359: 2015/07/07(火) 23:18:28.04 ID:6Sj3BJq70



最初から:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」

前回:【艦これ】提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」第十二話

少し前、大規模な作戦が終了した。

結局、MVPを一番多く取ったのは金剛であった。

提督不在時も代行として働き、戦場では華々しい戦果を挙げる。

皆も悔しかったが、金剛の頑張りは知っているので誰も表立って不満を挙げなかった。

金剛の要望は、一緒に街へ行くことであったが、

提督と言う立場に居る以上は、時間の都合を作るのが難しく、

鎮守府を一日不在にすることは、すぐに出来ることではなかったので

結局は時間の都合が付いたら・・・ということで落ち着いた。

鎮守府の娯楽室では、本日非番の艦娘が集まり、互いに労っていた。

鈴谷「そう・・・あの時、私はもうダメかと思ったよ」

朝潮「確か一番の激戦でしたよね。鈴谷さん達の作戦海域」

荒潮「そうみたいね。長門さんも大破したとか」

鈴谷「弾も底を尽き、もうヤバイ! そんな時・・・」

熊野「瑞鶴さんの航空隊が!!」

大鳳「なんと、私のカートリッジと鈴谷さん達の三式弾を持ってきたんです!」

鈴谷「アレが無かったらヤバかったかもねー」

熊野「瑞鶴さんに助けられましたわ」

瑞鶴「ちょっと止めてって・・・恥ずかしい。それに提督の指示に従っただけよ?」

大鳳「それでも・・・届けてくれたのは貴女です。感謝してます」

葛城「やっぱり瑞鶴先輩すごい!! 尊敬します! 流石、伝説の五航戦!! 憧れます!!」

卯月「五航戦すごいぴょんっ!!」

赤城「やる時はやる娘だと思ってましたよ。貴女を後輩に持てたことが誇らしいです」ムシャムシャ

若葉「若葉だ。五航戦・・・いいな」

清霜「空母もかっこいいなぁ・・・」

那珂「なかなかやるね!って那珂ちゃんが言って見たりして・・・」

神通「五航戦の活躍、確かに目を見張るものがありますね」

那珂「あの、なかなか の なか と 那珂を かけてるんだけど・・・」

島風「五航戦って凄いんだね!」

那珂「誰か聞いてる? アイドルはバラエティ的な発言も出来るようにならないと・・・」

鈴谷「全く、流石、五航戦だよ。ありがとう瑞鶴」

那珂「ねぇ、誰か聞いてる!?」

ロー「きいてなーーーいっ!!」

那珂「聞いてるじゃん!!?」
艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 艦娘型録 (カドカワデジタルコミックス)
360: 2015/07/07(火) 23:19:13.53 ID:6Sj3BJq70
『五航戦!!』『すごい!!』『ごこーせんっ!!』

瑞鶴「ちょっと! 皆、止めてってばぁ~」

一躍、時の人になる瑞鶴。

赤城(・・・すごいニヤけてますね)

朝潮「そうだ! この度、活路を開く活躍をした瑞鶴さんを皆で胴上げしましょう!」

ヤロー オモシロソー イイゾォ!! 

瑞鶴「えっ!? え?・・・え?」

ゴーコセンッ!!  ゴーコセンッ!!  ゴーコセンッ!!  ゴーコセンッ!!

瑞鶴「きゃぁぁぁぁ!?」

赤城「胴上げされて嬉しそうですね瑞鶴さん。加賀さんも労ってあげたら?」

加賀「あの程度のことで? 調子に乗させるだけです」

赤城「厳しいですね。加賀さんは・・・」

加賀「彼女はまだまだ精神面では幼いです。そこで慢心すれば氏に繋がる。だから不用意に褒める気はありません」

赤城「後輩想いなのも結構ですけど、そう言うことは言葉にしないと相手に伝わりませんよ?」

加賀「伝える気はないわ。必要ないもの」

とりあえず、地に落ちていた五航戦の名は、今では最も誇らしい名前に変わり、汚名を返上したのだった。

卯月「五航戦はすごいズイ」

弥生「・・・なにそれ?」

卯月「瑞鶴をイメージした語尾ぴょん」

島風「面白そうズイ」

赤城「皆さん、あまりふざけるのは止めましょう・・・ズイ」

ズイ ズイ ズイ ズイ

瑞鶴「ちょっと!!? ズイズイ言わないでよ!! 馬鹿にしてるの!?」

皆「そんなことないズイ」

加賀「それだけ愛されてるってことよ」

瑞鶴「加賀さん・・・」

加賀「だから、これからはさらに気を引き締めなさい。精々、慢心しないようにね」

瑞鶴は感動した。普段は憎まれ口ばかり叩く尊敬する先輩から言われたのだから。

加賀「・・・ズイ」

瑞鶴「!!!?」

赤城(珍しい。加賀さんが笑いを堪えてプルプルしてる・・・)

瑞鶴「もう!! なんなのよ!! もう!」

その一連の応答に皆が笑う。瑞鶴も満更でも無い様子だった。

裏表のない瑞鶴は、艦種を問わず皆から愛されていた。

だからこそ、反応を面白がって皆でからかっているのかもしれない。

361: 2015/07/07(火) 23:20:03.95 ID:6Sj3BJq70
執務室

提督「書類の文章、日本語だけど分かるかい?」

リットリオ「はい。大丈夫ですね・・・大体は読めますね」

提督「すごいな。日本語の勉強でもしてるのか?」

リットリオ「そういうワケじゃないんですけど・・・なんで読めるか自分でも分からないです」

提督「不思議だな・・・」

リットリオ「不思議ですねぇ・・・」

そこへ夕張がやって来た。

夕張「失礼します」

提督「どうした?」

夕張「いえ、雷電Ⅱの修理の経過の報告に・・・こちらがその書類です」

雷電Ⅱ。先の作戦で損傷した護衛艦のことである。

提督「ごめんな、仕事増やして」

夕張「いえ、殆ど妖精さんの力ですし、機械弄りは楽しいですよ?」

提督「そう言ってくれると助かる」

夕張「それにしても面白い話をしてましたね」

提督「ん? なんのことだ?」

夕張「言語の話ですよ」

提督(そんなに大きな声で話してたっけ? 廊下まで聞こえたのかな)

夕張(まぁ・・・盗聴してたんですけどね)

提督「そんなに食いつく内容か?」

夕張「新たに加わったイタリア艦を抜かせば、我が艦隊の海外艦は五隻いますよね?」

提督「ビスマルク、プリンツ、Z1、Z3、ロー・・・か」

夕張「その内、読み書きが危うかったのは?」

提督「一番危うかったのはローかな。頑張ってたみたいだけど。Z1、Z3も苦労してたな」

夕張「でもビス丸とプリゲンはある程度出来た。何故でしょう?」

提督「・・・さぁ? というか変な略し方するなよ・・・」

リットリオ「っ・・・ぷっ・・・くっ・・・」

余程、略し方がツボに来たのかリットリオは笑いを堪えるのに必氏だった。

362: 2015/07/07(火) 23:20:54.03 ID:6Sj3BJq70
その頃、訓練場に居たビスマルク、プリンツは盛大なクシャミをしていた。

Z1「2人してどうしたの? 風邪?」

ビスマルク(これは・・・)

プリンツ(きっと・・・)

2人((アトミラール(さん)が私のことを噂しているに違いない!!))

Z3(なんで2人してニヤニヤしてるのかしら・・・)

夕張「2人とも戦艦、重巡って駆逐と潜水艦に比べると大型の艦なんですよね」

つまり、夕張が言うにはこういうことだ。

艦から艦娘に生まれ変わり、新たなる生を受ける際に、艦娘は何故か現代の

生活に必要な最低限の知識を持って生まれてくる。

それがどういう原理なのかは不明であるが、その際に持ってこれる、事前に学習できる

容量のようなものが艦種によって異なるのでは?とう仮説。

大型艦であれば、より多くの情報を学習し、

駆逐艦や潜水艦のような小型の者は本当に最低限しか持って来れない。

夕張「でも、事前に学習させている何かの存在や・・・」

夕張「艦娘が何故どうやって生まれてくるかを立証しない限り・・・」

夕張「ただの妄想になっちゃいますけどね」

提督「ふむ・・・面白い考え方だな」

夕立「まぁ、そんな存在が居たとしたら神様くらいですよね。アハハ・・・忘れてください」

艦娘とは艦の能力を持った少女である。

その外見は人間と変わらない。艤装と呼ばれる武装を装備することで、

海面を奔り、搭載された武装で戦闘を行える。

怪我をしても、沈まない限りは入渠し、修復することでどんな怪我も完治する。

燃料、弾薬、鋼材、ボーキの4種の資材を機械に投入して、装置を動かせば

そこから新しく艦娘が生まれる。

さらに深海棲艦を倒した際に、拾うこともある。

挙げれば、挙げるほどに、その存在は常識を超えている。

もしも、それらの全てを知っているとすれば・・・

それは妖精しか居ないだろう。

だが、彼女達は語らない。そもそも喋る言葉が曖昧な謎かけ過ぎて、

こういった話をしても会話にならないのだ。

だから人類は良く分からない存在に頼り、異形の存在と戦っている。

それしか、深海棲艦に対抗する術を持たなかったから。

363: 2015/07/07(火) 23:22:24.69 ID:6Sj3BJq70
夕張「なんか変な話しちゃってすいません」

リットリオ「・・・・・・」

提督「どうした?」

リットリオ「改めて考えると・・・バケモノですよね。私たち・・・」

提督「あまり、そう言ったことは言うな」

リットリオ「・・・すいません」

提督「君達のおかげで人類は反抗する力を得た。感謝はすれど、君達を恐がったり、悪く思う理由なんてどこにもないさ」

リットリオ(この人が提督で良かった・・・やさしい人で本当に良かった)

ここなら自分も妹も頑張れる。

良い人にめぐり会えたと、リットリオは嬉しい気持ちになった。

提督「それに、こんなに可愛い娘をバケモノ扱いする奴がどうかしてるんだよ。あまり悪く考えるなよ?」

リットリオ「かわっ!!!?」

その不意打ちの一言はリットリオに取って衝撃だった。

この人はお世辞でもなく、その場だけの取り繕いでもなく、本心から言っているのが分かったから。

だからこそ、恥ずかしくなる。

リットリオ「そっその・・・提督もステキですよ?」

なんとか動揺を悟られないように返すが、心臓はバクバクと脈打っている。

リットリオ(もうっ! 自分の鼓動が五月蝿い!!)

提督「ありがとう。リットリオ」

感謝の言葉を述べ、微笑する提督の顔をまともに見ることが出来なかった。

リットリオ(どうしちゃったの・・・私・・・)

夕張(提督は何時もそう。意識せずにそういうこと言う。浮気は嫌なんだけどな)ハイライトオフ

提督「どうしたんだ? 2人とも?」

その一連の様子を監視カメラと盗聴器で見聞きしていた者達が居た。

南方棲鬼と榛名である。

364: 2015/07/07(火) 23:23:58.72 ID:6Sj3BJq70
2人は南方棲鬼に宛がわれた部屋で一部を見ていた。

南方「・・・・・・あの子、何時もあんな感じ?」

榛名「割とそうですね」

南方「あれは口説いているの?」

榛名「いいえ、ただ褒めているだけです」

榛名「だけど、みんな勘違いするんです。提督が好きなのは私なのに。私だけなのに」

榛名「女性として好きなのは私だけなのに・・・そうじゃないとダメなのに・・・」

榛名「だけど汚らわしい雌豚が提督の優しい言葉に勘違いする」

榛名「何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も・・・・」ハイライトオフ

南方(目・・・恐っ!?)ゾクッ

榛名「・・・? どうしました?」

南方「なっ・・・なんでもないわ」

榛名「あっ。提督とリットリオさんが食堂に向かいましたね」

南方「もうお昼だからね」

榛名「ではカメラを切り替えましょう」

南方「この鎮守府、なんでこんなに隠しカメラ多いの?」

榛名「提督を(他の女から)守るためです」

南方「・・・そっそう。何個くらいあるの?」

榛名「今だと少し減って160個しかないですよ。私のは」

南方「ひゃくろくじゅぅ!? 監視カメラが!?」

榛名(何をびっくりしてるんだろう。お義母様は・・・)

南方(しかも「私のは」って何!? 皆それぞれ持ってるってこと!?)

榛名「提督は・・・廊下を歩いてますね・・・あそこは102番のカメラでしたっけ・・・」

374: 2015/07/08(水) 23:47:45.99 ID:GidgBr1u0
廊下

リットリオ「皆さん、秘書艦をやりたいみたいですけど・・・」

提督「そうだな。だから順番でやって貰っているよ」

リットリオ「それなのに妹と私が、一週間づつも継続してしまって良かったのですか?」

提督「新人は恒例でね。仕事に慣れるよう、最初の1週間は毎日やって貰っているんだ」

リットリオ「そうだったんですか」

提督「・・・ひょっとして仕事辛い?」

もうしかしたら無理させたかな?と思い、尋ねる。

リットリオ「いえ、そんなことはっ!」

提督に気を使わせたのが申し訳なく、慌てて否定しようとするが、

運悪く、足がもつれて転びそうになる。

リットリオ「きゃぁっ!?」

提督「おいっ!?」

思わず目を閉じたリットリオが目を開くと提督に抱き抱えられていた。

リットリオ(近っ!! 近いですっ!!! ////)

提督「頭を打つ所だった。気をつけろ」

リットリオ「ひゃい・・・きをつけます・・・」

提督「間に合ってよかった」ホッ

リットリオ(ひゃわわわ・・・///)

その状況にリットリオの思考はパニック状態だった。

リットリオ「あの・・・そろそろ・・・」

提督「ん? あっ・・・すまん」

リットリオ「いえ・・・ありがとうございます・・・///」

提督「たいしたことはしてないさ」

リットリオ(たぶん私・・・いま、顔すごい真っ赤だよぉ)

混乱中のリットリオの足取りはフラフラで、危なっかしいので、

提督は一言断ってからリットリオの手を握る。

375: 2015/07/08(水) 23:48:44.78 ID:GidgBr1u0
リットリオ(!!!!?)

提督「本当に大丈夫か? 医務室に行くか?」

リットリオ「いえ、大丈夫です!!」

提督「なら、いいんだが・・・」

リットリオ(てっ・・・てて・・提督と手を繋いでる!!)

ここがマンガの世界なら、リットリオの顔は茹でたタコのように真っ赤に染まり、

頭から大量の湯気が出ていることだろう。

そのまま、提督に引き連れられて食堂へ向かった。

その場面を目撃してしまった間宮は、倉庫に取りに行ってた食材を落としてしまった。

間宮(私だって・・・転びそうになって提督にだっこされたことあるもん)

間宮(そう、私が最初・・・)

間宮(だから、この程度で嫉妬しない・・・)

間宮(それに提督は私のゴハンを美味しいって言ってくれた)

間宮(毎日食べたいって・・・)

間宮(もう提督との婚姻は時間の問題のハズ・・・)

間宮(そうよね? そうに決まってる)ハイライトオフ

だけど、やっぱり気に食わなくて、間宮は少し機嫌が悪かった。

大鯨「ねぇ、なんか今日の間宮さんの包丁裁き、凄くないですか?」

伊良湖「そうですね。包丁の音が凄いです」

大鯨(まな板も斬れそうになってますっ)



南方棲鬼の部屋(捕虜用)

榛名「お姫様だっこ・・・」ハイライトオフ

南方「いや、あれは助けたんでしょ? 流石私の子!」

榛名「それより、リットリオさんです」ハイライトオフ

南方「・・・すごい紅潮してるわね」

南方(こりゃ・・・脈ありかしら・・・嫁がイタリアの娘もいいかな?)

榛名「・・・お義母様?」ハイライトオフ

南方「な・・・何かしら?」

榛名「私、掃除、洗濯、料理、どれもそつなくこなせますよ? こなせますよ?」ハイライトオフ

南方「そっ・・・そう・・・」

榛名「・・・」ニコッ

南方「あははは・・・」

南方(この娘も普段は良い娘なんだけど、たまに恐いのよね・・・)

南方棲鬼は普段の提督の姿をそれとなく知りたいと言った。

それに答えて榛名が色々してくれたが、

なんでこんなにカメラや盗聴器が沢山あるのだろうと不思議に思った。

南方(聞いちゃ行けない気がする・・・精神的な意味でも)

榛名(お義母さまのお役に立ってアピールです!)

ここに冷静な者が居れば、こう言っただろう。

「それ、外部の人に見せたらアピールどころか確実にドン引きされるよ」と。

376: 2015/07/08(水) 23:49:44.49 ID:GidgBr1u0
食堂

提督(・・・なんかダンダンと五月蝿いけど包丁の音か?)

リットリオ「あの、提督・・・」

提督「もう大丈夫か?」

リットリオ「はっ・・・はいっ! 大丈夫です!」

提督「そうか・・・良かった」

提督は繋いだ手を離す。

リットリオ(あ・・・・・・)

それを少し寂しく感じた。

提督「どうした? ずっと自分の手を見つめて?」

リットリオ「なっなんでもないれす!」

提督(・・・噛んだ)

リットリオ(噛んじゃった・・・)

その後、提督は天麩羅定食を、リットリオはパスタを頼んだ。

提督の食事を出してくれたのは大鯨だった。

大鯨「おまたせしました!」

提督「ありがとう」

トレーを受け取る際に、大鯨の手に触れてしまい、

大鯨は思わず声をあげた。

提督「すっ・・・スマン」

大鯨「い・・いえ、大丈夫です」

顔を真っ赤にして嬉しそうに小走りで調理場に戻る大鯨を見たリットリオは面白くなかった。

リットリオ(何あの娘・・・あんなに嬉しそうにして・・・私なんて、さっきまで手を繋いでいたし)ハイライトオフ

心の中に芽生えた黒い感情。

その感情はリットリオが初めて経験するものだった。

377: 2015/07/08(水) 23:50:53.89 ID:GidgBr1u0
リットリオ(あれ? 美味しい)

ナポリタン。 興味本位で頼んで見た。

リットリオ(ケチャップをパスタになんてどうかと思ったけど・・・)

これはこれでアリだなと思った。

リットリオ「提督のは何ですか?」

提督「天麩羅だな。見るのは初めてか?」

リットリオ「テンプーラ・・・名前は聞いたことがあります」

提督「少し食べて見る?」

リットリオ「よろしいのですか?」

提督「はい、あ~ん」

リットリオ「ええ!!?」

世の中には、『間接キス』と必要以上に気にする者も居るが、

逆にそういうのを全く気にしない人も居る。

少しでも心を許し、身内だと思うと意識もせずにこういった行動を取る。

それは時に、飲み掛けのペットボトルのドリンクだったり、箸だったり、

状況によって様々ではあるが、その行為をする者が異性であった場合、

された者は必要以上に意識してしまう。

そんな行為を意図せず、意識せず、ごく普通にやってしまう天然の人達。

提督はそういった人種だった。

リットリオ「で・・では・・・失礼して・・・」パクッ

提督「・・・どうだ?」

リットリオ「おっ美味しいです・・・」

リットリオは思った。恥ずかしすぎて味なんて分からないと。

周囲からバキっと音が複数聞こえたが、提督もリットリオも何の音か分からなかった。

それは一部始終を目撃した艦娘が自分の割り箸をへし折った音だった。

リットリオ(・・・・・・///)

そっと人差し指を唇に当てる。

リットリオ(これって・・・キス?)

提督(海老も良いが、キスの天麩羅も良いな。白身が旨い・・・)モグモグ

大鯨「・・・・・・間宮さん」

間宮「なんです?」

大鯨「私も包丁をダンダンってやりたいです」ハイライトオフ

間宮「そうね。一緒にやりましょうか」ハイライトオフ

提督(今日はやけに調理場が騒がしいな・・・)

リットリオ(・・・提督)

南方棲鬼の部屋

南方棲鬼「・・・・あ・・・あれは狙ってやってないわよね?」

榛名「・・・・・・」ハイライトオフ

南方棲鬼(ただただ・・・この空間が重い。胃が痛い・・・)

378: 2015/07/08(水) 23:51:46.93 ID:GidgBr1u0
金剛「へー なんか楽しそうなことやってるネー」ハイライトオフ

提督「金剛か。演習は終わったのか?」

金剛「さっき終わりましたヨー」

提督「確か、今日は新人の提督の艦隊だったけど・・・」

金剛「ちゃんと手加減しましたヨ」

金剛は先程の演習のことを思い返す。

演習相手の旗艦の艦娘が倒れた。

新人提督は叫んだ「ウチの比叡もレベルは150なのに・・・何故、手も足も出ない!?」と

それに対して時雨は言った。

「機械で計測出来るのが150までなだけだから。あまり数値を当てにしない方がいいよ」と

「どんなに強くなっても機械は150としか出ないデスからネー」と金剛も続く。

新人提督は何を言われているか分からなかった。

新人提督(比叡がやられた今、他の艦娘共はレベル50程度・・・と言うかこの6人以外は育ってない!)

新人提督(糞っ!! もっとバランスよく育てておくんだった!!)

球磨「弾が勿体無いから素手で戦うクマー」

新人提督「おまえら! 反撃だ!! 何をボサっとしている!!」

全力を出しても、素手相手に一撃もペイント弾を当てられず、

一隻ずつ轟沈判定を受けた新人提督の艦娘も、新人提督も心が折れた。

特に41砲の弾を素手で軌道を変えながら受け流し、鼻歌を歌いながら接近したのが相手に多大なトラウマを与えた。

我が強く、自信家で、傲慢で・・・同期の仲間からも、部下の艦娘からも嫌われていた新人提督は、

この日を境に、性格が一変。

優しく、穏やかで、熱心で勤勉な青年へと変わる。

やがて彼は生まれ故郷の幼馴染と結婚し、部下の艦娘や同期の仲間から祝福された。

老後に自伝を出した際、こう語っている。

新人提督「あの時ね、私は今までの価値観を全て失ったんですよ。自信というモノが粉砕されました」

新人提督「それからは自分とは何か、世界とは何か、そんなことばかり考えるようになりまして・・・」

新人提督「あれが私のターニングポイントでした」

新人提督「その時の演習相手ですか? 誰もが知ってる英雄の艦隊でしたよ」

新人提督「私は、彼の育てた艦娘に人間として大事なものを教わった気がしますよ」

しかし、そんなことは当事者達は全く知らずに居た。

金剛「特に問題なく終わりましたヨ」

提督「そうか、ありがとう。お疲れ様」

金剛は提督の向かいの席に座るリットリオをに目を向ける。

金剛「まだちゃんと話したことはあんまり無かったデスよね?」

リットリオ「そうですね。リットリオと言います。よろしくお願いしますね」

金剛「金剛型の金剛デース。よろしくネ?」

提督「金剛はこの鎮守府でも古株でな、俺が不在時は司令代行を任せたりしている」

リットリオ「すごい方なんですね」

379: 2015/07/08(水) 23:52:36.07 ID:GidgBr1u0
金剛「そ れ よ り・・・提督? 休みは何時取れるノォ?」

提督「暫くは無理だよ。先日話しただろう」

リットリオ「どこかへお出かけですか?」

提督「少し、街へな・・・」

金剛「デートでーすっ!」

リットリオ「・・・え? デート? 提督と・・・金剛さんが?」

金剛「イエース!」

リットリオ「ふっ・・・二人はお付き合いしてるのですか?」ハイライトオフ

金剛「イエ「いいや」ス・・・」

金剛の声を遮り提督が答える。

金剛「・・・・・・」ハイライトオフ

提督「そのような関係ではないよ」

提督(部下をそんな目で見るわけにはいかん)

リットリオ(・・・良かった)ホッ

リットリオは胸を撫で下ろした。

金剛(もう・・・恥ずかしがり屋デスねー)

リットリオ(なんで私、今・・・安心したんだろ?)

金剛「でも指輪もあるし、結婚してるようなものじゃないデスか」

提督「カッコカリだろう・・・」

そう言って指輪をチラチラ見せる。

まるで自慢するように。

それがリットリオの感情に影を落とす。

リットリオ(さっきから何・・・この感情・・・イライラします)

提督「ところで、秋津洲は? 演習一緒だっただろう」

金剛「それならあそこデース」

指差す方の机に秋津洲と電が居た。

提督「電がリハビリしてあげてるのか」

リットリオ「・・・リハビリですか?」

提督「深海棲艦に人質に取られたせいか、極度に精神が不安だったんだが・・・」

金剛「少しづつ皆と打ち解けてマスよ」

提督「そうか、良かった」

金剛(明石がくれた恐怖心を無くし、気分を高揚させるドリンクの効果がちょっと強すぎまシタけど・・・)

秋津洲「アハハハハハ もう何も恐くないかも! 恐いってなんだっけ?」ハイライトオフ

電「・・・最近の明石さんはやりすぎなのです。いい加減、お説教が必要なのです」ハイライトオフ

リットリオ「可愛そう。許せませんね。人質なんて・・・」

提督「そうだな。早く、こんな戦争は終わらせなければ・・・」

リットリオ「そうですね・・・」

秋津洲「あははっ! なんか楽しいっ!! 楽しいよぉ!! あははは」

金剛(24時間立てば効果が切れるらしいですシ・・・ソーリーね)

その日の夜、明石の工房で謎の爆発事故が起きたらしい。

誰もが思った。「あっ また変なもの作って失敗したな」と

399: 2015/07/11(土) 01:43:16.98 ID:CqHt+UyT0
夜。本日の仕事が全て終わった。

提督「お疲れ様」

リットリオ「はい、お疲れ様です!」

提督「また明日もよろしくな」

リットリオ「はい!」

執務室を出て、寮の自室に戻るリットリオの足取りは軽かった。

リットリオ(また明日も・・・)

明日も提督に会える。それが嬉しかった。

自室に戻り、カレンダーを見る。

まだ数日は秘書艦をやれる。提督と居れる。

リットリオ(楽しみです・・・)

ローマ「嬉しそうね。姉さん」

リットリオ「そう見える?」

ローマ「私も早く次の順番回ってこないかしら」

リットリオ「ローマは秘書艦やったばかりじゃない」

ローマ「そうね。でも次が待ち遠しくて仕方がないわ」

リットリオ「そんなに秘書の仕事良かったの?」

ローマ「あの人と・・・居れるから・・・」ボソッ

リットリオ「・・・え? よく聞こえないよ」

ローマ「もうしかしたら姉さんに弟が出来るかもね」

リットリオ「・・・・・・・」

ちくりと胸が痛む。

リットリオ「どうかしら・・・逆に貴女に兄が出来るかも・・・」

2人「「・・・・・・」」ハイライトオフ

両者無言。部屋の時計の音だけがカチカチと聞こえた。

先に口を開いたのは姉のリットリオだった。

リットリオ「・・・私、ビスマルクさんと約束があるから行くけど一緒に行かない?」

ローマ「・・・今から?」

リットリオ「うん。貴女も連れてくるように言われてるけど・・・」

ローマ「申し訳ないけれど今回はいいわ。明日、予定があるし」

リットリオ「予定? 何かあるの?」

ローマ「霧島さん、ハチ、巻雲ちゃん達とメガネ同好会を作ったのよ」

リットリオ「それ何するの!?」

ローマ「メガネ娘の特性を生かしたアプローチの研究とか、単純にメガネを語ったり・・・」

リットリオ「そ・・・そう・・・」

ローマ「一応、全国大会を目指そうねって話になってるのよ」

リットリオ「全国大会!? へ・・・へぇ・・・が・・・頑張ってね」

400: 2015/07/11(土) 01:43:49.90 ID:CqHt+UyT0
ビスマルクの部屋

ビスマルク「お疲れ様」

リットリオ「ありがとうございます」

プリンツ「お疲れです!」

海外艦同士の交流を深める懇親会を開いていた。

ビスマルク「ローマは来ないの?」

リットリオ「ちょっと用事があるみたいで・・・誘ったんですけどね」

プリンツ「ウチもZ1、Z3、ローが予定あるみたいで来れないみたいです・・・」

ビスマルク「まぁ良いわ。今日はこの3人で楽しみましょ」

ビールで乾杯。顔合わせは済んでるが、改めて互いの自己紹介をした。

―――ビス丸、プリゲン

リットリオ「っ・・・ぷっ・・・・」

2人を見てたら夕張の付けた変なあだ名が脳内再生されて、笑いを堪えるのに必氏だった。

2人「「・・・?」」

ビスマルク「それより、どう? 秘書の仕事は」

リットリオ「思ったより、ちゃんと出来てますね。提督も優しいですし、楽しいかもです」

プリンツ「あーあー。早く私も秘書やりたいなー 次の順番回ってこないかなぁ」

ビスマルク「貴女、少し前にやったばかりじゃない」

プリンツ「一日じゃ足りないですよお姉さま」

プリンツ(いっそのこと、提督の部屋に住み着きたいです)

プリンツ(朝は行ってらっしゃいのキスをして・・・)

プリンツ(毎日、お弁当を作ってあげて・・・)

プリンツ(帰ってきたら、ゴハンにする? お風呂? それとも私とか・・・)

プリンツ(提督のぶっといのが・・・私に・・・ファイアーーーーー///) ダンッ ダンッ

リットリオ(なんか急に机を叩き出したけど、もう酔いが回ったのかしら)

ビスマルク「プリンツ、少し静かにしなさい」

プリンツ「はっ!? すいませんビスマルク姉さま」

互いに日頃の仕事を労って、他愛もない話。

年頃の少女達の話題が尽きることは無く、話は大いに盛り上がった。

それから自然と提督の話になる。

401: 2015/07/11(土) 01:44:20.04 ID:CqHt+UyT0
ビスマルク「それでね、アトミラールに撫でられてね・・・すごい綺麗だねって・・・もう・・・///」

プリンツ「へぇ・・・・・・」ハイライトオフ

ビスマルク「もうそれプロポーズじゃないっ! すぐ受けるわ!」

プリンツ「勘違いは恥をかきますよビスマルク姉様」

ビスマルク「・・・は?」ハイライトオフ

プリンツ「恐らく、社交辞令ですよ」

ビスマルク「そんなことないっ!!! アトミラールはそんな上辺だけのことは言わないわっ!!」

リットリオ(私も言われました。可愛いって・・・)

数日過ごして分かる。

確かに彼は、その場だけの、上辺だけ取り繕う言葉は言わない。

つまり、あれは本心。心からの言葉。

リットリオ(そうですよね。あれは本心・・・///)

ドイツ娘2人がギャーギャー騒いでいるが、その声はリットリオに届いてなかった。

ビスマルク「ごめんなさい。少し熱くなりすぎたわ」

プリンツ「私もです。ごめんなさい」

リットリオ「大丈夫ですよー」

ビスマルク「私も早く秘書の順番回ってこないかしら」

リットリオ「これだけ人数が居ると、1周するのに時間掛かりそうですね」

プリンツ「そうなんですよ・・・」

秘書艦の回転率の悪さを嘆き、あーでもない、こーでもないと愚痴を言い終わると話題が変わった。

ビスマルク「ねぇ、知ってる? アトミラールって料理作るの上手いのよ」

リットリオ「え? そうなんですか?」

プリンツ「料理だけじゃなくて、スイーツも上手ですよ。私、手作りのプリンを食べました」

ビスマルク(プリン!? 私食べさせてもらってないわよ!?)

プリンツ「あれはとても美味しかったです!!」

ビスマルク「私は炒飯とオムライスと焼ソバと・・・色々食べたことあるけどプリンはないわね」

プリンツ「逆に私はスイーツ以外はないですね」

プリンツ(どれも食べたことない!! ビスマルク姉様ずるい!!)

リットリオ(提督、料理も出来るんだ・・・)

402: 2015/07/11(土) 01:44:53.57 ID:CqHt+UyT0
提督が元帥に世話になって居た頃、せめて何か役に立ちたいと

食事の殆どを提督が作っていたので、ある程度は腕に自信があった。

また、鎮守府が出来た当初は施設が充実しておらず、提督と艦娘数人が調理をしていたり、

頑張っている部下を喜ばせたいと、女の子が喜ぶようなスイーツも作れるようになっていた。

食堂が出来、売店や甘味処、鎮守府内が充実してくると自然とそういったことはしなくなったものの、

当初からのメンバーにせがまれたり、場合によっては今でも調理をすることがある。

余談ではあるが、次は誰が提督と2人きりで調理をするかで揉めて、

罵り合いから発展した主砲の撃ち合いになった際に、鎮守府の敷地内に流れ弾が着弾。

雨水が溜まり、現在はちょっとした池になっている。

提督は軍務で秘書艦と遠出して居たので事態を知らず、池なんてあったけ?と不思議がっていたらしい。

流石に全員冷や汗を流し、以後は『力』による語り合いは艦娘同士の不可侵協定で禁止されたのだった。

プリンツ「提督はコーヒーはブラックを好むけど、朝だけは砂糖とミルクを入れるんですよ」

ビスマルク「砂糖は角砂糖1個だけ入れるわね」

プリンツ「でも、最近はスティックタイプになってましたよ」

ビスマルク「それは角砂糖が切れたからよ。今は補充されてるわ」

プリンツ「それは知りませんでした」

ビスマルク「ふふ・・・遅れてるわねっ!」

2人「「ふふふふふふっ・・・」」ハイライトオフ

それからドイツ娘2人は私の方が提督を理解している、知っている、と自慢するように

互いに持つ情報を言い合って居た。少しでも優位の立場に居ると思いたいが為に。

いかに自分の方が理解している、知っていると言われると

まるで『貴女は何も知らないのね』と言われているみたいでリットリオは面白くなかった。

リットリオ(本当になんでしょう。この気持ち・・・)ハイライトオフ

その後、もう遅いので解散して自室に戻った。

403: 2015/07/11(土) 01:45:32.44 ID:CqHt+UyT0
翌日

提督「おはよう」

リットリオ「おはようございます・・・」

提督「どうしたんだ? 疲れてないか?」

リットリオ「昨晩、ビスマルクさんとオイゲンさんと懇親会をしたから・・・」

提督「そうか。仲良くやれてるみたいで良かった」

リットリオ「申し訳ありません。仕事には支障はきたしませんので」

提督「あまり気張るな。今はここの生活に早く慣れて欲しい。鎮守府の仲間との交流も大事だよ。命を預けあう仲なんだから」

リットリオ「ありがとうございます」

大本営から送られてきた書類に目を通し、てきぱきと仕事をする提督。

リットリオ(やっぱり・・・かっこいいなぁ・・・)

提督のキリッとした引き締まった表情に胸が熱くなる。

リットリオ(それに優しいし・・・この人の下につけてよかった)

提督「・・・?」

リットリオ(目が合っちゃった///)

提督(俯いてどうしたんだろう?)

リットリオ(どうしよう今の顔を見られたくない・・・赤面してるし・・・)

提督「リットリオ?」

リットリオ「はい?・・・っ!!?」

顔を上げると提督の顔がすぐ傍にあった。

提督「ふむ・・・少し熱っぽいかな」

リットリオ(ひゃわわわわっ!?)

提督はリットリオの額に手をやり、心配そうに呟いた。

リットリオ(近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い・・・///)

提督「やはり少し熱いな。医務室で少し見てもらおうか」

リットリオ「大丈夫ですっ!!! 元気ですから!!!」

提督「そうか? だが、少しでも不調なら無理はするなよ? すぐ言ってくれ」

リットリオ「ひゃい!!」

提督(よく噛む娘だな。 仕事に慣れなくて緊張してるのかな・・・)

リットリオは嬉しさと恥ずかしさの入り混じった感情に左右され、仕事どころじゃなかった。

404: 2015/07/11(土) 01:47:16.32 ID:CqHt+UyT0
その一部始終を別室で監視している2人。

南方「あれ、わざとやってないわよね!?」

榛名「何時もあんな感じですよ」ハイライトオフ

南方「夫に似たのかしら・・・いや・・・あそこまでじゃなかった!! たぶん!!」

榛名「リットリオさんの額を舐めたら提督の味がするのかなぁ」ボソッ

南方「!!!!?」

榛名「羨ましい・・・」

南方(本当に何時か刺されそう・・・ウチの子と結ばれた娘が・・・)

何か鈍い音が聞こえて、音がした方を見ると、榛名がカメラの操作用のリモコンを握りつぶしていた。

すぐに映像に目をやると、顔を真っ赤にしたリットリオと提督が何やら仲睦まじく談笑している。

それは誰が見ても初々しい恋人同士にしか見えない。

南方「なんか見てるだけだと完全にアベックね」

榛名「アベック? ああ、恋人のことでしたっけ。それ氏語ですよ」

南方「・・・え?」

その事実は南方棲鬼にクリティカルダメージを与えた。

南方(歳を取るって恐い・・・)

榛名「提督・・・近すぎです・・・チッ あの雌豚・・・」ボソッ

南方「・・・・・・所でリモコンどうするの?」

榛名「よく握りつぶしちゃうので予備の用意があります。取ってきますね」

南方「よ・・・よくあるんだ・・・」

榛名が出て行き、画面を再び見ると、提督が呟いていた。

提督『作戦も終わり、今の所は大きな戦いはない。束の間の平和だな・・・』

南方「平和!? 水面下では色々恐ろしいことになってるのに!?」

知れば知るほど、息子が愛されすぎていることを実感する。

それは素直に嬉しい。我が子が愛されることを不満に思う親は居ない。

しかし・・・所属する艦娘全員が病的なまでに我が子を愛している。

どの娘も、基本的に良い娘だけど、提督のことでスイッチが入ると恐い。

南方「不安すぎる・・・あの子の将来が・・・」

もしも、誰か一人を選んだら? 選ばれなかった娘はどうなるのだろう。

きっとその娘達は諦めない。

それどころか恐ろしいことになりそうな気がした。

榛名と戦ったから分かる。

あの非常識きわまり無い異質な戦闘力・・・選ばれなかった百数人が全てがああなったら?

選ばれない悲しみと、選ばれた娘への憎悪で深海棲艦化なんてしたら?

南方(下手したら今の世界が終わる・・・)シロメ

榛名「戻りました。お義母さま」

南方(そこら辺はとりあえず考えないようにしよう。うん。考えたくないし)

問題を先送りして無理やり忘却し、画面を見る。

南方「・・・どうせ嫁にするなら染まってない素直な娘がいいかな」ボソッ

榛名(ひょっとして私のことですか!?)

愛が重くなく、素直で染まってない娘。

どうせ息子の嫁にするならそんな娘がいい。そう考えるとリットリオは最適だった。

南方(ああいう礼儀正しい大人しい娘なら上手くやれそうな気がする。嫁候補1号は彼女に・・・)

417: 2015/07/17(金) 02:36:50.50 ID:p6OE0Z0P0
本日も、ここ数日と同じように秘書の仕事をこなしていた。

提督が明石の工房に用事があると言うので付いて行こうとしたけれど、

すぐ終わるから、先にお昼を取っておいでと言われ、食事を取ることに。

一人で食べるとすぐに食事は終わるもので、時間が余った為、

鎮守府内をふらふらと見て歩いていた。

リットリオ「本当によく手入れされて綺麗な建物・・・」

掃除も当番で決まっており、常に清潔に保たれていた。

娯楽室には大勢の艦娘が集まり、和気藹々としていた。

ゴコーセンッ!! ゴコーセンッ!!

翔鶴(遠征から帰ってきたら・・・何これ)

ゴコーセンッ!! ゴコーセンッ!!!

瑞鶴「いい加減にしろズイ」

翔鶴「ず・・・瑞鶴っ!?」

卯月「出た! 本日のズイを頂きました!!」

ワー パチパチ

瑞鶴「どーも、どーも」ペコリ

翔鶴(瑞鶴も満更でもない感じだし・・・何がどうなってるの・・・)

蒼龍(・・・五航戦ばかり目だってる)

数名がズイズイ言ってたのが気になったが、

リットリオ(皆、楽しそう。良い鎮守府に拾われたなぁ)

耳を傾けると提督の話題ばかりだった。

リットリオ(そう言えば・・・私、提督のことをあまり知らないわね)

誰か詳しい人は居ないかなと、キョロキョロしていたら青葉に話しかけられたので聞いてみた。

青葉「提督のことですか? それなら夜に売店に行くと良いですよ。裏メニューと言えばOKです」

リットリオ「う・・・裏メニューですか・・・?」

418: 2015/07/17(金) 02:37:20.43 ID:p6OE0Z0P0
一方、明石の工房では・・・

提督「随分と散らかってるな・・・」

明石「色々ありまして・・・」ボロッ

提督「それで用と言うのは?」

明石「いえ、ちょっとした身体検査ですよ」

提督「身体検査?」

明石「この前の戦闘での怪我のこともありますし、念の為です。すぐ終わりますので」

提督「分かった」

それから簡単な検査をした。

明石「最後にその艤装に触ってみてください」

提督「これは元帥から頂いた・・・触ればいいのか?」

明石「それで動かしてください」

提督「・・・そんなこと出来る訳ないだろう」

明石「動けーって念じてみてください」

提督(動け・・・)

明石「動きませんね」

提督「当たり前だ。 なんの遊びだ?」

明石「なんでもないですよ。お疲れ様でした」

提督が出て行った後、取れたデータを見て明石はため息をつく。

明石「やっぱり、反応なしか・・・何かが足りないのかしら」

419: 2015/07/17(金) 02:38:17.50 ID:p6OE0Z0P0
執務室

提督「さて、午後の仕事をするか」

リットリオ「はいっ!」

コンッコンッ

提督「どうぞ」

神通「失礼します」ガチャ

提督「どうした? 今日は非番だろう」

神通「ええ、実はですね・・・」

提督「なに? 水遊び?」

神通「はい。駆逐艦の娘達が・・・」

提督「そういえば敷地の裏側に大きな池があったな・・・」

神通「はい。それを夕張さん達が整備して泳げるようにしたみたいで・・・」

提督「初耳なんだが・・・」

神通「私も先程知りました」

提督「そもそも、あそこに池って最初からあったけ?」

神通「さ・・・さぁ・・・元々では?」

提督「そうだったか? まぁいいか」

神通「もちろん、遊ぶにしても非番の子だけですよ。業務に支障は来たさないように通達します」

提督「それなら構わないよ。遊ぶことが生き抜きになるのであれば良いことだ」

神通「それでなんですけど・・・」

提督「うん?」

神通「良かったら、後で提督もどうですか?」

提督「俺は仕事だから・・・」

神通「そうですよね。すいません。でも、顔を出して頂けるだけで皆喜ぶかと」

提督「しかし、水遊びだろ? そんな所に男の俺が一人出向いてもな・・・」

提督(下手したら水着だろうしな・・・あんまり良い顔はされないと思うんだが)

神通「大丈夫ですよ。無理にとは言いませんが・・・可能であれば是非」

普段は控えめと言うか、大人しい神通がここまで言うのは珍しい。

提督「分かった。仕事次第ではあるが、時間が空いたら顔を出すよ」

神通「ありがとうございますっ!!」

提督「あ・・・うん」

あんまりにも強く返答するものだから提督は反応に困った。

神通は提督に見えないように小さくガッツポーズを取ると、敬礼して退室していった。

リットリオ「提督。紅茶が入りましたよ」

提督「ああ、ありがとう」

リットリオ「なんだったんですか?」

提督「さあ? まぁ後で時間が開いたら見てくるよ」

420: 2015/07/17(金) 02:38:48.83 ID:p6OE0Z0P0
神通の報告に駆逐艦は喜んだ。

軽巡も喜んだ。

重巡も、戦艦も、空母も・・・

というか艦娘みんな喜んだ。

単純に遊べることを喜ぶ者もいるが、大半は水遊びは口実。

自慢の水着姿を提督に見せたいという理由。

艦娘((((これで提督を落とす!!!)))

誰もが不自然に笑い、お互いを牽制しあっていた。

楽しいはずの遊びの時間は、互いに出方を警戒しあって

まるで最前線のような空気になって居た。

しかし、その直後に大本営から緊急連絡が入る。

提督「悪いが、非番の者も待機しておいてくれ」

如月「・・・何があったの?」

この前の作戦で取り逃がした、一部の敵が再集結しつつあるので鎮圧せよとのことだった。

提督に見せようと水着を着る準備をしていて浮かれていた艦娘は皆怒った。すごい怒った。

提督「ただちに編成を行う。出撃だ!!」

艦娘(深海棲艦め・・・)ハイライトオフ

南方(・・・・・・嫁候補が皆こわい)ブルッ

リットリオ「私も出撃準備をした方がいいですか?」

提督「いや、君は俺の傍にいてくれ」

リットリオ「・・・え?」

提督(まだ実戦は早いしな・・・今は秘書の仕事をしっかり覚えてもらおう)

リットリオ(俺の傍にいてくれ・・・それってずっと? ・・・提督)キュンッ

意図して言った言葉ではないが、そこ言葉はリットリオの乙女心を刺激した。

熱を帯びた視線で提督を見つめるリットリオ。

提督は海図を確認しており、視線に気付いてない。

南方(そして息子の無自覚な行動で頭が痛い・・・)

提督「皆、くれぐれも油断するな。状況は常に報告してくれ」

艦娘達「了解!」

リットリオ(・・・提督・・・なんて凛々しい・・・地中海過ぎて私は・・・私は・・・ハァハァ)

南方(・・・きょうの ばんごはん は なにかしら)

421: 2015/07/17(金) 02:39:47.16 ID:p6OE0Z0P0
一方、先だっての戦闘で敗走した戦艦水鬼は部隊の再編成をしていた。

そこへ報告が届く。

戦艦水鬼「人間達にこちらの動きがバレた!?」

だが数日掛けて、これだけの兵力を集めたのだ。恐れるに足らない。

戦艦水鬼「だがこの戦力ならば・・・」

リ級「大変です!! 例の鎮守府の連中が!!」

戦艦水鬼「!!!?」

イ級「こちらに凄い速度で迫っているようです!!」

戦艦水鬼「よっ・・・よりによってあいつらに!?」

リ級「偵察機が傍受した会話なんですが・・・再生します」ポチッ

『深海棲艦め!! よりによってなんで今なのよ!!』

『徹底的にいたぶってやる!!』

『あっ偵察機』

『ほっときなさい。精々震えてるといいわ』

『酷い目に合わせてやる!!』

『八つ裂きだ!!』

声色で分かる。何故か敵の艦娘はかなり怒っており、恐ろしい暴言を吐いている。

戦艦水鬼「・・・・」ゾクッ

リ級「他の部隊は皆、我先にと逃げました」

イ級「皆、この前の生き残りですから・・・連中の恐ろしさは分かっています故」

リ級「我々も逃げるので・・・では」

戦艦水鬼「待って!! 私も逃げるから!!」

戦わずに敵部隊は撤退した。

提督「え? 敵がいない? どういうことだ・・・?」

結局、敵影は確認できず。

戦闘行動は一切せずに鎮守府に帰還した。

422: 2015/07/17(金) 02:40:15.29 ID:p6OE0Z0P0
その後・・・

提督「で? なんで君達は水着なの」

曙「こっちみんな!」

提督「質問に答えなさい。何故、水着で鎮守府を闊歩してるんだ」

漣「・・・クールビズ?」

提督「いや、クールビズすぎるだろ」

遠征から帰還した第七駆逐隊の4人は、ある勘違いをした。

今日は非番の娘達が水遊びをして、提督に水着を披露したと。

なんで!? なんで自分達が遠征の日に!?と4人は嘆いたが・・・

漣が「じゃあ今から水着になって報告に行きますか」と言いだした。

曙「はぁ!? アンタ馬鹿なんじゃないの!?」

漣「クールビズで全部済みますよ」

曙「また漣がアホなこと言い出して・・・」

と後ろを見ると既に潮が水着に着替えていた。

曙「潮ぉっ!!?」

朧「何、大声あげてるの?」

曙「って何アンタも水着に着替えてるのよっ!!」

気が付けば自分以外が水着。

朧「じゃあ曙はそのままでもいいんじゃない?」

曙「なんで私が悪いみたいな言い方!? 潮も大丈夫? 恥ずかしくないの?」

潮「ちょっと・・・恥ずかしいかも」

曙「じゃあ服着なさいよ」

潮「でも・・・見て欲しいから///」

漣「じゃあ報告に行きますよー」

曙「まっ・・・待ちなさいよっ!!」

結局、曙も水着に着替えて今に至るのである。

423: 2015/07/17(金) 02:40:55.28 ID:p6OE0Z0P0
漣「で? ご主人様? どうですか? 私の水着」

潮「・・・・・・」チラッ

朧「・・・聞かせて欲しい」

提督(なんで皆そんな緊迫した表情なんだ)

リットリオ「・・・そういう手もあったんだ」ボソッ

南方(映像からでも分かる。この空気が重い・・・)

提督「皆、似合ってて可愛いと思うぞ?」

その返答に3人は喜んだ。

曙「このっヘンタイっ!!」

提督「すまんな。曙の方は見ないようにするから許してくれ」

曙「ちゃんと見なさいよっ!!! 目に焼き付けなさいよ!!」

提督「どっちだよ!?」

漣「テレてるだけですよ。ご主人様」

提督「皆可愛いし、似合ってるけど、あまりその格好で施設内を出歩くなよ?」

朧「分かってますよ」

漣「別にいいじゃないですかー」

提督「風紀の問題だ」

漣「祥鳳さんなんか、殆ど裸で歩いてるじゃないですか」

その発言は、たまたま執務室を通りかかった祥鳳の耳に入り、大きなショックを受けた。

祥鳳(ちゃんと着てますよ!!!!?)

朧「祥鳳さんは裸族だからいいんですよ」

祥鳳(違いますよ!!?)

色々否定したいけど、執務室の中に入って否定すると、盗み聞きしてたと思われるかなと思い、行動に移さなかった。

祥鳳(もうちょっと胸元隠そうかな・・・)

そんなことを思いつつ、自室へ帰って行った。

424: 2015/07/17(金) 02:41:41.82 ID:p6OE0Z0P0
提督「ん・・・?」

突然、提督の視界が遮られた。

リットリオ「あんまり(他の)女の子の肌をジロジロ見ちゃダメですよー」ハイライトオフ

提督「そんなつもりは無かったが・・・スマンな」

漣「リットリオさん。別にいいんですよ? 見せに来てるんですから」ハイライトオフ

潮「・・・見ても平気ですよ? 隠さなくても大丈夫です」ハイライトオフ

朧「目隠しとかしなくていいんですけど」ハイライトオフ

曙「・・・リットリオさん? なんのつもり?」ハイライトオフ

リットリオ「風紀の問題です」ハイライトオフ

第七駆逐隊4人とリットリオは無言で目から火花を散らす。

空気が張り詰めてピリピリしている。

南方(駆逐艦ってもっと無邪気だと思ってた・・・小さくても女なんだ・・・)

南方(リットリオちゃんも少し恐くなってきたし)

南方(なんでこの空気で息子がケロっとしてるか分からない・・・)

提督(また何時もの寒気が・・・疲れによるものか? 今日は早めに休むか)

南方(結局、今日も真実を打ち明けられなかった。タイミングって大事よね)

リットリオ「うふふ・・・」ニコッ

第七「「「「あはは・・・」」」」ニコッ

提督「・・・そろそろ手を離してくれないか? 仕事が・・・」

リットリオ「ダメですっ♪」ハイライトオフ

曙(この女・・・提督の頭に胸を押し付けて・・・)ハイライトオフ

漣(・・・彼女の認識を変えないとダメかもですね)ハイライトオフ

潮(私も・・・できるもん)ハイライトオフ

朧(・・・この戦艦、注意が必要かもしれない)ハイライトオフ

南方(早く私の手で教育しなおしたい・・・)シロメ

425: 2015/07/17(金) 02:42:52.39 ID:p6OE0Z0P0
夜。

仕事が終わり、売店に顔を出す。

明石「あら、珍しい。いらっしゃいませ」

リットリオ「あの・・・裏メニューを」

明石「・・・知ってしまいましたか」ニヤリ

リットリオ「何が出て来るんですか?」

明石「逆に、何が欲しいのですか?」

リットリオ「提督のことを知りたいって言ったら青葉さんから、ここの事を聞きまして」

明石「それなら、これですかね」

リットリオ「超解析!提督パーフェクト情報集(仮)? なんですかコレ」

明石「提督の情報が書かれた非公式ファンブックです」

リットリオ「そ・・・そんなの売ってるんだ・・・」

明石「非公式ですので、提督は感知してません。してたら販売中止になりますよ」

リットリオ(いいのかなぁ)

明石「で? 買うんですか? 買わないんですか?」

リットリオ「買います」

即答だった。

明石「ありがとうございましたー」

リットリオ(買っちゃった・・・3500円(税込み)出して・・・)

自室に戻ると鍵を閉める。

今日、ローマは霧島の部屋に泊まると言ってたので一人だ。

鍵が閉まっているのに、やましい気持ちがあるからか周囲をキョロキョロして警戒し、本を開く。

426: 2015/07/17(金) 02:43:45.77 ID:p6OE0Z0P0
リットリオ「すごい・・・詳細な情報が・・・」

そこには提督の写真付き(盗撮)で細かい情報が出ていた。

起きる時間から寝る時間までの一日の行動パターン予想図や、

趣味、特技、好きな食べ物・・・

そして『現在公開可能な情報』と書かれた下に書いてある提督の生い立ち。

後半は写真集と化していて、提督の写真(盗撮)がびっしりと掲載されている。

リットリオ(なんて・・・地中海的な・・・逞しい体///)

最後のページには、この本は鎮守府内の有志の情報提供で出来ていること、

また当面の目標は電が持ってる学生時代の提督の情報を聞き出すことと書かれていた。

リットリオ(電ちゃんって・・・確か初期艦の? なんで彼女が知ってるんだろう)

さらに、ver9.2と書かれており、この本がどんどんアップデートしてきた歴史のある本だと知った。

リットリオ(最後のページ、提督の写真販売中・・・? これ裏メニューのカタログ?)

リットリオ(産地直送の提督水? こっちは提督のムスコ(複製)!?)

リットリオ「誰が・・・型を取ったんだろう。羨ましい・・・」ボソッ

リットリオ(お給料貰ったし・・・)ゴクリッ

気が付けば読み始めてから3時間も過ぎていた。

寝る準備をしてベッドに入る。

先程の写真を思い出す。

リットリオ(・・・提督)

リットリオ(・・・提督・・・提督っ!!)

少し、自分に自己嫌悪。

リットリオ(良かった・・・今日は一人で)

妹が居たら、こんなことは出来ない。

自分がした行為が恥ずかしくなり、頭まで布団を被ると眠りについた。

440: 2015/07/21(火) 00:58:32.70 ID:gZJAVsU/0
次の日

リットリオは早起きして調理場に居た。

何かして、提督を喜ばせたくて、お弁当を作ることにした。

リットリオ(変に冒険しない方がいいかな?)

間宮に使用許可を貰い冷蔵庫の中の食材を使った、ごく普通のお弁当。

リットリオ「美味しいって言ってくれるかな・・・」

お昼になるのが楽しみだった。

何時の間にか彼女は、恋する乙女の目をしていた。



執務室

提督「え? お弁当? いいのか?」

リットリオ「はい。妹の分を作るついでで申し訳ないのですけど」

提督「いや、嬉しいよ」

妹の分のついで。そんなのはウソだった。

ただ、恥ずかしくてついたウソ。

提督はお弁当を平らげて、美味しかったと笑顔で言ってくれた。

それが本当に嬉しかった。

リットリオ(私、提督のこと・・・こんなにも好きなんだ)

気が付けば彼の姿ばかり追ってる。

毎日、毎日、提督のことを考えてる。

リットリオ(まだ出会って数日なのに・・・はしたないって思われるかしら)

しかし、すぐにその考えを否定する。

好きになるのに時間は関係ない。好きだから好き。ただそれだけ。

一緒に居た時間で優位が決まるなら、新参者の私に勝ち目はないのだから・・・

リットリオ(それに・・・提督は私のことをどう思ってるのかな)

気になって尋ねてみた。ありったけの勇気を出して。

リットリオ「提督は私のこと、どう思ってるのですか?」

提督「え? なんだ突然」

リットリオ「好き・・・ですか?」

それはとても勇気のいる言葉。

その言葉を発してしまった以上もう引き返せない。

441: 2015/07/21(火) 00:59:09.30 ID:gZJAVsU/0
目を潤ませて、今にも泣きそうに尋ねられたものだから提督はびっくりした。

提督(好きか・・・)

提督(そう言えば・・・)

思い出したのは子供の頃。

両親が氏に、元帥に引き取られ育てられた。

子供と言うのは残酷で、両親が居ないことをクラスメートにからかわれた。

本人達に悪意はない。ただ、子供ゆえの無邪気な行為。

自宅に帰ると元帥に泣きついて尋ねた。

自分のことを好きかどうか。

血の繋がりもない、言ってしまえば赤の他人の元帥がなんで自分の面倒を見てくれるか、

自分をどう思っているのか、人に愛されているのか・・・

不安だったのだ。世界で自分だけが一人孤立したような感覚が。

元帥は笑顔で言った。「愛している。お前は愛されている」と

そして「だから、不安になるな。ちゃんと大人になるまで俺が見てるから」と乱暴に頭を撫でられた。

それは恥ずかしかったが、救われた気がした。

だから、何を言われても大丈夫になった。

周りが何を言おうが構わない。自分を見てくれる人がいる。

愛してくれる人が居る。

だから・・・ボクは良い子にしている。それが両親との約束だから。

正しく、誰よりも正しく、真っ直ぐに・・・正しい大人になるんだ・・・

それが幼少時の提督の自我を形成して行った。

余談ではあるが後日、からかっていたクラスメートが氏んだ目をしてカタコトで謝ってきた。

どうしたのかと尋ねても壊れたレコーダーのように謝るだけで腑に落ちなかった。

さらに後日、元帥が電話で誰かに怒鳴っているのを聞いた。

元帥「バカやろう!! 相手はガキだぞ!? 何してるんだ!?」

元帥「え? あの人の子供を守るのが使命? アホか!! ガキのイザコザに首突っ込むなよ!!」

元帥「は? 国家機関に根回しは済んでいるから大丈夫!? どういうことだ!! おい!! おーーい!!」

元帥「あの馬鹿共、切りやがった!! 仮にも今の上司相手に!!」

諦めた表情で受話器を置く。

元帥「アイツの部下だった艦娘数人を引き取ったが・・・たまに暴走するから困る」

元帥「そりゃ忘れ形見の提督を守りたいって気持ちは分かるんだが・・・アイツあんなクセ者揃いの部下をよく纏めてたなぁ」

元帥「・・・馬鹿野郎。先に逝くんじゃねっつの。文句を言いたくても言えないじゃないか」

と言いながら、ため息を付いていたのを見たが幼い提督には何のことかよく分からなかった。

442: 2015/07/21(火) 00:59:46.94 ID:gZJAVsU/0
提督(そうか、きっと不安なんだ・・・この娘も)

提督が立ち上がり、リットリオの前に立つ。

リットリオはびくっと体を震わせた。

提督「好きだよ。リットリオ」

リットリオ「・・・!!!」

提督「見知らぬ国で、不安かもしれないけど・・・」

安心させてあげたい。

かつての自分のように。それで救われたから。

提督「ちゃんと見てるから。君は一人じゃない。俺が居るから」

リットリオをあやす様に、優しく頭を撫でる。

元帥がしてくれたように。

リットリオはそれだけで天にも昇る気持ちだった。

リットリオ(これって・・・両想いですか!!!?)

この勢いに乗るしかない。

リットリオ「私も提督のこと・・・」

だが、その言葉は最後まで続くことは無かった。

突然、ドアが乱暴に開かれて、金剛が入ってきたからだ。

金剛「リットリオ! ここに居たんですネ!! 探しましたヨ!!」

リットリオ「え? 何?」

金剛「さぁ、早くこちらへ!! テートクゥ! 少しリットリオ借りますヨ?」

提督「ああ・・・」

リットリオ「ちょっと!? 何ですか!? 今は大事な・・・」

そのままリットリオは金剛に連れ去られた。

監視中の南方棲鬼は唖然として榛名に尋ねた。

南方「あれ・・・告白?」

榛名「いいえ、絶対違います。何時ものことです」

南方「何時も!? 何時もあんな勘違いさせることしてるの!?」

榛名「それに告白であってはいけません・・・絶対に」ハイライトオフ

南方(でもあの娘なら上手くやれそう。大人しそうだし。恐くないし・・・)

南方(後で少し話してみたいなぁ)

443: 2015/07/21(火) 01:00:29.22 ID:gZJAVsU/0
リットリオは金剛の自室に連れてこられた。

リットリオ「なんなんですか!? 突然!」

金剛「ダメですよ? あんなことしちゃ」

リットリオ「何がですか?」

金剛「告白・・・」

リットリオ「!!」

ドキリとする。なんで? なんで知ってる?

リットリオ「貴女には関係ないじゃないですか」

金剛「大ありデース。だって私も提督のこと大好きだから」

リットリオ「・・・多分、そうだろうと思ってました」

金剛「私だけじゃないですよ? この鎮守府の艦娘全員です」

リットリオ「っ!!」

金剛「貴女の妹もね」

リットリオ「やっぱり・・・あの子も・・・」

金剛「だから、勝手な真似は困りマース」

リットリオ「どうしてですか? 告白してOK貰えたら勝ちじゃないですか。貴女に邪魔される謂れは・・・」

金剛「ちゃんとルールがあるんです」

そう言って本を手渡した。

リットリオ「これは・・・?」

金剛「様々なルールが書かれた本です。まずはそれを見て学んでくだサイ」

渡されたルールブックをパラパラ捲る。

リットリオ「色々書いてある・・・」

金剛「それに、貴女は提督の目標を潰したいのですカ?」

リットリオ「・・・どういうことですか?」

444: 2015/07/21(火) 01:01:20.22 ID:gZJAVsU/0
金剛「今、誰かと恋仲になったら、フラれた娘はどうなるんでしょう?」

リットリオ「・・・え?」

金剛「少なくても、戦闘に支障をきたす事になりマス。それは今は望ましくない。提督の為にも」

だから終戦まで待つ。それがまず大前提。

リットリオ「・・・戦争が終わらなかったら?」

金剛「そんなわけないでショ? 提督が言うことは絶対なんだかラ」ハイライトオフ

金剛「戦争は終わるデス。近い将来に。そして、それは提督が実現シマス。私達と共に・・・」

リットリオ「つまり、終戦になれば告白自由に?」

金剛「それは追々ですね。状況が落ち着いたらデス」

リットリオ「この項目のルールを破ったものを五航戦とするとは?」

金剛「それはもう廃止されたので気にしないでくだサイ」

リットリオを金剛は睨む。

金剛「大方、そのいやらしい体で提督を篭絡しようとでもしたんでしょうケド・・・」

金剛「提督を渡す気はないからネ?」

リットリオ「は? なんですかソレ」

金剛「大体、貴女はふわふわして頭悪そうデース! 提督には合いませんよ?」

偶然、盗聴器で2人の言い合いを聞いた榛名は思った。

榛名(それ、自分にブーメランですよ金剛姉様・・・)

もちろん敬愛している姉にそんなことは言わない。心の中で思うだけだ。

金剛の言葉にカチンと来て、リットリオは言い返す。

リットリオ「変な言葉遣いの似非外国人に言われたくないです。どこかの芸人ですか?」

金剛「あはは・・・面白いこと言いますネー」ニコッ

リットリオ「そうですか? 事実ですけど」ニコッ

445: 2015/07/21(火) 01:02:04.48 ID:gZJAVsU/0
そして翌日。

今日は秘書艦の最終日

提督「今日までお疲れ様」

リットリオ「そんな・・・出来ればもっとヤリたいくらいですよ?」

提督「ありがとう。だが、順番だからな。スマンな」

そこへ金剛がやってくる。

金剛「この間の補給の件ですケド・・・」

リットリオ「きゃっ!?」

提督「どうした!?」

リットリオは提督にぎゅーと抱きつく。

その豊満な胸を押し付けるように。

金剛「・・・」イラッ

提督「あのな、あまり男性に不用意に抱きつくのは・・・どうしたんだ?」

リットリオ「すいません、この前、金剛さんに怒られて・・・ちょっと恐いんです」チラッ

金剛(この・・・アマァァァァァァっ!!!)

リットリオは金剛にだけ分かるように、ニヤリと勝ち誇ったように笑った。

提督「とりあえず、離れてくれ・・・その・・・困る」

リットリオ「すいません。お嫌でしたか?」

提督「君みたいな魅力的な娘に抱きつかれると、男として困る」

リットリオ「もうっ お上手ですね ///」

提督「からかうなよ・・・」

金剛(リットリィィィィィオオオオォォォっ!!!!)

提督「所で金剛、リットリオと喧嘩でもしたのか?」

金剛「いいえ。来たばかりだから色々と教えていて、ルールを説明しただけです」

提督「そうか」

提督(ルール? 掃除当番とかそういうのかな?)

446: 2015/07/21(火) 01:04:10.00 ID:gZJAVsU/0
金剛「それが少し恐かったみたいデスね。ごめんなさい」

リットリオ「分かりました。では仲直りですね」

金剛「そうですネ」

2人「「ふふふっ・・・」」

握手を交わすが、互いに力を入れすぎて双方顔を顰めた。

提督「仲良くしてくれよ? その方が俺も嬉しい。同じ鎮守府の仲間なんだから」

リットリオ「はい。仲良くしましょうね」ニコッ

金剛「そうですネー」ニコッ

2人((表面上は・・・))ハイライトオフ

提督は気付いてなかった。

顔は笑顔でも、見えないところで2人が足を踏み合っていたことを、つねりあっていたことを・・・

監視中の南方棲鬼はその様子を震えながら見ていた。

南方「あの娘も・・・だーくさいどに落ちた・・・」

榛名「・・・? 別に普通じゃないですか」

南方「普通じゃない!!」

榛名「どうしたんですか? お義母さま」

南方「仮に終戦になったとして・・・その後どうするの・・・?」

榛名「どうするのってステキなお嫁さんと結婚して幸せになるのでは? 子供に恵まれて・・・」

南方「嫁?・・・それは誰?」

尋ねると榛名は頬を朱色に染めた。

南方(仮に榛名ちゃんを嫁にしたとしても残りの百数人の娘どうすんのよ・・・)

モニターに写る暢気そうに書類を眺めている我が子に対してため息がでた。

南方「胃薬が欲しい・・・」

榛名「・・・?」

南方(僅か9日足らずで無自覚で完全陥落か・・・誰に似たのかしら・・・)ハァ

447: 2015/07/21(火) 01:07:11.36 ID:gZJAVsU/0
投下完了
長くなったけどイタ艦おしまい☆
何時も感想ありがとうでーす
じゃあまた

448: 2015/07/21(火) 01:07:47.66 ID:4UZlwx1EO
乙!

449: 2015/07/21(火) 01:25:08.97 ID:4tC4KN4fO

相変わらず提督の鈍感っぷりと艦娘の病みっぷりが素晴らしい

450: 2015/07/21(火) 02:57:46.97 ID:pGDTRZ0fO
提督の学生時代…電ちゃんが既に病ヤンデレなってるだと…。


引用: 提督「ウチは平和だなぁ」艦娘「表面上は」 その2