206: 2012/10/12(金) 10:35:24 ID:Ya/BPPR6
タイトル    男「三十年経ったからだよ」


男「今日で僕達も50か、早いもんだな」

男2「あぁ、若い頃は年月は経つのが早いなんて訳知り顔でいう年寄りを
「馬鹿にしたものだが・・・・・・」

男「自分がなってみると、言いたい気持ちもわかるな。いや年月は経つのが早いよ」

男2「今度は若い奴に馬鹿にされる立場になったわけだ」

男「いや、めでたいね」

男2「むなしくもある。しかし、なんにせよ三十年来の旧友とこうして50歳の誕生日を」
「祝えるのは幸せだな。もう疎遠になった人ばかりだから」
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)
207: 2012/10/12(金) 10:36:09 ID:Ya/BPPR6
男「そうだね。いや、この年になると、持つべきものは友人という言葉が沁みるよ」

男2「全くだ。・・・・・・と、乾杯がまだだったかな」スッ

男「・・・・・・ははは、いや昔はグラスが割れんばかりにぶつけたが」スッ

男2「今は、かすかに音が響く位がちょうどいいね」

男・男2「「・・・・・・乾杯」」・・・・・・チン
グイッゴクリ
男2「いや、近頃じゃ女房に飲む量を減らされて思いっきり酔えるのは久しぶりだよ。」
  「・・・・・・どうした?お前もやれよ」

男「・・・・・・」

男2「なんだなんだ、いきなり黙って。まさかガンになったとかそんなのじゃないだろうな」ハハハ

208: 2012/10/12(金) 10:36:48 ID:Ya/BPPR6
男「違うさ。ただ、昔を思い出してね、感慨に耽ってしまってさ」

男2「なるほどな、まぁとにかく飲めよ」
グイッゴクン
男「いや、すまない」

男2「しかしそうか。三十年か・・・・・・。特にお前なんて○子さんを・・・・・・あ、すまん」

男「いや、いいんだいいんだ。あいつが逝ってから五年。」
 「確かに昔の事ばかり思い出しているよ」

男2「でも、息子さんもいるんだろ?年、いくつだっけ?」

男「もう22さ。就職活動をひいひいいいながらやってるよ」
 「お前の所は娘さんだったかな?」

209: 2012/10/12(金) 10:37:26 ID:Ya/BPPR6
男2「ああ、中学と高校が一人ずつ。いや、順調に嫌われつつあるよ」

男「ははは、ウチのもそのぐらいの頃は反抗期で手がつけられなかったよ」
 「今は少し落ち着いているがな」

男2「なんというか、こっちはオシメもかえてやった事があるっていうのに・・・・・・」

男「ははは、僕らも両親にそう思われていると思うと、むずがゆいよ。」
 「あ、俺が注ぐよ」トポトポトポ

男2「いや、本当に時々若い頃に戻りたくなるよ。何も考えずに馬鹿やってれば」
  「良かったころにさ」

男「お前と○○先輩は特に好き勝手やってたからなぁ。」
 「その分そういう気持ちも俺なんかより強いか」

男2「○○先輩か。懐かしいな。ひどい人だったなぁ。」

210: 2012/10/12(金) 10:38:14 ID:Ya/BPPR6
男「一緒に無茶やってたくせによく言うよ。あぁ、そういえば昨日○○先輩にあったよ」

男2「へぇ、どうだった?」

男「いや、結構なおじさんになってたよ」

男2「それをいうなら俺達もだろ。でも、そうか。確かにあの人が老けるのは想像できないな」

男「そうだろう?実は流れで飲みにいったんだよ」

男2「ほぉ、どちらかといえば不仲だったあの人とお前が。」
  「30年も経つと関係も変わるもんだなどんな話をしたんだ?」

211: 2012/10/12(金) 10:38:48 ID:Ya/BPPR6
男「昔の話とか、○子の話とかさ。ちょうどこんな風に酒飲みながらしたよ」

男2「あの人酔ってたか?」

男「いや、そうでもなかったな」

男2「やっぱり若い頃みたいにはいかないか。昔はすごかったが」

男「というかさ」

男2「ん?」

男「のたうちまわってた」

212: 2012/10/12(金) 10:39:26 ID:Ya/BPPR6
男2「ん?もしかして、病気か何かか?」

男「病気かどうかはわからん。毒飲ませたからな」

男2「毒?おいおいお前さっきからなにいってるんだ?」

男「直にわかるさ。お前にも同じものを飲ませたからな」

男2「おいおい・・・・・・変な冗談よせよ」

男「お前と○○先輩はホントに無茶やってたからな。」
 「○子の事もそういう無茶の一つだったんだろ」

男2「何で○子さんが出てくるんだ?さっきから全然話がみえん」

213: 2012/10/12(金) 10:40:09 ID:Ya/BPPR6
男「しらばっくれるなよ。もう○○先輩からも裏はとれてるんだ」
 「昔○子を酔わせて二人で犯したってさ」

男2「な・・・・・・おお前でたらめいうのもいい加減にしろよ」ブルブル

男「手足、震えてきたか?そういう薬だからな。もうすぐだぞ」
 「それでさ、お前ら○子が忘れたと思ってたんだろ?覚えてたんだよ、はっきりと」

男2「嘘だろ?もう前もわからないぐらいベロベロだったし・・・・・・」

214: 2012/10/12(金) 10:41:16 ID:Ya/BPPR6
男「自白したな。あいつそれ以来すっかり暗くなってな。一時は自殺未遂までおこしたんだ」

男2「そ、そんなそぶりは・・・・・・」

男「そりゃ、そうさ。あいつ自身無かった事にしたがってたからな。」
 「外でそんな顔をみせるわけない。結局あいつは氏ぬまでその事を、拭いきれなかったよ」

男2「いや、それは・・・・・・でも今更」

男「○○先輩もそういってたよ。今更、今更って呪文のようにさ」
 「医者が言うんだよ。奥さんに生きる力がもっとあれば長く生きられただろうってね」
 「はっきりいうぞ。お前が、○子を頃したんだ」

215: 2012/10/12(金) 10:41:57 ID:Ya/BPPR6
男2「そんなわけないだろ!こじつけもたいがいにしろ!ウッ・・・・・・」ふにゃあ

男「・・・・・・体、もう全然力入らないだろ?それが直に苦しみに変わっていって、氏ぬ」
 「よかったな、仲良しの先輩と同じ氏に方だ」

男2「こんな、事、して、警察が・・・・・・」

男「でもお前は氏ぬ。俺には十分だ」

男2「・・・・・・なぁ、ちょっとした出来心だったんだよ。許してくれよぉ」
  「よくある事じゃないか、なぁ許してくれよ、頼むよぉ」

男「いや、命乞いする様までそっくりだな。お前ら本当に仲良しなんだな」

216: 2012/10/12(金) 10:42:55 ID:Ya/BPPR6
男2「お前、ふざけやがって、三十年も前の事じゃねぇか。それを今更」

男「三十年たったからだよ。だから許せないんだ」

男2「・・・・・・なぁ、息子さんもよろこばねぇよこんな事」

男「息子には伝えてあるよ。納得してくれたよ。息子も○子を慕ってたからな」
 「わかるか?お前のしたことはそういうことなんだよ」

男2「・・・・・・なんだよそれ、狂ってるよ親子共々」

217: 2012/10/12(金) 10:44:06 ID:Ya/BPPR6
男「・・・・・・ところで薬効くの遅いだろう。疑問におもわないか?なぜまだ氏なないのかって」

男2「は?」

男「そりゃそうだ、毒なんていれてないからな。お前が飲んだのは」
 「ただの睡眠薬だよ」

男2「どういう事だ」

男「おいおい、まさか息子の人生まで台無しにして人頃しするわけないだろう?」

男2「おまえ・・・・・・ふざけるなよ?人生、めちゃくちゃにしてやるからな」

男「ふざけてないよ。もうおねむみたいだから最後に言っておくが」

218: 2012/10/12(金) 10:44:48 ID:Ya/BPPR6
男「二度と笑うな」

男2「なに?」

男「お前の笑顔は○子を頃して得た笑顔だ。二度と喜ぶな。」
 「お前の喜びは○子を頃して得た喜びだ。子供達の成長を祝うな」
 「その子供達は○子を頃して得た子供達だ」 

男2「・・・・・・」

219: 2012/10/12(金) 10:45:53 ID:Ya/BPPR6
男「わかったか?これから俺の影に怯えてこそこそ隠れて暮らしやがれ」
 「ヘラヘラしてやがったら、今度こそぶっ頃してやる。いいか?娘達もだ」
 「○子と同じように犯してやる。お前の目の前でな。わかったか?」

男2「なんで・・・・・・こんな、もう三十年も経ってから・・・・・・」

男「何度も言わすなよ」

男「三十年、経ったからだよ」
 「じゃあ、おやすみ」
                                      終わり

220: 2012/10/12(金) 10:47:15 ID:Ya/BPPR6
終わりです。
おじさんが書きたくてやりました。

221: 2012/10/12(金) 11:34:05 ID:1mg.EPA.

引用: 【オリジナル】SS深夜秋の短編祭【部門1】