71: 2015/05/19(火) 00:49:00.13 ID:pQYy4GqH0


最初から:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」

前回:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」第八話

朝の朝礼中・・・

提督「という訳で週明けから作戦を開始するので各自、備えて欲しい」

提督「何か質問はあるか?」

ハーイッ ハーイ

提督「では・・・そこ」

金剛「MVPを多く取れば、ご褒美があると言うのは本当デスか!!?」

提督「え? そうだな・・・別に構わんが・・・」

扶桑「それはどのような褒美なのでしょうか?」

提督「え・・と・・・じゃあ間宮さんの所の券とかはどうだ?」

満潮「はぁ!? 馬鹿じゃないの!!?」

提督「え? ダメか?」

満潮「どうせなら、もっと良い褒美を寄越しなさいよ!」

提督「・・・例えば?」

満潮「司令官が、なんでも言うことを聞くとかどうかしら?」

提督「・・・なんでも?」

全員「!!!!」

満潮「そうよ。MVPが一番多かった娘の願いを1個だけ聞くのよ」

提督「常識の範囲内で、尚且つ実現可能なことであれば構わんが・・・」

満潮「これで報酬は決まったわね」

提督「例えば満潮なら、どんなことを頼むんだ?」

満潮「そりゃ司令官と2人でデー・・・ってここで言えるワケないでしょっ! このバカっ!!」

提督(なんで怒られたんだろう)

満潮「その時になったら言うわよ///」

提督「他に質問はあるか?」

時雨「どういう基準での判定なのかな? 単純に一番多く取ればいいのかな?」カチャッ

提督「こら、室内で艤装を展開するのはやめなさい」
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録 (カドカワデジタルコミックス)
72: 2015/05/19(火) 00:50:07.84 ID:pQYy4GqH0
榛名「そうですか・・・一番多く取ればいいのですね」ハイライトオフ

提督「別に数は関係ないと思うがね。皆が貢献して頑張ったならさ」

提督「皆が頑張ったなら、全員にご褒美をあげてもいいと思ってるが・・・」

翔鶴「それではダメなんですよ提督」

翔鶴「優劣を決める為にも・・・」ハイライトオフ

提督「優劣・・・? なんの?」

一同(((他の娘を出し抜く為とは言えない・・・)))

長門「ふむ、アレだ。あえて順位をつけ、競わせることでお互いを高めようと言うワケだよ提督」

陸奥「そうよ。みんな仲良く一等賞なんて馬鹿らしいでしょ?」

利根「そうじゃ。それじゃあ面白くない。競ってこそ、腕があがると思うがの」

イムヤ「うん。やっぱり競って勝ち取るから価値があると思うわ」

大井「と皆さん言っておりますが、どうですか提督。意見を採用してみては?」

提督「君達の士気の貢献に繋がるなら許可しよう」

如月「でも・・・ちょっと待って」

赤城「どうしたんです?」

如月「それだと戦艦の方ばかりMVP取って有利じゃないかしら」

電「では、各艦種ごとにMVPが多かった者ではどうでしょうか」

浜風「そもそも駆逐艦は数が多いし、全員が作戦に参加できるのかしら?」

駆逐艦達(電以外)「・・・・・・」ガチャ

提督「なんで一斉に艤装展開したの!?」

駆逐艦達(((ここで数を減らしておけば・・・)))ギロッ

南方(こいつら本当に駆逐艦か・・・? なんだこの殺気)ゾクッ

電「皆、止めるのです」

駆逐艦達「・・・・・・」

電「・・・二度も同じ事を言わせないで欲しいのですよ」ニコッ

駆逐艦達「「「ごめんなさいっ」」」ビクッ

電「皆、仲良くするのです。司令官さんが困ってるのです」


73: 2015/05/19(火) 00:50:42.69 ID:pQYy4GqH0
提督「よく分からんがありがとう電」ナデナデ

電「どういたしましてなのです~♪」

浜風(羨ましい・・・)

加賀(流石、初代秘書艦・・・この鎮守府最強の娘ね・・・)ゾクッ

提督「・・・なるべく皆が参加できるように調整して編成するよ。それでいいか?」

瑞鶴「良いと思う」

金剛(そうなると、攻略は普通の速度の方がいいってことデスか?)ヒソヒソ

赤城(そうなりますね。あんまり早く攻略すると主力メンバーだけで終わります)ヒソヒソ

提督「大体の目安だが、攻略は1週間~10日を見込んでいるが・・・」

大淀「妥当かと思います」

雷(本気でいけば、すぐ終わりそうだけど・・・)ヒソヒソ

長門(流石に半日も立たず、攻略したら大本営に目を付けられるしな)ヒソヒソ

陸奥(そうね。あんまり派手にやって提督が本部に転属とか困るし・・・)ヒソヒソ

青葉(仮にそうなっても上層部を抑える取引材料はありますけどね)ヒソヒソ

霧島(ごく普通にいきましょう)ヒソヒソ

ビスマルク(普通の基準が分からないわ。普通ってなんだっけ?)ヒソヒソ

プリンツ(弾に当たったら怪我したりですかね?)ヒソヒソ

長門(掴んで投げ返すのは普通に入るのか?)ヒソヒソ

陸奥(入るわけないでしょっ!)ヒソヒソ

金剛(あんまし派手に戦って、お淑やかなイメーがジ無くなるのも嫌デース)ヒソヒソ

榛名(申し訳ありませんが、元々そんなイメージは・・・)ヒソヒソ

陸奥(そうね・・・)

金剛(!!?)

提督「皆、どうしたんだ・・・?」

全員「「「なんでもないですよー」」」

提督「皆、仲良いなぁ。良いことだ・・・」

74: 2015/05/19(火) 00:51:40.66 ID:pQYy4GqH0
執務室

提督「今週は作戦準備で書類が沢山あるなぁ」

阿賀野「そうだね~」

提督「さっさと取り掛かるか」

阿賀野「意見箱? 要望箱だっけ? あれはどうしたの?」

提督「最近はあまり入らないから週一くらいで開けてるよ。朝礼で話しただろう」

阿賀野「ごめんなさい。聞いてなかったみたい」

提督「そうか。そうだと思った」

阿賀野「ひどいなー 阿賀野も聞くときは聞いてるよぉ?」ジトメ

提督「(朝礼は)何時も聞いてて欲しいんだがね・・・」クスッ

阿賀野「何時も聞いてるよ? 提督さんの声は・・・毎日毎日毎日・・・」ボソッ

提督「なんか言ったか?」

阿賀野「なんでもないでーすっ」

提督「だったら早く書類を頼むよ・・・仕事しよう」

阿賀野「もうちょっと待ってね」

提督「何してるんだ?」

阿賀野「提督日誌つけてるの~♪」

提督「なんだソレ。何を書いてるんだ?」

阿賀野「乙女の秘密だよ」

提督「いいからさっさと仕事してくれ乙女」

阿賀野「はーい」

75: 2015/05/19(火) 00:52:22.71 ID:pQYy4GqH0

鎮守府内の廊下


南方「監視がついているとは言え、敵である私に自由を与えるとは変な場所・・・」

南方「至る所にカメラがあるから自由に動いていいですよって・・・」

南方「まず、なんでそんなにカメラがあるのかしら・・・監視としても多すぎるような?」

南方「執務室の写真、あれをもう一度見たい・・・」

南方「・・・何かを忘れている気がする」

南方「とても大事な何かを・・・」

コンコンッ ガチャッ

南方「失礼するわ」

南方「あら? 誰も居ない? 提督も、秘書艦も?」

南方「まぁいいわ。あの写真をもう一度見たいだけだし・・・」

目的の物はすぐ見つかった。

南方「これだ・・・やっぱり・・・」

南方「・・・何か、心を揺さぶられる。何? なんでこんなにも・・・」

――――悲しいの?

写真の男と女はとても幸せそうに見えた。

南方「・・・本当に幸せそう」

写真に写る女性は、小さな赤子を大事そうに抱いていた。

南方「2人の子供かしら?」

やはり、自分はこの写真の人物を知っているのだろうか?

何か大切な、とても大切な事のハズなのに・・・それが思い出せない。

この写真はそれを思い出させてくれる鍵になると思ったのに。

南方「・・・いいわ。また来ましょ」

南方「14時から長門と将棋のリベンジの約束もあるしね・・・」

南方「・・・あら?」

机の上に置いてある冊子。それに目がいった。

南方「ていとくにっし・・・?」

南方「何かしら」パラッ

76: 2015/05/19(火) 00:53:05.08 ID:pQYy4GqH0
○月○日 

提督さんは朝6時に起床。

昨日より12分早かった。

寝言で他の女の名前を口にした。その娘は要注意。

朝の朝礼までにトイレに2回入った。

昨日の深夜1時34分に酒のツマミに食べた刺身が当たったのかな? 

朝礼で提督さんは眠そうだった。あくびを嚙頃したのは3回。

睡眠時間が3時間22分じゃ少ないんじゃないかな?

倒れたりしないか心配。

提督さんに朝の挨拶をした。

笑顔で返してくれた。この笑顔は私だけに向けられるべきだと思う。

提督さんの反応を見ても相思相愛なのは間違いない。

もう少しでケッコンも出来る。

提督さんは皆に優しいから・・・そのせいで、

あんまり他の女が勘違いするのは面白くない。

本日の秘書艦は文月ちゃんだった。

文月ちゃんは提督さんのひざの上に自然と座った。

なにそれ? なんでそんなことが許されるの?

駆逐艦だから? 小さければ・・・子供のすることで許されるの?

ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。

ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。

そこは阿賀野の場所なのに。

提督さんと2人で談笑しているのが許せない。

そこをどいてよ。阿賀野の場所だよ? どいてよ。

戦場では流れ弾とか珍しくないんだよ?

南方「・・・なにこれ」パラッ

77: 2015/05/19(火) 00:53:40.04 ID:pQYy4GqH0
○月○日

中略

提督さんが電話をしていた。

通話時間は28分37秒。

相手は女性みたいだった。

誰? 誰なの? なんでそんなに笑顔なの?

盗聴した会話の内容から察するに、提督さんの同業者であり、

学校時代の先輩らしい。昔の提督さんを知ってるんだぁ・・・

それは少しゆるせないかなぁ。

過去を知ってるから優位に居るとか勘違いしてほしくないな。

突然現れて昔の女面したりされたら、艤装が勝手に展開して誤作動起こしちゃうかも。

事故なら許されるかなぁ・・・

提督さんには阿賀野が居るんだからダメなんだよ?

他の女に目移りしちゃ・・・

浮気はダメだよ?

絶対ダメだよ?

じゃないと・・・わたし・・・

ドウナルカ ワカラナイヨ?

南方「・・・・・・」パラッ

78: 2015/05/19(火) 00:54:38.97 ID:pQYy4GqH0
○月○日

中略

今日の秘書は山城さんだった。

着任当初はお姉さま、お姉さまって言ってた癖に

提督、提督言っててイラっときちゃった☆

なんで、そんな潤んだ目で提督さんを見ているの?

貴女はお姉さま大好きなアレな人じゃなかったの?

周りには嫌々秘書艦やってる風に言ってるけど、

本当は楽しみで仕方ないことは知ってるんだから。

提督さんにお弁当を作ってきたのもあざとい。

何がお姉さまの分を作ったついでなの?うそつき。

提督さんが好きなオカズばっかりだった。

それ、初めから提督さんの為に作ったんだよね?

だって扶桑さんは食堂でお昼取ってたもん。

それおかしいよね?

お弁当は最初から提督さんの分しか作って無かったんでしょ?

提督さんが嬉しそうに美味しいって食べてた。

山城さんがチラチラ見ながら顔赤くしてた。

何?その空気。イチャイチャしないで。

私の提督さんを取らないで。

その人は阿賀野の運命の人なの。

だから誰にも渡さない。絶対。

能代も言ってたけど・・・

他の姉好きな艦娘も警戒が必要かもしれない。

南方「・・なに・・・これ・・・こわい」パラッ

79: 2015/05/19(火) 00:55:20.99 ID:pQYy4GqH0
阿賀野「・・・何してるの?」

南方「っ!!!?」ビクッ

南方(何時の間に!? 気配を感じなかった!)

阿賀野「ネェ・・・ナニシテルノ?」ハイライトオフ

南方「なっ・・・なんでもないわ」ゾクッ

阿賀野「・・・それ」

南方「え・・・?」

阿賀野「・・・見たのかな? 中を見たのかな?」

南方「み・・・見てない・・・」

阿賀野「・・・本当に?」

南方「執務室に来たら落ちてたんで拾っただけよ。本当よ?」

阿賀野「・・・そう。見てないんだね?」

南方「見てない!! 何も見ていない!!」

阿賀野「そっか・・・ならいいや」

南方「これは貴女のなのね? 返すわ」スッ

阿賀野「ありがとう。 ところでなんの用事?」

南方「大した用じゃないわ。提督はどちらへ?」

阿賀野「今は工房に行ってるよ。装備の改修を頼みに」

南方「そう。ありがとう。出直すわね」

南方(早くここから逃げたい・・・)

阿賀野「でも良かったぁ」

南方「なっ・・・な・・何がかしら?」

阿賀野「中身見られていたら消すしかなかったから」

南方「ひっ!?」


80: 2015/05/19(火) 00:56:12.27 ID:pQYy4GqH0
阿賀野「・・・見てないんだよね?」

南方「何も見てないわっ!! 本当にっ!!」

阿賀野「うん。信じるね」

南方「じゃ・・じゃあ私はこれでっ」

ガチャッ  バタン

南方「恐かった・・・」

南方(何さっきの・・・あの恐ろしい殺気・・・)

あの阿賀野って言う艦娘には近づかないようにしよう。

南方「とりあえず、部屋から出られたし、一安心・・・」

そう思って、ふと後ろを振り返った。

何か、視線を感じたのだ。

すると、今出てきた執務室の扉がほんの少しだけ開いていた。

ちゃんと閉めたハズなのに。

その僅かな隙間から顔が見えた。

阿賀野。

彼女は無表情で扉の隙間からこちらを見ていた。

無表情でジッと見ていた。

喋るわけでもなく、ただ見ているだけ。

その目には光が無く、感情が読めない。

整った顔立ち故に余計にそれが不気味だった。

南方「っ!!!!」ゾクッ

言葉は出ない。悲鳴も上がらなかった。

本当に恐怖を感じると悲鳴をあげる所ではないんだなと思った。

そこで意識は途絶えた。

81: 2015/05/19(火) 00:56:56.64 ID:pQYy4GqH0
医務室

長門「おっ・・・目が覚めたか」

南方「・・・あれ?」

長門「どうした。約束の時間になっても来ないから探したぞ」

南方「今・・・何時?」

長門「16時だが・・・?」

南方「私、何をしていたの? ここはどこ?」

長門「知らんよ。ここは医務室だ。廊下で倒れていたらしい」

南方「倒れていた? 私が?」

長門「どうした? 何があった?」

南方「戦況は!? 戦況はどうなってるの?」ガタッ

長門「何の話だ? 落ち着けっ!!」

南方「私が能力(ちから)を捨てなければっ!!」

長門「どうしたと言うんだ・・・」

ガチャッ

提督「どうだ、長門。彼女の様子は」

長門「提督か。いや、様子がおかしくてな・・・」

提督「大丈夫か?」

南方「アナタ・・・? 生きて・・・」

提督「え? なんだ?」

南方「生きていたのですねっ!!」ダキッ

提督「ちょっ!? どうしたんだ一体!?」

長門「貴様、そのような行為は法律で認めてないぞ!!」

南方「良かった。本当に・・・」グスッ

長門「離れろっ!!貴様!!」

南方「ううっ・・・うわぁっーーー良かった。本当に」(号泣)


82: 2015/05/19(火) 00:57:35.12 ID:pQYy4GqH0
長門「提督!!」

提督「なんだ長門!」

長門「こうなったら私も抱きついて良いか!」

提督「なんで!?」

長門「南方棲鬼だけずるいだろっ!!!」

提督「いいからこの状況をなんとかしてくれよ!!」

提督「わけが分からん・・・」

南方「南方棲鬼・・・?」

提督「いや、貴女のことだが・・・」

南方「私が・・・南方棲鬼・・・?」

抱きついていた提督から離れると、ガラスに映る自分の姿を初めて見た。

南方「なん・・で・・・? 私は・・・戦艦・・・や・・」

―――ほう。中々のものだな・・・ただ頃すには惜しい。

南方「嫌。違う・・・違う・・・」

―――――オマエを私の配下にしてやろう。

南方「なに・・・この記憶・・・」

――――その憎しみ、存分に向けるがいいわ。かつての仲間達にね。

南方「こんなの・・・嘘・・・嘘・・・嘘嘘嘘嘘・・・」

――――今日からオマエは我が娘となれ。

―――――そして殺せ。

―――人間を、艦娘を・・・

――――――――――殺せ。

南方「いやぁぁぁっーーーーーーーーーーー!!!」

提督「おいっ!! しっかりしろっ!!」

長門「どうしたんだ? また気絶した・・・」

ガチャッ

明石「どうしました? 何事ですか?」

提督「いや、俺にも何がなんだか・・・」

それから少し経って南方棲鬼は目を覚ましたが、

今日一日の記憶は無かったと言う。

83: 2015/05/19(火) 00:58:32.02 ID:pQYy4GqH0
娯楽室

南方「どうしたの?」

長門「もう、大丈夫なのか?」

南方「え? 別になんともないけど・・・」

長門「そうか・・・良かった」

南方「変な艦娘ね。敵である私を心配するなんて」クスッ

長門「ふっ・・・そうかもな・・・」

南方「そうよ。ここは変な娘ばっかりね」

長門「私と将棋してくれるのはオマエくらいだからな」

南方「他にする相手が居ないの?」

長門「・・・面白くないんだ」

南方「何が?」

長門「皆が強すぎてな!! 全然勝てんっ!」

南方「・・・なんか子供みたいね」クスッ

長門「・・・五月蝿い///」

南方「そういえば、先日は駆逐艦の子とオセロやってたわね」

長門「・・ああアレなら勝てるハズだったんだが」

南方「盤が黒一色になるなんてあるのね」

長門「あれは私の完敗だった・・・何時かリベンジするさ」

南方「でも私も段々強くなって来てるけど?」

長門「まだまだ負ける気はしないなっ!!」フンスッ

南方(負けるとへそを曲げるから手加減しているのは黙ってよ・・・)

長門「そして皆から『長門さん強い!』『流石!』『カッコイイ!』と言われる存在になるんだ」

南方「そう。それは大変ね。頑張って」

長門「ああ、もちろんだ」

84: 2015/05/19(火) 00:59:38.88 ID:pQYy4GqH0
執務室

提督「お疲れ様」

阿賀野「お疲れさまでーす」

提督「今日はありがとう。書類仕事速くなったな。助かったよ」

阿賀野「頑張って覚えたからね!」エッヘンッ

提督「昔は全然だったのになぁ」

阿賀野「もうっ! 昔のことは忘れてってば!」

提督「ハハッ悪い悪い」

阿賀野「それより頑張ったんだよ? 阿賀野、ご褒美欲しいなぁ」

提督「ん? なんだい?」

阿賀野「撫でて欲しいかも」

提督「え? まぁいいけど・・ほら」ナデナデ

阿賀野「・・・うん、ありがと///」

提督「阿賀野の髪、サラサラだな・・・」

阿賀野「ちゃんとお手入れしているからね」

提督「うん。すごい綺麗だ」

阿賀野「っっ///」

阿賀野(本当に・・・こういうこと無意識で言うんだから・・・)

阿賀野「他の娘にも言ってるの?」

提督「え? 何を?」

阿賀野「ううん。なんでもないよ」

提督「もうこんな時間か。じゃあ阿賀野、お休み」

阿賀野「うん。お休み。提督さん」

ガチャ バタンッ

85: 2015/05/19(火) 01:00:19.59 ID:pQYy4GqH0
阿賀野型の部屋

能代「ちょっとぉ阿賀野姉ぇ・・・髪の毛洗わなかったの?」

阿賀野「今日は洗わなーい」

能代「なんで?」

阿賀野「提督さんが撫でてくれたからっ」フフンッ

阿賀野「綺麗だよって言ってくれたんだぁ~」

能代「・・・へぇ」ハイライトオフ

阿賀野「気持ちよかったなぁ」

能代「・・・どうやったの?」

阿賀野「お仕事頑張ったから撫でてって頼んだの」

能代「・・・いいなぁ」

阿賀野「私と提督さんが結婚したらさ、能代の兄さんになるじゃない?」

阿賀野「そしたら撫でて貰えばいいよ。お兄ちゃん撫でてってお願いしてさ」

能代「・・・は?」

能代「なんで阿賀野姉と提督が結婚すること前提なの?」

能代「分からないよ? 私と提督が結婚して阿賀野姉の弟になるかもしれないし」

阿賀野「・・・はい? 能代・・・寝ぼけてる?」ニコッ

能代「阿賀野姉こそ寝ぼけてるんじゃない?」ニコッ

阿賀野「別に寝ぼけてないよ? 少し未来の話をしただけ」

能代「ただの妄想じゃない」

阿賀野「能代のだってありえない妄想じゃない」

能代「・・・・・・」

阿賀野「・・・・・・」

2人「ふふふ・・・・」

阿賀野「・・・ねぇ、もう止めよ?」

能代「・・・うん。そうだね。ごめん阿賀野姉」

阿賀野「・・・うん」

能代「でも・・・将来、どっちが選ばれても・・・」

阿賀野「恨みっこなしだね」

能代「うんっ」

95: 2015/05/28(木) 00:44:11.97 ID:7KqEUBKJ0
執務室

提督「こっちの書類は終わりっと・・・」

那珂「もうやだー」

提督「どうしたんだ?」

那珂「那珂ちゃんはー こういう仕事に向かないかなーって」

提督「無理そうなら他の者に代わるか?」

那珂「それはもっとやだー」

提督(口ではこう言うけど・・・仕事はテキパキこなしてらっしゃる・・・)

那珂「終わった! そっちはどう?」

提督「片付いたよ。後は編成案のチェックくらいかな」

那珂「お疲れ様でーす」

提督「ああ、お疲れ様」

那珂「ねぇ提督・・・こういうのじゃなくてさ、歌の仕事とかない?」

提督「・・・ないな」

那珂「艦隊のアイドルとしては、ライブとかやりたいなぁ」

提督「そういえば、よく寮の前や食堂で歌ってるな。何度か聞いたよ」

那珂「神通ちゃんには怒られたけどねぇ・・・周りの迷惑だって」

提督「日頃、頑張ってるし、極度にハメを外さないなら別に構わないけどな」

那珂「ホント!? 提督の許可を貰ったって言えば大丈夫だね! お墨付きだもんっ」

提督「本当に歌うのが好きなんだなぁ那珂は」

那珂「うんっ!」

提督「好きって思えることがあるのは良いことだ」

那珂「提督はネットの映像投稿サイトとかって見る?」

96: 2015/05/28(木) 00:45:06.97 ID:7KqEUBKJ0
提督「いや、あまり見た記憶はないな・・・」

那珂「私ね、たまに歌った動画を投稿してるんだ」

提督「へぇ・・・すごいじゃないか」

那珂「でも、全然アクセス数が伸びないの。私の歌って何か足りないのかな・・・」

提督「俺はアイドルと言うモノに疎いのだが・・・」

提督「とても那珂らしい、可愛らしい良い歌声だと思ったがね」

那珂「かっ・・・可愛らしい!? 本当!?」ガタッ

提督「あっ・・・ああ、素直にそう思ったけど・・・」

那珂「ありがとぉ!!」ダキッ

提督「こらこら・・・いきなり飛びつくな・・・」

那珂「なんで伸びないかなぁ・・・アクセス」ハァ

提督「良く分からないけど・・・誰か詳しい人に聞いてみるか?」

那珂「・・・詳しい人いるかなぁ」

神通「・・・・・・オホン」

那珂「!!!?」

提督「神通か。どうした?」

神通「遠征が終わりましたのでその報告に・・・」

提督「ありがとう、お疲れ様。怪我をした者は居ないか?」

神通「大丈夫です。お心遣い感謝致します」

提督「補給を済ませたら今日は休んで構わない。次の隊に出るように伝えてくれ」

神通「はい。ところで・・・」

那珂「ああ・・ああ・・・」ガクブル

神通「なんで貴女は提督に抱きついていたの?」ハイライトオフ

那珂「いえ、ちょっと・・・色々ありまして・・・」

97: 2015/05/28(木) 00:45:40.66 ID:7KqEUBKJ0
神通「まさか・・・提督にご迷惑をおかけしてないでしょうね?」

那珂「けして!! そのような事はけして、しておりませんっ!!」

提督(・・・那珂が正座してる)

神通「・・・本当に?」ジッ

那珂「ひゃいっ!! 本当ですっ!!」

提督「神通。那珂は何もしてないよ。あまり攻めないでやってくれ」

那珂「てぇいとぐぅ・・・」ナミダメ

神通「すいません。先日もこの子が他の方に迷惑な行為をしたものでして・・・」

神通「きつくお説教をしたばかりなんですよ」

神通「ご迷惑をおかけしてないなら・・・なんで提督に抱きついてるの?」

那珂「だって!!神通ちゃんが恐いからっ!!」

提督「まぁまぁ、そこら辺でやめてくれ」

神通「・・・提督がそういうのでしたら」

提督「所で神通、君はアイドルや音楽に詳しいか?」

神通「いいえ。恥ずかしながら、そういうモノには疎くて・・・」

提督「誰か詳しい者は知らないか?」

神通「では、何名かに聞いて見ますね。失礼します」

ガチャッ  バタンッ

那珂「恐かったぁ・・・」

提督「何をしたんだ?」

那珂「ちょっと食堂で深夜のゲリラライブを・・・」

提督「それは怒られて当然だろ・・・」

那珂「反省してます」ドゲザ

98: 2015/05/28(木) 00:46:35.31 ID:7KqEUBKJ0
それから少しして・・・

トントンッ

提督「どうぞ」

漣「ご主人様ぁ~ 神通さんから聞きましたけど、アイドルのことが知りたいんですか?」

夕張「私達もすごい詳しいワケじゃないんですけど・・・」

漣「ぶっちゃけ面白そうだから来ました!」

提督「いや、俺じゃなくてな・・・」

漣「ふむふむ、那珂さんの歌のアクセス数が伸びないと・・・」

夕張「実際の映像とか見れますか?」

那珂「ちょっと待って・・・私のノートパソコンに入ってるから・・・コレだよ」

那珂がパソコンを操作すると映像が流れ始めた。

提督「綺麗な歌じゃないか・・・可愛らしい」

那珂「ありがと///」

漣「・・・確かに歌は綺麗です」

夕張「うん。けど駄目ね」

那珂「・・・なんで? どこが悪いのかな?」

漣「綺麗過ぎてつまらないです」

夕張「ありきたりで、インパクトがないですね」

漣「これじゃ記憶に残らないですよ」

那珂「うう・・・」

漣「再生数も300ちょいですね」

那珂「毎日10人くらい、来てくれてるんだけどな」

夕張「少ないですよソレ」

漣「足りないのはインパクト、そして記憶と耳に残る曲だと思いますね」

夕張「他の方の意見も聞いてみましょうか」

那珂「でも今仕事中だし・・・」チラッ

提督「今日の仕事は8割終わったから構わないけどな」

那珂「ごめんなさい。すぐ戻るから!」

99: 2015/05/28(木) 00:47:33.95 ID:7KqEUBKJ0
そして鎮守府内の艦娘達に聞き込みを開始した。

秋月「あいどる? 聞いたことがあります!」

秋月「隕石を壊すロボットのことですよね?」

秋月「以前、漣ちゃんから聞きました」

漣「それは別の奴。まぁこれを見て」

秋月「ぱそこん? おおっ!那珂さんが歌ってますね」

那珂「・・・どうかな?」

秋月「どうと言われても・・・普通に良い歌だと思いますよ?」

夕張「思ったことなんでもいいから言って見て?」

秋月「そうですねぇ・・・あえて言うなら・・・」

秋月「静か過ぎて記憶に残りづらいかも・・・」

那珂「・・・・・・」

秋月「すっすいませんっ!! ダメってワケじゃなくて・・・その」

那珂「うん。いいよ。ありがとう」

漣「どうすれば記憶に残ると思う?」

秋月「・・・う~ん。いんぱくとのある、ふれーずを入れるのは?」

夕張「例えば?」

秋月「そう言われましても・・・牛缶・・・」

漣「・・・え? 牛缶?」

秋月「いや、ただ脳裏に浮かんだもので・・・すいません」

那珂「ふむふむ・・・牛缶・・・っと」

夕張(メモ取ってる・・・)

漣「他の人にも聞いてみましょうか」

100: 2015/05/28(木) 00:48:09.69 ID:7KqEUBKJ0
野分「え? 那珂さんの歌!!?」

野分「もちろん、一日10回は聞いてます! 今まで300回は聞きました!」

夕張(あっ・・・)

漣(那珂さんの動画見ていたのってほぼ野分ちゃん・・・?)

那珂「   」

野分「どうしたんですか?」

夕張「那珂ちゃんの歌のダメな所探しの最中なのよ」

野分「・・・・・・は?」

野分「それは失礼ではないですか?」

野分「駄目な所なんてありません。あれは神。まじゴッド」

野分「現世に降りた天使の歌です」

漣(天使なのか神なのか・・・どっちなんです?)

野分「私は将来、司令と結婚して、小さくてもいいから一軒家に住み・・・」

野分「そこで娘を2人くらい産んで・・・」

野分「娘に那珂さんの歌を聞かせながら育てたい・・・」

野分「将来は那珂さんのようなアイドルを目指して欲しい」

野分「常々そう思ってまして・・・」

野分「悪い所なんて何一つないと思います!!」

夕張(さりげなく舐めたこと言いやがって・・・)

漣(ご主人様と結婚・・・やはり彼女も・・・)ハイライトオフ

那珂「そこまで言われちゃうとテレちゃうかな・・・アハハ」

夕張(あの那珂さんが軽く引いてる・・・)

那珂(なんでだろう? なんか心がズキっと来た・・・)

那珂(提督も何時かは・・・誰かと・・・)

――――嫌

那珂(・・・なんか嫌だな)

野分「お望みでしたら、那珂さんの魅力を延々と語りますが・・・」

漣「いえ、それは次の機会にでも・・・」

101: 2015/05/28(木) 00:49:28.73 ID:7KqEUBKJ0
磯風「ふむ? 那珂の歌?」

夕張「これなんだけど・・・」

那珂「どう? 感じたことを言って欲しいかな」

磯風「良い歌じゃないか」

那珂「ほんと!? 嬉しいなぁ」

磯風「だが・・・パンチが弱い気もするな」

那珂「・・・そう」

磯風「すまんな。悪意はない」

那珂「大丈夫だよ。ありがとう」

漣「どうすれば良くなると思う?」

磯風「そう言われてもな・・・」

磯風「私はそういうモノはあまり・・・どうしたものか」

磯風「では・・・少し過激なフレーズを入れたらどうだ?」

夕張「・・・過激?」

那珂「過激っと・・・ふむふむ」

磯風「そう言ったモノは記憶に残りやすいだろ?」

磯風「現に私もそうだ・・・」

漣「何かあったんです?」

磯風「浜風の奴がな・・・私に料理を覚えさせるのは無理だと言う」

磯風「犬に人の言葉を話させる方がまだ簡単だと・・・」

磯風「全く、失礼な奴だ」

磯風「それが悔しくてな、今まで猛特訓してたんだ」

夕張「では・・・その手に持ってるタッパーは・・・」

漣「磯風ちゃんの手料理?」

109: 2015/05/28(木) 23:52:27.97 ID:7KqEUBKJ0
磯風「味見を頼もうと、人を探していたが見つからなくてな」

磯風「どうだろう、答えてやった対価に一口・・・」パカッ

漣(この人の料理は比叡さんと並ぶカオス・・・)

夕張「あの・・・これは・・・?」

磯風「見ての通りクッキーだが?」

夕張(どこが!?)

タッパーの中にあったのは黄緑色の謎の物体。

どう見ても、クッキーには見えない。

その物体はドクン、ドクンと脈をうっていた。

磯風「それも、ただのクッキーではない。生クッキーだ」

漣(なまぁ!?)

磯風「まぁなんだ? 生チョコみたいなものだ」

漣(・・・ナニコレ)

クッキー「シューーーー」ウネウネ

夕張(なんか湯気出てるし・・・動いてる・・・)

磯風「浦風は食べた瞬間に気を失って感想を聞けなかったんだ」

磯風「さぁ感想を聞かせてくれ・・・さぁっ!!」

夕張「スイマセン。先ほど昼食を済ませたばかりで・・・」

漣「同じく。那珂さんがお腹空いてるみたいですよ」

那珂「え? 何が?」

夕張(メモを取るのに夢中で聞いてなかったみたいね)

110: 2015/05/28(木) 23:53:02.10 ID:7KqEUBKJ0
漣「はいどーぞ」グッ

夕張(那珂さんの口に放り込んだ・・・)

那珂「へ? ぶほぉ!?」

磯風「どうだ? 旨いか? 旨いと言え」

那珂「あばおtkヲkrな!?!??”」ガクガクッ

夕張「すごい。顔の色が・・・変色して・・・」

漣「・・・やっちまった」

那珂「・・・・キュー」ドテッ

漣「那珂さんっ!!」

磯風「また倒れたか・・・何故だ・・・?」

夕張「なんで、そんなに料理をしたいんですか?」

磯風「決まっている。頑張っている未来の夫の為だ」

漣「へぇ・・・それってご主人様のことですか?」ハイライトオフ

磯風「ああ・・・妻になるなら、せめて家庭は支えたいと思ってな」

磯風「それと司令にちょっかいを出す発情したメス犬共への牽制だよ」

磯風「・・・ワカルダロ?」ハイライトオフ

夕張「・・・・・・」ハイライトオフ

磯風「まぁ最後に勝つのは私だがな・・・」フッ

漣「何、舐めたこと言ってるんですか?」

漣「選ぶのはご主人様ですよ?」

磯風「選ばれて見せるさ。ドんナ手を使っテもナ・・・」

夕張(・・・やはりこのままでは不味いわね)

夕張(あの計画を実行しないと最終的に皆で頃しあうことになる・・・)

那珂「みず・・・みずを・・・」ガクッ

111: 2015/05/28(木) 23:54:20.42 ID:7KqEUBKJ0
鎮守府付近海域

夕張「それで色々意見が出ましたけど・・・」

漣「やっぱりインパクトですよ」

那珂「・・・それでこの衣装?」

夕張「良くお似合いですよ」

那珂「うれしくないっ!!!」

那珂は顔はメイクで真っ白に。

デスメタルのような意匠の服を身にまとっていた。

夕張「大体今時、大人しい恋愛歌なんて流行りませんよ」

漣「そうです。パーとはっちゃけちゃいましょう」

那珂「・・・・・・何故こんなことに」

那珂「と言うか・・・なんで海上にいるの?」

夕張「艦娘なんですから、海の上で歌って踊った方がウケがいいでしょ?」

漣「もちろんご主人様の許可は貰ってますよ」

夕張「海上の方が映像的にも面白くなると思いますし」

那珂「な・・・なるほど・・・」

那珂「じゃあ・・・那珂ちゃんが背負ってる、この大きなスピーカーは何かな?」

夕張「ただのスピーカーですよ」

夕張(新しい実験兵装のテストも兼ねてますけど・・・)

漣「じゃあ、カメラ回しますよ!」

那珂「!!」

そう言われると、体は自然に動く。

悲しきかな、これがアイドルなんだなぁと那珂は思った。

112: 2015/05/28(木) 23:54:59.59 ID:7KqEUBKJ0
那珂「こうなればヤケだよっ!!!」

夕張「3.2.1! スタート!」

那珂「ォォォォォォォオオオオッ ギュウカンーーーーー!!」

漣(デス声・・・本当にこれでよかったのだろうか)

那珂「ファックッ!!! ドイツモコイツモ! ファックッ!!!」(ヤケクソ)

夕張(始まってしまったのでもう、どうしようもないです)

漣(始めさせたのは私たちですけどね)

那珂「ギャァァァオ!!! コロセ! コロセっ!!」

漣(まぁ本人もノリノリだからいいか)


深海・・・

ヨ級「なんだろ・・・? なんか歌が・・・」

カ級「ねぇもう帰ろうよ・・・この海域ヤバいって噂よ」

ヨ級「何かが・・・呼んでる・・・」フラフラ

カ級「ちょっと!! どこいくの!?」

ヨ級「ほら・・・この歌・・・私たちを呼んでるんだよ」

カ級「歌?・・・本当だ・・・」フラフラ・・・

ザパァ

漣「なんか深海棲艦が出ましたけど・・・どうします? 戦います?」

113: 2015/05/28(木) 23:55:55.44 ID:7KqEUBKJ0
夕張「いいえ。 予定通りよ。テストにちょうどいいわ」ピッ

何やら那珂の背負う巨大なスピーカーが音を立てて変形しているが、

那珂は気にせず歌い続けた。

那珂「コウゴウタル ヘンボー コウカイナド オソーイ!」

ライブを途中で止めるのは、那珂のアイドルとしてのプライドが許さない。

スピーカーから出る音は深海棲艦の思考に影響を与えていた。

ヨ級とカ級。2人とも仲間同士であるのだが、互いに相手が艦娘の姿に見えていた。

ヨ級「でち公!!今度こそ氏ねぇぇぇ!!!!」

カ級「貴様こそしねぇ!! でち公!! 大破してるのに何故沈まん!!!」

ヨ級とカ級は互いを敵だと認識して戦い始める。

完全に歌に支配され、自分達でも理由が分からないまま激しくぶつかり、頃しあう。

漣「・・・どうなってるんですかコレ」

夕張「感情の強い言葉・・・例えば歌ですね。それを利用する装置です」

夕張「相手の感情を増幅させたり、幻覚を見せたり・・・」

夕張「単純に思考を鈍らせたり・・・」

漣「かなりヤバそうですけど、私たちは大丈夫なんですか・・・?」

夕張「効果を与える条件があるのと、ある程度は調整できますし・・・」

夕張「安全装置を抜かない限り、深海棲艦にしか効きませんよ」

夕張「そう、抜かない限りは・・・」

漣「なんで2回言ったんです?」

夕張「戦わずに相手を無力化させる手段として開発してたんですけど・・・」

夕張「まだまだ過大が多そうです」

漣「誰の歌でもいいんですか? 例えば録音したのを使うとか」

夕張「強い感情があれば問題ないハズですね」

夕張「ただ、録音したモノだと効果はないです」

那珂が最後のフィニッシュを決め、歌い終わる。

そのタイミングで、那珂の背後で戦っていた2隻の深海棲艦は相打ちになり、双方が爆発した。

夕張「良い絵が撮れました。迫力満点です」

那珂「なんか那珂ちゃんの歌がヘタで爆発したみたいで嫌な気分だよ・・・」

114: 2015/05/28(木) 23:56:52.04 ID:7KqEUBKJ0
3人は鎮守府に戻り、夕張の私室で映像をアップロードした。

夕張「先ほどの映像をアップしましたけど見てくださいよ」

漣「うわぁ・・・まだ上げたばかりなのに、すごいアクセス伸びてる・・・」

那珂「本当だ・・・どんどん増えていく・・・」

夕張「これなら1万アクセスも時間の問題ですよ!」

漣「一時はどうなるかと思ったけど成功して良かったですね」

那珂「すごい・・・これだけ沢山の人が見てくれてるんだ」

夕張「この方向性で良かったのかも」

漣(良かったのかな・・・)

那珂「でも那珂ちゃんは・・・こんな過激な歌はあんまり歌いたくないなぁ・・・」

漣「ですが、アクセス数は間違いなく伸びてますよ?」

那珂「でも・・・こんな数まで行ったことないから、それは素直に嬉しいかも」

漣「それにしても、結構時間立ってますけど大丈夫ですか?」

那珂「あっ! 執務室に戻らないとっ!!」ダッ

ガチャ バタン

夕張「走ると危ないですよー」

漣「行っちゃいましたね」

那珂(私のバカ・・・折角、回ってきた秘書艦なのに・・・)

那珂(提督と2人きりの時間なのに・・・)

那珂(勿体無いことしちゃった。早く戻らないと・・・)

115: 2015/05/28(木) 23:57:31.58 ID:7KqEUBKJ0
執務室

ガチャ

那珂「すいませんっ!! 遅くなりました!」

提督「・・・うん? 那珂か。別に大丈夫だぞ」

那珂「はぁ・・・はぁ・・・」

提督「どうしたんだ。そんなに息をきらして・・・」

那珂「残ってる仕事は・・・?」

提督「もうないけど・・・気にするな。大した量じゃなかったし」

那珂「ああああ・・・私のバカバカバカ・・・」

提督「それよりどうだ? さっき言ってた歌の件は・・・」

那珂「え・・・あ・・・うん」

提督「歯切れが悪いな。上手くいかなかったか?」

那珂「上手くいったけど・・・なんていうか・・・」

那珂は提督に映像を見せた。

提督「これはまた・・・」

那珂「あははは・・・」

提督「方向性を随分と変えたな」

提督は苦笑いをする。どう反応して良いか分からなかったのだ。

それはそうだろう。

優しい恋愛ソングから、奇抜な衣装で放送禁止用語を連発する

過激なデスメタルになってるのだから。

那珂「・・・でもアクセス数はすごいんだよ?ほらっ」

提督「その割には浮かない顔をしているが?」

116: 2015/05/28(木) 23:58:17.45 ID:7KqEUBKJ0
那珂「・・・うん」

提督「那珂・・・?」

那珂「アクセス数が伸びたのは嬉しいけどね・・・」

那珂「提督はどう思う? コレ」

提督「ハッキリと言ってもいいか? 世辞を言っても仕方がないしな」

那珂「・・・どうぞ」

提督「正直、俺は前の那珂の歌の方が好きだな」

那珂「・・・アクセス数少なくて誰も見てくれないのに?」

提督「なぁ、アクセス数ってそんなに大事か?」

那珂「だって、それだけの人が見てくれているって証明だよ?」

那珂「誰かに聞いて貰えないと意味がないじゃん!!」

提督「那珂はさ、その数字の為に歌っているのか?」

提督「なんの為に歌ってるんだ?」

那珂「なんの為に・・・」

そもそも・・・

なんで、アイドルになりたいなんて思った?

かつての軍艦の記憶・・・

旗艦を勤めるも損傷、演習では大破、

華々しい戦果はなく、以後は輸送と護衛に従事。

ずっと裏方で頑張ってきた。

だから、この姿に生まれて・・・求めた。光を。

華々しい世界で輝きたいと思った。

表舞台に憧れた。

確かに、その思いは紛れもない本当の気持ち。

だけど・・・本当にそれだけ?

117: 2015/05/28(木) 23:58:57.87 ID:7KqEUBKJ0
那珂(私は・・・)

提督「音楽ってさ、音を楽しむって書くんだろ?」

提督「だったらさ、周囲の評価なんて気にしないで・・・」

提督「那珂自身が本当に楽しめる歌を歌えばいいんじゃないか?」

提督「少なくても俺には・・・」

提督「以前の歌を歌う那珂は、とても楽しそうに見えたぞ?」

那珂「確かに・・・楽しかった・・・」

でも、それはなんで?

とても楽しかった。満たされた。

愛を歌う恋愛歌。

でも・・・その愛は誰への愛?

何を誰に向けて歌っていた? 何を伝えたかった?

那珂「そっかぁ」

自分に足りなかったモノを理解した。

それは恋心。

提督を好きなのに、それを恋心だと自覚していなかった。

愛を歌っていたのに、自分自身はそれを自覚していない。

どこかで聞いた言葉を並べただけの歌。

それじゃあ、人の心に強く響かない。当然じゃないか。

恋を知らない者が恋を歌うなんて・・・

そんなの誰の心を動かせると言うんだろう。

那珂「こんなに簡単なことだったんだ」

好きだから想いを込めて歌う。

ただ、それだけ。誰かに聞いて欲しいって気持ちはある。

だけど、本当に聞いて欲しかった人はただ一人だったんだ。

那珂「ありがと。提督」

提督「うん? ああ、どういたしまして・・・?」

那珂「那珂ちゃんパワーアップ!!」

118: 2015/05/28(木) 23:59:43.66 ID:7KqEUBKJ0
川内型の部屋

那珂「ただいまー」

川内「お疲れー」

那珂「あれ? 神通ちゃんは?」

川内「演習やってたから・・・駆逐艦の子とお風呂じゃない?」

那珂「ねぇ、川内ちゃん?」

川内「うん?」

那珂「私さ、提督が他の子と居ると嫌な気持ちになるの」

那珂「今まで、この気持ちが良く分からなかったけどさ・・・」

那珂「ようやく自覚したよ」

那珂「私、提督のこと大好きだよ」

那珂「提督としてじゃなくて、一人の男の人として」

那珂「好きなんだ」

川内「・・・ふぅん。なんでそれを私に?」

那珂「川内ちゃんも好きなんでしょ? 提督を男の人として」

川内「・・・・・・・・・」

那珂「自覚したら色々分かっちゃった」

那珂「ああ、そういうことなんだって」

那珂「何時も夜戦って提督に言ってるけどさ・・・」

那珂「それ別の意味の夜戦ってニュアンスで言ってるよね?」

119: 2015/05/29(金) 00:00:18.96 ID:8Wsg+O320
那珂「部屋に居るときも変だと思ったんだ」

那珂「『提督と夜戦したい~』ってさ」

那珂「なんか言い方おかしいよね?」

那珂「色々分かっちゃった」

那珂「鎮守府の皆のこともさ・・・」

那珂「理解することで、ここまで見かたが変わるなんてビックリ」

川内「へぇ・・・それで? だから何かな?」ハイライトオフ

那珂「私は、川内ちゃんも好き。お姉ちゃんだもん」

川内「それは私もだよ。妹だもん」

那珂「でもさ・・・これだけは譲れないかな?」

那珂「提督のことはさ」ハイライトオフ

川内「・・・気が合うね。私もだよ」

那珂「それに神通ちゃんもだよね?」

川内「それだけじゃない、この鎮守府の艦娘全員そうだよ。間違いなく」

那珂「だからさ、一番身近な人に宣戦布告。それをしたかったんだ」

川内「我が妹ながら面白いねー」

那珂「私はこれからも歌うよ。自分が好きなように」

那珂「ただ『大好き』ってありったけの想いを込めて」

那珂「それが提督への私からの気持ちで、他の皆への宣戦布告だから」

川内「よく分からないけど・・・負けないよ?」

那珂「うん。私も」

那珂「絶対に」キッ

川内「良い眼だね・・・うん。妹でも手加減しないよ!」

那珂「こっちもだよ!!」

120: 2015/05/29(金) 00:00:50.80 ID:8Wsg+O320
食堂

野分「ハァハァ・・・こういう那珂さんもステキ・・・」

夕張「勿体無いですね。折角、沢山のアクセスが来てたのに消しちゃうなんて」

野分「ありがとうございます! この映像データをたった10万で売ってくれて」

夕張「いいですよ。欲しい人に渡る方がいいでしょうし」

漣「ちょっと値段ボリすぎじゃないですか?」

野分「那珂さんの歌にはそれだけの価値がありますっ!!」

漣「えっあっ・・・ハイ。そうですね」

南方「しかし・・・なんだこの歌というものは・・・凄まじいな」

南方「これがブンカと言うモノか」

南方「なんという破壊衝動の塊・・・」

夕張「全部が全部こんな歌じゃないですけどね」

南方「私も何かを叫びたい気分だ!」フンスッ

漣「では、ヤックデカルチャーと叫んで見てください」

南方「なんだそれは・・・?」

漣「文化に驚いた人類外の共通の正しい叫びですよ」

南方「分かった!」

121: 2015/05/29(金) 00:01:38.68 ID:8Wsg+O320
南方「ヤックでかるちゃーーー!!」

漣「キタコレ!!」

野分「少し静かにしてくださいよ!! 聞こえないじゃないですか!!」

南方「すっすまない」

漣(この人も随分馴染んだな・・・まだ数日なのに)

浜風「誰か!! 誰か!! 来て!!!」

漣「・・・どうしたんでしょう」

浜風「調理中の磯風を止めてぇぇぇぇ!!!!」

磯風「止めるな!! 今度は大丈夫だ!! 私を信じろ!!」

浜風「信じられる要素が何一つない!!」

鍋「GYAAAAA!!!」

直後、厨房は爆発した。

南方「ここは何時も騒がしくて面白いわね・・・」

夕張「ええ。こんな日常が永遠に続けばいいんですけどね・・・」

夕張「誰か一人が選ばれるんじゃなくて・・・」

夕張「皆で楽しく・・・何時までも・・・」

夕張「そう・・・永遠に」ハイライトオフ

南方「!!?」ゾクッ

夕張「未来永劫ね・・・」

漣「・・・・・・無理ですよ」

漣「だって皆・・・」

―――――自分が、そのたった一人に選ばれたいのだから

例え、親しき者を蹴落としてでも・・・

漣「だから何時かは終わっちゃうんです」

野分「・・・・・・そうね」

鎮守府は今日も平和だった。

122: 2015/05/29(金) 00:02:45.34 ID:8Wsg+O320
夜。

那珂は鎮守府の屋上で歌う。

自分の想いを込めて。

大好きです。貴方が好きです。

そんな気持ちを沢山込めて。

観客は提督一人だけ。

無理を言って聞きに来て貰ったのだ。

雲の隙間から漏れた月の灯りが那珂を照らす。

まるでスポットライトのように。

その光景はとても幻想的で、提督は思わず見惚れた。

透き通るような美しい歌声は歌う人の想いが感じられた。

聞く者を優しい気持ちにさせる歌。

那珂「どうだった?」

提督「・・・すごく綺麗だった」

那珂「きっきれい!?///」

提督「なんていうか・・・心に何かが響いてきた気がする」

那珂(それは愛だよ。貴方を好きって気持ち・・・)

那珂「その響いた気持ちに気付いたら・・・返事が欲しいかな?」

提督「・・・返事?」

提督「・・・それが、なんなのかまだ分からない・・・けど・・・」

提督「それが分かったら・・・ちゃんと伝えるよ」

那珂「今はそれでいいや。今日はありがとうね提督」チュッ

123: 2015/05/29(金) 00:03:12.15 ID:8Wsg+O320
提督「コラ・・・そういうことは止めなさい」

提督「女の子が軽々しく男にキスをするものじゃない」

那珂「色々お礼とお詫びだよ。 それに頬だから挨拶みたいなものなんだよ」

提督「その言い分、流行ってるのか?」

那珂「那珂ちゃん、わかんなーい」

2人はそんな応答が面白くて思わず笑ってしまった。

そんな2人を見つめる人物が居た。

野分だった。

偶然、提督と那珂が屋上へ上がる所を目撃し、気になって付けてきたのだ。

最初は那珂の歌を聞き興奮していたが、歌い終わって、

那珂が提督の頬にキスをした時、自分の中で黒い感情が芽生えた。

那珂のことは尊敬している。

彼女の歌は大好きだ。

嫌いになんてならない。なのに・・・・

野分(なんで・・・)

―――――今はこんなにも憎いんだろう。

その感情が理解出来なかった。

このままでは自分が狂っておかしくなる気がした。

野分は気付かれないように屋上から立ち去り、自室のベッドの中に逃げた。

何も見ない。聞かない。そうすればもう、あんなこと思わない。

この感情も明日には消えている。

そう願い、信じながらそのまま眠りについた。

124: 2015/05/29(金) 00:04:04.06 ID:8Wsg+O320
後日・・・

別の鎮守府

五月雨「おおおおおおっ・・・・」

夜曾野「どうしたの? ついに狂ったの?」

五月雨「失礼ですね!! これですよ!凄いんですよ!!」

夜曾野「音楽サイトォ? 素人が歌とかアップしてる奴でしょ?」

五月雨「この那珂ちゃんの歌が凄いんですって・・・最近有名ですよ」

夜曾野「なにそれ初耳」

瑞鳳「え?ご存知ないのですか!?」

瑞鳳「今、巷で注目を浴びている彼女の歌を?」

夜曾野「そんなに良いなら聞いてあげるわ!」

夜曾野「ただし、私が満足しなかったら今日の書類仕事はやらないからね!!」

五月雨「なんで!?」

数分後

夜曾野「ううう・・・」

五月雨「ね? すごいでしょコレ」

夜曾野「うん。思わず涙が・・・」クスンッ

瑞鳳「歌唱力凄いですよね・・・」

五月雨「ええ、なんていうか・・・強い想いが伝わってきますよね」

夜曾野「で? どこの鎮守府の那珂ちゃん?」

五月雨「それが非公開なんですよね」

瑞鳳「憧れちゃうなぁ・・・ウチの那珂ちゃんは・・・」チラッ

那珂「・・・よし! リーチっ!」

川内「・・・!!」

利根「クッ・・・」

古鷹「カンッ もういっこカンっ!!」

古鷹「・・・嶺上開花」

3人「「「 」」」

125: 2015/05/29(金) 00:04:40.21 ID:8Wsg+O320
夜曾野「執務室で何してるんだよ!!」

五月雨「提督が珍しく正しいこと言ってる・・・」

夜曾野「私も混ぜろ!!」

五月雨「気のせいだった・・・」ツルッ 

五月雨「キャッーー!?」ヨロ

夜曾野「え?」

ドテーーーン ガチャーーーンッ

川内「うわぁ!?」

那珂「へぶ!?」

利根「ひゃう!?」

古鷹「キャァ!?」

瑞鳳「あーあ・・・大惨事」

夜曾野「なんで何も無い所で転ぶのよ!?」

五月雨「分からないですよ!!」

川内「あ~あ・・・滅茶苦茶だね・・・」

利根「どうするんじゃ?」

夜曾野「仕切りなおしよ!!」

瑞鳳「提督・・・仕事しようよぉ・・・」

那珂の歌はネットの世界で伝説になっていた。




126: 2015/05/29(金) 00:08:45.05 ID:8Wsg+O320
投下完了。


何時も感想ありがとうございます。
もう少しでイベント編突入
イタリア娘達が\\\
リアルの方では
改装図が沢山必要でつらいです・・・

おやすみなさい
また近いうちに・・・

127: 2015/05/29(金) 00:21:37.61 ID:00vMdgk5o

128: 2015/05/29(金) 00:48:26.64 ID:o//o81Rt0
乙でございます


引用: 提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」 その2