で……」

JK「……」シュン

男「え?」

JK「やっぱり……オラじゃダメか?」

男「な、なにが?」

JK「あんたの顔さ見れば分かる。あんた、ガッカリしてるだべな?」

男(う、鋭い!)

JK「やっぱりオラ、憧れの“渋谷のJK”にはなれねえだ……!」

男「お、おい、なにも泣かなくても……」

13: 2021/03/08(月) 22:28:28.477 ID:2n3I/n5c0.net
JK「オラ、昔からどうしても都会っちゅうもんに憧れてて……」

JK「父ちゃん母ちゃんに無理いって、渋谷の高校さ通うことにしただ」

男「……」

JK「だどもオラ、渋谷じゃどうしても浮いちまって……」

男(渋谷じゃなくても浮くと思う。それはもうルアーの如く)

JK「友達もなかなかできなくて……やっぱりオラ、ダメな子なんだぁ!」

JK「“渋谷のJK”にゃなれねえんだぁ!」

男「……」

14: 2021/03/08(月) 22:31:15.017 ID:2n3I/n5c0.net
JK「渋谷でスタアさなって、父ちゃん母ちゃんやみんなを驚かせたかったけんど……」

JK「オラじゃ無理だったんだっぺな……」

JK「渋谷に来てもうかなりになんのに、いまだに渋谷さ馴染めてねえオラじゃ……」

男「……」

男「そんなことは……ないだろ」

JK「え?」

15: 2021/03/08(月) 22:34:21.479 ID:2n3I/n5c0.net
男「月並みな意見だが……」

男「渋谷のJKが演歌歌っちゃいけない、牛を飼ってちゃいけない、だなんて誰が決めた?」

男「取材の狙いとは違ったから、さっきは話を切り上げようとしてしまったが」

男「俺は君が間違ってるとは思わない。ダメだとは思わない」

男「君はそのままでいいんだ。君は立派な渋谷のJKなんだから……」

JK「……!」

18: 2021/03/08(月) 22:38:12.188 ID:2n3I/n5c0.net
JK「あんた、いい人だぁ……!」ガシッ

男「いやいや、君を泣かせた悪い人だよ」

JK「あんたに出会えてよかっただぁ……!」

男「涙拭きな。せっかくのミルクがしょっぱくなっちゃうぞ」

JK「あ、すまね」ゴシゴシ

男「そうだ、君の特集をさせてくれないか?」

JK「え、オラの?」

男「ああ……君のキャラクター性は十分記事になる! 君単独の特集記事を書いてみたい!」

20: 2021/03/08(月) 22:41:48.230 ID:2n3I/n5c0.net
男「君の一日のスケジュールを教えてくれ」

JK「まず、朝起きたら乾布摩擦して……」

男「ふむふむ……」



男「座右の銘は?」

JK「一日一善、ご飯は五膳!」

男「ぷぷっ、いいね。なかなか面白い」

JK「ありがとだべ!」

22: 2021/03/08(月) 22:44:28.402 ID:2n3I/n5c0.net
男「今日もどうもありがとう」

JK「こっちこそ! 牛乳ご馳走になっちまって!」

男「これから社に戻って、記事にできるかどうか編集長にかけあうけど……」

男「なんとか説得してみせるよ!」

JK「よろすくお願いすますだ!」

24: 2021/03/08(月) 22:47:51.660 ID:2n3I/n5c0.net
男「編集長、記事ができました」

編集長「どれどれ……」

編集長「え……『渋谷のオラオラ系JK』……!?」

男「はい、ぜひこの子の特集を組みたいんです!」

編集長「……」

男「お願いします!」

編集長「ふーむ、面白いかもしれん。やってみろ」

男「ありがとうございます!」

25: 2021/03/08(月) 22:51:55.978 ID:2n3I/n5c0.net
しばらくして――

JK「おはよ……」

同級生「おっ、来た来た!」

JK「なんだべ……?」

同級生「雑誌見たぜ!」

女友「すごいじゃん! こんな有名な雑誌に特集されるなんて!」

JK「え……!」

ワイワイ…

26: 2021/03/08(月) 22:53:46.728 ID:2n3I/n5c0.net
JK「こないだ、たまたま取材さ受けて……」

同級生「あんまり話したことなかったから、お前のことよく知らなかったけどすげーな!」

女友「ホント! 今度ぬか漬け食べさせてよー!」

ワイワイ…

「今度一緒にカラオケ行こうよ!」 「もっと自分出してこうぜ!」 「牛見せてよ!」

JK「みんな、ありがとう……」

27: 2021/03/08(月) 22:56:26.322 ID:2n3I/n5c0.net
……

JK「男さん、雑誌読んだっぺ!」

男「どうだった?」

JK「最高だ! おかげでスタア気分を味わうことができただよ!」

男「よかった。かえってからかわれたりしたら、と少し心配だったんだ」

JK「そんなことねえ! みんな、すごいすごいって褒めてくれただ!」

男「喜んでもらえて俺も嬉しいよ」

28: 2021/03/08(月) 22:59:28.603 ID:2n3I/n5c0.net
JK「あのう……お願いなんだけんど」

男「なんだい?」

JK「オラの父ちゃん母ちゃんに会ってくれねえだか?」

男「え、どうして?」

JK「オラ、雑誌に載れただよって報告したいだ! できれば、男さんも一緒に……」

男「“故郷へ錦を飾る”ってやつか。いいとも、付き合うよ」

29: 2021/03/08(月) 23:02:17.802 ID:2n3I/n5c0.net
JK「ここがオラの故郷ですだ」

男「うーん……空気が綺麗だ」

JK「じゃ、狼煙でオラが帰ってきたことを知らせるんで」

男「狼煙!?」

JK「フーッ! フーッ!」

モクモクモク…

JK「父ちゃん母ちゃん、まだ“すまほ”持ってなくて……」

男(狼煙ってスマホより数段階前のような気がする)

30: 2021/03/08(月) 23:05:24.479 ID:2n3I/n5c0.net
父「おお、お帰り!」

母「雑誌見ただよ!」

JK「見てくれただか!」

父「おめえも立派になっただなぁ! ビックリしただよ!」

JK「んでな、今日は記者の人連れてきただよ!」

男「初めまして。娘さんには大変お世話になりまして……」

父「おお~、おめさんが娘をスタアにしてくれただか!」

母「ありがとうございます、ありがとうございます!」

32: 2021/03/08(月) 23:08:52.815 ID:2n3I/n5c0.net
母「どうぞ、ご飯と漬物ですだ」

男「……」モグッ

男「……」ポリポリ

男「これはうまい!」

父「いんや~、よくもまあオラの娘を記事にしてくれますた!」

男「いえいえ、こちらこそ。今時の女子高生を相手にするより、取材しやすかったですよ」

男「とても素直ないい子ですから」

父「そういってもらえるとありがてえべ」

33: 2021/03/08(月) 23:11:42.738 ID:2n3I/n5c0.net
父「ところでおめさん、独身だか?」

男「はい、そうですけど」

父「娘にゃまだ男がいねえけんど……おめさんのような旦那がいりゃあ、心強い!」

男「え?」

母「おめさんら、いつ結婚するだか!」

JK「ちょっとぉ、父ちゃん母ちゃん、気が早すぎるだよ!」

男「ハハハ……」

34: 2021/03/08(月) 23:14:30.770 ID:2n3I/n5c0.net
父「おめたちが結婚したら村をあげて歓迎しねえとな!」

母「んだんだ!」

男「いやいや、さすがに雑誌記者が女子高生に手を出したらマズイですよ!」

JK「ってことは……」

男「?」

JK「女子大生ならいいだべか……?」

男「まあ……いいかもしれない」

JK「んじゃ、オラ一生懸命勉強するだ! 大学さ入って女子大生になるだ!」

男「うん……頑張れよ! 応援してる!」

35: 2021/03/08(月) 23:17:44.386 ID:2n3I/n5c0.net
……

男「次号のダイエット特集の記事できました」

編集長「ご苦労」

編集長「ところで……例の渋谷のJKいただろ」

男「はい」

編集長「あの記事、かなり反響が大きかったが、その後彼女の追跡取材はしてないのかね?」

男「ええ、勉強の邪魔はしたくありませんし」

男「彼女が立派な“渋谷のJD”になるのを待ちますよ」







―おわり―

36: 2021/03/08(月) 23:23:31.893 ID:wdRyms5fr.net
この着地点が捻ろうとしたけどずるずる行っちゃった感

37: 2021/03/08(月) 23:25:00.634 ID:Ck/kyshHr.net

コンパでどぶろく飲むJDになりそう

引用: 渋谷のJK「オラじょす高生だっぺ! よろすくお願いすます!」